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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-08
(54)【発明の名称】化学製造制御
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20231031BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517989
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 EP2021075448
(87)【国際公開番号】W WO2022058409
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】20197014.2
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20204150.5
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビンクラー,クリスティアン-アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ハルトマン,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ラウテンシュトラウホ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ユエン・エン
(72)【発明者】
【氏名】バンデルノート,ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤクート,ナタリヤ
【テーマコード(参考)】
3C100
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA59
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB33
3C100CC02
3C100CC03
3C100EE11
(57)【要約】
本教示は、少なくとも1つの前駆体材料を使用して化学製品を製造するための下流製造プロセスを制御するための方法であって、化学製品の製造を制御するための下流制御セッティングのセットを提供することを含み、下流制御セッティングが、前駆体データを含む下流オブジェクト識別子と、化学製品に関連した少なくとも1つの所望の下流性能パラメータと、下流履歴データと、に基づいて決定され、下流制御セッティングのセットが、下流工業プラントにおいて化学製品を製造するために使用可能である、方法に関する。本教示は、システム、使用、およびソフトウェア製品にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下流工業プラントにおいて化学製品を製造するための下流製造プロセスを制御するための方法であって、前記下流工業プラントが、少なくとも1つの下流機器を含み、前記製品が、前記下流機器を介して、前記下流製造プロセスを使用して少なくとも1つの前駆体材料を処理することによって製造され、前記方法が、少なくとも部分的に下流計算ユニットを介して行われ、前記方法が、
- 前記下流計算ユニットにおいて、前記化学製品の製造を制御するための下流制御セッティングのセットを提供することを含み、前記下流制御セッティングが、
- 前記前駆体材料の1つまたは複数の特性を示す前駆体データを含む下流オブジェクト識別子と、
- 前記化学製品に関連した少なくとも1つの所望の下流性能パラメータと、
- 過去の1つまたは複数の化学製品を製造するために使用された下流プロセスパラメータおよび/または動作セッティングを含む下流履歴データと、に基づいて決定され、
- 前記下流制御セッティングのセットが、前記下流工業プラントにおいて前記化学製品を製造するために使用可能である、下流工業プラントにおいて化学製品を製造するための下流製造プロセスを制御するための方法。
【請求項2】
前記機器を介した処理のための前記前駆体材料が、少なくとも2つのパッケージに分割され、1つのパッケージのサイズが、固定されているか、またはかなり一定のプロセスパラメータまたは機器動作パラメータを前記機器によって提供することができる場合の前駆体材料の重量または量に基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つのパッケージの処理が、対応するデータオブジェクトによって管理され、各データオブジェクトが、少なくともオブジェクト識別子を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記機器を介して提供されるトリガ信号に応答してデータオブジェクトが生成される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記トリガ信号が、前記機器の各機器ユニットに配置された対応するセンサの出力に応答して提供される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記下流制御セッティングのうちの少なくとも幾つかが、上流工業プラントに関連した上流計算ユニットによって決定され、前記前駆体材料のうちの少なくとも1つが、前記上流工業プラントによって提供される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記下流セッティングのうちの少なくとも幾つかが、共有メモリストレージにおいて提供され、前記共有メモリストレージが、前記上流計算ユニットおよび前記下流計算ユニットの両方によってアクセス可能である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記下流制御セッティングのうちの少なくとも幾つかが、前記下流計算ユニットによって決定される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記下流計算ユニットが決定した前記制御セッティングが、上流オブジェクト識別子を使用して決定され、前記上流オブジェクト識別子が、前記上流工業プラントにおいて前記前駆体材料を製造するために使用された上流プロセスパラメータおよび/または動作セッティングを含む上流プロセスデータのサブセットを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記下流オブジェクト識別子が、前記上流計算ユニットによって提供され、好ましくは、前記下流オブジェクト識別子は、前記上流オブジェクト識別子からのデータが加えられる、請求項6から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記上流オブジェクト識別子が、前記下流履歴データに基づいて前記下流制御セッティングのうちの少なくとも幾つかを提供するための予測および/または制御ロジックを含み、好ましくは、前記予測および/または制御ロジックは、暗号化されるまたは権限のない読み出しから難読化される、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記予測および/または制御ロジックが、前記下流履歴データによって訓練可能なデータドリブンモデルを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
訓練された前記予測および/または制御ロジックが、前記下流制御セッティングの計算が改善されるように前記予測および/または制御ロジックを修正するために使用可能な修正データを生成する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
訓練された前記予測および/もしくは制御ロジックならびに/または前記修正データが、前記上流計算ユニットに提供される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、
- 前記下流制御セッティングを使用して、好ましくは、前記下流制御セッティングを自動的に前記下流計算ユニットおよび/または前記下流製造プロセスを制御するためのプラント制御システムに提供することによって、前記下流製造プロセスを実行することも含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、さらに、
- 前記下流計算ユニットにおいて、前記下流機器または機器ゾーンのうちの1つまたは複数から下流リアルタイムプロセスデータを受け取ることを含み、前記下流リアルタイムプロセスデータが、下流リアルタイムプロセスパラメータおよび/または機器動作条件を含む、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、
- 前記下流計算ユニットを介して、前記下流オブジェクト識別子および下流ゾーン存在信号に基づいて前記下流リアルタイムプロセスデータのサブセットを決定することを含み、前記下流ゾーン存在信号が、前記下流製造プロセス中の特定の機器ゾーンにおける前記前駆体材料の存在を示す、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、
前記下流オブジェクト識別子に、前記下流リアルタイムプロセスデータのサブセットおよび/または下流プロセス特定データを加えることも含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、
- 前記下流計算ユニットを介して、前記下流リアルタイムプロセスデータのサブセットおよび前記下流履歴データに基づいて前記下流オブジェクト識別子に関連する前記化学製品の少なくとも1つの下流性能パラメータを計算することを含み、好ましくは、前記少なくとも1つの下流ゾーン特定性能パラメータが、前記下流オブジェクト識別子に加えられる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、
- 前記下流計算ユニットを介して、前記下流性能パラメータのうちの少なくとも1つと前記所望の下流性能パラメータのそれらのそれぞれの関連する値との間の差が最小化されるように前記下流製造プロセスを制御することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの前記下流性能パラメータの計算が、前記下流履歴データを使用して訓練される少なくとも1つの下流機械学習(「ML」)モデルを使用して行われる、請求項19から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記工業プラントが、Internet-of-Things(IoT)エッジデバイスまたは構成要素を含み、基礎となるMLシステムが、前記IoTエッジデバイスを制御するための、対応して生成されたまたは見つけられたアルゴリズムを使用するために、前記IoTエッジデバイスまたは構成要素に展開されるアルゴリズムを見つけるまたは生成するために実装される、請求項21に記載の方法。17.オブジェクトデータベースを含み、製造機器のための、対応する前駆体材料のためのおよびパッケージ関連データのための抽象化層として機能する、抽象化層を提供する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項23】
前記抽象化層が、クラウドコンピューティングプラットフォーム内のある処理および/またはML構成要素に接続され、この接続のために、データストリーミングプロトコルが使用され、ストリーミングされかつ受け取られた製品データが、基礎となる化学製品に関連した追加的なデータを得るためのアルゴリズムを見つけるまたは生成するために前記MLシステムによって使用される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記追加的なデータが、前記基礎となる化学製品の予測可能な製品品質制御(QC)データに関する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
下流工業プラントにおいて化学製品を製造するための下流製造プロセスを制御するためのシステムであって、前記下流工業プラントが、少なくとも1つの下流機器および下流計算ユニットを含み、前記製品が、前記下流機器を介して、前記下流製造プロセスを使用して少なくとも1つの前駆体材料を処理することによって製造され、前記システムが、
- 前記下流計算ユニットにおいて、前記化学製品の製造を制御するための下流制御セッティングのセットを提供するように構成されており、前記下流制御セッティングが、
- 前記前駆体材料の1つまたは複数の特性を示す前駆体データを含む下流オブジェクト識別子と、
- 前記化学製品に関連した少なくとも1つの所望の下流性能パラメータと、
- 過去の1つまたは複数の化学製品を製造するために使用された下流プロセスパラメータおよび/または動作セッティングを含む下流履歴データと、
に基づいて決定され、
- 前記下流制御セッティングのセットが、前記下流工業プラントにおいて前記化学製品を製造するために使用可能である、下流工業プラントにおいて化学製品を製造するための下流製造プロセスを制御するためのシステム。
【請求項26】
コンピュータプログラム、またはプログラムを記憶する非一時的コンピュータ可読媒体であって、命令を含み、前記命令は、前記プログラムが、下流製造プロセスを使用して少なくとも1つの前駆体材料を処理することによって下流工業プラントにおいて化学製品を製造するための少なくとも1つの機器に動作可能に結合された適切な計算ユニットによって実行されると、前記計算ユニットに、
- 前記化学製品の製造を制御するための下流制御セッティングのセットを提供させ、前記下流制御セッティングが、
- 前記前駆体材料の1つまたは複数の特性を示す前駆体データを含む下流オブジェクト識別子と、
- 前記化学製品に関連した少なくとも1つの所望の下流性能パラメータと、
- 過去の1つまたは複数の化学製品を製造するために使用された下流プロセスパラメータおよび/または動作セッティングを含む下流履歴データと、
に基づいて決定され、
- 前記下流制御セッティングのセットが、前記下流工業プラントにおいて前記化学製品を製造するために使用可能である、コンピュータプログラム、またはプログラムを記憶する非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本教示は、概して、コンピュータ支援化学製造(computer assisted chemical production)に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
工業プラントにおいて、1つまたは複数の製品を製造するために投入材料が処理される。したがって、製造される製品の特性は、製造パラメータに依存する。通常、製品品質または製造安定性を保証するために製造パラメータを製品の少なくとも幾つかの特性に相関させることが望まれる。
【0003】
プロセス工業、または化学的または生物学的製造プラントなどの工業プラント内で、1つまたは複数の化学的または生物学的製品を製造するための製造プロセスを使用して、1つまたは複数の投入材料が処理される。プロセス工業における製造環境は複雑である可能性があり、したがって、製品の特性は、前記特性に影響する製造パラメータのばらつきに従って変動する場合がある。通常、製造パラメータへの特性の依存は、複雑であり、特定のパラメータの1つまたは複数の組合せへのさらなる依存と絡み合わされる可能性がある。幾つかの場合において、製造プロセスは、複数の段階に分割される場合があり、このことは、問題をさらに大きくする可能性がある。したがって、一貫したおよび/または予測可能な品質で化学的または生物学的製品を製造することは困難である場合がある。
【0004】
幾つかの場合、下流工業プラントは、下流プラントにおいて化学製品を製造するために上流プラントから前駆体材料を受け取る場合がある。前駆体材料が、前駆体材料の特性の1つまたは複数が含まれる場合がある仕様範囲を有する場合がある。これらの特性は、上流プラントにおける前駆体材料の製造における変動により変化する場合がある。さらに、下流プラントにおいても製造の変動が生じる場合がある。したがって、下流プラントにおいて製造された化学製品も、化学製品の特性が含まれる場合がある範囲を有する場合がある。様々な変動およびそれらの組合せに応じて、化学製品のある部分は、不十分な品質または性能により許容できないまたは使用不可能である場合がある。これは、結果として廃棄物、および製造コストの増大を生じる可能性がある。
【0005】
さらに、個別処理(discrete processing)とは対照的に、連続的なキャンペーンまたはバッチプロセスなどの化学的または生物学的処理は、膨大な量の時系列データを提供する場合がある。しかしながら、従来の時系列アプローチを介した機械学習は、あまり実用的ではないことが確認された。なぜならば、価値連鎖(value chain)を横断する水平統合の必要性に従ってデータを統合することが困難である可能性があるからである。特に、容易かつ有意義なデータ交換または標準化は、大きな問題を課す可能性がある。
【0006】
したがって、理想的にはバレルから最終製品までの価値連鎖を横断して制御および製造安定性を改善することができるアプローチが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
従来技術の固有の問題のうちの少なくとも幾つかは、添付の独立請求項の主題によって解決されることが示される。さらなる有利な代替例のうちの少なくとも幾つかは、従属請求項に概説される。
【0008】
基礎となるコンピュータ支援化学製造のために、基礎となる化学製造環境の処理機器によって処理される投入材料は、以下では「パッケージオブジェクト」(またはそれぞれ「物理的パッケージ」または「製品パッケージ」)と呼ばれる物理的または実世界パッケージに分割される。このようなパッケージオブジェクトのパッケージサイズは、例えば、材料重量もしくは材料量によって固定されることができるか、またはかなり一定のプロセスパラメータもしくは機器動作パラメータを処理機器によって提供することができる重量もしくは量に基づいて決定することができる。このようなパッケージオブジェクトは、ドージングユニットによって投入液体および/または固体原料から生成することができる。
【0009】
このようなパッケージオブジェクトの後続の処理は、いわゆる「オブジェクト識別子」、例えば、以下で説明される「下流オブジェクト識別子」を含む対応するデータオブジェクトによって管理される。これらのオブジェクト識別子は、言及された機器と結合された、またはさらには機器の一部である計算ユニットを介して各パッケージオブジェクトに割り当てられる。基礎となるパッケージオブジェクトの対応する「下流オブジェクト識別子」を含むデータオブジェクトは、計算ユニットのメモリストレージエレメントに記憶される。
【0010】
データオブジェクトは、機器を介して、好ましくは各機器ユニットに配置された対応するセンサの出力に応答して提供されるトリガ信号に応答して生成することができる。基礎となる工業プラントは、異なるタイプのセンサ、例えば、1つもしくは複数のプロセスパラメータを測定するためのセンサおよび/または機器もしくはプロセスユニットに関連した機器動作条件もしくはパラメータを測定するためのセンサを含む場合がある。
【0011】
第1の観点から見た場合、下流工業プラントにおいて化学製品を製造するための下流製造プロセスを制御するための方法であって、下流工業プラントが、少なくとも1つの下流機器を含み、製品が、下流機器を介して、下流製造プロセスを使用して少なくとも1つの前駆体材料を処理することによって製造され、方法が、少なくとも部分的に下流計算ユニットを介して行われ、方法が、
- 下流計算ユニットにおいて、化学製品の製造を制御するための下流制御セッティングのセットを提供することを含み、下流制御セッティングが、
- 言及された下流オブジェクト識別子であって、前駆体材料の1つまたは複数の特性を示す前駆体データを含む、言及された下流オブジェクト識別子と、
- 化学製品に関連した少なくとも1つの所望の下流性能パラメータと、
- 過去の1つまたは複数の化学製品を製造するために使用された下流プロセスパラメータおよび/または動作セッティングを含む下流履歴データと、
に基づいて決定され、
下流制御セッティングのセットが、下流工業プラントにおいて化学製品を製造するために使用可能である、下流工業プラントにおいて化学製品を製造するための下流製造プロセスを制御するための方法を提供することができる。
【0012】
出願人は、そうすることによって、化学製品の所望の品質に関連した少なくとも1つの所望の下流性能パラメータが、その関連する特性を備える特定の前駆体材料が下流機器において処理される形式を制御するために使用される場合があることに気づいた。幾つかの場合、下流工業プラントは、下流制御セッティングがゾーン特定である場合があるように複数の機器ゾーンを含む場合がある。
【0013】
したがって、化学製品は、下流変動に関してのみならず、前駆体材料における変動を補償しながら、所望の特性または性能パラメータに従って製造することができる。下流オブジェクト識別子に封入された前駆体データは、少なくとも1つの所望の下流性能パラメータを達成する目的で、下流制御セッティングを見つけるために使用することができる。したがって、例えば、前駆体材料特性におけるランダムな変動を補償することによってのみならず、下流履歴データが同じ目的のために、すなわち、少なくとも1つの所望の下流性能を達成するために活用されるように制御セッティングを選択することによって、化学製品の品質を改良および/またはより一貫したものにすることができる。下流履歴データは、1つまたは複数の化学製品が製造された機器、例えば、下流機器からのものである場合があるが、少なくとも部分的に別の機器からのものであることもできる。
【0014】
1つの態様によれば、下流履歴データは、例えば、下流機器ゾーンにおいて、前に処理された前駆体材料に関連した1つまたは複数の履歴下流オブジェクト識別子からのデータを含む。
【0015】
1つの態様によれば、履歴下流オブジェクト識別子の少なくとも1つは、例えば、下流機器ゾーンにおいて、前に処理された前駆体材料が処理された下流プロセスパラメータおよび/または機器動作条件を示す下流プロセスデータの少なくとも一部が加えられている。
【0016】
このような履歴下流オブジェクト識別子は、過去にそれぞれの化学製品を製造または処理するためにそれぞれの前の投入材料が処理された下流プロセスデータの対応する部分を封入している。したがって、本明細書に開示された下流履歴データは、下流機器のための制御セッティングを決定するために使用することができる、非常に関連した、しかしながら簡潔なデータセットである。1つまたは複数の化学製品を製造するための多数の下流機器ゾーンが存在するように下流機器が配置されている場合、下流制御セッティングは、少なくとも1つの所望の性能パラメータを介して明示されたような化学製品のための所望の性能を達成するための目標として下流機器ゾーンのそれぞれのために提供される場合がある。
【0017】
1つの態様によれば、履歴下流オブジェクト識別子のそれぞれまたは幾つかは、例えば、下流工業プラントにおいて製造された関連する化学製品の1つまたは複数の特性に関連した少なくとも1つの下流性能パラメータを含む。したがって、履歴下流オブジェクト識別子のそれぞれまたは幾つかは、少なくとも1つの下流性能パラメータが加えられている。
【0018】
そうすることによって、履歴下流データは、あらゆる下流オブジェクト識別子内の下流プロセスデータのそれぞれの部分に、それらのそれぞれの少なくとも1つの下流性能パラメータを関連付けることによってさらにターゲット化されることができる。したがって、広範囲である可能性があるプロセスデータ全体から、プロセスパラメータおよび/または動作セッティングの簡潔な、しかしながら有効なスナップショットが、その性能と共に特定の化学製品にデジタル式に結合される。したがって、制御セッティングの決定を、相乗的に向上させることができる。これは、少なくとも下流性能パラメータを下流オブジェクト識別子に加えることによって達成することができ、これに関連する詳細は本開示において説明される。したがって、下流オブジェクト識別子が、将来の下流製造のための履歴オブジェクト識別子として使用される場合、識別子内の関連するデータは、将来の製造を改善するためにさらに良く活用することができる。
【0019】
本教示の文脈において提案されるオブジェクト識別子は、価値連鎖を通じて、下方および上方の両方で、化学製品のトレーサビリティを高めることができるのみならず、化学製品のより一貫した品質を得るように製造プロセスが制御されることを保証するために使用することもできることが認められるであろう。異なる時点において製造される複数の化学製品におけるより広い変動を生じる可能性がある、ユニバーサル制御セッティングに依存するのではなく、製造チェーンの少なくとも一部、例えば、下流機器または機器ゾーンは、化学製品の所望の性能を達成するという目的で、より適応可能な形式で制御することができる。したがって、前駆体材料および/またはプロセスパラメータおよび/または機器動作条件のあらゆる可変性は、化学製品を製造するための下流制御セッティングまたは下流ゾーン特定制御セッティングを提供しながら、少なくとも部分的に補償されることができる。
【0020】
したがって、方法は、
- 下流制御セッティングを使用して、下流製造プロセスを実行することも含む。
【0021】
下流製造プロセスは、下流機器または下流機器ゾーンに動作可能に結合された下流プラント制御システムに提供される、または進入させられる下流制御セッティングのうちの少なくとも幾つかによって実行される場合がある。加えて、または代替的に、下流製造プロセスは、下流プラント制御システムに自動的に提供される下流制御セッティングのうちの少なくとも幾つかによって実行される場合がある。下流制御セッティングは、下流計算ユニットによって下流プラント制御システムへ直接に送信される場合があるか、または下流計算ユニットに動作可能に結合された下流メモリ位置において提供される場合があり、この下流メモリ位置から、下流プラント制御システムは、下流制御セッティングを読み出すまたはフェッチする場合がある。
【0022】
幾つかの場合において、下流計算ユニットは、少なくとも部分的に、下流プラント制御システムの一部である場合があり、これにより、下流計算ユニットは、少なくとも部分的に下流製造プロセスを制御するために下流制御セッティングを直接使用する場合がある。説明したように、下流制御セッティングは、下流機器ゾーンのそれぞれにおける下流製造プロセスの制御を可能にする場合がある。したがって、制御のより細かい粒度および柔軟性は、少なくとも1つの所望の下流性能パラメータに従って化学製品の性能を達成することができる。
【0023】
1つの態様によれば、方法は、さらに、
- 下流計算ユニットにおいて、下流機器または機器ゾーンのうちの1つまたは複数から下流リアルタイムプロセスデータを受け取ることを含み、下流リアルタイムプロセスデータは、下流リアルタイムプロセスパラメータおよび/または機器動作条件を含む。
【0024】
したがって、下流計算ユニットは、下流機器または機器ゾーンに通信可能および/または動作可能に結合されている場合がある。
【0025】
さらなる態様によれば、方法は、
- 下流計算ユニットを介して、下流オブジェクト識別子および下流ゾーン存在信号に基づいて下流リアルタイムプロセスデータのサブセットを決定することを含み、下流ゾーン存在信号は、下流製造プロセス中の特定の機器ゾーンにおける前駆体材料の存在を示す。
【0026】
したがって、下流計算ユニットは、下流オブジェクト識別子に関連する下流プロセスデータを選択することができる。前記関連するデータ、または下流リアルタイムプロセスデータのサブセットは、製造チェーン内のどこに材料が配置されているかに基づいて、またはゾーン存在信号を使用することによって選択される場合がある。
【0027】
別の態様によれば、方法は、
- 計算ユニットを介して、下流リアルタイムプロセスデータのサブセットおよび下流履歴データに基づいて、下流オブジェクト識別子に関連する化学製品の少なくとも1つの下流性能パラメータを計算することを含む。
【0028】
認められるように、下流プロセスデータは、データの構成要素の1つまたは複数に関連した可変性を有する場合がある。例えば、異なる時点において同じミキサによって混合された前駆体材料の2つの異なるバッチは、同一でない形式で混合されている場合がある。同様の可変性も、その他のパラメータおよび/または動作条件に関して存在する場合がある。個々の構成要素の間の可変性は、ランダムであり、その他の構成要素から独立しているまたは部分的に独立している場合がある。さらに、このような可変性の組合せは、化学製品の性能または品質における可変性を生じる場合がある。したがって、上記に示したように、下流リアルタイムプロセスデータのサブセットに応じて、下流計算ユニットは、少なくとも1つの下流性能パラメータを計算するように構成されている場合がある。したがって、化学製品の品質を示している少なくとも1つの下流性能パラメータは、基本的に前駆体材料が下流機器ゾーンにおいて処理されている間に決定される場合がある。少なくとも1つの下流性能は、例えば、ヒューマンマシンインターフェース(「HMI」)を介してオペレータに表示される場合がある。次いで、オペレータは、下流製造プロセスを調整する場合があり、これにより、少なくとも1つの下流性能パラメータのそれぞれまたは幾つかが、所望の下流性能パラメータの関連する値と同じ値であることができる、またはそれと近くなる。
【0029】
代替的に、または加えて、方法は、
- 下流オブジェクト識別子に、少なくとも1つの下流性能パラメータを加えることを含む。
【0030】
下流性能パラメータは、例えば、メタデータとして下流オブジェクト識別子に加えられる場合がある。したがって、下流オブジェクト識別子は、下流製造プロセス中に計算された少なくとも1つの下流性能パラメータも封入する。したがって、これは、化学製品のトレーサビリティを高めるのみならず、化学製品のための品質制御を単純化することができる。
【0031】
代替的に、または加えて、方法は、
- 下流性能パラメータのうちの少なくとも1つと、所望の下流性能パラメータのそれぞれの関連する値との差が最小化されるように、下流計算ユニットを介して下流製造プロセスを制御することを含む。
【0032】
したがって、計算された性能値は、所望の性能パラメータ値を追跡することができる。これにより、製造プロセスの制御の粒度を、より細かいスケールでさらに高めることができる。したがって、このような制御は、様々なプロセスパラメータおよび/または動作条件における可変性を少なくとも部分的に補償することを可能にすることができる。潜在的に、下流機器ゾーンのそれぞれは、結果として生じる化学製品がより一貫した性能または品質を有することができるように自動的に制御される場合がある。
【0033】
代替的に、または加えて、方法は、
- 下流オブジェクト識別子に下流リアルタイムプロセスデータのサブセットを加えることを含む。
【0034】
したがって、関連する下流プロセスデータは、前駆体材料の特性との化学製品のあらゆる関係もキャプチャされるように、下流オブジェクト識別子においても、前駆体データまたは前駆体材料データがキャプチャまたはパッケージまたは封入される場合もある。これは、化学製品のあらゆる1つまたは複数の特性または性能に影響する場合がある様々な依存関係の間のより完全な関係を提供することができる。別の利点は、前駆体材料特性および/または下流プロセスパラメータの間に存在する場合がある様々な依存関係の間の組合せも下流オブジェクト識別子内にキャプチャされるということであることができる。したがって、下流オブジェクト識別子は、化学製品および/または前駆体材料などの特定の構成要素を追跡するためのみならず、化学製品を生じる要因となった特定の下流リアルタイムプロセスデータも追跡するために使用することができる情報で強化される。その結果、履歴下流オブジェクト識別子のそれぞれなどのオブジェクト識別子は、あらゆる機械学習(「ML」)およびこのような目的のためにより容易に統合することができる。したがって、下流オブジェクト識別子は、将来の下流製造のための履歴オブジェクト識別子として使用することもできる。
【0035】
所望の下流性能パラメータは、化学製品の1つ複数の特性に直接関連している場合があるおよび/または下流製造プロセス中に製造される下流派生材料の1つもしくは複数の特性に関連している場合があることが認められるであろう。例えば、下流製造プロセスの経過の間に前駆体材料が下流派生材料に変換される場合、時にはこのような派生材料の品質または性能も追跡および/または制御することが要求される場合がある。このような場合、下流派生材料は、前駆体材料から生じる中間材料であり、この派生材料は、次いで、化学製品を製造するために使用されることが理解されるであろう。化学製品は、下流派生材料にも依存するので、時には下流派生材料を追跡および制御することが要求される場合もある。
【0036】
したがって、1つの態様によれば、所望の下流性能パラメータのうちの少なくとも1つは、下流派生材料の1つまたは複数の特性に関連している。
【0037】
1つの態様によれば、下流ゾーン存在信号は、前駆体材料に関連した少なくとも1つの特性を特定の機器ゾーンにマッピングするゾーン-時間変換を行うことによって下流計算ユニットを介して生成される場合がある。例えば、前駆体材料に関連する特性が、前駆体材料の重量である場合があり、これにより、例えば、下流リアルタイムプロセスデータを介する製造プロセスの知識により、前駆体材料または下流製造プロセス中に製造される派生材料の存在を決定することができる。例として、第1の下流機器ゾーンにおいてある重量を有する前駆体材料が、下流製造プロセス中に第2の下流機器ゾーンへ横断する場合、第2の下流ゾーンにおける、例えば、所定の時間におけるまたは所定の時間内での重量測定を使用して、第2の下流ゾーンのためのゾーン存在信号を生成することができる。同様に、流れ値、例えば、前駆体またはその派生材料が製造を通じて横断する質量流量または体積流量は、下流ゾーン存在信号を生成するために使用される特性であることができる。さらに、例として、前駆体材料が機器ゾーンに沿って横断するときのスピードまたは速度は、投入材料またはその対応する派生材料が所与の時点に存在する空間または位置を決定するために使用することができる。代替的に、または加えて、投入材料に関連する特性のその他の非限定的な例は、体積、充填値、レベル、色などである。
【0038】
出願人は、製造環境において時間依存データ、例えば、時系列データである下流リアルタイムプロセスデータを空間データにマッピングし、これにより、前駆体材料を表すデジタルフローエレメントを使用して実際の製造フローをマッピングすることによって、ゾーン存在信号を生成することが有利であると分かった。例えば、前駆体材料のデジタルフローは、下流オブジェクト識別子を介して追跡することができ、時間依存下流リアルタイムプロセスデータにおける発生は、下流製造プロセスに沿って材料を位置特定するために使用することができる。したがって、材料は、時間および既に測定された下流リアルタイムプロセスデータを介して、すなわち、下流製造チェーンに沿った前駆体材料の流れの時間次元に相関する下流プロセスデータの時間次元を使用することによって、追跡または位置特定される。
【0039】
ゾーン存在信号は、規則的なもしくは不規則な時間における計算を介して生成された断続的なものであるか、または連続的に生成される場合がある。これは、それぞれのオブジェクト識別子に関連した材料が連続的にまたは基本的に連続的に製造チェーン内に配置することができ、これにより、材料および化学製品へのその変換のために非常に関連するデータの追加を可能にするという利点を有することができる。規則的または不規則な時間における計算は、例えば、製造チェーン内のあるチェックポイントにおける材料の存在をチェックするために行われる場合がある。これは、例えば、以下に概説されるように1つまたは複数のセンサによって、下流リアルタイムプロセスデータにおける発生によって補足される場合がある。
【0040】
化学製造において、滞在時間および流速などの時間次元に関する動作パラメータは知られているので、ゾーン-時間変換は時間スケールにおける単純なマッピングであることができる。代替的に、プロセスシミュレーションに基づくより複雑なモデルは、材料流の時間スケールとリアルタイムプロセスデータとを整合させるために使用される場合がある。いずれの場合にも、プロセスデータの時間スケールは、プロセスデータパラメータをより細かく材料の流れに帰するために材料の流れよりも細かい場合がある。
【0041】
したがって、下流プロセスパラメータおよび/または機器動作条件のそれぞれまたは幾つかなどの、下流リアルタイムプロセスデータのサブセットまたはさらにはその構成要素は、材料が機器の特定のサブパートにおいてまたはゾーン内で費やす時間に従ってさらに最適化されるまたはより簡潔にされることができる。例えば、第1の下流機器ゾーンなどの機器ゾーンがミキサを含み、その後にヒータが続いている場合、下流リアルタイムデータのサブセットは、前駆体材料がミキサにあった時間についてのみミキサに関連した下流プロセスパラメータおよび/または機器動作条件を含む場合がある。同様に、ヒータに関連した下流プロセスパラメータおよび/または機器動作条件は、例えば、材料がヒータに曝された時間からのみ、例えば、ミキサから出た時点に含まれる場合がある。このように、データセットの関連性は、特定の材料のための関連性に従って絶えず管理および最適化することができる。代替例は、理解されるように、下流プロセスデータのサブセットが、前駆体材料が下流機器ゾーンに進入する時から前駆体が下流機器ゾーンから出る時までの下流機器ゾーンに関連した下流プロセスパラメータおよび/または機器動作条件の全てを含むということである場合があり、この代替例は、既に、下流オブジェクト識別子のための高い関連性データを提供するという利点を有するが、ゾーン自体内の、説明したような下流プロセスデータの個々の構成要素をさらに明示することによって、下流リアルタイムプロセスデータのサブセットをさらに最適化することができ、それぞれの下流オブジェクト識別子内に封入されたデータの関連性をさらに高めることができる。
【0042】
追加的または代替的に、下流ゾーン存在信号は、少なくとも部分的に、特定ゾーンに関連したセンサを介して提供される場合がある。例えば、重量センサおよび/またはイメージセンサが、空間におけるまたは特定の機器ゾーンにおける前駆体材料または派生材料の存在を検出するために使用される場合がある。
【0043】
「機器」は、下流工業プラントなどのそれぞれの工業プラント内のあらゆる1つまたは複数のアセットを指す場合がある。非限定的な例として、機器は、計算ユニットもしくはプログラマブルロジックコントローラ(「PLC」)などのコントローラもしくは分散制御システム(「DCS」)、センサ、アクチュエータ、エンドエフェクタユニット、コンベヤシステムなどの搬送エレメント、ヒータなどの熱交換器、炉、冷却ユニット、蒸発ユニット、抽出器、反応器、ミキサ、フライス盤、チョッパ、圧縮機、スライサ、押出機、ドライヤ、噴霧器、圧力もしくは真空チャンバ、チューブ、ビン、サイロ、および工業プラントにおける製造のためもしくは製造中に直接的もしくは間接的に使用されるあらゆるその他の種類の装置のうちのいずれか1つもしくは複数、またはそれらの組合せのいずれかを指す場合がある。好ましくは、機器は、特に、製造プロセスに直接的または間接的に関与するアセット、装置または構成要素を指す。より好ましくは、化学製品の性能に影響することができるアセット、装置または構成要素である。機器はバッファされている場合があるかまたはバッファされていない場合がある。さらに、機器は、混合を伴うまたは伴わない、分離を伴うまたは伴わない場合がある。混合なしのバッファされていない機器の幾つかの非限定的な例は、コンベヤシステムまたはベルト、押出機、ペレタイザおよび熱交換器である。混合ありのバッファされた機器の幾つかの非限定的な例は、バッファサイロ、ビンなどである。混合ありのバッファされた機器の幾つかの非限定的な例は、ミキサを備えるサイロ、混合容器、切断ミル、二重円錐形ブレンダ、硬化チューブなどである。混合ありのバッファされていない機器の幾つかの非限定的な例は、静的または動的ミキサなどである。分離ありのバッファされた機器の幾つかの非限定的な例は、カラム、セパレータ、抽出、薄膜気化器、フィルタ、ふるいなどである。機器は、さらに、オクタビンフィリング、ドラム、バッグ、タンクトラックなどの保管もしくはパッケージングエレメントである場合がある、またはそれらを含む場合がある。時には、機器の2つ以上のピースの組合せが、機器であると考えられる場合がある。
【0044】
下流工業プラントの文脈における「機器ゾーン」は、機器の同じピースの一部である物理的に分離されたゾーンを指すか、またはゾーンは、化学製品を製造するために使用される機器の異なるピースである場合がある。ゾーンは、したがって、非同一位置に物理的に配置されている。位置は、横方向および/または垂直方向に非同一の地理学的位置である場合がある。したがって、投入材料は、上流機器ゾーンから出発し、上流機器ゾーンの下流にある1つまたは複数の機器ゾーンに向かって下流へ横断する。下流製造プロセスの様々なステップは、したがって、ゾーンの間に分散されている場合がある。
【0045】
本開示において、「機器」および「機器ゾーン」という用語は、互換的に使用される場合がある。
【0046】
「機器動作条件」は、例えば特定のゾーンの機器の状態を表すあらゆる特性または値、例えば、セットポイント、コントローラ出力、製造シーケンス、較正ステータス、あらゆる機器関連警告、振動測定、速度、温度、フィルタ差圧などのファウリング値、メンテナンス日などのうちのいずれか1つまたは複数を指す。
【0047】
「下流」という用語は、製造の流れの方向であることを指すものとして理解される。例えば、製造プロセスが終了する最後の機器ゾーンは、下流機器ゾーンである。しかしながら、この用語は、本開示ではその意味の中で相対的な意味で使用される。例えば、第1の機器ゾーンと最後の機器ゾーンとの間に位置する中間機器ゾーンは、第1の機器ゾーンに対しては下流ゾーン、および最後の機器ゾーンに対しては「上流」機器ゾーンとも呼ばれる場合がある。したがって、最後の機器ゾーンは、第1の機器ゾーンおよび中間機器ゾーンに対して下流ゾーンである。同様に、第1の機器ゾーンおよび中間機器ゾーンは、最後の機器ゾーンの上流にある。
【0048】
「工業プラント」または「プラント」は、制限なく、1つまたは複数の工業製品の製造、生産または処理の工業的目的、すなわち、工業プラントによって行われる製造もしくは生産プロセスまたはプロセシングのために使用されるあらゆる技術的インフラストラクチャを指す場合がある。工業製品は、例えば、化学的、生物学的、薬学的、食品、飲料、織物、金属、プラスチック、半導体などのあらゆる物理的製品であることができる。追加的または代替的に、工業製品は、サービス製品、例えば、リサイクルなどの回収または廃棄処理、1つまたは複数の化学製品への分解または溶解などの化学的処理であることもできる。したがって、工業プラントとは、化学プラント、プロセスプラント、薬剤プラント、石油および/または天然ガスなどの化石燃料処理施設、製油所、石油化学プラント、分留所などのうちの1つまたは複数である場合がある。工業プラントは、さらに、蒸留所、処理プラント、またはリサイクルプラントのうちのいずれかであることもできる。工業プラントは、さらに、上記の例またはそれらの類似のうちのいずれかの組合せであることもできる。
【0049】
インフラストラクチャは、熱交換器、分留塔などのカラム、炉、反応チャンバ、分留ユニット、貯蔵タンク、押出機、ペレタイザ、集塵機、ブレンダ、ミキサ、カッタ、硬化チューブ、気化器、フィルタ、ふるい、パイプライン、スタック、フィルタ、弁、アクチュエータ、ミル、トランスフォーマ、搬送システム、ブレーカ、機械、例えば、ヘビーデューティ回転機器、例えば、タービン、発電機、粉砕機、圧縮機、工業用ファン、ポンプ、コンベヤシステムなどの搬送エレメント、モータなどのうちのいずれか1つまたは複数などの機器またはプロセスユニットを含む場合がある。時には、これらのうちの2つ以上の組合せも機器であると考えられる場合がある。
【0050】
さらに、工業プラントは、典型的には、複数のセンサと、プラントにおけるプロセスに関連した少なくとも1つのパラメータまたはプロセスパラメータを制御するための少なくとも1つの制御システムとを含む。このような制御機能は、通常、センサのうちの少なくとも1つからの少なくとも1つの測定信号に応答して制御システムまたはコントローラによって行われる。プラントのコントローラまたは制御システムは、分散型制御システム(「DCS」)および/またはプログラマブルロジックコントローラ(「PLC」)として実施される場合がある。
【0051】
したがって、工業プラント、すなわち、上流工業プラントまたは下流工業プラントの機器またはプロセスユニットの少なくとも幾つかは、工業製品の1つまたは複数を製造するために監視および/または制御される場合がある。監視および/または制御は、さらに、1つまたは複数の製品の製造を最適化するために行われる場合がある。機器またはプロセスユニットは、1つまたは複数のセンサからの1つまたは複数の信号に応答して、DCSなどのコントローラを介して監視および/または制御される場合がある。加えて、プラントは、さらに、プロセスのうちの幾つかを制御するための少なくとも1つのプログラマブルロジックコントローラ(「PLC」)を含む場合がある。工業プラントは、典型的には、監視および/または制御目的のために工業プラントに分散させられる場合がある複数のセンサを含む場合がある。このようなセンサは、大量データを生じる場合がある。センサは、機器の一部であると考えられても、または考えられなくてもよい。したがって、化学的および/またはサービス製造などの製造は、データヘビー環境であることができる。したがって、工業プラントは、大量のプロセス関連データを生じる場合がある。
【0052】
当業者は、工業プラントが通常、異なるタイプのセンサを含むことが可能である計装類を含む場合があることを認めるであろう。センサは、1つもしくは複数のプロセスパラメータを測定するためにおよび/または機器もしくはプロセスユニットに関連した機器動作条件もしくはパラメータを測定するために使用される場合がある。例えば、センサは、パイプライン内の流量、タンク内のレベル、炉の温度、ガスの化学的組成などのプロセスパラメータを測定するために使用される場合があり、幾つかのセンサは、粉砕機の振動、ファンの速度、弁の開放、パイプラインの腐食、変圧器における電圧などを測定するために使用することができる。これらのセンサの間の差は、それらが感知するパラメータのみに基づくことはできず、さらに、それぞれのセンサが使用する感知原理である場合がある。感知するパラメータに基づくセンサの幾つかの例は、温度センサ、圧力センサ、光センサなどの放射センサ、流れセンサ、振動センサ、変位センサ、およびガスなどの特定の物質を検出するためのセンサなどの化学的センサを含む場合がある。センサが使用する感知原理の観点から異なるセンサの例は、例えば、圧電センサ、ピエゾ抵抗センサ、熱電対、容量性センサなどのインピーダンスセンサおよび抵抗センサなどである場合がある。
【0053】
工業プラントは、さらに、複数の工業プラントの一部である場合がある。本明細書において使用される「複数の工業プラント」という用語は、広い用語であり、当業者にとって通常かつ慣用的な意味が与えられ、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されない。この用語は、特に、制限なく、少なくとも1つの共通の工業的目的を有する少なくとも2つの工業プラントの複合体を指す場合がある。特に、複数の工業プラントは、物理的および/または化学的に結合された少なくとも2つ、少なくとも5つ、少なくとも10、またはさらに多くの工業プラントを含む場合がある。複数の工業プラントは、複数の工業プラントを形成する工業プラントが、それらの価値連鎖、抽出物および/または製品のうちの1つまたは複数を共有する場合があるように結合される場合がある。複数の工業プラントは、コンパウンド、コンパウンドサイト、フェアブントまたはフェアブントサイトと呼ばれる場合もある。さらに、最終製品への様々な中間製品を介して複数の工業プラントの価値連鎖製造は、様々な工業プラントにおけるなど、様々なロケーションに分散化される場合があるか、またはフェアブントサイトまたはケミカルパークに統合される場合がある。このようなフェアブントサイトまたはケミカルパークは、1つもしくは複数の工業プラントである場合があるまたは1つもしくは複数の工業プラントを含む場合があり、少なくとも1つの工業プラントにおいて製造された製品は、別の工業プラントのための原料として役立つことができる。
【0054】
化学製品を製造するための下流製造プロセスは、多数のステップを含むことができ、これらは、さらに、所望の特性を有する化学製品を得るために、様々なプロセスパラメータおよび/または動作条件が厳格に制御されることを伴う場合がある。
【0055】
本教示は、このような相互依存を反映する場合があるこれらの関連データの少なくとも幾つかの間の関係を確立することを可能にすることができるのみならず、目標として化学製品の一貫した品質を有する少なくとも下流製造プロセスの監視および/または適応可能な制御をも可能にすることができる。
【0056】
下流制御セッティングは、少なくとも部分的に上流計算ユニットを介して決定される場合がある。加えて、または代替的に、下流制御セッティングは、少なくとも部分的に下流計算ユニットを介して決定される場合がある。上流計算ユニットは、前駆体材料が下流工業プラントから製造されるまたは下流工業プラントへ供給される上流工業プラントまたは設備の一部である場合がある。
【0057】
下流工業プラントは、上流工業プラントからその投入材料または前駆体材料として受け取るものであることが認められるであろう。したがって、下流工業プラントは、上流工業プラントから離れている場合がある。前駆体材料は、下流工業プラントにおいて、適切な搬送媒体を介して、例えば、トラック、レール、ボートなどまたはさらにはそれらの組合せを介して提供される場合があり、例えば、搬送は、トラックを介して、次いで、ボートを介して行われる。搬送媒体は、パイプラインまたは同様のものなどの包囲された媒体である場合もある。幾つかの場合、前駆体材料は、上流プラントにおける製造中および/または輸送の前に一定の量でパケットにパッケージングされる場合があり、例えば、パケットは、それぞれ10kgの前駆体材料を含んでいる。追加的に、または代替的に、前駆体材料は、オクタビン、シリンダまたはボックスなどのあらゆるその他の適切な1つまたは複数の収容ユニットにおいて供給される場合がある。
【0058】
前駆体材料は、上流工業プラントにおいて貯蔵および/または製造され、次いで、化学製品の製造のために下流工業プラントへ搬送または輸送される場合がある。搬送または輸送は、前駆体材料のための注文に応答して行われる場合があり、前記注文は、前駆体材料を受け取るための下流プラントを介して発行される。したがって、下流プラントにおいて受け取られた前駆体材料は、下流化学製品の製造のために使用される場合がある。
【0059】
幾つかの場合、上流計算ユニットを介して決定される下流制御セッティングは、上流計算ユニットを介して、下流メモリ位置において提供される場合がある。利点は、制御セッティングが、前駆体材料を製造する上流工業プラントによってサービスとして直接提供することができるということができる。これが有益である場合があるシナリオは、上流プラントが、下流制御セッティングを予測および提供するためのインフラストラクチャおよび計算リソースを既に有し、これにより、これらのセッティングが、関連するオブジェクト識別子を介して前駆体材料の詳細に従って決定される場合があるということであることができる。したがって、セッティングは、上流プラントの顧客である場合がある下流プラントに提供することができ、これにより、セッティングは、下流プラントによるいかなる追加的計算労力もなくボックスから展開されることができる。したがって、下流プラントは、製造環境を修正することなくまたはあらゆる追加的計算リソースなしで化学製品の最適化された製造および改善された品質を提供することができる。
【0060】
このような場合、下流オブジェクト識別子は、上流計算ユニットを介して提供される場合がある。少なくとも1つの所望の下流性能パラメータは、例えば、下流プラントが化学製品のために必要とする品質尺度として、上流工業プラントまたは上流計算ユニットに提供される場合がある。したがって、下流工業プラントは、好ましくは1つまたは複数の下流性能パラメータを含む下流履歴データを、下流制御セッティングを決定するために上流工業プラントまたは上流計算ユニットに提供する場合がある。上流計算ユニットに提供されるデータの少なくとも幾つかは、下流プラントが保護しようとする敏感なデータである場合がある。これらは、例えば、上流プラントおよび下流プラントの両方によってアクセス可能な共有メモリ位置において提供される場合がある。共有メモリ位置は、プラント特定アクセスポリシーを介してアクセス可能なクラウドストレージである場合がある。アクセスポリシーは、プラントのどちらか、すなわち上流プラントまたは上流計算ユニットおよび下流プラントまたは下流計算がどの種類のアクセス権を有するかを決定する場合がある。アクセスポリシーは、また、暗号化および/または多要素認証などの認証手段を規定する場合がある。
【0061】
下流メモリ位置は、例えば、上流計算ユニットおよび下流計算ユニットの両方によってアクセス可能な共有メモリ位置またはレジストリであることも可能である。
【0062】
両プラントによってアクセス可能な隔離された共有レジストリを使用することによって、2つのプラントの間で隔離およびセキュリティを維持することができる。例えば、下流プラントまたは計算ユニットは、リードアクセスが提供される場合があり、これにより、下流計算ユニットは、下流制御システムまたは機器を外部アクセスに曝すことなくセッティングを読み出すまたはフェッチすることができる。
【0063】
同様に、下流履歴データおよび/または所望の性能パラメータが上流計算ユニットに提供されることが要求される場合、リードアクセスは上流計算ユニットに提供される場合がある。したがって、上流計算ユニットも下流計算ユニットも他のプラントへのアクセスを要求しない場合があり、これにより、それぞれのプラントのためのセキュリティの抜け穴を減じる。
【0064】
幾つかの場合、下流制御セッティングは、下流プラントへの前駆体材料の輸送に関連したタグを介して提供される場合がある。タグは、例えば、前駆体材料と一緒に下流プラントへ搬送される場合があるか、または別々に提供される場合がある。タグは、少なくとも1つの所望の性能パラメータを達成するという目的で、供給された前駆体を使用して、化学製品を製造するのに適した制御セッティングを検索するために下流工業プラントにおいて読み出すことができる電子チップおよび/または近距離無線通信(「NFC」)ベースタグおよび/またはデジタル式読み出し可能コードなどのハードウェアタグである場合がある。タグは、さらに、下流工業プラントのために提供された制限されたアクセスで暗号化される場合がある。
【0065】
幾つかの場合、下流計算ユニットを介して決定される下流制御セッティングは、前駆体データに依存する。前駆体データも、前に説明したように共有メモリ位置において提供される場合がある。
【0066】
1つの態様によれば、上流オブジェクト識別子は、上流工業プラントを介して提供される。例えば、上流オブジェクト識別子は、下流工業プラントにおいて供給される前駆体材料のための上流工業プラントにおいて受け取られた注文信号に応答して提供される。上流オブジェクト識別子は、例えば、上流計算ユニットを介して、注文信号に応答して自動的に提供される場合がある。注文信号は、どの上流計算ユニットが上流オブジェクト識別子を提供する場合があるかに応答して、上流工業プラントのエンタープライズリソースプランニング(「ERP」)システムを介して受け取られる場合がある。上流オブジェクト識別子は、投入材料データが加えられる場合があり、投入材料データは、前駆体材料の製造のために使用される投入材料の1つまたは複数の特性を示しており、上流オブジェクト識別子は、上流工業プラントにおいて投入材料のために提供される。上流オブジェクト識別子は、上流工業プラントの上流プロセスデータのサブセットが加えられる場合があり、このサブセットは、前駆体材料を製造するために投入材料が処理された上流プロセスパラメータおよび/または機器動作条件を含む。
【0067】
上流オブジェクト識別子は、好ましくは、上流計算ユニットに動作可能に結合された上流メモリストレージにおいて、上流インターフェースを介して提供される場合がある。上流メモリストレージおよび上流計算ユニットの一方または両方は、少なくとも部分的にクラウドプラットフォームまたはサービスの一部である場合がある。同様に、下流メモリストレージおよび下流計算ユニットの一方または両方は、少なくとも部分的にクラウドプラットフォームまたはサービスの一部である場合がある。
【0068】
上流オブジェクト識別子を提供する利点は、上流プロセスデータの関連する部分、またはサブセットが、前駆体の製造のために使用される特定の投入材料に加えられるということであることができる。これは、投入材料の特性のみならず、特定の前駆体が製造される条件も、上流オブジェクト識別子内にキャプチャされることができ、これにより、前駆体材料の1つまたは複数の特性をより良く規定することを意味する。1つまたは複数の上流オブジェクト識別子が提供される方式は、下流オブジェクト識別子のために説明したような代替例と同様であることができる。したがって、態様は、上流および下流識別子の両方について繰り返されない場合がある。これにより、当業者は、1つからの態様が、本明細書に述べることを明示的に要求することなく他方に適用する場合があることを認めるであろう。例えば、上流工業プラントは、上流機器ゾーンも含む場合があり、下流プロセスデータのために説明したものと同様のものであり、それぞれのゾーンからの上流プロセスデータは、キャプチャされ、同様の形式で1つまたは複数の上流オブジェクト識別子に加えられる場合もある。全体的な利点は、基本的に完全なトレーサビリティならびに品質追跡および/または制御が、オブジェクト識別子を介して投入材料から最終製品、すなわち化学製品まで提供することができるということである。また、ゾーン存在の態様は、それぞれのオブジェクト識別子に加えられたプロセスデータのそれぞれのサブセットを決定するために上流工業プラントまたは機器において使用される場合がある。
【0069】
1つの態様によれば、下流オブジェクト識別子は、上流オブジェクト識別子からのデータの少なくとも一部が加えられる。このような下流オブジェクト識別子は、加えられた下流オブジェクト識別子と呼ばれる場合がある。したがって、加えられた下流オブジェクト識別子、または上流オブジェクト識別子からのデータの少なくとも一部が加えられた下流オブジェクト識別子は、製造チェーンのより全体的なピクチャを提供することができ、したがって、投入材料から前駆体まで包含するオブジェクト識別子によって少なくとも参照または封入されたより完全なデータセットを生じることができ、これは、下流制御セッティングのより良い決定を可能にすることができる。例えば、上流オブジェクト識別子に加えられた上流リアルタイムプロセスデータのサブセットも、下流オブジェクト識別子に少なくとも参照される。加えて、または代替的に、サンプリングを使用して決定されたかつ/または上流計算ユニットを介して計算されたあらゆる1つまたは複数の上流性能パラメータも、上流オブジェクト識別子を介して下流オブジェクト識別子に提供される場合がある。
【0070】
幾つかの場合、下流制御セッティングの少なくとも幾つかは、下流計算ユニットを介して決定される。このような場合、上流オブジェクト識別子を介して提供される上流リアルタイムプロセスデータのサブセットは、下流制御セッティングを決定するために下流計算ユニットによって使用される場合がある。例えば、上流計算ユニットは、前に説明したものと同様に、共有メモリストレージにおいて上流オブジェクト識別子を提供する場合がある。下流オブジェクト識別子が、共有メモリストレージにおいて上流計算ユニットを介して提供されることも可能である。したがって、下流計算ユニットは、下流制御セッティングのセットを決定するために下流オブジェクト識別子を使用する場合がある。
【0071】
このようなアプローチの利点は、上流工業プラントが、下流履歴データへのアクセスを有する必要がないということであることができる。下流プラントが、制御セッティングのローカル決定を行うことを決定する場合があることにより、情報保護およびセキュリティの懸念がある場合がある。したがって、情報またはデータは、下流プラントによってより良く保護することができる。下流オブジェクト識別子を直接提供する代わりに、上流計算ユニットは上流オブジェクト識別子を提供し、この上流オブジェクト識別子は、次いで、下流オブジェクト識別子を生成するために下流計算ユニットによって使用されることが認められるであろう。当業者は、このケースが、上流計算ユニットによる下流オブジェクト識別子の提供と同等である場合があることに気づくであろう。
【0072】
幾つかの場合、上流計算ユニットは、下流履歴データに基づいて下流制御セッティングのセットを決定するために使用可能であるまたは適している予測および/または制御ロジックを封入した、下流オブジェクト識別子または上流オブジェクト識別子を提供する場合がある。下流工業プラントのあらゆる情報保護の懸念を軽減するために、予測および/または制御ロジックは、例えば、下流計算ユニットを介して、下流工業プラントにおいて訓練される場合がある。
【0073】
予測および/または制御ロジックは、下流履歴データを使用して訓練された場合に下流データドリブンモデルを生じる場合がある予測モデルを含む場合がある。「データドリブンモデル」は、データ、この場合は下流履歴データから少なくとも部分的に導き出されたモデルを指す。生理化学的法則を使用して純粋に導き出される厳密なモデルとは対照的に、データドリブンモデルは、生理化学的法則によってモデル化することができない関係を記述することを可能にすることができる。データドリブンモデルの使用は、例えば、それぞれの製造プロセス内で生じるプロセスに関連した、生理化学的法則からの式を解くことなく、関係を記述することを可能にすることができる。これは、計算能力を減じかつ/または速度を高める可能性がある。加えて、上流工業プラントは、下流工業プラントにおいて使用可能なこのようなモデルを提供するために下流製造の詳細を知る必要がない場合がある。
【0074】
データドリブンモデルは、回帰モデルである場合がある。データドリブンモデルは、数学モデルである場合がある。数学モデルは、提供された性能特性と、判定された性能特性との間の関係を関数として記述する場合がある。
【0075】
幾つかの場合、予測および/もしくは制御ロジックまたは予測モデルは、上流データドリブンモデル、すなわち、上流工業プラントから上流履歴データを使用して訓練されたモデルを含む場合がある。訓練された予測および/もしくは制御ロジック、または訓練された予測モデルは、上流製造詳細を下流プラントに曝す必要なく下流プラントにおいてより全体的な予測を提供することができる。
【0076】
したがって、この文脈において、データドリブンモデル、好ましくはデータドリブン機械学習(「ML」)モデルまたは単にデータドリブンモデルは、それぞれの製造プロセスに関連した反応速度または生理化学的プロセスを反映するために、上流履歴データまたは下流履歴データなどのそれぞれの訓練データセットに従ってパラメータ化される訓練された数学モデルを指す。未訓練数学モデルは、反応速度または生理化学的プロセスを反映しないモデルを指し、例えば、未訓練数学モデルは、実験的観察に基づく科学的一般化を提供する物理法則から導き出されない。したがって、運動学的または生理化学的特性は、未訓練数学モデルに固有ではない場合がある。未訓練モデルはこのような特性を反映しない。それぞれの訓練データセットを用いたフィーチャエンジニアリングおよび訓練は、未訓練数学モデルのパラメータ化を可能にする。このような訓練の結果は、単にデータドリブンモデル、好ましくはデータドリブンMLモデルであり、これは、訓練プロセスの結果、好ましくは単に訓練プロセスの結果として、それぞれの製造プロセスに関連した反応速度または生理化学的プロセスを反映する。
【0077】
予測および/または制御ロジックは、さらに、ハイブリッドモデルである場合がある。ハイブリッドモデルは、第一原理部分、いわゆるホワイトボックスおよび前に説明したようなデータドリブン部分、いわゆるブロックボックスを含むモデルを指す場合がある。予測および/または制御ロジックは、ホワイトボックスモデルおよびブラックボックスモデルの組合せならびに/またはグレーボックスモデルを含む場合がある。ホワイトボックスモデルは、生理化学的法則に基づく場合がある。生理化学的法則は、第一原理から導き出される場合がある。生理化学的法則は、化学反応速度、質量保存の法則、運動量およびエネルギ、任意次元における粒子集団のうちの1つまたは複数を含む場合がある。ホワイトボックスモデルは、それぞれの製造プロセスまたはその部分を支配する生理化学的法則に従って選択される場合がある。ブラックボックスモデルは、下流履歴データおよび/または上流履歴データなどの履歴データに基づく場合がある。ブラックボックスモデルは、機械学習、ディープラーニング、ニューラルネットワーク、またはその他の形式の人工知能のうちの1つまたは複数を使用することによって構築される場合がある。ブラックボックスモデルは、訓練データセットと試験データとの間の良好な適合を生じるあらゆるモデルである場合がある。グレーボックスモデルは、モデルを完成させるために部分的な理論構造をデータと組み合わせるモデルである。
【0078】
訓練されたモデルは、直列または並列のアーキテクチャを含む場合がある。直列アーキテクチャでは、ホワイトボックスモデルの出力は、ブラックボックスモデルのための入力として使用される場合があるか、またはブラックボックスモデルの出力は、ホワイトボックスモデルのための入力として使用される場合がある。並列アーキテクチャでは、ホワイトボックスモデルおよびブラックボックスモデルの組み合わされた出力が、出力の重ね合わせなどによって決定される場合がある。非限定的な例として、第1のサブモデルは、分析ホワイトボックスモデルと、それぞれの履歴データにおいて訓練されたブラックボックスコレクタとして働くデータドリブンモデルとのハイブリッドモデルに基づいて、性能パラメータのうちの少なくとも1つおよび/または制御セッティングの少なくとも幾つかを予測する場合がある。この第1のサブモデルは、直列アーキテクチャを有する場合があり、ホワイトボックスモデルの出力がブラックボックスモデルのための入力であるか、または第1のサブモデルは並列アーキテクチャを有する場合がある。ホワイトボックスモデルの予測された出力は、履歴データの一部を含む試験データセットと比較される場合がある。計算されたホワイトボックス出力と試験データとの間のエラーは、データドリブンモデルによって学習されることができ、次いで、任意の予測のために適用することができる。第2のサブモデルは、並列アーキテクチャを有する場合がある。その他の例も可能であることができる。
【0079】
本明細書において使用される場合、「機械学習」または「ML」という用語は、明白にプログラムすることなく機械がデータからタスクを「学習」することを可能にする統計的方法を指す場合がある。機械学習技術は、「従来の機械学習」-手動で特徴量を選択し、次いで、モデルを訓練するワークフローを含む場合がある。従来の機械学習技術の例は、判定木、サポートベクターマシン、およびアンサンブル法を含む場合がある。幾つかの例において、データドリブンモデルは、データドリブンディープラーニングモデルを含む場合がある。ディープラーニングは、人間の脳の神経経路に緩くモデル化された機械学習のサブセットである。ディープは、入力層と出力層との間の多数の層を指す。ディープラーニングにおいて、アルゴリズムは、どの特徴量が有効であるかを自動的に学習する。ディープラーニング技術の例は、畳み込みニューラルネットワーク(「CNN」)、長-短期記憶(「LSTM」)などの回帰型ニューラルネットワーク、およびディープQネットワークを含む場合がある。
【0080】
1つの態様によれば、予測および/または制御ロジックは、下流制御セッティングの計算が改善されるように予測および/または制御ロジックを修正するために使用可能な修正データを生成するように構成されている。
【0081】
別の態様によれば、訓練された予測、すなわち予測および/もしくは制御ロジックは、下流工業プラントにおいて訓練される場合があり、ならびに/または修正データは上流工業プラントに提供される。訓練された予測および/または制御ロジックおよび/または修正データは、例えば、上流計算ユニットに提供される、下流オブジェクト識別子またはその一部を介して提供される場合がある。その目的のために、同じ共有されたメモリストレージまたは別の適切な媒体が使用される場合がある。このアプローチの利点は、下流プラントの製造データが、さらに上流製造プロセスを改善する目的のために上流プラントから保護されており、訓練された予測および/または制御ロジックが加えられた下流オブジェクト識別子が使用される場合があるということであることができる。したがって、2つのプラントの間のデータ保護が改善される。
【0082】
別の利点は、訓練された予測および/または制御ロジックを上流工業プラント、例えば、上流計算ユニットに提供する下流プラントのデータセキュリティに配慮しながら、それらの製造プロセスを改善するために他の1つまたは複数の下流プラントにサービスとして、訓練された予測および/または制御ロジックを提供することもできるということであることができる。
【0083】
予測および/または制御ロジックは、さらに、ロジックが権限のないアクセスまたは読み出しから保護されるように、保護されたコンテナに難読化、例えば、封入される場合もある。このような場合の利点は、権限のない当事者に曝されたロジックを提供するというセキュリティの懸念を減じながら、上流プラントが、下流プラントのための製造を改善するためのサービスを提供することができるということであることができる。さらに、下流プラントは、社内でソリューションを開発することを要求せず、下流履歴データを曝す必要がないが、依然として、オブジェクト識別子を介して提供される下流製造および上流工業プラントによって提供されるロジックの改善を提供する。潜在的に両エンドにおける製造の改善を提供しながら、上流プラントおよび下流プラントの両方のためのデータセキュリティを改善することができる。
【0084】
「製造プロセス」、例えば、下流製造プロセスは、前駆体材料において使用された場合または前駆体材料に適用された場合に下流化学製品を提供するあらゆる工業プロセスを指す。したがって、化学製品は、化学製品を生じるために前駆体を直接に、または1つまたは複数の派生材料を介して、下流製造プロセスを介して変換することによって提供される。同様に、上流製造プロセスは、投入材料において使用された場合または投入材料に適用された場合に前駆体を提供するあらゆる工業プロセスを指す。
【0085】
したがって、製造プロセスは、少なくとも部分的に1つもしくは複数の化学的プロセス、または少なくとも部分的に前駆体材料から化学製品を得るために使用される複数のプロセスの組合せを伴う、あらゆる適切な製造または処理プロセスであることができる。製造プロセスは、さらに、化学製品のパッケージングおよび/またはスタッキングを含む場合がある。したがって、製造プロセスは、化学的および物理的プロセスの組合せである場合がある。
【0086】
「生産する」、「製造する」または「処理する」という用語は、それぞれの製造プロセスの文脈において互換的に使用される。これらの用語は、前駆体材料のうちの1つまたは複数を生じる投入材料への化学的プロセスを含む工業プロセスのあらゆる種類の適用、および1つまたは複数の化学製品を生じる前駆体への化学的プロセスを含む工業プロセスのあらゆる種類の適用を包含する場合がある。
【0087】
本開示における「化学製品」は、化学的、薬学的、栄養、化粧、もしくは生物学的製品、またはさらにそれらの組合せのいずれかなどのあらゆる工業製品を指す場合がある。化学製品は、全体的に天然成分からなる場合があるか、または少なくとも部分的に1つもしくは複数の合成成分を含む場合がある。化学製品の幾つかの非限定的な例は、有機もしくは無機組成物、モノマー、ポリマー、発泡体、殺虫剤、除草剤、肥料、餌、栄養製品、前駆体、薬剤もしくは治療製品、またはそれらの成分もしくは活性成分のうちのいずれか1つもしくは複数である。好ましくは、化学製品は、エンドユーザまたは消費者によって使用可能な製品、例えば、靴、化粧品または薬品である。
【0088】
「前駆体材料」または単に「前駆体」は、さらなる1つまたは複数の化学製品を形成するために使用可能な製品または物質を指す。前駆体は、あらゆる形態で、例えば、固体、半固体、ペースト、液体、エマルション、溶液、ペレット、顆粒、ビード、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)粒子などの粒子、または粉末の形態で提供される場合がある。幾つかの非限定的な例として、場合によって化学製品は、合成フォームから形成されたソール、ヘルメット、パッド、またはタイヤである場合がある。幾つかの非限定的な例として、このような場合における前駆体の少なくとも1つは、例えば、ビードまたは粒子の形態における、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)および/または膨張TPU(「ETPU」)であることができる。
【0089】
これにより、言うまでもなくそこからそれらが製造された特定の出発物質へのトレーサビリティを確立するために、前駆体および/または化学物質は、特にそれらの製造プロセスの間にトレースまたは追跡することが困難である可能性がある。投入材料は、上流プラントにおいて製造された、前駆体のための出発物質と呼ぶことができることが認められるであろう。同様に、前駆体は、下流プラントにおいて製造された、化学製品のための出発物質と呼ぶことができる。例として、製造中、投入材料は他の材料と混合される場合がある、および/または投入材料は、例えば、異なる方式で処理するために、製造チェーンに沿って異なる部分に分割される場合がある。投入材料は、前駆体材料に変換される前に2回以上、例えば、1つまたは複数の派生材料に変換される場合がある。同様に、前駆体も、下流製造プロセス中に複数回混合および/または分割および/または変換される場合がある。さらに、前駆体の異なる部分は、異なる下流工業プラントまたは顧客へ輸送される場合がある。例えば、前駆体は、分割され、異なるパッケージにパッケージングされる場合がある。幾つかの場合、パッケージングされた前駆体またはそのポーションにラベル付けることが可能である場合があるが、特定の前駆体またはそのポーションを製造するための要因となった製造プロセスの詳細を添付することは困難である場合がある。同様の問題が、下流製造チェーンにおいても存在する場合がある。多くの場合、投入材料および/または前駆体および/または化学製品は、それらに物理的にラベル付けすることが困難な形態である場合がある。したがって、本教示は、このような制限を克服するためにも1つまたは複数のオブジェクト識別子を使用することができる方法を提供する。
【0090】
製造プロセス、すなわち、上流製造プロセスおよび/または下流製造プロセスは、連続的である場合があり、キャンペーンにおいて、例えば、回復を必要とする触媒に基づく場合、バッチ化学製造プロセスである場合がある。これらの製造タイプの間の1つの主な相違は、製造中に生成されるデータにおいて生じる周波数である。例えば、バッチプロセスにおいて、製造データは、製造プロセスの開始から最後のバッチまで、そのランにおいて製造された異なるバッチにわたって延びている。連続的セッティングにおいて、データはより連続的であり、製造の動作における潜在的なシフトおよび/またはメンテナンス・ドリブン・ダウンタイムを含む。
【0091】
「プロセスデータ」は、例えば、1つまたは複数のセンサを介するそれぞれの製造プロセス中に測定された値、例えば、数値またはバイナリ信号値を含むデータを指す。プロセスデータは、プロセスパラメータおよび/または機器動作条件のうちの1つまたは複数の時系列データである場合があり、例えば、下流プラントの場合、下流時系列データである場合がある。好ましくは、それぞれのプロセスデータは、それらのそれぞれのプラントのプロセスパラメータおよび/または機器動作条件の時間情報、例えば、データは、プロセスパラメータおよび/または機器動作条件に関連したデータポイントのうちの少なくとも幾つかのためのタイムスタンプを含む。より好ましくは、プロセスデータは、時間-スペースデータ、すなわち、時間データおよび物理的に離間した1つまたは複数の機器ゾーンに関連する位置またはデータを含み、これにより、時間-スペース関係をデータから導き出すことができる。時間-スペース関係は、例えば、任意の時点の投入材料の位置を計算するために使用することができる。
【0092】
「リアルタイムプロセスデータ」は、基本的に特定の材料、例えば、前駆体が、それぞれの製造プロセスを使用して処理されている間に測定されるまたは移行状態にあるプロセスデータを指す。例えば、投入材料のためのリアルタイムプロセスデータまたは上流リアルタイムプロセスデータは、上流製造プロセスを使用する投入材料の処理と同じ時間からのまたはその付近の上流プロセスデータである。同様に、前駆体材料のためのリアルタイムプロセスデータまたは下流リアルタイムプロセスデータは、下流製造プロセスを使用する前駆体材料の処理と同じ時間からのまたはその付近の下流プロセスデータである。
【0093】
ここでは、同じ時間付近とは、時間遅延がほとんどまたは全くないことを意味する。「リアルタイム」という用語は、コンピュータおよび計装の技術分野において理解される。特定の非限定的な例として、それぞれの材料において行われるそれぞれの製造プロセス中の製造発生と、測定されるまたは読み出されるプロセスデータとの間の時間遅延は、15s未満、特に10s以下、より具体的には5s以下である。高スループット処理の場合、遅延は、1秒未満、または数ミリ秒未満などである。したがって、リアルタイムデータは、それらのそれぞれのプラントにおけるそれぞれの材料の処理中に生成される時間依存プロセスデータの流れとして理解することができる。「プロセスパラメータ」は、製造プロセス関連変数のいずれか、例えば、温度、圧力、時間、レベルなどのうちのいずれか1つまたは複数を指す場合がある。
【0094】
「投入材料」は、前駆体を製造するために使用される少なくとも1つの原料または未処理材料を指す場合がある。投入材料は、あらゆる有機もしくは無機物質またはさらにはそれらの組合せである場合がある。したがって、投入材料は、さらに、混合物である場合があるまたはあらゆる形式における複数の有機および/または無機成分を含む場合がある。幾つかの場合、投入材料は、さらに、例えば、上流機器ゾーンから受け取られたまたは搬送された、派生材料または中間処理材料である場合がある。投入材料の幾つかの非限定的な例は、ポリエーテルアルコール、ポリエーテルジオール、ポリテトラヒドロフラン、アジピン酸およびブタン-1,4-ジオールなどに基づくポリエステルジオール、イソシアネート、フィラー材料-有機または無機材料、例えば、木材粉末、デンプン、亜麻、大麻、ラミー、ジュート、サイザル、綿、セルロースまたはアラミド繊維、ケイ酸塩、バライト、ガラス球、ゼオライト、金属または金属酸化物、タルク、チョーク、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、石英粉末、アエロジル、クレー、マイカまたは珪灰石、鉄粉末、ガラス球、ガラスファイバまたは炭素繊維、のうちのいずれか1つまたは複数であることができる。
【0095】
さらなる非限定的な例として、投入材料は、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)を得るために製造プロセスの少なくとも一部に曝されるメチレンジフェニルジイソシアネート(「MDI」)および/またはポリテトラヒドロフラン(「PTHF」)である場合がある。したがって、投入材料は、熱可塑性ポリウレタンを得るために1つまたは複数の機器ゾーンにおいて化学的に処理され、熱可塑性ポリウレタンは、幾つかの場合、派生材料および/または前駆体材料である場合があることが認められるであろう。派生材料は、この場合、投入材料から発生するが、前駆体を得るためにさらに処理される材料を意味する。例えば、熱可塑性ポリウレタンは、膨張熱可塑性ポリウレタンまたはETPUを得るために1つまたは複数のさらなる機器ゾーンにおいてさらに処理される場合がある。膨張熱可塑性ポリウレタンは、例えば、下流プラントに提供される前駆体材料である場合がある。しかしながら、幾つかの場合、熱可塑性ポリウレタン自体が、下流プラントへ送られる前駆体である場合もある。化学製品は、例えば、少なくとも部分的にTPUまたはETPUを使用して製造される靴である場合がある。
【0096】
「投入材料データ」は、投入材料の1つまたは複数の特性または性質に関連するデータを指す。したがって、投入材料データは、投入材料の量などの性質を示す値のうちのいずれか1つまたは複数を含む場合がある。代替的にまたは加えて、量を示す値は、投入材料の充填度および/または質量流量である場合がある。値は、好ましくは、上流機器に動作可能に結合されたまたは含まれた1つまたは複数のセンサを介して測定される。代替的にまたは加えて、投入材料データは、投入材料に関する試料/試験データを含む場合がある。代替的にまたは加えて、投入材料データは、密度、濃度、純度、pH、組成、粘度、温度、重量、体積などのうちのいずれか1つまたは複数などの、投入材料のあらゆる物理的および/または化学的特性を示す値を含む場合がある。
【0097】
「前駆体データ」または「前駆体材料データ」は、前駆体材料の1つまたは複数の特徴または特性に関するデータを指す。したがって、前駆体材料データは、前駆体材料の、量などの特性を示す値のうちのいずれか1つまたは複数を含む場合がある。代替的に、または加えて、量を示す値は、前駆体材料の充填度および/または質量流量である場合がある。値のうちの少なくとも幾つかは、下流機器に動作可能に結合されたまたは下流機器に含まれた1つまたは複数のセンサを介して測定される場合がある。値のうちの幾つかは、上流プラントまたは上流計算ユニットによって、例えば、上流オブジェクト識別子を介して、または幾つかの場合には下流オブジェクト識別子自体を提供することによって提供される場合がある。代替的に、または加えて、前駆体データは、前駆体材料に関連する試料/試験データを含む場合がある。代替的に、または加えて、前駆体材料データは、前駆体材料のあらゆる物理的および/または化学的特徴、例えば、密度、濃度、純度、pH、組成、粘度、温度、重量、体積などのうちのいずれか1つまたは複数を示す値を含む場合がある。幾つかの場合、前駆体データは、上流オブジェクト識別子からのデータの一部を含む場合があり、例えば、前駆体データは、したがって、上流オブジェクト識別子への参照またはリンク、またはさらには幾つかの場合には上流プロセスデータのサブセットの少なくとも一部を含む場合がある。
【0098】
「オブジェクト識別子」は、そのそれぞれの投入材料のためのデジタル識別子を指す。例えば、上流オブジェクト識別子は投入材料のために提供されている。同様に、履歴上流オブジェクト識別子は、より前に処理された特定の履歴投入材料に対応する。オブジェクト識別子は、好ましくは、計算ユニットを介して生成される。オブジェクト識別子の提供または生成は、それぞれの機器によって、または例えば上流機器からのトリガイベントまたは信号に応答して、トリガされる場合がある。オブジェクト識別子は、計算ユニットに動作可能に結合されたメモリストレージまたはメモリストレージエレメントに記憶される場合がある。例えば、上流メモリストレージは上流計算ユニットに動作可能に結合されている。同様に、下流メモリストレージは下流計算ユニットに動作可能に結合されている。幾つかの場合、説明したように、上流計算ユニットおよび下流計算ユニットの両方に動作可能に結合されたまたはアクセス可能な、共有メモリストレージが提供される場合もある。幾つかの場合、共有メモリストレージは、上流メモリストレージの一部であるかもしくは少なくとも部分的に上流メモリストレージの一部であり、および/または共有メモリストレージは、下流メモリストレージの一部であるかもしくは少なくとも部分的に下流メモリストレージの一部である場合がある。メモリストレージは、少なくとも1つのデータベースを含む場合がある、または少なくとも1つのデータベースの一部である場合がある。したがって、オブジェクト識別子は、さらに、データベースの一部である場合がある。オブジェクト識別子があらゆる適切な形式を介して提供される場合がある、例えば、送信される、受信される場合があるまたは生成される場合がある。
【0099】
それぞれの「計算ユニット」、すなわち、上流計算ユニットまたは下流計算ユニットは、1つもしくは複数の処理コアを有する、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラなどの処理手段もしくはコンピュータプロセッサを含む場合があるまたは処理手段もしくはコンピュータプロセッサである場合がある。幾つかの場合、計算ユニットは、少なくとも部分的に機器の一部である場合があり、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(「PLC」)もしくは分散型制御システム(「DCS」)などのプロセスコントローラである場合があり、および/または少なくとも部分的にリモートサーバである場合がある。したがって、それぞれの計算ユニットは、それぞれの機器に動作可能に接続された1つまたは複数のセンサから1つまたは複数の入力信号を受信する場合がある。それぞれの計算ユニットがそれぞれの機器の一部ではない場合、それぞれの計算ユニットは、それぞれの機器から1つまたは複数の入力信号を受信する場合がある。代替的に、または加えて、それぞれの計算ユニットは、それぞれの機器に動作可能に結合された1つまたは複数のアクチュエータまたはスイッチを制御する場合がある。
【0100】
1つまたは複数のアクチュエータまたはスイッチは動作可能に、機器の一部である場合もある。「メモリストレージ」または「メモリストレージエレメント」、例えば、上流メモリストレージおよび/または下流メモリストレージは、適切なストレージ媒体におけるデータの形式の情報の記憶のためのデバイスまたはシステムを指す場合がある。好ましくは、メモリストレージは、コンピュータプロセッサを介して読取可能な機械可読の、例えばデジタルデータであるデジタル形式の情報を記憶するのに適したデジタルストレージである。したがって、メモリストレージは、コンピュータプロセッサによって読取可能デジタルメモリストレージデバイスとして実現される場合がある。メモリストレージは、少なくとも部分的にクラウドサービスにおいて実装される場合がある。さらに好ましくは、デジタルメモリストレージデバイスにおけるメモリストレージは、コンピュータプロセッサを介して操作される場合もある。例えば、デジタルメモリストレージデバイスに記録されたデータのあらゆる部分は、コンピュータプロセッサによって書き込まれるかつ/または消去されるかつ/または部分的または全体的に新たなデータで上書きされる場合がある。
【0101】
それぞれの「計算ユニット」、すなわち、上流計算ユニットまたは下流計算ユニットは、1つまたは複数の処理コアを有する、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラなどの処理手段もしくはコンピュータプロセッサを含む場合があるか、または処理手段もしくはコンピュータプロセッサである場合がある。幾つかの場合、それぞれの計算ユニットは、少なくとも部分的にそれぞれの機器の一部である場合があり、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(「PLC」)もしくは分散型制御システム(「DCS」)などのプロセスコントローラである場合があり、かつ/または少なくとも部分的にリモートサーバおよび/もしくはクラウドサービスである場合がある。したがって、それぞれの計算ユニットは、それぞれの機器または複数の機器ゾーンに動作可能に接続された1つまたは複数のセンサから1つまたは複数の入力信号を受信する場合がある。計算ユニットが機器の一部ではない場合、計算ユニットは、機器または機器ゾーンから1つまたは複数の入力信号を受信する場合がある。代替的にまたは加えて、計算ユニットは、機器に動作可能に結合された1つまたは複数のアクチュエータまたはスイッチを制御する場合がある。1つまたは複数のアクチュエータまたはスイッチは、動作可能に、さらに、機器の一部である場合がある。計算ユニットは、機器または複数の機器ゾーンに動作可能に結合されている。
【0102】
したがって、それぞれの計算ユニットは、例えば、それぞれの機器動作条件のうちの1つまたは複数を操作することを介して、アクチュエータまたはスイッチおよび/またはエンドエフェクタユニットのうちのいずれか1つまたは複数を制御することによって、それぞれの製造プロセスに関連する1つまたは複数のパラメータを操作することができる場合がある。制御は、好ましくは、機器から検索された1つまたは複数の信号に応答して行われる。
【0103】
この文脈における「エンドエフェクタユニット」または「エンドエフェクタ」は、機器の周囲の環境と相互作用するという目的を有する、それぞれの機器の一部であるかつ/または機器に動作可能に接続されている、したがって、機器および/またはそれぞれの計算ユニットを介して制御可能なデバイスを指す。幾つかの非限定的な例として、エンドエフェクタは、環境、例えば、投入材料および/または前駆体および/または化学製品と相互作用するように設計された、カッタ、グリッパ、噴霧器、混合ユニット、押出機先端部もしくはそれらの同様のもの、またはさらにそれらのそれぞれの部分である場合がある。
【0104】
「特性」は、それぞれの材料、すなわち、投入材料または前駆体材料または派生材料に関して言えば、それぞれの材料の量、バッチ情報、品質を明示する1つまたは複数の値、例えば、純度、濃度、粘度、または材料のあらゆる特徴のうちのいずれか1つまたは複数を指す場合がある。
【0105】
「インターフェース」は、ハードウェアおよび/またはソフトウェア構成要素、少なくとも部分的にそれぞれの機器の一部、またはオブジェクト識別子が提供される別の計算ユニットの一部である場合がある。例えば、インターフェースは、アプリケーションプログラミングインターフェース(「API」)である場合がある。幾つかの場合、インターフェースは、例えば、ハードウェア構成要素および/またはネットワークにおけるプロトコルレイヤの2つのピースをインターフェースするために、少なくとも1つのネットワークに接続される場合もある。例えば、インターフェースは、それぞれの機器とそれぞれの計算ユニットとの間のインターフェースである場合がある。下流プラントの場合、下流インターフェースは、下流機器と下流計算ユニットとの間のインターフェースである場合がある。同様に、上流プラントの場合、上流インターフェースは、上流機器と上流計算ユニットとの間のインターフェースである場合がある。幾つかの場合、それぞれの機器は、それぞれのネットワークを介してそれらのそれぞれの計算ユニットに通信可能に結合される場合がある。したがって、インターフェースは、さらにネットワークインターフェースである場合があるか、またはネットワークインターフェースを含む場合がある。幾つかの場合、インターフェースは、さらに、接続性インターフェースである場合があるか、または接続性インターフェースを含む場合がある。
【0106】
「ネットワークインターフェース」は、ネットワークとの動作可能な接続を許容する、デバイスまたは1つもしくは複数のハードウェアおよび/もしくはソフトウェア構成要素のグループを指す。
【0107】
「接続性インターフェース」は、伝送または交換または信号またはデータなどの通信を確立するためのソフトウェアおよび/またはハードウェアインターフェースを指す。通信は、有線である場合がある、または無線である場合がある。接続性インターフェースは、好ましくは、1つもしくは複数の通信プロトコルに基づくまたは1つもしくは複数の通信プロトコルをサポートする。通信プロトコルは、無線プロトコルである場合があり、例えば、Bluetooth(登録商標)もしくはWiFiなどの短距離通信プロトコル、またはセルラーもしくはモバイルネットワーク、例えば、第二世代セルラーネットワークすなわち(「2G」)、3G、4G、Long-Term Evolution(「LTE」)、もしくは5Gなどの長距離通信プロトコルである場合がある。代替的にまたは加えて、接続性インターフェースは、さらに、専用短距離または長距離プロトコルに基づく場合がある。接続性インターフェースは、あらゆる1つまたは複数の標準および/または専用プロトコルをサポートする場合がある。接続性インターフェースおよびネットワークインターフェースは、同じユニットである場合があるまたは異なるユニットである場合がある。
【0108】
本明細書に説明される「ネットワーク」は、あらゆる適切な種類のデータ伝送媒体、有線、無線、またはそれらの組合せである場合がある。特定の種類のネットワークは、本教示の範囲または一般論に限定されない。したがって、ネットワークは、少なくとも1つの通信終点と別の通信終点との間のあらゆる適切な任意の相互接続を指すことができる。ネットワークは、1つまたは複数の分散ポイント、ルータまたはその他のタイプの通信ハードウェアを含む場合がある。ネットワークの相互接続は、物理的にハードな配線、光学的および/または無線ラジオ周波数方法によって形成される場合がある。ネットワークは、特に、配線によって完全にまたは部分的に形成された物理的ネットワーク、例えば、ファイバ光学ネットワークもしくは導電性ケーブルによって完全にもしくは部分的に形成されたネットワークまたはそれらの組合せである場合があるあるいはそれらを含む場合がある。ネットワークは、少なくとも部分的にインターネットを含む場合がある。上流プラントにおけるネットワークの少なくとも一部、または上流ネットワークは、下流プラントにおけるネットワークの少なくとも一部、または下流ネットワークから隔離されている場合がある。さらに、上流ネットワークおよび下流ネットワークは、少なくとも部分的に非公共ネットワークである場合があり、すなわち、インターネットなどの公共ネットワークから隔離されている場合がある。隔離によって、前記ネットワークは、各プラントにおける1つまたは複数のファイアウォールなどのセキュリティ手段を使用して隔離される場合があることが理解されるであろう。代替的に、または加えて、1つまたは両方のプラントにおいてネットワークおよび製造環境を保護するためのその他のセキュリティおよび隔離手段が配置される場合がある。
【0109】
説明したように、幾つかの場合、プロセスデータのそれぞれのサブセットは、それぞれのオブジェクト識別子に加えられる。例えば、投入材料が上流機器によって処理される上流リアルタイムプロセスデータのサブセットは、全体が上流オブジェクト識別子に含まれるか、またはその一部が加えられるもしくはセーブされる。したがって、上流機器または機器ゾーンにおいて投入材料を処理するために関連した上流リアルタイムプロセスデータのスナップショットが、利用可能にされるまたは上流オブジェクト識別子とリンクされる。リアルタイムプロセスデータの全体がセーブされるかどうか、またはその一部が、例えば、プロセスデータのサブセットのどの部分がオブジェクト識別子に加えられるべきであるかに関する上流計算ユニットを介する決定に基づく場合がある。同様に、前駆体材料が下流機器によって処理される下流リアルタイムプロセスデータのサブセットの全体が下流オブジェクト識別子に含まれるか、またはその一部が加えられるもしくはセーブされる。
【0110】
前に説明したものに代えて、もしくは加えて、または加えて、決定は、例えば、結果的に生じる前駆体または化学製品の所望の特性に対する影響を有するよりもそれぞれのプロセスパラメータおよび/または機器動作条件の最も支配的なものに基づいて行われる場合がある。これは、ある場合、特に、関連するリアルタイムプロセスデータのボリュームが大きい場合に有利である可能性があり、したがって、それぞれのオブジェクト識別子に大量のデータを加えるのではなく、それぞれの計算ユニットは、それぞれのリアルタイムプロセスデータのどのサブセットが加えられるべきかを決定する場合がある。これにより、オブジェクト識別子に加えられるリアルタイムプロセスデータの一部は、それぞれの計算ユニットを介して決定される場合がある。例えば、下流計算ユニットは、下流リアルタイムプロセスデータのどのサブセットが下流オブジェクト識別子に加えられるべきかを決定する場合がある。
【0111】
さらに、判定は、1つまたは複数のMLモデルに基づくことができる。このようなモデルは、本開示において以下でより詳細に説明される。
【0112】
さらに1つの態様によれば、上流オブジェクト識別子は、上流プロセス特定データも加えられる。上流プロセス特定データは、上流エンタープライズリソースプランニング(「ERP」)データ、例えば、下流プラントからの注文番号および/または製造コードおよび/または製造プロセスレシピおよび/またはバッチデータ、レシピエントデータ、例えば、下流プラントデータ、ならびに化学製品への投入材料および/または前駆体材料の変形に関連するデジタルモデルまたはロジックのうちのいずれか1つまたは複数である場合がある。このようなデジタルモデルの例は、予測および/または制御ロジックの観点から前に説明されている。
【0113】
ERPデータは、上流工業プラントに関連するERPシステムから受け取られる場合がある。デジタルモデルは、化学製品への投入材料および/または前駆体の変形に関連する1つまたは複数の物理的および/または化学的変化を表すコンピュータ読み出し可能数学モデルのうちのいずれか1つまたは複数である場合がある。バッチデータは、製造中のバッチおよび/または同じ機器を介して製造された前の製品に関連するデータに関連している場合がある。そうすることによって、前駆体のトレーサビリティは、関連するプロセス特定データを束ねることによってさらに改善することができる。より具体的には、バッチデータは、少なくとも部分的に同じ上流機器を介して製造される様々な前駆体の製造をより最適に順序付けるために使用することができるが、この前駆体は、1つまたは複数の異なる特性または仕様を有する。例えば、このような前駆体の製造は、次いで、後続のバッチがその前のバッチにより最も影響されないように調整されるかつ/または順序付けられることができる。例えば、2つ以上の前駆体が異なる色である場合、それらの製造のシーケンスは、後に製造された前駆体が、前の前駆体からの色の痕跡の観点から前に製造された前駆体により最も影響されないように、上流計算ユニットを介して決定される場合がある。
【0114】
同様に、下流オブジェクト識別子は、下流プロセス特定データが加えられる場合がある。下流プロセス特定データは、下流エンタープライズリソースプランニング(「ERP」)データ、例えば、上流プラントへの注文番号および/または製造コードおよび/または製造プロセスレシピおよび/またはバッチデータ、上流プラントデータなどのベンダーデータ、ならびに化学製品への投入材料および/または前駆体材料の変形に関連するデジタルモデルまたはロジックのうちのいずれか1つまたは複数である場合がある。このようなデジタルモデルの例は、例えば上流計算ユニットによって提供される場合がある予測および/または制御ロジックの観点から前に説明されている。
【0115】
「制御セッティング」は、セッティングおよび/または制御可能な値が、それぞれの材料、関連するならば派生材料が、それぞれ前駆体または化学製品を製造するために処理される形式に影響するように、それぞれの機器に機能的にまたは動作可能に結合されたそれぞれの1つまたは複数のプラント制御システムによって影響されることができるあらゆるそれぞれの制御可能なセッティングおよび/または値を指す。例えば、下流制御セッティングは、それを使用して化学製品が製造される下流プロセスパラメータおよび/または動作条件を決定する。同様に、上流制御セッティングは、それを使用して前駆体が製造される上流プロセスパラメータおよび/または動作条件を決定する。例えば、制御セッティングは、それぞれのプラントの1つまたは複数のプラント制御システムにおける1つまたは複数のコントローラのためのセットポイントである場合がある。制御セッティングは、例えば、機器ゾーンにおいて処理するためにコントローラが使用するべき温度セットポイントに関する場合がある。その他の制御セッティングは、1つまたは複数の材料が処理される、例えば、混合されるべき時間期間である場合がある。制御セッティングのその他の非限定的な例は、値、例えば、処理時間などの時間、圧力、重量または体積などの量、比、レベル、流量などの変化率、スループット、速度、回転数毎分(「rpm」)などの回転速度、および質量である。加えて、または代替的に、それぞれの制御セッティングは、それによって前駆体または化学製品が製造されるレシピを決定する場合もある。例えば、それぞれの制御セッティングのうちの少なくとも幾つかは、使用される材料量またはパーセンテージを決定する場合があり、例えば、どのような比で2つの構成要素が混合されるべきかおよび/またはそれぞれの機器における添加物ドージング量を選択する。
【0116】
したがって、「ゾーン特定制御セッティング」は、制御セッティング、すなわち、特定のゾーンにとって特定の、例えば、上流機器ゾーンのための、あらゆる制御可能なセッティングおよび/または値を指す。同様に、下流制御セッティングも、ゾーン特定である場合がある。
【0117】
それぞれの「性能パラメータ」は、それぞれ前駆体もしくは化学製品のあらゆる1つもしくは複数の特性である場合があるか、それを示している場合があるか、またはそれに関連している場合がある。したがって、下流性能パラメータは、特定の用語または使用のための化学製品の適合性、または適合性の程度を示す1つまたは複数の所定の基準を満たすべきこのようなパラメータである場合がある。ある場合には、性能パラメータは、それぞれの材料または製品の特定の適用または使用のための適合性の欠如、または不適合性の程度を示す場合があることが認められるであろう。同様に、上流性能パラメータは、特定の適用または使用のための前駆体材料および/またはさらには化学製品の適合性、または適合性の程度を示す1つまたは複数の所定の基準を満たすべきこのようなパラメータである場合がある。非限定的な例として、性能パラメータは、引張強さなどの強度、ショアー硬さなどの硬さ、バルク密度などの密度、色、濃度、組成、粘度、TPUのものなどのメルトフロー値(「MFV」)、ヤング率値などの剛性、パーツ・パー・ミリオン(「ppm」)値などの純度または不純度、平均故障時間(「MTTF」)などの故障率、または例えば所定の基準を使用する試験を介して決定されるあらゆる1つもしくは複数の値もしくは値範囲、のうちのいずれか1つまたは複数である場合がある。したがって、下流性能パラメータは、化学製品の性能または品質を表す。所定の基準は、例えば、化学製品および/または前駆体の品質または性能を決定するために、それに関して化学製品および/または前駆体の性能パラメータが比較される、1つまたは複数の基準値または範囲である場合がある。所定の基準は、1つまたは複数の試験、例えば、実験室試験、信頼性または摩耗試験を使用して決定されている場合があり、したがって、1つまたは複数の特定の使用または用途に適しているための前駆体または化学製品のための性能パラメータに対する要求を規定する。幾つかの場合、性能パラメータは、派生材料の特性に関連している場合があるまたは派生材料の特性から測定される場合がある。
【0118】
一般的に、性能パラメータのいずれかは、それぞれの製造プロセスに関連した対応する計算ユニットを介して計算される場合がある。オブジェクト識別子は、これらのパラメータのより有効でかつ信頼できる計算を可能にすることができる。これらのパラメータのいずれかは、それぞれの計算ユニットが製造セッティングを決定し、選択的に製造プロセスを監視しかつ/または製品品質を制御することができることを可能にするための履歴データの一部であることができる。また、提案されたように、履歴データは、現在の製造に基づいて、例えば、下流オブジェクト識別子を介して更新される場合がある。履歴データは、例えば、これらの性能パラメータのうちのいずれかを介した品質のオンザフライ予測のために、1つまたは複数のMLモデルを訓練するために使用することもできる。予測および/または制御ロジックの場合におけるのと同様に、このような訓練されたMLモデルは、少なくとも部分的にデータドリブンモデルである場合がある。
【0119】
それぞれの「所望の性能パラメータ」は、前駆体もしくは化学製品のいずれか1つもしくは複数の特性である場合がある、またはそれを示している場合があるまたはそれに関連している場合がある。したがって、所望の性能パラメータは、性能パラメータの所望の値に対応している場合がある。例えば、所望の上流性能パラメータは、上流性能パラメータの所望の値に対応している場合がある。同様に、所望の下流性能パラメータは、下流性能パラメータの所望の値に対応している場合がある。
【0120】
この文脈における「ゾーン特定」は、特定の機器ゾーン、例えば、それぞれ上流機器における特定のゾーンまたは下流機器ゾーンにおける特定のゾーンに関連することを指すことが認められるであろう。
【0121】
通常、それぞれの性能パラメータは、それらのそれぞれの製造の間および/または後に収収集された化学製品および/または前駆体材料の1つまたは複数の試料から決定される。試料は、実験室へ運ばれ、それぞれの性能パラメータを決定するために分析される場合がある。分析の結果、または決定された性能パラメータは、それぞれのオブジェクト識別子に含まれるまたは加えられる場合があり、これにより、それぞれの履歴データに含まれる場合がある。
【0122】
しかしながら、試料を収集し、それらを処理または試験し、次いで試験結果を分析するという全体的活動は、著しい時間および資源を費やす可能性があることが認められるであろう。したがって、試料の収集と、投入材料および/またはプロセスパラメータおよび/または機器動作条件のあらゆる調整の実行との間に著しい遅延が生じる可能性がある。この遅延またはラグは、準最適の化学製品が製造されることを生じる場合があるか、または最悪の場合には、試料が分析され、投入材料または前駆体材料および/またはプロセスパラメータおよび/または機器動作条件を調整することによってあらゆる修正行為が行われるまで、製造が停止される。
【0123】
化学製品、選択的には前駆体材料のためにも、性能の可変性を少なくとも減じるためのソリューションとして、本教示は、履歴データを介して、幾つかの場合には、履歴オブジェクト識別子の少なくとも幾つかに加えられる場合がある少なくとも1つのゾーン特定性能パラメータを介してそれらのそれぞれの製造プロセスをより厳密に制御するために使用することができる。したがって、手作業によるサンプリングの必要性を減じることができる。
【0124】
1つの態様によれば、少なくとも1つの下流性能パラメータの計算は、下流分析コンピュータモデルを使用して行われる。別の態様によれば、下流制御セッティングの決定は、少なくとも1つの下流機械学習(「ML」)モデルを使用して行われる。下流MLモデルは、好ましくは1つまたは複数の履歴下流オブジェクト識別子からの、下流履歴データに基づいて訓練される場合がある。予測および/または制御ロジックの場合のように、訓練された下流MLモデルは、少なくとも部分的にデータドリブンモデルである場合がある。
【0125】
同様に、少なくとも1つの上流性能パラメータの計算は、上流分析コンピュータモデルを使用して行われる場合がある。また、選択的に、上流制御セッティングの決定は、少なくとも1つの上流機械学習(「ML」)モデルを使用して行われる場合がある。上流MLモデルは、好ましくは1つまたは複数の上流オブジェクト識別子からの、上流履歴データに基づいて訓練される場合がある。予測および/または制御ロジックの場合のように、訓練された上流MLモデルは、少なくとも部分的にデータドリブンモデルである場合がある。
【0126】
化学的製造は、データヘビー環境であることができ、これは、異なる機器から多くのデータを生じることができる。提案されたような教示は、少なくとも下流工業プラントのためのエッジコンピューティングのために適切かつより効率的な監視および/または制御方法またはシステムも実現することも認められるであろう。同様に、互いに隔離された異なるプラントにおいて製造が行われるにもかかわらず、投入材料から化学製品までのより完全なトレーサビリティおよび品質制御をさらに確立するために、上流工業プラントにおいて同等の特徴が適用される場合がある。したがって、オブジェクト識別子が、性能パラメータの計算のために関連するデータの十分にターゲットが絞られたデータセットを提供するので、処理能力および/またはメモリ要求などの計算資源が減じられながら、安全性および/または品質制御および/または少なくとも下流製造プロセスの制御などの監視を、基本的にスポットで、例えば、それぞれの下流機器ゾーン内で行うことができることにも気づくであろう。計算におけるレイテンシを減じることも可能である場合があり、したがって、それぞれの製造プロセスを減速することなく、大量の演算を行うアルゴリズムのために十分な時間があることを確実にする。MLモデルのための訓練プロセスをより迅速かつより効率的にすることもできる。さらに、上流製造プロセスからのデータおよび/またはロジックは、製品性能に対するより細かい制御のために下流でさらに活用することができる。
【0127】
同様の理由から、これは、また、本教示を、クラウドコンピューティングに適したものとする。なぜならば、データセットをコンパクトかつ効率的にすることができるからである。多くのクラウドサービスプロバイダは、計算資源の利用に基づくペイ・パー・ユースモデルで動作し、したがって、コストを減じることができるおよび/または計算能力をより効率的に利用することができる。
【0128】
したがって、1つの態様によれば、少なくとも1つの下流MLモデルは、1つまたは複数の履歴下流オブジェクト識別子からのデータ、または下流履歴データに基づいて訓練される場合がある。下流MLモデルを訓練するために使用されるデータは、履歴および/もしくは現在の実験室試験データ、または化学製品および/もしくは前駆体材料の過去および/もしくは最近の試料から測定された下流性能パラメータなどのデータも含む場合がある。例えば、画像分析、実験室機器またはその他の測定技術などの1つまたは複数の分析からの品質データが使用される場合がある。それらの関連する履歴オブジェクト識別子に分析された性能パラメータを含むことによって、性能パラメータと、それらの対応するプロセスデータとの間のより完全な関係が効率的な形式でキャプチャされる。したがって、コストおよび時間のかかる実験室結果は、将来の化学製品の品質を高めるためにより正確に活用されることができる。品質データが、プロセスデータの関連するスナップショットと統合されるので、ヒューマンエラーの範囲を減じることもできる。
【0129】
幾つかの場合、化学製品またはその派生材料が分析される場合、サンプリングオブジェクト識別子が自動的に提供される。これは、信頼値に基づく場合があるか、または計算ユニットが、計算された性能パラメータと、その対応する所望の値との間の差を最少化することができない場合である。したがって、試料に対して行われる分析または測定の結果は、サンプリングオブジェクト識別子において含まれるまたは加えられることができ、さらに正確にデータを封入し、ヒューマンエラーの範囲を減じる。サンプリングオブジェクト識別子からのデータは、下流履歴データに含まれることもできる。
【0130】
したがって、例えば、履歴下流オブジェクト識別子からのデータで訓練された少なくとも1つの下流MLモデルは、下流機器のためのゾーン特定制御セッティングである場合もある下流制御セッティングの少なくとも幾つかを決定するために使用することができる。
【0131】
したがって、下流制御セッティングを決定するために、下流履歴データを使用して訓練される下流MLモデルは、入力として、前駆体データおよび少なくとも1つの所望の下流性能パラメータを受け取る場合がある。したがって、下流MLモデルは、計算された値として下流制御セッティングを提供することができる。前に説明したように、計算された値はHMIを介してオペレータに提供される場合があるおよび/または値は下流制御システムへ直接に提供される場合がある。また、説明したのと同様に、下流MLモデルは、前駆体データから得られた前駆体材料の詳細と、少なくとも1つの所望の下流性能パラメータから得られた所望の性能と、下流リアルタイムプロセスデータのサブセットとに従って、下流製造プロセスを自動的に適応させるために使用することができる。下流計算ユニットは、例えば、下流MLモデルを介して計算された、下流性能パラメータのそれぞれまたは幾つかと、それらのそれぞれの所望の性能パラメータ値との間の差を最少化することができる。
【0132】
別の態様によれば、下流MLモデルは、下流制御セッティングを示す少なくとも1つの信頼値を提供する場合もある。幾つかの場合、信頼値は、例えば、メタデータとして、下流オブジェクト識別子に加えられる場合もある。下流制御セッティングのうちのいずれかの予測または計算の信頼性レベルが精度しきい値よりも低下すると、製造のために下流制御システムにおいて警告がトリガされる場合がある。警告は、例えば、デフォルトセッティングのセットを使用して下流製造を開始するための、警告信号として生成される場合があるか、または下流MLモデルが再訓練されるべきであるかどうかを決定するために使用される場合がある。
【0133】
幾つかの場合、下流制御セッティングのうちのいずれかの予測または計算の信頼性レベルが精度しきい値よりも低下したことに応答して、再訓練オブジェクト識別子が下流インターフェースを介して自動的に提供される。下流処理ユニットは、信頼値、前駆体データおよび少なくとも1つの所望の下流性能パラメータを再訓練オブジェクト識別子に加えるように構成されている場合がある。再訓練オブジェクト識別子は、再訓練オブジェクト識別子に含まれた変数のセットによって下流製造プロセスを制御するためにどの洞察が欠けているかを決定するために使用される場合がある。したがって、再訓練オブジェクト識別子は、下流計算ユニットを介した将来の決定のために下流履歴データをさらに改善するために使用することができる。1つの態様によれば、再訓練オブジェクト識別子に関連して製造された化学製品は、サンプリングおよび分析される場合がある。分析の結果、例えば、測定された下流性能パラメータは、再訓練オブジェクト識別子に加えられる場合がある。したがって、再訓練オブジェクト識別子は、下流履歴データに含まれることができる。このように、材料の完全なトレーサビリティを維持することができ、正確な製品をサンプリングすることができ、これにより、下流履歴データは、前の下流履歴データによって完全にカバーされていなかったケースのためにも効率的に強化される。したがって、これにより、再訓練オブジェクト識別子によって提供されるトラッキングにより、正確な1つまたは複数の試料が製造から収集され、試料は、信頼性レベルの低下の原因を見つけるために再訓練オブジェクト識別子からのデータと一緒に分析される場合がある。したがって、様々な変数の間の複雑な関係を、より良く理解することができ、これにより、下流制御プロセスをさらに改善することができる。
【0134】
幾つかの場合、同じ下流MLモデルまたは別の下流MLモデルは、下流リアルタイムプロセスデータのサブセットのどの部分または構成要素が化学製品に最も支配的な効果を有するかを決定するために下流計算ユニットによって使用される場合がある。したがって、下流計算ユニットは、少なくとも1つの下流性能パラメータに無視できる効果を有する下流プロセスパラメータおよび/または機器動作条件を除外するために有効化される。これにより、特定の化学製品のために加えられる下流リアルタイムプロセスデータの関連性を、それらのそれぞれのオブジェクト識別子のために向上させることができる。
【0135】
幾つかの場合における下流オブジェクト識別子は、上流オブジェクト識別子の少なくとも一部が加えられる。したがって、上流オブジェクト識別子の全体またはその一部のみが、下流オブジェクト識別子に封入される場合がある。その部分は、例えば、上流オブジェクト識別子への参照、あるいは2つのオブジェクト識別子を直接にまたはそれらの間に生成されている場合がある1つもしくは複数の他のオブジェクト識別子を介して結合するリンクである場合がある。
【0136】
説明したように、下流オブジェクト制御セッティングは、下流製造プロセスの間に前駆体材料が横断する異なるゾーンのための、ゾーン特定の、異なるセッティングである場合がある。これは、材料が上流で処理された下流プロセスデータに従って下流ゾーン内で下流製造プロセスが適応されることを可能にする。したがって、制御の粒度は、さらに改善され、より柔軟になることができる。例えば、下流ゾーン特定制御セッティングを適応させることによって、あらゆる準最適処理上流を修正することができる。
【0137】
下流ゾーン特定制御セッティングを決定することに加えて、下流オブジェクト識別子は、説明したように存在信号に基づいてそれぞれの下流機器ゾーンからのリアルタイムプロセスデータの少なくとも一部が加えられる場合がある。したがって、下流オブジェクト識別子、特にその中に封入および/または参照されたデータの関連性は、より粒度の細かい制御を提供することに加えてさらに改善することができる。
【0138】
説明したように、下流オブジェクト識別子は、上流オブジェクト識別子、もしくはより具体的には上流リアルタイムプロセスデータのサブセットの少なくとも一部が加えられた上流オブジェクト識別子からのデータを、少なくとも部分的に封入するまたはそれによってエンリッチされる場合がある。代替的に、下流オブジェクト識別子は、上流オブジェクト識別子にリンクされる場合がある。言い換えれば、下流オブジェクト識別子は、上流オブジェクト識別子が加えられると言える。したがって、下流オブジェクト識別子は、少なくとも部分的に下流オブジェクト識別子の一部である上流オブジェクト識別子によって、上流オブジェクト識別子に関連させられる。
【0139】
下流計算ユニットは、例えば、前駆体材料が下流製造中に分割されるまたは他の材料と組み合わされる場合、さらなる下流オブジェクト識別子をも提供する。前に説明したようなデータの特定のサブセットは、それぞれのさらなる下流オブジェクト識別子に加えられる場合がある。これを行うことによって、下流製造チェーンの様々な構成要素の品質に対するより細かい可視性を高めることができる。例えば、それぞれの特定のゾーンの性能パラメータは、その特定のゾーンにおける材料の品質を追跡および制御するために使用することもできる。
【0140】
上記説明と同様に、さらなるMLモデルをさらなる下流オブジェクト識別子のいずれかに適用することもできる。さらなるMLモデルは、それぞれのモデルからの出力に基づいてゾーン特定下流制御セッティングを適応させることによって性能パラメータを予測するかつ/または下流製造を制御するために使用される場合がある。
【0141】
当業者は、「加えている」または「加える」という用語が、同じデータベースにおける、または同じメモリストレージエレメントにおける、データベースまたはメモリストレージにおける隣接するまたは異なる位置における、メタデータなどの異なるデータエレメントを含むまたは取り付ける、例えば、節約することを意味する場合があるということを認めるであろう。この用語は、必要とされる場合にデータパッケージまたはストリームを読み出すかつ/またはフェッチするかつ/または組み合わせることができる形式で、同じまたは異なる位置における1つまたは複数のデータエレメント、パッケージまたはストリームのリンクを意味する場合もある。位置のうちの少なくとも1つは、リモートサーバの部分であるかまたはさらには少なくとも部分的にクラウドベースサービスの一部である場合がある。
【0142】
「リモートサーバ」は、プラントから離れて配置された1つもしくは複数のコンピュータまたは1つもしくは複数のコンピュータサーバを指す。したがって、リモートサーバは、プラントから数キロメートル以上に配置される場合がある。リモートサーバは、さらに、異なる国に配置される場合がある。リモートサーバは、さらに、少なくとも部分的にクラウドベースサービスまたはプラットフォームとして、例えば、プラットフォーム・アズ・ア・サービス(「PaaS」)として実装される場合がある。この用語は、さらに、集合的に、異なる位置に配置された2つ以上のコンピュータまたはサーバを指す場合がある。リモートサーバは、データ管理システムである場合がある。
【0143】
初期下流機器ゾーンを横断した後の前駆体材料は、前駆体が初期下流機器ゾーンに進入したときとは性質が実質的に異なる場合があることが認められるであろう。これにより、説明したように、初期下流機器ゾーンから横断した後のさらなる下流機器ゾーンにおける前駆体材料の進入時に、前駆体材料は、派生材料または中間処理材料に変換されている場合がある。しかしながら、簡略化のために、また本教示の一般性を失うことなく、前駆体材料という用語は、下流製造プロセス中の前駆体材料がこのような中間処理材料または派生材料に変換されている場合をも指すために使用される。例えば、化学成分の混合物の形態の前駆体材料のバッチは、化学反応を誘発するためにバッチが加熱されるコンベヤベルト上の初期下流機器ゾーンを横断している場合がある。その結果、前駆体材料がさらなる下流機器ゾーンに進入するとき、初期下流機器ゾーンから出た直後でまたは他のゾーンをも横断した後、材料は、前駆体材料とは特性が異なる派生材料となっている場合がある。例えば、初期下流機器ゾーンにおけるTPUの形態の前駆体は、さらなる下流機器ゾーンに進入するとき、ETPUに変換されている場合がある。この例におけるETPUは、派生材料または中間処理材料と呼ばれる場合がある。しかしながら、上述のように、このような派生材料は、少なくともこのような中間処理材料と前駆体材料との間の関係が下流製造プロセスを介して規定および決定されることができることにより、依然として前駆体材料と呼ぶことができる。さらに、その他の場合、前駆体材料は、初期下流機器ゾーンまたはその他のゾーンをも横断した後でも、例えば、初期下流機器ゾーンが前駆体材料を単に乾燥させるかまたは望ましくない材料の痕跡を除去するために前駆体材料を濾過する場合、依然として基本的に類似の特性を保持する場合がある。これにより、当業者は、あらゆる中間ゾーンにおける前駆体材料が派生材料に変換される場合があるまたは変換されない場合があることを理解するであろう。
【0144】
説明したように、前駆体材料、派生材料または化学製品の試料が分析のために収集される場合、このような試料は、また、試料オブジェクト識別子が提供される場合がある。試料オブジェクト識別子は、本開示において説明されたオブジェクト識別子およびしたがって説明したように加えられた関連する対応するプロセスデータと類似であることができる。したがって、試料は、前記試料の特性に関連する下流製造プロセスの正確なスナップショットが添付されることもできる。したがって、分析および品質制御をさらに改良することができる。さらに、下流製造プロセスは、例えば、1つまたは複数のMLモデルの改良された訓練に基づいて、相乗的に改良することができる。
【0145】
別の態様によれば、下流製造プロセスが、前駆体材料が、例えば、コンベヤシステムなどの搬送エレメントを使用してゾーンにおいてまたはゾーンの間で物理的に搬送されるまたは移動させられることを伴う場合、下流リアルタイムプロセスデータは、搬送エレメントの速度および/または下流製造プロセス中に前駆体材料が搬送される速度を示すデータも含む場合がある。速度は、センサのうちの1つもしくは複数を介して直接に提供される場合があるかつ/または下流計算ユニットを介して、例えば、ゾーンにおける進入の時間およびゾーンからの退出の時間もしくはそのゾーンの後続の別のゾーンにおける進入の時間に基づいて、計算される場合がある。したがって、下流オブジェクト識別子は、ゾーンにおける時間態様、特に、化学製品の1つまたは複数の下流性能パラメータに影響を与える場合があるものを処理することによってさらにエンリッチすることができる。さらに、進入および退出または後続ゾーン進入のタイムスタンプを使用することによって、搬送エレメントのための速度測定センサまたはデバイスの要求を排除することができる。
【0146】
別の態様によれば、各オブジェクト識別子は、固有の識別子、好ましくはグローバル一意識別子(「GUID」)を含む。化学製品の少なくとも追跡は、化学製品のそれぞれの仮想パッケージにGUIDを添付することによって高められる場合がある。選択的に、化学製品は、GUIDを介して前駆体材料の製造のために使用された投入材料まで辿られる場合があり、時系列データなどのプロセスデータのデータ管理を減じることもでき、仮想/物理的パッケージと、製造履歴と、品質制御履歴との間の直接的な相関関係を有効化することができる。
【0147】
MLモデルに関して説明したように、1つの態様によれば、上流MLモデルは、上流オブジェクト識別子からのデータに基づいて訓練される場合がある。訓練データは、過去および/もしくは現在の実験室試験データ、または前駆体材料および/もしくは化学製品の過去および/もしくは最近の試料からのデータも含む場合がある。オブジェクト識別子は、上流プラントが、下流プラントにおいて製造された化学製品の性能を、前駆体を製造するために使用された特定の投入材料、および材料を処理するために使用された上流プロセスデータにリンクさせることをより容易にすることもできる。これは、化学製品の一貫した品質を保証する観点から顕著な利点を有することができる。
【0148】
MLモデルに関する前に説明した利点に加え、それぞれの製造ラインにおけるゾーンに基づく訓練されたモデルを有することは、材料のより詳細な追跡、およびそれらのそれぞれの性能パラメータおよびさらには化学製品性能パラメータを予測することを可能にすることができる。
【0149】
バッチ製造などの幾つかの製造シナリオにおいて、このようなモデルは、製造された化学製品のためのみならず、あらゆる派生材料のためにも品質制御問題を警告するためにオンザフライで使用される場合がある。
【0150】
したがって、上流および/または下流の機器ゾーンのいずれかまたはそれぞれは、個々のMLモデルを介して監視および/または制御される場合があり、個々のMLモデルは、そのゾーンからのそれぞれのオブジェクト識別子からのデータに基づいて訓練される。
【0151】
1つの態様によれば、ゾーンのためのそれぞれのオブジェクト識別子、例えば、下流オブジェクト識別子の提供は、前駆体材料の特性を示す値のうちのいずれか1つもしくは複数および/または下流機器動作条件からの値のうちのいずれか1つもしくは複数および/または所定のしきい値に達する、所定のしきい値を満たす、もしくは所定のしきい値を超える下流プロセスパラメータの値のうちのいずれか1つもしくは複数に応答して生じるまたはトリガされる場合がある。あらゆるこのような値は、1つまたは複数の下流センサおよび/またはスイッチを介して測定される場合がある。例えば、所定のしきい値は、下流機器において導入される前駆体材料の重量または量の値に関連することができる。したがって、下流機器において受け取られる前駆体材料の重量などの量が、重量しきい値などの所定の量しきい値に達した場合、トリガ信号が生成される場合がある。理想的には、例えば、入ってくる前駆体材料からのプロセス特定データおよび/またはタグを介して、上流オブジェクト識別子が自動的に下流オブジェクト識別子に加えられる。オブジェクト識別子を提供するためのイベントまたは発生をトリガするある例は、本開示において前にも説明されている。トリガ信号に応答して、または直接的に、所定の重量しきい値に達する量もしくは重量に応答して、オブジェクト識別子が提供される場合がある。トリガ信号は、別個の信号であることができるか、または単にイベント、例えば、計算ユニットおよび/もしくは機器を介して検出されるしきい値などの所定の基準を満たす特定の信号である場合がある。したがって、オブジェクト識別子は、所定の量しきい値に達する前駆体材料の量に応答して提供される場合があることも認められるであろう。量は、上記の例において説明したように重量として測定される場合がある、かつ/あるいはレベル、充填もしくは充填度もしくは体積など、および/または前駆体材料の質量流を合計することによるかもしくは前駆体材料の質量流に積分を適用することによる、あらゆる1つまたは複数のその他の値である場合がある。
【0152】
したがって、例えば、下流オブジェクト識別子は、トリガイベントまたは信号に応答して提供される場合があり、前記イベントまたは信号は、好ましくは、下流機器または初期下流機器ゾーンを介して提供される。これは、下流機器に動作可能に結合された1つまたは複数の下流センサおよび/またはスイッチのいずれかの出力に応答して行われる場合がある。トリガイベントまたは信号は、前駆体材料の量の値、例えば、所定の量しきい値に達するまたはこれを満たす量の値の発生に関連する場合がある。前記発生は、例えば、1つもしくは複数の重量センサ、レベルセンサ、充填センサ、または前駆体材料の量を測定もしくは検出することができるあらゆる適切なセンサを使用して、下流計算ユニットおよび/または下流機器を介して検出される場合がある。
【0153】
下流オブジェクト識別子を提供するためのトリガとして量を使用する利点は、製造プロセス中の材料の量のあらゆる変化を、本教示において説明したようにさらに1つまたは複数の下流オブジェクト識別子を提供するためのトリガとして使用することができるということであることができる。出願人は、これが、1つまたは複数の化学製品を処理または製造するための工業環境における異なるオブジェクト識別子の生成をセグメント化するための最適な方法を提供することができ、これにより、基本的に製造チェーン全体を通じて、量または質量流量を説明しながら、前駆体材料、あらゆる派生材料、および結局は化学製品を追跡することができることを実現した。ちょうど、新たな材料が導入もしくは投入される時点、または材料が分割される時点でオブジェクト識別子を提供することによって、製造の終点においてのみならず、その中でも材料の追跡可能性を保持しながら、オブジェクト識別子の数を最小限にすることができる。新たな材料が追加されない、または材料が分割されない機器または製造ゾーン内で、このようなゾーン内のプロセスの知識は、2つの隣接するオブジェクト識別子内の可観測性を維持するために使用することができる。
【0154】
1つの視点から見た場合、製造プロセス、例えば、下流プラントを制御するための、本明細書に開示された方法態様のうちのいずれかに従って生成された、制御セッティングおよび/またはいずれか1つもしくは複数の性能パラメータの使用を提供することができる。より具体的には、下流制御セッティングおよび/または少なくとも1つの下流性能パラメータである。
【0155】
そうすることによって、説明したような下流プラントのうちのいずれも、1つまたは複数の化学製品を製造するための改善された製造プロセスを得ることができる。
【0156】
別の視点から見た場合、下流製造プロセスを制御するためのシステムを提供することもでき、システムは、本明細書に開示された方法のいずれかを行うように構成されている。または、下流工業プラントにおいて化学製品を製造するための下流製造プロセスを制御するためのシステムであって、下流工業プラントは、少なくとも1つの下流機器を含み、製品は、下流機器を介して、下流製造プロセスを使用して少なくとも1つの前駆体材料を処理することによって製造され、システムは、本明細書に開示された方法のうちのいずれかを行うように構成されている。
【0157】
例えば、下流工業プラントにおいて化学製品を製造するための下流製造プロセスを制御するためのシステムであって、下流工業プラントは、少なくとも1つの下流機器および下流計算ユニットを含み、製品は、下流機器を介して、下流製造プロセスを使用して少なくとも1つの前駆体材料を処理することによって製造され、システムは、
- 下流計算ユニットにおいて、化学製品の製造を制御するための下流制御セッティングのセットを提供するように構成されており、下流制御セッティングは、
- 前駆体材料の1つまたは複数の特性を示す前駆体データを含む下流オブジェクト識別子と、
- 化学製品に関連した少なくとも1つの所望の下流性能パラメータと、
- 過去の1つまたは複数の化学製品を製造するために使用された下流プロセスパラメータおよび/または動作セッティングを含む下流履歴データと、
に基づいて決定され、
- 下流制御セッティングのセットが、下流工業プラントにおいて化学製品を製造するために使用可能である、
システムを提供することができる。
【0158】
別の観点から見た場合、コンピュータプログラムであって、プログラムが適切な計算ユニットによって実行されたとき、計算ユニットに、本明細書に開示された方法のうちのいずれかを行わせる命令を含む、コンピュータプログラムを提供することもできる。適切な計算ユニットに、本明細書に開示されたあらゆる方法ステップを実行させるプログラムを記憶する非一時的コンピュータ可読媒体を提供することもできる。
【0159】
例えば、コンピュータプログラムまたはプログラムを記憶する非一時的コンピュータ可読媒体であって、命令を含み、命令は、下流製造プロセスを使用して少なくとも1つの前駆体材料を処理することによって下流工業プラントにおいて化学製品を製造するための少なくとも1つの機器に動作可能に結合された適切な計算ユニットによってプログラムが実行されたとき、計算ユニットに、
- 下流計算ユニットにおいて、化学製品の製造を制御するための下流制御セッティングのセットを提供させ、下流制御セッティングが、
- 前駆体材料の1つまたは複数の特性を示す前駆体データを含む下流オブジェクト識別子と、
- 化学製品に関連する少なくとも1つの所望の下流性能パラメータと、
- 過去の1つまたは複数の化学製品を製造するために使用された下流プロセスパラメータおよび/または動作セッティングを含む下流履歴データと、
に基づいて決定され、
- 下流制御セッティングのセットが、下流工業プラントにおいて化学製品を製造するために使用可能である、
コンピュータプログラムまたはプログラムを記憶する非一時的コンピュータ可読媒体を提供することができる。
【0160】
下流制御セッティングのセットが、下流工業プラントにおいて化学製品を製造するのに適していることが認められるであろう。
【0161】
コンピュータ可読データ媒体またはキャリアは、本明細書に説明された方法または機能のうちのいずれか1つまたは複数を具体化する命令(例えば、ソフトウェア)の1つまたは複数のセットが記憶されたあらゆる適切なデータストレージデバイスを含む。命令は、完全にまたは少なくとも部分的に、コンピュータ可読ストレージ媒体を構成する場合がある、計算ユニット、メインメモリおよび処理装置によるその実行中にメインメモリ内および/またはプロセッサ内に存在する場合もある。命令は、さらに、ネットワークインターフェースデバイスを介してネットワーク上で送信または受信される場合がある。
【0162】
本明細書に説明された実施形態のうちの1つまたは複数を実装するためのコンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒にまたは他のハードウェアの一部として供給される光学ストレージ媒体またはソリッドステート媒体などの適切な媒体に記憶および/または分配される場合があるが、インターネットまたはその他の有線もしくは無線遠隔通信システムなどを介して、その他の形式で分配される場合もある。しかしながら、コンピュータプログラムは、ワールド・ワイド・ウェブなどのネットワーク上で提供される場合もあり、このようなネットワークからデータプロセッサの作業メモリへダウンロードすることができる。
【0163】
さらに、ダウンロードのためにコンピュータプログラム製品を利用可能にするためのデータキャリアまたはデータストレージ媒体を提供することもでき、このコンピュータプログラム製品は、本明細書に開示された態様のうちのいずれかによる方法を行うために配置されている。
【0164】
別の観点から見た場合、本明細書に開示された方法を行うためのコンピュータプログラムコードを含む計算ユニットを提供することもできる。また、本明細書に開示された方法を行うためのコンピュータプログラムコードを含むメモリストレージに動作可能に結合された計算ユニットを提供することができる。
【0165】
2つ以上の構成要素が「動作可能に」結合または接続されていることは、当業者にとって明らかである。非限定的な例において、これは、例えば、インターフェースまたはあらゆるその他の適切なインターフェースを介して、結合または接続された構成要素の間に通信接続が少なくとも存在する場合があることを意味する。通信接続は、固定されている場合があるかまたは除去可能である場合がある。さらに、通信接続は、一方向である場合があるか、または双方向である場合がある。さらに、通信接続は、有線および/または無線である場合がある。幾つかの場合、通信接続は、制御信号を提供するために使用される場合もある。
【0166】
この文脈における「パラメータ」は、温度、方向、位置、量、密度、重量、色、湿度、速度、加速度、変化率、圧力、力、距離、pH、濃度および組成などの、あらゆる関連する物理的または化学的特性および/またはその尺度に関する。パラメータは、ある特性の存在またはその欠如を指す場合もある。
【0167】
「アクチュエータ」は、直接的または間接的に、機械などの機器に関連したメカニズムを移動させかつ制御するために働くあらゆる構成要素を指す。アクチュエータは、弁、モータ、駆動装置などである場合がある。アクチュエータは、電気的、液圧式、空圧式、またはそれらの組合せのいずれかにおいて動作可能である場合がある。
【0168】
「コンピュータプロセッサ」は、コンピュータもしくはシステムの基本動作を行うために構成された任意論理回路、および/または、一般的に、計算もしくは論理動作を行うために構成されたデバイスを指す。特に、処理手段またはコンピュータプロセッサは、コンピュータまたはシステムを駆動する基本命令を処理するために構成される場合がある。1つの例として、処理手段またはコンピュータプロセッサは、少なくとも1つの算術論理演算ユニット(「ALU」)、少なくとも1つの浮動小数点ユニット(「FPU」)、例えば、数値演算コプロセッサまたは数値演算コプロセッサ、複数のレジスタ、特に、ALUにオペランドを供給しかつオペレーションの結果を記憶するために構成されたレジスタ、ならびにメモリ、例えば、L1およびL2キャッシュメモリを含む場合がある。特に、処理手段またはコンピュータプロセッサは、マルチコアプロセッサである場合がある。特に、処理手段またはコンピュータプロセッサは、中央処理装置(「CPU」)である場合があるまたはこれを含む場合がある。処理手段またはコンピュータプロセッサは、複数命令セットコンピューティング(「CISC」)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(「RISC」)マイクロプロセッサ、超長命令語(「VLIW」)マイクロプロセッサ、またはその他の命令セットを実装するプロセッサもしくは命令セットの組合せを実装するプロセッサである場合がある、あるいはそれらを含む場合がある。処理手段は、1つまたは複数の専用処理デバイス、例えば、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(「FPGA」)、結合プログラム可能論理回路(「CPLD」)、デジタル信号プロセッサ(「DSP」)、ネットワークプロセッサなどである場合もある。本明細書に説明された方法、システムおよび装置は、DSP、マイクロコントローラもしくはあらゆるその他のサイドプロセッサにおけるソフトウェアとして、またはASIC、CPLDもしくはFPGA内のハードウェア回路として実装される場合がある。処理手段またはプロセッサという用語は、1つまたは複数の処理デバイス、例えば、多数のコンピュータシステムを横断して配置された処理デバイスの分散型システム(例えば、クラウドコンピューティング)を指す場合もあり、別段の明示がないかぎり単一のデバイスに限定されないことが理解されるべきである。
【0169】
「コンピュータ可読データ媒体」またはキャリアは、本明細書に説明された方法または機能のうちのいずれか1つまたは複数を具体化する命令(例えば、ソフトウェア)の1つまたは複数のセットが記憶された、あらゆる適切なデータストレージデバイスまたはコンピュータ可読メモリを含む。命令は、完全にまたは少なくとも部分的に、コンピュータ可読外レージ媒体を構成する場合がある、計算ユニット、メインメモリおよび処理デバイスによるその実行中に、メインメモリ内および/またはプロセッサ内にある場合もある。命令は、さらに、ネットワークインターフェースデバイスを介してネットワーク上で送信または受信される場合がある。
【0170】
複数の図面の簡単な説明
ここで本教示の幾つかの態様を、例として前記態様を説明する以下の図面を参照しながら説明する。本教示の一般性はそれに依存しないので、図面は、縮尺どおりではない場合がある。図示された幾つかの特徴は、本教示の一般性に影響することなく、理解のために物理的特徴と一緒に示された論理特徴であることができる。あらゆる特定の要素または動作の説明を容易に識別するために、参照番号における最も顕著な1つまたは複数の数字は、その要素が最初に紹介された図面番号を指している。
【図面の簡単な説明】
【0171】
図1】本教示によるシステムの幾つかの態様を示す。
図2】本教示による方法態様を示す。
図3】組み合わされたブロック/流れ図によって、本教示によるシステムおよび対応する方法の第1の実施形態を示す。
図4】組み合わされたブロック/流れ図によって、本教示によるシステムおよび対応する方法の第2の実施形態を示す。
図5】組み合わされたブロック/流れ図によって、本教示によるシステムおよび対応する方法の第3の実施形態を示す。
図6】複数の機器デバイスおよびしたがってその間を生産または製造プロセスの間に投入材料が前進する複数の機器ゾーンを含む、工業プラントまたはプラントのクラスターのトポロジー的構造を表すグラフベースのデータベース配列の第1の実施形態を示す。
図7図6に示されたグラフベースのデータベース配列の第2の実施形態を示す。
図8】組み合わされたブロック/流れ図によって、クラウドコンピューティングプラットフォームを使用する本教示によるシステムおよび対応する方法の別の実施形態を示し、機械学習(ML)プロセスがクラウドにおいて実装される。
【発明を実施するための形態】
【0172】
詳細な説明
図1は、下流工業プラントにおいて化学製品170を製造するための下流製造プロセスを制御するためのシステム168の例を示している。方法態様の少なくとも幾つかも以下の説明から理解されるであろう。下流工業プラントは、下流製造プロセスを使用して化学製品170を生産または製造するための複数の機器ゾーンを選択的に有する場合がある少なくとも1つの下流機器を含む。化学製品170は、あらゆる形態において、例えば、薬品、フォーム、栄養製品、農業製品である場合がある。例えば、化学製品170は、ETPUから形成されたソールを含む靴などの履物である場合がある。したがって、ETPUは、履物の製造において使用される前駆体材料114である場合がある。
【0173】
前駆体材料114は、下流工業プラントから隔離されている場合がある上流工業プラントから供給される場合がある。前駆体材料114は、上流工業プラントにおいて少なくとも1つの投入材料を使用して製造される場合がある。例えば、投入材料は、メチレンジフェニルジイソシアネート(「MDI」)および/またはポリテトラヒドロフラン(「PTHF」)である場合があり、MDIおよび/またはPTHFは、TPUおよび/またはETPU材料を製造するために上流工業プラントにおいて上流製造プロセスのために使用され、TPUおよび/またはETPUは、次いで、化学製品170を製造するために下流工業プラントに提供または供給される。
【0174】
前駆体材料114は、バッチ、例えば、それぞれ10kgのパッケージに入っている場合がある。説明したように、前駆体材料114もしくは前駆体材料114が形成される材料、または下流製造プロセスを使用して前駆体材料114が変換させられる材料または製品としてのこのような製品の性質により、このような材料および/または製品は、製造チェーンにおいて追跡することが困難である場合がある。しかしながら、それぞれの構成要素、例えば、それぞれのユニットもしくはパッケージ、またはさらには内部の部分が一貫したかつ所望の特性または品質を有することを保証することが重要である場合がある。本教示は、化学製品170のために達成される1つまたは複数の所望の下流性能パラメータを生じることができる製造を可能にすることができる。
【0175】
下流機器は、複数の機器ゾーンを有する場合があるまたは有さない場合がある。この例において、図1における下流機器は、複数のゾーンを含むものとして考えられる場合がある。例えば、ホッパまたは混合ポット104は、初期下流機器ゾーンの一部である場合がある。混合ポット104は、少なくとも1つの前駆体材料114を受け取り、前駆体材料114は、1つの材料である場合があるまたは複数の構成要素を含む場合がある。この例において、前駆体材料114は、2つの部分で受け取られ、これらの部分は、それぞれ第1の弁112aおよび第2の弁112bを介して混合ポット104に供給されるものとして示されている。第1の弁112aおよび第2の弁112bも、初期下流機器ゾーンに属する場合がある。
【0176】
オブジェクト識別子、またはこの場合、下流オブジェクト識別子122が、前駆体材料114のために提供される。下流オブジェクト識別子122は、下流計算ユニット124において提供される場合がある。下流計算ユニット124は、例えば、下流インターフェースを介して、下流メモリストレージ128に下流オブジェクト識別子122を提供する場合がある。説明したように、幾つかの場合、下流オブジェクト識別子122は、例えば、共有メモリストレージを介して、上流計算ユニットによって下流計算ユニット124に提供される場合がある。幾つかの場合、下流メモリストレージ128は、上流計算ユニットを介してアクセス可能な共有メモリストレージである場合がある。上流計算ユニットは、上流工業プラントに属する計算ユニットである場合がある。下流オブジェクト識別子122は、前駆体材料114に関連するデータ、または前駆体データを含む。前駆体データは、前駆体材料114の1つまたは複数の特性を示している。
【0177】
下流オブジェクト識別子122、またはより具体的には、下流オブジェクト識別子122からのデータは、化学製品170の製造を制御するための下流制御セッティングのセットを決定するために使用することができる。下流オブジェクト識別子122、化学製品170に関連した少なくとも1つの所望の下流性能パラメータ、および下流履歴データは、下流制御セッティングのセットを提供するために使用される場合がある。下流制御セッティングのセットは、上流計算ユニットによって少なくとも部分的に決定される場合があるおよび/または下流制御セッティングの少なくとも幾つかは下流計算ユニット124によって決定される場合がある。下流履歴データは、下流機器を介して過去の1つまたは複数の化学製品を製造するために使用された下流プロセスパラメータおよび/または動作セッティングを含む。次いで、下流制御セッティングのセットは、少なくとも1つの所望の下流性能パラメータを達成するという目的で化学製品170を製造するために使用される。所望の下流性能パラメータは、化学製品170の所望の性能または品質に関する。
【0178】
例えば、制御セッティングの少なくとも幾つかは、第1の弁112aおよび/または第2の弁112bがどのように操作されるか、例えば、どれだけ多くの材料がどのような比率で供給されるかを決定する場合がある。制御セッティングは、さらに、混合ポット104がどのように操作されるか、例えば、混合の時間期間および/またはミキサの速度を決定する場合がある。加えて、または代替的に、制御セッティングは、特定のプロセスパラメータがどのような値をどれだけ長く有する必要があるか、例えば、セットポイントなどの機器動作条件を決定および制御する場合がある。したがって、制御セッティングは、前駆体材料114および機器の詳細に基づいて自動的に決定される。下流制御セッティングのセットが、初期下流機器ゾーンのための制御セッティング、すなわち、ゾーン特定制御セッティング、および同様に存在する場合には、あらゆるさらなる機器ゾーンのためのゾーン特定制御セッティングを含む場合があることが認められるであろう。幾つかの場合、下流制御セッティングのセットは、グローバル制御セッティング、すなわち、製造チェーン全体のために適用されるセッティングを含む場合がある。加えて、または代替的に、機器ゾーン内でも、ゾーン特定制御セッティングの少なくとも幾つかが、そのゾーンからのリアルタイムプロセスデータに従って、例えば、下流履歴データによって訓練される1つまたは複数のMLモデルの出力に応答して、オンザフライで適応させられる場合がある。制御セッティングは、下流機器を制御するために、DCSおよび/またはPLCなどのプラント制御システムに提供される場合がある。セッティングは、好ましくは、制御システムに自動的に提供されるが、幾つかの場合、オペレータを介して提供される場合がある。
【0179】
下流オブジェクト識別子122は、他のオブジェクト識別子から区別可能な、固有の識別子、好ましくはグローバル一意識別子(「GUID」)である場合がある。GUIDは、特定の工業プラントの詳細ならびに/または製造される化学製品170の詳細ならびに/または日付および時間の詳細、ならびに/または使用される特定の前駆体材料114の詳細に依存して提供される場合がある。下流オブジェクト識別子122はここでは、下流計算ユニット124に動作可能に結合された下流メモリストレージ128において提供されるように示されている。下流メモリストレージ128は、下流計算ユニット124の一部である場合もある。下流メモリストレージ128および/または下流計算ユニット124は、少なくとも部分的にクラウドサービス、例えば、MS Azureの一部である場合がある。
【0180】
下流計算ユニット124は、例えば、あらゆる適切な種類のデータ伝送媒体である場合がある下流ネットワーク138を介して、下流機器に動作可能に結合されている。下流計算ユニット124は、下流機器の一部である場合もあり、例えば、少なくとも部分的に初期下流機器ゾーンの一部である場合がある。下流計算ユニット124は、少なくとも部分的に下流工業プラントのプラント制御システムである場合もある。下流計算ユニット124は、下流機器、例えば、初期下流機器ゾーンの下流機器に動作可能に結合された1つまたは複数のセンサからの1つまたは複数の信号を受信する場合がある。例えば、下流計算ユニット124は、充填センサ144および/または搬送エレメント102a~bに関連した1つまたは複数のセンサから1つまたは複数の信号を受信する場合がある。前記センサも初期下流機器ゾーンの一部である。したがって、下流計算ユニット124は、前に説明したように制御セッティングに従って、初期下流機器ゾーンまたはその幾つかの部分を少なくとも部分的に制御する場合もある。例えば、下流計算ユニット124は、例えば、それらのそれぞれのアクチュエータを介して弁112a,bを、および/またはヒータ118および/または搬送エレメント102a~bを制御する場合がある。図1の例における搬送エレメント102a,bおよびその他は、1つまたは複数のモータと、前駆体材料114がベルトを介してベルトの横断方向120に搬送されるようにベルトが移動するように前記モータを介して駆動されるベルトと、を含むコンベヤシステムとして示されている。
【0181】
本教示の範囲または一般性に影響することなく、コンベヤシステムの代わりにまたはコンベヤシステムと組み合わせてその他の種類の搬送エレメントを使用することもできる。幾つかの場合、材料の流れ、例えば、入ってくる1つまたは複数の材料および出ていく1つまたは複数の材料を伴うあらゆる種類の機器が、搬送エレメントと呼ばれる場合がある。したがって、コンベヤシステムまたはベルトの他に、押出機、ペレタイザ、熱交換器、バッファサイロ、ミキサを備えるサイロ、ミキサ、混合容器、切断ミル、二重円錐型ブレンダ、硬化チューブ、カラム、セパレータ、抽出器、薄膜蒸発器、フィルタ、ふるいなどの機器も、搬送エレメントと呼ばれる場合がある。したがって、少なくとも幾つかの場合に材料が質量流を介して1つの機器から別の機器へ直接に、または1つの機器を介して別の機器への通常流として移動する場合があるため、コンベヤシステムとしての搬送システムの存在は選択的である場合があることが認められるであろう。例えば、材料は、熱交換器からセパレータまたはさらにはカラムなどへ直接に移動する場合がある。したがって、幾つかの場合、1つまたは複数の搬送エレメントまたはシステムは、機器にとって固有である場合がある。
【0182】
下流オブジェクト識別子122は幾つかの場合、前駆体材料114の量に関連した信号またはイベントである場合があるトリガ信号またはイベントに応答して提供される場合がある。例えば、充填センサ144は、前駆体材料114の充填度および/または重量などの少なくとも量の値を検出するために使用される場合がある。量が所定のしきい値に達すると、下流計算ユニット124は、下流メモリストレージ128において下流オブジェクト識別子122を自動的に提供する場合がある。
【0183】
次いで、下流計算ユニット124は、下流オブジェクト識別子122および少なくとも1つの所望の性能パラメータに基づいてプロセスおよび/または動作パラメータのセットを決定するように構成されている。したがって、下流計算ユニット124は、プロセスおよび/または動作パラメータの決定されたセットならびに履歴データに基づいてそれぞれの機器ゾーンのためのゾーン特定制御セッティングを決定することができる。履歴データは、上流機器ゾーンにおける前に処理された投入材料に関連した1つまたは複数の履歴上流オブジェクト識別子からのデータを含み、それぞれの履歴上流オブジェクト識別子は、前に処理された投入材料が上流機器ゾーンにおいて処理されたプロセスパラメータおよび/または機器動作条件を示すプロセスデータの少なくとも一部が加えられる。次いで、ゾーン特定制御セッティングは、化学製品170の製造プロセスを制御するために提供される。ゾーン特定制御セッティングは、インターフェースと同じである場合がある出力インターフェース、または異なる構成要素を介して提供される場合がある。したがって、ゾーン特定制御セッティングは、化学製品170を製造するために下流計算ユニット124および/またはプラント制御システムによって使用される。
【0184】
幾つかの場合、下流計算ユニット124は、工業プラントにおける全ての機器または機器ゾーンからプロセスデータを受信する場合がある。下流計算ユニット124は、上流オブジェクト識別子およびゾーン存在信号に基づいてリアルタイムプロセスデータのサブセットを決定する場合がある。例えば、トリガ信号またはイベントは、上流機器ゾーンのためのゾーン存在信号を生成するために使用される場合もある。加えて、または代替的に、ゾーン存在信号は、製造環境において時間依存データであるリアルタイムプロセスデータを空間データにマッピングすることによって提供される。これにより、ゾーン存在信号は、上流機器ゾーンにおける前駆体材料114の処理のために関連したプロセスパラメータおよび/または機器動作条件のみならず、リアルタイムプロセスデータに含まれる前記プロセスパラメータおよび/または機器動作条件の時間態様も決定するために使用することができる。
【0185】
幾つかの場合、下流計算ユニット124は、下流オブジェクト識別子122に関連した、化学製品170のために関連した少なくとも1つの下流性能パラメータを計算する場合もある。幾つかの場合、下流性能パラメータは、ゾーン特定パラメータである場合もある。計算は、この場合は下流オブジェクト識別子122において選択的に加えられるように示されている下流リアルタイムプロセスデータのサブセット126に基づく。下流性能パラメータの計算は、1つまたは複数の履歴下流オブジェクト識別子からのデータを含む下流履歴データにも基づく。それぞれの履歴下流オブジェクト識別子は、過去に下流機器ゾーンにおいて処理されたそれぞれの前駆体材料に関連している。それぞれの履歴下流オブジェクト識別子は、前に処理された前駆体材料が下流機器ゾーンにおいて処理された下流プロセスパラメータおよび/または機器動作条件を示す下流プロセスデータの少なくとも一部が加えられる。幾つかの場合、履歴下流オブジェクト識別子に少なくとも幾つかは、関連する下流性能パラメータも含む場合があるまたは関連する下流性能パラメータが加えられる場合もある。
【0186】
少なくとも1つの下流性能パラメータは、例えば、メタデータとして、下流オブジェクト識別子122に加えられる場合がある。したがって、下流オブジェクト識別子122は、化学製品170の品質に関連した性能パラメータで強化される。したがって、品質制御プロセスは、例えば、品質関連データを結果として生じる化学製品170に結合することによって、トレーサビリティを改善しながら簡略化および改善されることができる。また、少なくとも計算された下流性能パラメータは、下流製造プロセスを適応させるために下流のさらなるゾーンにおいて使用される場合がある。したがって、下流製造プロセスは、化学製品170の性能を維持しながらより細かい粒度で制御されかつ柔軟になることができる。
【0187】
下流機器ゾーンからの下流リアルタイムプロセスデータのサブセット126は、前駆体材料114が初期下流機器ゾーンにあった時間窓内のデータである場合があるか、または時間窓は、前駆体材料114が混合ポット104を介して処理された時間だけのためにさらにより短い場合がある。下流リアルタイムプロセスデータは、時間窓を決定するために使用することができる。これにより、下流オブジェクト識別子122は、下流リアルタイムプロセスデータの時間次元を使用することによって高い関連性データによって強化することができる。したがって、オブジェクト識別子は、製造プロセスにおいて材料を追跡するためのみならず、エッジコンピューティングおよび/またはクラウドコンピューティングをより効果的にすることができる高品質データを封入するために使用することができる。オブジェクト識別子データは、機械学習モデルのより迅速な訓練および再訓練に十分に適していることができる。オブジェクト識別子に封入されたデータは従来のデータセットよりもコンパクトであることができるので、データ統合を単純化することもできる。
【0188】
下流リアルタイムプロセスデータのサブセット126の少なくとも一部は、前駆体または前駆体材料114が下流機器ゾーンにおいて処理されるプロセスパラメータおよび/または機器動作条件、すなわち、混合ポット104および弁112a~bの動作条件、例えば、入ってくる質量流量、出ていく質量流量、充填度、温度、湿度、タイムスタンプまたは進入時間、退出時間などのいずれか1つまたは複数を示している。この場合の機器動作条件は、弁112a,bおよび/または混合ポット104の制御信号および/またはセットポイントである場合がある。下流制御セッティングは、例えば、これらを制御するために使用することができる。下流リアルタイムプロセスデータのサブセット126は、時系列データである場合があるまたは時系列データを含む場合があり、これは、1つまたは複数のセンサ、例えば、充填センサ144の出力を介して得られる場合がある時間依存信号を含む場合があることを意味する。時系列データは、連続的な信号を含む場合があるかまたはそれらのいずれかが、規則的または不規則な時間間隔で断続的である場合がある。下流リアルタイムプロセスデータのサブセット126は、1つまたは複数のタイムスタンプ、例えば、混合ポット104への進入時間および/または混合ポット104からの退出時間を含む場合もある。したがって、特定の前駆体材料114は、下流オブジェクト識別子122を介してその前駆体材料114のために関連した下流リアルタイムプロセスデータのサブセット126に関連付けられる場合がある。下流オブジェクト識別子122は、製造プロセスの下流の他のオブジェクト識別子に加えられる場合があり、これにより、特定のプロセスデータおよび/または機器動作条件を特定の化学製品に相関させることができる。その他の重要な利点は、本開示の他の部分、例えば、概要セクションにおいて既に説明した。
【0189】
例えば、搬送エレメント102a,bおよび関連したベルトを含むコンベヤシステムは、下流機器ゾーンの下流方向にある中間機器ゾーンであると考えられる場合がある。この例における中間機器ゾーンは、ベルト上を横断する前駆体に熱を加えるために使用されるヒータ118を含む。コンベヤシステムは、1つまたは複数のセンサ、例えば、速度センサ、重量センサ、温度センサ、または中間機器ゾーンにおいて前駆体材料114のプロセスパラメータおよび/もしくは特性を測定もしくは検出するためのあらゆるその他の種類のセンサのうちのいずれか1つまたは複数を含む場合もある。センサのあらゆるまたは全ての出力は、下流計算ユニット124へ提供される場合がある。
【0190】
前駆体材料114が横断方向120に沿って前進するとき、前駆体材料114にはヒータ118を介して熱が加えられる。ヒータ118は下流計算ユニット124に動作可能に結合されている場合があり、すなわち、下流計算ユニット124はヒータ118から信号またはリアルタイムプロセスデータを受信する場合がある。さらに、ヒータ118は、下流計算ユニット124を介して、例えば、下流制御セッティングである場合があるまたは下流制御セッティングを介して得られる場合がある1つまたは複数の制御信号および/またはセットポイントを介して制御可能である。したがって、下流機器において前駆体材料114が処理される方式は、下流制御セッティングの少なくとも幾つかを介して決定される。下流制御セッティングの幾つかは、さらに説明するように他の下流ゾーンを制御するために使用される場合がある。
【0191】
同様に、搬送エレメント102a,bおよび関連するベルトを含むコンベヤベルトも下流計算ユニット124に動作可能に結合されている場合があり、すなわち、下流計算ユニット124は、搬送エレメント102a,bから信号または下流プロセスデータの一部を受信する場合がある。結合は、例えば、下流ネットワーク138を介する場合がある。さらに、搬送エレメント102a,bは、下流計算ユニット124を介して、例えば、下流制御セッティングとしてまたは下流制御セッティングに応答して、下流計算ユニット124を介して提供される1つまたは複数の制御信号および/またはセットポイントを介して、制御可能である場合もある。したがって、搬送エレメント102a,bの速度は、下流計算ユニット124によって観察可能および/または制御可能である場合がある。
【0192】
選択的に、前駆体材料114の量が中間機器ゾーンにおいて一定またはほぼ一定であるので、中間機器ゾーンのためにさらなるオブジェクト識別子が提供されない場合がある。したがって、中間機器ゾーン、すなわち、ヒータ118および/または搬送エレメント102a,bからのプロセスデータは、前のまたは先行するゾーンのオブジェクト識別子、すなわち、下流オブジェクト識別子122に加えられる場合もある。したがって、下流リアルタイムプロセスデータ126の加えられたサブセットは、前駆体材料114が中間機器ゾーンにおいて処理される、中間機器ゾーンからのプロセスパラメータおよび/または機器動作条件、すなわち、ヒータ118および/または搬送エレメント102a,bの動作条件、例えば、進入する質量流量、出ていく質量流量、中間ゾーンからの1つまたは複数の温度値、進入時間、退出時間、搬送エレメント102a,bおよび/またはベルトの速度などのうちのいずれか1つまたは複数をさらに示すためにエンリッチされる場合がある。この場合の機器動作条件は、下流制御セッティングから導き出すことができる、搬送エレメント102a,bおよび/またはヒータ118の制御信号および/またはセットポイントである場合がある。
【0193】
下流リアルタイムプロセスデータのサブセット126が、前駆体材料114がそれぞれの機器ゾーンに存在する時間期間に支配的に関連することが明らかとなるであろう。したがって、特定の前駆体材料114のための関連するプロセスデータの正確なスナップショットは、下流オブジェクト識別子122を介して提供することができる。前駆体材料114のさらなる観察可能性は、中間機器ゾーン内の下流製造プロセスの特定のポーションまたは部分、例えば、化学反応の知識を介して抽出される場合がある。代替的に、または加えて、前駆体材料114が中間機器ゾーンを横断する速度は、下流計算ユニット124を介してさらなる観察可能性を抽出するために使用することができる。特定のタイムスタンプ、または時系列データ、ならびに/または中間機器ゾーンにおける前駆体材料114の進入時間および/もしくは退出時間を備える下流リアルタイムプロセスデータのサブセット126に関連して、前駆体材料114が中間機器ゾーンにおいて処理される条件のより粒度の高い詳細が、下流オブジェクト識別子122から得られる場合がある。
【0194】
下流オブジェクト識別子122からのデータは、下流製造プロセス全体および/またはその特定の部分、例えば、初期下流機器ゾーンおよび/または中間機器ゾーン内の下流製造プロセスの部分の監視および/または制御のための1つまたは複数の下流MLモデルを訓練するために使用される場合がある。下流MLモデルおよび/または下流オブジェクト識別子122は、化学製品の1つまたは複数の下流性能パラメータを1つまたは複数のゾーンにおける下流製造プロセスの詳細に相関させるために使用される場合もある。
【0195】
前駆体材料114が横断方向120に沿って前進すると、投入材料114の特性が変化する場合があり、投入材料114が派生材料116に転換または変換する場合があることが認められるであろう。例えば、ヒータ118が前駆体材料114を加熱すると、前駆体材料114が派生材料116を生じる場合がある。当業者は、単純性および理解の容易さのために、派生材料116が本教示において時には前駆体材料と呼ばれる場合もあることを認めるであろう。例えば、説明されている機器ゾーンまたは構成要素の文脈において、したがって、この例の説明において説明された下流製造プロセス内で前駆体がどの相にあるかが明らかになるであろう。
【0196】
ここで、材料が複数の部分に分割されるゾーンの例を説明する。図1は、切断ミル142および第2の搬送エレメント106a,bを含むさらなる下流機器ゾーンとしてのこのようなゾーンを示している。横断方向154に沿って横断する派生材料116は、切断ミル142を使用して分割または断片化され、これにより、この例では第1の分割された材料140aおよび第2の分割された材料140bとして示された複数の部分を生じる。
【0197】
したがって、本教示の1つの態様によれば、個々のオブジェクト識別子が各部分に提供される場合がある。しかしながら、幾つかの場合、オブジェクト識別子は、各部分のために個々のオブジェクト識別子を提供する代わりに、部分のうちの1つ、または部分のうちの幾つかのためにのみ提供される場合がある。これは、例えば、いずれの部分を追跡するかが問題でない場合であり得る。例えば、オブジェクト識別子は、廃棄される派生材料116の部分のためには提供されない場合がある。ここで再び図1を参照すると、第1のさらなる下流オブジェクト識別子130aが第1の分割された材料140aのために提供され、第2のさらなる下流オブジェクト識別子130bが第2の分割された材料140bのために提供される。
【0198】
第1のさらなる下流オブジェクト識別子130aは下流オブジェクト識別子122の少なくとも一部を含み、同様に、第2のさらなる下流オブジェクト識別子130bは下流オブジェクト識別子122の少なくとも一部を含む。したがって、下流計算ユニット124は、さらなる下流オブジェクト識別子およびゾーン存在信号に基づいて下流リアルタイムプロセスデータの別のサブセット(例えば、下流リアルタイムプロセスデータの第1のサブセット132aおよび/または下流リアルタイムプロセスデータの第2のサブセット132b)を決定する場合がある。次いで、下流計算ユニット124は、下流オブジェクト識別子122からのデータ、リアルタイムプロセスデータの他のサブセット、およびさらなる下流機器ゾーンにおける前に処理された前駆体に関連する1つまたは複数の履歴下流オブジェクト識別子からの下流履歴データに基づいて、下流機器ゾーンのための、およびまた選択的に下流機器ゾーンの下流の他の機器ゾーンのための、さらなるゾーン特定制御セッティングを決定する場合がある。
【0199】
第1のさらなる下流オブジェクト識別子130aは、選択的に、下流リアルタイムプロセスデータの第1のサブセット132aが加えられ、第2のさらなる下流オブジェクト識別子130bは、選択的に、下流リアルタイムプロセスデータの第2のサブセット132bが加えられる。下流リアルタイムプロセスデータの第1のサブセット132aは、下流リアルタイムプロセスデータの第2のサブセット132bのコピーである場合があるか、または部分的に同じデータである場合がある。例えば、第1の分割された材料140aおよび第2の分割された材料140bが、同じプロセスを、すなわち基本的に同じ場所および時間において受ける場合、さらなる下流オブジェクト識別子130aおよび第2のさらなる下流オブジェクト識別子130bに加えられるプロセスデータは、同じまたは類似である場合がある。しかしながら、さらなる下流機器ゾーン内で、さらなる下流オブジェクト識別子130aおよび第2のさらなる下流オブジェクト識別子130bが異なる処理を受ける場合には、下流リアルタイムプロセスデータの第1のサブセット132aと、下流リアルタイムプロセスデータの第2のサブセット132bとは、互いに異なる場合がある。
【0200】
しかしながら、当業者は、幾つかの場合、切断ミル142を介して処理された材料が複数の部分に分割される場合、1つのオブジェクト識別子のみが切断ミル142において提供される場合があり、次いで、複数のオブジェクト識別子がその後に切断ミル142に提供される場合があることを認めるであろう。したがって、特定の下流製造プロセスの詳細に応じて、切断ミルは、分離装置であるか、またはそうでない場合がある。同様に、幾つかの場合、先行するオブジェクト識別子にゾーンからのプロセスデータが加えられるように、新たなオブジェクト識別子が切断ミルのために提供されない場合がある。したがって、新たなオブジェクト識別子は、材料が分割されるかつ/または組み合わされるゾーンにおいて提供される場合がある。例えば、幾つかの場合、さらなる下流オブジェクト識別子130aおよび第2のさらなる下流オブジェクト識別子130bは、切断ミル142の後に、例えば、切断ミル142の後の異なるゾーンにおける進入時に提供される場合がある。
【0201】
この例において、さらなる下流機器ゾーンは、カメラまたはあらゆるその他の種類の光学センサである場合があるイメージングセンサ146も含む。イメージングセンサ146も、下流計算ユニット124に動作可能に結合されている場合がある。イメージングセンサ146は、さらなる下流機器ゾーンに進入する前に派生材料116の1つまたは複数の特性を測定または検出するために使用される場合がある。これは、例えば、所与の品質基準を満たさない材料を拒絶するまたは逸らせるために行われる場合がある。材料の質量流量は、本教示の1つの態様に従って、さらなる下流機器ゾーンにおいて変化させられるので、さらなる下流オブジェクト識別子130aおよび第2のさらなる下流オブジェクト識別子130bの前に別のオブジェクト識別子(図1に示されていない)が提供されている場合がある。
【0202】
さらなる下流オブジェクト識別子130aおよび第2のさらなる下流オブジェクト識別子130bの提供は、イメージングセンサ146を介して、品質基準をパスする派生材料116に応答してトリガされる場合がある。隣接するゾーンまたはオブジェクト識別子からのデータ、例えば、中間機器ゾーンからの質量流量および下流機器ゾーンへの質量流量を相関させることによって、下流計算ユニット124は、どの特定の前駆体材料114または派生材料116が、後続のゾーンに進入する材料に関連させられるかを判定する場合がある。代替的にまたは加えて、タイムスタンプのうちの2つ以上、例えば、中間機器ゾーンからの退出のタイムスタンプならびにイメージングセンサ146を介した検出および/またはさらなる下流機器ゾーンにおける進入のタイムスタンプが、ゾーンの間で相関させられる場合がある。センサ出力を介して直接的に測定されたまたは2つ以上のタイムスタンプから判定された搬送エレメント102a,bの速度は、前駆体の特定のパケットまたはバッチとそのオブジェクト識別子との間の関係を確立するためにも使用することができる。したがって、所与の時間に製造プロセス内のどこに特定の化学製品170があったかが判定される場合もあり、したがって、時間-スペース関係が確立される場合がある。これらの態様のうちの幾つかまたは全ては、前駆体から完成品までの化学製品170のトレーサビリティを改善するのみならず、製造プロセスを監視および改良しかつより適応可能および制御可能にするために使用可能であることができる。
【0203】
説明したように、第1のさらなる下流オブジェクト識別子130aおよび第2のさらなる下流オブジェクト識別子130bは、それぞれさらなる下流機器ゾーンからの下流リアルタイムプロセスデータの第1のサブセット132aおよび下流リアルタイムプロセスデータの第2のサブセット132bが加えられる。下流リアルタイムプロセスデータの第1のサブセット132aおよび下流リアルタイムプロセスデータの第2のサブセット132bは、下流オブジェクト識別子122にリンクされるまたは下流オブジェクト識別子122が加えられる場合もある。前に説明した下流オブジェクト識別子122と同様に、下流リアルタイムプロセスデータの第1のサブセット132aおよび下流リアルタイムプロセスデータの第2のサブセット132bは、派生材料116がさらなる下流機器ゾーンにおいて処理される、下流プロセスパラメータおよび/または機器動作条件、すなわち、イメージングセンサ146の出力、切断ミル142および第2の搬送エレメント106a,bの動作条件、例えば、入ってくる質量流量、出ていく質量流量、充填度、温度、光学特性、タイムスタンプなどのうちのいずれか1つまたは複数を示している。この場合の機器動作条件は、さらなる下流制御セッティングから導き出される場合がある、切断ミル142および/または第2の搬送エレメント106a,bの制御信号および/またはセットポイントである場合がある。したがって、さらなるゾーン特定制御セッティングは、下流オブジェクト識別子122からのデータ、例えば、下流オブジェクト識別子122に加えられた少なくとも1つのゾーン特定性能パラメータに基づいて最適化することができる。
【0204】
下流リアルタイムプロセスデータの第1のサブセット132aおよび下流リアルタイムプロセスデータの第2のサブセット132bは、時系列データを含む場合があり、これは、1つまたは複数のセンサを介して得られる場合がある時間依存信号、例えば、イメージングセンサ146の出力および/または第2の搬送エレメント106a,bの速度を含む場合があることを意味する。
【0205】
派生材料116が、イメージングセンサ146に遭遇した後に前進すると、派生材料116は、第2の搬送エレメント106a,bによって駆動される横断方向154で切断ミル142に向かって移動させられる。第2の搬送エレメント106a,bは、この例では、搬送エレメント102a,bを含むコンベヤシステムとは別個の第2のコンベヤベルトシステムの一部として示されている。第2のコンベヤベルトシステムは、搬送エレメント102a,bを含む同じコンベヤシステムの一部である場合もあることが認められるであろう。したがって、さらなる下流機器ゾーンは、別のゾーンにおいて使用される同じ機器の幾つかを含む場合がある。
【0206】
図1に見られるように、第1の分割された材料140aおよび第2の分割された材料140bは、製造のより後において異なる経路を進み、それらのそれぞれのオブジェクト識別子、すなわち、さらなる下流オブジェクト識別子130aおよび第2のさらなる下流オブジェクト識別子130bは、残りの製造プロセスを通じておよび幾つかの場合にはそれを超えてもまた個々にそれらを辿るまたは追跡することを可能にする。
【0207】
下流機器ゾーンから出た後、第1の分割された材料140aは押出機150に供給されるのに対し、第2の分割された材料140bは、硬化装置162および第3の搬送エレメント108a,bを含む第3の機器ゾーンにおける硬化のために搬送される。したがって、示された搬送エレメント108a,bは、前に説明したように、非限定的な例である。第3の機器ゾーンが初期下流機器ゾーンおよびさらなる下流機器ゾーンの下流にあることが認められるであろう
第2の分割された材料140bがベルトを介して横断方向156に移動させられると、第2の分割された材料140bは、硬化装置162を介して硬化プロセスを受け、硬化した第2の分割された材料160を生じる。実質的な質量変化が生じない場合があるので、1つの態様によれば、第3の機器ゾーンのために新たなオブジェクト識別子は提供されない場合がある。したがって、前に説明したように、第3の機器ゾーンからのプロセスデータも、第2のさらなる下流オブジェクト識別子130bに加えられる場合がある。上記と同様に、下流リアルタイムプロセスデータの加えられた第2のサブセット132bは、したがって、第3の機器ゾーンからのプロセスパラメータおよび/または機器動作条件、すなわち、第2の分割された材料140bが第3の機器ゾーンにおいて処理された硬化装置162および/または搬送エレメント108a,bの動作条件、例えば、進入する質量流量、退出する質量流量、第3のゾーンからの1つまたは複数の温度値、進入時間、退出時間、搬送エレメント108a,bおよび/またはベルトの速度などのうちのいずれか1つまたは複数をさらに示すようにエンリッチされる場合がある。この場合の機器動作条件は、さらなるゾーン特定制御セッティングから導き出される場合もある搬送エレメント102a,bおよび/または硬化装置162の制御信号および/またはセットポイントである場合がある。したがって、さらなるゾーン特定制御セッティングは、下流オブジェクト識別子122からのデータ、例えば、下流オブジェクト識別子122に加えられた少なくとも1つのゾーン特定性能パラメータに基づいて、最適化されることができる。
【0208】
同様に、第1の分割された材料140aは、押出機150、温度センサ148および第4の搬送エレメント110a,bを含む第4の機器ゾーンへ前進する。ここでも、実質的な質量変化が生じない場合があるので、1つの態様によれば、第4の機器ゾーンのために新たなオブジェクト識別子は提供されない場合がある。したがって、前に説明したように、第4の機器ゾーンからのプロセスデータも、さらなる下流オブジェクト識別子130aに加えられる場合がある。上記と同様に、下流リアルタイムプロセスデータの加えられた第1のサブセット132aは、したがって、第4の機器ゾーンからのプロセスパラメータおよび/または機器動作条件、すなわち、第1の分割された材料140aが第3の機器ゾーンにおいて処理される押出機150および/または温度センサ148および/または搬送エレメント108a,bの動作条件、例えば、進入する質量流量、退出する質量流量、第3のゾーンからの1つまたは複数の温度値、進入時間、退出時間、搬送エレメント110a,bおよび/またはベルトの速度などのうちのいずれかの1つまたは複数をさらに示すようにエンリッチされる場合がある。この場合の機器動作条件は、前に説明したように計算された性能パラメータおよび関連するリアルタイムプロセスデータに基づいて適応させられることもできる搬送エレメント108a,bおよび/または押出機150の制御信号および/またはセットポイントである場合がある。
【0209】
また、押し出された材料152への第1の分割された材料140aの変換の特性および依存性もさらなる下流オブジェクト識別子130aに含まれる場合がある。第4の機器ゾーンも下流機器ゾーンおよびさらなる下流機器ゾーンの下流にあることが認められるであろう。
【0210】
認めることができるように、製造プロセスを通じた材料および製品監視を向上させながら、個々のオブジェクト識別子の数を減じることができる。
【0211】
押し出された材料152が、搬送エレメント108a,bを介して生成された横断方向158にさらに移動すると、押し出された材料152は、収集ゾーン166において収集される場合がある。収集ゾーン166は貯蔵ユニットである場合があるか、または下流製造プロセスのさらなるステップを適用するためのさらなる処理ユニットである場合がある。収集ゾーン166において、追加の材料が組み合わされる場合があり、ここに示したように硬化した第2の分割された材料160が、押し出された材料152と組み合わされる場合がある。したがって、前に説明したように、新たなオブジェクト識別子が提供される場合がある。このようなオブジェクト識別子は、最終下流オブジェクト識別子134として示されている。最終下流オブジェクト識別子134は、さらなる下流オブジェクト識別子130aおよび第2のさらなる下流オブジェクト識別子130bの全部または一部を含む場合がある、最終ゾーンリアルタイムプロセスデータのサブセット136が加えられる場合がある。したがって、最終下流オブジェクト識別子134は、本開示において詳細に説明したのと同様に、収集ゾーン166からのプロセスパラメータおよび/または機器動作条件が提供される。収集ゾーン166においていずれかが行われたならば機能またはさらなる処理に応じて、進入する質量流量、退出する質量流量、収集ゾーン166からの1つまたは複数の温度値、進入時間、退出時間、速度などのうちのいずれか1つまたは複数などのデータが、最終ゾーンリアルタイムプロセスデータ136として含まれる場合がある。
【0212】
幾つかの場合、収集ゾーン166からの個々のロットは、貯蔵および/または分類および/またはパッケージングのために送られる場合がある。このような個々のロットは、製品収集ビン164aとして示されている。量は再び分割されているので、個々のオブジェクト識別子が、各サイロのために提供される場合があり、これにより、そのサイロにおける化学製品170、すなわち、製品収集ビン164aのための個々のオブジェクト識別子が、化学製品170がそこに曝されるプロセスデータまたは条件と関連付けられることができる。
【0213】
認められるように、オブジェクト識別子のそれぞれはGUIDである場合がある。それぞれは、先行するオブジェクト識別子からのデータを完全にまたは部分的に含む場合があるか、またはそれらはリンクされる場合がある。したがって、関連する品質データは、スナップショットまたは追跡可能リンクとして特定の化学製品170に添付することができる。
【0214】
説明したように、1つまたは複数の下流MLモデルは、1つまたは複数の下流性能パラメータおよび/または下流制御セッティングを計算または予測するために使用される場合があり、それらのうちのいずれかまたは両方はゾーン特定である場合がある。下流MLモデルのそれぞれまたは幾つかはまた、少なくとも1つの下流性能パラメータおよび/または下流制御セッティングのための信頼レベルを示す信頼値を提供するように構成されていることも可能である。例えば、下流性能パラメータを予測する際の信頼レベルが所定の限界よりも低い場合、実験室分析のための試料の物理的試験を開始するために、警告が警告信号として生成される場合がある。予測の信頼レベルが精度しきい値よりも低下することに応答して、サンプリングオブジェクト識別子がインターフェースを介して自動的に提供されることも可能である。サンプリングオブジェクト識別子は同様の形式で提供される場合があり、下流計算ユニット124は、関連する下流プロセスデータのサブセットを、ここでは試料材料172として示された、サンプリングオブジェクト識別子が関連する材料のためのサンプリングオブジェクト識別子に加える場合がある。下流計算ユニット124は、低い信頼レベルを有していた少なくとも1つのゾーン特定性能パラメータをサンプリングオブジェクト識別子に加える場合もある。したがって、試料材料172を収集し、オブジェクト識別子を使用して品質制御をさらに改善するために検証および/または分析することができる。
【0215】
図2は、特に初期下流機器ゾーンから見た、本教示の方法態様を示すフローチャート200またはルーチンを示している。ブロック202において、下流計算ユニット124において、化学製品170の製造を制御するための下流制御セッティングのセットが提供される。下流制御セッティングは、下流オブジェクト識別子122に基づいて決定される。下流オブジェクト識別子122は、前駆体材料114の1つまたは複数の特性を示す前駆体データを含む。下流制御セッティングはまた、化学製品170に関連した少なくとも1つの所望の下流性能パラメータに基づいて決定される。下流制御セッティングはまた、下流履歴データに基づいて決定される。下流履歴データは、下流機器を介して過去の1つまたは複数の化学製品を製造するために使用された下流プロセスパラメータおよび/または動作セッティングを含む。下流制御セッティングのセットは、下流工業プラントにおいて化学製品を製造するために使用可能である。選択的に、ブロック204において、下流計算ユニット124において、下流機器または機器ゾーンのうちの1つまたは複数から下流リアルタイムプロセスデータが受け取られる。下流リアルタイムプロセスデータは、下流リアルタイムプロセスパラメータおよび/または機器動作条件を含む。さらに選択的に、ブロック206において、下流計算ユニット124を介して、下流リアルタイムプロセスデータのサブセットが下流オブジェクト識別子および下流ゾーン存在信号に基づいて決定される。下流ゾーン存在信号は、下流製造プロセス中の特定の機器ゾーンにおける前駆体材料の存在を示す。
【0216】
同様に、前駆体が後続のゾーンへ前進するとき、別のオブジェクト識別子が提供されるか否かが判定される場合がある。判定されない場合、後続のゾーンからの下流プロセスデータも、同じオブジェクト識別子に加えられる場合がある。別のオブジェクト識別子が提供されることが判定されると、後続のゾーンからのプロセスデータが別のオブジェクト識別子に加えられる。中間機器ゾーンおよびさらなる下流機器ゾーンなどの、これらのオプションのそれぞれのための詳細が、本開示において、例えば、概要セクションにおいておよび図1を参照して詳細に説明されている。
【0217】
図3に示されたブロック図は、本実施形態において、示された製品プロセシングライン全体に沿って配置された、10個の製品処理デバイスもしくはユニット300~318、またはそれぞれ技術機器を含む、工業プラントの製品製造システムの部分を表す。本実施形態において、これらのプロセシングユニットのうちの1つ(プロセシングユニット308)は、3つの対応する機器ゾーン320,322,324を含む(図3および図5におけるより詳細に示された実施形態も参照されたい)。
【0218】
この例において、化学製品は、投入材料として、原料に基づいて製造される。原料は、液体原料リザーバ300、固体原料リザーバ302、およびリサイクリングサイロ304を介してプロセシングラインに提供され、リサイクリングサイロ304は、例えば、不十分な材料/製品特性または不十分な材料/製品品質を含むあらゆる化学製品または中間製品をリサイクルする。プロセシングライン306~318に投入されるそれぞれの原料は、それぞれのプロセシング機器、すなわち、ドージングユニット306、後続加熱ユニット308、材料バッファ310を含む後続処理ユニット、および後続分類ユニット312を介して処理される。このプロセシング機器306~312の下流に、搬送ユニット314が配置されており、搬送ユニット314は、例えば、製造された材料の不十分な品質によりリサイクルされる必要がある材料を分類ユニットからリサイクリングサイロ304へ搬送する。最後に、分類ユニット312によって分類された材料は、第1および第2のパッキングユニット316,318へ移送され、第1および第2のパッキングユニット316,318は、対応する材料を、輸送のための材料コンテナ、例えば、バルク材量の場合の材料バッグまたは液体材料の場合のボトルに詰め込む。
【0219】
製造システム300~318は、この実施形態において、計算ユニットのデータインターフェースを提供し(両方ともこのブロック図には示されていない)、このデータインターフェースを介して、それぞれの投入材料および処理によるその変化についてのデータを含むデータオブジェクトが提供される。製造プロセス全体は、少なくとも部分的に、計算ユニットを介して制御される。
【0220】
処理機器306~312によって処理される投入材料は、物理的なまたは実世界のいわゆる「パッケージオブジェクト」(以下では「物理的パッケージ」または「製品パッケージ」とも呼ばれる)に分割され、これらのパッケージオブジェクトは、処理ユニット306~312のそれぞれによって取り扱われるまたは処理される。このようなパッケージオブジェクトのパッケージサイズは、例えば、材料重量によって(例えば、10kg、50kgなど)もしくは材料量によって(例えば、1デシメートル、1/10立方メートルなど)固定されることができるか、または重量もしくは量によって判定することもでき、この重量または量のために、かなり一定のプロセスパラメータまたは機器動作パラメータを処理機器によって提供することができる。
【0221】
ドージングユニット306は、まず、投入液体および/または固体原料および/またはリサイクリングサイロ304によって提供されたリサイクル材料からこのようなパッケージオブジェクトを生成する。パッケージオブジェクトを生成すると、ドージングユニットはこれらのオブジェクトを均質化ユニット308へ搬送する。均質化ユニット308は、パッケージオブジェクトの材料を均質化し、すなわち、例えば、処理された液体材料および固体材料、または2つの液体もしくは固体材料を均質化する。加熱プロセスの後、加熱ユニット308は、対応して加熱されたパッケージオブジェクトをトリートメントユニット310へ搬送し、トリートメントユニット310は、例えば、加熱、乾燥もしくは湿潤によってまたはある化学反応によって、投入パッケージオブジェクトの材料を異なる物理的および/または化学的状態に変換する。対応して変換されたパッケージオブジェクトは、次いで、3つの下流パッキングユニット316,318または言及された搬送ユニット314のうちの1つまたは複数へ搬送される。
【0222】
実世界パッケージオブジェクトのその後の処理は、機器306~312に動作可能に結合されたまたは機器の一部である計算ユニットを介して各パッケージオブジェクトに割り当てられた対応するデータオブジェクト330,332,334(前に説明した「下流オブジェクト識別子」を含むまたは表す)によって管理され、計算ユニットのメモリストレージエレメントに記憶される。本実施形態によれば、3つのデータオブジェクト330~334は、機器306~312を介して、すなわち、各機器ユニット306~312、またはそれぞれ対応するスイッチに配置された対応するセンサの出力に応答して提供されるトリガ信号に応答して生成され、このようなセンサは、機器ユニット306~312に動作可能に結合されている。前に言及したように、工業プラントは、異なるタイプのセンサ、例えば、1つもしくは複数のプロセスパラメータを測定するためのおよび/または機器もしくはプロセスユニットに関連した機器動作条件もしくはパラメータを測定するためのセンサを含む場合がある。本実施形態において、機器ユニット306~312内で処理されるバルクおよび/または液体材料の流量およびレベルを測定するためのセンサは、これらのユニットに配置されている。
【0223】
本実施形態において、図3に示された3つの例示的なデータオブジェクト330,332,334はそれぞれ、処理ユニット306~312および314~318に基づいて製品製造プロセス全体の異なる3つの機器ゾーン320,322,324に関する。
【0224】
最初の2つのデータオブジェクト330,332は、プロセスデータを含む製品パッケージオブジェクトを含む。プロセスデータは、関連する物理的パッケージが複数のプロセシングユニット内のその滞在/処理中に受けるプロセシング/処理情報を含む。プロセスデータは、関連するプロセシングユニット内の基礎となる物理的パッケージの滞在時間の間の計算された平均温度などの集合されたデータであることができるかつ/または基礎となる製造プロセスの時系列データであることができる。
【0225】
第1のデータオブジェクト330は、本実施形態において、2つの処理ユニット、ドージングユニット306および加熱ユニット308を通って搬送された物理的パッケージに割り当てられた第1の種類のパッケージ(図3において、「A-パッケージ」と呼ばれる)である。第1のデータオブジェクト330は、処理時間における現時点で、各滞在中の両ユニットの関連するデータを含む。第1のデータオブジェクトは、対応する「製品パッケージID」を含む。
【0226】
加熱ユニット308は、複数の機器ゾーン、本実施形態では、3つの機器ゾーン320,322,324(「ゾーン1」、「ゾーン2」、「ゾーン3」)を含む。これらの異なる機器ゾーンは、関連するプロセスデータを分類または選択するための分類グループとして利用される。このような分類は、関連する物理的パッケージがこの機器ゾーン内にある間の対応する時点内の基礎となる物理的パッケージの処理に関連する、関連する機器ゾーンからのパッケージオブジェクトのためのこれらのデータのみを取得することを助ける場合がある。しかしながら、本実施形態において、物理的パッケージの材料組成は、両処理ユニット306、308によって変化させられない。
【0227】
A-パッケージ330が次のトリートメントユニット310(本実施形態では、「バッファを備えるトリートメントユニット」)に到着すると、各物理的パッケージの材料組成が変化する。なぜならば、この処理ユニット310は、プラグフローモードにおいて物理的パッケージを搬送するだけではないからである。さらに、対応する物理的パッケージは、元のパッケージサイズよりも大きなバッファ体積を含み、これにより、このような物理的パッケージは、規定された逆混合度を有する。その結果、このトリートメントユニット310から出た各物理的パッケージは、図3において「B-パッケージ」と呼ばれる別の種類の物理的パッケージである。
【0228】
対応する第2のデータオブジェクト332(「B-パッケージ」)は、対応する「製品パッケージID」も含む。データオブジェクト332は、さらに、規定された数の前のデータオブジェクト、この例では、規定された割合における、「A-パッケージ」として示されたデータオブジェクト330、いわゆる「関連するA-パッケージからの集合データ」のデータを含む。対応する集合スキームまたはアルゴリズムは、例えば、基礎となる処理ユニット、基礎となる物理的パッケージのサイズ、基礎となる物理的パッケージの材料の混合能力、および基礎となる処理ユニット内の基礎となる物理的パッケージの滞在時間、または処理ユニットの対応する機器ゾーンに依存する。
【0229】
例えば、処理された物理的パッケージをコンテナ、ドラムまたはオクタビン容器などにパックすることによって、処理された物理的(製品)パッケージが、2つのパッキングユニット316,318のうちの一方によって別個の物理的パッケージにパックされると、本実施形態では、対応するパックされた物理的パッケージは、「物理的パッケージ」と呼ばれる別のデータオブジェクト334を介して取り扱われるまたは追跡される。このデータオブジェクト334は、それにパックされた関連する前の物理的パッケージ(本シナリオにおける「A-パッケージ」および「B-パッケージ」など)を含む。対応する「製品パッケージID」の指定は、完全なデータオブジェクトを使用する代わりに、例えば、追跡目的のために十分である。なぜならば、このような製品パッケージIDは、後のデータプロセシング、例えば、外部の「クラウドコンピューティング」プラットフォームによって行われるデータプロセシングの間に容易にリンクされることができるからである。
【0230】
第1のデータオブジェクト(または「オブジェクト識別子」)330は、特に、以下の情報を含む:
- 基礎となるパッケージのための「製品パッケージID」;
- パッケージの基礎となる処理された材料についての情報または仕様などの、基礎となるパッケージについて一般的情報;
- プロセシングライン306~318全体の中での基礎となるパッケージの現在の位置;
- プロセスデータ、すなわち、基礎となるパッケージの処理された材料の温度および/または重量の集合値としてのプロセスデータ;
- 基礎となる製造プロセスの時系列データ;ならびに
- 基礎となるパッケージからの試料への接続であり、製品パッケージは試料ステーションを通過し、規定された瞬間に、オペレータはこの製品パッケージから試料を取出し、実験室に提供する。この試料のために、試料オブジェクト(図6、参照符号634および638を参照)が生成され、関連する製品パッケージ(図6、参照符号626および630を参照)にリンクされる。この試料オブジェクトは、特に、実験室からの対応する製品品質制御(QC)データおよび/または対応する試験機械からの性能データを含む。
【0231】
第2のオブジェクト識別子332は、追加的に、
- バッファ310を備えるトリートメントユニットにおいて生成された関連するA-パッケージからの集合データ
を含む。
【0232】
第3のオブジェクト識別子334は、指定およびタイムスタンプ「物理的パッケージ 1976-02-06 19:12:21.123」を備える2つのパッキングユニット316,318によって生成され、以下の情報を含む:
- 再び、対応するパッケージまたはオブジェクト識別子(「パッケージID」)
図3に示された輸送のために2つの材料コンテナにパックされた製品の名称;
- 対応してパックされた製品を注文するための注文番号;および
- 対応してパックされた製品のロット番号。
【0233】
第1および第2のオブジェクト識別子330,332のパッケージ一般情報は、投入原料の材料データを含み、これは、本実施形態において、材料温度および/または重量などの、投入材料またはそれぞれ処理された材料の化学的および/または物理的特性、を示し、本実施形態では、履歴試験結果などの、投入材料に関連した実験試料または試験データをも含む。
【0234】
図3によっても示された製品製造プロセスによれば、言及されたインターフェースを介して、機器全体からのプロセスデータが収集され、これらは、処理された材料の言及された温度および/または重量などのプロセスパラメータ、ならびに本実施形態において、言及されたヒータの温度および/または適用されたドージングパラメータなどの、投入材料が処理される機器動作条件をも示している。収集されたプロセスデータ、本実施形態では、関連するA-パッケージからの集合データなどのプロセスデータの一部のみが、本実施形態において、第2のオブジェクト識別子332に加えられる。
【0235】
前に説明したように、3つのオブジェクト識別子330~334は、本実施形態において、言及した投入材料データおよび/または特定のプロセスパラメータおよび/または機器動作条件を化学製品の少なくとも1つの性能パラメータに相関させるまたはマッピングするために使用され、前記性能パラメータは、それぞれ基礎となる材料、例えば、対応する化学製品のいずれか1つまたは複数の特性である、またはこの特性を示す。
【0236】
図3に示された本実施形態によれば、2つのオブジェクト識別子330,332に含まれた収集されたプロセスデータ(集合値として)は、プロセスパラメータ、および追加的に製造プロセス中に測定された機器動作条件を示す数値を含む。加えて、オブジェクト識別子330,332は、プロセスパラメータおよび/または機器動作条件のうちの1つまたは複数の時系列データとして提供されたプロセスデータを含む。機器動作条件は、機器の状態、本実施形態では、製造機械セットポイント、コントローラ出力、および、例えば、振動測定に基づく、あらゆる機器関連警告を表すあらゆる特性または値であることができる。加えて、搬送エレメント速度、温度およびフィルタ差圧などのファウリング値、メンテナンス日を含むことができる。
【0237】
図3に示された製品製造システムの実施形態において、製品処理機器306~318の全体は、言及された複数の3つの機器ゾーン320~324を含み、これにより、製造プロセス中、投入原料300~304が処理ライン306~318の全体に沿って横断し、本実施形態において、第1の機器ゾーン320から第2の機器ゾーン322へおよび第2の機器ゾーン322から第3の機器ゾーン324へ前進する。このような製造シナリオにおいて、第1のオブジェクト識別子330が第1の機器ゾーン320において提供され、第1の機器ゾーン320を通って処理された後に、第2のオブジェクト識別子332が第2の機器ゾーン322における投入材料の進入時に提供される。第2のオブジェクト識別子332は、第1のオブジェクト識別子330によって提供されるデータまたは情報の少なくとも一部が加えられまたはこれを含み、加えて、最後のデータ/情報「関連するA-パッケージからの集合データ」を含む。
【0238】
製造プロセス全体の間に対応するパッケージへのオブジェクト識別子の確実かつ安全な割り当てを可能にするために、オブジェクト識別子330~334のうちのいずれかまたはそれぞれが、固有の識別子、好ましくはグローバル一意識別子(「GUID」)を含む場合があることは注目に値する。
【0239】
本製品プロセシングシナリオにおいて、第1のオブジェクト識別子330に加えられた言及されたプロセスデータは、第1の機器ゾーン320から収集されたプロセスデータの少なくとも一部である。したがって、第2のオブジェクト識別子332は、第2の機器ゾーン322から収集されたプロセスデータの少なくとも一部が加えられ、第2の機器ゾーン322から収集されたプロセスデータは、投入原料300~304が第2の機器ゾーン322において処理されたプロセスパラメータおよび/または機器動作条件を示す。
【0240】
以下の表1において、別の例示的なオブジェクト識別子が、再び表形式で示されている。このオブジェクト識別子は、前に説明された3つのオブジェクト識別子330~334よりも大幅に多い情報/データを含む。
【0241】
この例示的なオブジェクト識別子は、以下に説明される図4に示されているが、図4に含まれたものよりも多くのデータを含むもののような、基礎となる日付およびタイムスタンプ「1976-02-06 18:31:53.401」を備えるいわゆる「B-パッケージ」に関する。
【0242】
固有の識別子(「固有ID」)は、この例において、固有URL(「uniqueObjectURL」)を含む。基礎となるパッケージの主な詳細(「パッケージ詳細」)は、この例において、2つの値「02.02.1976 18:31:53.401」を有するパッケージの生成の日付およびタイムスタンプ(「生成タイムスタンプ」)、ならびにパッケージタイプ「B」を有するこの例において、パッケージのタイプ(「パッケージタイプ」)である。基礎となる製造ラインに沿ったパッケージの現在の位置(「パッケージ位置」)は、「パッケージ位置リンク」、この例では製造ラインの「コンベヤベルト1」への搬送リンクによって規定される。
【0243】
コンベヤベルト1において、85℃の材料温度を現在表している平均温度(「平均値」)を測定するための測定機器(例示的な処理データまたは値を含む「測定点」を参照)および基礎となる温度ゾーンの対応する記述(「記述」)、この例では「温度ゾーン1」が提供される。加えて、測定機器は、コンベヤベルト1におけるパッケージの進入日/時間(「進入時間(entry time, 入場時刻)」)、この例では「02.02.1976 18:31:54.431」を検出し、コンベヤベルト1からのパッケージの退出日/時間(「退出時間(leaving time, 退場時刻)」)、この例では「02.02.1976 18:31:57.234」を検出するためのセンサも含むことができる。最後に、測定機器は、製造プロセスに関する基礎となる時系列情報(「時系列」)の時系列値(「時系列値」)を検出するためのセンサ機器を含む。
【0244】
加えて、示されたオブジェクト識別子は、この例において、さらに、既に処理された材料を中間で記憶するために、下流に配置された「コンベヤベルト2」、下流に配置された「ミキサ1」および下流に配置された「サイロ1」についての情報を含む。
【0245】
【表1】
【0246】
図4は、工業プラントの基礎となる製品製造システムのプロセスパートの第2の実施形態を示しており、工業プラントは、この第2の実施形態において、それぞれ6つの製品処理デバイス400,402,406,410,412,416または技術機器を含む。
【0247】
パッケージオブジェクトを処理するための「上流プロセス」400は、処理されたパッケージオブジェクトを分類するための「分類ユニット」402に接続されている。上流プロセス400および分類ユニット402は、第1のデータオブジェクト404によって管理される。このデータオブジェクト404は、その生成の日付および時間を示す基礎となる日付およびタイムスタンプ「1976-02-06 18:51:43.431」を備える既に記述された「B-パッケージ」に関する。データオブジェクト404は、現在処理されているパッケージオブジェクトの「パッケージID」(いわゆる「オブジェクト識別子」)を含む。データオブジェクト404は、さらに、現在処理されているパッケージオブジェクトについてのnの予め記述された化学的および/または物理的特性、この例では「特性1」および「特性n」を含む。
【0248】
投入材料、すなわち、この例において、上流プロセス400に供給される対応するパッケージオブジェクトは、「リサイクリングサイロ」406によって提供される。リサイクリングサイロ406は、他方では、リサイクルされなければならずかつしたがって分類ユニット402によってリサイクリングサイロ406に分類されるパッケージオブジェクトを搬送する「搬送ユニット1」410から基礎となるリサイクルされた材料を得る。基礎となる搬送プロセスステップ410は、上述の「B-パッケージ」に関しかつ言及された基礎となる日付およびタイムスタンプ「1976-02-06 18:51:43.431」、現在処理されるパッケージオブジェクトの「パッケージID」および2つの化学的および/または物理的特性「特性1」および「特性n」を含む第2のデータオブジェクト408によって管理される。しかしながら、基礎となる分類されたパッケージオブジェクトをリサイクルするための言及された要求により、第2のデータオブジェクト408は、さらに、特にそのパッケージオブジェクト、この例では、「低いまたは不十分な材料または製品性能」のためのそれぞれの性能インジケータを含む、基礎となるパッケージオブジェクトの別の化学的および/または物理的特性、この例では、「特性2」を含む。
【0249】
上流プロセス400によって処理されかつ分類ユニット402によって分類されないパッケージオブジェクトは、対応するパッケージオブジェクトのための性能値に応じて、分類ユニット402によって第1の「パッキングユニット1」412または第2の「パッキングユニット2」416に提供される。パッキングユニット412,416は、対応するパッケージオブジェクトをそれぞれのコンテナ414,418にパックするために使用される。2つのパッキングユニット412,416によって実行されるパッキングプロセスは、第3のデータオブジェクト420および第4のデータオブジェクト422によって管理される。
【0250】
2つのデータオブジェクト420,422は両方とも、「物理的パッケージ」に関し、上述の「B-パッケージ」と同じ日付「1976-02-06」を含むが、上述の「B-パッケージ」よりも遅いタイムスタンプ「19:12:21.123」を含む。それらは、基礎となるパッケージオブジェクトの「パッケージID」も含む。しかしながら、データオブジェクト420,422は、さらに、基礎となる最終製品のための性能インジケータ、この例では、第1のコンテナ(または充填サック)414に貯蔵された製品に関する「性能媒体範囲」および第2のコンテナ(または充填サック)418に貯蔵された製品の場合の「性能高範囲」を含む。加えて、2つのデータオブジェクト420,422は、対応する最終製品の「注文番号」および「ロット番号」を含む。
【0251】
図5は、この第2の実施形態では、それぞれ9個の製品処理デバイス500~516または技術機器を含む、工業プラントにおいて実装される基礎となる化学製品製造プロセスまたはシステムの部分の第3の実施形態を示す。
【0252】
この製品プロセシングアプローチは、公知の形式でポリマー材料を製造するために、2つの原料、すなわち「原料液体」500および「原料固体」502に基づく。図3および図4による前に説明した製造シナリオにおけるのと同様に、技術機器は、前に説明したように、リサイクルされた材料を使用するための「リサイクリングサイロ」504を含む。
【0253】
技術機器は、さらに、言及された投入原料に基づいてパッケージオブジェクトを生成するための「ドージングユニット506」を含み、投入原料は、それらを処理するために、示された4つのポリマー反応ゾーン(「ゾーン1~4」)510,512,514,516に沿ってパッケージオブジェクトを搬送する「反応ユニット」508と、反応ユニット508において製造されたポリマー材料(すなわち、対応するパッケージオブジェクト)を硬化させるための「硬化ユニット」518とによって、処理される。硬化ユニット518は、この実施形態において、材料バッファのみを含むが、逆混合機器は含まない。硬化ユニット518は、対応して処理されたパッケージオブジェクトも搬送する。
【0254】
「搬送ユニット1」520は、リサイクリングサイロ504によってそれらのリサイクリングのために分類されるパッケージオブジェクトを搬送する。最終的に処理された、すなわち、分類されていないユニットは、再び第1の「パッキングユニット1」522および第2の「パッキングユニット2」524へ搬送される。2つのパッキングユニット522,524は、対応するパッケージオブジェクトを変換し、それぞれのコンテナまたは充填サック526,528へ搬送する。
【0255】
図5に示された製造プロセスは、第1のデータオブジェクト530および第2のデータオブジェクト534によって管理される。
【0256】
第1のデータオブジェクト530は、生成日「1976-02-06」および生成時間「18:31:53.401」を有する「A-パッケージ」に関する。この製造シナリオにおけるデータオブジェクト530は、再び、予め記述された「パッケージID」、ドージングユニット506によって行われるドージングプロセスについてのプロセス情報(「ドージング特性」)、および反応ユニット508によるポリマー材料の製造についてのさらなるプロセス情報(「反応ユニット特性」)を含む。ドージング特性は、各パッケージオブジェクトのための原料量についての情報、すなわち「割合原料1(液体)」、「割合原料2(固体)」および製品温度を含む。反応ユニット特性は、4つのポリマー反応ゾーン510~516の温度(「温度ゾーン1」、「温度ゾーン2」、「温度ゾーン3」および「温度ゾーン4」)を含む。
【0257】
それに基づいて、第1のデータオブジェクト530は、プロセシングライン506~524に沿った基礎となるパッケージオブジェクトの現在の位置(「現在パッケージ位置」)を含む。パッケージオブジェクトの現在位置は、本実施形態において、「パッケージ位置リンク」および対応する「ゾーン位置」によって管理される。最後に含まれるのは、基礎となるポリマー反応についての化学的および/または物理的情報、すなわち対応する「反応エンタルピ/ターンオーバー度」である。これにより、所与のパッケージオブジェクトを搬送するプロセシングユニット506~524は、反応エンタルピ値を第1のデータオブジェクト530内に計算しかつ永久に書き込む/実現する。これは、パッケージ位置および対応する滞在時間についてのならびに対応するプロセス値、例えば、パッケージ温度についての既存の情報により可能である。第1のデータオブジェクト530と硬化ユニット518との間の通信ライン532を介して、第1のデータオブジェクト530に含まれた反応エンタルピおよび/またはターンオーバー度の現在の値に基づいて、硬化時間パラメータは、反応エンタルピの計算された値に基づいて調整される。
【0258】
第2のデータオブジェクト534は、パッキングユニット522,524のうちの1つによって処理される「物理的パッケージ」に関し、対応する生成日/時間情報「1976-02-06 19:12:21.123」を含む。含まれるのは、「パッケージID」、「製品」記述/仕様、「注文番号」、「ロッド番号」、ならびに計算されたエンタルピおよび/またはターンオーバー度の言及された値である。
【0259】
図6は、基礎となる工業プラント602の階層的またはトポロジー的構造を表すグラフベースのデータベース配列の第1の実施形態を示しており、これは、工業プラントのクラスター600の一部であり、複数の機器デバイスと、対応する製品プロセシングライン604の一部である対応する機器ゾーンとを含む。トポロジー的構造は、基礎となる製品パッケージの改良された処理またはプランニングを可能にするために、工業プラント602(または基礎となるプラントクラスタ600)の基礎となる異なる部分の間の機能的関係を視覚化することを可能にする。グラフベースデータベースの示された円形ノードは、接続ラインを介してリンクされており、そのための異なるリンクタイプが可能である。
【0260】
機器デバイスは、この実施形態において、材料処理ユニット606,614を含み、これらは、信号および/またはデータ接続を介して、処理ユニット606,614の一部であるセンサ/アクタ608,616に接続されておりかつ複数の入力/出力(I/O)デバイス610,612および618,620に接続されている。
【0261】
本実施形態において、第1の処理ユニット606は、さらに、例示的な3つの製品パッケージ(製品パッケージ1~3)622,624,626に接続されており、第2の処理ユニット614は、さらに、さらなる3つの製品パッケージ(製品パッケージ4~n)628,630,632に接続されている。例示的にのみ、「製品パッケージ3」626は、製品試料(試料1)634に接続されており、「製品パッケージ5」630は、別の製品試料(試料n)638に接続されている。「試料1」634は、さらに、「検査ロット」636と接続されており、「試料n」は、さらに、「検査ロットn」640と接続されている。最後に、両検査ロット636,640は、「検査インストラクション1」ユニット642と接続されており、「検査インストラクション1」ユニット642は、言及された検査ロットをどのように生成するかおよびそれぞれの基礎となる試料634,638の分析/品質制御をどのように実現するかについての仕様として働く。
【0262】
図6に示されたトポロジー的構造は、有利には、データ構造を提供し、このデータ構造は、示された化学プラントの機能性および処理の直観的かつ容易な理解、ひいては、ユーザ、特に機械/プラントオペレータによる化学プラントまたは化学プラントのクラスターにおけるこのような複雑な製造プロセスの容易な管理可能性を可能にする。なぜならば、示されたオブジェクト(ノード)は、対応する実世界オブジェクトと極めて類似してモデル化されるからである。
【0263】
より具体的には、このトポロジー的構造は、高度な文脈情報を提供し、それに基づいて、ユーザ/オペレータは、各オブジェクトの技術的および/または材料特性を容易に収集することができる。これは、さらに、ユーザによるかなり複雑なクエリ、例えば、オブジェクトの間の関連する製造関連接続または関係についての、特に、複数のノードまたはさらにトポロジー/階層レベルを横断するクエリを可能にする。これにより、図6に示されたオブジェクト(ノード)は、さらなる特性および/または値によってランタイム中に容易に拡張されることができる。
【0264】
図7は、図6に示されたグラフベースのデータベース配列の第2の実施形態を示すが、ただし製造ライン700(「ライン1」)についてのみである。
【0265】
機器デバイスは、本実施形態において、材料処理ユニット702「ユニット1」およびユニットn」708を含み、これらは、信号および/またはデータ接続を介して、対応する入力/出力(I/O)デバイス「I/O1」706および「I/On」712に接続されたセンサ/アクタ「センサ/アクタ1」704および「センサ/アクタn」710に接続されている。これらのI/Oデバイスは、製造ライン700の動作を制御するためのPLC(図示せず)への接続を含む。
【0266】
本実施形態において、第1の処理ユニット(「ユニット1」)702は、さらに、例示的な3つの製品パッケージ(「製品部分」1~3)714、716、718に接続されており、第2の処理ユニット(「ユニットn」)708は、さらに、さらなる2つの製品パッケージ(「製品部分」4およびn)720,722に接続されている。例示的にのみ、製品パッケージ3’’718は、製品試料(「試料1」)724に接続されており、製品パッケージn722は、別の製品試料(「試料n」)728に接続されている。
【0267】
図6に示された実施形態とは対照的に、第1の「センサ/アクタ1」704も、第1の製品試料(「試料1」)724に接続されており、第2の「センサ/アクタn」)710も、第2の製品試料(試料n’’)728に接続されている。これらの2つの追加的な接続は、独立した時間に、またはさらには同時に異なる試料ステーションにおいて独立して試料を採取することが可能であるという利点を有する。例えば、センサ/アクタ704は、試料ステーションに配置されたプッシュボタンであることができ、これは、試料が採取される瞬間にユーザまたはオペレータによって押下される。
【0268】
代替的に、このような資料は、サンプリング機械によって自動的に生成することができる信号であることができる。このような自動的に生成された信号は、例えば、示されたI/Oオブジェクト706を介してセンサ/アクタオブジェクト704に到達することができ、I/Oオブジェクト706は、PLC/DCS(図示せず)から、言及されたプッシュボタン情報を受け取る。試料を採取する瞬間、試料オブジェクト724(例えば)が生成され、その瞬間にサンプリングステーション位置に配置された製品部分にリンクされる。
【0269】
対応して生成された試料724,728に基づいて、1つの(かつ同じ)試料のためにも、1つまたは複数の検査ロット726,730を生成することができる。しかしながら、1つまたは複数の試料は、1つの処理ライン内で独立して、またはさらには同時に生成することができる。
【0270】
最後に、図6に示された実施形態におけるように、「試料1」724は、さらに、第1の「検査ユニット1」726と接続されており、「試料n」は、さらに、第2の「検査ユニットn」730と接続されている。両検査ユニット726,730は、最終的に、図6に示された「検査インストラクション1」ユニット642の場合と同様に、すなわち言及された検査ロットをどのように生成するかおよび基礎となる試料724,728の分析/品質制御をどのように実現するかについての仕様として再び機能する「検査インストラクション1」ユニット732と接続されている。「検査インストラクション1」ユニット732は、独立して生成することができ、「検査ロット1」726およびさらなる「検査ロットn」730によって図7に示されているように、1つだけよりも多い検査ロットのための検査インストラクション732を使用しながら、一度だけ生成される場合がある。
【0271】
図8は、抽象化層800を示しており、これは、オブジェクトデータベース801を含み、予め説明された製造機器および対応する原料のための、ならびに、予め説明された物理的パッケージまたは製品パッケージ関連データ、すなわち対応するデジタルツインを含む、予め説明された製品データのための抽象化層として働く。
【0272】
抽象化層800は、本実施形態において、外部クラウドコンピューティングプラットフォーム804との双方向通信ライン802を提供する。抽象化層800は、また、「PLC/DCS1」806の場合のように双方向に810、または「PLC/DCSn」808の場合のように一方向に812、多数のn製造PLC/DCSおよび/または機械PLC806,808と通信する。クラウドコンピューティングプラットフォーム804は、本実施形態において、顧客統合インターフェースまたはプラットフォーム816への双方向通信ライン814を含み、それを介して、本製造プラント所有者の顧客は、プラントの予め説明された機器ユニットへ制御信号を通信および/または送達することができる。
【0273】
オブジェクトデータベース801にさらに含まれるのは、それに関連した他のオブジェクト、例えば、上述の試料、検査ロット、試料インストラクション、センサ/アクタ、デバイス、デバイス関連ドキュメンテーション、ユーザ(例えば、機械またはプラントオペレータ)対応するユーザグループおよびユーザ権利、レシピ、注文、セットポイント-パラメータセット、またはクラウド/エッジデバイスからのインボックスオブジェクトである。
【0274】
クラウドコンピューティングプラットフォーム804において、人工知能(AI)または機械学習(ML)システムが実装され、それによって、Internet-of-Things(IoT)エッジデバイスまたはコンポーネント820への専用の展開パイプライン818を介して展開される最適なアルゴリズムを見つけまたは生成し、エッジデバイス820を制御するために対応して生成されたまたは見つけられたアルゴリズムを使用する。エッジデバイス820は、本実施形態において、抽象化層800と双方向で通信する822。
【0275】
抽象化層800および含まれたオブジェクトデータベース801によって、本文献内で説明されたように、予め説明された物理的または製品パッケージが生成される。抽象化層800は、クラウドコンピューティングプラットフォーム804内のあるプロセシングおよび/またはAI(またはML)構成要素に接続することもできる。この接続のために、公知のデータストリーミングプロトコル「Kafka」を使用することができる。これにより、基礎となる製品パッケージの生成の時間またはその付近において、まず、特に、基礎となる時系列データとは独立して、空のデータパケットをメッセージとして送信することができる。その後、最終製品パッケージが処理されたとき、別のメッセージを送信することができる。これらのメッセージは、データパケットIDとしての基礎となるパッケージのオブジェクト識別子を含むので、関連するパケットを、後でクラウドプラットフォームのサイドにおいて互いに再びリンクさせることができる。これは、クラウドへの送信のために大きなサイズのデータパケットを回避することができ、これにより、所要の送信帯域幅または容量を最小限にするという利点を有する。
【0276】
クラウドコンピューティングプラットフォーム804内で、ストリーミングおよび受信された製品データが、言及されたAI方法またはML方法によって使用され、予測された製品品質制御(QC)値などの、基礎となる製品に関連する追加的なデータを得るためのアルゴリズムを見つけるまたは生成する。このプロシージャがクラウドコンピューティングプラットフォーム804内で行われるために、関連する製品(または物理的)パッケージのQCデータまたは測定された性能パラメータなどの追加的なデータが必要とされる。これは、関連する製品パッケージについてのこのような情報を含む、試料オブジェクトおよび検査ロットオブジェクト(図6も参照)の形式のオブジェクトデータベース801から同じ方式を介して受け取られることができる。
【0277】
このような情報は、オブジェクトデータベース以外のあらゆる他のシステムから受け取ることもできる。この場合、他のシステムは、オブジェクトデータベースから試料/検査ロットIDと一緒にQCおよび/または性能データを送信する。クラウドコンピューティングプラットフォーム804内で、このデータは組み合わされ、例えば、MLベースのアルゴリズム/モデルを見つけるために使用される。これにより、クラウドプラットフォーム804内の計算能力を有効に使用することができる。
【0278】
本実施形態において、対応して見つけられたアルゴリズムまたはモデルは、展開パイプライン818を介してエッジデバイス820に展開される。エッジデバイス820は、抽象化層800のオブジェクトデータベース801の近く、ひいては、したがってまたPLC/DCS1~PLC/DCSn806,808の近くに、すなわち低ネットワークレイテンシおよび直接および確実な通信を可能にするネットワークセキュリティレベルおよび位置の観点から、配置されている。
【0279】
MLモデルの使用のために、このような計算能力は必要とされないので、エッジデバイス820は、MLモデルを使用して、言及した最新の情報を生成し、それをオブジェクトデータベース801に提供する。したがって、エッジデバイス820は、同じ情報または情報のサブセットを必要とし、これは、クラウドコンピューティングプラットフォーム804において使用され、MLベースアルゴリズムまたはモデルを生成し、オブジェクトデータベース801はこのデータをエッジデバイス820へ、例えば、公知の「Message Queuing Telemetry Transport」(MQTT)プロトコルなどの、機械同士の通信のためのオープンネットワークプロトコルを介して提供することができる。
【0280】
このセットアップは、AI/MLベース最新プロセス制御ならびに自律型製造および対応する自律して動作する機械の実現を可能にする。図8に示された実施形態に示されるように、予め説明したデータオブジェクト330~334(図3)からのデータに基づいて、クラウドコンピューティングプラットフォーム804のサイドにおいて、AI/MLシステムまたは対応するAI/MLモデルは、訓練データとしてのこのようなデータを使用して訓練される。したがって、訓練データは、本実施形態において、履歴および現在のラボラトリ試験データ、特に、化学製品の性能パラメータを示す、過去からのデータを含む場合がある。
【0281】
AI/MLモデルは、予め説明された性能パラメータのうちの1つまたは複数を予測するために使用することができ、前記予測は、好ましくは、計算ユニットを介して行われる。加えて、または代替的に、AI/MLモデルは、好ましくは機器動作条件を調整することを介して、製造プロセスを少なくとも部分的に制御するために使用することができ、より好ましくは、前記制御は、言及された計算ユニットを介して行われる。加えて、または代替的に、AI/MLモデルは、プロセスパラメータおよび/または機器動作条件のうちのいずれが化学製品に主な影響を有するかを判定するために、例えば、計算ユニットによって使用することができ、これにより、プロセスパラメータおよび/または機器動作条件のこれらのドミナントは、それぞれデータオブジェクトまたは言及されたオブジェクト識別子に加えられる。
【0282】
当業者は、方法ステップ、少なくとも計算ユニットを介して行われるものが、「リアルタイム」またはほぼリアルタイムの形式で行われる場合があることを認めるであろう。用語は、コンピュータの技術分野において理解される。特定の例として、計算ユニットによって行われるいずれか2つのステップの間の時間遅延は、15s以下、特に10s以下、より具体的には5s以下である。好ましくは、遅延は、1秒未満、より好ましくは、2ミリ秒未満である。したがって、計算ユニットは、リアルタイム形式で方法ステップを実行するように構成される場合がある。さらに、ソフトウェア製品は、計算ユニットにリアルタイム形式で方法ステップを実行させる場合がある。
【0283】
方法ステップは、例えば、例または態様に列挙して示された順序で実行される場合がある。しかしながら、特定の状況下では、異なる順序も可能である場合があることに留意されたい。さらに、方法ステップの1つまたは複数を一回または反復して実行することも可能である。ステップは、規則的または不規則な間隔で反復される場合がある。さらに、特に方法ステップの幾つかまたはそれ以上が反復して実行される場合、方法ステップの2つ以上を同時にまたは時間的に重なった形式で実行することが可能である。方法は、さらに、列挙されていないステップを含む場合がある。
【0284】
製造プロセスを制御するための方法、本明細書に開示された方法を行うためのシステム、製造プロセスを制御するためのシステム、使用、ソフトウェアプログラム、および本明細書に開示された方法を行うためのコンピュータプログラムコードを含む計算ユニットのための様々な例が上記に開示されている。より具体的には、本教示は、少なくとも1つの前駆体材料を使用して化学製品を製造するための下流製造プロセスを制御するための方法であって、化学製品の製造を制御するための下流制御セッティングのセットを提供することを含み、下流制御セッティングは、前駆体データを含む下流オブジェクト識別子と、化学製品に関連した少なくとも1つの所望の下流性能パラメータと、下流履歴データとに基づいて決定され、下流制御セッティングのセットが、下流工業プラントにおいて化学製品を製造するために使用可能である、方法に関する。しかしながら、当業者は、添付の請求項およびそれらの均等物の思想および範囲から逸脱することなく、これらの例に対して変更および修正が加えられる場合があることを理解するであろう。さらに、本明細書に説明された方法および製品実施形態からの態様は自由に組み合わされる場合があることが認められるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】