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特表2023-546935移送ポートを通って複数の対象物を移送するための移送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-08
(54)【発明の名称】移送ポートを通って複数の対象物を移送するための移送装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20231031BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
G01N1/04 J
G01N1/04 H
C12M1/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524546
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2021079015
(87)【国際公開番号】W WO2022084359
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】20306269.0
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ,ステファヌ
(72)【発明者】
【氏名】シャール,ヴァンサン
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
【Fターム(参考)】
2G052AA36
2G052AC12
2G052AC13
2G052AD12
2G052BA04
2G052BA17
2G052DA13
2G052JA11
4B029AA09
4B029BB01
4B029CC07
4B029GA01
4B029HA09
(57)【要約】
本出願は、移送ポート(R)を通って移送されるべき複数の対象物(O)を収容するように構成された内部空間(67)を有するコンテナ(61)を含む、複数の対象物(O)を移送ポート(R)を通って移送するための移送装置(60)に関する。コンテナ(61)は、コンテナ(61)の軸方向(X)における端部にある、対象物(O)を少なくとも個々にコンテナ(61)から取り外すことのできる寸法を有する、少なくとも1つの取り出し開口(62)と、前記少なくとも一つの取り出し開口(62)を選択的に閉めて、内部空間(67)を外部環境から密閉するように構成された扉(63)と、およびコンテナ内部に収容された対象物(O)を動かすために、軸方向(X)に前記少なくとも一つの取り出し開口(62)に向かって/から離れる方向に、並進運動で移動可能であるようにコンテナ内部に設けられた、ピストン(64)と、を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の対象物(O)を移送ポート(R)を通って移送するための移送装置(60)であって、
移送ポート(R)を通って移送されるべき複数の対象物(O)を収容するように構成された内部空間(67)を有するコンテナ(61)であって、ここにおいてコンテナ(61)は、対象物(O)を少なくとも個々にコンテナから取り外すことのできる寸法を有する、少なくとも1つの取り出し開口(62)を、コンテナ(61)の軸方向(X)における端部に有しているものである、前記コンテナ(61)と、
前記少なくとも一つの取り出し開口(62)を選択的に閉めて、内部空間(67)を外部環境から密閉するように構成された扉(63)と、および
コンテナ内部に収容された対象物(O)を動かすために、軸方向(X)に前記少なくとも一つの取り出し開口(62)に向かって/から離れる方向に、並進運動で移動可能であるようにコンテナ(61)内に設けられた、ピストン(64)と、を含む、前記移送装置(60)。
【請求項2】
ピストン(64)が、コンテナ(61)の外部から操作可能に構成された、請求項1に記載の移送装置(60)。
【請求項3】
コンテナ(61)が、押し込み、および/または、引っ張り力をピストン(64)に導入してコンテナ(61)内のピストン(64)の並進運動を生じさせるためのアクセス開口(65)を有する、請求項2に記載の移送装置(60)
【請求項4】
コンテナ(61)の内部空間(67)が、ピストン(64)とコンテナ(61)の間にシールされた、変形可能なスリーブ(66)、および/または、摺動シールによってコンテナ(61)の外部環境から密閉されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の移送装置(60)。
【請求項5】
スリーブ(66)が、少なくとも部分的に弾性を有し、および/または、折り畳み可能であり、および/または、巻き込み可能であり、外部環境に対する密閉を保ったままで、ピストン(64)の並進運動に追随可能である、請求項4に記載の移送装置(60)。
【請求項6】
少なくとも1つの取り出し開口(62)が、コンテナ(61)の軸方向端部に、またはコンテナ(61)の軸方向端部の周辺部に設けられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の移送装置(60)。
【請求項7】
少なくとも1つの取り出し開口(62)およびピストン(64)が、軸方向(X)にみてコンテナ(61)の反対側の端部に設けられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の移送装置(60)。
【請求項8】
扉(63)が移送ポート(R)、好ましくは「アルファパート扉設計」である移送ポート、に連結されるように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の移送装置(60)。
【請求項9】
コンテナ(61)が剛体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の移送装置(60)。
【請求項10】
コンテナ(61)が、対象物(O)のスタック(S)、好ましくはペトリ皿(P)が平行方向に整列されたスタックの形の、を受け入れて、軸方向(X)に沿った対象物(O)の移動を許容するように構成された内部構造を有する円筒形コンテナである、請求項1~9のいずれか一項に記載の移送装置(60)。
【請求項11】
複数のペトリ皿(P)のスタック(S)を、コンテナの内部に受容された複数の対象物(O)としてさらに含む、請求項10に記載の移送装置(60)。
【請求項12】
複数の対象物を、移送ポートを通して無菌のまたは少なくとも清浄な処理領域または密閉装置内に移送する方法であって、
(a)複数の対象物(O)のスタック(S)、前記対象物(O)は好ましくはペトリ皿(P)である、を含む、請求項1~11のいずれか一項、好ましくは請求項11、に記載の移送装置(60)を提供するステップ、
(b)前記移送装置(60)を前記移送ポート(60)に取り付けるステップ、
(c)移送ポート(R)を開け、それによりコンテナ(61)の内部空間(67)を無菌のまたは少なくとも清浄な処理領域または密閉装置に開放するステップ、
(d)ピストン(64)を並進運動で少なくとも1つの取り出し開口(62)に向かって軸方向(X)に動かし、それによってコンテナ(61)内に含まれる複数の対象物(O)のスタック(S)を少なくとも一つの取り出し開口(62)に向かって、即ち無菌のまたは少なくとも清浄な処理領域または密閉装置に向かって(の方向に)、動かすステップ、および
(e)最上部の対象物(O)をスタック(S)から取り外す工程、
を、好ましくは逐次的に、含む前記方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
(f)スタック(S)の全ての対象物(O)が取り外されるまで、(d)および(e)のステップを繰り返すステップをさらに含む、前記方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の方法であって、
(g)移送ポート(R)を閉めるステップ、および
(h)前記移送装置(60)を前記移送ポート(R)から取り外すステップをさらに含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、清浄な処理領域への、またはそれからの、移送ポートを通って複数の対象物を移送するための移送装置に関する。本出願は、とりわけ、医薬及び食品加工における検査分野、より詳しくは、清浄または超清浄処理領域の環境的監視の分野に関する。それは、処理領域の清浄性または環境が決定されまた監視されることになっているような、他の処理の場面、例えば半導体、電子装置または航空機製造の分野、に対しても適用可能である。
【背景技術】
【0002】
上述した種類の閉鎖した処理領域における環境的状態を監視するために、受動的空気サンプリングにおいて、取り巻く空気中の粒子の最大量を捕捉するために、ひとつまたはそれ以上の媒体板(media plate)を製造領域の活動ゾーンに置いて取り巻く空気に晒すことは通常おこなわれてきた方法であった。より大きい粒子は重力によって媒体板上により速く定着する傾向にある。より小さい粒子は、気流のような因子によって、定着するまでにいくらか時間を要する。媒体板は動きのない領域において最も良く機能する。微生物は、単独またはコロニーとなって、空気から媒体板上に定着する。
【0003】
製造領域の空気の能動的監視においては、特定の時間の間、空気を強制的に採集媒体内または採集媒体上に送り込む微生物空気採集装置(microbial air sampler)が用いられる。採集媒体は、通常のペトリ皿、たとえば栄養寒天基材の試験媒体その他の要求に応じた適切な試験媒体を含むペトリ皿であることができる。
【0004】
採集媒体、例えば媒体板、ペトリ更または定着板(本明細書においてはこれら用語は相互に取り換え可能に使われる)の形の採集媒体は、製造領域の中へ、またさらなる取り扱いおよび評価のために製造領域から、繰り返し移送され、取り外される。これは一般に手作業でおこなわれ、1つまたはそれ以上の板またはペトリ皿は、製造領域の内部へまたは内部から、無菌移送ポートを通って人手によって運搬される。しかしながらこのペトリ皿の手作業の取り扱いは、媒体板を取り扱う際、すなわち、持ち込み、設置および取り外しを含む取り扱い中に蓋が不注意に開けられたり、媒体板からずらされたりまたは取り除かれたりするかもしれず、それによって検出結果、とりわけ複数の媒体板がバッチ処理で取り扱われた際の検出結果を危うくすることとなって、汚染の高いリスクを含むものである。
【0005】
無菌性を損なうことのない、バルブを通しての清浄処理領域への選択的アクセスのための無菌移送ポートは公知である。そのようなシステムは、「RTP」または「高速移送ポート(rapid transfer ports)」としても知られており、本出願は、そのような移送ポートと共同して有用である移送装置、すなわち、バルブの設計のそれぞれに適合するように構成されている、移送装置を志向するものである。
【0006】
例えば、GB2237816 A1は、コンテナと遮断装置すなわち清浄な処理領域との間の、密閉された移送を可能とする二重扉移送ポートを開示している。コンテナは、コンテナの閉じたポートによってドッキングされ、次に遮断装置の内部の側からポートの扉が開けられる。コンテナの遮断装置へのドッキングは、コンテナをその軸周りにひねることによってポート位置で定位置にドッキングするという、バヨネットシステムによって達成されてよい。コンテナを物理的に回転させなければならないので、コンテナの内容物もやはり回転の対象となり、液体を漏洩させるか、デリケートな機器を損傷するかもしれない。この従来技術においては、コンテナの、蓋とバヨネット式閉鎖機構の全体は、コンテナ自体に気密スリップリングジョイントを介して装着された、コンテナの短箱襟状延長部に格納されている。このような構成においては、延長部は、コンテナをポートの定位置にドッキングするために回動されるが、スリップリングジョイントのおかげで、コンテナは回動する必要がない。この装置は、遮断装置の内部側からのアクセスが可能な解放型コンテナを提供するにすぎないので、対象物の取り扱いは、とりわけ移送されるべき対象物が媒体板、ペトリ皿または定着板である場合、前述の理由により困難なものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願は、移送すべき複数の対象物を保持したコンテナを、遮断装置の高速移送ポートにドッキングして、ポートを開けて対象物をコンテナから遮断装置内へ、またその逆方向へ、移送するという概念の適用を考慮している。
本出願は、複数の対象物、とりわけ移送される対象物としてのペトリ皿を、無菌性を損なうことのない能動的過程で移送ポートを通して移送する移送装置を提供することを目的としている。
【0008】
この課題を解決するために、本出願は、複数の対象物、とりわけペトリ皿、を移送ポートを通って移送する請求項1の構成要件を有する移送装置と、および、複数の対象物を移送ポートを通って移送する、請求項12の構成要件を有する移送方法とを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願は、複数の対象物を移送ポートを通って移送するための移送装置を特に提供するものであり、
移送ポートを通って移送されるべき複数の対象物を収容するように構成された内部空間を有するコンテナ、ここにおいてコンテナは、対象物が少なくとも個々にコンテナから取り外すことのできる寸法を有する、少なくとも1つの取り出し開口を、コンテナの軸方向における端部に有しているものであり、
前記少なくとも一つの取り出し開口を選択的に閉めて、内部空間を外部環境から密閉するように構成された扉、および
コンテナ内部に収容された対象物を動かすために、軸方向に前記少なくとも一つの取り出し開口に向かって/から離れる方向に、並進運動で移動可能であるようにコンテナ内部に構成された、ピストン、を含んでいる。
【0010】
好ましくは、ピストンはコンテナの外部から操作可能に構成される。
好ましくは、コンテナは、押し込みおよび/または引っ張り力をピストンに導入してコンテナ内のピストンの並進運動を生じさせるためのアクセス開口を有する。
好ましくは、コンテナの内部空間は、ピストンとコンテナとの間にシールされた(または位置づけられた)変形可能なスリーブ、および/または、摺動シールによってコンテナの外部環境から密閉されている。
【0011】
好ましくは、少なくとも1つの取り出し開口は、コンテナの軸方向端部に、または軸方向端部の周辺部に設けられる。
好ましくは、少なくとも1つの取り出し開口およびピストンは、軸方向にみてコンテナの反対側の端部に設けられる。
【0012】
好ましくは、扉は移送ポート、好ましくは「アルファパート扉設計(alpha part door design)」である移送ポート、に連結されるように構成される。
好ましくは、コンテナは剛体または半剛体である。
好ましくは、コンテナは、対象物(O)のスタック(S)、好ましくはペトリ皿が平行方向に整列されたスタックの形の、を受け入れて、軸方向に沿った対象物の移動を許容するように構成された内部構造を有する円筒形である。
好ましくは、移送装置は、複数のペトリ皿のスタックを、コンテナの内部に受容された複数の対象物として含んでいる。
【0013】
本出願は、複数の対象物を、移送ポートを通して無菌のまたは少なくとも清浄な処理領域または密閉装置内に、移送する方法であって、以下のステップを、好ましくは逐次的に、含む方法も提供する。
(a)ここに規定される、複数の対象物のスタックを含む移送装置、対象物は好ましくはペトリ皿である、を提供するステップ
(b)前記移送装置を前記移送ポートに取り付けるステップ
(c)移送ポートを開け、それによりコンテナの内部空間を無菌のまたは少なくとも清浄な処理領域または密閉装置に開放するステップ
(d)ピストンを並進運動で少なくとも1つの取り出し開口に向かって軸方向(X)に動かし、それによってコンテナ内の複数の対象物のスタックを少なくとも一つの取り出し開口に向かって、即ち無菌のまたは少なくとも清浄な処理領域または密閉装置に向かって(の方向に)、動かすステップ
(e)最上部にある対象物をスタックから取り外すステップ
【0014】
好ましくは、方法はさらに次のステップを含む。
(f)スタックの全ての対象物が取り外されるまで、(d)および(e)の工程を繰り返すステップ
好ましくは、方法は次のステップも含む
(g)移送ポートを閉めるステップ、および
(h)前記移送装置を前記移送ポートから取り外すステップ。
【0015】
以下に、添付の典型的説明図を参照することに因って、種々の実施形態が記述される。それらにおいては、
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、高速移送ポートにドッキングする前の本移送装置の外見である。
図2図2は、本移送装置の切り取り透視図である。
図3図3は、本移送装置の、移送ポートにドッキングして移送ポートが閉じている状態における切り取り透視図である。
図4図4は、移送ポートにドッキングして移送ポートが開いている、本移送装置の切り取り透視図である。
図5図5は、規定された一つの実施態様の動作原理を示す説明図である。
図6図6は、規定されたもう一つの実施態様の動作原理を示す説明図である。
図7図7は、高速移送ポートにドッキングしたさらなる実施態様による移送ポートの、切り取り透視図である。
図8図8は、またさらなる実施態様による移送装置の動作原理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本出願における用途として、用語「水平な」、「垂直な」、「直角な」および同様の用語は-明示的にすでに示されている場合を除き-このことが機能性において否定的な影響を与えない限り、「本質的に水平な」、「本質的に垂直な」、「本質的に直角な」を意味するものと理解される。好ましくは、「本質的に」の用語は、それぞれ、水平であること、垂直であることまたは直角であることから、最大10度のズレを記述するためであり、より好ましくは最大5度、さらにより好ましくは最大4度または3度、その上さらにより好ましくは最大2度または1度のズレを記述するためのものである。
【0018】
本出願は、板が空気中の汚染物質を検出するために用いられる無菌のまたは少なくとも清浄な処理領域の中へと、またはそこから外へと、移送されるべきものである、複数の対象物Oを、対象物および処理領域又は遮断装置の、無菌性または清浄性を損なうことなしに、移送ポートR(すなわち、例えば文献GB2237816A1に開示されているような、高速移送ポート)を通って無菌のまたは少なくとも清浄な処理領域または遮断装置へ移送するための移送装置60にかかわるものである。移送されるべき対象物は、好ましくは、容器と填め合い蓋とを通常含むペトリ皿であり、これらは平行方向に整列したスタックで、好ましくは蓋が移送ポートRの方に向いて(または以下に定義される取り出し開口62の方に向いて)配置される。
【0019】
移送装置60は、好ましくは剛性または半剛性である好ましくは円筒形状の、移送ポートRを通って移送されるべき複数の対象物Oをその内部空間67内でスタックSとして平行に整列した配向で収容する様にいずれにせよ構成されている、コンテナまたはカートリッジ61を通常含む。コンテナ61は、高速移送ポートRに取り外し可能に結合(すなわちドッキング)されるように設計されている。
【0020】
コンテナ61は、対象物Oがコンテナ61の内部空間67から、少なくとも個別に開口62を通して取り外すことが出来る寸法の、少なくとも一つの取り出し開口62を、コンテナ61の軸方向Xでの端部に有している。少なくとも1つの取り出し開口62を選択的に閉鎖するように構成された扉63が、環境から(コンテナが移送ポートRに連結される前である限りにおいて)、またその連結をした後であってポートが未だ開けられる前においては移送ポートから、内部空間67を取り出し開口62において密閉するために、コンテナの端部に取り外し可能に取り付けられている。
【0021】
取り出し開口へ、および取り出し開口から、コンテナ61に収容された対象物Oを動かすために軸方向Xの並進運動で少なくとも一つの取り出し開口62に向かって/から離れる方向に移動可能であるように、ピストン64がコンテナ61の内部空間67内に設けられている。
【0022】
コンテナ61の内部空間67の内寸、即ち内部空間が円形シリンダーの形状である場合は直径、は、問題にしている対象物、好ましくはスタックをなす複数のペトリ皿、を収容するように選択される。
【0023】
ピストン64は、コンテナ61の外部から駆動されるように構成されている。そのために、コンテナ61はアクセス開口65をコンテナ61の取り出し開口62の側と反対側の端部に有している。アクセス開口65は、コンテナ61内で軸方向Xにピストン64が並進運動する効果がある押し込み力、および/または、引っ張り力を導入することが出来るように構成されている。
【0024】
ピストンへの押し込み力はスタックをなす対象物を取り出し開口62の方に持ち来たし、それにより高速移送ポートが開き、ひとつずつの容易な把持を可能とする際に、対象物を清浄な処理領域内部における開口の位置またはそれに近い位置に提示する。押し込み力は、ピストンと一体化したロッド(図面に非表示)またはピストンと選択的に結合されるロッドによって、例えばアクセス開口65を介してピストンに対して印加することが出来る。
【0025】
対象物を収容するための、コンテナ61の内部空間67は、ピストン64とコンテナ61の間でシールされた変形可能スリーブ66によって、コンテナ61の外部環境から密閉されている(図5、6および8参照)。スリーブ66は、好ましくは少なくとも部分的に弾性を有し、および/または、折り畳み可能であり、および/または巻き込み可能であり、ピストン64の軸方向Xの並進運動に外部環境に対しての密閉状態を保ったままで追随して、アクセス開口65を通してのピストンへの力の導入を許容する。
【0026】
図には示されていないものの、内部空間67は、変形可能なスリーブ66の代替としてまたは変形可能なスリーブ66と組み合わせて、ピストン64とコンテナの内部表面との間に配置された摺動シールによってコンテナ61の外部環境から密閉されていてもよい。この摺動シールによる改変は、とりわけ図5に示す実施態様に対して適用可能である。
【0027】
スリーブ66は、コンテナの内部に巻き込むこと(図6参照)も、コンテナの外部に巻き込むこと(図5参照)も可能である。図7においては明瞭さのためにスリーブは示されていない。
【0028】
ピストン64に対して動作する外部アクチュエーターは、コンテナ61の端部のアクセス開口65を通って到達するロッドを操作するシリンダーであることができる。取り出し開口がコンテナの周縁部に設置されている実施態様が図7および8に示されている。この場合は、スタックされた対象物へのアクセスは、コンテナの平行または周縁側から、取り出し開口62を通してなされる。
【0029】
少なくとも1つの取り出し開口62は、開口62とピストン64とが好ましくは実質的にコンテナの反対側の端部に位置するように、アクセス開口65から反対側の、コンテナ61の軸方向端部に、またはコンテナ61の軸方向端部の周縁部に、設けられる。異なった位置に複数の取り出し開口を設けても良い。
【0030】
コンテナ61および扉63は、所望のシステムの高速移送ポートRに取り外し可能に連結可能であるように、填め合いバルブ構成を備えた遮断装置にコンテナおよび扉をドッキングするように構成されている。ドッキング構造は図面に例示されており、例えば図1および2に示す様に、バヨネット式の結合構成68aを円筒の前方端に、そしてストッパーリムまたはエッジ68bを結合構成68aから距離を置いたところに有しており、バヨネット式の結合構造68cを、扉63の前側に有している。円筒および扉のバヨネット式結合構造68aおよび68cは、装置が移送ポートにドッキングする際に、図3に示す様に移送ポートRの填め合い連結構造に同時に連結し、また、扉63は同時にコンテナから外れてもよい。そして、扉63は、図3に示す様に、環境に露出していた移送装置の表面のいかなるものもコンテナおよび遮断装置の内部空間に露出することなく、独立に開いても良い。移送ポートの、そしてそれゆえ移送装置の扉のための有用なシステムは、アルファパートドア設計(alpha part door designe)として知られる、たとえばLaClhene(登録商標)または他の供給業者から得られるものである。
【0031】
コンテナの寸法(直径)次第であるが、対象物は必ずしも軸方向Xにスタックで整列する必要はなく、軸方向を横切る方向に積み重なっていてもよい。その場合、スタックの全体は、軸方向の並進運動の終端位置にある取り出し開口に差し出され、そして同時にそこにおいて清浄な処理領域(遮断装置)内部からの手動のまたは自動の操作装置および移送装置のためにアクセス可能となる。清浄処理領域の内部からの取り扱いは対象物(ペトリ皿)を一つずつ摘み上げる、またはスタックの全体を把持する、ロボットによって為すことが出来る。
【0032】
ペトリ皿は、移送装置により移送される対象物の好ましい例として挙げられたが、本出願はそれに限定されるものではなく、清浄処理領域内の自動取り扱い機器への差し出しのためにコンテナの端部の取り出し開口に向かいそれを通って積極的に移動する必要があるいかなる対象物も、ここに定義される移送装置と共に使用されるのに適している。
【0033】
そうであっても、本出願は、コンテナの内部に受容され、閉鎖された処理領域における環境的状態を監視する工程での使用の準備ができた複数のペトリ皿PのスタックS、を包含するここに定義した移送装置、を含むユニットに係わるものである。
【0034】
本出願は、複数の対象物Oを移送ポートRを通って無菌のまたは少なくとも清浄な処理領域または遮断装置に移送する方法にも関し、次のステップ(1)から(5)を逐次的に含むものであり、ここにおいてそれらは(1)(好ましくはコンテナ61の内部に)複数の対象物OのスタックSを含むここに記述される移送装置60、前記対象物Oは好ましくはペトリ皿Pである、が提供されるステップ;(2)前記移送装置60が次に前記移送ポートRに取り付けられるステップ;(3)それに続いて、移送ポートRが開けられ、それによってコンテナ61の内部空間67が無菌のまたは少なくとも清浄な処理空間または遮断装置と連通するステップ;(4)次に、ピストン64が、好ましくは押し込み力を印加することによって、並進運動で軸方向(X)に少なくとも1つの取り出し開口62の方向に、即ち62に向かって(すなわち無菌のまたは少なくとも清浄な処理領域または遮断装置に向かってまたはその方向に)動かされるステップ;および(5)続いて、最上部の対象物O(すなわち無菌のまたは少なくとも清浄な処理領域に最も近いまたはその中にある、対象物O)、好ましくはペトリ皿P、がスタックSから取り外され、無菌のまたは少なくとも清浄な処理領域または遮断装置内において、例えば、環境的状態を監視することに意図通りに、例えば空気サンプリングに使用されるステップ、である。
【0035】
移送装置60に含まれる、好ましくはコンテナ61に含まれるペトリ皿Pは、好ましくはペトリ皿の蓋が取り出し開口62に面している様に、またはその方に向く様に、方向付けられているということに注目すべきである。かくして、本方法のステップ(1)は、好ましくは次のステップ、(1’)複数のペトリ皿PのスタックSを移送装置60内に、それぞれをコンテナ61内に、それらの蓋が取り出し開口62の方に面して、導入するステップ、そして(1’’)つぎにそのようなペトリ皿PのスタックSを含む移送装置60を提供するステップ、を含む。
【0036】
上記のステップ(4)から(5)は、次に、スタックSのすべての対象物Oが移送装置60から、それぞれコンテナ61から、取り出されるまで繰り返されてもよい。
【0037】
それに加えて、本方法は(6)移送ポートRを閉めるステップ、および(7)ここに定義された移送装置60を前記移送ポートRから取り外すステップ、をさらに含んでよい。移送ポートRは、そして、新たな完全充填された、すなわち対象物Oのスタックを含む、移送装置60を受容する用意が整う。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】