(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】特定の液体電解質を有する電気化学セル
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0568 20100101AFI20231101BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20231101BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231101BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20231101BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20231101BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20231101BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20231101BHJP
【FI】
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/052
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/38 Z
H01M4/587
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524765
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2021079330
(87)【国際公開番号】W WO2022084500
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501094270
【氏名又は名称】ユミコア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・マイ
(72)【発明者】
【氏名】スヴェトロザル-ディミトロフ・イワノフ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ブント
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK11
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029CJ24
5H029HJ02
5H029HJ07
5H029HJ16
5H029HJ18
5H029HJ19
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050GA24
5H050GA26
5H050HA02
5H050HA07
5H050HA16
5H050HA18
5H050HA19
(57)【要約】
本発明は、電気化学セルであって、正極と、負極と、液体電解質であって、特定のリチウム塩、好ましくはリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、フッ素化エーテル、好ましくは1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)、環式スルホン、好ましくはスルホラン(SL)、及び0<x≦15体積%の量(x)のフッ素化カーボネート、好ましくはフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含む液体電解質とを含み、電気化学セルが少なくとも93%のクーロン効率を有する、電気化学セルに関する。本発明で使用する電解質によって電気化学的特性が改善される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルであって、
正極と、
負極と、
液体電解質であって、
・LiClO
4、LiN(SO
2F)
2、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiNSO
2FSO
2CF
3、LiN(SO
2)
2(CF
3)
3及びそれらの組合せからなる群から選択されるリチウム塩、
・1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、トリフルオロエチルヘキサフルオロプロピルエーテル、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルトホルメート、メトキシノナフルオロブタン、エトキシノナフルオロブタン、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルトホルメート、トリス(ヘキサフルオロイソプロピル)オルトホルメート、トリス(2,2-ジフルオロエチル)オルトホルメート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)メチルオルトホルメート、トリス(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)オルトホルメート、トリス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)オルトホルメート及びそれらの組合せからなる群から選択されるフッ素化溶媒、
・スルホラン、メチルスルホラン(例えば、3-メチルスルホラン、3,4-ジメチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン)、トリメチレンスルホン、1-メチルトリメチレンスルホン、ペンタメチレンスルホン、ヘキサメチレンスルホン、エチレンスルホン、及びそれらの組合せからなる群から選択される環式スルホン、並びに
・4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(フルオロエチレンカーボネートすなわちFEC)、シス又はトランス4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ-5-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、メチル-2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート、エチル-2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート、プロピル-2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート、メチル-2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロ-i-プロピルカーボネート、エチル-2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロ-i-プロピルカーボネート、ジ-2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート及びそれらの組合せからなる群から選択されるフッ素化カーボネート
を含む液体電解質と
を含み、
前記フッ素化カーボネートの量(x)が0<x≦15体積%であり、
前記電気化学セルが少なくとも93%のクーロン効率を有する、電気化学セル。
【請求項2】
前記リチウム塩が、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2F)
2又はLiN(SO
2)
2(CF
3)
3、好ましくはLiN(SO
2CF
3)
2である、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記フッ素化溶媒が、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル及びトリフルオロエチルヘキサフルオロプロピルエーテルからなる群から選択され、好ましくは、前記フッ素化溶媒が1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテルである、請求項1又は2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記環式スルホンが、スルホラン(SL)、3-メチルスルホラン、3,4-ジメチルスルホラン、又は2,4-ジメチルスルホランであり、好ましくは、前記環式スルホンがスルホランである、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記フッ素化カーボネートが、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(FEC)又は4-フルオロ-5-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オンであり、好ましくは、前記フッ素化カーボネートが、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(FEC)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記クーロン効率が少なくとも95%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記クーロン効率が少なくとも97%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項8】
前記クーロン効率が少なくとも98%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項9】
-前記リチウム塩がLiN(SO
2CF
3)
2であり、
-前記フッ素化溶媒が、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテルであり、
-前記環式スルホンがスルホランであり、
-前記フッ素化カーボネートが0<x≦15体積%の量(x)の4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンである、
請求項1~8のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項10】
1.0≦y≦5.0の環式スルホン/リチウム塩のモル比(y)を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項11】
前記フッ素化カーボネートを0.1≦x≦10体積%の量(x)で含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項12】
前記フッ素化カーボネートを0.5~5体積%の量で含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項13】
前記フッ素化カーボネートが1.0~2.0体積%の量で含まれる、請求項1~12のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項14】
1.0≦z≦5.0のフッ素化溶媒/リチウム塩のモル比(z)を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項15】
1.0≦y≦3.0の環式スルホン/リチウム塩のモル比(y)を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項16】
前記環式スルホン/リチウム塩が1.5≦y≦2.5のモル比(y)で含まれる、請求項1~15のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項17】
1.0<z<5.0のフッ素化溶媒/リチウム塩のモル比(z)を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項18】
2.0≦z≦3.5のフッ素化溶媒/リチウム塩のモル比(z)を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項19】
2.5≦z≦3.0のフッ素化溶媒/リチウム塩のモル比(z)を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項20】
環式スルホン/フッ素化溶媒のモル比(y/z)が2.0≦y/z≦3.0である、請求項1~19のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項21】
前記正極が、リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物、リチウムニッケル-マンガン酸化物、リチウムニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物、リチウムコバルト酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸コバルト鉄リチウム、硫化リチウム、硫黄、及びアルミニウムから選択される正極活物質を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項22】
前記正極が、リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物及びリチウムニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物から選択される正極活物質を含む、請求項21に記載の電気化学セル。
【請求項23】
前記負極が、リチウム、ニッケル、ケイ素、チタン、銀、ビスマス、ステンレス鋼、銅、及びそれらの合金、並びに黒鉛から選択される材料を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項24】
前記負極がリチウム又は銅を含む、請求項23に記載の電気化学セル。
【請求項25】
前記クーロン効率が、負極上に3.36mAh/cm
2のリチウムを電気めっきした後、前記負極上に電気めっきされたリチウムの量から0.43mAh/cm
2のリチウムを電気ストリッピングする工程、及び前記工程を50サイクル繰り返した後、電位が+0.5Vに達する最終の電気ストリッピングまで繰り返す工程によって測定されたものである、請求項1~24のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Li金属系電池又はリチウムイオン電池用の電解質組成物に関する。特に、本発明は、リチウム二次電池に好適な電解質組成物であって、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)などのリチウム塩、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)などのフッ素化溶媒、スルホラン(SL)などの環式スルホン、及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)などのフッ素化カーボネートを含む電解質組成物、並びにリチウム二次電池セルにおけるその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の3つの主要な機能的構成要素は、アノード、カソード、及び電解質である。従来のリチウムイオンセルのアノードは、炭素から作製され、カソードは、コバルト、ニッケル、マンガンなどの遷移金属酸化物から作製され、また電解質は、リチウム塩を含有する非水性溶媒である。例えばリン酸鉄リチウムカソードに基づく他のリチウムイオン電池も、市場に存在する。
【0003】
電解質は、電池が電流を外部回路に通すときに、カソードとアノードとの間のキャリアとして作用するリチウムイオンを伝導する必要がある。現行の電解質溶媒は、初期充電時に分解し、電気絶縁性であるが依然として十分なイオン伝導性を提供する固体の相間層を形成する。この相間層により、その後の充電/放電サイクルにおける電解質の更なる分解を防止する。
【0004】
このような電解質溶媒は一般的に、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びプロピレンカーボネート(PC)などの有機カーボネートの混合物からなり、リチウム塩は通常、ヘキサフルオロリン酸塩、LiPF6からなる。国際公開第2019/211353(A1)号は、二次電池セル、特にリチウムイオン二次電池セルに好適な非水性液体電解質組成物に関する。このような電解質組成物は、a)少なくとも1種の非フッ素化環式カーボネート及び少なくとも1種のフッ素化環式カーボネート、b)少なくとも1種のフッ素化非環式カルボン酸エステル、c)少なくとも1種の電解質塩、d)少なくとも1種のホウ酸リチウム化合物、e)少なくとも1種の環式硫黄化合物、並びにf)任意選択で少なくとも1種の環式カルボン酸無水物を含み、すべての構成要素は特定の比率で存在する。有益なことに、それは、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)又はリチウムコバルト酸化物(LCO)を含むカソード材料を含む電池において、特に高い動作電圧で使用することができる。
【0005】
リチウム二次電池の市場が急速に拡大し、携帯型電子デバイスに好適な、また絶大なエネルギー密度を示す、より小さくより軽い電池に対する需要が増加しているため、より高い容量で安全かつ安定した、高い動作電圧で動作可能な電池を得ようとする集中的な開発につながっている。
【0006】
携帯型電子デバイス用の電池の容量は、現在、主に電解質安定性が動作電圧を制限するため、頭打ち状態になっている。携帯型電子デバイスに好適な市販の電池の動作電圧は現在、4.2Vから最大4.4Vまで異なる。最新型携帯電話などの非常に高級な携帯型電子デバイスの場合、少なくとも4.4V(好ましくは4.5V以下)の動作電圧を印加する電池が要求される。更に、二次リチウムイオン電池セル用のいくつかの電解質組成物には、安全性の課題、すなわち、不燃性にするという課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、好ましくは従来のカットオフ又は動作電圧(4.4Vに限定される)に対してより高い電圧範囲、すなわち4.4Vより高い電圧で、高いクーロン効率(すなわち、少なくとも93%、好ましくは少なくとも98%)によって可能になる良好なサイクル寿命を示す(例えば、高い又は優れたサイクル寿命となるのに十分であり得る)、安定した安全で高エネルギー密度の電池を提供することである。
目的は、より高いエネルギー密度を有するLiイオン電池を提供することである。アノードとしてリチウム金属を選択することによって、より高いエネルギー密度が可能になるが、複数の問題、とりわけ、低いクーロン効率のためにサイクル性が乏しいという問題が生じる。本発明の目的は、サイクル性が乏しいという欠点がなく、より高いエネルギー密度を有するLiイオン電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、リチウム塩、フッ素化溶媒、環式スルホン及びフッ素化カーボネートを含む電解質組成物によって解決された。ここで、フッ素化カーボネートの量(x)は<x≦15体積%であり、環式スルホン/リチウム塩は1≦y≦5のモル比(y)で含まれ、フッ素化溶媒/リチウム塩は1≦z≦5のモル比(z)で含まれる。
特に、この目的は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)、スルホラン(SL)及び0<x≦15体積%の量(x)のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含み、SL/LiTFSIが1<y≦5のモル比(y)で含まれ、TTE/LiTFSIが1≦z≦5のモル比(z)で含まれる、リチウム二次電池に好適なスルホラン(SL)系電解質組成物を使用することによって解決された。ここで、体積%は、特定の構成成分の体積を、LiTFSI(M:287.08g/mol、ρ:1.33g/cm3)、FEC(M:106.05g/mol、ρ:1.45g/cm3)、及びSL(M:120.17g/mol、ρ:1.26g/cm3)、TTE(M:232.07g/mol、ρ:1.54g/cm3)の総体積で除したものとして定義される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)とリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)とのモル比を3.0:1.0に固定し、フルオロエチレンカーボネート(FEC)含量を2.5体積%に固定して、スルホラン(SL)のモル比を変化させた場合のサイクリング効率との関係についての実験結果を示す。
【
図2】スルホラン(SL)と1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)とリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)とのモル比を3.0:3.0:1.0に固定して、フルオロエチレンカーボネート(FEC)の体積%を変化させた場合のサイクリング効率との関係についての実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の態様において、本発明は、リチウム二次電池に好適な電解質組成物であって、
- LiClO4(過塩素酸リチウム)、LiN(SO2F)2(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiN(SO2CF3)2(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiN(SO2C2F5)2(リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド)、LiNSO2FSO2CF3(リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiN(SO2)2(CF3)3(リチウム1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホンイミド)及びそれらの組合せからなる群から選択されるリチウム塩、好ましくは、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2F)2又はLiN(SO2)2(CF3)3であるリチウム塩、最も好ましくは、LiN(SO2CF3)2であるリチウム塩と、
- 1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル(BTFE)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(TFTFE)、トリフルオロエチルヘキサフルオロプロピルエーテル、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルトホルメート(TFEO)、メトキシノナフルオロブタン(MOFB)、エトキシノナフルオロブタン(EOFB)、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)オルトホルメート(TFEO)、トリス(ヘキサフルオロイソプロピル)オルトホルメート(THFiPO)、トリス(2,2-ジフルオロエチル)オルトホルメート(TDFEO)、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)メチルオルトホルメート(BTFEMO)、トリス(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)オルトホルメート(TPFPO)、トリス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)オルトホルメート(TYPO)及びそれらの組合せからなる群から選択されるフッ素化溶媒、好ましくは、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)、ビス(2,2,2 - トリフルオロエチル)エーテル(BTFE)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(TFTFE)及びトリフルオロエチルヘキサフルオロプロピルエーテルからなる群から選択されるフッ素化溶媒、最も好ましくは、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)であるフッ素化溶媒と、
- スルホラン(SL)、3-メチルスルホラン、3,4-ジメチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホランなどのメチルスルホラン、トリメチレンスルホン(チエタン1,1-ジオキシド)、1-メチルトリメチレンスルホン、ペンタメチレンスルホン、ヘキサメチレンスルホン、エチレンスルホン、及びそれらの組合せからなる群から選択される環式スルホン、好ましくは、スルホラン(SL)、3-メチルスルホラン、3,4-ジメチルスルホラン又は2,4-ジメチルスルホランである環式スルホン、最も好ましくは、スルホランである環式スルホンと、
- 4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(フルオロエチレンカーボネート又はFEC)、シス又はトランス4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ-5-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、メチル-2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(MTFEC)、エチル-2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(ETFEC)、プロピル-2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(PTFEC)、メチル-2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロ-i-プロピルカーボネート(MHFPC)、エチル-2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロ-i-プロピルカーボネート(EHFPC)、ジ-2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(DTFEC)及びそれらの組合せからなる群から選択されるフッ素化カーボネート、好ましくは、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン又は4-フルオロ-5-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オンであるフッ素化カーボネート、最も好ましくは、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンである、フッ素化カーボネートと、を含む電解質組成物に関する。
【0011】
明確にするために、当業者は、本明細書に記載の成分の各々について入手可能な物理データから、本明細書に記載の成分の各々の体積%又は体積百分率、及び本明細書に記載の成分の各々の間のモル比を計算することができる。明確にするために、本明細書では、特に明記しない限り、体積%又は体積百分率は電解質組成物の総体積に基づく。
【0012】
一実施形態では、電解質組成物は、組成物の総体積に対して0<x≦15体積%の量(x)でフッ素化カーボネートを更に含む。組成物中の環式スルホン、リチウム塩及びフッ素化溶媒のそれぞれの量に応じて、上記電解質組成物は、組成物の総重量に対して0<x’≦13.4重量%の量(x’)でフッ素化カーボネートを含む。
【0013】
好ましくは、フッ素化カーボネートは、組成物の総体積に対して、0.1体積%≦x、0.1体積%<x、0.5体積%≦x、0.5体積%<x、1.0体積%≦x又は1.0体積%<xの量(x)で存在する。組成物中の環式スルホン、リチウム塩及びフッ素化溶媒のそれぞれの量に応じて、上記電解質組成物は、組成物の総重量に対して、約0.09重量%≦x’又は0.09重量%<x’、0.4重量%≦x’、0.4重量%<x’、0.9重量%≦x’又は0.9重量%<x’の量(x’)でフッ素化カーボネートを含む電解質組成物に相当する。
【0014】
好ましくは、フッ素化カーボネートは、組成物の総体積に対して、x≦15.0体積%、x<15.0体積%、x≦10.0体積%、x<10.0体積%、x≦5.0体積%、x<5.0体積%、x≦2.5体積%又はx<2.5体積%、又は更にはx≦2.0体積%、x<2.0体積%の量(x)で存在する。組成物中の環式スルホン、リチウム塩及びフッ素化溶媒のそれぞれの量に応じて、上記電解質組成物は、組成物の総重量に対して約x’≦13.4重量%、x’<13.4重量%、x’≦8.8重量%、x’<8.8重量%、x’≦4.4重量%又はx’<4.4重量%、x’≦2.2重量%又はx’<2.2重量%又はx’≦1.8重量%又はx’<1.8重量%の量(x’)でフッ素化カーボネートを含む電解質組成物に相当する。
【0015】
一実施形態では、フッ素化カーボネートは、組成物の総体積に対して0.5~5.0体積%の量(x)で含まれる。組成物中の環式スルホン、リチウム塩及びフッ素化溶媒のそれぞれの量に応じて、上記電解質組成物は、組成物の総重量に対して約0.4~約4.4重量%の量(x’)でフッ素化カーボネートを含む電解質組成物に相当する。より好ましい実施形態では、フッ素化カーボネートは、約0.9~約1.8重量%の量(x’)に相当する1.0~2.0体積%の量(x)で含まれる。
【0016】
一実施形態では、電解質組成物は、環式スルホン/リチウム塩を1.0≦y≦5.0のモル比(y)で含む。好ましくは、電解質組成物は、環式スルホン/リチウム塩を、1.0≦y、1.0<y、1.5≦y又は1.5<yのモル比(y)で含む。より好ましくは、電解質組成物は、環式スルホン/リチウム塩を、y≦5.0、y<5.0、y≦3.0、y<3.0、y≦2.5又はy<2.5のモル比(y)で含む。更により好ましくは、環式スルホン/リチウム塩は1.0≦y≦5.0のモル比(y)で含まれてもよい。更により好ましい実施形態では、環式スルホン/リチウム塩は1.0≦y≦3.0のモル比(y)で含まれてもよい。更により好ましい実施形態では、環式スルホン/リチウム塩は1.5≦y≦2.5のモル比(y)で含まれてもよい。
【0017】
一実施形態では、電解質組成物は、フッ素化溶媒/リチウム塩を1.0≦z≦5.0のモル比(z)で含む。好ましくは、電解質組成物は、1.0<z、2.0≦z、2.0<z、2.5≦z又は2.5<zのモル比(z)で含まれるフッ素化溶媒/リチウム塩を含む。好ましくは、電解質組成物は、z<5.0、z≦3.5、z<3.5、z≦3.0又はz<3.0のモル比(z)で含まれるフッ素化溶媒/リチウム塩を含む。好ましい実施形態では、フッ素化溶媒/リチウム塩は1<z<5.0のモル比(z)で含まれてもよい。より好ましい実施形態では、フッ素化溶媒/リチウム塩は2.0≦z≦3.5のモル比(z)で含まれてもよい。更により好ましい実施形態では、フッ素化溶媒/リチウム塩は2.5≦z≦3.0のモル比(z)で含まれてもよい。
【0018】
好ましい実施形態では、電解質組成物は、組成物の総体積に対して0.1≦x≦10体積%の量(x)でフッ素化カーボネートを含んでもよい。組成物中の環式スルホン、リチウム塩及びフッ素化溶媒のそれぞれの量に応じて、上記電解質組成物は、組成物の総重量に対して0.09~8.8重量%の量(x’)のフッ素化カーボネート、1.0≦y<5.0のモル比(y)の環式スルホン/リチウム塩及び1.0<z<5.0のモル比(z)のフッ素化溶媒/リチウム塩を含む。
【0019】
特に好ましい実施形態では、電解質組成物は、組成物の総体積に対して0.5~5体積%の量でフッ素化カーボネートを含んでもよい。組成物中の環式スルホン、リチウム塩及びフッ素化溶媒のそれぞれの量に応じて、上記電解質組成物は、組成物の総重量に対して0.4~4.4重量%の量(x’)のフッ素化カーボネート、1.0≦y≦3.0のモル比(y)の環式スルホン/リチウム塩及び2.0≦z≦3.5のモル比(z)のフッ素化溶媒/リチウム塩を含む。
【0020】
特に好ましい実施形態では、電解質組成物は、組成物の総体積に対して1.0~2.0体積%の量でフッ素化カーボネートを含んでもよい。組成物中の環式スルホン、リチウム塩及びフッ素化溶媒のそれぞれの量に応じて、上記電解質組成物は、組成物の総重量に対して0.9~1.8重量%の量(x’)のフッ素化カーボネート、1.5≦y≦2.5のモル比(y)の環式スルホン/リチウム塩及び2.5≦z≦3.0のモル比(z)のフッ素化溶媒/リチウム塩を含む。
【0021】
好ましい実施形態では、電解質組成物は、環式スルホン及びフッ素化溶媒を含み、ここで、環式スルホン及びフッ素化溶媒は、2.0≦y/z≦3.0のモル比(y/z)、好ましくは2.0≦y/z<3.0のモル比(y/z)、より好ましくは2.0≦y/z≦2.5のモル比(y/z)で含まれる。
【0022】
好ましい実施形態では、電解質組成物は、リチウム塩、フッ素化溶媒、環式スルホン及びフッ素化カーボネートを、組成物の総体積に対して少なくとも90体積%の量、より好ましくは少なくとも95体積%の量、又は更には少なくとも99体積%の量で含む。最も好ましくは、上記組成物は、リチウム塩、フッ素化溶媒、環式スルホン及びフッ素化カーボネートから本質的になる。
【0023】
非常に好ましい実施形態において、本発明は、リチウム二次電池に好適なスルホラン(SL)系組成物であって、LiN(SO2CF3)2(LiTFSI又はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)、スルホラン(SL)及び0<x≦15体積%の量(x)の4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(FEC又はフルオロエチレンカーボネート)を含むスルホラン(SL)系組成物に関する。
【0024】
好ましくは、上記スルホラン(SL)系組成物はLiTFSI及びSLを含み、ここで、SL/LiTFSIは1.0≦y≦5.0のモル比(y)で含まれ、TTE/LiTFSIは1.0≦z≦5.0のモル比(z)で含まれる。
【0025】
本発明において、電解質組成物は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI;LiN(SO2CF3)2)を含む。LiTFSIは、公知の化学化合物である(CAS番号:90076-65-6)。
【0026】
本発明において、電解質組成物は、組成物の総体積に対して0<x≦15体積%の量(x)で4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(FECすなわちフルオロエチレンカーボネート)を更に含む。組成物中のSL、LiTFSI及びTTEのそれぞれの量に応じて、上記電解質組成物は、組成物の総重量に対して0<x’≦13.4重量%の量(x’)でFECを含む。FECは、公知の化学化合物である(CAS番号:114435-02-8)。
【0027】
好ましくは、FECは、組成物の総体積に対して0.1体積%≦x、0.1体積%<x、0.5体積%≦x、0.5体積%<x、1.0体積%≦x、又は1.0体積%<xの量(x)で存在する。組成物中のSL、LiTFSI及びTTEのそれぞれの量に応じて、上記電解質組成物は、組成物の総重量に対して約0.09重量%≦x’又は0.09重量%<x’、0.4重量%≦x’、0.4重量%<x’、0.9重量%≦x’又は0.9重量%<x’の量でフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含む電解質組成物に相当する。
【0028】
好ましくは、FECは、組成物の総体積に対してx≦15.0体積%、x<15.0体積%、x≦10.0体積%、x<10.0体積%、x≦5.0体積%、x<5.0体積%、x≦2.5体積%又はx<2.5体積%、又は更にはx≦2.0体積%、x<2.0体積%の量(x)で存在する。組成物中のSL、LiTFSI及びTTEのそれぞれの量に応じて、上記電解質組成物は、組成物の総重量に対して約x’≦13.4重量%、x’<13.4重量%、x’≦8.8重量%、x’<8.8重量%、x’≦4.4重量%又はx’<4.4重量%、x’≦2.2重量%又はx’<2.2重量%、又はx’≦1.8重量%又はx’<1.8重量%の量でフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含む電解質組成物に相当する。
【0029】
好ましい実施形態では、FECは、組成物の総体積に対して0.5~5.0体積%の量(x)で含まれる。組成物中のSL、LiTFSI及びTTEのそれぞれの量に応じて、上記電解質組成物は、組成物の総重量に対して約0.4~約4.4重量%の量(x’)でフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含む電解質組成物に相当する。より好ましい実施形態では、FECは、約0.9~約1.8重量%の量(x’)に相当する1.0~2.0体積%の量(x)で含まれる。
【0030】
本発明において、電解質組成物は、スルホラン(SL)を更に含む。SLは、公知の化学化合物である(CAS番号:126-33-0)。
【0031】
本発明において、電解質組成物は、SL/LiTFSIを1.0≦y≦5.0のモル比(y)で含む。
【0032】
好ましくは、電解質組成物は、SL/LiTFSIを、1.0≦y、1.0<y、1.5≦y又は1.5<yのモル比(y)で含む。
【0033】
好ましくは、電解質組成物は、SL/LiTFSIを、y≦5.0、y<5.0、y≦3.0、y<3.0、y≦2.5又はy<2.5のモル比(y)で含む。
【0034】
好ましい実施形態では、SL/LiTFSIは、1.0≦y≦5.0のモル比(y)で含まれてもよい。より好ましい実施形態では、SL/LiTFSIは、1.0≦y≦3.0のモル比(y)で含まれてもよい。更により好ましい実施形態では、SL/LiTFSIは、1.5≦y≦2.5のモル比(y)で含まれてもよい。
【0035】
本発明において、電解質組成物は、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)を更に含む。TTEは、公知の化学化合物である(CAS番号:16627-68-2)。
【0036】
本発明において、電解質組成物は、TTE/LiTFSIを1.0≦z≦5.0のモル比(z)で含む。
【0037】
好ましくは、電解質組成物は、TTE/LiTFSIを、1.0<z、2.0≦z、2.0<z、2.5≦z又は2.5<zのモル比(z)で含む。
【0038】
好ましくは、電解質組成物は、TTE/LiTFSIを、z<5.0、z≦3.5、z<3.5、z≦3.0又はz<3.0のモル比(z)で含む。
【0039】
好ましい実施形態では、TTE/LiTFSIは、1<z<5.0のモル比(z)で含まれてもよい。より好ましい実施形態では、TTE/LiTFSIは、2.0≦z≦3.5のモル比(z)で含まれてもよい。更により好ましい実施形態では、TTE/LiTFSIは、2.5≦z≦3.0のモル比(z)で含まれてもよい。
【0040】
好ましい実施形態では、電解質組成物は、組成物の総体積に対して0.1≦x≦10体積%の量(x)でフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含んでもよい。組成物中のSL、LiTFSI及びTTEのそれぞれの量に応じて、上記電解質組成物は、組成物の総重量に対して0.09~8.8重量%の量(x’)のフルオロエチレンカーボネート(FEC)、1.0≦y<5.0のモル比(y)のSL/LiTFSI及び1.0<z<5.0のモル比(z)のTTE/LiTFSIを含む。特に好ましい実施形態では、電解質組成物は、組成物の総体積に対して0.5~5体積%の量でフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含んでもよい。組成物中のSL、LiTFSI及びTTEのそれぞれの量に応じて、上記電解質組成物は、組成物の総重量に対して0.4~4.4重量%の量(x’)のフルオロエチレンカーボネート(FEC)、1.0≦y≦3.0のモル比(y)のSL/LiTFSI及び2.0≦z≦3.5のモル比(z)のTTE/LiTFSIを含む。
【0041】
特に好ましい実施形態では、電解質組成物は、組成物の総体積に対して1.0~2.0体積%の量でフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含んでもよい。組成物中のSL、LiTFSI及びTTEのそれぞれの量に応じて、上記電解質組成物は、組成物の総重量に対して0.9~1.8重量%の量(x’)のフルオロエチレンカーボネート(FEC)、及び1.5≦y≦2.5のモル比(y)のSL/LiTFSI及び2.5≦z≦3.0のモル比(z)のTTE/LiTFSIを含む。
【0042】
好ましい実施形態では、電解質組成物は、スルホラン(SL)及びTTEを含み、ここで、SL及びTTEは、2.0≦y/z≦3.0のモル比(y/z)、好ましくは2.0≦y/z<3.0のモル比(y/z)、より好ましくは2.0≦y/z≦2.5のモル比(y/z)で含まれる。
【0043】
好ましい実施形態では、電解質組成物は、LiTFSI、TTE、SL及びFECを、組成物の総体積に対して少なくとも90体積%の量、より好ましくは少なくとも95体積%、又は更には少なくとも99体積%の量で含む。最も好ましくは、上記組成物は、LiTFSI、TTE、SL及びFECから本質的になる。
【0044】
電解質組成物を調製する方法は、特に限定されず、すなわち、例えば成分を混合することによって調製することができる。
【0045】
本発明はまた、本発明の電解質組成物を含むリチウム二次電池セルに関する。明確にするために、リチウム二次電池セルは、少なくともアノード、カソード、及び電解質、並びに任意選択でセパレータを含む。電解質は、本明細書に上記した本発明の電解質に関する。
【0046】
カソードの材料は特に限定されず、その例としては、リチウムイオンを拡散可能な構造を有する遷移金属化合物、又はその特化した金属化合物、及びリチウムの酸化物が挙げられる。具体的には、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiFePO4などを挙げることができる。好ましいカソード材料は、リチウム、ニッケル、並びに任意選択でマンガン、コバルト及び/又はアルミニウムを含む混合金属酸化物である。
【0047】
カソードは、既知の導電助剤若しくはバインダと共に上に列挙されたカソード材料を、又は既知の導電助剤若しくはバインダと共に正極活物質を、ピロリドンなどの有機溶媒中にプレス成形することによって形成することができる。それは、混合物を塗布してそれをアルミニウム箔などの集電体に貼り付け、続いて乾燥させて得ることができる。
【0048】
好ましい実施形態では、カソードは、リチウム箔(アノード)に対する銅箔(カソード)である。
【0049】
アノードの材料は、リチウムのめっき-ストリッピング又は挿入-抽出が可能な材料である限り、特に限定されない。例えば、Cu、Ni又は炭素系電極などの任意の集電体、リチウム金属、-NiなどのSn-Cu、Sn-Co、Sn-Fe若しくはSn-An合金、Li4Ti5O12若しくはLi5Fe2O3などの金属酸化物、天然黒鉛、人造黒鉛、ホウ素化黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維黒鉛化材料などの炭素材料、炭素-Si複合体、又はカーボンナノチューブである。
【0050】
カソードとアノードとの間の短絡を防止するために、通常、カソードとアノードとの間にセパレータが差し挟まれる。セパレータの材料及び形状は特に限定されないが、電解質組成物を容易に通過させ得ること、及びセパレータが絶縁体であり化学的に安定な材料であることが好ましい。その例としては、様々なポリマー材料で作製された微多孔質フィルム及びシートが挙げられる。ポリマー材料の具体例としては、ポリオレフィンポリマー、ニトロセルロース、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、及びポリプロピレンが挙げられる。電気化学的安定性及び化学的安定性の観点から、ポリオレフィンポリマーが好ましい。
【0051】
好ましい実施形態では、セパレータは、40.0μmの厚さ及び48%の多孔率を有するポリプロピレンセパレータ(例えば、Cellguard2075-1500M)である。このようなセパレータは、以下の論文文献に記載されている:International Journal of Electrochemistry,Volume 2018,Article ID 1925708,7pages,https://doi.Org/10.1155/2018/1925708。
【0052】
本発明のリチウム二次電池の最適な作動電圧は、正極と負極との組合せによって特に制限はされないが、2.4~4.5Vの平均放電電圧で使用することができる。好ましくは、リチウム二次電池セルは、高い動作電圧、すなわち、4.4V以上、好ましくは4.5V以下の動作電圧を有する。
【0053】
第2の態様において、本発明は、電気化学セルであって、正極と、負極と、液体電解質であって、本発明のリチウム塩、本発明のフッ素化溶媒、本発明の環式スルホン、及び0<x≦15体積%の量(x)の本発明のフッ素化カーボネートを含む液体電解質とを含み、上記電気化学セルが、負極、好ましくは銅箔上に3.36mAh/cm2のリチウムを電気めっきする工程、及び上記負極、好ましくは上記銅箔上に電気めっきされたリチウムの量から0.43mAh/cm2のリチウムを電気ストリッピングする工程、及びこのプロセスを50サイクル繰り返して、その後、電位が+0.5Vに達するまで最終の電気ストリッピングを行う工程によって測定して、少なくとも93%のクーロン効率を有する、電気化学セルに関する。好ましくは、上記クーロン効率は、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは少なくとも98%である。好ましくは、上記集電体は銅箔を含む。
【0054】
非常に好ましい実施形態において、本発明は、電気化学セルであって、正極と、負極と、液体電解質であって、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI、LiN(SO2CF3)2)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)、スルホラン(SL)、及び0<x≦15体積%の量(x)のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含む液体電解質とを含み、上記電気化学セルが、負極、好ましくは銅箔上に3.36mAh/cm2のリチウムを電気めっきする工程、及び上記負極、好ましくは上記銅箔上に電気めっきされたリチウムの量から0.43mAh/cm2のリチウムを電気ストリッピングする工程、及びこのプロセスを50サイクル繰り返して、その後、電位が+0.5Vに達するまで最終の電気ストリッピングを行う工程によって測定して、少なくとも93%のクーロン効率を有する、電気化学セルに関する。好ましくは、上記クーロン効率は、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは少なくとも98%である。好ましくは、上記集電体は銅箔を含む。
【0055】
好ましい実施形態において、本発明は、本発明の第2の態様の電気化学セルを提供し、上記電気化学セルは本発明の第1の態様の液体電解質を含む。
【実施例】
【0056】
1.コインセル調製の説明
試験したセルは、コインセルの型CR2025であった。正極ケーシング、正極(電解質中に予浸漬)、Cellguardセパレータ、50μLの電解質液滴、負極、スペーサ、波形バネ、及び負極ケーシングをその順序で積み重ねて、セルを調製した。MTI社製の手動圧接機を用いて、80kg/cm2の圧力で圧接を行った。
【0057】
電解質組成物は、電解質の総体積に対して0.0<x≦5.0体積%の量(x)のフルオロエチレンカーボネート(FEC)、5.0~1.0のSL/LiTFSIのモル比(y)のスルホラン(SL)とリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、及び5.0~1.0のSL/LiTFSIのモル比(z)の1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)とLiTFSIを加えて得た。
【0058】
2.不動態化プロトコル
リチウム試料の不動態化を、2ステップで行った。最初に、上記セクション1に記載のセルを、セルが対称である(Li金属がアノード及びカソードの両方に対して選択される)ように構築した。次に、セルを、電流密度0.60mA/cm2で5回、半サイクル当たり2時間でサイクリングし、1.20mAh/cm2の容量を得た。その後、セルを12時間静置した後、取り出し、SEIを含む不動態化Li電極を、リチウムセルから引き抜く。
【0059】
3.クーロン効率を測定するための方法の説明
不動態化リチウム電極を含むコインセルを、以下の条件下で数回充電及び放電して、その充電-放電サイクルの性能を決定し、ここではカソードとして銅箔及びアノードとしてリチウム箔からなるセル構成を使用して、クーロン効率をバイオロジックのVMP-3ポテンショスタットで測定する。最初に、特定量のリチウム金属(3.80mAhの容量に相当する約1mg/50μLの電解質)を、0.38mA/cm
2の定電流を使用して銅箔上にめっきし、その後、逆電流を最大0.50Vの電位まで印加することによって完全に除去して、Q
cleanを得て、これを使用して、CE
1st=Q
clean/Q
initialにより
図1及び
図2における1回目のサイクル効率を計算する。
【0060】
続いて、3.80mAhの容量(2回目のQinitial)に相当する別のおよそ1mg/50μLの電解質のリチウム金属を、同じ電流密度を使用して、銅箔上にめっきする。
【0061】
この後、0.380mA/cm2の電流密度、及び各サイクルのサイクリングが合計容量(3.80mAh、Qinitial)の12.5%(本発明者らの設定では0.475mAh)で、50サイクル(n)を行った。
【0062】
50回目のサイクルの完了後、残りのリチウムを、0.380mA/cm2の電流密度を0.5Vのカットオフ電圧に印加する(Qfinalを得る)ことによって銅電極からストリッピングした。
【0063】
CEを、以下の一般式を使用して計算した。
【0064】
【0065】
Qcycle、Qinitial及びnが既知である(上記実験の記載を参照されたい)ことに基づいて、式を、以下のように簡略化することができる。
【0066】
【0067】
4.実験的試験及び結果
スルホラン(SL):1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE):リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)のモル比に対するサイクリング効率の関係を試験するために、モル比を2:3:1から3:3:1に変化させた。FEC含量を2.5体積%で一定に維持して、最初の充放電サイクル及び後続の充放電サイクルでクーロン効率を測定した。実験結果を
図1に示す。
【0068】
図1は、電解質組成物のサイクリング効率がSL/LiTFSIのモル比に依存することを示している。
【0069】
2:1のSL/LiTFSIのモル比を有する本発明の電解質のサイクリング効率は、90%超の著しく高いサイクリング効率を示し、これは3:1のSL/LiTFSIのモル比を有する本発明の電解質と比較して著しく高い。加えて、初期サイクリング効率も、2:1のSL/LiTFSIのモル比を有する電解質においてより高い。
【0070】
2.0~2.5のSL/LiTFSIのモル比を有する本発明の電解質組成物のサイクリング効率が最適であり、2のSL/LiTFSIのモル比で最大である。
【0071】
SL/LiTFSIのモル比が3:1を超える電解質組成物のサイクリング効率は、サイクリングが不可能な程度まで著しく低下した。
【0072】
フルオロエチレンカーボネート(FEC)の量に対するサイクリング効率の依存性を試験するために、SL:TTE:TFSIのモル比を3:3:1で一定に維持しながら、FECの量(電解質組成物の総体積に対する体積百分率に基づく)を0体積%から15体積%まで1体積%刻みで変化させて、電解質についてクーロン効率を最初の充放電サイクル及びその後の充放電サイクルで測定した。実験結果を
図2に示す。
【0073】
図2は、電解質組成物のサイクリング効率が、添加したFECの量に依存することを示している。
【0074】
のモル比を有する本発明の電解質のサイクリング効率は、90%超の顕著な高いサイクリング効率を示す。
【0075】
2体積%、5体積%のFECを有する本発明の電解質組成物のサイクリング効率が最適である(15体積%までの範囲のFECの実験結果は5体積%のFECと同等であることから、読み取りやすさのために省略した)。
【0076】
FECが15体積%を超える電解質組成物のサイクリング効率は著しく低下し、リチウムのめっき挙動が不安定になり、セルの不良につながる。
【0077】
図1及び
図2に示した結果を下の表1及び表2にまとめる。
【0078】
【0079】
【国際調査報告】