(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】難溶性の医薬品有効成分の溶解性を高めるための医薬組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20231101BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20231101BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20231101BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20231101BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20231101BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20231101BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K47/32
A61P31/10
A61P9/00
A61P7/02
A61K31/496
A61K31/519
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525979
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2021079787
(87)【国際公開番号】W WO2022090296
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】キッピング、 トマス
(72)【発明者】
【氏名】バウアー、 フィン
(72)【発明者】
【氏名】ディ ガロ、 ニコル
(72)【発明者】
【氏名】クヌエッテル、 アニア-ナディーネ
(72)【発明者】
【氏名】エリア、 アレッサンドロ ジュゼッペ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA29
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC11
4C076CC32
4C076EE06A
4C076EE06E
4C076FF15
4C076FF33
4C076GG50
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC60
4C086CB10
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA34
4C086MA52
4C086NA02
4C086ZA36
4C086ZA54
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、賦形剤としてポリマーを用いた医薬組成物に関する。特に、本発明は、難溶性の医薬品有効成分の水性媒体中における溶解性を高めるために好適なポリビニルアルコールを含む医薬組成物に関する。本発明はまた、難溶性の医薬品有効成分の溶解性を向上させるための方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス中の少なくとも1つの医薬品有効成分の非晶質固体分散体を含む医薬組成物を用いて、水性媒体中における医薬品有効成分の溶解性を高める方法であって、ポリマーが、72%~85%の加水分解度、および2mPas~4mPasの20℃における4%溶液の粘度を有するポリビニルアルコールである方法。
【請求項2】
前記水性媒体が、6~8のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸性pHを有する媒体から中性pHを有する媒体へのpHシフト後に、溶解性が向上する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸性pHを有する媒体が1~2の間のpHを有し、前記中性pHを有する媒体が6~8の間のpHを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリビニルアルコールが、80%~85%の加水分解度、および2mPas~4mPasの20℃における4%溶液の粘度を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリビニルアルコールが、80%~83%の加水分解度、および3mPasの20℃における4%溶液の粘度を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリビニルアルコールが、PVA3-80、PVA3-82またはPVA3-83である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記医薬品有効成分が難溶性である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記非晶質固体分散体が、少なくとも1つの医薬品有効成分と、ポリビニルアルコールと、任意にさらなる薬学的に許容される成分と、をポリマーマトリックスのガラス転移温度または溶融温度を超える温度にて混合し、それにより医薬品有効成分の非晶質固体分散体を形成することによって得られる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
温度が、少なくとも医薬品有効成分の溶融温度である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法により得られる医薬組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の医薬組成物を、錠剤、ビーズ、顆粒、ペレット、カプセル、懸濁液、エマルション、ゲル、フィルムの形態で含有する経口投与剤形。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物を調製する方法であって、難溶性の医薬品有効成分と、72%~85%の加水分解度、および2mPas~4mPasの20℃における4%溶液の粘度を有するポリビニルアルコールと、任意にさらなる薬学的に許容される成分と、をポリマーマトリックスのガラス転移温度または溶融温度を超える温度にて混合する工程と、それにより医薬品有効成分の非晶質固体分散体を形成する工程と、を有する方法。
【請求項14】
前記ポリビニルアルコールが、80%~83%の加水分解度、および3mPasの20℃における4%溶液の粘度を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
温度が、少なくとも医薬品有効成分の溶融温度である、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、賦形剤としてポリマーを用いた医薬組成物に関する。特に、本発明は、難溶性の医薬品有効成分の水性媒体中における溶解性を高めるために好適なポリビニルアルコールを含む医薬組成物に関する。本発明はまた、難溶性の医薬品有効成分の溶解性を高めるための方法に関する。
【0002】
技術の現状
ポリビニルアルコール(PVA)のような親水性ポリマーを医薬組成物の賦形剤として使用することは、広く記載されている。国際公開第2018/083285号は、有効成分を含む医薬組成物、特に、難溶性の医薬品有効成分(API)とともに非晶質固体分散体を形成する圧縮錠剤における、ポリマーマトリックスとしての改善された特性を有する粉末状PVAを開示している。
【0003】
非晶質固体分散体の製剤化は、難水溶性薬物のバイオアベイラビリティを改善するための、よく知られた戦略である。非晶質形態は、高い溶解性を示すものの、かなり不安定であり、溶解直後または酸性の胃環境からより中性の腸に変化する際のpH変化により再結晶し、沈殿する傾向がある。APIの再結晶化した画分は吸収することはできない。薬物の吸収は主に腸内で行われるため、腸内溶液中でAPIを高濃度に維持できない医薬製剤では、バイオアベイラビリティの向上はわずかなものに留まるのが通常である。望ましくない再結晶は、むしろAPIのバイオアベイラビリティを低下させる。低いバイオアベイラビリティは、医薬組成物、特に、水溶性の高くないAPIを含む医薬組成物の開発において遭遇する大きな問題である。
【0004】
低溶性化合物の過飽和度への影響については、Giftらの「Influence of polymeric excipients on crystal hydrate formation kinetics in aqueous slurries」に記載されている(J. Pharm. Sci.、2008年、97(12):5198-211)。ポリビニルアルコールは、カフェイン等のモデル化合物の結晶形成を抑制する評価に成功した。これらのデータで使用されたPVAのグレードは、平均分子量47,000のポリビニルアルコール(PVA)と記載されている。加水分解度に関するそれ以上の特定や評価はない。
【0005】
モデル化合物であるタクロリムスの過飽和状態を高めるためにPVAを用いた別の研究が、Overhoffらの「Effect of Stabilizer on the Maximum Degree and Extent of Supersaturation and Oral Absorption of Tacrolimus Made By Ultra-Rapid Freezing」に記載されている(Pharmaceutical Research、2008年、25(1):167-75)。固体分散体は、超急速凍結乾燥によって調製される。使用されたPVAグレードは、ポリ(ビニル)アルコール(PVA、Mw13,000~23,000、87~89%が加水分解されたもの)と記載されている。PVAは、安定剤として首尾よく使用することができた。
【0006】
ホットメルト押出のためのポリビニルアルコールの使用は、以前にde Jaeghereらの「Hot-melt extrusion of polyvinyl alcohol for oral immediate release applications」によって記載されている(Int. J. Pharm.、2015;492(1-2):1-9)。部分加水分解されたPVAグレードを用いて、経口即放性製剤の担体としての使用が評価された。放出速度への影響が確認されたが、加水分解度と過飽和ポテンシャルとの間の直接的な関連は確認されなかった。
【0007】
Broughらは、「Use of Polyvinyl Alcohol as a Solubility Enhancing Polymer for Poorly Water-Soluble Drug Delivery(Part 1)、AAPS PharmSciTech、第17巻、第1号、p.176(2016.02.01)において、PVA4-75、PVA4-88、PVA4-98、PVA4-38を含む特定のPVAグレードを、非沈下胃内移行溶解法(non-sink gastric transfer dissolution method)によって調査した。1.2から6.8にpHシフトした後、弱塩基性モデルAPIであるイトラコナゾールの溶解性が急速に低下することが明らかになった。4-88グレードのPVAは、モデルAPIであるイトラコナゾールの溶解性およびバイオアベイラビリティを向上させる効果があると判断された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特に、酸性媒体から、より中性の媒体へのpH変化後に、改善した可溶化特性を有する賦形剤に対するニーズが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[発明の概要]
驚くべきことに、ポリマーマトリックス中にAPIの非晶質固体分散体を含む医薬組成物において、難水溶性APIの溶解後の過飽和特性を改善するためのポリマーとして、72%~85%の加水分解度、および2mPas~4mPasの20℃における4%溶液の粘度を有するポリビニルアルコールが特に適していることを見出した。
【発明の効果】
【0011】
予期せぬことに、既存の一般的に用いられるPVAグレードと比較して、水性媒体中において、難溶性のAPIを過飽和にする可能性がより高い、加水分解度および粘度の最適範囲が存在することが示された。この最適範囲にあるPVAグレードは、特に弱塩基性APIに対して、酸性水溶液媒体中で非常に優れた過飽和特性を示す。驚くべきことに、72%~85%の範囲外の加水分解度、および2mPas~4mPasの範囲外の粘度を有するPVAのような標準的なPVAグレードと比較して、ほぼ中性の水性媒体へのシフト後においても過飽和特性は依然として顕著に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、PVAのグレードを変えて、親油性モデルAPIとしてイトラコナゾール(ITZ)を用いたモデル押出マトリックス系を調製するための押出パラメータをまとめた表である。
【
図2】
図2は、異なるPVAグレードとイトラコナゾール(ITZ)を含む押出マトリックスの溶解プロファイルを示す。
【
図3】
図3は、PVAのグレードを変えて、親油性モデルAPIとしてジピリダモールを用いたモデル押出マトリックス系を調製するための押出パラメータをまとめた表である。
【
図4】
図4は、異なるPVAグレードとジピリダモールを含む押出マトリックスの溶解プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、PVAは、80%~85%の加水分解度、および2mPas~4mPasの20℃における4%溶液の粘度を有する。
【0014】
本発明に係る最も好ましいPVAは、80%~83%の加水分解度、および3mPasの20℃における4%溶液の粘度を有し、特にPVA3-80およびPVA3-83である。
【0015】
本発明の別の好ましい実施形態において、APIの非晶質固体分散体は、PVAと、任意にさらなる薬学的に許容される成分と、を組み合わせることによってポリマーマトリックスを得て、そして該ポリマーマトリックスのガラス転移温度または溶融温度を超える(above)温度にて、該ポリマーマトリックスとAPIとを混合し、それにより医薬品有効成分の非晶質固体分散体を形成することによって得られる。好ましくは、温度は少なくともAPIの溶融温度である。
【0016】
別の態様において、本発明は、錠剤、ビーズ、顆粒、ペレット、カプセル、懸濁液、エマルション、ゲル、フィルムの形態で、本発明に係る医薬組成物を含む経口投与剤形を提供する。
【0017】
本発明のさらなる態様は、水性媒体中におけるAPIの溶解性を高めるための方法に関し、該方法は、少なくとも1つの難溶性の医薬品有効成分と、72%~85%の加水分解度、および2mPas~4mPasの20℃における4%溶液の粘度を有するポリビニルアルコールと、をポリマーマトリックスのガラス転移温度または溶融温度を超える温度にて混合し、それにより前記医薬品有効成分の非晶質固体分散体を形成することを含む。好ましくは、水性媒体中における医薬品有効成分の溶解性は、72%~85%の範囲外の加水分解度、および/または2mPas~4mPasの範囲外の粘度を有するポリビニルアルコールを含む非晶質固体分散体中の医薬品有効成分の溶解性と比較して向上する。本方法は、1~2、特に1~1.2のpHを有する酸性条件または胃の条件において適用することができる。本方法は、pH6~8、特にpH6.5~7.5を有する中性媒体におけるAPIの溶解性を高めるために特に適している。
【0018】
[発明の詳細な説明]
本発明は、ポリマーマトリックス中の少なくとも1つの医薬品有効成分の非晶質固体分散体を含む医薬組成物であって、前記医薬品有効成分が、好ましくは難溶性であり、ポリマーが、72%~85%の加水分解度、および2mPas~4mPasの20℃における4%溶液の粘度を有するポリビニルアルコールである医薬組成物を開示する。
【0019】
本発明に係る医薬組成物の医薬品有効成分(API)は、ポリマーマトリックス中に分散している。APIとは、弱塩基、弱酸、または中性分子の形態の生理活性物質である。APIは、その1つ以上の薬学的に許容される塩、エステル、誘導体、類似体、プロドラッグ、および溶媒和物の形態であってもよい。医薬組成物は、複数のAPIを含んでいてもよい。
【0020】
本明細書において、「難溶性API」、「難水溶性API」および「親油性API」という用語は、生物薬剤学分類システム(BCS)のクラス2および4による低溶解性の定義に従って、個人に投与される特定のAPIの最高治療用量が、pH1~8の範囲の水性媒体250mlに溶解できないほどの溶解性を有するAPIを指す。弱塩基性または弱酸性の特性を有する難溶性APIは、pHに依存した溶解プロファイルを有し、消化管の水性環境において広範囲の溶解度を有することができる。BCSクラス2または4に該当するAPIは、それぞれ当業者によく知られている。
【0021】
本明細書において、「弱塩基性API」という用語は、水中で完全にイオン化しない塩基性医薬品有効成分(API)を意味する。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、本発明の医薬組成物に含まれるAPIは、治療上有効であるのに十分な量を有する。あるAPIについて、治療上有効な量は、一般に知られているか、当業者であれば容易にアクセス可能である。典型的には、APIは、医薬組成物中に、ポリマーマトリックスに対するAPIの重量比が1:99~(90:10)の範囲、好ましくは5:95~60:40、最も好ましくは10:90~30:70で存在し得る。
【0023】
ポリビニルアルコール(PVA)は、理想式(idealized formula)[CH2CH(OH)]nで表される合成水溶性ポリマーである。それは、良好なフィルム形成性、接着性、および乳化性を有する。PVAは、ポリ酢酸ビニルから調製され、官能性酢酸基が部分的または完全に加水分解されて、アルコール官能基となる。完全に加水分解されない場合、PVAは、ビニルアルコール繰り返し単位-[CH2CH(OH)]-と、酢酸ビニル繰り返し単位-[CH2CH(OOCCH3)]-と、からなるランダムコポリマーである。PVAの極性は、その分子構造と密接に関連している。PVAの分子特性は、加水分解度および分子量によって決まる。酢酸基の加水分解度が高くなると、水性媒体中におけるポリマーの溶解性、およびポリマーの結晶化度や溶融温度もまた高くなる。しかしながら、88%を超える高い加水分解度においては、PVAの溶解性は再び低下する。PVAは、一般に水に溶解するが、一部のエタノールを除くほとんどの有機溶媒には、ほとんど溶解しない。
【0024】
典型的なPVAの命名は、20℃における4%溶液の粘度およびポリマーの加水分解度を示している。例えば、PVA3-83は、粘度3mPasのPVAグレードで、83%が加水分解されており、すなわち、83%のビニルアルコール繰り返し単位と17%の酢酸ビニル繰り返し単位とを有する。当業者は、83%の加水分解度および3mPasの粘度は、一般的な丸め方による82.50%から83.49%の加水分解度と、2.50mPasから3.49mPas%の粘度と、の計算値を含むことを認識している。本発明に係る粘度は、USP39のモノグラフ「ポリビニルアルコール」に記載されているように、Viscosity-Rotational法(912)によって測定される。
【0025】
本発明に係る加水分解度は、例えばUSP39のモノグラフ「ポリビニルアルコール」の「加水分解度」に記載されているように、ポリビニルアルコールのけん化価を決定することにより測定される:
【0026】
サンプル:ポリビニルアルコール1g、予め110℃で乾燥させて定重量にしたもの
分析:
サンプルを、適当なガラス製ジョイントを用いて還流冷却器を取り付けた広口の250mlコニカルフラスコに移す。35mlの希釈メタノール(3/5、3 in 5)を加え、穏やかに混合し、固体が完全に濡れるようにする。フェノールフタレインTSを3滴加え、必要に応じて、0.2N塩酸または0.2N水酸化ナトリウムを加えて中和する。25.0mlの0.2N水酸化ナトリウムVSを加え、ホットプレート上で1時間穏やかに還流する。冷却器を水10mlで洗浄し、洗浄液をフラスコに集めて冷却した後、0.2N塩酸VSを用いて滴定する。同時に、同量の0.2N水酸化ナトリウムVSを用いて、同じ方法によりブランク測定を行う。
【0027】
けん化価の算出:
けん化価を算出する:
【0028】
結果=[(VB-VS)×N×Mr]/W
【0029】
VB=ブランクの滴定において消費された0.2N塩酸VSの体積(ml)
VS=サンプル溶液の滴定において消費された0.2N塩酸VSの体積(ml)
N=塩酸VSの実際の規定度(actual normality)
Mr=水酸化カリウムの分子量、56.11
W=採取したポリビニルアルコール部分(portion)の重量(g)
【0030】
加水分解度の算出:
ポリ酢酸ビニルの加水分解の割合として表される加水分解度を算出する:
【0031】
結果=100-[7.84×S/(100-0.075×S))
【0032】
S=ポリビニルアルコールのけん化価
【0033】
本発明によれば、驚くべきことに、72%~85%の範囲の加水分解度、および2mPas~4mPasの20℃における4%溶液の粘度を有するPVAが、難溶性APIの過飽和状態の延長をもたらす際に優れた性能を示すことを見出した。実験によると、予期せぬことに、85%超または78%未満の加水分解度、および4mPas超の20℃における4%溶液の粘度を有するPVAは、特にpH6.8のほぼ中性のpH条件下では、モデルAPIの過飽和において匹敵する性能を発揮しないことが示された。
【0034】
PVAの加水分解グレードを変えることにより、水素結合供与性水酸基の比率を調整可能なPVAが提供され、それが、環境pH条件とは無関係に、難溶性API、特に弱塩基性の難溶性APIの溶解促進剤として機能し得ることが予想される。
【0035】
好ましいPVAは、80%~85%の加水分解度、および2mPas~4mPasの20℃における4%溶液の粘度を有する。特に好ましいPVAは、80%~83%の加水分解度、および3mPasの20℃における4%溶液の粘度を有する。最も好ましいPVAは、PVA3-80およびPVA3-83である。
【0036】
上記の粘度および加水分解グレードを有するPVAが、難溶性APIの水性媒体中での放出および過飽和を保証かつ安定化し、それにより結晶化および相分離を防止することを見出した。APIの低い水溶性は、一般に、医薬製剤として投与した後の低いバイオアベイラビリティを伴うため、本発明に係る組成物は、難水溶性API、特に弱塩基性APIのバイオアベイラビリティを改善することにも寄与する。驚くべきことに、APIの過飽和度の向上は、腸内のより中性の環境を反映して、ほぼ中性の水性媒体においても顕著であった。
【0037】
本明細書において、「バイオアベイラビリティ」とは、患者の体内に投与された後、APIが標的組織に対して利用可能となる程度を意味する用語である。
【0038】
医薬組成物のためのポリマーマトリックス中における本発明に係るPVAグレードの使用は、瞬時、即時または長期のAPI放出を有する固体経口医薬投与剤形の製剤化のために興味深いものである。
【0039】
本発明の好ましい実施形態において、ポリマーマトリックスは、他の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせることができる。特に、本発明に係る医薬組成物は、追加の薬学的に許容される親水性ポリマーまたは親油性ポリマーを含んでいてもよい。前記医薬組成物は、二酸化ケイ素などの流動制御剤、充填剤、可塑剤、界面活性剤、および当業者によく知られている他の適切な成分を含んでいてもよい。疑念を避けるために、他の適切な成分、例えば二酸化ケイ素のような流動制御剤は、本発明に係る有益な特性、例えば難水溶性のAPI、特に弱塩基性APIのバイオアベイラビリティを改善するために必要ではない。しかし、それらの成分は、他の目的、例えば、本発明に係る医薬組成物または経口投与剤形の製造プロセスを最適化するために使用することができる。
【0040】
本明細書において使用する場合、「薬学的に許容される」という表現は、一般的にヒトに投与した場合にアレルギー反応または同様の不快な反応を生じない、溶媒、分散媒体、流動制御剤、賦形剤、担体、コーティング、活性剤、等張剤および吸収遅延剤などのすべての化合物を指す。医薬組成物におけるこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野においてよく知られている。
【0041】
本明細書で使用する場合、「非晶質固体分散体」という用語は、ポリマーマトリックス中の非晶質APIの分散体である。好ましくは、該非晶質APIは、ポリマーマトリックス内に分子的に分散した状態で分布している。この場合、固体分散体は固溶体である。非晶質固体分散体を含む製剤は、溶解時に結晶性APIよりも水性媒体への溶解性が高くなり得る。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、医薬組成物を調製するための好ましい方法には、ホットメルト押出、射出成形、圧縮成形および付加製造が含まれ、ホットメルト押出が最も好ましい方法であるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明の好ましい実施形態によれば、非晶質固体分散体は、少なくとも1つの医薬品有効成分と、ポリビニルアルコールと、任意にさらなる薬学的に許容される成分と、をポリマーマトリックスのガラス転移温度または溶融温度を超える温度にて混合し、それにより医薬品有効成分の非晶質固体分散体を形成することによって得ることができる。好ましくは、温度は、ポリマーマトリックス全体への非晶質APIの均一な分布を促進するために、少なくともAPIの溶融温度である。
【0044】
本発明によれば、APIの非晶質固体分散体を得るための最低作業(working)温度は、PVAが溶融状態にある温度超、すなわち一般に、PVAのガラス転移温度または溶融温度を超える温度である。ポリマーマトリックス中に、好ましくは非晶質形態のAPIの均一な分布を形成することを容易にするために、作業温度は、好ましくは少なくともAPIの融解温度である。APIが溶融ポリマーマトリックスに可溶化する場合、作業温度はAPIの溶融温度未満とすることも可能である。
【0045】
本発明に係る医薬組成物は、錠剤、ビーズ、顆粒、ペレット、カプセル、懸濁液、エマルション、ゲル、またはフィルムの形態で経口投与剤形に含めることができる。
【0046】
胃腸管に入った経口投与剤形のポリマーマトリックスは、胃腸液の水性環境において膨潤、崩壊し、それによりAPIが放出される。弱塩基性APIの塩形態は、酸性の胃液中での初期の水性濃度を改善することができるが、弱塩基性APIは、より中性の腸液中で遊離塩基形態に急速に変換され、APIの遊離塩基形態は、著しく低い平衡濃度となる。本発明に係る投与剤形に含まれるPVAは、一般的に使用されるPVAと比較して、酸性および中性の胃腸液を模したモデル溶液中において、APIの濃度を高く維持することが示された。したがって、本発明に係る医薬組成物は、経口投与剤形として投与された場合、難溶性APIのバイオアベイラビリティの向上を提供する可能性を有することが示された。本発明に係るPVAグレードの存在下におけるAPIの溶解性改善形態は、一般的に使用されるPVAグレードの存在下で提供されるAPIの濃度よりも高い、胃液または模擬胃液中におけるAPIの濃度を提供する。
【0047】
本発明のさらなる実施形態は、水性媒体中における医薬品有効成分の溶解性を高めるための方法であって、該方法は、少なくとも1つの難溶性医薬品有効成分と、72%~85%の加水分解度、および2mPas~4mPasの20℃における4%溶液の粘度を有するポリビニルアルコールと、をポリマーマトリックスのガラス転移温度または溶融温度を超える温度にて混合し、それにより医薬品有効成分の非晶質固体分散体を形成することを含む。
【0048】
本発明の好ましい実施形態によれば、72%~85%の範囲外の加水分解度、および/または2mPas~4mPasの範囲外の粘度を有するポリビニルアルコールを含む非晶質固体分散体中の医薬品有効成分の溶解性と比較して、水性媒体中における医薬品有効成分の溶解性が向上する。
【0049】
水性媒体中における医薬品有効成分の溶解性の向上は、好ましくは酸性pHおよび中性pHにおいて見られる。本発明に係る酸性pHは、pH7未満のpH範囲であり、特に1~2のpH、より特に1~1.2のpHである。より好ましくは、中性pHにおいて溶解性が向上する。本発明に係る中性pHは、6~8のpH範囲であり、より好ましくは、6.5~7.5のpHである。
【0050】
非晶質固体分散体を含む経口投与用医薬組成物は、胃腸管に入った後、まず胃酸にさらされ、次に腸管内でより中性の液体にさらされる。非晶質固体分散体の溶解性は、水性媒体中での1~2の間のpHから6~8の間のpH、好ましくは1~1.2の間のpHから6.5~7.5の間のpHのようなpHシフト後に追加的に向上する。
【0051】
本発明の文脈において、溶解性の向上は、好ましくは酸性媒体から中性媒体へのpHシフト後の、医薬品有効成分の溶解性の延長、過飽和度の向上および/または延長、並びに沈殿の低減の効果もカバーする。これらの効果は、例えば
図2および
図4のような溶解実験においても確認することができる。本発明によれば、これらの効果は、互換的に使用することができる。
【0052】
したがって、本発明の一実施形態は、ポリマーマトリックス中の少なくとも1つの医薬品有効成分の非晶質固体分散体を含む医薬組成物を用いて、水性媒体中における医薬品有効成分の溶解性を高める方法であって、ポリマーが、72%~85%の加水分解度、および2mPas~4mPasの20℃における4%溶液の粘度を有するポリビニルアルコールである方法である。
【0053】
好ましくは、水性媒体は、6~8のpHを有する。
【0054】
好ましい実施形態において、酸性pHを有する媒体から中性pHを有する媒体へのpHシフト後に、溶解性が向上する。より好ましくは、酸性pHを有する媒体は1~2の間のpHを有し、中性pHを有する媒体は6~8の間のpHを有する。
【0055】
本発明のさらなる実施形態は、上記の方法であって、前記ポリビニルアルコールが、80%~85%の加水分解度、および2mPas~4mPasの20℃における4%溶液の粘度を有する方法である。好ましくは、ポリビニルアルコールは、80%~83%の加水分解度、および3mPasの20℃における4%溶液の粘度を有する。より好ましくは、ポリビニルアルコールは、PVA3-80、PVA3-82またはPVA3-83である。
【0056】
本発明のさらなる実施形態において、医薬品有効成分は難溶性である。
【0057】
本発明のさらなる実施形態は、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法であって、前記非晶質固体分散体が、少なくとも1つの医薬品有効成分と、ポリビニルアルコールと、任意にさらなる薬学的に許容される成分と、をポリマーマトリックスのガラス転移温度または溶融温度を超える温度にて混合し、それにより医薬品有効成分の非晶質固体分散体を形成することによって得られる方法である。好ましくは、温度は、少なくとも医薬品有効成分の溶融温度である。
【0058】
本発明のさらなる実施形態は、上記の方法によって得られる医薬組成物である。
【0059】
本発明のさらなる実施形態は、錠剤、ビーズ、顆粒、ペレット、カプセル、懸濁液、エマルション、ゲル、フィルムの形態で、上記の医薬組成物を含む経口投与剤形である。
【0060】
本発明のさらなる実施形態は、上記の医薬組成物を調製する方法であって、難溶性の医薬品有効成分と、72%~85%の加水分解度、および2mPas~4mPasの20℃における4%溶液の粘度を有するポリビニルアルコールと、任意にさらになる薬学的に許容される成分と、をポリマーマトリックスのガラス転移温度または溶融温度を超える温度にて混合する工程と、それにより医薬品有効成分の非晶質固体分散を形成する工程と、を有する方法である。好ましくは、ポリビニルアルコールは、80%~83%の加水分解度、および3mPasの20℃における4%溶液の粘度を有する。より好ましくは、温度は、少なくとも医薬品有効成分の溶融温度である。
【0061】
本発明の好ましい実施態様において、水性媒体中における医薬品有効成分の溶解性を高めるための方法は、80%~85%の加水分解度、および2mPas~4mPasの20℃における4%溶液の粘度を有するポリビニルアルコールを含有する。より好ましくは、ポリビニルアルコールは、80%~83%の加水分解度、および3mPasの20℃における4%溶液の粘度を有する。最も好ましくは、PVAは、PVA3-80またはPVA3-83である。
【0062】
本発明のさらなる実施形態は、上記の医薬組成物を調製する方法であって、難溶性の医薬品有効成分と、72%~85%の加水分解度、および2mPas~4mPasの20℃における4%溶液の粘度を有するポリビニルアルコールと、任意にさらなる薬学的に許容される成分と、をポリマーマトリックスのガラス転移温度または溶融温度を超える温度にて混合する工程と、それにより医薬品有効成分の非晶質固体分散体を形成する工程と、を有する方法である。好ましくは、温度は、少なくとも医薬品有効成分の溶融温度である。
【実施例】
【0063】
[実施例1:ITZを担持したPVAマトリックスの調製]
異なるPVAグレードを有するPVAを88重量%、二酸化ケイ素を2重量%、およびイトラコナゾール(ITZ)(BCSクラス2)を10重量%含むPVAマトリックスの9つのサンプルを、以下のようにホットメルト押出により調製した:
【0064】
ITZを担持したPVAマトリックスの調製には、それぞれ、PVA5-74、PVA3-80、PVA5-82、PVA3-83、PVA5-88、PVA3-88、PVA4-88(Parteck MXP)、PVA4-98、およびPVA18-88のPVAグレードの1つが使用された。
【0065】
磁器皿に入れた各PVAを、真空乾燥炉中、85℃、真空度100mbarにて1時間乾燥した。その後、PVAを短時間で冷却させた。PVA、ITZ、および二酸化ケイ素を、
図1に示す重量比に従って1Lの混合容器に秤量し、チューブラーミキサーを用いて5分間混合した。モデルAPIであるイトラコナゾールは流動性が低いため、粉末混合物には、流動調整剤として二酸化ケイ素を添加した。次いで、該粉末混合物をBrabender KETSE 12/36押出機の重量式二軸スクリューフィーダーに充填し、最大供給速度の決定を行った。
【0066】
図1に示すそれぞれの目標温度に達するまで、加熱ゾーンを加熱した。
【0067】
加熱ゾーンがそれぞれの温度に達した後、速度および同様に粉末混合物の投与速度を、それぞれ200rpmおよび200.0g/hの目標速度および目標投与速度に到達するまで、50の単位ずつ段階的に増加させた。ノズル圧とトルクが安定するまで約5分間、押出物を廃棄した。その後、押出物をコンベアベルト上で室温にて冷却することによりペレタイザーに搬送し、ブラベンダーペレタイザーを用いて押出物を粉砕して1.5mmのペレットとした。このプロセスは、フィーダー内の粉末混合物が使い切られるまで続けられた。これは、投与速度の初期変動(incipient fluctuations)に反映された。
【0068】
このようにして得られた押出サンプルを溶解実験に使用した。
【0069】
[実施例2:10%ITZを担持したPVAマトリックスの溶解プロファイル]
押出物の溶解挙動は、経口製剤の胃液耐性を試験するために、Pharmacopoea Europaea 9.0に元々記載されているpHシフト法に準じて評価された。
【0070】
サンプル調製:
押出物を、IKA Tubemill 100内で、40mlの使い捨て粉砕カップを用いて、25000rpmにて20秒間粉砕した。各押出物のサンプルを3つ調製した。各サンプルについて、1サンプルあたり37.5mgのITZに相当する375mgの押出物を秤量した。
【0071】
溶解方法:
フラクションコレクターとバッファーステーションを備えたSotax AT7スマート測定システムを用いて、押出物からのITZの溶解速度を測定した。750mLの0.1M HClを入れた溶解容器に、パドルを50rpmで回転させながらサンプルを入れた。120分後、250mlの予熱された(37℃±0.5)0.2M Na3PO4x12H2Oをバッファステーションを介して加え、総量を1000mLとした。30分、60分、120分、そしてpH6.8へのpHシフト後の、135分、150分、180分、240分、300分に2.5mLのサンプルを採取した。
【0072】
HPLC条件:
このようにして得られた溶解サンプルを、Chromolith(登録商標)Performance RP-18e 100-4.6mmカラム(Merck)とUV検出器とを備えたAgilent 1260 Infinity または1260 Infinity IIシステムにより分析した。HPLCシステムは、移動相イトラコナゾール(450/450/200、Molecula 1.7g/1000mLのテトラブチルアンモニウム硫酸水素(TBAHS)、HPLC用のアセトニトリル Merck LiChrosolv(登録商標)Reag. Ph Eur、およびHPLC用のメタノール LiChrosolv(登録商標)Reag.Ph Eur)を用いたアイソクラティック条件下で操作した。
溶解サンプルをろ過し、移動相イトラコナゾールを用いて直接1:1に希釈して混合し、以下のパラメータでHPLCにより分析した:
ランタイム:7分
流量:2.1ml
検出波長:254nm
注入量:15μl
カラムオーブン温度:30℃
リテンションタイムピーク:4分
【0073】
結果を
図2に示す。弱塩基性APIであるITZは、酸性溶液中で、PVA3-80、PVA3-83、PVA3-88、PVA5-82、そしてPVA4-88の存在下で非常に優れた溶解性を示すことがわかった。しかし、120分で中性条件にpHシフトした後、PVA3-80およびPVA3-83は、PVA4-88、PVA5-88、PVA18-88、PVA5-74、およびPVA4-98と比較して、遊離塩基形態ITZの放出を十分なレベルに維持できる優れた性能を示した。PVA3-88およびPVA5-82は、中程度の性能しか示さなかった。
【0074】
[実施例3:ジピリダモールを担持したPVAマトリックスの調製]
異なるPVAグレードを有するPVAを90重量%と、ジピリダモール(BCSクラス2)を10重量%と、を含むPVAマトリックスの4つのサンプルを、以下のようにホットメルト押出により調製した:
【0075】
PVA3-80(Poval 3-80、Kuraray Europe GmbH)、PVA3-83(Poval 3-83、Kuraray Europe GmbH)、およびPVA4-88(Parteck MXP、Merck KGaA)のPVAグレードの1つを、それぞれジピリダモールを担持したPVAマトリックスの調製に使用した。
【0076】
磁器皿に入れた各PVAサンプルを、真空乾燥炉中、85℃、真空度100mbarにて1時間乾燥した。その後、PVAを短時間で冷却させた。PVAおよびジピリダモールを、
図3に示す重量比に従って1Lの混合容器に秤量し、チューブラーミキサーを用いて5分間混合した。次いで、粉末混合物をサーモフィッシャー製のPharma11押出機の重量式二軸スクリューフィーダーに充填し、最大供給速度の決定を行った。
【0077】
図1に示すそれぞれの目標温度に達するまで、加熱ゾーンを加熱した。
【0078】
加熱ゾーンがそれぞれの温度に達した後、速度および同様に粉末混合物の投与速度を、それぞれ200rpmおよび200.0g/hの目標速度および目標投与速度に到達するまで、50の単位ずつ段階的に増加させた。ノズル圧とトルクが安定するまで約5分間、押出物を廃棄した。その後、押出物をコンベアベルト上で室温にて冷却することによりペレタイザーに搬送し、ブラベンダーペレタイザーを用いて押出物を粉砕して1.5mmのペレットとした。このプロセスは、フィーダー内の粉末混合物が使い切られるまで続けられた。これは、投与速度の初期変動に反映された。
【0079】
このようにして得られた押出サンプルを溶解実験に使用した。
【0080】
[実施例4:10%ジピリダモールを担持したPVAマトリックスの溶解プロファイル]
押出物の溶解挙動は、経口製剤の胃液耐性を試験するために、Pharmacopoea Europaea 9.0に元々記載されているpHシフト法に準じて評価された。
【0081】
サンプル調製:
押出物を、IKA Tubemill 100内で、40mlの使い捨て粉砕カップを用いて、25000rpmで20秒間粉砕した。各押出物のサンプルを3つ調製した。各サンプルについて、1サンプルあたり50mgのジピリダモールに相当する500mgの押出物を秤量した。
【0082】
溶解方法:
フラクションコレクターとバッファーステーションを備えたSotax AT7スマート測定システムを用いて、押出物からのITZの溶解速度を測定した。750mLの0.1M HClを入れた溶解容器に、パドルを50rpmで回転させながらサンプルを入れた。120分後、250mlの予熱された(37℃±0.5)0.2M Na3PO4x12H2Oをバッファステーションを介して加え、総量を1000mLとした。30分、60分、120分、そしてpH6.8へのpHシフト後の、135分、150分、180分、240分、300分に、2.5mLのサンプルを採取した。
【0083】
HPLC条件:
このようにして得られた溶解サンプルを、Chromolith(登録商標)Performance RP-18e 100-4.6mmカラム(Merck)とUV検出器とを備えたAgilent 1260 Infinityまたは1260 Infinity IIシステムにより分析した。HPLCシステムは、移動相ジピリダモール(450/450/200、Molecula 1.7g/1000mLのテトラブチルアンモニウム硫酸水素(TBAHS)、HPLC用のアセトニトリル Merck LiChrosolv(登録商標)Reag. Ph Eur、およびHPLC用のメタノール LiChrosolv(登録商標)Reag.Ph Eur)を用いたアイソクラティック条件下で操作した。
【0084】
溶解サンプルをろ過し、移動相ジピリダモールを用いて直接1:1に希釈して混合し、以下のパラメータでHPLCにより分析した:
ランタイム:7分
流量:2.1ml
検出波長:254nm
注入量:15μl
カラムオーブン温度30℃
リテンションタイムピーク:3.0分
【0085】
結果を
図4に示す。弱塩基性APIであるジピリダモールは、酸性溶液中で、PVA3-80、PVA3-83、そしてPVA4-88の存在下で非常に優れた溶解性を示し、PVA4-88は、ジピリダモールを最も速やかに、そしてほぼ完全に放出することがわかった。120分で中性条件にpHシフトした後、PVA3-80およびPVA3-83は、PVA4-88と比較して、ジピリダモールの遊離塩基形態の放出を高いレベルで維持する非常に優れた性能を示した。
【国際調査報告】