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特表2023-547372複数のペトリ皿を保持するためのラックと、ラックを備えた輸送用包装
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】複数のペトリ皿を保持するためのラックと、ラックを備えた輸送用包装
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20231102BHJP
   C12M 1/22 20060101ALI20231102BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20231102BHJP
   B65D 77/26 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/22
B65D77/00 C
B65D77/26 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524548
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2021079012
(87)【国際公開番号】W WO2022084356
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】20306273.2
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ,ステファヌ
【テーマコード(参考)】
3E067
4B029
【Fターム(参考)】
3E067AA22
3E067AB83
3E067AB94
3E067AC03
3E067AC12
3E067BA05C
3E067BA09B
3E067BB14B
3E067BB14C
3E067BC07C
3E067BC10B
3E067EA06
3E067EA13
3E067EA32
3E067EA34
3E067EB27
3E067EC35
3E067EE01
3E067EE04
3E067FA04
3E067FB02
3E067FC01
4B029AA27
4B029BB01
4B029CC02
4B029GA06
4B029GB10
(57)【要約】
本出願は、複数のペトリ皿(P)を保持するためのラック(1)で、それぞれが実質的に平行な、すなわちラック(1)の長手方向(X)に対して実質的に直角な向きにおいて、ペトリ皿(P)を受容して支持するように構成された複数の隣接して間隔を空けた複数の保持部(3)を備える本体(2)を含み、各保持部(3)は、保持部(3)内に前記ペトリ皿(P)を位置決めし、前記長手方向(X)に実質的に直角な方向への前記ペトリ皿(P)の側面からの挿入を可能とするための位置決め機構(4)を包含する。保持部(3)および位置決め機構(4)は、それぞれ、ペトリ皿(P)を受容するように構成されたスロット(12)をその間に画定するために相互に間隔を空けた一対の分離要素(11)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のペトリ皿(P)を保持するためのラック(1)であって、
それぞれが実質的に平行な、すなわちラック(1)の長手方向(X)に対して実質的に直角な向きにおいて、ペトリ皿(P)を受容しおよび保持するように構成されている、隣接して間隔を空けた複数の保持部(3)を備えた本体(2)を含み:
ここで各保持部(3)は、ペトリ皿(P)を保持部(3)に位置決めして、ペトリ皿(P)の側面から長手方向(X)に実質的に直角な方向への挿入を可能にするための位置決め機構(4)を包含する、
前記ラック(1)。
【請求項2】
保持部(3)と位置決め機構(4)が、相互に間隔を空けて、ペトリ皿(9)を受容するように構成されたスロット(12)をその間に画定する一対の分離要素(11)をそれぞれ含む、請求項1に記載のラック(1)。
【請求項3】
各分離要素(11)がペトリ皿(P)をスロット(12)に置いたときに、好ましくはタブの先端で、ペトリ皿(P)のリム/エッジと解放可能に係合するように構成された一以上の柔軟なタブ(11b,11c,11e,11f;11h,11i;11g)を包含する、請求項2に記載のラック(1)。
【請求項4】
各分離要素(11)が、一対の柔軟なタブ(11b,11c,11e,11f;11h,11i;11g)を含み、各タブが、好ましくは長手方向(X)に直角な基準平面(Z)から傾斜されることにより分離要素(11)に隣接する別のスロット(12)中へと到達して、タブの一つが、一つのスロット(12)のペトリ皿(P)の皿(D)のリム/エッジと解放可能に係合し、他方のタブが、隣接するスロット(12)のペトリ皿(P)の蓋(L)のリム/エッジと解放可能に係合する、請求項3に記載のラック(1)。
【請求項5】
保持部(3)および位置決め機構(4)が、ペトリ皿(P)が保持部(3)に置かれたときにペトリ皿(P)の円周周辺壁(Pc)をつかむ/つまむための操作装置の把持部(G)または一対のフィンガーの、側面からの挿入を可能にするように形成され、および、構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のラック(1)。
【請求項6】
分離要素(11)が、ラック(1)の長手方向(X)に延び、保持部(3)を画定する分離要素(11)をその間に担持して、クレードル様の自己支持構造を形成する、一対の間隔を空けた横方向支持梁(13)によって接続されている、請求項2~5のいずれか一項に記載のラック(1)。
【請求項7】
クレードル様の自己支持構造が、ペトリ皿(P)の挿入のための側面とは異なる、好ましくは反対の側面に向かって開口した窓(14)を有し、窓(14)は、保持部(3)において受容されたときにペトリ皿(P)の目視検査を可能にする、請求項6に記載のラック(1)。
【請求項8】
クレードル様の自己支持構造が、クレードル様の自己支持構造を直立の向きにおいて保持して、ペトリ皿(P)が保持部(3)において実質的に水平の向きに受容され支持されることができるように構成されたスタンド(7)を包含する、請求項6または7に記載のラック(1)。
【請求項9】
複数のペトリ皿(P)のための輸送用包装(20)であって、以下
請求項1~8のいずれか一項に記載のラック(1);および
ラック(1)を取り外し可能に受け入れて囲むように構成された箱型の槽(21):
を含む、前記輸送用包装(20)。
【請求項10】
箱型の槽(21)が、一体型のブリスターキャビティとして、
好ましくは成形可能なシートからまたはウェブ材料から形成され、さらに好ましくは熱成形または冷間成形またはその組み合わせによって形成される、請求項9に記載の複数のペトリ皿(P)のための輸送用包装(20)。
【請求項11】
箱型の槽(21)およびラック(1)が同じ材料から作られている、請求項9または10に記載の複数のペトリ皿(P)のための輸送用包装(20)。
【請求項12】
ラック(1)のスロット(12)中に収容された複数のペトリ皿(P)をさらに含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の複数のペトリ皿(P)のための輸送用包装(20)。
【請求項13】
複数のペトリ皿(P)を備えるブリスター包装であって、
輸送用包装(20)であって、複数のペトリ皿(P)が、滅菌環境において箱型の槽(21)内のラック(1)中に収容される、請求項12に記載の輸送用包装(20);および
気体遮断フィルムであって、好ましくは少なくとも部分的に透明で、箱型の槽(21)の開口部をシールする、前記気体遮断フィルム:
を含む、前記ブリスター包装。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、複数のペトリ皿を保持するためのラックと、好ましくはラックを備えたブリスター包装の形態の輸送用包装とに関する。本出願は、とりわけ、医薬品および食品処理における試験の分野に関し、より具体的には、清浄または超清浄処理エリアの環境モニタリングに関する。また、例えば半導体、電子機器、または航空機製造の分野で、処理領域または環境の清浄度を決定しおよびモニターする他の処理状況にも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
上記タイプの閉鎖された処理エリアの環境条件をモニターするため、パッシブエアサンプリングにおいては、生産エリアの活動ゾーンに1以上の培地プレート(単数または複数)を置き、それらを周囲の空気にさらして周囲の空気中の最大量の粒子を捕捉できるようにすることが一般的方法である。より大きな粒子は、重力の要因によりプレート上により速く沈降する傾向がある。より小さな粒子は、気流などの要因により沈降に時間を要する。培地プレートは静止領域で最適に機能する。空気中の微生物は、培地プレートのみに、またはコロニーとして定着してもよい。
【0003】
生産エリアでの空気の積極的なモニタリングでは、微生物エアサンプラーを使用して、指定された期間にわたって、収集培地中へ、または上に、空気を送り込む。収集培地は、例えば栄養寒天ベースの試験培地または必要に応じて他の適切な試験培地を包含する、一般的なペトリ皿であり得る。
【0004】
例えばペトリ皿、培地プレート、沈降プレートの形態の収集培地(本明細書では、これらの用語は互換的に使用される)は、製造エリアへと繰り返し移送され、さらなる取り扱いと評価のためにそこから取り外されなければならない。これは、通常、一以上のプレートまたはペトリ皿を滅菌移送ポートを介して手動で製造エリアの内部へおよび内部から運ぶ手動プロセスで行われる。しかし、ペトリ皿の手作業での取り扱いは、蓋、カバー、またはシールが開いた後に培地プレートを取り扱うとき、および導入、設置、取り外し、およびさらなる取り扱い中の培地プレートの非安全な移送、とりわけ、例えばスタック(stack)内でのセット、バッチ、またはグループのように、複数の培地プレートが一度に取り扱われるとき、高い汚染のリスクを伴う。一連の処理ステップ中にいくつかのペトリ皿をグループで維持することは、さらに複雑な作業であり、いくつかのペトリ皿を一緒にテーピングまたは束ねる、および/またはそれらに印を付けるなどの手段を必要とする。
【0005】
さらに、個々のペトリ皿自体は、それらが通常、栄養培地を保持する培地プレートと、プレートを解放可能に覆う蓋またはカバーからなるためバッチまたはスタックでの自動化された取り扱いにとりわけ適しているわけではない。自動化された取り扱い機器が、培地プレートおよび/または蓋/カバーの滑らかな円筒形の周辺面をしっかりと把持し、保持し、移送することは、把持のために定義された位置と向きが必要なため、困難であり、プロセスのさまざまな段階での取り扱い中に、ふたが不注意に開いたり、培地プレートから移動されたり取り外されたりして、それにより検出結果が損なわれる高いリスクがある。
【0006】
US2002/053525A1は、ペトリ皿などを収容するためのカセット構成を開示する。この構成は、スタック可能で、筐体の内部空間からペトリ皿を挿入または取り外すためのスロット付き開口部を一方の側面に有するように設計された箱型のカセット筐体を包含する。箱型のカセット筐体はスタック可能であり、カセット筐体内のペトリ皿を少なくとも部分的に開口部から押し出すための反対側の端部側に構成された指操作手段を有する。このカセット構成は、カセット筐体の内部空間に保持されたペトリ皿の安全な輸送を提供するが、筐体からペトリ皿を少なくとも解放するために、とりわけ指による手動操作に向けられているため自動化された取り扱いには有用ではない。さらに、スタックの能力はとりわけ信頼できるものではなく、同様にカセット筐体のスタックの自動化された取り扱いには適していない。
【0007】
所望されるのは、生産エリア中へのメディアプレートの導入、設置、および生産エリアからの培地プレートの取り外し、および評価プロセスのさらなる段階のための人間による取り扱いステップを伴わない、少なくとも部分的に、または好ましくは完全に自動化されたプロセスである。
【0008】
さらに好ましいのは市場で入手可能な標準的な培地プレート、好ましくはいわゆるペトリ皿を使用することが可能であるような、部分的または完全に自動化されたプロセスのための手段を提供することである。
【0009】
したがって、本出願は、好ましくは複数のペトリ皿を保持するための装置と、複数のペトリ皿のブリスター包装の形態の、輸送用包装とを提供することを目的とし、これにより、分類された環境または分類されていない環境での微生物学的空気サンプリングに使用されるペトリ皿または沈降プレートの安全な取り扱いが可能になり、偽陽性および最終製品の汚染のリスクが軽減され、これにより、完全にまたは部分的に、つまり、手動による取り扱いは除外されるべきでは少なくともないが、自動化されたプロセスでの受動的または能動的な微生物学的空気サンプリングの保管、サンプリングエリアへの輸送、サンプリング、計数、廃棄物管理の間の空気検査中の安全な取り扱いが可能になる。
【発明の概要】
【0010】
本出願によれば、この目的は、請求項1に定義されるような複数のペトリ皿を保持するためのラック、および請求項9に定義されるような複数のペトリ皿のための輸送用包装、ならびに請求項13に定義されるような複数のペトリ皿を備えるブリスター包装を提供することによって解決される。好ましい態様は、従属請求項で定義される。
【0011】
本出願は、とりわけ、複数のペトリ皿を保持するためのラックであって、複数の隣接し間隔を空けた保持部を備える本体を含み、各保持部は、それぞれが実質的に平行な、すなわちラック(1)の長手方向(X)に対して実質的に直角な(perpendicular)向きにおいて、ペトリ皿を受容し保持するように構成され、ここで各保持部はペトリ皿を側面から長手方向に実質的に直角な方向への挿入を可能にするために位置決めしするための位置決め機構を包含する前記ラックを提供する。
【0012】
好ましくは、保持部および位置決め機構は、互いに間隔を空けて、それらの間にペトリ皿を受容するように構成されたスロットを画定する、一対の分離要素(separation elements)をそれぞれ含む。
【0013】
好ましくは、各分離要素は、好ましくはタブ(tab)の先端で、ペトリ皿がスロットに置かれたときにペトリ皿のリム/エッジと解放可能に係合するように構成された一以上の弾性タブ(単数または複数)を包含する。
【0014】
好ましくは、各分離要素は、各タブが、好ましくは長手方向に直角な基準平面から傾斜することによって、分離要素に隣接する、異なる一のスロット中へと達する一対の弾性タブを含み、タブの一方は、一方のスロットのペトリ皿の皿のリム/エッジと解放可能に係合し、もう一方のタブは、隣接するスロットのペトリ皿の蓋のリム/エッジと解放可能に係合する。
【0015】
好ましくは、保持部および位置決め機構は、ペトリ皿が保持部に置かれたときに、ペトリ皿の円周周辺壁をつかむ/つまむために、操作装置の把持部または一対のフィンガーの側面からの挿入を可能にするように形成および構成される。
【0016】
好ましくは、分離要素は、ラックの長手方向に延伸し、その間に保持部を画定する分離要素を担持してクレードル様の自己支持構造を形成する、一対の離隔した横方向支持梁(lateral supporting beams)によって接続される。
【0017】
好ましくは、クレードル様の自己支持構造は、ペトリ皿を挿入するための側面とは別の、好ましくは反対側に向かって開いた窓を有し、この窓は、ペトリ皿が保持部に受け入れられたときにペトリ皿の目視検査を可能にする。
【0018】
好ましくは、クレードル様の自己支持構造は、クレードル様の自己支持構造を直立の向きにおいて保持して、ペトリ皿を、保持部内で実質的に水平の向きに受容され支持されることができるように構成されたスタンドを包含する。
【0019】
本願はまた、本明細書で定義されるラックと、ラックを取り外し可能に受容して取り囲むように構成される箱型の槽とを含む複数のペトリ皿用の輸送用包装を提供する。
【0020】
好ましくは、箱型の槽は一体型ブリスターキャビティとして形成され、好ましくは成形可能なシートまたはウェブ材料(web material)から、さらに好ましくは熱成形または冷間成形またはその組み合わせによって形成される。
【0021】
好ましくは、箱型の槽およびラックは、同じ材料から作られる。
【0022】
好ましくは、輸送用包装は、ラックのスロット中に収容された複数のペトリ皿をさらに含む。
【0023】
本出願はまた、滅菌環境の箱型の槽内のラック中に複数のペトリ皿が収容されている本明細書で定義される輸送用包装、および、箱型の槽の開口部をシールする、好ましくは少なくとも部分的に透明である、気体遮断フィルムを含む、複数のペトリ皿を備えるブリスター包装も提供する。
【0024】
したがって本出願は、複数のペトリ皿を保持するためのラックを提供する。それは完全に自動化されたプロセスでの環境モニタリングと互換性がある。特に、装置内のペトリ皿のセットまたはバッチの正確な位置決めと共に保持することを可能にし、それは、清浄級な生産エリア中への導入中の包装と出荷、積み降ろしエリアにおけるセッティング、清浄な生産エリアからの取り外し中、インキュベーション中、読み取り中、および/または保管中の、パッシブまたはアクティブな空気モニタリングのために皿を重要な領域に移送するために把持部またはロボットアームを使用して個々のペトリ皿をつかむことを含むモニタリングプロセスのすべてのステップまたは段階で使用できる。
【0025】
添付の例示的な概略図を参照して、好ましい態様を以下に説明する;
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1a図1aは一態様による、複数のペトリ皿を保持するためのラックの斜視図である;
図1b図1bは別の態様による、複数のペトリ皿を保持するためのラックの斜視図である;
図2a図2aはペトリ皿がラック中に支持された図1aのラックの斜視図である;
図2b図2bはペトリ皿がラック中に支持された図1bのラックの斜視図である;
図3図3図1aのラックを上下逆向きの斜視図である;
図4図4図1aのラックの細部の側面切り取り図である;
図5図5図1aのラックのスロットの、隣接するスロットからペトリ皿の蓋に向かって見た部分側面切り取り図である;
図6図6は隣接するスロットからペトリ皿の皿に向かって見た、上下逆向きの図1aのラックのスロットの部分側面切り取り図である;
図7図7は隣接するスロットからペトリ皿の蓋に向かって見た、上下逆向きの図1aのラックのスロットの部分側面切り取り図である;
【0027】
図8a図8aは、上下逆向きの図2aのラックの部分斜視切り取り図である;
図8b図8bは、上下逆向きの図2bのラックの部分斜視切り取り図である;
図9図9は、図8の図と同様であるが、別方向から見た、図2aのラックの部分切り取り斜視図である;
図10図10は、軸端から見た図2aのラックの細部の斜視図である;
【0028】
図11a図11aは、把持部がラック内のペトリ皿と係合する状況を示す、直立の向きにおける図2aのラックの斜視図である;
図11b図11bは、把持部がラック中のペトリ皿と係合する状況を示す、直立の向きにおける図2bのラックの斜視図である;
図12図12は、ペトリ皿の蓋に向かって隣接するスロットから見た、図1aのラックのスロットの部分側面切り取り図である;
【0029】
図13図13は、把持部の係合状態を示す、図10のラックの部分的側面切り取りの斜視図である;
図14a図14aは、図2aの単一のラックが上下逆向きで槽内に置かれた、箱型の槽の形態の輸送用包装の斜視図である;
図14b図14bは、互いに隣接する図2bの一対のラックを有する箱型の槽の形態の輸送用包装の斜視図である;
【0030】
図15a図15aは、別方向から見た、図14aの輸送用包装の部分斜視切り取り図である;
図15b図15bは、別方向から見た、図14bの輸送用包装の部分斜視切り取り図である;
図16図16は、係合前の外部スタンド上で直立の向きにおける図2aのラックの斜視図である;
図17図17は、スタンドの詳細を示すために下から見た、図16のラックおよびスタンドの斜視図である;
【0031】
図18図18は、係合前の保持クレードルまたは輸送クレードル上で水平の向きにある図2aのラックの斜視図であり:
図19図19は、分離要素の詳細を示す、図1bのラックの部分斜視切り取り図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本出願の目的のために、「水平」、「垂直(vertical)」、「直角(perpendicular)」、「平行」などの用語、および同様の用語は、まだ明示的に示されていない場合、これが機能に悪影響を及ぼさないことを条件としたうえで、「本質的に水平」、「本質的に垂直」「本質的に直角」、「本質的に平行」、であると見なされる。好ましくは、「本質的に」という用語は、水平、垂直、および直角から、それぞれ、最大で10°、より好ましくは最大で5°、さらにより好ましくは最大で4°または3°、さらにより好ましくは最大で2°または1°のずれを意味する。
【0033】
本発明は、例としてラック1の2つの態様を使用して記述される。当該態様のラックの同様の図は、図の番号に文字「a」または「b」を追加することによって区別される。したがって、ここで、文字「a」または「b」を追加せずに特定の図を参照する場合、たとえその態様の具体的な図が提供されていなくても、特に明記されていない限り、記述は両方の態様に適用可能である。
【0034】
図に示されるとおりの複数のペトリ皿Pを保持するための、本明細書で定義されるラック1の態様は、一般に、複数の隣接しかつ等間隔に置かれ、それぞれが実質的に平行な、すなわちラック1の長手方向(X)に対して実質的に直角な向きにおいて、ペトリ皿Pを受容して支持するように構成された保持部3を備える三次元フレームの形態の本体2を含み、ここで保持部3は長手方向Xに互いに隣接して整列される(複数のペトリ皿Pがラック中に置かれている図2a/2bおよびX方向が示されている図3および図4を参照)。
【0035】
各保持部3はペトリ皿Pを保持部3内に位置決めし、ペトリ皿Pの挿入方向の横前側(lateral front side)、すなわち長手方向Xに対して実質的に直角からの挿入を可能にするための位置決め機構4を包含する。横前側とは、図1a/1bおよび図2a/2bに示すように上面であり、図3に示すようにラックを上下逆向きにした場合は底面である。
【0036】
保持部3および位置決め機構4はそれぞれ、長手方向Xに互いに間隔をあけて置かれ、それらの間にペトリ皿Pを取り外し可能な方法で受容するように構成されたスロットまたは棚12を画定する一対の分離要素11を含む。本実施態様ではスロット12は、軸方向Xに整列してペトリ皿の列の整列したスタックを形成するように配置される。互い違いの(staggered)配置による代替配置は整列したペトリ皿の2以上の実質的に平行な列において可能であるものの、図示されていない。
【0037】
各分離要素は、基部11a(図6を参照)と、基部11aから突出し、当該タブをスロット12に置いた場合、好ましくは、各タブの先端または自由先端(free tip end)で、ペトリ皿Pのリム/エッジと解放可能に係合するように構成されている、一以上の弾性タブ(単数または複数)11b~11iとを含む。ペトリ皿Pのリム/エッジは皿Dまたは蓋Lのそれであってよく、一般的なペトリ皿は、通常、上部/底部の周囲に延伸するそのような縁またはエッジを有する。弾性タブの一部は、表面を弾性的に押しつけることによって皿または蓋の平らな表面に係合したり、またはスタンドとして機能したりしてもよい(図7のタブ11dを参照)。
【0038】
異なる向きに複数の弾性タブがある場合があり、好ましい態様は、図6に示すように、挿入方向の最も内側の位置で皿Dのリム/エッジと係合するように形成および寸法決めされた中央タブ11bと、図7に示すように挿入方向の最も内側の位置で両側の側面位置で隣接するスロット内のペトリ皿の蓋Lのリム/エッジと係合するように形成された左右対称に配置された一対のさらなるタブ11cとを有する。
【0039】
各分離要素11が、その各々が、好ましくは長手方向Xに直角な平面から傾斜することによって、分離要素11に隣接するスロットのうちの異なる一つの中へと達するような少なくとも一対の弾性タブを含むこのような構造においては、タブの少なくとも一つは、一のスロット12内のペトリ皿Pの皿Dのリム/エッジと解放可能に係合し、少なくとも一つの他のタブは隣接するスロット12内のペトリ皿Pの蓋Lのリム/エッジと解放可能に係合する。これに関連して、各弾性タブは複数の弾性タブを含んでもよく、その違いは本質的に意図された係合位置のみである。図4は、軸方向Xに直角な平面から異なる隣接するスロットに向かって傾斜したタブを備えた分離要素の詳細を示す。
【0040】
この態様では、タブは、ペトリ皿のスロット中への挿入方向に基部11aから突出する、つまりそれらはラックの背面へと向かって突出する(これは、例えば、図3、4、6、および図7の図示中では上側である)。
【0041】
図1b、2b、8b、11b、14b、15bおよび図19は、保持部3内のペトリ皿のリム/エッジと解放可能に係合するための、タブの異なる配置を有する異なる態様を示す。弾性タブは、基部11aから異なる方向に延伸してよく、それらはまた、図1b/2bに示すように、基部11aから反対方向に向かって突出してもよい。本態様における基部11aは、横方向支持梁13から隆起した(raised)一対の横架台11kを架橋する棒状に縮小され、これに対して、他の態様における基部11aは、プレート形状の半円ディスクにより似ている。
【0042】
分離要素11は、追加的にスロット12内のペトリ皿を支持して分離するため、および/または支持面から実質的に水平の向きにラックを持ち上げてペトリ皿と支持面との接触を避ける、ラック1のためのスタンドとして機能するため、基部11aから後側または前側に向かって延伸する拡張部分11d(図7を参照)を包含してもよい。拡張部分11dはまた、軸方向端部の分離要素にのみにても提供されてよい。
【0043】
図1b/2bの態様では、拡張部分11dは相互接続されて、軸方向に延伸する横柵(lateral bars)11jを形成する。但し、本態様においては、拡張部分を先端で相互に離隔して提供してもよく、これに対し、図1a/2aの態様では、横柵の形態での相互接続を提供することもできる。さらに、両方の基本的な態様において、拡張部分が分離要素の一部でのみ提供されるように、拡張部分の数を減らすことができる。
【0044】
図8a/図8bおよび図9は、タブ11b、11cの先端と蓋Lのリム/エッジとの間の係合状態の詳細およびペトリ皿の皿Dの挿入状態とを示す。ペトリ皿が保持部3中へと完全に挿入されると、タブの係合状態に至る。係合状態は、弾力性によってペトリ皿のリム/エッジに乗り上げ、ペトリ皿の反対方向の動きに対して一定の抵抗を生み出すタブ先端における小さな突起により生み出される形状ロック係合によって定義される。ただし、抵抗は、自動操作装置の把持部によって、または手動によってラックからペトリ皿の取り外しを可能にするように決定される。ただし、いずれの場合も、ラックを上下逆向きまたは直立の向きにと回転させることも包含する通常の取り扱い中にラックからペトリ皿が不用意に落ちることを防ぐように決定される。
【0045】
保持部3および位置決め機構4は、一般に、ペトリ皿が保持部3に置かれたときに、ペトリ皿の円周周辺壁Pcをつかむ/つまむために、操作装置の把持部または一対のフィンガーの正面側方からの挿入を可能にするように形成および構成されている。このような状況は図11a/11bおよび図13に示される。
【0046】
間隔を開けて置かれた保持部3を画定する分離要素11は、長手方向Xに垂直な幅方向Yに間隔を開けた一対の横方向支持梁13によって相互接続されており、横方向支持梁13はラック1の長手方向Xに延伸して互いに実質的に平行になるように置かれる(例えば、図1a/1bおよび図5図7を参照)。
【0047】
したがって、支持梁13は、それらの間に複数の分離要素11を担持して、ラック1のフレームまたはクレードル様の自己支持構造を形成する。支持梁は、側面に向かって突出する平らな上面および/または下面を有するプレート様の形状を有し、後述される輸送用包装内または保持装置内の支柱に置かれ、ラックを安定した明確に定義された姿勢で位置できるようにしうる。支持梁は、また、ラック中のペトリ皿に接触するリスクを冒さずに、手でまたは外部グリッパーでラックを保持することを可能にする。梁のプレート様の形状は、取り扱い中の曲がりや歪みを避けるためにラックに十分な剛性を与える。
【0048】
支持梁13および分離要素11によって形成されるフレームまたはクレードル様の自己支持構造は、ペトリ皿の挿入のための側面とは異なる側面に向かって開いた連続窓14を有する。図6および図7に示すように、挿入側の反対側には窓14が形成されており、全てのペトリ皿が保持部に受容される際に窓14により目視検査を可能とする。窓14を挿入方向から後側に配置することの具体的な利点は、ラックをペトリ皿と輸送用包装内で逆さまに置くことができ、ペトリ皿上のバーコードデータマトリクスまたはRFIDの目視検査および/またはラベルの読み取りが窓14を通してラックをその包装から取り出すことなしになお可能であることである(図14a/14bおよび図15a/15bを参照)。
【0049】
図12および図13に示すように、横方向支持梁13は、ラック中に保持されたペトリ皿の中心を通る仮想水平面から、ラックの後側に向かって距離Dだけ変位される。これにより、手または把持部Gによりペトリ皿を直径の周りで簡単に捕まえてつかむための、より大きな自由空間が割り当てられる。 弾性タブとペトリ皿のエッジ/リムとの係合により、自由で支持されていない円周が大きいにもかかわらず、ペトリ皿は保持部から抜け落ちにくい。
【0050】
図16および図17に示すように、クレードル様の自己支持構造は、ペトリ皿Pを実質的に水平の向きにラック1の各保持部3において受容して支持できるように、構造を直立の向きにおいて保持するように構成された外部スタンド7を含んでもよい。ラック1は、好ましくは側面に、さらに好ましくは支持梁13に、レバーまたは他の嵌合保持要素15の間の係合を可能にしてラックをスタンドに固定する、ノッチまたは他の機構を備えていてもよい。なお、図16図17に示したレバー15は例にすぎず、ペトリ皿の保持部への挿入および取り外しを妨げることなく、ラックを直立の向きにおいて解放可能に保持するという目的を達成するために、種々の設計が可能である。
【0051】
図16および図17に示すスタンド7の例では、保持要素15は互いに向かって付勢され、したがって保持要素を係合位置に付勢するバネまたは弾性バンドまたはバネ16を使用してラックの嵌合係合部分と係合することができる。図17に示すように、バネまたは弾性バンドは外部から見えないようにスタンド7のベースプレート(base plate)の底部にあるレセプタクルに置かれてよい。したがって、保持要素は、図16に示すように、ベース19から立設した(erected)支柱18上で枢動することができる。
【0052】
本明細書で定義されるラック1は、一例として輸送または保持クレードルまたは図18に示されるような装置21とも互換性がある。このような移送または保持クレードルまたは装置は、ラックをアイソレータまたは清浄な生産エリアへともしくはそこから移送するための自動移送メカニズムと組み合わせて使用することができる。クレードルまたは保持装置21には、図17に示すスタンド7の係合機構に対応または互換性のある係合機構15を提供することができ、したがって、上述のようにラックの適合する係合部分と係合するように適合させることができる。この場合、ラックを適切な向きに保持するためにクレードル21またはスタンド7が提供されているプロセスのさまざまな段階間でラックを容易に移送することができる。
【0053】
さらに、図1b/2bの態様では、拡張部分11dが相互接続されて軸方向に延びる横柵11jを形成しており、横柵は、図14bおよび15bに示すようにグリップとして機能し、横方向支持梁13はアクセスできないか、また提供されていない状況でラックをつかんで後述する箱型の槽から持ち上げることができる。グリップ22として機能する横柵11jは、支持梁と同様であってもよいが、異なる方向に突出する。
【0054】
ラックは、任意の適切な材料、好ましくはプラスチックから、好ましくは射出成形によって一体的に形成することができる。3Dプリントなどを包含する他の製造プロセスも利用可能である。ラックが使用ごとに滅菌が必要な多用途向けに設計されている場合は、鋳造金属、板金、または3Dプリントされた金属の形態での金属が利用可能である。ラックは、相互接続された異なる要素、例えば、固定されたか分離不可能(接着または溶接によって)に、または解放可能(形状ロック係合またはネジなどの機械的留め具による)に複数の分離要素11に接続された一対の横方向支持梁13から形成されてもよい。この構造においては、異なる長さの、所望の間隔で同一の分離要素11に接続されるように構成した支持梁13を提供することによって、グループ化される異なる数のペトリ皿のために異なるサイズのラックを容易に構成することができる。
【0055】
グループのペトリ皿を備えたラック1は、図14a/14bおよび15a/15bに示されるように、それぞれペトリ皿を取り外し可能に受容し、ラックを完全に取り囲む袋(図示せず)またはより堅い箱型の槽21のキャビティ22内に包装およびシールされてよい。したがって、箱型の槽または袋を備えたラックは、複数のペトリ皿P用の輸送用包装20を形成する。必要に応じて、ラックおよびスタンドは、使用時に利用できるように輸送用包装内に配置することができるが、ラックのみが所望の取り扱いおよび目的に十分である場合には、スタンド7は省略されてもよい。
【0056】
箱型の槽21は一体のブリスターキャビティとして形成され、好ましくはプラスチック材料の成形可能なシートから、さらに好ましくは熱成形もしくは冷間成形、またはその2つの組み合わせによって形成される。槽21は、一回限りの使用のために設計されてもよいし、再利用可能であってもよい。
【0057】
箱型の槽21の開口部は、好ましくは少なくとも部分的に透明な気体遮断フィルムによってシールされてブリスター様のパッケージを形成するように構成される。ラック内に保持された滅菌済みのペトリ皿のセットと併せて、このようなシールされた輸送用包装は、本明細書の導入部で説明した環境モニタリングに関連して使用するための有用なユニットを提供する。好ましい態様では、箱型の槽21とラック1は同じ材料から作られ、よって使用後の材料の廃棄処理を容易にする。
【0058】
バーコード、データマトリックス、またはRFIDの形態のトレーサビリティ要素は、本発明のラック1上、または箱型の槽21上、および/またはペトリ皿P上に直接収容されて提供されてもよい。
【0059】
トレーサビリティ要素に基づいて、すべての重要なプロセスデータは統合RFIDタイプシステムまたは外部システム、例えばクラウドベースなど、を介して記録およびリンクされてもよい。例えば、そのようなプロセスには、保管段階S1(入庫日時、保管温度、水分レベル、賞味期限管理、FIFO管理)、輸送段階S2(期間と温度)、グループ化段階S3(個々のシャーレが属する位置またはグループ)、移送段階S4(場所と時間)、空気サンプリング段階S5(期間、場所、日時、プレートのIDとラックIDのリンク)、インキュベーション段階S6(入場日時、実温度、水分レベル、酸素レベル)、汚染物質の数を決定するために計数が行われる計数段階S7(時刻/日付および計数結果)、のように、特定のデータが収集および記録されるプロセスの典型的な工程または段階が多数包含される場合があってよい。段階S8では、すべてのデータがエクスポートされ、ストレージに転送され、そこからアクセスしてさらに処理され得る。
【0060】
トレーサビリティは、中央システムに接続された専用のRFIDリーダーシステムを使用して外部で実現できるが、RFID(またはデータマトリックス)リーダーをエアモニタリングシステムから直接駆動することもでき、以下
-データマトリックスリーダーを使用した処理済みプレートの確実な検出;
-データマトリックスまたはRFIDを使用したプレート保管場所(輸送ケージなど)の確実な検出;
-プレートまたはペトリ皿を含む現在のラックのRFIDタグの情報の読み取りおよび書き込みを可能にすること。
-各タグには次の情報が含まれてよい:バッチ番号、ロケーションサイト番号、セット番号、プレートのID、スタックまたはブリスターパック内のプレートの位置;
-プレートがアイソレータに配置され、アイソレータから取り外された時刻;
-サンプリングの時間、空気モニタリングパラメータの適合性、オペレータ、サンプリング環境にブリスターが存在する間の出来事;
を包含するプロセスプレートの完全なトレーサビリティが可能になる。



図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13
図14a
図14b
図15a
図15b
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】