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特表2023-547773確率的フォトレジスト厚み欠陥の予測及び計量
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  • 特表-確率的フォトレジスト厚み欠陥の予測及び計量 図1
  • 特表-確率的フォトレジスト厚み欠陥の予測及び計量 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】確率的フォトレジスト厚み欠陥の予測及び計量
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20231107BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
H01L21/66 P
H01L21/66 J
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519453
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(85)【翻訳文提出日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 US2021054645
(87)【国際公開番号】W WO2022093529
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/106,356
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/337,373
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロフ アナトリー
(72)【発明者】
【氏名】パーシー ガイ
(72)【発明者】
【氏名】バイ クンルン
(72)【発明者】
【氏名】ブッカダラ プラディープ
(72)【発明者】
【氏名】チャン カオ
(72)【発明者】
【氏名】グレイブス トレイ ジョン エス
(72)【発明者】
【氏名】リー シャオハン
(72)【発明者】
【氏名】ヒギンズ クレイグ
【テーマコード(参考)】
2H197
4M106
【Fターム(参考)】
2H197AA12
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197DA02
2H197HA03
2H197JA22
2H197JA30
4M106AA01
4M106CA39
4M106CA48
4M106DJ20
(57)【要約】
半導体デバイス用のマスクパターンを、機械学習モジュールを用いフォトレジスト厚み確率分布を決定するための入力として用いることができる。例えば、その機械学習モジュールによりZ高さの確率マップを決定することができる。それを用い、半導体デバイスに係るフォトレジスト厚みの確率的変動を決定・判別することができる。そのZ高さを、X方向及びY方向沿いのある座標にて計算することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
半導体デバイス用のマスクパターンを機械学習モジュール内に入力し、且つ
前記マスクパターンに基づき前記半導体デバイスに係るフォトレジスト厚み確率分布を決定する、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記機械学習モジュールが、一般線形モデル、ニューラルネットワーク、ベイズ推定、ベイジアンニューラルネットワーク、深層ニューラルネットワーク、畳込みニューラルネットワーク又はサポートベクタマシンを稼働させるよう構成されている方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記機械学習モジュールが更に、フォトレジスト厚みの確率マップを決定するよう構成されている方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記厚み確率分布により、X方向及びY方向沿いのある座標に係るフォトレジスト厚み情報がもたらされる方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記機械学習モジュールが更に、X方向及びY方向沿いのある座標に係る局所強度を決定するよう構成されている方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記機械学習モジュールが更に、X方向及びY方向沿いのある座標に係る画像コントラストを決定するよう構成されている方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記機械学習モジュールが更に、X方向及びY方向沿いのある座標に係る画像勾配を決定するよう構成されている方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記機械学習モジュールが更に、X方向及びY方向沿いのある座標に係る画像対数スロープを決定するよう構成されている方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記機械学習モジュールが更に、X方向及びY方向沿いのある座標に係る正規化画像対数スロープを決定するよう構成されている方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記厚み確率分布が約1ppbの正確度レベルまで決定される方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記機械学習モジュールが第1モデル、第2モデル及び第3モデルを有し、ラスタ化マスク画像が与えられている許で前記第1モデルがマスク回折パターンを予測し、そのマスク回折パターンが与えられている許で前記第2モデルがフォトレジスト内画像を予測し、そのフォトレジスト内画像が与えられている許で前記第3モデルがフォトレジスト厚み分布を予測する方法。
【請求項12】
それによりコンピュータ可読プログラムが体現される非一時的コンピュータ可読格納媒体が備わるコンピュータプログラム製品であり、請求項1の方法を実行するようそのコンピュータ可読プログラムが構成されているコンピュータプログラム製品。
【請求項13】
システムであって、
プロセッサを用い稼働させうる機械学習モジュールを備え、その機械学習モジュールが、マスクパターンに基づき半導体デバイスに係るフォトレジスト厚み確率分布を決定するよう構成されているシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムであって、前記機械学習モジュールが、一般線形モデル、ニューラルネットワーク、ベイズ推定、ベイジアンニューラルネットワーク、深層ニューラルネットワーク、畳込みニューラルネットワーク又はサポートベクタマシンを稼働させるよう構成されているシステム。
【請求項15】
請求項13に記載のシステムであって、前記機械学習モジュールが更に、フォトレジスト厚みの確率マップを決定するよう構成されているシステム。
【請求項16】
請求項13に記載のシステムであって、前記厚み確率分布により、X方向及びY方向沿いのある座標に係るフォトレジスト厚み情報がもたらされるシステム。
【請求項17】
請求項13に記載のシステムであって、前記機械学習モジュールが更に、X方向及びY方向沿いのある座標に係る局所強度、画像コントラスト、画像勾配、画像対数スロープ又は正規化画像対数スロープを決定するよう構成されているシステム。
【請求項18】
請求項13に記載のシステムであって、前記厚み確率分布が約1ppbのフォトレジストに至るまで決定されるシステム。
【請求項19】
請求項13に記載のシステムであって、前記機械学習モジュールが第1モデル、第2モデル及び第3モデルを有し、ラスタ化マスク画像が与えられている許で前記第1モデルがマスク回折パターンを予測し、そのマスク回折パターンが与えられている許で前記第2モデルがフォトレジスト内画像を予測し、そのフォトレジスト内画像が与えられている許で前記第3モデルがフォトレジスト厚み分布を予測するシステム。
【請求項20】
請求項13に記載のシステムであって、前記機械学習モジュールが、エネルギ源及び検出器を有する撮像システムと電子通信するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件開示は、半導体ウェハ上のフォトレジストの計量に関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願への相互参照]
本願では、2020年10月28日付米国仮特許出願第63/106356号に基づく優先権を主張し、参照によりその開示内容を本願に繰り入れる。
【0003】
半導体製造業界の発展につれ歩留まり管理、とりわけ計量及び検査システムに対する要請が強まっている。限界寸法が縮まり続けているのに、業界にはより短時間で高歩留まり高付加価値生産を達成することが求められている。歩留まり問題を察知してからそれを正すまでの合計時間を縮めることにより、半導体製造業者にとっての投資収益率が高まる。
【0004】
リソグラフィック投射装置を集積回路(IC)の製造に際し用いることができる。その場合、そのICの個別層に対応する回路パターン(「デザインレイアウト」)をパターニングデバイス(例.マスク)により提供することができ、そのパターニングデバイス上の回路パターンを通じターゲット部分に照射する等の方法により、ウェハ上にあり輻射感応性フォトレジスト層で覆われているターゲット部分(例.1個又は複数個のダイが備わるところ)の上に、その回路パターンを転写することができる。一般には、1枚のウェハ内に複数個の隣り合うターゲット部分があり、そこに向けてその回路パターンがリソグラフィック投射装置により1回につきターゲット部分1個ずつ順次転写される。リソグラフィック投射装置の一種に、そのパターニングデバイス全体の回路パターンが1回の露出で1個のターゲット部分上へと転写されるものがあり、これはウェハステッパと通称されている。ステップアンドスキャン装置と通称されている別の装置では、投射ビームによりパターニングデバイスが所与の基準方向(「走査」方向)に沿い走査される一方、それに同期してその基準方向に対し平行又は反平行に基板が動かされる。そのパターニングデバイス上の回路パターンの別々な部分が1個のターゲット部分へと漸次転写される。一般に、リソグラフィック投射装置はある倍率M(一般に1未満)を有することとなるので、基板が動かされる速度Fは、投射ビームによりパターニングデバイスが走査される速度に倍率Mを乗じたものとなる。
【0005】
パターニングデバイスからウェハへと回路パターンが転写されるのに先立ち、そのウェハに様々な手順を経させること、例えばプライミング、フォトレジスト被覆及びソフトベークを経させることができる。露出後にそのウェハを他の手順に供すること、例えば露出後ベーク(PEB)、現像、ハードベーク、並びに転写された回路パターンの計測/検査に供することができる。これらの手順を用い、デバイス(例.IC)の個別層を作成することができる。その上で、そのウェハに様々なプロセスを経させること、例えばエッチング、イオンインプランテーション(ドーピング)、金属化、酸化、化学機械研磨等、何れもそのデバイスの個別層を形成することを意図しているプロセスを経させることができる。数個の層がそのデバイスにて必要とされている場合、その手順全体又はそれを変形したものが層毎に反復される。最終的には、そのウェハ上の各ターゲット部分内にデバイスが存することとなる。その上で、それらのデバイスをダイシングやソーイングといった技術により相互分離させ、それら個別デバイスをキャリア上に載せること、ピンにつなぐこと等ができる。
【0006】
リソグラフィを通じウェハ上に形成されたパターンにより、そのICの諸機能要素、例えばマイクロプロセッサ、メモリチップ等が画定される。同様のリソグラフィック技術が、フラットパネルディスプレイ、微細電気機械システム(MEMS)その他のデバイスの形成においても用いられている。
【0007】
半導体製造プロセスは進歩し続けており、それにつれ機能要素寸法が継続的に縮小される一方でデバイス1個当たり機能要素量例えばトランジスタの量が着実に増加してきている。現状のテクノロジによれば、デバイスの諸層を製作する際、照明源からの照明を用い基板上へとデザインレイアウトを投射するリソグラフィック投射装置を用いることで、生成される個別機能要素の寸法を100nmよりずっと小さくすること、例えば照明源(例.193nm照明源)からの輻射の波長の半分未満とすることができる。
【0008】
このプロセスは、リソグラフィック投射装置の古典的分解能限界より小さな寸法を有するフィーチャ(外形特徴)が印刷されるプロセスであり、分解能公式CD=k1×λ/NAに従いローk1リソグラフィと通称されている;但し、λは採用されている輻射の波長(現状では大抵は248nm又は193nm)、NAはリソグラフィック投射装置内投射光学系の数値開口、CDは限界寸法(一般には印刷される最小フィーチャサイズ)、k1は経験的分解能因数である。一般に、k1が小さいほど、回路デザイナにより策定された形状及び寸法に似るパターンを基板上で再現すること、ひいては格別な電気的機能及び性能を達成することが難しくなる。こうした難点を克服するため、洗練された精細チューニング工程がリソグラフィック投射装置及び/又はデザインレイアウトに適用される。それらの例には、これに限られるものではないが、NA及び光学的コヒーレンスセッティングの最適化、カスタマイズされた照明方式、位相シフト型パターニングデバイスの使用、デザインレイアウトにおける光学的近接補正(OPC;光学的兼プロセス的補正と呼ばれることもある)、或いは一般に分解能増強技術(RET)として定義される他の諸方法がある。
【0009】
印刷パターンに対する予期変動を解明する(特徴付ける)手法は多々あるが、それら手法の多くは、そのパターン(例.XY平面内でそのパターン形状を記述するポリゴン又は輪郭線)のトップダウンビューに基づくものである。それらXYポリゴンは、トップダウン走査型電子顕微鏡(SEM)画像から抽出することや、リソグラフィシミュレーションをもとに予測することができる。SEM画像に関しては、焦点及び照射量をそれらの規準状態から変化させる実験を、実行することができる。その上で、計測された焦点露出マトリクスを、あるサブセットのパターンに関し限界寸法走査型電子顕微鏡(CDSEM)で以て直にレビューするか、或いはそのウェハを検査し欠陥検出結果をレビューSEMに送る(例.プロセス窓定量(PWQ)方法論)。やはり、これによりXY平面内の諸フィーチャへと導かれ、且つ予期される変動が焦点及び照射量に関連するものとなる。この焦点及び照射量曲線実験を実行することで、製造環境にてそのリソグラフィプロセスがどれほどロバストとなるのかを判別することができる。例えば、その実験的照射量曲線を用い、光子ショット雑音に起因するウェハ反射率の変動や照射量揺らぎを近似することができる。その焦点曲線を用い、製造環境にて見受けられるウェハ高さ変動(トポグラフィ)を近似することができる。
【0010】
上述の焦点照射量摂動実験法は、故障事象が希少たりうること、それでもなお歩留まりにとり有害たりうることからして、ショット雑音効果がもとで生じる確率的変動にはあまり適していない。これは、百万分率又は十億分率の故障モードを検出しそれを修理できるようにするには、多数回の実験的計測を実行することが必要になりうることを、意味している。欠陥発見のサイクルタイムが歩留まり改善に影響するので、投資収益率を高めるには別の手法が必要である。
【0011】
リソグラフィシミュレーションでは、ウェハ上方のあるZ高さにおけるフォトレジストプロファイル形状が直に予測され、或いはフル3Dプロファイルが予測されそのシミュレートされたフォトレジストプロファイルがある指定Z高さにてスライスされ、それによりパターンポリゴンへと導かれる。上述の実験手順と同様、シミュレーションを様々な焦点及び照射量セッティングにて実行することで、製造の際に見受けられる変動に対するロバスト性を判別することができる。このシミュレーション手法は、ある範囲の焦点/照射量条件に係るポリゴンがある特定パターンに関し重畳されているときには、プロセス変動帯即ちPV帯の計算と呼ばれる。マスク寸法の変動も一般にPV帯計算に組み込まれる。
【0012】
このPV帯シミュレーション手法は、確率的変動に起因する変動性の予測に敷衍できるものの、これらの方法では、通常、エッジ位置の正規分布の3シグマ変動度の予測に的が絞られる。エッジ位置指標(例.ライン幅粗さ、ラインエッジ粗さ又は円エッジ粗さ)は、そのデザインの様々な特性(例.照射量、画像対数スロープ)をもとに予測することができる。その公称パターンの照射量感度も、そのパターンに係る確率的変動の予測に用いることができる。これらのモデルは、XY平面内の指標、並びにそのXY平面内での応答に的を絞ったものである。これらのモデルでは公称事例に対する摂動が正規分布することを想定しているため、極端に希少な事象の確率が少なく見積もられがちである。そして、これら実験的手法及びシミュレーションベース手法の何れでも、XY平面内で定義されるパターンが調べられるところ、それらが歩留まりに対し貧弱な相関しか呈さないことが判明している。ラインエッジ粗さは、ラインパターンのエッジの3シグマ変動の物差しであり、通常は電気的歩留まりと相関しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2019/162346号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
フォトレジスト露出の確率的性質がもとで生じる希少事象の確率の予測が可能で、迅速な欠陥発見が容易化され、より良好な歩留まり制御につながるフルチップモデルが、長年要望されてきた。そのため、フォトレジストの確率的モデル化に関し、改善された技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1実施形態では方法が提供される。本方法では、半導体デバイス用のマスクパターンを機械学習モジュール内に入力し、そのマスクパターンに基づきその半導体デバイスに係るフォトレジスト厚み確率分布を決定する。
【0016】
その機械学習モジュールを、一般線形モデル、ニューラルネットワーク、ベイズ推定、ベイジアンニューラルネットワーク、深層ニューラルネットワーク、畳込みニューラルネットワーク又はサポートベクタマシンを稼働させるよう構成することができる。
【0017】
その機械学習モジュールを更に、フォトレジスト厚みの確率マップを決定するよう構成することができる。
【0018】
その厚み確率分布により、X方向及びY方向沿いのある座標に係るフォトレジスト厚み情報を提供することができる。
【0019】
その機械学習モジュールを更に、X方向及びY方向沿いのある座標に係る局所強度を決定するよう構成することができる。
【0020】
その機械学習モジュールを更に、X方向及びY方向沿いのある座標に係る画像コントラスト、画像勾配、画像対数スロープ又は正規化画像対数スロープを決定するよう構成することができる。
【0021】
その厚み確率分布を約1ppbの正確度レベルまで決定することができる。
【0022】
ある例ではその機械学習モジュールが第1モデル、第2モデル及び第3モデルを有する。第1モデルは、ラスタ化マスク画像が与えられている許でマスク回折パターンを予測する。第2モデルは、そのマスク回折パターンが与えられている許でフォトレジスト内画像を予測する。第3モデルは、そのフォトレジスト内画像が与えられている許でフォトレジスト厚み分布を予測する。
【0023】
それによりコンピュータ可読プログラムが体現される非一時的コンピュータ可読格納媒体が備わるコンピュータプログラム製品を、第1実施形態の方法を実行するよう構成することができる。
【0024】
第2実施形態ではシステムが提供される。本システムは、プロセッサを用い稼働させうる機械学習モジュールを有する。その機械学習モジュールを、マスクパターンに基づき半導体デバイスに係るフォトレジスト厚み確率分布を決定するよう構成する。
【0025】
その機械学習モジュールを、一般線形モデル、ニューラルネットワーク、ベイズ推定、ベイジアンニューラルネットワーク、深層ニューラルネットワーク、畳込みニューラルネットワーク又はサポートベクタマシンを稼働させるよう構成することができる。
【0026】
その機械学習モジュールを更に、フォトレジスト厚みの確率マップを決定するよう構成することができる。
【0027】
その厚み確率分布により、X方向及びY方向沿いのある座標に係るフォトレジスト厚み情報を提供することができる。
【0028】
その機械学習モジュールを更に、X方向及びY方向沿いのある座標に係る局所強度、画像コントラスト、画像勾配、画像対数スロープ又は正規化画像対数スロープを決定するよう構成することができる。
【0029】
その厚み確率分布を約1ppbのフォトレジストに至るまで決定することができる。
【0030】
ある例ではその機械学習モジュールが第1モデル、第2モデル及び第3モデルを有する。第1モデルは、ラスタ化マスク画像が与えられている許でマスク回折パターンを予測する。第2モデルは、そのマスク回折パターンが与えられている許でフォトレジスト内画像を予測する。第3モデルは、そのフォトレジスト内画像が与えられている許でフォトレジスト厚み分布を予測する。
【0031】
その機械学習モジュールを、エネルギ源及び検出器を有する撮像システムと電子通信させることができる。
【0032】
本件開示の性質及び目的についてのより遺漏なき理解のためには、後掲の詳細記述と併せ、以下の添付図面を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本件開示に係る実施形態の図である。
図2】本件開示に係る方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
特定の諸実施形態により特許請求の範囲記載の主題につき記述するが、本件開示の技術的範囲内には、本願中で説明される諸利益及び諸特徴が全ては提供されない諸実施形態を含め、他の諸実施形態も存在している。本件開示の技術的範囲から離隔することなく様々な構造的、論理的、処理ステップ的及び電子的改変を施すことができる。従って、本件開示の技術的範囲は専ら別項の特許請求の範囲への参照によって定まる。
【0035】
フォトリソグラフィでは、光及び物質の量子的性質により御される欠陥が現れうる。例えば光が量子化されたものは光子、フォトレジスト内の化学反応物質は離散分子である。これらはショット雑音欠陥又は確率的欠陥と呼ばれることが多い。それら確率的欠陥は、EUVリソグラフィにて一般的たりうるものであるが、他のリソグラフィックプロセス例えばArF浸漬にて用いられる露出波長でも現れうる。「確率的」は、その平均的な挙動が所望仕様(例.フォトレジスト幅、ライン端に係るチップトゥチップ計測値、或いはフォトレジスト厚み)の枠内たりうる一方で、それと同時に揺らぎが現れそのパターンに非ゼロ確率で以て故障が引き起こされる(例.ライン/スペースパターンが橋絡(ブリッジ)され又は破損(ブレーク)する)ことを、意味している。ウェハ内に数百万個のトランジスタがあるのであれば、極低い故障確率でさえもかなりの歩留まり損失につながりうる。
【0036】
確率的故障は、検査ツールで以て発見されること及びその後にトップダウンSEMにより解明(特徴付け)されることが多い。検査及び解明が行われうるのは、リソグラフィの後(現像後検査(ADI))や、後続するエッチング及び清掃工程の後(エッチング後検査(AEI)又は清掃後検査(ACI))である。AEI/ACIの結果は歩留まり最も関連深いものたりえ、ADIにおける残存フォトレジスト厚みに依存する。
【0037】
本願開示の諸実施形態によれば、局所的フォトレジスト厚みのモデルで以てそれら欠陥を予測することができ、ひいてはフルチップレイアウトを確率的故障との関連で解明することができる。これを用い、フォトレジスト厚みの確率的変動を予測することができる。従来技術とは異なり、この指標により、故障疑いの個所を含め、全ての個所にてフォトレジスト厚みパラメタが決定される。本願開示の諸実施形態によれば、全個所にて直にフォトレジスト厚みを分析することができる。フォトレジスト厚みは、エッチング中のパターン転写誤差に対し直接的相関があるため、欠陥率及び歩留まりの指示子となる。例えば、不要なフォトレジストがスペース内に見つかっていて(例.スペース橋絡欠陥)、その厚みがある閾値よりも大きい場合、そのエッチングプロセスでは、そのスペース領域内でその基板から物質を所望の如く除去できなかろう。同様に、そのフォトレジストがライン領域内で十分に厚くない場合(例.ライン破損欠陥)、そのエッチングプロセスにて残存フォトレジストが除去されライン領域内で基板から物質が除去され始めることがあり、これは望ましくないことである。これらのフォトレジスト厚み誤差により、(XY平面内で定義されるところの)エッジが近くにあるか否かに関わらず、パターン転写誤差が引き起こされることとなる。
【0038】
局所的フォトレジスト厚みはシミュレータで以て解明すること、例えばKLA Corporationにより販売されている物理ベースシミュレータたるPROLITH(商品名)で以てそうすることができる。これを、多数回のシミュレーションに亘る累積ヒストグラム又は単一インスタンスの形態とし、それによりそのフォトレジスト厚みに係る確率分布を決定することができる。そのリソグラフィックプロセスの物理ベースモデルを、PROLITH(商品名)等の方法を用い開発することができる。PROLITH(商品名)等のシミュレータを用い、光子及び化学的ショット雑音に起因する確率的事象をシミュレートすることができる。これは、通常、光子の吸収率に係る既知分布例えばポアソン分布をランダムに標本化するモンテカルロ型プロセスにより、実行される。複数回のシミュレーションを実行し、所与組のリソグラフィ条件に係る事象の標本を生成することができる。シミュレートされた応答、例えばラインの幅やコンタクトホールの直径をヒストグラムの態にビニング(ビン分配)し、その生起確率を表現することができる。その種の物理ベースシミュレータからの応答のこうした確率分布に関しては、実験的に決定された結果と符合することが判明している。
【0039】
機械学習モジュール100が図1に示されている。機械学習モジュール100は、マスクパターンに基づき半導体デバイスに係るフォトレジスト厚み確率分布を決定するよう構成されている。機械学習モジュール100は、これに限られるものではないが一般線形モデル、ニューラルネットワーク、ベイズ推定、ベイジアンニューラルネットワーク、深層ニューラルネットワーク、畳込みニューラルネットワーク又はサポートベクタマシンを初め、教師付き機械学習モデルを稼働させるよう構成することができる。畳込みニューラルネットワークを画像入力に用いることができる。ベイジアンニューラルネットワークを用い、出力たる確率又は分布を決定することができる。
【0040】
機械学習モジュール100は、シミュレータからもたらされる結果を用い訓練することができる。データセットをマスクパターンの集合とすることができ、その集合に約2000個を含めること及び約1μmのサイズを有するものとすることができる。ある例によれば、シミュレータからの中間データを用い機械学習モジュール100を訓練することができる。その中間データを用い、予測中に連鎖させうる3個の別々なモデルを作成することができる。即ち、シミュレーションを共通リソグラフィパラメタ例えば露出照射量及び焦点セッティングの付加的変動付で実行させることで、3個のモデル(例.モデルA、B及びC)を訓練するための中間結果を生成することができる。
【0041】
機械学習モジュール100により用いられるモデルは、注目領域付近の様々な特性を判別・決定できるものである。例えば、図1の挿入枠内にあるのはフォトレジストラインの例である。このフォトレジストラインには、後のエッチング工程にて問題を引き起こしかねない欠陥がある。様々な特性を注目領域にて判別・決定することができ、またその注目領域をX方向及びY方向沿いのある座標に、或いはその付近に配置することができる。諸特性を空間像やフォトレジスト内画像に従い判別・決定することもできる。フォトレジスト内画像は露出中に形成されたフォトレジストの内側の光学像であり、これを中間計算の結果とすること、並びに3個のモデルのうち1個(例.モデルB)の出力とすることができる。それを、シミュレーションドメイン内の標本化されたX、Y及びZ個所での光強度として、格納することができる。それを後刻の化学反応用の開始データとし、それにより現像後フォトレジストの実物理形状又はレリーフ像(浮き彫り像)を生み出すことができる。
【0042】
図2は方法200のフローチャートである。201では、半導体デバイス用のマスクパターンが機械学習モジュール内に入力される。マスクパターンは、チップデザイナの意図を表すポリゴン形状であると考えることができる。それを様々な種類のファイル、例えばデザインファイル内に格納することができる。実際の機械学習訓練に当たっては、それをX及びY次元に沿いラスタフォーマット(値テーブル)に変換することができる。
【0043】
その機械学習モジュールを図1の機械学習モジュール100とすることができる。202では、そのマスクパターンに基づきその半導体デバイスに関しフォトレジスト厚み確率分布が決定される。確率分布は、様々なレベルのフォトレジスト厚みの生起確率を与える数学的関数である。実際的には、これは、そのモデルから数個(例.2~15個)のパラメタ値を出力しそれをその関数に代入することでその分布が定まることを、意味している。モデルCの訓練中に最尤原理を適用することで、そのモデルに、その確率分布に関し正しいパラメタを生成するよう「教示」することができる。他のあらゆる機械学習プロセスにおけるそれと同様、最尤性指標を用い「真」の出力(例.シミュレータフォトレジストレリーフ)と比較することで、正しさに関しモデル出力(即ち分布)を評価することができる。
【0044】
その機械学習モジュールを更に、Z高さの確率マップを、例えばX方向及びY方向沿いのある座標にて決定するよう、構成することができる。確率マップは、各XY個所における事象の確率表現面である。ある例では、それが、そのモデルにより予測される分布を用い計算される。位置X,Yにおけるフォトレジスト高さが閾値よりも高い又は低い確率を予測することができる。小さなフォトレジスト厚みが予期される場所(スペース)では、些少な確率であれ閾値より大きな幾ばくかの厚みを有することが、潜在的な(橋絡型)欠陥の徴候となる。逆に、大きなフォトレジスト厚みが予期される場所(ライン)では、閾値より小さな(過小な)厚みを有する確率が、潜在的なライン破損欠陥の指示子となる。このことが図1の分図中に描かれており、ここではZ方向沿い厚みが均等となっていない。これらの確率は、試験下エリア全体又はチップ全体をカバーする密なX,Y沿いグリッド上で計算される。その確率マップにより、フォトレジスト表面のZ高さ及びフォトレジスト厚みを表現することができる。
【0045】
その厚み確率分布により、X方向及びY方向沿いのある座標に係るZ高さ情報を提供することができる。その厚み確率分布を約1ppbの正確度レベルまで決定することができる。1ppbは、モデル有用範囲及び正確度に関する目標たる10-9の確率を表している。その目標をより低値なレベル、例えば10-10、10-11等とすることもできる。特定エリアにおけるフォトレジストの体積も決定することができる。フォトレジスト厚みを解明することにより、エッジ配置誤差の単なる解明に勝る長所、例えば光学的近接補正(OPC)及びOPC確認ソフトウェアにより通常は出力されるエッジ配置誤差のそれに勝る長所が得られる。
【0046】
Z方向沿いフォトレジスト厚み(即ちZ高さ)の統計的特性を、X方向及びY方向沿いのある座標にて判別・決定することができる。即ち、Z方向沿いでのフォトレジストの厚みを、フォトレジスト構造の離散点にて、或いはフォトレジスト構造の長さ沿いで決定することができる。そのモデルがA、B及びCの諸部分に区分されている場合、諸ステップのなかに、ラスタ化マスク画像がオプション的にはその他の撮像パラメタ(例.主光線角等)と共に与えられている許でモデルAを用いマスク回折パターンを予測するそれを、含めることができる。その上で、そのマスク回折パターンがオプション的には離焦及びその他の撮像パラメタ(例.主光線角、フレア、収差等)と共に与えられている許で、モデルBを用いフォトレジスト内画像が予測される。その上で、そのフォトレジスト画像がオプション的には露出照射量並びにその他の露出及びフォトレジストパラメタと共に与えられている許で、モデルCを用いフォトレジスト厚み分布パラメタが予測される。閾値を用い、フォトレジスト厚みが過小又は過大となる確率を予測することができる。
【0047】
本方法を用いリソグラフィック欠陥をサーチすることができる。Z方向厚みには、歩留まりを制限するまれなリソグラフィ欠陥に対しより直に関連する傾向がある。注目エリアは、フォトレジストがなく(例.スペースの中央付近)又は大量のフォトレジストがある(例.ラインの中央付近)ことが目論まれている個所のことであると認められる。それらの個所にてフォトレジスト厚みが過大又は過小となる確率を分析し通知することができる。ある例によれば、Z方向厚みを1ppbの確率まで、但しフォトレジストが完全に取り払われているべきエリアでは1ppbの正確度レベルに制限されずに、解明することができる。別の例によれば、Z方向厚みを1ppbの確率まで、但しフル厚みのフォトレジストが内在しているべきエリアでは1ppbの正確度レベルに制限されずに、解明することができる。なおも別の例によれば、Z方向厚みを1ppbの確率まで、但し何れか任意のエリアでは1ppbの正確度レベルに制限されずに、解明することができる。
【0048】
他の諸特性をX方向及びY方向沿いのある座標にて決定することができ、それをZ高さに先立ち決定されるフォトレジスト内画像の特性とすることができる。それらの特性のなかには、局所強度、画像コントラスト、画像勾配、画像対数スロープ、正規化画像対数スロープ、フォトレジストエッジの位置の確率、或いはその他の特性が含まれる。
【0049】
本願開示の諸実施形態を用い、そのフォトレジスト内の欠陥を見つけることができる。本願開示の諸実施形態を用い、マスクを補正してそのフォトレジスト内の欠陥を排することもできる。即ち、本方法の使用結果を、マスクデザインへのフィードバックの一形態として用いることができる。フォトレジスト適用中のプロセスパラメタ(例.焦点)を、本方法の使用結果に基づき修正することができる。
【0050】
図1では、機械学習モジュール100がオプション的な撮像システム101をも有しており、それがその機械学習モジュール100と電子通信している。撮像システム101はエネルギ源及び検出器を有する。そのエネルギ源ではエネルギが生成され、それがウェハへと差し向けられる。そのエネルギ源たりうるものには、例えば光源や電子源がある。その検出器は、そのウェハから反射されてきたエネルギを検出して画像を生成するよう構成される。そのエネルギたりうるものには、例えば光ビーム、電子ビーム、イオンビーム、或いは他の種類の粒子ビームがある。例えば光学検査システム又はSEMでは、1枚又は複数枚のウェハ上のフォトレジスト標本を計測することにより、機械学習モジュール100に継続的フィードバックを提供することができる。
【0051】
撮像システム101、或いはその撮像システム101内のプロセッサを、そのウェハの画像を機械学習モジュール100に送るよう構成することができる。その画像を、その機械学習モジュール100により稼働されるモデルの付加的訓練に用いることができる。即ち、機械学習モジュール100からの情報を用い作成されたウェハを、その機械学習モジュール100に対し更に教示又は強化を施すのに用いることができる。その他の標本ウェハ或いはその他の生産ウェハも、その機械学習モジュール100に対し更に教示又は強化を施すのに用いることができる。
【0052】
機械学習モジュール100及びその内部の諸サブシステムは、パーソナルコンピュータシステム、イメージコンピュータ、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、ネットワーク機器、インターネット機器その他のデバイスを有するものとすることができる。機械学習モジュール100又はその内部のサブシステム(群)は、本件技術分野にて既知であり好適な何らかのプロセッサ、例えば並列プロセッサを有するものとすることができる。そのプロセッサを用いそのモデルを稼働させることができる。ある例によれば、そのプロセッサをグラフィクス処理ユニット(GPU)とすること、或いはそれを有するものとすることができる。加えて、そのサブシステム(群)又は機械学習モジュール100を、スタンドアロンであれネットワーク接続されたツールであれ、高速な処理及びソフトウェアを伴うプラットフォームを有するものとすることができる。機械学習モジュール100を、所望のプロセスパラメタを選択するためのディスプレイ及びユーザ入力装置を有し又はそれに結合されているものとすることができる。
【0053】
ある種の実施形態では、本願開示の機械学習モジュール100及びその内部の諸サブシステム並びに諸方法の様々なステップ、機能及び/又は動作が、電子回路、論理ゲート、マルチプレクサ、プログラマブル論理デバイス、ASIC、アナログ又はディジタルコントローラ/スイッチ、マイクロコントローラ、或いは情報処理システムのうち、1個又は複数個により実行される。方法例えば本願記載のそれらを実現するプログラム命令を、キャリア媒体上で伝送させ又はキャリア媒体上に格納させることができる。そのキャリア媒体に含めうるものに格納媒体、例えばリードオンリメモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気又は光ディスク、不揮発性メモリ、固体メモリ、磁気テープ等がある。キャリア媒体に含めうるものに伝送媒体、例えばワイヤ、ケーブル又は無線伝送リンクがある。例えば、本件開示の随所に記載されている様々なステップを、単一のプロセッサ(又はコンピュータシステム)により実行することも、それに代え複数個のプロセス(又は複数個のコンピュータシステム)により実行することもできる。更に、ニューラルネットワークモジュール101に備わる様々なサブシステムを、1個又は複数個の情報処理又は論理システムを有するものとすることができる。従って、上掲の記述は、本件開示に対する限定としてではなく、単なる例証として解されるべきである。
【0054】
畳込みニューラルネットワーク(CNN)を、ある実施形態によれば機械学習モジュール100にて用いることができる。CNNは一種のフィードフォワード人工神経網(ニューラルネットワーク)であり、そのニューロン(即ち画素クラスタ)間の結合性(コネクティビティ)パターンは、動物の視覚皮質の組織化によりインスパイアされている。個々の皮質ニューロンは、受容野として知られる制約された空間領域における刺激に対し応答する。別々のニューロンの受容野は部分的に重なり合っていて、それらにより視野が敷き詰められる(タイリング)。自身の受容野内での刺激に対する個々のニューロンの応答を、コンボリューション(畳込み)演算によって数学的に近似することができる。
【0055】
CNNは、複数層の受容野が備わるものとすることができる。これらは、入力画像又は画像群の諸部分を処理する小さなニューロン集合である。その上で、それらの入力領域が重なり合うようそれら集合の出力がタイリングされるため、原画像のより良好な表現を得ることができる。これをそうした層毎に反復することができる。タイリングされているので、CNNではその入力画像の並進を許容することができる。CNNは、ある3Dボリュームをなすニューロンを有するものとすることができる。CNNの諸層は、ニューロンが三方向、即ち幅、高さ及び深さ方向に沿い配列されたものとすることができる。ある層内のニューロンは、その前にある層の小領域、いわゆる受容野にしか結合されない。局所結合されたもの及び完全結合されたものの双方を含め、個々別々な種類の諸層を積層し、CNNアーキテクチャを形成することができる。CNNでは、隣り合う層のニューロン間に局所コネクティビティパターンを押し付ける(エンフォースする)ことにより、空間的に局所的な相関が利用される。このアーキテクチャによれば、確と、その学習済みフィルタにて空間的局所入力パターンに対する最強応答を生成させることができる。こうした層を多数積層することで、導出される非線形フィルタがますます大域的なもの(即ちより大きな画素空間領域に応答するもの)となる。これにより、そのネットワークにて、まず入力のうち小部分群の良好な表現を生成してからそれらをもとにより大きなエリアの表現を組み立てることが可能となる。CNNでは、各フィルタが視野全体に亘り複製される。それら複製されたユニットでは同じパラメタ化(荷重ベクトル及びバイアス)が共有され、フィーチャマップが形成される。これは、所与畳込み層内の全てのニューロンにて厳密に同じフィーチャが検出されることを意味している。こうしてユニットを複製することにより、その視野内でのそれらの位置によらず諸フィーチャを検出することが可能となり、ひいては並進不変性なる特性が構築される。
【0056】
同時に、これらの特性により、CNNにて、撮像問題についてのより良好な一般化を果たすことが可能になる。荷重共有も、学習される自由パラメタの個数を減らすこと、ひいてはそのネットワークを実行するためのメモリ要件を下げることで、助力する。そのメモリフットプリントを削減することで、より大きくよりパワフルなネットワークの訓練が可能となる。CNNは、ニューロンクラスタの出力を結合させる局所的又は大域的なプーリング層を有するものと、することができる。プーリング層も、様々な組合せの畳込み層及び全結合層で構成することができ、また点毎非線形性が各層の端部又は後に適用されるものとすることができる。入力の小領域を対象とした畳込み演算が導入されるので、自由パラメタの個数を減らし一般化を改善することができる。畳込みネットワークの長所の一つは畳込み層における共有荷重の使用であり、これはその層内の各画素で同じフィルタ(荷重バンク)が用いられることを意味している。これによってもメモリフットプリントが削減され且つ性能が改善される。
【0057】
CNNアーキテクチャは、微分可能な関数を通じその入力ボリュームを出力ボリューム(例.クラススコアを保持しているそれ)へと変換する個別的な諸層のスタック(積層体)により、形成することができる。少数の個別的な種類の諸層を用いることができる。その畳込み層は一組の可学習フィルタ(又はカーネル)で構成される様々なパラメタを有しており、それらが小さな受容野を有しつつもその入力ボリュームのフル深さを通じ延びるものである。フォワードパス中に、各フィルタをその入力ボリュームの幅及び高さに亘り畳み込むことにより、そのフィルタの諸エントリとその入力との間のドット積を計算すること、並びにそのフィルタの二次元活性値マップを生成することができる。結果として、そのネットワークが、その入力中のある空間的位置にてある特定種類のフィーチャを見出したときに活性する諸フィルタを、学習することになる。その深さ次元に沿い全フィルタに係る活性値マップを積層することにより、その畳込み層のフル出力ボリュームが形成される。その出力ボリューム内の個々のエントリを、その入力中のある小領域を見ており且つ同じ活性値マップ内の諸ニューロンと諸パラメタを共有するニューロンの出力として、解釈することもできる。
【0058】
高次元入力例えば画像を扱う際には、そうしたネットワークアーキテクチャではそのデータの空間的構造が勘案されないのであるから、諸ニューロンを先行ボリューム内の全ニューロンに結合することが非現実的となりうる。CNNでは、隣り合う層のニューロン間に局所コネクティビティパターンをエンフォースすることにより、空間的局所相関を利用することができる。例えば、各ニューロンがその入力ボリュームのある小領域のみに結合される。そのコネクティビティの範囲はハイパーパラメタであり、そのニューロンの受容野と呼ばれる。その結合は、(幅及び高さに沿い)空間的に局所的なものとされうるが、その入力ボリュームの深さ全体に沿い延ばすことが可能である。こうしたアーキテクチャによれば、確と、その学習済フィルタにて空間的局所入力パターンに対する最強応答を生成させることができる。ある実施形態によれば、CNNを訓練する際に転移学習を用い、CNN毎にハイパーパラメタを生成することができる。転移学習の際には、非常に大きなデータセットを対象にしてCNNを訓練した上で、その訓練済CNNの荷重を、その注目タスクに係る固定フィーチャエクストラクタとして又は初期化として用いることができる。
【0059】
例えば、3個のハイパーパラメタにより、その畳込み層の出力ボリュームのサイズ、即ち深さ、ストライド、並びにパディングサイズ/タイプを制御することができる。出力ボリュームの深さにより、その入力ボリュームの同じ領域につながる層内ニューロンの個数が制御される。それらニューロン全てが、その入力内の様々なフィーチャを活性化させることを学習することとなる。例えば、1個目のCNN層にて生画像が入力として採取される場合、その深さ次元沿いの別々なニューロンを、様々な向きのエッジ又はカラーブラブの存在下で、活性化させることができる。ストライドにより、その空間次元(幅及び高さ)周りで深さカラムがどのように割り当てられるのかが制御される。ストライドが1であるときには、諸ニューロンからなる新たな深さカラムが、1空間単位しか隔たっていない空間的位置に割り当てられる。これはカラム間で受容野がひどく重なることにつながり、出力ボリュームが大きくなることにもつながる。逆に、より大きなストライドが用いられている場合は、それら受容野があまり重なり合わず、もたらされる出力ボリュームが空間的に小さめな寸法を有することとなる。ときとして、その入力ボリュームの境界上にてゼロで以て入力をパディングすることが、都合がよいことがある。このゼロパディングのサイズが3個目のハイパーパラメタである。パディングにより、その出力ボリュームの空間的サイズの制御が行われる。とりわけ、その入力ボリュームの空間的サイズを厳密に保存することが、望ましいことがある。
【0060】
ある種の実施形態によれば、パラメタ共有方式を諸層にて用い、自由パラメタの個数を制御することができる。あるパッチフィーチャがある空間的位置での計算に役立つ場合、それを別の位置での計算に役立てることもできる。言い換えれば、単一の二次元的な深さスライスのことを深さスライスと表し、各深さスライス内の諸ニューロンに制約を課して同じ荷重及びバイアスを使用させることができる。
【0061】
単一の深さスライス内の全ニューロンで同じパラメタ化を共有できるため、その層の各深さスライスにおけるフォワードパスを、そのニューロンの荷重に対する入力ボリュームの畳込みとして計算することができる。従って、一般に、その入力が畳込まれる諸組の荷重のことを、フィルタ(又はカーネル)と呼ぶことができる。この畳込みの結果が活性値マップであり、個々別々なフィルタに係る組の活性値マップを深さ次元に沿い一緒に積層することで、その出力ボリュームを生成することができる。
【0062】
ときとして、パラメタ共有が有効たりえないこと、例えばCNNへの入力画像がある独特な集中的構造を有していて、そこでは完全に別なフィーチャが別の空間個所上で学習されるものと予期される場合がある。
【0063】
プーリングはCNNのもう一つの特徴であり、これは非線形ダウンサンプリングの一形態である。プーリングを実現しうる非線形関数は数個あり、マックスプーリングがその一つである。マックスプーリングでは、その入力画像が一組の非重複長方形へと区画され、そうしたサブ領域毎にその最大値が出力される。フィーチャが見つかっても、その厳密な所在個所は、他の諸フィーチャに対するその概略所在個所ほどは重要たりえない。プーリング層の機能を以て、その表現の空間的サイズを漸次削減することで、そのネットワークにおけるパラメタ及び計算の量を減らすことができ、従って過適合を制御することもできる。プーリング層は、CNNアーキテクチャ内の相連続するコニー層間に配置することができる。
【0064】
CNN内の別の層をReLU(正規化線形ユニット)層とすることができる。これは、非飽和活性化関数に適用されるニューロンからなる層である。ReLU層により、決定関数の非線形特性とネットワーク全体のそれとを、その畳込み層の受容野に影響を及ぼすことなく強めることができる。
【0065】
そして、数個の畳込み及び/又はマックスプーリング層の後で、全結合層の働きにより、そのニューラルネットワークにおける高レベル推論が完遂される。全結合層内のニューロンは、前層内の全ての活性値に対する全結合を有している。それらの活性値は、行列乗算及びそれに後続するバイアスオフセットで以て計算することができる。
【0066】
ある種の実施形態によれば、ドロップアウト技術を利用し過適合を妨げることができる。本願で言うところのドロップアウト技術は、訓練データに対する複合的な共適応を妨げることでニューラルネットワークにおける過適合を減らす正則化技術である。語「ドロップアウト」は、ニューラルネットワーク内の諸ユニット(隠れと可視の双方)をドロップアウト(脱落)させることを指している。例えば、各訓練ステージにて、個々のノードをCNNから確率1-pで以て「ドロップアウト」させること、即ち確率pで以て維持することで、縮小されたCNNを残させることができる。ある種の実施形態によれば、ドロップアウトされたノードへの入来及び出退エッジも除去することができる。縮小されたCNNのみが訓練される。その上で、除去されたノードを、それらの元来の荷重を付けてそのネットワーク内に再挿入することができる。
【0067】
訓練ステージにて隠れノードが保持される(即ちドロップされない)確率は約0.5とすることができる。入力ノードに関しては、その保持確率をより高くすることができる。全ノードが全訓練データを対象に訓練されることを避けることで、ドロップアウトにより、CNNにおける過適合が低減され且つ訓練速度が改善される。
【0068】
訓練データをモデル訓練(例.CNN訓練)のため入力することができ、またそれを何れの好適な要領で実行することもできる。例えば、そのモデル訓練に際し、訓練データをCNNに入力すること、並びにそのモデルの出力が外部検証データと同じもの(或いは実質的に同じもの)になるまでそのモデルの1個又は複数個のパラメタを修正することができる。モデル訓練により1個又は複数個の訓練済モデルを生成することができ、そしてそれを、検証データを用い実行されるモデル選択に送ることができる。その1個又は複数個の訓練済モデルへの入力たる検証データに関し、1個又は複数個の訓練済モデルそれぞれによりもたらされる結果を、その検証データと比較することで、何れのモデルが最良モデルであるのか判別することができる。例えば、その検証データに対し最も密に整合する結果をもたらすモデルを、最良モデルとして選択することができる。その上で、試験データを用い、その選択されたモデル(例.最良モデル)についてのモデル評価を行うことができる。モデル評価は何れの好適な要領で実行することもできる。最良モデルはモデル配備にも送ることができ、そこでその最良モデルを半導体検査ツールに送り使用させることができる(訓練後モード)。
【0069】
多種多様なCNNを本件開示の諸実施形態にて用いることができる。様々なCNNを、特定の走査モード又は状況を踏まえ用いることができる。CNNの構成を、シミュレータの構成、ウェハ、画像データ獲得サブシステム又は所定のパラメタを踏まえ変化させることができる。
【0070】
他の諸モデルを機械学習モジュール100にて用いることができる。例えばベイジアンニューラルネットワークは、一組の変数及びそれらの条件依存性を有向非巡回グラフにより表現する確率的グラフィカルモデルである。ベイジアンネットワークにより、生起した事象を取り上げ、数個の潜在的既知原因のうち何れか1個が寄与因子であった蓋然性を予測することができる。
【0071】
付加的実施形態の一つは、プロセッサを用い実行可能なプログラム命令群が格納されている非一時的コンピュータ可読媒体に関し、特にプロセスパラメタを決定するコンピュータ実施方法を本願開示の如く実行するためのそれに関する。電子データ格納ユニットその他の格納媒体に組み込める非一時的コンピュータ可読媒体内に、ニューラルネットワークモジュール上で実行可能なプログラム命令群を入れるようにする。そのコンピュータ実施方法には、方法200を初め本願記載のあらゆる方法(群)のあらゆるステップ(群)を含めることができる。
【0072】
本方法の各ステップを本願記載の如く実行することができる。それらの方法には、本願記載のプロセッサ及び/又はコンピュータサブシステム(群)若しくはシステム(群)により実行することができる、他の何れのステップ(群)も含めることができる。それらのステップを、1個又は複数個のコンピュータシステムにより実行されるものとすることができ、またそれを本願記載の諸実施形態のうち何れに従い構成することもできる。加えて、上述の諸方法を本願記載のシステム実施形態の何れにより実行することもできる。
【0073】
1個又は複数個の具体的実施形態との関連で本件開示につき記述してきたが、ご理解頂けるように、本件開示の技術的範囲から離隔することなく本件開示の他の諸実施形態をなすことができる。即ち、本件開示は、添付する特許請求の範囲及びその合理的解釈によってのみ限定されるものと考量される。
図1
図2
【国際調査報告】