(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】化学機械研磨パッドのために使用される紫外線硬化性樹脂
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20231107BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
B24B37/24 B
B24B37/24 C
H01L21/304 622F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523625
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 US2021055344
(87)【国際公開番号】W WO2022086830
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】シーエムシー マテリアルズ リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】チェン-チー ツァイ
(72)【発明者】
【氏名】エリック エス.モイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ピン ホアン
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
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3C158EB29
5F057AA24
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5F057FA39
(57)【要約】
本発明は、化学機械研磨パッドを形成するための紫外線硬化性樹脂において:(a)1つ以上のアクリレートブロック化イソシアネート;(b)1つ以上のアクリレートモノマと;(c)光重合開始剤と;を含む紫外線硬化性樹脂を提供する。本発明は同様に、紫外線硬化性樹脂を用いて化学機械研磨パッドを形成する方法も提供している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械研磨パッドを形成するための紫外線硬化性樹脂において:
(a)1つ以上のアクリレートブロック化イソシアネート;
(b)1つ以上のアクリレートモノマと;
(c)光重合開始剤と;
を含む紫外線硬化性樹脂。
【請求項2】
前記1つ以上のアクリレートブロック化イソシアネートが、アクリレートブロック化剤およびイソシアネート末端ウレタンプレポリマを含む、請求項1に記載の紫外線硬化性樹脂。
【請求項3】
前記1つ以上のアクリレートブロック化イソシアネートが、ポリイソシアネートを含む、請求項1に記載の紫外線硬化性樹脂。
【請求項4】
前記アクリレートブロック化剤が、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート(TBEMA)および3-(アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(AHPMA)の中から選択されている、請求項2に記載の紫外線硬化性樹脂。
【請求項5】
前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマが芳香族プレポリマ、脂肪族プレポリマまたはそれらの組合せを含む、請求項2に記載の紫外線硬化性樹脂。
【請求項6】
前記アクリレートブロック化イソシアネートが、アクリレートブロック化剤の混合物を含む、請求項2に記載の紫外線硬化性樹脂。
【請求項7】
前記アクリレートブロック化剤が、2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレートおよび2-ヒドロキシエチルアクリレートである、請求項6に記載の紫外線硬化性樹脂。
【請求項8】
前記2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート:2-ヒドロキシエチルアクリレートの比が50:50超である、請求項7に記載の紫外線硬化性樹脂。
【請求項9】
前記2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート:2-ヒドロキシエチルアクリレートの比が75:25である、請求項8に記載の紫外線硬化性樹脂。
【請求項10】
前記1つ以上のアクリレートモノマが、イソボルニルメタクリレート(IBMA)、2-カルボキシエチルアクリレート(CEA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(NGDMA)、3-(アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(AHPMA)およびトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)の中から選択されている、請求項1に記載の紫外線硬化性樹脂。
【請求項11】
前記光重合開始剤が、ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)である、請求項1に記載の紫外線硬化性樹脂。
【請求項12】
安定剤、可塑剤、ポロゲン充填剤、顔料およびそれらの組合せの中から選択された添加剤をさらに含む、請求項1に記載の紫外線硬化性樹脂。
【請求項13】
請求項1に記載の紫外線硬化性樹脂の重合から形成される重合材料を含む化学機械研磨パッド。
【請求項14】
研磨パッドを形成する方法において:
(a)(i)1つ以上のアクリレートブロック化イソシアネートと;
(ii)1つ以上のアクリレートモノマと;
(iii)光重合開始剤と;
を含む紫外線硬化性樹脂を調製するステップと;
(b)前記紫外線硬化性樹脂の薄層を紫外線に曝露し、重合反応を開始させ、こうして固化したパッド材料の薄層を形成するステップと;
を含む方法であって、
熱硬化ステップを含まない方法。
【請求項15】
前記1つ以上のアクリレートブロック化イソシアネートが、アクリレートブロック化剤およびイソシアネート末端ウレタンプレポリマを含んでいる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アクリレートブロック化剤が、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート(TBEMA)および3-(アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(AHPMA)の中から選択されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマが、芳香族プレポリマ、脂肪族プレポリマまたはそれらの組合せを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記アクリレートブロック化イソシアネートが、アクリレートブロック化剤の混合物を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記アクリレートブロック化剤が2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレートおよび2-ヒドロキシエチルアクリレートである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート:2-ヒドロキシエチルアクリレートの比が50:50超である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート:2-ヒドロキシエチルアクリレートの比が75:25である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記1つ以上のアクリレートモノマが、イソボルニルメタクリレート(IBMA)、2-カルボキシエチルアクリレート(CEA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(NGDMA)、3-(アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(AHPMA)およびトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)の中から選択されている、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記光重合開始剤が、ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)である、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
安定剤、可塑剤、ポロゲン充填剤、顔料およびそれらの組合せの中から選択された添加剤をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
集積回路は、典型的に、シリコンウェーハ上に導電性、半導電性および/または絶縁性を逐次的に被着させることによって、基板上に形成される。さまざまな製造プロセスが、基板上のこれらの層の少なくとも1つの平坦化を必要とする。例えば、いくつかの利用分野(例えば、パターン層のトレンチ内にビア、プラグおよびラインを形成するための金属層の研磨)については、パターン層の上面が露呈されるまで、上側層が平坦化される。他の利用分野(フォトリソグラフィ用の誘電性層の平坦化)においては、下側層上に所望の厚みが残るまで、上側層が研磨される。化学機械研磨としても公知である化学機械平坦化(共に「CMP」と呼ばれる)は、一般に認められた平坦化の一方法である。この平坦化方法は典型的に、基板がキャリアヘッド上に組付けられていることを必要とする。基板の露出した表面は典型的に、回転するプラテン上で研磨パッドに接して設置される。キャリアヘッドは、基板上に制御可能な負荷(例えば下向きの力)を提供して、この基板を回転する研磨パッドに対して押付ける。研磨性粒子を伴うスラリなどの研磨用液体を、研磨中に研磨パッドの表面上に配置することもできる。
【0002】
CMPプロセスの1つの目的は、高い研磨均一性を達成することにある。基板上の異なる部域が異なるレートで研磨される場合には、基板のいくつかの部域で過度に多くの材料が除去されてしまう(「過剰研磨」)かまたは過度に少ない材料しか除去されない(「研磨不足」)可能性がある。標準パッドおよび固定研磨性パッドを含めた従来の研磨パッドが、これらの問題に悩まされ得る。標準パッドは、粗化された表面を伴うポリウレタン研磨層を有することができ、かつ圧縮性のバッキング層も含み得る。固定研磨性パッドは、封じ込め媒質中に保持された研磨性粒子を有し、典型的に、非圧縮性のバッキング層上に支持されている。
【0003】
これらの従来の研磨パッドは、典型的にポリウレタン材料を成形、注型または焼結することによって調製される。成形研磨パッドは、一度に一個、(例えば射出成形によって)調製されなければならない。研磨パッドを注型するためには、液体前駆体を注型し、「ケーキ」の形に硬化させ、このケークをその後、個別のパッド区分へとスライスする。これらのパッド区分はその後、最終厚みまで機械加工されなければならない。従来の押出し加工ベースのプロセスを用いて調製された研磨パッドは、概して、CMPのために所望される特性が欠如している(例えば有効なCMPのためには脆性が高すぎる)。
【0004】
CMPパッドは同様に、パッド材料の複数の薄層が漸進的に形成される、米国特許第16/868,965号に記載のバットベースの積層造形プロセスを用いても形成可能である。複数の層の各層は、固化されたパッド材料の薄層を形成するため、前駆体材料の紫外線により開始される反応を介して形成され得る。したがって、結果として得られるパッドは、各々の薄層を形成するために適切なパターンの光(例えば紫外線照射)を投射することによって、精確に制御された構造で形成される。
【0005】
積層造形プロセスは、さまざまなメリットおよび利点を提供する。例えば、積層造形プロセスの1つの利点は、押出し加工ベースのCMPプロセス(これは、接着剤を介してサブパッドに接着させられたトップシートを必要とする)によって形成される多層の本体とは対照的に、連続的な単層の本体を含むCMPパッドを生成する能力にある。さらに、積層造形プロセスは、他の従来のプロセスを用いて可能であるものに比べてより密に制御された物理的および化学的特性を伴って研磨パッドを形成することを可能にする。例えば、該プロセスは、表面上に投射された紫外線画像に応じて特有の溝およびチャネル構造を伴ってCMPパッドを調製することを可能にする。層上のパターンは、投射された紫外線画像パターンを制御するコンピュータ支援設計(CAD)プログラムによって適用され得る。該プロセスは同様に、押出し加工ベースの印刷プロセス(例えば、プリントヘッドが移動させられるにつれて表面上に前駆体材料を駆出するノズルを伴う機械的プリントヘッドが関与するプロセス)を含めた他の方法を用いて可能であるものに比べて増大した製造処理能力を促進する。積層造形プロセスは同様に、機械作業コスト、材料コストおよび人件費も削減し、一方で、ヒューマンエラーの尤度も削減する。
【0006】
積層造形プロセスを用いてCMPパッドを形成することには、典型的に、樹脂の紫外線硬化および熱硬化を含む2重(2段階)硬化プロセスが関与しており、ここで樹脂は典型的に、紫外線硬化性(メタ)クリレートブロック化ポリウレタン(ABPU)、反応性希釈剤、光重合開始剤、そして少なくとも1つの鎖延長剤の混合物で形成されている。反応性希釈剤は、ABPUの粘度を低下させるのを助けるアクリレートまたはメタクリレートであり、紫外線照射下でABPUと共重合することになる。鎖延長剤はジオール、ジアミン、トリオール、トリアミン、またはそのいずれかの組合せであり得る。第1段階において、樹脂は、紫外線硬化、すなわち、ポリマの架橋網を生成する光化学反応を開始させるために紫外線を使用する低温、高速プロセスに付され、結果としてより硬くなった、つまり硬化した樹脂がもたらされる。紫外線硬化は、ブロック化ポリウレタンオリゴマを足場として有する中間整形製品を形成する。第2段階では、鎖延長剤を担持するABPU樹脂は熱硬化に付され、ポリウレタン/ポリ尿素オリゴマと鎖延長剤の間の自然反応により、高分子量のポリウレタン/ポリ尿素が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第16/868,965号
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、本開示に係る、化学機械研磨パッドを形成するための紫外線硬化性樹脂を例示する。
【
図1B】
図1Bは、本開示に係る、紫外線硬化性樹脂を使用して化学機械研磨パッドを形成するための方法を例示する。
【
図2】
図2は、本開示に係る、例示的紫外線硬化性樹脂の引張特性を示すプロットを例示する。
【
図3A】
図3Aは、本開示に係る、温度に対する貯蔵弾性率の一関数としての例示的紫外線硬化性樹脂の安定性を示すプロットを例示する。
【
図3B】
図3Bは、本開示に係る、温度に対するガラス遷移温度の関数としての例示的紫外線硬化性樹脂の安定性を示すプロットを例示する。
【
図4A】
図4Aは、本開示に係る紫外線硬化性樹脂製でかつ誘電性スラリを用いて積層造形プロセスによって形成された化学機械研磨パッドと成形プロセスによって形成された化学機械研磨パッドの除去レートの関係を示す比較グラフを例示する。
【
図4B】
図4Bは、本開示に係る紫外線硬化性樹脂製でかつ誘電性スラリを用いて積層造形プロセスによって形成された化学機械研磨パッドと成形プロセスによって形成された化学機械研磨パッドの平坦化効率の関係を示す比較グラフを例示する。
【
図4C】
図4Cは、本開示に係る紫外線硬化性樹脂製でかつ誘電性スラリを用いて積層造形プロセスによって形成された化学機械研磨パッドと成形プロセスによって形成された化学機械研磨パッドの平坦化効率の関係を示す比較グラフを例示する。
【
図5】
図5は、本開示に係る紫外線硬化性樹脂製でかつ鋼スラリを用いて積層造形プロセスによって形成された化学機械研磨パッドと成形プロセスによって形成された化学機械研磨パッドの除去レートを示す比較グラフを例示する。
【
図6A】
図6Aは、本開示に係る紫外線硬化性樹脂製でかつ酸化セリウムスラリを用いてに積層造形プロセスよって形成された化学機械研磨パッドと成形プロセスによって形成された化学機械研磨パッドの除去レートの関係を示す比較グラフを例示する
【
図6B】
図6Bは、本開示に係る紫外線硬化性樹脂製でかつ酸化セリウムスラリを用いて積層造形プロセスによって形成された化学機械研磨パッドと成形プロセスによって形成された化学機械研磨パッドの平坦化効率の関係を示す比較グラフを例示する。
【
図6C】
図6Cは、本開示に係る紫外線硬化性樹脂製でかつセリアスラリを用いて積層造形プロセスによって形成された化学機械研磨パッドと成形プロセスによって形成された化学機械研磨パッドの平坦化効率の関係を示す比較グラフを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、本開示の実施形態の例示的実装が以下で例示されているものの、本開示は、現在知られているか否かに係わらず、任意の数の技術を用いて実装可能であることを理解すべきである。本開示は、いかなる形であれ、以下に示されている例示的実装、図面および技術に限定されるべきではない。さらに、図面は、必ずしも原寸に比例して描かれていない。
【0010】
集積回路は、典型的に、シリコンウェーハ上に導電性、半導電性および/または絶縁性を逐次的に被着させることによって、基板上に形成される。さまざまな製造プロセスが、基板上のこれらの層の少なくとも1つの平坦化を必要とする。例えば、いくつかの利用分野(例えば、パターン層のトレンチ内にビア、プラグおよびラインを形成するための金属層の研磨)については、パターン層の上面が露呈されるまで、上側層が平坦化される。他の利用分野(フォトリソグラフィ用の誘電性層の平坦化)においては、下側層上に所望の厚みが残るまで、上側層が研磨される。化学機械研磨としても公知である化学機械平坦化(共に「CMP」と呼ばれる)は、一般に認められた平坦化の一方法である。この平坦化方法は典型的に、基板がキャリアヘッド上に組付けられていることを必要とする。基板の露出した表面は典型的に、回転するプラテン上で研磨パッドに接して設置される。キャリアヘッドは、基板上に制御可能な負荷(例えば下向きの力)を提供して、この基板を回転する研磨パッドに対して押付ける。研磨性粒子を伴うスラリなどの研磨用液体を、研磨中に研磨パッドの表面上に配置することもできる。
【0011】
CMPプロセスの1つの目的は、高い研磨均一性を達成することにある。基板上の異なる部域が異なるレートで研磨される場合には、基板のいくつかの部域で過度に多くの材料が除去されてしまう(「過剰研磨」)かまたは過度に少ない材料が除去されてしまう(「研磨不足」)可能性がある。標準パッドおよび固定研磨性パッドを含めた従来の研磨パッドが、これらの問題に悩まされ得る。標準パッドは、粗化された表面を伴うポリウレタン研磨層を有することができ、かつ圧縮性のバッキング層も含み得る。固定研磨性パッドは、封じ込め媒質中に保持された研磨性粒子を有し、典型的に、非圧縮性のバッキング層上に支持されている。
【0012】
これらの従来の研磨パッドは、典型的にポリウレタン材料を成形、注型または焼結することによって調製される。成形研磨パッドは、一度に一個、(例えば射出成形によって)調製されなければならない。研磨パッドを注型するためには、液体前駆体を注型し、「ケーキ」の形に硬化させ、このケークをその後、個別のパッド区分へとスライスする。これらのパッド区分はその後、最終厚みまで機械加工されなければならない。従来の押出し加工ベースのプロセスを用いて調製された研磨パッドは、概して、CMPのために所望される特性が欠如している(例えば有効なCMPのためには脆性が高すぎる)。
【0013】
CMPパッドは同様に、パッド材料の複数の薄層が漸進的に形成される、米国特許第16/868,965号に記載のバットベースの積層造形プロセスを用いても形成可能である。複数の層の各層は、固化されたパッド材料の薄層を形成するため、前駆体材料の紫外線により開始される反応を介して形成され得る。したがって、結果として得られるパッドは、各々の薄層を形成するために適切なパターンの光(例えば紫外線照射)を投射することによって、精確に制御された構造で形成される。
【0014】
積層造形プロセスは、さまざまなメリットおよび利点を提供する。例えば、積層造形プロセスの1つの利点は、押出し加工ベースのCMPプロセス(これは、接着剤を介してサブパッドに接着させられたトップシートを必要とする)によって形成される多層の本体とは対照的に、連続的な単層の本体を含むCMPパッドを生成する能力にある。さらに、積層造形プロセスは、他の従来のプロセスを用いて可能であるものに比べてより密に制御された物理的および化学的特性を伴って研磨パッドを形成することを可能にする。例えば、該プロセスは、表面上に投射された紫外線画像に応じて特有の溝およびチャネル構造を伴ってCMPパッドを調製することを可能にする。層上のパターンは、投射された紫外線画像パターンを制御するコンピュータ支援設計(CAD)プログラムによって適用され得る。該プロセスは同様に、押出し加工ベースの印刷プロセス(例えば、プリントヘッドが移動させられるにつれて表面上に前駆体材料を駆出するノズルを伴う機械的プリントヘッドが関与するプロセス)を含めた他の方法を用いて可能であるものに比べて増大した製造処理能力を促進する。積層造形プロセスは同様に、機械作業コスト、材料コストおよび人件費も削減し、一方で、ヒューマンエラーの尤度も削減する。
【0015】
積層造形プロセスを用いてCMPパッドを形成することには、典型的に、樹脂の紫外線硬化および熱硬化を含む2重(2段階)硬化プロセスが関与しており、ここで樹脂は典型的に、紫外線硬化性(メタ)クリレートブロック化ポリウレタン(ABPU)、反応性希釈剤、光重合開始剤、そして少なくとも1つの鎖延長剤の混合物で形成されている。反応性希釈剤は、ABPUの粘度を低下させるのを助けるアクリレートまたはメタクリレートであり、紫外線照射下でABPUと共重合することになる。鎖延長剤はジオール、ジアミン、トリオール、トリアミン、またはそのいずれかの組合せであり得る。第1段階において、樹脂は、紫外線硬化、すなわち、ポリマの架橋網を生成する光化学反応を開始させるために紫外線を使用する低温、高速プロセスに付され、結果としてより硬くなった、つまり硬化した樹脂がもたらされる。紫外線硬化は、ブロック化ポリウレタンオリゴマを足場として有する中間整形製品を形成する。第2段階では、鎖延長剤を担持するABPU樹脂は熱硬化に付され、ポリウレタン/ポリ尿素オリゴマと鎖延長剤の間の自然反応により、高分子量のポリウレタン/ポリ尿素が形成される。
【0016】
本開示は、紫外線硬化性樹脂製でかつバットベースの積層造形プロセスによって形成された改良型CMPパッドを形成することにより、既存のCMPプロセスを改善しようとするものである。詳細には、本開示は、(アミン)鎖延長剤を削除し、樹脂のために使用されるキャップポリマの比率を修正し、バットベースの積層造形プロセス中の第2の熱硬化ステップを除外する、紫外線硬化性樹脂製のCMPパッドに向けられている。その結果、改善された化学機械特性を有し、製造コストおよび資源を削減しながら高い除去レートおよび平坦化効率の増大などの利点を提供するCMPパッドである。
【0017】
CMPパッドを形成するための紫外線硬化性樹脂
図1Aは、CMPパッドを作製するための例示的紫外線硬化性樹脂調合を例示している。紫外線硬化性樹脂は、1つ以上のアクリレートブロック化イソシアネート(例えばアクリレートウレタンオリゴマ)、1つ以上のアクリレートモノマ、光重合開始剤(例えば光重合開始剤)、および1つ以上の添加剤を含む混合物で構成されている。これらの要素の各々について、順次説明する。
【0018】
図1Aに示されているように、アクリレートブロック化イソシアネート(アクリレートウレタンオリゴマ)は、ポリイソシアネートまたはイソシアネート末端ウレタンプレポリマの中から選択可能である。遊離イソシアネートは、ヒドロキシルまたはアミン末端アクリレートと反応させられて、アクリレートウレタンオリゴマを形成する。具体的には、アクリレートブロック化イソシアネートは、イソシアネート末端ウレタンプレポリマ、例えば芳香族プレポリマ(例えば、両方共Coim USA,Incから市販されているPET95A、PET75D、Anderson Development Company,Adrian,MIから市販されている80DPLF)、および脂肪族プレポリマ(例えば、同じくCoim USA,Inc,West Deptford、NJから市販されているAPC722、APC504、51-95A)と共に、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート(TBEMA)および3-(アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(AHPMA)などのアクリレートブロック化剤を含む。一実施形態において、本開示の他の説明されている態様と併せて、紫外線硬化性樹脂中で使用されるアクリレートブロック化イソシアネート構成成分の特定のキャップポリマの比率が、結果として得られるCMPパッドの除去レートおよび平坦化効率を改善する、ということを指摘しておくべきである。例えば、一実施形態において、紫外線硬化性樹脂のアクリレートブロック化イソシアネート内のTBEMAとHEAの好ましい比率は75:25である。
【0019】
次に、紫外線硬化性樹脂の粘度を低下させるために、アクリレートモノマが反応性希釈剤として役立つ。本明細書中で使用されるアクリレートなる用語は、メタクリレートおよびアクリレートを意味し得る。アクリレートモノマは、一官能性、二官能性、三官能性または多官能性モノマであり得る。例えば、アクリレートモノマには、イソボルニルメタクリレート(IBMA)、2-カルボキシエチルアクリレート(CEA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(NGDMA)、3-(アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(AHPM)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)が含まれ得る。
【0020】
次に、光(例えば紫外線照射)に曝露された領域内で重合反応を開始させるために、光重合開始剤が使用される。光重合開始剤は、選択されたUVLED波長に応じて、365nmまたは405nmに設定され得る。例えば、光重合開始剤としてジフェニルホスフィンオキシド(TPO)を使用することができ、これは、365nmのUVLED光で照射され得る。
【0021】
最後に、紫外線硬化性樹脂に対して添加剤を添加してもよく、これには、安定剤、可塑剤、ポロゲン充填剤および/または顔料、例えばカーボンブラックなどが含まれ得る。ポロゲンは、加熱されたときに体積膨張する粒子(例えばマイクロスフェア)である。ポロゲンは、パッドの性能を改善し得る研磨パッド内細孔の形成をひき起こすことができる。一実施形態において、ポリママトリクス内に多孔質構造を創出するために、ポロゲン充填剤としてExpancelマイクロスフェア、例えば031DU40、461DU20および920DU40(Nouryon社より市販)を使用することができる。紫外線硬化性樹脂中で使用可能な別の添加剤は、形成されたCMPパッドに加色するための物質であるカーボンブラックである。
【0022】
とりわけ、
図1Aに示されているように、本開示の紫外線硬化性樹脂混合物は、CMPパッドを製造するために使用される従来の樹脂中で必要とされ得るアミノ鎖延長剤を含まない。本発明において熱硬化ステップを不要とすることにより、アミノ鎖延長剤に対する必要性が無くなる。詳細には、鎖延長剤が熱硬化プロセスにおいて有用である(すなわち、熱硬化プロセスは、アミノ鎖延長剤と反応するためにアクリレートウレタンオリゴマから脱ブロック化されている遊離イソシアネートのために熱エネルギを提供している)ことから、該方法は、熱硬化ステップを削除し、こうして鎖延長剤の必要性を無くする。
【0023】
CMPパッドを形成する方法
図1Bは、
図1Aで説明された紫外線硬化性樹脂を用いてCMPパッドを調製するための例示的プロセス100を示す。この例では、パッド材料の複数の薄層が、バットベースの積層造形プロセスを用いて漸進的に形成される。複数の層の各層は、固化されたパッド材料の薄層を形成するために紫外線によって開始される前駆体材料の反応を介して形成され得る。したがって、結果として得られるパッドは、各薄層を形成するために光(例えば紫外線照射)の適切なパターンを投射することによって、精確に制御された構造を伴って形成される。プロセス100を使用すると、CMP研磨パッドは、従来のプロセスを用いて可能であるものよりもさらに綿密に制御された物理的および化学的特性を伴って形成され得る。例えば、プロセス100を用いて、特有の溝およびチャネル構造を伴って、CMPパッドを調製することができる。プロセス100は同様に、押出し加工ベースの印刷プロセス(例えば、プリントヘッドの移動につれて表面上に前駆体材料を駆出するノズルを伴う機械的プリントヘッドが関与するプロセス)を含めた従来の方法を用いて可能であるもの以上の製造処理能力の増加を促進する。
【0024】
図1Bに示されているように、ステップ102において、
図1Aと併せて説明された1つ以上の前駆体を含む紫外線硬化性樹脂、光重合開始剤および/または添加剤(例えばポロゲン充填剤を含めた)が、積層造形装置のバットまたはタンクに加えられる。前駆体は概して液体であり、本開示によると、アクリレートブロック化イソシアネート(アクリレートウレタンオリゴマ)およびアクリレートモノマを含み得る。
図1Aと併せて以上で説明したように、アクリレートブロック化イソシアネートは、ポリイソシアネートまたはイソシアネート末端ウレタンプレポリマの中から選択されてよい。遊離イソシアネートは、ヒドロキシルまたはアミン末端アクリレートと反応させられて、アクリレートウレタンオリゴマを形成する。具体的には、上述のように、アクリレートブロック化イソシアネートは、例えば芳香族プレポリマ、および脂肪族プレポリマなどのイソシアネート末端ウレタンプレポリマと共に、HEA、HEMA、TBEMA、AHPMAなどのアクリレートブロック化剤を含む。一実施形態において、上述のように、いくつかのキャップポリマの比率は、紫外線硬化性樹脂で形成されたCMPパッドの平坦化効率および除去レートを改善するように設定され得、熱硬化ステップの除外をさらに促進し得る。例えば、一実施形態において、紫外線硬化性樹脂のアクリレートブロック化イソシアネート内のTBEMA対HEAの好ましい比率は75:25であり得る。
【0025】
次に、アクリレートモノマは、一官能性、二官能性、三官能性または多官能性モノマであり得る。例えば、アクリレートモノマには、IBMA、CEA、HEA、EGDMA、NGDMA、AHPMA、TMPTAなどが含まれ得る。
【0026】
紫外線硬化性樹脂はさらに、光(例えば紫外線照射)に曝露された領域内でこの重合反応を開始させるための光重合開始剤を含み得る。光重合開始剤は、選択された紫外線LED波長に応じて、365nmまたは405nmに設定され得る。前駆体混合物は同様に、イソシアネート化合物などの架橋剤をも含み得る。
【0027】
研磨パッドの特性を調整するために、紫外線硬化性樹脂を1つ以上の添加剤と組合わせることができる。好適な添加剤としては、非限定的に、研磨パッド用として所望の機械的特性を有するウレタンモノマ、ウレタンオリゴマ、アミンポリウレタンが含まれる。別の添加剤としては、形成されたCMPパッドに加色するためのカーボンブラックが含まれ得る。上述のように、いくつかの実施形態において、研磨パッド内で細孔を形成するために、バットまたはタンク内に1つ以上のポロゲンが含まれていてよい。ポロゲンは、典型的に、1%~30%の重量百分率で添加される。しかしながら、ポロゲンは、所与の利用分野に適切であるより低いまたはより高い濃度で添加されてよい。
【0028】
本開示の紫外線硬化性樹脂混合物は、CMPのために使用される樹脂中に典型的に求められるアミノ鎖延長剤に対する必要性を無くする。アミノ鎖延長剤の除外は、それ自体、以下のステップ118で説明される通り、熱硬化の必要性を除去する。
【0029】
例示的方法100のステップ104において、積層造形装置のビルドプラットフォームが、前駆体の充填されたバットの底部に近づくかまたは接するまで、前駆体材料の薄いフィルム内へと低下させられる。ステップ106において、ビルドプラットフォームは、パッドの第1の層についての所望の高さまで上向きに移動させられる。この高さは、約5、10、15、20、25、50または100マイクロメートル(または該当する場合はそれ以上)の規模であってよい。全体として、複数の層の各層の厚みは、研磨パッドまたはパッドの研磨層の総厚みの50%未満であってよい。複数の層の各層の厚みは、研磨パッドまたはパッドの研磨層の総厚みの1%未満であり得る。
【0030】
ステップ106と同時に行なわれ得るステップ108において、パッドの第1の層の構造を「書込む」ために、光源が使用される。例えば、紫外線は、紫外線に対し実質的に透明である(すなわち、紫外線強度が前駆体の光重合開始反応を開始させることができるように、紫外線に対して充分透明である)バットの底部にあるウィンドウを通過し得る。プロセス100が連続液体界面製造を用いる例示的事例においては、紫外線が「デッドゾーン」(すなわち、溶解酸素レベルが遊離ラジカル反応を阻害する、ウィンドウとビルドプラットフォームの間の未硬化前駆体の薄い液体フィルム)を通過し、(例えば前述の通りの適切にパターン化された構造を伴う)層のための所望される構造を達成するために、予め決定されたパターン(すなわち「書込み」パターン)で投射される。概して、適切な反応条件下で紫外線に曝露される(すなわち「書込み」パターンに基づいた)前駆体の領域は、ラジカル重合される。紫外線に対する曝露の後に、光ラジカル重合が発生する。光ラジカル重合は、ビルドプラットフォームが上昇されるにつれて連続的に進行し得る。例えば、光ラジカル重合は、紫外線に対する曝露の後に発生し得る。プロセス100を用いると、埋込み溝および/またはチャネルを伴って、CMPパッドを生産することができる。溝およびチャネルのパターンは、ステップ108中に、前駆体の各層上に投射される紫外線のパターンによって制御され得る。これらのパターンは、投射される紫外線のパターンを設計するために使用されるCADプログラムによって制御可能である。
【0031】
ステップ110において、所望のパッド厚みが達成されたか否か(例えば前駆体の所望される層数が光ラジカル重合されたこと)の決定が、(例えば装置のコントローラまたはプロセッサによって)行なわれる。所望の厚みに達していない場合、プロセスはステップ106に戻り、ビルドプラットフォームは、第1の層の高さと同じかまたはそれとは異なるものであってよい第2の層の所望の高さまで、再び上向きに移動させられる。ビルドプラットフォームが上向きに移動させられるにつれて、未硬化の前駆体が硬化済み層の下に流れる。いくつかの実施形態において、プロセスは、(例えば製造されている研磨パッドの直径および前駆体の粘度によって決定される)適切な体積の前駆体を流すことができるようにするために休止する。その後、第1の層と同じかまたは異なる構造(例えば溝および/またはチャネルの構造)を含み得る研磨パッドの第2の層に書込みこれを硬化させるべく、ステップ108および110が反復される。ステップ106~110は、研磨パッドまたはパッドの一部分(例えばバッキング部分または研磨部分)の所望の厚みが達成されるまで反復される。
【0032】
所望の厚みがひとたび達成されると、プロセス100は、ステップ112に進む。ステップ112では、研磨パッド全体が完成しているか否かについての決定が、(例えば、人または積層造形装置のプロセッサによって)行なわれる。例えば、先行するステップにおいては、パッドのバッキング部分のみが調製されている可能性がある。このような場合、パッドの最終的部分は完成していないこと(すなわちなおも研磨部分を調製する必要があるため)が決定される。パッドの最終部分が完成している場合、プロセス100は、ステップ118(以下で説明)まで進む。しかしながら、パッドの最終部分が完成していない場合、プロセス100はステップ114に進む。
【0033】
ステップ114では、パッドの次の部分(例えば研磨部分)を同じバット内で調製すべきか異なるバット内で調製すべきかの決定が行なわれる。例えば、研磨部分を、ステップ102において導入された前駆体、ポロゲン、および/または添加剤の同じ混合物を用いて調製すべき場合には、研磨部分は、同じバット内で調製されなければならない。パッドの次の部分を同じバット内で調製すべき場合、プロセス100は、パッドの次の部分(例えば研磨部分)が調製されるようにステップ102に戻ることができる。しかしながら、パッドの次の部分を同じバット内で調製する必要が無い場合には、プロセス100はステップ116に進むことができ、ここでパッドは第2のタンクまたはバットまで移動させられる。例えば、パッド(またはプロセス100のこの段階で調製される部分)は、第1の積層造形装置のバットから取り出され、第2の積層造形装置のバットまで移動させられる。第2の積層造形装置のバットは、パッドの次の部分(例えば研磨部分)の所望の特性を達成するため、前駆体、ポロゲン、および/または添加剤の適切な組合せが充填されていてよい。その後、プロセス100は、ステップ104から反復して、パッドの次の部分(例えば研磨部分)を調製し得る。
【0034】
ひとたび所望のパッド厚みが達成され(ステップ110)、最終パッド部分が完成した(ステップ112)ならば、プロセスはステップ118へと進む。ステップ118では、パッドはビルドプラットフォームから除去される。重要なことに、パッドは、いかなる追加の熱硬化も無くビルドプラットフォームから除去される。上述の通り、これにより、アミノ鎖延長剤の必要性は無くなる。
【0035】
ステップ120において、パッドは、残留する前駆体、プロゲン、および/または添加剤を除去するために洗い流しすることができる。いくつかの実施形態において、パッドは、パッドに対する損傷を防止するため、薄い溶剤または水でのみ洗い流しされる。いくつかの実施形態において、パッドは、ステップ114において洗い流しされない。いくつかの実施形態において、CMPパッドの諸部分を第2の材料で埋め戻しすることができる。ステップ122において、CMPパッドは、化学機械的平坦化のために使用される。
【0036】
概して、本明細書中に記載の研磨パッドの幅は、それらの調製のために使用されるタンクまたはバットのサイズに制限されない。製造中、前駆体は、調製されつつあるパッドの下の領域内で連続的に補充されなければならない。研磨パッドは典型的に、直径20~30インチであり、時として厚みは約16分の1インチにすぎず、大きな直径の研磨パッドについてはデッドゾーンを補充するのにより長い時間が必要とされる。本明細書中に記載のプロセスの一実施形態は、ひだ付きの、つまり折畳まれた形で研磨パッドの生産を促進することによってこの問題に対する解決法を提供する。この実施形態において、パッドは、ひだ付き濾紙(すなわち、アコーデオンのように折畳まれた円形の紙片)に似るように構築される。したがって、研磨パッドは、折畳まれた側面を伴う円錐形状で製造され得、こうして、構築されたパッドが、(例えば完全に硬化される前に)取扱うのに充分な程度に柔軟であり続ける一方で、円錐形構造を展開して研磨パッドの所望される円形のまたはディスク様の形状を達成することが可能になっている。
【実施例】
【0037】
以上の
図1Aおよび1B中で説明されている通り、積層造形プロセスを用いて紫外線硬化性樹脂から一連の例示的CMPパッドを調製した。例示的パッドの特性を、張力および安定性について試験した。
【0038】
ここで、
図1Aと併せて説明した構成成分を用いて形成された例示的紫外線硬化性樹脂の引張特性を示すプロットを例示する
図2を参照する。詳細には、
図2の試料を、プラスチックおよび他の材料についての引張特性データを生成するように設計された標準的な試験方法である米国材料試験協会(ASTM)D638に基づいて試験した。試験用としては、タイプVの引張棒を使用した。プロット中に示されているように、本開示の樹脂調合は、非常に剛性から非常に軟質に至るまでの広い特性範囲を有する材料の形成を可能にし得る。
【0039】
ここで、
図1Aに記載された構成成分を用いて形成された例示的紫外線硬化性樹脂の安定性を(それぞれ貯蔵弾性率およびガラス遷移温度に基づいて)示すプロットを例示する
図3Aおよび3Bを参照する。具体的には、
図3Aおよび3Bの紫外線硬化性樹脂の試料を、2つの反応性希釈剤(すなわち2つの二官能性オリゴマ)およびさまざまな比率の2つのプレポリマ、つまりHEAキャップPET95Aプレポリマ(
図3A~3B中および以下で「H-95A」と呼ばれている永久アクリレート)およびTBEMAキャップPET95Aプレポリマ(
図3A~3B中および以下で「T-95A」と呼ばれている易熱性キャップイソシアネートプレポリマ)から形成した。次の5つの比率をサンプリングした:1)100%のH-95A(100:0のH-95A:T-95A);2)25%のH-95Aと75%のT-95A(25:75のH-95A:T-95A);3)50%のH-95Aと50%のT-95A(50:50のH-95A:T-95A);4)75%のH-95Aと25%のT-95A(75:25のH-95A:T-95A);および5)100%のT-95A(0:100のH-95A:T-95A)。
図3A~3Bのグラフ中に示されているように、2つのプレポリマ(H-95AとT-95A)の比率を調整することによって、貯蔵弾性率およびガラス遷移温度(損失係数tanδピーク)を調整することができる。具体的には、(典型的研磨温度である)50℃での貯蔵弾性率は両方共、ポリママトリクス内のT-95Aプレポリマの比率が増加するにつれて増加する。同様にして、ガラス遷移温度も、T-95Aプレポリマの比率が増加するにつれて増加する。これはさらに、
図3Bのプロットおよび対応する表1(下表)中に示されている。一実施形態において、好ましいH-95A:T-95A比は、25:75である(すなわち75%のT-95Aと25%のH-95A)である。
【0040】
【0041】
ひき続き
図3A~3Bを参照すると、これらの結果を得るために紫外線硬化プロセスを修正することはなかった。その上、各調合物の物理的特性(例えば粘度、反応速度論など)を整合させるために調整作業を必要とする従来の成形プロセスとは異なり、積層造形プロセスを通して加工された試料の紫外線硬化性樹脂は、短い時間枠で特定の必要条件を満たすためのパッド特性を容易にカスタマイズできるという利点を提供する。さらに、樹脂調合物は、紫外線に対する曝露無く紫外線保護コンテナ内に貯蔵された場合に室温で安定した状態にとどまる、ということが示されている。
【0042】
ここで
図4A~6Cを参照すると、上述の
図1Aおよび1B中に記載の通り、積層造形プロセスを用いて紫外線硬化性樹脂から一連の例示的CMPパッドを調製した。シャロ―トレンチアイソレーション(STI)および層間絶縁膜(ILD)CMPプロセスの両方のためのバルク酸化物研磨ステップにおいて、高い除去レートおよび平坦化効率が、CMPの成功を測る上での最も重要な因子のうちの2つであるとみなされていることが理解される。
図4A~6Cの例示的パッドのために用いられる紫外線硬化性樹脂の特定の調合物は、49部分のTBEMAキャップPET95Aプレポリマ(易熱性キャップイソシアネートプレポリマ)、16部分のHEAキャップPET95Aプレポリマ(永久アクリレート)、33部分のIBMA、2部分のEGDMAおよび0.3部分の光重合開始剤としてのTPOからなる。ポリママトリクス内で細孔を生成するために、紫外線硬化時点で、この調合物に対し、3.5%の031DU40ポロゲン充填剤を添加した。樹脂は次に、熱処理プロセスを通して、紫外線硬化されたポリママトリクス中のポロゲン充填剤を発泡させた。上述のように、TBEMAキャッププレポリマ対HEAキャッププレポリマの75:25の比率が、とりわけ、
図4A~6Cに示された結果の達成にとって極めて重要な意味を持つことが示されている。例えば、50:50というTBEMAキャッププレポリマ対HEAキャッププレポリマの比率を用いて、同じプロセスにより作られたパッドは、匹敵する除去レートを示したが、同一の条件下で75:25の比率について
図4Bおよび4Cで例証された通りの平坦化効率の改善を示さなかった(データ示さず)。
【0043】
例示的パッドを、従来の成形プロセスおよび/または他の樹脂を用いて形成された市販のパッドと比較して試験し、各々の除去レートおよび/または平坦化効率を測定した。結果は以下に記されている。
【0044】
図4A~4Cは、CMC Materials Incから入手可能な市販のCMPパッドE6088(このパッドは、
図4A~4C中で「E6088」と呼ばれ、以下「従来のパッド」と呼ぶ)と比較した、本開示に係る紫外線硬化性樹脂で作られ積層造形プロセスによって形成されたCMPパッド(このパッドは、
図4A~4C中で「C95004」と呼ばれ、以下「例示的パッド」と呼ぶ)の除去レートおよび平坦化効率を示す、比較グラフを例示している。テスト酸化ケイ素ブランケットを研磨し、シリカベースの誘電性スラリ(Cabot Microelectronics Corporationから市販されているD9228)を用いてウェーハをパターニングするために、両方のパッドを使用した。
図4Aは、例示的パッドおよび従来のパッドを用いた、毎分オングストローム単位の除去レート結果を示す。
図4Bは、900μmの特徴部を伴うテストウェーハを研磨するための平坦化効率を示し、
図4Cは、100μmの特徴部を伴うテストウェーハを研磨する例示的パッドおよび従来のパッドについての同じ平坦化効率を示す。
【0045】
図4Aに示されているように、例示的パッドは、3psiのダウンフォース下で誘電性スラリを用いて従来のパッドに比べて10%超の除去レートの増加を提示した。STI10kパターンのウェーハ性能も同様に、ステップ高減少とトレンチ損失の関係(平坦化効率)を決定する目的で評価し、
図4Bおよび
図4Cに示されているように、例示的パッドは、従来のパッドに比べて高い平坦化効率を生み出した。その上、特徴部サイズは、例示的パッドの平坦化効率に有意な影響を及ぼさなかった。これらの結果は、紫外線硬化性樹脂で作られた例示的パッドが、従来の技術に由来するパッドに比べ、バルク酸化物の研磨の利用分野において匹敵するかまたは改善された研磨性能を提示し得る、ということを示している。
【0046】
図5は、銅テストウェーハを研磨した際の、上述の例示的および従来のパッドの除去レートを示す比較グラフを例示している。銅スラリ(Cabot Microelectronics Corporationより市販されているC8902)を用いてテストウェーハを研磨するために、両方のパッドを使用した。
図5に示されているように、例示的パッドは、1.5psiおよび2.5psiの両方のダウンフォースで、同一の条件下で従来のパッドと実質的に類似の性能を示した。
【0047】
図6A~6Cは、上述の例示的および従来のパッドの除去レートおよび平坦化効率を示す比較グラフを例示している。セリア系のバルク酸化ケイ素研磨スラリ(Cabot Microelectronics Corporationより市販されているD7400)を用いてテスト酸化ケイ素ウェーハを研磨するために、両方のパッドを使用した。パッドの性能に対するコンディショニングの効果も同様に評価した。
【0048】
図6Aに示されているように、高酸化物レート研磨においてさえ、例示的パッドの性能は、3.0psiのダウンフォース下で従来のパッドと実質的に類似したものであった。ここで同様に、例示的パッドがコンディショナレシピによる有意な影響を受けず、100%のインサイチュコンディショニングが75%のインサイチュコンディショニングまで降下した場合でも除去の変化を全く示さず、一方、従来のパッドは、インサイチュコンディショニングが75%まで削減された場合に除去レートのわずかな減少を示す、ということも指摘される。コンディショナの減衰は、除去レートの安定性およびパッドの寿命の観点から見たCMPパッドの研磨性能に影響を及ぼすことが示されてきた(例えば、いくつかのタングステン(W)スラリにおいて、コンディショナの減衰が安定したタングステン除去レートの維持能力に影響を及ぼすことが示されてきた)ものの、例示的パッドは、コンディショナが減衰した場合でさえ除去レートを維持することが予期されている。
【0049】
以上で論述した通り、高酸化物バルク研磨について、平坦化効率は、ステップ高の減少を達成するために極めて重要な意味を持つ。例示的パッドパターン性能を評価するために、同様にSTI10kパターンを使用した。
図6Bおよび
図6Cに示されているように、例示的パッドは、小さい特徴部45μm(
図6B)または大きい特徴部900μm(
図6C)の両方において、従来のパッドと比較した場合にそれに匹敵する平坦化効率性能を示し、このことは、本開示の紫外線硬化性樹脂で作られた例示的パッドから得られる研磨性能が特徴部のサイズによって有意に左右されないことを表わしている。これは、CMPパッドをさまざまなウェーハ設計に広く適合させることができるという点において、大きな利点である。
【0050】
比較例として、2重硬化樹脂混合物を使用し、先に説明したアミン鎖延長剤を含む熱硬化という追加のプロセスステップを追加した同一のバットベースの積層造形処置により、パッドを作製した。3つの異なる2重硬化樹脂混合物を用いて、比較パッドを作製した。比較A、比較Bおよび比較Cパッドを作製するために使用した2重硬化樹脂は、それぞれFPU50、RPU60、およびRPU70(Carbon Incより購入)であった。その後、
図4A~4Cについて上述した条件で、テスト酸化ケイ素ブランケットおよびパターンウェーハを研磨するために、3つの比較パッドを使用した。表2から明確に分かるように、比較パッドは、3psiのダウンフォース下でD9228スラリを用いてブランケットウェーハについてはるかに低い除去レート(RR)を有していた(従来のパッドE6088の80%未満のブランケットRR)。比較パッドが実証した低い除去レートのため、これらのパッドは、平坦化効率(PE)についてさらに低い性能を示した。例えば、ステップ高は、500オングストロームの同一のトレンチ損失値で従来のパッドE6088のものよりも2倍超高いものであった(データ示さず)。
【0051】
【0052】
要するに、本開示の紫外線硬化性樹脂およびそれから形成したCMPパッドは、さまざまなスラリ中において成形プロセスにより形成された従来のパッドに比べて改善されたまたは匹敵する研磨性能を示す。本開示の紫外線硬化性樹脂から作製された開示された例示的パッドは、上述の積層造形プロセスにより形成された場合、成形または注型プロセスにおいて必要とされる高価で時間のかかる金型を無くすことができる。本開示の紫外線硬化性樹脂から作製された例示的パッドは、広範囲の仕様を満たすように設計され得、したがって、異なる基板材料を横断した高い除去レートおよび平坦化効率というCMPの最終目的を前進させることによって積層造形プロセスの効率を改善することができる。
【0053】
本明細書中に記載のシステム、装置および方法に対して修正、追加または削除を加えることが可能である。システムおよび装置の構成要素は、一体化または分離させることができる。その上、システムおよび装置の動作は、より多くの、より少ないまたは他の構成要素によって行なってもよい。該方法は、より多くの、より少ないまたは他のステップを含むことができる。さらに、ステップを任意の好適な順序で行なうことが可能である。さらに、システムおよび装置の動作は、任意の好適な論理を用いて行なうことができる。本明細書中で使用される「各々」なる用語は、1つのセットの各構成員または1セットのサブセットの各構成員を意味する。
【0054】
本明細書において、「or(または)」なる用語は、明示的に別段の標示が無いかぎり、または文脈による別段の標示が無いかぎり、包含的であり、排他的ではない。したがって、本明細書において、「A or B(AまたはB)」は、明示的に別段の標示が無いかぎり、または文脈による別段の標示が無いかぎり、「A,B or both(A、Bまたは両方)」を意味する。さらに、「and(および)」は、明示的に別段の標示が無いかぎり、または文脈による別段の標示が無いかぎり、共同的かつ個別的の両方である。したがって、本明細書において、「A and B(AおよびB)」は、明示的に別段の標示が無いかぎり、または文脈による別段の標示が無いかぎり「A and B jointly or severally(共同的かつ個別的にAおよびB)」を意味する。
【0055】
本開示の範囲は、当業者であれば理解すると考えられる本明細書中に説明または例示された例示的実施形態に対する全ての変更、置換、変形形態、改変および修正を包含する。本開示の範囲は、本明細書中に説明または例示された例示的実施形態に限定されない。その上、本開示は、特定の構成要素、要素、特徴、機能、動作またはステップを含むものとして本明細書中のそれぞれの実施形態を説明し例示しているものの、これらの実施形態のいずれも、当業者であれば理解すると考えられる本明細書中のどこかで説明または例示されている構成要素、要素、特徴、機能、動作またはステップのうちのいずれかの任意の組合せまたは置換を含むことができる。さらに、特定の機能を果たすように適応され、配設され、その能力を有し、そのように構成され、そのように有効化され、そのように動作可能であるかまたはそのように作動的である装置またはシステムあるいは装置またはシステムの構成要素に対する添付クレーム内の言及は、その装置、システムまたは構成要素がそのように適応され、配設され、その能力を有し、そのように構成され、有効化され、動作可能であるかまたは作動的であるかぎり、それまたはその特定の機能が活動化されているか、オン切換えされているか、またはロック解除されているかに関わらず、その装置、システム、構成要素を包含する。さらに、本開示は、特定の利点を提供しているものとして特定の実施形態を説明または例示しているものの、特定の実施形態は、これらの利点のいずれも提供しない、またはそのいくつかまたはその全てを提供する可能性がある。
【0056】
本発明の説明に関連する(特に以下のクレームに関連する)「a」および「an」および「the」なる用語ならびに類似の指示対象の使用は、本明細書中に別段の標示が無いかぎり、または文脈上明らかに矛盾するのでないかぎり、単数および複数の両方を網羅するものとみなされるべきである。別段の指摘の無いかぎり、「comprising(~を含む)」、「having(~を有する)」、「including(~を含む)」および「containing(~を含む、含有する)」なる用語は、オープンエンドエンド用語とみなされる(すなわち「including,but not limited to(非限定的に~を含む)」を意味する)べきである。本明細書中の値範囲の記述は、本明細書中で別段の標示の無いかぎり、単にその範囲内に入る各々の別個の値に個別に言及する簡潔表現方法として役立つように意図されているにすぎず、各々の別個の値は、あたかも本明細書中に個別に記述されているかのように、明細書中に組込まれる。本明細書中で提供されているいずれかのおよび全ての例または例示的言語(例えば「such as ~(~などの、例えば~)」)の使用は、単に、本開示をよりうまく説明するように意図されているにすぎず、クレームの範囲を限定するものではない。
【国際調査報告】