(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(54)【発明の名称】アンチフラッター接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 127/06 20060101AFI20231107BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20231107BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20231107BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231107BHJP
C09J 109/00 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
C09J127/06
C09J163/00
C09J11/04
C09J11/06
C09J109/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526614
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 CN2020126693
(87)【国際公開番号】W WO2022094840
(87)【国際公開日】2022-05-12
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジンフェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チィ
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040CA031
4J040DC021
4J040EC001
4J040HA306
4J040HB41
4J040KA16
4J040KA28
4J040KA31
4J040KA37
4J040KA42
4J040LA01
4J040MA02
4J040MB05
4J040NA16
(57)【要約】
本発明は、a)少なくとも1つのエチレン性不飽和ポリマー;b)67~75のK値を有する少なくとも1つのPVCホモポリマー;c)60~75のK値を有する少なくとも1つのPVCコポリマー;d)少なくとも1つのエポキシ樹脂;e)少なくとも1つのエポキシ硬化剤;f)125~180℃の分解温度を有する少なくとも1つの第1有機過酸化物;及びg)125℃未満の分解温度を有する少なくとも1つの第2有機過酸化物を含む、アンチフラッター接着剤組成物に関する。前記アンチフラッター接着剤組成物は、広い温度範囲で硬化させることができ、硬化後に優れたせん断強度及び良好な外観を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つのエチレン性不飽和ゴム;
b)67~75のK値を有する少なくとも1つのPVCホモポリマー;
c)60~75のK値を有する少なくとも1つのPVCコポリマー;
d)少なくとも1つのエポキシ樹脂;
e)少なくとも1つのエポキシ硬化剤;
f)125~180℃の分解温度を有する少なくとも1つの第1有機過酸化物;及び
g)125℃未満の分解温度を有する少なくとも1つの第2有機過酸化物;
を含むアンチフラッター接着剤組成物であって、
第1有機過酸化物の量は、組成物の総重量に基づいて0.4~0.8重量%である;及び、
第2有機過酸化物の量は、組成物の総重量に基づいて0.2~1重量%である、アンチフラッター接着剤組成物。
【請求項2】
PVCホモポリマーは、好ましくは68~71のK値を有する、請求項1に記載のアンチフラッター接着剤組成物。
【請求項3】
PVCホモポリマーの量は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは6~15重量%、より好ましくは7~10重量%、更により好ましくは8~9重量%である、請求項1又は2に記載のアンチフラッター接着剤組成物。
【請求項4】
PVCコポリマーは、好ましくは63~70のK値を有する、請求項1~3のいずれかに記載のアンチフラッター接着剤組成物。
【請求項5】
PVCコポリマーの量は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは2~5重量%、より好ましくは3~4重量%である、請求項1~4のいずれかに記載のアンチフラッター接着剤組成物。
【請求項6】
第1有機過酸化物は、好ましくは130~160℃、より好ましくは130~140℃の分解温度を有する、請求項1~5のいずれかに記載のアンチフラッター接着剤組成物。
【請求項7】
第1有機過酸化物は、好ましくはジクミルペルオキシドである、請求項1~6のいずれかに記載のアンチフラッター接着剤組成物。
【請求項8】
第1有機過酸化物の量は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.5~0.7重量%である、請求項1~7のいずれかに記載のアンチフラッター接着剤組成物。
【請求項9】
第2有機過酸化物は、好ましくは50~120℃、より好ましくは80~120℃、更により好ましくは100~115℃の分解温度を有する、請求項1~8のいずれかに記載のアンチフラッター接着剤組成物。
【請求項10】
第2有機過酸化物は、好ましくは1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンである、請求項1~9のいずれかに記載のアンチフラッター接着剤組成物。
【請求項11】
第2有機過酸化物の量は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.3~0.4重量%である、請求項1~10のいずれかに記載のアンチフラッター接着剤組成物。
【請求項12】
少なくとも1つのナノサイズ無機フィラー、及び150~250m
2/gのB.E.T表面積を有する少なくとも1つのフュームドシリカを更に含み、ここで、前記ナノサイズ無機フィラーの量は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは10~30重量%、より好ましくは15~20重量%である、及び150~250m
2/gのB.E.T表面積を有する前記フュームドシリカの量は、組成物の総重量に基づいて、1.5~3重量%、より好ましくは2~3重量%である、請求項1~11のいずれかに記載のアンチフラッター接着剤組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載のアンチフラッター接着剤組成物であって、以下:
(a)2~10重量%の、少なくとも1つのエチレン性不飽和ゴム;
(b)6~15重量%の、67~75のK値を有する少なくとも1つのPVCホモポリマー;
(c)2~5重量%の、60~75のK値を有する少なくとも1つのPVCコポリマー;
(d)1~6重量%の、少なくとも1つのエポキシ樹脂;
(e)0.01~2重量%の、少なくとも1つのエポキシ硬化剤;
(f)0.4~0.8重量%の、125~180℃の分解温度を有する少なくとも1つの第1有機過酸化物;
(g)0.2~1重量%の、125℃未満の分解温度を有する少なくとも1つの第2有機過酸化物;
(h)0~30重量%の、少なくとも1つのナノサイズ無機フィラー;
(i)0~3重量%の、150~250m
2/gのB.E.T表面積を有する少なくとも1つのフュームドシリカ;
(j)0~40重量%の、少なくとも1つの可塑剤;
(k)0~0.2重量%の、少なくとも1つの熱安定剤;
(l)0~1重量%の、少なくとも1つの発泡剤;
(m)0~10重量%の、少なくとも1つの架橋剤;
(n)0~10重量%の、ナノサイズ無機フィラーとは異なる少なくとも1つの更なる無機フィラー;及び
(o)0~1重量%の、少なくとも1つの熱膨張性ミクロスフェア;
を含み、
ここで、全成分の重量%が合計100重量%となる、アンチフラッター接着剤組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載のアンチフラッター接着剤組成物の硬化物。
【請求項15】
請求項16に記載の消音剤組成物の硬化物により接着された、又は充填された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[技術分野]
本発明は、a)少なくとも1つのエチレン性不飽和ゴム;b)67~75のK値を有する少なくとも1つのPVCホモポリマー;c)60~75のK値を有する少なくとも1つのPVCコポリマー;d)少なくとも1つのエポキシ樹脂;e)少なくとも1つのエポキシ硬化剤;f)125~180℃の分解温度を有する少なくとも1つの第1有機過酸化物;及びg)125℃未満の分解温度を有する少なくとも1つの第2有機過酸化物を含む、アンチフラッター接着剤組成物に関する。前記アンチフラッター接着剤組成物は、広い温度範囲にわたって硬化することができ、硬化後に優れたせん断強度、及び良好な外観を有する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
アンチフラッター接着剤は、主に自動車部品のインナーパネルとアウターパネルとの接着に使用され、アウターパネルとインナーパネルの相互の振動を低減する。一般に、アンチフラッター接着剤は、自動車の生産ラインに応じて170~200℃のベーキングウィンドウで加熱され、アンチフラッター接着剤を適切に硬化することができる。しかし、現行のベーキングウィンドウは、高いエネルギー投入を必要とし、省エネルギーの世界的なトレンドに合致していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、エネルギーを節約するために、150~170℃の範囲のより低い温度で硬化でき、より望ましくは、異なる自動車生産ラインに適用できるように150~200℃に及ぶ広い温度範囲にわたって硬化することができるアンチフラッター接着剤を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[発明の概要]
本発明は、以下:
a)少なくとも1つのエチレン性不飽和ゴム;
b)67~75のK値を有する少なくとも1つのPVCホモポリマー;
c)60~75のK値を有する少なくとも1つのPVCコポリマー;
d)少なくとも1つのエポキシ樹脂;
e)少なくとも1つのエポキシ硬化剤;
f)125~180℃の分解温度を有する少なくとも1つの第1有機過酸化物;及び
g)125℃未満の分解温度を有する少なくとも1つの第2有機過酸化物;
を含むアンチフラッター接着剤組成物であって、
ここで、
前記第1有機過酸化物の量は、前記組成物の総重量に基づいて0.4~0.8重量%である;及び、
前記第2有機過酸化物の量は、前記組成物の総重量に基づいて0.2~1重量%である、アンチフラッター接着剤組成物に関する。
【0005】
アンチフラッター接着剤組成物は、150~200℃の範囲の温度下で硬化することができる。
【0006】
本発明はまた、アンチフラッター接着剤組成物の硬化物にも関する。硬化したアンチフラッター接着剤組成物は、種々な基材に対する優れたせん断強度を有し、且つ良好な外観を呈する。
【0007】
本発明は、アンチフラッター接着剤組成物の硬化物により接着された、又は充填された物品にも関する。
【0008】
[発明の詳細な説明]
以下の節では、本発明をより詳細に説明する。そのように記載された各態様は、反対に明確に示されない限り、任意の他の態様又は複数の態様と組み合わされてよい。特に、好ましい又は有利であると示される任意の特徴は、好ましい又は有利であると示される任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わされてよい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の文脈において、使用される用語は、文脈が他のことを指示しない限り、以下の定義に従って解釈されるべきである。
【0010】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、単数及び複数の指示対象の両方を含む。
【0011】
本明細書で使用される「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含まれる(comprised of)」という用語は、「含んでいる(including)」、「含む(includes)」又は「含んでいる(containing)」、「含む(contains)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の非記載の部材、要素、又はプロセスステップを排除しない。
【0012】
数値の終点の列挙は、列挙される終点と同様に、それぞれの範囲内に含まれる全ての数値及び端数を含む。
【0013】
本明細書で引用されている全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0014】
別段の定義がない限り、技術用語及び科学用語を含む、本発明の開示に使用される全ての用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味を有する。更なるガイダンスによって、本発明の教示をよりよく理解するために、用語の定義が含まれている。
【0015】
本開示の文脈では、多数の用語が使用されている。
【0016】
用語「エチレン性不飽和」は、芳香族でない少なくとも不飽和の部位を示す。
【0017】
用語「ゴム」は、延伸又は変形された後に、元の形状に戻る能力を有するポリマーを示す。
【0018】
用語「K値」は、ポリマーの重合度を表す。DIN EN ISO 1628-2に準拠し決定される。
【0019】
用語「分解温度」は、50%の過酸化物が1時間以内に実質的にフリーラジカルに解離/分解し、他の反応を開始できる温度を示す。これは、熱重量分析(TGA)によって決定される。好ましくは、窒素下で5℃/分の加熱速度で実施する分析に、TA instrument Q500を使用する。
【0020】
≪エチレン性不飽和ゴム≫
本発明のアンチフラッター接着剤組成物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和ゴムを含む。適当なエチレン性不飽和ゴムは、天然ゴム、合成ゴム、及びそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態において、エチレン性不飽和ゴムは、好ましくは、GPCによって測定される30,000g/mol以上、例えば50,000g/mol、100,000g/mol、及び300,000g/mol等の数平均分子量を有する。
【0021】
適当な合成ゴムの代表例としては、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-ブタジエン-ビニルピリジンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム(IR)、イソプレン-イソブチレンゴム(IIR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーターポリマー(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、エチレン性不飽和を含むポリシロキサン、エチレン性不飽和を含むポリウレタン、及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0022】
いくつかの実施形態において、エチレン性不飽和ゴムは、好ましくは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、又はそれらの混合物である。
【0023】
市販のエチレン性不飽和ゴムの例としては、例えば、SBR 1009(Lion Elastomer社製);BR 9000(Beijing Yanshan Petrochemical Rubber Chemical社製);BR 9000(Sinopec Gaoqiao Petrochemical社製)が挙げられる。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態において、エチレン性不飽和ゴムの量は、アンチフラッター接着剤組成物の総重量に基づいて、2~10重量%、好ましくは4~8重量%である。
【0025】
≪PVCポリマー≫
本発明のアンチフラッター接着剤組成物は、67~75のK値を有する少なくとも1つのPVCホモポリマー、及び60~75のK値を有する少なくとも1つのPVCコポリマーを含む。
【0026】
PVCコポリマーは、塩化ビニルと1つ以上のエチレン性不飽和コモノマーとの共重合から生じ得る。PVCコポリマーの形成に有用なコモノマーとしては、ハロゲン化ビニリデン、例えば塩化ビニリデン又はフッ化ビニリデンなど、カルボン酸ビニル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル又は酪酸ビニルなど、ビニル芳香族誘導体、例えばスチレン又はビニルナフタレンなど、オレフィン、例えばエチレン、プロペン又は1-ブテンなどが挙げられるが、それらに限定されない。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態において、PVCホモポリマーは、好ましくは、68~71のK値を有する。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態において、PVCコポリマーは、好ましくは、63~70のK値を有する。
【0029】
驚くべきことに、適当なK値を有するPVCホモポリマー及びPVCコポリマーの両方を組成物中に組み込む場合、アンチフラッター接着剤組成物は広い範囲の温度にわたり硬化することができ、硬化物は、良好な外観、及び様々な基材、例えばアルミニウムパネル、冷間延圧鋼、及び亜鉛メッキ鋼などに対する優れたせん断強度を有することがわかった。
【0030】
市販のPVCホモポリマーの例は、例えば、VESTOLIT E 7031及びP 1353 K(VESTOLIT GmbH&Co.KG社製)である。市販のPVCコポリマーの例は、例えば、PCMA 12(Shenyang Chemical社製);及びLacovyl PA 1384(Arkema社製)である。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、PVCホモポリマーの量は、アンチフラッター接着剤組成物の総重量に基づいて、好ましくは6~15重量%、より好ましくは7~10重量%、更により好ましくは8~9重量%である。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態において、PVCコポリマーの量は、アンチフラッター接着剤組成物の総重量に基づいて、好ましくは2~5重量%、より好ましくは3~4重量%である。
【0033】
≪エポキシ樹脂≫
本発明のアンチフラッター接着剤組成物は、少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂は、1分子あたり少なくとも1つのエポキシ基を含む一般的なエポキシ樹脂であればよく、好ましくは1分子あたり複数のエポキシ基を含む。エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂、ナフタレンエポキシ樹脂、ジフェニルエーテルエポキシ樹脂、ジフェニルチオエーテルエポキシ樹脂、ハイドロキノンエポキシ樹脂、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、テトラフェニロールエタンエポキシ樹脂、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0034】
市販のエポキシ樹脂の例は、例えば、D.E.R.331(Olin社製);EPON828(Shell Chemical社製);YD-128(Kukdo Chemical社製);及びEPICLON N-665(Dainippon Ink and Chemicals社製)である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態において、エポキシ樹脂の量は、アンチフラッター接着剤組成物の総重量に基づいて、好ましくは1~6重量%、より好ましくは3~5重量%である。
【0036】
≪エポキシ硬化剤≫
本発明のアンチフラッター接着剤組成物は、少なくとも1つのエポキシ硬化剤を含む。エポキシ硬化剤は、エポキシ系のために一般的に使用される任意の硬化剤を示し、ポリアミド、アミン、イミダゾール、及びそれらの誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。例示的な硬化剤としては、ジシアンジアミド、二量化脂肪酸及びポリアミンに基づくポリアミド樹脂、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ベンジルジメチルアミン、m-キシリレンジ(ジメチルアミン)、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、及び2,4-ジエチルイミダゾールが挙げられる。
【0037】
市販のエポキシ硬化剤の例は、例えば、Versamid 140(Gabriel Performance Products社製);Ancamine TEPA(Evonik社製)、Ajicure PN-H(味の素ファイン-テクノ社製);Fujicure-FXR-1090FA(T&K Toka社製);1,2-dimethyl imidazole(四国化成株式会社製);2E4MI(Evonik社製);Gaskamine 240(三菱ガス化学社製);及び、Ecure 14(Alz Chem社製)である。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態において、エポキシ硬化剤の量は、アンチフラッター接着剤組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.01~2重量%、より好ましくは0.4~0.8重量%である。
【0039】
≪有機過酸化物≫
本発明のアンチフラッター接着剤組成物は、125~180℃の分解温度を有する少なくとも1つの第1有機過酸化物、及び125℃未満の分解温度を有する少なくとも1つの第2有機過酸化物を含む。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態において、第1有機過酸化物は、好ましくは130~160℃、より好ましくは130~140℃の分解温度を有する。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態において、第1有機過酸化物は、好ましくはジクミルペルオキシドである。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態において、第2有機過酸化物は、好ましくは50~120℃、より好ましくは80~120℃、更により好ましくは100~115℃の分解温度を有する。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態において、第2有機過酸化物は、好ましくは1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンである。
【0044】
第1有機過酸化物の例としては、ジクミルペルオキシド(DCP)、ジ(tertブチル)ペルオキシド、及び2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-ヘキシネ(DBPH)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0045】
第2有機過酸化物の例としては、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド(DCBP)、ジベンゾイルペルオキシド、及び1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0046】
市販の第1有機過酸化物の例は、例えば、DCP(Taicang Plastic Additive社製);及び、DCP-40(Jiangsu Daoming Chemical社製)である。
【0047】
市販の第2有機過酸化物の例は、例えば、Varox 231 XL(Vanderbilt Chemicals,LLC社製);及び、TMCH-40(United Initiators社製)である。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態において、第1有機過酸化物の量は、アンチフラッター接着剤組成物の総重量に基づいて、0.4~0.8重量%、好ましくは0.5~0.7重量%である。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態において、第2有機過酸化物の量は、アンチフラッター接着剤組成物の総重量に基づいて、0.2~1重量%、好ましくは0.3~0.4重量%である。
【0050】
驚くべきことに、適当な分解温度を有する2種類の有機過酸化物を組成物中に組み込む場合、アンチフラッター接着剤組成物は広い範囲の温度にわたり硬化することができ、硬化物は良好な外観、及び様々な基材、例えばアルミニウムパネル、冷間延圧鋼、亜鉛メッキ鋼などに対する優れたせん断強度を有することがわかった。
【0051】
更に、驚くべきことに、適当なK値を有するPVCホモポリマー及びPVCコポリマー、並びに適当な分解温度を有する2種類の有機過酸化物が相乗的に作用して、広い範囲の温度にわたりアンチフラッター接着剤組成物の硬化を実現できることがわかった。
【0052】
≪任意の添加剤≫
アンチフラッター接着剤組成物は、任意の添加剤を更に含んでよい。本発明のアンチフラッター接着剤組成物に適した添加剤の選択は、アンチフラッター接着剤組成物の特定の用途によって、当業者により個々の場合において決定され得る。
【0053】
<ナノサイズの無機フィラー>
本発明のアンチフラッター接着剤組成物は、任意に、少なくとも1つのナノサイズの無機フィラーを含んでよい。本発明のナノサイズ無機フィラーは、好ましくは20~80nmの70体積%粒度(D70)、より好ましくは40~60nmのD70、更により好ましくは50~55nmのD70を有する。D70値とは、粒子の70体積%が前記値未満の直径を有する累積体積分布曲線を示す。ナノサイズ無機フィラーの粒子径は、好ましくは、Partica LA-950 Laser Scattering Particle Size Distribution Analyzer(Horiba社製)を用いたレーザー回折法に従い測定される。
【0054】
市販のナノサイズ無機フィラーの例は、例えば、TA 17(Wuhu Perfection Nanometer New Material社製)である。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態において、ナノサイズ無機フィラーの量は、アンチフラッター接着剤組成物の総重量に基づいて、好ましくは0~30重量%、より好ましくは10~30重量%、更により好ましくは15~20重量%である。
【0056】
<フュームドシリカ>
本発明のアンチフラッター接着剤組成物は、150~250m2/g、好ましくは170~230m2/gのB.E.T表面積を有する少なくとも1つのフュームドシリカを任意に含んでよい。B.E.T表面積の値は、GB/T 10722に準拠し測定される。
【0057】
市販のフュームドシリカの例は、例えば、CAB-O-SIL M-5(Cabot社製)である。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態において、150~250m2/gのB.E.T表面積を有するフュームドシリカの量は、アンチフラッター接着剤組成物の総重量に基づいて、好ましくは0~3重量%、より好ましくは1.5~3重量%、更により好ましくは2~3重量%である。
【0059】
驚くべきことに、ナノサイズ無機粒子、及び適当なB.E.T表面積を有するフュームドシリカの両方を組成物中に組み込む場合、アンチフラッター接着剤組成物の垂れ防止性が大いに向上することがわかった。アンチフラッター接着剤組成物は、通常、大きな隙間を有する自動車パネルに適用されるため、上記は、アンチフラッター接着剤組成物にとって重要である。接着剤組成物が垂れ下がると、接着剤組成物の硬化物は、外観やアンチフラッター性が悪化し得る。
【0060】
<可塑剤>
本発明のアンチフラッター接着剤組成物は、任意に、少なくとも1つの可塑剤を含んでよい。本発明の可塑剤は、当技術分野で既知の任意の一般的な可塑剤を示す。可塑剤の例としては、エポキシ系可塑剤(エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、及びエポキシ化綿実油など)、リン酸エステル、脂肪族エステル、芳香族エステル、ジオクチルテレフタレート(DOTP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジ(イソノニル)フタレート(DINP)、ジ(イソデシル)フタレート(DIDP)、ジウンデシルフタレート(DUP)、ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソノニルアジペート(DINA)、トリオクチルトリメリテート(TOTM)、トリオクチルホスフェート(TOP)、トリクレジルホスフェート(TCP)などが挙げられるが、それらに限定されない。可塑剤は、単独又は任意の組み合わせで使用され得る。
【0061】
市販の可塑剤の例は、例えば、DOTP(Sinopharm社製);DOA(Wengiang Chemical社製);DINP(Taizhou Liancheng Chemical社製)である。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態において、可塑剤の量は、アンチフラッター接着剤組成物の総重量に基づいて0~40重量%、好ましくは15~30重量%である。
【0063】
<熱安定剤>
本発明のアンチフラッター接着剤組成物は、任意に、少なくとも1つの熱安定剤を含んでよい。本発明における熱安定剤は、加熱工程中にPVCポリマーを保護するために機能する、当技術分野で既知の任意の一般的な熱安定剤を示す。熱安定剤の例としては、メチル錫メルカプチド、ブチル錫メルカプチド、及びオクチル錫メルカプチドが挙げられるが、それらに限定されない。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態では、熱安定剤の量は、アンチフラッター接着剤組成物の総重量に基づいて、0~0.2重量%、好ましくは0.01~0.1重量%である。
【0065】
<発泡剤>
本発明のアンチフラッター接着剤組成物は、当該技術分野で既知の少なくとも1つの発泡剤を任意に含んでよい。発泡剤は、ガスの形成を引き起こし、そのガスは次にアンチフラッター接着剤組成物の硬化物中に多孔質構造を形成するための細孔を成形する。本発明の泡剤は、物理発泡剤、化学発泡剤、又はそれら2つの組み合わせであり得る。発泡剤の例としては、炭酸ガス、窒素ガス、空気、ハロゲン化炭化水素、重炭酸塩、アゾ化合物、ヒドラジン誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態において、発泡剤の量は、アンチフラッター接着剤組成物の総重量に基づいて、0~1重量%、好ましくは0.2~0.6重量%である。
【0067】
<架橋剤>
本発明のアンチフラッター接着剤組成物は、任意に、当技術分野で既知の少なくとも1つの架橋剤を含んでよい。架橋剤は、好ましくは、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する。架橋剤の例としては、ジアクリレート、ジメタクリル酸亜鉛及びジメタクリル酸マグネシウムなど;アルコール、例えばトリメチロールプロパントリメタクリレートなどのアクリル酸及びメタクリル酸エステル;並びにアクリル酸ビニルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態では、架橋剤の量は、アンチフラッター接着剤組成物の総重量に基づいて、0~10重量%、好ましくは0.1~5重量%である。
【0069】
<熱膨張性ミクロスフェア>
本発明のアンチフラッター接着剤組成物は、組成物の発泡を補助するために、当技術分野で既知の少なくとも1つの熱膨張性ミクロスフェアを任意に含んでよい。熱膨張性ミクロスフェアは、例えば、イソブタン、プロパン、又はペンタン、メチルブタンといった、加熱により容易に気体となり膨張する物質を弾性シェル内に囲むことによって形成されるミクロスフェアであり得る。弾性シェルは、熱膨張により溶融又は破裂する物質からなり得る。シェルを構成するそのような物質の例としては、塩化ビニリデン/アクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリル/メタクリロニトリルコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリ(塩化ビニリデン)などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0070】
市販の熱膨張性ミクロスフェアの例は、例えば、Matsumoto Microsphere(松本油脂製薬株式会社製);Advancell EM H 204(積水化学株式会社製)である。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態において、熱膨張性ミクロスフェアの量は、アンチフラッター接着剤組成物の総重量に基づいて、0~1重量%、好ましくは0.2~0.4重量%である。
【0072】
<更なる無機フィラー>
本発明のアンチフラッター接着剤組成物は、ナノサイズ無機フィラーとは異なる更なる無機フィラーであって、好ましくは500nmより大きい70%体積粒度(D70)を有する少なくとも1つの更なる無機フィラーを任意に含んでよい。更なる無機フィラーの例としては、炭酸カルシウム及び金属酸化物、例えば、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、酸化ジルコニウム、及び酸化アルミニウムが挙げられるが、それらに限定されない。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態において、更なる無機フィラーの量は、アンチフラッター接着剤組成物の総重量に基づいて0~10重量%、好ましくは2~6重量%である。
【0074】
本発明のアンチフラッター接着剤組成物に使用され得る他の任意の添加剤としては、酸化防止剤;殺生物剤;染料;顔料;及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0075】
好ましい実施形態では、アンチフラッター接着剤組成物は、以下を含む:
2~10重量%の、少なくとも1つのエチレン性不飽和ゴム;
6~15重量%の、67~75のK値を有する少なくとも1つのPVCホモポリマー;
2~5重量%の、60~75のK値を有する少なくとも1つのPVCコポリマー;
1~6重量%の、少なくとも1つのエポキシ樹脂;
0.01~2重量%の、少なくとも1つのエポキシ硬化剤;
0.4~0.8重量%の、125~180℃の分解温度を有する少なくとも1つの第1有機過酸化物;
0.2~1重量%の、125℃未満の分解温度を有する少なくとも1つの第2有機過酸化物;
0~30重量%の、少なくとも1つのナノサイズ無機フィラー;
0~3重量%の、150~250m2/gのB.E.T.表面積を有する少なくとも1つのフュームドシリカ;
0~40重量%の、少なくとも1つの可塑剤;
0~0.2重量%の、少なくとも1つの熱安定剤;
0~1重量%の、少なくとも1つの発泡剤;
0~10重量%の、少なくとも1つの架橋剤;
0~10重量%の、少なくとも1つの更なる無機フィラー;及び
0~1重量%の、少なくとも1つの熱膨張性ミクロスフェア;
ここで、全成分の重量%は、合計100重量%となる。
【0076】
本発明のアンチフラッター接着剤組成物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和ゴム、67~75のK値を有する少なくとも1つのPVCホモポリマー、60~75のK値を有する少なくとも1つのPVCコポリマー、少なくとも1つのエポキシ樹脂、少なくとも1つのエポキシ硬化剤、125~180℃の分解温度を有する少なくとも1つの第1有機過酸化物、125℃未満の分解温度を有する少なくとも1つの第2有機過酸化物を、任意の添加剤、例えば少なくとも1つのナノサイズ無機フィラー、150~250m2/gのB.E.T表面積を有する少なくとも1つのフュームドシリカ、少なくとも1つの可塑剤、少なくとも1つの熱安定剤、少なくとも1つの発泡剤、少なくとも1つの架橋剤、少なくとも1つの更なる無機フィラー、及び少なくとも1つの熱膨張性ミクロスフェア等と共に均質に混合することにより調製され得る。
【0077】
本発明のアンチフラッター接着剤組成物は、スカーパー(scarper)、噴霧器又は押出機を介して基材表面に塗布され、150~200℃の範囲の温度で硬化させることができる。
【0078】
本発明において異なる温度下で硬化された後のアンチフラッター接着剤組成物の、冷間圧延鋼、亜鉛メッキ鋼、アルミニウムパネルを含む各種基材に対するせん断強度は、SAE J1523に準拠し、2つの基材を接着剤組成物で合わせることによって測定され得る。
【0079】
本発明のアンチフラッター接着剤組成物のせん断強度は、好ましくは150~200℃の範囲の温度で硬化した後、0.2Mpa以上であり、硬化した接着剤は2つの基材を引き離した後、一方の基材表面から完全に分離される。
【0080】
本発明の硬化したアンチフラッター接着剤組成物の外観は、硬化したアンチフラッター接着剤組成物の表面のべたつきを確認すること、並びに、指圧法により弾力があるか及び表面にクラックがあるかを確認することにより評価され得る。
【0081】
本発明の硬化したアンチフラッター接着剤組成物は、好ましくは、弾力があり、べたつきがなく、表面にクラックがない。
【0082】
本発明において、異なる温度下で硬化した後の接着剤組成物の垂れ防止性は、GB/T 31113-2014に準拠し評価され得る。
【0083】
硬化したアンチフラッター接着剤組成物は、好ましくは、5mm以下の転位を有する。
【実施例】
【0084】
[実施例]
本発明を、以下の実施例を参照して、更に詳細に、説明及び例示する。実施例は、当業者が本発明をより良く理解し実践する助けとなることを意図しているが、本発明の範囲を制限することを意図していない。実施例中の全ての数値は、特に断りのない限り、重量に基づく。
【0085】
≪実施例1~22≫
実施例では、以下の材料を使用した。
【0086】
表1a及び表1bに従う成分を用いて、実施例(Ex.)として、アンチフラッター接着剤組成物を調製した。成分を、ニーダー(Hermann Linden Maschinenfabrik社製のLK 11 1)を用いて、真空下で100分間、30rpmの速度で混合した。調製工程中、温度を約35℃、真空度を約0.7Mpaに制御した。
【0087】
次に、アンチフラッター接着剤組成物を種々な試験に供し、その結果を表2~表6に報告した。
【0088】
【0089】
【0090】
≪テスト方法≫
<せん断強度>
アンチフラッター接着剤組成物のせん断強度は、SAE J1523に準じて測定した。基材を用意し、アセトンで拭き取り、5分間風乾させることにより準備した。アンチフラッター接着剤組成物を基材の表面上に押し出し、25×25mmの重なり合う接着剤面積、3mmの接着剤厚さを形成し、2つの基材を合わせた。インキュベーターBINDER M115を用いて、150~200℃の所望の温度下で40分間、アンチフラッター接着剤組成物を硬化させた。せん断強度の値は、Zwick Z010を使用し、引張速度50mm/分で測定した。
【0091】
せん断強度値が0.2Mpa以上であり、硬化した接着剤が1つの基材の表面から完全に分離した場合(100%CF)、結果は合格であった。
【0092】
せん断強度値が0.2Mpa以上であっても、2つの基材を引き離した後に、硬化した接着剤が破れて両基材の表面に残留した場合、例えば一方の基材上に80%の硬化した接着剤が残留し、他方の基材上に20%の硬化した接着剤が残留した場合(80%CF)、結果は不合格であった。
【0093】
<外観>
100*50*0.8mm(長さ*幅*厚さ)の大きさの冷間圧延鋼を用意した。アンチフラッター接着剤組成物を冷間圧延鋼の表面上に押し出し、80*10*6mm(長さ*幅*厚さ)の大きさの接着剤ストライプを形成した。冷間圧延鋼をインキュベーターBINDER M115に入れ、粘着剤ストライプを150~200℃の所望の温度下で40分間、硬化させた。硬化した接着剤ストライプを室温で24時間冷却した。
【0094】
硬化した粘着剤ストライプの外観を、フィンガープレス法を用いて、硬化した接着剤ストライプの表面を指で押さえることにより確認した。硬化した接着剤ストライプに弾力性があり、表面がべたつかず、クラックがない場合、結果を「OK」として報告した。硬化した接着剤に上記いずれかの欠陥がある場合、結果を「Fail」として報告した。
【0095】
<垂れ防止性>
GB/T 31113-2014に準拠し、アンチフラッター接着剤組成物の垂れ防止性を測定した。100*50*0.8mm(長さ*幅*厚さ)の大きさの冷間圧延鋼を用意した。アンチフラッター接着剤組成物を冷間圧延鋼の表面上に押し出し、直径22mm、高さ15mmの冷間圧延鋼上に円筒を形成した。その後、冷間圧延鋼を70度の角度で傾け、円柱形状のアンチフラッター接着剤組成物を25℃で30分間冷間圧延鋼上に放置した。アンチフラッター接着剤組成物の転位を記録した。
【0096】
傾けた冷間圧延鋼を、鋼の表面上のアンチフラッター接着剤組成物とともに、インキュベーターBINDER M115を使用して、155℃で30分間更に硬化させた。アンチフラッター接着剤組成物の転位も記録した。
【0097】
円柱形状のアンチフラッター接着剤組成物の転位が、25℃及び155℃の両方で5mm以下である場合、アンチフラッター接着剤組成物の垂れ防止性は合格であった。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
様々な基材に対して硬化させた後のアンチフラッター接着剤組成物のせん断強度を表2~4に、硬化したアンチフラッター接着剤組成物の外観を表5に報告する。硬化後のアンチフラッター接着剤組成物のせん断強度が0.2Mpa以上となるためには、アンチフラッター接着剤組成物が、67~75のK値を有する少なくとも1つのPVCホモポリマー、60~75のK値を有する少なくとも1つのPVCコポリマー、125~180℃の分解温度を有する少なくとも1つの第1有機過酸化物、及び125℃未満の分解温度を有する少なくとも1つの第2有機過酸化物を組み込むことが不可欠であることがわかった。更に、硬化したアンチフラッター接着剤組成物は、2つの基材を引き離した後に1つの基材から完全に分離され、硬化したアンチフラッター接着剤組成物は良好な外観を有した。PVCポリマーのK値、有機過酸化物の分解温度、PVCポリマーの量、又は有機過酸化物の量が所望の範囲内でない場合、実施例5~8及び実施例13~17に示すように、硬化後のアンチフラッター接着剤組成物のせん断強度又は硬化したアンチフラッター接着剤組成物の外観のいずれかが悪化した。
【0107】
【0108】
【0109】
アンチフラッター接着剤組成物の垂れ防止特性を、表6に報告する。アンチフラッター接着剤組成物が優れた垂れ防止性を有するためには、アンチフラッター接着剤組成物が、少なくとも1つのナノサイズ無機フィラー、及び150~250m2/gのB.E.T表面積を有する少なくとも1つのフュームドシリカを組み込むことが不可欠であることがわかった。ナノサイズ無機フィラー若しくはフュームドシリカのいずれかが組成物から欠落しているか、又はナノサイズ無機フィラー若しくはフュームドシリカの量が所望の範囲内でない場合、実施例21及び22に示すように、硬化したアンチフラッター接着剤組成物は大きな転位を有した。
【国際調査報告】