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特表2023-548162無定形のメラノコルチン-4受容体アゴニスト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】無定形のメラノコルチン-4受容体アゴニスト
(51)【国際特許分類】
   C07D 207/16 20060101AFI20231108BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20231108BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20231108BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20231108BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231108BHJP
   A61P 15/10 20060101ALI20231108BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C07D207/16 CSP
A61K31/5377
A61P3/04
A61P3/10
A61P29/00
A61P15/10
A61P43/00 111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526433
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 KR2021015467
(87)【国際公開番号】W WO2022092908
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0142399
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジン・オク・ハム
(72)【発明者】
【氏名】ホ・ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ユン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン・ウォン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スル・ア・チュン
(72)【発明者】
【氏名】サン・デ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ウォン・パク
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC73
4C086GA07
4C086GA12
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA70
4C086ZA81
4C086ZB11
4C086ZC35
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、無定形の、化学式1で表される化合物、その製造方法およびこれを含む薬学的組成物に関する。本発明の無定形の、化学式1で表される化合物は、XRDパターン、DSCプロファイルおよび/またはTGAプロファイルによって特性化することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無定形の下記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【化1】
前記化学式1中、
は、C-Cアルキルである。
【請求項2】
図1に示したX線回折パターンを有する、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
図2に示したDSCプロファイルを有する、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
図3に示したTGAプロファイルを有する、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
前記化学式1の化合物の薬学的に許容可能な塩は、前記化合物の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩およびヨウ化水素酸塩からなる群れから選択される、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド塩酸塩である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の無定形の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の製造方法であって、
有機溶媒に、下記化学式1で表される化合物を溶解させて、混合溶液を製造するステップと、
前記混合溶液を冷却するステップと、
前記冷却した混合溶液に酸を滴加するステップとを含む、製造方法。
【化2】
前記化学式1中、
は、C-Cアルキルである。
【請求項8】
前記有機溶媒は、エーテル系有機溶媒を含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記混合溶液の冷却の前、冷却の後、または冷却と同時に、前記混合溶液に非極性有機溶媒を添加するステップをさらに含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の化合物および薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【請求項11】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の化合物および薬学的に許容可能な担体を含む、メラノコルチン-4受容体機能亢進用薬学的組成物。
【請求項12】
前記組成物は、肥満、糖尿、炎症または勃起不全の予防または治療用である、請求項11に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月29日付けの韓国特許出願第10-2020-0142399号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、メラノコルチン受容体に対する優れた亢進活性を示す無定形の新規化合物、その製造方法およびこれを含む薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
レプチン(leptin)タンパク質は、脂肪細胞(adipocyte)によって分泌するホルモンであり、体内脂肪の含量の増加に伴い分泌量が増加し、視床下部(hypothalamus)で生成される様々な神経ペプチド(neuropeptide)の機能を調節することで、食欲、体脂肪含量およびエネルギー代謝をはじめ、様々な生体内機能を調節する(Schwartz,et al.,Nature 404,661-671(2000))。レプチンタンパク質による食欲と体重調節のシグナル伝達は、その下流(downstream)に様々な要因の調節により行われ、その最も代表的なものが、メラノコルチン(melanocortin)、AgRP(agoutirelated peptide)および神経ペプチドY(neuropeptide Y、NPY)ホルモンである。
【0004】
生体内のカロリー過多による結果として、血液内のレプチンの濃度が増加すると、脳下垂体(pituitary gland)でのプロオピオメラノコルチン(proopiomelanocortin;POMC)タンパク質ホルモンの分泌は増加し、AgRPとNPYの生成は減少する。POMC神経細胞から小さなペプチドホルモンであるalpha-MSH(melanocyte stimulating hormone)が生成され、このホルモンは、二次神経細胞のメラノコルチン-4受容体(Melanocortin-4 Receptor、MC4R)アゴニスト(agonist)として、食欲減少を結果的に誘導する。一方、カロリー不足による結果として、レプチンの濃度が減少すると、MC4R拮抗剤(antagonist)であるAgRPの発現が増加し、NPYの発現も増加して、結果的に食欲を増進させる。すなわち、レプチンの変化に応じて、alpha-MSHホルモンとAgRPホルモンは、MC4Rに対して亢進と拮抗の役割を行うことで、食欲調節に関わる。
【0005】
Alpha-MSHホルモンは、MC4R以外に3つのMCR subtypeにも結合して、様々な生理反応を誘導する。現在まで5種のMCR subtypeが究明されており、そのうち、MC1Rの場合、主に皮膚細胞で発現し、メラニン色素調節(skinpigmentation)に関わり、MC2Rは、副腎(adrenal gland)で主に発現し、グルココルチコイドホルモン(glucocorticoid hormone)の生成に関わると知られており、POMCから由来したACTH(adrenocorticotropic hormone)のみがそのリガンドである。中枢神経系で主に発現するMC3RとMC4Rは、食欲、エネルギー代謝および体内脂肪貯蔵効率調節などに関わり、様々な組織で発現するMC5Rは、外分泌機能(exocrine function)を調節すると知られている(Wikberg,et al.,Pharm Res 42(5)393-420(2000))。特に、MC4R受容体の活性化は、食欲の減少とエネルギー代謝の増加を誘導することで、体重を効率的に減少させる効果を示すことから、肥満治療剤の開発の主な作用点として立証されている(Review:Wikberg,Eur.J.Pharmacol 375,295-310(1999));Wikberg,et al.,Pharm Res 42(5)393-420(2000);Douglas et al.,Eur J Pharm 450,93-109(2002);O’Rahilly et al.,Nature Med 10,351-352(2004))。
【0006】
食欲と体重調節において、MC4Rの役割は、アグーチ(agouti)タンパク質の異常発現動物モデル(agouti mouse)実験により一次的に立証された。アグーチマウス(Agouti mouse)の場合、遺伝的変異によってアグーチ(agouti)タンパク質が中枢神経系にも高い濃度で発現し、視床下部でMC4Rの拮抗剤(antagonist)の役割を果たすことで、肥満を誘導することが明らかになっている(Yen,TT et al.,FASEB J.8,479-488(1994);Lu D.,et al.Nature 371,799-802(1994))。以降の研究結果では、視床下部神経で、実際、アグーチ(agouti)タンパク質と類似のAgRP(agouti-related peptide)が発現することが観察され、これらもMC4Rに対する拮抗剤として食欲調節に関わると知られている(Shutter,et al.,Genes Dev.,11,593-602(1997);Ollman,et al.Science 278,135-138(1997))。
【0007】
生体内のMC4Rアゴニストであるalpha-MSHを動物に対して大脳投与すると、食欲を減少する効果が示され、これに対して、MC4R拮抗剤(antagonist)であるSHU9119(peptide)またはHS014(peptide)を処理すると、食欲をまた増加させる現象が観察されている(Kask et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.245,90-93(1998))。それだけでなく、Melanotan II(MTII、Ac-Nle-c[Asp-His-DPhe-Arg-Trp-Lys]-NH2)とその類似のアゴニストであるHP228を用いた動物試験において、大脳、腹腔または皮下投与の後、食欲抑制、体重減少、エネルギー代謝の増加の効能などが確認されている(Thiele T.E.,et al.Am J Physiol 274(1 Pt 2),R248-54(1998);Lee M.D.,et al.FASEB J 12,A552(1998);Murphy B.,et al.J Appl Physiol 89,273-82(2000))。これとは逆に、代表的なSHU9119を動物に投与すると、顕著且つ継続した飼料摂取および体重増加を示し、MCRアゴニストが肥満治療剤になることができるという薬理学的な証拠を提供する。MTII投与時に著しく現れる食欲減少効果が、MC4R KO(knock-out)マウスでは現れないが、この実験結果は、食欲減少効果が、主に、MC4Rの活性化により行われていることをまた証明する(Marsh,et al.,Nat Genet 21,119-122(1999))。
【0008】
現在まで開発されている肥満治療剤としては、中枢神経系に作用する食欲抑制剤が主な種類であり、中でも、神経シグナル伝達物質(neurotransmitter)の作用を調節する薬物がほとんどであった。その例としては、ノルアドレナリン剤(noradrenalin agent)であるフェンテルミン(phentermine)およびマジンドール(mazindol)と、セロトニン作動性剤(serotonergic agent)であるフルオキセチン(fluoxetine)およびシブトラミン(sibutramine)などがある。しかし、前記神経シグナル伝達物質調節剤の場合は、数多いサブタイプ(subtype)受容体により、食欲阻害の他に様々な生理作用にも広範な影響を及ぼす。したがって、前記調節剤の場合、各subtype別に選択性が欠如し、長期間投与すると、様々な副作用が伴われる大きな欠点がある。
【0009】
一方、メラノコルチンアゴニストは、神経シグナル伝達物質ではなく、神経ペプチド(neuropeptide)であり、MC4R遺伝子KOマウスにおいてエネルギー代謝以外の他の機能はすべて正常である点からみて、他の生理機能に対する影響なしに、食欲阻害による体重減少のみを誘導することができるという点で作用点としての利点を有する。特に、その受容体が、現在まで開発されている新薬作用点のうち最も成功的な範疇に属するG-タンパク質結合受容体(G-protein coupled receptor、GPCR)として、subtype受容体に対する選択性の確保が相対的に容易であるという面が、既存の作用点とは大きく区別される。
【0010】
このようなメラノコルチン受容体を作用点として活用した例として、国際公開番号WO2008/007930号およびWO2010/056022号では、メラノコルチン受容体のアゴニストとしての化合物を開示している。
【0011】
また、本発明の発明者らは、鋭意研究を重ねて、メラノコルチン受容体、特に、メラノコルチン-4受容体(MC4R)に対する選択的な亢進活性に優れた下記化学式1の新規な化合物およびその製造方法を発明している(韓国出願番号第10-2019-0141649号(2019.11.07.出願))。
【0012】
【化1】
【0013】
一方、薬学的に活性である成分の塩の形態や結晶構造は、時にはその薬物の化学的安定性に影響を及ぼす。化合物の相違する塩の形態は、その化合物の濾過容易性、生成物安定性、貯蔵安定性などを変化させる可能性があり、化合物の相違する結晶化条件および貯蔵条件は、その化合物の結晶構造を変化させる可能性があり、時には異なる形態の結晶形が伴われる生産を引き起こす可能性がある。したがって、一つの化合物に対して高純度および良好な化学的安定性を有する塩の形態および/または結晶構造について研究する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、メラノコルチン受容体、特に、メラノコルチン-4受容体(MC4R)に対する選択的な亢進活性に優れた無定形の新規な化合物またはその塩を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、前記無定形の化合物またはその塩の製造方法を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、前記無定形の化合物またはその塩を含む薬学的組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、
一側面において、本発明は、無定形の下記化学式1の化合物、またはその塩を提供する。
【0018】
【化2】
【0019】
前記化学式1中、Rは、C-Cアルキルである。
【0020】
本発明による化合物は、非対称炭素中心と非対称軸または非対称平面を有することができ、cisまたはtrans異性体、RまたはS異性体、ラセミ体、部分立体異性体混合物および個々の部分立体異性体として存在することができ、これらのすべての異性体および混合物は、本発明の範囲に含まれる。
【0021】
本明細書において、便宜上、別段の定めがない限り、化学式1の化合物は、化学式1の化合物、その薬学的に許容可能な塩およびその異性体をいずれも含む意味で使用される。
【0022】
本発明による一具体例において、前記化学式1のRは、C~Cアルキルである。本発明による他の具体例において、前記化学式1のRは、直鎖または分岐状C~Cアルキル、例えば、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルである。
【0023】
本発明による他の具体例において、前記化学式1のRは、CまたはCアルキルである。本発明による他の具体例において、前記化学式1のRは、直鎖または分岐状CまたはCアルキル、例えば、エチル、n-プロピルまたはiso-プロピルである。
【0024】
本発明による一具体例において、前記薬学的に許容可能な塩は、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などの無機酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸、酢酸、卜リクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸などの有機カルボン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸などのスルホン酸などにより形成された酸付加塩を含むが、これに制限されるものではない。
【0025】
本発明による他の具体例において、前記無定形の化学式1の化合物の薬学的に許容可能な塩は、下記化学式2の塩酸塩化合物であることができる。
【0026】
【化3】
【0027】
前記化学式2中、Rは、C-Cアルキルである。
【0028】
本発明によるさらに他の具体例において、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、下記化学式3のN-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド塩酸塩であることができる。
【0029】
【化4】
【0030】
本発明による無定形の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、X線回折(XRD)パターンで、2θ角4゜~40゜で特徴的なピークが存在しないものと認められることができる。
【0031】
本発明による一具体例において、前記無定形の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、図1に示したXRDパターンを有することができる。
【0032】
本発明による無定形の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、示差走査熱量測定(DSC)プロファイルで、350℃以下の温度で加熱する時に、発熱ピーク(exothermic peak)を有しないことができる。また、前記無定形の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、DSCプロファイルで、20~130℃および210~350℃のうち少なくともいずれか一つの温度範囲で、吸熱ピーク(endothermic peak)を有することができる。また、前記無定形の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、DSCプロファイルで、145℃~165℃、例えば、150℃~160℃の温度範囲、または156℃の温度でガラス転移温度(glass transition、Tg)を有することができる。
【0033】
本発明による一具体例において、前記無定形の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、図2に示したDSCプロファイルを有することができる。
【0034】
本発明による無定形の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、熱重量分析(TGA)プロファイルで、180℃以下の温度で加熱する時に、10%以下、例えば、1%~10%、5%~9%、または7%の重量損失を有することができる。
【0035】
本発明による一具体例において、前記無定形の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、図3に示したTGAプロファイルを有することができる。
本の明細書において、
【0036】
X線回折(XRD)分析は、PANalytical X’ Pert Pro MPD system,Malvern Panalytical Ltdを用いて行った結果を示す。
【0037】
示差走査熱量(DSC)分析は、DSC1,Mettler-Toledo AG、を用いて行った結果を示す。
【0038】
熱重量分析(TGA)は、TGA/DSC 1,Mettler-Toledo AGを用いて行った結果を示す。
【0039】
安定性分析は、HPLC、Agilent Technologies,Incを用いて行った結果を示す。
【0040】
前記無定形の化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、粗製(crude)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩に比べて純度がさらに高いことができ、物理的および化学的にさらに安定していることができる。
【0041】
また、化学式2の化合物は、化学式1の化合物の塩酸塩の形態の化合物として、無定形の化学式2の塩酸塩化合物は、化学式1の化合物に比べて純度がさらに高いことができ、物理的および化学的にさらに安定していることができる。それだけでなく、公知のメラノコルチン-4-受容体アゴニストに比べて、メラノコルチン-4受容体に対する亢進能力、肥満、糖尿、炎症、勃起不全などの疾病に対する予防または治療効果がさらに優れることができるが、本発明の効果がこれに制限されるものではない。
【0042】
他の側面において、本発明は、有機溶媒に前記化学式1で表される粗製の化合物を溶解させて混合溶液を製造するステップと、前記混合溶液を冷却するステップと、前記冷却した混合溶液に酸を滴加するステップとを含む、前記無定形の化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の製造方法を提供する。
【0043】
先ず、前記化学式1で表される粗製の化合物を有機溶媒に溶解させる。
【0044】
前記無定形の化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の製造のための、前記化学式1の粗製の化合物は、化学式1の化合物、その塩、または異性体であることができる。
【0045】
前記化学式1の化合物は、韓国出願番号第10-2019-0141649号(2019年11月07日出願)の明細書に記載の製造方法によって取得されることができる。
【0046】
前記化学式1の粗製の化合物を溶解するための溶媒は、化学式1の粗製の化合物を溶解することができる溶媒であれば、特に制限なく使用可能である。一具体例において、前記溶媒は、有機溶媒であることができ、具体的には、エーテル系有機溶媒を含むことができる。
【0047】
前記エーテル系有機溶媒は、これに制限されるものではないが、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチルメチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、エチルプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの環状エーテル系溶媒、ジフェニルエーテル、アニソールなどの芳香環含有エーテル系溶媒などが挙げられる。前記有機溶媒は、一つの溶媒を単独で使用することができ、または前記溶媒を二つ以上混合して使用することができる。
【0048】
本発明による一具体例において、前記有機溶媒は、メチルターシャリーブチルエーテル(methyl tert-butyl ether、MTBE)を含むことができる。
【0049】
前記化学式1の粗製の化合物1gに対して、有機溶媒は、10~30mLまたは15~25mL使用することができる。
【0050】
前記化学式1の粗製の化合物の溶媒への溶解は、15~30℃、具体的には、23~28℃の温度で攪拌なしにまたは攪拌の下で行われることができる。
【0051】
本発明による一具体例において、前記化学式1の粗製の化合物1gに対して、MTBE19mLを用いて、25℃で、化学式1の粗製の化合物が溶解された混合溶液を取得することができる。
【0052】
次に、前記化学式1の粗製の化合物が溶解された混合溶液を冷却する。
【0053】
前記冷却は、前記混合溶液の温度が0℃以下になるように行うことであり得る。具体的には、前記冷却は、前記混合溶液の温度が-10~0℃、具体的には、-5~0℃になるように行うことであり得る。
【0054】
本発明の製造方法は、前記混合溶液の冷却の前、冷却の後、または冷却と同時に、前記混合溶液に非極性有機溶媒を添加するステップをさらに含むことができる。前記非極性有機溶媒を添加して結晶化粒子の生成速度を増加させることで取得される無定形化合物の収率または生産安定性を優秀にすることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0055】
前記非極性有機溶媒は、非極性特性を有する有機溶媒であれば、特に制限なく使用可能であるが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、四塩化炭素、ベンゼン、クロロホルムなどを使用することができる。
【0056】
本発明による一具体例において、前記混合溶液にヘプタンを投入した後、-5~0℃まで冷却することができる。
【0057】
前記非極性有機溶媒を添加するステップは、本発明の無定形化合物の製造方法において任意のステップであることができる。
【0058】
次に、前記冷却した混合溶液に酸を滴加する。
【0059】
前記酸は、塩酸を含み、前記酸の滴加は、エチルアセテートの存在下で行うことができる。
【0060】
本発明による一具体例において、前記酸の滴加は、前記混合溶液に塩酸-エチルアセテート溶液を滴加することであり得る。
【0061】
前記塩酸-エチルアセテート溶液内の塩酸の濃度は、0.5M~6M、具体的には、1M~5M、3M~5M、例えば、4Mであることができる。
【0062】
前記酸の滴加によって形成された沈殿物を濾過および洗浄して、無定形の化学式1の化合物、具体的には、無定形の化学式2の化合物または無定形のこれらの薬学的に許容可能な塩を取得することができる。
【0063】
前記のように取得された無定形の化学式1の化合物は、化学式1の粗製の化合物に比べて純度がさらに高いことができ、物理的および化学的にさらに安定していることができるが、本発明の効果がこれに制限されるものではない。
【0064】
さらに他の側面において、本発明は、(i)前記無定形の化学式1の化合物、または前記無定形の化学式1の化合物の塩;および(ii)薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物を提供する。
【0065】
本発明による無定形の化学式1の化合物、または無定形の化学式1化合物の塩は、メラノコルチン受容体、特に、メラノコルチン-4受容体(MC4R)に対して優れた亢進作用を示すことから、また、本発明は、上述の無定形の化合物またはその塩を有効成分として含むメラノコルチン受容体の機能亢進用薬学的組成物を提供することができる。具体的には、前記薬学的組成物は、メラノコルチン-4受容体機能亢進用組成物であることができる。
【0066】
また、前記薬学的組成物は、肥満、糖尿、炎症および勃起不全症に対する予防または治療に優れた効果を示すことができ、肥満の予防または治療用、糖尿の予防または治療用、炎症の予防または治療用、または勃起不全の予防または治療用組成物であることができるが、本発明の用途がこれらの疾病にのみ制限されるものではない。
【0067】
本明細書において、「担体(carrier)」とは、細胞または組織内への化合物の投入を容易にする化合物を意味する。
【0068】
本発明の無定形の化合物を臨床的な目的で投与する時に、単一容量または分離容量で宿主に投与される総一日容量は、体重1kg当たり0.01~10mgの範囲が好ましいが、個々の患者に対する特異的な容量水準は、使用される特定の化合物、患者の体重、性別、健康状態、食餌、薬剤の投与時間、投与方法、排泄率、薬剤混合および疾患の重症度などに応じて変化することができる。
【0069】
本発明の無定形の化合物は、目的に応じて、如何なる経路でも投与可能である。例えば、本発明の無定形の化合物は、注射または経口投与が可能である。
【0070】
本発明の薬学的組成物は、錠剤、丸剤、散剤、カプセル剤、粒剤、シロップまたはエマルジョンのような様々な経口投与の形態であることができ、または筋肉内、静脈内または皮下投与のための注射用製剤のような非経口投与の形態であることができる。
【0071】
注射用製剤は、公知の技術に応じて、好適な分散剤、湿潤剤、懸濁剤、または賦形剤を使用して製造することができる。
【0072】
本発明の薬学的製剤に使用可能な賦形剤としては、甘味剤、結合剤、溶解剤、溶解補助剤、湿潤剤、乳化剤、等張化剤、吸着剤、崩壊剤、酸化防止剤、防腐剤、滑沢剤、充填剤、芳香剤などが含まれることができるが、これに制限されない。例えば、賦形剤として、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、グリシン、シリカ、マグネシウムアルミニウムケイ酸塩、デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、アルギニン酸、ナトリウムアルギニン酸塩、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、水、エタノール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、オレンジエッセンス、ストロベリーエッセンス、バニラ香などが使用されることができる。
【0073】
本発明の薬学的組成物が経口投与の形態である場合、使用される担体の例としては、セルロース、ケイ酸カルシウム、トウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、デキストロース、リン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ゼラチン、タルクなどが挙げられるが、これに制限されない。
【0074】
本発明の薬学的組成物が注射用製剤の形態である場合、前記担体としては、水、食塩水、ブドウ糖水溶液、疑似糖水溶液、アルコール、グリコール、エーテル、オイル、脂肪酸、脂肪酸エステル、グリセリドなどが挙げられるが、これに制限されない。
【0075】
さらに他の側面において、メラノコルチン受容体、特に、メラノコルチン-4受容体(MC4R)の機能亢進用途で使用するための上述の無定形の化学式1の化合物または無定形のその塩化合物を提供する。
【0076】
一実施形態において、肥満、糖尿、炎症または勃起不全の治療または予防用途で使用するための、上述の無定形の化学式1の化合物または無定形のその塩化合物を提供する。
【0077】
さらに他の側面において、上述の無定形の化学式1の化合物または無定形のその塩化合物を対象体(subject)に投与するステップを含むメラノコルチン受容体、特にメラノコルチン-4受容体(MC4R)の機能亢進方法を提供する。
【0078】
さらに他の側面において、上述の無定形の化学式1の化合物または無定形のその塩化合物を対象体(subject)に投与するステップを含む肥満、糖尿、炎症または勃起不全を治療する方法を提供する。
【発明の効果】
【0079】
本発明による無定形の化学式1の化合物またはその塩は、メラノコルチン受容体、特に、メラノコルチン-4受容体(MC4R)に対して優れた亢進作用を示すことから、肥満、糖尿、炎症および勃起不全症に対する予防または治療に有用に使用されることができる。
【0080】
本発明による無定形の化学式1の化合物またはその塩は、メラノコルチン-4受容体に対するon-target効果を示すことから、体重減少および食餌減少効果を示し、且つ不安および憂鬱に影響を及ぼさず、hERG(human ether-a-go-go related gene)阻害に対する副作用や突然変異の誘発のような安全性の問題なく投与が可能である。
【0081】
また、本発明による化学式1の無定形の化合物またはその塩は、化学式1の粗製の化合物に比べて、純度、収率、物理的および化学的安定性に優れる。
【0082】
具体的には、前記化学式1の無定形の化合物またはその塩は、化学式1の粗製の化合物に比べて、溶解性、貯蔵安定性、生成安定性に優れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1】実施例1のXRD結果グラフである。
図2】実施例1のDSC結果グラフである。
図3】実施例1のTGA結果グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0084】
以下、製造例および実施例を参照して、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明の例示であって、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【0085】
製造例1:メチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート塩酸塩の製造
【化5】
【0086】
下記ステップA、B、C、DおよびEの過程を経て標題化合物を得た。
【0087】
ステップA:1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アジドピロリジン-1,2-ジカルボキシレートの製造
窒素の下で、1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4R)-4-((メチルスルホニル)オキシ)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(48.5g、150mmol)をN,N'-ジメチルホルムアミド(250ml)に溶解し、アジ化ナトリウム(19.5g、300ml)を添加した。80℃で16時間攪拌を行い、反応溶媒を減圧濃縮させた後、水を添加し、エチルアセテートで二回抽出をした。有機層を塩化ナトリウム水溶液と水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾液を減圧濃縮して、粗製の(crude)1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アジドピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(39.59g、98%)を取得し、精製なしに次のステップで使用した。
【0088】
MS [M+H] = 271 (M+1)
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 4.43-4.37 (m, 1H), 4.35-4.27 (br, 1H), 3.77 (s, 1.8H), 3.76 (s, 1.2H), 3.73-3.66 (m, 1H), 3.44-3.38 (m, 1H), 2.63-2.49 (m, 1H), 2.19-2.11 (m, 1H), 1.50 (s, 4.5H), 1.44 (s, 4.5H)
【0089】
ステップB:1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アミノピロリジン-1,2-ジカルボキシレートの製造
前記ステップAで得られた1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アジドピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(24.59g、91.0mmol)をテトラヒドロフラン(180ml)に溶解した後、0℃で1Mトリメチルホスフィンテトラヒドロ溶液(109.2ml、109.2mmol)を徐々に添加した。同一温度で1時間攪拌をした後、常温で3時間攪拌をした。反応溶媒を減圧濃縮させた後、ジクロロメタン(100ml)と水(150ml)を入れて30分程度攪拌をさせた。層分離をし、ジクロロメタンでもう一度抽出した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾液を減圧濃縮して、粗製の1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アミノピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(20.62g、93%)を取得し、精製なしに次のステップで使用した。
【0090】
MS [M+H] = 245 (M+1)
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 4.27 (m, 1H), 3.77 (s, 1.8H), 3.76 (s,1.2H), 3.75-3.67 (m, 1H), 3.50-3.42 (m, 1H), 3.22-3.17 (m, 1H), 2.58-2.47 (m,1H), 1.82-1.71 (m, 1H), 1.48 (s, 4.5H), 1.42 (s, 4.5H)
【0091】
ステップC:1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)アミノ)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレートの製造
前記ステップBで得られた1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-アミノピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(20.62g、84.4mmol)をジクロロエタン(150ml)に溶解し、4-メチルシクロヘキサノン(9.5ml、101.3mmol)を添加した。0℃でナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(26.8g、126.6mmol)を添加し、常温で16時間攪拌をした。反応溶媒を減圧濃縮させ、水を添加し、エチルアセテートで二回抽出をした。有機層を塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製して、1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)アミノ)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(22.9g、80%)を得た。
【0092】
MS [M+H] = 341 (M+1)
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 4.26 (m, 1H), 3.76 (s, 1.8H), 3.75 (s, 1.2H), 3.78-3.71 (m, 1H), 3.49-3.40 (m, 1H), 3.22-3.16 (m, 1H), 2.69-2.60 (br, 1H), 2.58-2.46 (m, 1H), 1.87-1.77 (m, 1H), 1.73-1.63 (m, 1H), 1.62-1.35 (m, 8H), 1.48 (s, 4.5H), 1.42 (s, 4.5H), 0.96 (d, 3H)
【0093】
ステップD:1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレートの製造
前記ステップCで得られた1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)アミノ)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(37.29g、109.5mmol)をジクロロメタン(500ml)に溶解し、トリエチルアミン(61.1ml、438.1mmol)を入れた後、0℃でイソブチリルクロリド(11.7ml、219mmol)を徐々に添加した。常温で16時間攪拌をさせた後、反応溶媒を減圧濃縮させてから炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し、エチルアセテートで二回抽出をした。有機層を塩化ナトリウム水溶液と水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製して、1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(38.79g、86%)を得た。
【0094】
MS [M+H] = 411 (M+1)
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 4.27 (m, 1H), 3.76 (s, 1.8H), 3.75 (s, 1.2H), 3.78-3.72 (m, 1H), 3.50-3.41 (m, 1H), 3.33-3.14 (m, 1H), 2.69-2.60 (m, 2H), 2.57-2.43 (m, 1H), 1.87-1.79 (m, 1H), 1.70-1.61 (m, 1H), 1.60-1.32 (m, 8H), 1.47 (s, 4.5H), 1.41 (s, 4.5H), 1.10 (dd, 6H), 0.99 (d, 3H)
【0095】
ステップE:メチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート塩酸塩の製造
前記ステップDで得られた1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(34.0g、82.8mmol)をジクロロメタン(200ml)に溶解した後、0℃で、4N塩酸1,4-ジオキサン溶液(82.8ml、331.3mmol)を添加した。常温で6時間攪拌させた後、反応溶媒を減圧濃縮して、crude(28.7g、99%)を取得し、精製なしに次のステップで使用した。
【0096】
MS[M+H] = 311 (M+1)
【0097】
製造例2:(3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボン酸の製造
【化6】
【0098】
国際公開番号WO2004/092126号に記載の方法で標題化合物を得た。
【0099】
MS[ M+H] = 282 (M+1)
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.43-7.33 (m, 4H), 3.90-3.69 (m, 3H), 3.59 (dd, J = 11.2, 10.0 Hz, 1H), 3.29 (dd, J = 11.2, 11.2 Hz, 1H), 3.18-3.09 (m, 1H), 1.44 (s, 9H)
【0100】
製造例3:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドの製造
【化7】
製造例3(MC70)
【0101】
下記ステップA、BおよびCの過程を経て標題化合物を得た。
【0102】
ステップA:メチル(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレートの製造
製造例1で得られたメチル(2S,4S)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート塩酸塩(28.7g、82.73mmol)、製造例2で得られた(3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボン酸(24.5g、86.87mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(22.2g、115.83mmol)および1-ヒドロキシベンゾトリアゾールハイドレート(15.7g、115.83mmol)をN,N'-ジメチルホルムアミド(400ml)に溶解し、N,N'-ジイソプロピルエチルアミン(72.0ml、413.66mmol)を徐々に添加した。常温で16時間攪拌を行い、反応溶媒を減圧濃縮させた後、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を入れてエチルアセテートで二回抽出をした。有機層を塩化ナトリウム水溶液と水で二回ずつ洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製して、メチル(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート(41.19g、87%)を得た。
【0103】
MS [M+H] = 575 (M+1)
【0104】
ステップB:(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボン酸の製造
前記ステップAで得られたメチル(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボキシレート(39.4g、68.62mmol)をメタノール(450ml)に溶解した後、6N水酸化ナトリウム水溶液(57.2ml、343.09mmol)を添加した。常温で16時間攪拌を行い、6N塩酸水溶液でpH5程度に調整した後、反応溶液を減圧濃縮させた。濃縮液をジクロロメタンで溶解した後、溶解されない固体は、紙フィルタで濾過した。濾過液を減圧濃縮して、粗製の標題化合物(38.4g、99%)を取得し、精製なしに次のステップで使用した。
【0105】
MS [M+H] = 561 (M+1)
【0106】
ステップC:N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミドの製造
前記ステップBで得られた(2S,4S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-4-(N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド)ピロリジン-2-カルボン酸(38.4g、68.60mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(18.4g、96.04mmol)および1-ヒドロキシベンゾトリアゾールハイドレート(13.0g、96.04mmol)をN,N'-ジメチルホルムアミド(200ml)に溶解した後、順にモルホリン(5.9ml、68.80mmol)とN,N'-ジイソプロピルエチルアミン(59.7ml、343.02mmol)を徐々に添加した。常温で16時間攪拌を行い、反応溶液を減圧濃縮させた後、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を入れてエチルアセテートで二回抽出をした。有機層を塩化ナトリウム水溶液と水で二回ずつ洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過した。濾過液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製して、N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド(37.05g、86%、製造例3)を得た。
【0107】
MS [M+H] = 630 (M+1)
【0108】
実施例1
N-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド塩酸塩の無定形化合物の製造
前記製造例3で最終製造した化合物(MC70)1gを基準に、MTBE19mLを使用して、25℃で、化合物(MC70)を溶解した。溶解を完了した後、ヘプタン(heptane)1mLを投入してから、-5~0℃で冷却した。設定温度に逹した後、4M HCl/EtOAcを1当量滴加してから、約90分間攪拌し、濾過して、無定形のN-((3S,5S)-1-((3S,4R)-1-(tert-ブチル)-4-(4-クロロフェニル)ピロリジン-3-カルボニル)-5-(モルホリン-4-カルボニル)ピロリジン-3-イル)-N-((1s,4R)-4-メチルシクロヘキシル)イソブチルアミド塩酸塩(実施例1)を取得した。(収率:約90%)
【0109】
無定形の特性
1)X-線回折(XRD)
粉末XRD回折パターンは、固相検出器としてmonochromatized radiation sourceとNiフィルタ(filter)を備えたPANalytical X’Pert Pro MPD systemを使用して、以下の方法で取得した。
【0110】
約20~30mgの試料をガラス試料ホルダ(glass sample holder)に平坦な表面を有するように均一にして載せた後、機器のgeneratorを45kV(acceleration voltage)、40mA(filament emission)に設定してから、reflection mode(not-spin)で測定した。0.026゜のステップサイズ(step size)および51秒のTime per stepの条件で4~40゜範囲のブラッグ(Bragg)角(2θ)を測定した。
【0111】
XRD結果を図1に図示しており、図1のように、無定形の実施例1は、回折ピークがなく、無定形試料に典型的な広範なノイズを示した。
【0112】
2)示差走査熱量測定(DSC)
Mettler Toledo DSC1 systemを使用してDSCを測定した。約2~5mgの試料を秤量し、40μL Al crucible(flat-bottomed aluminum pan with one pin-hole lid)に入れて1個のピンホール(pin hole)を形成する。次に、試料を10℃/minの速度で25℃から350℃まで加熱してDSCを測定する。測定する間に、装置の内部に70mL/minの速度で窒素ガスを供給して酸素および他の気体の流入を防ぐ。データの収集および評価は、ソフトウェアSTAReを用いて行った。
【0113】
DSC結果を図2に図示しており、約33.2℃(Onset)で吸熱ピークが観察され、ガラス転移温度は約156.5℃(Midpoint ISO)で観察された。約220℃の後、分解(decomposition)による吸熱ピークが示された。温度値は、±5℃の誤差を有する。
【0114】
3)熱重量分析(TGA)
Mettler Toledo TGA/DSC 1 moduleを使用してTGAを測定した。約4~8mgの試料を秤量し、100μL Al crucible(flat-bottomed aluminum crucibles)に入れる。次に、試料を10℃/minの速度で30℃から350℃まで加熱してTGAを測定する。測定する間に装置の内部に80mL/minの速度で窒素ガスを供給して酸素および他の気体の流入を防ぐ。データの収集および評価は、ソフトウェアSTAReを用いて行った。
【0115】
TGA結果を図3に図示し、図3のように、100℃未満の温度で約5.6%の重量減少が観察された。次に、約150℃~180℃で約1.1%の重量減少が観察された。約220℃の後、decompositionによる重量減少が発生した。温度値は±5℃の誤差を有する。
【0116】
実験例1.安定性評価
約10~30mgの試料を加速条件(40℃、75%RH)では開封状態で、過酷条件の場合、80℃のオーブンで密閉状態で4週間保管した。当該試料を室温に保管した試料と比較するために、表1の方法でHPLC分析を行った。
【0117】
【表1】
【0118】
上記の方法によって評価した実施例1の安定性結果を下記表2に示した。
【0119】
【表2】
図1
図2
図3
【国際調査報告】