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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
C08J3/12 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526437
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 KR2022008693
(87)【国際公開番号】W WO2022265468
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0079644
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0080233
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0074732
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】セ・ヨル・パク
(72)【発明者】
【氏名】ギチュル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ジェ・ミン
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA29
4F070AB13
4F070DA42
4F070DB04
4F070DB06
4F070DB09
4F070DC05
4F070DC07
(57)【要約】
本発明は、高吸水性樹脂の製造方法に関する。より具体的には、粒子の大きさ850μm超の粗粒子の発生量が減少し、含水率が向上し、偏差なく優れた吸水性能を示すことができる高吸水性樹脂の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体と内部架橋剤とが架橋重合された含水ゲル重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル重合体を微粒化して含水高吸水性樹脂粒子を製造する段階と、
前記含水高吸水性樹脂粒子を乾燥して乾燥高吸水性樹脂粒子を製造する段階と、
前記乾燥高吸水性樹脂粒子に表面架橋剤を投入し反応させて、高吸水性樹脂粒子の表面の少なくとも一部に表面架橋層を形成する段階と、
前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子をスペード型冷却器で冷却および加水する段階とを含み、
前記スペード型冷却器は、内部に前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子が移送される移送空間を含み、回転可能なボディ部と、前記ボディ部に設けられて、前記移送空間の内部に冷却空気および水をそれぞれ投入させる2つのノズルと、前記ボディ部の内壁に上下駆動可能に設けられて、移送空間内の前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子を下から上へくみ上げる1つ以上のスペード型ブレードと、前記ボディ部に連結されて、駆動力を提供する駆動モータと、を含み、前記ボディ部内のスペード型ブレードによって前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子をくみ上げた後、前記ボディ部の回転により前記くみ上げられた高吸水性樹脂粒子を重力方向に落下させて、ボディ部の移送空間の内部に投入された冷却空気および水と接触させることによって、前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子に対する冷却および加水が行われる、
高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記冷却空気の温度は10℃~60℃であり、前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子の投入量1kgを基準として0.01m/h/kg~0.25m/h/kgの速度で冷却器内に投入される、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記水の温度は10℃~60℃であり、前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子100重量部に対して、2~20重量部の量で投入される、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記ボディ部は、1分あたり5~50回の速度で回転する、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記冷却および加水時、無機物質がさらに混合され、
前記無機物質は、前記ボディ部に設けられて、前記ボディ部の空間内部に添加剤を投入させる添加剤用ノズルを通して投入されるか、または高吸水性樹脂と混合されて投入される、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記無機物質は、シリカ、クレー、アルミナ、シリカ-アルミナ複合材、チタニア、亜鉛酸化物およびアルミニウムスルフェートからなる群より選択される1種以上である、
請求項5に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記含水ゲル重合体を形成する段階は、
水溶性エチレン系不飽和単量体の少なくとも一部の酸性基を中和する段階と、前記少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、および重合開始剤を含む単量体組成物に対して重合を行って、含水ゲル重合体を形成する段階とで行われるか、または
酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、および重合開始剤を含む単量体組成物に対して重合を行って、前記酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体および内部架橋剤が架橋重合された重合体を形成する段階と、前記重合体の少なくとも一部の酸性基を中和させて含水ゲル重合体を形成する段階とで行われる、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記乾燥は、流動式(moving type)で行われる、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記乾燥は、横型ミキサ乾燥機(Horizontal-type Mixer Dryer)、ロータリーキルン(Rotary kiln)、ロータリードライヤ(Rotary Dryer)、パドルドライヤ(Paddle Dryer)またはスチームチューブドライヤ(Steam tube dryer)を用いて行われる、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記微粒化は、微粒化装置によって行われ、
前記微粒化装置は、
内部に含水ゲル重合体が移送される移送空間を含むボディ部と、
前記移送空間の内部に回転可能に設けられて、含水ゲル重合体を移動させるスクリュー部材と、
前記スクリュー部材に回転駆動力を提供する駆動モータと、
前記ボディ部に設けられて、前記含水ゲル重合体を粉砕するカッター部材と、
前記カッター部材によって粉砕された前記含水ゲル重合体を前記ボディ部の外部に排出し、多数のホール(hole)が形成された多孔板とを含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記微粒化は、2回以上行われる、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記微粒化は、界面活性剤の存在下で行われる、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記界面活性剤は、下記の化学式2で表される化合物またはその塩を含む、
請求項12に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【化1】
前記化学式2において、
、AおよびAは、それぞれ独立して、単結合、カルボニル、
【化2】
であり、ただし、これらの1つ以上は、カルボニルまたは
【化3】
であり、ここで、m1、m2およびm3は、それぞれ独立して、1~8の整数であり、
【化4】
は、それぞれ隣接した酸素原子と連結され、
【化5】
は、隣接したR、RおよびRとそれぞれ連結され、
、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、炭素数6~18の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル、または炭素数6~18の直鎖もしくは分枝鎖のアルケニルであり、
nは、1~9の整数である。
【請求項14】
前記微粒化時、金属水酸化物および金属塩からなる群より選択される1種以上の添加剤が投入される、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項15】
前記金属水酸化物は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであり、
前記金属塩は、亜硫酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウムである、
請求項14に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項16】
前記冷却および加水段階の後、結果として得られた高吸水性樹脂粒子の総重量に対して、粒径850μm超の粗粒子の含有量が3重量%以下である、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項17】
前記冷却および加水段階の後、結果として得られた高吸水性樹脂粒子を分級して粒径850μm超の粗粒子と、粒径150~850μmの高吸水性樹脂の正常粒子とに分離し、分離された前記粗粒子を粉砕した後、前記高吸水性樹脂の正常粒子と混合する段階をさらに含む、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項18】
前記高吸水性樹脂は、下記(i)~(iii)の条件を満足する、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法:
(i)含水率:高吸水性樹脂の総重量を基準として1.2~5重量%
(ii)EDANA WSP241.3により測定した遠心分離保水能:30~45g/g
(iii)EDANA法WSP242.3により測定した0.3psiの加圧吸水能の平均:29~40g/g、前記0.3psiの加圧吸水能の標準偏差:1以下。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年6月18日付の韓国特許出願第10-2021-0079644号、2021年6月21日付の韓国特許出願第10-2021-0080233号、および2022年6月20日付の韓国特許出願第10-2022-0074732号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、高吸水性樹脂の製造方法に関する。より具体的には、粒径850μm超の粗粒子の含有量が減少し、含水率が向上し、偏差なく優れた吸水性能を示すことができる高吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百から1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発企業ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名前で名付けている。このような高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始め、現在は、園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、およびシップ用などの材料に幅広く使用されている。
【0004】
このような高吸水性樹脂は、主におむつや生理用ナプキンなどの衛生材分野で幅広く使用されている。前記衛生材内において、前記高吸水性樹脂は、パルプ内に広がった状態で含まれることが一般的である。しかし、最近では、より薄い厚さのおむつなどの衛生材を提供するための努力が続いており、その一環としてパルプの含有量が減少したり、一歩進んでパルプが全く使用されない、いわゆるパルプレス(pulpless)おむつなどの開発が積極的に進められている。
【0005】
このように、パルプの含有量が減少したり、パルプが使用されない衛生材の場合、相対的に高吸水性樹脂が高い比率で含まれて、高吸水性樹脂粒子が衛生材内に多層含まれるのは避けられない。このように多層含まれる全体的な高吸水性樹脂粒子がより効率的に多量の小便などの液体を吸収するためには、前記高吸水性樹脂が基本的に高い吸水性能だけでなく速い吸水速度を示す必要がある。
【0006】
一方、このような高吸水性樹脂は一般に、アクリル酸系単量体を重合して多量の水分を含有した含水ゲル重合体を製造する段階と、このような含水ゲル重合体を乾燥し、所望の粒径を有する樹脂粒子に粉砕する段階とを経て製造され、物性改善のために後の表面架橋反応が選択的にさらに行われる。
【0007】
一般に、表面架橋反応は、水に架橋剤を添加した表面架橋溶液を高吸水性樹脂の表面に噴霧して撹拌した後、熱を加えて反応させることによって行われる。しかし、加熱による表面架橋反応は、通常140℃以上の高い温度で行われるため、高吸水性樹脂に含まれている水分の大部分が蒸発し、結果として、最終的に製造される高吸水性樹脂の含水率が大きく低下する。このように低い含水率の高吸水性樹脂は、移動および保管過程で発生する粒子間の摩擦によって表面の損傷が発生しやすく、これは最終的に高吸水性樹脂の物性低下を招く。また、低い含水率の高吸水性樹脂を用いた製品化工程中に微粉の発生量が増加して、工程安定性および生産性が低下し、製品の品質低下をもたらす。
【0008】
そこで、表面架橋後、加水工程を行うことによって、高吸水性樹脂の含水率を高める方法が提案された。高吸水性樹脂の含水率を向上させるための加水方法として、主にライン(line)を通した直接投入方法と、スプレーノズルを用いた投入方法が利用される。しかし、ラインを通して投入する場合、液滴(droplet)のサイズが大きく、これによって大きな粒子にかたまった含水率の高いかたまりと、含水率の低い一般粒子との混合物が生成される問題点があった。また、スプレーノズルを通して投入する場合、均等に含水率を増加させることができるが、小さな液滴のサイズによって流動が発生し、機器汚染および異物発生の原因になる。特に、ノズルの直径が小さいほど、噴霧時に発生する液滴のサイズが小さくなるが、液滴のサイズが過度に小さい場合には飛散して工程汚染を起こす問題があった。さらに、ノズルの直径を大きくする場合、これに加えて流量が少ない場合には、噴霧が行われず、大きな液滴が形成される。しかし、液滴のサイズが増加すると、高吸水性樹脂に対する均一で十分な加水が難しく、結果として、高吸水性樹脂の物性偏差が発生する。なお、液滴が表面架橋された重合体粒子同士の凝集を誘導して、最終的に製造される高吸水性樹脂内に粒径850μmを超える粗粒子が多量発生し、これは工程時にバックフィルタ詰まりおよびケーキング発生を招く。
【0009】
また、表面架橋後、高吸水性樹脂の含水率を高めるための他の方法として、シリカなどの添加剤を混合する方法が提案された。しかし、前記添加剤の混合が通常乾式方法で行われるため、均質混合が難しく、結果として、高吸水性樹脂の物性および吸水性能の偏差を招いた。
【0010】
これによって、このような問題を根本的に解決して、粗粒子の発生を減少させ、含水率を増加させ、偏差なく優れた吸水性能を示すことができる高吸水性樹脂の製造技術の開発が要請され続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、粒径850μm超の粗粒子の含有量が減少し、含水率が向上し、偏差なく優れた吸水性能を示すことができる高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明によれば、
酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体と内部架橋剤とが架橋重合された含水ゲル重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル重合体を微粒化して含水高吸水性樹脂粒子を製造する段階と、
前記含水高吸水性樹脂粒子を乾燥して乾燥高吸水性樹脂粒子を製造する段階と、
前記乾燥高吸水性樹脂粒子に表面架橋剤を投入し反応させて、高吸水性樹脂粒子の表面の少なくとも一部に表面架橋層を形成する段階と、
前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子をスペード型冷却器で冷却および加水する段階とを含み、
前記スペード型冷却器は、内部に前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子が移送される移送空間を含み、回転可能なボディ部と、前記ボディ部に設けられて、前記移送空間の内部に冷却空気および水をそれぞれ投入させる2つのノズルと、前記ボディ部の内壁に上下駆動可能に設けられて、移送空間内の前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子を下から上へくみ上げる1つ以上のスペード型ブレードと、前記ボディ部に連結されて、駆動力を提供する駆動モータと、を含み、前記ボディ部内のスペード型ブレードによって前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子をくみ上げた後、前記ボディ部の回転により前記くみ上げられた高吸水性樹脂粒子を重力方向に落下させて、ボディ部の移送空間の内部に投入された冷却空気および水と接触させることによって、前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子に対する冷却および加水が行われる、
高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明によれば、前記高吸水性樹脂の製造方法によって製造された高吸水性樹脂を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の高吸水性樹脂の製造方法によれば、偏差なく優れた吸水性能を示す高吸水性樹脂を提供することができる。
【0015】
また、高吸水性樹脂の製造中に、粒径850μmを超える粗粒子の発生量が減少して、製造過程でのダスト(dust)の発生量を最小化することができ、また、これを用いた吸水性物品の製造時、バックフィルタ詰まり防止およびケーキング防止などの工程性を向上させることができる。
【0016】
これによって、前記製造方法で製造された高吸水性樹脂は、おむつなどの衛生材、特に、パルプの含有量が減少した超薄型衛生材などに適切に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による高吸水性樹脂の製造方法で用いられるスペード型冷却器の側断面の構造を概略的に示す模式図である。
図2】前記スペード型冷却器の前面構造を概略的に示す模式図である。
図3】前記スペード型冷却器の後面構造を概略的に示す模式図である。
図4】本発明による高吸水性樹脂の製造方法において、冷却および加水段階中にスペード型冷却器のボディ部内で起こる混合工程を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0019】
また、異なって表記しない限り、本明細書において、「常温」は、25±2℃を意味する。
【0020】
本発明は多様な変更が加えられて様々な形態を有し得るが、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0021】
以下、本発明による高吸水性樹脂の製造方法およびこれによって製造された高吸水性樹脂についてより詳細に説明する。
【0022】
それに先立ち、本明細書で使用される専門用語は単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。そして、ここで使用される単数形態は文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0023】
本発明による高吸水性樹脂の製造方法は、
酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体と内部架橋剤とが架橋重合された含水ゲル重合体を形成する段階(段階1)と、
前記含水ゲル重合体を微粒化して含水高吸水性樹脂粒子を製造する段階(段階2)と、
前記含水高吸水性樹脂粒子を乾燥して乾燥高吸水性樹脂粒子を製造する段階(段階3)と、
前記乾燥高吸水性樹脂粒子に表面架橋剤を投入し反応させて、高吸水性樹脂粒子の表面の少なくとも一部に表面架橋層を形成する段階(段階4)と、
前記段階の結果として表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子をスペード型冷却器(spade-type cooler)で冷却および加水する段階(段階5)と、を含み、
前記スペード型冷却器は、内部に前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子が移送される移送空間を含み、回転可能なボディ部と、前記ボディ部に設けられて、前記移送空間の内部に冷却空気および水をそれぞれ投入させる2つのノズルと、前記ボディ部の内壁に上下駆動可能に設けられて、移送空間内の前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子を下から上へくみ上げる1つ以上のスペード型ブレードと、前記ボディ部に連結されて、駆動力を提供する駆動モータと、を含み、前記ボディ部内のスペード型ブレードによって前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子をくみ上げた後、前記ボディ部の回転により前記くみ上げられた高吸水性樹脂粒子を重力方向に落下させて、ボディ部の移送空間の内部に投入された冷却空気および水と接触させることによって、前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子に対する冷却および加水が行われる。
【0024】
本発明の明細書に使用される用語「重合体」、または「高分子」は、水溶性エチレン系不飽和単量体が重合された状態のものを意味し、すべての水分含有量の範囲または粒径の範囲を包括することができる。
【0025】
また、用語「高吸水性樹脂」は、文脈により、架橋重合体、または前記架橋重合体が粉砕された高吸水性樹脂粒子からなる粉末(powder)状のベース樹脂または含水ゲル重合体を意味するか、または前記架橋重合体や前記含水ゲル重合体に対して追加の工程、例えば、乾燥、粉砕、分級、表面架橋などを経て製品化に適した状態にしたものをすべて包括するものとして使用される。
【0026】
さらに、用語「正常粒子」は、高吸水性樹脂粒子のうち150μm~850μmの粒径(または粒子サイズ)を有する粒子を意味し、用語「微粉」は、高吸水性樹脂粒子のうち150μm未満の粒径を有する粒子を意味する。また、用語「粗粒子」は、高吸水性樹脂粒子のうち850μm超の粒径を有する粒子を意味する。このような高吸水性樹脂粒子の粒径は、欧州不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格EDANA WSP220.3方法によって測定できる。
【0027】
また、用語「チョッピング(chopping)」は、乾燥効率を高めるために含水ゲル重合体をミリメートル単位の小片に切断するもので、マイクロメートルまたは正常粒子の水準まで粉砕するものとは区分されて使用される。
【0028】
なお、用語「微粒化(micronizing、micronization)」は、含水ゲル重合体を数十から数百マイクロメートルの粒径に粉砕するもので、「チョッピング」とは区分されて使用される。
【0029】
高吸水性樹脂の物性改善のための方法として、高吸水性樹脂粒子の表面に対して表面架橋剤を処理した後、加熱して表面架橋層を形成する方法が主に用いられている。
【0030】
しかし、表面架橋層形成のための表面架橋反応が高温で行われるため、高吸水性樹脂内に含まれている水分が蒸発し、結果として、高吸水性樹脂の含水率が大きく低下する。高吸水性樹脂の含水率が低下すると、移動および保管過程で発生する粒子間の摩擦によって表面の損傷が発生しやすく、結果として、高吸水性樹脂の物性が低下する。また、低い含水率の高吸水性樹脂を用いて製品化する時、工程中に微粉の発生量が増加して、工程安定性および生産性が低下し、製品の品質低下を招く。
【0031】
これを解決するために、表面架橋後、冷却し、加水工程を行うか、または吸湿性を示す無機物質を混合して高吸水性樹脂の含水率を高める方法が提案された。しかし、従来の加水方法の場合、加水工程中に発生する液滴が表面架橋された高吸水性樹脂粒子同士の凝集を誘導して、最終的に製造される高吸水性樹脂内に大きな粒径を有する粗粒子が多量発生し、これは高吸水性樹脂の物性低下および偏差を誘発し、製品化工程時のバックフィルタ詰まりおよびケーキング発生を招いた。また、無機物質を混合する方法は、通常乾式混合方式で行われるため、均一な混合が行われにくく、結果として、高吸水性樹脂の物性および吸水性能の偏差を招いた。
【0032】
そこで、本発明者らは、高吸水性樹脂に対する均一な加水処理によって高吸水性樹脂の物性低下および偏差を防止し、粗粒子の発生を減少させることができることを把握し、スペード型冷却器を用いる場合、高吸水性樹脂に対する冷却とともに加水が同時に行われるだけでなく、高吸水性樹脂粒子全体に均一な処理が行われることに着目した。
【0033】
また、本発明の製造方法で製造された高吸水性樹脂は、増加した含水率を有し、粗粒子の含有量が低く、保水能、加圧吸水能などの諸吸水物性に優れ、改善されたリウェット(rewet)特性および吸水速度を偏差なく示すことができる。
【0034】
以下、本発明による高吸水性樹脂の製造方法について各段階別により具体的に説明する。
【0035】
段階1
段階1は、酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体と内部架橋剤とが架橋重合された含水ゲル重合体を形成する段階である。
【0036】
具体的には、前記含水ゲル重合体は、水溶性エチレン系不飽和単量体の少なくとも一部の酸性基を中和する段階と、前記少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を内部架橋剤および重合開始剤と混合して製造した単量体組成物に対して重合を行って、含水ゲル重合体を形成する段階とを含む方法によって製造されてもよく(方法1)、または酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、および重合開始剤を含む単量体組成物に対して重合を行って、前記酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体および内部架橋剤が架橋重合された重合体を形成する段階と、前記重合体の少なくとも一部の酸性基を中和させて含水ゲル重合体を形成する段階とを含む方法によって製造されてもよい(方法2)。
【0037】
前記方法1は、水溶性エチレン系不飽和単量体の重合前に前記単量体内の酸性基の少なくとも一部を中和させた後、重合反応を行うもので、前記方法1によって製造された重合体は、含水性を有して周辺の水を吸収することによって、通常30重量%以上の高い含水率を有する含水ゲル重合体形態で製造できる。
【0038】
一方、前記方法2は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の酸性基が中和されていない状態で重合を先に行って重合体を形成した後、前記重合体に存在する酸性基を中和させる方法で、重合後に形成された重合体は、低い含水性を示し、結果として、単量体組成物中で水をほとんど吸収しない固体状態で存在する。しかし、後の中和工程によって含水性を有し、含水ゲル重合体となる。
【0039】
また、方法2において、酸性基が中和されていない状態の水溶性エチレン系不飽和単量体(例、アクリル酸)は、常温で液体状態であり、溶媒(水)に対する溶解度または混和性(miscibility)が高いため、低い温度でも析出しない。これによって、低温で長時間重合が有利であり、高分子量を有し、分子量分布が均一な重合体を安定的に形成することができる。
【0040】
さらに、通常、重合体の製造時に発生する水可溶成分は、高吸水性樹脂が液体と接触する時に容易に溶出する。したがって、水可溶成分の含有量が高い場合、溶出した水可溶成分が大部分高吸水性樹脂の表面に残留し、高吸水性樹脂をベタベタにして通液性が減少する原因になる。したがって、通液性の面で水可溶成分の含有量を低く維持することが重要であるが、前記方法2のように、未中和状態で重合を先に行う場合、より長い鎖の重合体の形成が可能であり、重合や架橋化が不完全で架橋化されていない状態で存在する水可溶成分の含有量を減少させることができ、結果として、高吸水性樹脂の通液性を向上させることができる。
【0041】
また、方法2のように、アクリル系単量体の酸性基が中和されていない状態で重合を先に行って重合体を形成し、中和後、界面活性剤の存在下で微粒化するか、または界面活性剤の存在下で微粒化後に中和するか、または微粒化と同時に前記重合体に存在する酸性基を中和させる場合、界面活性剤が前記重合体の表面に多量存在して重合体の粘着性を低くすることによって、重合体粒子間の凝集を防止することができる。その結果、微粒化工程時、正常粒度水準まで粉砕することができ、また、正常粒度水準まで粉砕された後に乾燥工程が進行するため、工程中に発生する微粉の発生量を顕著に減少させることができる。
【0042】
これによって、後続の工程および条件を考慮して、含水ゲル重合体製造のための方法を前記方法1および2の中から適切に選択することが好ましい。
【0043】
具体的には、方法1は、水溶性エチレン系不飽和単量体の少なくとも一部の酸性基を中和する段階と、前記少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、および重合開始剤を含む単量体組成物に対して重合を行って、含水ゲル重合体を形成する段階とを含む。
【0044】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、高吸水性樹脂の製造に通常使用される任意の単量体であってもよい。非制限的な例として、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、下記の化学式1で表される化合物であってもよい:
【0045】
[化1]
R-COOM’
【0046】
前記化学式1において、
Rは、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
M’は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0047】
好ましくは、前記単量体は、(メタ)アクリル酸、およびこれらの酸の1価(アルカリ)金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0048】
このように、水溶性エチレン系不飽和単量体として(メタ)アクリル酸および/またはその塩を使用する場合、吸水性が向上した高吸水性樹脂を得ることができて有利である。その他にも、前記単量体としては、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタアクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが使用できる。
【0049】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部は、中和剤によって中和される。
【0050】
本発明による製造方法において、前記方法1において、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の酸性基の少なくとも一部の酸性基に対する中和は、前記酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、重合開始剤および中和剤を混合して単量体組成物を製造する工程中に行われる。これによって製造される単量体組成物は、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、および重合開始剤を含む。
【0051】
前記中和時、前記酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体は、後続の重合反応段階での重合時間および反応条件などを考慮して、その濃度を適切に決定することが好ましい。一例として、本発明において、前記酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、重合開始剤および中和剤を含む混合物中の、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の濃度は、20~60重量%、具体的には、20重量%以上であり、60重量%以下、または40重量%以下であってもよい。
【0052】
また、前記中和剤としては、酸性基を中和させることが可能な水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどの塩基性物質が1種以上使用できる。
【0053】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体に含まれている酸性基中の、前記中和剤によって中和された程度を指して、水溶性エチレン系不飽和単量体の中和度という。中和度が過度に高ければ、中和された単量体が析出して重合が円滑に行われにくく、逆に、中和度が過度に低ければ、高分子の吸水力が大きく低下するだけでなく、取扱いにくい弾性ゴムのような性質を示すことがある。これによって、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の中和度は、実現しようとする高吸水性樹脂の物性に応じて適切に選択することが好ましい。一例として、本発明において、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の中和度は、50~90モル%、より具体的には、50モル%以上、または60モル%以上、または65モル%以上であり、90モル%以下、または85モル%以下、または80モル%以下、または75モル%以下であってもよい。
【0054】
一方、本明細書で使用する用語「内部架橋剤」は、後述する高吸水性樹脂粒子の表面を架橋させるための表面架橋剤と区別するために使用する用語で、本発明において、前記内部架橋剤は、上述した水溶性エチレン系不飽和単量体の不飽和結合の間に架橋結合を導入して、架橋構造を含む重合体を形成する役割を果たす。
【0055】
前記架橋は、表面または内部の区別なく行われるが、後述する高吸水性樹脂粒子の表面架橋工程が行われる場合、最終的に製造された高吸水性樹脂粒子の表面は、表面架橋剤によって新しく架橋された構造を含むことができ、高吸水性樹脂粒子の内部は、前記内部架橋剤によって架橋された構造がそのまま維持できる。
【0056】
前記内部架橋剤としては、多官能アクリレート系化合物、多官能アリル系化合物および多官能ビニル系化合物のうちの1種以上が使用できる。
【0057】
前記多官能アクリレート系化合物としては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、およびグリセリントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらのいずれか1または2以上の混合物が使用できる。
【0058】
また、前記多官能アリル系化合物としては、具体的には、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、テトラエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、トリプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、ブタンジオールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールジアリルエーテル、ジペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、およびグリセリントリアリルエーテルなどが挙げられ、これらのいずれか1または2以上の混合物が使用できる。
【0059】
さらに、多官能ビニル系化合物としては、具体的には、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールジビニルエーテル、ジペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、グリセリンジビニルエーテル、およびグリセリントリビニルエーテルなどが挙げられ、これらのいずれか1または2以上の混合物が使用できる。
【0060】
前記多官能アリル系化合物および多官能ビニル系化合物は、分子内に含まれる2以上の不飽和基が水溶性エチレン系不飽和単量体の不飽和結合、あるいは他の内部架橋剤の不飽和結合とそれぞれ結合して、重合過程で架橋構造を形成することができ、分子内にエステル結合(-(C=O)O-)を含むアクリレート系化合物とは異なり、前述した重合反応後の中和過程でも架橋結合を安定的に維持することができる。これによって、製造される高吸水性樹脂のゲル強度が高くなり、重合後の吐出過程で工程安定性が高まり、水可溶分量を最小化することができる。
【0061】
このような内部架橋剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して、0.01~5重量部で使用できる。例えば、前記内部架橋剤は、水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して、0.01重量部以上、または0.05重量部以上、または0.1重量部以上かつ、5重量部以下、または3重量部以下、または2重量部以下、または1重量部以下、または0.7重量部以下で使用できる。前記内部架橋剤の含有量が過度に低い場合、架橋が十分に起こらず適正水準以上の強度の実現が難しく、前記内部架橋剤の含有量が過度に高い場合、内部架橋密度が高くなって所望の保水能の実現が難しいことがある。
【0062】
前記内部架橋剤を用いて形成された重合体は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体が重合されて形成された主鎖が前記内部架橋剤によって架橋される形態の3次元網状構造を有する。このように、重合体が3次元網状構造を有する場合、内部架橋剤によって追加架橋されない2次元線状構造の場合に比べて、高吸水性樹脂の諸物性である保水能および加圧吸水能が顕著に向上できる。
【0063】
また、前記単量体組成物の製造時、重合開始剤は、重合方法によって適切に選択することが好ましい。
【0064】
含水ゲル重合体の形成時に熱重合方法を用いる場合には、熱重合開始剤を使用し、光重合方法を用いる場合には、光重合開始剤を使用し、混成重合方法(熱および光をすべて使用する方法)を用いる場合には、熱重合開始剤と光重合開始剤をすべて使用することができる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などの光照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によってある程度の熱が発生するので、追加的に熱重合開始剤を使用してもよい。
【0065】
前記光重合開始剤としては、紫外線などの光によってラジカルを形成できる化合物であれば、その構成の限定なく使用可能である。
【0066】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびアルファ-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される1つ以上を使用することができる。また、前記アシルホスフィンの具体例としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートなどが挙げられる。より多様な光開始剤については、Reinhold Schwalm著の「UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier2007年)」p115によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0067】
また、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤の群より選択される1つ以上を使用することができる。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチラミジンジヒドロクロライド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitrile)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤については、Odian著の「Principle of Polymerization(Wiley,1981)」、p203によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0068】
このような重合開始剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して2重量部以下で使用できる。つまり、前記重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり、最終製品に残存モノマーが多量抽出されうるので、好ましくない。逆に、前記重合開始剤の濃度が前記範囲より高い場合、ネットワークをなす高分子鎖が短くなって水可溶成分の含有量が高くなり、加圧吸水能が低くなるなど樹脂の物性が低下しうるので、好ましくない。
【0069】
また、前記単量体組成物の製造時、前記重合開始剤とレドックス(Redox)カップルをなす還元剤がさらに投入される。
【0070】
具体的には、前記重合開始剤と還元剤は、重合体溶液に投入された時、互いに反応してラジカルを形成する。形成されたラジカルは単量体と反応し、前記重合開始剤と還元剤との間の酸化-還元反応は反応性が非常に高いので、微量の重合開始剤と還元剤だけが投入されても重合が開始され、工程温度を高める必要がなくて低温重合が可能であり、重合体溶液の物性変化を最小化させることができる。
【0071】
前記酸化-還元反応を利用した重合反応は、常温(25℃)付近またはそれ以下の温度でも円滑に起こることができる。一例として、前記重合反応は、5℃以上25℃以下、または5℃以上20℃以下の温度で行われる。
【0072】
前記重合開始剤として過硫酸塩系重合開始剤が使用される場合、還元剤としては、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na);テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA);硫酸鉄(II)(FeSO);硫酸鉄(II)とEDTAとの混合物(FeSO/EDTA);ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(Sodium formaldehyde sulfoxylate);およびジナトリウム2-ヒドロキシ-2-スルフィノアセテート(Disodium 2-hydroxy-2-sulfinoacteate)からなる群より選択された1種以上が使用されてもよい。
【0073】
また、前記重合開始剤として過硫酸カリウムが使用され、還元剤としてはジナトリウム2-ヒドロキシ-2-スルフィノアセテートが使用されるか;重合開始剤として過硫酸アンモニウムが使用され、還元剤としてテトラメチルエチレンジアミンが使用されるか;重合開始剤として過硫酸ナトリウムが使用され、還元剤としてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートが使用されてもよい。
【0074】
さらに、前記重合開始剤として過酸化水素系開始剤が使用される場合、還元剤としては、アスコルビン酸(Ascorbic acid);スクロース(Sucrose);亜硫酸ナトリウム(NaSO)、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na);テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA);硫酸鉄(II)とEDTAとの混合物(FeSO/EDTA);ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(Sodium formaldehyde sulfoxylate);ジナトリウム2-ヒドロキシ-2-スルフィノアセテート(Disodium 2-hydroxy-2-sulfinoacteate);およびジナトリウム2-ヒドロキシ-2-スルホアセテート(Disodium 2-hydroxy-2-sulfoacteate)からなる群より選択された1種以上が使用されてもよい。
【0075】
また、前記単量体組成物の製造時、必要に応じて、増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤がさらに投入される。
【0076】
本発明において、単量体組成物は、例えば、水などの溶媒に溶解した溶液状態であってもよく、このような溶液状態の単量体組成物中の固形分含有量、つまり、単量体、内部架橋剤および重合開始剤の濃度は、重合時間および反応条件などを考慮して適切に調節可能である。例えば、前記単量体組成物中の固形分含有量は、10~80重量%、または15~60重量%、または30~50重量%であってもよい。前記単量体組成物がこのような範囲の固形分含有量を有する場合、高濃度水溶液の重合反応で現れるゲル効果現象を利用して重合後に未反応単量体を除去する必要がないようにしながらも、後述する重合体の粉砕時の粉砕効率を調節するために有利であり得る。
【0077】
この時、使用可能な溶媒としては、前述した原料物質を溶解させることができるものであれば、その構成の限定なく使用可能である。例えば、前記溶媒としては、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテート、N,N-ジメチルアセトアミド、またはこれらの混合物などが使用できる。
【0078】
次に、前記単量体組成物に対する重合工程は、熱重合、光重合または混成重合して含水ゲル重合体を形成することができれば、特に構成の限定なく行われる。
【0079】
具体的には、重合方法は、重合エネルギー源により、大きく熱重合および光重合に分けられ、通常熱重合を進行させる場合、ニーダー(kneader)などの撹拌軸を有する反応器で行われ、光重合を進行させる場合、移動可能なコンベヤベルトを備えた反応器で行われるか、底の平らな容器で行われてもよい。
【0080】
このような重合方法は、大体短い重合反応時間(例えば、1時間以下)により重合体の分子量が大きくなく、広い分子量分布を有する重合体が形成される。
【0081】
一例として、上述のように、撹拌軸を備えたニーダー(kneader)などの反応器に、熱風を供給するか、反応器を加熱して熱重合をして得られた含水ゲル重合体は、反応器に備えられた撹拌軸の形態に応じて、反応器の排出口に排出される含水ゲル重合体は、数センチメートル~数ミリメートルの形態であってもよい。具体的には、得られる含水ゲル重合体の大きさは、注入される単量体組成物の濃度および注入速度などに応じて多様に現れるが、通常、重量平均粒径が2~50mmの含水ゲル重合体が得られる。
【0082】
また、上述のように移動可能なコンベヤベルトを備えた反応器または底の平らな容器で光重合を進行させる場合、通常得られる含水ゲル重合体の形態は、ベルトの幅を有するシート状の含水ゲル重合体であってもよい。この時、重合体シートの厚さは、注入される単量体組成物の濃度および注入速度または注入量に応じて異なるが、通常約0.5~約5cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体組成物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度に単量体組成物を供給する場合、生産効率が低くて好ましくなく、シート状の重合体の厚さが5cmを超える場合には、過度に厚い厚さによって、重合反応が全厚にわたって均等に起こらないことがある。
【0083】
さらに、従来のコンベヤベルトを備えた反応器撹拌軸を有する反応器での重合は、重合結果物が移動しながら新しい単量体組成物が反応器に供給されて連続式で重合が行われるので、重合率が互いに異なる重合体が混合され、これによって単量体組成物全体において均一な重合が行われにくくて、全体的な物性低下が生じうる。
【0084】
これによって、本発明の製造方法において、前記単量体組成物に対する重合反応は、バッチ式反応器(batch type reactor)で行われる。
【0085】
このように、バッチ式反応器で定置式(fixed-bed type)で重合を進行させることによって、重合率の異なる重合体が混ざる恐れが少なく、これによって均一な品質を有する重合体が得られる。
【0086】
また、バッチ式反応器で行う場合、コンベヤベルトを備えた反応器で連続式で重合を行う場合より長時間、例えば、3時間以上の時間重合反応を行う。しかし、このような長時間の重合反応時間にもかかわらず、未中和状態の水溶性エチレン系不飽和単量体に対して重合を行うため、長時間重合を行っても単量体がよく析出せず、よって、長時間重合を行うのに有利である。
【0087】
一方、前記バッチ式反応器での重合は、熱重合方法を用いることができ、これによって、前記重合開始剤は、熱重合開始剤を使用する。前記熱重合開始剤は、先に説明した通りである。
【0088】
一方、含水ゲル重合体を製造する方法2は、酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、および重合開始剤を含む単量体組成物に対して重合を行って、前記酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体および内部架橋剤が架橋重合された重合体を形成する段階と、前記重合体の少なくとも一部の酸性基を中和させて含水ゲル重合体を形成する段階とで行われる。
【0089】
前記方法2において、単量体組成物の製造時、酸性基が中和されていない水溶性エチレン系不飽和単量体を使用することを除けば、方法1と同様の方法で単量体組成物の製造およびこれに対する重合工程が行われる。
【0090】
また、前記方法2での重合反応は、具体的には、バッチ式反応器で行われる。さらに、前記バッチ式反応器での重合は、熱重合方法を用いることによって、前記重合開始剤としては、熱重合開始剤を使用することができる。なお、前述のように、前記開始剤と共に還元剤を投入して重合を開始することができる。
【0091】
次に、方法2において、前記架橋重合された重合体の少なくとも一部の酸性基を中和させて含水ゲル重合体を製造する段階は、前記架橋重合された重合体に対して中和剤を投入し反応させることによって行われる。
【0092】
前記中和剤としては、方法1と同様に、酸性基を中和させることが可能な水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどの塩基性物質が使用できる。
【0093】
また、前記重合体に含まれている酸性基のうち前記中和剤によって中和された程度を指す重合体の中和度は、過度に高い場合、粒子表面のカルボキシル基の濃度が過度に低くて、後続工程での表面架橋がうまく行われにくく、その結果、加圧下の吸水特性および通液性が減少しうる。逆に、重合体の中和度が過度に低ければ、高分子の吸水力が大きく低下するだけでなく、取扱いにくい弾性ゴムのような性質を示すことがある。これによって、前記重合体の中和度は、実現しようとする高吸水性樹脂の物性に応じて適切に選択することが好ましい。一例として、本発明において、前記重合体の中和度は、50~90モル%、より具体的には、50モル%以上、または60モル%以上、または65モル%以上であり、90モル%以下、または85モル%以下、または80モル%以下、または75モル%以下であってもよい。
【0094】
前記方法1および方法2によって製造される重合体は、含水ゲル状態で、含水率が30~80重量%、より具体的には、30重量%以上、または35重量%以上、または40重量%以上であり、80重量%以下、または75重量%以下、または70重量%以下である。
【0095】
前記含水ゲル重合体の含水率が過度に低い場合、後の粉砕段階で適切な表面積を確保しにくくて、効果的に粉砕されないことがあり、前記含水ゲル重合体の含水率が過度に高い場合、後の粉砕段階で受ける圧力が増加して、所望の粒度まで粉砕させることが難しい。しかし、本発明による製造方法で製造された含水ゲル重合体は、前記範囲条件を満足する含水率を有し、後続の微粒化工程に適合する。
【0096】
一方、本明細書全体において、「含水率」は、含水ゲル重合体の全体重量に対して占める水分の含有量であり、含水ゲル重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱によりクラム状態の重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値で定義する。この時、乾燥条件は、常温から約180℃まで温度を上昇させた後、180℃で維持する方式で、総乾燥時間は、温度上昇段階の5分を含む40分に設定して、含水率を測定する。具体的な測定方法および条件は、以下の実験例で説明する通りである。
【0097】
段階2
次に、段階2は、前記段階1で製造した含水ゲル重合体を微粒化して含水高吸水性樹脂粒子を製造する段階である。
【0098】
前記段階では、含水ゲル重合体をミリメートルの大きさにチョッピングするのではない、数十から数百マイクロメートルの大きさへの細切と凝集が同時に行われる段階である。つまり、含水ゲル重合体に適切な粘着性を付与することによって、数十から数百マイクロメートルの大きさに細切された一次粒子が複数個凝集された二次凝集粒子を製造する段階である。このような段階で製造された二次凝集粒子である含水高吸水性樹脂粒子は、正常粒度分布を有しかつ、表面積が大きく増加して吸水速度が顕著に改善できる。
【0099】
具体的には、本発明の製造方法において、前記重合体を微粒化して含水高吸水性樹脂粒子を製造する段階は、2回以上、より具体的には、2~4回行われる。
【0100】
前記微粒化段階は、微粒化装置によって行われ、前記微粒化装置は、内部に重合体が移送される移送空間を含むボディ部と、前記移送空間の内部に回転可能に設けられて、重合体を移動させるスクリュー部材と、前記スクリュー部材に回転駆動力を提供する駆動モータと、前記ボディ部に設けられて、前記重合体を粉砕するカッター部材と、前記カッター部材によって粉砕された前記重合体を前記ボディ部の外部に排出し、多数のホール(hole)が形成された多孔板とを含むことができる。この時、前記微粒化装置の多孔板に備えられたホールの大きさは、1mm~10mm、または1~6mmであってもよい。
【0101】
また、前記微粒化段階は、界面活性剤の存在下で行われる。
【0102】
前記界面活性剤は、含水ゲル重合体の表面に吸着または結合して、含水ゲル重合体の表面の粘着性を低下させ、結果として、粉砕された含水ゲル重合体同士の凝集を制御する。
【0103】
従来、含水ゲル重合体に対するチョッピング工程で数mmまたは数cm水準の粒子を形成していた。このようなチョッピング工程によって含水ゲル重合体の表面積がある程度増加できるが、吸水速度を有効に向上させることができる程度の効果は期待しにくかった。そこで、吸水速度向上のために、チョッピング段階で機械的力をより増加して混練させることによって、表面積を増加させる方法が提案されたが、この場合、重合体特有のベタベタさによって凝集が過度に発生して、チョッピング、乾燥および粉砕後、粒子の表面のみデコボコな無定形の単一粒子が形成され、過度な混練または押しつぶしによってむしろ水可溶成分が増加した。
【0104】
そこで、本発明では、含水ゲル重合体に対する微粒化工程を界面活性剤の存在下で行うことによって、前記界面活性剤が前記含水ゲル重合体の表面に多量存在する。含水ゲル重合体の表面に存在する界面活性剤は、重合体の高い粘着性を低下させることによって、重合体が過度に凝集しないことを防止し、所望の水準に凝集状態を調節することができる。その結果、従来のマイクロメートル単位からなるチョッピング工程とは異なり、前記含水ゲル重合体を数ミリメートルから数百マイクロメートルの大きさにまで粉砕することができ、また、よりマイルドな条件で後続の粉砕および乾燥工程を行うことが可能で、製造工程中に発生する微粉の発生量を顕著に減少させることができる。
【0105】
一方、界面活性剤の存在下で含水ゲル重合体を微粒化する場合、含水ゲル重合体の高い含水性によって界面活性剤が含水ゲル重合体の界面に存在するよりは、含水ゲル重合体の内部に浸透して界面活性剤がその役割を十分に果たせない可能性がある。これに対し、本発明では、上述のような特徴的構造の微粒化装置を用いることによって、このような問題点を解決した。
【0106】
また、前記界面活性剤に含まれている疎水性官能基の部分は、粉砕された高吸水性樹脂粒子の表面に疎水性を付与して粒子間の摩擦力を緩和させることによって、高吸水性樹脂の見掛け密度を増加させることができ、前記界面活性剤に含まれている親水性官能基の部分も、高吸水性樹脂粒子に結合して高吸水性樹脂の表面張力の低下を防止することができる。その結果、本発明による製造方法で製造された高吸水性樹脂は、界面活性剤を使用しない高吸水性樹脂と比較して、同等水準の表面張力を示しながらも高い見掛け密度を示すことができる。
【0107】
具体的には、前記界面活性剤としては、下記の化学式2で表される化合物またはその塩を使用することができるが、本発明がこれに限定されるものではない:
【0108】
【化1】
【0109】
前記化学式2において、
、AおよびAは、それぞれ独立して、単結合、カルボニル、
【0110】
【化2】
【0111】
であり、ただし、これらの1つ以上は、カルボニルまたは
【0112】
【化3】
【0113】
であり、ここで、m1、m2およびm3は、それぞれ独立して、1~8の整数であり、
【0114】
【化4】
【0115】
は、それぞれ隣接した酸素原子と連結され、
【0116】
【化5】
【0117】
は、隣接したR、RおよびRとそれぞれ連結され、
【0118】
、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、炭素数6~18の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル、または炭素数6~18の直鎖もしくは分枝鎖のアルケニルであり、
nは、1~9の整数である。
【0119】
前記界面活性剤は、重合体と混合されて微粒化段階が凝集現象なく容易に行われるように添加される。
【0120】
前記化学式2で表される界面活性剤は、非イオン性の界面活性剤であり、未中和の重合体とも水素結合力による表面吸着性能に優れ、これによって、目的とする凝集制御効果を実現するのに適合する。これに対し、非イオン性界面活性剤でない陰イオン性界面活性剤の場合、NaOH、NaSOなどの中和剤で中和された重合体と混合される場合、重合体のカルボキシル基置換基にイオン化されているNa+イオンを媒介として吸着され、未中和重合体に混合される場合、重合体のカルボキシル基置換基の陰イオンとの競争によって重合体に対する吸着効率が相対的に低下する問題がある。
【0121】
具体的には、前記化学式2で表される界面活性剤において、疎水性官能基は、末端官能基であるR、R、R部分(水素でない場合)であり、親水性官能基は、鎖中のグリセロール由来の部分と、末端の水酸基(Aが単結合であり、同時にRが水素である場合、n=1~3)をさらに含むが、前記グリセロール由来の部分と、末端の水酸基は、親水性官能基で重合体の表面に対する吸着性能を向上させる役割を果たす。これによって、高吸水性樹脂粒子の凝集を効果的に抑制することができる。
【0122】
前記化学式2において、疎水性官能基であるR、R、R部分(水素でない場合)は、それぞれ独立して、炭素数6~18の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル、または炭素数6~18の直鎖もしくは分枝鎖のアルケニルである。この時、R、R、R部分(水素でない場合)が炭素数6未満のアルキルまたはアルケニルの場合、鎖長が短くて、粉砕された粒子の凝集制御が効果的に行われないという問題があり、R、R、R部分(水素でない場合)が炭素数18超のアルキルまたはアルケニルの場合、前記界面活性剤の移動性(mobility)が減少して重合体と効果的に混合されないことがあり、界面活性剤の費用上昇によって組成物の単価が高くなる問題がありうる。
【0123】
好ましくは、R、R、Rは、水素であるか、または炭素数6~18の直鎖もしくは分枝鎖のアルキルである場合、2-メチルヘキシル、n-ヘプチル、2-メチルヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デカニル、n-ウンデカニル、n-ドデカニル、n-トリデカニル、n-テトラデカニル、n-ペンタデカニル、n-ヘキサデカニル、n-ヘプタデカニル、またはn-オクタデカニルであってもよいし、または炭素数6~18の直鎖もしくは分枝鎖のアルケニルである場合、2-ヘキセニル、2-ヘプテニル、2-オクテニル、2-ノネニル、n-デケニル、2-ウンデケニル、2-ドデケニル、2-トリデケニル、2-テトラデケニル、2-ペンタデケニル、2-ヘキサデケニル、2-ヘプタデケニル、または2-オクタデケニルであってもよい。
【0124】
前記界面活性剤は、下記の化学式2-1~化学式2-14で表される化合物から選択される:
【0125】
【化6】
【化7】
【0126】
一方、前記界面活性剤は、前記含水ゲル重合体100重量部に対して、0.01~10重量部で使用できる。前記界面活性剤が過度に少なく使用される場合、前記重合体の表面に均等に吸着されず粉砕後に粒子の再凝集現象が発生し、前記界面活性剤が過度に多く使用される場合、最終的に製造された高吸水性樹脂の諸物性が低下しうる。例えば、前記界面活性剤は、前記重合体100重量部に対して、0.01重量部以上、または0.015重量部以上、または0.1重量部以上かつ、5重量部以下、または3重量部以下、または2重量部以下、または1重量部以下、または0.5重量部以下で使用できる。
【0127】
このような界面活性剤を重合体に混合する方法は、前記重合体にこれらを均等に混合できる方法であれば特に限定されず、適切に採用して使用可能である。具体的には、前記界面活性剤を乾式で混合するか、溶媒に溶解させた後に溶液状態で混合するか、または前記界面活性剤を溶融させた後に混合することができる。
【0128】
このうち、例えば、前記界面活性剤は、溶媒に溶解した溶液状態で混合できる。この時、溶媒としては、無機溶媒または有機溶媒に制限なく全種類を用いることができるが、乾燥過程の容易性と溶媒回収システムの費用を考えた時、水が最も適切である。また、前記溶液は、前記界面活性剤と重合体とを反応槽に入れて混合するか、ミキサに重合体を入れて溶液を噴射する方法、連続的に運転されるミキサに重合体と溶液とを連続的に供給して混合する方法などを用いることができる。
【0129】
一方、本発明の製造方法において、前記段階1の方法2において、重合体の少なくとも一部の酸性基を中和させる工程と、前記界面活性剤の存在下で前記重合体を微粒化する工程は、順次に、または交互に、または同時に行われてもよい。
【0130】
つまり、重合体に中和剤を投入して酸性基を先に中和させた後、中和された重合体に界面活性剤を投入して界面活性剤が混合された重合体を微粒化するか、重合体に中和剤と界面活性剤とを同時に投入して重合体に対して中和および微粒化を行ってもよい。あるいは、界面活性剤を先に投入し、中和剤を後に投入してもよい。あるいは、中和剤と界面活性剤とを交差して交互に投入してもよい。あるいは、界面活性剤を先に投入して微粒化した後、中和剤を投入して中和し、中和された含水ゲル重合体に追加的に界面活性剤をさらに投入して微粒化工程を追加的に行ってもよい。
【0131】
ただし、重合体全体に対する均一な中和のために、中和剤の投入と微粒化工程との間には一定の時間差をおくことが好ましい。
【0132】
一方、前記界面活性剤の投入により、前記界面活性剤の少なくとも一部乃至相当量は、前記含水高吸水性樹脂粒子の表面に存在することができる。
【0133】
ここで、前記界面活性剤が含水高吸水性樹脂粒子の表面に存在するとの意味は、前記界面活性剤の少なくとも一部または相当量が前記含水高吸水性樹脂粒子の表面に吸着または結合していることを意味する。具体的には、前記界面活性剤は、前記含水高吸水性樹脂粒子の表面に物理的にまたは化学的に吸着されていてもよい。より具体的には、前記界面活性剤の親水性官能基は、前記含水高吸水性樹脂粒子の表面の親水性部分に双極子-双極子引力(Dipole-dipole interaction)のような分子間力によって物理的に吸着されていてもよい。このように、前記界面活性剤の親水性部分は前記含水高吸水性樹脂粒子の表面に物理的に吸着されて表面を囲み、界面活性剤の疎水性部分は樹脂粒子の表面に吸着されず、前記含水高吸水性樹脂粒子は、一種のミセル(micelle)構造の形態として界面活性剤がコーティングされていてもよい。これは前記界面活性剤が前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重合工程中に投入されるのではなく、重合体形成後の微粒化段階で投入されるためで、前記界面活性剤が重合工程中に投入されて、重合体の内部に前記界面活性剤が存在する場合に比べて界面活性剤としての役割を忠実に果たすことができ、粉砕と凝集が同時に起きて微細粒子が凝集された形態で表面積の大きい粒子が得られる。
【0134】
このように前記重合体と界面活性剤とを混合した後に、または前記界面活性剤の存在下で前記重合体を微粒化することによって、高吸水性樹脂粒子および界面活性剤が混合された状態で細切および凝集された、二次凝集粒子状の含水高吸水性樹脂粒子を製造することができる。
【0135】
ここで、「含水高吸水性樹脂粒子」は、水分含有量(含水率)が約30重量%以上の粒子で、含水ゲル重合体が乾燥工程なしに粒子状に細切および凝集されたものであるので、前記含水ゲル重合体と同様に、30~80重量%の含水率を有することができる。より具体的には、30重量%以上、または35重量%以上、または40重量%以上であり、80重量%以下、または75重量%以下、または70重量%以下である。
【0136】
また、本発明による製造方法において、前記微粒化段階時、界面活性剤のほかに、金属水酸化物および金属塩のうちの1種以上の添加剤が選択的にさらに投入されてもよい。
【0137】
前記金属水酸化物は、微粒化工程時、浸透圧の形成で吸水能力を付与する作用をする。具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物が挙げられ、これらのいずれか1または2以上の混合物が使用できる。
【0138】
また、前記金属塩は、微粒化工程時、残留モノマーを除去する作用をする。具体例としては、亜硫酸ナトリウム(sodium sulfite)、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate)などのアルカリ金属の硫酸塩;または過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate)などの硫酸アンモニウム系化合物が挙げられ、これらのいずれか1または2以上の混合物が使用できる。
【0139】
前記添加剤は、前記含水ゲル重合体100重量部に対して、0.01~20重量部で使用できる。前記添加剤が過度に少なく使用される場合、添加剤の使用による効果がわずかであり、また、前記添加剤が過度に多く使用される場合、最終的に製造された高吸水性樹脂の諸物性が低下しうる。より具体的には、前記添加剤は、前記含水ゲル重合体100重量部に対して、0.01重量部以上、0.05重量部以上、または0.1重量部以上かつ、20重量部以下、または15重量部以下、または13重量部以下、または10重量部以下、または6重量部以下で使用できる。
【0140】
前記添加剤は、前記界面活性剤の投入方法と同様に、乾式で重合体と混合するか、溶媒に溶解させた後に溶液状態で混合するか、分散媒に分散させた状態で混合するか、または溶融させた後に重合体と混合することができる。
【0141】
また、前記微粒化段階が2回以上行われる場合、前記添加剤は、それぞれの微粒化段階別に互いに同一または異なって投入されてもよい。一例として、微粒化段階が4回行われる場合、前記微粒化段階は、界面活性剤および添加剤の未投入条件で前記微粒化装置を用いて含水ゲル重合体を1次微粒化する第1微粒化段階と、金属水酸化物の投入条件で前記微粒化装置を用いて前記1次微粒化された含水ゲル重合体を2次微粒化する第2微粒化段階と、金属塩の投入条件で前記微粒化装置を用いて前記2次微粒化された含水ゲル重合体を3次微粒化する第3微粒化段階と、界面活性剤の投入条件で前記微粒化装置を用いて前記3次微粒化された含水ゲル重合体を4次微粒化する第4微粒化段階とで行われる。各段階別に投入される界面活性剤および添加剤の投入量は先に説明した通りであり、前記第1~第4微粒化段階の順序は変更可能である。
【0142】
このような方法で微粒化段階を進行させる場合、乾燥後の製品と同一水準の粒度分布が実現可能であり、これによって微粉の発生をさらに減少させることができる。
【0143】
これによって、本発明による製造方法は、前記微粒化工程後、追加的な粉砕段階を含まなくてもよい。また、微粒化工程後に得られる含水高吸水性樹脂粒子中の微粉含有量が低いため、追加的な分級段階も含まなくてもよい。つまり、追加的な粉砕および分級段階なくても製品に適用可能な粒径を有する高吸水性樹脂の製造が可能である。ただし、製品が適用される用途および必要に応じて、微粉砕を追加的に実施するか、分級工程を追加的に実施してもよい。
【0144】
段階3
次に、段階3は、前記含水高吸水性樹脂粒子を乾燥して乾燥高吸水性樹脂粒子を製造する段階である。
【0145】
通常の高吸水性樹脂の製造方法において、前記乾燥段階は、高吸水性樹脂の含水率が10重量%未満になるまで行われることが一般的である。しかし、本発明による製造方法においては、乾燥工程は、乾燥後の高吸水性樹脂の含水率が、乾燥高吸水性樹脂粒子の総重量を基準として10重量%以上、より具体的には、10~20重量%、または10~15重量%となるように行われる。
【0146】
このために、前記乾燥は、80~250℃で5分~80分間行われる。前記乾燥温度が過度に低い場合、乾燥時間が長くなって、工程性が低下し、また、前記乾燥温度が過度に高い場合、高吸水性樹脂粒子の含水率が過度に低くなって、後続の工程中に壊れなどが生じうる。より具体的には、前記乾燥は、80℃以上、または100℃以上、または120℃以上かつ、250℃以下、または180℃以下、または150℃以下の温度で、5分以上、または20分以上かつ、80分以下、または60分以下の時間行われる。
【0147】
さらに、前記乾燥は、流動式(moving type)で行われる。このような流動式(moving type)乾燥は、定置式(fixed-bed type)乾燥とは、乾燥する間の物質の流動の有/無で区分される。
【0148】
前記流動式(moving type)乾燥は、乾燥体を機械的に撹拌しながら乾燥させる方式を指す。この時、熱風が物質を通過する方向は、物質の循環方向と同一でも、異なっていてもよい。あるいは、物質は、乾燥機の内部で循環し、乾燥機の外部の別のパイプ管に熱媒介流体(熱媒流)を通過させて物質を乾燥させてもよい。これに対し、定置式(fixed-bed type)乾燥は、空気が通ることのできる多孔鉄板などの底に乾燥させようとする物質を停止させた状態で、下から上へ熱風が物質を通過して乾燥させる方式を指す。
【0149】
したがって、前記乾燥段階で乾燥させようとする含水高吸水性樹脂粒子間の凝集現象を防止し、速い時間内に乾燥を完了できるという面から、流動式乾燥方式で乾燥することが好ましい。
【0150】
このような流動式乾燥方式によって乾燥可能な装置としては、横型ミキサ乾燥機(Horizontal-type Mixer Dryer)、ロータリーキルン(Rotary kiln)、パドルドライヤ(Paddle Dryer)またはスチームチューブドライヤ(Steam tube dryer)など一般に用いる流動式乾燥機が使用可能である。
【0151】
前記流動式乾燥方式を利用することで回転速度を制御することによって、乾燥効率をさらに向上させることができる。一例として、前記回転速度は、10rpm以上、または30rpm以上、または50rpm以上、または80rpm以上かつ、200rpm以下、または150rpm以下、または120rpm以下、または100rpm以下であってもよいし、前記範囲内で含水ゲル重合体の含水率、含水ゲル重合体の量、流動式乾燥装置の種類、乾燥温度、乾燥時間などの乾燥条件をともに考慮して決定されることが好ましい。
【0152】
前記乾燥工程により、前述のように、従来に比べて高い含水率を有する乾燥高吸水性樹脂粒子が得られる。具体的には、前記乾燥高吸水性樹脂粒子の含水率は、10重量%以上、より具体的には、10~20重量%、または10~15重量%であり、前記のような範囲の含水率を有することによって、後の工程を行っている間に微粉の発生を防止または最小化することができる。
【0153】
段階4
次に、段階4は、前記乾燥高吸水性樹脂粒子に表面架橋剤を投入し表面架橋反応させる段階である。
【0154】
前記段階によって、前記乾燥高吸水性樹脂粒子に含まれている架橋重合体が表面架橋剤を介在させて追加架橋されて、前記乾燥高吸水性樹脂粒子の表面の少なくとも一部に表面架橋層が形成される。
【0155】
前記表面架橋剤としては、かつて高吸水性樹脂の製造に使用されていた表面架橋剤を特別な制限なくすべて使用可能である。例えば、前記表面架橋剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコールおよびグリセロールからなる群より選択された1種以上のポリオール;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびグリセロールカーボネートからなる群より選択された1種以上のカーボネート系化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物;オキサゾリジノンなどのオキサゾリン化合物;ポリアミン化合物;オキサゾリン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;または環状ウレア化合物;などを含むことができる。
【0156】
具体的には、前記表面架橋剤として、上述した表面架橋剤のうちの1種以上、または2種以上、または3種以上が使用できる。一例として、エチレングリコールジグリシジルエーテルおよびプロピレングリコールが混合して使用可能である。
【0157】
このような表面架橋剤は、前記乾燥高吸水性樹脂粒子100重量部に対して、0.001~5重量部使用できる。より具体的には、前記表面架橋剤は、乾燥高吸水性樹脂粒子100重量部に対して、0.001重量部以上、または0.01重量部以上、または0.1重量部以上、または0.3重量部以上、または0.4重量部以上かつ、または5重量部以下、または3重量部以下、または1重量部以下の含有量で使用できる。表面架橋剤の含有量範囲を上述した範囲に調節して、優れた吸水諸物性を示す高吸水性樹脂を製造することができる。
【0158】
また、前記表面架橋層を形成する段階は、前記表面架橋剤に無機物質を追加して行われる。つまり、前記表面架橋剤および無機物質の存在下、前記高吸水性樹脂粒子の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階を行うことができる。
【0159】
このような無機物質として、シリカ(silica)、クレー(clay)、アルミナ、シリカ-アルミナ複合材、チタニア、亜鉛酸化物およびアルミニウムスルフェートからなる群より選択された1種以上の無機物質を使用することができる。前記無機物質は、粉末状または液状形態で使用することができ、特に、アルミナ粉末、シリカ-アルミナ粉末、チタニア粉末、またはナノシリカ溶液で使用することができる。
【0160】
前記無機物質は、乾燥高吸水性樹脂粒子100重量部に対して、0.001~1重量部、より具体的には、0.001重量部以上、または0.01重量部以上、または0.1重量部以上かつ、1重量部以下、または0.5重量部以下の含有量で使用できる。
【0161】
前記表面架橋剤を高吸水性樹脂粒子に混合する方法については、その構成の限定はない。例えば、表面架橋剤と高吸水性樹脂粒子とを反応槽に入れて混合するか、高吸水性樹脂粒子に表面架橋剤を噴射する方法、連続的に運転されるミキサに高吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とを連続的に供給して混合する方法などを用いることができる。
【0162】
前記表面架橋剤と高吸水性樹脂粒子とを混合する時、追加的に水およびメタノールを共に混合して添加することができる。水およびメタノールを添加する場合、表面架橋剤が高吸水性樹脂粒子に均等に分散できるという利点がある。この時、追加される水およびメタノールの含有量は、表面架橋剤の均一な分散を誘導し、高吸水性樹脂粒子のかたまり現象を防止すると同時に、架橋剤の表面浸透深さを最適化するために適切に調節可能である。
【0163】
前記表面架橋工程は、80℃~250℃の温度で行われる。より具体的には、前記表面架橋工程は、100℃~220℃、または120℃~200℃の温度で、20分~2時間、または40分~80分間行われる。上述した表面架橋工程条件を満たす時、高吸水性樹脂粒子の表面が十分に架橋されて加圧吸水能が増加できる。
【0164】
前記表面架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給するか、熱源を直接供給して加熱することができる。この時、使用可能な熱媒体の種類には、スチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体などを使用することができるが、これらに限定されるものではなく、また、供給される熱媒体の温度は、熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択可能である。一方、直接供給される熱源には、電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述した例に限定されるものではない。
【0165】
段階5
次に、段階5は、前記段階4の結果として表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子に対してスペード型冷却器を用いて冷却と加水を同時に行う段階である。
【0166】
従来、表面架橋反応後、高吸水性樹脂に対する冷却時にパドル型冷却器(paddle-type cooler)を主に用いていた。パドル型冷却器は、冷却器の内部に、冷却器の長手方向に1つ以上の回転軸が備えられ、前記回転軸に複数のパドル(paddle)またはパドル型ブレードが設けられて、回転軸の回転によりパドルが回転しながら冷却器内部の高吸水性樹脂粒子を冷却水と共に撹拌し、混合することによって、冷却させる。しかし、パドル型冷却器は、冷却器内部の回転軸に沿って回転するパドルによって撹拌および混合が行われるため、パドルの回転半径内でのみ高吸水性樹脂粒子と冷却水との撹拌および混合が起こる。その結果、高吸水性樹脂粒子と冷却水との接触および加水が高吸水性樹脂粒子全体に十分に均一に行われにくい。また、撹拌および混合中に高吸水性樹脂粒子間の凝集が発生しやすく、結果として得られる高吸水性樹脂内に850μm超の粒径を有する粗粒子の含有量が高く、高吸水性樹脂の物性低下および偏差が大きかった。
【0167】
これに対し、本発明では、表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子に対して粒子全体に均一な冷却と加水、ひいては追加投入される添加剤との均一混合が可能なスペード型冷却器を用いる。
【0168】
スペード型冷却器は、回転可能なボディ部と、前記ボディ部の内壁に上下駆動可能に設けられた1つ以上のスペード型ブレードとを含む。これによって、ボディ部内に冷却および加水のために投入された表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子が投入されると、ボディ部が回転し、前記ボディ部の回転によりスペード型ブレードも共に回転しながら上下駆動する。前記スペード型ブレードの上下駆動によってボディ部内の高吸水性樹脂粒子が下から上へくみ上げられ、後に前記ボディ部の回転により重力方向に落下する。この時、重力方向に落下する高吸水性樹脂粒子は、ボディ部内に投入される冷却空気および水と接触しながら冷却および加水が行われるため、粒子全体に均一な冷却および加水が可能である。さらに、高吸水性樹脂粒子の物性改善のための添加剤が選択的にさらに投入される場合には、添加剤との均一混合も可能である。
【0169】
また、スペード型冷却器は、従来のパドル型冷却器とは異なり、高吸水性樹脂粒子を堆積せずにボディ部内部の高吸水性樹脂粒子を上下に流動させながら、冷却空気、水および添加剤との撹拌および接触が行われるため、スペード型ブレードと高吸水性樹脂粒子との間、そして高吸水性樹脂粒子間の接触および摩擦を減少させることができ、結果として、高吸水性樹脂粒子の壊れおよびこれに伴う物性低下を防止することができる。
【0170】
さらに、前記スペード型冷却器において、スペード型ブレードは、スプーン(spoon)、またはシャベル(shovel)のように、スペード型ブレードの一部分、例えば、中心部または刃先が凹(concave)形状を有する。これによって、刃先が平らなパドル(paddle)と比較して、高吸水性樹脂粒子を入れてくみ上げるのに有利であり、結果として、高吸水性樹脂粒子と、冷却空気および水との接触が高吸水性樹脂粒子全体により均一に行われる。
【0171】
また、前記スペード型冷却器は、前記冷却と加水中に高吸水性樹脂粒子間の凝集が発生しても、ボディ部内で多方向に発生する撹拌力によって凝集された粒子が容易に分離できる。その結果、高吸水性樹脂粒子内の粗粒子の含有量を減少させ、また、高吸水性樹脂の物性および吸水性能の偏差を防止および最小化することができる。
【0172】
図1図3は、本発明による高吸水性樹脂の製造方法で用いられるスペード型冷却器の側断面、前面、および後面での構造をそれぞれ概略的に示す模式図である。図1図3は、本発明を説明するための一例に過ぎず、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0173】
以下、図1図3を参照して説明すれば、前記スペード型冷却器10は、具体的には、内部に前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子が移送される移送空間を含み、回転可能なボディ部1と、前記ボディ部1に設けられて、前記移送空間の内部に冷却空気および水をそれぞれ投入させる2つのノズル、つまり、冷却空気投入用ノズル2aおよび水投入用ノズル2bと、前記ボディ部の内壁に上下駆動可能に設けられて、移送空間内の前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子を下から上へくみ上げる1つ以上のスペード型ブレード(spade-type blade)3と、前記ボディ部1に連結されて、駆動力を提供する駆動モータ4と、を含み、前記ボディ部1内のスペード型ブレード3の上下駆動によって前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子をくみ上げた後、前記ボディ部1の回転により前記くみ上げられた高吸水性樹脂粒子を重力方向に落下させて、ボディ部1の移送空間の内部に投入された冷却空気および水と接触させることによって、前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子に対する冷却と加水が同時に行われる。
【0174】
具体的には、前記スペード型冷却器におけるボディ部1は、内部に表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子が移送され流動する移送空間を含む。
【0175】
前記ボディ部1の形状は特に限定されるものではないが、一例として、円筒状またはドラム状であってもよい。
【0176】
また、前記ボディ部1は、回転可能であり、これによってボディ部の内部空間に存在する成分は、ボディ部の回転により撹拌および混合できる。
【0177】
前記ボディ部1の回転は、ボディ部全体で行われてもよく、またはボディ部の一定部分での回転により行われてもよい。一例として、前記駆動モータ4から伝達された駆動力によってボディ部全体が回転することができる。他の例として、前記ボディ部1の外側上部および下部にボディ部の長手方向に回転軸がそれぞれ備えられ、駆動モータから前記回転軸に駆動力が伝達されると、駆動力によって回転軸が回転し、結果として、ボディ部の長手方向に垂直な方向にボディ部が回転することができる。
【0178】
また、前記ボディ部の一定部分のみ回転する場合、前記ボディ部は、駆動モータに連結されて、駆動モータから伝達された駆動力によって回転する回転部と、回転しない固定部とからなる。一例として、前記回転部が表面架橋された高吸水性樹脂粒子および冷却媒体が投入されるボディ部の上部側に位置し、前記固定部が冷却された高吸水性樹脂粒子が排出されるボディ部の下側に位置することができる。あるいは、前記固定部が表面架橋された高吸水性樹脂粒子および冷却媒体が投入されるボディ部の上部側に位置し、回転部が冷却された高吸水性樹脂粒子が排出される下側に位置することができる。あるいは、図1のように、前記回転部1aが前記ボディ部の中間部分に位置し、前記固定部1bが前記回転部1aの上部側および下側にそれぞれ位置することができる。
【0179】
また、前記ボディ部1には、表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子の投入のための高吸水性樹脂投入口と、冷却および加水された高吸水性樹脂粒子の排出のための高吸水性樹脂排出口とがそれぞれ備えられる。その位置は特に限定されず、高吸水性樹脂投入口は、前記ボディ部の一末端に備えられ、前記高吸水性樹脂投入口は、前記ボディ部の他の末端に備えられる。一例として、図1に示されているように、ボディ部1内部の高吸水性樹脂の流れが一方向に行われるように、ボディ部1の上部区域に、高吸水性樹脂投入口1cが、そしてボディ部1の下部区域に高吸水性樹脂排出口1dが形成される。
【0180】
なお、図1のように、前記スペード型冷却器は、冷却および加水された高吸水性樹脂粒子の排出が容易となるように、ボディ部の内壁に前記排出口1d側に傾斜し、排出口に連結されるように備えられた排出板がさらに形成される。この場合、冷却および加水された高吸水性樹脂粒子が排出板上に積もると、排出板の傾斜によって排出口へ容易に排出できる。
【0181】
さらに他の例として、前記ボディ部1は、高吸水性樹脂の投入のための高吸水性樹脂投入口1cが位置する上部区域と、前記高吸水性樹脂粒子と冷却空気および水との混合および接触によって冷却が行われるジャケット区域と、冷却された高吸水性樹脂粒子の排出のための高吸水性樹脂排出口1dが備えられた下部区域とからなる。この場合、前記ジャケット区域が回転部1aに相当し、前記上部および下部区域がそれぞれ固定部1bに相当する。
【0182】
また、前記ボディ部1には、前記冷却空気および水の投入のためのそれぞれのノズル、つまり、冷却空気投入用ノズル2aおよび水投入用ノズル2bが設けられる。これによって、ノズルを通して投入される冷却空気および水はボディ部の空間内に噴霧される。前記ノズルには、冷却空気および水の投入速度または噴霧速度、および投入量または噴霧量を制御可能なバルブ、スイッチなどのノズル開閉手段または制御手段が選択的に備えられていてもよい。
【0183】
前記ノズルの形成位置は特に限定されるものではなく、一例として、高吸水性樹脂との混合の容易性および均一性を考慮して、高吸水性樹脂投入口側、つまり、投入口が存在するボディ部の上部区域、より具体的には、ボディ部の上部側に位置する固定部1bに形成される。
【0184】
また、前記ボディ部1の内壁には、上下駆動可能に設けられたスペード型ブレード3が存在する。
【0185】
前記スペード型ブレード3は、スプーンまたはシャベル形状を有し、ボディ部の回転時に共に回転しながら上下駆動する。これによって、ボディ部の移送空間内に存在する高吸水性樹脂粒子を下から上へくみ上げる作用をし、スペード型ブレードによってくみ上げられた高吸水性樹脂粒子は、ボディ部の回転および重力によって落下しながらボディ部の空間内部に投入される冷却空気および水と接触し、混合される。
【0186】
前記スペード型ブレード3は、ボディ部の内壁に1つ以上、または2つ以上、または3つ以上、または4つ以上備えられるが、これに限定されるものではない。ボディ部の大きさなどを考慮して適切に決定可能である。
【0187】
また、前記スペード型ブレードは、ボディ部の回転により回転しながら上下駆動をするため、スペード型ブレードの駆動速度は、ボディ部の回転速度に応じて決定される。しかし、スペード型ブレードの駆動速度制御のために、別の駆動速度制御部材を選択的にさらに含んでもよい。
【0188】
さらに、前記スペード型冷却器10は、ボディ部1に連結されて、駆動力、具体的には、回転駆動力を提供する駆動モータ4を含む。
【0189】
また、前記スペード型冷却器10は、表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子を貯蔵および供給する高吸水性樹脂の供給部(図示せず);冷却空気を貯蔵し、前記冷却器のボディ部に設けられた冷却空気投入用ノズルによって供給する冷却空気供給部(図示せず);水を貯蔵し、前記冷却器のボディ部に設けられた水投入用ノズルによって供給する水供給部(図示せず);前記冷却器のボディ部に設けられ、前記冷却および加水工程中に選択的に添加される添加剤のための、添加剤用ノズル(図示せず);または添加剤投入口1e、のうちの1以上を選択的にさらに含んでもよい。
【0190】
図4は、本発明による高吸水性樹脂の製造方法において、冷却および加水段階でスペード型冷却器のボディ部内で起こる混合工程を概略的に示す模式図である。図4にて、矢印は、ボディ部の回転を示す。
【0191】
図4を参照して説明すれば、前記構造のスペード型冷却器で高吸水性樹脂投入口を通して表面架橋された高吸水性樹脂粒子20が投入されると、冷却器のボディ部内のスペード型ブレード3の上下駆動によって高吸水性樹脂粒子が下から上へくみ上げられる。以後、くみ上げられた高吸水性樹脂粒子はボディ部の回転で重力方向に落下しながら、ボディ部に結合されたノズルを通してボディ部の空間内に噴霧などの方法で投入された冷却空気および水と接触する。この時、冷却空気および水との熱交換で高吸水性樹脂粒子が冷却され、同時に前記水によって高吸水性樹脂粒子の加水が行われる。特に、本発明によるスペード型冷却器では、ボディ部内の高吸水性樹脂粒子が重力によって均一に落下するため、前記接触および加水が高吸水性樹脂粒子全体に均一に行われ、これは高吸水性樹脂の物性および吸水性能の偏差を防止および最小化することができる。
【0192】
一方、前記スペード型冷却器内に投入される冷却空気の温度は10℃~60℃であり、前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂の投入量1kgを基準として0.01m/h/kg~0.25m/h/kgの速度でボディ部に設けられた冷却空気投入ノズルを通して投入される。前記条件で冷却空気が投入される場合、優れた冷却効果を示すことができる。より具体的には、冷却空気の温度は10℃以上、または15℃以上、または20℃以上、または25℃以上、または30℃以上かつ、60℃以下、または50℃以下、または40℃以下、または35℃以下であり、高吸水性樹脂の投入量1kgを基準として0.01m/h/kg以上、または0.05m/h/kg以上、または0.1m/h/kg以上かつ、0.25m/h/kg以下、または0.2m/h/kg以下、または0.15m/h/kg以下の速度でボディ部に設けられた冷却空気投入ノズルを通して投入される。
【0193】
また、前記水の温度は10℃~60℃であり、前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子100重量部に対して、2~20重量部の量で投入される。前記条件で水が投入される場合、前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子に対する冷却効果とともに加水効果を示すことができる。より具体的には、前記水の温度は10℃以上、または15℃以上、または20℃以上、または23℃以上かつ、60℃以下、または50℃以下、または40℃以下、または30℃以下、または27℃以下であり、さらにより具体的には、常温(25±2℃)である。さらに、前記水は、表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子100重量部に対して、2重量部以上、または5重量部以上かつ、20重量部以下、または10重量部以下の量で投入される。
【0194】
また、前記スペード型冷却器において、前記ボディ部1、または前記ボディ部内の回転部1aは、1分あたり5~50回の速度(または5~50rpm)で回転できる。一方、前記ボディ部またはボディ部内の回転部の1分あたり1回の回転速度は、1rpmに相当する。
【0195】
前記条件で回転する時、高吸水性樹脂粒子が冷却空気および水と十分に接触できる速度で落下できる。より具体的には、前記ボディ部または前記ボディ部内の回転部は、1分あたり5回以上、または10回以上、または20回以上かつ、50回以下、または40回以下、または30回以下の速度で回転できる。一方、本発明において、前記スペード型冷却器は、前記ボディ部と駆動モータとの間に位置して、ボディ部またはボディ部内の回転部の回転速度を制御する、インバータなどの回転速度制御装置(図示せず)を選択的にさらに備えることができる。
【0196】
また、本発明による製造方法において、前記冷却工程時の冷却効率の向上、高吸水性樹脂の含水率および物性改善などのための添加剤が1種以上さらに投入されてもよい。
【0197】
具体的には、前記添加剤は、無機物質であってもよい。具体例としては、シリカ、クレー、アルミナ、シリカ-アルミナ複合材、チタニア、亜鉛酸化物またはアルミニウムスルフェートなどが挙げられ、これらのいずれか1または2以上の混合物が使用できる。前記無機物質は、高吸水性樹脂粒子の含水率を高め、ケーキング防止効率を向上させるアンチケーキング(anti-caking)剤として作用できる。
【0198】
前記無機物質がさらに投入される場合、前記スペード型冷却器のボディ部に設けられて、前記ボディ部の移送空間の内部に添加剤を投入させる、添加剤用ノズル(図示せず)、または添加剤投入口1eを通して投入されるか、または前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂と混合されて混合物の形態で高吸水性樹脂投入口を通して投入されてもよい。
【0199】
従来、高吸水性樹脂の製造時、含水率改善のために無機物質をブレード型ミキサで混合していた。この場合、無機物質が乾式混合されることによって均質混合が難しく、結果として、製造される高吸水性樹脂の物性偏差が発生した。
【0200】
これに対し、本発明では、スペード型冷却器を用いた冷却および加水工程中に投入することによって湿式混合が行われ、その結果、高吸水性樹脂との均質混合が可能であり、製造される高吸水性樹脂の物性を均一に改善させることができる。
【0201】
前記無機物質は、前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子100重量部に対して、0.02~1.0重量部で投入される。無機物質の投入量が過度に少なければ、無機物質の投入による加水効果を十分に得にくく、これに対し、無機物質の投入量が過度に高ければ、高吸水性樹脂の含水量を過度に高めて吸水性能をむしろ低下させることがある。より具体的には、前記無機物質は、前記表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子100重量部に対して、0.02重量部以上、または0.05重量部以上、または0.1重量部以上かつ、1.0重量部以下、または0.7重量部以下、または0.5重量部以下の量で投入される。
【0202】
前記物質のほかにも、添加剤として、通液性向上剤、流動性向上剤などの添加剤が選択的にさらに添加されてもよいが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0203】
前記添加剤の投入方法は特に限定されず、前記ボディ部に設けられて、前記ボディ部の空間内部に添加剤を投入させる添加剤用ノズルを通して投入されるか、または高吸水性樹脂と共に混合されて投入されてもよい。
【0204】
前記冷却および加水段階を行うことによって、最終的に製造される高吸水性樹脂の含水率が向上し、粗粒子の含有量が減少し、結果として、より高品質の高吸水性樹脂製品を製造することができる。
【0205】
具体的には、前記冷却および加水段階の後、冷却および加水された高吸水性樹脂粒子中の、850μm超の粒径を有する粗粒子の含有量が3重量%以下、または1重量%以下、または0.7重量%以下、または0.5重量%以下、または0.3重量%である。粗粒子の含有量が低いほど優れているので、その下限値は特に限定されないが、一例として、0.01重量%以上、または0.1重量%以上であってもよい。
【0206】
一方、前記850μm超の粒径を有する粗粒子の含有量(重量%)は、冷却および加水された高吸水性樹脂粒子をASTM規定による標準分子篩を用いるなどの方法で分級して850μm超の粒径を有する粗粒子を分離した後、その重量を測定し、冷却および加水された高吸水性樹脂粒子の総重量に対する前記粗粒子の重量比を求めて百分率で表したものである。具体的な測定方法は、以下の実験例で説明する通りである。
【0207】
追加段階
本発明による製造方法は、前記冷却および加水段階の後、冷却および加水された高吸水性樹脂を分級する段階をさらに含むことができる。
【0208】
前記分級工程は、ASTM規定による標準分子篩を用いるなど通常の方法によって行われてもよいし、このような分級工程により850μm超の粒径を有する粗粒子を分離除去し、150~850μmの粒径を有する高吸水性樹脂の正常粒子を得ることができる。
【0209】
また、本発明による製造方法は、前記分級段階の後、分離された粗粒子を粉砕し、粉砕された粗粒子を前記分級段階で分離された高吸水性樹脂の正常粒子と混合する段階をさらに含むことができる。
【0210】
前記粗粒子に対する粉砕は、粉砕された粗粒子が正常粒子水準の粒径を有するように行われることを除けば、通常の粉砕方法を用いて行われる。
【0211】
具体的には、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円板粉砕機(Disc mill)、シュレッド破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、細切機(chopper)または円板式切断機(Disc cutter)などの粉砕機を用いて行われるが、粉砕機が上述した例に限定されない。
【0212】
あるいは、前記粉砕機として、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを用いてもよいが、上述した例に限定されるものではない。
【0213】
以後、粉砕された粗粒子と高吸水性樹脂の正常粒子との混合は、通常の混合方法で行われてもよいし、混合比も、高吸水性樹脂の吸水性能を低下させない範囲で適切に決定可能である。
【0214】
本発明によれば、前記製造方法で製造された高吸水性樹脂を提供する。
【0215】
前記製造方法で製造された高吸水性樹脂は、高い含水率を有し、別の分級工程がなくても850μm超の粒径を有する粗粒子の含有量が低い。その結果、前記高吸水性樹脂を用いた製品の製造時、微粉の発生量が小さい。
【0216】
また、前記高吸水性樹脂は、従来の方法で製造した高吸水性樹脂に比べて、諸吸水物性である保水能(CRC)と加圧吸水能(AUP)が同等水準以上に優れている。
【0217】
さらに、前記高吸水性樹脂は、狭い粒径分布とともに均一な粒径を示し、水可溶成分(EC)の含有量が低くて、通液性、リウェット(rewet)特性、および吸水速度などがすべて優れている。
【0218】
具体的には、前記高吸水性樹脂は、酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体および内部架橋剤が架橋重合された重合体を含み、前記重合体の酸性基の少なくとも一部は中和されており、表面架橋剤を介在させて前記重合体が追加架橋されて前記重合体上に形成された表面架橋層を含み、下記(i)~(iii)の条件を満足するものであってもよい:
【0219】
(i)高吸水性樹脂の総重量に対して、含水率が1.2重量%~5重量%
(ii)EDANA WSP241.3により測定した遠心分離保水能(CRC):30~45g/g
(iii)EDANA法WSP242.3により測定した0.3psiの加圧吸水能の平均:29~40g/g、前記0.3psiの加圧吸水能の標準偏差:1以下。
【0220】
前記高吸水性樹脂は、より具体的には、高吸水性樹脂の総重量に対して、含水率が1.2重量%以上、または1.4重量%以上、または1.5重量%以上、または1.7重量%以上、または1.8重量%以上、または1.9重量%以上かつ、5重量%以下、または3重量%以下、または2.6重量%以下、または2.5重量%以下、または2重量%以下である。このように従来に比べて高い含水率を有することによって、製造工程中に高吸水性樹脂粒子間の摩擦による表面の損傷が減少し、これによる高吸水性樹脂の物性低下を防止することができる。また、高吸水性樹脂を用いた製品化工程中に微粉の発生量が減少して、工程安定性および生産性が向上し、製品の品質を改善させることができる。
【0221】
前記含水率は、高吸水性樹脂の総重量に対して占める水分の含有量で、赤外線加熱により高吸水性樹脂の温度を上げて乾燥する過程で高吸水性樹脂中の水分蒸発による重量減少分を測定し、その結果を用いて下記の数式1により計算することができる。その具体的な測定方法および測定条件は、以下の実験例で詳しく説明する。
【0222】
[数式1]
含水率(重量%)=[(Ao-At)/Ao]×100
【0223】
上記式中、Atは、常温から180℃まで温度を上昇させた後、180℃で維持する方式で、総乾燥時間は、温度上昇段階の5分を含む40分に設定して乾燥工程を行った後に測定した、乾燥後の高吸水性樹脂の重量であり、Aoは、乾燥前の高吸水性樹脂の重量である。
【0224】
また、前記高吸水性樹脂は、より具体的には、EDANA法WSP241.3により測定した、生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能(CRC)が30g/g以上、または35g/g以上、または36.5g/g以上、または37g/g以上である。前記CRC値が高いほど優れていて、実質的な上限の制限はないが、一例として、45g/g以下、または40g/g以下である。前記CRCの具体的な測定方法および測定条件は、以下の実験例で詳しく説明する。
【0225】
さらに、前記高吸水性樹脂は、より具体的には、EDANA法WSP242.3により測定した、高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.3psi下における1時間の加圧吸水能(0.3AUP)の平均が29g/g以上、または29.3g/g以上、または29.5g/g以上、または30g/g以上かつ、40g/g以下、または35g/g以下、または32g/g以下である。なお、前記0.3psiの加圧吸水能の標準偏差が1以下、または0.7以下、または0.5以下であり、標準偏差値が小さいほど優れていて、実質的な下限の制限はないが、一例として、0.1以上、または0.2以上である。前記0.3C AUPの具体的な測定方法および測定条件は、以下の実験例で詳しく説明する。
【0226】
また、高吸水性樹脂の製造時、冷却および加水段階でシリカなどの無機物質がさらに投入される場合、高いケーキング防止効率を示すことができる。
【0227】
具体的には、前記高吸水性樹脂は、下記の数式2で計算されるケーキング防止効率(A/C)の平均が85%以上であり、標準偏差が10以下である。より具体的には、ケーキング防止効率(A/C)の平均が85%以上、または90%以上、または95%以上である。ケーキング防止効率値が高いほど優れていて、実質的な上限の制限はないが、一例として、100%以下、または98%以下である。また、前記ケーキング防止効率の標準偏差は、より具体的には、10以下、または9.5以下、または9以下であり、標準偏差値が小さいほど優れていて、実質的な下限の制限はないが、一例として、1以上、または5以上である。
【0228】
【数1】
【0229】
上記式中、
は、直径90mmおよび高さ15mmのペトリディッシュの重量(g)であり、
は、Wで重量が測定されたペトリディッシュに高吸水性樹脂試料2±0.01gを均等に塗布した後、前記試料が塗布されたペトリディッシュを温度40℃および湿度80%RHにセットされた恒温恒湿チャンバ内に10分間放置した後、これを取り出してA4用紙にひっくり返しておき、5分経過後に測定した前記A4用紙に落下した高吸水性樹脂試料の重量(g)であり、
は、前記Sを測定した時点でのペトリディッシュの重量(g)である。
【0230】
これによって、前記高吸水性樹脂は、おむつなどの衛生材、特に、パルプの含有量が減少した超薄型衛生材などに適切に使用可能である。
【0231】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0232】
製造例1
含水ゲル重合体の製造
撹拌機、温度計を装着した2Lガラス容器に、アクリル酸100g、内部架橋剤のペンタエリスリトールアリルエーテル0.35g、および水226gを撹拌しながら混合した。この時、反応温度は5℃に維持した。結果の混合物に対して、窒素1000cc/minを1時間投入した。以後、重合開始剤として、0.3%過酸化水素水溶液1.3g、1%アスコルビン酸水溶液1.5g、および2%の2,2’-アゾビスアミジノプロパンジヒドロクロライド水溶液3.0gを投入し、同時に、還元剤として0.01%の硫酸鉄水溶液1.5gを添加し、混合した。結果の混合物で重合反応が開始され、重合体の温度が85℃に到達した後、90±2℃のオーブンで約6時間重合することによって、含水ゲル重合体を製造した(含水率:含水ゲル重合体の総重量基準70重量%)。
【0233】
含水高吸水性樹脂粒子の製造
得られた含水ゲル重合体1000gを、ホールサイズ(hole size)が6mmの多数のホールを含む多孔板が備えられた微粒化装置(Micronizer)(F200、Karl Schnell)を1500rpmで回転させながら、4回通過させて微粒化した。この時、1回通過時には何ら添加剤を投入せず、2回通過時には32%NaOH水溶液を400g投入し、3回通過時には15%のNaSO水溶液を37.5g投入し、そして、4回通過時には界面活性剤としてモノラウリン酸グリセロール(Glycerol Monolaurate)(GML)を60℃の水に溶解させた水溶液(1.5w%)形態にして、前記含水ゲル重合体100重量部対比、GMLの投入量が0.4重量部となるように投入した。結果として、含水高吸水性樹脂粒子を得た(含水率:含水高吸水性樹脂粒子の総重量68重量%)。
【0234】
乾燥高吸水性樹脂粒子の製造
前記微粒化の結果として得られた含水高吸水性樹脂粒子をロータリーキルン流動式乾燥機(Rotary kiln、WOONGBI MACHINERY CO.,LTD.社製)に投入後、150℃で、100rpmの速度で60分間撹拌しながら乾燥させて、乾燥高吸水性樹脂粒子を得た(含水率:乾燥高吸水性樹脂粒子の総重量基準:11重量%)。
【0235】
表面架橋層の形成
次に、前記乾燥高吸水性樹脂粒子100gに対して、水4g、メタノール6g、エチレングリコールジグリシジルエーテル(Glyether(登録商標) EJ-1030、JSI社製)0.30g、プロピレングリコール0.1gおよびアルミニウムスルフェート0.2gを投入して製造した表面架橋液を1分間混合し、これを140℃で50分間表面架橋反応を進行させて、表面架橋された高吸水性樹脂を得た。
【0236】
製造例2
前記製造例1の含水ゲル重合体の形成時、アクリル酸100g、31.5重量%水酸化ナトリウム(NaOH)140g、ポリエチレングリコールジアクリレート0.20g、熱重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.12g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド0.01gおよび水40gを混合して単量体組成物を製造し、これを横30cm、縦30cmの大きさの四角反応容器に入れて、10mW/cmの強度を有する紫外線を照射して60秒間重合反応させて含水ゲル重合体を製造することを除けば、前記製造例1と同様の方法で行って、表面架橋された高吸水性樹脂を得た。
【0237】
製造例3
前記製造例1による含水ゲル重合体の製造時、界面活性剤としてGMLの代わりにGMS(モノステアリン酸グリセロール、Glycerol monostearate)を用いることを除けば、前記製造例1と同様の方法で行って、表面架橋された高吸水性樹脂を得た。
【0238】
実施例1
前記製造例1で製造した表面架橋された高吸水性樹脂に対して、下記表1に記載された条件で冷却工程を行った。
【0239】
具体的には、前記製造例で製造した、表面架橋された高吸水性樹脂を図1の構造を有するスペード型冷却器(Spade-type cooler)に投入した後、冷却器の内部に備えられたノズルを通して冷却空気を投入して冷却工程を行った。この時、前記冷却器内に投入される冷却空気の温度は35℃であり、投入速度は表面架橋された高吸水性樹脂1kgを基準として0.1m/h/kgである。また、前記冷却工程時、冷却器の内部に別途に備えられたノズルを通して水を投入し、加水工程を同時に行った。この時、水の温度は常温(25±2℃)であり、投入量は表面架橋された高吸水性樹脂100重量部を基準として5重量部であり、そして、ボディ部の回転速度は1分あたり20回(20rpm)であった。
【0240】
結果として、冷却および加水された高吸水性樹脂粒子を回収した後、分級して粒径150~850μmの高吸水性樹脂の正常粒子と、粒径850μm超の粗粒子とに分離した。分離された粗粒子はロールミル(Roll-mill)を用いて1回粉砕した後、前記高吸水性樹脂の正常粒子と混合して、高吸水性樹脂を製造した。
【0241】
実施例2
下記表1に記載されたように、冷却工程時、冷却器内に投入される表面架橋された高吸水性樹脂と混合されるように、別の投入口を通して、添加剤としてフュームドシリカ(Fumed silica)(Aerosil200、EVONIK社製)を投入することを除けば、前記実施例1と同様の方法でスペード型冷却器を用いて冷却工程を行った。この時、前記冷却器内に投入される冷却空気の温度は35℃であり、投入速度は表面架橋された高吸水性樹脂1kgを基準として0.1m/h/kgであり、ボディ部の回転速度は1分あたり20回(20rpm)とした。また、前記冷却工程時、冷却器の内部に別途に備えられたノズルを通して水およびフュームドシリカ(Fumed silica)(Aerosil200、EVONIK社製)をそれぞれ投入した。この時、投入される水の温度は常温(25±2℃)であり、投入量は表面架橋された高吸水性樹脂100重量部を基準として5重量部である。さらに、前記フュームドシリカ(Fumed silica)は高吸水性樹脂100重量部に対して、0.1重量部の量で投入した。
【0242】
結果として、冷却および加水された高吸水性樹脂粒子を回収した後、分級して粒径150~850μmの高吸水性樹脂の正常粒子と、粒径850μm超の粗粒子とに分離した。分離された粗粒子はロールミルを用いて1回粉砕した後、前記高吸水性樹脂の正常粒子と混合して、高吸水性樹脂を製造した。
【0243】
実施例3~7
下記表1に記載の条件で行うことを除けば、前記実施例1と同様の方法で行って、高吸水性樹脂を製造した。
【0244】
比較例1
下記表1に記載されたように、前記製造例1で製造した表面架橋された高吸水性樹脂粒子をパドル型冷却器(paddle-type cooler;NPD-14WTM、Nara社製)に投入し、前記パドル型冷却器内部の二重ジャケットにノズルなしに常温(25±2℃)の水を表面架橋された高吸水性樹脂100重量部に対して5重量部投入し、1分あたり10回の速度(10rpm)でパドルを駆動させて混合し、冷却工程を行った(シリカの投入なし)。冷却段階の後、分級、粗粒子粉砕および高吸水性樹脂の正常粒子との混合工程を行わないことを除けば、前記実施例1と同様の方法で行って、高吸水性樹脂を製造した。
【0245】
比較例2
下記表1に記載されたように、前記製造例1で製造した表面架橋された高吸水性樹脂粒子をパドル型冷却器(NPD-14WTM、Nara社製)に投入し、前記パドル型冷却器の内部に備えられたノズルを通して常温(25±2℃)の水を表面架橋された高吸水性樹脂100重量部に対して5重量部二重ジャケットに投入し、1分あたり10回の速度(10rpm)でパドルを駆動させて混合し、冷却工程を行うことを除けば、前記実施例1と同様の方法で行って、高吸水性樹脂を製造した。
【0246】
比較例3
下記表1に記載されたように、前記製造例1で製造した高吸水性樹脂粒子をパドル型冷却器に投入し、前記パドル型冷却器(NPD-14WTM、Nara社製)の内部に備えられたノズルを通して常温(25±2℃)の水を表面架橋された高吸水性樹脂100重量部に対して5重量部二重ジャケットに投入し、1分あたり10回の速度(10rpm)でパドルを駆動させて混合し、冷却工程を行った。
【0247】
完了後、冷却された高吸水性樹脂粒子をプロシェアタイプミキサ(Ploughshare-type mixer)(CoriMix(登録商標)CM、Leodige社製)に投入し、フュームドシリカ(Fumed silica)(Aerosil200、EVONIK社製)を高吸水性樹脂100重量部に対して0.1重量部投入し、プロシェア(Ploughshare)を1分あたり200回の速度(200rpm)で駆動させて混合した。
【0248】
結果の混合物を分級して粒径150~850μmの高吸水性樹脂の正常粒子と、粒径850μm超の粗粒子とに分離した。分離された粗粒子はロールミルを用いて1回粉砕した後、前記高吸水性樹脂の正常粒子と混合して、高吸水性樹脂を製造した。
【0249】
【表1】
【0250】
前記表中、「重量部」は、表面架橋された高吸水性樹脂100重量部を基準とする相対的な含有量比である。
【0251】
実験例1
前記実施例および比較例で最終的に製造した高吸水性樹脂に対して、下記の方法で吸水性能を評価した。
【0252】
異なって表記しない限り、以下の物性評価は、すべて恒温恒湿(23±1℃、相対湿度50±10%)で進行させ、生理食塩水または塩水は、0.9重量%塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を意味する。
【0253】
また、異なって表記しない限り、最終的に製造した高吸水性樹脂に対する物性評価は、ASTM規格の篩で分級した150μm~850μmの粒径を有する樹脂に対して行った。
【0254】
(1)含水率
前記実施例および比較例で最終的に製造した高吸水性樹脂に対して含水率を測定した。前記含水率は、高吸水性樹脂の総重量に対して占める水分の含有量で、下記の数式1により算出した。
【0255】
具体的には、赤外線加熱により高吸水性樹脂の温度を上げて乾燥する過程で高吸水性樹脂中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算した。この時、乾燥条件は、常温から180℃まで温度を上昇させた後、180℃で維持する方式で、総乾燥時間は、温度上昇段階の5分を含む40分に設定した。乾燥前/後の高吸水性樹脂の重量をそれぞれ測定し、下記の数式1により計算した。
【0256】
[数式1]
含水率(重量%)=[(Ao-At)/Ao]×100
【0257】
上記式中、Atは、乾燥後の高吸水性樹脂の重量であり、Aoは、乾燥前の高吸水性樹脂の重量である。
【0258】
(2)遠心分離保水能(CRC、Centrifuge Retention Capacity)
前記実施例および比較例で最終的に製造した高吸水性樹脂の無荷重下吸水倍率による保水能を欧州不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格EDANA WSP241.3により測定した。
【0259】
具体的には、実施例および比較例によりそれぞれ得られた高吸水性樹脂W(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)に浸した。30分経過後、遠心分離機を用いて、250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を切り、封筒の質量W(g)を測定した。また、樹脂を用いずに同一の操作をした後に、その時の質量W(g)を測定した。
【0260】
得られた各質量を用いて、下記の数式3によりCRC(g/g)を算出した。
【0261】
[数3]
CRC(g/g)={[W(g)-W(g)]/W(g)}-1
【0262】
(3)加圧吸水能(AUP:Absorbency under Pressure)
前記実施例および比較例で最終的に製造した高吸水性樹脂の0.3psiの加圧吸水能をEDANA法WSP242.3により測定した。
【0263】
具体的には、内径25mmのプラスチックの円筒底にステンレス製400meshの金網を装着させた。常温および湿度50%の条件下で金網上に高吸水性樹脂W(g)(0.9g)を均一に散布し、その上に0.3psiの荷重を均一にさらに付与できるピストンは、外径25mmよりやや小さく、円筒の内壁と隙間がなく、上下の動きが妨げられないようにした。この時、前記装置の重量W(g)を測定した。
【0264】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmおよび厚さ5mmのガラスフィルタをおき、0.9重量%塩化ナトリウムからなる生理食塩水をガラスフィルタの上面と同一レベルとなるようにした。その上に直径90mmのろ過紙1枚を載せた。ろ過紙の上に前記測定装置を載せ、液を荷重下で1時間吸収させた。1時間後に測定装置を持ち上げて、その重量W(g)を測定した。
【0265】
得られた各質量を用いて、下記の数式4により加圧吸水能(g/g)を算出した。
【0266】
[数式4]
AUP(g/g)=[W(g)-W(g)]/W(g)
【0267】
前記測定を5回繰り返し、その平均値および標準偏差を求めた。
【0268】
(4)850μm超(#20上)の粒径を有する粗粒子の含有量
実施例および比較例で冷却および加水段階の後に得られた高吸水性樹脂粒子をASTM規格の850μm(20メッシュ)、600μm(30メッシュ)、300μm(50メッシュ)、および150μm(100メッシュ)の大きさの目盛を有する標準篩(sieve)を用いて分級し、850μm超の粒径を有する粗粒子(coarse particle)の重量を測定した後、前記冷却および加水された高吸水性樹脂粒子の総重量に対する前記粗粒子の重量比を百分率で表した(重量%)。
【0269】
【表2】
【0270】
実験の結果、実施例1は、比較例1と比較して、高い含水率を保有しながらも、CRCおよびAUPなど吸水性能の低下がなかった。また、比較例2と比較して、850μm超の粒径を有する粗粒子の含有量が減少し、CRCおよびAUPの吸水性能の面でもより優れた効果を示した。
【0271】
また、実施例2は、比較例3と比較して、850μm超の粒径を有する粗粒子の含有量が減少し、CRCおよびAUPの吸水性能の面で優れた効果を示した。さらに、比較例3と比較して、AUPの物性偏差も小さかった。
【0272】
実験例2
高吸水性樹脂の製造時、無機物質の投入によるケーキング防止効果を評価するために、無機物質を用いて製造した実施例および比較例の最終高吸水性樹脂に対して、下記の方法でケーキング防止(A/C、Anti-caking)効率を測定した。
【0273】
<測定装置>
-電子秤(精密度:0.01g)
-恒温恒湿チャンバ(温度:40℃、湿度:80%RH)
-ペトリディッシュ(petri dish、Ф:90mm、高さ:15mm)
-ストップウォッチ
-A4用紙
【0274】
<測定方法>
(1)まず、用意されたペトリディッシュの重量(W)を測定した。
(2)次に、重量を測定したペトリディッシュに、試料として前記実施例または比較例で製造した高吸水性樹脂2±0.01gを均等に塗布した。
(3)以後、高吸水性樹脂試料が入ったペトリディッシュを温度40℃、湿度80%RHにセットされた恒温恒湿チャンバに入れて10分間放置した。
(4)10分経過後、恒温恒湿チェンバでペトリディッシュを取り出して、用意されたA4用紙にひっくり返しておいた後、5分間放置した。
(5)5分経過後、A4用紙に落下した高吸水性樹脂試料の重量(S)およびこの時のペトリディッシュの重量(S)をそれぞれ測定した後、下記の数式2によりケーキング防止効率を計算し、少数点1桁で四捨五入して表した。
【0275】
【数2】
【0276】
上記式中、
は、直径90mmおよび高さ15mmのペトリディッシュの重量(g)であり、
は、Wで重量が測定されたペトリディッシュに高吸水性樹脂試料2±0.01gを均等に塗布した後、前記試料が塗布されたペトリディッシュを温度40℃および湿度80%RHにセットされた恒温恒湿チャンバ内に10分間放置した後、これを取り出してA4用紙にひっくり返しておき、5分経過後に測定した前記A4用紙に落下した高吸水性樹脂試料の重量(g)であり、
は、前記Sを測定した時点でのペトリディッシュの重量(g)である。
【0277】
前記測定を5回繰り返し、その平均値および標準偏差を求めた。
【0278】
【表3】
【0279】
実験の結果、実施例2~7は、比較例3に比べて顕著に増加したケーキング防止効率を示し、物性偏差も小さかった。
【符号の説明】
【0280】
1:ボディ部
1a:回転部
1b:固定部
1c:高吸水性樹脂投入口
1d:高吸水性樹脂排出口
1e:添加剤投入口
2a:冷却空気投入用ノズル
2b:水投入用ノズル
3:スペード型ブレード
4:駆動モータ
10:スペード型冷却器
20:高吸水性樹脂粒子
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】