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特表2023-548240エピタキシャル欠陥となるグローイン核を低減したシリコン基板を形成する方法およびエピタキシャルウエハを形成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】エピタキシャル欠陥となるグローイン核を低減したシリコン基板を形成する方法およびエピタキシャルウエハを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
C30B29/06 502J
C30B29/06 502H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528068
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2020087962
(87)【国際公開番号】W WO2022100875
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】63/112,424
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107180
【弁理士】
【氏名又は名称】玄番 佐奈恵
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ドゥキーニ,ヤヌーシャ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルコッツェーナ,ピエトロ
(72)【発明者】
【氏名】ポッリーニ,マリア
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB01
4G077AB10
4G077BA04
4G077CF10
4G077EA01
4G077EB01
4G077EB05
4G077FG13
4G077HA06
(57)【要約】
エピタキシャル成長用の単結晶シリコン基板を作製する方法が開示される。方法は、インゴットセグメントの成長の間、(i)成長速度vおよび/または(ii)軸方向温度勾配Gを、v/Gが臨界v/Gより小さくなるように、および/またはv/Gがインゴットのホウ素濃度に依存するv/Gの値よりも小さくなるように制御することを含み得る。エピタキシャルウエハを作製する方法もまた開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシャル欠陥となるグローイン核を低減させたシリコン基板であって、ホウ素が少なくとも2.8×1018原子/cm3の濃度でドープされているシリコン基板を形成する方法であって、
初期投入量の多結晶シリコンを坩堝に加えること;
初期投入量の多結晶シリコンを含む坩堝を加熱して、シリコン融液を坩堝内で形成すること;
ホウ素を坩堝に加えて、ドープされたシリコン融液を作製すること;
シリコン種結晶を前記ドープされたシリコン融液と接触させること;
シリコン種結晶を引き上げて、一定直径部分を有する単結晶シリコンインゴットを成長させること
を含み、
前記インゴットの前記一定直径部分のセグメントが、少なくとも約2.8×1018原子/cm3のホウ素濃度を有し;
前記セグメントが2.8×1018原子/cm3~5.4×1018原子/cm3のホウ素濃度を有するとき、(i)成長速度vおよび/または(ii)軸方向温度勾配Gを、前記セグメントの成長の間、v/Gが0.20mm2/(min・K)未満となるように制御し、
前記セグメントが5.4×1018原子/cm3~8.0×1018原子/cm3のホウ素濃度を有するとき、(i)成長速度vおよび/または(ii)軸方向温度勾配Gを、前記セグメントの成長の間、v/Gが0.25mm2/(min・K)未満となるように制御し、
前記セグメントが8.0×1018原子/cm3よりも大きいホウ素濃度を有するとき、(i)成長速度vおよび/または(ii)軸方向温度勾配Gを、任意の値のv/Gで操作し、
前記インゴットの前記一定直径部分の前記セグメントを、その凝固温度から950℃以下に冷却することを含み、前記インゴットの前記一定直径部分の前記セグメントが1150℃~950℃の温度範囲にあるドウェル時間を160分未満とする、
方法。
【請求項2】
前記一定直径部分が長さDを有し、前記セグメントの長さが少なくとも0.5×Dであり、あるいは少なくとも0.75×Dであり、あるいは少なくとも0.9×Dであり、あるいは前記セグメントが前記インゴットの前記一定直径部分全体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インゴットの前記一定直径部分の前記セグメントが1150℃~950℃の温度範囲にあるドウェル時間が120分未満であり、あるいは90分未満であり、あるいは60分未満である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記セグメントが2.8×1018原子/cm3~5.4×1018原子/cm3のホウ素濃度を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記セグメントが5.4×1018原子/cm3~8.0×1018原子/cm3のホウ素濃度を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記セグメントが8.0×1018原子/cm3よりも大きいホウ素濃度を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記融液に炭素がドープされていない、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記単結晶シリコンインゴットを基板にスライスすることをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
エピタキシャル構造を作製する方法であって、
シリコン基板を請求項1~8のいずれか1項に記載の方法で形成すること;
前記シリコン基板の前面を、分解してエピタキシャルシリコン層を前記シリコン基板上に形成するシリコン含有ガスに接触させること
を含む、方法。
【請求項10】
エピタキシャル欠陥となるグローイン核を低減させたシリコン基板を形成する方法であって、
初期投入量の多結晶シリコンを坩堝に加えること;
初期投入量の多結晶シリコンを含む坩堝を加熱して、シリコン融液を坩堝内で形成すること;
ホウ素を坩堝に加えて、少なくとも3.8×1018原子/cm3のホウ素濃度を有するドープされたシリコン融液を作製すること;
シリコン種結晶を前記ドープされたシリコン融液と接触させること;
シリコン種結晶を引き上げて、一定直径部分を有する単結晶シリコンインゴットを成長させること
(i)成長速度vおよび/または(ii)軸方向温度勾配Gを、前記インゴットの前記一定直径部分のセグメントの成長の間、v/Gが臨界v/G未満となるように制御すること;
前記インゴットの前記一定直径部分の前記セグメントを、凝固温度から950℃以下に冷却することを含み、前記インゴットの前記一定直径部分の前記セグメントが1150℃~950℃の温度範囲にあるドウェル時間を160分未満とする、
方法。
【請求項11】
前記一定直径部分が長さDを有し、前記セグメントの長さが少なくとも0.5×Dであり、あるいは少なくとも0.75×Dであり、あるいは少なくとも0.9×Dであり、あるいは前記セグメントが前記インゴットの前記一定直径部分全体である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記インゴットの前記一定直径部分の前記セグメントが1150℃~950℃の温度範囲にあるドウェル時間が120分未満であり、あるいは90分未満であり、あるいは60分未満である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記一定直径部分の前記セグメントにおいてホウ素濃度が2.8×1018原子/cm3~5.4×1018原子/cm3であるとき、(i)成長速度vおよび/または(ii)軸方向温度勾配Gを、v/Gが0.20mm2/(min・K)未満となるように制御し、
前記一定直径部分の前記セグメントにおいてホウ素濃度が5.4×1018原子/cm3~8.0×1018原子/cm3であるとき、(i)成長速度vおよび/または(ii)軸方向温度勾配Gを、v/Gが0.25mm2/(min・K)未満となるように制御する、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記一定直径部分の前記セグメントにおいてホウ素濃度が8.0×1018原子/cm3よりも大きいとき、任意の技術的に実行可能なv/Gの値を用いてよい、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記融液に炭素がドープされていない、請求項10~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記単結晶シリコンインゴットを基板にスライスすることをさらに含む、請求項10~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
エピタキシャル構造を作製する方法であって、
シリコン基板を請求項10~16のいずれか1項に記載の方法で形成すること;
前記シリコン基板の前面を、分解してエピタキシャルシリコン層を前記シリコン基板上に形成するシリコン含有ガスに接触させること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は2020年11月11日に出願された米国仮特許出願第63/112,424の利益を主張し、当該仮出願はその全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(開示の分野)
本開示の分野は、エピタキシャル成長のための単結晶シリコン基板の準備と、エピタキシャルウエハを形成する方法とに関連する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
エピタキシャルウエハは、その前面にエピタキシャル層が堆積された単結晶シリコン基板を含む。エピタキシャルウエハは、マイクロエレクトロニクス(集積回路もしくはパワー用途)または光起電力用途に適した電子デバイスを形成するために使用され得る。
【0004】
エピタキシャルウエハは、その性能を低下させる表面欠陥を有することがある。シリコン基板に形成された欠陥の中には、エピタキシャルプロセス中に消失しないものがあり、エピタキシャル堆積後にエピタキシャル層中のグローイン(grow-in;または成長)欠陥部位(例えば、エピ積層欠陥または「盛上り(ヒロック;hillock)」)の原因となると考えられている。これらのグローイン欠陥は、エピタキシャル層を通過する欠陥伝播によって形成されると考えられている。エピタキシャル層を厚くすると、基板の欠陥をカバーする代わりに、<111>結晶面に沿ったシリコンエピタキシャル成長モードに起因して基板表面の出発欠陥の寸法を大きくし、エピタキシャル層の厚さの増加に伴い、より大きく、より目に見えるエピタキシャル欠陥を形成させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板ウエハ中のエピタキシャル欠陥となるグローイン核(grow-in nuclei)の数を減らす方法と、エピタキシャルウエハを形成する関連した方法に対する要求が存在する。
【0006】
このセクションは、以下で説明され、および/または特許請求される本開示の様々な側面に関連し得る、様々な技術の側面を読者に紹介することを目的とする。この議論は、本開示の様々な側面のより良い理解を促進するための背景情報を読者に提供するうえで有用であると考えられる。したがって、これらの説明は、このような観点から読まれるべきであり、先行技術の承認として読まれるものでないことが理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要約)
本開示の一つの態様は、エピタキシャル欠陥となるグローイン核を低減させたシリコン基板を形成する方法に関する。シリコン基板は、少なくとも2.8×1018原子/cm3の濃度でホウ素ドープされる。初期投入量の多結晶シリコンを坩堝に加える。初期投入量の多結晶シリコンを含む坩堝を加熱して、坩堝内にシリコン融液を形成する。坩堝にホウ素を添加し、ドープされたシリコン融液を生成する。シリコン種結晶をドープされたシリコン融液に接触させる。シリコン種結晶を引き上げて、一定直径部分を有する単結晶シリコンインゴットを成長させる。インゴットの一定直径部分のセグメント(または一部)は、少なくとも約2.8×1018原子/cm3のホウ素濃度を有する。セグメントが2.8×1018原子/cm3~5.4×1018原子/cm3のホウ素濃度を有する場合、(i)成長速度v、および/または(ii)軸方向温度勾配Gは、v/Gが0.20mm2/(min・K)以下となるように、セグメントの成長中に制御される。セグメントが5.4×1018原子/cm3~8.0×1018原子/cm3のホウ素濃度を有する場合、(i)成長速度v、および/または(ii)軸方向温度勾配Gは、v/Gが0.25 mm2/(min・K)未満となるように、セグメントの成長中に制御される。セグメントが8.0×1018原子/cm3より大きいホウ素濃度を有する場合、(i)成長速度v、および/または(ii)軸方向温度勾配Gは、任意の値のv/Gで操作される。インゴットの一定直径部分のセグメントは、その凝固温度から950℃以下にまで冷却される。インゴットの一定直径部分のセグメントが1150℃~950℃の温度範囲にあるドウェル時間(dwell time;または滞留時間)は、160分未満である。
【0008】
本開示のさらに別の態様は、エピタキシャル欠陥となるグローイン核を低減させたシリコン基板を形成する方法に関する。初期投入量の多結晶シリコンを坩堝に加える。初期投入の多結晶シリコンを含む坩堝を加熱して、坩堝内にシリコン融液を形成する。ホウ素を坩堝に添加し、少なくとも3.8×1018原子/cm3のホウ素濃度を有するドープされたシリコン融液を準備する。シリコン種結晶をドープされたシリコン融液に接触させる。シリコン種結晶を引き上げて、単結晶シリコンインゴットを成長させる。インゴットは一定の直径部分を有する。当該方法は、(i)成長速度v、および/または(ii)軸方向温度勾配Gを、比v/Gが臨界v/Gよりも小さくなるように、インゴットの一定直径部分のセグメントの成長中、制御することをさらに含む。インゴットの一定直径部分は、その凝固温度から、950℃以下にまで冷却される。インゴットの一定直径部分のセグメントが1150℃~950℃の温度範囲にあるドウェル時間は、160分未満である。
【0009】
本開示の上述の態様に関連して言及した特徴の様々な改良が存在する。さらなる特徴もまた同様に、本開示の上述の態様に組み込まれてよい。これらの改良および追加の特徴は、独立して、または任意の組み合わせで存在してよい。例えば、本開示の図示された実施形態のいずれかに関連して後述される様々な特徴は、本開示の上述の態様のいずれかに、単独で、または任意の組み合わせで組み込まれてよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1はシリコンインゴット成長前のインゴット引き上げ装置の断面図である。
図2図2はシリコンインゴット成長中の図1のインゴット引き上げ装置の断面図である。
図3図3は、単結晶シリコンインゴットの模式断面図であり、三つのホウ素ドーピングレベル((a)から(c)に向かって増加する)について空孔リッチ領域および格子間原子リッチ領域の軸方向の傾向を示す。
図4図4は、1150℃~950℃の温度範囲での時間を相対的に長くした、単結晶インゴットにおける基板ウエハの軸方向位置の関数としてのエピタキシャル欠陥数のグラフである。
図5図5は、1150℃~950℃の温度範囲での時間を相対的に短くした、単結晶インゴットにおける基板ウエハの軸方向位置の関数としてのエピタキシャル欠陥の数のグラフである。
図6図6は、インゴットセグメントが1150℃~950℃の温度範囲あるドウェル時間の関数としての欠陥数のグラフである。
図7図7は、種々の単結晶シリコンインゴットについての結晶長に対するドウェル時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面全体を通じて同じ参照符号は同じ部分を示す。
【0012】
本開示の提供は、エピタキシャル欠陥(すなわち、エピタキシャル基板上でのエピタキシャルシリコン成長の後に発生する欠陥)となるグローイン核を低減させたシリコン基板を形成する方法に関する。本開示の実施形態によれば、エピタキシャル成長の間に欠陥をもたらす核を減少させるために、成長速度(v)および軸方向温度勾配(G)の比(v/G)を、インゴットの一定直径部分のセグメントまたは全体が成長する間、制御してよく、また、セグメントが1150℃~950℃の温度範囲にある時間を160分以下に制御する。得られる基板は、基板上で成長させるエピタキシャル層が、低減したグローイン欠陥を有する又はグローイン欠陥を有しない、エピタキシャルなシリコンの成長に適したものとなる。
【0013】
本開示の方法は概して、単結晶シリコンインゴットを引き上げるように構成された任意のインゴット引き上げ装置において実施され得る。図1において、インゴット引き上げ装置(またはより単純には「インゴット・プーラー(ingot puller)」)の例は、全体として「100」で示される。インゴット引き上げ装置100は、サセプタ106で支持された、半導体グレードまたはソーラー(もしくは太陽電池)グレードの物質(例えばシリコン)の融液104を保持する坩堝102を含む。インゴット引き上げ装置100は、シリコンインゴット113(図2)を融液104から引き上げ軸Aに沿って引き上げるための成長チャンバ152を画定する結晶引き上げ装置ハウジング108を含む。
【0014】
坩堝102は、床129および床129から上向きに延びる側壁131を含む。側壁131は、概して垂直である。床129は、側壁131の下で延びる、坩堝102の曲がった部分を含む。坩堝102内には、融液表面111(即ち、融液-インゴット界面)を有するシリコン融液104がある。
【0015】
ある実施形態においては、坩堝102は積層体であってよい。例えば、坩堝102は、石英のベース層および石英のベース層上に配置された合成石英のライナーから構成されてよい。
【0016】
サセプタ106は、シャフト105によって支持される。サセプタ106、坩堝102、シャフト105およびインゴット113(図2)は、共通の長手方向の軸Aまたは「引き上げ軸」Aを有する。
【0017】
引き上げ機構114が、融液104からインゴット113を成長させ且つ引き上げるために、インゴット引き上げ装置100内に設けられる。引き上げ機構114は、引き上げケーブル118、引き上げケーブル118の一端に取り付けられたシード(seed)ホルダーまたはチャック120、およびシードホルダーまたはチャック120に取り付けられた結晶成長を開始するためのシリコン種結晶122を含む。引き上げケーブル118の一端は、プーリ(図示せず)もしくはドラム(図示せず)、または他の任意の適当な種類の昇降機構、例えばシャフトに接続され、他端は種結晶122を保持するチャック120に接続されている。操作中、種結晶122を下降させて融液104に接触させる。引き上げ機構114を操作して、種結晶122を上昇させる。これにより、単結晶インゴット113(図2)が融液104から引き上げられる。
【0018】
加熱および結晶引き上げの間、坩堝駆動ユニット107(例えばモータ)は坩堝102およびサセプタ106を回転させる。昇降機構112は、成長プロセスの間、坩堝102を引き上げ軸Aに沿って上昇および下降させる。例えば、図1に示すように、坩堝102は、最も低い位置(底部ヒータ126付近)にあってよく、そこで坩堝102にあらかじめ加えられた初期投入量の固相多結晶シリコンを溶融させる。結晶成長は、融液104を種結晶122に接触させ、種結晶122を引き上げ機構114により持ち上げることによって開始する。インゴットが成長するにつれて、シリコン融液104は消費され、坩堝102内の融液の高さが減少する。融液表面111をインゴット引き上げ装置100に対して同じ位置又はそれに近い位置に維持するように、坩堝102およびサセプタ106を上昇させてよい(図2)。
【0019】
結晶駆動ユニット(図示せず)はまた、引き上げケーブル118およびインゴット113(図2)を、坩堝駆動ユニット107が坩堝102を回転させる方向と反対の方向に回転(例えば、逆回転)させてよい。等回転を用いる実施形態において、結晶駆動ユニットは、引き上げケーブル118を、坩堝駆動ユニット107が坩堝102を回転させる方向と同じ方向に回転させてよい。加えて、結晶駆動ユニットは、インゴット113を、成長プロセスの間、融液表面111に対して所望のように上昇および下降させる。
【0020】
インゴット引き上げ装置100は、アルゴンのような不活性ガスを成長チャンバ152に導入し、成長チャンバ152から抜き取る不活性ガスシステムを含んでよい。インゴット引き上げ装置100はまた、ドーパントを融液104に導入するためのドーパント供給システム(図示せず)を含んでよい。
【0021】
チョクラルスキー(Czochralski)単結晶成長プロセスによれば、所定量の多結晶シリコンまたはポリシリコンが坩堝102に投入される。坩堝に導入される半導体またはソーラーグレードの初期物質は、一または複数の加熱要素から供給される熱により溶融させられて、シリコン融液を坩堝内に形成する。インゴット引き上げ装置100は、引き上げ装置内の熱を保持するために底部絶縁体110および側面絶縁体124を含む。図示した実施形態において、インゴット引き上げ装置100は、坩堝の床129の下に配置された底部ヒータ126を含む。坩堝102は、坩堝102に投入された多結晶を溶融させるために、底部ヒータ126に極めて接近するように移動させてよい。
【0022】
インゴットを形成するために、融液104の表面111に種結晶122を接触させる。引き上げ機構114を操作して、融液104から種結晶122を引き上げる。図2を参照すると、インゴット113は、インゴットが種結晶122から移行して外向きに広がって目的とする直径に達する王冠部分142を含む。インゴット113は、引き上げ速度を上昇させることにより成長させられる結晶の一定直径部分145または円筒形の「本体」(または直胴部)を含む。インゴット113の本体145は、比較的一定である直径を有する。インゴット113は、本体145の後でインゴットの直径が漸減しているテールまたはエンドコーン(もしくは末端錘)(図示せず)を含む。直径が十分に小さくなると、インゴット113を融液104から分離させる。
【0023】
インゴット引き上げ装置100は、結晶成長中の融液104の温度を維持するために、側面ヒータ135、および坩堝102を囲むサセプタ106を含む。側面ヒータ135は、坩堝102が引き上げ軸Aを上昇および下降している間、坩堝の側壁131に対して半径方向に外側に配置されている。側面ヒータ135および底部ヒータ126は、側面ヒータ135および底部ヒータ126が本明細書で説明するように作動することを可能にする任意のタイプのヒータであってよい。ある実施形態においては、ヒータ135、126は、抵抗発熱体であってよい。側面ヒータ135および底部ヒータ126は、融液104の温度が引き上げプロセスの間、制御されるように、制御システム(図示せず)によって制御されてよい。
【0024】
インゴット引き上げ装置100は、熱シールド151を含んでよい。熱シールド151は、インゴット113を覆ってよく、また、結晶成長の間、坩堝102内に配置してよい(図2)。
【0025】
ある実施形態においては、本明細書で説明される方法により製造されるシリコン基板はホウ素でドープされる(例えば、比較的高濃度でドープされる)。例えば、シリコン融液をホウ素でドープして、少なくとも2.8×1018原子/cm3のホウ素濃度を有するドープされたシリコンインゴットを製造してよい。融液を少なくとも3.8×1018原子/cm3の濃度でホウ素ドーピングすることを用いて、種側(またはシード端)で少なくとも2.8×1018原子/cm3のホウ素濃度を有するドープされたシリコンインゴットを得てよい。得られるインゴット(およびスライスされたウエハ)は、少なくとも2.8×1018原子/cm3のホウ素濃度を有し得る。ある実施形態においては、融液を炭素でドープしない(また、ある実施形態においてはホウ素以外のドーパントを用いない)。
【0026】
本開示の実施形態によれば、エピタキシャル欠陥となるグローイン核を低減させたシリコン基板を、またはそのようなグローイン核が実質的に無い基板を、(1)融液-結晶界面付近の軸方向の温度勾配(G)の大きさに対する結晶引き上げ速度(v)の比を制御し、(2)セグメントが1150℃~950℃の温度範囲にある時間(すなわち、ドウェル時間)を160分以下となるように制御することにより、製造し得る。
【0027】
シリコン成長中にv/Gの比を制御することにより、優勢欠陥の種類を制御し得る。より高いv/Gでは、点欠陥の対流がそれらの拡散よりも優勢であり、界面の空孔濃度が格子間原子濃度より高いため、空孔が支配的な点欠陥として組み込まれたままである。より低いv/Gでは、拡散が対流よりも優勢であり、速く拡散する格子間原子(または格子間欠陥もしくは格子間;interstitials)が支配的な点として組み込まれることを可能にする。v/Gが臨界値付近(すなわち、空孔と格子間原子との間の遷移が支配的である物質)である場合、両方の点欠陥が同等の非常に低い濃度で組み込まれる。
【0028】
本開示の実施形態によれば、(i)成長速度v、および/または(ii)軸方向温度勾配Gを、インゴットの一定直径部分の軸方向セグメントの成長の間、比v/Gがv/Gの臨界値未満となるように制御して、インゴット中の空孔濃度を減少させてよい(あるいは臨界v/Gよりもごく僅かだけ上回る値よりも小さくなるように制御してよい)。
【0029】
臨界v/Gは、一般にホウ素ドーピングの量に基づいて変化する。ホウ素は、平衡を格子間原子の状態(または体制)にシフトさせる。ホウ素濃度が上昇する(すなわち、抵抗率が減少する)につれて、空孔支配領域は縮小し、結晶中心にて完全に消える(図3C)。ホウ素がドープされたインゴットにおいて、空孔支配領域は、ホウ素のドーピングが8.0×1018原子/cm3よりも大きくなると(例えば、10mΩ・cm未満の抵抗率)、すべてのv/Gの比において除去され得る。
【0030】
ホウ素濃度が8.0×1018原子/cm3以下である場合、v/Gを臨界v/Gより小さくなるように(あるいは、臨界v/Gを僅かに上回る値よりも小さくなるように)制御してよい。本開示のある実施形態によれば、インゴットの一定直径部分のセグメントが2.8×1018原子/cm3~5.4×1018原子/cm3のホウ素濃度を有する場合、(i)成長速度v、および/または(ii)軸方向温度勾配Gを、v/Gが0.20mm2/(min・K)よりも小さくなるように制御する。インゴットの一定直径部分のセグメントが5.4×1018原子/cm3~8.0×1018原子/cm3のホウ素濃度を有する場合、(i)成長速度v、および/または(ii)軸方向温度勾配Gを、セグメントの成長中、v/Gが0.25 mm2/(min・K)未満となるように制御する。
【0031】
上記したように、セグメントが8.0×1018原子/cm3よりも大きい濃度でドープされている場合、v/Gのすべての範囲にわたって格子間原子がセグメント中の支配的な点欠陥であるので、v/Gを制御する必要はない(すなわち、任意の技術的に実行可能なv/Gを用いてよい)。
【0032】
v/Gは一般的にインゴットの中心にて最も高いので、本明細書で提供されるv/Gの範囲は一般的にインゴットの中心で測定されて、v/Gがインゴットの全半径にわたって上限値よりも小さくなることを確実にする。
【0033】
インゴットを融液から引き上げるにつれて、インゴットは凝固温度(約1412℃)から室温に冷却される。本開示の実施形態によれば、インゴットの成長およびv/Gの制御(v/Gは、ホウ素濃度8.0×1018原子/cm3以下、すなわち、抵抗率が10mΩ・cmを超えるときに制御される)の間、インゴットの冷却速度は、セグメント(例えば、セグメントの各部分)が1150℃~950℃の温度範囲にあるドウェル時間が最小となるように制御される。この点に関して、すべてのインゴットは、ホウ素のドーピング濃度にかかわらず、このようにして制御され得る。ある実施形態によれば、インゴットの冷却速度は、セグメントが1150℃~950℃の温度範囲にある時間が160分未満であるように制御される。
【0034】
インゴット引き上げ装置のホットゾーンは、この温度範囲にわたって、そのような冷却速度(例えば、1150℃~950℃の温度範囲を通じて、少なくとも1.25℃/分、少なくとも1.5℃/分、少なくとも2.0℃/分、少なくとも2.5℃/分、少なくとも3.0℃/分、または少なくとも3.5℃/分の冷却速度)が達成されるように、配置され、ならびに/または改変されてよい。そのような冷却を達成し得るホットゾーンは、下記の一又は複数の任意の組み合わせを含んでよい:
(1)インゴット表面付近の能動的冷却要素(例えば、水冷)、
(2)結晶表面と融液との間の断熱を高めて、融液から結晶への熱放射を減少させること、
(3)融液-インゴット界面付近に冷たい不活性ガスの噴流を適用すること、
(4)インゴットの周囲を囲んでインゴットが放射する熱をインゴット引き上げ装置の壁に反射させる円錐形の熱シールド(例えば、モリブデンのような反射性物質)を用いること。
他の実施形態において、セグメントが1150℃~950℃の温度範囲にある時間が120分未満、90分未満、または60分未満となるように、インゴットの冷却速度が制御される。
【0035】
上述のとおり、v/Gは格子間原子が支配的な点欠陥となるように制御してよく、また、インゴットの少なくともセグメント(例えば軸方向のセグメント)について、インゴットのセグメントが160分未満の間、1150℃~950℃の温度範囲にあるように、冷却速度を制御する。インゴットのこのセグメントは、インゴットの一定直径部分の長さ(D)の少なくとも0.5倍の長さ(0.5×D)を有してよい。他の実施形態において、セグメントの長さは少なくとも0.75×D、または少なくとも0.9Dである。ある実施形態において、セグメントはインゴットの一定直径部分の全体である。
【0036】
インゴットが成長すると、インゴットは基板(すなわち、ウエハ)にスライスされる。得られるウエハは、エピタキシャル成長の間形成されるエピタキシャル欠陥となるグローイン核を低減された量で有する。
【0037】
ウエハがインゴットからスライスされ、加工されると(例えば、種々の平滑化および/または表面粗さの低減)、分解してエピタキシャルシリコン層を基板上に形成するシリコン含有ガスを前面に接触させることによって、エピタキシャル層が基板の前面に形成され得る。断りの無い限りにおいて、一般に、シリコン基板にシリコンエピタキシャル層を堆積するために当業者が利用できる任意の方法を用いることができる。シリコンは、エピタキシーにより、装置の用途に応じて任意の適当な厚さとなるように堆積させてよい。例えば、有機金属化学気相堆積法(MOCVD)、物理気相堆積法(PVD)、化学気相堆積法(CVD)、低圧化学気相堆積法(LPCVD)、プラズマ励起化学気相堆積法(PECVD)、または分子ビームエピタキシー(MBE)を用いて、シリコンを堆積させてよい。LPCVDまたはPECVD用のシリコン前駆体(すなわち、シリコン含有ガス)として、とりわけメチルシラン、四水素化ケイ素(シラン)、トリシラン、ジシラン、ペンタシラン、ネオペンタシラン、テトラシラン、二塩化シラン(SiH2Cl2)、三塩化シラン(SiHCl3)、四塩化ケイ素(SiCl4)が挙げられる。例えば、シリコンは、シラン(SiH4)を約550℃と約690℃との間、例えば約580℃と約650℃との間の温度範囲にて熱分解することにより、表面酸化層上に堆積させてよい。チャンバ圧は、約70~約400mTorrの範囲であってよい。
【0038】
エピタキシャル反応器内にホウ素含有ガスを導入して、エピタキシャル層をホウ素でドープしてよい。ある実施形態において、得られるエピタキシャル構造(すなわち、基板およびエピタキシャル層)は、p/pエピタキシャルウエハを得るのに十分な濃度にてホウ素でドープされている。エピタキシャル層は、減少した数のグローイン欠陥を有し得、あるいはグローイン欠陥が実質的にないものとなり得る。
【0039】
シリコンエピタキシャル成長用の基板を形成する他の方法およびエピタキシャルウエハを形成する他の方法と比較して、本開示の方法はいくつかの利点を有する。ホウ素で高濃度ドープした基板(例えば、2.8 x 1018原子/cm3以上のホウ素濃度)は、格子間型転位ループの形成を抑制することが分かった。ホウ素で高濃度ドープした基板はまた、酸素の析出を増進させることが分かった。空孔リッチ領域(または空孔の多い領域)において、酸素の析出はさらに増進する(すなわち、より大きい析出物が形成される)。増進は、空孔濃度が高いほど強まる。ホウ素で高濃度ドープした基板上に堆積したエピタキシャル層におけるグローイン欠陥は、エピタキシャル層が成長する単結晶シリコン基板の表面におけるより大きな酸素析出物によって、有意に生じさせられると考えられている。これらの大きな酸素析出物は、転位ループまたは絡み合いと関連し得るが、これらはエピタキシャルプロセスの間に消滅せず、エピタキシャル層にて欠陥サイト(例えば、エピ積層欠陥または「ヒロック」)をもたらすと考えられている。比較的高濃度にドープした基板において、v/Gを臨界値(またはそれを僅かに超える値)未満に保つことにより、空孔がそれぞれ除去または減少させられ、そのことは、エピタキシャル堆積の間に消滅しない比較的大きい酸素析出物の形成を抑制する。したがって、v/Gを閾値より低く制御した比較的高濃度のホウ素ドーピングによって、格子間原子および空孔に起因する欠陥が減少すると考えられ得る。
【0040】
インゴットセグメントが8.0×1018原子/cm3よりも大きいホウ素濃度を有する実施形態において、セグメントは、十分に格子間原子の多いものであり、任意のv/Gの比を用いてよい。引き上げ速度vだけではなく、v/Gの比を制御することによって(例えば、高い値の熱勾配Gを提供するように構成されたホットゾーンを使用することによって)プロセス生産効率を保持することができる。
【0041】
インゴットセグメントが1150℃~950℃の温度範囲にある時間を最小とすること(例えば、160分以下のドウェル時間)により、v/Gの値に拘わらず、たとえ空孔が存在するとしても、欠陥をさらに減少または排除することができる。
【実施例
【0042】
本開示のプロセスを、以下の実施例によりさらに説明する。これらの実施例は限定的な意味で捉えられるべきではない。
【0043】
実施例1:異なるホウ素ドーピングレベルでのシリコンインゴットの空孔リッチ領域と格子間原子リッチ領域の軸方向の傾向
図3は、単結晶シリコンインゴットの模式断面図であり、三つのホウ素ドーピングレベルについて空孔リッチ(または空孔の多い)領域と格子間原子リッチ(または格子間原子の多い)領域の軸方向の傾向を示す。図3(a)は、高濃度でホウ素をドープしたシリコン結晶(例えば、2.8×1018原子/cm3での相対的に少量のドーピングであり、これは種側での目標抵抗率22mΩ・cm(高濃度のホウ素ドープシリコン基板の典型的な仕様である)に相当する)についての、空孔リッチ領域および格子間原子リッチ領域の軸方向の傾向を示す。図3(a)の結晶において、種結晶側では、空孔リッチ領域が、結晶の半径全体にわたって、中心から縁まで延びており、ホウ素濃度がドーパント偏析に起因して軸方向に増加するにつれて、結晶長に沿って徐々に縮小している。V/I境界において、OISFリングの位置もまた示されている。OISFリングは、空孔リッチ領域が完全に縮小しているところで消滅する。
【0044】
図3(b)は、高濃度でホウ素を中間濃度にドープしたシリコン結晶(例えば、種側にて4.5×1018原子/cm3での相対的に中間量のドーピングであり、これは種側での目標抵抗率16mΩ・cm(高濃度のホウ素ドープシリコン基板の典型的な中間抵抗率仕様を代表する抵抗率である)に相当する)についての、空孔リッチ領域および格子間原子リッチ領域の軸方向の傾向を示す。この実施例において、空孔リッチ領域は、種結晶側であっても中心からある距離だけ延びている。空孔リッチ領域は、ホウ素濃度がドーパント偏析に起因して軸方向に増加するにつれて、結晶長に沿って徐々に縮小して、ある軸方向の位置にて完全に消滅している。V/I境界にて、OISFリングの位置もまた示されている。OISFリングは、空孔リッチ領域が完全に縮小しているところで消滅する。
【0045】
図3(c)は、高濃度でホウ素をドープしたシリコン結晶(例えば、種側にて8.0×1018原子/cm3での比較的多量のドーピングであり、これは種側での目標抵抗率約10mΩ・cm(これは、5ないし10mΩ・cmという一般的なp++領域をカバーするために用いられる高濃度ホウ素ドープ結晶の典型的な抵抗率仕様である)に相当する)についての、空孔リッチ領域および格子間原子リッチ領域の軸方向の傾向を示す。図3(c)の欠陥パターンは、5mΩ・cmのような、さらにより低い抵抗率についても変わらない。空孔リッチ領域は存在せず、結晶は完全に格子間原子リッチである。OISFリングは形成されない。この高いドーピングレベルでは、v/G比の影響は見られず、欠陥の性質はドーパント濃度のみによって完全に決定されると結論づけることができる。
【0046】
実施例2:1150℃~950℃の温度範囲にある時間が相対的に長いインゴットセグメントからのウエハと当該時間が相対的に短いインゴットセグメントからのウエハとの間のエピタキシャル欠陥数の比較
図4は、レーザ検査装置により、1150℃~950℃の温度範囲にある時間が比較的長い単結晶インゴットにおいて測定した、基板ウエハの軸方向の位置の関数としてのエピタキシャル欠陥数のグラフである(「実施例1」と表示されている)。図4の左側のデータ点は、図3(a)に示した、相対的に少量のドーピング濃度(例えば、2.8×1018原子/cm3)にて、ホウ素を高濃度ドープした結晶についてのものである。図4の右側のデータ点は、図3(b)に示した、相対的に中間量のドーピング濃度(例えば、4.5×1018原子/cm3)にて、ホウ素を高濃度ドープした結晶についてのものである。
【0047】
図5は、レーザ検査装置により、1150℃~950℃の温度範囲にある時間が比較的短い単結晶インゴットにおいて測定した、基板ウエハの軸方向の位置の関数としてのエピタキシャル欠陥数のグラフである(「実施例2」と表示されている)。図5の左側のデータ点は、図3(a)に示した、相対的に少量のドーピング濃度(例えば、2.8×1018原子/cm3)にて、高濃度でホウ素をドープした結晶についてのものである。図5の右側のデータ点は、図3(b)に示した、相対的に中間量のドーピング濃度(例えば、4.5×1018原子/cm3)にて、高濃度でホウ素をドーピングした結晶についてのものである。
【0048】
図4および図5に示すように、1150℃~950℃の温度範囲にある時間を短くすることで、欠陥の数が、特に少量ドープした基板について減少した。
【0049】
図4および図5の欠陥数は、インゴットセグメントが1150℃~950℃の温度範囲にあるドウェル時間の関数として、図6に示されている。過剰な空孔濃度を有するインゴットセグメントは、菱形で示され、相対的により低い空孔濃度で成長したセグメントは×で示されている。図6に示すように、エピタキシャル欠陥は、インゴットセグメントが1150℃~950℃の温度範囲内にある、ドウェル時間に依存する。
【0050】
図7は1150℃と950℃の間の温度範囲内での種々のインゴットセグメントのドウェル時間を示す。相対的に遅い冷却は「実施例1」と示され、相対的に速い冷却は「実施例2」として示されている。4.32~4.61×1018原子/cm3のホウ素濃度および6.25×1017原子/cm3の酸素濃度を有するインゴットセグメントを選択した。中心でのv/Gは、約0.25 mm2/(min・K)であり、これはセグメントのホウ素濃度について上記した0.20mm2/(min・K)よりも高い範囲であった。1150℃と950℃の間でのドウェル時間180分を有するセグメントが選択された。セグメントはウエハにスライスされ、シリコンエピタキシャル層を各基板の前面に成長させた。エピタキシャルウエハを、レーザ検査装置で測定して、欠陥数を決定した。平均のエピタキシャル欠陥数はウエハあたり16個であり、本開示の実施形態により達成された、ウエハあたり3個よりもかなり高いものであった(例えば、図5および図6、ならびに以下の表1を参照)。
【0051】
図7はまた、図4(「実施例1」)および図5(「実施例2」)を作製するために用いたデータを示す。
【0052】
実施例3:v/Gの関数としての欠陥数
表1は、種々の試験ロットについて、結晶セグメント中のホウ素濃度、酸素濃度ターゲット、および1150℃~950℃の温度範囲にて過ごしたドウェル時間を示す。エピタキシャルシリコン層を各基板上に堆積し、レーザ検査装置で測定されるエピタキシャル欠陥数を測定した。表1において、「高」過剰空孔は、v/Gが上述したv/G範囲よりも高いものであった(ホウ素濃度2.8×1018原子/cm3~5.4×1018原子/cm3について、v/Gは0.20mm2/(min・K)よりも大きく、ホウ素濃度5.4×1018原子/cm3~8.0x1018原子/cm3について、v/Gが0.25よりも大きい)ことを示す。「低」過剰空孔は、v/Gが上述したv/G範囲よりも低いものであった(ホウ素濃度2.8×1018原子/cm3~5.4×1018原子/cmについて、v/Gが0.20mm2/(min・K)よりも小さく、ホウ素濃度5.4×1018原子/cm3~8.0x1018原子/cm3についてv/Gが0.25よりも小さい)ことを示す。
【表1】
【0053】
表1に示すように、過剰空孔濃度が低いとき、または1150℃~950℃の温度範囲内にあるドウェル時間が短いときに(またはこれらの条件の組み合わせにて)、小さい欠陥数を達成し得る。
【0054】
本明細書で用いられるように、「約」、「実質的に」、「本質的に」、「おおよそ」という用語が寸法、濃度、温度、または他の物理的もしくは化学的性能もしくは特性の範囲と関連して使用される場合、性能もしくは特性の上限値および/または下限値に存在し得る変動であって、例えば、丸め、測定方法または他の統計的変動に由来する変動を含む変動を包含することを意図する。
【0055】
本開示またはその実施形態の要素に言及する場合、「ある(a)」、「ある(an)」、「その(the)」、および「上記(said)」などの冠詞は、1またはそれよりも多い要素を意味することを意図している。「有する/含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」の用語は、包含的なものであって、挙げられた要素以外の追加要素も存在し得ることを意味することを意図している。特定の向きを示す用語(例えば、「上(top)」、「下/底(bottom)」、「横/側/側面(side)」等)の使用は説明の便宜のためのものであり、説明される物(またはアイテム)の何らかの特定の向きを要求するものではない。
【0056】
本開示の範囲から逸脱することなく、上述した構成および方法について種々の変更を行うことができるので、上記説明に含まれ、添付した図面に示される全ての事項は、例示的なものとして解され、限定的な意味で解されないことを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】