(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-17
(54)【発明の名称】ハウジングを通って延在する流体充填排気管を有する結晶引上げシステム
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20231110BHJP
C30B 15/00 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
C30B29/06 502
C30B15/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527033
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 US2021057973
(87)【国際公開番号】W WO2022098811
(87)【国際公開日】2022-05-12
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】アリンジェル,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ザルドーニ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ディオーダ,マウロ
(72)【発明者】
【氏名】スリードハラムルティ,ハリプラサド
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077PA04
(57)【要約】
流体冷却排気管を有する結晶引上げシステムが開示される。流体冷却排気管は、反応器ハウジングを通って反応チャンバ内に延在する。いくつかの実施形態では、排気管は、結晶プラーハウジングの底部を通り、インゴットプラーハウジング内の底部熱シールドを通って延在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン融液から単結晶インゴットを成長させるための結晶引上げシステムであって、
成長チャンバを画定するハウジングであって、底部と、前記底部から延在する側壁とを有する、ハウジングと、
前記シリコン融液を収容するために前記成長チャンバ内に設けられたるつぼと、
前記ハウジングの前記底部を通って外向きに延在する排気管であって、前記成長チャンバから排気ガスを排出するための排気流路を画定する排気管と、
を備え、
前記排気管は、
内壁と、
外壁と、
前記内壁と前記外壁との間に画定され、前記排気流路内の排気ガスを冷却するために冷却流体を循環させる流体通路と、
を含む、
結晶引上げシステム。
【請求項2】
前記結晶引上げシステムハウジング内に配置された底部熱シールドを備え、前記底部熱シールドは厚さを有し、前記排気管は、前記底部熱シールドの前記厚さ全体を通って延在する、
請求項1に記載の結晶引上げシステム。
【請求項3】
排気ガスプレナムを備え、前記排気ガスプレナムはプレナムハウジングを含み、前記プレナムハウジングは、床と、頂部と、前記床と前記頂部との間に延在する側壁とを含み、前記排気管は、前記プレナムハウジング床内に延在する、
請求項1または請求項2に記載の結晶引上げシステム。
【請求項4】
前記プレナムハウジングは断熱材で作られている、
請求項3に記載の結晶引上げシステム。
【請求項5】
前記排気ガスプレナムは入口を有し、前記入口は、底部熱シールドから延在する側面熱シールドに対して径方向内向きに設けられ、前記側面熱シールドは、前記ハウジング側壁に対して径方向内側にある、
請求項3または請求項4に記載の結晶引上げシステム。
【請求項6】
前記排気流路を通して排気ガスを引き出すために前記排気管に流体接続された真空ポンプを備える、
請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶引上げシステム。
【請求項7】
前記排気管の一部が前記底部から下向きに延在し、前記一部は流体冷却される、
請求項1から6のいずれか一項に記載の結晶引上げシステム。
【請求項8】
前記るつぼを取り囲むサイドヒータを備え、前記排気ガスプレナムの前記入口は、前記サイドヒータに対して径方向外向きに配置されている、
請求項5から7のいずれか一項に記載の結晶引上げシステム。
【請求項9】
前記排気管の内面から堆積物を除去する回転可能なオーガを前記排気管内に備える、
請求項1から8のいずれか一項に記載の結晶引上げシステム。
【請求項10】
前記るつぼにポリシリコンを添加するための供給管をさらに備える、
請求項1から9のいずれか一項に記載の結晶引上げシステム。
【請求項11】
前記排気管は、前記内壁および外壁内に配置されたバッフルを備え、前記流体通路は、前記内壁、前記外壁、および前記バッフルの間に画定されている、
請求項1から10のいずれか一項に記載の結晶引上げシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2020年11月4日に出願された米国特許仮出願第63/109,669号の利益を主張する。
【0002】
本開示の分野は、シリコンインゴットを成長させるための結晶引上げシステムに関し、特に、排気ガスを急速クエンチするために結晶引上げシステムのハウジングを通って延在する1つ以上の排気管を含むシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
単結晶シリコンインゴットは、単結晶シリコンシードがるつぼ内に保持されたシリコン融液と接触させられる、いわゆるチョクラルスキー法によって調製され得る。単結晶シリコンシードは、融液から単結晶シリコンインゴットを引き上げるために、融液から引き出される。インゴットは、多結晶シリコンの投入物がるつぼ内で最初に溶融され、るつぼ内の溶融シリコンが枯渇するまでシリコンインゴットが融液から引き出される、バッチシステムで調製され得る。あるいは、インゴットは、インゴット成長中にシリコン融液を補充するためにポリシリコンが断続的または連続的に融液に添加される連続チョクラルスキー法で引き出されてもよい。
【0004】
結晶引上げは、プラーのハウジング内で雰囲気の存在下で実行され得る。バッチおよび連続の両方のチョクラルスキープロセスにおいて、アルゴンなどのシリコンに対して不活性なプロセスガスがハウジング内に連続的に導入され、プラーの排気システムを通って引き出される。プロセスガスが引き出されると、プラーチャンバと比較して低温の排気システム管上に化合物が堆積する可能性がある(例えば、方砒素華、炭化シリコン、および酸化シリコン化合物)。このような堆積物はシステムから除去されるが、これにはプラーを動作から取り出す必要があり、これによって処理コストが増加する場合がある。
【0005】
連続チョクラルスキー法では、結晶引上げシステムは、より長時間動作する。これにより、より大きく閉塞性の高い堆積物が排気管内に形成され、システムの稼働時間を制限する。
【0006】
プラーの排気システム上の堆積物の形成が少ないことを特徴とする結晶引上げシステムが必要とされている。
【0007】
このセクションは、以下に記載および/または請求される、本開示の様々な態様に関連し得る技術の様々な態様を読者に紹介することを意図している。この議論は、本開示の様々な態様のより良い理解を容易にするための背景情報を読者に提供するのに役立つと考えられる。したがって、これらの記述は、従来技術の承認としてではなく、この観点から読まれるべきであると理解されたい。
【発明の概要】
【0008】
本開示の一態様は、シリコン融液から単結晶インゴットを成長させるための結晶引上げシステムを対象とする。システムは、成長チャンバを画定するハウジングを含む。ハウジングは、底部と、底部から延在する側壁とを有する。るつぼは、シリコン融液を収容するために成長チャンバ内に配置される。排気管は、るつぼの底部を通って外向きに延在する。排気管は、成長チャンバから排気ガスを排出するための排気流路を画定する。排気管は、内壁と、外壁と、排気流路内の排気ガスを冷却する目的で冷却流体を循環させるために内壁と外壁との間に画定された流体通路とを含む。
【0009】
本開示の上述の態様に関連して述べられた特徴の様々な改良が存在する。さらなる特徴もまた、本開示の上述の態様に組み込まれ得る。これらの改良および追加の特徴は、個別にまたは任意の組合せで存在し得る。例えば、本開示の図示される実施形態のいずれかに関連して以下で論じられる様々な特徴は、単独で、または任意の組合せで、本開示の上述の態様のいずれかに組み込まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】結晶引上げシステムの成長チャンバの断面図である。
【
図2】排気管を示す結晶引上げシステムの詳細な断面図である。
【
図4】排気管の内壁およびバッフルの斜視図である。
【
図5】流体冷却されず、結晶引上げシステムの反応チャンバ内に延在しなかった排気管の写真の再現である。
【
図6】流体冷却され、結晶引上げシステムの反応チャンバ内に延在した排気管の写真の再現である。
【
図7】流体冷却されず、反応チャンバ内に延在しなかった排気管を有する結晶引上げシステムと、流体冷却され、反応チャンバ内に延在した排気管を有する結晶引上げシステムとの間の稼働時間のグラフである。
【0011】
対応する参照符号は、図面全体を通して対応する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照すると、結晶引上げシステムが概略的に示され、全体的に10で示されている。
図1は、排気ガスがシステム10から除去される結晶引上げシステム10の下部を含む。システム10は、結晶が引き上げられるプルチャンバを含む上部(図示せず)を含み、融液46からインゴット48を引き上げるための引上げ機構47を含む。
【0013】
結晶引上げシステム10は、チョクラルスキー(CZ)法によってシリコン融液46から単結晶(すなわち、単結晶)シリコンインゴット(例えば、半導体またはソーラーグレード材料)を製造するために使用される。図示される結晶引上げシステム10は、連続CZ法でインゴットを成長させるように構成されているが、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、バッチまたは再投入CZ法によって単結晶インゴットを成長させるために使用されてもよい。
【0014】
図示される結晶引上げシステム10は、成長チャンバ14と、成長チャンバ14に接続されてその上方に配置されたインゴットプルチャンバ(図示せず)とを画定するハウジング12を含む。黒鉛の支持体またはサセプタ18は、成長チャンバ14内の回転可能なシャフト45によって支持される。引上げ機構47によって単結晶インゴット48が引き上げられるシリコン(例えば、半導体またはソーラーグレード材料)の融液46を収容するるつぼ44は、サセプタ18によって成長チャンバ14内に支持される。サイドヒータ19は、システム10に熱エネルギーを供給するために、サセプタ18およびるつぼ44を取り囲む。システムは、外側ボトムヒータ62および内側ボトムヒータ65も含む。
【0015】
結晶成長プロセスの間、種結晶37は、引上げ機構47によって下ろされて融液46と接触し、次いで融液46からゆっくりと持ち上げられる。種結晶37が融液46からゆっくりと持ち上げられると、融液46からの原子は、インゴット48を形成するために種結晶37と整列してこれに付着する。システム10は、インゴット48を凝固させるために融液46からの放射熱からインゴット48を遮蔽するように構成された熱シールド(図示せず)も含む。
【0016】
システムは、連続チョクラルスキープロセスと同様に、るつぼ44にポリシリコンを添加するための(すなわち、融液46にポリシリコンを補充するための)供給管43を含む。結晶引上げシステム10はまた、不活性ガスを成長チャンバ14内に導入するためのガス入口(図示せず)と、成長チャンバ14から不活性ガスならびに他のガス状および浮遊粒子を排出するための排気口28を含む。流体冷却排気管52は、排気口28でハウジング12の底部30を通って延在し、ハウジング12内に延在する。流体冷却排気管52は、チョクラルスキー成長プロセス中に成長チャンバ14から排出された排気ガスを急速に冷却するように構成されている。本明細書でより詳細に記載されるように、流体冷却排気管52は、排気管52内の堆積物および沈殿物の蓄積を低減または防止し、これにより、容易に稼働時間を延長してスループットを高める。
【0017】
ハウジング12は、環状側壁42を含む下部40と、下部40に接続された上部ドーム(図示せず)と、上部ドームから全体的に上向きに延在する長尺管状部分(すなわち、プルチャンバ)とを含む。ハウジング12の下部40は底部30を含み、環状側壁42は底部30から上向きに延在する。底部30は、図示されるように丸みを帯びていてもよく、または直線状であってもよい。ハウジング12は、ステンレス鋼または他の適切な材料で作られてもよい。いくつかの実施形態では、ハウジング12の一部は、流体冷却(例えば、水冷却)ステンレス鋼の壁を含む。
【0018】
るつぼ44は、結晶引上げ機構47によってインゴット48をるつぼ44内の融液46から引き上げることができるように、成長チャンバ14内に配置される。るつぼ44は、例えば石英、または結晶引上げシステム10が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の他の適切な材料で作られてもよい。さらに、るつぼ44は、結晶引上げシステム10が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の適切なサイズを有することができる。システム10は、システム10の上部から融液46を分離するように配置された反射器(図示せず)を含み得る。
【0019】
ヒータ19、62、65(例えば、抵抗ヒータ)は、固体多結晶シリコン原料の初回投入物を溶融し、初回投入物が溶融した後に融液46を液化状態で維持するように動作する。ヒータ19、62、65はまた、インゴット48の成長中に供給管43を通じて添加された固体多結晶シリコンを溶融するように作用する。ヒータは、るつぼ44の周りの適切な箇所に配置される。図示される実施形態では、ボトムヒータ62、65は、サセプタ18およびるつぼ44の下方に配置され、サイドヒータ19は、サセプタ18およびるつぼ44から径方向外向きに配置され、その周りに延在する。図示される実施形態では、各ヒータ19、62、65は、全体的に環状形状を有するが、ヒータは、結晶引上げシステム10が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の適切な形状を有することができる。例示的な実施形態では、ヒータ19、62、65は抵抗ヒータであるが、ヒータ19、62、65は、システム10が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の適切な加熱装置であり得る。さらに、システム10は、システム10が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の適切な数のヒータを含み得る。結晶引上げシステム10はまた、成長チャンバ14内からの熱損失を防止するために、サイドヒータ19から径方向外向きに配置され、その周りに延在する断熱材も含み得る。
【0020】
結晶引上げシステム10は、このような構成要素の動作を制御するために、回転可能なシャフト45(またはシャフト45に接続されたモータ)、引上げ機構47、およびヒータ19、62、65などのシステム10の様々な構成要素に通信可能に接続されたコントローラも含み得る。
【0021】
ガス入口は、ガス供給源に流体接続されている。適切な原料ガスは、例えば非限定的に、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガス、およびこれらの混合物を含む。ガスは、成長チャンバ14を通り、融液46の表面を横切り、排気管52を通り、インゴットプラー排気口28を通り、ハウジング12の外部にある排気管出口60を通って全体的に下向きに流れる。
【0022】
結晶引上げシステム10は、ヒータ19、62、65およびシステム10の他の構成要素が配置され得るハウジング12内に内側シェル55(当該技術分野では「ヒートパック」と呼ばれることもある)を含む。内側シェル55は、底部熱シールド50と、底部熱シールド50から上向きに延在する側面熱シールド57とを含む。底部熱シールド50および側面熱シールド57は、結晶プラーシステムハウジング12内に配置される(すなわち、底部熱シールドはハウジング底部30に対して軸方向内側にあり、側面熱シールド57はハウジング側壁42に対して径方向内側にある)。底部熱シールド50は、底部熱シールド50を通る底部熱シールド排気開口58を含む。底部熱シールド排気開口58は、内側シェルの側面熱シールド57に対して全体的に径方向外向きである。
【0023】
ここで
図2を参照すると、結晶引上げシステム10は、排気ガスが内側シェル55の内側から排気管52内に引き込まれる排気ガスプレナム33を含む。排気ガスプレナム33は、床73と、頂部76と、床73と頂部76との間に延在する側壁75とを有するプレナムハウジング71によって画定される。プレナムハウジング71は、排気ガスがプレナム33に入る入口80を有する。入口80は、側面熱シールド57の径方向内向きであり、サイドヒータ19の径方向外向きである(
図1)。
図2に示されるように、排気管52はプレナムハウジング床73内に延在する。プレナム33は、内側シェル55内から径方向外向きにガスを誘導する。プレナム33は、結晶引上げシステム10の全周にわたって延在する。
【0024】
プレナムハウジング71は、絶縁材料で作られてもよく、流体冷却排気管52に到達する前に排気ガスを昇温状態で維持する。プレナムハウジング71を構成し得る適切な材料は、例えば非限定的に、黒鉛などの炭素化合物を含む。
【0025】
排気管52は、底部熱シールド50を通って(例えば、底部熱シールド50の厚さ全体を通って)、および引上げシステム10の底部30を通って延在する。プレナム入口80、プレナム33、底部熱シールド排気開口58、排気管52、ハウジング12のインゴットプラー排気口28、および排気管出口60は、システム10から排出されるときに排気ガスが移動する排気流路70を形成する。排気管出口60は、真空ポンプ(図示せず)と流体接続されている。真空ポンプは、成長チャンバ14から不活性ガス、浮遊汚染物質、および他のガス状生成物(例えば、SiO、CO)を除去するために、排気管出口60に低圧または吸引を生成するように構成されている。
【0026】
図示される実施形態では、システム10は、排気管52の内面から堆積物を除去する回転可能なオーガ49を排気管52内に含む。別の実施形態では、システム10は、排気管52内にオーガ49を含まない。
【0027】
排気管52は、底部30を通って延在するポート56を介してハウジング12の底部30内に延在する。ポート56は、冷却(例えば、流体冷却)され得る。ポート56は、ハウジング12内の構成要素(例えば、ヒータ)に電線を接続するための電気接続部61を有してもよい。管52は、ポート56内に取り外し可能に配置され得る。管52は、ポート56のフランジ(図示せず)とプラー排気管材との間に管52のフランジ部78をクランプすることなどによって、ポート56に接続されてもよく、または他の適切な方法によってポート56に接続されてもよい。別の実施形態では、管52は、システム10の底部30に固定的に接続される。いくつかの実施形態では、システム10は、排気管52を取り囲むフェルト断熱材を含まない。
【0028】
排気管52は、ガスプレナムハウジング71の床73と同一平面上にある第1の端部63を含む。排気管52は、インゴットプラーハウジング12の底部30に接続されている。排気管52は、真空システムに接続するためのフランジ部78を含む第2の遠位端部67を含む。
【0029】
図3~4を参照すると、排気管52は、各々第1の端部63から第2の端部67まで延在する径方向の内壁82および径方向の外壁84を含む。排気管52は、内壁82と外壁84との間にバッフル91を含む。内壁82、外壁84、およびバッフル91は、フローチャネル88を画定する。フローチャネル88は、排気管52内で流体が循環する流路92を画定する。流体チャネル88は、排気流路70内の排気ガスを冷却するための、水などの流体を受容するように構成されている。冷却流体は一般に、管52の第1の端部63に向かって上方に移動し、第2の端部67に向かって下方に戻る。流体チャネル88内を循環する流体は、プラーのホットゾーンよりも著しく低い温度(例えば、約1700°C以上と比較して30°Cから40°C)であり得る水であってもよい。
【0030】
排気管62の内壁82は、排気流路70内で冷却流体と排気ガスとの間の熱交換を容易にするために、適切な熱伝導性材料で構成されている。内壁82を構成し得る適切な材料は、例えば非限定的に、ステンレス鋼を含む。いくつかの実施形態では、内壁82は、ハウジング12と同じ材料で構成されている。外壁84および/またはバッフル91は、内壁82と同じ材料で構成されてもよく、または内壁82とは異なる材料で構成されてもよい。
【0031】
流体チャネル88は、流体チャネル88に冷却流体を供給するために、流体供給入口86で流体供給源90に流体接続されている。冷却流体は、例えば非限定的に、水および任意の冷却流体(例えば、冷蔵水またはエチレングリコール)を含む、システム10が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の適切な流体であり得る。流体チャネル88を通る冷却流体の流量は、排気流路内の排気ガスの冷却率を上昇または低下させるように制御され得る。いくつかの実施形態では、第1の流体チャネル88を通る冷却流体の流量は、約5リットル毎分(L/min)から約60L/minの間であり、より適切には、約40L/minである。流体供給源90は、流体チャネル88内の流体の流量を制御するために、ポンプおよび流量コントローラ(図示せず)などの適切な流量制御構成要素に接続され得る。
【0032】
流体供給源90から、冷却流体は、入口86を通って流体チャネル88内に移動する。冷却流体は、バッフル91の周りで流路92に沿って移動する。冷却流体は、流体チャネル内で管52の第1の端部63に向かって移動し、その後、第2の端部78および流体供給出口93に向かって管内を戻ってくる。冷却流体は、流体供給出口93を通って移動し、冷却流体処理システム96に入る(例えば、冷却および廃棄またはリサイクル)。
【0033】
図示される実施形態では、冷却流体入口86および出口93は、排気管52のフランジ部78で排気管52に流体接続されている。入口86および出口93は、排気管52が本明細書に記載されるように機能することを可能にする管52に沿った他の位置に配置されてもよい。
【0034】
図2に示されるように、排気管52は、ハウジング12の底部30の下方で長さLだけ延在する。図示される実施形態では、排気管52は、長さL全体にわたって流体冷却されるが、別の実施形態では、排気管52は、長さLの一部のみにわたって流体冷却されてもよい。
【0035】
図1に示される実施形態では、結晶引上げシステム10は、単一の排気管52およびポート56を含む。別の実施形態では、システムは、2つ、3つ、またはそれ以上の排気管52およびポート46(例えば、結晶引上げシステム底部30の周りに対称的に離間した3つの排気管52およびポート56)を含む。
【0036】
結晶引上げシステム10は、チョクラルスキー法に従って融液46から単結晶インゴットを成長させるために適切に使用される。より具体的には、融液46は、るつぼ44に多結晶シリコン原材料を投入することによって、るつぼ44内で調製される。原材料は、半導体またはソーラーグレード材料の融液46を形成するために、ヒータ19、62、65を使用してるつぼ44内で溶融される。原材料が十分に溶融されると、種結晶37は、結晶成長を開始するために引上げ機構47によって下ろされて融液46と接触し、続いて種結晶37を融液46から引き上げることによって単結晶インゴット48が融液46から成長する。ポリシリコンは、インゴット48が連続的に成長することを可能にするために、供給管43を介してるつぼ44に連続的または断続的に添加される。
【0037】
成長プロセス中、アルゴンなどの不活性ガスがガス入口を通って成長チャンバ14内に導入され、融液46の表面に沿ってプレナム33の入口80まで全体的に下向きに誘導される。排気ガスは、プレナム33、底部熱シールド排気開口58、排気管52、インゴットプラー排気口28を通り、排気管出口60を通って移動する。真空システムは、排気流路70を通して成長チャンバ14から排気ガス(例えば、融液46および/またはシステム10の他の構成要素によって生成された不活性ガスおよびガス種)を引き出すために、排気管出口60で負圧または減圧を確立する。
【0038】
排気ガスが排気流路70を通って流れると、流体冷却排気管52は排気ガスを比較的急速に冷却する。特に、冷却流体は、排気ガスと冷却流体との間で熱交換を引き起こすために、排気管52の内壁82、外壁84、およびバッフル91によって画定された流体チャネル88を通って誘導される。
【0039】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、排気ガスを昇温状態で維持するのと対照的に、排気ガスを急速に冷却すると、より高温(例えば、凝縮温度または沈殿温度付近)で形成された沈殿物ほど強力に排気管52の内面に付着しない粉末状の構造または形態を有する沈殿物(例えば、方砒素華、炭化シリコン、および酸化シリコン(SixOy))が形成されると考えられる。その結果、流体冷却排気管52内で形成された沈殿物は、排気流路70内で凝集または蓄積する傾向が低く、結晶成長プロセスをより長時間実行することが可能になる。
【0040】
本明細書に記載される結晶引上げシステムは、従来の結晶引上げシステムに対するいくつかの利点を提供する。水冷排気管を反応チャンバ内まで(例えば、プラーの底部を通り、底部熱シールドを通り、および/または排気ガスプレナムハウジングを通って)延在させることにより、プラーのホットゾーンの付近のガスがクエンチ冷却される。これは、ガスがホットゾーンから除去され、ガス状化合物がガス流内に凝縮して管壁上に形成される堆積物が少なくなると、比較的高い温度勾配を作り出す。クエンチ冷却はまた、凝縮粒子の形態を、硬い固体層から排気管内壁に付着しにくい粉末状の構造に変化させる。その結果、本開示の流体冷却排気管内に形成される沈殿物は、排気流路内で凝集または蓄積する傾向が低く、結晶成長プロセスをより長時間実行することが可能になる。排気ガスが側面熱シールドから径方向内向きに(例えば、排気ガスプレナムを通って)引き上げられ、側面熱シールドから径方向外向きの排気管を通って移動する実施形態では、ガスは、クエンチ冷却の前に、より高温で維持され得る(例えばクエンチ冷却までの流路距離が短縮される)。
【実施例】
【0041】
本開示のプロセスは、以下の実施例によってさらに説明される。これらの実施例は、限定的な意味で見るべきではない。
【0042】
実施例1:反応チャンバ内に延在する流体冷却排気管を使用する効果
図5は、従来の(すなわち、(例えばハウジングの底部を通って)反応チャンバ内に延在しない、非流体冷却の)排気管52内の閉塞を示す。インゴット成長中に多結晶シリコンが融液に添加される連続チョクラルスキー引上げプロセスでインゴットプラーシステムを動作した。排気管はステンレス鋼で構成され、内部に冷却流体チャネルは形成されていなかった。
図5に示されるように、排気管52は堆積物Dで完全に閉塞され、排気ガスは管52を通過することができなかった。排気管52内のオーガ49を通電したが、堆積物を除去することはできなかった。堆積物を除去するために反応器を停止した。
【0043】
図6は、水冷され、
図1に示される範囲まで反応チャンバ内に延在した排気管52を示す。堆積物Dは、より粉末状であり、白橙色であった。
図6のシステムは、オーガを含んでいなかった。図からわかるように、ホットゾーンにより近い反応器チャンバ内に延在する流体冷却排気管の使用により、排気管の堆積物を著しく低減した。
【0044】
実施例2:反応チャンバ内に延在する流体冷却排気管を使用する効果
図7は、排気管が流体冷却されず、反応チャンバ内に延在しない結晶プラーシステムの、排気管が詰まる前の稼働時間を示す。
図7は、
図1に示されるような、流体冷却されて反応チャンバ内に延在する排気管を有する結晶プラーシステムの、排気管が詰まる前の稼働時間(丸で囲んだバッチ)も示す。
図7に示されるように、稼働時間は、これらのバッチでは150%以上増加した。これは、従来は排気管の堆積物を増加させていた、より高濃度のドーププロセスの場合でさえもそうであった。これにより、圧力が上昇する前に、プラー内でより多くのインゴットを成長させることができる。
【0045】
本明細書で使用される際に、寸法、濃度、温度、または他の物理的または化学的性質または特性の範囲と共に使用されるときの「約(about)」、「実質的に(substantially)」、「本質的に(essentially)」、および「およそ(approximately)」という用語は、例えば、丸め、測定方法、または他の統計的変動から生じる変動を含む、性質または特性の範囲の上限および/または下限に存在し得る変動を網羅することを意味する。
【0046】
本開示またはその実施形態の要素を紹介するとき、「a」、「an」、「the」、および「said」という冠詞は、その要素の1つ以上が存在することを意味するように意図される。「備える(comprising)」、「含む(including)」、「包含する(containing)」、および「有する(having)」という用語は、包括的であり、列挙された要素以外に追加の要素があってもよいことを意味するように意図される。特定の配向を示す用語(例えば、「頂部」、「底部」、「側面」など)の使用は、説明の便宜上のものであり、記載されるアイテムの特定の配向を必要とするものではない。
【0047】
本開示の範囲から逸脱することなく、上記の構成および方法に様々な変更を加えることができるため、上記の説明に含まれ、添付の図面に示されるすべての事項は、限定的な意味ではなく、例示として解釈されるべきであることが意図される。
【国際調査報告】