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特表2023-548663対物レンズアレイアセンブリ、電子光学系、電子光学系アレイ、集束方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-20
(54)【発明の名称】対物レンズアレイアセンブリ、電子光学系、電子光学系アレイ、集束方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/153 20060101AFI20231113BHJP
   H01J 37/10 20060101ALI20231113BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
H01J37/153 B
H01J37/10
H01J37/09 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521760
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2021080509
(87)【国際公開番号】W WO2022101072
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】20207178.3
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21166214.3
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21191726.5
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィーラント,マルコ,ジャン-ジャコ
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101EE03
5C101EE06
5C101EE08
5C101EE14
5C101EE70
(57)【要約】
対物レンズアレイアセンブリ及び関連する方法が開示される。1つの構成では、対物レンズアレイアセンブリは、サブビームのマルチビームをサンプル上に集束させる。平坦要素は、サブビーム経路に沿って位置合わせされた複数のアパーチャを画定する。対物レンズアレイは、マルチビームをサンプルに向かって投射する。平坦要素の1つ以上のアパーチャは、マルチビームにおける軸外収差を補償する。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子光学システムを含む電子光学装置であって、
前記電子光学システムは、マルチビームが引き出される荷電粒子のビームを提供する放射源と、荷電粒子ツールの電子光学システムのための対物レンズアレイアセンブリと、を含み、
前記対物レンズアレイアセンブリは、サブビームのマルチビームをサンプル上に集束させ、前記マルチビームのサブビーム経路に沿って位置合わせされた複数のアパーチャを画定する平坦要素を含むとともに、前記マルチビームをサンプルに向かって投射する対物レンズアレイを含み、
前記平坦要素の1つ以上の前記アパーチャは、前記マルチビームにおける軸外収差を補償し、
前記アパーチャの少なくともサブセットは、異なるアパーチャ面積の範囲を有し、
前記異なるアパーチャ面積の範囲は、前記マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択される、電子光学装置。
【請求項2】
前記平坦要素の1つ以上の前記アパーチャは、前記マルチビームにおける軸外収差を補償するような形状にされ、そのような寸法にされ、及び/又は、そのように配置される、請求項1に記載の電子光学装置。
【請求項3】
前記マルチビームにおける軸外収差を補償するような形状にされ、そのような寸法にされ、及び/又は、そのように配置される前記アパーチャは、前記対物レンズアレイアセンブリで最も強力なレンズ効果を提供する少なくとも前記平坦要素、好ましくは前記平坦要素のみに画定されたアパーチャである、請求項2に記載の電子光学装置。
【請求項4】
前記異なるアパーチャ面積の範囲によって補償される前記軸外収差は、像面湾曲を含む、請求項1~3の何れか一項に記載の電子光学装置。
【請求項5】
前記アパーチャの少なくともサブセットは、異なる楕円率の範囲を有し、
前記異なる楕円率の範囲は、前記マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択され、
好ましくは、前記異なる楕円率の範囲によって補償される前記軸外収差は、非点収差を含む、請求項1~4の何れか一項に記載の電子光学装置。
【請求項6】
前記アパーチャの少なくともサブセットは、名目位置に対して変位され、
前記変位は、前記マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択され、
好ましくは、前記変位によって補償される前記軸外収差は、テレセントリシティ誤差によって生じる歪曲を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の電子光学装置。
【請求項7】
前記マルチビームにおける軸外収差を補償する前記アパーチャの少なくともサブセットは、前記対物レンズアレイの1つ以上の平坦要素に画定されたアパーチャである、請求項1~6の何れか一項に記載の電子光学装置。
【請求項8】
前記平坦要素は、前記対物レンズアレイのアップビームに配置された制御レンズアレイを更に含み、
前記制御レンズは、前記サブビームをプリフォーカスさせる、請求項1~7の何れか一項に記載の電子光学装置。
【請求項9】
前記平坦要素は、前記制御レンズアレイからアップビームに上部ビームリミッターを更に含み、
前記上部ビームリミッターは、ビーム制限アパーチャのアレイを画定する、請求項8に記載の電子光学装置。
【請求項10】
前記制御レンズアレイに画定された前記アパーチャの少なくともサブセットは、名目位置に対して変位されている位置に提供され、
前記変位は、前記マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択される、請求項8又は9に記載の電子光学装置。
【請求項11】
少なくとも前記制御レンズアレイに画定された前記アパーチャのサブセット及び上部ビームリミッターは、名目位置に対して変位されている位置に提供され、
前記変位は、前記マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択される、請求項8又は9に記載の電子光学装置。
【請求項12】
前記変位は、前記最も強力なレンズ効果を提供する前記平坦要素内のアパーチャの前記中心を通過するサブビーム経路が、アップビームにおける対応する変位されたアパーチャの中心も通過することになるように選択される、請求項6~11の何れか一項に記載の電子光学装置。
【請求項13】
前記平坦要素は、前記対物レンズアレイを形成する少なくとも1つの平坦要素からダウンビームにビーム成形リミッターを含み、
前記ビーム成形リミッターは、ビーム制限アパーチャのアレイを画定する、請求項1~12の何れか一項に記載の電子光学装置。
【請求項14】
前記ビーム成形リミッターに画定される前記ビーム制限アパーチャの少なくともサブセットは、前記対物レンズアレイを形成するアップビームの平坦要素におけるアパーチャのそれぞれの中心軸に対して変位されている位置に提供され、
好ましくは、前記変位は、前記マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択され、
好ましくは、前記変位によって補償される前記軸外収差は、コマ収差を含む、請求項13に記載の電子光学装置。
【請求項15】
前記サンプルから放出された荷電粒子を検出する検出器を更に含み、
前記検出器の少なくとも一部は、好ましくは、前記対物レンズアレイに隣接し、及び/又は、それと一体化され、
好ましくは、前記検出器は、前記アセンブリのサンプル対向表面を提供する、請求項1~14の何れか一項に記載の電子光学装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2020年11月12日に出願された欧州特許出願公開第20207178.3号、及び2021年3月31日に出願された欧州特許出願公開第21166214.3号、及び2021年8月17日に出願された欧州特許出願公開第21191726.5号の優先権を主張するものであり、これらの出願は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本明細書で提供される実施形態は、概して、荷電粒子の複数のサブビームを使用する荷電粒子ツールに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 半導体集積回路(IC)チップを製造する際、例えば光学効果及び偶発的粒子の結果として、望ましくないパターン欠陥が製作プロセス中に基板(即ちウェーハ)又はマスク上で不可避的に生じ、それにより歩留まりが低下する。従って、望ましくないパターン欠陥の程度をモニタリングすることは、ICチップの製造において重要なプロセスである。より一般的には、基板又は他の物体/材料の表面の検査及び/又は測定は、その製造中及び/又は製造後において重要なプロセスである。
【0004】
[0004] 荷電粒子ビームを用いたパターン検査ツールは、物体を検査するため、例えばパターン欠陥を検出するために使用されてきた。これらのツールは、一般的に、走査電子顕微鏡(SEM)などの電子顕微鏡法技術を使用する。SEMでは、比較的高いエネルギーの電子の一次電子ビームが、比較的低い着地エネルギーでサンプル上に着地するために、最終減速ステップでターゲットにされる。電子ビームは、サンプル上にプロービングスポットとして集束される。プロービングスポットにおける材料構造と、電子ビームからの着地電子との相互作用により、二次電子、後方散乱電子又はオージェ電子などの電子が表面から放出される。発生した二次電子は、サンプルの材料構造から放出され得る。サンプル表面にわたり、プロービングスポットとして一次電子ビームを走査することにより、サンプルの表面にわたって二次電子を放出させることができる。サンプル表面からのこれらの放出二次電子を収集することにより、パターン検査ツールは、サンプルの表面の材料構造の特徴を表す画像を取得し得る。
【0005】
[0005] 荷電粒子ツールのスループット及び他の特性を向上させる一般的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 本開示の目的は、荷電粒子ツールのスループット又は他の特性の向上を支援する実施形態を提供することである。
【0007】
[0007] 本発明の第1の態様によれば、電子光学系を含む電子光学装置が提供され、電子光学系は、マルチビームが引き出される荷電粒子のビームを提供するように構成された放射源と、荷電粒子ツールの電子光学系のための対物レンズアレイアセンブリと、を含み、対物レンズアレイアセンブリは、サブビームのマルチビームをサンプル上に集束させるように構成され、マルチビームのサブビーム経路に沿って位置合わせされた複数のアパーチャを画定する平坦要素を含むとともに、マルチビームをサンプルに向かって投射するように構成された対物レンズアレイを含み、平坦要素の1つ以上のアパーチャは、マルチビームにおける軸外収差を補償するように構成され、アパーチャの少なくともサブセットは、異なるアパーチャ面積の範囲を有し、異なるアパーチャ面積の範囲は、マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択される。
【0008】
[0008] 本発明の第2の態様によると、荷電粒子のマルチビームをサンプルに向かって集束させる方法が提供され、本方法は、対物レンズアレイアセンブリを提供することであって、対物レンズアレイアセンブリは、マルチビームのサブビーム経路に沿って位置合わせされた複数のアパーチャを画定する平坦要素を含むとともに、マルチビームをサンプルに向かって投射するように構成された対物レンズアレイアを含むことと、平坦要素の1つ以上に画定されるアパーチャを使用して、マルチビームにおける軸外収差を補償することと、を含み、アパーチャの少なくともサブセットは、異なるアパーチャ面積の範囲を有し、異なるアパーチャ面積の範囲は、マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択される。
【0009】
[0009] 本開示の上記及び他の態様は、添付の図面と併せた例示的実施形態の説明からより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】[0010]例示的な荷電粒子ビーム検査装置を示す概略図である。
図2】[0011]図1の例示的な荷電粒子ビーム検査装置の一部である例示的なマルチビーム装置を示す概略図である。
図3】[0012]マクロコリメータ及びマクロ走査偏向器を含む例示的な電子光学系の概略図である。
図4】[0013]例示的な構成についての着地エネルギー対分解能のグラフである。
図5】[0014]マクロコリメータ及び走査偏向器アレイを含む例示的な電子光学系の概略図である。
図6】[0015]コリメータ素子アレイ及び走査偏向器アレイを含む例示的な電子光学系の概略図である。
図7】[0016]図6の電子光学系を含む例示的な電子光学系アレイの概略図である。
図8】[0017]対物レンズアレイアセンブリのアップビームに集光レンズアレイを含む例示的な電子光学系の概略図である。
図9】[0018]制御レンズ及び対物レンズの拡大図である。
図10】[0019]2電極対物レンズアレイと一体化された検出器モジュールの概略側面断面図である。
図11】[0020]図10に示したタイプの検出器モジュールの底面図である。
図12】[0021]ビームアパーチャが最密六角形アレイ状である、代替の検出器モジュールの底面図である。
図13】[0022]図10の対物レンズアレイに組み込むための検出器モジュールの拡大概略断面図を示す。
図14】[0023]ビーム成形リミッターを有する対物レンズ及び上部ビームリミッターを有する制御レンズを形成する電極の一部の概略側面断面図である。
図15】[0024]図14の平面A-Aを基準にした概略拡大上部断面図であり、ビーム成形リミッター内のビーム制限アパーチャを示す。
図16】[0025]像面湾曲を補償するための異なるアパーチャ面積の範囲を有するアパーチャを画定する平坦要素を含む例示的なアセンブリの一部の上面図である。
図17】[0026]像面湾曲を補償するための異なるアパーチャ面積の範囲を有するアパーチャを画定する平坦要素を含む更なる例示的なアセンブリの一部の上面図である。
図18】[0027]非点収差を補償するための異なる楕円率の範囲を有するアパーチャを画定する平坦要素を含む更なる例示的なアセンブリの一部の上面図である。
図19】[0028]非点収差を補償するための異なる楕円率の範囲を有するアパーチャを画定する平坦要素を含む更なる例示的なアセンブリの一部の上面図である。
図20】[0029]テレセントリシティ誤差によって生じる歪曲を補正するために名目位置に対して変位されているアパーチャを画定する平坦要素を含む、更なる例示的なアセンブリの一部の、図21に示す平面A-Aを基準にした断面図である。
図21】[0030]平面B-Bを基準にした図20の構成の断面図である。
図22】[0031]ビーム成形リミッターのビーム制限アパーチャが、アップビームの平坦要素におけるアパーチャのそれぞれの中心軸に対して変位されている位置に提供される、例示的なアセンブリの一部の底面図である。
図23】[0032]平面A-Aを基準にした図22の構成の側断面図である。
図24】[0033]テレセントリシティ誤差によって生じる歪曲を補正するためにアパーチャが名目位置に対して変位されている、集光レンズアレイの一部の底面図である。
図25】[0034]ダミーアパーチャを含む例示的な平坦要素の一部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0035] ここで、例示的な実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。以下の説明は、添付の図面を参照し、別段の表示がない限り、異なる図面における同一の番号は、同一又は類似の要素を表す。例示的な実施形態の以下の説明に記載される実装形態は、本発明と一致する全ての実装形態を表すわけではない。代わりに、それらの実装形態は、添付の請求項において記述されるように、本発明に関連する態様と一致する装置及び方法の単なる例である。
【0012】
[0036] デバイスの物理的サイズを減少させる、電子デバイスの計算能力の向上は、ICチップ上のトランジスタ、キャパシタ、ダイオードなどの回路コンポーネントの実装密度を大幅に増加させることによって達成することができる。これは、更に小さい構造の作製を可能にする分解能の向上によって可能にされてきた。例えば、親指の爪の大きさであり、2019年以前に利用可能なスマートフォンのICチップは、20億を超えるトランジスタを含むことができ、各トランジスタのサイズは、人間の毛髪の1/1000未満である。従って、半導体IC製造が、数百の個々のステップを有する、複雑で時間のかかるプロセスであることは、驚くべきことではない。1つのステップのエラーであっても、最終製品の機能に劇的に影響を与える可能性がある。1つのみの「致命的欠陥」がデバイスの故障を生じさせ得る。製造プロセスの目標は、プロセスの全体的な歩留まりを向上させることである。例えば、50のステップを有するプロセス(ここで、ステップは、ウェーハ上に形成される層の数を示し得る)に関して75%の歩留まりを得るために、個々のステップは、99.4%を超える歩留まりを有しなければならない。個々のそれぞれのステップが95%の歩留まりを有した場合、全体的なプロセス歩留まりは、7%と低い。
【0013】
[0037] ICチップ製造設備において、高いプロセス歩留まりが望ましい一方、1時間当たりに処理される基板の数と定義される高い基板(即ちウェーハ)スループットを維持することも必須である。高いプロセス歩留まり及び高い基板スループットは、欠陥の存在による影響を受け得る。これは、欠陥を調査するためにオペレータの介入が必要な場合に特に当てはまる。従って、検査ツール(走査電子顕微鏡(「SEM」)など)によるマイクロスケール及びナノスケール欠陥の高スループット検出及び識別は、高い歩留まり及び低いコストを維持するために必須である。
【0014】
[0038] SEMは、走査デバイス及び検出器装置を含む。走査デバイスは、一次電子を発生させるための電子源を含む照明装置と、一次電子の1つ又は複数の集束ビームで基板などのサンプルを走査するための投影装置と、を含む。共に、少なくとも照明装置又は照明システム及び投影装置又は投影システムは、合わせて電子光学系又は装置と呼ばれ得る。一次電子は、サンプルと相互作用し、二次電子を発生させる。検出装置は、SEMがサンプルの走査エリアの画像を生成できるように、サンプルが走査されるとき、サンプルからの二次電子を捕捉する。高スループットの検査のために、検査装置の一部は、一次電子の複数の集束ビーム、即ちマルチビームを使用する。マルチビームの成分ビームは、サブビーム又はビームレットと呼ばれ得る。マルチビームは、サンプルの異なる部分を同時に走査することができる。従って、マルチビーム検査装置は、単一ビーム検査装置よりもはるかに高速でサンプルを検査することができる。
【0015】
[0039] 既知のマルチビーム検査装置の実装形態を以下に説明する。
【0016】
[0040] 図は、概略図である。従って、図面では、コンポーネントの相対寸法は、明瞭にするために拡大される。以下の図面の説明では、同じ又は同様の参照番号は、同じ又は同様のコンポーネント又はエンティティを指し、個々の実施形態に対する違いのみを説明する。説明及び図面は、電子光学装置を対象とするが、実施形態は、本開示を特定の荷電粒子に限定するために使用されないことが理解される。従って、本明細書全体を通して、電子への言及は、より一般的に荷電粒子への言及であると見なすことができ、荷電粒子は、必ずしも電子ではない。
【0017】
[0041] ここで、図1を参照すると、図1は、例示的な荷電粒子ビーム検査装置100を示す概略図である。図1の荷電粒子ビーム検査装置100は、メインチャンバ10、装填ロックチャンバ20、電子ビームツール40、機器フロントエンドモジュール(EFEM)30及びコントローラ50を含む。電子ビームツール40は、メインチャンバ10内に位置する。
【0018】
[0042] EFEM30は、第1の装填ポート30a及び第2の装填ポート30bを含む。EFEM30は、追加の1つ又は複数の装填ポートを含み得る。第1の装填ポート30a及び第2の装填ポート30bは、例えば、基板(例えば、半導体基板若しくは他の材料でできている基板)又は検査対象のサンプル(以降では、基板、ウェーハ及びサンプルは、まとめて「サンプル」と呼ばれる)を収容する基板前面開口式一体型ポッド(FOUP)を受け取り得る。EFEM30内の1つ又は複数のロボットアーム(図示せず)は、サンプルを装填ロックチャンバ20に運ぶ。
【0019】
[0043] 装填ロックチャンバ20は、サンプルの周囲の気体を取り除くために使用される。これは、周囲環境の圧力より低い局所気体圧力である真空を生じさせる。装填ロックチャンバ20は、装填ロック真空ポンプシステム(図示せず)に接続され得、装填ロック真空ポンプシステムは、装填ロックチャンバ20内の気体粒子を取り除く。装填ロック真空ポンプシステムの動作により、装填ロックチャンバが、大気圧を下回る第1の圧力に達することが可能になる。第1の圧力に達した後、1つ又は複数のロボットアーム(図示せず)が装填ロックチャンバ20からメインチャンバ10にサンプルを運ぶ。メインチャンバ10は、メインチャンバ真空ポンプシステム(図示せず)に接続される。メインチャンバ真空ポンプシステムは、サンプルの周囲の圧力が、第1の圧力を下回る第2の圧力に達するように、メインチャンバ10内の気体粒子を取り除く。第2の圧力に達した後、サンプルは、電子ビームツールに運ばれ、サンプルは、電子ビームツールによって検査され得る。電子ビームツール40は、マルチビーム電子光学装置を含み得る。
【0020】
[0044] コントローラ50は、電子ビームツール40に電子的に接続される。コントローラ50は、荷電粒子ビーム検査装置100を制御するように構成されたプロセッサ(コンピュータなど)であり得る。コントローラ50は、様々な信号及び画像処理機能を実行するように構成された処理回路も含み得る。図1では、コントローラ50は、メインチャンバ10、装填ロックチャンバ20及びEFEM30を含む構造の外部のものとして示されているが、コントローラ50は、構造の一部であり得ることが理解される。コントローラ50は、荷電粒子ビーム検査装置のコンポーネント要素の1つの内部に位置し得るか、又はコントローラ50は、コンポーネント要素の少なくとも2つに分散され得る。本開示は、電子ビーム検査ツールを収納するメインチャンバ10の例を提供するが、本開示の態様は、広い意味において、電子ビーム検査ツールを収納するチャンバに限定されないことに留意すべきである。むしろ、前述の原理は、第2の圧力下で動作する装置の他のツール及び他の配置にも適用できることが理解される。
【0021】
[0045] ここで、図2を参照すると、図2は、図1の例示的な荷電粒子ビーム検査装置100の一部であるマルチビーム検査ツールを含む例示的な電子ビームツール40を示す概略図である。マルチビーム電子ビームツール40(本明細書では装置40とも呼ばれる)は、電子源201、投影装置230、電動ステージ209及びサンプルホルダ207を含む。従って、電子ビーム装置は、電子光学系及びサンプルホルダ207を含み得る。サンプルホルダ207は、サンプルを支持するように構成される。電子源201及び投影装置230は、まとめて照明装置と呼ばれ得る。サンプルホルダ207は、電子ビーム装置40の一部であり得るステージ209によって作動され得る。サンプルホルダ207は、検査のためにサンプル208(例えば、基板又はマスク)を保持するように電動ステージ209によって支持される。マルチビーム電子ビームツール40は、電子検出デバイス240を更に含む。
【0022】
[0046] 電子源201は、カソード(図示せず)及び抽出器又はアノード(図示せず)を含み得る。動作中、電子源201は、一次電子として電子をカソードから放出するように構成される。一次電子は、抽出器及び/又はアノードによって抽出又は加速されて、一次電子ビーム202を形成する。
【0023】
[0047] 投影装置230は、一次電子ビーム202を複数のサブビーム211、212、213に変換し、及び各サブビームをサンプル208上に誘導するように構成される。簡潔にするために3つのサブビームが示されているが、何十、何百又は何千ものサブビームが存在し得る。サブビームは、ビームレットと呼ばれ得る。
【0024】
[0048] コントローラ50は、電子放射源201、電子検出デバイス240、投影装置230及び電動ステージ209など、図1の荷電粒子ビーム検査装置100の様々な部分に接続され得る。コントローラ50は、様々な画像及び信号処理機能を行い得る。コントローラ50は、荷電粒子マルチビーム装置を含む荷電粒子ビーム検査装置の動作を制御するための様々な制御信号を生成することもできる。
【0025】
[0049] 投影装置230は、検査のためにサブビーム211、212及び213をサンプル208上に集束させるように構成され得、サンプル208の表面に3つのプローブスポット221、222及び223を形成し得る。投影装置230は、サンプル208の表面の一セクション内の個々の走査エリアにわたってプローブスポット221、222及び223を走査するために、一次サブビーム211、212及び213を偏向させるように構成され得る。サンプル208上のプローブスポット221、222及び223への一次サブビーム211、212及び213の入射に応答して、二次電子及び後方散乱電子を含む電子がサンプル208から発生する。二次電子は、一般的に、50eV以下の電子エネルギーを有し、後方散乱電子は、一般的に、50eVと一次サブビーム211、212及び213の着地エネルギーとの間の電子エネルギーを有する。
【0026】
[0050] 電子検出デバイス240は、二次電子及び/又は後方散乱電子を検出し、対応する信号を生成するように構成され、これらの信号は、例えば、サンプル208の対応する走査エリアの画像を構築するために、コントローラ50又は信号処理システム(図示せず)に送られる。電子検出デバイスは、投影装置に組み込まれるか又は投影装置から分離され得、二次光学コラムは、二次電子及び/又は後方散乱電子を電子検出デバイスに向けるように設けられる。
【0027】
[0051] コントローラ50は、画像取得器(図示せず)及びストレージデバイス(図示せず)を含む画像処理システムを含み得る。例えば、コントローラは、プロセッサ、コンピュータ、サーバ、メインフレームホスト、端末、パーソナルコンピュータ、任意の種類のモバイルコンピューティングデバイスなど、又はそれらの組み合わせを含み得る。画像取得器は、コントローラの処理機能の少なくとも一部を含み得る。従って、画像取得器は、少なくとも1つ又は複数のプロセッサを含み得る。画像取得器は、数ある中でも特に、導電体、光ファイバケーブル、ポータブル記憶媒体、IR、Bluetooth、インターネット、ワイヤレスネットワーク、ワイヤレス無線機又はこれらの組み合わせなど、信号通信を可能にする装置40の電子検出デバイス240に通信可能に結合され得る。画像取得器は、電子検出デバイス240から信号を受信し、信号に含まれるデータを処理し、そこから画像を構築することができる。従って、画像取得器は、サンプル208の画像を取得することができる。画像取得器は、輪郭の生成及び取得画像へのインジケータの重畳などの様々な後処理機能を行うこともできる。画像取得器は、取得画像の明度及びコントラストなどの調整を行うように構成され得る。ストレージは、ハードディスク、フラッシュドライブ、クラウドストレージ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、他のタイプのコンピュータ可読メモリなどの記憶媒体であり得る。ストレージは、画像取得器と結合され得、走査された生の画像データをオリジナルの画像として保存するか、又は後処理された画像を保存するために使用され得る。
【0028】
[0052] 画像取得器は、電子検出デバイス240から受信された撮像信号に基づいてサンプルの1つ又は複数の画像を取得することができる。撮像信号は、荷電粒子撮像を実施するための走査動作に対応し得る。取得画像は、複数の撮像エリアを含む単一の画像であり得る。単一の画像は、ストレージに保存することができる。単一の画像は、複数の領域に分割され得るオリジナルの画像であり得る。各領域は、サンプル208の特徴を含む1つの撮像エリアを含み得る。取得画像は、ある期間にわたって複数回サンプリングされたサンプル208の単一の撮像エリアの複数の画像を含み得る。複数の画像は、ストレージに保存することができる。コントローラ50は、サンプル208の同じ場所の複数の画像を用いて画像処理ステップを行うように構成され得る。
【0029】
[0053] コントローラ50は、検出された二次電子の分布を得るために、測定回路(例えば、アナログ-デジタル変換器)を含み得る。検出時間窓の間に収集された電子分布データは、サンプル表面に入射した一次サブビーム211、212及び213の各々の対応する走査パスデータと組み合わせて、検査中のサンプル構造の画像を再構築するために使用することができる。再構築された画像は、サンプル208の内部又は外部の構造の様々なフィーチャを明らかにするために使用することができる。従って、再構築された画像は、サンプルに存在し得るいかなる欠陥も明らかにするために使用することができる。
【0030】
[0054] コントローラ50は、サンプル208の検査中にサンプル208を移動させるように電動ステージ209を制御することができる。コントローラ50は、電動ステージ209が、少なくともサンプルの検査中、好ましくは継続的に例えば一定の速度である方向にサンプル208を移動させることを可能にし得る。コントローラ50は、電動ステージ209が、様々なパラメータに依存するサンプル208の移動の速度を変えるように、電動ステージ209の移動を制御することができる。例えば、コントローラは、走査プロセスの検査ステップの特性に応じて、ステージ速度(その方向を含む)を制御することができる。
【0031】
[0055] 本開示の実施形態は、対物レンズアレイアセンブリを提供する。対物レンズアレイアセンブリは、サブビームのマルチビームをサンプル上に集束させるように構成され得る。対物レンズアレイアセンブリは、荷電粒子評価ツールなどの荷電粒子ツールの電子光学系に組み込まれ得る。
【0032】
[0056] 図3は、対物レンズアレイアセンブリを有する例示的な電子光学系の概略図である。電子光学系は、図2を参照して示され、説明される電子光学装置における特徴となり得る。従って、別段の記述がない限り、放射源201、サンプルホルダ207及びステージ208など、図2に存在するものと同じフィーチャが存在し得る。対物レンズアレイアセンブリは、マルチビームのサブビーム経路に沿って位置合わせされた複数のアパーチャを画定する平坦要素を含む。対物レンズアレイアセンブリは、対物レンズアレイ241を含む。対物レンズアレイアセンブリの平坦要素は、対物レンズアレイ241を含む。対物レンズアレイ241は、複数の平坦要素を含み得る。対物レンズアレイ241の平坦要素は、電極として機能するように構成され得る。平坦要素は、例えば、金属性であり得、及び/又は対応する電位源に接続されるように構成され得る。対物レンズアレイ241の平坦要素は、電極又はプレート電極アレイと呼ばれ得る。各サブビーム経路に沿って位置合わせされた複数のアパーチャは、対物レンズアレイ241の異なる対応する平坦要素(電極)に画定され得る。従って、対物レンズアレイ241の平坦要素の1つに画定されるアパーチャの位置は、対物レンズアレイ241の1つ以上の他の平坦要素における対応するアパーチャの位置に対応する。サブビーム経路に沿って位置合わせされたアパーチャの各グループは、対物レンズの1つを画定し、使用時にマルチビームにおける同じサブビームで動作する。各対物レンズは、マルチビームのそれぞれのサブビームをサンプル208上に投射する。対物レンズアレイ241は、複数の対物レンズを含む。
【0033】
[0057] 例示を容易にするために、本明細書では、レンズアレイは、楕円形のアレイによって概略的に示されている。各楕円形は、レンズアレイ内の複数のレンズの1つを表す。楕円形は、光学レンズで採用されることが多い両凸形状の類推から、レンズを表すために慣例的に使用される。しかしながら、本明細書で考察するような荷電粒子機構に関連して、レンズアレイは、通常、静電的に動作するため、両凸形状を採用した物理的素子を必要としない場合があることを理解されたい。上述のように、代わりに、レンズアレイは、アパーチャを画定する複数の平坦要素を含み得る。
【0034】
[0058] 幾つかの実施形態では、対物レンズアレイアセンブリの平坦要素は、制御レンズアレイ250を更に含む。制御レンズアレイ250は、複数の制御レンズを含む。各制御レンズは、電極として機能するように構成された少なくとも2つの平坦要素(例えば、電極として機能するように構成された2つ又は3つの平坦要素)を含む。制御レンズアレイ250の平坦要素は、対応する電位源に接続され得る。制御レンズアレイ250の平坦要素は、電極と呼ばれ得る。制御レンズアレイ250は、それぞれの電位源に接続された2つ以上(例えば、3つ)のプレート電極アレイを含み得る。各プレート電極アレイは、セラミック又はガラスを含み得るスペーサーなどの分離素子により、隣接するプレート電極アレイに機械的に接続され、及び電気的に分離される。制御レンズアレイ250は、対物レンズアレイ241に関連付けられる(例えば、それらの2つのアレイは、互いの近くに配置され、及び/又は互いに機械的に接続され、及び/又はユニットとして一緒に制御される)。制御レンズアレイ250は、対物レンズアレイ241のアップビームに配置される。制御レンズは、サブビームをプリフォーカスする(例えば、サブビームが対物レンズアレイ241に到達する前にサブビームに集束作用を適用する)。プリフォーカスにより、サブビームの発散度が低減されるか、又はサブビームの収束率を高めることができる。一実施形態では、対物レンズアレイアセンブリを含む電子光学系は、制御レンズの焦点距離が制御レンズアレイ250と対物レンズアレイ241との間の離隔距離よりも大きくなるように、(例えば、制御レンズアレイ250の電極に印加される電位を制御することにより)対物レンズアレイアセンブリを制御するように構成される。従って、制御レンズアレイ250及び対物レンズアレイ241は、比較的互いの近くに配置され得、このとき、制御レンズアレイ250からの集束作用は、弱く、制御レンズアレイ250と対物レンズアレイ241との間に中間焦点を形成しない。制御レンズアレイ及び対物レンズアレイは、一緒に動作して、同じ表面への合成焦点距離を形成する。中間焦点のない合成動作により、収差の危険性が低減され得る。他の実施形態では、対物レンズアレイアセンブリは、制御レンズアレイ250と対物レンズアレイ241との間に中間焦点を形成するように構成され得る。
【0035】
[0059] 制御レンズアレイ250の制御レンズ及び対物レンズアレイ241の対物レンズの電極にそれぞれの電位を印加するために、電源が設けられ得る。
【0036】
[0060] 対物レンズアレイ241に加えて制御レンズアレイ250を設けることにより、サブビームの特性を制御する自由度が増す。例えば、制御レンズアレイ250と対物レンズアレイ241との間に中間焦点が形成されないように、制御レンズアレイ250及び対物レンズアレイ241が比較的互いの近くに設けられる場合でも、自由度の増加がもたらされる。制御レンズアレイ250の追加の電極により、サブビームの電子光学パラメータを制御する際に更なる自由度がもたらされる(例えば、制御レンズアレイ250の追加電極の追加により、余分の自由度がもたらされ得る)。制御レンズアレイ250は、例えば、対物レンズアレイアセンブリ(又は対物レンズ構成)の一部として、対物レンズアレイ241の電極242、243の追加の電極を提供するものと見なすことができる。一実施形態では、制御レンズアレイ250は、対物レンズアレイ241のそれぞれの対物レンズの追加の機能を可能にする、対物レンズアレイ241の追加の電極であると見なされ得る。ある構成では、そのような電極は、対物レンズアレイ241の対物レンズに追加の機能を提供する対物レンズアレイの一部と見なされ得る。そのような構成では、制御レンズは、対応する対物レンズの一部であると見なされ、制御レンズは、対物レンズの一部であるとのみ言及されることさえある。
【0037】
[0061] ある構成において、制御レンズアレイ250を使用して、ビームの縮小率に関してビーム開き角を最適化し、及び/又は対物レンズアレイ241に送達されるビームエネルギーを制御することができる。制御レンズアレイ250は、2つ又は3つ以上の電極を含み得る。2つの電極がある場合、縮小率及び着地エネルギーは、一緒に制御される。3つ以上の電極がある場合、縮小率及び着地エネルギーを個別に制御することができる。従って、制御レンズは、(例えば、電源を使用して制御レンズ及び対物レンズの電極に適切なそれぞれの電位を印加して)それぞれのサブビームの縮小率、及び/又はビーム開き角、及び/又はサンプル上の着地エネルギーを調節するように構成され得る。この最適化は、対物レンズの数に過度の悪影響を与えることなく、及び対物レンズの収差を過度に悪化させることなく(例えば、対物レンズの強度を低下させることなく)達成することができる。制御レンズアレイを使用すると、対物レンズアレイを最適な電場強度で動作させることが可能になる。なお、縮小率及び開き角への言及は、同じパラメータの変形物を指すことを意図する。理想的な構成では、縮小率の範囲と対応する開き角との積は、一定である。しかしながら、開き角は、アパーチャの使用によって影響され得る。
【0038】
[0062] 一実施形態では、着地エネルギーは、所定の範囲、例えば1000eV~5000eVの所望の値に制御され得る。図4は、着地エネルギーを変更するためにビーム開き角/縮小率が再度最適化されると仮定して、着地エネルギーの関数として分解能を示したグラフである。見て分かるように、ツールの分解能は、着地エネルギーが最小値LE_minまで低下しても、実質的に一定を保つことができる。LE_minより小さくなると分解能が低下し、なぜなら、対物レンズ及び/又は検出器とサンプルとの間に最小の間隔を維持するために、対物レンズのレンズ強度及び対物レンズ内部の電場を低減する必要があるからである。
【0039】
[0063] 着地エネルギーは、主に、制御レンズを出る電子のエネルギーを制御することによって変動させることが望ましい。対物レンズ内部の電場ができる限り高いままとなるように、対物レンズ内部の電位差は、この変動中に一定に保たれることが好ましい。更に、制御レンズに印加される電位を使用して、ビーム開き角及び縮小率を最適化することができる。制御レンズは、着地エネルギーの変化を考慮して縮小率を変化させるように機能することができる。2つの独立した制御変数を提供するように、各制御レンズが3つの電極を含むことが望ましい。例えば、それらの電極の1つを使用して拡大率を制御することができ、別の電極を使用して着地エネルギーを個別に制御することができる。代わりに、各制御レンズは、2つの電極のみを有し得る。電極が2つのみある場合、それらの電極の一方は、拡大率と着地エネルギーとの両方を制御する必要があり得る。
【0040】
[0064] 図3の実施形態では、電子光学系は、放射源201を含む。放射源201は、荷電粒子(例えば、電子)のビームを提供する。サンプル208上に集束するマルチビームは、放射源201によって提供されるビームから導出される。サブビームは、例えば、ビーム制限アパーチャのアレイを画定するビームリミッターを使用して、そのビームから導出され得る。放射源201は、輝度と全放出電流との間の良好な妥協点を有する高輝度の熱電界放出器であることが望ましい。図示した例では、コリメータは、対物レンズアレイアセンブリのアップビームに設けられる。コリメータは、マクロコリメータ270を含み得る。マクロコリメータ270は、ビームがマルチビームに分割される前に放射源201からのビームに対して作用する。マクロコリメータ270は、ビームから導出されたサブビームのそれぞれのビーム軸がサンプル208に実質的に垂直に(即ちサンプル208の公称表面に対して実質的に90°で)入射することを確実にするのに効果的な量だけビームのそれぞれの部分を曲げる。マクロコリメータ270は、巨視的なコリメーションをビームに適用する。従って、マクロコリメータ270は、(例えば、図6を参照して以下で説明するように)ビームの個々の異なる部分に対して作用するようにそれぞれが構成された複数のコリメータ素子のアレイを含むのではなく、ビーム全体に対して作用し得る。マクロコリメータ270は、磁気レンズ又は複数の磁気レンズサブユニット(例えば、多極構成を形成する複数の電磁石)を含む磁気レンズ構成を含み得る。代わりに又は加えて、マクロコリメータは、少なくとも部分的に静電的に実装され得る。マクロコリメータは、静電レンズ又は複数の静電レンズサブユニットを含む静電レンズ構成を含み得る。マクロコリメータ270は、磁気レンズと静電レンズとの組み合わせを使用し得る。
【0041】
[0065] 図3の実施形態では、マクロ走査偏向器265を設けて、サブビームをサンプル208にわたって走査させる。マクロ走査偏向器265は、ビームのそれぞれの部分を偏向させて、サブビームをサンプル208にわたって走査させる。一実施形態では、マクロ走査偏向器256は、例えば、8極以上を有する巨視的多極偏向器を含む。偏向は、ビームから導出されたサブビームを一方向(例えば、X軸などの単一の軸と平行に)又は二方向(例えば、X軸及びY軸など、平行ではない2つの軸を基準にして)にサンプル208全体にわたって走査させるようなものである。マクロ走査偏向器265は、ビームの個々の異なる部分に対して作用するようにそれぞれが構成された複数の素子のアレイを含むのではなく、ビーム全体に対して巨視的に作用する。図示した実施形態では、マクロ走査偏向器265は、マクロコリメータ270と制御レンズアレイ250との間に設けられる。
【0042】
[0066] 本明細書で説明する対物レンズアレイアセンブリの何れも、(例えば、検出器モジュール402を含む)検出器を更に含み得る。検出器は、サンプル208から放出された荷電粒子を検出する。検出される荷電粒子には、サンプル208から放出された二次電子及び/又は後方散乱電子を含め、SEMによって検出される荷電粒子の任意のものが含まれ得る。検出器の少なくとも一部は、対物レンズアレイ241に隣接し得、及び/又はそれと一体化され得る。検出器は、対物レンズアレイアセンブリのサンプル対向表面を提供することができる。検出器の例示的な構成について、図10図15を参照して以下で説明する。検出器及び対物レンズは、同じ構造の一部であり得る。検出器は、絶縁性素子によってレンズに接続され得るか、又は対物レンズの電極に直接接続され得る。
【0043】
[0067] 図5は、図3の実施形態に対する変形形態を示す。電子光学系は、別段の記述がない限り、図5を参照して示し、説明したものと同じフィーチャを特徴とし得る。従って、電子光学系40は、図2を参照して示され、説明されるタイプの電子光学装置における特徴となり得る。従って、別段の記述がない限り、放射源201、サンプルホルダ207及びステージ208など、図2に存在するものと同じフィーチャが存在し得、対物レンズアレイアセンブリは、走査偏向器アレイ260を含む。走査偏向器アレイ260は、複数の走査偏向器を含む。走査偏向器アレイ260は、MEMS製造技術を使用して形成され得る。各走査偏向器は、それぞれのサブビームをサンプル208にわたって走査させる。従って、走査偏向器アレイ260は、サブビーム毎に走査偏向器を含み得る。各走査偏向器は、サブビームを一方向(例えば、X軸などの単一の軸と平行に)又は二方向(例えば、X軸及びY軸など、平行ではない2つの軸を基準にして)に偏向させ得る。偏向は、サブビームを一方向又は二方向(即ち1次元的又は2次元的)にサンプル208全体にわたって走査させるようなものである。一実施形態では、欧州特許第2425444号に記載された走査偏向器を使用して走査偏向器アレイ260を実装することができ、この文献は、特に走査偏向器に関して、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。走査偏向器アレイ260は、対物レンズアレイ241と制御レンズアレイ250との間に配置される。図示した実施形態では、マクロ走査偏向器265の代わりに、走査偏向器アレイ260が設けられる。(例えば、上述のようにMEMS製造技術を使用して形成された)走査偏向器アレイ260は、マクロ走査偏向器265よりも空間的にコンパクトであり得る。
【0044】
[0068] 他の実施形態では、マクロ走査偏向器265と走査偏向器アレイ260との両方が設けられ得る。そのような構成では、サンプル表面上でのサブビームの走査は、マクロ走査偏向器265と走査偏向器アレイ260とを一緒に好ましくは同期して制御することにより達成され得る。
【0045】
[0069] マクロ走査偏向器265の代わりに走査偏向器アレイ260を設けると、制御レンズからの収差を低減することができる。収差が低減し得るのは、マクロ走査偏向器265の走査動作により、制御レンズの少なくとも1つの電極のダウンビームにあるビーム制限アパーチャのアレイを画定するビーム成形リミッター(下部ビームリミッターとも呼ばれる)上でビームの対応する移動が引き起こされ、これにより制御レンズからの収差への寄与が増加するからである。代わりに、走査偏向器アレイ260が使用される場合、ビームは、ビーム成形リミッター上ではるかに小さい量だけ移動される。これは、走査偏向器アレイ260からビーム成形リミッターまでの距離がはるかに短くなるからである。これにより、図5に示すように、走査偏向器アレイ260を対物レンズアレイ241のできる限り近くに(例えば、走査偏向器アレイ260が対物レンズアレイ241に直接的に隣接し、及び/又は制御レンズアレイ250よりも対物レンズアレイ241のより近くにあるように)配置することが好ましい。ビーム成形リミッター上での移動量がより小さくなると、使用される各制御レンズの部分がより小さくなる。従って、制御レンズによる収差への寄与は、より小さくなる。制御レンズによりもたらされる収差を最小にするか又は少なくとも低減するために、ビーム成形リミッターを使用して、制御レンズの少なくとも1つの電極からダウンビームにあるビームを成形する。これは、従来のシステムと構造的に異なり、従来のシステムでは、ビーム成形リミッターは、ビーム経路内の第1のマニピュレータアレイの一部であるアパーチャアレイとして又は第1のマニピュレータアレイと関連付けられたアパーチャアレイとしてのみ設けられ、通常、放射源からの単一のビームからマルチビームを生成する。
【0046】
[0070] 図3及び図5に例示したような幾つかの実施形態では、制御レンズアレイ250は、放射源201のダウンビームのビーム経路内の第1の偏向又はレンズ効果電子光学アレイ素子である。
【0047】
[0071] 図6は、図5に示され、それを参照して説明される電子光学系の実施形態(これは、図2に示され、それを参照して説明される電子光学装置における特徴となり得る)に対する変形形態を示し、マクロコリメータ270の代わりにコリメータ素子アレイ271が設けられる。図示しないが、この変形形態を図3の実施形態に適用して、マクロ走査偏向器及びコリメータ素子アレイを有する実施形態を提供することも可能である。各コリメータ素子は、それぞれのサブビームをコリメートする。(例えば、MEMS製造技術を使用して形成された)コリメータ素子アレイ271は、マクロコリメータ270よりも空間的にコンパクトであり得る。従って、コリメータ素子アレイ271及び走査偏向器アレイ260を一緒に設けると、空間の節約になり得る。この空間の節約は、図7を参照して以下で考察するように、対物レンズアレイアセンブリを含む複数の電子光学系が電子光学系アレイ500内に設けられる場合に望ましい。そのような実施形態では、マクロ集光レンズ又は集光レンズアレイがなくてもよい。このシナリオでは、制御レンズは、着地エネルギーの変化に対して、ビーム開き角及び拡大率を最適化する可能性をもたらす。なお、ビーム成形リミッターは、制御レンズアレイのダウンビームにある。ビーム成形リミッター内のアパーチャは、制御レンズによる拡大率の制御が開き角に対して様々に作用するように、ビーム経路に沿ってビーム電流を調節する。即ち、ビーム成形リミッター内のアパーチャは、拡大率と開き角における変化間の直接の対応関係を壊す。
【0048】
[0072] 図6に例示するような幾つかの実施形態では、コリメータ素子アレイ271は、放射源201のダウンビームのビーム経路内の第1の偏向又は集束電子光学アレイ素子である。
【0049】
[0073] (例えば、図3及び図5の)制御レンズアレイ250のアップビーム又は(例えば、図6の)コリメータ素子アレイ271のアップビームにある偏向又はレンズ効果電子光学アレイ素子(例えば、レンズアレイ若しくは偏向器アレイ)を省くことにより、対物レンズのアップビームにある電子光学系に対する要件及びそのような電子光学系の不備(即ちそのような光学系によりサブビームに生成される収差)を補正するための補正器に対する要件が緩和される。例えば、幾つかの代替構成では、(図8を参照して以下で考察するように)対物レンズアレイに加えて集光レンズアレイを設けることにより、放射源電流の利用を最大化することを求める。このように集光レンズアレイ及び対物レンズアレイを設けると、放射源開き角にわたる仮想放射源の位置の位置均一性に対する要件が厳しくなるか、又は各サブビームがダウンビームの対応する対物レンズの中心を通過することを確実にするために、サブビーム毎に補正光学系が必要になる。図3図5及び図6などのアーキテクチャにより、第1の偏向又はレンズ効果電子光学アレイ素子からダウンビームのビーム成形リミッターまでのビーム経路を約10mm未満、好ましくは約5mm未満、好ましくは約2mm未満まで短縮することができる。ビーム経路を短縮すると、放射源開き角にわたる仮想放射源位置に対する厳しい要件が緩和されるか又は取り除かれる。図3図5及び図6を参照して図示し、説明するそのようなアーキテクチャの電子光学コラム40は、上部ビームリミッター252、コリメータ素子アレイ271、制御レンズアレイ250、走査偏向器アレイ260、対物レンズアレイ241、ビーム成形リミッター242及び検出器アレイ240などのコンポーネントを含み得る。存在するこれらの素子の1つ又は複数は、セラミック又はガラスのスペーサーなどの分離素子を用いて、もう1つの隣接する素子に接続され得る。
【0050】
[0074] 図7に例示するような一実施形態では、電子光学系アレイ500が設けられる。アレイ500は、本明細書で説明する電子光学系の何れかを複数含み得る。アレイ500は、電子光学装置における電子光学系を含み得る。各電子光学系は、それぞれのマルチビームを同じサンプルの異なる領域に同時に集束させる。各電子光学系は、異なるそれぞれの放射源201からの1つの荷電粒子ビームから複数のサブビームを形成し得る。それぞれの各放射源201は、複数の放射源201における1つの放射源であり得る。複数の放射源201の少なくともサブセットは、放射源アレイとして提供され得る。放射源アレイは、共通の基板上に設けられた複数の放射源201を含み得る。複数のマルチビームを同じサンプルの異なる領域に同時に集束させると、同時に処理(例えば、評価)されるサンプル208の面積を増加させることができる。アレイ500内の電子光学系は、それぞれのマルチビームをサンプル208の隣接する領域に投射するように互いに隣接して配置され得る。任意の数の電子光学系をアレイ500内で使用することができる。電子光学系の数は、9~200の範囲内であることが好ましい。一実施形態では、電子光学系は、矩形のアレイ又は六角形のアレイに配置される。他の実施形態では、電子光学系は、不規則なアレイ状又は矩形若しくは六角形以外の形状を有する規則的なアレイ状で設けられる。アレイ500内の各電子光学系は、単一の電子光学系に言及する場合、例えば、上述したような、特に図6を参照して図示し、説明した実施形態に関して、本明細書で説明する態様の何れでも構成され得る。そのような構成の詳細については、2020年7月6日に出願された欧州特許出願公開第A20184161.6号に記載されており、この出願は、対物レンズをマルチコラム構成で使用するように組み込み、適合させる方法に関して参照により本明細書に組み込まれる。図7の例では、アレイ500は、図6を参照して上述したタイプの複数の電子光学系を含む。従って、この例の各電子光学系は、走査偏向器アレイ260とコリメータ素子アレイ271との両方を含む。上述のように、走査偏向器アレイ260及びコリメータ素子アレイ271は、それらの空間的なコンパクトさにより、電子光学系アレイ500に組み込むのに特に適しており、このコンパクトさは、電子光学系を互いに近くに配置することを容易にする。図6に示す構成は、図3及び図5に示した構成よりも好ましいことがあり、なぜなら、図6に示した構成と異なり、好ましい実装形態では、コリメータ270として磁気レンズを使用することができるからである。磁気レンズを、アレイ(マルチコラム構成)で使用するように意図された電子光学系に組み込むのは、困難であり得る。
【0051】
[0075] 図8は、図3図5及び図6の電子光学系の実施形態に対する変形形態を示し、この変形形態では、放射源201と対物レンズアレイアセンブリとの間に集光レンズアレイ231が設けられる。図8に示され、それを参照して説明される電子光学系は、図2に示され、それを参照して説明される電子光学装置の電子光学系40としての特徴となり得る。従って、集光レンズアレイは、対物レンズアレイアセンブリのアップビームにある。そのような構成は、欧州特許出願公開第A20158804.3号に記載されており、この文献は、少なくとも図4に示されるアーキテクチャに関して参照により本明細書に組み込まれる。この構成は、図7を参照して上述したように、例えば2020年11月11日に出願された欧州特許出願公開第A20206987.8号のマルチコラムアレイに組み込まれ得る。集光レンズアレイ231は、複数の集光レンズを含む。何十、何百又は何千もの集光レンズが存在し得る。集光レンズは、多電極レンズを含み得、欧州特許出願公開第1602121A1号に基づく構造を有し得、この文献は、特に電子ビームを複数のサブビームに分割するためのレンズアレイ(このアレイは、サブビームごとに1つのレンズを提供する)の開示を参照することにより本明細書に組み込まれる。集光レンズアレイ231は、マルチビームを生成するように構成され得る。集光レンズアレイは、電極として機能する少なくとも2つの平坦要素(プレートと称され得る)の形態を取ることができ、各プレートのアパーチャは、互いに位置合わせされ、サブビームの位置に対応する。平坦要素の少なくとも2つは、所望のレンズ効果を実現するために、動作中に異なる電位に維持される。集光レンズアレイ231の平坦要素は、プレートアレイと呼ばれ得る。
【0052】
[0076] ある構成では、集光レンズアレイは、荷電粒子が各レンズに入るときと出るときとで同じエネルギーを有する3つのプレートのアレイから形成され、この構成は、アインツェルレンズと呼ばれ得る。従って、分散は、アインツェルレンズ自体の内部(レンズの入口電極と出口電極との間)でのみ発生し、それにより軸外色収差が制限される。集光レンズの厚さが薄い場合、例えば数mmである場合、そのような収差の影響は、小さいか又は無視できる。
【0053】
[0077] 集光レンズアレイ231は、2つ以上のプレート電極を有し得、各プレート電極は、整列された複数のアパーチャのアレイを含む。各プレート電極アレイは、セラミック又はガラスを含み得るスペーサーなどの分離素子により、隣接するプレート電極アレイに機械的に接続され、及び電気的に分離される。集光レンズアレイは、本明細書の他の箇所で記載したようなスペーサーなどの分離素子により、隣接する電子光学素子、好ましくは静電電子光学素子に接続され、及び/又は離され得る。
【0054】
[0078] 集光レンズは、(本明細書の他の箇所で考察されるような対物レンズアレイアセンブリなどの)対物レンズを含むモジュールから分離される。集光レンズの底面に印加される電位が、対物レンズを含むモジュールの上面に印加される電位と異なる場合、分離スペーサーを使用して、集光レンズと、対物レンズを含むモジュールとの間隔をあける。電位が実質的に等しい場合、導電素子を使用して、集光レンズと、対物レンズを含むモジュールとの間隔をあけることができる。ある構成では、走査偏向器アレイ260が集光レンズと対物レンズとの間に挟まれ得る。
【0055】
[0079] アレイ中の各集光レンズは、電子を、それぞれの中間焦点で集束するそれぞれのサブビーム211、212、213に向ける。各集光レンズは、集光レンズアレイ231と、対物レンズアレイアセンブリのそれぞれの対物レンズとの間にそれぞれの中間焦点を形成する。集光レンズアレイ231は、好ましくは、集光レンズアレイ231と中間焦点の平面との間でサブビーム経路が互いに発散するように構成される。図示する実施形態では、偏向器235は、中間焦点(即ち中間焦点の平面内)に設けられる。偏向器235は、(ビーム軸とも呼ばれ得る)主光線がサンプル208に実質的に垂直に(即ちサンプルの公称表面に対して実質的に90°で)入射することを確実にするのに効果的な量だけそれぞれのビームレット211、212、213を曲げるように構成される。偏向器235は、コリメータとも呼ばれ得る。偏向器235は、事実上、ビームレットの経路をコリメートし、その結果、偏向器の手前では、ビームレットは、互いに対して発散する。偏向器のダウンビームでは、ビームレット経路は、互いに対して実質的に平行であり、即ち実質的にコリメートされる。好適なコリメータは、2020年2月7日に出願された欧州特許出願公開第20156253.5号に開示されている偏向器であり、この文献は、マルチビームアレイへの偏向器の適用に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
[0080] 図9は、対物レンズアレイ241の1つの対物レンズ300及び制御レンズアレイ250の1つの制御レンズ600の拡大概略図である。対物レンズ300は、10超の倍率、望ましくは50~100以上の範囲の倍率で電子ビームを縮小するように構成され得る。対物レンズ300は、中央の、即ち第1の電極301、下側の、即ち第2の電極302及び上側の、即ち第3の電極303を含む。電圧源V1、V2、V3は、電位をそれぞれ第1、第2及び第3の電極に印加するように構成される。更なる電圧源V4がサンプルに接続されて、グランドであり得る第4の電位を印加する。電位は、サンプル208を基準にして定義され得る。第1、第2及び第3の電極は、それぞれアパーチャを設けられ、そのアパーチャを通してそれぞれのサブビームが伝播する。第2の電位は、サンプルの電位に近い電位、例えばサンプルよりも50V~200Vだけ正である範囲内の電位であり得る。代わりに、第2の電位は、サンプルよりも約+500V~約+1,500Vだけ正である範囲内にあり得る。検出器が最下部の電極よりも光学コラム内でより高くにある場合、より高い電位が有用である。第1及び/又は第2の電位は、焦点補正を行うために、アパーチャ毎又はアパーチャのグループ毎に変えることができる。
【0057】
[0081] 一実施形態では、第3の電極が省略されることが望ましい。2つの電極のみを有する対物レンズでは、より多くの電極を有する対物レンズより収差が小さくてもよい。3電極対物レンズでは、電極間の電位差をより大きくすることができるため、より強力なレンズが可能になる。追加の電極(即ち3つ以上の電極)により、例えば入射ビームに加えて二次電子も集束させるために、電子の軌道を制御する際の更なる自由度がもたらされる。
【0058】
[0082] 上述したように、制御レンズを使用して着地エネルギーを決定することが望ましい。しかしながら、更に対物レンズ300を使用して着地エネルギーを制御することが可能である。そのような場合、異なる着地エネルギーが選択されると、対物レンズにわたる電位差が変化する。対物レンズにわたる電位差を変化させることにより、着地エネルギーを部分的に変化させることが望ましい状況の一例は、サブビームの焦点が対物レンズに近くなりすぎることを防止することである。そのような状況では、対物レンズの電極を、製造できないほど薄くしなければならなくなる危険性がある。この場所での検出器についても、同じことが言える。この状況は、例えば、着地エネルギーが低減された場合に発生する可能性がある。これは、対物レンズの焦点距離が、概ね、使用される着地エネルギーにと共に拡縮するからである。対物レンズにわたる電位差を低減し、それにより対物レンズ内部の電場を低減することにより、対物レンズの焦点距離は、再び長くなり、焦点位置が対物レンズの更に下方になる。なお、対物レンズのみを使用すると、拡大率の制御が制限される。そのような構成では、縮小率及び/又は開き角を制御することができない。更に、対物レンズを使用して着地エネルギーを制御することは、対物レンズが、最適な電場強度から離れて動作することを意味し得る。これは、例えば、対物レンズを交換することなどにより、(電極間の間隔などの)対物レンズの機械的なパラメータを調節できない限り該当する。
【0059】
[0083] 図示した構成では、制御レンズ600は、電位源V5~V7に接続された3つの電極601~603を含む。電極601~603は、数ミリメートル(例えば、3mm)間隔をあけられ得る。制御レンズと対物レンズとの間の間隔(即ち下側電極602と対物レンズの上側電極との間のギャップ)は、例えば、2mm~200mm以上などの広い範囲から選択することができる。離隔距離が小さいと位置合わせが容易になる一方、離隔距離をより大きくすると、より弱いレンズを使用することができ、収差が低減される。制御レンズ600の最上部電極603の電位V5は、制御レンズのアップビームにある次の電子光学素子(例えば、偏向器235)の電位と同じに維持されることが望ましい。下側電極602に印加される電位V7は、ビームエネルギーを決定するために変動させることができる。中間電極601に印加される電位V6は、制御レンズ600のレンズ強度を決定し、従ってビームの開き角及び縮小率を制御するために変動させることができる。制御レンズの下側電極602及び対物レンズの最上部電極は、実質的に同じ電位であることが望ましい。サンプル及び対物レンズの最下部電極は、通常、制御レンズの最下部電極と大幅に異なる電位を有する。電子は、例えば、対物レンズ内で30kVから2.5kVまで減速され得る。1つの設計では、対物レンズの上側電極V3が省略される。この場合、制御レンズの下側電極602及び対物レンズの電極301が実質的に同じ電位であることが望ましい。なお、着地エネルギーを変化させる必要がないか又は他の手段によって変化させる場合でも、制御レンズを使用してビーム開き角を制御することができる。サブビームの焦点の位置は、それぞれの制御レンズとそれぞれの対物レンズの作用の組み合わせによって決まる。
【0060】
[0084] 一例では、1.5kV~2.5kVの範囲内の着地エネルギーを得るために、電位V5、V6及びV7は、以下の表1に示すように設定され得る。この表における電位は、keV単位でのビームエネルギーの値として与えられ、これは、ビーム放射源201のカソードを基準にした電極電位に等しい。電子光学系の設計において、電子光学系内のどの地点をグランド電位に設定するかについては、かなりの設計の自由度があり、電子光学系の動作は、絶対電位ではなく、電位差によって決まることを理解されたい。
【0061】
【表1】
【0062】
[0085] V1、V3及びV7におけるビームエネルギーは、同じであることが分かる。実施形態では、これらの地点でのビームエネルギーは、10keV~50keVであり得る。より低い電位が選択された場合、電場の低下を制限するために、特に対物レンズにおいて電極の間隔が短縮され得る。
【0063】
[0086] 電子ビームの開き角/拡大率の補正のために、例えば、図8の実施形態の集光レンズではなく、制御レンズが使用される場合、コリメータは、中間焦点にとどまるため、コリメータの非点収差を補正する必要はない。(なお、そのような構成では、拡大率を調節すると、結果的に開き角が同様に調節され、なぜなら、ビーム電流は、ビーム経路に沿って一定のままであるからである。)更に、対物レンズ内に最適な電場強度を維持しながら、着地エネルギーを広範囲のエネルギーにわたって変動させることができる。これにより、対物レンズの収差を最小にすることができる。集光レンズ(使用される場合)の強度は、一定に維持され、コリメータが中間焦点面にないこと又は集光レンズを通る電子の経路が変化することに起因して、更なる収差が持ち込まれることが回避される。更に、(集光レンズがない)図3図5及び図6に示したような、ビーム成形リミッターを特徴として有する実施形態の制御レンズが使用される場合、更に開き角/拡大率が着地エネルギーに加えて制御され得る。
【0064】
[0087] 一部の実施形態では、荷電粒子ツールは、サブビーム中の1つ又は複数の収差を低減する1つ又は複数の収差補正器を更に含む。一実施形態では、収差補正器の少なくともサブセットのそれぞれは、図8に示される種類の実施形態における中間焦点のそれぞれ1つに配置されるか、又はそれと直接的に隣接する(例えば、中間像面に配置されるか、又はそれと隣接する)。サブビームは、中間平面(中間焦点の平面)などの焦点面又はその近傍で最小の断面積を有する。これは、他の場所、即ち中間平面のアップビーム又はダウンビームで利用可能なスペース(又は中間平面を有しない代替の配置で利用可能となるスペース)よりも多くのスペースを収差補正器に提供する。
【0065】
[0088] 一実施形態では、中間焦点(若しくは中間平面)に又はそれらに直接隣接して配置された収差補正器は、異なるビームにとって異なる位置にあるように見える放射源201を補正するための偏向器を含む。補正器は、各サブビームと対応する対物レンズとの間の良好なアライメントを阻む、放射源に起因した巨視的収差を補正するために使用され得る。
【0066】
[0089] 収差補正器は、適切なコラムアライメントを阻む収差を補正することができる。そのような収差は、サブビームと補正器との間のミスアライメントにつながり得る。この理由のため、加えて又は代わりに、収差補正器を集光レンズアレイ231の集光レンズ又はその近くに配置することが望ましい場合がある(例えば、そのような収差補正器のそれぞれは、集光レンズの1つ又は複数と一体化されるか、又はそれらと直接隣接する)。これは、集光レンズがビームアパーチャと垂直方向に近いか、又はビームアパーチャと一致するため、集光レンズ又はその近傍では、収差が、対応するサブビームのシフトを依然として引き起こしていないことから、望ましい。しかしながら、集光レンズ又はその近傍に補正器を配置することの課題は、更に下流(又はダウンビーム)の場所と比べて、この場所では各サブビームの断面積が比較的大きくなり、ピッチが比較的小さくなることである。集光レンズ及び補正器は、同じ構造の一部であり得る。例えば、それらは、例えば、電気絶縁性素子を用いて互いに接続され得る。
【0067】
[0090] 一部の実施形態では、収差補正器の少なくともサブセットのそれぞれは、対物レンズアレイアセンブリ内の対物レンズ又は制御レンズの1つ又は複数と一体化されるか、又はそれらに直接的に隣接する。一実施形態では、これらの収差補正器は、像面湾曲、フォーカスエラー及び非点収差の1つ又は複数を低減する。対物レンズ及び/又は集光レンズ並びに補正器は、同じ構造の一部であり得る。例えば、それらは、例えば、電気絶縁性素子を用いて互いに接続され得る。
【0068】
[0091] 収差補正器は、欧州特許出願公開第2702595A1号に開示されるようなCMOSベースの個々のプログラマブル偏向器又は欧州特許出願公開第2715768A2号に開示されるような多極偏向器のアレイであり得、両方の文献におけるビームレットマニピュレータの説明は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
[0092] 幾つかの実施形態では、対物レンズアレイアセンブリの検出器は、対物レンズアレイ241の少なくとも1つの電極のダウンビームに検出器モジュールを含む。一実施形態では、検出器(例えば、検出器モジュール)の少なくとも一部は、対物レンズアレイ241に隣接し、及び/又はそれと一体化される。例えば、検出器モジュールは、CMOSチップ検出器を対物レンズアレイ241の底部電極に一体化することによって実装され得る。対物レンズアレイアセンブリに検出器モジュールを一体化すると、二次コラムが置き換えられる。CMOSチップは、好ましくは、サンプルに面するように向けられ(サンプルと電子光学系の底部との間の距離が短い(例えば、100μm)ため)、それによりアセンブリのサンプル対向表面が提供される。一実施形態では、二次電子信号を捕捉する電極がCMOSデバイスの上部金属層内に形成される。電極を他の層内に形成することができる。CMOSの電力及び制御信号は、シリコン貫通ビアによってCMOSに接続され得る。堅固にするために、底部電極は、2つの要素、即ちCMOSチップ及び穴のある受動Siプレートからなることが好ましい。プレートは、CMOSを高電場から遮蔽する。
【0070】
[0093] 検出効率を最大にするために、(アパーチャを除く)対物レンズアレイ241の実質的に全てのエリアが電極によって占められるように、電極表面をできる限り大きくすることが望ましい。各電極は、アレイピッチに実質的に等しい直径を有する。ある実施形態では、電極の外形は、円形であるが、これは、検出エリアを最大にするために正方形にされ得る。基板スルーホールの直径を最小にすることもできる。電子ビームの一般的なサイズは、約5~15ミクロンである。
【0071】
[0094] 一実施形態では、単一の電極が各アパーチャを取り囲む。別の実施形態では、複数の電極素子が各アパーチャの周りに設けられる。1つのアパーチャを取り囲む電極素子によって捕捉される電子は、単一の信号に合成されるか、又は独立した信号を生成するために使用され得る。電極素子は、半径方向に分割されるか(即ち複数の同心の環を形成するか)、角度的に分割されるか(即ち複数の扇状の部分を形成するか)、半径方向及び角度的の両方で分割されるか、又は他の任意の便利な態様で分割され得る。
【0072】
[0095] しかしながら、電極表面の拡大は、寄生容量の増大、従って帯域幅の低下をもたらす。このため、電極の外径を制限することが望ましい場合がある。特に、電極の拡大がわずかな検出効率の向上を与えるにすぎず、しかし、キャパシタンスの大幅な増加を与える場合である。円形(環状)電極は、収集効率と寄生容量との良い妥協点を提供し得る。
【0073】
[0096] 電極の外径の増大は、クロストーク(隣接した孔の信号に対する感度)の増加ももたらし得る。これは、電極の外径をより小さくする理由にもなり得る。特に、電極の拡大がわずかな検出効率の向上を与えるにすぎず、しかし、クロストークの大幅な増加を与える場合である。
【0074】
[0097] 電極によって収集された後方散乱電子及び/又は二次電子の電流は、トランスインピーダンスアンプによって増幅され得る。
【0075】
[0098] 対物レンズアレイに組み込まれた検出器の例示的な実施形態を図10に示す。図10は、対物レンズアレイの一部401の概略断面図を示す。この実施形態では、検出器は、複数の検出器素子405(例えば、捕捉用電極などのセンサ素子)を含む検出器モジュール402を含む。この実施形態では、検出器モジュール402は、対物レンズアレイの出力側に設けられる。出力側とは、サンプル208と向き合う側である。図11は、検出器モジュール402の底面図であり、この検出器モジュール402は、基板404を含み、基板404上に複数の捕捉用電極405があり、捕捉用電極405のそれぞれは、ビームアパーチャ406を取り囲む。ビームアパーチャ406は、基板404をエッチングすることにより形成され得る。図11に示す構成では、ビームアパーチャ406は、矩形のアレイで示されている。ビームアパーチャ406は、これと異なり、例えば図12に示すような最密六角形アレイ状に配置することもできる。
【0076】
[0099] 図13は、検出器モジュール402の一部の断面図をより大きい縮尺で示す。捕捉用電極405は、検出器モジュール402の最下部表面、即ちサンプルに最も近い表面を形成する。捕捉用電極405とシリコン基板404のメインボディとの間には、ロジック層407が設けられる。ロジック層407は、増幅器、例えばトランスインピーダンスアンプ、アナログ/デジタル変換器及び読み出しロジックを含み得る。一実施形態では、捕捉用電極405毎に1つの増幅器及び1つのアナログ/デジタル変換器がある。ロジック層407及び捕捉用電極405は、CMOSプロセスを使用して製造することができ、捕捉用電極405が最終の金属被覆層を形成する。
【0077】
[0100] 配線層408は、基板404の背面又は内部に設けられ、シリコン貫通ビア409によってロジック層407に接続される。シリコン貫通ビア409の数は、ビームアパーチャ406の数と同じである必要はない。特に、電極信号がロジック層407内でデジタル化される場合、データバスを提供するために少数のシリコン貫通ビアのみが必要になり得る。配線層408には、制御線、データ線及び電力線が含まれ得る。なお、ビームアパーチャ406があるにも関わらず、全ての必要な接続のための十分なスペースがある。検出器モジュール402は、バイポーラ又は他の製造技術を使用して製造することもできる。プリント回路基板及び/又は他の半導体チップは、検出器モジュール402の背面に設けられ得る。
【0078】
[0101] 検出器モジュール402は、対物レンズアレイの最下部の電極アレイだけでなく、他の電極アレイにも組み込まれ得る。対物レンズに組み込まれる検出器モジュールの更なる詳細及び代替の構成については、欧州特許出願公開第20184160.8号に見出すことができ、この文献は、少なくとも検出器モジュール及び対物レンズ内へのそのようなモジュールの組み込みに関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
[0102] 図14及び図15に例示するような幾つかの実施形態では、対物レンズアレイアセンブリの平坦要素は、ビーム成形リミッター242を更に含む。ビーム成形リミッター242は、ビーム制限アパーチャ124のアレイを画定する。ビーム成形リミッター242は、下部ビームリミッター、下部ビーム制限アパーチャアレイ又は最終ビーム制限アパーチャアレイと呼ばれ得る。ビーム成形リミッター242は、複数のアパーチャを有するプレートの形態の(プレート状の本体であり得る)平坦要素を含み得る。ビーム成形リミッター242は、制御レンズアレイ250の少なくとも1つの平坦要素(電極)、任意選択的に全ての平坦要素からダウンビームにある。幾つかの実施形態では、ビーム成形リミッター242は、対物レンズアレイ241の少なくとも1つの平坦要素(電極)、任意選択的に全ての平坦要素からダウンビームにある。ビーム成形リミッター242のプレートは、セラミック又はガラスを含み得るスペーサーなどの絶縁性素子により、対物レンズの隣接するプレート電極アレイに接続され得る。
【0080】
[0103] ある構成では、ビーム成形リミッター242は、対物レンズアレイ241の電極302と構造的に一体である。即ち、ビーム成形リミッター242のプレートは、対物レンズアレイ241の隣接するプレート電極アレイに直接的に接続される。ビーム成形リミッター242は、静電場強度が小さい領域に配置されることが望ましい。各ビーム制限アパーチャ124は、対物レンズアレイ241内の対応する対物レンズと位置合わせされる。この位置合わせとは、対応する対物レンズからのサブビームの一部がビーム制限アパーチャ124を通過し、サンプル208に当たることができるようにするものである。各ビーム制限アパーチャ124には、ビーム制限効果があり、ビーム成形リミッター242に入射するサブビームの選択された部分のみがビーム制限アパーチャ124を通過できるようにする。選択された部分は、対物レンズアレイ内のそれぞれのアパーチャの中心部分を通過するそれぞれのサブビームの部分のみがサンプルに到達するようにするものであり得る。中心部分は、断面が円形であり得、及び/又はサブビームのビーム軸を中心とし得る。
【0081】
[0104] 幾つかの実施形態では、電子光学系は、上部ビームリミッター252を更に含む。対物レンズアレイアセンブリの平坦要素は、上部ビームリミッター252を含み得る。上部ビームリミッター252は、ビーム制限アパーチャのアレイを画定する。上部ビームリミッター252は、上部ビーム制限アパーチャアレイ又はアップビームビーム制限アパーチャアレイと呼ばれ得る。上部ビームリミッター252は、複数のアパーチャを有するプレートの形態の(プレート状の本体であり得る)平坦要素を含み得る。上部ビームリミッター252は、放射源201によって放出された荷電粒子のビームからサブビームを形成する。サブビームを形成することに寄与する部分以外のビーム部分は、ダウンビームのサブビームの邪魔にならないように、上部ビームリミッター252によって遮断(例えば、吸収)され得る。上部ビームリミッター252は、サブビーム画定アパーチャアレイと呼ばれ得る。
【0082】
[0105] 図3図5及び図6に例示するような、集光レンズアレイを含まない実施形態では、上部ビームリミッター252は、対物レンズアレイアセンブリの一部を形成し得る。上部ビームリミッター252は、例えば、制御レンズアレイ250に隣接し、及び/又はそれと一体化され得る(例えば、図14に示すように、放射源201の最も近くの制御レンズアレイ250の電極603に隣接し、及び/又はそれと一体化され得る)。上部ビームリミッター252は、制御レンズアレイ250の最アップビーム電極であり得る。一実施形態では、上部ビームリミッター252は、ビーム成形リミッター242内のビーム制限アパーチャ124よりも大きい(例えば、断面積がより大きい)ビーム制限アパーチャを画定する。従って、ビーム成形リミッター242のビーム制限アパーチャ124は、上部ビームリミッター252内、及び/又は対物レンズアレイ241内、及び/又は制御レンズアレイ250内に画定された対応するアパーチャよりも寸法が小さくてもよい(即ち面積がより小さく、及び/又は直径がより小さく、及び/又は他の特性の大きさがより小さくてもよい)。
【0083】
[0106] 図8に例示するような、集光レンズアレイ231を有する実施形態では、上部ビームリミッター252は、集光レンズアレイ231に隣接して設けられ、及び/又はそれと一体化され得る(例えば、放射源201の最も近くの集光レンズアレイ231の電極に隣接し、及び/又はそれと一体化され得る)。一般的に、ビーム成形リミッター242のビーム制限アパーチャを、ビーム成形リミッター242からアップビームにあるビーム制限アパーチャを画定する他の全てのビームリミッターのビーム制限アパーチャよりも小さくなるように構成することが望ましい。
【0084】
[0107] ビーム成形リミッター242は、ビーム制限効果を有するように(即ちビーム成形リミッター242に入射する各サブビームの一部を除去するように)構成されることが望ましい。ビーム成形リミッター242は、例えば、対物レンズアレイ241の対物レンズを出る各サブビームがそれぞれの対物レンズの中心を通過したことを確実にするように構成され得る。代替の方式とは対照的に、この効果は、対物レンズに入射するサブビームが対物レンズと十分に位置合わせされることを確実にするための複雑な位置合わせ手順を必要とすることなく、ビーム成形リミッター242を使用して実現することができる。更に、ビーム成形リミッター242の効果は、コラム位置合わせ動作、放射源の不安定性又は機械的不安定性により阻害されない。更に、ビーム成形リミッター242により、サブビーム上で走査が動作する長さが低減される。この距離は、ビーム成形リミッター242からサンプル表面までのビーム経路の長さまで低減される。
【0085】
[0108] 一部の実施形態では、ビーム成形リミッター242内の対応するビーム制限アパーチャ124の直径に対する上部ビームリミッター252内のビーム制限アパーチャの直径の比率は、3以上、任意選択的に5以上、任意選択的に7.5以上、任意選択的に10以上である。ある構成では、例えば、上部ビームリミッター252内のビーム制限アパーチャは、約50ミクロンの直径を有し、ビーム成形リミッター242内の対応するビーム制限アパーチャ124は、約10ミクロンの直径を有する。別の構成では、上部ビームリミッター252内のビーム制限アパーチャは、約100ミクロンの直径を有し、ビーム成形リミッター242内の対応するビーム制限アパーチャ124は、約10ミクロンの直径を有する。対物レンズの中心を通過したビームの一部のみがビーム制限アパーチャ124によって選択されることが望ましい。図14に示す例では、電極301及び302間の静電場によって各対物レンズが形成される。幾つかの実施形態では、各対物レンズは、2つの基本レンズ(それぞれ焦点距離=4×ビームエネルギー/電場を有する)からなる。即ち、1つは、電極301の底部(即ちアップビーム電極301の底部)にあり、1つは、電極302の上部にある(即ちダウンビーム電極302の上部)。主要なレンズは、電極302の上部にあるレンズであり得る(なぜなら、ビームエネルギーは、この場所で小さい場合があり、例えば電極301の近くの30kVに比べて2.5kVであり、これは、そのレンズを他方よりも約12倍強力にするからである)。電極302の上部にあるアパーチャの中心を通過するビームの部分は、ビーム制限アパーチャ124を通過することが望ましい。電極302の上部とアパーチャ124との間のz方向の距離が非常小さい(通常、例えば100~150ミクロン)ため、ビームの角度が比較的大きい場合でも、ビームの正しい部分が選択される。
【0086】
[0109] 図14及び図15の特定の例では、ビーム成形リミッター242は、対物レンズアレイ241の底部電極302とは別個に形成された素子として示されている。他の実施形態では、ビーム成形リミッター242は、(例えば、リソグラフィを行って、基板の対向する面上のレンズアパーチャ及びビーム遮断アパーチャとして機能するのに適した空洞をエッチング除去することにより)対物レンズアレイ241の底部電極と一体的に形成され得る。
【0087】
[0110] 一実施形態では、ビーム成形リミッター242内のアパーチャ124は、対応する対物レンズアレイ241の底部電極内の対応するレンズアパーチャの少なくとも一部からダウンビームにある距離をおいて設けられる。ビーム成形リミッターは、レンズアパーチャの直径以上、好ましくはレンズアパーチャの直径よりも少なくとも1.5倍大きい、好ましくはレンズアパーチャの直径よりも少なくとも2倍大きくてもよいダウンビームの距離に設けられ得る。
【0088】
[0111] 一般に、ビーム成形リミッター242を、最も強力なレンズ効果を有する各対物レンズの電極に隣接して配置することが望ましい。図14及び図15の例では、底部電極302は、最も強力なレンズ効果を有することになり、ビーム成形リミッター242は、この電極に隣接して配置される。そのような対物レンズは、減速レンズである。加速レンズである対物レンズアレイでは、アップビームの電極301は、最も強力なレンズ効果を有する。ビーム成形リミッター242は、アップビームの電極301に隣接して配置される。対物レンズアレイ241が、3つの電極を有するアインツェルレンズ構成などのように3つ以上の電極を含む場合、最も強力なレンズ効果を有する電極は、典型的には、中央の電極であろう。この場合、ビーム成形リミッター242を中央の電極に隣接して配置することが望ましい。従って、対物レンズアレイ241の電極の少なくとも1つは、ビーム成形リミッター242のダウンビームに配置され得る。電子光学系は、ビーム成形リミッター242が、対物レンズアレイ241の電極のうち、最も強力なレンズ効果を有する対物レンズアレイ241の電極に隣接するか又はそれと一体化されるように、(例えば、対物レンズアレイの電極に印加される電位を制御することにより)対物レンズアレイアセンブリを制御するようにも構成され得る。これに関連して、最も強力なレンズ効果は、2つ以上のレンズ効果要素、即ち電子ビームで作動する電子光学要素の最も強力なレンズの効果を意味する。レンズ効果は、要素が、(より典型的には)それが作動する電子ビームを収束又は発散させる程度である。
【0089】
[0112] 一般的に、ビーム成形リミッター242を、電場が小さい領域、好ましくは実質的に電場がない領域に配置することも望ましい。これにより、ビーム成形リミッター242が存在することによる所望のレンズ効果の乱れが回避又は最小化される。
【0090】
[0113] 図14及び図15に例示されるように、検出器(例えば、検出器モジュール402)のアップビームにビーム成形リミッター242を設けることが望ましい。検出器のアップビームにビーム成形リミッター242を設けると、ビーム成形リミッター242が、サンプル208から放出された荷電粒子を妨げて、荷電粒子が検出器に到達することを邪魔しないことが確実になる。従って、検出器が対物レンズアレイ241の全ての電極のアップビームに設けられる実施形態では、ビーム成形リミッター242を対物レンズアレイ241の全ての電極のアップビームに設けるか、又は更に制御レンズアレイ250の電極の1つ又は複数の電極のアップビームに設けることも望ましい。このシナリオでは、ビーム成形リミッター242を、対物レンズアレイ241のできる限り近くでありながら、依然として検出器のアップビームに配置することが望ましい場合がある。従って、ビーム成形リミッター242は、アップビーム方向に検出器に直接的に隣接して設けられ得る。
【0091】
[0114] 制御レンズアレイ250の少なくとも1つの電極及び/又は対物レンズアレイ241の少なくとも1つの電極からダウンビームにビーム成形リミッター242を有する上述の対物レンズアレイアセンブリは、対物レンズ構成のクラスの例である。このクラスの実施形態は、マルチビームをサンプル208上に集束させるための電子光学系のための対物レンズ構成を含む。対物レンズ構成は、アップビームのレンズ効果アパーチャアレイ(例えば、図14に示すような放射源201の最も近くの対物レンズアレイ241の電極301)を含む。対物レンズ構成は、ダウンビームのレンズ効果アパーチャアレイ(例えば、図14に示すような放射源201から最も遠くの対物レンズアレイ241の電極302)を更に含む。ダウンビームのレンズ効果アパーチャアレイ(例えば、電極302)及びアップビームのレンズ効果アパーチャアレイ(例えば、電極301)は、一緒に機能してマルチビームのサブビームにレンズ効果を与える。ビーム制限アパーチャアレイ(例えば、図14に示すビーム成形リミッター242)が設けられ、このアレイでは、アパーチャ(例えば、図14のビーム制限アパーチャ124)は、アップビームのレンズ効果アパーチャアレイ及びダウンビームのレンズ効果アパーチャアレイ内のアパーチャよりも寸法が小さい(即ち面積がより小さく、及び/又は直径がより小さく、及び/又は他の特性の大きさがより小さい)。ビーム制限アパーチャアレイのアパーチャは、各サブビームを、アップビームのレンズ効果アパーチャアレイ及びダウンビームのレンズ効果アパーチャアレイ内のそれぞれのアパーチャの中央部分を通過したサブビームの部分に制限するように構成される。従って、上述のように、ビーム制限アパーチャアレイは、対物レンズ構成の対物レンズを出る各サブビームがそれぞれのレンズの中心を通過したことを確実にすることができる。
【0092】
[0115] 本明細書に記載される何れの構成でも、補正処置が取られない場合、マルチビームにおいて望ましくない軸外収差が生じる可能性がある。これに関連して、軸外収差は、マルチビームの原理軸と直角をなす平面内での位置の関数として(例えば、サブビームごとに)変動する、マルチビームにおける又はマルチビームにわたる任意の欠陥を包含すると理解される。
【0093】
[0116] マルチビームにおける軸外収差は、マルチビームにおける像面湾曲(例えば、異なるサブビーム間の像面湾曲)を含み得る。即ち、像面湾曲誤差を有するマルチビームが、同じ焦点面、例えばサンプル上において、焦点が合ったサブビームの幾つかのみを有するように、焦点平面は、マルチビームの異なるサブビームごとに異なる。
【0094】
[0117] マルチビームにおける軸外収差は、(垂直な平面内で伝搬するビームが異なる焦点を有する)非点収差を含み得る。
【0095】
[0118] マルチビームにおける軸外収差は、テレセントリシティ誤差(例えば、サブビームの伝搬方向の角度誤差)によって生じる歪曲(例えば、個々のサブビームに関連する位置誤差)を含み得る。歪曲は、サブビームがサンプル及び/又はマルチビームの原理軸と直角をなす他の基準面を通過する際の、サブビームの軸の位置における誤差によって特徴付けられ得る。
【0096】
[0119] マルチビームにおける軸外収差は、コマ収差を含み得る。
【0097】
[0120] 軸外収差、特に像面湾曲及び非点収差は、(例えば、図3図5を参照して上述したように)マクロコリメータ270を使用する実施形態で特に顕著であり得る。そのような例示的な実施形態における像面湾曲の典型的な値は、マクロコリメータ270の物体側で1~2mmの範囲内のデフォーカスであり得る。そのような実施形態における非点収差の典型的な値は、マクロコリメータ270の物体側において、軸方向及び方位方向間で1~2mmの範囲内の焦点差であり得る。(例えば、図8を参照して上述した)マクロコリメータ270の代わりに、集光レンズアレイ231を使用する実施形態における像面湾曲及び非点収差は、より小さい場合があるが、補正が依然として望ましい。マクロコリメータ270によって生じる歪曲は、典型的には、0.5~1mrad(テレセントリシティ誤差として表される)の範囲内であり得る。従って、10mmのオーダーの厚さを有する対物レンズアレイアセンブリについて、歪曲は、半径方向に最も外側のサブビームにとって10マイクロメートルものアパーチャの変位を必要とし得る。10マイクロメートルという値は、対物レンズアレイの厚さとテレセントリック誤差の上限との積(即ち10mm×1mrad=10マイクロメートル)によって決定され得る。コマ収差は、典型的には非常に小さいと予想される。
【0098】
[0121] 幾つかの実施形態では、対物レンズアレイアセンブリにおける平坦要素(例えば、電極)の1つ以上の平坦要素のアパーチャは、マルチビームにおける軸外収差を(例えば、少なくとも部分的に)補償するように構成される。この手法は、本明細書に記載される対物レンズアレイアセンブリの何れかと共に使用され得る。平坦要素のアパーチャは、軸外収差を補償するような形状にされ、そのような寸法にされ、及び/又はそのように配置されることにより、軸外収差を補償するように構成され得る。
【0099】
[0122] アパーチャの形状、寸法及び/又は配置は、1つの平坦要素、例えば対物レンズアレイ241の電極の1つにおける複数のアパーチャに適用され得る。これにより、平坦要素におけるアパーチャに異なる形状、寸法及び/又は(名目位置に対する)位置の範囲が平坦要素内で提供されるという結果がもたらされ得る。アパーチャの形状、寸法及び/又は配置は、複数の平坦要素、例えば対物レンズアレイ241の複数の電極の各々にある複数のアパーチャに適用され得る。従って、平坦要素の1つに画定されるアパーチャのアレイは、平坦要素の別のものに画定されるアパーチャのアレイと異なる幾何学的形状を有し得る。軸外収差を補償するための対物レンズアレイアセンブリのアパーチャの形状、寸法及び/又は配置は、典型的には、対物レンズアレイアセンブリ(例えば、対物レンズアレイ241)で最も強力なレンズ効果を提供するように構成された平坦要素(電極)に画定されたアパーチャに適用する場合に最も効果的である。従って、マルチビームにおける軸外収差を補償するような形状にされ、そのような寸法にされ、及び/又はそのように配置されるアパーチャを、対物レンズアレイアセンブリ(例えば、対物レンズアレイ241)で最も強力なレンズ効果を提供するように構成された少なくとも平坦要素(電極)、好ましくは平坦要素(電極)のみに提供することが望ましい。
【0100】
[0123] 対物レンズアレイ241における平坦要素の例示的な事例について図16及び図17に概略的に示すように、幾つかの実施形態では、(対物レンズアレイアセンブリの平坦要素に画定される)アパーチャの少なくともサブセットは、異なるアパーチャ面積の範囲を有する。異なるアパーチャ面積の範囲は、1つの同じ平坦要素又は複数の平坦要素の各々に存在し得る。図16及び図17に示されるアパーチャ面積の変動は、明確化のために誇張されており、実際には示されるものよりも小さい。例えば、アパーチャ面積の典型的な変動は、50マイクロメートルの直径を有する円形アパーチャの場合、0~2マイクロメートルの範囲の直径の偏差に対応し得る。(そのような構成では、直径の偏差は、典型的には、原理軸に対して半径方向距離の二乗でスケールダウンし、それにより原理軸に近付くとゼロに近付く)。実線の円は、異なるアパーチャ面積の範囲を有するアパーチャを表す。破線の円は、アパーチャ面積における示される変動の視認を支援するための、変更されないアパーチャ寸法を表す。同じアパーチャ面積を有する円の直径を参照することで、異なるアパーチャ面積を記述することができる。従って、対応するアパーチャが必ずしも円形でない場合でも、直径を参照することによってアパーチャ面積を記述することができる。異なるアパーチャ面積の範囲は、マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択される。異なるアパーチャ面積の範囲によって補償される軸外収差は、像面湾曲を含み得る。この変動は、多くの場合、マルチビームの原理軸からの増加する距離の関数としてアパーチャ面積の増加を伴う(図16に概略的に示すように、原理軸は、ページに垂直であり、最も中央のアパーチャを通過する)。適切な補正は、マルチビームの原理軸からの増加する距離の関数としてアパーチャ面積の減少を伴うことも可能である(図17に概略的に示すように)。図16及び図17に示す例では、アパーチャは、格子点701及び格子ライン702によって画定される規則格子上に構成される。
【0101】
[0124] 対物レンズアレイ241における平坦要素の例示的な事例について図18及び図19に概略的に示すように、幾つかの実施形態では、(対物レンズアレイアセンブリの平坦要素に画定される)アパーチャの少なくともサブセットは、異なる楕円率の範囲を有する。異なる楕円率の範囲は、1つの同じ平坦要素又は複数の平坦要素の各々に存在し得る。図18及び図19に示される楕円率の変動は、明確化のために誇張されており、実際には示されるものよりも小さい。例えば、楕円率の典型的な変動は、50マイクロメートルの直径を有する、初期的には円形のアパーチャに対して、主軸寸法において最大で約0~2マイクロメートルの変動に対応し得る。異なる楕円率の範囲は、マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択される。異なる楕円率の範囲によって補償される軸外収差は、非点収差を含み得る。この変動は、マルチビームの原理軸からの増加する距離の関数として、アパーチャの主軸であり得る半径方向に向いた軸の寸法の増加を伴い得る(図18に概略的に示すように、原理軸は、ページに垂直であり、最も中央のアパーチャを通過する)。適切な補正は、マルチビームの原理軸からの増加する距離の関数として、アパーチャの主軸であり得る方位角方向に向いた軸の寸法の増加を伴うことも可能である(図19に概略的に示すように)。
【0102】
[0125] コリメータ(例えば、図3及び図5示すようなマクロコリメータ270)の物体側における像面湾曲及び非点収差は、サンプル面における像面湾曲及び非点収差に対して、総線形倍率を総角倍率で除算したものに等しい因子によって大きさにおいて関連する。総線形倍率は、Mtotによって与えられる。総角倍率は、Ma_totによって与えられる。典型的な値であるMtot=1/15及びMa_tot=50について、コリメータの物体側における1~2mmの範囲の像面湾曲及び非点収差は、対物レンズの画像側において、1.3~2.7マイクロメートルの範囲の像面湾曲及び非点収差に対応する(なぜなら、1.3=1000/(15×50)及び2.7=2000/(15×50)であるためである)。使用される正確な縮小率は、目標とされる解像度及び着地エネルギー並びに放射源201の特徴に依存する。
【0103】
[0126] 減速静電レンズの焦点距離は、最も低いビームエネルギーで電極によって形成されるアパーチャレンズによって支配される。この焦点距離は、およそ4×U.beam/E.fieldである(U.beam=アパーチャレンズにおけるビームエネルギーであり、E.fieldは、静電場である)。しかしながら、この焦点距離は、レンズのアパーチャ面積(レンズ直径)にもわずかに依存する。典型的には、これにより、焦点距離は、焦点距離がおよそ4×U.beam/E.fieldであると仮定して得られる推定値よりも約0.6×Lだけ大きくなる(Lは、レンズ直径である)。従って、サンプルレベルにおける1マイクロメートル又は数マイクロメートルのオーダー(例えば、0.5~5マイクロメートル)の像面湾曲を補正するために、レンズ直径を、対応する量(例えば、0.5~5マイクロメートル)を0.6で除算した値で調整すれば十分である。これは、例えば、50~200マイクロメートルの典型的な実用的なレンズ直径と比較して依然として比較的小さい。従って、このような補正は、実用的である。
【0104】
[0127] 上記の計算は、この補正が対物レンズアレイアセンブリのアップビームのレンズアレイによって(即ち主要な縮小前に)適用される場合、ミリメートル範囲のレンズ直径の変動が必要とされるであろうことも示す。このような大きさの変動は、レンズピッチが1ミリメートルよりも著しく小さい場合に実用的ではない。
【0105】
[0128] 図20及び図21に例示するような幾つかの実施形態では、(対物レンズアレイアセンブリの平坦要素に画定される)アパーチャの少なくともサブセットは、例えば、それぞれの要素の平面内で名目位置に対して変位される。そのような変位は、マルチビームの経路に対して直角をなし得る。そのような名目位置は、格子の格子ライン間の交差点に対応し得る。アパーチャは、それぞれ格子上の対応する名目位置に対して変位される。変位は、マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択される。名目位置は、規則格子上に設けられ得る。規則格子は、例えば、矩形、正方形又は六角形の格子を含み得る。図示した例では、名目位置は、格子点701及び格子ライン702によって示される。名目位置は、軸外収差がない理想的な構成に対応する位置を表し得る。名目位置からの変位は、1つの同じ平坦要素又は複数の平坦要素の各々に存在し得る。図20及び図21に示される変位は、明確化のために誇張されており、実際には示されるものよりも小さい。変位により、アパーチャは、(格子ライン702で示す)名目格子に対して歪曲した(太い破線で示す)格子上に位置する。変位によって補償される軸外収差は、テレセントリシティ誤差によって生じる歪曲を含み得る。変位は、図20及び図21に例示されるように半径方向内向き(マルチビームの原理軸に向かって)又は半径方向外向きであり得る。何れの場合にも、変位の寸法は、半径方向距離の増加に伴って増加し得る。図20及び図21の簡略化された例では、これにより、角のアパーチャは、横のアパーチャよりも変位が大きくなる。
【0106】
[0129] 図20及び図21に例示するように、アパーチャの変位は、対物レンズアレイアセンブリが制御レンズアレイ250を含む実施形態で提供され得る。このタイプの実施形態では、アパーチャは、制御レンズアレイ250及び対物レンズアレイ241の何れか又は両方で変位され得る。図示する例では、制御レンズアレイ250は、3つの電極601~603を含む。制御レンズアレイ250は、図3図15を参照して上述した方法の何れでも動作するように配置及び構成され得る。この例では、アパーチャは、電極601~603の3つの全てで変位される。望ましくは、サブビーム経路の少なくともサブセットの各々について、サブビーム経路に沿って配置される、対物レンズアレイアセンブリにおけるアパーチャの全ては、最も強力なレンズ効果を提供する平坦要素(電極)のアパーチャを除いて変位される。対物レンズアレイ241が、減速するレンズ効果を提供する2つの平坦要素(電極301及び302)を含む、図21に示す例では、最下部の電極302が最も強力なレンズ効果を提供することになる。別の構成では、2つの平坦要素が加速レンズを提供し、最上部の電極301が最も強力なレンズ効果を提供する。対物レンズアレイ241がアインツェルレンズを含む代替の実施形態では、中央の電極が最も強力なレンズ効果を提供することができる。変位は、好ましくは、図21に示すように、最も強力なレンズ効果を提供する電極(図示される例では電極302)のアパーチャの中心を通過するサブビームが、アップビームにおける対応する変位されたアパーチャも通過することになるように選択される。図21に示すように、本例では、電極601~603及び301の3つの最も左側のアパーチャは、電極302の対応するアパーチャの中心を通過するサブビーム801に位置合わせされるように(水平矢印によって示すように)右側に変位される。電極601~603及び301の3つの最も右側のアパーチャは、電極302の対応するアパーチャの中心を通過するサブビーム802に位置合わせされるように(水平矢印によって示すように)右側に変位される。これに対して、最下部の電極302のアパーチャは、この例では変位されない。
【0107】
[0130] 図20及び図21で更に例証されるように、アパーチャの変位は、対物レンズアレイアセンブリが上部ビームリミッター252を含む実施形態で提供され得る。上部ビームリミッター252は、制御レンズアレイ250からアップビームにある。上部ビームリミッター252は、ビーム制限アパーチャのアレイを画定する。上部ビームリミッター252は、図3図15を参照して上述した方法の何れでも動作するように配置及び構成され得る。このタイプの実施形態では、アパーチャの変位は、制御レンズアレイ250の1つ以上の電極601~603に画定されるアパーチャと、上部ビームリミッター252のビーム制限アパーチャとの両方に適用することができる。従って、制御レンズアレイ250及び上部ビームリミッター252に画定されるアパーチャの少なくともサブセットは、名目位置に対して変位された位置に提供され得、この変位は、マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択される。この例では、制御レンズアレイ250の電極601~603の3つ全て及び上部ビームリミッター252でアパーチャが変位される。変位は、最も強力なレンズ効果を提供する平坦要素内のアパーチャの中心を通過するサブビーム経路が、アップビームにおける対応する変位されたアパーチャの中心も通過することになるように選択され得る。
【0108】
[0131] 図20及び図21の構成で示すように、サブビーム経路801、802における全ての要素(例えば、対物レンズアレイ241、制御レンズ及び上部ビームリミッター252)の平坦要素、例えば電極のアパーチャの全てが位置合わせされる。即ち、サブビーム経路のアパーチャは、ビームが平坦要素の全てのアパーチャの中心を通過するように、照明の「テレセントリシティ」に対して位置合わせされる。上述したように、最も強力なレンズ効果を提供する平坦要素(従って対物レンズの底部電極)が基準平坦要素として選択されることが好ましいが、任意の平坦要素が基準として選択され得る。何れか1つの平坦要素を基準として選択する際、平坦要素を全体としてシフトさせ得るが、残りの他の平坦要素のアパーチャは、ビーム経路に位置合わせされ得る。これは、位置合わせが相対的であるためである。実際には、収差の観点では、いかなる他の平坦要素が基準として選択されることになっても関係ないであろう。従って、基準は、観察者又はサンプルの基準系であり得る。サンプルの観点を基準として選択する際、マルチビームにおけるサブビーム経路の相対的位置によって画定される格子は、理想格子又は規則格子と考えることができる。そのような基準を設定することは、マルチビームに走査戦略を適用する場合に有用である。
【0109】
[0132] 図22及び図23に例示するような幾つかの実施形態では、対物レンズアレイアセンブリの平坦要素は、対物レンズアレイ241を形成する少なくとも1つの平坦要素からダウンビームにビーム成形リミッター242を含む。ビーム成形リミッター242は、ビーム制限アパーチャのアレイを画定する。ビーム成形リミッター242は、図3図15、特に図14及び図15を参照して上述した方法の何れでも動作するように配置及び構成され得る。図示する例では、対物レンズアレイ241を形成する平坦要素は、2つの電極301~302を含む。ビーム成形リミッター242は、電極301~302の両方からダウンビームにある。幾つかの実施形態では、ビーム成形リミッター242に画定されるビーム制限アパーチャの少なくともサブセットは、対物レンズアレイ241を形成するアップビームの平坦要素301~302のアパーチャの対応する中心軸704に対して変位された位置に提供される。変位は、マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択され得る。変位によって補償される軸外収差は、コマ収差を含み得る。コマ収差の補償が非点収差及び/又は像面湾曲を増加させる場合、これらの効果は、図16図19を参照して上述したように、アパーチャのアパーチャ面積及び/又は楕円率を変動させることによって補償され得る。
【0110】
[0133] 従って、コマ収差補償を導入してコマ収差を補正するために、上述したように、対物レンズの最も強力な要素の電極は、経路に対してシフトされなければならない。図20及び図21を参照して説明したように、コマ収差補償前に、サブビーム経路が、対応するアパーチャのそれぞれの中心を通過するように、対物レンズアレイアセンブリの全ての平坦要素のアパーチャが配置される。従って、サンプルの基準系において、マルチビーム構成は、規則格子又は理想格子に対応する。コマ収差補償の導入は、ビーム成形リミッター242のアパーチャが変位され、その結果、サブ経路がビーム成形リミッター242の対応するアパーチャの中心に対して位置ずれすることを意味する。従って、位置ずれは、コマ収差補償及び上述したような多くの収差、例えば歪曲誤差又はテレセントリシティ誤差、像面湾曲及び非点収差を導入することになる。テレセントリシティ誤差、像面湾曲及び非点収差の導入は、上記の方法で更なる補正を必要とし得るため、コマ収差が無視できることが好ましい。しかしながら、コマ収差は、必要に応じて補正され得る。
【0111】
[0134] 従って、対物レンズアレイアセンブリの要素は、像面湾曲、非点収差、テレセントリシティ誤差及び/又はコマ収差などの軸外収差を補償するように、ビーム構成に対する位置、楕円率及び/又はアパーチャ面積の観点で修正されたアパーチャを有し得る。
【0112】
[0135] 例えば、図8を参照して説明したような集光レンズアレイ231を含む実施形態では、集光レンズアレイ231は、対物レンズアレイ241におけるサブビームの少なくともサブセットの位置をサブビームの名目位置に対して変位させるように構成され得る。変位は、マルチビームにおける軸外収差を補正するように選択され得る。変位によって補正される軸外収差は、テレセントリシティ誤差によって生じる歪曲を含み得る。図24に概略的に示すように、サブビームの変位は、集光レンズの名目位置に対して変位されている、集光レンズアレイにおける位置にそれぞれの集光レンズを提供することによって少なくとも部分的に実装され得る。名目位置は、規則格子上に設けられ得る。規則格子は、例えば、矩形、正方形又は六角形の格子を含み得る。図示した例では、名目位置は、格子点711及び格子ライン712によって示される。名目位置は、軸外収差がない理想的な構成に対応する位置を表し得る。名目位置からの変位は、1つの同じ平坦要素又は複数の平坦要素の各々に存在し得る。図24に示される変位は、明確化のために誇張されており、実際には示されるものよりも小さい。変位により、アパーチャは、(格子ライン712で示す)名目格子に対して歪曲した(太い破線で示す)格子上に位置する。代わりに又は加えて、1つ以上の偏向器を使用して、少なくとも部分的にサブビームの変位を実現し得る。
【0113】
[0136] 対物レンズアレイ241を形成する1つ以上の平坦要素のアパーチャが名目位置に対して変位される、上述した実施形態の何れかを使用して、コマ収差を補償することができる。この手法は、例えば図8を参照して説明したように、特に集光レンズアレイ231を含む実施形態で望ましい場合がある。そのような電子光学設計では、集光レンズアレイ231又は集光レンズアレイ231に関連付けられたビーム制限アパーチャアレイは、マルチビーム構成のサブビームを成形する。このような設計は、電子光学設計の対物レンズアレイアセンブリにおけるビーム成形リミッター(これは、上述したようにコマ収差を補償するために使用され得る)を特徴とすることができない。(例えば、図8を参照して説明したような)集光レンズアレイ231を使用する実施形態では、対物レンズアレイアセンブリは、集光レンズアレイ231を含まない実施形態について上述した何れかの方法において、マルチビームにおける他の軸外収差を補償するように構成され得る。対物レンズアレイアセンブリは、例えば、非点収差、像面湾曲及び/又は歪曲(例えば、テレセントリシティ誤差によって生じる)を補正するように構成され得る。
【0114】
[0137] 図25に概略的に示すように、本明細書に記載される実施形態の何れかは、マルチビームが、平坦要素に画定されたアパーチャの中央に位置するサブセットのみを通過するように適合され得る。図25は、マルチビームが、破線ボックス720で囲まれた中央領域にあるアパーチャのみを通過する、例示的な平坦要素(例えば、対物レンズアレイ241の電極)を示す。サブビームは、破線ボックス720内のアパーチャの全てを通過し、破線ボックス720の外側のアパーチャの何れかを通過し得る。破線ボックス720の外側のアパーチャは、ダミーアパーチャと呼ばれ得る。サブビームは、ダミーアパーチャを通過しないが、ダミーアパーチャの存在は、ダミーアパーチャが設けられない場合に発生し得るエッジ効果を低減又は排除することを促進し得る。従って、動作時にサブビームが通過する平坦プレート内に画定されるアレイの各アパーチャは、アパーチャによって取り囲まれる。サブビームが通過するアパーチャは、アパーチャアレイのエッジから離れている。軸外収差を補償するための上述したアパーチャの形状、寸法及び/又は配置の何れかは、ダミーアパーチャにも適用され得る。
【0115】
[0138] 幾つかの実施形態では、サブビームをサンプルに向かって投射している間に対物レンズアレイに印加される電界は、対物レンズアレイアセンブリにおける平坦要素(例えば、電極)の1つ以上を歪曲させ得る。例えば、対物レンズアレイ241は、電界によって歪曲され得る。歪曲は、反りと称され得る。歪曲は、典型的には、電極間の引力から生じ、従って電極間の距離がより小さくなる。電極間の距離をより小さくすると、電極間の静電場強度が増加する。静電場強度を増加させると、焦点距離がより短くなる。これは、減速対物レンズ及びアインツェル対物レンズの両方に当てはまる。減速対物レンズについて、レンズ自体は、加えて、上向きに移動することになる。これは、主要なレンズが最下部電極によって形成されるためである。そのような最下部電極は、上向きに撓むことになる。アインツェル対物レンズについて、主要なレンズが中央電極によって形成され、これは、反ることがない。これは、中央電極の上方及び下方の静電場の対称性に起因する。レンズ電極の歪曲の影響は、像面湾曲である。幾つかの実施形態では、対物レンズアレイ241は、歪曲がマルチビームにおける像面湾曲を少なくとも部分的に補償するように構成される。従って、対物レンズアレイ241及び対物レンズアレイ241の駆動は、像面湾曲への寄与が、他の放射源からの像面湾曲への寄与と符号が反対となるように構成され得る。これは、典型的には、マクロコリメータ270が使用される実施形態の場合である。なぜなら、マクロコリメータ270の寄与による像面湾曲は、対物レンズアレイアセンブリにおける電極の歪曲の寄与による像面湾曲と符号が反対になるためである。幾つかの実施形態では、歪曲は、他の放射源からのマルチビームにおける像面湾曲の大部分、好ましくは実質的に全てを補償する。幾つかの実施形態では、平坦要素のアパーチャ面積も、像面湾曲(任意選択的に対物レンズアレイ241における静電場によって誘発される歪曲の寄与による像面湾曲を含む)を補償するために、上述したように変動される。従って、電子光学コラムが管理することができる像面湾曲収差は、対物レンズアレイにおける反り又は寸法、位置及び/又は楕円率、好ましくは寸法分布の修正の何れか単独によって実現され得るよりも大きい場合がある。
【0116】
[0139] 図16図25に開示され、記載される実施形態では、アパーチャアレイは、限定された数、例えば9個又は25個のアパーチャを伴って示されている。しかしながら、これらの図は、例示であることを意図され、アパーチャアレイは、任意の数、例えば20,000個ものアパーチャを有し得る。アパーチャは、正方形などの矩形又は六角形であり得る、格子に沿ったアレイで構成され得る。
【0117】
[0140] 特定の方法で荷電粒子ビームを操作するために制御可能な構成要素又は構成要素若しくは要素のシステムへの言及は、コントローラ又は制御システム若しくは制御ユニットを構成して、上述した方法で荷電粒子ビームを操作し、任意選択的に他のコントローラ又はデバイス(例えば、電圧供給源及び/又は電流供給源)を使用して構成要素を制御し、その方法で荷電粒子ビームを操作することを含む。例えば、電圧源は、コントローラ又は制御システム若しくは制御ユニットの制御下において、限定はしないが、制御レンズアレイ250、対物レンズアレイ241、集光レンズ231、補正器、コリメータ素子アレイ271及び走査偏向器アレイ260などの構成要素に電位を印加するために、1つ又は複数の構成要素に電気的に接続され得る。ステージなどの作動可能な構成要素は、構成要素の作動を制御するために1つ又は複数のコントローラ、制御システム又は制御ユニットを使用して作動し、従ってビーム経路などの別の構成要素に対して移動するように制御可能であり得る。
【0118】
[0141] 本明細書に記載する実施形態は、1つのビーム又はマルチビームの経路に沿ってアレイ状に配置された一連のアパーチャアレイ又は電子光学素子の形態を取り得る。そのような電子光学素子は、静電的であり得る。一実施形態では、例えば、サンプルより前のサブビーム経路内のビーム制限アパーチャアレイから最後の電子光学素子までの全ての電子光学素子は、静電的であり得、及び/又はアパーチャアレイ若しくはプレートアレイの形態であり得る。一部の構成では、電子光学素子の1つ又は複数は、微小電子機械システム(MEMS)として(即ちMEMS製造技術を使用して)製造される。
【0119】
[0142] 上側及び下側、アップ及びダウン、上方及び下方への言及は、サンプル208に当たる電子ビーム又はマルチビームの(通常、常にではないが、垂直な)アップビーム方向及びダウンビーム方向に平行な方向を指すものと理解されるべきである。従って、アップビーム及びダウンビームへの言及は、何らかの重力場とは無関係にビーム経路に関する方向を指すことが意図される。
【0120】
[0143] 本開示の一実施形態による評価ツールは、サンプルの定性的評価(例えば、合格/不合格)を行うツール、又はサンプルの定量的測定(例えば、フィーチャのサイズ)を行うツール、又はサンプルのマップの画像を生成するツールであり得る。評価ツールの例は、(例えば、欠陥を特定するための)検査ツール、(例えば、欠陥を分類するための)レビューツール及び計測ツール又は検査ツール、レビューツール若しくは計測ツールに関連した評価機能の任意の組み合わせを実施することができるツール(例えば、計測検査ツール)である。電子光学コラム40は、検査ツール若しくは計測検査ツール又は電子ビームリソグラフィツールの一部など、評価ツールの構成要素であり得る。本明細書でのツールへの言及は、デバイス、装置又はシステムを包含することを意図し、ツールは、様々な構成要素であって、同じ場所に置かれることも又は置かれないこともあり、特に例えばデータ処理部品について別々の部屋に配置されることさえあり得る様々な構成要素を含む。
【0121】
[0144] 「サブビーム」及び「ビームレット」という用語は、本明細書では互換的に使用され、両方とも、親の放射ビームを分割又は分離することにより親の放射ビームから導出された任意の放射ビームを包含するものと理解される。「マニピュレータ」という用語は、レンズ又は偏向器など、サブビーム又はビームレットの経路に影響を与える任意の素子を包含するように使用される。
【0122】
[0145] 複数の素子がビーム経路又はサブビーム経路に沿って整列するという言及は、それぞれの素子がビーム経路又はサブビーム経路に沿って配置されることを意味するものと理解される。
【0123】
[0146] 光学系への言及は、電子光学系を意味するものと理解される。
【0124】
[0147] 本明細書中における制御レンズ及び対物レンズなどの電子光学素子の制御への言及は、機械的設計による制御と、所定の動作印加電圧又は電位差による制御との両方、即ち例えば電子光学コラム内部の自動制御又はユーザが選択することによる受動制御及び能動制御の両方を指すことが意図される。能動制御又は受動制御についての選択は、文脈によって決まるべきである。
【0125】
[0148] 本発明を様々な実施形態と関連付けて説明してきたが、本明細書で開示される本発明の仕様及び実施を考慮することで本発明の他の実施形態が当業者に明らかになるであろう。本明細書及び例は、単なる例示と見なされ、本発明の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲及び条項によって示されることが意図される。
【0126】
[0149] 以下の条項が提供される。
【0127】
[0150] 条項1.荷電粒子ツールの電子光学系のための対物レンズアレイアセンブリであって、サブビームのマルチビームをサンプル上に集束させるように構成され、マルチビームのサブビーム経路に沿って位置合わせされた複数のアパーチャを画定する平坦要素を含むとともに、マルチビームをサンプルに向かって投射するように構成された対物レンズアレイを含み、平坦要素の1つ以上のアパーチャは、マルチビームにおける軸外収差を補償するように構成される、対物レンズアレイアセンブリ。
【0128】
[0151] 条項2.平坦要素の1つ以上のアパーチャは、マルチビームにおける軸外収差を補償するような形状にされ、そのような寸法にされ、及び/又は、そのように配置される、条項1に記載のアセンブリ。
【0129】
[0152] 条項3.マルチビームにおける軸外収差を補償するような形状にされ、そのような寸法にされ、及び/又は、そのように配置されるアパーチャは、対物レンズアレイアセンブリで最も強力なレンズ効果を提供するように構成された少なくとも平坦要素、好ましくは平坦要素のみに画定されたアパーチャである、条項2に記載のアセンブリ。
【0130】
[0153] 条項4.アパーチャの少なくともサブセットは、異なるアパーチャ面積の範囲を有し、異なるアパーチャ面積の範囲は、マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択され、好ましくは、アパーチャのサブセットは、1つ以上の平坦要素、好ましくは同じ平坦要素に画定される、先行する条項の何れか一項に記載のアセンブリ。
【0131】
[0154] 条項5.異なるアパーチャ面積の範囲によって補償される軸外収差は、像面湾曲を含む、条項4に記載のアセンブリ。
【0132】
[0155] 条項6.アパーチャの少なくともサブセットは、異なる楕円率の範囲を有し、異なる楕円率の範囲は、マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択され、好ましくは、アパーチャの少なくともサブセットは、1つ以上の平坦要素、好ましくは同じ平坦要素に画定される、先行する条項の何れか一項に記載のアセンブリ。
【0133】
[0156] 条項7.異なる楕円率の範囲によって補償される軸外収差は、非点収差を含む、条項6に記載のアセンブリ。
【0134】
[0157] 条項8.アパーチャの少なくともサブセットは、名目位置に対して変位され、変位は、マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択され、好ましくは、アパーチャの少なくともサブセットは、1つ以上の平坦要素、好ましくは同じ平坦要素に画定される、先行する条項の何れか一項に記載のアセンブリ。
【0135】
[0158] 条項9.名目位置は、規則格子上にあり、好ましくは、規則格子は、複数の平坦要素に共通である、条項8に記載のアセンブリ。
【0136】
[0159] 条項10.規則格子は、正方格子などの矩形格子又は六角格子を含む、条項9に記載のアセンブリ。
【0137】
[0160] 条項11.変位によって補償される軸外収差は、テレセントリシティ誤差によって生じる歪曲を含む、条項8~10の何れか一項に記載のアセンブリ。
【0138】
[0161] 条項12.マルチビームにおける軸外収差を補償するように構成されたアパーチャの少なくともサブセットは、対物レンズアレイの1つ以上の平坦要素に画定されたアパーチャであり、好ましくは、アパーチャのサブセットは、1つ以上の平坦要素、好ましくは同じ平坦要素に画定される、先行する条項の何れか一項に記載のアセンブリ。
【0139】
[0162] 条項13.平坦要素は、対物レンズアレイのアップビームに配置された制御レンズアレイを更に含み、制御レンズは、サブビームをプリフォーカスさせるように構成される、先行する条項の何れか一項に記載のアセンブリ。
【0140】
[0163] 条項14.平坦要素は、制御レンズアレイからアップビームに上部ビームリミッターを更に含み、上部ビームリミッターは、ビーム制限アパーチャのアレイを画定する、条項13に記載のアセンブリ。
【0141】
[0164] 条項15.制御レンズアレイに画定されたアパーチャの少なくともサブセットは、名目位置に対して変位されている位置に提供され、変位は、マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択され、好ましくは、アパーチャのサブセットは、1つ以上の平坦要素、好ましくは同じ平坦要素に画定され、好ましくは、名目位置は、規則格子上にあり、好ましくは、規則格子は、複数の平坦要素に共通である、条項13又は14に記載のアセンブリ。
【0142】
[0165] 条項16.少なくとも制御レンズアレイに画定されたアパーチャのサブセット及び上部ビームリミッターは、名目位置に対して変位されている位置に提供され、変位は、マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択され、好ましくは、アパーチャのサブセットは、1つ以上の平坦要素、好ましくは同じ平坦要素に画定される、条項13又は14に記載のアセンブリ。
【0143】
[0166] 条項17.変位は、最も強力なレンズ効果を提供する平坦要素内のアパーチャの中心を通過するサブビーム経路が、アップビームにおける対応する変位されたアパーチャの中心も通過することになるように選択される、条項8~16の何れか一項に記載のアセンブリ。
【0144】
[0167] 条項18.平坦要素は、対物レンズアレイを形成する少なくとも1つの平坦要素からダウンビームにビーム成形リミッターを含み、ビーム成形リミッターは、ビーム制限アパーチャのアレイを画定する、先行する条項の何れか一項に記載のアセンブリ。
【0145】
[0168] 条項19.ビーム成形リミッターに画定されるビーム制限アパーチャの少なくともサブセットは、対物レンズアレイを形成するアップビームの平坦要素におけるアパーチャのそれぞれの中心軸に対して変位されている位置に提供され、好ましくは、変位は、マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択され、好ましくは、アパーチャのサブセットは、1つ以上の平坦要素、好ましくは同じ平坦要素に画定される、条項18に記載のアセンブリ。
【0146】
[0169] 条項20.変位によって補償される軸外収差は、コマ収差を含む、条項19に記載のアセンブリ。
【0147】
[0170] 条項21.サンプルから放出された荷電粒子を検出するように構成された検出器を更に含み、検出器の少なくとも一部は、好ましくは、対物レンズアレイに隣接し、及び/又はそれと一体化され、好ましくは、検出器は、アセンブリのサンプル対向表面を提供する、先行する条項の何れか一項に記載のアセンブリ。
【0148】
[0171] 条項22.荷電粒子ツールの電子光学系のための対物レンズアレイアセンブリであって、サブビームのマルチビームをサンプル上に集束させるように構成され、マルチビームをサンプルに向かって投射するように構成された対物レンズアレイを含み、対物レンズアレイアセンブリは、マルチビームのサブビーム経路に沿って位置合わせされた複数のアパーチャを画定する平坦要素を含み、平坦要素の1つ以上に画定されたアパーチャのアレイは、マルチビームにおける軸外収差を補償するように構成される、対物レンズアレイアセンブリ。
【0149】
[0172] 条項23.軸外収差は、テレセントリシティ誤差、像面湾曲、無非点収差及びコマ収差の少なくとも1つを含む、先行する条項の何れか一項に記載の対物レンズアレイアセンブリ。
【0150】
[0173] 条項24.先行する条項の何れか一項に記載の対物レンズアレイアセンブリを含む電子光学システム。
【0151】
[0174] 条項25.対物レンズアレイアセンブリのアップビームにコリメータを更に含む、条項24に記載のシステム。
【0152】
[0175] 条項26.コリメータは、巨視的なコリメーションをビームに適用するように構成されたマクロコリメータを含む、条項25に記載のシステム。
【0153】
[0176] 条項27.対物レンズアレイアセンブリのアップビームに集光レンズアレイを更に含み、集光レンズアレイは、好ましくは、マルチビームを生成するように構成される、条項24~26の何れか一項に記載のシステム。
【0154】
[0177] 条項28.集光レンズアレイにおける集光レンズは、好ましくは、サブビーム経路が集光レンズアレイと中間焦点との間で互いに対して各々に関して発散するように、対物レンズアレイアセンブリにおいて、集光レンズアレイと、それぞれの対物レンズと、の間にそれぞれの中間焦点を形成するように構成される、条項27に記載の系システム。
【0155】
[0178] 条項29.集光レンズアレイは、対物レンズアレイにおけるサブビームの少なくともサブセットの位置をサブビームの名目位置に対して変位させるように構成され、変位は、マルチビームにおける軸外収差を補正するように選択され、好ましくは、アパーチャのサブセットは、1つ以上の平坦要素、好ましくは同じ平坦要素に画定され、好ましくは、名目位置は、規則格子上にあり、好ましくは、規則格子は、複数の平坦要素に共通である、条項27又は28に記載のシステム。
【0156】
[0179] 条項30.サブビームの変位は、集光レンズの名目位置に対して変位されている、集光レンズアレイにおける位置にそれぞれの集光レンズを提供することによって少なくとも部分的に実装される、条項29に記載のシステム。
【0157】
[0180] 条項31.少なくとも部分的にサブビームの変位を実行するように構成された1つ以上の偏向器を更に含む、条項29又は30に記載のシステム。
【0158】
[0181] 条項32.変位によって補正される軸外収差は、テレセントリシティ誤差によって生じる歪曲を含む、条項29~31の何れか一項に記載のシステム。
【0159】
[0182] 条項33.対物レンズアレイを形成する平坦要素の少なくとも1つに画定されたアパーチャの少なくともサブセットは、名目位置に対して変位されている位置に提供され、変位は、マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択され、好ましくは、名目位置は、規則格子上にあり、好ましくは、規則格子は、複数の平坦要素に共通である、条項24~32の何れか一項に記載のシステム。
【0160】
[0183] 条項34.アパーチャは、対物レンズアレイで最も強力なレンズ効果を提供するように構成された少なくとも平坦要素、好ましくは平坦要素のみにおいて名目位置に対して変位される、条項33に記載のシステム。
【0161】
[0184] 条項35.変位によって補償される軸外収差は、コマ収差を含む、条項33又は34に記載のシステム。
【0162】
[0185] 条項36.マルチビームは、平坦要素に画定されたアパーチャの中央に位置するサブセットのみを通過するように構成される、条項24~35の何れか一項に記載のシステム。
【0163】
[0186] 条項37.マルチビームが引き出される荷電粒子のビームを提供するように構成された放射源を更に含む、条項24~36の何れか一項に記載のシステム。
【0164】
[0187] 条項38.電子光学系アレイであって、条項24~37の何れか一項に記載の複数の電子光学システムを含み、電子光学システムは、それぞれのマルチビームを同じサンプルの異なる領域に同時に集束させるように構成される、電子光学システムアレイ。
【0165】
[0188] 条項39.条項24~37の何れか一項に記載の系又は条項38に記載の電子光学システムアレイを含む電子光学装置。
【0166】
[0189] 条項40.マルチビームが引き出される荷電粒子のビームを提供するように構成された放射源又はそれぞれの各系のための放射源であって、マルチビームが引き出されるそれぞれのシステムのために荷電粒子のビームを提供するように構成された放射源を含む、条項39に記載の装置。
【0167】
[0190] 条項41.サンプルを支持するように構成されたステージを含み、好ましくは、ステージは、サンプルを支持するように構成された支持体を含む、条項39又は40に記載の装置。
【0168】
[0191] 条項42.荷電粒子のマルチビームをサンプルに向かって焦束させる方法であって、条項1~23の何れか一項に記載の対物レンズアレイアセンブリを提供することと、対物レンズアレイを使用してサブビームをサンプルに向かって投射させることと、を含む、方法。
【0169】
[0192] 条項43.荷電粒子のマルチビームをサンプルに向かって焦束させる方法であって、対物レンズアレイアセンブリを提供することであって、対物レンズアレイアセンブリは、マルチビームのサブビーム経路に沿って位置合わせされた複数のアパーチャを画定する平坦要素を含むとともに、マルチビームをサンプルに向かって投射するように構成された対物レンズアレイを含むことと、マルチビームにおける軸外収差を補償するために、平坦要素の1つ以上に画定されたアパーチャを使用することと、を含む、方法。
【0170】
[0193] 条項44.対物レンズアレイは、サブビームをサンプルに向かって投射している間に対物レンズアレイに印加される静電場によって歪曲し、歪曲は、マルチビームにおける像面湾曲を少なくとも部分的に補償する、条項42又は43に記載の方法。
【0171】
[0194] 条項45.歪曲は、マルチビームにおける大部分の像面湾曲を補償する、条項44に記載の方法。
【0172】
[0195] 条項46.対物レンズアレイに画定されるアパーチャの少なくともサブセットは、静電場による対物レンズアレイの歪曲によって生じる、マルチビームにおける像面湾曲を補償するために、異なるアパーチャ面積の範囲を有するように構成され、好ましくは、アパーチャのサブセットは、1つ以上の平坦要素、好ましくは同じ平坦要素に画定される、条項44又は45に記載のアセンブリ。
【0173】
[0196] 条項47.マルチビームは、平坦要素に画定されたアパーチャの中央に位置するサブセットのみを通過する、条項42~46の何れか一項に記載の方法。
【0174】
[0197] 条項48.荷電粒子のマルチビームをサンプルに向かって焦束させる方法であって、対物レンズアレイアセンブリを使用してマルチビームをサンプルに向かって投射させることと、対物レンズアレイ内のマルチビームにおける軸外収差を補償することとを含む方法。
【0175】
[0198] 条項49.アパーチャの少なくともサブセットは、異なるアパーチャ面積の範囲を有し、異なるアパーチャ面積の範囲は、マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択され、及び/又はアパーチャの少なくともサブセットは、異なる楕円率の範囲を有し、異なる楕円率の範囲は、マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択され、及び/又はアパーチャの少なくともサブセットは、名目位置に対して変位され、変位は、マルチビームにおける軸外収差を補償するように選択される、条項43又は48に記載の方法。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【国際調査報告】