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特表2023-548684基板エリアの測定データをモデル化する方法及び関連する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-20
(54)【発明の名称】基板エリアの測定データをモデル化する方法及び関連する装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
G03F9/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524152
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2021081116
(87)【国際公開番号】W WO2022101204
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】20207862.2
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】テン ハーフ,ハイス
(72)【発明者】
【氏名】アドヤンタナ,シュレア
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA05
2H197DA02
2H197DA03
2H197DA09
2H197EA11
2H197EA17
2H197EB16
2H197HA03
2H197JA17
2H197JA23
(57)【要約】
リソグラフィプロセスにおいて基板に関する測定データを基板エリアにモデル化する方法が開示される。方法は、基板に関する測定データを得ること、及び基板の歪みを記述する少なくとも第1のフィールド間モデル及び露光フィールド内の歪みを記述するフィールド歪みモデルを測定データに適合させる結合フィッティングを実行することを含み、少なくとも第1のフィールド間モデルが、放射基底関数モデルもしくは弾性エネルギー最小化スプラインモデルを含む、又は方法が、放射基底関数モデルもしくは弾性エネルギー最小化スプラインモデルを、異なるフィールド間モデル及びフィールド歪みモデルの結合フィットの歪み残差に適合させることを更に含む。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィプロセスにおける基板エリアの基板に関する測定データをモデル化する方法であって、
前記基板に関する測定データを得ること、
前記基板の歪みを記述する少なくとも第1のフィールド間モデル及び露光フィールド内の歪みを記述するフィールド歪みモデルを前記測定データに適合させる結合フィッティングを実行することを含み、
前記少なくとも第1のフィールド間モデルが、前記基板の歪みを放射基底関数に関して記述する放射基底関数モデルもしくは前記基板の歪みを前記モデルのある汎関数を最小化する基底関数に関して記述する弾性エネルギー最小化スプラインモデルを含む、又は
前記方法が、前記基板の歪みを放射基底関数に関して記述する放射基底関数モデルもしくは前記基板の歪みを前記モデルのある汎関数を最小化する基底関数に関して記述する弾性エネルギー最小化スプラインモデルを、異なるフィールド間モデル及び前記フィールド歪みモデルの結合フィットの歪み残差に適合させることを更に含む方法。
【請求項2】
前記放射基底関数モデルが多重調和スプラインモデルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多重調和スプラインモデルが薄板スプラインモデルを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記放射基底関数モデル又は弾性エネルギー最小化スプラインモデルのフィットにおいて最小化される費用関数に正則化項を含むことを含み、この正則化項が、前記放射基底関数モデル又は弾性エネルギー最小化スプラインモデルのパラメータに少なくとも依存する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記正則化項が最小化される前記汎関数に等しい、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、前記放射基底関数モデル及び露光フィールド内の歪みを記述するフィールド歪みモデルを前記測定データに適合させる前記結合フィッティングを実行することを含み、
前記結合フィットが、多項式フィールド間モデルを前記測定データに適合させることを更に含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記多項式フィールド間モデルが線形モデルを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、前記放射基底関数モデル又は弾性エネルギー最小化スプラインモデルを、前記フィールド間モデル及びフィールド歪みモデルの前記結合フィットの歪み残差に適合させることを含み、前記フィールド間モデルが高次多項式フィールド間モデルを含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記フィールド歪みモデルパラメータに依存する正則化項を、前記結合フィッティングにおいて最小化される費用関数に含むことを更に含む、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記フィールド歪みモデルパラメータに依存する前記正則化項が、前記フィールド歪みモデルの曲げエネルギーに関連する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記フィールド歪みモデルパラメータに依存する前記正則化項が、フィールド又はウェーハ全体にわたる前記フィールド歪みモデルの二乗の積分に関連する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記正則化項を最小化されている前記費用関数に含む前記結合フィッティングが、正則化を用いない前記結合フィットが劣決定されるデータを適合させるのに使用される、請求項9から11に記載の方法。
【請求項13】
前記結合フィッティングが、前記基板に分布する測定位置を露光フィールドごとの様々なフィールド内位置に含む結合測定レイアウト上で実行される、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記フィールド歪みモデルが多項式フィールド内モデルを含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記フィールド歪みモデルが、前記測定データのフィールド内内容をフィールド内位置ごとの平行移動パラメータで記述する平均フィールドモデルを含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記フィールド歪みを記述するために内挿モデルを適合させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記フィールド歪みモデルが、
個別のフィールドの歪みを記述する、そのフィールド外でゼロであるフィールド単位モデル、
第1の方向に露光される前記フィールドが第2の方向に露光される前記フィールドと異なるフィールド歪みモデルによって記述されるスキャンアップスキャンダウンフィールド内モデル、
フィールドごとの歪みを記述する前記パラメータが、フィールドシーケンス番号の関数であるトレンドフィールド内モデルのうちの1つを含む、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
リソグラフィプロセスにおける基板エリアの基板に関する測定データをモデル化する方法であって、
前記基板に関する測定データを得ること、及び
露光フィールド内の歪みを記述するフィールド歪みモデルを、前記フィールド歪みモデルのパラメータに依存する正則化項であって前記フィールド歪みモデルの曲げエネルギーに関連する正則化項を含む費用関数を最小化することによって、前記測定データに適合させるフィッティングを実行することを含む方法。
【請求項19】
前記フィッティングが、フィールド間モデルを適合させることと組み合わせて実行される結合フィッティングを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記フィールド歪みモデルが、
個別のフィールドの歪みを記述する、そのフィールド外でゼロであるフィールド単位モデル、
第1の方向に露光される前記フィールドが第2の方向に露光される前記フィールドと異なるフィールド歪みモデルによって記述されるスキャンアップスキャンダウンフィールド内モデル、
フィールドごとの歪みを記述する前記パラメータが、フィールドシーケンス番号の関数であるトレンドフィールド内モデルのうちの1つを含む、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
リソグラフィプロセスにおける1つ以上の基板ステージの位置決め動作においてグリッドを定めるのに前記フィッティングステップの結果を使用することを含む、請求項1から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記測定データを得るために前記基板を測定することを含む、請求項1から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
好適な装置上で動作する場合に、請求項1から22の方法を実行するように動作可能なプログラム命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項24】
請求項23のコンピュータプログラムを備えた非一時的コンピュータプログラムキャリア。
【請求項25】
請求項24の非一時的コンピュータプログラムキャリア、及び
前記非一時的コンピュータプログラムキャリア上に含まれた前記コンピュータプログラムを実行するように動作可能なプロセッサを備えた処理装置。
【請求項26】
アライメントセンサ、
パターニングデバイスを支持するためのパターニングデバイスサポート、
基板を支持するための基板サポート、及び
請求項25の処理装置を備えたリソグラフィ装置。
【請求項27】
前記アライメントセンサが、前記測定データを得るために前記基板を測定するように動作可能である、請求項26に記載のリソグラフィ装置。
【請求項28】
前記処理装置が、前記フィッティングステップの前記結果に基づいて前記パターニングデバイス及び/又は基板サポートを制御するための補正を決定するように更に動作可能である、請求項26又は27に記載のリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] この出願は、2020年11月16日出願の欧州出願20207862.2の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本開示は、例えば半導体デバイスの製造のための基板の処理に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、基板に所望のパターンを適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造において使用可能である。リソグラフィ装置は、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)のパターン(「設計レイアウト」又は「設計」と称されることも多い)を、基板(例えばウェーハ)上に提供された放射感応性材料(レジスト)層に投影し得る。
【0004】
[0004] 基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は放射を使用することができる。この放射の波長は、基板上に形成可能なフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用されている典型的な波長は、約365nm(i線)、約248nm、約193nm及び約13nmである。例えば約193nmの波長を有する放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さなフィーチャを基板上に形成するためには、4nm~20nmの範囲内、例えば6.7nm又は13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置が用いられ得る。
【0005】
[0005] リソグラフィ装置の古典的な解像限界より小さい寸法を有するフィーチャを処理するために、低k1リソグラフィが使用されることがある。かかるプロセスでは、解像度の式は、CD=k1×λ/NAで表されることがあり、ここでλは使用される放射線の波長であり、NAはリソグラフィ装置の投影光学系の開口数であり、CDは「クリティカルディメンジョン」であり(一般にはプリントされる最小フィーチャサイズであるが、このケースではハーフピッチ)、k1は経験的な解像度ファクタである。一般に、k1が小さいほど、特定の電気的な機能性及び性能を達成するために回路設計者が計画した形状及び寸法に似せたパターンを基板上に再現することが困難になる。このような困難を克服するために、高度な微調整ステップがリソグラフィ投影装置及び/又はデザインレイアウトに適用されることがある。これらには、例えば開口数(NA)の最適化、照明方式のカスタマイズ、1つ以上の位相シフトパターニングデバイスの使用、デザインレイアウトにおける光近接効果補正(OPC)などのデザインレイアウトの最適化、又は他の一般的に解像度向上技術(RET)と定義される方法が含まれるがこれらに限定されない。付加的又は代替的に、低k1でのパターン再現を改善するために、リソグラフィ装置の安定性を制御するための1つ以上の厳格な制御ループが使用されることがある。
【0006】
[0006] リソグラフィ装置の制御の効果は、個々の基板の特性に依存することがある。例えば、リソグラフィ装置による処理(又は本明細書において一般に製造プロセスステップと称される製造プロセスの任意の他のプロセスステップ)に先立って第1の処理ツールにより処理される第1の基板が、リソグラフィ装置による処理に先立って第2の処理ツールにより処理される第2の基板と(わずかに)異なる制御パラメータから恩恵を受けることがある。
【0007】
[0007] 基板上のパターンの正確な配置は、リソグラフィにより生成され得る回路コンポーネントやその他の製品のサイズを縮小するための主要な課題である。特に、既に配置されている基板上のフィーチャを正確に測定するという課題は、高い歩留まりで作業デバイスを製造するのに十分正確にフィーチャの連続層を重ね合わせることができるための重要なステップである。いわゆるオーバーレイは、一般に、今日のサブミクロン半導体デバイスでは数十ナノメートル以内、最も重要な層では数ナノメートルまで達成される必要がある。
【0008】
[0008] その結果、最新のリソグラフィ装置は、ターゲット位置で基板を実際に露光あるいはパターニングするステップの前に、広範な測定又は「マッピング」操作を伴う。いわゆる高度な位置合わせモデルは、処理ステップ及び/又はリソグラフィ装置自体により引き起こされるウェーハ「グリッド」の非線形歪みをより正確にモデル化及び修正するために開発され続けている。ただし、露光中に全ての歪みを修正できるわけではなく、かかる歪みの原因をできるだけ多く追跡し排除することが依然として重要である。
【0009】
[0009] ウェーハグリッドのこれらの歪みはマーク位置と関連付けられた測定データによって表される。測定データはウェーハの測定から得られる。かかる測定の一例は、露光前にリソグラフィ装置においてアライメントシステムを使用して行われるアライメントマークのアライメント測定である。
【0010】
[0010] これらの歪みのモデリングを向上させることが望まれる。
【発明の概要】
【0011】
[0011] 本発明の第1の態様では、リソグラフィプロセスにおいて基板エリアの基板に関する測定データをモデル化する方法であって、基板に関する測定データを得ること、基板の歪みを記述する少なくとも第1のフィールド間モデル及び露光フィールド内の歪みを記述するフィールド歪みモデルを測定データに適合させる結合フィッティングを実行することを含み、少なくとも第1のフィールド間モデルが、基板の歪みを放射基底関数に関して記述する放射基底関数モデルもしくは基板の歪みをモデルのある汎関数を最小化する基底関数に関して記述する弾性エネルギー最小化スプラインモデルを含む、又は方法が、基板の歪みを放射基底関数に関して記述する放射基底関数モデルもしくは基板の歪みをモデルのある汎関数を最小化する基底関数に関して記述する弾性エネルギー最小化スプラインモデルを異なるフィールド間モデル及びフィールド歪みモデルの結合フィットの歪み残差に適合させることを更に含む方法が提供される。
【0012】
[0012] 本発明の第2の態様では、リソグラフィプロセスにおいて基板エリアの基板に関する測定データをモデル化する方法であって、基板に関する測定データを得ること、及び露光フィールド内の歪みを記述するフィールド歪みモデルを、フィールド歪みモデルのパラメータに依存する正則化項であってフィールド歪みモデルの曲げエネルギーに関連する正則化項を含む費用関数を最小化することによって測定データに適合させるフィッティングを実行することを含む方法が提供される。
【0013】
[0013] 本発明の更なる態様では、好適な装置上で動作する場合に第1の態様の方法を実行するように動作可能なプログラム命令を含むコンピュータプログラム、並びに関連する処理装置及びリソグラフィ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
[0014] 本発明の実施形態を、添付の概略図を参照して、単なる例示として以下に説明する。
【0015】
図1】[0015] リソグラフィ装置の概略的外観を示す。
図2】[0016] リソグラフィセルの概略的外観を示す。
図3】[0017] 本発明のある実施形態に係る制御戦略を実行する、例えば半導体デバイス用の製造設備を形成する1つ以上の他の装置と共に、図1及び図2のリソグラフィ装置及びリソグラフィセルを使用する様子を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0018] 図1は、リソグラフィ装置LAを概略的に示す。リソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えばUV放射、DUV放射、又はEUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータとも呼ばれる)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに連結されたサポート(例えばマスクテーブル)Tと、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに連結された1つ以上の基板サポート(例えばウェーハテーブル)WTa及びWTbと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0017】
[0019] 動作中、照明システムILは、例えばビームデリバリシステムBDを介して放射源SOから放射ビームを受ける。照明システムILは、放射を誘導し、整形し、及び/又は制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、及び/又はその他のタイプの光学コンポーネント、又はそれらの任意の組み合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。イルミネータILを使用して放射ビームBを調節し、パターニングデバイスMAの平面において、その断面にわたって所望の空間及び角度強度分布が得られるようにしてもよい。
【0018】
[0020] 本明細書で用いられる「投影システム」PSという用語は、使用する露光放射、及び/又は液浸液の使用や真空の使用のような他のファクタに合わせて適宜、屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、アナモルフィック光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム、及び/又は静電気光学システム、又はそれらの任意の組み合わせを含む様々なタイプの投影システムを包含するものとして広義に解釈するべきである。本明細書で「投影レンズ」という用語が使用される場合、これはさらに一般的な「投影システム」PSという用語と同義と見なすことができる。
【0019】
[0021] リソグラフィ装置LAは、投影システムPSと基板Wとの間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部を例えば水のような比較的高い屈折率を有する液体で覆うことができるタイプでもよい。これは液浸リソグラフィとも呼ばれる。液浸技法に関するさらなる情報は、参照により本願に含まれる米国特許第6,952,253号に与えられている。
【0020】
[0022] この例のリソグラフィ装置LAは、2つの基板テーブルWTa及びWTb、並びにステーション間で基板テーブルを移動することができる2つのステーション(露光ステーション及び測定ステーション)を有する、いわゆるデュアルステージタイプのものである。一方の基板テーブル上の一方の基板が、露光ステーションEXPで露光されている間に、別の基板が、例えば測定ステーションMEAもしくは別の場所(図示せず)において、他方の基板テーブル上にロードされる可能性があるか又は測定ステーションMEAで処理される可能性がある。基板を含む基板テーブルが、様々な準備ステップが実施され得るように測定ステーションMEAに位置する可能性がある。準備ステップは、レベルセンサLSを使用して基板の表面高さをマッピングすること、及び/又はアライメントセンサASを使用して基板上のアライメントマークの位置を測定することを含むことがある。マークを作成する際の不正確さにより、またその処理全体を通して発生する基板の変形により、マークのセットは並進及び回転の次により複雑な変換を受けた可能性がある。その結果として、装置LAが高い精度で適切な場所に製品フィーチャをプリントしたい場合、基板の位置及び向きを測定することに加えて、アライメントセンサは実際には基板エリア全体にわたる多くのマークの位置を詳細に測定することがある。したがって、アライメントマークの測定は時間がかかる可能性があり、2つの基板テーブルを設けることで、装置のスループットの大幅な向上が可能になる。位置センサIFが、測定ステーション及び露光ステーションにある間の基板テーブルの位置を測定することができない場合、基板テーブルの位置が両ステーションで追跡されることを可能にするために、第2の位置センサが設けられることがある。本発明の実施形態は、基板テーブルを1つのみ備えた、又は3つ以上の基板テーブルを備えた装置に適用される可能性がある。
【0021】
[0023] 1つ以上の基板サポートを有することに加えて、リソグラフィ装置LAは測定ステージ(図示せず)を備えることがある。測定ステージは、センサ及び/又はクリーニングデバイスを保持するように配置されている。センサは、投影システムPSの特性又は放射ビームBの特性を測定するように配置されることがある。測定ステージは複数のセンサを保持することがある。クリーニングデバイスは、リソグラフィ装置の一部、例えば投影システムPSの一部又は液浸液を提供するシステムの一部をクリーニングするように配置されることがある。基板サポートWTが投影システムPSから離れている場合、測定ステージは投影システムPSの下方で移動することがある。
【0022】
[0024] 放射ビームBは、支持構造(例えばマスクテーブル)MT上に保持されたパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射し、パターニングデバイスによってパターン形成される。パターニングデバイスMAを横断した放射ビームBは、投影システムPSを通過し、投影システムPSは、ビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2のポジショナPW及び位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、2Dエンコーダ又は容量センサ)の助けにより、基板テーブルWTa/WTbを、例えば様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路に位置決めするように正確に移動できる。同様に、第1のポジショナPMと別の位置センサ(図1には明示されていない)を用いて、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などに放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めできる。一般に、支持構造MTの移動は、第1のポジショナPMの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)の助けにより実現できる。同様に、基板テーブルWTa/WTbの移動は、第2のポジショナPWの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現できる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、支持構造MTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。パターニングデバイスMA及び基板Wは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2と、基板アライメントマークP1、P2とを用いて位置合わせすることができる。図示の基板アライメントマークは専用のターゲット部分を占めているが、基板アライメントマークをターゲット部分の間の空間に置くこともできる(これらはスクライブラインアライメントマークとして既知である)。同様に、複数のダイがパターニングデバイスMA上に提供されている場合、パターニングデバイスアライメントマークは、ダイ間に置かれてもよい。
【0023】
[0025] 装置は、(記載される)リソグラフィ装置の様々なアクチュエータ及びセンサの動き及び測定の全てを制御するリソグラフィ装置制御ユニットLACUを更に備える。制御ユニットLACUは、装置の動作に関係する所望の計算を実装するための信号処理及びデータ処理能力も備える。実際には、制御ユニットLACUは、それぞれが装置内のサブシステム又はコンポーネントのリアルタイムデータ取得、処理及び制御を取り扱う多数のサブユニットのシステムとして実現されることになる。例えば、ある処理サブシステムは、基板ポジショナPWのサーボ制御に特化していることがある。別個のユニットが、粗動アクチュエータ及び微動アクチュエータ、又は異なる軸を取り扱うことさえもある。別のユニットが、位置センサIFの読み出しに特化していることもある。装置の全体的な制御は、これらのサブシステム処理ユニット、オペレータ、及びリソグラフィ製造プロセスに関与する他の装置と通信する中央処理装置によって制御されることがある。
【0024】
[0026] 図2に示すように、リソグラフィ装置LAは、リソセル又は(リソ)クラスタと称されることもあるリソグラフィックセルLCの一部を構成することがあり、リソグラフィックセルは基板Wに対する露光前プロセス及び露光後プロセスを実施するための装置を含むことも多い。従来、これらの装置は、レジスト層を堆積するための1つ以上のスピンコータSCと、露光されたレジストを現像するための1つ以上のデベロッパDEと、例えばレジスト層内の溶媒を調整するために、例えば基板Wの温度を調整するための1つ以上の冷却プレートCH及び1つ以上のベークプレートBKとを含む。基板ハンドラ又はロボットROが、基板Wを入力/出力ポートI/O1,I/O2からピックアップし、異なる処理装置間で移動させ、リソグラフィ装置LAのローディングベイLBに基板Wを引き渡す。集合的にトラックと称されることも多いリソセル内のデバイスは、一般的にはトラック制御ユニットTCUの制御下にあり、トラック制御ユニットTCU自体は、例えばリソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置LAも制御し得る監視制御システムSCSによって制御されることがある。
【0025】
[0027] リソグラフィ装置LAにより露光される基板Wが正確に且つ安定的に露光されるためには、基板を検査して後続の層の間のオーバーレイエラー、線幅、クリティカルディメンジョン(CD)など、パターニングされた構造の特性を測定するのが望ましい。このために、リソセルLCには1つ以上の検査ツール(図示せず)が含まれることがある。エラーが検出される場合には、特に同じバッチ又はロットの他の基板が露光又は処理される前に検査が行われる場合に、後続の基板の露光に対して又は基板Wについて実施される他の処理ステップに対して調整がなされることがある。
【0026】
[0028] メトロロジ装置又はメトロロジツールとも称され得る検査装置METは、基板Wの1つ以上の特性、特に、異なる基板Wの1つ以上の特性がどのように異なっているのか又は同じ基板Wの異なる層に関連する1つ以上の特性が層毎にどのように異なっているのかを判定するのに使用される。検査装置は、基板W上の欠陥を識別するように構築されることがあり、例えばリソセルLCの一部である場合があるか又はリソグラフィ装置LAに統合されていることがあるか、又は独立型のデバイスである場合もある。検査装置は、潜像(露光後のレジスト層の像)について、又は半潜像的な像(露光後ベークステップの後のレジスト層の像)について、又は(レジストの露光部又は未露光部が除去された)現像済みのレジスト像について、又は(エッチングなどのパターン転写ステップの後の)エッチングされた像についても1つ以上の特性を測定することがある。
【0027】
[0029] 図3は、例えば半導体製品のための工業生産設備との関連におけるリソグラフィ装置LA及びリソセルLCを示している。リソグラフィ装置(又は略して「リソツール」200)内において、測定ステーションMEAは202で示され、露光ステーションEXPは204で示されている。制御ユニットLACUは206で示されている。既に説明したように、リソツール200は、装置200によりパターニングするために感光性レジスト及び/又は1つ以上の他の被覆を基板Wに塗布するための被覆装置SC208も備えた「リソセル」又は「リソクラスタ」の一部を構成する。装置200の出力側には、露光されたパターンを現像して物理レジストパターンにするために、ベーキング装置BK210及び現像装置DE212が設けられている。図3に示す他のコンポーネントは、明確にするために省略されている。
【0028】
[0030] パターンが付与され現像されると、パターニングされた基板220は、222、224、226などで示す他の処理装置に移送される。典型的な製造設備の様々な装置によって、様々な処理ステップが実施される。例として、この実施形態の装置222は、エッチングステーションであり、装置224は、エッチング後のアニールステップを実行する。更なる物理的及び/又は化学的処理ステップが更なる装置226などに適用される。材料の堆積、表面材料特性の改質(酸化、ドーピング、イオン注入など)、化学機械研磨(CMP)などの様々なタイプの操作が、実際のデバイスを作製するのに必要とされる可能性がある。装置226は、実際上、1つ以上の装置で実行される一連の様々な処理ステップを表すことがある。
【0029】
[0031] 一連のパターニングプロセスステップを含む上記の半導体製造プロセスは、本明細書で開示される技術が適用され得る工業プロセスの一例にすぎない。半導体製造プロセスは一連のパターニングステップを含む。各パターニングプロセスステップには、パターニング操作、例えばリソグラフィパターニング操作と、複数の他の化学的及び/又は物理的操作が含まれる。
【0030】
[0032] 半導体デバイスの製造には、基板の層ごとに適切な材料及びパターンを用いてデバイス構造を構築するために、かかる処理を何度も繰り返すことが必要である。最新のデバイス製造プロセスは、例えば40個又は50個の個別のパターニングステップを含むことがある。したがって、リソクラスタに到達した基板230は新たに用意された基板である場合があるか、又は基板230はこのクラスタ232で、もしくは全く別の装置で既に処理された基板である場合がある。同様に、必要とされる処理に応じて、装置226を出た基板は、同じリソクラスタでの後続のパターニング操作に戻されたり(例えば基板232)、異なるクラスタでのパターニング操作に仕向けられたり(例えば基板234)、ダイシング及びパッケージングのために送られる完成品であったり(例えば基板234)する場合がある。
【0031】
[0033] 製品構造の各層は、一般的にはプロセスステップの異なるセットを必要とし、各層で使用される装置は、タイプが完全に異なる場合がある。更に、装置により適用される処理ステップが名目上同じである場合でさえ、大型設備において、様々な基板に対して処理を実行するために、並行して動作するいくつかの同一と考えられる機械が存在する場合がある。これらの機械間の構成又は欠点の小さな相違は、この小さな相違が様々な基板に様々な形で影響を及ぼすことを意味する可能性がある。エッチング(装置222)などの比較的各層に共通であるステップでさえ、名目上同一であるが、スループットを最大化するために並行して動作するいくつかのエッチング装置によって実施されることがある。より大きな装置内の様々なチャンバにおいて並行処理が実行されることもある。更に、実際には、様々な層は、エッチングされる材料の詳細、及び例えば異方性エッチングなどの特別な要件に応じて、様々なエッチングプロセス、例えば化学エッチング、プラズマエッチングなどを必要とすることが多い。
【0032】
[0034] 上記のように、前の及び/又は次のプロセスは、他のリソグラフィ装置で実施されることがあり、様々なタイプのリソグラフィ装置で実施されることさえある。例えば、解像度及び/又はオーバーレイの点で要求がきわめて厳しい1つ以上の層は、デバイス製造プロセスが、要求があまり厳しくない1つ以上の他の層よりも高度なリソグラフィツールで実施されることがある。したがって、1つ以上の層は、液浸タイプのリソグラフィツールで露光されることがある一方、1つ以上の他の層は、「ドライ」ツールで露光される。1つ以上の層は、DUV波長で動作するツールで露光されることがある一方、1つ以上の他の層は、EUV波長の放射線を使用して露光される。
【0033】
[0035] 図3には、製造プロセスの所望の段階における製品のパラメータの測定を行うために設けられるメトロロジ装置(MET)240も示されている。最新のリソグラフィ製造設備におけるメトロロジステーションの一般的な例は、例えば角度分解スキャトロメータ又は分光スキャトロメータといったスキャトロメータであり、これは装置222におけるエッチングの前に、220で現像された基板の1つ以上の特性を測定するために適用されることがある。メトロロジ装置240を使用して、性能パラメータデータPDAT252が判定されることがある。この性能パラメータデータPDAT252から、オーバーレイやクリティカルディメンジョン(CD)などの性能パラメータが、現像済みレジストにおいて特定の精度要件を満たさないと更に判定されることがある。エッチングステップの前に、現像済みレジストを取り除き、リソクラスタを通じて基板220の1つ以上を再処理する機会が存在する。更に、メトロロジ装置240からのメトロロジ結果は、経時的に小さな調整を行うことによって、リソクラスタにおけるパターニング操作の精密な性能を維持するのに使用される可能性があり、それによって製品が規格外になり再加工が必要となるリスクが低下したり最小化される。当然のことながら、処理済みの基板232、234及び/又は入ってくる基板230の1つ以上の特性を測定するために、メトロロジ装置240及び/又は1つ以上の他のメトロロジ装置(図示せず)が適用される可能性がある。
【0034】
[0036] 典型的には、リソグラフィ装置LAにおけるパターニングプロセスは、基板W上の構造の寸法決定及び配置に高い精度を必要とする、処理の中で最も重要なステップの1つである。この高い精度を確保するために、3つのシステムが図3に概略的に示す制御環境に組み込まれることがある。これらのシステムの1つは、メトロロジ装置240(第2のシステム)及びコンピュータシステムCL250(第3のシステム)に(仮想的に)接続されているリソツール200である。かかる環境の要求は、これらの3つのシステム間の協調を最適化又は改善して、いわゆる「プロセスウィンドウ」全体を強化し、1つ以上の厳格な制御ループを提供して、リソグラフィ装置LAにより実施されるパターニングがプロセスウィンドウ内にとどまるように支援することである。プロセスウィンドウは、複数のプロセスパラメータ(例えば、ドーズ、フォーカス、オーバーレイなどから選択された2つ以上)の値の範囲を規定し、この範囲内で特定の製造プロセスが規定の結果(例えば、機能的な半導体デバイス)を産出し、典型的には、この範囲内でリソグラフィプロセス又はパターニングプロセスのプロセスパラメータの値が、(例えば、CDの許容範囲(公称CDの±10%など)で指定された)適切な構造を生み出しながら変動することが可能である。
【0035】
[0037] コンピュータシステムCLは、パターニングされるデザインレイアウト(の一部)を使用することにより、1つ以上の解像度向上技術のどれを使用すべきかを予測し、かつ計算機リソグラフィのシミュレーション及び計算を実行して、パターニングプロセスのプロセスウィンドウ全体の最大化を達成するパターニングデバイスレイアウト及びリソグラフィ装置設定を決定することがある(図3において第1の目盛り盤SC1の両方向矢印で示されている)。典型的には、解像度向上技術は、リソグラフィ装置LAのパターニング可能性に適合するように構成される。コンピュータシステムCLはまた、プロセスウィンドウ内の何れの箇所でリソグラフィ装置LAが現在動作しているかを(例えば、メトロロジツールMETからの入力を使用して)検出することにより、例えば準最適な処理のために、欠陥が存在し得るかどうかを予測するのに使用されることがある(図3において第2の目盛り盤SC2の「0」を指す矢印で示されている)。
【0036】
[0038] メトロロジツールMETは、正確なシミュレーション及び予測を可能にする入力をコンピュータシステムCLに与えることがあり、例えばリソグラフィ装置LAの較正ステータスにおいて起こり得るドリフトを識別するフィードバックをリソグラフィ装置LAに与えることがある(図3において第3の目盛り盤SC3の複数の矢印で示されている)。
【0037】
[0039] コンピュータシステム250は、プロセスの制御を、(i)所与の処理ステップ(例えばリソグラフィステップ)で処理される前に基板と関連付けられた「前処理メトロロジデータ」(例えば、スキャナメトロロジデータLADAT254、及び外部前処理メトロロジExDAT260を含む)と、(ii)処理された後の基板と関連付けられている性能データすなわち「後処理データ」PDAT252との組み合わせに基づいて実施することができる。
【0038】
[0040] 前処理メトロロジデータLADAT254(リソグラフィ装置LA200又はスキャナにより生成されるデータであるため、本明細書ではスキャナメトロロジデータと称される)の第1のセットが、測定ステーション202におけるアライメントセンサASを使用してリソグラフィ装置LA200により従来から得られているアライメントデータを含むことがある。代替的に、又はアライメントデータに加えて、スキャナメトロロジデータLADAT254は、レベルセンサLSを使用して得られた高さデータ、及び/又はアライメントセンサASなどからの「ウェーハ品質」信号を含むことがある。したがって、スキャナメトロロジデータLADAT254は、基板のためのアライメントグリッド、及び基板の変形(平坦性)に関するデータを含むことがある。例えば、スキャナメトロロジデータLADAT254は、露光に先立って(例えば、典型的にはアライメントセンサ及びレベリングセンサを備える)ツインステージリソグラフィ装置LA200の測定ステーションMEA202によって生成されることがあり、測定と露光の同時操作が可能になる。かかるツインステージリソグラフィ装置は周知である。
【0039】
[0041] リソグラフィ装置について露光前測定を行うのに、(例えばスタンドアロンの)外部露光前メトロロジツールExM270の使用が増えている。かかる外部露光前メトロロジツールExM270は、ツインステージリソグラフィ装置LA200の測定ステーションMEA202とは異なる。トラック内で実行される露光前測定はいずれも外部測定と見なされる。露光スループットを十分なレベルに維持するために、測定ステーションMEA202により測定されるスキャナメトロロジデータLADAT(例えば、アライメントグリッド及び基板変形グリッド)は、望ましい測定結果のスパースセットに基づいている。これは一般的に、かかる測定ステーションがより高次の補正、具体的には3次を超える補正に十分な測定データを集めることができないことを意味する。これに加え、不透明ハードマスクの使用はウェーハグリッドのアライメントを正確に測定することを困難にする可能性がある。
【0040】
[0042] 外部露光前メトロロジツールExM270は、露光に先立ってはるかに高密度な測定が各基板に対して行われることを可能にする。これらの露光前メトロロジツールExM270には、スキャナと同じか又はスキャナより高速のスループットで、かつアライメントセンサ及びレベルセンサが別個の測定ステーションMEA202内に含まれている場合でもこれらを使用して達成され得るよりもはるかに高い測定密度でウェーハグリッド変形を測定及び/又は予測するものがある。露光前メトロロジツールには、例えば基板形状検査ツール及び/又はスタンドアロンアライメントステーションが含まれる。
【0041】
[0043] 図3は、性能データPDAT、スキャナメトロロジデータLADAT及び外部露光前データExDATのそれぞれのための別々のストレージ252、254、260を示しているが、これらの異なるタイプのデータは、1つの共有ストレージユニットに記憶されるか、必要な場合に特定のデータ項目を取り出し得る多数のストレージユニットに分散されることがある。
【0042】
[0044] ウェーハ上の及び/又はフィールド上のアライメント測定を示すために、アライメントモデルが使用される。アライメントモデルの第1の目的は、露光グリッドが各露光フィールド上に作成され得るように、利用可能な測定データをウェーハ全体にわたって内挿及び/又は外挿するためのメカニズムを提供することである。測定データは、オーバーレイ精度の観点から望まれるだけの数の測定領域を測定することが全く実際的でない、すなわち時間ひいてはスループットオーバーヘッドが高すぎるためにスパースとなる。アライメントモデルの第2の目的はノイズ抑制を提供することである。これは測定値よりも少ないモデルパラメータを使用することによって又は正則化を使用することによって達成されることがある。
【0043】
[0045] 標準モデルは10個未満のパラメータを使用することがある一方、進歩したアライメントモデルは通常、15個を超えるパラメータ、又は30個を超えるパラメータを使用する。進歩したモデルの例は、高次ウェーハアライメント(HOWA)モデル及び放射基底関数(RBF)に基づくアライメントモデルである。HOWAは、二次及びより高次の多項式関数に基づく公開された技術である。RBFモデリングは、参照により本明細書に組み込まれるUS2012218533A1に記載されている。これらの進歩したモデルの異なるバージョン及び拡張が考案される可能性がある。進歩したモデルは、ターゲット層の露光中に補正されるウェーハグリッドの複雑な記述を生成する。RBF及び最新版のHOWAは、数十のパラメータに基づく特に複雑な記述を与える。これは、十分な精度のウェーハグリッドを得るために多くの測定が必要となることを示唆する。
【0044】
[0046] 現在、HOWAモデルなどの多項式ベースのモデルは、フィールド間ウェーハ変形モデリング及びフィールド内ウェーハ変形モデリングの両方に主に使用される。これは通常、フィールド内モデリングがフィールド間モデリングの後に残留ウェーハ変形に対して行われるカスケード方式で行われる。例えばフィールド間モデリングは初めに、測定値の第1のセット、通常はウェーハ全体の単一のフィールド内位置に(すなわち、マークが測定されるウェーハのフィールドごとのフィールド内の同じ位置に)アライメントマークを有するフィールド間レイアウトに対して行われることがある。次にフィールド間モデリングの結果は、通常はウェーハ上のフィールドの小さなサブセットごとの複数のマークの共通のフィールド内レイアウト(フィールド内レイアウト)を含む測定値の第2のセットに適用される。この後、フィールド内モデルはフィールド内レイアウトのフィールド間モデルにより補正される測定値に適合される。
【0045】
[0047] ノイズ伝搬を低減する及び/又はより進歩したモデルを可能にするこのカスケード方式のモデリングのマイナス面は、フィールド内モデリングに使用された測定値がフィールド間モデリングに使用されずその逆も同様であることである。これに対処するために、結合されたレイアウト及び結合されたモデリング方法が多項式モデルに対して提案される。結合されたレイアウトはフィールド内位置を分散してサンプリングする、すなわち様々なフィールド内位置が様々なフィールドにおいて測定される。かかるレイアウト上にフィールド間モデルをモデル化することは、フィールド内変形からフィールド間モデルへのクロストークを発生させる可能性があり、結果としてウェーハ及びフィールドグリッド予測が不正確になる。したがって、フィールド間多項式(HOWA)基底関数及びフィールド内多項式基底関数が1回で適合される結合されたモデリング方法が多項式モデルに対して提案されており、その結果、フィールド間及びフィールド内多項式修正可能変形のクロストークを防止又は緩和することができる。
【0046】
[0048] 多項式モデリングの代替案が、(参照により本明細書に組み込まれる)US2012218533A1に開示されており、放射基底関数(RBF)モデリングとして知られている。RBFモデリングは、多項式モデルよりも局部的ウェーハ変形を良好に捉えることができる外挿/内挿モデリング技法である。
【0047】
[0049] RBFモデリングは、US2012218533A1に説明されるように、放射基底関数を生成するために、中心と称されるウェーハ上のいくつかの位置
【0048】
【数1】
【0049】
(例えばアライメントマークの位置)を使用するステップ、及び生成した放射基底関数を基底関数として基板全体にわたって使用して装置内の基板のモデルパラメータを計算するステップを含む。
【0050】
【数2】
【0051】
は、その値がある位置、例えば原点までの距離にのみ依存する関数であるが、このケースでは中心の位置が以下のようになる。
【0052】
【数3】
【0053】
ここでオーバーライン ̄は変数が列ベクトルであることを示し、
【0054】
【数4】
【0055】
はユークリッドベクトルノルムを意味する。
【0056】
[0050] RBFモデルの位置
【0057】
【数5】
【0058】
の評価は次のように表記されることがある。
【0059】
【数6】
【0060】
ここで近似関数
【0061】
【数7】
【0062】
は、異なる中心
【0063】
【数8】
【0064】
と測定値から推定するためのパラメータである重みwとにそれぞれが関連付けられたN個の放射基底関数(RBF)の加重和として表されている。重みwは、残差
【0065】
【数9】
【0066】
の二乗の和が最小になる最小二乗法を用いて計算されることがあり、mは位置
【0067】
【数10】
【0068】
についての測定結果(例えば、2つの方向の一方におけるアライメント測定値)である。あらゆるアライメントマークに位置する中心の典型的な使用例について、測定値の数と同じくらい多くの重み、すなわち自由度があることに留意されたい。結果として生じる連立方程式は非常に温和な条件下で非特異(可逆)であるため、一意解が存在する。放射基底関数(RBF)の多くについて、唯一の制約は少なくとも3つの点が直線上にないことである。
【0069】
[0051] ガウス基底関数、逆基底関数、多重二次基底関数、逆二次基底関数、スプライン次数k基底関数及び薄板スプライン基底関数などのRBFの多くの選択肢が可能である。その他のRBFも可能であることに留意されたい。2つの主要なRBFクラスは、無限平滑(各点に導関数が存在する)及びスプライン(いくつかの点には導関数が存在しないことがある)である。
【0070】
[0052] 1つの特定のRBFの例は薄板スプライン(TPS)モデリングである。TPSは、金属の薄いシートの曲げを含む物理的類似性に関連する。物理的環境では、撓みはz方向であり、薄いシートの面と直交する。この概念をリソグラフィプロセスにおける基板変形の問題に適用するために、板の持ち上がりをその面内のx又はy座標の変位とみなすことができる。TPSは、イメージアライメント及び形状マッチングにおいて非剛体変換モデルとして広く使用されてきた。TPSが好評であるのは、いくつかの利点による。
・このモデルには手動チューニングが必要な自由パラメータがなく、自動内挿が実施可能であり、
・それが二次元重調和演算子の基本解であり、
・データ点のセットを考えると、各データ点を中心とした薄板スプラインの加重組み合わせは、いわゆる「曲げエネルギー」を最小にしながらこれらの点を正確に通る内挿関数を与える。
【0071】
[0053] これより薄板スプラインの数学的詳細を示す。薄板スプラインは、1次元データを汎関数F(f(x,y))が最小になるように内挿するモデルf(x,y)であり、F(f(x,y))は次式によって与えられ、
【0072】
【数11】
【0073】
モデルのいわゆる「曲げエネルギー」を表す(f(x,y)が金属の薄板の高さを記述する物理的環境では、この汎関数は板の曲げに関連する曲げエネルギーに本当に比例する)。正則化した形では薄板スプラインは、次式により与えられる費用関数を最小化する。
【0074】
【数12】
【0075】
ここで
【0076】
【数13】
【0077】
は測定値の列ベクトルであり、KはRBFモデル行列であり、その薄板スプラインについての行列要素Kijは次式によって与えられる。
【0078】
【数14】
【0079】
ここで
【0080】
【数15】
【0081】
はRBF重み(フィットパラメータ)を含む列ベクトルであり、Pは1次多項式フィールド間モデル行列であり、
【0082】
【数16】
【0083】
は6つの線形フィールド間モデルパラメータを含む列ベクトルであり、λはRBF正則化パラメータであり、
【0084】
【数17】
【0085】
はRBF「曲げエネルギー」である。費用関数は制約
【0086】
【数18】
【0087】
の下で最小化されることがある。中心が測定位置にある場合(K=K=K、P=P)、これは費用関数のパラメータ
【0088】
【数19】
【0089】
及び
【0090】
【数20】
【0091】
方向の勾配をゼロに設定することによって行われることがある。結果として生じる方程式を再配置することによって、次式により与えられる解が与えられ、
【0092】
【数21】
【0093】
ここでIは単位行列である。ウェーハアライメントの場合、解は2つの方向(x及びy)について別々に計算される。
【0094】
[0054] 薄板スプラインは、RBFであることの次に弾性エネルギー最小化スプラインモデルの一例でもある。最小化される汎関数は、モデル関数の曲げエネルギー密度の積分である。代替的にモデルは、異なる汎関数、例えば、一般にx方向歪みを記述するモデル関数u(x,y)、y方向歪みを記述するモデル関数v(x,y)及びそれらの任意の次数の導関数に依存する異なる密度Lにわたる積分を最小化することによって見つけられる可能性がある。
L(u,v,u,v,u,v,uxx,vxx,uxy,vxy,…)
ここで下付き文字はその方向の関数の導関数を指す(例えばuxy=du/dxdy)。この種類の汎関数を最小化する基底関数を見つけるために、オイラーラグランジェ方程式を導く変分法を利用することができる。スプラインモデル関数は、中心位置(x,y)を除く至る所でオイラーラグランジェ方程式を満たす解を求めることによって見つけられることがあり、すなわち解は以下の(結合可能性がある)微分方程式のセットを満たし、
【0095】
【数22】
【0096】
ここでδはディラックのデルタ関数であり、w及びwは定数である。解、すなわち求められるスプラインモデル関数は一般に次式のように見える。
【0097】
【数23】
【0098】
ここでPは最小化される汎関数の値に影響を与えないモデルのモデル行列であり、p、w、z、及びqはスプラインモデル基底関数であり、wx,j及びwy,jはスプライン中心位置(xc,j,yc,j)に関連するモデルパラメータである。薄板スプラインモデルの場合、関数w及びzはゼロであり、関数p及びqは同じで(x,y)と(xc,j,yc,j)の間の距離のみに依存する、すなわち放射基底関数になる。
【0099】
[0055] 結合レイアウトに関するカスケード方式のモデリングにおけるHOWAフィールド間モデルの代わりにRBFモデル又は弾性エネルギー最小化スプラインモデルを使用することによって、フィールド歪みからRBFモデルへのクロストークが発生することになる。正則化が使用されているかどうか、またどの程度使用されているかによって、このクロストークは、多項式フィールド間モデリングの場合よりも顕著である可能性がある。更に、あらゆる測定位置に中心がある典型的なRBFモデルは、内挿モデルであり、測定値と同じくらい多くのパラメータから構成されるため、標準的な結合フィッティングアプローチに役立たない。したがって、RBFモデル又は弾性エネルギー最小化スプラインモデルにおける中心の数について妥協が行われていない限り、かかるモデルとフィールド歪みモデルとの(制約のない)結合フィットが劣決定の連立方程式をもたらす。
【0100】
[0056] RBFモデル又は弾性エネルギー最小化スプラインモデルとフィールド歪みモデルを結合レイアウト上にカスケードすることの限界を克服するために、2つの方法が提案される。
・RBFモデル又は弾性エネルギー最小化スプラインモデルとフィールド歪みモデルの結合フィット。このフィットは、明確に決定された方程式のセットをもたらすために、モデルの二乗の残差に加えてRBF又は弾性エネルギー最小化スプラインモデルパラメータに依存する正則化項を含み、任意選択的にフィールド歪みモデルパラメータに依存する正則化項を含む費用関数を最小化することによって解決されることがある。
・RBFモデル又は弾性エネルギー最小化スプラインモデルの、異なるフィールド間モデルとフィールド歪みモデルの結合フィットの残差へのカスケードされたフィット。
【0101】
[0057] 最小化される費用関数に正則化項を含むことによって、フィールド歪みモデルパラメータは、この正則化項が最小になるように選ばれることになる。正則化項はフィールド間モデルの「曲げエネルギー」である場合がある。その場合、フィールド歪みモデルパラメータはフィールド間モデルが最小の「曲げエネルギー」を有するものとなる。モデルパラメータは、費用関数のモデルパラメータ方向の勾配をゼロに設定し結果として生じる方程式を解くことによって見つけられることがある。
【0102】
[0058] これよりかかるアプローチの一例の数学的詳細を示す。第1の例では、方法は、RBF曲げエネルギーであるRBFパラメータに関する正則化項を含む費用関数を最小化することによるRBFモデルとフィールド内モデルの結合フィットを含む。このケースでは、費用関数は次式によって与えられる。
【0103】
【数24】
【0104】
ここでLはフィールド内モデル行列であり、
【0105】
【数25】
【0106】
はフィールド内モデルパラメータを含む列ベクトルである。費用関数はここでもまた制約
【0107】
【数26】
【0108】
の下で最小化されることがある。中心が測定位置にある場合(K=K=K、P=P)、これは費用関数のパラメータ
【0109】
【数27】
【0110】
及び
【0111】
【数28】
【0112】
方向の勾配をゼロに設定することによって行われることがある。結果として生じる方程式を再配置することによって、以下の解が与えられる。
【0113】
【数29】
【0114】
[0059] ある実施形態では、改善された結果がフィールド歪みモデルのためのi正則化項を追加することによって得られることがある。かかる正則化は、フィールド歪みモデルパラメータに依存する量を費用関数に含むことを課すことがある。ある実施形態では、この正則化は、フィールド歪みモデルがフィールド内グリッドに誘起する「曲げエネルギー」を含むことがある。代替的に、この正則化項は、フィールド歪みモデル係数のノルム、フィールドにわたるフィールド歪みモデル評価の二乗の積分、フィールドにわたるフィールド歪みモデルの任意の次数の導関数の積分又はフィールド歪みモデルパラメータに依存する異なる量にペナルティを課すことがある。数学的に表現すると、最小化される費用関数はここでは次式になることがある。
【0115】
【数30】
【0116】
ここでφはフィールド歪みモデル正則化パラメータであり、Rはフィールド歪みモデル正則化行列(以下に与えられたフィールド内モデルの曲げエネルギーの例)であり、
【0117】
【数31】
【0118】
はフィールド歪みモデル正則化項である。解はここでも費用関数のパラメータ
【0119】
【数32】
【0120】
及び
【0121】
【数33】
【0122】
方向の勾配をゼロに設定することによって求められる。結果として生じる方程式を再配置することによって次式が与えられる。
【0123】
【数34】
【0124】
[0060] フィールド内曲げエネルギー及び対応するフィールド内モデル正則化行列は、以下のように決定されることがある。線形フィールド内モデル(モデルパラメータの線形都合として表記され得るフィールド内モデル)の場合、フィールド内位置(x,y)におけるモデルの評価を次のように表記することができる。
【0125】
【数35】
【0126】
ここでbは基底関数f(x,y)に対応するモデルパラメータである。1つのフィールド内のフィールド内モデルの曲げエネルギーUは、次式によって計算されることがある。
【0127】
【数36】
【0128】
ここでa及びbはそれぞれx方向及びy方向のフィールドサイズである。式を次のような行列形式で表すことができ、
【0129】
【数37】
【0130】
ここで正則化行列Rの行列要素Rijは次式によって与えられ、
【0131】
【数38】
【0132】
ここでi及びjは行列の行と列のインデックスを示す。多項式フィールド内モデルの場合、モデル評価を次式で表記することができ、
【0133】
【数39】
【0134】
ここでn及びmは、i番目の基底関数のx方向及びy方向のパワーである。かかるモデルの場合、正則化行列要素は次式によって近似される可能性がある。
【0135】
【数40】
【0136】
ここでrはウェーハ半径であり、前因子は単一のフルフィールド上の曲げエネルギーから始まってウェーハ全体にわたる近似された曲げエネルギーになるために含まれる。
【0137】
[0061] このRBF又は弾性エネルギー最小化スプラインモデル及びフィールド歪みモデルを適合させる結合された方法の利点は、上記の変形がフィールド歪み内容を含む場合に通常のRBFモデリングよりも優れた性能をもたらし得ることである。これはフィールド歪みからRBF又は弾性エネルギー最小化スプラインへのクロストークが緩和又は防止される可能性があり、フィールド歪み内容が修正される可能性があるためである。フィールド歪みモデル正則化が用いられない場合、フィールド歪み修正可能内容からRBF又は弾性エネルギー最小化スプラインモデルへのクロストークは完全に防止される可能性がある。ただし、これはより高いノイズ感度を犠牲にする。上記のフィールド歪みモデル正則化実施形態によれば、ノイズ伝搬がクロストークをいくらか犠牲にして抑制される。したがって、モデルは、ハイパーパラメータφを介してユースケース依存の最適性能に調整される可能性がある。
【0138】
[0062] 第2の方法は、異なるフィールド間モデルのフィールド歪みモデルとの結合フィットの残差へのRBF又は弾性エネルギー最小化スプラインモデルの連結フィットを実行することを含む。かかる2ステップ方法は、まず異なるフィールド間モデルとフィールド歪みモデルとの結合モデリングを行い、その後RBF又は弾性エネルギー最小化スプラインを結果として生じる残差についてモデル化することを含む。
【0139】
[0063] 第1のステップにおける結合フィットは、フィールド間多項式(HOWA)基底関数及びフィールド歪みモデル基底関数を単一のフィットで適合させることを含むことがある。このフィッティングは、それぞれを個別に適合させるときに各フィットに現在使用されているよりも多くのマークがフィールド間及びフィールド歪みモデリングに使用されるように結合測定レイアウト上で実行されることがあり、これによってノイズ伝搬が低減する。結合測定レイアウトは、ウェーハに分布した測定位置をフィールドごとの様々なフィールド内位置に含むことがある。
【0140】
[0064] 以上で提案した方法はRBF又は弾性エネルギー最小化スプライン及び(多項式)フィールド内モデルに関して説明されているが、概念は必ずしもかかる実施形態に限定されるわけではない。例えば、フィールド全体を連続的に記述するフィールド内モデル(例えば多項式フィールド内モデル)ではなく、モデルは平均フィールドモデル、すなわちフィールド内位置ごとの平行移動パラメータで測定値の平均を記述するモデルである場合がある。このように、完全なフィールド内歪みは測定位置において記述される可能性があり、これによってフィールド内からフィールド間への全てのクロストークが除去される。これに対して、劣決定フィールド内多項式モデルが、依然としクロストークを引き起こし得る歪みのフィールド内修正不能部を常に残す。測定位置と異なるフィールド内位置においてフィールド内修正が必要とされる場合、フィールド内測定グリッド上の平均フィールドモデルの評価にモデルを適合させることができる。この方法の追加の利点は、(正則化の有無にかかわらず)薄板スプラインのような内挿モデルをフィールド内歪みに適合させることが可能になっていることである。
【0141】
[0065] フィールド内正則化(すなわち、フィールド内曲げエネルギー及び対応するフィールド内モデル正則化行列に関する上記のパラグラフに説明される)は、フィールド内モデルそれ自体、又は異なるフィールド間モデルと組み合わせたフィットを正則化するのに用いられる可能性もある。ある実施形態では、例えば多項式フィールド間モデル(HOWA3など)及び多項式フィールド内モデルの結合フィットに用いられる可能性がある。その場合、最小化される費用関数は次式によって与えられる。
【0142】
【数41】
【0143】
ここでM及び
【0144】
【数42】
【0145】
は、それぞれ多項式フィールド間モデル行列及びパラメータである。解は、費用関数のパラメータ
【0146】
【数43】
【0147】
方向の勾配をゼロに設定することによって求められることがあり、以下のようになる。
【0148】
【数44】
【0149】
[0066] ある実施形態では、上記の正則化されたモデルフィットは、モデルが費用関数に含まれる正則化項を用いずに劣決定されるデータにモデルをフィットするのに使用されることがある。例えば、高次(例えば3次)多項式フィールド内モデルを、曲げエネルギー正則化を用いて、10個未満(ただし2個を超える)フィールド内位置測定値(x及びy位置)を含むデータに適合させることがある。
【0150】
[0067] 純粋なフィールド内歪み(すなわち、あらゆるフィールド内の同じ歪み)の代替案として、方法は他のフィールド歪みモデルと組み合わせて使用される可能性もある。かかる代替的なフィールド内モデルは、個別のフィールドの歪みのみを記述しそのフィールド外でゼロであるフィールド単位モデル、上方に移動するように露光されるフィールドが下方に移動するように露光されるフィールドと異なるフィールド内モデルによって記述されているスキャンアップスキャンダウンフィールド内モデル、又はフィールド歪みパラメータがフィールドにわたって一定ではなく、フィールドシーケンス番号の関数(トレンド、例えば線形)であるトレンドフィールド内モデルを含むことがある。
【0151】
[0068] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用ガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。その関連で、処理される「基板」は、半導体ウェーハである場合があるか又は製造される製品のタイプによる他の基板である場合がある。
【0152】
[0069] 本明細書ではリソグラフィ装置に関連して本発明の実施形態について具体的な言及がなされているが、本発明の実施形態は他の装置に使用することもできる。本発明の実施形態は、パターニングデバイス検査装置、メトロロジ装置、又はウェーハ(あるいはその他の基板)もしくはマスク(あるいはその他のパターニングデバイス)などのオブジェクトを測定又は処理する任意の装置の一部を形成してよい。これらの装置は一般にリソグラフィツールと呼ばれることがある。このようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を使用することができる。
【0153】
[0070] 本文献では、「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外線(例えば、波長が365nm、248nm、193nm、157nm又は126nmの波長)及びEUV(極端紫外線放射、例えば、約5nm~100nmの範囲の波長を有する)を含む、すべてのタイプの放射を包含するために使用される。
【0154】
[0071] 「レチクル」、「マスク」、又は「パターニングデバイス」という用語は、本文で用いる場合、基板のターゲット部分に生成されるパターンに対応して、入来する放射ビームにパターン付き断面を与えるため使用できる汎用パターニングデバイスを指すものとして広義に解釈され得る。また、この文脈において「ライトバルブ」という用語も使用できる。古典的なマスク(透過型又は反射型マスク、バイナリマスク、位相シフトマスク、ハイブリッドマスク等)以外に、他のそのようなパターニングデバイスの例は、プログラマブルミラーアレイ及びプログラマブルLCDアレイを含む。
【0155】
[0072] 以上では光学リソグラフィと関連して本発明の実施形態の使用に特に言及しているが、本発明は、例えばインプリントリソグラフィなど、その他の適用例において使用されてもよく、文脈が許す限り、光学リソグラフィに限定されないことが理解されるであろう。
【0156】
[0073] 本明細書において用いる場合、「最適化する」又は「最適化」という用語は、結果及び/又はプロセスが、基板への設計パターン投影の精度向上やプロセスウィンドウの拡大等のような望ましい特徴を有するように、装置(例えばリソグラフィ装置)、プロセス等を調整することを指すか又は意味する。従って、本明細書において用いる場合、「最適化する」又は「最適化」という用語は、少なくとも1つの関連するメトリックにおいて、1つ以上のパラメータの初期の1つ以上の値のセットに比べ、例えば局所最適(local optimum)のような改善を与えるその1つ以上のパラメータの1つ以上の値を識別するプロセスを指すか又は意味する。「最適」及びその他の関連する用語は、これに応じて解釈されるべきである。一実施形態では、最適化ステップを繰り返し適用して、1つ以上のメトリックにおいて更に改善を得ることができる。
【0157】
[0074] 本発明の態様は任意の好都合な形態で実施される可能性がある。例えばある実施形態が、有形キャリア媒体(例えばディスク)又は無形キャリア媒体(例えば通信信号)であり得る適切なキャリア媒体に担持され得る1つ以上の適切なコンピュータプログラムによって実施されることがある。本発明の実施形態は、本明細書に記載の方法を実施するように構成されたコンピュータプログラムを実行するプログラマブルコンピュータの形態を具体的にとり得る好適な装置を使用して実施されることがある。
【0158】
[0075] ブロック図では、図示されたコンポーネントは別個の機能ブロックとして示されているが、実施形態は、本明細書で説明されている機能が図示されているように編成されているシステムに限定されない。各コンポーネントによって提供される機能は、現在描かれているものとは異なる構成のソフトウェア又はハードウェアモジュールによって提供される場合があり、例えばこのようなソフトウェア又はハードウェアは、混じり合い、結合され、複製され、分割され、(例えばデータセンター内で又は地理的に)分配され、又は別の方法で組織化されることがある。本明細書で説明される機能は、有形の非一時的な機械可読媒体に格納されたコードを実行する1つ以上のコンピュータの1つ以上のプロセッサによって提供されることがある。場合によっては、サードパーティのコンテンツ配信ネットワークが、ネットワークを介して伝達される情報の一部又は全てをホストすることがある。その場合、情報(コンテンツなど)が供給又は提供されると言われる範囲で、情報は、コンテンツ配信ネットワークからその情報を取得するための指示の送信によって提供されることがある。
【0159】
[0076] 特に明記しない限り、考察から明らかなように、この明細書全体を通して、「処理」、「計算」、「計算」、「決定」などの用語を利用する考察は、例えば、専用コンピュータ又は同様の専用電子処理/計算デバイスのような特定の装置のアクション又はプロセスを指すことが理解される。
【0160】
[0077] 読者は、本出願がいくつかの発明を説明していることを理解すべきである。それらの発明を複数の分離された特許出願に分離するのではなく、関連する主題が出願プロセスの経済に役立つため、出願人はこれらの発明を単一の文書にグループ化した。しかし、そのような明確な利点と発明の側面は混同されるべきではない。いくつかの場合では、実施形態は本明細書に記載された全ての欠陥に対処するが、本発明は独立して有用であり、いくつかの実施形態はそのような問題のサブセットのみに対処するか、又は本開示を検討する当業者に明らかである他の言及されていない利点を提供することが理解されるべきである。コストの制約により、ここに開示されている一部の発明は現在クレームされていない場合があり、継続出願などの後の出願で、又は現在のクレームを修正することによってクレームされる場合がある。同様に、スペースの制約により、本書の要約セクションも概要セクションも、そのような全ての発明又はそのような発明の全ての側面の包括的なリストを含んでいると見なすべきではない。
【0161】
[0078] 説明及び図面は、本発明を開示された特定の形態に限定することを意図するものではなく、逆に、添付の請求項によって定義される本発明の趣旨及び範囲に含まれる全ての修正、等価物、及び代替物を網羅することを意図していることを理解すべきである。
【0162】
[0079] 本発明の様々な態様の修正及び代替の実施形態は、この説明を考慮して当業者には明らかであろう。したがって、この説明及び図面は、例示のみとして解釈されるべきであり、本発明を実施する一般的な方法を当業者に教示する目的のためのものである。本明細書に示され、説明される本発明の形態は、実施形態の例として解釈されるべきであることを理解されたい。要素及び材料は、本明細書で図示及び説明されたものと置き換えることができ、部品及びプロセスを逆にしたり、順序を変更したり、省略したり、特定の機能を独立して利用したり、実施形態又は実施形態の機能を組み合わせたりすることができる。本発明のこの説明の恩恵を受けた後、当業者は、以下の特許請求の範囲に記載されている本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されている要素に変更を加えることができる。本明細書で使用されている見出しは、整理を目的としたものであり、説明の範囲を限定するために使用されることを意図したものではない。
【0163】
[0080] 本出願全体で使用される「可能性がある」という用語は、強制的な意味(すなわち、必ずという意味)ではなく、許容的な意味(すなわち、潜在的な可能性があることを意味する)で使用される。「含む(include)」、「含んでいる(including)」、及び「含む(include)」などの語は、含むが限定されないことを意味する。本出願を通して使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明示的に他を示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「an」要素又は「a」要素への言及は、「1つ以上」などの1つ以上の要素に対する他の用語及び句の使用にもかかわらず、2つ以上の要素の組み合わせを含む。「又は」という用語は、別段の指示がない限り、非排他的であり、すなわち「及び」及び「又は」の両方を包含する。条件付き関係を説明する用語、たとえば、「X、Yに応じて」、「X、Yにより」、「X、Yの場合」、「X、Yの場合」などは、前件が関係する因果関係を含むは必要な因果条件、前件は十分な因果条件、又は前件は後件の寄与因果条件であり、例えば、「状態Xは条件Yの取得時に発生」は、「XはYのみで発生」及び「X,YとZで発生」することを含む。このような条件付き関係は、いくつかの結果が遅れる可能性があるため、先行条件の取得にすぐに続く結果に限定されず、条件付きステートメントでは、先行条件は、結果に接続され、例えば先行条件は、結果として起こることの可能性に接続される。複数の属性又は機能が複数のオブジェクトにマッピングされているステートメント(たとえば、ステップA、B、C、及びDを実行する1つ以上のプロセッサ)は、特に明記しない限り、そのような全てのオブジェクトにマッピングされているそのような全ての属性又は機能と、属性又は機能のサブセットにマッピングされている属性又は機能を包含する(例えば、全てのプロセッサがそれぞれステップA~Dを実行し、プロセッサ1がステップAを実行し、プロセッサ2がステップB及びステップCの一部を実行し、プロセッサ3がステップCの一部及びステップDを実行する)。更に、特に明記しない限り、1つの値又はアクションが別の条件又は値に「基づく」という記述は、条件又は値が唯一の要因である場合と、条件又は値が複数の要因のうちの1つの要因である場合の両方を含む。特に明記されていない限り、一部の集合の「各」インスタンスにいくつかのプロパティがあるという記述は、より大きな集合の一部のその他の同一又は類似のメンバーがプロパティを持たない場合、つまり、それぞれが必ずしも全てを意味するわけではない場合を除くと読むべきではない。ある範囲からの選択への言及はその範囲の終点を含む。
【0164】
[0081] 以上の説明において、フローチャートにおける任意のプロセス、記述又はブロックは、プロセスにおける特定の論理機能又はステップを実装するための1つ以上の実行可能命令を含むコードのモジュール、セグメント又は部分を表すものとして理解されるべきであり、当業者が理解するように、関係する機能に応じて実質的に同時又は逆の順序を含め、図示又は考察された順序とは異なる順序で機能を実行することができる代替的な実装形態が、本願の例示的な実施形態の範囲内に含まれる。
【0165】
[0082] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。上記の説明は例示を目的としたものであり、限定するものではない。したがって下記に示す特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。
図1
図2
図3
【国際調査報告】