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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(54)【発明の名称】反応器の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20231114BHJP
   C08F 2/34 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C08F2/01
C08F2/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519130
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 KR2022010915
(87)【国際公開番号】W WO2023058865
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0133998
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0081252
(32)【優先日】2022-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ソグ・ユク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・フン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ムン・スブ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ソク・イ
【テーマコード(参考)】
4J011
【Fターム(参考)】
4J011AA01
4J011DA06
4J011DB24
4J011DB35
4J011MA06
4J011MB05
4J011PA23
(57)【要約】
本発明は、反応器の洗浄方法に関し、洗浄溶媒容器を、加圧気体を用いて5kg/cm.g~40kg/cm.gで加圧するステップと、前記洗浄溶媒容器から洗浄溶媒ストリームを反応器の下部および側部の何れか1つ以上に供給し、反応器の内部を充填するステップと、前記反応器の温度を115℃~200℃に維持した状態で、洗浄溶媒容器と反応器との間に洗浄溶媒ストリームを循環させるステップと、を含む、反応器の洗浄方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄溶媒容器を、加圧気体を用いて5kg/cm.g~40kg/cm.gで加圧するステップと、
前記洗浄溶媒容器から洗浄溶媒ストリームを反応器の下部および側部の何れか1つ以上に供給し、反応器の内部を充填するステップと、
前記反応器の温度を115℃~200℃に維持した状態で、洗浄溶媒容器と反応器との間に洗浄溶媒ストリームを循環させるステップと、を含む、反応器の洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄溶媒ストリームは、反応器の下部および側部に同時に供給される、請求項1に記載の反応器の洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、および卜リクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の反応器の洗浄方法。
【請求項4】
前記加圧気体は、窒素およびエチレンからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の反応器の洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄溶媒はメチルシクロヘキサンであり、
前記加圧気体は窒素またはエチレンである、請求項1に記載の反応器の洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄溶媒はトルエンまたはn-デカンであり、
前記加圧気体は窒素である、請求項1に記載の反応器の洗浄方法。
【請求項7】
前記洗浄溶媒容器に投入された洗浄溶媒の温度が140℃~200℃に加熱される、請求項1に記載の反応器の洗浄方法。
【請求項8】
前記洗浄溶媒容器は、加圧気体を用いて7kg/cm.g~30kg/cm.gで加圧する、請求項1又は2に記載の反応器の洗浄方法。
【請求項9】
前記反応器の温度は130℃~180℃に維持する、請求項1に記載の反応器の洗浄方法。
【請求項10】
前記反応器の側部は、前記反応器の上端を100%として、前記反応器の全高さの5%~20%の位置である、請求項1に記載の反応器の洗浄方法。
【請求項11】
前記反応器は、エチレンのオリゴマー化反応器である、請求項1に記載の反応器の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月8日付けの韓国特許出願第10-2021-0133998号および2022年7月1日付けの韓国特許出願第10-2022-0081252号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、反応器の洗浄方法に関し、より詳細には、エチレンのオリゴマー化反応器を洗浄するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アルファオレフィン(alpha-olefin)は、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに用いられる重要な物質として商業的に広く用いられており、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時に、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く用いられている。
【0004】
前記1-ヘキセンおよび1-オクテンのようなアルファオレフィンは、代表的に、エチレンのオリゴマー化反応により製造されている。前記エチレンのオリゴマー化反応は、エチレンを反応物として使用し、触媒の存在下でエチレンのオリゴマー化反応(三量体化反応または四量体化反応)により行われる。上記の反応を経て生成された反応生成物は、目的とする1-ヘキセンおよび1-オクテンを含む多成分の炭化水素混合物だけでなく、触媒反応中に副生成物として少量の高分子が生成され、該高分子が反応器内の液相の反応媒体に浮遊することになるが、経時的に反応器内に蓄積されるファウリング現象により一定の厚さで沈積する。この際、反応器の運転を停止して反応器および前記反応器付加設備を洗浄する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明で解決しようとする課題は、上記の発明の背景となる技術で述べた問題を解決するために、エチレンのオリゴマー化反応器に蓄積された高分子を洗浄するに際し、洗浄率を改善する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、洗浄溶媒容器を、加圧気体を用いて5kg/cm.g~40kg/cm.gで加圧するステップと、前記洗浄溶媒容器から洗浄溶媒ストリームを反応器の下部および側部の何れか1つ以上に供給し、反応器の内部を充填するステップと、前記反応器の温度を115℃~200℃に維持した状態で、洗浄溶媒容器と反応器との間に洗浄溶媒ストリームを循環させるステップと、を含む、反応器の洗浄方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の反応器の洗浄方法によると、洗浄溶媒容器と反応器との間に洗浄溶媒ストリームを循環させて反応器内に蓄積された高分子を除去するに際し、洗浄溶媒容器と反応器の運転条件を調節し、洗浄方法を改善して反応器の洗浄率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る反応器の洗浄方法の工程フロー図である。
図2】本発明の一実施形態に係る反応器の洗浄方法の工程フロー図である。
図3】本発明の一実施形態に係る反応器の洗浄方法の工程フロー図である。
図4】比較例に係る反応器の洗浄方法の工程フロー図である。
図5】比較例に係る反応器の洗浄方法の工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0010】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程内における流体(fluid)の流れを意味し、また、移動ライン(配管)内を流れる流体自体を意味し得る。具体的に、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内を流れる流体自体および流体の流れを何れも意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)、液体(liquid)、および固体(solid)の何れか1つ以上の成分を含み得る。
【0011】
以下、本発明が容易に理解されるように、添付の図1から図3を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0012】
本発明によると、反応器の洗浄方法が提供される。前記反応器の洗浄方法として、洗浄溶媒容器を、加圧気体を用いて5kg/cm.g~40kg/cm.gで加圧するステップと、前記洗浄溶媒容器から洗浄溶媒ストリームを反応器10の下部および側部の何れか1つ以上に供給し、反応器10の内部を充填するステップと、前記反応器10の温度を115℃~200℃に維持した状態で、洗浄溶媒容器と反応器10との間に洗浄溶媒ストリームを循環させるステップと、を含む反応器の洗浄方法を提供する。
【0013】
本発明の一実施形態によると、前記反応器10はエチレンのオリゴマー化反応器であることができる。具体的に、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに用いられる重要な物質として商業的に広く用いられており、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時に、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く用いられているアルファオレフィンは、エチレンのオリゴマー化反応により製造することができる。
【0014】
前記エチレンのオリゴマー化反応は、エチレンを反応物として用い、触媒の存在下でエチレンの三量体化反応または四量体化反応により行われることができる。
【0015】
前記オリゴマー化反応は、単量体が多量体化される(oligomerized)反応を意味し得る。重合される単量体の個数によって、三量化(trimerization)、四量化(tetramerization)と呼ばれ、これらを総称して多量化(multimerization)と言う。
【0016】
前記エチレンのオリゴマー化反応に用いられる触媒は、遷移金属供給源を含むことができる。前記遷移金属供給源は、例えば、クロム(III)アセチルアセトネート、クロム(III)クロリドテトラヒドロフラン、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、クロム(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、クロム(III)ベンゾイルアセトネート、クロム(III)ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオネート、クロム(III)アセテートヒドロキシド、クロム(III)アセテート、クロム(III)ブチレート、クロム(III)ペンタノエート、クロム(III)ラウレート、およびクロム(III)ステアレートからなる群から選択される1種以上を含む化合物であることができる。
【0017】
前記助触媒は、例えば、トリメチルアルミニウム(trimethyl aluminium)、トリエチルアルミニウム(triethyl aluminium)、トリイソプロピルアルミニウム(triisopropyl aluminium)、トリイソブチルアルミニウム(triisobutyl aluminum)、エチルアルミニウムセスキクロリド(ethylaluminum sesquichloride)、ジエチルアルミニウムクロリド(diethylaluminum chloride)、エチルアルミニウムジクロリド(ethyl aluminium dichloride)、メチルアルミノキサン(methylaluminoxane)、改質されたメチルアルミノキサン(modified methylaluminoxane)、およびボレート(Borate)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0018】
このように、触媒の存在下でエチレン単量体をオリゴマー化させる過程では、オリゴマー生成物の他に、触媒反応中に副生成物としてポリエチレンのような高分子が生成され得る。前記高分子は反応器内の液相の反応媒体に浮遊することになるが、経時的に反応器内にファウリング現象により蓄積され、一定の厚さで沈積するという問題が発生する。この場合、反応器の運転を停止(shut down)し、反応器および前記反応器付加設備を洗浄する必要がある。
【0019】
従来は、高分子によりファウリングが発生した反応器を洗浄するために、反応器と付加設備を解体して長時間洗浄した後、再び設置する過程で多くの時間がかかり、これにより、運転停止時に生産量の減少および洗浄コストの増加が発生するという問題があり、洗浄後に反応の正常化にかかる時間が増加し、反応安定性が低下するという問題があった。
【0020】
これに対し、本発明は、前記高分子によりファウリングが発生した反応器と付加設備などを洗浄するために、洗浄溶媒を前記洗浄溶媒が貯蔵されている洗浄溶媒容器と反応器との間で循環させるとともに、運転条件および洗浄方法を最適化して洗浄率を向上させることで、短時間で反応器の洗浄が可能であり、これにより、運転停止時間が減少して生産量が増加し、洗浄コストが減少し、洗浄後の反応正常化時間が短縮されて反応安定性を向上させることができる反応器の洗浄方法を提供する。
【0021】
本発明の一実施形態によると、前記反応器10の洗浄のために洗浄溶媒を用いることができる。例えば、前記洗浄溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、および卜リクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。具体的な例として、前記洗浄溶媒は、メチルシクロヘキサン、トルエン、またはn-デカンであることができる。
【0022】
前記洗浄溶媒は、洗浄溶媒容器20の洗浄溶媒供給ライン21を介して投入し、ポンプ30とヒータ40を稼動して前記洗浄溶媒を加熱することができる。具体的に、前記洗浄溶媒容器20に供給された洗浄溶媒は、前記洗浄溶媒容器の下部排出ラインL10を介して排出され、前記下部排出ラインから分岐されて前記洗浄溶媒容器20に連結される加熱循環ラインL11を介して循環しながら加熱されることができる。例えば、前記加熱循環ラインL11を介して洗浄溶媒ストリームを排出し、ポンプ30を用いて前記洗浄溶媒ストリームを前記洗浄溶媒容器20に循環させ、前記加熱循環ラインL11に備えられたヒータ40を用いて前記洗浄溶媒を所望の温度に加熱し、前記加熱された洗浄溶媒の温度を維持することができる。
【0023】
前記加熱循環ラインL11には第1弁50がさらに備えられることができる。前記第1弁50は、洗浄溶媒ストリームを加熱する時に開放され、反応器10の洗浄時には遮断されることができる。
【0024】
前記加熱循環ラインL11を循環しながら加熱された前記洗浄溶媒ストリームの温度は、140℃以上、150℃以上、または160℃以上、および180℃以下、190℃以下、または200℃以下であることができる。上記の範囲内で洗浄溶媒を加熱してから反応器10を洗浄する場合、ファウリングされた高分子が十分に膨潤され、洗浄溶媒の循環により容易に除去されることができる。
【0025】
本発明の一実施形態によると、前記洗浄溶媒容器20は、加圧気体供給ライン22を介して供給される加圧気体により加圧することができる。例えば、前記加圧気体は、窒素およびエチレンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。具体的な例として、前記加圧気体は、窒素またはエチレンガスであることができる。
【0026】
前記加圧気体を用いた洗浄溶媒容器20の圧力が5kg/cm.g未満である場合、洗浄溶媒容器の圧力が洗浄溶媒の蒸気圧と近似することになるため、一部の洗浄溶媒が蒸発し、それによる洗浄溶媒の損失が誘発される恐れがある。これにより、洗浄効果が低下し、減少された洗浄溶媒を補充するための運転停止周期の増加により、経済性が低下するという問題が発生する。
【0027】
一方、また、前記洗浄溶媒容器20の圧力が40kg/cm.gを超える場合には、高圧条件によって伴われる経済性(過剰な設備費)、および加圧気体の取り扱いにおける安定性の問題が発生する恐れがある。
【0028】
上記のようなことを考慮して、前記洗浄溶媒容器20を、加圧気体を用いて5kg/cm.g~40kg/cm.gの範囲、具体的には7kg/cm.g~30kg/cm.gで加圧することができる。前記洗浄溶媒容器20の圧力を上記の範囲内として加圧することで、溶媒の蒸気圧内で運転して蒸発を抑えることができ、溶媒中のエチレン溶解度を高め、洗浄力を向上させることができる。
【0029】
本発明の一実施形態によると、前記洗浄溶媒容器20から洗浄溶媒ストリームを反応器10の下部および側部の何れか1つ以上に供給し、反応器10の内部を充填するステップを含むことができる。具体的に、前記加圧気体により加圧された洗浄溶媒容器20の下部排出ラインを介して加熱された洗浄溶媒ストリームを排出し、反応器10に供給することができる。
【0030】
前記洗浄溶媒容器の下部排出ラインL10は、上述の加熱循環ラインL11と洗浄循環ラインL12に分岐され、前記洗浄溶媒容器20を加圧気体により加圧してから排出される加熱された洗浄溶媒ストリームは、前記洗浄循環ラインL12を介して反応器10に供給されることができる。この際、前記洗浄循環ラインL12は、洗浄溶媒容器の下部排出ラインL10から前記反応器10に連結されるラインと、前記反応器10の上部排出ラインから前記洗浄溶媒容器20に連結されるラインをともに意味し得る。
【0031】
前記洗浄溶媒容器の下部排出ラインL10と隣接した洗浄循環ラインL12には、第2弁51がさらに備えられることができる。前記第2弁51は、洗浄溶媒ストリームを加熱する時に遮断され、反応器10の洗浄時に開放されることができる。
【0032】
前記洗浄溶媒容器20から排出される洗浄溶媒ストリームは、前記反応器10の下部に供給するか、側部に供給するか、下部および側部に同時に供給することができる。この際、前記反応器10の下部は前記反応器10の下端を意味し、前記反応器10の側部は、前記反応器10の下端を1%、上端を100%としたときに、前記反応器10の全高さの5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、または9%以上、および10%以下、11%以下、13%以下、15%以下、または20%以下を意味し得る。上記の範囲の反応器10の側部に洗浄溶媒を供給する場合、前記反応器10の壁面やセンサなどの付加設備などに蓄積された高分子の洗浄力を向上させることができる。
【0033】
具体的に、前記洗浄溶媒容器20から排出される洗浄溶媒ストリームを前記反応器10の下部および側部にそれぞれ供給する場合にも、反応器10の洗浄が円滑に行われることができ、前記反応器10の下部および側部に同時に洗浄溶媒ストリームを供給する場合には、反応器10内で洗浄溶媒の流れの方向が変わり続けることにより、反応器10の下部および壁面に加えて、反応器10の内部に設けられたセンサなどの付加設備に蓄積された高分子の洗浄力を向上させることができる。
【0034】
本発明の一実施形態によると、前記反応器10に洗浄溶媒を充填した後、洗浄溶媒容器20と反応器10との間に洗浄溶媒ストリームを循環させるステップを含むことができる。この際、前記反応器10の温度は、115℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上、または160℃以上、および180℃以下、190℃以下、または200℃以下に維持することができる。前記洗浄溶媒ストリームを循環させる時に反応器10の温度を上記の範囲に制御することで、反応器10に蓄積された高分子を十分に膨潤させ、容易に脱落させることができる。
【0035】
前記洗浄溶媒ストリームを循環させるステップにおいて、循環時間は、12時間以上、15時間以上、または20時間以上、および24時間以下、26時間以下、または28時間以下であることができる。また、洗浄溶媒ストリームを循環させるステップにおいて、前記循環流量は、50kg/hr以上、80kg/hr以上、または100kg/hr以上、および300kg/hr以下、350kg/hr以下、または400kg/hr以下であることができる。前記洗浄溶媒ストリームの循環時に上記の条件を満たすことで、反応器10に蓄積された高分子の洗浄率を向上させることができる。
【0036】
本発明の一実施形態によると、前記洗浄溶媒としてメチルシクロヘキサンを用い、前記加圧気体として窒素またはエチレンガスを用いることができる。具体的に、前記反応器10と洗浄溶媒容器20を循環させる洗浄溶媒としてメチルシクロヘキサンを用いる際に、前記洗浄溶媒容器20を加圧する加圧気体として窒素またはエチレンガスを用いることができる。
【0037】
この場合、前記メチルシクロヘキサンの140℃~200℃の範囲内での蒸気圧が約3.1kg/cm.gであることを考慮すると、加圧気体である窒素またはエチレンガスを用いて、前記洗浄溶媒容器20を5kg/cm.g~40kg/cm.gの範囲で、具体的には7kg/cm.g~30kg/cm.gで加圧することができる。例えば、前記洗浄溶媒容器20を5kg/cm.gより低い圧力で加圧する場合、前記メチルシクロヘキサンが蒸発して前記加圧気体とともに通り抜けて遺失されるため、シクロヘキサンの損失が増加する。これにより、洗浄効率が低下することになる。さらに、前記洗浄溶媒容器20を40kg/cm.gより高い圧力に維持するには、経済性(過剰な設備費)に劣り、加圧気体の取り扱いにおいて安定性の問題が発生する恐れがある。
【0038】
また、前記洗浄溶媒としてメチルシクロヘキサンを用い、前記加圧気体として窒素またはエチレン気体を用いる際に、洗浄溶媒ストリームの循環時の反応器10の温度は、130℃以上、140℃以上、150℃以上、または160℃以上、および180℃以下または190℃以下であることができる。
【0039】
また、前記洗浄溶媒としてメチルシクロヘキサンを用い、前記加圧気体として窒素ガスを用いる際に、加圧気体を用いて加圧する洗浄溶媒容器20の圧力は、5kg/cm.g以上または6kg/cm.g以上、および8kg/cm.g以下、9kg/cm.g以下、または10kg/cm.g以下であることができる。また、前記洗浄溶媒としてメチルシクロヘキサンを用い、前記加圧気体としてエチレンガスを用いる際に、加圧気体を用いて加圧する洗浄溶媒容器20の圧力は、7kg/cm.g以上、10kg/cm.g以上、20kg/cm.g以上、または25kg/cm.g以上、および30kg/cm.g以下または40kg/cm.g以下であることができる。
【0040】
上記のように前記洗浄溶媒の種類、加圧気体の種類、加圧の程度、反応器10の温度などを制御することで、反応器10内に蓄積された高分子の洗浄に最適な条件を満たし、洗浄率を向上させることができる。
【0041】
本発明の一実施形態によると、前記洗浄溶媒としてトルエンまたはn-デカンを用い、前記加圧気体として窒素ガスを用いることができる。具体的に、前記反応器10と洗浄溶媒容器20を循環させる洗浄溶媒としてトルエンまたはn-デカンを用いる際に、前記洗浄溶媒容器20を加圧する加圧気体として窒素ガスを用いることができる。
【0042】
また、前記洗浄溶媒としてトルエンまたはn-デカンを用い、前記加圧気体として窒素気体を用いる際に、洗浄溶媒ストリームの循環時の反応器10の温度は、140℃以上または150℃以上、および170℃以下または180℃以下であることができる。
【0043】
また、前記洗浄溶媒としてトルエンまたはn-デカンを用い、前記加圧気体として窒素気体を用いる際に、加圧気体を用いて加圧する洗浄溶媒容器20の圧力は、5kg/cm.g以上または6kg/cm.g以上、および8kg/cm.g以下、9kg/cm.g以下、または10kg/cm.g以下であることができる。
【0044】
上記のように前記洗浄溶媒の種類、加圧気体の種類、加圧の程度、反応器10の温度などを制御することで、反応器10内に蓄積された高分子の洗浄に最適な条件を満たし、洗浄率を向上させることができる。
【0045】
以上、本発明に係る反応器の洗浄方法について記載および図示したが、上記の記載及び図示は、本発明の理解のための核心的な構成のみを記載及び図示したものであり、上記に記載及び図示した工程及び装置の他に、別に記載及び図示していない工程及び装置が、本発明に係る反応器の洗浄方法を行うために適宜応用されて利用可能である。
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものにすぎず、本発明の範疇および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白なことであり、これらにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0047】
実施例
実施例1
添付の図1に示された工程フロー図にしたがって、反応器10を洗浄した。
【0048】
具体的に、反応器10でエチレンのオリゴマー化反応を行い、反応終了後に反応液を貯蔵容器に移送し、反応器10内に付着されている高分子を洗浄した。この際、下記実施例2~9および比較例1~4でも、洗浄の前ステップまでは同様に行った。
【0049】
前記洗浄溶媒容器20の洗浄溶媒供給ライン21を介して洗浄溶媒としてメチルシクロヘキサン350kgを投入し、ポンプ30およびヒータ40を用いて加熱循環ラインL11を介して循環させながら洗浄溶媒を加熱し、170℃に維持した。また、洗浄溶媒容器20の加圧気体供給ライン22を介して加圧気体として窒素ガスを投入し、前記洗浄溶媒容器20を7kg/cm.gで加圧した。
【0050】
その後、前記洗浄溶媒容器の下部排出ラインL10に洗浄溶媒ストリームを排出し、反応器10の下部に投入して反応器10の上端まで充填した後、反応器10の温度を160℃に維持し、且つ洗浄溶媒の流量を100kg/hr~200kg/hrに調節しながら、洗浄循環ラインL12を介して24時間循環させた。
【0051】
その後、前記洗浄溶媒容器20に集められた洗浄溶媒をサンプリングし、濾過および真空乾燥した後、高分子の重量を測定した。これは、下記実施例2~9および比較例1~4でも同様の条件で行い、高分子の重量が最も高く測定された下記実施例7の高分子の重量を基準に換算して高分子洗浄率が60.54%であることを確認した。
【0052】
実施例2
添付の図2に示された工程フロー図にしたがって、反応器10を洗浄した。
【0053】
前記洗浄溶媒容器20の洗浄溶媒供給ライン21を介して洗浄溶媒としてメチルシクロヘキサン350kgを投入し、ポンプ30およびヒータ40を用いて加熱循環ラインL11を介して循環させながら洗浄溶媒を加熱し、170℃に維持した。また、洗浄溶媒容器20の加圧気体供給ライン22を介して加圧気体として窒素ガスを投入し、前記洗浄溶媒容器20を7kg/cm.gで加圧した。
【0054】
その後、前記洗浄溶媒容器の下部排出ラインL10に洗浄溶媒ストリームを排出し、反応器10の全高さの10%の位置に投入して反応器10の上端まで充填した後、反応器10の温度を160℃に維持し、且つ洗浄溶媒の流量を200kg/hrに調節しながら、洗浄循環ラインL12を介して24時間循環させた。
【0055】
その後、前記洗浄溶媒容器20に集められた洗浄溶媒をサンプリングし、濾過および真空乾燥した後、高分子の重量を測定し、下記実施例7で測定された高分子の重量100%を基準に換算して高分子洗浄率が66.49%であることを確認した。
【0056】
実施例3
添付の図3に示された工程フロー図にしたがって、反応器10を洗浄した。
【0057】
前記洗浄溶媒容器20の洗浄溶媒供給ライン21を介して洗浄溶媒としてメチルシクロヘキサン350kgを投入し、ポンプ30およびヒータ40を用いて加熱循環ラインL11を介して循環させながら洗浄溶媒を加熱し、170℃に維持した。また、洗浄溶媒容器20の加圧気体供給ライン22を介して加圧気体として窒素ガスを投入し、前記洗浄溶媒容器20を7kg/cm.gで加圧した。
【0058】
その後、前記洗浄溶媒容器の下部排出ラインL10に洗浄溶媒ストリームを排出し、反応器10の下部と、反応器10の全高さの10%の位置に同時に投入して反応器10の上端まで充填した後、反応器10の温度を130℃に維持し、且つ洗浄溶媒の流量を200kg/hrに調節しながら洗浄循環ラインL12を介して24時間循環させた。
【0059】
その後、前記洗浄溶媒容器20に集められた洗浄溶媒をサンプリングし、濾過および真空乾燥した後、高分子の重量を測定し、下記実施例7で測定された高分子の重量100%を基準に換算して高分子洗浄率が87.03%であることを確認した。
【0060】
実施例4
前記実施例3において、洗浄溶媒ストリームを反応器10の上端まで充填した後、反応器10の温度を160℃に維持したことを除き、前記実施例3と同様の方法により行った。
【0061】
その後、洗浄溶媒容器20に集められた洗浄溶媒をサンプリングし、濾過および真空乾燥した後、高分子の重量を測定し、下記実施例7で測定された高分子の重量100%を基準に換算して高分子洗浄率が94.05%であることを確認した。
【0062】
実施例5
前記実施例3において、洗浄溶媒ストリームを反応器10の上端まで充填した後、反応器10の温度を180℃に維持したことを除き、前記実施例3と同様の方法により行った。
【0063】
その後、洗浄溶媒容器20に集められた洗浄溶媒をサンプリングし、濾過および真空乾燥した後、高分子の重量を測定し、下記実施例7で測定された高分子の重量100%を基準に換算して高分子洗浄率が97.30%であることを確認した。
【0064】
実施例6
前記実施例4において、加圧気体として窒素気体の代わりにエチレンガスを使用したことを除き、前記実施例4と同様の方法により行った。
【0065】
その後、洗浄溶媒容器20に集められた洗浄溶媒をサンプリングし、濾過および真空乾燥した後、高分子の重量を測定し、下記実施例7で測定された高分子の重量100%を基準に換算して高分子洗浄率が97.84%であることを確認した。
【0066】
実施例7
前記実施例6において、加圧気体を投入して前記洗浄溶媒容器20を30kg/cm.gで加圧したことを除き、前記実施例6と同様の方法により行った。
【0067】
その後、洗浄溶媒容器20に集められた洗浄溶媒をサンプリングし、濾過および真空乾燥した後、高分子の重量を測定し、測定された高分子の重量が1.85kgと最も高く測定されたため、100%の基準とした。
【0068】
実施例8
前記実施例4において、洗浄溶媒としてメチルシクロヘキサンの代わりにトルエンを使用したことを除き、前記実施例4と同様の方法により行った。
【0069】
その後、洗浄溶媒容器20に集められた洗浄溶媒をサンプリングし、濾過および真空乾燥した後、高分子の重量を測定し、前記実施例7で測定された高分子の重量100%を基準に換算して高分子洗浄率が97.84%であることを確認した。
【0070】
実施例9
前記実施例4において、洗浄溶媒としてメチルシクロヘキサンの代わりにn-デカンを使用したことを除き、前記実施例4と同様の方法により行った。
【0071】
その後、洗浄溶媒容器20に集められた洗浄溶媒をサンプリングし、濾過および真空乾燥した後、高分子の重量を測定し、前記実施例7で測定された高分子の重量100%を基準に換算して高分子洗浄率が98.92%であることを確認した。
【0072】
比較例
比較例1
添付の図4に示された工程フロー図にしたがって、反応器10を洗浄した。
【0073】
前記洗浄溶媒容器20の洗浄溶媒供給ライン21を介して洗浄溶媒としてメチルシクロヘキサン350kgを投入し、ポンプ30およびヒータ40を用いて加熱循環ラインL11を介して循環させながら洗浄溶媒を加熱し、170℃に維持した。
【0074】
その後、前記洗浄溶媒容器の下部排出ラインL10に洗浄溶媒ストリームを排出し、反応器10の下部に投入して反応器10の上端まで充填した後、反応器10の温度を100℃に維持し、且つ洗浄溶媒の流量を200kg/hrに調節しながら、洗浄循環ラインL12を介して24時間循環させた。この際、メチルシクロヘキサンの蒸気圧が0kg/cm.gであることを確認した。
【0075】
その後、前記洗浄溶媒容器20に集められた洗浄溶媒をサンプリングし、濾過および真空乾燥した後、高分子の重量を測定し、前記実施例7で測定された高分子の重量100%を基準に換算して高分子洗浄率が16.76%であることを確認した。
【0076】
比較例2
前記実施例3において、洗浄溶媒ストリームを反応器10の上端まで充填した後、反応器10の温度を100℃に維持したことを除き、前記実施例3と同様の方法により行った。
【0077】
その後、洗浄溶媒容器20に集められた洗浄溶媒をサンプリングし、濾過および真空乾燥した後、高分子の重量を測定し、下記実施例7で測定された高分子の重量100%を基準に換算して高分子洗浄率が22.70%であることを確認した。
【0078】
比較例3
添付の図4に示された工程フロー図にしたがって、反応器10を洗浄した。
【0079】
前記洗浄溶媒容器20の洗浄溶媒供給ライン21を介して洗浄溶媒としてメチルシクロヘキサン350kgを投入し、ポンプ30およびヒータ40を用いて加熱循環ラインL11を介して循環させながら洗浄溶媒を加熱し、170℃に維持した。
【0080】
その後、前記洗浄溶媒容器の下部排出ラインL10に洗浄溶媒ストリームを排出し、反応器10の下部に投入して反応器10の上端まで充填した後、反応器10の温度を160℃に維持し、且つ洗浄溶媒の流量を200kg/hrに調節しながら洗浄循環ラインL12を介して24時間循環させた。この際、メチルシクロ蒸気圧が3.1kg/cm.gであることを確認した。
【0081】
その後、前記洗浄溶媒容器20に集められた洗浄溶媒をサンプリングし、濾過および真空乾燥した後、高分子の重量を測定し、前記実施例7で測定された高分子の重量100%を基準に換算して高分子洗浄率が34.05%であることを確認した。
【0082】
比較例4
添付の図5に示された工程フロー図にしたがって、反応器10を洗浄した。
【0083】
前記洗浄溶媒容器20の洗浄溶媒供給ライン21を介して洗浄溶媒としてメチルシクロヘキサン350kgを投入し、ポンプ30およびヒータ40を用いて加熱循環ラインL11を介して循環させながら洗浄溶媒を加熱し、170℃に維持した。また、洗浄溶媒容器20の加圧気体供給ライン22を介して加圧気体として窒素ガスを投入し、前記洗浄溶媒容器20を7kg/cm.gで加圧した。
【0084】
その後、前記洗浄溶媒容器の下部排出ラインL10に洗浄溶媒ストリームを排出し、反応器10の下部と、反応器10の全高さの10%の位置に同時に投入して反応器10の上端まで充填した後、反応器10の温度を160℃に維持し、24時間反応器10内で洗浄溶媒を保管した。
【0085】
その後、前記反応器10内の洗浄溶媒をサンプリングし、濾過および真空乾燥した後、高分子の重量を測定し、前記実施例7で測定された高分子の重量100%を基準に換算して高分子洗浄率が50.81%であることを確認した。
【符号の説明】
【0086】
10・・・反応器
20・・・洗浄溶媒容器
21・・・洗浄溶媒供給ライン
22・・・加圧気体供給ライン
30・・・ポンプ
40・・・ヒータ
50・・・第1弁
51・・・第2弁
L10・・下部排出ライン
L11・・加熱循環ライン
L12・・洗浄循環ライン
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】