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特表2023-548891リチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法
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  • 特表-リチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20231114BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231114BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231114BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527785
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 KR2022012210
(87)【国際公開番号】W WO2023018317
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0107659
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ノ-ウ・クァク
(72)【発明者】
【氏名】ジ-ヘ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン-ホ・オム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン-ウォン・イ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA05
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050DA09
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA13
5H050HA14
(57)【要約】
正極活物質の高温寿命及び抵抗増加率を改善可能なリチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法を提供する。本発明による正極活物質は、リチウム二次電池用正極活物質粉体の表面にリチウムホウ素化合物コーティング層を含み、前記コーティング層は、ToF-SIMSスペクトルにおける二つのピーク間のピーク強度比がLiBO物質における対応ピーク強度比と±50%の範囲内で同一である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池用正極活物質粉体の表面にリチウムホウ素化合物コーティング層を含み、前記コーティング層は、ToF-SIMSスペクトルにおける二つのピーク間のピーク強度比がLiBO物質における対応ピーク強度比と±50%の範囲内で同一である、正極活物質。
【請求項2】
前記コーティング層は、ToF-SIMSスペクトルにおいて、mass156.85~156.95で検出されたピークのうち最も強いピークとmass153.05~153.15で検出されたピークのうち最も強いピークとの強度比が4.3±50%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記コーティング層は、ToF-SIMSスペクトルにおいて、mass182.85~182.95で検出されたピークのうち最も強いピークとmass179.05~179.15で検出されたピークのうち最も強いピークとの強度比が9.9±50%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
リチウム源と前駆体とを混合した後、熱処理する1次焼成段階と、
前記1次焼成による焼成品に第1ホウ素源を混合し熱処理することで、前記焼成品に表面保護層を形成する2次焼成段階と、
前記2次焼成による焼成品の表面の未反応残留リチウムを除去する水洗段階と、
前記水洗による水洗品を乾燥して第2ホウ素源とともに熱処理するコーティング段階と、を含む、正極活物質の製造方法。
【請求項5】
前記前駆体は、高含量のNi系リチウム遷移金属酸化物であり、前記前駆体のニッケル含量は、遷移金属の総モル数を基準にして70モル%以上である、請求項4に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記1次焼成時の熱処理温度は、前記2次焼成時の熱処理温度の0.75~1.5倍である、請求項4に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記水洗段階は、焼成品と水との含量を50~200%の重量比で混合して撹拌することで行われる、請求項4に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記第1ホウ素源または第2ホウ素源は、HBO、HBO、B、LiBO、Li、BC、AlBO、AlBのうちの1種以上を単独でまたは混合して使用する、請求項4に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記第1ホウ素源及び第2ホウ素源の量は、ホウ素の重量/正極活物質の重量が200~5,000ppmになる量である、請求項4に記載の正極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法に関する。本出願は、2021年8月13日付け出願の韓国特許出願第10-2021-0107659号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
繰り返して充電と放電が可能なリチウム二次電池が化石エネルギーの代替手段として脚光を浴びている。リチウム二次電池は、携帯電話、ビデオカメラ、電動工具のような伝統的なハンドヘルドデバイスに主に使用されていた。しかし、最近は電気で駆動される自動車(EV、HEV、PHEV)、大容量の電力貯蔵装置(ESS)、無停電電源供給システム(UPS)などにその応用分野が次第に増加している。
【0003】
リチウム二次電池は、活物質が集電体にコーティングされた正極板と負極板とが分離膜を介在して配置された構造を持つ単位セルが集合した電極組立体、及び該電極組立体を電解液とともに密封収納する外装材、すなわち電池ケースを備える。リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム複合遷移金属酸化物が用いられており、中でもLiCoOのリチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物(LiMnOまたはLiMnなど)、リチウムリン酸鉄化合物(LiFePO)、またはLiNiOなどが主に使用されている。また、LiNiOの優れた可逆容量を維持しながらも低い熱安定性を改善するための方法として、ニッケルの一部を熱安定性に優れたマンガンで置換したニッケルマンガン系リチウム複合金属酸化物及びマンガンとコバルトで置換したNCM系リチウム複合遷移金属酸化物、コバルトとアルミニウムで置換したNCA系リチウム複合遷移金属酸化物、コバルトとマンガンとアルミニウムで置換したNCMA系リチウム複合遷移金属酸化物が使用されている。
【0004】
これらのうちNiを用いるNi系リチウム正極活物質は、リチウム源と前駆体とを混合して高温で焼成した後、HBOと一緒に低温で再び焼成することで、表面にホウ素(B)をコーティングして製造している。しかし、このような製造方法は正極活物質の高温寿命及び抵抗増加率の改善に限界を持っているため、改善が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、正極活物質の高温寿命及び抵抗増加率を改善可能なリチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明による正極活物質は、リチウム二次電池用正極活物質粉体の表面にリチウムホウ素化合物コーティング層を含み、前記コーティング層は、ToF-SIMS(Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry、飛行時間型二次イオン質量分析法)のスペクトルにおける二つのピーク間のピーク強度比がLiBO物質における対応ピーク強度比と±50%の範囲内で同一であることを特徴とする。
【0007】
ここで、前記コーティング層は、ToF-SIMSスペクトルにおいて、mass156.85~156.95で検出されたピークのうち最も強いピークとmass153.05~153.15で検出されたピークのうち最も強いピークとの強度比が4.3±50%であり得る。
【0008】
そして、前記コーティング層は、ToF-SIMSスペクトルにおいて、mass182.85~182.95で検出されたピークのうち最も強いピークとmass179.05~179.15で検出されたピークのうち最も強いピークとの強度比が9.9±50%であり得る。
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明による正極活物質の製造方法は、リチウム源と前駆体とを混合した後、熱処理する1次焼成段階と、前記1次焼成による焼成品に第1ホウ素源を混合し熱処理することで、前記焼成品に表面保護層を形成する2次焼成段階と、前記2次焼成による焼成品の表面の未反応残留リチウムを除去する水洗段階と、前記水洗による水洗品を乾燥して第2ホウ素源とともに熱処理するコーティング段階と、を含む。
【0010】
前記前駆体は、高含量のNi系リチウム遷移金属酸化物であり、前記前駆体のニッケル含量は、遷移金属の総モル数を基準にして70モル%以上であり得る。
【0011】
前記1次焼成時の熱処理温度は、前記2次焼成時の熱処理温度の0.75~1.5倍であり得る。
【0012】
前記水洗段階は、焼成品と水との含量を50~200%の重量比で混合して撹拌して行われ得る。
【0013】
前記第1ホウ素源または第2ホウ素源は、HBO、HBO、B、LiBO、Li、BC、AlBO、AlBのうちの1種以上を単独でまたは混合して使用し得る。
【0014】
前記第1ホウ素源及び第2ホウ素源の量は、ホウ素(B)の重量/正極活物質の重量が200~5,000ppmになる量であり得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、高温寿命、抵抗増加率及び出力特性が改善されたリチウム二次電池用正極活物質が提供される。
【0016】
本発明の製造方法によると、焼成工程時にホウ素(B)のコーティング/ドーピング時期を調節することで、正極活物質の高温寿命及び抵抗増加率が改善されたリチウム二次電池用正極活物質を製造することができる。
【0017】
本発明の製造方法では、2次焼成時にホウ素源を添加しながらも、リチウム源とは投入時期を異ならせることで、ホウ素源と正極活物質との反応性を向上させる効果が得られる。
【0018】
本発明の製造方法によると、2次焼成工程にホウ素(B)元素のコーティング/ドーピング過程を含むことで、正極活物質の焼成品に表面保護層を形成するため、焼成時に生成されたB元素コーティング層が水洗工程時に生じ得る正極活物質の表面劣化を抑制する効果が得られる。
【0019】
本発明の製造方法によると、乾燥した水洗品を第2ホウ素源とともに低温熱処理するとき、正極活物質の表面とホウ素との反応性を変化させることで、正極活物質の高温寿命及び抵抗増加率、そして低温出力特性を改善することができる。
【0020】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の実施形態を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による正極活物質の製造方法のフロー図である。
図2】実施例、比較例2、4のToF-SIMSスペクトルの分析結果である。
図3】実施例、比較例2、4のToF-SIMSスペクトルの分析結果である。
図4】サイクル数の増加に応じた容量維持率及び抵抗増加率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付された図面を参照して本発明の実施形態を説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲において使われた用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明の最も望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0023】
後述する説明において、本願の一部を形成する添付図面を参照する。詳細な説明に記述された具現例、図面及び請求項は、制限しようとする意図ではない。ここに開示された主題物の精神と範囲から外れることなく他の実施例を活用することができ、他の変更も可能である。ここに一般に記述され、図面によって説明されたような本発明の様相は、多様な他の構成で配列、代替、組み合わせ、分離及びデザインされ得、その全てがここで確かに考慮されたということを理解できるであろう。
【0024】
他の方式で定義されない限り、本明細書において使用されたあらゆる技術的・科学的用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を持つ者(以下、「当業者」とする)に共通して理解されるものと同じ意味を有する。
【0025】
本発明は、本願に説明された特定の実施例によって限定されない。当業者に明白であるように、本発明の精神と範囲から外れることなく多様な変更と修正が可能である。ここに列挙したものに加え、本願の範囲内で機能的に均等な方法が上述した説明から当業者に明白になるであろう。そのような変更と修正は、添付の特許請求の範囲内にある。このような請求項が資格を付与する均等物の全体範囲と共に、本発明は、請求項のみによって限定される。本発明が、勿論、変化され得る特定の方法に限定されることではないという点を理解せねばならない。ここに使用された専門用語は、特定の実施例を説明するための目的としてのみ使用されているだけで、制限しようとする意図ではない。
【0026】
図1は、本発明による正極活物質の製造方法のフロー図である。以下、図1を参照して本発明によるリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を説明する。
【0027】
先ず、リチウム源と前駆体とを混合した後、熱処理する1次焼成段階を行う(S10)。
【0028】
1次焼成段階(S10)を通じてリチウム二次電池用正極活物質が合成される。例えば、NCM系リチウム複合遷移金属酸化物を製造し得る。望ましくは、本発明で製造する正極活物質は、NCM系リチウム複合遷移金属酸化物であるが、リチウム二次電池に使用される他の種類の正極活物質も本発明によって製造可能である。
【0029】
前記前駆体は、原料物質としてニッケル化合物、コバルト化合物、マンガン化合物などの水溶液と塩基性溶液とを混合して反応させることで反応沈殿物を収得し、該沈殿物を乾燥及び熱処理して製造したものであり得、例えば下記化学式1で表される前駆体であり得る。
【0030】
[化学式1]
Nix1Coy1Mnz1Als1(OH)2
(化学式1において、0.7≦x1≦0.99、0<y1<0.3、0<z1<0.3、0≦s1≦0.1であり得る。)
【0031】
例えば、前記前駆体は、高含量のNi系リチウム遷移金属酸化物を製造可能なものであり得、前記前駆体のニッケル含量は、遷移金属の総モル数を基準にして70モル%以上であり得る。
【0032】
前記リチウム源は、LiCOまたはLiOH・HOのようなリチウム化合物であり得る。
【0033】
1次焼成段階(S10)を通じて製造された焼成品は、例えば下記化学式2で表されるリチウム複合遷移金属酸化物であり得る。
【0034】
[化学式2]
Lia[NibCocMndAle]1-fM1 fO2
(化学式2において、MはZr、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、P及びSからなる群より選択される1種以上であり、0.8≦a≦1.2、0.7≦b≦0.99、0<c<0.3、0<d<0.3、0.01≦e≦0.1、0≦f≦0.1であり得る。)
【0035】
例えば、リチウム複合遷移金属酸化物は、LiNi0.86Co0.05Mn0.07Al0.02であり得る。
【0036】
前記1次焼成においては、ホウ素源を混合しない。
【0037】
前記1次焼成時の熱処理は、酸素濃度21~100%の範囲で行い得る。前記1次焼成の熱処理温度は、以降施される2次焼成の熱処理温度の0.75~1.5倍にし得る。適切な熱処理温度は、NCM元素含量に応じて前記範囲内で変わり得る。例えば、前記1次焼成時の熱処理は、500~900℃で行われ得る。500℃未満では十分な反応が起きないことがある。900℃を超えれば、正極活物質の熱分解によって性能が低下する恐れがある。
【0038】
次いで、前記1次焼成による焼成品に第1ホウ素源を混合し熱処理することで、前記焼成品に表面保護層を形成する2次焼成段階を行う(S20)。1次焼成(S10)の熱処理の後、降温してから、焼成品に第1ホウ素源を投入して2次焼成の熱処理を行い得る。
【0039】
1次焼成(S10)時にはホウ素源を混合せず、その後にホウ素源を二回に分けて投入することが特徴である。一回目の投入時点は、2次焼成段階(S20)である。このときに投入されるホウ素源を第1ホウ素源とする。
【0040】
前記第1ホウ素源は、コーティング/ドーピング原料物質であって、HBO、HBO、B、LiBO、Li、BC、AlBO、AlBのうちの1種以上を単独でまたは混合して使用し得る。前記1次焼成による焼成品に第1ホウ素源を混合する方法は、固相または液相方式で行われ得る。固相または液相方式としては、混合(mixing)、ミリング(milling)、噴霧乾燥(spray drying)、グラインディング(grinding)などの方法を使用し得る。望ましくは、乾式の固相方式で行う。
【0041】
前記2次焼成時の熱処理は、酸素濃度21~100%の範囲で行い得る。前記2次焼成の熱処理も、前記1次焼成の熱処理と同様に500~900℃で行われ得る。500℃未満では、表面保護層を円滑又は均一に形成し難い恐れがある。900℃以上では、正極活物質が本来の性質を維持し難い。このような熱処理温度の範囲は、NCM元素含量によって代わり得る。しかし、上述したように、1次焼成時の熱処理温度は2次焼成時の熱処理温度の0.75~1.5倍にすることが望ましい。1次焼成時の熱処理温度が上記の範囲から外れる場合、2次焼成時に第1ホウ素源を添加して焼成し、水洗、コーティングしても、高温寿命特性に劣ることを確認した。したがって、前記1次焼成時の熱処理温度と2次焼成時の熱処理温度との関係条件は、高温寿命特性の劣化を防止するためのものであるため、臨界的な意義を有する。
【0042】
このように本発明では、焼成工程を一度に行わず、二度に分けて1次焼成と2次焼成とを行うことに特徴がある。また、ホウ素源を1次焼成では添加せず、2次焼成時に添加することに特徴がある。一回目の焼成ではコーティング/ドーピング原料物質であるホウ素源を全く入れず、二回目の焼成でのみコーティング/ドーピング原料物質であるホウ素源を添加するという点が特徴である。2次焼成時に投入する第1ホウ素源は、焼成品にB元素をコーティング/ドーピングして表面保護層を形成する。第1ホウ素源の一部は焼成品の内部に混入されてドーピングされ、残りの一部は焼成品の表面に位置してホウ素源コーティング層を生成し、前記ホウ素源コーティング層が前記表面保護層として作用する。
【0043】
従来、焼成終了後の最終段階のみでホウ素源を投入してコーティングしている。本発明では、2次焼成時にホウ素源を添加しながらも、リチウム源とは投入時期を異ならせることで、ホウ素源と正極活物質との反応性を向上させる効果を奏することができる。2次焼成で形成された表面保護層は、後続の水洗段階(S30)で正極活物質の表面劣化を抑制する。このように本発明の製造方法では、水洗段階(S30)を行う前の焼成品の表面に表面保護層が既に形成されており、水洗段階(S30)における正極活物質の表面劣化が抑制されることに注目すべきである。
【0044】
このように2次焼成段階(S20)を通じて製造された焼成品は、例えば下記化学式3で表されるリチウム複合遷移金属酸化物であり得る。
【0045】
[化学式3]
Lia[NibCocMndAle]1-f(B,M1)fO2
(化学式3において、MはZr、W、Mg、Ce、Hf、Ta、La、Ti、Sr、Ba、F、P及びSからなる群より選択される1種以上であり、0.8≦a≦1.2、0.7≦b≦0.99、0<c<0.3、0<d<0.3、0.01≦e≦0.1、0≦f≦0.1であり得る。)
【0046】
その後、前記2次焼成による焼成品の表面の未反応残留リチウムを除去する水洗段階を行う(S30)。
【0047】
正極活物質にはリチウム化合物、例えばLiOHが残留し得るため、水洗段階を必要とする。前記水洗段階は、焼成品と水との含量を50~200%の重量比で混合し撹拌することで行われ得る。水洗時にはLiOH、NaOHのような添加剤を投入してもよい。
【0048】
2次焼成工程にホウ素(B)元素のコーティング/ドーピング過程を含むことで、正極活物質の焼成品に表面保護層を形成するため、焼成時に生成されたB元素コーティング層が水洗工程時に生じ得る正極活物質の表面劣化を抑制する効果が得られる。焼成終了後の最終段階のみでホウ素源を投入してコーティングする従来の場合に比べて、水洗時における正極活物質の表面劣化の抑制に優れた効果が得られる。従来、水洗が行われる焼成品の表面には、本願発明のような表面保護層が備えられていない。
【0049】
次いで、前記水洗による水洗品を乾燥して第2ホウ素源とともに熱処理するコーティング段階を行う(S40)。
【0050】
1次焼成(S10)時にはホウ素源を混合せず、その後にホウ素源を二回に分けて添加する。一回目の投入時点は、上述した2次焼成段階(S20)であり、二回目の投入時点は、コーティング段階(S40)である。このときに投入されるホウ素源を第2ホウ素源とする。
【0051】
前記第2ホウ素源は、コーティング/ドーピング原料物質であって、HBO、HBO、B、LiBO、Li、BC、AlBO、AlBのうちの1種以上を単独でまたは混合して使用し得る。乾燥した水洗品に第2ホウ素源を混合する方法は、固相または液相方式で行われ得る。固相または液相方式としては、混合、ミリング、噴霧乾燥、グラインディングなどの方法を使用し得る。
【0052】
前記熱処理は、酸素濃度21~100%の範囲で行い得る。S40段階の熱処理は200℃~400℃で行われ得る。200℃未満では、容量発現が円滑に行われない恐れがある。400℃を超えれば、高温寿命が悪化し得るため、400℃を超えないことが望ましい。
【0053】
前記第1ホウ素源と第2ホウ素源とは同一であってもよく、異なるものであってもよい。但し、前記第1ホウ素源及び第2ホウ素源の量は、ホウ素(B)の重量/正極活物質の重量が200~5,000ppmになる量であり得る。
【0054】
ホウ素の重量/正極活物質の重量が200ppmよりも小さいと、コーティング効果がない。ホウ素の重量/正極活物質の重量が5,000ppmを超えると、過量のコーティング層が生成され得、過量のコーティング層は容量と抵抗の面で望ましくない。乾燥した水洗品を第2ホウ素源とともに低温熱処理するとき、正極活物質の表面とBとの反応性を変化させることで、正極活物質の高温寿命及び抵抗増加率、そして低温出力特性を改善することができる。水洗段階(S30)を通じて、表面保護層によって正極活物質の表面劣化が抑制されているため、コーティング段階(S40)で投入する第2ホウ素源と正極活物質の表面との反応性は、表面保護層を含まない状態で水洗されて劣化が進んだ正極活物質の表面とホウ素源との反応性よりも優位に立つ。
【0055】
上述した製造方法によって製造される本発明の正極活物質は、以下の特徴を有する。本発明による正極活物質は、リチウム二次電池用正極活物質粉体の表面にリチウムホウ素化合物コーティング層を含み、前記コーティング層は、ToF-SIMSスペクトルにおける二つのピーク間のピーク強度比がLiBO物質における対応ピーク強度比と±50%の範囲内で同一である。
【0056】
本発明による正極活物質は、リチウム二次電池用正極活物質粉体の表面にリチウムホウ素化合物コーティング層を含み、前記コーティング層は、ToF-SIMSスペクトルにおける二つのピーク間のピーク強度比がLiBO物質における対応ピーク強度比と±50%の範囲内で同一であり得る。
【0057】
例えば、前記正極活物質は、NCM系リチウム複合遷移金属酸化物であり得る。中でも特に、ニッケル含量が70%以上である高含量のNi系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、サイクル駆動環境における安定性を増加させるため、電解液との反応性を減少させるべきである。本発明による正極活物質は、前記コーティング層を含むことで電解液との反応性を減少できるため、高温でのガス発生が低減される。
【0058】
本発明による正極活物質は、前記コーティング層を含むことで、高温寿命及び抵抗増加率が改善される。さらに、出力特性も改善される。
【0059】
ここで、前記コーティング層は、ToF-SIMSスペクトルにおいて、mass156.85~156.95で検出されたピークのうち最も強いピークとmass153.05~153.15で検出されたピークのうち最も強いピークとの強度比が4.3±50%であり得る。ここで、「4.3±50%」とは、4.3の50%である2.15を4.3に足した値と4.3から引いた値との間の範囲を示す。すなわち、2.15~6.43を示す。
【0060】
そして、前記コーティング層は、ToF-SIMSスペクトルにおいて、mass182.85~182.95で検出されたピークのうち最も強いピークとmass179.05~179.15で検出されたピークのうち最も強いピークとの強度比が9.9±50%であり得る。ここで、「9.9±50%」とは、9.9の50%である4.95を9.9に足した値と9.9から引いた値との間の範囲を示す。すなわち、4.95~14.85を示す。
【0061】
すなわち、本発明による正極活物質のコーティング層は、ToF-SIMS分析で得られる特定のmass範囲におけるピークが存在するだけでなく、これらピーク同士が所定のピーク強度比を有し、そのピーク強度比がLiBO物質における対応ピーク強度比と±50%の範囲内で同一である。このような正極活物質をリチウム二次電池の正極に用いる場合、高出力及び高安定性を図ることができる。
【0062】
このように本発明によれば、焼成工程においてホウ素(B)のコーティング/ドーピング時期を調節することで、正極活物質の高温寿命及び抵抗増加率、そして低温出力特性を改善することができる。
【0063】
以下、実験例を挙げて本発明をより詳しく説明する。
【0064】
実施例:
リチウム源としてのLiOH・HO、前駆体としてのNi0.88Co0.05Mn0.07(OH)+Al(OH)をLi:遷移金属(Ni、Co、Mn、Al)のモル比が1.03:1になるように混合し、700℃で5時間1次焼成して、1次焼成品であるLiNi0.86Co0.05Mn0.07Al0.02を製造した。その後、1次焼成品と第1ホウ素源であるHBOとを100:0.86の重量比に混合した後、750℃で5時間2次焼成した。製造された焼成品と水とを100:100の重量比で混合して5分間撹拌した。その後、フィルタープレスで水洗品をフィルター処理し、130℃で真空乾燥した。次いで、乾燥した乾燥品を第2ホウ素源であるHBOと100:0.57の重量比で混合し、300℃で4時間熱処理して、表面にホウ素(B)がコーティングされた正極活物質を製造した。
【0065】
比較例1:
リチウム源としてのLiOH・HO、前駆体としてのNi0.88Co0.05Mn0.07(OH)+Al(OH)をLi:遷移金属(Ni、Co、Mn、Al)のモル比が1.03:1になるように混合し、700℃で5時間1次焼成して、1次焼成品であるLiNi0.86Co0.05Mn0.07Al0.02を製造した。その後、ホウ素源を全く添加せず、750℃で5時間2次焼成した。
【0066】
比較例2:
リチウム源としてのLiOH・HO、前駆体としてのNi0.88Co0.05Mn0.07(OH)+Al(OH)をLi:遷移金属(Ni、Co、Mn、Al)のモル比が1.03:1になるように混合し、700℃で5時間1次焼成して、1次焼成品であるLiNi0.86Co0.05Mn0.07Al0.02を製造した。その後、ホウ素源を全く添加せず、750℃で5時間2次焼成した。製造された焼成品と水とを100:100の重量比で混合して5分間撹拌した。その後、フィルタープレスで水洗品をフィルター処理し、130℃で真空乾燥した。次いで、乾燥した乾燥品をHBOと100:0.57の重量比で混合して300℃で4時間熱処理した。
【0067】
比較例3:
リチウム源としてのLiOH・HO、前駆体としてのNi0.88Co0.05Mn0.07(OH)+Al(OH)をLi:遷移金属(Ni、Co、Mn、Al)のモル比が1.03:1になるように混合し、それにNi0.88Co0.05Mn0.07(OH)とHBOとを100:0.91の重量比に混合して700℃で5時間1次焼成し、750℃で5時間2次焼成した。
【0068】
比較例4:
リチウム源としてのLiOH・HO、前駆体としてのNi0.88Co0.05Mn0.07(OH)+Al(OH)をLi:遷移金属(Ni、Co、Mn、Al)のモル比が1.03:1になるように混合し、それにNi0.88Co0.05Mn0.07(OH)とHBOとを100:0.91の重量比に混合して700℃で5時間1次焼成し、750℃で5時間2次焼成した。製造された焼成品と水とを100:100の重量比で混合して5分間撹拌した。その後、フィルタープレスで水洗品をフィルター処理し、130℃で真空乾燥した。次いで、乾燥した乾燥品をHBOと100:0.57の重量比で混合して300℃で4時間熱処理した。
【0069】
比較例5:
リチウム源としてのLiOH・HO、前駆体としてのNi0.88Co0.05Mn0.07(OH)+Al(OH)をLi:遷移金属(Ni、Co、Mn、Al)のモル比が1.03:1になるように混合し、700℃で5時間1次焼成して、1次焼成品であるLiNi0.86Co0.05Mn0.07Al0.02を製造した。その後、1次焼成品とHBOとを100:0.86の重量比で混合し、750℃で5時間2次焼成した。
【0070】
要するに、上述した実施例及び比較例は、下記の通りである。
【0071】
実施例:Li+NCM(OH)+Al混合→700℃で1次焼成→正極活物質+第1ホウ素源混合→750℃で2次焼成→水洗→130℃で乾燥→第2ホウ素源を混合してコーティング(300℃)
【0072】
比較例1:(正極活物質+ホウ素源混合なし、2段階の焼成):Li+NCM(OH)+Al混合→700℃で1次焼成→750℃で2次焼成
【0073】
比較例2:(正極活物質+ホウ素源混合なし、2段階の焼成):Li+NCM(OH)+Al混合→700℃で1次焼成→750℃で2次焼成→水洗→130℃で乾燥→HBOを混合してコーティング(300℃)
【0074】
比較例3:(1次焼成時にリチウム源とホウ素源とを一緒に混合):Li+NCM(OH)+Al+HBO混合→700℃で1次焼成→750℃で2次焼成
【0075】
比較例4:(1次焼成時にリチウム源とホウ素源とを一緒に混合):Li+NCM(OH)+Al+HBO混合→700℃で1次焼成→750℃で2次焼成→水洗→130℃で乾燥→HBOを混合してコーティング(300℃)
【0076】
比較例5:Li+NCM(OH)+Al混合→700℃で1次焼成→正極活物質+HBO混合→750℃で2次焼成
【0077】
実験項目は、経時変化テスト、コイン型ハーフセルの電気化学データ、モノセルの低温出力データ、モノセルの高温寿命データ、ToF-SIMSを通じてホウ素源添加時に検出されるピークの確認である。
【0078】
<ToF-SIMS(Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry、飛行時間型二次イオン質量分析法)の分析結果>
ToF-SIMS分析を通じてコーティング層の成分を確認した。通常、材料組成及び結晶構造の確認にはXRD測定を用いるが、正極活物質のコーティング層は数nm~数十nmの厚さを有するため、XRD測定ではピークを検出が容易ではない。本発明では、ToF-SIMS分析を用いて非常に薄いコーティング層の成分を確認した。ToF-SIMS分析の結果、本発明の実施例において、正極活物質の表面に追加的に生成されたリチウムホウ素化合物コーティング層を確認した。すなわち、本発明の製造方法によってリチウムホウ素化合物が追加的に形成されたことを確認した。
【0079】
図2及び図3は、比較例2、4と実施例のToF-SIMSスペクトルの分析結果である。比較のため、LiBOの結果も一緒に示した。
【0080】
図2を参照すると、実施例において、mass156.85~156.95で検出されたピークのうち最も強いピーク(ピーク1)は、mass156.9で測定されたピークである。実施例において、mass153.05~153.15で検出されたピークのうち最も強いピーク(ピーク2)は、mass153.1で測定されたピークである。前記massの値は、ToF-SIMSスペクトルをLi、C、C2、C3ピークで校正(calibration)した後、測定される値である。実施例において、ピーク1とピーク2との強度比は4.3である。測定誤差と他の製造要件などを考慮しても、本発明の実施例においてmass156.85~156.95で検出されたピークのうち最も強いピークとmass153.05~153.15で検出されたピークのうち最も強いピークとの強度比は4.3±50%の値を有し得る。
【0081】
実施例において、mass156.9で測定されたピークとmass153.1で測定されたピークとの強度比は、LiBO物質における対応ピーク強度比(すなわち、LiBO物質におけるピーク1とピーク2との強度比)と類似している。類似するとは、±50%の範囲内で同一であるという意味である。比較例2、4では、これらピークが異なるパターンで観測される。比較例2ではピーク1とピーク2との強度比が0.3、比較例4ではピーク1とピーク2との強度比が2.0である。
【0082】
図3を参照すると、実施例において、mass182.85~182.95で検出されたピークのうち最も強いピーク(ピーク3)はmass182.9で測定されたピークであり、mass179.05~179.15で検出されたピークのうち最も強いピーク(ピーク4)はmass179.1で測定されたピークである。前記massの値は、ToF-SIMSスペクトルをLi、C、C2、C3ピークで校正した後、測定される値である。実施例において、ピーク3とピーク4との強度比は9.9である。測定誤差と他の製造要件などを考慮しても、本発明の実施例においてmass182.85~182.95で検出されたピークのうち最も強いピークとmass179.05~179.15で検出されたピークのうち最も強いピークとの強度比は9.9±50%の値を有し得る。
【0083】
実施例において、mass182.9で測定されたピークとmass179.1で測定されたピークとの強度比は、LiBO物質における対応ピーク強度比(すなわち、LiBO物質におけるピーク3とピーク4との強度比)と類似している。比較例2、4では、これらピークが異なるパターンで観測される。比較例2ではピーク3とピーク4との強度比が1.5、比較例4ではピーク3とピーク4との強度比が3.0である。
【0084】
本発明によると、このようなピーク強度比の特徴を有するリチウムホウ素化合物がコーティング層に含まれ、その結果、高温寿命特性及び低温出力特性が改善されることを確認した。
【0085】
<コイン型ハーフセルの特性評価の方法>
実施例及び比較例1~5で製造されたそれぞれの正極活物質、カーボンブラック導電材、及びPVdFバインダーを、N-メチルピロリドン溶媒中に重量比96:2:2で混合して正極スラリーを製造し、それをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、130℃で乾燥し、圧延して正極を製造した。負極としては、リチウムメタルを使用した。
【0086】
このように製造された正極と負極との間に多孔性ポリエチレンのセパレータを介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体をケースの内部に位置させた後、ケースの内部に電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。このとき、電解液はエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート/ジエチルカーボネート(EC/EMC/DECの混合体積比=3/4/3)からなった有機溶媒に1.0M濃度のヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を溶解して製造した。
【0087】
このように製造された各リチウム二次電池のコイン型ハーフセルに対し、25℃、CC(定電流(Constant Current))-CV(定電圧(Constant Voltage)モードで、0.1Cで4.25Vになるまで充電し、0.1Cの定電流で3.0Vまで放電して充放電実験を行ったときの充電容量、放電容量、効率、DCIRを測定した。
【0088】
<モノセルの特性評価の方法>
正極活物質、導電材、バインダー、添加剤の比率を97.5/1.0/1.35/0.15にして正極スラリーを製造した。アルミニウム集電体に正極スラリーをコーティングし、天然黒鉛と人造黒鉛とを特定の比率で配合して対極としての負極を準備した。電解液は塩0.7Mで準備し、寿命維持のため、LiFSI(Lithium bis(fluorosulfonyl)imide、0.3M)を添加して使用した。注液量は、電極当たり100μLに算定し、自社製造の分離膜を適正な大きさで正極と負極との間に位置させた。用意したモノセルに電解液を入れてフォーメーション(formation)充放電を行って初期ガスを除去し、モノセルの評価を準備した。
【0089】
25℃の温度条件で行い、初期容量が終わると、-10℃でSOC10から0になるまで2.0Cで放電させながら電圧降下(ΔVoltage)及び抵抗を測定した。高温寿命特性の測定は、45℃、定電流で0.5Cで4.2Vになるまで充電し、1.0Cの定電流で3.0Vまで放電し、100、200、300、400サイクルになる度に25℃、定電流で0.33Cで4.2Vになるまで充電し、0.33Cの定電流で3.0Vまで放電して充放電を行ったときの容量維持率と抵抗増加率を測定した。
【0090】
<実験結果>
正極活物質の焼成品に対し、経時変化の改善を確認した。経時変化は、時間に応じた表面残留LiCOの数値変化で評価した。表1は、比較例1と比較例5の経時変化テストの結果をまとめたものであり、LiCO/焼成品の重量比を初日、一日後、二日後、三日後に測定して示したものである。
【0091】
【表1】
【0092】
表1を参照すると、比較例1に比べて比較例5の経時変化が少ない。したがって、ホウ素源を全く入れない比較例1よりは、ホウ素源を混合して2次焼成した比較例5が経時変化において優れていることが分かる。本発明においても、ホウ素源を混合して2次焼成するため、経時変化が改善される。
【0093】
表2は、コイン型ハーフセルに対する充電容量、放電容量、効率、DCIRなどの電気化学データを示したものである。
【0094】
【表2】
【0095】
表2を参照すると、本発明の実施例の場合、比較例2や比較例4に比べて充電容量、放電容量、効率に優れ、DCIRが低い。
【0096】
比較例2は、焼成は2段階で行うものの、本発明のように2次焼成時にホウ素源を混合するものではない。比較例4は、本発明のように2次焼成時にホウ素源を混合するものではなく、1次焼成時からホウ素源を混合するものである。このように本発明のように、ホウ素源を混合し、特に1次焼成時には入れず、2次焼成時に入れる場合、充電容量、放電容量、効率及びDCIRが改善される効果がある。したがって、本発明のような製造方法により、リチウム二次電池の正極における正極活物質の表面抵抗値を低下させることができる。特に、ホウ素源を焼成時に入れるものの、1次焼成時から入れる比較例4の場合は、容量が発現されず、DCIRが増加する問題が深刻であり、適切ではないことが分かる。
【0097】
表3は、モノセルの低温出力データをまとめたものである。
【0098】
【表3】
【0099】
表3を参照すると、本発明の実施例の場合、比較例2に比べて電圧降下(Δ電圧)及び抵抗などの出力特性が改善されることが確認できる。
【0100】
比較例2は、焼成は2段階で行うものの、本発明のように2次焼成時にホウ素源を混合するものではない。このように本発明のように、ホウ素源を混合し、特に1次焼成時には入れず、2次焼成時に入れる場合、低温出力が向上する効果がある。
【0101】
表4は、モノセルの高温寿命データ、すなわち、100サイクル毎に常温チャンバに移動した後に測定した容量維持率、抵抗増加率のデータをまとめたものであり、図4は、サイクル数の増加に応じた容量維持率及び抵抗増加率のグラフである。
【0102】
【表4】
【0103】
表4及び図4を参照すると、本発明の実施例の場合、比較例2や比較例4に比べて容量維持率は大きく、抵抗増加率は小さいことが確認できる。
【0104】
このように本発明の製造方法のように、ホウ素源を混合し、特に1次焼成時には入れず、2次焼成時に入れる場合、高温寿命特性が改善される効果がある。以上の実験結果を総合すると、本発明のように焼成過程を2段階に分け、ホウ素源の投入時期とリチウム源の投入時期とを異ならせることで、ホウ素源と正極活物質との反応性を向上させた結果、コーティング品の特性が改善されたと理解することができる。
【0105】
以上、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】