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特表2023-549041スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/48 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
C08G65/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023521968
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2021077875
(87)【国際公開番号】W WO2022078900
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】20201331.4
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21171093.4
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】マレッツコ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルムス,アクセル
(72)【発明者】
【氏名】シュトラウフ,ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハルト,ジビレ
(72)【発明者】
【氏名】トロッテ,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】バウダー,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA24
4J005BB01
4J005BB02
4J005BC00
4J005BD06
(57)【要約】
スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンと硫酸とを含む溶液(S1)を歯縁分散機に供給し、それによって、溶液S1を、水を含む液体(L1)に接触させるスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンの製造方法と、発泡構造を有し、本質的にスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンからなる粒子と、前記粒子の使用法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンと硫酸とを含む溶液(S1)を歯縁分散機に供給し、それによって、溶液S1を、水を含む液体(L1)と接触させるスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンの製造方法。
【請求項2】
液体L1が水と硝酸とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液体L1が、溶液S1と最初に接触する前に測定されて、10~25℃の温度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
歯縁分散機が再循環モードで操作される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
65℃及び10秒-1のせん断速度で測定して、少なくとも200mPasの粘度の液体を送液する機能を有するポンプが、溶液S1を送液する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポンプがギアポンプである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
発泡構造を有し、本質的にスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンからなる粒子。
【請求項8】
エアジェット篩い分けによって決定される100μm未満のメッシュサイズの粒子を、粒子の質量に基づいて、20質量%未満有する、請求項9に記載の粒子。
【請求項9】
スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンが、3mgKOH/g未満のスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンの遊離酸の含有量を有する、請求項9又は10に記載の粒子。
【請求項10】
スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンが、一般式(I)
【化1】
(式中、
t及びqは、それぞれ独立して、0、1、2又は3であり、
Q、T、及びYは、それぞれ独立して、化学結合、又は-O-、-S-、-SO-、S=O、C=O、-N=N-、及び-CR-から選ばれる基であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又はC-C12アルキル、C-C12アルコキシ、又はC-C18アリール基であり、
Ar及びArは、それぞれ独立して、6~18個の炭素原子を有するアリーレン基である)のビルディングブロックを含み、
ビルディングブロックの少なくとも1種は、少なくとも1種の-SOX基で置換されるフェニレン基及び/又はアリーレン基を含み、
Xは、Cl又はOZであり、Zは、H、Li、Na、K、Mg、Ca、又はNHである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法又は請求項9~11のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項11】
スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンが、一般式(II)
【化2】
又は、(III)
【化3】
又は、(II)及び(III)のビルディングブロックを含む、
請求項12に記載の方法又は粒子。
【請求項12】
スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンが、ポリアリーレン(エーテル)スルホンをスルホン化剤と反応させることによって得られる、請求項12又は13に記載の方法又は粒子。
【請求項13】
請求項9~13のいずれか一項に記載の粒子を溶解した状態で含む溶液(S2)。
【請求項14】
任意に、請求項14に記載の溶液S2を少なくとも1種の他の材料と混合し、溶液S2又は得られた混合物をコーティングし、スピンさせ、及び/又はキャスティングすることを含む、バインダ、コーティング、フィルム、繊維、メンブレン、又は成形品の製造のための方法。
【請求項15】
バインダ、コーティング、フィルム、繊維、メンブレン、又は成形品の製造における、請求項1~8又は12又は13のいずれか一項に記載の方法によって得られたスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホン、請求項9~13のいずれか一項に記載の粒子、又は請求項14に記載の溶液S2の使用法。
【請求項16】
請求項1~8又は12又は13のいずれか一項に記載の方法によって得られたスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホン、請求項9~13のいずれか一項に記載の粒子、又は請求項14に記載の又は請求項15に記載の方法から得られた溶液S2を、それぞれの加工形態で含む、バインダ、コーティング、フィルム、繊維、メンブレン、又は成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンの製造方法、本質的にスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンからなる粒子、前記粒子を含む溶液、ならびにその使用と適用とに関する。
【背景技術】
【0002】
スルホン酸基又はスルホン酸基の誘導体を含むポリアリーレン(エーテル)スルホンは、スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンとも称される。スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホン、ならびにその製造方法は、公知である(US7,258,941B2)。例えば、スルホン化モノマーを、非スルホン化モノマーとまとめて重合することが可能である。また、ポリアリーレン(エーテル)スルホンを、それぞれのスルホン化手段と反応させることによって、スルホン酸基又はその誘導体を導入することが可能である。スルホン化手段としては、例えば濃硫酸、発煙硫酸、オレウム、三酸化硫黄、クロロスルホン酸などが記載されている(US7,081,497B2、J.Appl.Pol.Sci.第84巻、2002年、第2461~2473頁)。スルホン化反応は、ジアルキルスルホン、例えばDMSO又はスルホランのような有機溶媒の存在下で行うことができること(DE112012005418B4)、又は二酸化硫黄を溶媒として用いること(EP3426711B1)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US7,258,941B2
【特許文献2】US7,081,497B2
【特許文献3】DE112012005418B4
【特許文献4】EP3426711B1
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.Appl.Pol.Sci.第84巻、2002年、第2461~2473頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本記載が取り組む問題の1つは、便利に取り扱うことができるサイズの粒子をもたらす、スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンの調製方法を提供することである。特に、このような方法は、得られる粒子のサイズを制御することができることを目的とした。さらに、微粉の含有量が少ない粒子を得ることを目的とした。さらに、大量の廃液を発生させることなく、粒子中の硫酸の残留量を低くすることが望まれる。さらに、スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンを工業的規模で製造するための方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンと硫酸とを含む溶液(溶液S1)を歯縁分散機に供給し、それによって、溶液S1を、水を含む液体(L1)と接触させることを含むスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンの製造方法が記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本方法の一実施形態のフロー図である。
図2図2は、インラインミキサ沈殿法による典型的な粒子形状を示す。
図3図3は、典型的なsPES粒子の形態を示す。
図4図4は、典型的なsPES粒子の形態を示す。
図5図5は、撹拌液L1-1に溶液S1-5を注入して得られるモノフィラメントを示す。
図6図6は、液体L1-1に溶液S1-6を添加して得られる典型的な粒子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
なお、以下では、スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンを「sPES」とも表記する。
【0009】
以下に説明する各工程は、装置の大きさ及び添加する化合物の量に応じて、1つの装置のみで、又は2つ以上の装置で実施することができる。ある製造工程に2つ以上の装置が使用される場合、装置は、同時に、又は、特にバッチ式操作方法では、異なる時間に操作することができる。それによって、例えば、1つの装置で製造工程を実行しながら、同時に同じ製造工程のための別の装置をメンテナンス、例えば洗浄することができる。さらに、すべての成分を添加した後、装置の内容物がある一定時間残っている製造工程では、1つの装置ですべての化合物を供給した後、最初の装置での工程がまだ続いている間に、成分を別の装置に供給することが可能である。しかし、すべての装置に同時に成分を追加し、装置の製造工程を同時に実行することも可能である。
【0010】
本明細書に記載された方法は、ステンレス鋼、二相鋼、チタン、ハステロイ、硬質金属など、化学工業で典型的な材料の設備を使用して実施することができる。それによって、それが何のために使用されるかによって、当業者が理解するように、設備の特定の部分がその設備の他の部分と異なる材料であることが可能である。溶液S1は、腐食を引き起こす可能性のある硫酸を含むため、通常、酸と接触する任意の装置及び任意の配管接続装置に、耐腐食性材料を使用することが好ましい。例えば、酸と接触する全ての表面にエナメル層を設けることが好ましい。また、耐腐食性のある材料でコーティングされた鋼材を使用することも可能である。硫酸にsPESを溶解するための容器又はリザーバ、ならびに硫酸と接触する任意のパイプ又は処理容器は、例えば、エナメル加工、又はハステロイ鋼、例えばハステロイ24610又はハステロイ24602などの耐酸鋼であり得る。
【0011】
当業者は、以下に記載される時間のいかなる表示も、取り扱われる材料の量のようなパラメータに依存し得ることを理解する。
【0012】
以下において、「少なくとも1つ(1種)」(「at least one」)は、原則として、1つ又は2つ以上、例えば3つ又は4つ又は5つ以上を意味し、ここで、以上(「more」)は複数又は不可算を意味することができる。例えば、「少なくとも1つ(1種)」は、1つ又は2つ以上の混合物を意味することができる。化学化合物との関連で使用される場合、「少なくとも1つ」は、化学的性質である化学的構造が異なる1つ又は2つ以上の化学化合物が記載されるという意味で意味される。
【0013】
以下では、「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー又はそれらの混合物を意味することができる。当業者は、いかなるポリマーも、それが本質的にホモポリマーであってもコポリマーであっても、典型的には、数平均重合度、分岐度又は末端基の性質のようなそれらの構成において異なるポリマー個体の混合物であることを理解する。このことを分布と表現することもある。したがって、以下において、ポリマーに対する接頭辞としての「少なくとも1つ(1種)」は、異なるタイプのポリマーが包含され得、それによって、各タイプは、上記で取り上げた、ある分布を有し得ることを意味する。
【0014】
当業者はさらに、任意のポリマーが、モノマー又はオリゴマー又はそれらの混合物から誘導され、これを、ポリマーが次に、反応し、重合した形態で含むことを理解する。
【0015】
以下において、「ポリアリーレン(エーテル)スルホン」又は「スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホン」は、それぞれ少なくとも1種のポリアリーレン(エーテル)スルホン又は少なくとも1種のスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンを意味すると理解される。通常、工業的規模の製造の観点から、それぞれ、1種のポリアリーレン(エーテル)スルホン又は1種のスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンであることが好ましい。
【0016】
以下において、「ポリアリーレン(エーテル)スルホン」を「PES」と略記することがある。
【0017】
以下において、「溶媒」は、少なくとも1種の溶媒を意味するものと理解される。通常、工業的規模の製造の観点から、好ましくは1種の溶媒である。
【0018】
記載される方法は、溶液S1が歯縁分散機に供給されることを含む。一般に、前記歯縁分散機は、可動部品によって混合効果を生じさせることができる少なくとも1つの処理容器を含む。それは、例えば、ロータ/ロータ又はロータ/ステータ混合装置であり得る。ロータ/ロータ混合装置では、2つの回転リング又は2つの回転円盤などの2つの回転部品の間の少なくとも1つの隙間に、せん断力が発生する。ロータ/ステータ混合装置では、可動部と固定部の間の隙間に、せん断力が発生する。それによって、固定部は処理容器の壁とすることができる。一般に、溶液S1は処理容器内で遠心加速される。
【0019】
高い又は非常に高いせん断速度を達成する観点から、歯縁分散機は、ロータ/ロータ混合装置であり得る。ロータ/ロータタイプの歯縁分散機の例としては、流体システム用のコ・ツイスター(co-twister)が挙げられる。
【0020】
より複雑でない機械の観点から、歯縁分散機は、ロータ/ステータタイプであることが好ましい。それによって、歯縁分散機は、1段式又は多段式の装置であってよい。
【0021】
歯縁分散機が多段式装置の場合、2つのロータと2つのステータとを備える少なくとも2つの処理容器を含む。通常、ロータは、同じシャフトドライブに取り付けられている。前記多段式装置は、例えば、2つ又は3つの処理容器を有する。前記処理容器は、油圧で相互に接続されている。多段式装置では、すべてのロータが同じシャフトドライブに取り付けられているため、それらは同じ速度で回転する。一般に、溶液S1は、最初の処理容器に供給され、この最初の処理容器を通過した後、次の処理容器に供給される。一般に、処理容器内のロータは、構造化された表面を有する。前記表面は、各ロータについて同じであっても、異なっていてもよい。表面構造は、ロータの長さ及び/又は直径に渡って変化していてもよい。一般に、構造化された表面は、最初の処理容器から次の処理容器に向かうにつれて、より微細になる。これには、処理容器内で発生し得る凝集物及び粗大粒子が分解されるという利点がある。同様に、ステータが構造化された表面を持つことも可能である。表面構造は、ステータの長さ及び/又は直径にわたって同じままであるか、又は変化していることが可能である。より段階式歯縁分散機では、溶液S1が通過する処理容器の数、ロータの回転速度、ロータ(複数種可)/ステータ(複数種可)の形状、ならびに表面特性、溶液S1の粘性及びその温度が、得られるsPESの粒径を決定する。
【0022】
通常、歯縁分散機は、1段式のロータ/ステータ装置であることが好ましい。これらは、通常、保守が容易であるという利点を有する。
【0023】
適切な歯縁分散機は、通常、フロースルー率及び操作可能な回転速度に関して広い操作ウィンドウを有する。それによって、50l/h未満、又は100l/hまでなどの高いフロースルー量ウィンドウ、又は例えば100000l/h、例えば130000l/h又はそれ以上のはるかに高いフロースルーウィンドウが有利となり得る。一般に、流量は、機械サイズ、プラント構成、例えばパイプの直径及び長さ、又はパイプに沿った圧力損失、ならびに流体の粘度などの多様なパラメータによって決定され得る。回転速度ウィンドウは、3m/秒未満、5m/秒以上、60m/秒以上など50m/秒以上が有利である。それによって、一定又は変動する流量、及び変動する又は一定の回転速度で操作することができる。歯縁分散機を操作することができるせん断速度は、通常、高いか又は非常に高い。したがって、せん断速度は、3000秒-1以上、好ましくは10000秒-1又は100000以上のような5000秒-1以上であってよい。通常、3000~250000秒-1、好ましくは30000~200000秒-1で、良好な結果~非常に良好な結果が得られる。
【0024】
歯縁分散機の一例は、例えば、WO2006/66421に記載されている。ロータ/ステータタイプの歯縁分散機の例としては、ドイツ、シュタウフェン、IKA(登録商標)Jahnke & Kunkel社のDISPAX-Reactorシリーズが挙げられる。さらに、スイス、ルツェルン、Kinematica AG社のMegatron(登録商標)シリーズ、ドイツ、スプロックヘーベル、Verfahrenstechnik v.Hagen & Funke GmbH社のCavitron(登録商標)シリーズ、及び、ドイツ、バレヒテン・ドッティンゲン、Ystral GmbH社のZ-inline分散機などが例として挙げられる。
【0025】
溶液S1を歯縁分散機に供給することを含む方法が記載されている。小さな粒度分布及び定義された粒度上限を、頑丈で洗浄しやすい設計で得るという観点から、通常、1段式歯縁分散機が好ましい。
【0026】
前記1段式歯縁分散機のロータは、一般に、歯車列(tooth ring rows)を備える本体を備える。歯車列の間に、ステータの歯車列がロータに接触することなく到達する溝状のチャンネルがある。歯車列は、異なる細かさの歯を有することが可能である。内側の歯車列はより粗い歯を有し、より外側に位置する歯車列はより細かい歯を有することが好ましい。歯車列の間の距離は均一であってもよい。同様に、歯車列の間隔が互いに異なることも可能である。歯車列の数は、ロータの直径によって決定される。一般に、少なくとも2つの歯車列、例えば3つ、4つ、5つ、6つ又は7つが存在する。したがって、例えば最大8つの歯車列、又はそれ以上、例えば最大9つ又は10つの歯車列が存在していてもよい。
【0027】
ロータは、平面であってもよく、又は凸状又は凹状の形状を有していてもよい。一般に、ロータが平面又は凸状(円錐状)であることが好ましい。摩耗及び/又は目詰まりを避けるという観点から、ロータが凸状(円錐状)であることが好ましい。ステータの形状は、ロータの形状と相補的に適合し、それぞれ平面、凹状又は凸状であってよい。
【0028】
特に、歯縁分散機は、歯及びチャンバツールを備えた1段式歯縁分散機であってもよい。歯及びチャンバツールは、平面又は円錐状に設計することができる。歯及びチャンバツールは、コーンシステム(cone system)、すなわち、凸状(円錐状)であるロータと、それぞれ相補的な形状のステータとを備えることが好ましい。
【0029】
本明細書では、溶液S1を、水を含む液体(L1)と接触させることがさらに記載される。
【0030】
溶液S1を液体L1と接触させることは、歯縁分散機又はその中に含まれる処理容器内でなされ得る。また、溶液S1を液体L1と接触させることは、歯縁分散機又はその中に含まれる処理容器の外側であることも可能である。さらに、溶液S1を液体L1と接触させることは、歯縁分散機又はその中に含まれる処理容器の内側と外側との両方で行われることも可能である。歯縁分散機が多段式装置であり、2つ以上の処理容器を含む場合、溶液S1を液体L1と接触させることは、多段式装置に含まれる処理容器の1つ又は複数又は全ての内側又は外側で行われることが可能である。目詰まりを最小限に抑えるという観点から、通常、歯縁分散機の処理容器内で溶液S1を液体L1と接触させることが好ましい。この観点では、通常、多段式歯縁分散機の複数のチャンバ内又は全てのチャンバ内で、溶液S1を液体L1と接触させることも好ましい。
【0031】
それによって、液体L1を溶液S1に送液すること、例えば、投入する、圧迫する、送給する、注入する、又は膨張させること、特に、投入又は注入することが可能である。また、溶液S1を液体L1に送液すること、例えば、投入する、圧迫する、送給する、注入する、又は膨張させること、特に、投入又は注入すること可能である。
【0032】
ロータ-ステータタイプの歯縁分散機が使用される場合、ロータは、例えば、リザーバ又は連続供給から液体L1を吸引するポンプとして機能することができる。典型的には、溶液S1は、液体L1で満たされたロータとステータとの間の隙間に送給され、したがってL1と接触させることが好ましい。
【0033】
溶液S1を液体L1に接触させることは、典型的には、溶解したsPESの少なくとも一部が沈殿し、懸濁液が得られるという効果を有する。
【0034】
溶液S1を液体L1に接触させることは、連続的又は不連続的に実施することができる。例えば、溶液S1の一定又は本質的に一定の流れを、歯縁分散機又はその中に含まれる処理容器にそれぞれ送液することができる。それによって、それは、液体L1の一定又は本質的に一定の流れと接触させることができる。また、一定量の溶液S1を、さらなる量の溶液S1をさらなる量の液体L1に接触させる前に、歯縁分散機又はその中に含まれる処理容器にそれぞれ送液し、それによって一定量の液体L1と接触させることが可能である。特に、歯縁分散機が、連続的に、換言すればフロースルーモードで作動することが好ましい。
【0035】
懸濁液は、処理容器の、上部、下部、又は側面から排出することができる。懸濁液の泡立ちを避けるという観点から、通常、懸濁液は処理容器の上部から排出されることが好ましい。懸濁液を2つ以上のチャンバ出口から排出してもよいが、懸濁液を1つの開口部から排出することが好ましい。
【0036】
一般に、歯縁分散機が、シングルパス又は再循環ループモードで操作されることが可能である。それによって、歯縁分散機は、上記のように、連続的に(フロースルーモードで)又は不連続的に操作され得る。予め定義された本質的に一定の粘度の溶液S1及び懸濁液で工程を実施する観点から、シングルパス操作モードで工程を実施することが好ましい。
【0037】
歯縁分散機が再循環ループで操作される場合、懸濁液は、運び出される代わりに、歯縁分散機又はその中に含まれる処理容器にそれぞれ循環して戻され得る。典型的には、それによって、懸濁液は容器に送液され、その後循環して戻される。懸濁液が送液され循環して戻される容器は、別の容器であってもよいし、液体L1のリザーバであってもよい。懸濁液を循環させ戻すことによって、さらなる量の溶液S1と接触させることができ、それによって、懸濁液中の固体濃度を増加させることができる。また、懸濁液をさらなる溶液S1及びさらなる液体L1と接触させることも可能であり、それによって、懸濁液の固体量を予め定められた範囲に保つことができる。また、懸濁液を歯縁分散機又はその中に含まれる処理容器にそれぞれ循環して戻す前に、懸濁液から沈殿物の少なくとも一部を除去することも可能である。溶液S1は、例えば、沈殿物が除去されなかった懸濁液又は沈殿物が少なくとも部分的に除去された懸濁液に添加され得る。
【0038】
廃液の量を減らすという観点から、この方法を再循環ループで操作することが好ましい。それによって、懸濁液をさらなる溶液S1と接触させることが好ましい。それによって、液体L1に少なくとも部分的に溶解性である沈殿物中に含まれる物質が、大部分抽出され得る。
【0039】
したがって、本明細書では、歯縁分散機が再循環ループで操作される方法が記載されている。
【0040】
懸濁液は、1回又は2回以上循環して戻されることができる。サイクルの回数は、懸濁液の粘性によって決定され得る。粘度は、特に、沈殿物が除去されない場合、及び/又は、懸濁液を循環させて戻す前に液体L1をさらに添加しない場合、蓄積した沈殿物のために増加し得る。さらに、サイクルの回数は、達成されるべき所望の純度など、製品の特性によって決定され得る。このような観点から、懸濁液を2回以上循環させて戻すことが好ましい場合が多い。例えば、8回、9回又は10回又はそれ以上の回数まで循環させることができる。それによって、通常、3~5回が、方法のための費用と、方法によって得られる粒子のサイズ分布及び純度などの製品の特性との間の十分な妥協点である。
【0041】
上述したように、溶液S1は、歯縁分散機に供給される。溶液S1を送液する手段は、重力など多様な手段が考えられるが、通常は、ポンプを使用して溶液S1を送液することが好ましい。それによって、少なくとも溶液S1の範囲以上の粘度の液体を送液する機能を有するポンプが好ましい。通常、それぞれの場合において、65℃及び10秒-1のせん断速度で測定して、それによって粘度を決定するためにBrookfield RVDV-I Prime粘度計が使用され得、少なくとも200mPas、好ましくは少なくとも5000mPas、例えば最大20000mPasまでの粘度の液体を送液する機能を有するポンプが、溶液S1を送液することが好ましい。高粘度又は非常に高い粘度の液体を送液する機能を有するポンプは、例えばプログレッシブキャビティポンプ又は回転ピストンポンプなどである。ポンプの中でも、ギアポンプ、特に、上記に記載した粘度の液体を送液する機能を有するギアポンプを使用することが好ましい。
【0042】
したがって、65℃及び10秒-1のせん断速度で測定して、それによって粘度を決定するためにBrookfield RVDV-I Prime粘度計が使用され得、少なくとも200mPasの粘度の液体を送液する機能を有するポンプが、溶液S1を送液する方法が記載されている。また、ポンプがギアポンプである方法が記載されている。
【0043】
上述したように、歯縁分散機は、液体L1を吸引するためのポンプとして機能し、その結果、液体L1を送液することができる。歯縁分散機が再循環ループで操作される場合、懸濁液についても同様である。この場合、ポンプとして機能し、懸濁液を吸引して送液することができる。しかしながら、液体L1及び/又は懸濁液が能動的に送液されることも可能である。したがって、例えば、ポンプが液体L1及び/又は懸濁液を送液することができる。
【0044】
懸濁液の能動的な送液に関しては、懸濁液に含まれる固形物を破砕しないポンプが有利であり、それによって、懸濁液中の微粉、ひいては本方法から得られる粒子の含有量が増加しない。この目的に適したポンプは、例えばキャビティポンプ又は回転ピストンポンプである。
【0045】
操作の複雑さを避けるために、通常、液体L1及び懸濁液を歯縁分散機へ能動的に送液せず、むしろ歯縁分散機を液体L1及び/又は懸濁液を吸引するポンプとして使用することが好ましい。
【0046】
接続ラインなどの本方法を実施するために使用される部品又は装置、特に溶液S1が搬送又は処理される部品又は装置の目詰まりを避けるために、これらの部品又は装置を硫酸でフラッシングし、微量の水との接触による不要なポリマーの沈殿を避けることが通常好ましい。特に、本方法の始動時、又は本方法が中断又は停止されたときに行うのが有利であろう。また、沈殿物の部品又は装置を硫酸によって断続的に洗浄することも必要な場合があり得る。特に後者の目的のために、本方法は、硫酸の流れを可能にし、溶液S1及び液体L1及び/又は懸濁液の流れを停止させるための手段を含むことが好ましい。適切な手段は、例えば、三方弁であり得る。一般に、部品又は装置を満たすため、又はそれらを硫酸で洗浄するために、ギアポンプを使用することが効率的であり、したがって好ましい。
【0047】
液体L1及び/又は懸濁液を搬送又は保持する設備の部品は、沈殿したポリマーの不要な沈降によって目詰まりすることがある。これらは、通常、水によるフラッシングによって洗浄/取り除くことができる。
【0048】
溶液S1は、スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホン(sPES)及び硫酸を含む。それによって、スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンは、1種又は2種以上の異なるスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンの混合物であり得る。ポリアリーレン(エーテル)スルホンは、1種のポリアリーレン(エーテル)スルホンであることが好ましい。溶液S1は、sPESを調製する工程を由来とすることができ、又はsPESを硫酸に溶解させることによって得ることができる。sPESの製造後にsPESを単離する追加の工程を避けるという観点から、溶液S1がsPESの調製から得られる反応混合物であることが好ましい。それによって、反応混合物が歯縁分散機に直接送液されることが可能である。また、リザーバへの送液、及び追加の硫酸などの希釈剤の添加など、1つ以上の中間工程を経ることも可能である。
【0049】
溶液S1は、sPES及び硫酸から構成され得るか、又は本質的にsPES及び硫酸から構成され得る。溶液S1が、sPES及び硫酸の他に、残留モノマー、塩、残留溶媒などのsPESの重合からの残留物質、及び/又は三酸化硫黄又はクロロスルホン酸などのスルホン化からの残留物質などの追加物質を含むことも可能である。多くの場合、溶液S1が、溶液S1に基づいて、それぞれの場合において、1~25質量%、より好ましくは3~20質量%のsPES、及び75~99質量%、より好ましくは80~97質量%の硫酸を含むことが好ましい。溶液S1中に含まれ得る追加物質は、通常、0~5質量%といった微量で含まれ、それによって、一般に少ない方が好ましく、例えば、sPESに基づいて、3質量%までである。
【0050】
硫酸の濃度は、sPESが所望の量でそこに溶解するような範囲で変化させることができるが、濃硫酸~発煙硫酸、すなわちオレオムが典型的なものである。通常、硫酸はオレウムでなく、三酸化硫黄を含まないことが好ましい。それによって、硫酸の濃度は、通常、硫酸に基づいて、95質量%~100質量%の範囲であることが好ましく、硫酸に基づいて、96質量%~99質量%、例えば、97質量%又は98質量%であることがより好ましい。溶液S1の取り扱いの観点から、三酸化硫黄を含まない硫酸が好ましい。淡色、無色、又は本質的に無色のsPESを得るという観点から、濃度が96~100%未満の硫酸が最も好ましい。
【0051】
液体L1は、水を含む。水は、工程水、又は脱塩処理された水、例えば蒸留水などの精製水であることができる。多くの場合、水は脱イオン水であることが好ましい。脱イオン水を使用することによって、sPESに含まれるスルホン酸基が脱プロトン化されないという利点がある。液体L1は、水からなっていてもよく、本質的に水からなっていてもよい。
【0052】
本方法で使用される設備、特に溶液S1が液体L1と接触する設備の部品の腐食を低減するという観点から、液体L1が水及び硝酸を含むことが好ましい。硝酸は、腐食防止剤として機能できる。一般に、硝酸の量は少ないか、非常に少ない。ほとんどの場合、微量の硝酸で十分である。したがって、液体L1は、例えば、液体L1の質量に基づいて、それぞれの場合において、1質量%以下、特に0.5質量%以下の硝酸を含むことができる。したがって、液体L1が、液体L1に基づいて、それぞれの場合において、例えば99~100質量%の脱塩水及び0~1質量%の硝酸、例えば99~99.9質量%の脱塩水及び0.1~1質量%の硝酸などの脱塩水及び硝酸を含む、好ましくは本質的に脱塩水及び硝酸からなることが好ましい。
【0053】
溶液S1は硫酸を含むため、通常、溶液S1を液体L1に接触させる際に熱が発生する。少ないかもしれないが、本方法が再循環モードで操作され、懸濁液が溶液S1と接触される場合、本質的に同じことが懸濁液に当てはまる。また、当業者が評価するように、本方法が再循環モードで実施される場合に循環的に戻される液体L1の任意の部品の温度は、溶液S1に最初に接触する前の液体L1の任意の部品の温度より高くてもよい。したがって、sPESの損傷を回避する観点から、液体L1の温度が制御されることが好ましい。一般に、液体の温度は、それぞれの場合において、溶液S1と最初に接触する前に測定されて、50℃未満、例えば45℃、40℃、又は35℃未満であることが好ましい。液体L1は、例えば、その凝固点より上程度まで冷却することができ、したがって、それは、それぞれの場合において、溶液S1と最初に接触する前に測定されて、例えば、1℃、2℃、3℃、又は5℃の水の凝固点の周囲の温度を有していてもよい。液体L1の温度が10~25℃であれば、sPESの損傷を効率的に回避でき、冷却によるエネルギー消費は工業規模の製造に許容できるものである。同時に、好ましいサイズ及びサイズ分布を有する粒子が得られる。前記の観点から、液体L1の温度は、通常、10~25℃が好ましい。
【0054】
上記のように、直線運転モード又は循環運転のいずれかにおいて、溶液S1を液体L1に接触させることによって得られる懸濁液は、典型的には固液分離に供される。多くの場合、懸濁液は、固液分離に適した装置に連続的に送液されることが好ましい。懸濁液は、例えば、固液分離の前に、例えばバッファ容器に貯蔵されることも可能であるが、固液分離に適した装置に直接送液されることが好ましい場合が多い。固液分離は、濾過、沈殿、遠心分離のいずれでもよい。いずれも、連続的に行うことも、不連続に行うことも可能である。速度の観点から、固液分離は濾過であることが好ましい。濾過されたL1をさらに溶媒S1の沈殿に再利用するというさらなる観点から、濾過は連続的に行われることが好ましい。固液分離のための装置は、一般に当該技術分野で公知である。記載された方法における固液分離の目的のために、例えば遠心分離機、デカンター又は非加圧可能又は加圧可能なフィルタであり得るフィルタなどの様々な装置を使用することができる。したがって、ベルトフィルタ又はヌッチェを使用することができる。一般的には、ヌッチェタイプのフィルタが好ましい。特に、例えば不活性ガスによって加圧できるヌッチェが好ましい。
【0055】
固液分離が濾過である場合、濾過装置は、良好な又は非常に良好な耐薬品性を有する材料で作ることができる少なくとも1種のフィルタ要素を含む。このような材料は、使用される装置について上述したように、高分子又は耐薬品性金属であってよい。少なくとも1種のフィルタ要素は、例えば、フィルタカートリッジ、フィルタメンブレン、金属シーブ、金属織布、又はフィルタクロスであり得る。少なくとも1種のフィルタ要素がフィルタ布である場合、好ましい材料は、通常、可撓性、特に、織布に加工することができるような可撓性ポリマー材料である。これらは、例えば、繊維化される又は紡糸されるポリマーであり得る。少なくとも1種のフィルタ要素の材料として特に好ましいのは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)又はフッ素化ポリアルキレン、例えばエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、フッ素化エチレン-プロピレン(FEP)又はポリアリーレン(エーテル)スルホン(PESU)である。金属フィルタ/シーブの場合、使用する金属板及びフィラメントは、耐食性合金から作られることが望ましい。
【0056】
廃水の全有機物含有量(TOC)をできるだけ低く抑えるという観点から、微細又は非常に微細なフィルタ孔を有するフィルタ要素が好ましい。一般的に、公称孔径が800μmより大きいか、はるかに大きいフィルタを使用すると、TOCが不要に増加する。通常、公称孔径が5μm未満、例えば3μm又はそれよりはるかに小さいと、ろ過時間が長くなる。したがって、一般に、5~800μm、好ましくは5~200μmのような500μmまでの公称孔径が好ましい。濾過時間とTOCとの間の良好な妥協点は、公称孔径を100μm未満にすることである。公称孔径が10~50μmのヌッチェを使用することが最も好ましいといえる。公称孔径が10~50μmの加圧されたヌッチェを用いて、攪拌しながら濾過することがより好ましくあり得る。
【0057】
上記のような固液分離の結果、得られた固体は、一般に少量の残留硫酸、及び/又はモノマーのsPESへの重合及び/又はスルホン化反応に由来する残留物質を含む。したがって、さらなる精製のための労力は、一般に少ない。固体は、例えば、液体L2で洗浄又は抽出することができる。装置の経費及び複雑さを最小限に抑える観点から、一般に、加圧可能なフィルタ内の固体を液体L2で洗浄することが好ましい。それによって、フィルタケーキを液体L2中で移動させ、例えば攪拌することができる。資源の節約及び有効性の観点から、特に工業規模の工程では、通常、抽出カラムを使用することが好ましい。例えば、連続モードで抽出カラムを使用することが可能である。そのため、通常、液体L2を用いて向流方式で操作される抽出カラムが好ましい。
【0058】
液体L2は、硫酸及び/又は残留物質を除去するのに適した任意の液体であり得る。例えば、sPESがどのように得られたか、又はそれぞれのプローブの結果に応じて、液体L2を選択することができ、例えば異なる液体の混合物であってよい。固体が液体L2で洗浄される場合、液体L2の組成又は性質を洗浄サイクルごとに変えることが可能である。工業的生産の容易さの観点から、多くの場合、液体L2が液体L1を含む、又は液体L1からなることが好ましい。液体L2が液体L1からなることが最も好ましくあり得る。液体L2は、液体L1とは異なる供給源から供給されてもよいし、同じ供給源から供給されてもよい。通常、液体L2が水であることが最も好ましい。硫酸基の脱プロトン化及び残留硝酸の回避の観点から、L2は脱塩水であることが最も好ましい。
【0059】
典型的には、液体L2、好ましくは水、特に脱塩水による数回の洗浄サイクルは、硫酸及び/又は残留物質を効果的に除去するのに十分である。原則として、液体L2の温度は、液体L2及び得られるスルホン化生成物を分解しない任意の温度であってよい。一般的に、温度が高いほど洗浄効果は高くなる。同時に、洗浄工程のエネルギー消費は、通常、液体L2の温度が高く保たれるほど増加する。したがって、通常、液体L2の温度は、洗浄に使用される圧力においてその沸点未満であることが好ましい。液体L2が水の場合、その温度は、例えば、70℃未満、好ましくは20~50℃のような、100℃未満であることが好ましい。洗浄サイクルの回数は、残存する硫酸、及び/又は流出液L2のpHをそれぞれプローブすることによって決定することができる。洗浄は、例えば、予め定められた硫酸濃度に達するまで実施することができる。好ましくは、洗浄は、硫酸濃度が3mgKOH/gの固形分、より好ましくは1mgKOH/g未満の固形分になるまで実施され、これは実施例に記載されているようにDMFに溶解した乾燥固体の遊離酸の酸塩基滴定によって決定することができる。
【0060】
sPES及び液体L2、特に脱塩水を含む多孔質粒子が得られる。ある種の用途では、粒子を乾燥させず、そのまま使用することが好ましい場合がある。例えば、非粘着性コーティングのように、溶媒の存在下で非常に微分散物に粉砕し、軟化剤として水を使用する方法で使用する場合がそうである。通常、固液分離の後、粒子を乾燥させることが好ましい。ほとんどの用途において、水の含有量は、sPESに基づいて、2質量%以下であることが好ましい。ポリマー微粒子固体を乾燥させる方法は、一般に当該技術分野で公知である。したがって、乾燥は、例えば、液体L2の沸点より高い温度のような室温より高い温度で、例えば水の沸点以上などの、高い温度で実施することができる。それによって、乾燥は、必要な温度を低下させるために、減圧下で実施することができる。また、凍結乾燥法を使用することも可能であり、それによって、室温以下のような低い温度で乾燥させることができる。sPESの損傷を回避するという観点から、真空下で、100℃未満、特に80℃以下の温度で粒子を乾燥させることが好ましい。それによって、温度は一定であるか、又はプログラムに従うことができる。粒子状固体を高い温度で乾燥させる装置は一般に公知である。その例として、排気可能な乾燥オーブン、加熱及び排気可能な圧力フィルタ、排気可能なパドルドライヤーが挙げられる。
【0061】
昇温又は降温での乾燥の前に、液体L2、好ましくは脱塩水を機械的に減少させ、好ましくは押し出すと、乾燥工程に必要なエネルギーは減少し得る。前記押し出しのための装置は、一般に公知である。例としては、フィルタプレス又はカランダ(calander)が挙げられる。したがって、最初に機械的に、特に押し出すことによって水を除去し、その後、100℃未満、特に80℃以下の温度で粒子を乾燥させることが特に好ましい。それによって、温度は一定であるか、又はプログラムに従うことができる。乾燥は、熱風又は他の適切な気体により、流動床で行うこともできる。
【0062】
装置の複雑さが最小限であるという観点から、少なくとも2つの、より好ましくはすべての操作、固液分離、洗浄及び乾燥が1つの装置で実施されることが好ましい。特にフィルタ、好ましくは加圧可能なフィルタ、より好ましくは特に加圧可能なヌッチェであり、熱及び真空を適用することができるフィルタがこの目的を果たすことができる。より高い生産能力及びより高いスループットの観点から、前記操作のそれぞれについて専用の装置を有することが好ましい。
【0063】
本質的にポリアリーレン(エーテル)スルホン(sPES)からなる粒子は、発泡構造を有しているものが得られる。したがって、粒子の本質的に全て又は全てが多孔質である。粒子の空隙率は、マトリックスを含まず、代わりにガスで満たされているか、又は真空である、所定の体積の割合(パーセンテージ)として定義される。これは、粒子密度をマトリックス密度で除算することによって算出できる。商<1は、気孔の存在を示す。マトリックス密度は、DIN EN ISO 1183-3に記載されているように、ヘリウムガスピクノメータを用いて決定することができる。sPESのマトリックス密度は、一般に、各非スルホン化ポリマーの密度よりも高く、スルホン化度によって決定される。空隙率は25%以上であってよく、それによって空隙率はほとんどの場合30%以上である。空隙率は、例えば80%までであることができ、それによって多くの場合70%以下である。粒子の取り扱いの容易さの観点から、多くの場合、空隙率は40~60%であることが好ましい。例えば洗浄又は乾燥工程の過程で粒子を加圧すると、圧縮効果によって粒子の空隙率が減少する。したがって、空隙率は25%以下であり得る。
【0064】
粒子の発泡構造のため、溶媒(以下、溶媒L3ともいう)に容易に溶解することができるため、一般に有利である。溶解時間(25℃で振盪下、NMP中に5質量%溶液を調製する時間)は、好ましくは1時間以下、特に30分以下、例えば20分以下又は10分以下である。溶液を得るのに数分かかることが多く、多くの場合5分以上である。
【0065】
通常、得られる粒子は不規則な形状である。一般に、工業工程において良好に取り扱うことができるサイズを有する。一般に、粒径(d50値、体積分率)は、400μm以上などの300μm以上、かつ2000μm、1000μm以下などの3000μm未満である。通常は、500~2000μmの粒径(d50値、体積分率)を有する粒子が好ましく、これは実施例に記載するようにレーザ回折によって決定することができる。
【0066】
固液分離の容易さの観点、及びさらなる製造工程における乾燥粒子の取り扱いの観点の両方において、乾燥後に得られる粒子と同様に固形物も微粉の含有量が低いことが有利である。得られる粒子は、通常、微粉の含有量が少ないか、又は非常に少ない。エアジェット篩い分けによって決定される100μm未満のメッシュサイズの粒子を、粒子に基づいて、20質量%未満有する粒子が好ましい。より好ましくは、粒子は、エアジェット篩い分けによって決定される、100μm未満のメッシュサイズの粒子を、粒子に基づいて、10質量%未満有する。通常、一定の含有量の微粉が存在する。通常、エアジェット篩い分けによって決定されるメッシュサイズ100μm未満の粒子が、粒子に基づいて、約5質量%以下である。エアジェット篩い分けによる粒径の決定の適用条件は、実施例に示すとおりである。
【0067】
したがって、発泡構造を有し、エアジェット篩い分けによって決定される100μm未満のメッシュサイズの粒子を、粒子に基づいて、本質的に20質量%未満有するsPESからなる粒子が記載されている。
【0068】
したがって、以下、
【表1】
を有し、本質的にポリアリーレン(エーテル)スルホン(sPES)からなる好ましい粒子も記載されている(ここで、空隙率、粒径及び微粉は、上記のように決定される)。
【0069】
s本質的にPESからなる粒子であって、sPESが3mgKOH/g未満のsPESの遊離硫酸の含有量を有する粒子が記載されている。発泡構造を有し、本質的にsPESからなる粒子であって、sPESが3mgKOH/g未満のsPESの遊離酸の含有量を有する粒子も同様に記載されている。さらに、発泡構造を有し、sPESから本質的になる粒子であって、sPESが3mgKOH/g未満のsPESの遊離酸の含有量を有し、エアジェット篩い分けによって決定される100μm未満のメッシュサイズの粒子を、粒子に基づいて、20質量%未満有する粒子も記載されている。それぞれの場合において、遊離硫酸の含有量は、実施例に示されるように滴定によって決定される。
【0070】
sPESは、任意の公知の方法から得ることができ、又は当業者が当技術分野で一般に公知の技術を適用することで得ることができる。したがって、それぞれスルホン化されたモノマーを重合することによって、又はポリアリーレン(エーテル)スルホンをスルホン化剤と反応させる(ポストスルホン化)ことによって得ることができる。工業的規模で生産する場合は、ポストスルホン化法を用いることが好ましい場合が多い。
【0071】
ポリアリーレン(エーテル)スルホンは、当業者にはそれ自体公知である。好ましくは、ポリアリーレン(エーテル)スルホンが、一般式(I)
【化1】
(式中、
t及びqは、それぞれ独立して、0、1、2又は3であり、
Q、T、及びYは、それぞれ独立して、化学結合、又は-O-、-S-、-SO2-、S=O、C=O、-N=N-、及び-CR-から選ばれる基であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又はC-C12アルキル、C-C12アルコキシ、又はC-C18アリール基であり、Q、T及びYの少なくとも1種が-SO-であり、
Ar及びAr1は、それぞれ独立して、6~18個の炭素原子を有するアリーレン基である)のビルディングブロックを含む。
【0072】
上記の条件下で、Q、T又はYが化学結合である場合、これは化学結合が左右に隣接する基を直接的に結びつけることを意味すると理解される。Q、T及びYからなる基の少なくとも1種が-SO-であることが、式(I)中のQ、T及びYの少なくとも1種が-SO-であることを意味することが容易に理解されよう。その結果、例えば、qが=0のとき、T及びYの少なくとも1つは-SO-であり、例えば、tが=0のとき、Q及びYの少なくとも1つは-SO-であり、q=0かつt=0のとき、YはSOである。
【0073】
Q、T又はYが-CR-であるとき、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はC~C12アルキル基、C~C12アルコキシ基又はC~C18アリール基である。
【0074】
好ましいC-C12アルキル基には、1~12個の炭素原子を有する直鎖及び分岐状の飽和アルキル基が含まれる。特に以下の部位が好適である。C-Cアルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、2-又は3-メチルペンチル、及び、より長い長鎖部分、例えば非分岐ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ラウリル及びそれらの単分岐又は多分岐アナログである。
【0075】
前述した使用可能なC-C12アルコキシ基におけるアルキル部分は、1~12個の炭素原子を有する上記で定義されたアルキル基を含む。優先的に使用可能なシクロアルキル部分には、特に、C-C12シクロアルキル部分、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロプロピルプロピル、シクロブチルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチル、シクロペンチルプロピル、シクロペンチルブチル、シクロペンチルペンチル、シクロペンチルヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルジメチル及びシクロヘキシルトリメチルが含まれる。
【0076】
Ar及びArは、それぞれ独立して、C-C18アリーレン基である。Ar及びArは、好ましくは、親電子攻撃を非常に受けやすい電子を豊富に含む芳香族物質に由来し、好ましくは、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン、特に2,7-ジヒドロキシナフタレン及び4,4’-ビフェノールからなる群から選択される。Ar及びArは、好ましくは、非置換のC又はC12アリーレン基である。
【0077】
~C18アリーレン基Ar及びArとして、特に、1,2-、1,3-及び1,4-フェニレンなどのフェニレン基、1,6-、1,7、2,6-及び2,7-ナフチレンなどのナフチレン基、さらにアントラセン、フェナンスレン及びナフタセン由来のアリーレン基が使用されてもよい。
【0078】
通常、Ar及びArは、それぞれ独立して、1,4-フェニレン、1,3-フェニレン、ナフチレン、特に2,7-ジヒドロキシナフチレン、又は4,4’-ビフェニレンであることが好ましい。通常、Ar及びArがそれぞれ好ましくは独立して、1,4-フェニレン、1,3-フェニレン又は4,4’-ビフェニレンであることがより好ましい。特に、多くの場合、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換されていない1,4-フェニレン、1,3-フェニレン、又は4,4’-ビフェニレンである。
【0079】
好ましいポリアリーレン(エーテル)スルホンは、通常、構造繰り返し単位として以下のビルディングブロックIa~Ioの少なくとも1種を含む。
【0080】
【化2】

【0081】
好ましいビルディングブロックIa~Ioに加えて、ヒドロキノンに由来する1つ以上の1,4-フェニレン単位が、レゾルシノールに由来する1,3-フェニレン単位又はジヒドロキシナフタレンに由来するナフチレン単位で置換されているビルディングブロックも優先される。
【0082】
一般式(I)のビルディングブロックとしては、ビルディングブロックIa、Ig、Ikが特に好ましい。また、成分(A)のポリアリーレンエーテルは、一般式(I)のビルディングブロックの少なくとも1種、特にIa、Ig及びIkから選択される少なくとも1種のビルディングブロックから本質的に構成されていることが特に好ましい。
【0083】
特に好ましい実施形態では、Arは=1,4-フェニレン、tは=1、qは=0、Tは化学結合、及びYは=SOである。前述の繰り返し単位から構成される特に好ましいポリアリーレンエーテルスルホン(A)は、式Igのポリフェニレンスルホン(PPSU)と称される。
【0084】
さらに特に好ましい実施形態では、Arは=1,4-フェニレン、tは=1、qは=0、Tは=C(CH、及びYは=SOである。前述の繰り返し単位から構成される特に好ましいポリアリーレンエーテルスルホン(A)は、式Iaのポリスルホン(PSU)と称される。
【0085】
さらに特に好ましい実施形態では、Arは=1,4-フェニレン、tは=1、qは=0、Tは=Yは=SOである。前述の繰り返し単位から構成される特に好ましいポリアリーレンエーテルスルホンは、式Ikのポリエーテルスルホン(PESU)と称される。
【0086】
本発明の文脈におけるPPSU、PESU及びPSUなどの略語は、DIN EN ISO 1043-1(プラスチック-記号と略語-パート1:基本的なポリマーとその特殊な特性(ISO 1043-1:2001)、EN ISO 1043-1:2002のドイツ語版)に準拠している。
【0087】
スルホン化制御の観点から、ポリアリーレン(エーテル)スルホンが、ポリスルホン単位(PSU単位)、ポリエーテルスルホン単位(PESU単位)及びポリフェニレンスルホン単位(PPSU単位)からなる群から選択されるビルディングブロックを含むことが最も好ましい。
【0088】
芳香族ポリマーがポリエーテルスルホン(PESU)及びポリフェニレンスルホン(PPSU)から形成されるコポリマーである場合、このコポリマーは、例えば、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーであり得る。溶解状態又は固体状態で相分離を全く又はほとんど示さないより均質な材料が得られるという理由から、ポリエーテルスルホン(PESU)及びポリフェニレンスルホン(PPSU)から形成されるランダムコポリマーが優先されることが多い。
【0089】
ポリアリーレン(エーテル)スルホンがポリエーテルスルホン(PESU)及びポリフェニレンスルホン(PPSU)から形成されるコポリマーである場合、コポリマーが、すべてコポリマーの全繰返し単位の総和に基づいて、1~20mol%のポリフェニレンスルホン(PPSU)及び80~99mol%のポリエーテルスルホン(PESU)を含むことが好ましくあり得る。
【0090】
ポリアリーレン(エーテル)スルホンの質量平均分子量Mwは、基準としての狭分布ポリメチルメタクリレートに対して、溶媒としてのジメチルアセトアミド中のゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されて、典型的には好ましくは10000~150000g/molの範囲、特に15000~120000g/mの範囲、より好ましくは18000~100000g/molの範囲にある。
【0091】
前述のポリアリーレン(エーテル)スルホンを得る製造方法は、当業者にはそれ自体公知であり、例えば、Herman F.Mark、「Encyclopedia of Polymer Science and Technology」、第3版、第4巻、2003年、第2~8頁の「Polysulfones」の章、また、Hans R.Kricheldorf、Handbook of Polymer Synthesis、「Aromatic Polyethers」、第2版、2005年、第427~443頁にも記載されている。
【0092】
好ましくは、ポリアリーレン(エーテル)スルホンは、少なくとも1種のスルホン化剤で処理されて、sPESを得る。少なくとも1種のスルホン化剤は、少なくとも1種のSOX基(XはCl又はOZであり、ZはH、Li、Na、K、Mg、Ca又はNHである)を芳香族ポリマーの芳香環に導入できる当業者に公知の任意の化合物であることが好適である。SOX基は、好ましくはスルホン酸基(-SOH)、又は水と反応してスルホン酸基を形成することが可能な基である。この種の基は当業者に公知であり、例えば、クロロスルホニル基(-SOCl)などが挙げられる。したがって、SOX基は、より好ましくはスルホン酸基(-SOH)又はクロロスルホニル基(-SOCl)であり、最も好ましくは、SOX基はスルホン酸基(-SOH)である。
【0093】
上記のように、ポリアリーレン(エーテル)スルホンをスルホン化する方法は、一般に当業者に公知である。
【0094】
本発明の方法におけるポリアリーレン(エーテル)スルホンと少なくとも1種のスルホン化剤との反応によって、少なくとも1つのポリアリーレン(エーテル)スルホンの芳香環を少なくとも部分的にスルホン化する。
【0095】
スルホン化反応のメカニズムは、当業者にはそのように公知である。それによって、スルホン化反応は、芳香環上の水素原子をスルホン酸基(-SOH)で置換することが特に好ましい。
【0096】
典型的には、ポリアリーレン(エーテル)スルホンに、芳香環あたり0.001~1、好ましくは0.005~0.1、より好ましくは0.01~0.08のSOX基が導入される。その結果、sPESは、典型的には、芳香環あたり0.001~1、好ましくは0.005~0.1、より好ましくは0.01~0.08のスルホン酸基を有する。
【0097】
芳香環あたりのSOX基の数は、sPESのすべての芳香環を平均化することによって決定される。この目的のために、sPESのSOX基の数は、sPESの芳香環の数で除算される。それぞれsPESに含まれるSOX基の数及び芳香環の数を決定する方法は、当業者に公知である。SOX基の数は、例えば、酸塩基滴定、又はH NMR分光法又はIR分光法(赤外分光法)等の分光学的手法によって決定可能である。芳香環上にSOX基を有するスルホン化芳香族ポリマーは、特徴的なピーク及びバンドを示すため、sPES中の芳香環あたりのSOX基の数を決定することが可能である。また、スルホン化芳香環の非スルホン化芳香環に対する比は、これらの方法、特にHNMR分光法によっても決定できる。
【0098】
ポリアリーレン(エーテル)スルホンが置換度の異なる芳香環を有する場合、したがって、最も強い求核性の芳香環が優先的にスルホン化されることが典型的なケースである。
【0099】
好ましくは、ポリアリーレン(エーテル)スルホンが、例えば、ポリエーテルスルホン(PESU)及びポリフェニレンスルホン(PPSU)から形成されるコポリマーの場合、ポリフェニレンスルホン(PPSU)のビフェニレン単位の芳香環は、コポリマーのビフェニルスルホン単位の芳香環よりも求核性が高い。そして、芳香族ポリマーの反応中に、ポリフェニレンスルホン(PPSU)のビフェニレン単位の芳香環が優先的にスルホン化される。
【0100】
ポリフェニレンスルホン(PPSU)のビフェニレン単位の芳香環のスルホン化は、典型的には、3及び/又は3’の位置で行われる。
【0101】
したがって、好ましくは、sPESは、一般式(II)
【化3】
のビルディングブロック及び一般式(III)
【化4】
のビルディングブロックからなる群から選択される少なくとも1種のビルディングブロックを含む。
【0102】
したがって、本明細書では、スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンが、一般式(II)
【化5】
のビルディングブロック及び一般式(III)
【化6】
のビルディングブロックからなる群から選択される少なくとも1種のビルディングブロックを含む、方法及び粒子もそれぞれ記載されている。
【0103】
sPESは、好ましくは、基準としての狭分布ポリメチルメタクリレートに対して、溶媒としてのジメチルアセトアミド中のゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される10000~35000g/molの数平均分子量(M)を有する。
【0104】
スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンが、ポストスルホン化法、すなわちポリアリーレン(エーテル)スルホンをスルホン化剤と反応させることによって得られる方法が記載されている。それによって、ポリアリーレン(エーテル)スルホンは濃硫酸と反応されることが好ましい。スルホン化制御の観点から、溶解したSO及び硫酸無水物を含まない硫酸を用いることが好ましい。したがって、一般に、スルホン化剤は、95~100%、特に96~99%の濃度の硫酸であることが好ましい。通常、スルホン化は、100℃未満、特に60℃未満のような低温で実施することができる。多くの場合、強い冷却は必要なく、スルホン化は10℃以上、例えば20℃以上で実施することができる。通常、これらの温度では、速い又は非常に速いスルホン化反応が観察される。このように、上記に記載した濃度の硫酸を同様に使用し、低温で反応を行うことは別として、鎖の劣化を避けるという観点から、短い反応時間が好ましい。したがって、24時間以下などの数時間、又は2、3時間以下などのかなり短い反応時間で十分である。所望のスルホン化の程度を得るのに十分であり、方法効率の観点から、反応時間をできるだけ短く、例えば60分以下など数分以内にすることが好ましい。
【0105】
上述したように、本本法によって得ることができ、本質的にsPESからなる粒子は、溶媒(溶媒L3)に容易に溶解させることができる。したがって、前記粒子を含む溶液S2が記載されている。
【0106】
溶媒L3は、記載の文脈では有機溶媒であり得るが、特に非プロトン性極性溶媒であり得る。好適な溶媒L3は、80~320℃、特に100~280℃、好ましくは150~250℃の範囲の沸点を有することができる。溶媒L3、特に使用が考慮される非プロトン性極性溶媒は、sPESが可溶性であるものである。この文脈において、「可溶性」は、室温(25℃)において、それぞれの場合において、非プロトン性極性溶媒中の溶液の総質量に基づいて、5質量%以上、例えば10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上のsPESが溶解することを理解することが好ましい。適切な非プロトン性極性溶媒は、例えば、高沸点エーテル、エステル、ケトン、非対称性ハロゲン化炭化水素、アニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)又はN-エチル-2-ピロリドン(NEP)又はそれらの任意の組合せである。プロトン性溶媒の例としては、乳酸ジメチルアミド(アグニーク)が挙げられる。溶解性を高めるために、溶媒L3は、例えば、2~3種の溶媒の混合物としてもよい。ほとんどの場合、2種又はより好ましくは1種の溶媒のみを使用することで十分であり得る。
【0107】
一般に、溶液S2をメンブレンの製造に使用する態様と同様に、溶媒L3は、特にDMAC、NMP、DMF、ピロリドン又はNEP又はそれらの任意の混合物であってもよい。
【0108】
一般に、溶液S2を少なくとも1種の他の材料(以下、本明細書において「材料M」とも称する)と混合することが可能である。材料Mは、例えば、少なくとも1種のさらなる液体及び/又は少なくとも1種の親水性ポリマーであり得る。通常、溶液S2は、少なくとも1種のさらなる液体を全く混合しない、又は少量だけ混合することが好ましく、それによって、少なくとも1種のさらなる液体は、sPESが溶解したままとなる量だけ使用される。溶液S2は、例えば、溶液S2に基づいて、10質量%までの、少なくとも1種のさらなる液体と混合してもよい。このようなさらなる液体は、メンブレン製造の技術分野において、いわゆる「非溶媒」、例えば、水、グリセロール又はイソプロパノールであることができる。バインダ、コーティングフィルム、繊維又はメンブレンの製造において溶液S2を使用する態様では、さらなる成分として少なくとも1種の親水性ポリマーと混合することが好ましいことがある。親水性ポリマーの例としては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、及びポリアルキレンオキシド-コポリマーが挙げられる。
【0109】
溶液S2は、少なくとも1種の慣用のレセプタクル、特に攪拌装置及び好ましくは温度制御装置を含む少なくとも1種のレセプタクルで得ることができ、同様に材料Mとの混合は、少なくとも1種の慣用のレセプタクル、特に攪拌装置及び好ましくは温度制御装置を含む少なくとも1種のレセプタクルで実施することができる。溶液S2の調製ならびに材料Mとの混合は、通常、好ましくはかき混ぜながら、好ましくは攪拌下で実施される。
【0110】
sPESを溶解し、任意に材料M、特に少なくとも1種の親水性ポリマーと混合することは、同時に又は連続して実施することができる。
【0111】
脱ガスを含む溶液S2を調製する時間は、幅広く、一般に数分~数時間で変化させることができる。溶液S2を調製する時間は、典型的には、溶媒L2、特に非プロトン性極性溶媒中のsPES及び任意に追加の成分、特に親水性ポリマーの均質な溶液が得られるように調整される。
【0112】
溶液S2の調製中の温度は、好ましくは20~120℃の範囲であり、より好ましくは40~100℃の範囲である。非プロトン性極性溶媒中のsPES及び任意に追加成分、特に親水性ポリマーの濃度は、特に所望のフィルム、メンブレン、又はコーティングの意図された用途及び使用によって決まる。
【0113】
溶液S2中に含まれるsPESの量は、広い範囲で変化し得る。それは、溶媒L3の種類と同様に、sPESの構造にもよる。また、この用途に適用される用途及び方法にもよる。一般に、溶液S2は、溶液S2の総質量に基づいて、10質量%以上など、3質量%以上のsPESを好ましくは含む。したがって、例えば、最大40質量%以上のsPESを含むことができる。溶液S2の総質量に基づいて、5~30質量%のsPESが含まれることが特に好ましくあり得る。
【0114】
本明細書では、任意に、溶液S2を少なくとも1種の他の材料と混合し、溶液S2又は得られた混合物をコーティングし、スピンさせ、及び/又はキャスティングすることを含む方法、バインダ、コーティング、フィルム、繊維、メンブレン、又は成形品の製造のための方法も記載されている。
【0115】
このようなコーティング、スピン及び/又はキャスティングの例は、一般に当業者に公知である。
【0116】
記載された方法によって得られたsPES、sPESを含む粒子、ならびに溶液S2は、バインダ、コーティング、フィルム、繊維、メンブレン、又は成形品の製造に使用することができる。したがって、バインダ、コーティング、フィルム、繊維、メンブレン、又は成形品の製造における、本明細書による方法によって得られたスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホン、粒子又は溶液S2の使用法が記載される。バインダ、コーティング、フィルム、繊維、メンブレン、又は成形品が、それぞれの処理形態で、本明細書の方法によって得られたスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホン、粒子又は溶液S2を含むことが記載されている。同様に、バインダ、コーティング、フィルム、繊維、メンブレン、又は成形品aが、溶液S2を少なくとも1種の他の材料と任意に混合し、溶液S2又は得られた混合物をコーティング、スピンさせ及び/又はキャスティングさせることを含む方法で得られたことが記載されている。
【0117】
記載された方法は、歯縁分散機の使用によって、一度に少量の溶液S1及び液体L1のみが混合されるので、強酸及び水の取り扱いに通常伴う危険性が回避されるという一般的な利点を有する。また、この記載された方法は、廃水のTOCを低く抑えることができるという一般的な利点を有する。さらに、粒子はそれぞれスポンジタイプ構造の多孔質であり、容易に溶解するため、メンブレンの製造に効率的に使用できるという一般的な利点を有する。
【実施例
【0118】
方法
嵩密度
校正された円筒容器(例えば250mlのメスシリンダー)にポリマーの粒子を緩く充填し、ポリマーの質量を体積に関連付けた。容器を固体表面に軽く叩きつけることによって、ポリマー粒子は一定の体積になるまで圧縮された。このようにして得られた減少した体積を、嵩密度の測定に使用した。
【0119】
スルホン化の度合いと遊離スルホン酸の決定
2つの独立した滴定が行われた。
【0120】
最初の滴定では、約1gのポリマー(sPES)を5mlの無酸DMFに溶解させた。完全に溶解させた後、50mlの2-プロパノールを加えたところ、ポリマーが沈殿した。沈殿したポリマーを母液から取り出し、2-プロパノールで洗浄した。母液と洗浄液とを合わせ、0.1mol/lのテトラブチルアンモニウムヒドロキシド溶液(TBAH、メタノール/トルエン中)でSolvotrode-electrode(Metrohm社)に対し滴定を行った。2つの滴定の当量点が観察された。第1の当量点(EQP1-1)は、母液中の遊離硫酸の2つのプロトン及び残りのポリマーのスルホン酸基のプロトンのうちの最初のものに相当する。2番目の当量点(EQP2-1)は、遊離硫酸の2つのプロトンのうち2番目に相当する。EQP2-1のTBAH消費量は、mgKOHに換算し、ポリマーの計量量(mgKOH/gのポリマー)と関連付ける。1mlのTBAH溶液は、5.61mgKOHに相当する。
【0121】
2回目の滴定では、約1gのポリマーを50mlのDMFに溶解し、沈殿工程なしに滴定を行った。したがって、溶解したポリマーの完全なスルホン酸基は、0.1mol/lのテトラブチルアンモニウムヒドロキシド溶液(TBAH、メタノール/トルエン中)で滴定することができる。ここでも、2つの当量点、EQP1-2及びEQP2-2が観察された。第1の当量点(EQP1-2)は、遊離硫酸及びポリマーのスルホン酸基のプロトンのうちの最初のプロトンに相当する。第2の当量点(EP2-2)は、硫酸の、及び、(もしあれば)sPESの潜在的に存在するフェノールOH末端基の第2のプロトンに対応する。遊離スルホン酸の含有量は、EQP1-2のTBAH消費量からEQP2-1のTBAH消費量を差し引くことによって決定することができる。EQP1-2からEQP2-1を引いた差は、mgKOHに変換され、ポリマーの計量量に関連付けられる。1mlのTBAH溶液は、5.61mgKOHに相当する。
【0122】
溶解時間
200rpmの実験室振盪器でかき混ぜた95gのN-メチルピロリドンに5gのポリマーを溶解する時間を、ストップウォッチで測定した。
【0123】
微粉
微粉(<100μm)は、エアジェット篩い分けで測定した。それによって、40~100gの各ポリマーを100μmのメッシュサイズの篩にかけた。微粉をエアジェット(1バール、75m/h)で一定時間(10分間)篩にかけて吹き付けた。その後、篩上に残ったポリマー試料の質量を測定し、失われた質量を微粉として決定した。
【0124】
ゲル浸透クロマトグラフィー/サイズ排除クロマトグラフィー(GPC/SEC)
ポリマー試料を、0.5質量%の塩を添加して、DMAc(ジメチルアセトアミド)に4g/lの濃度で溶解した。得られた溶液を孔径0.2mmの標準シリンジフィルタでろ過した。注入量は100mlで、カラム温度は40℃を切った。サイズ排除クロマトグラフィーは、複数のカラムの組み合わせで行われた。シグナルは示差屈折計で検出した(屈折率の測定)。校正は、分子量がM=800g/molからM=2.200.000g/molの範囲のPMMA標準試料を用いて行われた。
【0125】
KOHから算出したイオン交換容量(iec)
イオン交換容量(iec、単位:ポリマー1gあたりミリ当量[meq/g])は、滴定によって決定されたスルホン酸比KOH消費量[mg/g]をKOHのモル質量で除算して算出することができる。
【0126】
iec=KOH-消費量/56.11
粒子形態
エポキシ樹脂に埋め込まれた粒子の光学顕微鏡観察、及びミクロトームを準備することで、粒子形態を分析した。
【0127】
粒度分布
粒度分布は、Mastersizer 2000(Malvern Instruments社)を用いて決定した。試料の粒子(約5g)をエアジェット(1バール)で分散させ、レーザ回折で測定した。その後、体積分率(例えばd50-値)を評価した。
【0128】
理論的イオン交換容量(iec)
理論的イオン交換容量は、以下のように算出することができる。
【0129】
【数1】
【0130】
粘度数
粘度数(還元粘度、VN)はポリマーの分子量と相関しており、ISO 1628-5:1998に基づいて、N-メチル-ピロリドン中の1%のポリマー溶液で測定された。それによって、ウベローデ1Cキャピラリー内の規定量のポリマー溶液の溶出時間(t)は、純粋な溶媒の流出時間(t0)に関連し、その後、ポリマー濃度(c;単位g/ml)で正規化される。
【0131】
VN=[(t/t0)-1]/c[ml/g]。
【0132】
コポリマーC1
コポリマーC1は、式Ik)及びIg)の繰り返し単位を、0.95~0.05のモル比で含む非スルホン化コポリマーであった。これは、sPES-1~sPES-4の調製のための出発物質として使用された。
【0133】
実験室規模で、ラボスケールで、コポリマーC1は以下のように調製された。
【0134】
温度計、ガス導入管及びディーンスタークトラップを備えた4リットルのガラス製反応器に、574.34g(2.00mol)の4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)、475.53g(1.90mol)の4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(DHDPS)、18.621g(0.10mol)の4,4’-ビフェノール、及び297.15g(2.15mol)の炭酸カリウムを、体積平均粒径33.2μmで、窒素雰囲気下で1050mlNMPに懸濁させた。
【0135】
この混合物を190℃に1時間以内加熱した。以下において、反応時間は、反応混合物が190℃に維持された時間であると理解するものとする。反応中に生成した水は、蒸留によって連続的に除去した。蒸発した溶媒は交換された。
【0136】
7時間の反応時間の後、1950mlのNMPを添加し、室温まで冷却することによって反応を停止させた(1時間以内)。反応中に生成した塩化カリウムを濾過によって除去した。次に、得られたコポリマー溶液を水中で沈殿させ、得られたコポリマービーズを分離し、次に熱水(85℃)で20時間抽出した。次に、ビーズを減圧(<100mバール)で120℃、24時間乾燥させた。コポリマー中の4,4’-ビフェノール由来の単位Ig)の存在は、1H-NMR-分光法によって確認することができる。
【0137】
得られたコポリマーC1は、230.8℃のガラス転移温度(Tg)を有していた。粘度数、分子量(Mn、Mw)を表1に示す。
【0138】
本発明によるスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンsPES-1~sPES-4
I)溶液S1-1~S1-4の調製
硫酸(96%)を、目標とするsPES濃度が8~10質量%の溶液S1を得るのに必要な量で、リザーバから反応容器に供給した。硫酸の温度は、スルホン化温度に設定した。50kgのコポリマーC1を、混合物に10~30分以内投入した。反応混合物をさらに90分間撹拌して、コポリマーC1を完全に溶解させた。その後、反応混合物をさらに90分間攪拌した。
【0139】
各sPES-1~sPES-4と硫酸とを含む溶液S1-1~S1-4を得た。スルホン化温度、ならびに溶液S1-1~S1-4の特性を表1に示す。
【0140】
【表2】
【0141】
a)スルホン化温度は、溶液S1-1~S1-4を、実験に使用した歯縁分散機に供給したときの温度に等しい。
【0142】
II)本発明による溶液S1-1~S1-4の歯縁分散機への供給及び液体L1-1との接触
攪拌機を備え、壁面温度が15℃のリザーバで、3125リットルの脱イオン水及び硝酸から、液体L1-1中の硝酸濃度が、液体L1-1に基づいて、0.27質量%となるように液体L1-1を調製した。
【0143】
歯縁分散機としては、凹型ロータを有する1段式ロータ・ステータ歯縁分散機(Cavitron(登録商標)CD1010、コーン混合システム付き、ドイツ、スプロックヘーベル、Verfahrenstechnik v.Hagen & Funke GmbH社)を使用した。
【0144】
歯縁分散機装置はポンプとして機能し、最大回転速度12000rpmで操作することによって、リザーバから液体L1を引き込み、インライン混合装置を再循環ループモードで操作した。
【0145】
三方弁を硫酸リザーバに設置し、ギアポンプを起動し、硫酸を歯縁分散機へ送給し、送給しながら配管をフラッシングした。硫酸によって接続配管がパージされた後、溶液S1が入った反応容器に向けて三方弁を開いて、歯縁分散機に送給し、各溶液S1を歯縁分散機に送液した。
【0146】
各溶液S1と液体L1-1とを接触させると、懸濁液が得られた。この懸濁液は、液体L1-1のリザーバに再循環され、それによってその固体含量が継続的に増加した。沈殿を避けるために、懸濁液はリザーバ内で攪拌された。液体L1及び懸濁液はそれぞれ、約75リットル/分の量で歯縁分散機に通過させた。リザーバの懸濁液の温度は監視された。本方法の過程で、懸濁液の温度は、30~35℃上昇した。懸濁液は、各溶液S1が使い果たされるまで再循環された。その後、配管を硫酸でパージした。
【0147】
III)固液分離、及び液体L3-1による洗浄と乾燥
懸濁液をヌッチェで濾過し、1バールの圧力をかけた。公称孔径10μmのフィルタを使用した。フィルタケーキを液体L3-1で洗浄し、それによって攪拌した。液体L3-1として、1回の洗浄につき約40℃の温度で約800リットルの脱イオン水が使用された。洗浄は、濾液水のpHが4以上になった時点で中断した。通常、6回以下の洗浄が行われた。その後、得られた各sPESを、55~60℃の真空下で、ヌッチェ中で、sPESの質量に基づいて、2質量%未満の残留水分が得られるまで乾燥させた。得られたsPESの粒子を回収した。
【0148】
表2に、溶液S1-1~S1-4の歯縁分散機への供給の条件、得られたsPES-1~sPES-4、ならびにコポリマーC1の特性を示す。
【0149】
表3は、sPES-1~sPES-4のスルホン化度ならびに残留遊離酸の量を示す。
【0150】
図1は、本方法の例示的な実施形態を示す。
【0151】
【表3】
【0152】
a)80℃、100ミリバールで、一定質量まで乾燥させた後、DIN EN ISO 1183-3(ヘリウムガスピクノメータ)に基づいて決定した。
【0153】
b)振動後、体積が一定になるまで圧縮。
【0154】
c)低粘度パラフィンオイルを用いた25℃のピクノメータで、粒子から付着した気泡を除去するために超音波浴槽で10秒間処理した後に決定した。
【0155】
d)S1-1~S1-4の1400g/cmの平均マトリックス密度を用いて、粒子密度を平均マトリックス密度で除算して算出した。
【0156】
e)NMP中のポリマーの5質量%溶液を室温で振盪しながら得るまでの時間。
【0157】
f)2回の測定による平均値。
【0158】
表2は、溶液S1の粘度が高くなると、微粉の量が減少することを示している。また、溶液時間の短縮も確認された。比較のため、コポリマーC1を同じ条件で溶解し、NMP中の5質量%溶液を得た。溶解時間は約100分であった。表2はさらに、出発材料であるコポリマーC1と比較して、スルホン化及び処理の間、分子量の劣化が起こらず、分子量分布が同じままであることを示している。表2はさらに、発泡構造を有する多孔質粒子が得られることを示している。
【0159】
【表4】
【0160】
表3は、制御されたスルホン化が行われ、繰り返し単位のモル量から予想されるスルホン化度を得ることができたことを示している。また、表3は、遊離硫酸の残存量は3mgKOH/g未満のポリマーであることを示している。
【0161】
比較例sPES-C1~sPES-C4
比較のため、sPES-1について記載した手順にしたがってスルホン化試験を行った。この試験では、使用したすべての体積と質量(洗浄のためのものを含む)を10000倍でスケールダウンした。スルホン化時間及び得られた溶液S1を液体L1-1に接触させる方法を変化させた。
【0162】
sPES-C1は、コポリマーC1が溶解した後、スルホン化時間を追加することなく(90分の代わりに0分)調製した。このようにして得られた溶液S1-5は、溶解後すぐに、歯縁分散機ではなく磁気結合型高速撹拌機を備えた液体L1-1に注入した。個々の粒子ではなくモノフィラメントが形成され(図5参照)、これは洗浄のために小片に切断する必要があった。
【0163】
sPES-C2は、溶液S1-1の調製のための手順にしたがって調製された。このようにして得られた溶液S1-6を、液体L1-1に滴下して加えた。典型的には、2~5mmの大きさの、ほとんどが球状の、多孔質ではない粒子が得られた(図6)。
【0164】
sPES-C3を、溶液S1-1の調製のための手順にしたがって調製したが、コポリマーC1ではなく、粘度数81.3ml/gの繰り返し単位Ikを有するポリアリーレン(エーテル)スルホンホモポリマー(PESU)(BASF SE社のUltrason(登録商標)E 6020P)が使用された。溶液S1-7を得た。スルホン化時間経過後、溶液S1-7を、歯縁分散機ではなく磁気結合型高速攪拌機を備えた液体L1-1に注入した。個々の粒子ではなくモノフィラメントが形成され、これは洗浄のために小片に切断する必要があった。
【0165】
sPES-C4を、溶液S1-1の調製のための手順にしたがって調製したが、i)コポリマーC1ではなく、粘度数81.3ml/gの繰り返し単位Ikを有するポリアリーレン(エーテル)スルホンホモポリマー(PESU)(BASF SE社のUltrason(登録商標)E 6020P)を使用し、ii)スルホン化の時間を24時間に増加させた。溶液S1-8を得た。スルホン化時間経過後、溶液S1-8を、歯縁分散機ではなく磁気結合高速攪拌機を備えた液体L1-1に注入した。個々の粒子ではなくモノフィラメントが形成され、これは洗浄のために小片に切断する必要があった。
【0166】
同じ接触時間及び温度で6回の洗浄サイクルが適用された。最後の洗浄水のpHを測定した。
【0167】
表4は、これらの比較例の結果である。
【0168】
【表5】
【0169】
表4は、コポリマーC1のみから溶液S1が得られるわけではないことを示している。また、コポリマーC1を出発ポリマーとして使用した場合、より早く高いスルホン化度が得られ、分子量の低下が少ないことが観察されたことを示している。sPES-C1の結果から、45℃でのスルホン化は、溶解後すでにほとんど完了していることが明らかである。同時に、比較例では、例えば洗浄効率の点で、歯縁分散機を使用することの利点が示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンと硫酸とを含む溶液(S1)を歯縁分散機に供給し、それによって、溶液S1を、水を含む液体(L1)と接触させるスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンの製造方法。
【請求項2】
液体L1が水と硝酸とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液体L1が、溶液S1と最初に接触する前に測定されて、10~25℃の温度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
歯縁分散機が再循環モードで操作される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
65℃及び10秒-1のせん断速度で測定して、少なくとも200mPasの粘度の液体を送液する機能を有するポンプが、溶液S1を送液する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポンプがギアポンプである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンが、一般式(I)
【化1】
(式中、
t及びqは、それぞれ独立して、0、1、2又は3であり、
Q、T、及びYは、それぞれ独立して、化学結合、又は-O-、-S-、-SO-、S=O、C=O、-N=N-、及び-CR-から選ばれる基であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又はC-C12アルキル、C-C12アルコキシ、又はC-C18アリール基であり、
Ar及びArは、それぞれ独立して、6~18個の炭素原子を有するアリーレン基である)のビルディングブロックを含み、
ビルディングブロックの少なくとも1種は、少なくとも1種の-SOX基で置換されるフェニレン基及び/又はアリーレン基を含み、
Xは、Cl又はOZであり、Zは、H、Li、Na、K、Mg、Ca、又はNHである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンが、一般式(II)
【化2】
又は、(III)
【化3】
又は、(II)及び(III)のビルディングブロックを含む、
請求項に記載の方法
【請求項9】
スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンが、ポリアリーレン(エーテル)スルホンをスルホン化剤と反応させることによって得られる、請求項又はに記載の方法
【請求項10】
発泡構造を有し、本質的にスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンからなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法により得られた粒子。
【請求項11】
エアジェット篩い分けによって決定される100μm未満のメッシュサイズの粒子を、粒子の質量に基づいて、20質量%未満有する、請求項10に記載の粒子。
【請求項12】
スルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンが、3mgKOH/g未満のスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホンの遊離酸の含有量を有する、請求項10又は11に記載の粒子。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載の粒子を溶解した状態で含む溶液(S2)。
【請求項14】
任意に、請求項13に記載の溶液S2を少なくとも1種の他の材料と混合し、溶液S2又は得られた混合物をコーティングし、スピンさせ、及び/又はキャスティングすることを含む、バインダ、コーティング、フィルム、繊維、メンブレン、又は成形品の製造のための方法。
【請求項15】
バインダ、コーティング、フィルム、繊維、メンブレン、又は成形品の製造における、請求項1~のいずれか一項に記載の方法によって得られたスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホン、請求項1012のいずれか一項に記載の粒子、又は請求項13に記載の溶液S2の使用法。
【請求項16】
請求項1~のいずれか一項に記載の方法によって得られたスルホン化ポリアリーレン(エーテル)スルホン、請求項1012のいずれか一項に記載の粒子、又は請求項13に記載の又は請求項14に記載の方法から得られた溶液S2を、それぞれの加工形態で含む、バインダ、コーティング、フィルム、繊維、メンブレン、又は成形品。
【国際調査報告】