(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】サイドヒータの下方に配置されるヒートシールドを有するインゴット引上げ装置及びそのような装置でインゴットを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20231115BHJP
C30B 15/14 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
C30B29/06 502E
C30B15/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528344
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 US2020060097
(87)【国際公開番号】W WO2022103391
(87)【国際公開日】2022-05-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】バガバト,スミート エス
(72)【発明者】
【氏名】ダゴル,パルティブ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ベンジャミン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ジェウ
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EG18
4G077PE03
4G077PE07
4G077PE12
4G077PE27
(57)【要約】
サイドヒータ下方に配置されるヒートシールドを有するインゴット引上げ装置及びそのようなインゴット引上げ装置においてインゴットを製造する方法が開示される。いくつかの実施形態において、サイドヒータは比較的短い。坩堝がインゴット引上げにおいてその最も低い位置にある時にサイドヒータは、坩堝のフロアの完全に上方にあり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンインゴットを製造するためのインゴット引上げ装置であって、
フロアと前記フロアから延びる側壁とを有しており、シリコン溶融物を保持するための坩堝と、
前記溶融物からシリコンインゴットを引上げ軸に沿って引き上げるための成長チャンバと、
結晶成長中に前記引上げ軸に対して前記坩堝を上昇及び下降させる昇降機構と、ここで前記坩堝は、シリコンのチャージが前記シリコンインゴットを生成するために溶融される最も低い位置と、種結晶が前記溶融物から前記シリコンインゴットを引き上げるために最初に前記溶融物と接触するシードディップ位置と、前記坩堝の溶融物が枯渇する終端位置と、の間を軸方向に移動しており、
前記坩堝が前記最も低い位置から前記終端位置へ移動する時、前記坩堝側壁の半径方向外方に配置されるサイドヒータと、
前記坩堝の前記フロアの下方に配置されるボトムヒータと、
前記サイドヒータの真下に配置されるヒータシールドと
を備える、インゴット引上げ装置。
【請求項2】
前記サイドヒータは、前記坩堝が前記最も低い位置にある時に前記坩堝の前記フロアの完全に上方にある、
請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項3】
前記ヒートシールドの少なくとも一部は、前記坩堝が前記最も低い位置にある時に前記坩堝の底の上方にある、
請求項1又は2に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項4】
前記ヒートシールドの少なくとも一部は、前記坩堝が前記最も低い位置にある時に前記坩堝の前記フロアの少なくとも一部の下方にある、
請求項1~3の何れか1つに記載のインゴット引上げ装置。
【請求項5】
前記ヒートシールドは、前記坩堝が前記終端位置にある時に前記坩堝の前記フロアの完全に下方にある、
請求項1~4の何れか1つに記載のインゴット引上げ装置。
【請求項6】
前記サイドヒータの長さは、500mm以下、450mm以下、400mm以下、又は350mm以下である、
請求項1~5の何れか1つに記載のインゴット引上げ装置。
【請求項7】
前記ヒートシールドの前記引上げ軸に対する長さは、前記ヒートシールドの厚みより大きい、
請求項1~6の何れか1つに記載のインゴット引上げ装置。
【請求項8】
前記サイドヒータの少なくとも一部は、前記坩堝が前記最も低い位置と前記終端位置との間を移動する時、前記坩堝の前記側壁と横に整列する、
請求項1~7の何れか1つに記載のインゴット引上げ装置。
【請求項9】
前記サイドヒータ及び前記ヒートシールドは、隙間で離間している、
請求項1~8の何れか1つに記載のインゴット引上げ装置。
【請求項10】
前記サイドヒータは、前記ヒートシールドから約50mm以下、40mm以下で離間している、又は前記サイドヒータは、隙間によって前記ヒートシールドから離間していない、
請求項1~9の何れか1つに記載のインゴット引上げ装置。
【請求項11】
前記インゴット引上げ装置は、前記坩堝を支持するサセプタをさらに備えており、前記ヒートシールドは、前記坩堝が前記終端位置にある時に前記サセプタの完全に下方にある、
請求項1~10の何れか1つに記載のインゴット引上げ装置。
【請求項12】
前記坩堝の底と前記サイドヒータの底との間の距離は、前記坩堝が前記最も低い位置にある時に少なくとも約25mmである、
請求項1~11の何れか1つに記載のインゴット引上げ装置。
【請求項13】
前記サイドヒータは、厚みを有しており、前記ヒートシールドは、厚みを有しており、前記ヒートシールドの前記厚みは、少なくとも前記サイドヒータの前記厚み、又は前記サイドヒータの前記厚みの少なくとも1.1倍、前記サイドヒータの前記厚みの少なくとも1.25倍、前記サイドヒータの前記厚みの少なくとも1.5倍、又は前記サイドヒータの前記厚みの1.0~2.0倍、である、
請求項1~11の何れか1つに記載のインゴット引上げ装置。
【請求項14】
前記ヒートシールドの第1部分は、前記サイドヒータの半径方向内方であり、前記ヒートシールドの第2部分は、前記サイドヒータの半径方向外方である、
請求項13に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項15】
フロアと前記フロアから延びる側壁とを有する坩堝と、前記坩堝側壁の半径方向外方に配置されるサイドヒータと、前記サイドヒータの真下に配置されるヒートシールドと、を備えるインゴット引上げ装置においてインゴットを製造する方法であって、前記方法は、
前記坩堝が最も低い位置にある時に前記坩堝においてシリコン溶融物を形成すること、ここで前記坩堝が前記最も低い位置にある時に前記サイドヒータが前記坩堝の前記フロアの完全に上方にあり、
前記溶融物を種結晶と接触させること、
前記シリコン溶融物からインゴットを取り出すこと、
前記インゴットが前記シリコン溶融物から取り出されるに従って前記坩堝を上昇させ、前記インゴットが前記溶融物から分離する時に前記坩堝が終端位置にあること、
を備える方法。
【請求項16】
前記ヒートシールドは、前記サイドヒータの真下に配置されている、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ヒートシールドの少なくとも一部は、前記坩堝が前記最も低い位置にある時に前記坩堝の底の上方にある、
請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒートシールドの少なくとも一部は、前記坩堝が前記最も低い位置にある時に前記坩堝の前記フロアの少なくとも一部の下方にある、
請求項15~17の何れか1つに記載の方法。
【請求項19】
前記ヒートシールドは、前記坩堝が前記終端位置に上昇した時に前記坩堝の前記フロアの完全に下方にある、
請求項15~18の何れか1つに記載の方法。
【請求項20】
前記サイドヒータの長さは、500mm以下、450mm以下、400mm以下、又は350mm以下である、
請求項15~19の何れか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、インゴット引上げ装置に関するものであり、より具体的にはサイドヒータの下方に配置されるヒートシールドを有するインゴット引上げ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のいくつかのインゴット引上げ装置は、インゴット引上げホットゾーンにおいて比較的長いサイドヒータを含む。溶融物の所望の温度プロファイルを達成するために、ホットゾーンの底の方の断熱材は、除去される。断熱材の除去は、サイドヒータのエネルギ入力を増加させ、それによって熱効率が低下する。さらに、結晶成長中に坩堝を上昇させる時、比較的長いヒータは、坩堝の底と坩堝を上昇させるために使用されるシャフトとを加熱し得ることになり、プロセスのエネルギ効率をさらに低下させる。
【0003】
ホットゾーン及び加熱システムの効率を高めつつ、所望の温度プロファイルが達成されることを可能とするホットゾーンを有するインゴット引上げ装置のニーズが存在する。
【0004】
本セクションは、本開示の様々な側面に関し得る様々な技術の側面を読者に紹介することを企図しており、以下で説明され開示される。この説明は、本開示の様々な側面のより良い理解を容易にするための背景情報を読者に提供するのに役立つことであると考えられる。従って、これら記述はこの観点で読まれるべきであり、先行技術の自認としてではない、と理解されるべきである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一側面は、シリコンインゴットを製造するためのインゴット引上げ装置に向けられている。インゴット引上げ装置は、シリコン溶融物を保持するための坩堝を含む。坩堝は、フロアとフロアから延びる側壁とを有する。インゴット引上げ装置は、シリコンインゴットを溶融物から引上げ軸に沿って引き上げるための成長チャンバを含む。インゴット引上げ装置は、結晶成長中に引上げ軸に対して坩堝を上昇及び下降させるための昇降機構を含む。坩堝は、シリコン溶融物を生成するためにシリコンのチャージが溶融する最も低い位置と、溶融物からシリコンインゴットを引き上げるために種結晶が最初に溶融物と接触するシードディップ位置と、坩堝の溶融物が枯渇する終端位置と、の間を軸方向に移動する。坩堝が最も低い位置から終端位置へ移動する時、サイドヒータは、坩堝側壁の半径方向外方に配置される。ボトムヒータは、坩堝のフロアの下方に配置される。ヒートシールドは、サイドヒータの真下に配置される。
【0006】
本開示のさらなる他の側面は、フロアとフロアから延びる側壁とを有する坩堝と、坩堝側壁の半径方向外方に配置されるサイドヒータと、サイドヒータの真下に配置されるヒートシールドと、を備えるインゴット引上げ装置においてインゴットを製造する方法に向けられている。坩堝が最も低い位置にある時にシリコン溶融物は、坩堝で形成され、坩堝が最も低い位置にある時にサイドヒータは、坩堝のフロアの完全に上方にある。溶融物は、種結晶と接触する。インゴットは、シリコン溶融物から取り出される。坩堝は、インゴットがシリコン溶融物から取り出されるに従って上昇し、インゴットが溶融物から分離される時、坩堝は、終端位置にある。
【0007】
本開示の上記の側面に関して言及される特徴の様々な改良が存在する。さらなる特徴はまた、同様に本開示の上記の側面に組み込まれ得る。これらの改良及び追加の特徴は個々又は任意の組み合わせで存在し得る。例えば、示される本開示の実施形態の何れかに関連して以下で説明される様々な特徴は、単独又は任意の組み合わせで、本開示の上記の側面の何れかに組み込まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】サイドヒータの下方に配置されるヒートシールドを有し、坩堝が最も低い位置にある状態のインゴット引上げ装置の断面図である。
【0009】
【
図2】インゴット成長中のインゴット引上げ装置の断面図である。
【0010】
【
図3】坩堝が溶融物が枯渇する終端位置にある状態のインゴット引上げ装置の断面図である。
【0011】
【
図4】比較的長いサイドヒータを有しており、サイドヒータの下方に配置されたヒートシールドを有していない他のインゴット引上げ装置の断面図である。
【0012】
【
図5】
図4のインゴット引上げ装置の溶融物及びサイドヒータの温度プロファイルの概略図である。
【0013】
【
図6】
図1-3のインゴット引上げ装置の溶融物及びサイドヒータの温度プロファイルの概略図である。
【0014】
対応する参照符号は、図面の至るところに対応する要素を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
インゴット引上げ装置(又はより単純に「インゴット引上げ機」)は、大体
図1の「100」で示される。インゴット引上げ装置100は、サセプタ106によって支持され、シリコン等の半導体又はソーラグレード材料の溶融物104を保持するための坩堝102を含む。インゴット引上げ装置100は、引上げ軸Aに沿って溶融物104からシリコンインゴット113(
図2)を引き上げるための成長チャンバ152を画定する結晶引上げハウジング108を含む。
【0016】
坩堝102は、フロア129とフロア129から上方に延びる側壁131とを含む。側壁131は大体垂直である。フロア129は、側壁131の下方に延びる坩堝102の湾曲部を含む。坩堝102、は引上げ軸Aに対して坩堝102の最も低い位置である底116を含む。坩堝102内には溶融表面111(すなわち、溶融物-インゴット境界面)を有するシリコン溶融物104がある。
【0017】
サセプタ106は、シャフト105によって支持されている。サセプタ106、坩堝102、シャフト105、及びインゴット113(
図2)は、共通の長手軸Aつまり「引上げ軸」Aを有する。
【0018】
引上げ機構114は、溶融物104からインゴット113を成長させ且つ引き上げるためにインゴット引上げ装置100内に設けられている。引上げ機構114は、引上げケーブル118と、引上げケーブル118の一端に結合されるシードホルダ又はチャック120と、シードホルダ又はチャック120に結合され、結晶成長を開始させるための種結晶122と、を含む。引上げケーブル118の一端は、プーリ(図示されない)、又はドラム(図示されない)、又は他の何らかの適した上昇機構のタイプ、例えばシャフト、に接続されており、他端は、種結晶122を保持するチャック120に接続されている。操作時に、種結晶122は、下降して溶融物104に接触する。引上げ機構114は、種結晶122を上昇させるために操作される。これにより、単結晶インゴット113(
図2)が溶融物104から引上げられる。
【0019】
加熱中及び結晶引上げ中に坩堝駆動ユニット107(例えばモータ)は、坩堝102及びサセプタ106を回転させる。昇降機構112は、成長プロセス中に引上げ軸Aに沿って坩堝102を上昇及び下降させる。例えば
図1に示されるように、坩堝は、坩堝102に予め加えられた固体多結晶シリコンのチャージが溶融される最も低い位置(ボトムヒータ126付近)にあり得る。溶融物104を種結晶122と接触させ、引上げ機構114によって種結晶122を上昇させること、によって結晶成長が開始する。坩堝102は、溶融物104が種結晶122と接触する前に、その最も低い位置からある距離に上昇し得る(すなわち「シードディップ位置」に上昇する)。
【0020】
インゴットの成長に伴い、シリコン溶融物104は、消費され、坩堝102における溶融物の高さは減少する。坩堝102及びサセプタ106は、溶融表面111をインゴット引上げ装置100に対して同じ位置又は近くに維持するように、上昇し得る。坩堝102は、
図1に示されるその最も低い位置(例えば溶融位置)と、溶融物からシリコンインゴットを引き上げるために種結晶が最初に溶融物と接触するシードディップ位置までと、坩堝の溶融物が枯渇する終端位置(
図3)と、の間を軸方向に移動し得る。坩堝102の終端位置は、坩堝102のシードディップ位置(及び最も低い位置)の上方にある。
【0021】
結晶駆動ユニット(図示されない)はまた、引上げケーブル118とインゴット113(
図2)とを、坩堝駆動ユニット107が坩堝102を回転させる方向と反対の方向に、回転させてもよい(例えば逆回転)。同方向回転を用いる実施形態では、結晶駆動ユニットは、引上げケーブル118を、坩堝駆動ユニット107が坩堝102を回転させる方向と同じ方向に、回転させてもよい。さらに、結晶駆動ユニットは、成長プロセス中に溶融表面111に対して所望にインゴット113を上昇及び下降させる。
【0022】
インゴット引上げ装置100は、成長チャンバ152からアルゴン等の不活性ガスを導入及び回収するための不活性ガスシステムを含んでもよい。インゴット引上げ装置100はまた、ドーパントを溶融物104に導入するためのドーパント供給システム(図示されない)を含んでもよい。
【0023】
チョクラルスキ(Czocharalski)単結晶成長プロセスによれば、ある量の多結晶シリコン又はポリシリコンが坩堝102にチャージされる。坩堝に導入される半導体又はソーラグレード材料は、1つ又は複数の加熱要素から供給される熱によって溶融される。インゴット引上げ装置100は、引上げ装置内に熱を維持するための底部断熱材110と側部断熱材124とを含む。図示される実施形態では、インゴット引上げ装置100は、坩堝のフロア129の下方に配置されるボトムヒータ126を含む。坩堝102は、坩堝102にチャージされた多結晶を溶融させるためにボトムヒータ126付近に相対的に近づくように、移動し得る。
【0024】
インゴットを形成するために、種結晶122は、溶融物104の表面111と接触する。引上げ機構114は、種結晶122を溶融物104から引き上げるように操作される。次に
図2を参照すると、インゴット113は、インゴットが目標の直径に達するように種結晶122から移行し外側に先細となるクラウン部142、を含む。インゴット113は、結晶の一定直径部145つまり円柱の「本体部」を含んでおり、引上げレートを増加させることによって成長する。インゴット113の本体部145は、比較的一定の直径を有する。インゴット113は、インゴットが本体部145の後に直径に先細となるテールつまりエンドコーン149(
図3)、を含む。直径が十分に小さくなると、インゴット113は、溶融物104から分離する。インゴット113は、クラウン部142とインゴット113の終端150とを通って延びる中央長手軸Aを有する。
【0025】
インゴット引上げ装置100は、サイドヒータ135と、結晶成長中の溶融物104の温度を維持するために坩堝102を取り囲む及びサセプタ106と、を含む。サイドヒータ135は、坩堝102が引上げ軸Aを上及び下に移動する(例えば最も低い位置から終端位置まで)時、坩堝側壁131の半径方向外方に配置される。サイドヒータ135及びボトムヒータ126は、サイドヒータ135及びボトムヒータ126をここで説明されるように操作することを可能とする任意のタイプのヒータであってもよい。いくつかの実施形態において、ヒータ135、126は、抵抗ヒータである。サイドヒータ135及びボトムヒータ126は、溶融物104の温度が引上げプロセスを通して制御されるように、制御システム(図示されない)によって制御されてもよい。
【0026】
本開示の実施形態によれば、サイドヒータ135は、従来のインゴット引上げに対して比較的短い長さL135(すなわち高さ)を有してもよく、インゴット113に取り入れられる酸素の量を低減し得る。いくつかの実施形態において、サイドヒータ135の長さL135は、500mm以下、450mm以下、400mm以下、又は350mm以下であってもよい。サイドヒータ135の少なくとも一部は、坩堝102が坩堝の最も低い位置と、シードディップ位置と、終端位置と、の間で移動する時、坩堝102の側壁131と横に整列する(例えば引上げ軸Aから外方に垂直に伸びる半径は側壁131及び坩堝102に交差することが可能である。)。
【0027】
インゴット引上げ装置100はまた、結晶成長中の溶融物104の温度を維持するために坩堝102とサセプタ106とを取り囲むヒートシールド140を含む。ヒートシールド140は、サイドヒータ135の下方に配置されており、サイドヒータ135から隙間155で離間していてもよい。いくつかの実施形態では、ヒートシールド140は、サイドヒータ135から約50mm以下、又は40mm以下(例えば30mm~約50mm)で離間している。他の実施形態では、ヒートシールド140は、サイドヒータ135から離間していない(すなわちヒートシールド140及びサイドヒータ135は連続している)。
【0028】
図示される実施形態では、ヒートシールド140は、サイドヒータ135の真下に配置されている(すなわちサイドヒータ135及びヒートシールド140は下から見た時に整列しているつまり「縦に整列している」)。いくつかの実施形態では、ヒートシールド140の長さL
140(
図2)は、ヒートシールド140の厚みT
140より大きい。ヒートシールド140の厚みT
140は、少なくともサイドヒータ135の厚みT
135であり、他の実施形態では、サイドヒータ135の厚みT
135の少なくとも1.1倍、サイドヒータ135の厚みT
135の少なくとも1.25倍、又はサイドヒータ135の厚みT
135の少なくとも1.5倍(例えばサイドヒータ135の厚みT
135の1.0~2.0倍)であってもよい。ヒートシールド140は、ヒートシールド140の一部がサイドヒータ135の各側面とオーバーラップするように、サイドヒータ135に対して半径方向に配置され得る(すなわち上から見た時に、ヒートシールド140の第1部分がサイドヒータ135に対して半径方向内方にあり、ヒートシールド140の第2部分がサイドヒータ135に対して半径方向外方にある。)。
【0029】
ヒートシールド140は大体、サイドヒータ135の底部の冷却を低減する任意の材料で作られていてもよい。ヒートシールドは、断熱材料又は反射材料を含んでもよい。ヒートシールドは、層状であってもよい。ヒートシールドが断熱材料で作られている実施形態では、断熱材料は、インゴットの無転位(ゼロディスロケーション)のリスクを低減させるためにグラファイトでかぶせられていてもよい。いくつかの実施形態では、ヒートシールドは、放射線を遮断するためにシェル内に配置されるモリブデンシートを備えるグラファイトシェルを含んでもよい。
【0030】
インゴット引上げ装置100は、第2ヒートシールド151を含んでもよい(例えば「下の」ヒートシールドである第1ヒートシールド140と「上のヒートシールド」である第2ヒートシールド151とを備える。)。第2ヒートシールド151は、インゴットがヒートシールド151によって形成された開口160を通過するように、インゴット113を囲っていてもよい。ヒートシールド151は、結晶成長中の坩堝102の内側に配置されてもよい(例えば
図3に示されるような坩堝102の終端位置に示されるように)。
【0031】
坩堝102は、
図1においてその最も低い位置に示されている。図示される実施形態では、坩堝102がその最も低い位置にある時にサイドヒータ135は、坩堝102のフロア129の完全に上方にある。例えば、坩堝102の底116とサイドヒータ135との間の距離(すなわちサイドヒータ135の底までの距離)は、少なくとも約25mm、又は少なくとも約50mmであってもよい。坩堝102の底116とサイドヒータ135の上部との距離は、少なくとも約75mm、又は少なくとも約100mmであってもよい。ヒートシールド140の少なくとも一部は、坩堝102の底116の上方にある。ヒートシールド140の少なくとも一部はまた、坩堝102のフロア129の少なくとも一部の下方にある。
【0032】
坩堝102は、
図3においてその終端位置に示されている。図示される実施形態において、坩堝102が終端位置にある時にヒートシールド140は、坩堝102のフロア129の完全に下方にある。ヒートシールド140はまた、坩堝102が終端位置にある時にサセプタ106の完全に下方にある。
【0033】
本開示のインゴット引上げ装置は、従来のインゴット引上げ装置を超えたいくつかの利点を有する。インゴット引上げ装置が比較的短いサイドヒータを有する実施形態では(例えばサイドヒータ長さが500mm以下、450mm以下、400mm以下、又は350mm以下である、及び/又は坩堝がその最も低い位置にある時にサイドヒータが坩堝のフロアの完全に上方にある、場合)、サイドヒータからの加熱は、坩堝が結晶成長中に上昇している時に幾分のエネルギがシャフト及び底の断熱材に向けられるのでなく、坩堝及びサセプタに直接向けられる。これにより、より効率的なエネルギの使用となり、溶融高温点が溶融物と坩堝との境界面から上方に移動する。これは、追加されるより多くの断熱材によって、高温点を下に移動させ、少ないエネルギ及びホットゾーンの底への少ないリークによって同じ温度プロファイルを維持できるので、効率が改善する。インゴットの後本体部(すなわち坩堝が引上げ装置において比較的高くある時に成長しているエンドコーンに向かう直径一定部の部分)の成長中、坩堝壁の温度範囲は、長いヒータの使用と比較して広くなり得、後本体部の格子間酸素を低減させることを可能とする。
【0034】
ヒートシールドがサイドヒータの下方に配置される実施形態では、ヒートシールドは、ホットゾーンの底方の比較的低温要素の露出を低減させるので、ヒートシールドは、サイドヒータ下部の冷却を低減させる。これにより、所望の温度に達するヒータの必要なエネルギが低減し、ホットゾーンのエネルギ効率が上昇する。
【実施例】
【0035】
本開示のプロセスは、以下の実施例によってさらに示される。これら実施例は限定的な意味とみなされるべきではない。
実施例1:525mmのヒータを備えるホットゾーンの使用、対、325mmのヒータを備え、ヒータ下方に配置されるヒートシールドを備えるホットゾーンの使用
【0036】
図5は、
図4のインゴット引上げ装置のホットゾーン構成の温度プロファイルを示す(
図5及び6において溶融物及びヒータの低温部がより暗い点画で示される)。
図4のホットゾーンは、長さ525mmのサイドヒータ135を含んでおり、サイドヒータの下方にヒートシールドを含んでいなかった。ホットゾーンはまた、所望の温度プロファイルに達成するためにホットゾーンの底方に移動された一部の断熱材を含んでいた。
図4のサイドヒータは、103kWで操作され、ボトムヒータは、5kWで操作された(総熱入力108kW)。
図5の温度プロファイルは、溶融高温点が溶融物と坩堝との境界面にあるような望ましいものである。
図5の右にあるサイドヒータの温度プロファイルに示されるように、サイドヒータは、断熱材が削減されたため、ヒータ下部に向かって比較的低温であった。
【0037】
図6は、長さ325mmの比較的短いサイドヒータ135(すなわち
図4のサイドヒータより200mm短い)が使用された
図1-3のインゴット引上げ装置のホットゾーン構成の温度プロファイルを示す。ホットゾーンは、サイドヒータ135の下方に配置されたヒートシールド140を含んでいた。ホットゾーンは、
図4のホットゾーンと比較してインゴット引上げ装置の底方に移動された多量の断熱材(約1インチ)を含んでいた。サイドヒータ135は59kWで操作され、ボトムヒータは5kWで操作された(総熱入力64kW)。
【0038】
図6に示されるように、溶融物は、
図4のホットゾーン(
図5に示される)と同じ所望の温度プロファイルを実質的に有したが、インゴット引上げ装置は44kW少ない電力で操作された(すなわち41%少ない)。
【0039】
寸法、濃度、温度、又は他の物理的もしくは化学的性質又は特性、の範囲と関連して使用される場合、ここで使用される用語「約」、「実質的に」、「本質的に」、及び「おおよそ」は、性質又は特性の範囲の上限及び/又は下限に存在し得る変動を網羅し、例えば丸め、測定方法論、又は他の統計的変動から生じる変動を含んでいることを意味する。
【0040】
本開示の要素またはその実施形態を導入する場合、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「said」は1つ又は複数の要素があることを意味すると意図される。用語「有する」、「含む」、「含む」、及び「有する」は包括的であることが意図され、列挙された要素以上の追加の要素があり得ることを意味する。特定の向きを示す用語(例えば「上」、「底」、「側」等)は説明の便宜のためであり、説明されたアイテムの特定の向きを何ら要求しない。
【0041】
本開示の範囲から逸脱することなく、上記の構造および方法において様々な変更がなされ得るので、上記の説明に含まれ、添付の図面に示されるすべての事項は、限定的な意味ではなく、例示として解釈されるべきことが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンインゴットを製造するためのインゴット引上げ装置であって、
フロアと前記フロアから延びる側壁とを有しており、シリコン溶融物を保持するための坩堝と、
前記溶融物からシリコンインゴットを引上げ軸に沿って引き上げるための成長チャンバと、
結晶成長中に前記引上げ軸に対して前記坩堝を上昇及び下降させる昇降機構と、ここで前記坩堝は、シリコンのチャージが前記シリコンインゴットを生成するために溶融される最も低い位置と、種結晶が前記溶融物から前記シリコンインゴットを引き上げるために最初に前記溶融物と接触するシードディップ位置と、前記坩堝の溶融物が枯渇する終端位置と、の間を軸方向に移動しており、
前記坩堝が前記最も低い位置から前記終端位置へ移動する時、前記坩堝側壁の半径方向外方に配置されるサイドヒータと、
前記坩堝の前記フロアの下方に配置されるボトムヒータと、
前記サイドヒータの真下に配置されるヒータシールドと
を備える、インゴット引上げ装置。
【請求項2】
前記サイドヒータは、前記坩堝が前記最も低い位置にある時に前記坩堝の前記フロアの完全に上方にある、
請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項3】
前記ヒートシールドの少なくとも一部は、前記坩堝が前記最も低い位置にある時に前記坩堝の底の上方にある、
請求項
1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項4】
前記ヒートシールドの少なくとも一部は、前記坩堝が前記最も低い位置にある時に前記坩堝の前記フロアの少なくとも一部の下方にある、
請求項
1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項5】
前記ヒートシールドは、前記坩堝が前記終端位置にある時に前記坩堝の前記フロアの完全に下方にある、
請求項
1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項6】
前記サイドヒータの長さは
、350mm以下である、
請求項
1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項7】
前記ヒートシールドの前記引上げ軸に対する長さは、前記ヒートシールドの厚みより大きい、
請求項
1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項8】
前記サイドヒータの少なくとも一部は、前記坩堝が前記最も低い位置と前記終端位置との間を移動する時、前記坩堝の前記側壁と横に整列する、
請求項
1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項9】
前記サイドヒータ及び前記ヒートシールドは、隙間で離間している、
請求項
1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項10】
前記サイドヒータは、前記ヒートシールドから約50mm以下、40mm以下で離間している、又は前記サイドヒータは、隙間によって前記ヒートシールドから離間していない、
請求項
1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項11】
前記インゴット引上げ装置は、前記坩堝を支持するサセプタをさらに備えており、前記ヒートシールドは、前記坩堝が前記終端位置にある時に前記サセプタの完全に下方にある、
請求項
1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項12】
前記坩堝の底と前記サイドヒータの底との間の距離は、前記坩堝が前記最も低い位置にある時に少なくとも約25mmである、
請求項
1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項13】
前記サイドヒータは、厚みを有しており、前記ヒートシールドは、厚みを有しており、前記ヒートシールドの前記厚みは、少なくとも前記サイドヒータの前記厚み、又
は前記サイドヒータの前記厚みの少なくとも1.5
倍である、
請求項
1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項14】
前記ヒートシールドの第1部分は、前記サイドヒータの半径方向内方であり、前記ヒートシールドの第2部分は、前記サイドヒータの半径方向外方である、
請求項13に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項15】
底部断熱材を備えており、
前記底部断熱材及び前記ヒートシールドは、隙間によって離間している、
請求項1に記載のインゴット引上げ装置。
【請求項16】
フロアと前記フロアから延びる側壁とを有する坩堝と、前記坩堝側壁の半径方向外方に配置されるサイドヒータと、前記サイドヒータの真下に配置されるヒートシールドと、を備えるインゴット引上げ装置においてインゴットを製造する方法であって、前記方法は、
前記坩堝が最も低い位置にある時に前記坩堝においてシリコン溶融物を形成すること、ここで前記坩堝が前記最も低い位置にある時に前記サイドヒータが前記坩堝の前記フロアの完全に上方にあり、
前記溶融物を種結晶と接触させること、
前記シリコン溶融物からインゴットを取り出すこと、
前記インゴットが前記シリコン溶融物から取り出されるに従って前記坩堝を上昇させ、前記インゴットが前記溶融物から分離する時に前記坩堝が終端位置にあること、
を備える方法。
【請求項17】
前記ヒートシールドは、前記サイドヒータの真下に配置されている、
請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒートシールドの少なくとも一部は、前記坩堝が前記最も低い位置にある時に前記坩堝の底の上方にある、
請求
項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒートシールドの少なくとも一部は、前記坩堝が前記最も低い位置にある時に前記坩堝の前記フロアの少なくとも一部の下方にある、
請求項
16に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒートシールドは、前記坩堝が前記終端位置に上昇した時に前記坩堝の前記フロアの完全に下方にある、
請求項
16に記載の方法。
【請求項21】
前記サイドヒータの長さは
、350mm以下である、
請求項
16に記載の方法。
【請求項22】
前記インゴット引上げ装置は、底部断熱材を備えており、
前記底部断熱材及び前記ヒートシールドは、隙間によって離間している、
請求項16に記載の方法。
【国際調査報告】