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▶ ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェンの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】カチオン性エポキシ組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20231115BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20231115BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231115BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231115BHJP
   C08G 59/36 20060101ALI20231115BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20231115BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20231115BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20231115BHJP
   C07D 493/04 20060101ALI20231115BHJP
   C07D 303/48 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
C08G59/20
C08G59/40
C08L63/00 C
C08K3/013
C08G59/36
C09J163/00
C09D5/00 D
C09D163/00
C07D493/04 101C
C07D303/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528646
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2021077223
(87)【国際公開番号】W WO2022100927
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】20207701.2
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ブラント,アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ベック,ホルスト
(72)【発明者】
【氏名】ベスラー,アリサ
(72)【発明者】
【氏名】ペラー,ザーシャ
(72)【発明者】
【氏名】デ フリース,ヨハネス ヘラルドゥス
(72)【発明者】
【氏名】キルヒヘッカー,ザラー
(72)【発明者】
【氏名】シュタットラー,ベルンハルト エム
(72)【発明者】
【氏名】ティン,セルゲイ
【テーマコード(参考)】
4C071
4J002
4J036
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071BB01
4C071CC12
4C071EE02
4C071FF15
4C071GG01
4C071HH09
4C071KK02
4C071LL10
4J002CD02W
4J002CD02X
4J002DE078
4J002DE098
4J002DE138
4J002DE148
4J002DE238
4J002DF018
4J002DG048
4J002DJ008
4J002DJ018
4J002DJ038
4J002DJ048
4J002DJ058
4J002DL008
4J002EL046
4J002EL106
4J002EN137
4J002ER027
4J002EU117
4J002EV297
4J002EW177
4J002FD010
4J002FD018
4J002FD140
4J002FD147
4J002FD150
4J002FD200
4J002FD206
4J002GH00
4J002GJ01
4J002HA06
4J036AA00
4J036AJ01
4J036AJ09
4J036DA01
4J036DC26
4J036DC40
4J036DD07
4J036FA01
4J036FA05
4J036FA11
4J036GA02
4J036GA03
4J036GA04
4J036GA21
4J036GA22
4J036GA23
4J036GA24
4J036HA12
4J036JA01
4J036JA06
4J036KA03
4J038DB041
4J038JC38
4J038KA03
4J038KA08
4J038MA13
4J038PB07
4J038PB09
4J038PC02
4J040EC041
4J040HD41
4J040KA16
4J040KA42
4J040LA02
4J040MA02
4J040MB05
4J040NA15
4J040NA19
(57)【要約】
本発明は、a)脂環式エポキシ樹脂;b)硬化剤;およびc)構造I:
を有するバイオベースのエポキシ化合物を含むエポキシ組成物に関する。本発明による組成物は、構造用接着剤、コーティングおよびプライマーとして使用できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)脂環式エポキシ樹脂;
b)硬化剤;および
c)構造I:
【化1】
を有するバイオベースのエポキシ化合物
を含むエポキシ組成物。
【請求項2】
前記構造Iを有するバイオベースのエポキシ化合物はβ異性体である、請求項1に記載のエポキシ組成物。
【請求項3】
前記構造Iを有するバイオベースのエポキシ化合物は、ASTM D6866による100%のバイオベースの炭素原子からなる、請求項1または2に記載のエポキシ組成物。
【請求項4】
構造Iを有する前記バイオベースのエポキシ化合物は、組成物の総重量に基づいて、1~80重量%、好ましくは2~65重量%、より好ましくは3~45重量%、さらにより好ましくは4~30重量%の量で存在する、請求項1~3のいずれかに記載のエポキシ組成物。
【請求項5】
前記脂環式エポキシ樹脂は、
【化2】
およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれかに記載のエポキシ組成物。
【請求項6】
前記脂環式エポキシ樹脂は、組成物の総重量に基づいて、10~98重量%、好ましくは12~85重量%、より好ましくは15~80重量%、さらに好ましくは15~60重量%の量で存在する、請求項1~5のいずれかに記載のエポキシ組成物。
【請求項7】
前記硬化剤は、アンモニウム塩;ピリジニウム塩;イミダゾリウム塩;グアジニウム塩;オキサゾリウム塩;チアゾリウム塩;ヨージニウム(iodinium)塩;スルホニウム塩;およびホスホニウム塩、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~6のいずれかに記載のエポキシ組成物。
【請求項8】
前記硬化剤は、組成物の総重量に基づいて、0.01~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.2~10重量%、さらに好ましくは0.25~5重量%の量で存在する、請求項1~7のいずれかに記載のエポキシ組成物。
【請求項9】
前記組成物は無機フィラーをさらに含む、請求項1~8のいずれかに記載のエポキシ組成物。
【請求項10】
前記無機フィラーは、シリカ、ヒュームドシリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、石膏、ケイ酸カルシウム、タルク、ガラスビーズ、絹雲母活性白土(sericite activated white earth)、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、二水酸化マグネシア(magnesia dihydroxide)、三水酸化アルミナ、硫酸バリウム(bariumsulfat)、白亜、ウォラストナイトおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載のエポキシ組成物。
【請求項11】
前記無機フィラーは、組成物の総重量に基づいて、0.1~80重量%、好ましくは5~65重量%、より好ましくは10~55重量%、さらに好ましくは20~40重量%の量で存在する、請求項9または10に記載のエポキシ組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載のエポキシ組成物の硬化物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載のエポキシ組成物の構造用接着剤、コーティングまたはプライマーとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、a)脂環式エポキシ樹脂;b)硬化剤;およびc)構造I:
【化1】
を有するバイオベースのエポキシ化合物を含むエポキシ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤結合およびポリマーコーティングは、工業製品の組み立ておよび仕上げに一般的に使用されている。これらは、ネジ、ボルト、リベットなどの機械的締結具の代わりに使用され、機械コストを削減し、製造プロセスでの適応性を高めた結合を提供する。接着剤結合は応力を均等に分散し、疲労の可能性を減らし、接合部を腐食性種からシールする。
【0003】
エポキシ接着剤は、主にエポキシモノマーとオリゴマー、およびエポキシ系反応性希釈剤からなる。新しい技術的特性を備えた新しい化学物質が常に必要とされている。例えば、生産ラインとエンドユーザーの健康と安全を改善するための低臭気と低蒸気圧のモノマーである。
【0004】
これらのエポキシモノマーとオリゴマー、およびエポキシ系反応性希釈剤は、従来、石油系の原材料を使用して製造されている。持続可能性を高めるために、エポキシ接着剤のエンドユーザーは現在、性能を損なうことなくバイオベースの含有量を高めた製品を求めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、所望の物理的特性および性能を失うことなく、バイオベースの原材料を増量して得られる新規な化学物質を含むエポキシ接着剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、a)脂環式エポキシ樹脂;b)硬化剤;およびc)構造I:
【化2】
を有するバイオベースのエポキシ化合物を含むエポキシ組成物に関する。
【0007】
本発明は、本発明によるエポキシ組成物の硬化物を包含する。
【0008】
本発明は、本発明によるエポキシ組成物の構造用接着剤、コーティング、またはプライマーとしての使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
以下の文章において、本発明はより詳細に説明される。そのように説明された各態様は、反対のことが明確に示されない限り、任意の他の態様または複数の態様と組み合わせてよい。特に、好ましいまたは有利であると示された任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示された任意の他の特徴または複数の特徴と組み合わせてよい。
【0010】
本発明の文脈において、使用される用語は、文脈でそうでないことを指示されない限り、以下の定義に従って解釈されるものとする。
【0011】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈で明確に異なることが指示されていない限り、単数形および複数形の両方を含む。
【0012】
本明細書で使用される「含む(comprising、comprises)」および「含まれる(comprised of)」という用語は、「含む(including、includesまたはcontaining、contains)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の、引用されていない部材、要素、または方法工程を排除しない。
【0013】
本明細書で使用される場合、「からなる(consisting of)」という用語は、特定されていない要素、成分、部材、または方法工程を除外する。
【0014】
数値の終点の記載には、記載された終点だけでなく、それぞれの範囲内に含まれるすべての数値および分数が含まれる。
【0015】
本明細書で言及されるすべてのパーセンテージ、部、割合などは、特に明記しない限り、重量に基づく。
【0016】
量、濃度、その他の値またはパラメータが、範囲、好ましい範囲、または好ましい上限値および好ましい下限値の形式で表現されている場合、得られた範囲が文脈上明確に言及されているかどうかを考慮することなく、任意の上限または好ましい値と任意の下限または好ましい値とを組み合わせて得られる範囲が、具体的に開示されていると理解されるべきである。
【0017】
本明細書で引用されるすべての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0018】
別段の定義がない限り、技術用語および科学用語を含む、本発明の開示に使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらなる手引きとして、本発明の教示をよりよく理解するために用語の定義が含まれる。
【0019】
本発明は、a)脂環式エポキシ樹脂;b)硬化剤;およびc)構造I:
【化3】
を有するバイオベースのエポキシ化合物を含むエポキシ組成物に関する。
【0020】
前記バイオベースのエポキシ化合物Iは、β異性体であることが好ましい。
【0021】
エポキシ化合物Iは、以下のスキーム1~3に示されるように、レブリン酸(LA)から合成される。以下のスキーム1は、反応蒸留(reactive distillation)によるレブリン酸(LA)からのα-アンゲリカラクトン(α-AL)の合成を示す。
【化4】
【0022】
α-ALからβ-アンゲリカラクトン(β-AL)を得る経路を下記スキーム2に示す。トリエチルアミンを触媒として使用し、100℃、無溶媒でα-ALをβ-ALに異性化する。1時間後にβ-AL:α-AL 80:20の混合物に到達する。ラクトンの二量体化は競合する副反応であるため、反応時間を長くしてもβ-AL収量が多くならないことが見出された。β-ALは、最大37%の収率で得ることができる。
【化5】
【0023】
以下のスキーム3は、ピリジン中のNaOClまたはTHF中のHを使用し、塩基および相間移動剤としてトリトンBと共にβ-ALを酸化することによって、エポキシ化合物Iを合成する方法を示す。
【化6】
【0024】
構造Iを有するバイオベースのエポキシ化合物は、ASTM D6866による100%のバイオベースの炭素原子からなることが好ましい。
【0025】
構造Iを有するバイオベースのエポキシ化合物は、本発明による組成物中に、組成物の総重量に基づいて、1~80重量%、好ましくは2~65重量%、より好ましくは3~45重量%、さらに好ましくは4~30重量%の量で存在し得る。
【0026】
80%を超える量は、ポットライフを短くし得る高い発熱反応を引き起こし得ることから、出願人はこれらの量が好ましいことを見出した。さらに、量が多いと、無機フィラー(強化剤として使用される)が沈降し得る。1%未満の量では、望ましい技術的効果が得られない場合がある。
【0027】
出願人は、構造Iを有するバイオベースのエポキシ化合物をエポキシ系接着剤に添加すると、湿潤に理想的な低粘度が得られ、分注(dispensing)およびポンピングにより容易に適用できることを発見した。さらに、低粘度は、フィラーおよび高粘度樹脂などの成分を使用する可能性という形で、調製物の適応性を高める。実施例のセクションの技術データは、構造Iを有するバイオベースのエポキシ化合物を使用すると、動的機械分析でTgを維持しながら柔軟性(引張試験)が向上していることを示し、これは耐衝撃性に優れている。さらに、構造Iを有するバイオベースのエポキシ化合物は、迅速な硬化を可能にし、洗浄抵抗を改善する。
【0028】
本発明によるエポキシ組成物は、脂環式エポキシ樹脂を含む。好ましくは、前記脂環式エポキシ樹脂は、
【化7】
およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0029】
非限定的な市販の例は、Daicel製のCelloxide 2021、Huntsman製のAraldite CY 170 BD、およびAchiewell製のCER 4221である。
【0030】
脂環式エポキシ樹脂は、本発明によるエポキシ組成物中に、組成物の総重量に基づいて、10~98重量%、好ましくは12~85重量%、より好ましくは15~80重量%、さらに好ましくは15~60重量%の量で存在し得る。
【0031】
本発明によるエポキシ組成物は、脂環式エポキシ樹脂と組み合わせて使用される追加の樹脂を含んでよい。
【0032】
本発明で使用するのに適した追加の樹脂は、例えば、脂肪族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル樹脂およびそれらの混合物である。
【0033】
追加の樹脂は、本発明によるエポキシ組成物中に、組成物の総重量に基づいて、1~60重量%、好ましくは10~50重量%、より好ましくは20~30重量%の量で存在し得る。
【0034】
本発明による組成物は、好ましくはカチオン性硬化剤である硬化剤を含む。好ましくは、前記硬化剤は、アンモニウム塩;ピリジニウム塩;イミダゾリウム塩;グアジニウム塩;オキサゾリウム塩;チアゾリウム塩;ヨージニウム(iodinium)塩;スルホニウム塩;およびホスホニウム塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0035】
特にハードカチオン非求核性アニオン硬化剤を使用してよい。このような硬化剤の例としては、リチウムおよび周期表の第II族からの金属の塩、および非求核酸が挙げられる。このような非求核性酸は、10重量%水溶液として測定した場合、1.0未満のpHを有する。第II族金属塩の例には、カルシウムおよびマグネシウムが含まれる。非求核性酸の例には、過塩素酸、フルオロホウ酸、フルオロヒ酸、フルオロアンチモン酸およびフルオロリン酸が含まれる。
【0036】
本発明で使用される適切な硬化剤のさらなる非限定的な例は、金属フルオロボレート;ビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタン金属塩;アリールジアゾニウム化合物;芳香族ヨードニウム錯塩;アリールヨードニウム塩;第Ia族元素の芳香族オニウム塩;第Va族元素の芳香族オニウム塩;第IIIa-Va族元素のジカルボニルキレート;MF6アニオン中の第VIb族元素のオニウム塩(ここで、Mはリン酸塩、アンチモン塩およびヒ素アリールスルホニウム塩から選択される);芳香族スルホニウム錯塩;ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)-フェニル)スルフィド-ビス-ヘキサフルオロ金属塩、例えばリン酸塩、ヒ酸塩、およびアンチモン酸塩;第II族、第V族および第VI族元素のアリールスルホニウム錯塩;第II族、第V族および第VI族元素のハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウムまたはヨードニウム塩、第II族の芳香族オニウム塩;第VI族の芳香族オニウム塩;アリールスルホニウム塩;アリールスルホニウム錯塩、例えばアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートおよびアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;芳香族ヨードニウム塩、例えばジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート;リチウムテトラフルオロボレート;カルシウムジテトラフルオロボレート;マグネシウムジテトラフルオロボレート;リチウムヘキサフルオロホスフェート;カルシウムジヘキサフルオロホスフェート(calcium di-hexaflourophosphate);マグネシウムジヘキサフルオロホスフェート;リチウムヘキサフルオロアンチモネート;リチウムヘキサフルオロアルセネート;ランタニドトリフレート塩;ランタントリフラート;イッテルビウムトリフラート;トリメトキシボロキシン;トリメトキシボロキシン-アルミニウムアセチルアセトネート;アミン-ホウ素三ハロゲン化錯体;第四級アンモニウム塩;第四級ホスホニウム塩;トリアリールスルホニウム塩;ジアリールヨードニウム塩;ジアゾニウム塩;トリアルコキシボロキシン硬化剤;三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素エーテラート;三酸化硫黄(およびその加水分解生成物);メタンスルホン酸である。
【0037】
カチオン性硬化剤は、上記の塩の1つ、2つの混合物、または2つ以上の混合物を含んでよいことに留意されたい。
【0038】
硬化剤の非限定的な市販の例は、King Industries製のK-Pure CXC-1612およびCXC 1821、Adeka製のSP-150、SP-170およびSP-171、BASF製のIrgacure 250、270およびPAG 290である。
【0039】
硬化剤は、本発明によるエポキシ組成物中に、組成物の総重量に基づいて、0.01~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.2~10重量%、さらに好ましくは0.25~5重量%の量で存在し得る。
【0040】
出願人は、これらのレベルが理想的な硬化をもたらすことを見出し、硬化剤の量が多すぎると、未硬化で柔らかいネットワークと時にアミンの漏出(occational amine leakage)(有毒で悪臭)が発生し、量が少なすぎると同様の結果であるが未反応のエポキシ基が存在することを見出した。
【0041】
本発明によるエポキシ組成物は、無機フィラーをさらに含んでよい。
【0042】
好ましくは、前記無機フィラーは、シリカ、ヒュームドシリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、石膏、ケイ酸カルシウム、タルク、ガラスビーズ、絹雲母活性白土(sericite activated white earth)、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、二水酸化マグネシア、三水酸化アルミナ、硫酸バリウム、白亜、ウォラストナイトおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0043】
非限定的な市販の例は、Wacker製のHDK H13LおよびCabot製のTS720、Ultrabond 5760およびUltrabond 5780である。
【0044】
無機フィラーは、本発明によるエポキシ組成物中に、組成物の総重量に基づいて、0.1~80重量%、好ましくは5~65重量%、より好ましくは10~55重量%、さらに好ましくは20~40重量%の量で存在し得る。
【0045】
80%を超える量では、連続熱硬化性ポリマー(continuous thermoset polymer)が形成されず、多かれ少なかれ連続複合材料(continuous composite material)が形成される可能性があるため、これらの量が好ましいことを出願人は見出した。さらに、カチオン重合の場合、無機粒子の界面に存在する残留水が連鎖停止剤として作用し、重合後の分子量が非常に低くなり、実際には硬化しない生成物になる場合がある。1%未満の量では、望ましい技術的効果が得られないことがある。
【0046】
本発明によるエポキシ組成物は、強化剤をさらに含んでよい。一般に、任意の強化剤を本発明による組成物に使用することができる。
【0047】
本発明で使用される適切な強化剤は、例えば(非限定的な例)
・OHまたは酸末端ポリオール、例えばポリエーテル(PEG、PPG、PTHFおよびVelvetol)およびポリエステル(ポリエステルポリオール、ポリエステルジオール、脂肪酸変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル);
・コアシェル粒子、例えばPMMAシェルおよびスチレン-ポリブタジエンコアまたはポリブタジエンコアまたはポリシロキサンコア;
・非反応性強化剤ゴム材料およびフィラー、例えばキャップされたエラストマーウレタン、ブロック共重合体ゴム、例えばスチレン-ブタジエン-イソプレン系ブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体および他のゴム状ブロック共重合体;
・反応性強化剤ゴム状材料、例えば2つ以上のエポキシ反応性基(例えばアミン末端、OH末端、酸末端など)を有する液体ゴム、例えばブタジエン-アクリロニトリル系ゴム、アクリロニトリル(AN)含有量の異なるカルボキシル末端ブタジエン-アクリロニトリル(CTBN)、アミノ末端ブタジエン-アクリロニトリル(ATBN)、エポキシ末端ブタジエン-アクリロニトリル(ETBN)、およびビニル末端ブタジエン-アクリロニトリル(VTBN);OH末端ポリエーテルポリオール(PEG、PPG、PTHFタイプ、1.3-プロパンジオール系)、カシューナッツ殻液に基づくOH末端ポリエーテル、OHまたは酸末端ポリエステル、OH末端熱可塑性ポリウレタン、HTPB(ヒドロキシル末端ポリブタジエン)、エポキシ化HTPB、ポリファルネセン系ポリオール、アミン末端ポリエーテル(Jeff amines)、エポキシキャップされたエラストマーポリエーテルまたはポリエステル(例えば、二量化脂肪酸に基づくもの);
・強化剤としても機能することができる無機フィラーおよび補強剤、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、タルク、カーボンブラック、織物繊維、ガラス粒子またはガラス繊維、アラミドパルプ、ホウ素繊維、炭素繊維、ケイ酸塩鉱物、マイカ、粉末石英、水和酸化アルミニウム、ベントナイト、ウォラストナイトおよびカオリンなどのクレイを含む様々なアルミナケイ酸塩、ヒュームドシリカ、シリカエアロゲル、ポリウレア化合物、ポリアミド化合物、および金属粉末、例えばアルミニウム粉末または鉄粉末;
・Tgを下げて柔軟性を高めるバイオベースの強化剤、例えばカルダノール系強化剤(OH末端およびエポキシ末端)、バイオベースのポリエーテルポリオール、ポリファルネセンポリオール、バイオベースのポリオールから作られたTPU、croda-B強化剤(エポキシ末端を含むポリエステル)
である。
【0048】
好ましくは、前記強化剤は、コアシェルゴム粒子、2つ以上のエポキシ反応性基を有する液状ゴム、OH末端ポリエーテルポリオール、OH末端熱可塑性ポリウレタン、OH末端ポリエーテル、ポリエーテルウレタン、ポリエーテルゴム変性エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂、ポリエーテルアミンエポキシ樹脂、ゴム粒子、スチレン-ブタジエン-イソプレン系ブロック共重合体、ポリテトラヒドロフラン系強化剤、カードライト強化剤(PEGまたはEO変性カルダノールまたはグリシジル変性カルダノール二量体(2つのエポキシ))、ポリファルネセンポリオール、キャップされたエラストマーウレタン、ブロック共重合体ゴム、エポキシキャップされたエラストマーポリエーテル、エポキシキャップされたエラストマーポリエステル、無機充填剤、補強剤およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0049】
市販の強化剤の例には、Kaneka製のKane Ace MX153が含まれるが、これに限定されない。
【0050】
強化剤は、本発明によるエポキシ組成物中に、組成物の総重量に基づいて、0.1~50重量%、好ましくは5~45重量%、より好ましくは10~40重量%、さらには好ましくは20~40重量%の量で存在し得る。
【0051】
出願人は、本発明による組成物に適した上記の範囲を見出した。強化剤の量が多すぎると、接着特性が低下し、Tg値が低下し、望ましくない粘度になり得る。一方、量が少なすぎると、系が脆くなり、適用できなくなり得る。
【0052】
本発明によるエポキシ組成物は、反応性希釈剤をさらに含んでよい。本発明での使用に適した希釈剤は、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド(DMF)、エチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、スチレン、低分子量ポリスチレン、スチレンオキシド、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンオキシド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、チオジグリコールジグリシジルエーテル、イプシロンカプロラクタム、ブチロラクトン、アクリロニトリルおよびそれらの混合物である。
【0053】
市販の反応性希釈剤の例には、Palmer Holland製のDER 732、DER 736、Exion製のCardura E10P、およびBASF製のEfka 5381が含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
反応性希釈剤は、本発明によるエポキシ組成物中に、組成物の総重量に基づいて0.2~15重量%、好ましくは0.1~7.5重量%の量で存在し得る。
【0055】
基材へのエポキシ樹脂の接着を改善するために、本発明によるエポキシ組成物に接着促進剤を添加してよい。接着促進剤は、基材とコーティングの両方に強く結合する新しい層を界面に形成することによって機能し得る。結果として得られる界面領域は、環境からの化学的攻撃に対してより高い耐性もあり得る。
【0056】
接着促進剤の選択は、組成物が適用される表面のタイプによって決定してよい。とは言うものの、最も一般的な市販の接着促進剤はオルガノシランであり、そのうちの特定のエポキシ官能性オルガノシランのタイプが前述されている。本明細書で有用性を見出し得る接着促進剤のさらなるタイプには、以下が含まれる:有機金属化合物、例えばチタネートおよびジルコネートであり、その具体例にはイソプロピルトリ(N-エチルアミノエチルアミノ)チタネート、テトライソプロピルジ(ジオクチルホスフィト)チタネート、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネートおよびジルコニウムプロピオネート;二価フェノール化合物、例えばカテコールおよびチオジフェノール;多価フェノール、例えばピロガロール、没食子酸、またはタンニン酸;リン酸エステル、例えばトリクレシルホスフェート、および可塑剤中のポリ塩化ビニル粒子の懸濁液であるプラスチゾル。
【0057】
市販の接着促進剤の例には、Evonik製のGlymoおよびMomentive製のSilquestが含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
接着促進剤は、本発明によるエポキシ組成物中に、組成物の総重量に基づいて、0.01~5重量%、好ましくは0.1~2.5重量%の量で存在し得る。
【0059】
本発明によるエポキシ組成物は、導電性フィラーをさらに含んでよい。好ましくは、導電性フィラーは、銀、ニッケル、炭素、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、銅、金、白金、アルミニウム、鉄、亜鉛、コバルト、鉛、スズ合金、銀被覆銅、銀被覆グラファイト、銀被覆ポリマー、銀被覆アルミニウム、銀被覆ガラス、銀被覆炭素、銀被覆窒化ホウ素、銀被覆酸化アルミニウム、銀被覆水酸化アルミニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0060】
導電性フィラーは、本発明によるエポキシ組成物中に、組成物の総重量に基づいて、20~90重量%、好ましくは30~70重量%、より好ましくは40~60重量%の量で存在し得る。
【0061】
本発明によるエポキシ組成物は、熱伝導体をさらに含んでよい。
【0062】
好ましくは、熱伝導体は、アルミナ、三水酸化アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される。同様に、上記の導電性フィラーのいくつかを、熱伝導体として使用してもよい。
【0063】
市販の熱伝導体の例には、Momentive製のPolartherm PT110が含まれるが、これに限定されない。
【0064】
熱伝導体は、本発明によるエポキシ組成物中に、組成物の総重量に基づいて、0.01~5重量%、好ましくは0.2~2.5重量%の量で存在し得る。
【0065】
本発明によるエポキシ組成物は、湿潤剤をさらに含んでよい。エポキシ樹脂と適合する任意の湿潤剤を使用してよい。湿潤剤は、シロキサンベースの湿潤剤であることが好ましい。市販の湿潤剤の例には、Evonik製のDynol 980およびBYK製のBYK W 9010、BYK W 940が含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
湿潤剤は、本発明によるエポキシ組成物中に、組成物の総重量に基づいて、0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.1~1.0重量%の量で存在し得る。
【0067】
本発明は、本発明によるエポキシ組成物の硬化物に関する。本発明によるエポキシ組成物は、23℃、50%rhで2日間、または80℃で30分間の条件で硬化することが好ましい。
【0068】
本発明は、本発明によるエポキシ組成物の構造用接着剤、コーティングまたはプライマーとしての使用を包含する。本発明によるエポキシ組成物は、容易な分注および湿潤のために低粘度が必要とされる用途に特に有用である。特に、電子デバイスの組み立て、自動車の組み立て、自動車の修理、航空宇宙、鉄道および防衛における構造用接着剤として。
【実施例
【0069】
【表1】
【0070】
鋼に対するラップせん断接着力(Lap shear adhesion on steel):
鋼に対するラップせん断接着力は、DIN EN ISO 527-1/-2に従って測定される。
試験片:鋼/鋼(ステンレス、14401、1.5mm)
前処理試験片:酢酸エチル洗浄
接着ラップせん断サンプル:200μmガラスビーズを使用、オーバーラップ:10×25mm
硬化:80℃で30分(オーブン中、2枚の鉄板の間)
【0071】
【表2】
【0072】
DMAは硬化フィルムから測定した:
試験片:35×10×3mm
前処理形態:80℃で30分乾燥
硬化:80℃で30分(オーブン中、2枚の鉄板の間)
【0073】
【表3】
【国際調査報告】