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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-24
(54)【発明の名称】半導体製造装置のための予知保全
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526893
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 US2021058550
(87)【国際公開番号】W WO2022103720
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】63/113,133
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グオ・ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ロハム・サッサン
(72)【発明者】
【氏名】サウラニ・カピル
(72)【発明者】
【氏名】ジン・シャオキャン
(72)【発明者】
【氏名】ダネク・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ・ブライアン・ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ソロモン・ナタン
(57)【要約】
【解決手段】本明細書の様々な実施形態は、半導体製造装置の予知保全のためのシステムおよび方法に関する。いくつかの実施形態において、予知保全システムは、プロセッサを備えており、プロセッサは、製造処理を実行する製造装置に対応する履歴動作条件および履歴製造情報を示すオフラインデータを受信し、オフラインデータを入力として受け取るトレーニング済みモデルを用いて、予測装置健康状態情報を算出し、製造装置の現在の動作条件を示すリアルタイムデータを受信し、リアルタイムデータを入力として受け取るトレーニング済みモデルを用いて、推定装置健康状態情報を算出し、予測装置健康状態情報および推定装置健康状態情報を組み合わせることによって、調整装置健康状態情報を算出し、製造装置の少なくとも1つの構成要素の期待残存耐用期間(RUL)を含む調整装置健康状態情報を提示するよう構成されている。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予知保全システムであって、
メモリと、
プロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、前記メモリ内に格納されたコンピュータ実行可能な命令を実行した時に、
製造処理を実行する製造装置に対応する履歴動作条件および履歴製造情報を示すオフラインデータを受信し、
前記オフラインデータを入力として受け取るトレーニング済みモデルを用いて、前記製造装置に関連する予測装置健康状態情報を算出し、
前記製造装置に対応する現在の動作条件および現在の製造情報を示すリアルタイムデータを受信し、
前記リアルタイムデータを入力として受け取る前記トレーニング済みモデルを用いて、前記製造装置に関連する推定装置健康状態情報を算出し、
前記オフラインデータに基づいて算出された前記予測装置健康状態情報および前記リアルタイムデータに基づいて算出された前記推定装置健康状態情報を組み合わせることによって、前記製造装置に関連する調整装置健康状態情報を算出し、
前記調整装置健康状態情報を提示するよう構成されており、
前記調整装置健康状態情報は、前記製造装置の少なくとも1つの構成要素の期待残存耐用期間(RUL)を含む、システム。
【請求項2】
請求項1に記載の予知保全システムであって、履歴動作条件を示す前記オフラインデータ、および、現在の動作条件を示す前記リアルタイムデータは、前記製造装置の1または複数のセンサから受信されたデータを含む、システム。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載の予知保全システムであって、前記モデルは、物理ベースシミュレーションデータを用いてトレーニングされる、システム。
【請求項4】
請求項3に記載の予知保全システムであって、前記物理ベースシミュレーションデータは、物理センサが配置されている前記製造装置の1または複数の他の空間位置で測定されたセンサデータに基づいて推定された前記製造装置の第1空間位置における推定データを含む、システム。
【請求項5】
請求項1または2のいずれか一項に記載の予知保全システムであって、前記推定データは、前記測定されたセンサデータの補間である、システム。
【請求項6】
請求項1または2のいずれか一項に記載の予知保全システムであって、前記モデルは、前記製造処理を用いて加工された電子デバイスを含む基板に関する測定データを用いてトレーニングされる、システム。
【請求項7】
請求項1または2のいずれか一項に記載の予知保全システムであって、前記プロセッサは、さらに、履歴動作条件を示す前記オフラインデータの特徴および現在の動作条件を示す前記リアルタイムデータの特徴を抽出するよう構成されており、前記トレーニング済みモデルは、前記抽出された特徴を入力として受け取る、システム。
【請求項8】
請求項1または2のいずれか一項に記載の予知保全システムであって、前記プロセッサは、さらに、
現在の動作条件を示す前記リアルタイムデータに基づいて、前記製造装置の異常条件を検出し、
前記製造装置の前記異常条件を検出したことに応答して、前記製造装置に関連する故障のタイプを特定するよう構成されている、システム。
【請求項9】
請求項8に記載の予知保全システムであって、前記製造装置の前記異常条件を検出することは、現在の動作条件を示す前記リアルタイムデータおよび履歴動作条件を示す前記オフラインデータの比較に基づく、システム。
【請求項10】
請求項8に記載の予知保全システムであって、前記製造装置に関連する故障の前記タイプを特定することは、履歴故障データベースを用いて、現在の動作条件を示す前記リアルタイムデータを分類することを含む、システム。
【請求項11】
請求項8に記載の予知保全システムであって、前記製造装置に関連する故障の前記タイプを特定することは、物理ベースシミュレーションデータを用いて、現在の動作条件を示す前記リアルタイムデータを分類することを含む、システム。
【請求項12】
請求項1または2のいずれか一項に記載の予知保全システムであって、前記プロセッサは、さらに、
前記製造装置の前記現在の動作条件の変更と、前記現在の動作条件の前記変更が前記製造装置の前記少なくとも1つの構成要素の前記期待残存耐用期間を変化させる可能性とを特定し、
前記現在の動作条件の前記特定された変更を提示するよう構成されている、システム。
【請求項13】
請求項12に記載の予知保全システムであって、前記製造装置の前記現在の動作条件の前記変更は、物理ベースシミュレーションデータに基づいて特定される、システム。
【請求項14】
請求項1または2のいずれか一項に記載の予知保全システムであって、前記プロセッサは、さらに、
前記製造処理を実行する第2製造装置に関連する第2調整装置健康状態情報を算出し、
前記第2調整装置健康状態情報は、前記第2製造装置が前記製造装置の前記少なくとも1つの構成要素を有することに基づき、
前記第2調整装置健康状態情報に基づいて、前記第2製造装置で用いるために前記製造装置から前記少なくとも1つの構成要素を取り外す旨の提案を提示するよう構成されている、システム。
【請求項15】
請求項14に記載の予知保全システムであって、前記第2調整装置健康状態情報は、前記少なくとも1つの構成要素の前記RULが所定の閾値よりも低いとの判定に応答して算出される、システム。
【請求項16】
請求項15に記載の予知保全システムであって、前記提案は、前記第2製造装置で用いられた場合の前記少なくとも1つの構成要素に対応する第2RULが前記製造装置で用いられた場合の前記少なくとも1つの構成要素の前記RULを超えるとの判定に応答して提示される、システム。
【請求項17】
予知保全システムであって、
メモリと、
プロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、前記メモリ内に格納されたコンピュータ実行可能な命令を実行した時に、
製造処理を実行する製造装置に対応する履歴動作条件および履歴製造情報を示すオフラインデータを受信し、
前記オフラインデータは、前記製造装置に関連する複数のセンサからのオフラインセンサデータを含み、
前記製造装置の構成要素を各々モデル化した1または複数の物理ベースシミュレーションモデルを用いて、複数の物理ベースシミュレーション値を生成し、
前記オフラインデータおよび前記複数の物理ベースシミュレーション値を用いて予測装置健康状態スコアを生成するニューラルネットワークをトレーニングするよう構成されている、システム。
【請求項18】
請求項17に記載の予知保全システムであって、前記ニューラルネットワークをトレーニングするために用いられる各トレーニングサンプルは、入力として前記オフラインデータおよび前記複数の物理ベースシミュレーション値と、目標出力としての測定データとを含む、システム。
【請求項19】
請求項17または18のいずれか一項に記載の予知保全システムであって、前記複数の物理ベースシミュレーション値の中の物理ベースシミュレーション値は、前記複数のセンサの中のセンサに対応する測定の推定値である、システム。
【請求項20】
請求項19に記載の予知保全システムであって、前記複数のセンサの中の前記センサは、前記製造装置の第1位置に配置されており、前記測定の前記推定値は、前記製造装置の第2位置におけるものである、システム。
【請求項21】
請求項17または18のいずれか一項に記載の予知保全システムであって、前記履歴製造情報は、前記製造装置に対応する故障モード影響解析(FMEA)情報を含む、システム。
【請求項22】
請求項17または18のいずれか一項に記載の予知保全システムであって、前記履歴製造情報は、前記製造装置に関する設計情報を含む、システム。
【請求項23】
請求項17または18のいずれか一項に記載の予知保全システムであって、前記履歴製造情報は、品質データベースからリトリーブされた品質情報を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[参照による援用]
PCT要求フォームが、本願の一部として本明細書と同時に提出される。同時に提出されるPCT要求フォームで特定されるように本願が利益または優先権を主張する各出願は、参照によって本明細書にその全体が全ての目的で援用される。
【0002】
半導体デバイス製造のために用いられる半導体装置は、多くの異なる故障点を各々有する何百もの構成要素を含みうるため、そして、システムおよび構成要素の設定点が、装置の動作に起因して時間と共にドリフトしうるため、保全が困難でありうる。保全作業は、しばしば、手動でまたは限られた情報のみで識別される。一部の場合に、現在の保全特定技術では、装置の問題を特定するのがあまりに遅いので、かなりの装置ダウンタイムおよびコストのかかる修理作業が生じる。
【0003】
本明細書で提供されている背景技術の記載は、本開示の背景を概略的に提示するためのものである。ここに名を挙げられている発明者の業績は、この背景技術に記載された範囲において、出願時に従来技術として通常見なされえない記載の態様と共に、明示的にも黙示的にも本開示に対する従来技術として認められない。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、半導体製造装置の予知保全のためのシステムおよび方法が開示されている。
【0005】
開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、予知保全システムが開示されており、そのシステムは、メモリと、プロセッサとを備え、プロセッサは、メモリ内に格納されたコンピュータ実行可能な命令を実行した時に、製造処理を実行する製造装置に対応する履歴動作条件および履歴製造情報を示すオフラインデータを受信し、オフラインデータを入力として受け取るトレーニング済みモデルを用いて、製造装置に関連する予測装置健康状態情報を算出し、製造装置に対応する現在の動作条件および現在の製造情報を示すリアルタイムデータを受信し、リアルタイムデータを入力として受け取るトレーニング済みモデルを用いて、製造装置に関連する推定装置健康状態情報を算出し、オフラインデータに基づいて算出された予測装置健康状態情報およびリアルタイムデータに基づいて算出された推定装置健康状態情報を組み合わせることによって、製造装置に関連する調整装置健康状態情報を算出し、調整装置健康状態情報を提示するよう構成されており、調整装置健康状態情報は、製造装置の少なくとも1つの構成要素の期待残存耐用期間(RUL)を含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、履歴動作条件を示すオフラインデータ、および、現在の動作条件を示すリアルタイムデータは、製造装置の1または複数のセンサから受信されたデータを含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、モデルは、物理ベースシミュレーションデータを用いてトレーニングされる。
【0008】
いくつかの実施形態において、シミュレーションデータは、物理センサが配置されている製造装置の1または複数の他の空間位置で測定されたセンサデータに基づいて推定された製造装置の第1空間位置における推定データを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、推定データは、測定されたセンサデータの補間である。
【0010】
いくつかの実施形態において、モデルは、製造処理を用いて加工された電子デバイスを含む基板に関する測定データを用いてトレーニングされる。
【0011】
いくつかの実施形態において、プロセッサは、さらに、履歴動作条件を示すオフラインデータの特徴および現在の動作条件を示すリアルタイムデータの特徴を抽出するよう構成されており、トレーニング済みモデルは、抽出された特徴を入力として受け取る。
【0012】
いくつかの実施形態において、プロセッサは、さらに、現在の動作条件を示すリアルタイムデータに基づいて、製造装置の異常条件を検出し、製造装置の異常条件を検出したことに応答して、製造装置に関連する故障のタイプを特定するよう構成されている。
【0013】
いくつかの実施形態において、製造装置の異常条件を検出することは、現在の動作条件を示すリアルタイムデータおよび履歴動作条件を示すオフラインデータの比較に基づく。
【0014】
いくつかの実施形態において、製造装置に関連する故障のタイプを特定することは、履歴故障データベースを用いて、現在の動作条件を示すリアルタイムデータを分類することを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、製造装置に関連する故障のタイプを特定することは、物理ベースシミュレーションデータを用いて、現在の動作条件を示すリアルタイムデータを分類することを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、プロセッサは、さらに、製造装置の現在の動作条件の変更と、現在の動作条件の変更が製造装置の少なくとも1つの部品の期待残存寿命を変化させる可能性とを特定し、現在の動作条件の特定された変更を提示するよう構成されている。
【0017】
いくつかの実施形態において、製造装置の現在の動作条件の変更は、物理ベースシミュレーションデータに基づいて特定される。
【0018】
いくつかの実施形態において、プロセッサは、さらに、製造処理を実行する第2製造装置に関連する第2調整装置健康状態情報を算出し、第2調整装置健康状態情報は、第2製造装置が製造装置の少なくとも1つの構成要素を有することに基づき、第2調整装置健康状態情報に基づいて、第2製造装置で用いるために製造装置から少なくとも1つの構成要素を取り外す旨の提案を提示するよう構成されている。
【0019】
いくつかの実施形態において、第2調整装置健康状態情報は、少なくとも1つの構成要素のRULが所定の閾値よりも低いとの判定に応答して算出される。以下では、本開示のこれらおよびその他の特徴について、関連図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
いくつかの実施形態において、提案は、第2製造装置で用いられた場合の少なくとも1つの構成要素に対応する第2RULが製造装置で用いられた場合の少なくとも1つの構成要素のRULを超えるとの判定に応答して提示される。
【0021】
いくつかの実施形態に従って、予知保全システムが提供されており、そのシステムは、メモリと、ハードウェアプロセッサと、を備え、ハードウェアプロセッサは、メモリ内に格納されたコンピュータ実行可能な命令を実行した時に、製造処理を実行する製造装置に対応する履歴動作条件および履歴製造情報を示すオフラインデータを受信し、オフラインデータは、製造装置に関連する複数のセンサからのオフラインセンサデータを含み、製造装置の構成要素を各々モデル化した1または複数の物理ベースシミュレーションモデルを用いて、複数の物理ベースシミュレーション値を生成し、オフラインデータおよび複数の物理ベースシミュレーション値を用いて予測装置健康状態スコアを生成するニューラルネットワークをトレーニングするよう構成されている。
【0022】
いくつかの実施形態において、ニューラルネットワークをトレーニングするために用いられる各トレーニングサンプルは、入力としてオフラインデータおよび複数の物理ベースシミュレーション値と、目標出力としての測定データとを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、複数の物理ベースシミュレーション値の中の物理ベースシミュレーション値は、複数のセンサの中のセンサに対応する測定の推定値である。
【0024】
いくつかの実施形態において、複数のセンサの中のセンサは、製造装置の第1位置に配置されており、測定の推定値は、製造装置の第2位置におけるものである。
【0025】
いくつかの実施形態において、履歴製造情報は、製造装置に対応する故障モード影響解析(FMEA)情報を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、履歴製造情報は、製造装置に関する設計情報を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、履歴製造情報は、品質データベースからリトリーブされた品質情報を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、予知保全システムを示すブロック図。
【0029】
図1B】開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、予知保全システムで利用されるソフトウェアモジュールを示すブロック図。
【0030】
図2A】開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、装置健康状態情報を生成するための技術の一般的な例を示す図。
図2B】開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、装置健康状態情報を生成するための技術の一般的な例を示す図。
図2C】開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、装置健康状態情報を生成するための技術の一般的な例を示す図。
図2D】開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、装置健康状態情報を生成するための技術の一般的な例を示す図。
【0031】
図3A】開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、プロセッサの動作を示すフローチャート。
図3B】開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、プロセッサの動作を示すフローチャート。
【0032】
図4A】開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、静電チャックサブシステムの装置健康状態情報に関する技術の例を示す図。
図4A-1】開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、静電チャックサブシステムの装置健康状態情報に関する技術の例を示す図。
図4B】開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、静電チャックサブシステムの装置健康状態情報に関する技術の例を示す図。
図4C】開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、静電チャックサブシステムの装置健康状態情報に関する技術の例を示す図。
図4D】開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、静電チャックサブシステムの装置健康状態情報に関する技術の例を示す図。
【0033】
図5】本明細書に記載の特定の実施形態を実施するために利用できるコンピュータシステムの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
用語
以下の用語が、本明細書を通して用いられている。
【0035】
「半導体ウエハ」、「ウエハ」、「基板」、「ウエハ基板」、および、「製造途中の集積回路」という用語は、交換可能に用いられてよい。当業者であれば、「製造途中の集積回路」という用語は、集積回路製造の多くの段階の内のいずれかの間の半導体ウエハを意味しうることがわかる。半導体デバイス産業で用いられるウエハまたは基板は、通例、200mm、または、300mm、または、450mmの直径を有する。半導体ウエハに加えて、開示された実施形態を利用しうるその他のワークピースは、プリント回路基板、磁気記録媒体、磁気記録センサ、鏡、光学素子、微小機械素子など、様々な物品を含む。ワークピースは、様々な形状、サイズ、および、材料を有してよい。
【0036】
本明細書で用いられている「半導体デバイス加工動作」は、半導体デバイスの加工時に実行される動作である。典型的には、全体の加工処理は、複数の半導体デバイス加工動作を含み、各動作は、プラズマリアクタ、電気メッキセル、化学機械平坦化ツール、ウェットエッチングツールなど、独自の半導体加工ツールで実行される。半導体デバイス加工動作のカテゴリは、エッチング処理および平坦化処理などのサブトラクティブ法と、蒸着処理(例えば、物理蒸着、化学蒸着、原子層蒸着、電気化学蒸着、無電解析出)などの材料アディティブ法と、を含む。エッチング処理の文脈において、基板エッチング処理は、マスク層をエッチングする処理、または、より一般的には、基板表面上に以前に蒸着されたおよび/またはその他の方法で存在する任意の材料層をエッチングする処理を含む。かかるエッチング処理は、基板における層のスタックをエッチングしうる。
【0037】
「製造装置」とは、製造処理がその中で実行される装置を意味する。製造装置は、しばしば、処理中にワークピースが存在する処理チャンバを有する。典型的には、利用時に、製造装置は、1または複数の半導体デバイス加工動作を実行する。半導体デバイス加工のための製造装置の例は、電気メッキセル、物理蒸着リアクタ、化学蒸着リアクタ、および、原子層蒸着リアクタなどの蒸着リアクタ、ならびに、ドライエッチングリアクタ(例えば、化学エッチングリアクタおよび/または物理エッチングリアクタ)、ウェットエッチングリアクタ、および、アッシャなどのサブトラクティブ処理リアクタを含む。
【0038】
本明細書で用いられている「異常」は、処理、層、または、製品の適切な機能からの逸脱である。例えば、異常は、不適切な温度、不適切な圧力、不適切なガス流量など、不適切な設定点または動作条件を含みうる。
【0039】
いくつかの実施形態において、異常は、処理チャンバなどの製造装置のシステムまたはサブシステムの構成要素の故障につながり、または、故障の原因となりうる。例えば、異常は、静電チャック(ESC)の構成要素の故障につながりうる。より具体的な例として、ESCに関連する故障は、ESCの構成要素(バルブ、ペデスタル、エッジリングなど)の故障を含みうる。一具体例として、故障は、ペデスタルの破壊を含みうる。別の具体例として、故障は、エッジリングの断裂または破損を含みうる。異常が検出されうる処理チャンバのその他のシステムまたはサブシステムは、シャワーヘッド、RF発生器、プラズマ源、などを含みうる。異常は、ランダムまたは規則的でありうる。
【0040】
本明細書で用いられている「測定データ」とは、少なくとも部分的には、処理された基板、または、基板が処理される反応チャンバの欠陥を測定することによって生成されるデータを意味する。測定は、反応チャンバ内での半導体デバイス製造動作の実行中または実行後に行われてよい。いくつかの実施形態において、測定データは、顕微鏡法(例えば、走査電子顕微鏡法(SEM)、透過電子顕微鏡法(TEM)、走査型透過電子顕微鏡法(STEM)、反射電子顕微鏡法(REM)、原子間力顕微鏡法(AFM))または光学測定をエッチングされた基板に実行する測定システムによって生成される。光学測定を用いる場合、測定システムは、測定された光学測定信号から算出することによって、欠陥の位置、形状、および/または、サイズに関する情報を取得しうる。いくつかの実施形態において、測定データは、反射率測定法、ドーム散乱測定法、角度分解散乱測定法、小角X線散乱測定法、および/または、偏光解析法を処理された基板に実行することによって生成される。いくつかの実施形態において、測定データは、例えば、エネルギ分散型X線分光法(EDX)からの分光データを含む。測定データのその他の例は、温度、チャンバ内の環境条件、基板またはリアクタ構成要素の質量の変化、機械力、などのセンサデータを含む。いくつかの実施形態において、仮想測定データが、センサログに基づいて生成されてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、測定データは、測定データの取得に用いられた測定システムまたは条件に関する「メタデータ」を含む。メタデータは、データを記述および/または特徴付ける1セットのラベルと見なされてよい。メタデータ属性の非排他的なリストは、以下を含む:
処理ツール設計および動作の情報(プラットフォーム情報、ロボットアーム設計、ツール材料の詳細、部品情報、処理レシピ情報、など)。
画像キャプチャの詳細(コントラスト、倍率、ぼやけ、ノイズ、明度、など)
スペクトル生成の詳細(X線入射エネルギ、波長、露出/サンプリング時間、化学スペクトル、検出器タイプ、など)。
測定ツールの詳細(欠陥のサイズ、位置、クラス識別、取得時間、回転速度、レーザ波長、エッジエクスクルージョン、明視野、暗視野、斜め入射、垂直入射、レシピ情報、など)。
(in-situまたはex-situでありうる)加工処理からのセンサデータ(キャプチャされたデータのスペクトル域、エネルギ、電力、処理エンドポイント詳細、検出周波数、温度、その他の環境条件、など)。
【0042】
本明細書で用いられている「機械学習モデル」は、データ点の間の関係性の数理モデルを構築するためにトレーニングされたトレーニング済み計算アルゴリズムである。トレーニング済み機械学習モデルは、明示的に定義された関係性を用いて出力を生成するよう明示的にプログラムされることなしに、学習済みの関係性に基づいて出力を生成できる。
【0043】
本明細書に記載されている技術は、多くの異なる目的のために機械学習モデルを利用できる。例えば、トレーニング済み機械学習モデルは、信号(例えば、センサデータ、分光データ、光放射データなどの時系列信号)を入力として受け取り、入力信号の重要な特徴または次元を識別することによって入力信号を小さくする1または複数の特徴を出力として生成する特徴抽出モデルであってよい。より具体的な例として、特徴抽出モデルは、ノイズである可能性が低い時系列信号の重要な特徴を識別することによって時系列信号のノイズを除去するために利用可能である。
【0044】
別の例として、トレーニング済み機械学習モデルは、製造装置または製造装置の構成要素の動作条件を示すデータを入力として受け取り、異常条件下で動作している製造装置の分類を出力として生成する分類器であってもよい。いくつかの実施形態において、異常条件は、システムまたはサブシステムの特定の構成要素の故障、および/または、所望の動作条件(例えば、所望の温度、所望の圧力、所望のガス流量、所望の電力、など)を達成することのシステムまたはサブシステムの失敗、を含みうる。
【0045】
さらに別の例として、トレーニング済み機械学習モデルは、製造装置または製造装置の構成要素の動作条件を示すデータを入力として受け取り、製造装置に関連する予測装置健康状態情報を出力として生成するニューラルネットワークであってもよい。装置健康状態情報については後に詳述されていることに注意されたい。
【0046】
機械学習モデルの例は、オートエンコーダネットワーク(例えば、長・短期記憶(LSTM)オートエンコーダ、畳み込みオートエンコーダ、ディープオートエンコーダ、および/または、任意のその他の適切なタイプのオートエンコーダネットワーク)、ニューラルネットワーク(例えば、畳み込みニューラルネットワーク、深層畳み込みネットワーク、リカレントニューラルネットワーク、および/または、任意のその他の適切なタイプのニューラルネットワーク)、クラスタリングアルゴリズム(例えば、最近傍クラスタリング、K平均クラスタリング、および/または、任意のその他の適切なタイプのクラスタリングアルゴリズム)、ランダムフォレストモデル(深層ランダムフォレストなど)、制限ボルツマンマシン、深層信念ネットワーク(DBN)、リカレントテンソルネットワーク、ならびに、勾配ブーストツリー、を含む。
【0047】
いくつかの機械学習モデルは、「深層学習」モデルとして特徴付けられることに注意されたい。別段の定めのない限りは、本明細書における「機械学習」への任意の言及は、深層学習の実施形態を含む。深層学習モデルは、ニューラルネットワーク(例えば、畳み込みニューラルネットワーク)を用いるなど、様々な形態で実装されてよい。一般に、必ずしもそうとは限らないが、深層学習モデルは、複数の層を含む。各かかる層は複数の処理ノードを含み、層は順次処理を行い、モデル出力に近い層のノードの前に、モデル入力層処理に近い層のノードがある。様々な実施形態において、或る層が次の層にフィードする、などである。
【0048】
様々な実施形態において、深層学習モデルは、かなりの深さを有しうる。いくつかの実施形態において、モデルは、先行層から(または直接入力として)値を受信し、後続層(または最終出力)へ値を出力する処理ノードの3以上(または4以上または5以上または6以上)の層を有する。内側ノードは、しばしば、それらの入力値および出力値がモデルの外側で見えないという意味で「隠されている」。様々な実施形態において、隠されたノードの動作は、動作中には監視も記録もされない。
【0049】
深層学習モデルのノードおよび接続は、それらの数、配列などを再設計することなしに、トレーニングおよび再トレーニングすることができる。
【0050】
上述のように、様々な実施形態において、ノード層が、ニューラルネットワークを集合的に形成しうるが、多くの深層学習モデルがその他の構造およびフォーマットを有する。いくつかの例では、深層学習モデルが、層構造を有しておらず、その場合、多くの層を有するような上記の「深層」の特徴は関係しない。
【0051】
「ベイズ解析」とは、事後確率を決定するために利用可能なエビデンスを用いて、事前確率を評価する統計パラダイムのことである。事前確率は、検査される1または複数のパラメータに関する現在の知識または主観的な選択を反映する確率分布である。事前確率は、蓄積された測定値の変動係数または報告限界を含んでもよい。証拠とは、事前確率の確率分布に影響を与える収集またはサンプリングされた新しいデータでありうる。ベイズの定理またはそのバリエーションを用いて、事前確率および証拠は、事後確率と呼ばれる更新された確率分布を生成するために組み合わせられる。いくつかの実施形態において、ベイズ解析は、新しい証拠と共に事後確率を新しい事前確率として用いて、複数回繰り返すことができる。
【0052】
「製造情報」という用語は、製造装置のタイプ(処理チャンバのタイプなど)に関する情報のことである。いくつかの実施形態において、製造情報は、製造装置に実装されうる特定のレシピを示す情報など、製造装置の利用に関する情報を含みうる。いくつかの実施形態において、製造情報は、手動で生成または専門家によって生成された故障情報(故障モード影響解析(FMEA)情報など)を含みうる。いくつかの実施形態において、品質データベースからの情報など、任意のその他の設計情報が組み込まれてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態において、「製造情報」は、特定の製造装置(特定の処理チャンバなど)に固有の情報を含みうる。例えば、製造情報は、特定の処理チャンバの履歴保全情報(構成要素が以前に交換または修理された特定の日付、故障が以前に発生した特定の日付、および/または、任意のその他の適切な履歴保全情報など)を含みうる。別の例として、製造情報は、次回の保全情報(製造装置の特定のシステムまたはサブシステムの定期保全の日付など)を含みうる。
【0054】
「データ駆動信号」は、製造装置のシステムまたはサブシステムに関連付けられている任意の適切なセンサまたは機器を用いて測定または収集されたデータを意味する。例えば、データ駆動信号は、温度測定値、圧力測定値、分光測定値、光放射測定値、ガス流量測定、および/または、任意のその他の適切な測定値を含みうる。より具体的な例として、いくつかの実施形態において、データ駆動信号は、1または複数のセンサから収集された連続トレースデータ(CTD)を含みうる。データ駆動信号は、(例えば、製造装置が動作されている現在時刻よりも前の時点で以前に収集された)オフラインの信号、または、(例えば、製造装置の動作中に収集された)リアルタイムの信号、のいずれかでありうることに注意されたい。
【0055】
「物理ベースシミュレーション値」とは、シミュレーション(本明細書では一般に「物理ベースアルゴリズム」と呼ばれる)を用いて生成された値を意味する。例えば、いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーション値は、特定の環境内のパラメータのモデルに基づいて計算されたパラメータ(温度、圧力、および/または、任意のその他の適切なパラメータなど)の推定値でありうる。より具体的な例として、物理ベースシミュレーション値は、ESCの温度勾配のモデルに基づいて計算されたESCの特定の空間位置における温度推定値でありうる。
【0056】
物理ベースアルゴリズムは、明示的に定義された物理法則または方程式を用いて、特定の構成要素または物理現象(例えば、特定の材料を含む環境内での温度勾配、特定の寸法を有するチャンバ内での気体の流れ、および/または、任意のその他の適切な物理現象)をモデル化するために、任意の適切な技術を利用できる。例えば、いくつかの実施形態において、物理ベースアルゴリズムは、一連の時間ステップまたは空間ステップにわたって物理現象のシミュレーションを生成する任意の適切な数値モデリング技術を利用できる。
【0057】
「予知保全」とは、製造装置の特徴に基づいておよび/または製造装置の構成要素に基づいて、製造装置または製造装置の構成要素の健康状態を監視および予測することを意味する。いくつかの実施形態において、製造装置は、ESC、シャワーヘッド、プラズマ源、高周波(RF)発生器、ならびに/もしくは、任意のその他の適切なタイプの製造システムまたはサブシステムなど、チャンバのシステムまたはサブシステムを含みうる。いくつかの実施形態において、製造装置の構成要素は、システムおよび/またはサブシステムの個々の構成要素(ペデスタル、ESCのエッジリング、特定のバルブ(例えば、シャワーヘッドにガスを供給するガスボックスのバルブ)、および/または、任意のその他の適切な構成要素など)を含みうる。
【0058】
本明細書に記載されている予知保全システムは、「装置健康状態情報」を生成する任意の適切な解析を実行できる。本明細書で用いられている「装置健康状態情報」は、製造装置の動作状態の解析である。いくつかの実施形態において、装置健康状態情報は、製造装置のシステムまたはサブシステム(例えば、シャワーヘッド、ESC、プラズマ源、RF発生器、ならびに/もしくは、任意のその他の適切なシステムおよび/またはサブシステム)全体のスコアまたは指標を含みうる。追加的または代替的に、いくつかの実施形態において、装置健康状態情報は、システムまたはサブシステムの個々の構成要素(ESCのペデスタル、ESCのエッジリング、特定のバルブ(例えば、シャワーヘッドにガスを供給するガスボックスのバルブ)、および/または、任意のその他の適切な構成要素など)のスコアまたは指標を含みうる。
【0059】
いくつかの実施形態において、製造装置のシステムまたはサブシステムに関連する装置健康状態スコアまたは指標の例は、平均故障時間(MTTF)、平均保全時間(MTTM)、平均故障間隔(MTBF)、および/または、任意のその他の適切な装置健康状態情報を含みうる。
【0060】
いくつかの実施形態において、システムまたはサブシステムの構成要素の装置健康状態スコアまたは指標の例は、構成要素の残存耐用期間(RUL)を含みうる。例えば、いくつかの実施形態において、予知保全システムは、構成要素が将来の特定の時(例えば、10日後、20日後、など)に交換される必要があると決定できる。
【0061】
いくつかの実施形態において、装置健康状態情報は、予知保全システムによって識別される処方的保全提案を含みうる。例えば、いくつかの実施形態において、所定の閾値時間(例えば、10日未満、20日未満、など)よりも短い構成要素の特定のRULを識別したことに応答して、予知保全システムは、構成要素のRULを増やすために実行できる1または複数の行動を特定できる。より具体的な例として、いくつかの実施形態において、予知保全システムは、製造装置によって利用されるレシピへの、構成要素のRULを延ばす可能性がある変更(例えば、温度変更、圧力変更、および/または、任意のその他の適切なレシピ変更)を特定できる。別のより具体的な例として、いくつかの実施形態において、予知保全システムは、別の構成要素の交換が構成要素のRULを延ばす可能性が高いことを特定することができる。一具体例として、予知保全システムは、ESCのエッジリングのRULを延ばすためにESCのバルブを交換することを推奨できる。
【0062】
いくつかの実施形態において、予知保全システムは、差し迫った故障を特定できる。例えば、いくつかの実施形態において、予知保全システムは、製造装置のシステムまたはサブシステムの構成要素の異常を検出できる。いくつかの実施形態において、異常を検出したことに応答して、予知保全システムは、異常の原因を特定するために、任意の適切な根本原因解析またはその他の故障解析を実行できる。例えば、いくつかの実施形態において、予知保全システムは、可能性の高い異常の原因を特定するために、故障解析(例えば、フィッシュボーン分析、5WHY分析、フォルトツリー解析、など)を実行できる。
【0063】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている予知保全システムは、装置の健康状態を予測するために、任意の適切な技術を利用できることに注意されたい。例えば、いくつかの実施形態において、予知保全システムは、機械学習モデル(トレーニングされたニューラルネットワークなど)を用いて、装置健康状態情報を生成できる。
【0064】
より具体的な例として、いくつかの実施形態において、予知保全システムは、(例えば、摩耗および断裂による)装置の典型的な劣化速度を仮定して、以前に測定された装置の特徴(本明細書ではオフライン情報と呼ぶ)に基づいて、装置の健康状態を示す予測装置健康状態情報を生成できる。さらにこの具体的な例について、いくつかの実施形態において、予知保全システムは、リアルタイムデータ(例えば、装置に関連付けられたセンサから収集されたリアルタイムデータ、リアルタイム分光情報、装置のリアルタイム製造条件、および/または、任意のその他の適切なリアルタイムデータ)に基づいて、装置の現在の健康状態の推定を示す推定装置健康状態情報を生成できる。またさらにこの具体的な例について、いくつかの実施形態において、予知保全システムは、オフラインデータに基づく予測健康状態情報およびリアルタイムデータに基づく推定健康状態情報を組み合わせた調整装置健康状態情報を生成できる。いくつかの実施形態において、調整健康状態情報は、その後、予知保全システムによって後の装置健康状態情報の計算に利用されうる現在の健康状態情報としてフィードバックされうる。
【0065】
いくつかの実施形態において、処方的保全は、どの条件または設計特性が構成要素を故障または劣化させたのかを決定するための故障解析を含む。予防保全のかかる態様は、構成要素の故障または劣化の根本原因を特定するための事後分析を含んでよい。予防保全は、構成要素を再設計する助けとして利用されてよい。
【0066】
いくつかの実施形態において、装置健康状態情報を生成する機械学習モデルは、任意の適切な入力を利用できることに注意されたい。例えば、入力は、データ駆動信号(例えば、製造装置に関連付けられた1または複数のセンサからのデータ)、レシピ情報、履歴故障情報(例えば、FMEA情報、製造装置の以前の保全活動を示す保全ログ、など)、測定データ、物理ベース信号(例えば、特定のシステムまたはサブシステムをモデル化する物理ベースアルゴリズムを用いて生成されたシミュレート値など)、および/または、任意のその他の適切な入力、を含みうる。
【0067】
概説
本明細書に記載の予知保全システムは、ウエハホルダ(例えば、ESC)、RF発生器、プラズマ源、シャワーヘッドなど、半導体加工装置の予知保全に利用できる。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の予知保全システムは、故障までの見込み時間もしくはシステムまたはサブシステムが保全を必要とするまでの見込み時間を示すために、システムまたはサブシステムの現在の装置健康状態を評価できる。別の例として、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の予知保全システムは、個々の構成要素の見込みRULを推定するために、個々の構成要素(例えば、個々のエッジリング、個々のバルブ、など)を評価できる。いくつかの実施形態において、故障までの時間または保全が必要になるまでの時間を予測することにより、本明細書に記載の予知保全システムは、不測の故障による製造装置のダウンタイムを大幅に削減することを可能にしうる。さらに、本明細書に記載の予知保全システムは、すぐに故障する可能性があると特定された構成要素を故障前に交換することを可能にするジャストインタイムの部品注文を可能にしうる。
【0068】
予知保全指標を生成することに加えて、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の予知保全システムは、処方的保全提案を生成できる。例えば、予知保全システムは、特定の構成要素が所定の期間内(例えば、今後10日以内)に故障する可能性があることを特定でき、さらに、構成要素の寿命を延ばす可能性のある提案(別の構成要素の交換、製造装置によって実施されるレシピの変更、など)を特定できる。処方的保全提案を生成することにより、本明細書に記載の予知保全は、製造装置を定期保全の予定の合間により長期間にわたって利用することを可能にすることで、装置の効率を向上させうる。
【0069】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の予知保全システムは、製造装置の異常または差し迫った故障を特定できる。例えば、ESCのペデスタルプラテンの亀裂、RF発生器における過剰電力、シャワーヘッドのレベリング異常などの異常が、現在の加工処理中に検出されうる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の予知保全システムは、可能性のある故障と、可能性のある故障原因とを特定できる。いくつかの実施形態において、故障解析を自動化することにより、本明細書に記載の予知保全システムは、故障解析に必要な手動時間を短縮することで、効率を向上させうる。
【0070】
いくつかの実施形態において、予知保全指標、処方的保全提案、および、故障解析は、機械学習モデルを用いて生成されうる。機械学習モデルは、製造装置の以前の使用からの履歴情報を含むオフライン情報と、製造装置の現在の利用時の現在のデータを含むリアルタイム情報との両方を用いてトレーニング可能である。オフラインおよびリアルタイムの情報を組み合わせることにより、製造装置のより正確なリアルタイムの状態を生成するために、現在のリアルタイム情報に基づいて、装置の既知の劣化に基づいて予測された装置健康状態を調整できる。
【0071】
いくつかの実施形態において、機械学習モデルは、物理ベースシミュレーション値および/またはデータ駆動信号を含むことができる。いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーション値は、様々な物理現象の物理ベースシミュレーションの結果でありうる。いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーション値は、装置健康状態情報を生成するモデルを生成し、異常または障害の根本原因を特定し、特定の構成要素のRULを延ばすために変更可能なパラメータを特定し、および/または、任意のその他の適切な目的を有するモデルをトレーニングするために利用されうる。いくつかの実施形態において、データ駆動信号は、処理チャンバの測定された特徴を示すために機械学習モデルによって利用されうる測定データ(例えば、センサデータ、分光データ、光放射データ、など)である。
【0072】
予知保全システム
図1Aは、開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、予知保全システムを示す概略図である。いくつかの実施形態において、予知保全システムは、ESC、シャワーヘッド、RF発生器、プラズマ源、および/または、任意のその他の適切なシステムまたはサブシステムなど、製造装置システムまたはサブシステムに関して動作可能である。いくつかの実施形態において、予知保全システムは、任意の適切な機能(例えば、任意の適切なアルゴリズムを実行する、任意の適切なソースからデータを受信する、任意の適切な出力を生成する、など)を実行できるコンピュータシステムを用いて実装可能である。いくつかの実施形態において、コンピュータシステムは、任意の適切なデバイス(例えば、サーバ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、など)を含んでよく、図5で詳述するように、任意の適切なハードウエアを含んでよい。
【0073】
図1Aに示されているブロックに関連するより詳細な技術については、図1Bに関連して後に詳述されていることに注意されたい。
【0074】
オフラインデータ信号102が受信されうる。いくつかの実施形態において、オフラインデータ信号102は、製造装置の以前の動作中に収集された任意の適切なデータを含みうる。上述のように、オフラインデータ信号102は、製造装置に関連付けられている任意の適切なセンサ(温度センサ、位置センサ、圧力センサ、力センサ、ガス流量センサ、および/または、任意の適切なタイプのセンサ)から収集されたデータ、分光データ、光放射データ、および/または、製造装置の以前の動作中に収集された任意のその他の適切な測定値、を含みうる。いくつかの実施形態において、オフラインデータ信号102は、一連の時系列データシーケンス(温度データ時系列、圧力データ時系列、など)でありうる。オフラインデータ信号102は、過去1ヶ月以内、過去2ヶ月以内など、任意の適切な期間にわたって収集されたものであってよい。
【0075】
オフラインデータ信号102は、導出オフラインデータ104を生成するために利用されうる。いくつかの実施形態において、導出オフラインデータ104は、オフラインデータ信号102を表す特徴に対応しうる。いくつかの実施形態において、導出オフラインデータ104は、特徴抽出モデル(図1Bに示し図1Bに関連して後述するモデルなど)を用いて生成されうる。一部の場合に、オフラインデータ信号102は、特徴抽出もその他の導出処理もなしに利用される。かかる場合、導出オフラインデータ104は、オフラインデータ信号102である。
【0076】
オフライン製造情報106が受信されうる。
【0077】
いくつかの実施形態において、オフライン製造情報106は、レシピ情報を含んでよい。例えば、いくつかの実施形態において、レシピ情報は、製造装置上に典型的に実装される1または複数のレシピを示してよく、各レシピは、処理の工程、処理で利用される設定点、および/または、処理で利用される材料を示してよい。
【0078】
いくつかの実施形態において、オフライン製造情報は、故障モード情報を含んでよい。例えば、いくつかの実施形態において、故障モード情報は、製造装置に関連する潜在的な故障と、潜在的な故障の各々の可能性のある原因とを示すFMEA情報を含んでよい。別の例として、いくつかの実施形態において、故障モード情報は、機械学習モデルがトレーニングされている特定の製造装置に関連する故障履歴を含んでもよい。より具体的な例として、履歴故障情報は、以前に故障した特定の構成要素と、各構成要素が故障した日付および/または故障の理由とを示しうる。別のより具体的な例として、いくつかの実施形態において、履歴故障情報は、特定の構成要素が以前に交換された日付を含んでもよい。いくつかの実施形態において、故障モード情報は、異なる構成要素の故障頻度を示す品質情報、特定の構成要素の典型的な保全スケジュール、および/または、任意のその他の適切な品質情報を含みうる。
【0079】
いくつかの実施形態において、オフライン製造情報は、製造装置のタイプに関する設計情報を含んでもよい。いくつかの実施形態において、設計情報は、製造装置の特定の構成要素の仕様を含みうる。
【0080】
いくつかの実施形態において、オフライン製造情報は、機械学習モデルがトレーニングされている特定の製造装置の保全ログ情報を含んでもよい。例えば、保全ログは、製造装置の特定の構成要素が交換された日付を示しうる。別の例として、保全ログは、特定の構成要素の期待寿命を示しうる。さらに別の例として、保全ログは、特定のシステムまたはサブシステムが以前に修理された日付を示しうる。またさらに別の例として、保全ログは、特定のシステムまたはサブシステムの次の修理日を示しうる。
【0081】
最近装置健康状態情報108が受信または算出されうる。いくつかの実施形態において、最近装置健康状態情報108は、(例えば、予知保全システムの以前の推論から)最近算出された装置健康状態情報を含む任意の適切な指標を含んでよい。上述のように、最近装置健康状態情報108は、システム全体またはサブシステム全体の健康状態を示すスコアまたは指標(MTTF、MTTM、MTBF、および/または、任意のその他の適切なシステムまたはサブシステムの指標、など)を含んでよい。さらに、いくつかの実施形態において、最近装置健康状態情報108は、システムまたはサブシステムの任意の適切な個々の構成要素の健康状態を示す情報(個々の構成要素のRULなど)を含んでもよい。
【0082】
いくつかの実施形態において、最近装置健康状態情報108は、信頼性情報110を用いて算出されてよい。いくつかの実施形態において、信頼性情報110は、製造装置の最近の性能を示す性能情報(測定データなど)を含んでよい。いくつかの実施形態において、測定データは、製造されたウエハの欠陥の指標、および/または、任意のその他の適切な性能問題の指標を含んでよい。いくつかの実施形態において、最近装置健康状態情報108は、ニューラルネットワーク(例えば、畳み込みニューラルネットワーク、深層畳み込みニューラルネットワーク、リカレントニューラルネットワーク、および/または、任意のその他の適切なタイプのニューラルネットワーク)などの任意の適切なトレーニング済み機械学習モデルを用いて、信頼性情報110から算出されうる。いくつかの実施形態において、機械学習モデルは、入力としての測定データと、(例えば、故障または異常が測定データに関連しているか否かを示す)手動注釈付き性能指標とを含むトレーニングサンプルを用いて、トレーニングされうる。
【0083】
物理ベースシミュレーション値112が生成されうる。いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーション値112は、物理ベースアルゴリズムを用いて生成された任意の適切な値であってよい。例えば、物理ベースシミュレーション値112は、シミュレートされた温度値、シミュレートされた圧力値、シミュレートされた力値、シミュレートされた分光値、および/または、任意のその他の適切なシミュレートされた値、を含みうる。
【0084】
いくつかの実施形態において、物理ベースの値は、測定されたパラメータに対応するシミュレートされた値であってよい。例えば、熱電対が特定の位置の温度を測定する場合に、物理ベースアルゴリズムは、熱電対から或る程度(例えば、5cm、10cm、など)離れた位置の温度を推定する物理ベースシミュレーション値を生成できる。別の例として、圧力センサが特定の位置の圧力を測定する場合に、物理ベースアルゴリズムは、圧力センサから或る程度(例えば、5cm、10cm、など)離れた位置の圧力を推定する物理ベースシミュレーション値を生成できる。いくつかの実施形態において、物理ベースアルゴリズムは、仮想センサからのデータを表すシミュレート値を生成できることに注意されたい。いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーション値は、物理測定値(メッシュにまたがる物理測定値など)から補間された値であってよい。追加的または代替的に、いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーション値は、物理測定値から回帰を用いて算出された値であってもよい。
【0085】
装置健康状態機械学習モデル114は、導出オフラインデータ104、オフライン製造情報106、最近装置健康状態情報108、および、物理ベースシミュレーション値112を用いてトレーニングされうる。
【0086】
トレーニングされると、装置健康状態機械学習モデル114は、後に詳述するように、推定装置健康状態情報および/または予測装置健康状態情報を生成するために利用可能になることに注意されたい。
【0087】
リアルタイムデータ信号116が受信されうる。いくつかの実施形態において、リアルタイムデータ信号116は、製造装置に関連付けられている任意の適切なセンサ(温度センサ、位置センサ、圧力センサ、力センサ、ガス流量センサ、および/または、意の適切なタイプのセンサ)から収集されたデータ、分光データ、光放射データ、および/または、製造装置の現在の動作中に収集された任意のその他の適切な測定値、を含みうる。いくつかの実施形態において、リアルタイムデータ信号116は、一連の時系列データシーケンス(温度データ時系列、圧力データ時系列、など)でありうる。
【0088】
導出リアルタイムデータ118が、リアルタイムデータ信号116を用いて生成されうる。例えば、いくつかの実施形態において、導出リアルタイムデータ118は、リアルタイムデータ信号116に適用される特徴抽出モデル(図2Aに示し図2Aに関連して後述するモデルなど)を用いて生成されうる。一部の場合に、リアルタイムデータ信号116は、特徴抽出もその他の導出処理もなしに利用される。かかる場合、導出リアルタイムデータ118は、リアルタイムデータ信号116である。
【0089】
異常検出モデル120は、製造装置の現在の状態で異常条件を検出することによって、製造装置の差し迫った故障を検出できる。いくつかの実施形態において、異常検出モデル120は、図1Aに示すように、そして、図2Bに関連して後に詳述するように、物理ベースシミュレーション値112、導出オフラインデータ104、および、導出リアルタイムデータ118を入力として受け取りうる。
【0090】
いくつかの実施形態において、異常検出モデル120によって異常が検出された場合に、故障分離解析モデル122が、検出された異常の解析を実行しうる。いくつかの実施形態において、故障分離解析モデル122は、システムまたはサブシステムの特定の故障(ESCのペデスタルの欠けまたは亀裂、シャワーヘッドに関連するフレーキング、RF発生器に関連する過剰電力または無電力、など)を特定できる。さらに、いくつかの実施形態において、故障分離解析モデル122は、特定された故障の根本原因を特定できる。いくつかの実施形態において、故障分離解析モデル122は、図1Aに示すように、そして、図2Cに関連して後に詳述するように、導出リアルタイムデータ118および物理ベースシミュレーション値112を入力として受け取りうる。
【0091】
リアルタイム製造情報124が受信されうる。いくつかの実施形態において、リアルタイム製造情報124は、現在の処理情報(製造装置によって現在実施されているレシピなど)を示しうる。
【0092】
推定装置健康状態情報126が、トレーニングされた装置健康状態機械学習モデル114への入力として導出リアルタイムデータ118およびリアルタイム製造情報124を用いて生成されうる。いくつかの実施形態において、推定装置健康状態情報126は、実施されている現在の処理と、処理の実行中に収集されているリアルタイムデータとに基づいて、製造装置の推定現在健康状態を示しうる。
【0093】
予測装置健康状態情報128が、導出オフラインデータ104、オフライン製造情報106、最近装置健康状態情報108、および/または、物理ベースシミュレーション値112を、トレーニングされた装置健康状態機械学習モデル114への入力として用いて生成されうる。いくつかの実施形態において、予測装置健康状態情報128は、製造装置および/または製造装置の構成要素の典型的な劣化による製造装置の現在の製造装置の予測健康状態を示しうる。
【0094】
調整装置健康状態情報130が、推定装置健康状態情報126(例えば、リアルタイムデータに基づく装置健康状態情報)および予測装置健康状態情報128(例えば、オフラインデータに基づく装置健康状態情報)を組み合わせることによって生成されうる。例えば、いくつかの実施形態において、調整健康状態情報130は、任意の適切な技術(ベイズ推論など)を用いて推定装置健康状態情報126および予測装置健康状態情報128を組み合わせることで、生成されうる。より具体的な例として、調整装置健康状態スコアまたは指標が、ベイズ推論を用いて、推定装置健康状態情報126に関連付けられた1または複数の装置健康状態スコアまたは指標を、予測装置健康状態情報128に関連付けられた対応するスコアまたは指標と組み合わせることによって、算出されうる。
【0095】
上述の推定装置健康状態情報、予測装置健康状態情報、および、調整装置健康状態情報に関して、装置健康状態情報は、任意の適切な情報または指標を含みうることに注意されたい。例えば、装置健康状態情報は、システムまたはサブシステム(ESC、プラズマ源、シャワーヘッド、RF発生器、および/または、任意のその他の適切なシステムまたはサブシステムなど)に関連付けられたスコアまたは指標を含みうる。システムまたはサブシステムのスコアまたは指標は、MTTF、MTTM、MTBF、および/または、任意のその他の適切な指標を含みうる。
【0096】
別の例として、いくつかの実施形態において、装置健康状態情報は、システムまたはサブシステムの個々の構成要素(ESCのエッジリング、特定のバルブ(例えば、シャワーヘッドにガスを供給するガスボックスのバルブ)、および/または、任意のその他の適切な構成要素など)に関するスコアまたは指標を含みうる。構成要素のスコアまたは指標は、構成要素が故障するまでに構成要素を利用できる予測残り時間を示す構成要素のRULを含みうる。
【0097】
さらに別の例として、いくつかの実施形態において、装置健康状態情報は、処方的保全提案を含みうる。より具体的な例として、特定の構成要素のRULが所定の閾値よりも短い場合(例えば、10日未満、20日未満、など)、および/または、構成要素の交換予定前にRULが終了する場合、処方的保全提案が生成されうる。続けてこの具体的な例について、いくつかの実施形態において、処方的保全提案は、別の構成要素を交換する提案を含んでもよく、ここで、別の構成要素の交換は、故障する可能性があると特定された構成要素のRULを延ばす可能性がある。
【0098】
いくつかの実施形態において、処方的保全提案は、レシピパラメータを変更する提案を追加的または代替的に含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態において、ガス流量、温度変更時間ウィンドウ、および/または、任意のその他の適切なレシピパラメータの変更が特定されてよく、レシピパラメータの変更が、故障の可能性があると特定された構成要素のRULを延ばす可能性があるように特定される。いくつかの実施形態において、処方的保全提案は、故障の可能性があると特定された構成要素が交換されるまで、製造装置による特定のレシピの利用を中断する提案を含んでもよい。
【0099】
処方的保全提案が特定されている場合、いくつかの実施形態において、1または複数の提案が自動的に実施されてよいことに注意されたい。例えば、レシピパラメータの変更(例えば、異なるガス流量が用いられる、異なる温度設定が用いられる、など)が特定されている場合、その変更は、ユーザ入力なしに自動で実施されてよい。あるいは、いくつかの実施形態において、処方的保全提案を示す任意の適切な警告または通知が、(例えば、装置の保全を担当するユーザへ)提示されてもよい。
【0100】
図1Bによると、本明細書に記載の予知保全システムで利用される異なるモデルの入力および出力を示すブロック図の一例が、開示されている主題のいくつかの実施形態に従って示されている。
【0101】
いくつかの実施形態において、特徴抽出モデル150、異常検出分類器152、故障分離解析モデル156、トレーニング済み装置健康状態情報ニューラルネットワーク160、および/または、ベイズモデル162は各々、任意の適切なトレーニングセットを用いてトレーニングされた機械学習モデルであってよいことに注意されたい。各機械学習モデルは、任意の適切なタイプのモデルであってよく、任意の適切なアーキテクチャを有しうる。
【0102】
特徴抽出モデル150は、データ信号の特徴を抽出するために利用されうる。いくつかの実施形態において、データ信号は、センサデータ(例えば、温度データ、圧力データ、力データ、位置データ、および/または、その他の適切なセンサデータ)、分光データ、光放射データ、および/または、任意のその他の適切なデータなど、任意の適切なタイプの測定データを含みうる。次いで、特徴抽出モデル150は、導出データ信号を生成するために、データ信号の特徴を抽出しうる。例えば、特徴抽出モデル150は、トレーニングされると、オフラインデータ信号を入力として受け取ることができ、導出オフラインデータ信号を出力として生成することができる。別の例として、特徴抽出モデル150は、トレーニングされると、リアルタイムデータ信号を入力として受け取ることができ、導出リアルタイムデータ信号を出力として生成することができる。
【0103】
いくつかの実施形態において、特徴抽出モデル150は、任意の適切なタイプの機械学習モデル(LSTMオートエンコーダ、深層畳み込みニューラルネットワーク、回帰モデル、など)であってよい。いくつかの実施形態において、特徴抽出モデル150は、特徴抽出前に、主成分分析(PCA)、最小平均二乗誤差(MMSE)フィルタリング、および/または、任意のその他の適切な次元縮小技術を利用できる。
【0104】
いくつかの実施形態において、例えば、他のモデルによる利用の前にデータ信号がノイズ除去されない場合、特徴抽出モデル150は省略されてもよいことに注意されたい。これは、利用可能な処理能力が比較的単純または疎な入力データに容易に対応できる場合に適切でありうる。
【0105】
図2Aによると、オフラインデータ信号から導出オフラインデータを生成する一例の概略図が、開示されている主題のいくつかの実施形態に従って示されている。図2Aに示すように、オフラインデータ信号セット202が、オフライン導出データセット204に変換されてよく、導出データ204は、N個の特徴を含み、各々が、異なる時点での特徴の大きさを表す値を有する。例えば、データ駆動信号セット202は、以下の値を持つN個の特徴のセットに変換されうる:{X11、X12、・・・X1T;X21、X22、・・・X2T;XN1、XN2、・・・XNT}、ここで、Xijは、時刻jにおけるi番目の特徴の値である。いくつかの実施形態において、導出オフラインデータ204は、ノイズである可能性の低いデータ駆動信号202の顕著な特徴を識別することによってあらゆるノイズが除去されたオフラインデータ信号202を効果的に表しうることに注意されたい。
【0106】
図2Aは、オフラインデータ信号との関連で上に記載されているが、上述の技術は、リアルタイムデータ信号の特徴抽出にも同様に適用可能であることに注意されたい。
【0107】
図1Bに戻ると、異常検出分類器152は、導出オフラインデータ信号、導出リアルタイム信号、および、物理ベースシミュレーション値を入力として受け取ることができ、導出リアルタイム信号が異常条件を表しているか否かを判定できる。いくつかの実施形態において、異常検出分類器152は、導出リアルタイムデータ信号が異常を表す可能性に対応する検出異常分類154を生成できる。
【0108】
いくつかの実施形態において、異常検出モデル152は、導出データを異常または非異常として分類する任意の適切なタイプのモデルであってよい。例えば、いくつかの実施形態において、異常検出モデル216は、クラスタリングアルゴリズム(例えば、最近傍アルゴリズム、K平均アルゴリズム、および/または、任意のその他の適切なクラスタリングアルゴリズム)、LSTMオートエンコーダ、深層畳み込みニューラルネットワーク、RBM、DBN、および/または、任意のその他の適切なタイプのモデルであってよい。
【0109】
図2Bによると、異常を検出する一例の概略図が、開示されている主題のいくつかの実施形態に従って示されている。図に示すように、リアルタイムデータ信号212が、例えば図2Aに関連して上述した技術を用いて、導出リアルタイムデータ214へ変換されうる。
【0110】
いくつかの実施形態において、導出オフラインデータ204(例えば、図2Aに示し図2Aに関連して上述したデータ)および導出リアルタイムデータ214は、導出リアルタイムデータ214を異常または非異常として分類する出力を生成する異常検出モデル152への入力として利用されうる。
【0111】
いくつかの実施形態において、異常検出モデル152は、導出リアルタイムデータ214を導出オフラインデータ204と比較することによって、導出リアルタイムデータ214が異常条件を表すか否かを効果的に判定できる。例えば、特定の導出オフラインデータ204は、この値には、導出リアルタイムデータ214の異常を検出するために導出リアルタイムデータ214と比較される「ゴールデン値」として扱われてよい。
【0112】
図1Bに戻ると、検出異常分類154が導出リアルタイムデータ信号の異常を示唆する場合に、故障分離解析モデル156は、故障解析158を生成しうる。いくつかの実施形態において、故障分離解析モデル158は、検出された異常に関連する起こりそうな故障を示唆しうる。さらに、いくつかの実施形態において、故障分離解析モデル158は、1または複数の特定された故障の可能性のある原因を示唆しうる。
【0113】
故障分離解析モデル156は、任意の適切なタイプの機械学習モデル(深層畳み込みニューラルネットワーク、クラスタリングアルゴリズム(例えば、最近傍アルゴリズム、K平均アルゴリズム、および/または、任意のその他の適切なクラスタリングアルゴリズム)、および/または、任意のその他の適切なタイプの機械学習モデルなど)であってよい。
【0114】
図2Cによると、検出された異常条件の故障解析の概略図が、開示されている主題のいくつかの実施形態に従って示されている。
【0115】
図に示すように、故障分離解析モデル156は、リアルタイム導出データ214、履歴故障観察データベース250からの情報、および、物理ベースシミュレーション値112を入力として受け取ることができ、以下を出力として生成できる:1)異なる故障の可能性の分布254;および、2)故障の原因の可能性256。
【0116】
いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーション値112は、任意の適切な方法で故障分離解析モデル156によって利用されうる。例えば、物理ベースシミュレーション値は、特定のシステムまたはサブシステムの故障モードを特定または規定するために利用されうる。より具体的な例として、物理ベースシミュレーション値は、特定の構成要素(例えば、ESCのペデスタル、ESCのエッジリング、など)が、特定の物理条件(高い温度勾配、高いガス流量、高い圧力、など)の下で亀裂または破壊を起こしうることを特定できる。一具体例として、いくつかの実施形態において、故障につながりうるパラメータの過剰な値をシミュレートすることによって、故障を加速させるように、物理ベースシミュレーションが実行されうる。続けてこの具体例について、通常の動作温度に比べて高い温度で物理ベースシミュレーションを実行できることにより、(例えば、ペデスタルに亀裂または欠けが発生する可能性があること、バルブが故障する可能性があること、など)故障する可能性のある特定の構成要素の特定が可能になる。さらに、この具体例について、いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーションは、次いで、特定された構成要素の故障までの時間を変えることのできるパラメータ(例えば、温度ランプ速度、ヒータ比、など)を特定するために利用されてよい。
【0117】
いくつかの実施形態において、履歴故障観察データベース250は、任意の適切な情報を含みうる。例えば、いくつかの実施形態において、履歴故障観測データベース250は、製造装置の以前の故障の近くの時点に収集された測定値(温度データ、圧力データ、分光データ、光放射データ、ガス流量データ、および/または、任意のその他の適切なタイプの測定、など)を含みうる。別の例として、いくつかの実施形態において、履歴故障観察データベース250は、特定の構成要素の故障の原因を示す情報を含みうる。より具体的な例として、いくつかの実施形態において、履歴故障観察データベース250は、特定の構成要素の亀裂が特定の温度条件(例えば、温度の大きい変化など)によって特定の回数または特定の回数の割合だけ引き起こされたことを示しうる。いくつかの実施形態において、特定の構成要素の故障の原因を示す情報が、専門家から提供されうることに注意されたい。
【0118】
いくつかの実施形態において、異なる故障の可能性の分布254は、導出リアルタイムデータ214に関連する任意の適切な数の潜在的な故障を含みうる。図2Cに示すように、各潜在的な故障は、潜在的な故障が導出リアルタイムデータ214に当てはまる可能性(故障分離解析モデル156によって割り当てられたもの)に関連付けられうる。
【0119】
いくつかの実施形態において、故障の原因の可能性256は、各原因の可能性(故障分離解析モデル156によって各々特定され割り当てられたもの)に関連して、任意の適切な数の故障原因を含みうる。いくつかの実施形態において、特定された潜在的な故障の一部について、故障の原因が特定されうることに注意されたい。例えば、故障の原因は、可能性の高い上位N個の潜在的な故障について特定されてよい。より具体的な例として、リアルタイム導出データ214に関連する最も可能性の高い故障がエッジリングの亀裂である場合、故障の原因の可能性256は、エッジリングに影響を与える製造装置によって実施された処理またはレシピに関連する原因、エッジリングの保全および/または修理に関連する原因、ならびに/もしくは、エッジリングの設計に関連する原因など、エッジリングの亀裂に対する1セットの可能性のある原因を特定しうる。
【0120】
図1Bに戻ると、トレーニング済み装置健康状態情報モデル160は、装置健康状態情報を生成できる。例えば、トレーニング済み装置健康状態情報モデル160は、導出オフラインデータ信号、オフライン製造情報、現在の装置健康状態情報、および、物理ベースシミュレーション値を入力として用いて、オフラインデータ(例えば、特定のシステムまたはサブシステムのMTTF、MTBF、および/または、MTTM、特定の構成要素のRULなど、オフライン予測装置健康状態スコアまたは指標)に基づいて、オフライン予測装置健康状態情報を生成できる。
【0121】
いくつかの実施形態において、装置健康状態モデル160は、任意の適切なタイプの機械学習モデル(深層畳み込みネットワーク、サポートベクターマシン(SVM)、ランダムフォレスト、決定木、深層LSTM、畳み込みLSTM、および/または、任意のその他の適切なタイプの機械学習モデル)であってよい。
【0122】
いくつかの実施形態において、装置健康状態モデル160は、任意の適切な方法でトレーニングされてよい。例えば、いくつかの実施形態において、トレーニングサンプルは、入力が導出オフラインデータ、オフライン製造情報、および/または、物理ベースシミュレーション値に対応するように構築されることが可能であり、各トレーニングサンプルの目標出力は、測定データに基づきうる最近装置健康状態情報の対応する値である。いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーション値が、トレーニングサンプルの目標出力にさらに含められてもよい。
【0123】
トレーニング済み装置健康状態情報モデル160は、導出リアルタイムデータ信号およびリアルタイム製造情報を入力として用いて、リアルタイムデータに基づいてリアルタイム推定装置健康状態情報をさらに生成できる。
【0124】
いくつかの実施形態において、トレーニング済み装置健康状態情報モデル160は、物理ベースシミュレーションデータを入力としてさらに利用できることに注意されたい。例えば、物理ベースシミュレーションがリアルタイムで実行されうる場合、物理ベースシミュレーション値が、リアルタイム推定装置健康状態情報を算出するために生成されうる。あるいは、いくつかの実施形態において、機械学習モデルが、物理ベースシミュレーション値を予測するためにトレーニングされうる。いくつかのかかる実施形態において、トレーニング済み機械学習モデルは、物理ベースシミュレーション値を近似するために用いられてよく、その後、物理ベースシミュレーション値は、リアルタイム推定装置健康状態情報を生成するために利用されうる。
【0125】
ベイズモデル162は、オフライン予測装置健康状態情報およびリアルタイム推定装置健康状態情報を組み合わせることによって、調整装置健康状態情報164を生成できる。例えば、いくつかの実施形態において、ベイズモデル162は、オフライン予測装置健康状態スコアまたは指標、ならびに、対応するリアルタイム推定装置健康状態スコアまたは指標(特定のシステムまたはサブシステムのMTTF、MTBF、および/または、MTTM、特定の構成要素のRUL、など)の加重平均を算出できる。より具体的な例として、オフライン予測装置健康状態スコアまたは指標ならびにリアルタイム推定装置健康状態スコアまたは指標の各々は、加重平均で利用される重みに関連付けられてよく、ここで、重みは、ベイズ推論を用いて更新されうる。別の例として、いくつかの実施形態において、ベイズモデル162は、アンサンブル学習法(スタッキング、ブースティング、バギングなど)を利用できる。さらに別の例として、ベイズモデル162は、オフライン予測装置健康状態情報およびリアルタイム推定装置健康状態情報を混合することができ、次いで、混合された結果に基づいて再トレーニングされることができる。
【0126】
図2Dによると、調整装置健康状態情報の算出についての概略図が、開示されている主題のいくつかの実施形態に従って示されている。
【0127】
いくつかの実施形態において、信頼性情報110(例えば、測定データ、粒子データ、および/または、任意のその他の適切なデータ)は、予備知識データベース272からの予備知識と組み合わせられうる。例えば、いくつかの実施形態において、予備知識は、ベイズ推論274によって統合されうる。いくつかの実施形態において、統合された予備知識は、その後、性能指標270を生成するために、信頼性情報と組み合わせられうる。性能指標270は、最近の信頼性情報に基づいて、製造装置のシステム、サブシステム、および/または、個々の構成要素の予測現在信頼性など、任意の適切な性能情報を含みうる。
【0128】
上述のように、いくつかの実施形態において、装置健康状態モデル160は、導出オフラインデータ204に基づく予測装置健康状態情報と、導出リアルタイムデータ214に基づく推定装置健康状態情報とを生成できる。いくつかの実施形態において、装置健康状態モデルは、性能指標270を用いて、予測装置健康状態情報および/または推定装置健康状態情報を生成できる。
【0129】
さらに、いくつかの実施形態において、装置健康状態モデル160は、任意の適切な方法で物理ベースシミュレーション値112を利用できる。例えば、いくつかの実施形態において、装置健康状態モデル160は、物理ベースシミュレーション値112を用いて、様々な物理パラメータに関連する値(特定の位置でのシミュレートされた温度値、特定の位置でのシミュレートされた圧力値、など)をシミュレートできる。
【0130】
いくつかの実施形態において、ベイズモデル162は、ベイズ推論を用いて予測装置健康状態情報および推定装置健康状態情報を組み合わせることによって、調整装置健康状態情報164を生成できる。
【0131】
図1Aに関連して上述したように、調整装置健康状態情報164は、個々の構成要素(例えば、ペデスタル、エッジリング、バルブなど)の期待RULを予測するRUL予測276など、任意の適切なスコアまたは指標を含みうる。さらに、図1Aに関連して上述したように、調整装置健康状態情報164は、システムまたはサブシステムのMTTF、MTTM、および/または、MTBF指標を含みうる。いくつかの実施形態において、個々の構成要素ならびにシステムまたはサブシステムレベルの指標のRUL予測が、トレーニング済み装置健康状態情報モデル160の出力でありうる。例えば、トレーニング済み装置健康状態モデル160は、システムまたはサブシステムレベルの指標、ならびに、構成要素のリスト、および、各構成要素の算出済み期待RULを、出力として生成しうる。
【0132】
いくつかの実施形態において、RULが、物理ベースシミュレーション値を用いて生成されうる。例えば、いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーション値は、特定の物理条件下で経時的に特定の構成要素の状態を予測するために利用されうる。より具体的な例として、特定の構成要素(例えば、ESCのペデスタル、ESCのエッジリング、など)のRULは、特定の物理条件下でのパラメータ(温度、力、圧力、など)の値をシミュレートすることに少なくとも部分的に基づいて予測されうる。具体例は、チャンバの特定の位置での温度、チャンバの特定の位置でのガス濃度、チャンバの特定の位置での圧力、などを含みうる。
【0133】
さらに、図1Aに関連して上述したように、トレーニング済み装置健康状態情報モデル160は、1または複数の処方的保全提案を生成できる。例えば、特定の構成要素が所定の閾値未満のRUL(10日未満、20日未満、など)を有すること、および/または、次の定期保全データの前にRULが終了することを特定したことに応じて、トレーニング済み装置健康状態情報モデル160は、知識データベース272を用いて、1または複数の処方的保全提案を特定できる。
【0134】
例えば、構成要素AのRULが所定の閾値よりも短い場合、トレーニング済み装置健康状態情報モデル160は、知識データベース272を用いて、RUL構成要素Aを延ばす可能性のある1または複数のレシピパラメータ変更を特定できる。いくつかの実施形態において、知識データベース272内の情報は、専門家から提供されたものであってよく、構成要素に基づいて特定されうることに注意されたい。例えば、知識データベース272は、専門家から提供された知識に基づいて、特定のレシピパラメータ(ガス流量、温度勾配、および/または、任意のその他の適切なレシピパラメータ、など)を変更することによって構成要素AのRULを延長できることを示唆しうる。
【0135】
別の例として、トレーニング済み装置健康状態情報モデル160は、知識データベース272を用いて、構成要素AのRULを延ばすために交換できる構成要素Aに影響を与える1または複数の構成要素を特定できる。例えば、知識データベース272は、構成要素Aに影響を与えるものとして特定されている(例えば、専門家から提供され、および/または、任意のその他の適切な方法で特定されている)一群の構成要素を見つけるためにクエリされうる。
【0136】
さらに別の例として、トレーニング済み装置健康状態情報モデル160は、知識データベース272を用いて、構成要素Aが交換されるまで特定のレシピを製造装置で実施すべきではないが、その他のレシピを製造装置で実施してもよいことを特定できる。例えば、知識データベース272は、製造装置で実施される様々なレシピに対する構成要素Aの重要性の指標を含んでもよく、構成要素Aに大きく依存しているレシピは、構成要素Aを交換するまで実施すべきではないレシピとして特定されうる。
【0137】
いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーション値は、処方的保全提案を特定するために利用されうる。例えば、いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーション値は、故障する可能性があると特定された構成要素に影響を有しうるパラメータを特定するために利用されうる。より具体的な例として、いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーション値は、特定のパラメータ(例えば、温度、ガス流量、など)の変更が特定の構成要素に影響を与える可能性があるか否かを判定するために利用されうる。いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーション値を用いて特定されたパラメータは、知識データベース272に含まれる専門家からの情報を用いて検証されうる。さらに、いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーションから出力されたシミュレーション値を用いて知識データベース272への入力がなされうる。
【0138】
いくつかの実施形態において、処方的保全提案は、特定された提案が現在のリアルタイムデータを所与として特定の構成要素のRULを延ばす可能性を決定するために、トレーニング済み装置健康状態モデル160にフィードバックされうる。すなわち、いくつかの実施形態において、トレーニング済み装置健康状態モデル160は、提案を提供または実施する前に、特定された処方的保全提案(例えば、知識データベース272を用いて特定されたもの)を検証するために利用されうる。
【0139】
図3Aによると、製造装置の装置健康状態情報を生成するように機械学習モデルをトレーニングする処理の一例が、開示されている主題のいくつかの実施形態に従って示されている。いくつかの実施形態において、図3Aに示す処理は、センサ、データベースなどからデータを受信またはリトリーブするデバイス(例えば、サーバ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、および/または、任意のその他の適切なデバイス)など、任意の適切なデバイスで実行されうることに注意されたい。
【0140】
工程302で、オフラインデータ信号が受信されうる。図1Aに関連して上述したように、オフライン時系列データは、システムまたはサブシステムに関連付けられたセンサからのデータ(例えば、ESC、シャワーヘッド、プラズマ源、RF発生器、および/または、任意のその他の適切なシステムまたはサブシステムからのデータ)、分光データ、光放射データ、および/または、製造装置の以前の動作中に測定された任意のその他の適切なデータでありうる。
【0141】
工程304で、導出オフラインデータが、オフライン時系列データに基づいて生成されうる。図1Aおよび図2Aに関連して上述したように、導出オフラインデータは、オフラインデータ信号の顕著な特徴の表現を含みうる。いくつかの実施形態において、導出データは、オフラインデータ信号のノイズ除去バージョンであってもよい。
【0142】
工程306で、オフライン製造情報が受信されうる。いくつかの実施形態において、オフライン製造情報は、製造情報に関連付けられているレシピ情報、故障モード情報、および/または、保全ログ情報を含みうる。いくつかの実施形態において、故障モード情報は、製造装置の一般情報、および/または、機械学習モデルがトレーニングされている対象の特定の製造装置に固有の情報でありうることに注意されたい。
【0143】
工程308で、オフライン信頼性情報が受信されうる。図1Aに関連して上述したように、オフライン信頼性情報は、製造装置の以前の利用から収集された測定データを含みうる。より具体的な例として、いくつかの実施形態において、測定データは、以前に加工されたウエハについてキャプチャされたウエハ画像データを含みうる。いくつかの実施形態において、オフライン信頼性情報は、以前に加工されたウエハにおける欠陥の存在を示唆しうる。
【0144】
工程310で、装置健康状態情報が、オフライン信頼性情報に基づいて生成されうる。いくつかの実施形態において、装置健康状態情報は、システムまたはサブシステムの健康状態を示す指標など、任意の適切なスコアまたは指標を含みうる。例えば、装置健康状態情報は、MTTF、MTBF、MTTM、および/または、任意のその他の適切な指標を含みうる。いくつかの実施形態において、装置健康状態情報は、個々の構成要素に関連する任意の適切なスコアまたは指標を含みうる。例えば、装置健康状態情報は、個々の構成要素のRULを含みうる。
【0145】
工程312で、物理ベースシミュレーション値が生成されうる。図1Aに関連して上述したように、物理ベースシミュレーション値は、任意の適切な物理パラメータ(例えば、温度、力、位置、圧力、分光値、および/または、任意のその他の適切な物理パラメータ)のシミュレート値であってよい。いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーション値は、任意の適切な物理ベースアルゴリズムを用いて生成されうる。いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーション値は、例えば、測定されたオフラインデータ値とは異なる時間または異なる空間位置でシミュレートされた対応するシミュレート値を生成するために、任意のオフラインデータ値を入力値として受け取るアルゴリズムを用いて生成されうる。
【0146】
工程314で、装置健康状態情報を予測するための機械学習モデルが、導出オフラインデータ、オフライン製造情報、生成された装置健康状態情報、および/または、物理ベースシミュレーション値を用いてトレーニングされうる。いくつかの実施形態において、機械学習モデルは、任意の適切なトレーニングセットを用いてトレーニングされうる。例えば、いくつかの実施形態において、トレーニングセットは、導出オフラインデータ、オフライン製造情報、および/または、物理ベースシミュレーション値を含む入力例を含みうる。続けてこの例について、いくつかの実施形態において、トレーニングセット内の各トレーニングサンプルは、工程310で生成された対応する装置健康状態情報を含む目標出力を含みうる。いくつかの実施形態において、目標出力は、物理ベースシミュレーション値に基づきうる。
【0147】
図3Bによると、(例えば、図3Aからの)トレーニング済み機械学習モデルを用いて、製造装置の差し迫った故障を特定および解析し、および/または、現在の装置健康状態情報を生成する処理の一例が、開示されている主題のいくつかの実施形態に従って示されている。
【0148】
工程316で、リアルタイムデータ信号が受信されうる。いくつかの実施形態において、図1Aに関連して上述したように、リアルタイムデータ信号は、製造装置の現在の動作中に測定されたデータであってよい。リアルタイムデータ信号は、センサデータ(例えば、温度、圧力、力、位置、および/または、任意のその他の適切なセンサ測定値)、分光データ、光学放射データ、および/または、任意のその他の適切なリアルタイムデータなど、任意の適切な測定データを含みうる。
【0149】
工程318では、導出リアルタイムデータが、リアルタイムデータ信号に基づいて生成されうる。図1Aのブロック304に関連して上述した導出オフラインデータに関して上述したのと同様に、導出リアルタイムデータは、リアルタイムデータ信号の顕著な特徴を示しうる。いくつかの実施形態において、導出リアルタイムデータは、リアルタイムデータ信号のノイズ除去バージョンを表しうる。
【0150】
工程320で、異常が検出されたか否かの判定がなされうる。いくつかの実施形態において、検出された異常は、導出リアルタイムデータに基づいて特定される製造装置の差し迫った故障を示唆しうる。いくつかの実施形態において、図1Bに示し図1Bに関連して上述したように、導出リアルタイムデータおよび導出オフラインデータを入力として受け取る異常検出分類器を用いて、異常が検出されうる。
【0151】
工程320で異常が検出された場合(工程320で「yes」)、故障解析が工程322で実行されうる。いくつかの実施形態において、故障解析は、図1Bに示し図1Bに関連して上述したように、故障分離解析モデルを用いて実行されうる。
【0152】
いくつかの実施形態において、故障解析は、検出された異常に関連して起こりうる故障を示唆できる。例えば、故障解析は、特定の構成要素が故障した可能性があり、それにより、検出された異常を引き起こしていることを示唆しうる。さらに、いくつかの実施形態において、故障解析は、特定された故障の可能性のある原因を決定できる。例えば、故障解析が特定の構成要素を故障したものと特定した場合に、故障解析は、特定の構成要素の故障について可能性のある原因をさらに示唆できる。
【0153】
いくつかの実施形態において、故障解析は、図2Cに関連して上述したように、導出リアルタイムデータ、物理ベースシミュレーション値、故障データベースからリトリーブされた情報、および/または、任意のその他の適切な情報に基づいて実行されうる。
【0154】
故障解析を実行した後、処理は、工程332で終了しうる。
【0155】
逆に、工程320で異常が検出されなかった場合(工程320で「no」)、工程324で、予測装置健康状態情報が、トレーニング済み機械学習モデルへの入力としてオフラインデータを用いて算出されうる。特に、いくつかの実施形態において、入力は、導出オフラインデータ、オフライン製造情報、および/または、物理ベースシミュレーション値を含みうる。いくつかの実施形態において、オフラインデータを用いて算出された予測装置健康状態情報は、装置の典型的な劣化を仮定して、以前に測定されたデータに基づいて現時点での予測装置健康状態情報を表しうることに注意されたい。
【0156】
工程326で、予測装置健康状態情報が、トレーニング済み機械学習モデルへの入力としてリアルタイムデータを用いて算出されうる。特に、いくつかの実施形態において、入力は、導出リアルタイムデータを含みうる。さらに、いくつかの実施形態において、入力は、製造情報上の実施中の現在のレシピなど、任意の適切なリアルタイム製造情報を含みうる。
【0157】
工程328で、調整装置健康状態情報が、オフライン情報に基づく予測装置健康状態情報およびリアルタイム情報に基づく推定装置健康状態情報を組み合わせることによって算出されうる。いくつかの実施形態において、予測装置健康状態情報および推定装置健康状態情報は、図1Bに示し図1Bに関連して上述したように、ベイズ推論を利用するなど、任意の適切な技術を用いて、組み合わせられてよい。例えば、いくつかの実施形態において、調整装置健康状態スコアまたは指標を生成するために、予測装置健康状態スコアまたは指標(例えば、個々の構成要素のMTTF、MTBF、MTTM、RUL、など)が、ベイズ推論を用いて、対応する推定装置健康状態スコアまたは指標と組み合わせられてよい。
【0158】
いくつかの実施形態において、調整装置健康状態情報は、(例えば、オフライン情報に基づく)時間の経過に伴う装置の通常の劣化および(例えば、リアルタイム情報に基づく)装置の現在の状態の両方を考慮した製造装置の健康状態の現在の推定を表しうる。
【0159】
図1Aおよび図1Bに関連して上述したように、調整装置健康状態情報は、任意の適切な指標を含みうる。例えば、システムまたはサブシステムに関連する指標は、MTTF、MTTM、MTBF、および/または、任意のその他の適切な指標を含みうる。別の例として、特定の構成要素に関連する指標は、構成要素のRULを含みうる。
【0160】
さらに、図1Aおよび図1Bに関連して上述したように、調整装置健康状態情報は、任意の適切な処方的保全提案を含みうる。例えば、処方的保全提案は、現在スケジュールされているよりも早く特定の構成要素の保全を実行すべきであることを示唆しうる。別の例として、処方的保全提案は、特定の構成要素をできるだけ早く交換すべきであることを示唆しうる。さらに別の例として、処方的保全提案は、特定の構成要素がすぐに故障する可能性があり、別の構成要素の交換が、すぐに故障する可能性があると特定された構成要素の寿命を延ばす可能性があることを示唆しうる。さらにまた別の例として、処方的保全提案は、特定の構成要素の寿命を延ばすための、製造装置によって実施されるレシピの変更を示唆しうる。
【0161】
図2Dに関連して上述したように、いくつかの実施形態において、処方的保全提案は、例えば、特定の構成要素のRULを延ばすように変更可能なパラメータを特定するために、物理ベースシミュレーション値に部分的に基づいて決定されうる。
【0162】
工程330で、トレーニング済みモデルは、調整装置健康状態情報を組み込むように更新されうる。すなわち、トレーニング済みモデルは、製造装置に関連する最新の収集データを組み込むために、調整装置健康状態情報がトレーニング済みモデルのその後の利用の際にトレーニング済みモデルによって利用されるように更新されうる。
【0163】
工程332で、処理は、終了しうる。
【0164】
ここで、ESCの具体例に適用された上述の技術の例について、図4A図4B図4C、および、図4Dに関連して以下で説明する。
【0165】
図4Aは、開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、ESCに関連するリアルタイムデータ400の例を示す。図に示すように、リアルタイムデータは、電圧測定値、インピーダンス測定値、電力測定値、ガス流量測定値、温度測定値、ペデスタル位置測定値、および/または、その他の適切な測定値を含みうる。
【0166】
図4Bによると、開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、可能性のある故障の分布の一例420が示されている。いくつかの実施形態において、可能性のある故障の分布420は、リアルタイムデータ400の抽出された特徴に基づいて異常が検出されたと判定されたことに応じて、(例えば、図1Bに示し図1Bに関連して上述したように)故障分離解析モデルによって生成されうる。
【0167】
図に示すように、可能性のある故障の分布420は、1セットの潜在的な故障を含んでよく、各故障は、故障がリアルタイムデータ400によって表される対応する可能性を有する。例えば、図4Bに示すように、ペデスタルの欠けという潜在的な故障422は、97%の可能性を割り当てられており、これは、リアルタイムデータ400で検出された異常が97%の可能性でペデスタルの欠けを表すことを示している。
【0168】
図4Cによると、開示されている主題のいくつかの実施形態に従って、故障原因の分布の一例430が示されている。図4Bに示し図4Bに関連して上述した例について続けると、最も可能性の高い故障がペデスタルの欠けである場合、故障原因の分布430は、欠けについての可能性の高い原因を示唆しうる。例えば、図4Cに示すように、故障原因の分布430は、可能性のある原因432(化学的侵食)を含んでよく、それには、欠けの原因である可能性99%が割り当てられている。
【0169】
いくつかの実施形態において、故障原因の分布430は、図1Bに示し図1Bに関連して上述した故障分離解析モデルを用いて生成されうる。例えば、いくつかの実施形態において、故障分離解析モデルは、異なる障害の潜在的な原因を示し、故障分離解析モデルが故障原因を特定するために5WHY分析を実行することを可能にする任意の適切な知識データベースを利用できる。いくつかの実施形態において、物理ベースシミュレーション値が、故障原因を特定するために、5WHY分析と関連して利用されうる。
【0170】
ESCのペデスタルプラテン亀裂に対する5WHY分析440の一例が、開示されている主題のいくつかの実施形態に従って図4Dに示されている。図に示すように、5WHY分析は、ペデスタルプラテン亀裂の様々な原因および下位原因を示しうるツリーを備えてよく、ツリーの各階層レベルが異なる「why(なぜ)」に対処している。例えば、5WHY分析の第1レベルは、ペデスタルプラテン亀裂が即時破壊によるものか否かを判定しうる。第1レベルの分析に基づいて、5WHY分析の第2レベルは、原因が、遠距離場応力、空間応力、または、一時応力であるのかを判定しうる。5WHY分析は、ペデスタルプラテン亀裂に寄与した特定のレシピパラメータまたは構成要素の故障を特定するために、任意の適切な数のレベルについてさらに続けられてよい。図4Dの5WHY分析は、ペデスタルプラテン亀裂の根本原因を示す唯一の項目を第5レベルに示しているが、いくつかの実施形態において、第5レベルは、任意の適切な数(例えば、5、10、15、20、など)の故障の根本原因に対応する任意の適切な数の項目を含んでよいことに注意されたい。
【0171】
いくつかの実施形態において、予知保全システムは、処理チャンバの任意のその他の適切なシステムまたはサブシステムに関連して利用されてもよい。
【0172】
例えば、いくつかの実施形態において、予知保全システムは、シャワーヘッドに関連して利用されてよい。シャワーヘッドに関して、予知保全システムは、ペデスタルとシャワーヘッドとの間のギャップに関する情報を示すセンサからのデータ(例えば、リアルタイムデータ信号および/またはオフラインデータ信号)、シャワーヘッドの冷却制御、クーラントバルブ開度、ヒータ電力状態、冷却過熱スイッチ、シャワーヘッド温度、出力割合、および/または、任意のその他の適切なセンサデータを受信できる。
【0173】
いくつかの実施形態において、予知保全システムは、フレーキング、剥離、異常なレベルの粒子、レベリング異常、および/または、任意のその他の適切な異常または故障など、シャワーヘッドに関連する任意の適切な異常または故障を特定できる。いくつかのかかる実施形態において、予知保全システムは、(例えば、上述の異常検出モデルを用いて)差し迫った故障、および/または、(例えば、シャワーヘッドに関連する様々な構成要素のRULを算出することによって)潜在的な将来の故障を検出できる。
【0174】
いくつかの実施形態において、異常または故障を検出したことに応答して、予知保全システムは、異常または故障の任意の適切な根本原因を特定できる。例えば、特定される根本原因は、温度制御の不具合、穴の詰まり、シャワーヘッドとペデスタルとの間のギャップの設定誤差、および/または、任意のその他の適切な根本原因でありうる。いくつかの実施形態において、根本原因は、上述のように、予知保全システムの故障分離解析モデルを用いて特定されうる。特に、図4Dに関連して上述したのと同様に、5WHY分析が、根本原因を特定するために用いられてよい。
【0175】
別の例として、いくつかの実施形態において、予知保全システムは、RF発生器に関連して利用されてもよい。予知保全システムは、RF整合負荷位置、RF発生器補償RF電力、RF電流、RF整合ピークツーピーク値、RF整合同調位置、ファンの状態、および/または、任意のその他の適切なセンサデータを示すセンサからのデータ(例えば、リアルタイムデータ信号および/またはオフラインデータ信号)を受信できる。
【0176】
いくつかの実施形態において、予知保全システムは、過剰電力、無電力、RFノイズ、および/または、任意のその他の適切な異常または故障など、RF発生器に関連する任意の適切な異常または故障を特定できる。いくつかのかかる実施形態において、予知保全システムは、(例えば、上述の異常検出モデルを用いて)差し迫った故障、および/または、(例えば、RF発生器に関連する様々な構成要素のRULを算出することによって)潜在的な将来の故障を検出できる。
【0177】
いくつかの実施形態において、異常または故障を検出したことに応答して、予知保全システムは、異常または故障の任意の適切な根本原因を特定できる。例えば、特定される根本原因は、トランジスタの故障、プリント基板アセンブリ(PCBA)の故障、アーキング、および/または、任意のその他の適切な根本原因でありうる。いくつかの実施形態において、根本原因は、上述のように、予知保全システムの故障分離解析モデルを用いて特定されうる。特に、図4Dに関連して上述したのと同様に、5WHY分析が、根本原因を特定するために用いられてよい。
【0178】
いくつかの実施形態において、予知保全システムは、特定の構成要素を再利用する方法を特定するために利用されうる。例えば、特定の構成要素が、特定の製造装置で利用された時に所定の閾値を下回る特定のRUL(例えば、10日未満、20日未満、など)を有すると特定された場合、予知保全システムは、異なる製造装置でその構成要素を利用できるか否かを判定できる。より具体的な例として、処理チャンバのペデスタルが所定の閾値を下回るRULを有すると特定された場合、予知保全システムは、別の処理チャンバ(古いモデル、異なるレシピを実行するモデル、など)でそのペデスタルを利用できるか否かを判定できる。再利用可能な構成要素のその他の例は、不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウムなど)および/または非毒性ガス(例えば、Hなど)に関連する加熱素子、ロボットモータ、電子基板、コンピュータ、圧力調整器、ガスライン、バルブ、および/または、マスフローコントローラ(MFC)、ならびに/もしくは、その他の適切な構成要素を含みうる。
【0179】
いくつかの実施形態において、予知保全システムは、予知保全システムを用いて、特定の構成要素が利用された時に第2製造装置の装置健康状態を評価するために、別の第2製造装置でその構成要素を用いることでその構成要素を転用できるか否かを判定できる。例えば、新しいモデルの処理チャンバは、より高い温度で動作することにより、1または複数の故障モードの加速を引き起こしうるが、古いモデルの処理チャンバは、より低い温度で動作することにより、特定の構成要素の寿命を延ばしうる。より具体的な例として、予知保全システムは、新しいモデルの処理チャンバで利用した場合に故障する可能性があると特定されたペデスタルを利用した場合の古いモデルの処理チャンバの装置健康状態を評価できる。
【0180】
具体例として、予知保全システムは、古いモデルの処理チャンバの様々な構成要素のRUL、古いモデルの処理チャンバのシステムのMTTFまたはMTTM指標、などを生成できる。いくつかの実施形態において、構成要素が別の製造装置で利用された場合に改善された装置健康状態指標を算出したことに応答して、予知保全システムは、構成要素の寿命を延ばすために構成要素を他の場所で再利用できると特定しうる。例えば、いくつかの実施形態において、構成要素が現在の装置で利用された場合よりも古いモデルの処理チャンバで利用された場合に構成要素のRULが延びるとの判定に応じて、予知保全システムは、構成要素を現在の装置から取り外し、古いモデルの処理チャンバで利用すべきであるとの提案を生成して提示しうる。
【0181】
いくつかの実施形態において、構成要素を再利用する方法を特定することにより、構成要素を再利用および/またはリサイクルすることで、構成要素の寿命を延ばすことができる。
【0182】
用途
本明細書に記載の予知保全システムは、装置の不測の異常(例えば、構成要素の破損など)による装置のダウンタイムを短縮し、手作業による検査およびトラブルシューティングの必要性を低減することによって、半導体製造装置の効率を改善しうる。
【0183】
例えば、特定のシステムまたは構成要素が保全を必要とするまでの時間を算出することにより、予知保全システムは、システムの状態に関する継続的な更新を提供することで、間に合うように交換構成要素を注文し、および/または、装置の問題が起きる前に保全をスケジューリングすることを可能にしうる。
【0184】
別の例として、処方的保全提案を生成することにより、予知保全システムは、構成要素について特定されたもうすぐ起こりうる故障に対する一時的な解決策を特定することで、保全を実行できるまで製造装置を利用し続けることを可能にし、それにより、製造装置のダウンタイムを短縮しうる。
【0185】
さらに別の例として、故障が差し迫った際に検出された異常に関連する可能性のある故障を特定し、故障の可能性のある原因を特定することにより、予知保全システムは、故障の根本原因を特定するために必要な手動トラブルシューティングの時間を削減できる。
【0186】
開示されているコンピュータ実施形態の文脈
本明細書に開示の特定の実施形態は、予知保全システムのための機械学習モデルを生成および/または利用するためのコンピュータシステムに関する。本明細書に開示の特定の実施形態は、かかるコンピュータシステムに実装された機械学習モデルを生成および/または利用する方法に関する。また、機械学習モデルを生成するためのコンピュータシステムは、半導体デバイス加工動作中に実行される物理的処理を表すデータおよび命令(プログラムコードなど)を受信するよう構成されてよい。このように、機械学習モデルが、かかるシステム上で生成またはプログラムされる。
【0187】
様々なコンピュータアーキテクチャのいずれかを有する多くのタイプのコンピュータシステムが、機械学習モデルならびにかかるモデルを生成および/または最適化するためのアルゴリズムを実装するための開示されているシステムとして用いられてよい。例えば、システムは、1または複数の汎用プロセッサ、もしくは、特別に設計されたプロセッサ(特定用途向け集積回路(ASIC)またはプログラマブルロジックデバイス(例えば、フィールドプログラマブルゲートウェイ(FPGA))など)上で実行されるソフトウェア構成要素を備えてよい。さらに、システムは、単一のデバイスに実装されてもよいし、複数のデバイスに分散されてもよい。コンピュータ要素の機能は、互いに統合されてもよいし、複数のサブモジュールにさらに分割されてもよい。
【0188】
いくつかの実施形態において、コンピュータデバイス(パーソナルコンピュータ、サーバ、ネットワーク機器、など)を構成するための複数の命令など、適切にプログラムされたシステム上での機械学習モデルの生成または実行中に実行されるコードが、不揮発性記憶媒体(光ディスク、フラッシュストレージデバイス、モバイルハードディスク、など)に格納できるソフトウェア要素の形態で具現化されうる。
【0189】
或るレベルでは、ソフトウェア要素は、プログラマ/開発者が用意した1セットのコマンドとして実装される。しかしながら、コンピュータハードウェアによって実行可能なモジュールソフトウェアは、ハードウェアプロセッサに設計された特定の機械語命令セットすなわち「ネイティブな命令」から選択された「マシンコード」を用いてメモリにコミットされた実行可能コードである。機械語命令セットすなわちネイティブ命令セットは、ハードウェアプロセッサにとって既知であり、基本的にハードウェアプロセッサ内に組み込まれている。これは、システムおよびアプリケーションソフトウェアがハードウェアプロセッサと通信するための「言語」である。各ネイティブ命令は、処理アーキテクチャによって認識され、演算、アドレッシング機能、または、制御機能のための特定のレジスタ、特定の記憶場所またはオフセット、ならびに、オペランドの解釈に利用される特定のアドレッシングモードを特定できる個別のコードである。より複雑な動作が、これらの単純なネイティブ命令を組み合わせることによって構築され、それらの命令は、順次実行されるか、または、制御フロー命令によって他の方法で指示された通りに実行される。
【0190】
実行可能なソフトウェア命令とハードウェアプロセッサとのの間の相互関係は、構造的である。換言すると、命令自体は、一連の記号または数値である。それらは、本質的に全く情報を伝達しない。命令に意味を与える記号/数値を解釈するように設計によって事前に構成されているのは、プロセッサである。
【0191】
本明細書で利用されるモデルは、1つの場所にある1つのマシン、1つの場所にある複数のマシン、または、複数の場所にある複数のマシンで実行するよう構成されてよい。複数のマシンが利用される場合、個々のマシンは、特定のタスクに合わせて調整されてよい。例えば、大きいコードブロックおよび/または高い処理能力を必要とする動作が、大規模および/または固定式のマシンに実装されてよい。
【0192】
さらに、特定の実施形態は、様々なコンピュータ実施動作を実行するためのプログラム命令および/またはデータ(データ構造など)を含む有形および/または非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体またはコンピュータプログラム製品に関連する。コンピュータ読み取り可能媒体の例は、半導体メモリデバイス、相変化デバイス、磁気媒体(ディスクドライブ、磁気テープ、など)、光学媒体(CDなど)、磁気光学媒体、ならびに、プログラム命令を保存および実行するよう特別に構成されたハードウェアデバイス(リードオンリーメモリデバイス(ROM)およびランダムアクセスメモリ(RAM)など)を含むが、それらに限定されない。コンピュータ読み取り可能媒体は、エンドユーザによって直接的に制御されてよく、または、媒体は、エンドユーザによって間接的に制御されてもよい。直接的に制御される媒体の例は、ユーザ施設に配置された媒体および/または他の実体と共有されない媒体を含む。間接的に制御されるメディアの例は、外部ネットワークを介しておよび/または「クラウド」などの共有リソースを提供するサービスを介してユーザが間接的にアクセスできる媒体を含む。プログラム命令の例は、マシンコード(コンパイラによって生成されたコードなど)と、インタープリタを用いてコンピュータによって実行されうる高水準コードを含むファイルとの両方を含む。
【0193】
様々な実施形態において、開示されている方法および装置で利用されるデータまたは情報は、電子フォーマットで提供される。かかるデータまたは情報は、設計レイアウト、固定パラメータ値、浮動パラメータ値、フィーチャプロファイル、測定結果、などを含みうる。本明細書で用いられているように、電子フォーマットで提供されるデータまたはその他の情報は、マシン上への保存およびマシン間での伝送に利用可能である。従来、電子フォーマットのデータは、デジタルで提供され、様々なデータ構造、リスト、データベースなどにビットおよび/またはバイトとして格納されうる。データは、電子的、光学的、などの方法で具現化されてよい。
【0194】
いくつかの実施形態において、機械学習モデルは各々、ユーザおよびシステムソフトウェアとのインターフェースを持つアプリケーションソフトウェアの一形態と見なされうる。システムソフトウェアは、典型的に、コンピュータハードウェアおよび関連メモリとインターフェースをとる。いくつかの実施形態において、システムソフトウェアは、オペレーティングシステムソフトウェアおよび/またはファームウェア、ならびに、システムにインストールされているミドルウェアおよびドライバを含む。システムソフトウェアは、コンピュータの基本的な非タスク固有の機能を提供する。対照的に、モジュールおよびその他のアプリケーションソフトウェアは、特定のタスクを達成するために用いられる。モジュールの各ネイティブ命令は、メモリデバイスに格納され、数値によって表される。
【0195】
コンピュータシステムの一例500が、図5に示されている。図に示すように、コンピュータシステム500は、入力/出力サブシステム502を備え、入力/出力サブシステム502は、アプリケーションに応じて人間のユーザおよび/またはその他のコンピュータシステムと相互作用するためのインターフェースを実装してよい。本開示の実施形態は、システム500上のプログラムコードに実装されてよく、I/Oサブシステム502は、人間のユーザから(例えば、GUIまたはキーボードを介して)入力プログラムステートメントおよび/またはデータを受信し、それらをユーザに表示するために用いられる。I/Oサブシステム502は、例えば、キーボード、マウス、グラフィカルユーザーインタフェース、タッチスクリーン、または、その他の入力用インターフェースと、例えば、LEDまたはその他のフラットスクリーンディスプレイ、もしくは、その他の出力用インターフェースとを含んでよい。
【0196】
通信インターフェース507は、任意の適切な通信ネットワーク(例えば、インターネット、イントラネット、ワイドエリアネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、無線ネットワーク、仮想プライベートネットワーク(VPN)、および/または、任意のその他の適切なタイプの通信ネットワークなど)を用いて、通信に利用される任意の適切な構成要素または回路を備えうる。例えば、通信インターフェース507は、ネットワークインターフェイスカード回路、無線通信回路、などを備えうる。
【0197】
プログラムコードが、二次メモリ510またはメモリ508もしくはその両方など、非一時的媒体に格納されてよい。いくつかの実施形態において、二次メモリ510は、永続ストレージであってよい。1または複数のプロセッサ504は、コンピュータシステムが、本明細書に記載のプロセスシミュレーションモデルの生成または利用に関連するものなど、本明細書に記載の実施形態によって実行される方法を実行することを可能にするために、1または複数の非一時的媒体からプログラムコードを読み出し、コードを実行する。当業者は、プロセッサが、ソースコード(トレーニング動作および/またはモデリング動作を実行するためのステートメントなど)を受け取って、プロセッサのハードウェアゲートレベルで理解可能なマシンコードにソースコードを解釈またはコンパイルしうることがわかる。バス505が、I/Oサブシステム502、プロセッサ504、周辺デバイス506、通信インターフェ-ス507、メモリ508、および、二次メモリ810を接続している。
【0198】
結び
説明では、提示した実施形態の完全な理解を促すために、数多くの具体的な詳細事項が示されている。開示されている実施形態は、これらの具体的な詳細事項の一部またはすべてがなくとも実施可能である。また、開示されている実施形態が不必要に不明瞭となることを避けるため、周知の処理動作の詳細な説明は省略した。開示されている実施形態は、具体的な実施形態に関連して説明されているが、具体的な実施形態は、開示されている実施形態を限定する意図はないことを理解されたい。
【0199】
特に明記しない限り、本明細書で開示されている方法動作およびデバイスの特徴は、測定、半導体デバイス加工技術、ソフトウェア設計およびプログラミング、ならびに、統計で一般に利用される技術および装置を含み、それらは当業者の技能の範囲内にある。
【0200】
本明細書で特に定義されていない限り、本明細書で利用されているすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に含まれている用語を含む様々な科学辞書がよく知られており、当業者にとって利用可能である。本明細書に記載のものと類似または等価な任意の方法および材料が、本明細書で開示されている実施形態の実践または試験で利用されるが、いくつかの方法および材料が記載されている。
【0201】
数値範囲は、その範囲を規定する数値を含む。本明細書にわたって与えられているすべての最大の数値限定は、すべてのより小さい数値限定を、かかるより小さい数値限定が本明細書に明示的に記載されているかのように含むことを意図されている。本明細書にわたって与えられているすべての最小の数値限定は、すべてのより大きい数値限定を、かかるより大きい数値限定が本明細書に明示的に記載されているかのように含む。本明細書にわたって与えられているすべての数値範囲は、かかるより広い数値範囲に含まれるすべてのより狭い数値範囲を、かかるより狭い数値範囲すべてが本明細書に明示的に記載されているかのように含む。
【0202】
本明細書で提供されている見出しは、本開示を限定することを意図されていない。
【0203】
本明細書で用いられているように、単数形「a」、「an」、および、「the」は、文脈から単数であることが明らかでない限りは、複数の言及を含む。本明細書で利用されている「or(または、もしくは)」という用語は、特に明記されていない限り、非排他的な「or」を意味する。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4A-1】
図4B
図4C
図4D
図5
【国際調査報告】