(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-28
(54)【発明の名称】非結核性マイコバクテリア疾患の治療におけるベダキリン、エタンブトール、及びマクロライドの組合せ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/133 20060101AFI20231120BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231120BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20231120BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231120BHJP
A61K 31/7052 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
A61K31/133
A61P31/04
A61P11/00
A61K31/47
A61K31/7048
A61P43/00 121
A61K31/7052
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528411
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 EP2021081193
(87)【国際公開番号】W WO2022101244
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397060175
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 健
(72)【発明者】
【氏名】マハデヴァン,シヴィ
(72)【発明者】
【氏名】カンビリ,クリスピン
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼ 忠石
(72)【発明者】
【氏名】ロッセヌ,ステファーン ルイス エフ
(72)【発明者】
【氏名】ウィレムス,ウーター マーサ エム
(72)【発明者】
【氏名】ビウェンガ,ジェイク エリセ
(72)【発明者】
【氏名】アーノルト,エティエンヌ ギルバート アラン
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086EA12
4C086EA13
4C086GA14
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB35
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA02
4C206KA14
4C206MA03
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZB35
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、非結核性抗酸菌(NTM)に関連する疾患の治療に使用するための、特定の治療レジメンにおける、ベダキリン、マクロライド(例えば、クラリスロマイシン)、及び任意選択でエタンブトールの組合せに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非結核性抗酸菌(NTM)に関連する疾患の治療における使用のための、ベダキリンである第1の薬物成分、マクロライド(例えば、クラリスロマイシン又はアジスロマイシン)である第2の薬物成分、及びエタンブトールである第3の薬物成分を含む(例えば、からなる)薬物成分の組合せであって、前記組合せが、
-400mgのベダキリンを1~2週目に1日1回、及び200mgのベダキリンを3~24週目(及び任意選択で48週目まで、すなわち3~48週目)に週2回(投与間に少なくとも72時間)投与すること、又は
-400mgのベダキリンを1~2週目に1日1回、及び100mgのベダキリンを3~24週目(及び任意選択で48週目まで、すなわち3~48週目)に週5回投与すること、
を含む特定のレジメンで投与される、組合せ。
【請求項2】
前記組合せが、
-400mgのベダキリンを1~2週目に1日1回、及び200mgのベダキリンを3~48週目に週2回)(投与間に少なくとも72時間)を投与することを含む特定のレジメンで投与される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
患者におけるNTM(例えば、より具体的には、MAC)に関連する疾患(例えば、肺疾患)を治療する方法であって、
(i)ベダキリンである第1の薬物成分と、
(ii)マクロライド(例えば、クラリスロマイシン又はアジスロマイシン)である第2の薬物成分と、
(iii)エタンブトールである第3の薬物成分と、
を含む(例えば、からなる)有効量の薬物成分の組合せを前記患者に投与することを含み、前記患者への前記投与が、
-400mgのベダキリンを1~2週目に1日1回、及び200mgのベダキリンを3~24週目(及び任意選択で48週目まで、すなわち3~48週目)に週2回(投与間に少なくとも72時間)投与すること、又は
-400mgのベダキリンを1~2週目に1日1回、及び100mgのベダキリンを3~24週目(及び任意選択で48週目まで、すなわち3~48週目)に週5回投与すること、
を含む特定のレジメンからなる、方法。
【請求項4】
前記患者への前記投与が、
-400mgのベダキリンを1~2週目に1日1回、及び100mgのベダキリンを3~48週目に週5回投与することを含む特定のレジメンからなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記レジメンが、
-例えば、クラリスロマイシンである場合、800mg/日、例えば、400mgを1日2回(すなわち、400mg「bid」)、アジスロマイシンである場合、250mg/日、である、マクロライドの投与を含む、請求項1もしくは請求項2に記載の組合せ、又は請求項3もしくは請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記レジメンが、
-500~750mg qd又は最大1日用量の1gの投与を使用する、エタンブトールの投与を含む、請求項5に記載の組合せ又は方法。
【請求項7】
前記ベダキリンがベダキリンフマル酸塩の形態で投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組合せ又は方法。
【請求項8】
マクロライドがクラリスロマイシンである、請求項1~7のいずれか一項に記載の組合せ又は方法。
【請求項9】
クラリスロマイシンがクラリスロマイシン又はその塩の形態で投与される、請求項8に記載の組合せ又は方法。
【請求項10】
前記エタンブトールがエタンブトール塩酸塩の形態で投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の組合せ又は方法。
【請求項11】
前記第1、第2及び第3の薬物成分が、前記組合せにおける唯一の薬物成分である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組合せ又は方法。
【請求項12】
前記レジメンが(例えば、PAC-PDなどのNTMに関連する疾患の治療において)安全かつ有効である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組合せ又は方法。
【請求項13】
非結核性抗酸菌(NTM)に関連する疾患がNTM-PDである、請求項1~12のいずれか一項に記載の組合せ又は方法。
【請求項14】
前記疾患が、前記NTMの分離株がマクロライド耐性でないNTM-PDである、請求項13に記載の組合せ又は方法。
【請求項15】
本明細書に記載の抗菌薬の組合せが、同時投与され得る、逐次投与され得る、又は実質的に同時に投与され得る、請求項1、2、又は5~14(請求項1に従属する)のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項16】
請求項15に記載の組合せを調製するためのプロセスであって、
-前記組合せ製品の前記成分の各々を(例えば、別個の医薬製剤として)関連付け、(例えば、パーツのキットとして)共包装する、又は意図された使用が(他の成分との)組合せであることを示すこと、並びに/又は
-前記成分の各々を、前記成分を含む医薬製剤の調製において関連付けること、を含む、プロセス。
【請求項17】
非結核性抗酸菌(NTM)に関連する疾患の治療における使用のためのベダキリンであって、前記ベダキリンが、マクロライド(クラリスロマイシン)及びエタンブトールと組み合わせて投与され、
-400mgのベダキリンを1~2週目に1日1回、及び200mgのベダキリンを3~24週目(及び任意選択で48週目まで、すなわち3~48週目)に週2回(投与間に少なくとも72時間)投与すること、又は
-400mgのベダキリンを1~2週目に1日1回、及び100mgのベダキリンを3~24週目(及び任意選択で48週目まで、すなわち3~48週目)に週5回投与すること、
を含む特定のレジメンで投与される、ベダキリン。
【請求項18】
前記ベダキリンが、
-400mgのベダキリンを1~2週目に1日1回、及び200mgのベダキリンを3~48週目に週2回)(投与間に少なくとも72時間)を投与することを含む特定のレジメンで投与される、請求項17に記載の使用のためのベダキリン。
【請求項19】
前記マクロライドが、
-800mg/日、例えば1日2回400mg(すなわち、400mg「bid」)のクラリスロマイシンを含む特定のレジメンで投与される、請求項17又は請求項18に記載の使用のためのベダキリン。
【請求項20】
前記エタンブトールが、
-500~750mg qd又は最大1日用量1gのエタンブトール(例えば、エタンブトール塩酸塩)投与を含む特定のレジメンで投与される、請求項17~19のいずれか一項に記載の使用のためのベダキリン。
【請求項21】
前記ベダキリンがベダキリンフマル酸塩の形態で投与される、請求項17~20のいずれか一項に記載の使用のためのベダキリン。
【請求項22】
前記ベダキリン、マクロライド、及びエタンブトールが、投与される唯一の薬物成分である、請求項17~21のいずれか一項に記載の使用のためのベダキリン。
【請求項23】
前記レジメンが(例えば、PAC-PDなどのNTMに関連する疾患の治療において)安全かつ有効である、請求項17~22のいずれか一項に記載の使用のためのベダキリン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非結核性抗酸菌に関連する疾患の治療に使用するための薬物成分の組合せに関し、この組合せは、ベダキリンである第1の薬物成分(例えば、Sirturo(登録商標)として市販されているベダキリンフマル酸塩)と、マクロライドである第2の薬物成分(例えば、クラリスロマイシン又はアジスロマイシン)と、任意選択で、非結核性抗酸菌に対する活性を有する第3の薬物成分(例えば、エタンブトール)とを含む。組合せはまた、アミノグリコシド(例えば、注射可能又は吸入可能なアミノグリコシド)などのアミノグリコシドを含み得る。
【背景技術】
【0002】
非結核性マイコバクテリア(NTM)肺疾患は、気管支拡張症及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの既存の肺状態を有する個体間の罹患率及び死亡率の重要な原因である。
【0003】
マイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス(Mycobacterium avium complex:MAC)、マイコバクテリウム・アブセッサス(Mycobacterium abscessus:MAB)、及びマイコバクテリウム・カンサシ(Mycobacterium kansasii)は、NTM肺疾患(NTM-PD)をもたらすマイコバクテリウム種である。NTM-PDは、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる肺感染症とは異なる。マイコバクテリウム・アビウムは、MAC内のいくつかの個々の種のうちの1つであり、NTM陽性喀痰培養物の最大70%を占める(ただし、地域差がある)。MAC種は、屋内水系、温水浴槽、及びプールなどの天然水源に定着することが多い、水及び土壌において一般的な天然に存在する生物である。MAC-肺疾患(MAC-PD)は、閉経後の女性及び基礎肺疾患(嚢胞性線維症又は気管支拡張症など)又は免疫不全を有する患者において最も頻繁に見られる。臨床症状は、範囲及び強度が様々であるが、一般的に慢性咳を含み、多くの場合膿性痰を伴うが、喀血も存在し得る。全身症状としては、倦怠感、疲労、及び進行した疾患では体重減少が挙げられる。
【0004】
MAC-PDの現在の治療は、リファマイシン(リファンピンもしくはリファブチン)、マクロライド(アジスロマイシンもしくはクラリスロマイシン)、エタンブトール、及び/又はアミノグリコシド(とりわけ注射可能又は吸入可能)を含む、少なくとも3種の抗生物質の組合せによる長期抗生物質療法(しばしば18ヶ月超)を含み、これは副作用及び高い失敗率を伴う。この治療レジメンは、上記の組合せがMACに対抗してインビトロ及び臨床活性を発揮することを前提にして、現在、米国胸部学会によって推奨されており(Griffith et al.,Am.J.Respir.Crit.Care Med.,2007,175,367-415を参照)及び国際ガイドラインによって推奨されている。最近、アミカシンリポソーム吸入懸濁液(ALIS、Arikayce(登録商標))が、成人におけるMAC-PDの治療のために米国FDAによって承認されたが、それ以外では、この疾患/状態は、限定された代替治療選択肢しか有さない、又は代替治療選択肢が存在しない。MAC-PDの治療のために承認された他の抗生物質はなく、上記薬剤の推奨される使用は単に経験的なものである。
【0005】
ベダキリン、すなわち(1R,2S)-1-(6-ブロモ-2-メトキシキノリン-3-イル)-4-(ジメチルアミノ)-2-ナフタレン-1-イル-1-フェニルブタン-2-オールは、成人患者における肺多剤耐性結核(MDR-TB)の治療のための併用療法の一部として開発されたマイコバクテリウムアデノシン5’-三リン酸(ATP)シンターゼ阻害剤である。ベダキリンは、米国、日本、ロシア、EU、南アフリカ、及び大韓民国を含む地域において、Sirturo(登録商標)という商品名で特定の条件下でその適応症について承認されている。
【0006】
市販のベダキリン製品Sirturo(登録商標)は、ベダキリンフマル酸塩又は(1R,2S)-1-(6-ブロモ-2-メトキシキノリン-3-イル)-4-(ジメチルアミノ)-2-ナフタレン-1-イル-1-フェニルブタン-2-オール、フマレート塩を100mgのベダキリン活性成分と共に含有する錠剤である。フマル酸塩は、例えばイソプロパノールなどの適切な溶媒の存在下で、対応するベダキリンの遊離塩基をフマル酸と反応させることによって調製することができる。成人集団において、欧州における最初の承認は、特定の条件下での(有効な治療レジメンが、耐性又は忍容性の理由で別様に構成することができない場合)肺MDR-TBのための併用レジメンの一部としてのSirturo(登録商標)の使用に関するものである。(中でも)、Sirturo(登録商標)は、患者の分離株がインビトロで感受性であることが示されている少なくとも3つの他の医薬品と組み合わせて使用されるべきであることが示されている。インビトロ試験結果が利用できない場合、治療は、患者の分離株が感受性である可能性が高い少なくとも4つの医薬品と組合せたSirturo(登録商標)を用いて開始され得る。製品はまた、直接観察療法(DOT)によって投与されてもよい。推奨される投与量は、(i)1~2週目:400mg(100mgの4錠)1日1回、及び(ii)3~24週目:200mg(100mgの2錠)週3回(投与間に少なくとも48時間)である。Sirturo(登録商標)による治療の総期間は24週間である。組み合わせて使用される他の医薬品は、Sirturo(登録商標)による治療終了後に継続され得る、又は継続すべきである。
【0007】
ベダキリンは、薬剤耐性株を含むマイコバクテリア、特に、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、マイコバクテリウム・ボビス(M. bovis)、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・レプラエ(M. leprae)、マイコバクテリウム・マリヌム(M. marinum)、マイコバクテリウム・カンサシ、及びマイコバクテリウム・アブセッサスに対して活性を示すことが知られている。活性成分は、その塩を含めて、活性、感受性、過敏性マイコバクテリア株及び潜在性、休眠性、持続性マイコバクテリア株に対して活性を示す。
【0008】
国際公開第2004/011436号は、マイコバクテリアに対するベダキリンの遊離塩基の活性を開示している。国際公開第2005/117875号及び同第2006/067048号などの後の文献は、とりわけ薬剤耐性結核及び潜在性結核の治療におけるベダキリンの使用を開示している。国際公開第2008/068231号は、許容可能なバイオアベイラビリティを示す製剤としてのフマル酸塩の適合性を記載されている。ベダキリンのフマル酸塩は、非吸湿性で安定であると記載されている。この文献は、ベダキリンフマル酸塩を含有する特定の製剤及び錠剤の調製も開示している。
【0009】
非結核性抗酸菌(特に、マイコバクテリウム・アブセッサス及びマイコバクテリウム・アビウムにおける)に対するベダキリンの活性を考慮して、Philley et al.,Chest 2015,148(2),499-506に記載されているように、ベダキリンが適応外で使用されているという報告がある。この論文は、ベダキリンがNTM媒介疾患における有効性について臨床試験を受けていないことを示しており、ベダキリン治療の開始時に既に治療中であり、80%がマクロライド耐性分離株を有していた、1~8年間治療された患者の小規模な試験について記載している。ベダキリンは、TB試験で使用された用量に従って投与され、これらの試験において、患者はまた、コンパニオン薬物(合計5つの薬物の平均)を受けていた。上記の学会誌論文には、「ベダキリンがNTM肺疾患の管理に役割を果たすかどうかを判定し、そうであれば、適切な使用を導くために、さらなる試験が明らかに必要である」と述べられている。国際公開第2020/144197号は、NTMに関連する疾患の治療のための特定の薬物組合せを記載している。
【0010】
要約及び特定のベダキリン臨床結果が、2018年5月のサンディエゴにおける会議「Advances in the Management of Pulmonary NTM Disease」において提示され、ここで、トピックは、「Macrolide Resistant Mycobacterium Avium Complex Lung Disease Treated with Bedaquiline」と題され、患者(マクロライド耐性MAC肺疾患を有する)が、2人のNTM肺医師の裁量で与えられたコンパニオン薬物と組み合わせて、パッケージガイドラインに従ってベダキリンを投与されたことが記載された。そこでは、「マクロライド耐性MAC肺疾患のための治療選択肢は限られたままである」こと、及び「コンパニオン療法と共に使用されるベダキリンは、薬物耐性疾患のための選択肢であり得る」ことが示された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に記載されるように、現在、NTMに関連する疾患の有効な治療が必要とされている。ここで、NTMに関連する疾患の治療における臨床使用のための新規な組合せ、並びにNTMに関連する疾患の治療の新規な方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ベダキリン及びM2の平均濃度-時間プロファイル。
【
図2】クラリスロマイシン及び14-OH-クラリスロマイシンの平均濃度-時間プロファイル。
【
図3】更新された集団薬物動態モデルに基づく標準及び代替レジメンにおけるシミュレートされた平均血漿中ベダキリントラフ濃度。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、ベダキリンである第1の薬物成分と、マクロライド(例えば、クラリスロマイシン又はアジスロマイシン)である第2の薬物成分と、任意選択で、エタンブトールなどのNTMに対する活性を有する第3の薬物成分とを含む(例えば、からなる)薬物成分の組合せを提供し、そのような組合せは、特定の治療レジメンにおいて非結核性抗酸菌(NTM)に関連する疾患の治療に使用するためのものである。一実施形態では、第1の、第2の、及び任意選択の第3の薬物成分は、組合せにおける唯一の薬物成分である。一実施形態では、前述の組合せは、ベダキリンである第1の薬物成分と、マクロライド(例えば、クラリスロマイシン又はアジスロマイシン)である第2の薬物成分とを含む(例えば、からなる)。一実施形態では、第1及び第2の薬物成分は、組合せにおける唯一の薬物成分である。一実施形態では、前述の組合せは、ベダキリンである第1の薬物成分、マクロライド(例えば、クラリスロマイシン又はアジスロマイシン)である第2の成分、及びエタンブトールである第3の薬物成分を含む(例えば、からなる)。一実施形態では、ベダキリンは、ベダキリン又はその塩の形態で投与される。一実施形態では、ベダキリンは、ベダキリンフマル酸塩の形態で投与される。一実施形態では、マクロライドはクラリスロマイシンである。一実施形態では、クラリスロマイシンは、クラリスロマイシン又はその塩の形態で投与される。一実施形態では、クラリスロマイシンは、クラリスロマイシンの形態で投与される。一実施形態では、マクロライドはアジスロマイシンである。一実施形態では、アジスロマイシンは、アジスロマイシン又はその塩の形態で投与される。一実施形態では、アジスロマイシンは、アジスロマイシン二水和物の形態で投与される。一実施形態では、第3の薬物成分はエタンブトールである。一実施形態では、エタンブトールは、エタンブトールもしくはその塩の形態で、又はエタンブトール塩酸塩の形態で投与される。
【0014】
一実施形態では、必要とする患者においてNTMに関連する疾患を治療する方法であって、患者に、
(i)ベダキリンである第1の薬物成分と、
(ii)マクロライド(例えば、クラリスロマイシン又はアジスロマイシン)である第2の薬物成分と、
(iii)任意選択で、エタンブトールである第3の薬物成分とを含む(例えば、からなる)有効量の薬物成分の組合せを、
特定の治療レジメンにおいて投与することを含む方法が提供される。
【0015】
一実施形態では、組合せは、第1及び第2の薬物成分を含む(例えば、からなる)。一実施形態では、第1及び第2の薬物成分は、組合せにおける唯一の薬物成分である。一実施形態では、組合せは、第1、第2、及び第3の薬物成分を含む(例えば、からなる)。一実施形態では、第1の、第2の、及び第3の薬物成分は、組合せにおける唯一の薬物成分である。
【0016】
一実施形態では、ベダキリンは、ベダキリン又はその塩の形態で投与される。一実施形態では、ベダキリンは、ベダキリンフマル酸塩の形態で投与される。一実施形態では、マクロライドはクラリスロマイシンである。一実施形態では、クラリスロマイシンは、クラリスロマイシン又はその塩の形態で投与される。一実施形態では、クラリスロマイシンは、クラリスロマイシンの形態で投与される。一実施形態では、マクロライドはアジスロマイシンである。一実施形態では、アジスロマイシンは、アジスロマイシン又はその塩の形態で投与される。一実施形態では、アジスロマイシンは、アジスロマイシン二水和物の形態で投与される。一実施形態では、第3の薬物成分はエタンブトールである。一実施形態では、エタンブトールは、エタンブトールもしくはその塩の形態で、又はエタンブトール塩酸塩の形態で投与される。一実施形態では、第1の、第2の、及び第3の薬物成分は、組合せにおける唯一の薬物成分である。
【0017】
本明細書において言及される実施形態では、本発明の組合せは、特定の治療又は投与レジメンにおいて使用される。例えば、本明細書に開示される患者における(NTMに関連する)疾患を治療する方法は、特定の治療又は投与レジメンを有し得る。そのような治療又は投与レジメンは、以下を含み得るか、又はそれらからなり得る:
(i)ベダキリン:1~2週目:400mgを1日1回(又は「qd」)、3~24週目(及び任意選択で48週目まで、すなわち3~48週目):200mgを週2回(例えば、1週間のうち2つの異なる日に1日1回、例えば少なくとも48時間空けて、又は少なくとも72時間空けて)、
(ii)マクロライド:例えば、クラリスロマイシンである場合、800mg/日、例えば、1日2回400mg(すなわち、400mg「bid」)、アジスロマイシンである場合、250mg/日、
(iii)使用される場合、エタンブトール:1日5~50mg/kg(例えば、1日1~30mg/kg、例えば、1日15mg/kg);しかし、代替的に、投与量は、500~750mg qd(すなわち、毎日)又は最大1日用量の1gである。
【0018】
一実施形態では、そのような治療又は投与レジメンは、NTMに関連する疾患を治療するのに安全かつ有効である。
【0019】
本明細書で言及されるこれらの組合せは、本明細書において「本発明の組合せ」と称される。上記のように、本発明の組合せは、2つ又は3つの薬物成分(ベダキリン、マクロライド、及び任意選択でエタンブトール)を含み得る。本明細書で使用される場合、「薬物成分」は、抗菌剤もしくは抗生物質として分類され、及び/又はマイコバクテリアなどの病原性細菌に対して活性であり、一実施形態では、具体的には、非結核性抗酸菌(特に、マイコバクテリウム・アビウム及びマイコバクテリウム・アブセッサス)に対して活性である薬剤である。一実施形態では、本発明の組合せは、これらの2つ又は3つの薬物成分を唯一の薬物成分として含有する。一実施形態では、そのような組合せはまた、アミノグリコシド(例えば、注射可能又は吸入可能)である別の薬物成分(必要に応じて、第3又は第4の薬物成分)を含む。本明細書中で使用される場合、「マクロライド」は、抗生物質又は抗菌マクロライド医薬品(代表的には、大きな(例えば、1つ以上のデオキシ糖に結合した14員、15員、又は16員の大環状ラクトンを含む))である。マクロライドの例としては、エリトロマイシン、クラリスロマイシン、ロキシスロマイシン、アジスロマイシン、フィダキソマイシン、スピラマイシン、及び/又はトロレアンドマイシンが挙げられる。本明細書で使用される場合、「アミノグリコシド」は、アミノ修飾グリコシド構造及びグラム陰性細菌に対する活性を有する抗菌医薬剤である。アミノグリコシドの使用は、例えば、マイコバクテリア感染の重篤な症例において、又は第一選択経口療法に反応しない患者に適切であり得る。一実施形態では、特に特定の患者集団(例えば、必要とされないか、又は回避することができる場合)では、アミノグリコシドは使用されない。一実施形態では、アミノグリコシドは、規制当局から既に承認を受けている任意の好適なものであってもよく(例えば、組合せ抗菌レジメンの一部としてのマイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス肺疾患の治療のため)、例えば、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている好適なもの、例えば、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、プラゾマイシン、ストレプトマイシン、ネオマイシン、及び/又はパロモマイシンであってもよい。一実施形態では、本明細書に記載の組合せは、ベダキリン、マクロライド、アミノグリコシド、及び任意選択でエタンブトールを含む。一実施形態では、組合せは、組合せにおける唯一の薬物成分として、ベダキリン、マクロライド、アミノグリコシド、任意選択でエタンブトールを含む。そのような実施形態では、組合せ(又はそのような組合せを患者に投与することを含む治療方法)は、他の薬物成分を含まない。
【0020】
本発明の組合せは、さらなる薬物成分(2つの必要な薬物成分及び任意選択のエタンブトールに加えて)を含むことができ、「さらなる薬物成分」は、抗菌剤又は抗生物質として分類される1つ(又は複数)の薬剤であることを意味し、それによって、抗菌剤又は抗生物質であることが既に知られている又は報告されている薬剤、及び試験されて特定の抗菌/抗生閾値(例えば、所与の株の増殖を阻害する抗菌剤の最低濃度(mg/mL)を測定する、すなわち、MIC値を測定する標準的な試験又はアッセイにおいて)を達成することができる薬剤を含むことを本明細書で述べる。したがって、抗菌剤又は抗生物質は、3未満、例えば1未満又は0.5未満のMICを達成する薬剤として定義され得る(しかし、これは採用される実際の試験に依存する)。より詳細には、薬物が「NTMに対する活性」を有することが本明細書で示される場合、それは、非結核性マイコバクテリア株(例えば、マイコバクテリウム・アビウム又は別の公知の株)の増殖を阻害し、標準的な試験又はアッセイにおいて特定の閾値、例えば、本明細書において言及されるものなどのMIC(又はpIC50/pIC90)値を達成する抗菌剤を指し得る。抗菌剤又は抗生物質は、静菌(細菌の繁殖を停止させるが、必ずしも死滅させるわけではない)又は殺菌(細菌を死滅させる)的に細菌(例えば、マイコバクテリア)に対して作用し得ることが理解されるであろう。一実施形態では、上述したように、本発明の組合せは、そのような「さらなる薬物成分」を含まない。
【0021】
本発明の組合せにおける第1、第2、並びに任意選択の第3及び任意選択の第4の薬物成分(例えば、ベダキリン、マクロライド、及び一実施形態ではエタンブトール、及び一実施形態ではアミノグリコシド)は、(例えば、本明細書で定義されるように)別々に製剤化されてもよく、又は薬物成分の1つ以上(例えば、ベダキリンとマクロライド、ベダキリンとエタンブトール、マクロライドとエタンブトール、又はベダキリンとマクロライド及びエタンブトール)が一緒に製剤化されてもよい。一実施形態では、そのような薬物成分(例えば、ベダキリン、マクロライド、並びに任意選択でエタンブトール及び/又はアミノグリコシド)は、例えば、それらが(既存の承認された適応症のために)市場に出る/市販される形態で、又は本明細書に記載される形態で、別々に製剤化される。そのような組合せが別の薬物成分(例えば、必要に応じて、第3又は第4の薬物成分)、例えば、アミノグリコシド(注射可能又は吸入可能な形態など)も含む実施形態では、そのような成分も、例えば、それらが市販されている形態で、又は本明細書に記載されているように別々に製剤化される。
【0022】
様々な実施形態(患者におけるNTMに関連する疾患を治療する方法を含む)では、本発明の組合せにおける薬物成分(例えば、ベダキリン、マクロライド、任意選択のエタンブトール、及び任意選択のアミノグリコシド)を同時投与することができ、他の実施形態では、組合せの薬物成分を逐次投与することができ、さらに他の実施形態では、それらを実質的に同時に投与することができる。後者の実施形態のいくつかでは、投与は、そのような薬物成分(例えば、ベダキリン、マクロライド、任意選択のエタンブトール、及び任意選択のアミノグリコシド)を互いに30分以内に、いくつかの実施形態では互いに15分以内に服用することを伴う。いくつかの実施形態では、薬物成分(例えば、ベダキリン、マクロライド、任意選択のエタンブトール、及び任意選択のアミノグリコシド)は、少なくとも1日1回(この場合、1日1回の用量、又は1日2回の用量のうちの1つ、すなわち、そのような薬物成分が1日2回投与される場合)、毎日ほぼ同じ時間に投与される。例えば、異なる薬物成分は、所与の投与日に互いに4時間以内に、又は2時間以内に、又は1時間以内に、又はさらに他の実施形態では所与の投与日に互いに30分以内に投与される。しかしながら、一実施形態では、本発明の組合せの薬物成分(ベダキリン、マクロライド、及び任意選択でエタンブトール、及び任意選択でアミノグリコシドを含む)は、既存のガイドラインに従って(例えば、関連する活性物質が承認されている適応症(複数可)の規制ラベルに従って)投与される。
【0023】
一部の実施形態では、本発明の組合せの第1、第2、及び任意選択の第3の薬物成分は、経口カプセル剤又は経口錠剤などの別個の経口剤形として投与される。他の製剤は、固体分散体を含み得る。いくつかの実施形態では、アミノグリコシドは、注射(例えば、皮下又は静脈内)として、及び/又は吸入可能に(例えば、粉末、懸濁液、又はリポソーム懸濁液として)投与される。
【0024】
本明細書に記載の薬物成分は、遊離薬物形態で、又はその薬学的に許容される塩もしくは共結晶として使用することができる。薬物成分(遊離形態及び塩又は共結晶形態を含む)は、水を含む適切な溶媒との溶媒和物形態(例えば、水和物形態又はアルコラート形態、特に水和物、半水和物、一水和物、又は二水和物などの水和物形態)で使用することができる。ベダキリン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、及びエタンブトールは、遊離塩基形態で、又は適切な薬学的に受容可能な塩形態(例えば、酸付加塩形態)として使用され得る。一実施形態では、ベダキリンは、ベダキリン又はその塩、例えばベダキリンフマル酸塩の形態で投与される。一実施形態では、クラリスロマイシンは、クラリスロマイシンの形態で投与される。一実施形態では、アジスロマイシンは、アジスロマイシン又はその塩の形態で使用することができる。アジスロマイシンには、アジスロマイシン、又は一水和物もしくは二水和物などの水和物形態のアジスロマイシンが含まれる。一実施形態では、アジスロマイシンは、アジスロマイシン二水和物として投与される。一実施形態では、エタンブトールは、エタンブトールもしくはその塩の形態で、又はエタンブトール塩酸塩の形態で投与される。
【0025】
薬学的に許容される酸付加塩は、ベダキリン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、又はエタンブトールが形成することができる治療的に有効な非毒性酸付加塩の形態を含むと定義される。上記酸付加塩は、遊離形態の薬物成分を適切な酸、例えば無機酸、例えばハロゲン化水素酸、特に塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸及びリン酸、又は有機酸、例えば酢酸、ヒドロキシ酢酸、プロパン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p-アミノサリチル酸及びパモ酸で処理することによって得ることができる。逆に、酸付加塩形態は、適切な塩基で処理することによって遊離形態に変換することができる。特に、フマル酸塩は、これが既に市販されている製品Sirturo(登録商標)で使用されている形態であることを考慮すると、ベダキリンとみなされる。ベダキリンのフマル酸塩は、例えばイソプロパノールなどの適切な溶媒の存在下で、対応する遊離塩基をフマル酸と反応させることによって調製することができる。特に、塩酸塩は、市販されている形態であるため、エタンブトールについて考慮される。一実施形態では、マクロライド(例えば、クラリスロマイシン又はエリスロマイシン)及びエタンブトールは、市販されているか、又は保健当局によって販売が承認されている形態で投与することができる。
【0026】
本明細書中で議論される薬物成分について、各薬物成分は、単一の立体異性体形態で、又は適用可能な場合、立体異性体の混合物として使用され得る。本明細書においてベダキリンへの言及が使用されるときはいつでも、本発明者らは、市販製品Sirturo(登録商標)において使用され、抗マイコバクテリア剤として国際公開第2004/011436号に開示されている単一の立体異性体形態を指す。
【0027】
例えば、ベダキリンは、例えばフマル酸塩として製剤化され、100mgの活性成分ベダキリンを含有する錠剤として投与され得る。使用されるマクロライドがクラリスロマイシンである場合、500mg錠剤として(又は、必要とされる用量及び患者に応じて、例えば、250mg/5mLを含有する利用可能な懸濁液として)投与され得る。エタンブトールは、100mg又は400mgのエタンブトール活性成分を有する錠剤中のエタンブトール塩酸塩として(必要とされる用量に応じて)投与され得る。
【0028】
例えば、本明細書で言及される投与レジメンは、以下に定義/記載されるNTMに関連する疾患に適用可能であり、特にNTM-PDに関する。疾患の重症度もしくはタイプ又はマイコバクテリア感染の重症度もまた、用量又は投与レジメンを決定し得る。一実施形態では、NTMに関連する特定の疾患のためのマクロライド(例えば、クラリスロマイシン)及びエタンブトールの投与に関するガイドラインについて、米国胸部学会(ATS)ガイドラインに従うことができる。
【0029】
治療レジメン全体は、少なくとも24週間、例えば少なくとも32週間、例えば約48週間又は約52週間であってもよい(しかしながら、一実施形態では、治療期間は、最大18ヶ月又はさらには24ヶ月継続してもよい)。これに関して、ベダキリンの投与レジメンは、52週間の可能な期間が既に上述されており、(期間が18ヶ月又は24ヶ月に及ぶ場合、3~48週間(又は3~52週間)の投与計画が継続する);同様に、マクロライド(例えば、クラリスロマイシン又はアジスロマイシン)及び任意選択でエタンブトールの投与は、関連する期間、例えば少なくとも24週間、少なくとも32週間、例えば約48週間又は約52週間(又は別の実施形態では、最大18ヶ月又は最大24ヶ月)継続する。一実施形態では、治療レジメンはまた、例えば注射可能又は吸入可能な形態のアミノグリコシドを含む(例えば、疾患が重症である場合などのATSガイドラインが推奨する状況では、この場合、例えば、週3回の注射が投与され得る)。一実施形態では、治療レジメンは、他の薬物成分を含まない。しかしながら、例えば、別の疾患を治療するための(例えば、患者に既に投与されている可能性がある)コンパニオン薬が許容され得る(特に、そのような薬物が細菌感染以外の疾患のためのものであり、例えば、本発明の組合せの薬物成分のうちの1つ以上とのその薬物間相互作用が既に研究されている場合)が、一実施形態では、任意の他の薬物は、本明細書に記載される治療レジメン中に投与されない。
【0030】
一実施形態では、本発明の組合せにおいて使用されるマクロライドは、クラリスロマイシンである。一実施形態では、本発明の組合せにおいて使用されるマクロライドはアジスロマイシンである。
【0031】
一実施形態では、ベダキリンは、それが薬物のバイオアベイラビリティを向上させ得るため、食後に(例えば、食事の直後に、又は食物と共に)投与される。
【0032】
一実施形態では、マクロライド(例えば、クラリスロマイシン又はアジスロマイシン)及び任意選択でエタンブトールの投与は、地域のガイドラインに従う。
【0033】
一実施形態では、本発明の組合せの第1、第2、及び任意選択で第3の薬物成分は、経口投与され、投与は、毎日ほぼ同じ時間に行われる(又は、薬物成分が1日2回投与される場合、そのような投与は、1日2回用量のうちの1つを指す)。
【0034】
本開示において言及される全ての投与量は、遊離塩基当量(すなわち、特定の薬物成分の遊離塩基形態に関して計算される量)を指す。以下に与えられる値は、遊離形態等価物、すなわち、遊離形態が投与されるかのような量を表す。塩が投与される場合、量は、塩と遊離形態との間の分子量比の関数として計算される必要がある。
【0035】
本明細書に記載の1日用量は、平均体重約70kgのために計算され、小児の適用の場合、又は実質的に体重が異なる患者で使用する際には再計算されなければならない。
【0036】
本明細書で使用される組合せは、非結核性抗酸菌(NTM)に関連する疾患の治療に有用であることが本明細書で示される。治療方法も本明細書に記載され、それは、必要とする患者におけるNTMに関連する疾患の治療に関し、患者は、有効量の本発明の組合せを投与される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「患者におけるNTMに関連する疾患」という用語は、非結核性抗酸菌(特に、マイコバクテリウム・アブセッサス及びマイコバクテリウム・アビウム)に感染している患者(又は被験者、例えば、ヒト患者)を指す。特に、そのような疾患は、NTMによって引き起こされる肺疾患であり得、したがって、一実施形態では、疾患はNTM-PDである。NTM-PDは、ベダキリンが現在適応されているマイコバクテリウム・ツベルクローシスによって引き起こされる肺感染症とは異なる。マイコバクテリウム・アビウムは、MAC内のいくつかの種のうちの1つであり、NTM陽性喀痰培養物の最大70%を占める(ただし、地域差がある)。MAC種は、屋内水系、温水浴槽、及びプールなどの天然水源に定着することが多い、水及び土壌において一般的な天然に存在する生物である。MAC-PDは、閉経後の女性及び基礎肺疾患(嚢胞性線維症又は気管支拡張症など)又は免疫不全を有する患者において最も頻繁に見られる。臨床症状は、範囲及び強度が様々であるが、一般的に慢性咳を含み、多くの場合膿性痰を伴うが、喀血も存在し得る。全身症状としては、倦怠感、疲労、及び進行した疾患では体重減少が挙げられる。
【0038】
NTM-PD集団に含まれるのは、治療不応性NTM-PD患者であり、上記のように、最も一般的なNTM-PDは、MAC-PDである。したがって、一実施形態では、「NTMに関連する疾患」という用語が本明細書で言及される場合、これは一般的にNTM-PDを指し、さらなる実施形態では、治療不応性患者におけるNTM-PDを指す。さらなる実施形態では、それはMAC-PDを指し、またさらなる実施形態では、それは治療不応性患者におけるMAC-PDを指す。治療不応性MAC-PD患者は、MAC-PD感染のガイドラインベースの治療の最低6ヶ月後にMACに対して喀痰培養陽性である患者として定義される。現在の標準治療で治療された不応性患者は、治療の強化及びアミノグリコシドの使用を伴っても、治療の12ヶ月後の最終的な培養転換が約10%であるという非常に不良な臨床転帰を有する。したがって、この患者集団はまた、医学的必要性が満たされていない領域を表す。一実施形態では、NTMに関連する疾患(例えば、MAC-PDなどのNTM-PD)は、基礎肺疾患(嚢胞性線維症、又は本明細書で言及される別の疾患など)を伴う。一実施形態では、NTMに関連する疾患は、NTM-PD、MAC-PD、線維空洞型NTM-PD、又は治療不応性NTM-PDである。一実施形態では、NTM(例えば、MAC-PDなどのNTM-PD)に関連する疾患は、線維空洞型NTM-PDを含まない。一実施形態では、NTM(例えば、MAC-PDなどのNTM-PD)に関連する疾患は、嚢胞性線維症を有する患者を含まない。一実施形態では、本明細書に記載の治療を必要とする患者はまた、気管支拡張症、COPD、喘息、又は嚢胞性線維症と診断される。
【0039】
その独特の作用様式(ATPシンターゼの阻害)のために、ベダキリンは、新しいクラスの抗NTM化合物を代表し、現在、同じ薬理学的クラスに属する他の薬物は利用可能ではなく、したがって、交差耐性の可能性を最小化する。したがって、本明細書に記載の本発明の組合せは、ベダキリンがその成分であるという利点を有する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、治療されている疾患の症状の緩和を含む、医療提供者によって求められている、組織系(例えば、血液、血漿、生検)又は温血動物(例えば、ヒト)における生物学的又は医学的応答を誘発する、本発明の組合せの各成分又はその任意の薬学的に許容される塩の量を指す。
【0041】
本開示の方法に従って治療される患者は、「第一選択」患者であり得る。本明細書で使用される場合、これは、(NTMに関連する)治療されるべき疾患に対して、任意の薬物(治験薬又は承認薬)による治療を以前に受けていない患者を指す。さらなる実施形態では、治療される患者は、第一選択患者ではなく、既に治療を受けた患者、例えば、本疾患と診断された患者であって、他のガイドライン療法の6ヶ月後に依然として陽性である(すなわち、ガイドラインに基づく療法の最低6ヶ月後にMACについての喀痰培養において検査が陽性である)患者である。したがって、一実施形態では、患者は、治療不応性患者又はサルベージ患者である。さらなる実施形態では、NTMの分離株はマクロライド耐性ではない。
【0042】
今日まで、臨床治療反応を予測する代用マーカは定義されていない。「治療」についての現在の一次エンドポイントは、喀痰培養変換であり、治療の開始後6ヶ月の時点までの3つの毎月の連続陰性痰培養物として定義される。例えば、一次有効性転帰時点は6ヶ月で選択され、それは、細菌反応の大半が、最近完了した試験用ALIS中でこの期間中に発生したためであり、例えば、Griffith et al.,Am.J.Crit.Care Med.2017,195(6),814-823,and Griffith et al.,Am.J.Crit.Care Med.2018,198(12),1559-1569に記載されている。
【0043】
本明細書で言及されるように、本明細書に記載される薬物成分の組合せは、同時投与されてもよく、逐次投与されてもよく、又は(本明細書に記載されるように)実質的に同時に投与されてもよい。したがって、薬物成分のそれぞれの個々の剤形は、本明細書に記載されるように別個の形態として(例えば、別個の錠剤又はカプセル剤として)投与することができる。
【0044】
一実施形態では、本明細書で定義される組合せ製品を調製するためのプロセスであって、
-組合せ製品の成分の各々を(例えば、別個の医薬製剤として)関連付け、(例えば、パーツのキットとして)共包装する、又は意図された使用が(他の成分との)組合せであることを示すこと、並びに/又は
-成分の各々を、成分を含む医薬製剤の調製において関連付けること、を含む、プロセスが提供される。
【0045】
リファマイシンがクラリスロマイシンと組み合わされる現在のMAC-PDレジメンにおいて、例えば、Shimomura et al.,J.Pharm.Health Care Sci.2015,1,32に記載されるように、クラリスロマイシンへの曝露は、リファマイシン成分による代謝の誘導により最適以下であることが報告されている。本発明の組合せは、これを克服し得る。本発明の組合せはまた、既存の又は推奨される治療レジメン(例えば、ATSによって推奨される)よりも有効であり、より良好な安全性プロファイルを有し、かつ/又は副作用が少ないという利点を有し得る。一実施形態では、本発明の組合せは、第2相(第3週以降)において1週間に3回のベダキリンの投与を含む比較組合せよりも、より良好な有効性、又は特定の副作用(例えば、死亡、QT延長、吐気、関節痛、頭痛、喀血、胸痛、血清中トランスアミナーゼレベルの上昇、血中アミラーゼレベルの上昇、食欲不振、及び発疹)のより低い発生率及び/もしくはより低いリスクを有する。一実施形態では、本発明の組合せは、リファマイシンとの比較組合せよりも、「インフルエンザ症候群」(発熱、悪寒、倦怠感)、造血反応(白血球減少症、血小板減少症、又は急性溶血性貧血)、息切れ、ショック、アナフィラキシー、及び腎不全を含む、リファマイシン使用に関連する特定の副作用のより良好な有効性又はより低い発生率及び/もしくはより低いリスクを有する。一実施形態では、本発明の組合せは、ベダキリンについて既に確立されている安全限界内のベダキリン血漿レベルをもたらし、したがって、副作用の発生率を低減し得る。
【0046】
以下の実施例は、単なる例示に過ぎず、本開示を本明細書に記載の物質、条件、又はプロセスパラメータに限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0047】
参考例1.ベダキリンのインビトロ活性
ベダキリンは、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・カンサシなどのヒトにおいて重要な非定型種、及び成長の早いマイコバクテリウム・フォーチュイタム及びマイコバクテリウム・アブセッサスを含むマイコバクテリアに対する特異性において独特のスペクトルを有する。マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・カンサシ、及びマイコバクテリウム・アブセッサスは、NTM疾患を引き起こす原因となり得る。
【0048】
マイコバクテリウム・ツベルクローシスのベダキリン最小阻害濃度(MIC)は、耐性サブタイプにかかわらず、0.008μg/ml以下~0.12μg/mlであった。ベダキリンのMICは、概して、多くの他の抗TB剤に対して天然に耐性であり、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・アブセッサス、マイコバクテリウム・フォーチュイタム、及びマイコバクテリウム・マリヌムなどの日和見感染に関与する種を含む他のマイコバクテリア種について0.1μg/ml未満であった。マイコバクテリウム・ツベルクローシスと比較して、より高いMICが、マイコバクテリウム・アブセッサス(0.25μg/ml)及びマイコバクテリウム・ウルセランス(0.50μg/ml)の各々の1つの分離株について見出された。(以下の表を参照)。ベダキリンの活性は、マイコバクテリウム種に特異的であるようであった(Andries et al.Science,2005,37,223-227を参照)。
【0049】
【0050】
実施例2:薬物-薬物相互作用試験
本明細書では、ベダキリン及びその既知の活性代謝物(M2、ジメチル置換アミノ基のN-脱メチル化の結果として形成されるメチル置換代謝物)の測定について言及する。
【0051】
要約
方法:
第1相ランダム化クロスオーバー試験では、定常クラリスロマイシン(500mg BID(12時間毎)を14日間)が、単一用量ベダキリン(100mg;n=16)後のベダキリン及びその代謝産物(M2)の薬物動態(PK)パラメータに及ぼす効果を評価した。
【0052】
結果の概要:
ベダキリンの最大血漿中濃度(Cmax)及びCmaxを達成するための時間に及ぼす効果は観察されなかったが、5日目の単回投与後のベダキリンの平均血漿曝露は、クラリスロマイシン同時投与の10日後に14%増加し、M2のより遅い形成を伴った。
【0053】
シミュレーション試験
これらのPKデータを用いて、集団薬物動態モデリング及びシミュレーションを実施して、クラリスロマイシン(定常状態条件下)のベダキリン曝露に対する効果を決定した。さらに、シミュレーションは、クラリスロマイシンと同時投与した場合(定常状態条件下)、単剤療法(400mgを1日1回[qd]で2週間、続いて200mgを週3回で46週間、本明細書では参照レジメンと呼ぶ)と比較して、ベダキリン血漿トラフ濃度がより高い(48週目までに最大41%)ことを示した。クラリスロマイシン(定常状態条件下)を用いてシミュレートされたベダキリンレジメン(400mg qdを2週間、続いて200mgを週2回[biw]46週間)の全体的曝露は、単剤療法に匹敵した(15%未満の差)。
【0054】
結論
これらの結果に基づいて、NTM肺疾患(NTM-PD、例えばMAC-PD)に対する有効性及び安全性について調査すべきレジメンとして、(定常状態条件下で)クラリスロマイシンとのベダキリン(400mg qdを2週間、続いて200mg biwを46週間、すなわち週2回を46週間)の組合せを選択した。
【0055】
有利なことに、治療の第2段階において、薬物-薬物相互作用(及びシミュレーション)試験の結果に基づいて、ベダキリン用量を週3回から週2回に減少させることができた。そのような減少は、ベダキリン血漿中レベルが既に確立されている安全限界内に留まることを確実にすることができ、したがって潜在的な副作用を回避することができる。
【0056】
詳細な方法及び結果
方法
スクリーニング時に肥満度指数(BMI)が18.0~30.0kg/m2であり、体重が50kg以上である18~55歳(極値を含む)の健康な成人が含まれた。これは、クラリスロマイシンの定常状態条件下での単一用量ベダキリン間の薬物間相互作用を評価するために健康な成人において行われた、第1相、単一施設、2系列、非盲検、ランダム化、2元クロスオーバー試験であった。
【0057】
被験者は、コンピュータ生成ランダム化スケジュールに基づいて以下の治療群に割り当てられた。
・治療A:100mgのベダキリンの単回経口用量(1×100mgの市販の錠剤製剤、SIRTURO(登録商標)[Janssen Pharmaceutica NV,ベルギー、ベーアセ])が、1日目の朝に標準化朝食と共に服用される。
・治療B:1日目から14日目まで、12時間毎(q12h)に500mgのクラリスロマイシンの経口用量(1×500mgのフィルムコーティングされた市販の錠剤製剤、CLARITHROMYCIN SANDOZ(登録商標)(Sandoz NV、ベルギー、ビルボールデ))が、試験施設で1日目、及び2日目及び4~8日目の朝に標準化された朝食と共に(家庭での他の自己投与は、食事を伴っても伴わなくてもよい)服用され、100mgのベダキリンの単回経口用量(1×100mgの市販錠剤、SIRTURO(登録商標))が、5日目の朝に標準化された朝食と共に服用される。
【0058】
各被験者は、順序A-B又は順序B-Aとして連続して両方の治療を受け、治療の間に少なくとも28日のウォッシュアウト期間があった。各被験者の試験期間は、スクリーニング期間を除いて少なくとも62日であった。
【0059】
薬物動態評価
ベダキリン及びM2の血漿中濃度の判定のために、血液試料を、治療A及びBにおけるベダキリンの投与の2時間前からベダキリンの投与の240時間後まで採取した。クラリスロマイシン及び14-OH-クラリスロマイシンの血漿中濃度の判定のために、血液試料を、治療Bの5日目の投与の12時間後まで(投与の1、2、3、4、5、6、8、及び12時間後)、ベダキリン及びクラリスロマイシンの投与30分前に採取した。
【0060】
個々の血漿中濃度-時間データに基づいて、以下のPKパラメータを、治療Aの1日目及び治療Bの5日目に、ベダキリン及びM2について判定した:最大観察検体濃度(Cmax)、Cmaxに達するための実際のサンプリング時間(tmax)、0~72時間の検体濃度-時間曲線下面積(AUC)(AUC72h)、及び0~240時間のAUC(AUC240h)。Cmax、tmax、最小観察検体濃度(Cmin)、及び0~12時間のAUC(AUC12h)のPKパラメータを、治療Bの5日目にクラリスロマイシン及び14-OH-クラリスロマイシンについて計算した。以下のPKパラメータの代謝産物対親(M/P、M2/ベダキリン[BDQ])比も判定した:Cmax、M2/BDQ、AUC72h、M2/BDQ、及びAUC240h、M2/BDQ。
【0061】
生物分析法:血漿試料を分析して、治験依頼者の生物分析研究所(ベダキリンについてはオランダのPRA Health Sciences、クラリスロマイシン測定については米国のPPD)において検証された液体クロマトグラフィー-質量分析/質量分析アッセイを使用して、ベダキリン、M2、クラリスロマイシン、及び14-OH-クラリスロマイシンの濃度を判定した。定量範囲は、ベダキリン/M2が1~2,000ng/mL、クラリスロマイシンが20~10,000ng/mL、及び14-OH-クラリスロマイシンが5~2,500ng/mLであった。
【0062】
シミュレーション試験方法
ベダキリンの濃度データを使用して、集団薬物動態(popPK)モデリング及びシミュレーションを行った。分析は、以前に開発されたpopPKモデルに基づいて行われ、これは、健康な被験者及びベダキリン単独療法後の結核患者について、二重0次出力を有する4コンパートメントモデルであった。以前のモデルを、治療Aから収集されたデータへのその適用性について評価した(NONMEM(登録商標)における最大事後推定を使用、視覚予測チェック[VPC]及び適合度[GOF]プロットをモデル評価のために使用した)。次に、構造モデル及び共変量モデルパラメータを現在のデータ(更新モデル)に適用した。モデルパラメータの詳細を以下の表に列挙する(McLeay,S.C.,Vis,P.,van Heeswijk,R.P.,Green,B.Population pharmacokinetics of bedaquiline(TMC207),a novel antituberculosis drug.Antimicrob.Agents.Chemother.58,5315-5324(2014))。
【0063】
【表2】
BSV=被験者間変動、CL/F=見かけのクリアランス、V
c/F=見かけの中心分布容積、CL
p1-3/F=見かけのコンパートメント間クリアランス、V
p1-3/F=見かけの周辺分布容積、ALAG1=吸収遅延時間、TLAG=第2の経路の吸収の追加遅延時間、KA=吸収速度定数、D1=第1の経路の入力持続時間、D2=第2の経路の入力持続時間、FR1=デポ区画への用量の割合、RUV=不明の残差変動、CV=変動係数。
a非結核性マイコバクテリア患者についてのベダキリン曝露のシミュレーションにおいて使用される共変量(参照[CL/Fに及ぼすクラリスロマイシンの効果なし]及びレジメンA~D)。
b本試験のベイズ事後推定において考慮された共変量。
cMcLeay SC et al,2014
【0064】
次いで、ベダキリンの見かけのクリアランス(CL/F)に及ぼすクラリスロマイシンの効果を、治療A及びBからの合同PKデータを用いて推定した。パラメータ推定には一次条件付き推定法を使用し、以下の式を使用した。
CL/F=CLpop・(1+θ)CLRi
式中、CLRiはクラリスロマイシン同時投与状態値(同時投与なし=0又は同時投与=1)であり、CLpopはクラリスロマイシン同時投与なしのCL/Fについての集団中心傾向であり、θはクラリスロマイシンを同時投与した場合の見かけのベダキリンクリアランスの変化である。
【0065】
続いて、更新されたモデルを使用して、ベダキリンPKプロファイルをシミュレートして、1,000人の非黒人被験者(男性:女性=1:1)並びにMDR-TB及びNTMの同様の疾患状態の仮定に基づいて、クラリスロマイシン同時投与(定常状態条件下)のベダキリン曝露に対する影響を評価した。MDR-TBレジメン(期間:24週間)によって達成された同様のベダキリン曝露レベルが、NTM治療(期間:48週間)のために標的化されたが、クラリスロマイシン同時投与を用いた。より長い治療期間(すなわち、400mgのベダキリンを1日1回[qd]で2週間、続いて200mgを週3回[tiw]で46週間)を有する標準的なMDR-TB投与レジメンの血漿ベダキリントラフ濃度(Ctrough)プロファイルを、クラリスロマイシン同時投与(標準的なNTM治療として500mg q12hで48週間)あり又はなしでシミュレートした。MDR-TBレジメン(クラリスロマイシンなし)を、以前の試験で示されたNTM及びMDR-TBに対するベダキリンの同様の最小阻害濃度に基づいて、参照レジメンとして選択した(Huitric,E.,Verhasselt,P.,Andries,K.,Hoffner,S.E.In vitro antimycobacterial spectrum of a diarylquinoline ATP synthase inhibitor.Antimicrob.Agents.Chemother.2007,51,4202-4204)。
【0066】
参照レジメン(すなわち、ベダキリン400mgを1日1回[qd]で2週間、続いて200mgを週3回で46週間、参照レジメン)を、以下の4つのベダキリンレジメン(クラリスロマイシンあり):レジメンA(400mg qdを2週間、続いて200mgを週2回[biw]を46週間)、レジメンB(400mg qdを2週間、続いて100mg tiwを46週間)、レジメンC(400mg qdを2週間、続いて100mg biwを46週間)、及びレジメンD(400mg qdを2週間、続いて100mgを週5回を46週間)と比較した。
【0067】
popPK分析は、NONMEM7.3(ICON plc,Hanover,MD,USA)を使用し、Perl-speaks-NONMEM(PsN、バージョン4.2.0)を使用して行った。統計ソフトウェアR(バージョン3.4.1)を使用して、データ管理、探索分析、診断グラフィックス、データの後処理、及びNONMEM出力を行った。
【0068】
結果
この試験は、16人の被験者を登録し、2019年3月から2019年6月までベルギーの1つの施設で行われた。これらの16人の被験者(女性9人及び男性7人)は白人であり、年齢の中央値は43.0歳(範囲:24~55歳)であり、BMIの中央値は22.44kg/m2(範囲:18.9~29.5kg/m2)であった。全ての患者のうち、4人の患者が1回以上クラリスロマイシン用量を服用しなかった。これらのうちの1人は、主要なプロトコル逸脱として報告された。被験者は、13日目の夕方、及び14日目の朝夕に3回のクラリスロマイシン用量を服用しなかった。PK検体に及ぼす影響は予想されなかったので、何のアクションも講じなかった。
【0069】
薬物動態所見-ベダキリン及びM2
全ての被験者において、期間1における順序A-B(ベダキリン単剤療法)及び順序B-A(クラリスロマイシンとの同時投与)の単一用量ベダキリンの投与後、期間2におけるベダキリン及びM2の投与前血漿中濃度を定量した。したがって、期間2のベダキリンの単回投与前のベダキリン及びM2の血漿中濃度は、期間2におけるベダキリンの単回投与後に得られたCmax結果のそれぞれ5%未満及び10%超であった。
【0070】
ベダキリン平均血漿中濃度は、両方の治療群において投与後5時間で最大であり、その後、最初急速に減少し、続いてよりゆっくりと減少し、投与後240時間まで定量可能であった。M2平均血漿中濃度は、両方の治療群において投与後12時間でピークに達し、その後、ゆっくりと減少した(血漿中濃度が徐々に減少する前に、治療Bの後にわずかな再増加が認められた)。M2はゆっくりと形成されたが、240時間まで定量可能であった。全体的に、クラリスロマイシンと同時投与した場合、単剤療法と比較して、ベダキリン血漿中濃度はわずかに高く、M2レベルは低かった(エラー!参照ソースが見つかりません)。
【0071】
ベダキリン及びM2のPKパラメータ、並びに統計分析の要約をそれぞれ以下の表に示す。ベダキリンの平均tmax及びCmaxは両方の治療群で同様であったが、平均AUCは、治療Aと比較して治療Bでわずかに高かった。また、AUC72h(5%~6%高い)及びAUC240h(8%~18%高い)の両方について、期間1と比較して期間2でより高い値が観察された。M2は、治療Bにおいてよりゆっくりと形成され(治療Bについての中央値tmax23.91時間対治療Aについての12.00時間)、Cmax及びAUC(それらのM/P比を含む)は顕著に減少した。全てのM2 PKパラメータは、期間1と比較して期間2において高かった(治療AではCmax、AUC72h、及びAUC240hについてそれぞれ36%、41%及び46%高く、治療Bでは2.2倍、2.1倍及び2.1倍高かった)。
【0072】
【表3】
AUC
72h=0~72時間の検体濃度-時間曲線下面積、AUC
240h=0~240時間の検体濃度-時間曲線下面積、C
max=最大観察血清中濃度、C
min=最小観察検体濃度、M/P=代謝産物/親比、M/P比AUC
72h=M2のAUC
72hをベダキリンのAUC
72hで割ったもの、M/P比AUC
240h=M2のAUC
240hをベダキリンのAUC
240hで割ったもの、M/P比C
max=M2のC
maxをベダキリンのC
maxで割ったもの、n=被験者数、SD=標準偏差、t
max=最大観察検体濃度に到達するための実際のサンプリング時間。
*t
maxは中央値(範囲)で示される。
#分子量について補正されたM/P比(ベダキリン:555.50g/mol及びM2:541.47g/mol)。
治療A:1日目に100mgのベダキリンの単回投与、治療B:12時間毎にクラリスロマイシン500mgを14日間(1~14日目)、5日目にベダキリン100mgを単回投与。
【0073】
全体として、クラリスロマイシンは、ベダキリンと同時投与された場合、ベダキリン吸収のtmax及びCmaxに影響を及ぼさなかったが、AUC240hについての有意な期間効果(p=0.0005)と共に、AUCを増加させた(AUC72hについて12%[p=0.0011]及びAUC240hについて14%[p=0.0002])。M2の血漿曝露(Cmax、AUC72h、及びAUC240hについてそれぞれ52%、51%、及び42%)及びM/P(Cmax、AUC72h、及びAUC240hについて52%、56%、及び49%)は、全てのPKパラメータについて有意な期間効果と共に有意に減少した(p<0.0001)。
【0074】
クラリスロマイシン及び14-OH-クラリスロマイシン
クラリスロマイシン及び14-OH-クラリスロマイシンの平均血漿中濃度-時間プロファイルが提示される。エラー!参照ソースが見つかりません。5日目の朝、クラリスロマイシン及び14-OH-クラリスロマイシンの投与前平均血漿中濃度は、それぞれ1,281ng/mL及び797ng/mLであった。濃度は、投与後3時間でピークに達し、その後、投与後12時間まで(すなわち、夕前投与)徐々に減少し、定常状態が達成されたことを示した。平均Cmax及びCminは、それぞれ、クラリスロマイシンについては2,972ng/mL及び976ng/mL、14-OH-クラリスロマイシンについては1,152ng/mL及び636ng/mLであった。クラリスロマイシン投与の5日後のクラリスロマイシン及び14-OH-クラリスロマイシンの詳細なPK結果を以下の表に示す。
【0075】
【表4】
AUC
12h=0~12時間の検体濃度-時間曲線下面積、C
max=最大観察血清中濃度、C
min=最小観察検体濃度、n=被験者数、SD=標準偏差、t
max=最大観察分析物濃度に到達するための実際のサンプリング時間。
*t
maxは中央値(範囲)で示される。
【0076】
モデリング結果
定常状態のベダキリン薬物動態のシミュレーション
更新されたモデルに基づいて、MDR-TBレジメンにおけるクラリスロマイシン同時投与によるシミュレートされた血漿中ベダキリンCtroughは、単剤療法と比較して、24週目(33%、すなわち、1154±576ng/mL対869±481ng/mL)及び48週目(41%、すなわち、1542±832ng/mL対1095±661ng/mL)でより高いことが見出された。
【0077】
次いで、参照レジメンを、クラリスロマイシンを伴うベダキリンの4つのレジメンと比較した。レジメンB及びCは、より低い平均血漿中ベダキリンC
troughプロファイルを示したが(それぞれ21%及び46%)、C
troughプロファイルは、参照レジメンと比較して、レジメンA及びDについて同等であった(14%未満の差)(
図3)。2、24、及び48週目のC
max、AUC
24h、及びAUC
168hについてレジメンA及びDを参照レジメンと比較すると、それらの曝露プロファイルは、以下の表に示されるように、レジメンDにおける24週目のC
maxを除いて類似していた(15%未満の差)(レジメンDでは20%超の差)。
【0078】
【表5】
AUC=血漿中濃度-時間曲線下の面積、C
max=最大観察血清中濃度、C
trough=トラフ濃度、SD=標準偏差、wk=週。
*レジメンA又はDにおける平均曝露/MDR-TBレジメンにおける平均曝露。
#第2週のAUC
24h、第24週及び第48週のAUC
168h。
MDR-TBレジメン:400mgのベダキリンを1日1回2週間、続いて200mgを週3回(クラリスロマイシンなし)、
レジメンA:クラリスロマイシンと共に、400mgを1日1回で2週間、続いて200mgを週2回で46週間、
レジメンD:クラリスロマイシンと共に、400mgを1日1回で2週間、続いて100mgを週5回で46週間。
【0079】
考察
ベダキリンは、現在、NTMに対する試験のために想定されているため、これは、将来の試験(例えば、第2/3相治験)及び治療のための適切な投薬レジメン/投与レジメンを選択するために、ベダキリンとクラリスロマイシンとの間のPK相互作用を評価する最初のヒト試験であった。ベダキリンはCYP3A4基質であり、クラリスロマイシンはCYP3A4阻害剤として作用し得る。したがって、この試験は、負荷期及び維持期の両方におけるベダキリンの特定の用量を特定するために必要であった。例えば、クラリスロマイシンがベダキリンの曝露を増加させた場合、この試験は、両方の治療期(負荷期及び維持期)のためのベダキリン用量及びスケジュールの選択に有益である。このようにして、本試験は、NTM、例えば肺MAC感染(MAC-PD)などの肺NTM(NTM-PD)に関連する疾患の治療のための安全かつ有効な投薬レジメン/投与レジメンを想定する。
【0080】
期間1におけるベダキリン単独又はクラリスロマイシンとの投与に続いて、全ての被験者について、ベダキリン投与前の期間2において、ベダキリン及びM2の血漿中濃度を評価した(それぞれ、ベダキリン及びM2についての第2の単回投与に関連するCmaxの5%未満及び10%超)。ベダキリン及びM2の血漿中濃度は、両方の治療においてベダキリン投与後240時間まで定量可能であり、キャリーオーバー効果が期間2において認められた(ベダキリン:より高いAUC72h及びAUC240h;M2:より高いCmax、AUC72h、及びAUC240h)。これは、ベダキリンの非常に長い最終消失半減期(5.5ヶ月)と比較して、両方の治療期間の間の比較的短いウォッシュアウト期間によるものであり、そのカチオン両親媒性特性のためであった(van Heeswijk,R.P.,Dannemann,B.,Hoetelmans,R.M.Bedaquiline:a review of human pharmacokinetics and drug-drug interactions.J.Antimicrob.Chemother.2014,69,2310-2318)。結果は、MDR-TB患者における8週間のベダキリンレジメンの以前のランダム化試験と一致しており、ここで、ベダキリン及びM2は、治療終了の96週間後であっても定量可能であり、平均最終消失半減期はそれぞれ164日及び159日であった(Diacon,A.H.,et al.Randomized pilot trial of eight weeks of bedaquiline(TMC207)treatment for multidrug-resistant tuberculosis:long-term outcome,tolerability,and effect on emergence of drug resistance.Antimicrob.Agents.Chemother.2012,56,3271-3276)。エラー!参照ソースが見つかりません。ベダキリンは投与後5時間以内に最大濃度に達し、これは薬物投与の4~6時間以内にCmaxに達した以前の試験と一致する。
【0081】
ベダキリンのCmax及びtmaxはクラリスロマイシン同時投与によって影響を受けなかったが、ベダキリンの平均血漿中濃度はわずかに高かった(M2及びM/P比についてのCmax及びAUCの減少を伴う)。クラリスロマイシンが潜在的にCYP3A4阻害剤として作用することを考慮すると、クリアランスの減少と共に、このベダキリンの血漿曝露の増加を考慮する必要があった。クラリスロマイシン(ベダキリンと組合せて)の平均血漿中濃度は、投与の3時間後にピークに達し、続いて投与の12時間後まで徐々に減少し、試験において定常状態が達成された。クラリスロマイシンのPKプロファイルは既に十分に確立されている。
【0082】
要約すると、クラリスロマイシンの単一用量ベダキリンとの同時投与は、ベダキリンのCmax及びtmaxに影響を及ぼさなかった。しかしながら、その血漿曝露は増加し、M2の血漿曝露は減少した。全体として、単一用量ベダキリンはまた、単独で又はクラリスロマイシンと組合せてのいずれかで、安全かつ十分に許容されるようである。しかしながら、これは長期試験において評価される必要がある。
【0083】
popPKモデリングに基づいて、単剤療法としてのそのクリアランスと比較した見かけのベダキリンクリアランスに対するクラリスロマイシンの効果は、-37%であると推定された。さらに、クラリスロマイシン同時投与によるベダキリンのシミュレートされたCtroughは、その単剤療法と比較して24週目及び48週目でより高いことが見出され、このことは、特に維持期間におけるベダキリン用量の減少が保証されることを示唆する。MDR-TBにおいて現在使用されているレジメンのものと同様のベダキリン曝露に基づいて、ベダキリン(400mg qdを2週間、続いて200mg biwを46週間、レジメンA)及びクラリスロマイシン(400mgbid)の組合せが、NTM-PD(例えば、MAC-PD)の治療において使用され得る適切なレジメンであることが見出された。このレジメンの安全性及び有効性は、今後の試験において確認される。
【0084】
上記を考慮して、NTM-PD(例えば、MAC-PD)疾患の治療のためのさらなる試験のために、クラリスロマイシンとのベダキリンの併用レジメン(400mg qdを2週間、続いて200mg biwを46週間)を選択した。
【0085】
実施例3:インビボ試験
目的
主目的
主目的は、治療不応性MAC-PDを有する成人患者においてマクロライド(クラリスロマイシン)及びエタンブトールによる治療レジメンの一部として投与された場合の、リファマイシン(リファブチン又はリファンピン)と比較した24週目のベダキリンの有効性を評価することである。
【0086】
副次的目的
副次的目的は以下の通りである。
・7H10又は7H11寒天培地における微生物評価:治療不応性MAC-LDを有する成人参加者において、CAM及びEBを用いた治療レジメンの一部として投与された場合のリファマイシンと比較したBDQの24週目での有効性を評価すること。
・臨床評価:治療不応性MAC-LDを有する成人参加者において、CAM及びEBを用いた治療レジメンの一部として投与された場合のリファマイシンと比較したBDQの24週目での有効性を評価すること。
・微生物評価:治療不応性MAC-LDを有する成人参加者における試験介入の48週目での有効性を評価すること。
・臨床評価:治療不応性MAC-LDを有する成人参加者における試験介入の有効性を評価すること。
・微生物評価:治療不応性MAC-LDを有する成人参加者における試験介入の60週目での有効性を評価すること。
・治療不応性MAC-LDを有する成人参加者における試験介入の及び忍容性を評価すること。
・BDQ(及び代謝産物M2)、及びCAM(及び代謝産物4-OH-CAM[任意選択])のPKを評価すること。
【0087】
エンドポイント
一次評価項目
治験治療の開始後24週目のMGIT(マイコバクテリア増殖指標管)における喀痰培養転換(少なくとも25日間隔で採取された3つの連続陰性毎月痰培養物として定義される)を有する参加者のパーセンテージ。
【0088】
副次的エンドポイント
二次エンドポイントは以下の通りである:
・24週目の7H10又は7H11寒天培地における喀痰培養転換(少なくとも25日間隔で採取された3回の連続陰性痰培養として定義される)を有する参加者のパーセンテージ。
・24週目の患者報告健康状態のSGRQの総スコアのベースラインからの変化。
・-48週目のMGIT及び7H10又は7H11寒天培地において喀痰培養転換(少なくとも25日間隔で採取された3回の連続陰性痰培養として定義される)を有する参加者のパーセンテージ、-活動のスケジュール毎に2週目以降の各来院時に、MGIT及び7H10又は7H11寒天培地それぞれにおいて喀痰培養陰性を有する参加者のパーセンテージ、-48週目までのMGITにおける喀痰培養転換(少なくとも25日間隔で採取された3回の連続陰性痰培養として定義される)までの時間、-48週目までのMGITにおける陽性までの時間。
・-48週目及び60週目の患者報告健康状態のSGRQの総スコアのベースラインからの変化、-24週目、48週目及び60週目の肺機能パラメータのベースラインからの変化、-24週目まで、48週目まで(A群)、及び60週目まで(B群)にMAC-LD治療レジメンの変更を受けた参加者の割合。
・60週目のMGIT及び7H10又は7H11寒天培地において喀痰培養転換(少なくとも25日間隔で採取された3回の連続陰性痰培養として定義される)を有する参加者のパーセンテージ。
・60週目までのAEの評価、臨床検査評価、12誘導ECG、バイタルサイン、身体検査、視覚検査、及び聴覚検査に基づく安全性及び忍容性。
・1日目、2週目、8週目、12週目、24週目、及び48週目のBDQ(及び代謝産物M2[任意選択])、並びに1日目、2週目、8週目、12週目、及び24週目のCAM及び代謝産物4-OH-CAM[任意選択])のPK曝露。
【0089】
試験計画
これは、MACによる治療不応性NTM-PDを有する成人患者の治療における、リファマイシン+マクロライド(クラリスロマイシン)及びエタンブトールに対する、ベダキリン+マクロライド(クラリスロマイシン)及びエタンブトールの有効性を評価するための、多施設、ランダム化非盲検、能動制御、第2a相試験である。
【0090】
MACによる治療不応性NTM-PDを有する成人参加者(ガイドラインベースの治療の最低6ヶ月後にMACに対して喀痰培養陽性である患者として定義される)が登録される。一実施形態では、線維空洞型NTM-PD及び嚢胞性線維症を有する被験者は除外される。
【0091】
全ての適格基準を満たす参加者は、以下の2つの治療レジメンのうちの1つを受けるように1:1の比率でランダム化される。
・比較群A:リファマイシン*+クラリスロマイシン400mg1日2回+エタンブトール500~750mg qd(1日1回)(最大1日用量1g)[あるいは、1日あたり15mg/kgのガイドライン用量に従ったエタンブトールの用量が使用されてもよい]。
・治療群B:ベダキリン**+クラリスロマイシン400mg1日2回+エタンブトール500~750mg qd(1日1回)(1gの最大1日用量)[あるいは、1日あたり15mg/kgのガイドライン用量に従ったエタンブトールの用量が使用されてもよい]。
*参加者はリファンピシン(1日1回450mg、最大1日用量600mg)を投与され得る。リファンピシンが無効であるか又は使用できない場合、リファブチン(1日1回300mg)が考慮されるべきである。
**参加者は以下のようにベダキリンを投与される。
1~2週目:400mg(100mgの4錠)qd。
3~48週目:200mg(100mgの2錠)、週2回(投与間に少なくとも48時間)。
【0092】
被験者は、治験依頼者により又は治験依頼者の監督下で試験前に準備された、コンピュータ生成ランダム化スケジュールに基づいて、2つの治療群のうちの一方にランダムに割り当てられた。ランダム化は、ランダムに並べ替えられたブロックを使用することによってバランス調整される。
【0093】
全ての試験薬物は経口投与され、薬物投与は毎日ほぼ同じ時間に行われるべきである。
【0094】
試験は、スクリーニング期間(1ヶ月)、ベースライン来院(1日目)、12ヶ月の非盲検治療期間(1日目~48週目)、及び3ヶ月の追跡期間(48週目~60週目)からなる。各被験者の全試験期間はおよそ15週間となる。参加者は、最初の3ヶ月間は隔週で、その後は16、20、24、32、40、48、及び60週目に試験来院のために戻る。
【0095】
全ての被験者は、長期の安全性及び忍容性、薬物動態、TB治療転帰、並びに抗マイコバクテリア情報を収集するために、ベースライン後120週まで追跡される。試験薬物及び試験手順を早期に中断する被験者は、試験から撤退する(例えば、同意/了承を撤回する)場合を除き、ベースライン後120週まで生存について追跡調査される。全試験期間(治療及び追跡段階を含むが、スクリーニング段階を除く)は、各参加者について120週間である。試験は、試験に参加した最後の参加者の最後の来院で完了したとみなされる。
【0096】
ベダキリンのバイオアベイラビリティを改善するために、バイオアベイラビリティを約2倍改善し得るため、食物と共にベダキリンが投与されるべきである。
【0097】
試料サイズの決定
類似集団におけるアミカシンリポソーム吸入懸濁液の2回の臨床試験(第2相及び第3相)の結果に基づいて、この試験におけるリファマイシン含有レジメンは、治療の24週間後に10%に等しいと推定される喀痰培養転換率を有することが予想される。
【0098】
180人の参加者(A群:ベダキリン含有レジメンにおける90人、B群:リファマイシン含有レジメンにおける90人)の試料サイズは、約90%のパワーを有し、治療意図(ITT)集団に対するカイ二乗検定(5%両側有意水準)に基づいて、24週目に喀痰転換を有する参加者の割合における20%の差を示す。
【0099】
統計分析:
カイ二乗検定(5%両側有意水準)を使用して、24週目のMGITにおける痰培養転換率を比較する。喀痰培養転換の評価能力に影響を与える喀痰試料(すなわち、少なくとも25日間隔で採取された3つの連続陰性痰培養物)を欠いている参加者は、分析において非転換者に帰属する。個別化されたレジメンへの治療レジメンの変更を必要とする参加者も非転換者とみなされる。2つの陰性培養物の間に生じる汚染された喀痰培養物又は培養失敗は、「データなし」と解釈され、3つの連続した陰性培養の評価に関して無視される。
【国際調査報告】