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▶ ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェンの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ソーラーパネル裏側のコーティング
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20231121BHJP
   C08L 101/10 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01L31/04 560
C08L101/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528319
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2021081234
(87)【国際公開番号】W WO2022101261
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】20207599.0
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ムカイ,バルバラ
(72)【発明者】
【氏名】シュタインバッハ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ミッターバウアー,ヨーゼフ
【テーマコード(参考)】
4J002
5F251
【Fターム(参考)】
4J002BB02W
4J002BB11W
4J002BB17W
4J002BB18W
4J002BG07W
4J002CF00W
4J002CG00W
4J002CH05W
4J002CK02W
4J002CK04W
4J002CL00W
4J002CP03X
4J002CP05W
4J002GL00
4J002GQ00
5F251JA02
5F251JA05
5F251KA07
(57)【要約】
本発明は、ソーラーパネル裏側の修理方法、それにより得られる修理されたソーラーパネル裏側、および修理を必要とするサイトを少なくとも1つ含むソーラーパネル裏側を修理するための硬化性組成物の使用を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)ソーラーパネル裏側の少なくとも一部に少なくとも1つの硬化性組成物を適用する工程であって、前記ソーラーパネル裏側の少なくとも一部は、修理を必要とするサイトを少なくとも1つ含む工程;および
ii)前記硬化性組成物を硬化させて、修理されたソーラーパネル裏側を得る工程
を含み、少なくとも1つの硬化性組成物は湿気硬化性組成物であることを特徴とする、ソーラーパネル裏側の修理方法。
【請求項2】
修理を必要とするサイトは、ソーラーパネル裏側におけるクラック、マイクロクラック、引っ掻き傷、亀裂、穴、破れ、裂け目および割れ目の1以上から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの硬化性組成物を適用する前に、修理を必要とするサイトを少なくとも1つ含むソーラー裏側の少なくとも一部を清浄化する更なる工程を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
硬化性組成物は、硬化性変性シラン樹脂組成物および硬化性シリコーン樹脂組成物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの硬化性組成物は一液型(1K)または二液型(2K)硬化性組成物であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの硬化性組成物は変性シラン(MS)型樹脂組成物であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの硬化性組成物は、
i)少なくとも1つの、式(I):
Y-[(CR1 2)b-SiRa(OR2)3-a]x (I)
[式(I)中、
Yは、窒素、酸素、硫黄または炭素を介して結合しているx価のポリマー基を表し、
Rは、独立して、任意に置換されていてよい一価のSiC結合炭化水素基から選択され、
は、独立して、水素、または窒素、リン、酸素、硫黄若しくはカルボニル基を介して炭素原子に結合していてよく、任意に置換されていてよい一価の炭化水素基から選択され、
は、独立して、水素、または任意に置換されていてよい一価の炭化水素基から選択され、
xは、1~10の整数、好ましくは1、2または3、特に好ましくは1または2であり、
aは、独立して、0、1および2、好ましくは0および1から選択され、
bは、独立して、1~10の整数、好ましくは1、3およびは4、特に好ましくは1および3、特に1から選択される]
で示される化合物;
および/または
ii)少なくとも1つの、式(V):
R6 c(R7O)dR8 eSiO(4-c-d-e)/2 (V)
[式(V)中、
は、独立して、水素、任意に置換されていてよい一価のSiC結合脂肪族炭化水素基、または式(V)で示される単位の2つを架橋する任意に置換されていてよい二価の脂肪族炭化水素基から選択され、
は、独立して、水素、または任意に置換されていてよい一価の炭化水素基から選択され、
は、独立して、任意に置換されていてよい一価のSiC結合芳香族炭化水素基から選択され、
cは、0、1、2または3であり、
dは、0、1、2または3、好ましくは0、1または2、特に好ましくは0または1であり、
eは、0、1または2、好ましくは0または1であり、
ただしc+d+eの和は3以下であり、
一実施形態では、式(V)で示される単位の少なくとも40%において、c+eの和は0または1に等しい]
で示される単位を含有する化合物
を含んでなることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの硬化性組成物は、少なくとも1つの、請求項7に記載の式(I)で示される化合物を含んでなることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の方法で得られる、修理されたソーラーパネル裏側。
【請求項10】
修理を必要とするサイトを少なくとも1つ含むソーラーパネル裏側を修理するための硬化性組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーパネル裏側の修理方法、それにより得られる修理されたソーラーパネル裏側、および修理を必要とするサイトを少なくとも1つ含むソーラーパネル裏側を修理するための硬化性組成物の使用を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ソーラーパネルバックボードは、ソーラーパネルの背面にある。それは、モジュール内のセルを保護および支持する役割を果たし、堅牢な絶縁性および耐水性を備えている。しかし、ソーラーモジュールのバックボードを屋外で一定期間使用した後、バックボードには徐々に、経年劣化、および黄変、ピンホール、チョーキング、マイクロクラックおよびクラックなどのクラック現象の問題が生じ、運転中にモジュールの安全要件を満たすことができなくなる。また、ソーラーモジュールの輸送および設置の際、モジュールのバックボードの一部が破損したり引っ掻き傷がついたりする場合があり、それらが原因でモジュールの運転時に安全上の問題や機能上の問題が発生することもある。
【0003】
これまで、ソーラーバックボードの破損部分を対象とした適当な修理方法は見出されておらず、破損したモジュール全体を交換する方法しか採用されていない。この方法では、少ない数のモジュールの交換しか実現できず、大規模なバッチで交換するには非常にコストがかかり、使用済みのモジュールは回収が難しく、環境汚染の原因にもなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような背景を考えると、現場で適用でき、環境に優しく、廃棄物がなく、低コストで、保証期間内であれば破損したモジュールの正常な運転を可能にする方法を開発することは非常に重要である。
【0005】
従って、引っ掻き傷、穴、クラックおよびマイクロクラックなどの様々な種類の欠陥を修理するのに十分柔軟で、経済的に効果的で、迅速な、ソーラーパネル裏側(即ちソーラーバックボード)の修理方法に対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この要求は、本発明の対象によって充足される。本明細書で提供されるものは、迅速かつ取り扱いが容易で、経済的に効果的で、柔軟性の高いという点で、最先端の修理方法の前記問題を克服する、ソーラーパネル裏側の修理方法である。
【0007】
本発明の方法は、支持および/または保護用の裏側(すなわち、ソーラーバックボード)を有するあらゆる種類のソーラーパネルに使用することができる。
【0008】
一実施形態では、本発明の方法は、
i)ソーラーパネル裏側の少なくとも一部に少なくとも1つの硬化性組成物を適用する工程であって、前記ソーラーパネル裏側の少なくとも一部は、修理を必要とするサイトを少なくとも1つ含む工程;および
ii)前記硬化性組成物を硬化させて、修理されたソーラーパネル裏側を得る工程
を含み、少なくとも1つの硬化性組成物は湿気硬化性組成物であることを特徴とする、ソーラーパネル裏側の修理方法に関する。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、上記方法により得られる、修理されたソーラーパネル裏側に関する。
【0010】
更に別の実施形態では、本発明は、修理を必要とするサイトを少なくとも1つ含むソーラーパネル裏側を修理するための硬化性組成物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれに限定されない。これらの実施形態が、本発明の方法の例示にすぎないことは理解されるべきである。当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく多くの修正および適応が可能であることが、容易に理解されるであろう。
【0012】
本明細書で使用される「1以上」は、「少なくとも1」に関連し、言及される種の1、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ以上を含む。同様に、「少なくとも1」は、「1以上」、即ち、1、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ以上を意味する。
【0013】
本明細書において、「a」および「an」および「少なくとも1」という用語は、「1以上」という用語と同じであり、交換可能に使用することができる。
【0014】
数値に関して本明細書で使用される「約」は、前記値±10%、好ましくは±5%を意味する。
【0015】
本明細書で使用される「液体」という用語は、室温(約15℃~約25℃)で流動性、注入可能および/または噴霧可能な化合物または化合物の混合物を指す。
【0016】
本明細書では、i)ソーラーパネル裏側の少なくとも一部に少なくとも1つの硬化性組成物を適用する工程であって、前記ソーラーパネル裏側の少なくとも一部は、修理を必要とするサイトを少なくとも1つ含む工程;およびii)前記硬化性組成物を硬化させて、修理されたソーラーパネル裏側を得る工程を含む、ソーラーパネル裏側の修理方法が提供される。
【0017】
本発明では、修理を必要とするサイトを少なくとも1つ含むソーラーパネル裏側は、何らかの破損があるソーラーパネル裏側である。ソーラーパネル裏側の破損には、ソーラーパネル裏側における膨れ、クラック、マイクロクラック、引っ掻き傷、亀裂、穴、破れ、裂け目および割れ目が包含されるが、これらに限定されない。より具体的には、本発明では、そのような破損はソーラーパネルバックボードに存在する。また、ソーラーパネル裏側に存在する破損は、ソーラーパネル裏側(例えば、ソーラーパネル裏側の外面)に典型的には生じ得る前記種類のあらゆる破損の集合体を構成し得る。従って、破損したソーラーパネル裏側は、前記種類の破損の1以上を含み得る。また、破損したソーラーパネル裏側は、限定されるものではないが例えばソーラーパネルバックボード外面の1つの異なる部分での一連の引っ掻き傷、および限定されるものではないが例えばソーラーパネルバックボード外面の別の異なる部分での一連のクラックおよび/またはマイクロクラックなどの、修理が必要な1以上の異なるサイトを含み得る。従って、様々な実施形態では、修理を必要とするソーラーパネル裏側のサイトは、ソーラーパネル裏側におけるクラック、マイクロクラック、引っ掻き傷、亀裂、穴、破れ、裂け目および割れ目の1以上から選択される。
【0018】
本発明の方法では、工程i)(および後に説明および定義する可能な追加の適用工程)による少なくとも1つの硬化性組成物の均一な適用、それにより適用された硬化性組成物の十分な硬化、および最終的に硬化した組成物の十分な接着を可能にするため、工程i)(および後に説明および定義する可能な追加の適用工程)の前に、ソーラーパネル裏側の外面を清浄化してよい。清浄化は、ソーラーパネル裏側の外面全体、即ち外面、またはソーラーパネル裏側、即ちソーラーパネルバックボードの外面の清浄化を含み得、或いはソーラーパネル裏側のある部分のみ、即ちソーラーパネル裏側の外面のある部分のみ、例えば上述したような修理が必要なサイトのみおよび/または上述した修理を必要とするサイト周辺のみの清浄化を含み得る。従って、様々な実施形態では、本明細書に記載の方法は、工程i)による少なくとも1つの硬化性組成物の適用の前に、修理を必要とするサイトを少なくとも1つ含むソーラー裏側の少なくとも一部を清浄化する更なる工程を含む。
【0019】
本明細書で記載するソーラーパネル裏側の清浄化には、ソーラーパネル裏側、即ちソーラーパネル裏側の外面、即ちソーラーパネルバックボードの外面(の一部)を手動でおよび/または機械を用いて清浄化することが包含され得る。限定されるものではないが、例えば、手動の清浄化には、あらゆる液体および/または粒子状異物、即ちソーラーパネル裏側の外面の固有部品ではないソーラーパネル裏側の外面上に存在するあらゆる物質、例えば環境に由来するソーラーパネル裏側のあらゆる汚れ、例えば水(雨水)、埃、花粉など、およびそれらの混合物、並びに例えばソーラーパネル自体からの埃状残留物(これは、フィルム裏側の劣化が原因で発生することがある)、二酸化チタン、チョーク、炭酸カルシウムなどの充填材を含むか、またはそれらからなる、おそらく埃状の残留物の拭き取りおよび/またはブラシでの払い落としが含まれ得る。また、ソーラーパネル裏側から清浄除去されるべき異物には、限定されるものではないが、例えば、ソーラーパネルの取り扱いによって、即ち例えば素手でソーラーパネル裏側に触れることによってもたらされ得る脂肪性残留物が包含され得る。手動での清浄化に加えてまたは代えて、清浄化は、機械を用いた清浄化であってもよく、それには、例えば、上述したような、ソーラーパネル裏側の外面から清浄除去されるべき異物の吹き飛ばしが含まれ得るが、それに限定されるものではない。
【0020】
様々な実施形態では、上述した清浄化はまた、溶媒または洗剤などの1以上の清浄化助剤を、必要に応じて水と組み合わせて使用することを含み得る。本明細書で説明される使用に適したそのような製品は、当技術分野で周知であり、当業者によって容易に理解されるであろう。本明細書で説明される使用に適した溶媒には、一般に、極性溶媒および非極性溶媒が含まれる。極性溶媒の非限定的な例には、アンモニア、酢酸、n-ブタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、エタノールおよびメタノールなどの極性プロトン性溶媒が含まれる。極性非プロトン性溶媒の非限定的な例には、ジクロロメタン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、およびジメチルホルムアミドが含まれる。非極性溶媒の非限定的な例には、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、およびクロロホルムが含まれる。ブタノールとエタノールの混合物などのアルコール混合物といった溶媒混合物も、本発明における適用に適している。本発明における適用に適した市販の清浄化液の非限定的な例は、Loctite SF 7063TMおよびONDERITE C-IC 144、BONDERITE C-AK 5800、およびTeroson SB 450(全てHenkelから入手可能);Teroson PU 8550(Henkelから入手可能);並びに太陽光電池モジュールおよびソーラーモジュールのための洗浄液HERWETEC Schukolin(登録商標)(Herwetecから入手可能)である。
【0021】
上述したソーラーパネル裏側の清浄化には、1回の清浄化工程または複数回の清浄化工程が含まれ得、各清浄化工程では、異なった清浄化方法および/または製品を適用してもよい。
【0022】
上記方法の工程i)によりソーラーパネル裏側、即ちソーラーパネル裏側の外面、即ちソーラーパネルバックボードの外面に適用される少なくとも1つの硬化性組成物は、例えば、前記硬化性組成物を含むチューブ、カートリッジ、バレル、バケツ、ホボックなどの容器から直接、場合により、前記硬化性組成物の取り扱いおよび適用を容易にするためにチューブなどの前記容器の開口部に取り付けられた適当に成形および寸法決めされたノズルなどの分配補助手段を介して、手動で適用できる。前記硬化性組成物の適用および/または拡張は、スパチュラ、ブラシ、ローラー、または他の器具若しくは道具、またはそれらの組み合わせによって、更に容易になり、補助され得る。また、上記方法の工程i)による少なくとも1つの硬化性組成物の適用は、機械を用いて行ってもよく、例えば、限定されるものではないが、例えば、スプレーガンである空気圧式ディスペンスガンなどのディスペンスガンの使用が包含され得る。器具および/または道具は、具体的な分配および適用のニーズに合わせて選択できる。例えば、修理する破損が、ソーラーパネル裏側、即ちソーラーパネル裏側の外面のかなりの部分にわたって広がっている場合、本発明の方法の工程i)による少なくとも1つの硬化性組成物の広い範囲の適用が望まれるかもしれない。そのような場合、上述した修理を必要とするサイトを少なくとも1つ含むソーラーパネル裏側の少なくとも一部などの、破損したソーラーパネル裏側の上への、少なくとも1つの硬化性組成物の比較的容易かつ迅速で材料および時間が効率的な適用を可能にするために、空気圧スプレーガンなどのスプレーガンの使用が有利であり得る。修理する破損が、1つの小さい穴などの小面積の破損である場合、例えば、可能な限り材料の過度の無駄を回避するために適用する少なくとも1つの硬化性組成物を含むチューブまたはシリンジの開口端部に取り付けられた適当に成形および寸法決めされた分配ノズルを用いた、工程i)に従った少なくとも1つの硬化性組成物の手動の適用が好適であり得る。特に重要なことは、硬化性組成物を、破損したサイト自体の上および/または中に、並びに場合により穴若しくは引っ掻き傷の周りの領域などの前記サイト周辺の特定の領域の上にも、十分適用し、拡張することである。硬化性組成物は、ソーラーパネル裏側における穴などの破損サイトがもっぱら覆われるように、ソーラーパネル裏側における破損サイト、即ち穴などの修理が必要なサイトの上に適用され得る。或いは、好ましくない、すなわち修理されるべきあらゆる形態の窪みは、前記硬化性組成物で部分的に、ほぼ完全に、または完全に充填され得る。破損の種類に応じて、例えば、そのような窪みに狙いを定めて分注して、部分的または完全に充填できるようにするために先の尖った注射器などの尖った分配器具を選択することができ、または、例えば、一定の圧力をかける必要がある若しくは必要と思われる場合はスパチュラ若しくはローラーなどの使用を選択できる。
【0023】
当然のことながら、好ましい適用の種類は、使用される硬化性組成物の種類にも依存する。例えば上記方法の工程i)により適用される前記硬化性組成物が一液型(1K)硬化性組成物の場合、適用手段は、工程i)により適用される二液型(2K)硬化性組成物の場合に一般的に好適に使用される適用手段とは異なり得る。2K硬化性組成物には、例えば、注射器の形態の静的ミキサーなどの静的ミキサー内での両成分の事前混合のように、適用前に両成分の事前混合が必要な場合がある。上記方法の工程i)による少なくとも1つの硬化性組成物の厳格な適用方法が、本発明、即ち本明細書に記載の方法、使用および物品の限定要因、即ち限定特性ではないこと、および工程i)による厳格な適用方法が、特定の状況が示す特定の要求を充足するために賢明に選択され、必要に応じて調整され、意図的に実施されることを、当業者は理解するであろう。
【0024】
最適な適用および/または拡張方法、器具または道具を選択する際に考慮すべきもう1つの別の因子は、上記方法の工程i)により適用される少なくとも1つの硬化性組成物の粘度である。有利には、前記少なくとも1つの硬化性組成物は、その適用および拡張が十分容易であり、ソーラーパネル裏側の外面におけるクラックまたは穴などのソーラーパネル裏側の外面における窪みへの前記組成物の流入が可能であるか、または少なくともそのような窪みの充填が合理的な試みで達成できる程度に、十分流動性である。その一方で、硬化性組成物の過度の滴下は好ましくないため、前記硬化性組成物の粘度は、それが適用されるソーラーパネル裏側のサイトから前記組成物が流れ落ちることが防止される程度に十分高くなければならない。いくつかの実施形態では、上記方法の工程i)により適用される少なくとも1つの硬化性組成物の粘度は、約10~約1,000,000mPas、より好ましくは約10~約500,000mPasの範囲、例えば約100~約20,000mPasの範囲、最も好ましくは約10~約1,000mPasの範囲、例えば、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950または1,000mPasである。
【0025】
様々な実施形態において、使い勝手の良い適用は、適用される硬化性組成物がその適用前に慎重に加熱される場合に更に支援され得る。本明細書において、慎重な加熱とは、限定されるものではないが、例えば前記硬化性組成物を約25~約80℃、より好ましくは約30~約60℃、例えば約35、40、45、50または55℃の範囲の温度まで加熱することであり得る。様々な実施形態では、本明細書で説明および定義される硬化性組成物の加熱は、硬化性組成物の粘度を低下させ得、これにより、それが保持されている容器からの排出が容易になり、および/または修理されるソーラーパネル裏側の外面上へのその適用が容易になり、および/または前記ソーラーパネル裏側の外面の上に既に適用された前記組成物の拡張が容易になるので、硬化性組成物の均一に拡張した層を得ることができ、この層は所望の厚さを有し得る。当然のことながら、このとき、使用される硬化性組成物の種類は考慮されるべきである。換言すると、その適用前の熱硬化性組成物の加熱は、一般に推奨されない。
【0026】
本発明の様々な実施形態では、上記方法の工程i)による少なくとも1つの硬化性組成物の適用は、好ましくは、スパチュラ、ブラシ、ローラー、リール、ナイフ、スプーン、スケーラー、注射器、空気圧スプレーガンなどの機械的または空気圧ディスペンスガンといったディスペンスガン、および前述の組み合わせからなる群から選択される、適用のための1以上の器具または道具の使用を含む。
【0027】
本明細書で定義および説明される硬化性組成物は、特に制限されない周囲環境の温度で適用され得る。例えば、限定されるものではないが、前記温度は、約-20℃~約+80℃の範囲、例えば約-10℃~約+50℃の範囲、例えば約-10、-8、-5、-3、-1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45または50℃であり得る。様々な実施形態では、硬化性組成物が特定の周囲温度で液体であることが好ましい。上述したように、前記組成物の粘度が、例えば慎重な加熱および/または前記組成物の適当な溶媒または希釈剤での希釈により調整されると、硬化性組成物の適用は、より使い勝手の良い全体的により容易なものになり得る。
【0028】
本発明では、本明細書に記載の工程i)により適用される少なくとも1つの硬化性組成物が、湿気硬化性組成物からなる群から選択されることが好ましい。
【0029】
用語「湿気硬化性組成物」は、当業者によく知られており、一般に湿気と接触すると硬化し得る硬化性組成物を意味する。ここで、湿気との接触とは、周囲湿気、即ち湿度、または一成分が例えば水を含む2K湿気硬化性組成物の場合などの硬化性組成物自体に存在するある量の水を意味し得る。従って、修理されたソーラーパネル裏側を得るために、上記方法の工程i)で用いられる硬化性組成物の種類に応じて、上記方法の工程ii)の硬化条件は意図的に選択され、硬化が実現される。様々な実施形態では、前記少なくとも1つの硬化性組成物は湿気硬化性組成物である。
【0030】
上記方法の工程i)により適用される少なくとも1つの硬化性組成物は、一液型(1K)または二液型(2K)組成物であってよい。
【0031】
より具体的には、先に説明および定義した上記方法の工程i)によりソーラーパネル裏側に適用される少なくとも1つの硬化性組成物は、様々な実施形態において、変性シラン(MS)型樹脂組成物、即ち、α-シランおよびγ-シラン型硬化性樹脂組成物を包含するシラン変性ポリマー(SMP)組成物からなる群から選択されてよい。MSポリマーは一般に、シラン変性ポリエーテルポリオール、シラン変性ポリアクリレート、シラン変性ポリウレタン、およびシラン変性ポリエーテルポリウレタン、即ち、各プレポリマー主鎖の末端の加水分解性シリル基を特徴とするポリマーを意味する。1Kおよび2K硬化性MS型ポリマー組成物のいずれも、当技術分野では一般に知られている。
【0032】
非限定的な例として、様々な実施形態では、上記方法の工程i)により適用される硬化性組成物は、少なくとも1つの、式(I):
Y-[(CR1 2)b-SiRa(OR2)3-a]x (I)
[式(I)中、
Yは、窒素、酸素、硫黄または炭素を介して結合しているx価のポリマー基を表し、
Rは、独立して、任意に置換されていてよい一価のSiC結合炭化水素基から選択され、
は、独立して、水素、または窒素、リン、酸素、硫黄またはカルボニル基を介して炭素原子に結合していてよく、任意に置換されていてよい一価の炭化水素基から選択され、
は、独立して、水素、または任意に置換されていてよい一価の炭化水素基から選択され、
xは、1~10の整数、好ましくは1、2または3、特に好ましくは1または2であり、
aは、独立して、0、1および2、好ましくは0および1から選択され、
bは、独立して、1~10の整数、好ましくは1、3および4、特に好ましくは1および3、特に1から選択される]
で示される化合物を含んでなる組成物であってよい。
【0033】
基Rの例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-n-ブチル、2-n-ブチル、イソブチル、tert-ペンチル基などのアルキル基;n-ヘキシル基などのヘキシル基;n-ヘプチル基などのヘプチル基;n-オクチル基、イソオクチル基、2,2-トリメチルペンチル基などのオクチル基;n-ノニル基などのノニル基;n-デシル基などのデシル基;n-ドデシル基などのドデシル基;n-オクタデシル基などのオクタデシル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル、1-プロペニルおよび2-プロペニル基などのアルケニル基;フェニル、2-プロペニルおよび2-プロペニル基などのアリール基;フェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリル基;o-、m-およびp-トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基などのアルカリール基;ベンジル基、α-およびβ-フェニルエチル基などのアラルキル基である。
【0034】
置換された基Rの例は、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル基、2,2,2,2,2’,2’,2’,2’-ヘキサフルオロイソプロピル基およびヘプタフルオロオキソプロピル基などのハロアルキル基、o-、m-およびp-クロロフェニル基などのハロアリール基である。R基は、好ましくは、任意にハロゲン原子で置換されていてよい1~6個の炭素原子を有する一価炭化水素基、特に好ましくは1または2個の炭素原子を有するアルキル基、特にメチル基である。
【0035】
基Rの例は、水素原子、Rで規定された基、および窒素、リン、酸素、硫黄、炭素またはカルボニル基を介して炭素原子に結合した任意に置換されていてよい炭化水素基である。
【0036】
好ましくは、Rは、水素、および1~20個の炭素原子を有する炭化水素基、特に水素である。
【0037】
の例は、水素、またはRで規定された例である。
【0038】
好ましくは、R基は、水素、または任意にハロゲン原子で置換されていてよいC1~10アルキル基、特に好ましくはC1~4アルキル基、特にメチルおよびエチル基である。
【0039】
本発明の目的のために、ポリマー基Yをベースとするポリマーは、主鎖における全結合の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも90%が炭素-炭素、炭素-窒素または炭素-酸素結合であるポリマーの全てである。ポリマー基Yは、好ましくは、ポリマー鎖としてのポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、およびポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレンコポリマーなどのポリオキシアルキレン;ポリイソブチレン、ポリエチレンまたはポリプロピレン、およびポリイソブチレンとイソプレンとのコポリマーなどの炭化水素ポリマー;ポリイソプレン;ポリウレタン;ポリエステル;ポリアミド;ポリアクリレート;ポリメタクリレート;およびポリカーボネートであり、好ましくは各基-[(CR1 2)b-SiRa(OR2)3-a]xに、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)O-、-NH-C(=O)-NH-、-NR'-C(-O)-NH-、NH-C(=O)-NR'-、-NH-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-S-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-S-、~C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-S-C(=O)-S-、-C(-O)-、-S-、-O-または-NR'-[ここで、R’は、同じでも異なっていてもよく、Rについて規定された意味を有するか、または基-CH(COOR")-CH2-COOR"を表し、R”は、同じでも異なっていてもよく、Rについて規定された意味を有する]を介して結合している、有機ポリマー基である。基R’の例は、シクロヘキシル、シクロペンチル、n-およびイソ-プロピル、n-、イソ-およびt-ブチル、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基の様々な異性体、およびフェニル基を包含する。R’は好ましくは基-CH(COOR")-CH2-COOR"または任意に置換されていてよいC1~20炭化水素基、特に好ましくは、直鎖、分岐または環式のC1~20アルキル基、任意にハロゲン原子で置換されていてよいC6~20アリール基であり;R”は、好ましくは、C1~10アルキル基、特に好ましくはメチル、エチルまたはプロピル基である。
【0040】
式(I)において、基Yは、好ましくは、ポリウレタン基、ポリオキシアルキレン基、特に、ポリオキシプロピレン含有ポリウレタン基、またはポリオキシプロピレン基を表す。
【0041】
式(I)で示される化合物は、ポリマー中の任意の所望の位置で、例えば両末端に位置して、または両末端の間に位置して、即ち、ポリマー主鎖の側鎖として、特に好ましくはポリマー鎖の両末端に、説明されているように結合している基-[(CR1 2)b-SiRa(OR2)3-a]xを有し得る。
【0042】
式(I)で示される化合物の末端基は、好ましくは、一般式:
-O-C(=O)-NH-(CR1 2)b-SiRa(OR2)3-a (II)
および
-NH-C(=O)-NR'-(CR1 2)b-SiRa(OR2)3-a (III)
[式中、基および添え字は上述した通りである]
で示される基である。
【0043】
特に、式(I)で示される化合物は、シラン末端ポリエーテルおよびシラン末端ポリウレタン、特に、各々-O-C(=O)-NH-(CR1 2)b-基または-NH-C(=O)-NR'-(CR1 2)b-基[ここで、R’、Rおよびbは上述した通りである]を介して結合するジメトキシメチルシリル、トリメトキシシリル、ジエトキシメチルシリルまたはトリエトキシシリル末端基を有する、シラン末端ポリプロピレングリコールおよびシラン末端ポリウレタンを示し得る。
【0044】
式(I)で示される化合物の平均分子量Mnは、好ましくは少なくとも400g/mol、特に好ましくは少なくとも600g/mol、特に少なくとも800g/molであり、好ましくは最大30000g/mol、特に好ましくは最大19000g/mol、特に最大13000g/molである。
【0045】
式(I)で示される化合物の20℃で測定した粘度は、好ましくは少なくとも0.2Pas、好ましくは少なくとも1Pas、特に好ましくは少なくとも5Pasであり、好ましくは最大1000Pas、好ましくは最大700Pasである。
【0046】
様々な好ましい実施形態では、上記方法の工程i)により適用される硬化性組成物は、少なくとも1つの、一般式(IV):
-Xo-R3-Si(R4)k(R5)3-k (IV)
[Xは、少なくとも1個のヘテロ原子を有する二価結合基であり;
は、1~12個の炭素原子を有する二価炭化水素基から選択され;
各Rは、相互に独立して、1~20個の炭素原子を有する炭化水素基から選択され、各Rは、相互に独立して、ヒドロキシル基または加水分解性基から選択され、RおよびRは、Si原子に直接結合している置換基であるか、または置換基RおよびRの2つはそれらが結合しているSi原子と一緒に環を形成しており;
kは、0、1または2であり;かつ
oは0または1である]
で示されるシラン官能基を有する、少なくとも1つのポリマーを含んでなる組成物であり得る。
【0047】
本明細書では、少なくとも1個のヘテロ原子を含んでなる二価結合基(連結基)Xは、一般式(IV)の基Rによりポリマーのポリマー主鎖を連結する二価化学基であると理解される。
【0048】
様々な実施形態では、一般式(IV)における二価連結基Xは、-O-、-S-、-N(R")-、-R"'-O-、置換または非置換アミド、カルバメート、ウレタン、ウレア、イミノ、カルボキシレート、カルバモイル、アミジノ、カーボネート、スルホネートまたはスルフィネート基[ここで、R”は、水素、または直鎖若しくは分岐および置換若しくは非置換のC1~12炭化水素基であり;R”’は、直鎖若しくは分岐および置換若しくは非置換のC1~12炭化水素基である]から選択される。これらの基に関する用語「置換」は、これらの基に存在する水素原子が非水素基(例えば、アルキルまたはアリール基、好ましくはC1~12アルキルまたはC6~14アリール基)により置換されていてよいことを意味する。
【0049】
好ましい実施形態では、連結基Xは、ウレタンまたはウレア基、より好ましくはウレタン基である。ウレタン基は、例えば、ポリマー主鎖が末端ヒドロキシ基を含み、イソシアナトシランが更なる成分として使用される場合、または逆に、末端イソシアネート基を有するポリマーが末端ヒドロキシ基を含むアルコキシシランと反応する場合のいずれかで形成され得る。同様に、ウレア基は、(シランまたはポリマーのいずれかにおける)末端の第一級または第二級アミノ基が使用されている場合に得られ、それぞれの反応体に存在する末端イソシアネート基と反応する。これは、アミノシランが末端イソシアネート基を有するポリマーと反応するか、または末端がアミノ基で置換されているポリマーがイソシアナトシランと反応することを意味する。ウレタンおよびウレア基は、有利には、ポリマー鎖の強度と架橋ポリマー全体の強度を高める。
【0050】
好ましい実施形態では、連結基Xは、-O-C(=O)-N(R")-、-N(R")-C(=O)O-、-N(R")-C(=O)-N(R")-、-N(R")-C(=O)-、-C(=O)-N(R")-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-S-C(=O)-N(R")-、-N(R")-C(=O)-S-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-S-C(=O)-S-、-C(=O)-、-S-、-O-、-NR"-、および-R"'-O-[ここで、R”およびR”’は先に定義した通りである]からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、連結基Xは、-O-C(=O)-N(R")-、-N(R")-C(=O)O-、-N(R")-C(=O)-N(R")-、-S-、-O-、-N(R")-、または-R"'-O-[ここで、R”およびR”’は先に定義した通りである]から選択される。特に好ましい実施形態では、連結基Xは、-O-C(=O)-N(R")-、-N(R")-C(=O)-N(R")-、-O-、または-R"'-O-[ここで、R”およびR”’は先に定義した通りである]から、より好ましくは-O-C(=O)-NH-または-NH-C(=O)-NH-から、最も好ましくは-O-C(=O)-NH-から選択される。
【0051】
添え字「o」は0(ゼロ)または1に相当する。即ち、連結基Xは、基Rでポリマー主鎖に連結している(o=1)か、または、ポリマー主鎖は、基Rと直接結合若しくは連結している(o=0)。好ましい実施形態では、oは1である。
【0052】
基Rは、1~12個の炭素原子を有する二価炭化水素基である。炭化水素基は、直鎖、分岐または環式のアルキレン基であり得、置換または非置換であってよい。炭化水素基は飽和または不飽和であってよい。好ましい実施形態では、Rは、1~6個の炭素原子を有する二価炭化水素基である。組成物の硬化速度は、結合またはポリマー主鎖とシリル基との間の結合の1つを形成する炭化水素基の長さにより影響を受け得る。特に好ましくは、Rは、メチレン、エチレンまたはn-プロピレン、特にメチレンまたはn-プロピレンである。
【0053】
ポリマー主鎖への結合基としてメチレン基を有するアルコキシシラン官能性化合物、いわゆるα-シランは、シリル基の特に高い反応性を有する。
【0054】
一般に、結合炭化水素鎖が長くなると、ポリマーの反応性は低下する。特に、結合として非分岐プロピレンを含むγ-シランは、必要な反応性(許容可能な硬化時間)と遅延硬化(オープンアセンブリ時間、接合後の修正の可能性)の間のバランスの取れた比率を有している。
【0055】
およびRは、Si原子と直接結合している置換基である。或いは、置換基RおよびRの2つは、それらが結合しているSi原子と一緒に環を形成し得る。好ましい実施形態では、RおよびRは、Si原子と直接結合している置換基である。
【0056】
一般式(IV)における各Rは、相互に独立して、C1~20炭化水素基、好ましくはC1~8アルキル基、より好ましくはメチル若しくはエチルから選択される。
【0057】
一般式(IV)における各Rは、相互に独立して、ヒドロキシル基または加水分解性基、好ましくはC1~8アルコキシ基またはC1~8アシルオキシ基から選択される。
【0058】
好ましい実施形態では、各Rは、相互に独立して、C1~8アルコキシ基、特に、メトキシ、エトキシ、i-プロポキシまたはi-ブトキシ基から選択される。kが0または1のとき、1より多い基の組み合わせも可能である。しかし、例えばアセトキシ基-O-CO-CH3などのアシルオキシ基もまた、加水分解性基として使用できる。
【0059】
好ましい実施形態では、kは0または1である。
【0060】
特に好ましい実施形態では、シリル基、即ち、-Si(R4)k(R5)3-kは、アルキルジアルコキシシリルまたはトリアルコキシシリルから選択され、好ましくは、メチルジメトキシシリル、エチルジエトキシシリル、トリメトキシシリルまたはトリエトキシシリル、最も好ましくはメチルジメトキシシリルまたはトリメトキシシリルから選択される。アルコキシ基を含む組成物の硬化中は、粘膜を刺激する物質が放出されないので、アルコキシ基が有利である。基の加水分解により形成されたアルコールは、放出された量では無害であり、蒸発する。
【0061】
一般に、ジまたはトリアルコキシシリル基を含むポリマーは、迅速な硬化、高度の架橋、従って良好な最終強度を可能にする反応性の高い結合点を有する。ジアルコキシシリル基の特定の利点は、硬化後、対応する組成物が、トリアルコキシシリル基を含む系よりも弾性があり、柔らかく、可撓性を有するという事実にある。従って、それらは、シーラントとしての使用に特に適している。加えて、それらは、硬化中により少ないアルコールしか放出しないため、放出されるアルコールの量を減らす必要がある場合に特に関心がもたれる。
【0062】
一方、トリアルコキシシリル基では、より高い架橋度が達成され得、これは、硬化後により硬くて強い材料が必要な場合に特に有利である。また、トリアルコキシシリル基は、より反応性が高く、従って、より迅速に架橋するため、必要な触媒の量を低減でき、「常温流れ」(力や場合によっては温度の影響下での対応する接着剤の寸法安定性)の利点を有する。
【0063】
低い立体嵩を有する比較的小さい加水分解性基としてのメトキシおよびエトキシ基は非常に反応性であるため、少量の触媒しか用いなくても迅速な硬化が可能となる。従ってそれらは、迅速な硬化が望まれる系、例えば、高い初期接着力が要求される接着剤にとって、特に関心がもたれる。
【0064】
興味深い構成の可能性は、2個の基の組み合わせによってももたらされる。例えば、もっぱらメトキシ基を有するシリル基は反応性すぎると見なされ、エトキシ基を有するシリル基は意図した用途に十分反応性ではないと見なされる場合に、Rの1つにメトキシを選択し、同じアルコキシシリル基における他のRにエトキシを選択すると、シリル基の所望の反応性を特に細かく調整できる。
【0065】
メトキシ基およびエトキシ基に加えて、加水分解性基として、より大きい基を使用することももちろん可能であり、それらは性質上、より低い反応性を示す。これは特に、アルコキシ基の配置によって遅延硬化も達成される場合に関心がもたれる。
【0066】
一般式(IV)で示されるシラン官能基は、それぞれのポリマーのポリマー鎖内の側鎖基またはそれぞれのポリマーの末端基であり得る。好ましい実施形態では、一般式(IV)で示されるシラン官能基は、ポリマーの末端基である。
【0067】
好ましい実施形態では、ポリマーは、少なくとも2個の、一般式(IV)で示されるシラン官能基を有する。この場合、ポリマーは、少なくとも1個の一般式(IV)で示される側鎖シラン官能基および少なくとも1個の一般式(IV)で示される末端シラン官能基;または少なくとも2個の一般式(IV)で示される側鎖シラン官能基;または少なくとも2個の一般式(IV)で示される末端シラン官能基を有し得る。
【0068】
特に好ましい実施形態では、ポリマーは、少なくとも2個の一般式(IV)で示される末端シラン官能基を有する。そして、各ポリマー鎖は、大気中の水分の存在下で加水分解された基を分離するポリマーの縮合が完了され得る少なくとも2個の連結点を含む。このようにして、規則的かつ迅速な架橋性が達成され、良好な強度を有する結合を得ることができる。また、加水分解性基の量および構造によって、例えばジまたはトリアルコキシシリル基、メトキシ基またはより長い基を使用することによって、長鎖系として達成できる網目(熱可塑性樹脂)、比較的広いメッシュの三次元網目(エラストマー)、または高度に架橋された系(熱硬化性樹脂)の構成を制御できるので、特に、最終架橋組成物の弾性、柔軟性、および耐熱性は、このようにして影響を受ける可能性がある。
【0069】
好ましい実施形態では、ポリマーのポリマー主鎖は、ポリエーテル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ-α-オレフィン、より好ましくはポリエーテルまたはポリウレタン、または前記ポリマーの少なくとも2個のコポリマー、例えばポリエーテルおよびポリ(メタ)アクリル酸エステルコポリマーから選択される。
【0070】
本明細書で交換可能に使用される「ポリエーテル」、「ポリオキシアルキレン」または「ポリアルキレングリコール」は、有機反復単位が主鎖にエーテル官能性C-O-Cを含むポリマーであると理解される。そのようなポリマーの例は、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびそれらのコポリマーである。側鎖エーテル基を有するポリマー、例えば、セルロースエーテル、デンプンエーテル、ビニルエーテルポリマー、並びにポリアセタール、例えばポリオキシメチレン(POM)は、ポリエーテルには含まれない。
【0071】
「ポリ(メタ)アクリル酸エステル」は、(メタ)アクリル酸エステルに基づくポリマーであると理解され、従って、反復単位として、構造単位:-CH2-CR'(COOR")-[ここで、R’は、水素原子(アクリル酸エステル)またはメチル基(メタクリル酸エステル)を表し、R”は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、環式アルキル基および/または官能性置換基を有するアルキル基、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、シクロヘキシル、2-エチルヘキシルまたは2-ヒドロキシエチル基を表す]を有する。
【0072】
「ポリウレタン」は、主鎖に少なくとも2個のウレタン基-NH-CO-O-を有するポリマーであると理解される。
【0073】
特に好ましい実施形態では、シラン変性ポリマーは、ポリエーテル主鎖を有する。ポリエーテルは、柔軟で弾性のある構造を有し、それを用いると、弾性に優れた組成物を調製できる。ポリエーテルは、主鎖が柔軟であるだけでなく、同時に強力である。従って、例えば、ポリエーテルは、例えばポリエステルとは対照的に、水およびバクテリアによって攻撃または分解されない。
【0074】
ポリマーのベースとなるポリエーテルの数平均分子量Mnは、好ましくは500~100,000g/mol(ダルトン)、より好ましくは500~50,000、特に好ましくは1,000~30,000、特に2,000~20,000g/mol、最も好ましくは8,000~20,000g/molである。対応する組成物がバランスの取れた粘度(加工容易)、強度および弾性の比率を有するので、少なくとも500g/molの数平均分子量が本発明のポリエーテルにとって有利である。
【0075】
狭い分子量分布、従って低い多分散性を有するポリエーテルを使用すると、特に有利な粘弾性が達成され得る。これらは例えば、いわゆる複金属シアン化物触媒(DMC触媒)により調製され得る。このようにして調製されたポリエーテルは、特に狭い分子量分布、高い平均分子量、およびポリマー鎖末端の非常に少ない二重結合によって区別される。
【0076】
本発明の特定の実施形態では、ポリマーのベースとなるポリエーテルの最大多分散性Mw/Mnは、2、特に好ましくは1.5、最も特に好ましくは1.3である。
【0077】
比Mw/Mn(多分散性)は、分子量分布の幅、従って、多分散ポリマーにおける各鎖の異なる重合度の幅を示す。多くのポリマーおよび重縮合物について、約2の多分散性値が当てはまる。厳密な単分散は、1の値で存在する。例えば1.5未満の、低い多分散性は、比較的狭い分子量分布を示し、従って、例えば粘度などの、分子量と関連する特性が特定のものであることを表す。従って、本発明では特に、ポリマーCのベースとなるポリエーテルは、1.3未満の多分散性(Mw/Mn)を有する。
【0078】
特に好ましい実施形態では、少なくとも1個の一般式(IV)で示されるシラン官能基を有するポリマーは、少なくとも1のポリオールと少なくとも1のイソシアナトシランとの反応により得ることができる。必要であれば、ポリオールを、鎖延長のために少なくとも1のポリイソシアネートと先に反応させてもよい。
【0079】
ある実施形態では、一般式(IV)で示されるシラン官能基を少なくとも1個有するポリマーは、少なくとも1のポリオールと化学量論的に過剰の少なくとも1のポリイソシアネートとの反応;および得られたNCO末端ポリウレタンプレポリマーと少なくとも1のアミノシラン(例えば3-アミノプロピルトリメトキシシラン)との反応により得ることができる。
【0080】
「ポリオール」は、化合物が他の官能基を含むかどうかに関係なく、少なくとも2個のOH基を含む化合物であると理解される。しかし、本発明で使用されるポリオールは、官能基としてOH基のみを含むか、または、他の官能基が存在する場合は、該他の官能基のいずれも、ポリオールとイソシアナトシランまたはポリイソシアネートとの反応における一般的な条件下で少なくともイソシアネートに対して反応性ではないことが好ましい。
【0081】
前記シラン末端ポリマーの調製に適したポリオールは、好ましくはポリエーテルポリオールである。ポリエーテルの分子量および多分散性に関する上記記載が、ポリエーテルポリオールに適用される。ポリエーテルポリオールは、好ましくはポリアルキレンオキシド、特に好ましくはポリエチレンオキシドおよび/またはポリプロピレンオキシドである。好ましい実施形態では、ポリエーテル、または2つのポリエーテルの混合物を使用する。
【0082】
本発明において使用されるポリオールは、好ましくは約1~約250のOH価を有する。
【0083】
ポリエーテル以外にも、ポリオール混合物は、他のポリオールを含んでよい。例えば、ポリオール混合物は、約200~約30,000の分子量を有するポリエステルポリオールを含んでよい。
【0084】
上記反応で使用されるイソシアナトシランは、OCN-R3-Si(R4)k(R5)3-k[ここで、R、R、Rおよびkは一般式(IV)で定義されたものと同様である]で示される一般式を有すると理解される。
【0085】
「ポリイソシアネート」は、少なくとも2個のイソシアネート基-NCOを有する化合物であると理解される。この化合物は、ポリマーである必要はなく、多くの場合、低分子量化合物である。
【0086】
本発明のポリウレタンの調製に適したポリイソシアネートは、下記を包含する:エチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメトキシブタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、シクロブタン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-および-1,4-ジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、2,4-および2,6-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ-1,3-または-1,4-フェニレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、1,6-ジイソシアナト-2,2,4-トリメチルヘキサン、1,6-ジイソシアナト-2,4,4-トリメチルヘキサン、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1,3-および1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-または2,6-トルイレンジイソシアネート(TDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートまたは4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、およびそれらの異性体混合物。MDIの部分若しくは完全水素化シクロアルキル誘導体、例えば、完全水素化MDI(H12-MDI)、アルキル置換ジフェニルメタンジイソシアネート、例えば、モノ-、ジ-、トリ-またはテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネートおよびそれらの部分若しくは完全水素化シクロアルキル誘導体、4,4’-ジイソシアナトフェニルペルフオロエタン、フタル酸-ビス-イソシアナトエチルエステル、1-クロロメチルフェニル-2,4-若しくは-2,6-ジイソシアネート、1-ブロモメチルフェニル-2,4-若しくは-2,6-ジイソシアネート、3,3’-ビス-クロロメチルエーテル-4,4’-ジフェニルジイソシアネート、硫黄含有ジイソシアネート、例えば、2モルのジイソシアネートと1モルのチオジグリコール若しくはジヒドロキシジヘキシルスルフィドとの反応により得られるもの、二量体脂肪酸のジイソシアネート、または上記ジイソシアネートの2以上の混合物もまた適している。ポリイソシアネートは、好ましくはIPDI、TDIまたはMDIである。
【0087】
本発明の使用に適した他のポリイソシアネートは、例えば、ジイソシアネートのオリゴマー化、より具体的には上記イソシアネートのオリゴマー化により得られる、3以上の官能価を有するイソシアネートである。そのような三官能性以上のイソシアネートの例は、HDI若しくはIPDI若しくはそれらの混合物のトリイソシアヌレート、またはそれらの混合トリイソシアヌレート、およびアニリン/ホルムアルデヒド縮合物のホスゲン化により得られるポリフェニルメチレンポリイソシアネートである。
【0088】
上記シラン変性ポリマーは、市販されており、また、例えば付加反応、例えば、ヒドロシリル化、マイケル付加、ディールス・アルダー付加、若しくはイソシアネート官能性化合物とイソシアネート活性基を含む化合物との反応などの、公知の方法および処理を用いて合成できる。これに関し、例えばEP 1535940 B1およびEP 1896523 B1を参照できる。また、別の合成ルートは、WO 2013/026654 A1に開示されている。
【0089】
本発明における使用に適しているMSポリマーには、特に限定されるものではないが、GENIOSIL(登録商標)の商品名で市販されているポリマーおよびプレポリマーが包含され、本発明における使用に適している具体的な例は下記である:α-シランポリエーテル型プレポリマーGENIOSIL(登録商標)STPE-E10、-E15、-E30および-E35;GENIOSIL(登録商標)XBシリーズのα-シランポリエーテルポリウレタン型プレポリマー、例えばGENIOSIL(登録商標)XB 502;GENIOSIL(登録商標)XT;GENIOSIL(登録商標)XM;およびGENIOSIL(登録商標)WP。また、硬化性ポリプロピレンオキシド樹脂の例には、様々な公知の反応性ポリプロピレンオキシド樹脂、例えば株式会社カネカから入手可能なKaneka MSポリマーが包含される。
【0090】
上記方法の工程i)により適用される硬化性組成物における、上述した、1以上のMSプレポリマー、即ち、1種のMSプレポリマーまたは異なる種類のMSプレポリマー、即ち、異なる2種以上のMSプレポリマーの量は、硬化性組成物の総重量に基づいて、典型的には約10~約95重量%の範囲、好ましくは約10~約90重量%の範囲、更により好ましくは約15~約85重量%の範囲、例えば約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80または85重量%である。
【0091】
上記MSポリマー型樹脂組成物における、α-シラン型硬化性樹脂組成物の顕著な利点は、一般的に速い硬化速度に加えて、硬化目的でスズ触媒、強酸または強塩基を含める必要がないことである、と容易に理解されるであろう。従って、様々な資料によると、本明細書に記載の方法の工程i)により適用される少なくとも1つの硬化性組成物は、α-シラン型硬化性樹脂組成物であり、即ち、各硬化性組成物の総重量に基づいて、好ましくは約10~約95重量%、より好ましくは約10~約90重量%、例えば約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85または90重量%の量で、上述した少なくとも1のα-シラン型プレポリマーを含んでなる硬化性樹脂組成物である。
【0092】
典型的な硬化性MS型組成物は、上記MS型ポリマー成分に加えて、硬化性、特に湿気硬化性組成物に含まれるものとして当技術分野で一般に知られている更なる成分を更に含んでなる。任意に含まれていてよい更なる成分の非限定的な例には、更なる反応性シランまたはシロキサン化合物、充填材、触媒、接着促進剤、水掃去剤、反応性および非反応性希釈剤、溶剤、可塑剤、レオロジー調整剤、防腐剤、UV安定剤、顔料および着色剤が包含される。
【0093】
適当なMS型ポリマー組成物は、純粋な形態でも、溶液またはエマルションの形態でも使用できる。
【0094】
適当な溶媒は、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、グリコールのエーテル誘導体、THF)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、グリコールエステル)、炭化水素(例えば、(例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、またはより長い鎖長の分岐および非分岐アルカン)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、芳香族化合物(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、芳香族化合物(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、グリコールエステル)(例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン)およびアルコール(例えば、メタノール、エタノール、グリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセリン、ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール)から選択され得る。
【0095】
しかし、生態学的および/または健康上の懸念から、有機溶媒を含まないMSポリマー組成物が好適であり得る。従って、様々な実施形態では、硬化性組成物、好ましくは硬化性MS型組成物は、有機溶媒を実質的に含まない。
【0096】
本発明では、「実質的に含まない」という用語は、約1重量%未満、好ましくは約0.5重量%未満、より好ましくは約0.1重量%未満の各成分を含む組成物に関する。例えば、有機溶媒を実質的に含まない組成物は、本発明では、約1重量%未満の有機溶媒を含む。
【0097】
上述したMSポリマー型硬化性組成物の市販品の非限定的な例としては、Teroson(登録商標)MS6472C、Teroson(登録商標)MS930、Teroson(登録商標)MS931、Teroson(登録商標)MS9320SF、およびTeroson(登録商標)MS9371Bが挙げられ、全てHenkelから入手可能である。
【0098】
上述した硬化性組成物は、単独で、または2以上を組み合わせて使用され得る。
【0099】
別の型の硬化性組成物、特に湿気硬化性組成物は、シリコーン樹脂型硬化性組成物、特に湿気硬化性ケイ素樹脂組成物である。1Kおよび2Kケイ素樹脂型硬化性組成物のいずれも当技術分野で知られており、そのいずれも本発明では適用を見出し得る。ケイ素樹脂型硬化性組成物の非限定的な例は、下記式(V):
R6 c(R7O)dR8 eSiO(4-c-d-e)/2 (V)
[式中、Rは独立して、水素、場合により置換されていてよい一価SiC結合の脂肪族炭化水素基、または式(V)で示される単位の2つを架橋しており、任意に置換されていてよい二価脂肪族炭化水素基から選択され、
は、独立して、水素、または任意に置換されていてよい一価炭化水素基から選択され、
は、独立して、任意に置換されていてよい一価SiC結合の芳香族炭化水素基から選択され、
cは、0、1、2または3であり、
dは、0、1、2または3、好ましくは0、1または2、特に好ましくは0または1であり、
eは、0、1または2、好ましくは0または1であり、
ただしc+d+eの和は3以下である]
で示される単位を含有する少なくとも1の化合物を含んでなるケイ素樹脂組成物である。ある実施形態では、式(V)で示される単位の少なくとも40%は、c+eの和が0または1に等しい。
【0100】
好ましい実施形態では、式(V)で示される単位を含有する化合物は、約80重量%、好ましくは約85重量%、より好ましくは少なくとも約90重量%の量で、式(V)で示される単位を含む。更により好ましくは、式(V)で示される単位を含有する化合物は、式(V)で示される単位からなる。
【0101】
基Rの例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-n-ブチル、2-n-ブチル、イソブチル、tert-ペンチル基などのアルキル基;n-ヘキシル基などのヘキシル基;n-ヘプチル基などのヘプチル基;n-オクチル基、イソオクチル基および2,2-トリメチルペンチル基などのオクチル基;n-ノニル基などのノニル基;n-デシル基などのデシル基、;n-ドデシル基などのドデシル基;n-オクタデシル基などのオクタデシル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル、1-プロペニルおよび2-プロペニル基などのアルケニル基;フェニル、2-プロペニルおよび2-プロペニル基などのアリール基;フェニル-、ナフチル、アントリルおよびフェナントリル基;o-、m-、p-トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基などのアルカリール基;並びにベンジル基、α-β-フェニルエチル基などのアラルキル基である。
【0102】
置換基Rの例は、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル基、2,2,2,2,2',2',2',2'-ヘキサフルオロイソプロピル基およびヘプタフルオロオキソプロピル基などのハロアルキル基、並びにo-、m-およびp-クロロフェニル基などのハロアリール基である。R基は、好ましくは、任意にハロゲン原子置換されていてよい1~6個の炭素原子を有する一価炭化水素基、特に好ましくは1または2個の炭素原子を有するアルキル基、特にメチル基である。
【0103】
基Rの例は、Rに関し上述した脂肪族の例である。しかし、Rは、式(V)で示されるシリル基の2つを結合する二価脂肪族基、例えば、メチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレン基などの1~10個の炭素原子を有するアルキレン基であってもよい。特に、二価脂肪族基の一般的な例は、エチレン基である。しかし、基Rは、好ましくは、ハロゲン原子で置換されていてよい一価SiC結合脂肪族C1~18炭化水素基、特に好ましくは脂肪族C1~6炭化水素基、特にエチル基である。
【0104】
基Rの例は、水素原子またはRに関し記載した例である。好ましくは、R基は、水素原子、またはハロゲン原子で任意に置換されていてよいC1~10アルキル基、特に好ましくはC1~4アルキル基、特にメチルおよびエチル基である。
【0105】
基Rの例は、Rに関し記載した芳香族基である。特に、R基は、ハロゲン原子で任意に置換されていてよいSiC結合芳香族C1~18炭化水素基、例えば、エチルフェニル、トリル、キシリル、クロロフェニル、ナフチルまたはスチリル基、特に好ましくはフェニル基である。
【0106】
全R基の少なくとも90%がメチル基であり、全R基の少なくとも90%がメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル基であり、全R基の少なくとも90%がフェニル基である、シリコーン樹脂が好ましい。
【0107】
特に、各々の場合に式(V)で示される単位の総数に基づいて、少なくとも20%、特に好ましくは少なくとも40%の、cが0である式(V)で示される単位を有するシリコーン樹脂を使用してよい。
【0108】
また、各々の場合に式(V)で示される単位の総数に基づいて、少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも20%であるが最大80%、特に好ましくは最大60%の、cが2である式(V)で示される単位を有するシリコーン樹脂を使用してよい。
【0109】
各々の場合に式(V)で示される単位の総数に基づいて、少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも95%の、dが1または0である式(V)で示される単位を有するシリコーン樹脂が、好ましくは使用される。
【0110】
更に好ましいシリコーン樹脂は、各々の場合に式(V)で示される単位の総数に基づいて、少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも70%であるが、好ましくは最大99%、特に好ましくは最大97%の、dが0である式(V)で示される単位を有するシリコーン樹脂である。
【0111】
シリコーン樹脂の更に好ましい例は、各々の場合に式(V)で示される単位の総数に基づいて、少なくとも1%、好ましくは少なくとも10%、特に少なくとも20%の、eが0ではない式(V)で示される単位を有するシリコーン樹脂である。また、eが0ではない式(V)で示される単位をもっぱら含有するシリコーン樹脂が使用され得るが、式(V)で示される単位の特に好ましくは少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも20%、好ましくは最大80%、特に好ましくは最大60%は、0に等しいeを有する。
【0112】
上記シリコーン樹脂の別の例は、各々の場合に式(V)で示される単位の総数に基づいて、少なくとも20%、特に好ましくは少なくとも40%の、eが1である式(V)で示される単位を有するシリコーン樹脂である。eが1である式(V)で示される単位をもっぱら含有するシリコーン樹脂が使用され得るが、式(V)で示される単位の特に好ましくは少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも20%、好ましくは最大80%、特に好ましくは最大60%は、0に等しいeを有する。
【0113】
シリコーン樹脂の別の例は、式(V)で示される単位の総数に基づいて、少なくとも50%の、c+eの和が0または1である式(V)で示される単位を有するシリコーン樹脂である。
【0114】
上記シリコーン樹脂の別の例は、各々の場合に式(V)で示される単位の総数に基づいて、少なくとも20%、特に好ましくは少なくとも40%の、eが1でありcが0である式(V)で示される単位を有するシリコーン樹脂である。式(V)で示される単位の全ての好ましくは最大70%、特に好ましくは最大40%が、0ではないdを有する。
【0115】
また、各々の場合に式(V)で示される単位の総数に基づいて、少なくとも20%、特に好ましくは少なくとも40%の、eが0を表し、cが0に等しい式(V)で示される単位を有し、少なくとも1%、好ましくは少なくとも10%の、cが1または2、好ましくは2を表し、eが0に等しい式(V)で示される単位を更に有する、これらのシリコーン樹脂が、有利には使用され得る。式(V)で示される単位の全ての特に最大70%、より特に好ましくは最大40%は、0に等しくないdを有し、式(V)で示される単位の全ての少なくとも1%は、0に等しいdを有する。
【0116】
上記シリコーン樹脂の例は、式SiO4/2、Si(OR9)O3/2、Si(OR9)2O2/2およびSi(OR9)3O1/2で示される単位(Q);式PhSiO3/2、PhSi(OR9)O2/2およびPhSi(OR9)2O1/2で示される単位(T);式Me2SiO2/2およびMe2Si(OR9)O1/2で示される単位(D);式Me3SiO1/2で示される単位(M)[ここで、Meはメチル基であり、Phはフェニル基を表し、Rは水素原子、またはハロゲン原子により任意に置換されていてよいC1~10アルキル基、特に好ましくは水素原子またはC1~4アルキル基である]から本質的に、好ましくはもっぱらなるオルガノポリシロキサン樹脂である。この樹脂は、単位(T)1モル当たり、好ましくは0~2モルの単位(Q)、0~2モルの単位(D)および0~2モルの単位(M)を含む。
【0117】
上記シリコーン樹脂の別の例は、式PhSiO3/2、PhSi(OR9)O2/2およびPhSi(OR9)2O1/2で示される単位(T)並びに式Me2SiO2/2およびMe2Si(OR9)O1/2で示される単位(D)[ここで、Meはメチル基であり、Phはフェニル基であり、Rは水素原子、またはハロゲン原子により任意に置換されていてよいC1~10アルキル基、特に好ましくは水素原子またはC1~4アルキル基であり、単位(D)に対する単位(T)のモル比は0.5~2.0である]から本質的に、好ましくはもっぱらなるオルガノポリシロキサン樹脂である。
【0118】
上記シリコーン樹脂の別の例は、式PhSiO3/2、PhSi(OR9)O2/2およびPhSi(OR9)2O1/2で示される単位(T)、MeSiO3/2、MeSi(OR9)O2/2およびMeSi(OR9)2O1/2で示される単位(T)、並びに任意に式Me2SiO2/2およびMe2Si(OR9)O1/2で示される単位(D)[ここで、Meはメチル基であり、Phはフェニル基であり、Rは水素原子、またはハロゲン原子により任意に置換されていてよいC1~10アルキル基、特に好ましくは水素原子またはC1~4アルキル基であり、メチルシリコーン単位に対するフェニルシリコーン単位のモル比は0.5~4.0である]から本質的に、好ましくはもっぱらなるオルガノポリシロキサン樹脂である。これらのシリコーン樹脂における単位(D)の含有量は、好ましくは10重量%未満である。
【0119】
上記シリコーン樹脂の別の例は、式PhSiO3/2、PhSi(OR9)O2/2およびPhSi(OR9)2O1/2で示される単位(T)[ここで、Phはフェニル基であり、Rは水素原子、またはハロゲン原子により任意に置換されていてよいC1~10アルキル基、特に好ましくは水素原子またはC1~4アルキル基である]から本質的に、好ましくはもっぱらなるオルガノポリシロキサン樹脂である。これらのシリコーン樹脂における単位(D)の含有量は、好ましくは10重量%未満である。
【0120】
適当なシリコーン樹脂は、少なくとも400g/mol、特に好ましくは少なくとも600g/molの平均分子量(数平均)Mnを有してよい。平均分子量Mnは、好ましくは最大400,000g/mol、特に好ましくは最大100,000g/mol、特に最大50,000g/molである。
【0121】
適当なシリコーン樹脂は、23℃、1000hPaで固体または液体のいずれでもよいが、好ましいシリコーン樹脂は液体である。好ましい粘度は、約10~100,000mPas、好ましくは50~50,000mPas、特に100~2,000mPasの範囲である。適当なシリコーン樹脂は、最大5、好ましくは最大3の多分散性(Mw/Mn)を有してよい。
【0122】
適当なシリコーン樹脂は、純粋、または溶液若しくはエマルションのいずれの形態でも使用できる。
【0123】
適当な溶媒は、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、グリコールのエーテル誘導体、THF)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、グリコールエステル)、炭化水素(例えば、(例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンまたは長鎖の分岐および非分岐アルカン)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、芳香族化合物(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、芳香族化合物(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、グリコールエステル)(例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン)およびアルコール(例えば、メタノール、エタノール、グリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセリン、ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール)から選択され得る。
【0124】
しかし、生態学的および/または健康上の懸念の故に、有機溶媒を含まないシリコーン樹脂が好適であり得る。
【0125】
上記シリコーン樹脂は市販されているが、ケイ素化学で一般的に用いられている方法により調製することもできる。本発明における使用に適しているものは、これらに限定されるものではないが、例えば、WackerによりSILRES(登録商標)の商品名で市販されているケイ素樹脂製品、例えば、SILRES(登録商標)REN 50、60、70-Mおよび80、SILRES(登録商標)KX、SILRES(登録商標)HK46およびSILRES(登録商標)MSE 100などの液体樹脂型;SILRES(登録商標)MP 50 EおよびSILRES(登録商標)MPF 52 Eなどのエマルション型樹脂;SILRES(登録商標)HP 2000などの有機官能性ポリシロキサン;およびSILRES(登録商標)SY 300またはSILRES(登録商標)IC232などの別の中間体;およびSILRES(登録商標)603およびSILRES(登録商標)604などの固体である。
【0126】
上記方法の工程i)により適用される硬化性組成物における、上述した1以上のケイ素樹脂、即ち、1種のケイ素樹脂または異なる種類のケイ素樹脂、即ち2種以上の異なるケイ素樹脂の量は、硬化性組成物の総重量に基づいて、典型的には約10~約95重量%の範囲、好ましくは約10~約90重量%の範囲、更により好ましくは約15~約85重量%の範囲、例えば約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80または85重量%である。
【0127】
典型的な硬化性ケイ素樹脂型組成物は、上記ケイ素樹脂成分に加えて、そのような硬化性、特に湿気硬化性組成物に含まれる目的で当技術分野で一般に知られている成分を更に含んでなる。任意に含まれてよい更なる成分の非排他的な例には、反応性シランまたはシロキサン化合物、充填材、触媒、接着促進剤、水掃去剤、反応性および非反応性希釈剤、溶剤、可塑剤、レオロジー調整剤、防腐剤、UV安定剤、顔料および着色剤が包含される。
【0128】
市販のケイ素樹脂型硬化性組成物の非限定的な例としては、Loctite(登録商標)SI 5611およびLoctite(登録商標)SI 5710を包含するLoctite(登録商標)SI製品、およびomniVISC(登録商標)1050が挙げられ、これらは全てHenkelから入手可能である。
【0129】
MSプレポリマー成分およびケイ素樹脂成分の両方を含んでなるそのような湿気硬化性組成物が、本発明において有利に適用され得ることも注目されてよい。
【0130】
様々な実施形態では、少なくとも1つの硬化性組成物は、
少なくとも1つの、式(I):
Y-[(CR1 2)b-SiRa(OR2)3-a]x (I)
[式(I)中、
Yは、窒素、酸素、硫黄または炭素を介して結合しているx価のポリマー基を表し、
Rは、独立して、任意に置換されていてよい一価のSiC結合炭化水素基から選択され、
は、独立して、水素、または窒素、リン、酸素、硫黄またはカルボニル基を介して炭素原子に結合していてよく、任意に置換されていてよい一価の炭化水素基から選択され、
は、独立して、水素、または任意に置換されていてよい一価の炭化水素基から選択され、
xは、1~10の整数、好ましくは1、2または3、特に好ましくは1または2であり、
aは、独立して、0、1および2、好ましくは0および1から選択され、
bは、独立して、1~10の整数、好ましくは1、3およびは4、特に好ましくは1および3、特に1から選択される]
で示される化合物;
および/または
少なくとも1つの、式(V):
R6 c(R7O)dR8 eSiO(4-c-d-e)/2 (V)
[式(V)中、
は、独立して、水素、任意に置換されていてよい一価のSiC結合脂肪族炭化水素基、または式(V)で示される単位の2つを架橋する任意に置換されていてよい二価の脂肪族炭化水素基から選択され、
は、独立して、水素、または任意に置換されていてよい一価の炭化水素基から選択され、
は、独立して、任意に置換されていてよい一価のSiC結合芳香族炭化水素基から選択され、
cは、0、1、2または3であり、
dは、0、1、2または3、好ましくは0、1または2、特に好ましくは0または1であり、
eは、0、1または2、好ましくは0または1であり、
ただし、c+d+eの和は3以下である]
で示される単位を含有する化合物
を含んでなることを特徴とする。一実施形態では、式(V)で示される単位の少なくとも40%において、c+eの和は0または1に等しい。
【0131】
様々な実施形態では、少なくとも1つの硬化性組成物は、少なくとも1つの、上記式(I)で示される化合物を含んでなる。
【0132】
様々な実施形態では、本明細書で記載する少なくとも1つの硬化性組成物は、エポキシ成分を含有しない。様々な実施形態では、硬化性組成物は、エポキシ成分を実質的には含まない。
【0133】
様々な実施形態では、本明細書で記載する少なくとも1つの硬化性組成物は、光硬化性ポリマー成分を含有しない。様々な実施形態では、硬化性組成物は、光硬化性成分を実質的には含まない。
【0134】
本発明の様々な実施形態では、上記方法の工程i)は、本明細書で記載する、1つの硬化性組成物、特に湿気硬化性組成物、例えばMSポリマー型またはケイ素樹脂型の硬化性組成物の適用を含み得る。しかし、工程i)は、2つ以上の硬化性組成物、特に湿気硬化性組成物、例えばMSポリマー型またはケイ素樹脂型の硬化性組成物の適用も含み得る。様々な実施形態では、上記方法の工程i)において、少なくとも1つのMSポリマー型湿気硬化性組成物および少なくとも1つのケイ素樹脂型湿気硬化性組成物を、組み合わせて使用してよい。また、上記した少なくとも1つの硬化性組成物の適用は、所望の厚さおよび/またはソーラーパネル裏側の外面上でのその十分な拡張、並びに前記ソーラーパネル裏側の破損部またはサイトの十分な被覆および/または上記ソーラーパネル裏側外面におけるクラック、欠け、亀裂などの破損の十分な充填が達成されるように、工程i)において一回実施しても複数回繰り返してもよい。
【0135】
様々な実施形態では、上述した1つ以上の硬化性組成物のこのように適用された層の厚さは、約0.1mm~約1cmの範囲、好ましくは約0.1mm~約0.5cmの範囲、更により好ましくは約0.1mm~約0.1cmの範囲、特に約0.1mm~約5mmの範囲、最も好ましくは約0.1~約0.3mmの範囲であり、限定するものではないが、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5または5.0mm、最も好ましくは約0.1、0.15、0.2、0.25または0.3mmの厚さを有し得る。
【0136】
既に述べた通り、上記方法の工程i)により適用される硬化性組成物は、1Kまたは2K組成物の形態であってよい。これは、上記したMS型およびケイ素樹脂型硬化性組成物の両方に当てはまる。一般に、一液型組成物は、水の不存在下で貯蔵安定であり、通常、湿度などの水と接触すると室温で硬化し得る。しかし、本発明における使用に適している硬化性組成物は、湿気硬化性組成物の場合は、反応性ポリマー成分を含有する第一成分に添加される第二成分の一部として水などのOH含有化合物が含まれる、2K組成物の形態で使用されてもよい。
【0137】
このように適用された本明細書で記載する1つ以上の硬化性組成物の硬化は、本発明の方法の工程ii)において行われる。しかし、二成分が相互に接触すると直ぐに2K硬化性組成物の硬化が起こるので、上記方法の工程i)において適用された2K組成物の硬化は、工程i)において既に少なくとも行われている。従って、2K湿気硬化性組成物などの2K硬化性組成物の適用を含む本発明の方法の工程ii)は、前記組成物の硬化を完了する工程として扱われ得、様々な実施形態では、例えばシリコーン型湿気硬化性2K組成物の場合には、適用した組成物の、熱および/または赤外放射線などの放射線、特に熱、即ち約25~約150℃の範囲の高温、例えば約30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140または150℃への曝露を含み得る。上記方法の工程i)において適用された1K組成物の場合、前記組成物が適当な作用物質、例えば湿気硬化性1K組成物の場合はヒドロキシル基含有化合物と接触すると直ぐに硬化が起こる。従って、上記方法の工程i)により適用された1K湿気硬化性組成物の場合、室温または高温で、周囲の空気と接触すると硬化が起こる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法の工程ii)は、本明細書で説明および定義される1つ以上の適用された硬化性組成物の熱または放射線(例えば赤外放射線)への曝露を伴わずに実施される。
【0138】
工程i)で適用された硬化性組成物は、本明細書で記載するその硬化を促進する条件下、十分かつ徹底した硬化に十分な時間、保持され得る。この必要とされる時間は、硬化速度および硬化条件に依存し、一般に、約1分間~約1週間の範囲、より好ましくは約5分間~約5日間の範囲、例えば、約5、10、20、30、45または60分間、2時間、6時間、12時間、24時間、2日間、3日間、4日間または5日間であり得る。
【0139】
様々な実施形態では、本明細書に記載の方法は、工程i)の前に工程i)で適用される少なくとも1つの硬化性組成物とは異なる少なくとも1つの硬化性組成物を適用し、工程i)の前に工程i)の前に適用した前記硬化性組成物を硬化する工程ai)を更に含む。工程i)の前に適用および硬化される前記硬化性組成物は、硬化性エポキシ樹脂組成物である。本明細書で記載するように、ソーラーパネル裏側の清浄化は、有利には、工程ai)に従って任意に適用されてよい少なくとも1つの硬化性エポキシ型樹脂組成物を包含する上記方法に従ったあらゆる硬化性組成物の適用の前に、実施され得る。本発明における使用に適している硬化性エポキシ樹脂は、1Kまたは2K硬化性エポキシ組成物であり得、Henkelから商品名Loctite(登録商標)EAで入手可能な組成物を包含する。その非限定的な例は、Loctite(登録商標)EA 9535である。前記少なくとも1つの硬化性エポキシ型樹脂組成物の適用は、工程i)に関して上述したように実施され得、好適な粘度を得るために適当な溶媒または希釈剤で希釈することを含み得る。硬化条件はもちろん、使用するエポキシ樹脂の厳格な型に依存し、それに従って必要に応じて選択し、適合させることができる。本明細書に記載の工程i)における硬化性組成物の適用に加えて、本明細書で記載の工程ai)における硬化性エポキシ型樹脂組成物の適用は、このように修理されたソーラーパネル裏側の向上した光学的外観、および/または本明細書で定義および説明される工程i)に従って適用され、硬化された硬化性組成物の向上した接着、および/または修理されたソーラーパネル裏側の環境の影響に対する向上した保護をもたらし得る。
【0140】
様々な実施形態では、本発明の方法は、好ましくは、工程ii)に従った硬化の前または後に工程i)で適用された少なくとも1つの硬化性組成物の上への、1つ以上の被覆層の適用を含まない。特に、本発明の方法は、ポリエステル層、ポリアミド層、ポリオレフィン層および/またはフルオロポリマー層の適用を必要とせず、従って、該適用を含まない。
【0141】
一般に、本明細書に記載の方法に従って適用される硬化性組成物の色および透明度のいずれも選択でき、必要に応じて変更および適合させて、視覚的に好適かつ魅力的な修理されたソーラーパネル裏側をもたらすことができる。例えばソーラーパネル裏側の外面が白色の場合、ソーラーパネル裏側の外面の色と合わせるために類似若しくは同じ色になるように、即ち類似若しくは同じ白い色合いを有するように、またはできるだけ目立たない若しくは所望の通りになるよう可能な限り透明になるように、本明細書で説明および定義される硬化性組成物の1つ以上を選択し、本明細書に記載の方法に従って適用することが好適であり得る。
【0142】
本発明の方法は、最先端の修理方法に勝る多くの利点がある。本明細書に記載の硬化性組成物は、更なる下塗りおよび/または保護層を必要としない。該硬化性組成物は、スプレーガンでの適用に適しているため適用が容易であり、基材への密着性に優れた薄くて弾力性のある耐クラック性の被覆をもたらし、ソーラーパネル裏側上に存在するクラックを適当かつ十分満たす。特に1K組成物の場合、成分の混合は必要ではなく、湿気硬化は光も熱も必要としないため、生態学的にも経済的にも有利である。エポキシ成分などの有害成分が存在しないことにより、本発明の方法は、人の健康への害が全体的に低減される点で利点のリストに更に追加される。高価な適用設備は必要とされず;適用は、場所に依存せず、電気を使用せずに実現できる。
【0143】
硬化すると、修理されたソーラーパネル裏側、即ち、修理されたソーラーパネルバックボードが得られ得る。
【0144】
別の実施形態では、本発明はまた、本明細書で定義および説明される修理を必要とするサイトを少なくとも1つ含むソーラーパネル裏側を修理するための、硬化性組成物の使用にも関する。
【0145】
方法、生成物および使用に関して本明細書に開示される全ての実施形態は、適用可能な限り、それらからまたはそれらにより形成された物品に同様に適用可能であり、逆もまた同様であることが理解される。
【0146】
従って、別の実施形態では、本発明はまた、本明細書で説明および定義される方法において得られる修理されたソーラーパネル裏側にも関する。
【0147】
本明細書に記載された本発明の多くの変形実施形態および他の実施形態が前述の説明で提示された教示の利点を有することは、これらの発明が関係する当業者には思い当たるであろう。従って、本発明が、開示された特定の実施形態に限定されるべきではないこと、そして、変形実施形態および他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることは理解される。また、前述の説明は、要素および/または機能の特定の例示的な組み合わせにおける幾つかの例示的な実施形態を説明しているが、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、要素および/または機能の異なる組み合わせが代替実施形態によって提供され得ることは理解されべきである。これに関して、例えば、添付の特許請求の範囲の一部に記載されているように、上記において明示的に説明したものとは異なる要素および/または機能の組み合わせも考えられる。本明細書では特定の用語が使用されているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的として使用されていない。
【国際調査報告】