(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(54)【発明の名称】非対称線状カーボネートおよび非対称線状カーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 68/06 20200101AFI20231121BHJP
C07C 69/96 20060101ALI20231121BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20231121BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231121BHJP
【FI】
C07C68/06 CSP
C07C69/96 Z
C07D487/04 148
C07D487/04 150
C07D487/04 140
C07D487/04 144
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529115
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 KR2022009942
(87)【国際公開番号】W WO2023058851
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0132850
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パク、チュン-ポム
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒョンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン-チョル
【テーマコード(参考)】
4C050
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB04
4C050BB05
4C050BB08
4C050CC08
4C050CC10
4C050EE02
4C050EE03
4C050FF01
4C050GG01
4C050HH01
4H006AA02
4H006AC48
4H006BA51
4H006BA69
4H006KA57
4H039CA66
(57)【要約】
本発明は、ヘテロ環構造の塩基触媒下で、異なる2種の対称線状カーボネートをエステル交換反応して非対称線状カーボネートを製造する段階を含む非対称線状カーボネートの製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロ環構造の塩基触媒下で、異なる2種の対称線状カーボネートをエステル交換反応して非対称線状カーボネートを製造する段階;を含む、非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項2】
前記異なる2種の対称線状カーボネートは、ジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートであり、
前記非対称線状カーボネートは、エチルメチルカーボネートである、請求項1に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項3】
前記エステル交換反応は、無溶媒工程で行われる、請求項1に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項4】
前記ヘテロ環構造の塩基触媒は、下記の化学式1で表される、請求項1に記載の非対称線状カーボネートの製造方法:
【化5】
前記化学式1において、
Aは、置換もしくは非置換の炭素数1~50の脂環族環;置換もしくは非置換の炭素数1~50の脂環族ヘテロ環;または置換もしくは非置換の炭素数1~50の芳香族ヘテロ環であり、
R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルアミン基である。
【請求項5】
前記ヘテロ環構造の塩基触媒は、下記の化合物から選択されたいずれか1つである、請求項1に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【化6】
【請求項6】
前記ヘテロ環構造の塩基触媒の含有量は、前記異なる2種の対称線状カーボネート100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下である、請求項1に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項7】
前記エステル交換反応は、90℃以上130℃以下の温度で行われる、請求項1に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項8】
前記ジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートのモル比は、1:0.5~1:1.5である、請求項2に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項9】
前記非対称線状カーボネートを回収する段階をさらに含む、請求項1に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項10】
ヘテロ環構造の塩基化合物を含む、非対称線状カーボネート。
【請求項11】
前記ヘテロ環構造の塩基化合物は、下記の化学式1で表される、請求項10に記載の非対称線状カーボネート:
【化7】
前記化学式1において、
Aは、置換もしくは非置換の炭素数1~50の脂環族環;置換もしくは非置換の炭素数1~50の脂環族ヘテロ環;または置換もしくは非置換の炭素数1~50の芳香族ヘテロ環であり、
R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルアミン基である。
【請求項12】
前記ヘテロ環構造の塩基化合物は、下記の化合物から選択されたいずれか1である、請求項10に記載の非対称線状カーボネート。
【化8】
【請求項13】
前記ヘテロ環構造の塩基化合物の含有量は、前記非対称線状カーボネート100重量部に対して、0.01重量部以上5重量部以下である、請求項10に記載の非対称線状カーボネート。
【請求項14】
前記非対称線状カーボネートは、エチルメチルカーボネートである、請求項10に記載の非対称線状カーボネート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
本出願は、2021年10月7日付の韓国特許出願第10-2021-0132850号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、非対称線状カーボネートおよび非対称線状カーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオンバッテリの電解液溶媒はリチウムイオンが溶けやすく、移動が円滑でなければならないので、塩に対する高い溶解度と低い粘度が要求される。このため、塩を溶解しやすい環状カーボネート(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)と低い粘度を有する線状カーボネート(エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど)とを混合して使用する。
【0004】
特に、非対称線状カーボネートであるエチルメチルカーボネート(EMC)は、他の溶媒と比較して、エネルギー貯蔵密度、充電容量、充放電回数、安定性などに優れ、最も好まれる溶媒である。
【0005】
このようなエチルメチルカーボネートを製造する方法には、塩基性触媒の存在下でアルキルクロロホルメート(alkyl chloroformate)およびアルコールのエステル反応を利用する方法があるが、前記方法は、エステル反応が非常に激しく、ホスゲンとビスフェノール-Aなどの猛毒性化合物を出発物質として使用しなければならない問題点がある。
【0006】
このような問題点を補完するために、対称線状カーボネートとアルコールのエステル交換反応を利用する方法があるが、3種の線状カーボネートおよび2種のアルコールを含む反応生成物から、最終目的化合物はエチルメチルカーボネートなどの非対称線状カーボネートを複雑な工程で分離精製しなければならない問題点がある。
【0007】
これによって、高付加価値があるエチルメチルカーボネートを最終的に分離精製しやすいように製造する方法の開発が必要なのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、エステル交換反応の工程が無溶媒(Sovent Free)工程で進行可能であり、これによって最終反応物に3種の線状カーボネートだけが含まれ、高付加価値を有する非対称線状カーボネートを分離精製しやすい非対称線状カーボネートの製造方法と、このような製造方法で製造された高純度の非対称線状カーボネートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書においては、ヘテロ環構造の塩基触媒下で、異なる2種の対称線状カーボネートをエステル交換反応して非対称線状カーボネートを製造する段階を含む非対称線状カーボネートの製造方法を提供する。
【0010】
また、本明細書においては、ヘテロ環構造の塩基化合物を含む非対称線状カーボネートを提供する。
【0011】
以下、発明の具体的な実施形態による非対称線状カーボネートの製造方法についてより詳細に説明する。
【0012】
ただし、これは発明の一例として提示されるものであり、これによって発明の権利範囲が限定されるものではなく、発明の権利範囲内で実施形態に対する多様な変形が可能であることは当業者に自明である。
【0013】
本明細書において明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0014】
本明細書で使用される単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0015】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるわけではない。
【0016】
また、本明細書で記述する製造方法を構成する段階は順次的または連続的であることを明示したり、他の特別な言及がある場合でなければ、1つの製造方法を構成する1つの段階と他の段階が明細書上に記述された順序に制限されて解釈されない。したがって、当業者が容易に理解できる範囲内で製造方法の構成段階の順序を変化させることができ、この場合、それに付随する当業者に自明な変化は本発明の範囲に含まれる。
【0017】
また、本明細書において、「置換もしくは非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アルアルキル基;アルアルケニル基;アルキルアリール基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;ヘテロアリールアミン基;アリールアミン基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうちの1つ以上を含むヘテロ環基からなる群より選択された1つ以上の置換基で置換もしくは非置換であるか、前記例示した置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換もしくは非置換であることを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。つまり、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2つのフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0018】
発明の一実施形態によれば、ヘテロ環構造の塩基触媒下で、異なる2種の対称線状カーボネートをエステル交換反応して非対称線状カーボネートを製造する段階を含む非対称線状カーボネートの製造方法を提供する。
【0019】
本発明者らは、エチルメチルカーボネートなどの対称線状カーボネートの製造方法に関する研究を進行させて、ヘテロ環構造の塩基触媒下で、異なる2種の対称線状カーボネートをエステル交換反応して非対称線状カーボネートを製造する場合、無溶媒(Sovent Free)工程でエステル交換反応が行われ、最終反応物に異なる2種の対称線状カーボネートおよび非対称線状カーボネートを含む3種の線状カーボネートだけが含まれ、前記非対称線状カーボネートの分離精製が容易であるという点を、実験を通して確認して、発明を完成した。
【0020】
従来の非対称線状カーボネートを製造する工程の場合、エステル交換反応工程に金属塩アルコキシド系の触媒を使用するが、このような金属塩アルコキシド触媒の溶解のためには溶媒を必須に含み、これによって最終生成物には3種の線状カーボネート以外にも1種以上のアルコール溶媒などが含まれ、最終目的の化合物である非対称線状カーボネートを複雑な工程で分離精製しなければならない問題点がある。
【0021】
しかし、前記一実施形態による非対称線状カーボネートの製造方法で使用される前記ヘテロ環構造の塩基触媒は、溶解度が非常に高くて別途の溶媒を必要とせず無溶媒(Sovent Free)工程で反応が行われ、これによって3種の線状カーボネートだけが含まれる反応生成物から容易に非対称線状カーボネートを分離精製することができる。
【0022】
具体的には、前記一実施形態による非対称線状カーボネートの製造方法は、前記異なる2種の対称線状カーボネートをエステル交換反応して非対称線状カーボネートを製造することができる。
【0023】
前記異なる2種の対称線状カーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネートおよびジブチルカーボネートからなる群より選択された2種であってもよく、例えば、ジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートであってもよい。
【0024】
また、前記非対称線状カーボネートは、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルメチルカーボネート、ブチルエチルカーボネートまたはブチルプロピルカーボネートであってもよい。
【0025】
また、前記エステル交換反応は、前記ヘテロ環構造の塩基触媒下で行われることによって、無溶媒工程で行われる。これによって、最終反応物に溶媒が含まれず、異なる2種の対称線状カーボネートと反応物の非対称線状カーボネートだけが含まれ、このような最終反応物から非対称線状カーボネートの分離精製が容易に行われる。
【0026】
前記ヘテロ環構造の塩基触媒は、下記の化学式1で表される。
【0027】
【0028】
前記化学式1において、
Aは、置換もしくは非置換の炭素数1~50の脂環族環;置換もしくは非置換の炭素数1~50の脂環族ヘテロ環;または置換もしくは非置換の炭素数1~50の芳香族ヘテロ環であってもよい。
【0029】
また、Aは、炭素数1~10のアルキル基で置換もしくは非置換の炭素数2~10の脂環族ヘテロ環であってもよい。
【0030】
あるいは、Aは、メチル基で置換もしくは非置換の炭素数2~6の脂環族ヘテロ環であってもよい。
【0031】
前記脂環族ヘテロ環および芳香族ヘテロ環は、それぞれ独立して、N、O、PまたはSの中から選択された1つ、2つまたは3つのヘテロ原子を含むことができる。
【0032】
また、R1~R3は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルアミン基であってもよい。
【0033】
さらに、R1~R3は、水素または重水素であってもよい。
【0034】
前記ヘテロ環構造の塩基触媒の一実施例として、下記の化合物から選択されたいずれか1つであってもよい。
【0035】
【0036】
前記化合物1は、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)であり、化合物2は、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンであり、化合物3は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンであり、化合物4は、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エンであり、化合物5は、1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリミジンであり、化合物6は、1-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリミジンである。
【0037】
前記ヘテロ環構造の塩基触媒は、前記異なる2種の対称線状カーボネート100重量部に対して、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.5重量部以上で含まれ、10.0重量部以下、8.0重量部以下、6.0重量部以下、5.0重量部以下で含まれる。
【0038】
前記ヘテロ環構造の塩基触媒の含有量が10.0重量部超過であっても反応が追加的に活性化されず非経済的および非効率的であり、前記ヘテロ環構造の塩基触媒の含有量が過度に少なければ、エステル交換反応速度が低下しうる。
【0039】
一方、前記非対称線状カーボネートの製造方法において、前記異なる2種の対称線状カーボネートは、ジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートであってもよい。
【0040】
また、前記ジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートのモル比は、1:0.5~1:1.5、1:0.7~1:1.3、または1:0.9~1:1.1であってもよい。前記ジメチルカーボネートに対するジエチルカーボネートの含有量が過度に少なかったり、多ければ、最終製造されるエチルメチルカーボネートへの転換率が顕著に少ない。
【0041】
前記一実施形態の非対称線状カーボネートの製造方法において、前記エステル交換反応は、90℃以上、100℃以上、105℃以上、110℃以上の温度で行われるか、130℃以下、120℃以下、または110℃以下の温度で行われる。
【0042】
また、前記エステル交換反応は、4時間以上、5時間以上、6時間以上の時間行われるか、12時間以下、11時間以下、10時間以下、または8時間以下の時間行われる。
【0043】
さらに、前記エステル交換反応は、1気圧以上、2気圧以上、3気圧以上の気圧条件で行われるか、10気圧以下、9気圧以下、8気圧以下、または7気圧以下の気圧条件で行われる。
【0044】
また、前記一実施形態による非対称線状エステルの製造方法は、前記非対称線状カーボネートを回収する段階をさらに含むことができる。
【0045】
前記エステル交換反応が完了した後、反応生成物には、好ましくは3種の線状カーボネートだけが存在できる。前記反応生成物には、異なる2種の対称線状カーボネートと、目的化合物の非対称線状カーボネートとが含まれる。
【0046】
また、前記非対称線状カーボネートは、通常の常圧または減圧蒸留法により、反応生成物から分離できる。つまり、反応生成物を常圧または減圧蒸留させると、沸点の低い化合物から沸点の高い化合物の順に蒸留され始めて、最終的に高純度の非対称線状カーボネートを回収することができる。
【0047】
例えば、反応生成物にジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが含まれる場合、これを蒸留する場合、反応生成物がジメチルカーボネート(沸点:90℃)、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(沸点:127℃)の順に分離され、80%以上、85%以上、90%以上または99.9%以上の高純度のエチルメチルカーボネートを回収することができる。この時分離されたジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートは回収して再使用可能である。
【0048】
本発明の他の実施形態によれば、ヘテロ環構造の塩基化合物を含む非対称線状カーボネートを提供する。
【0049】
前記ヘテロ環構造の塩基化合物は、下記の化学式1で表される。
【0050】
【0051】
前記化学式1において、
Aは、置換もしくは非置換の炭素数1~50の脂環族環;置換もしくは非置換の炭素数1~50の脂環族ヘテロ環;または置換もしくは非置換の炭素数1~50の芳香族ヘテロ環であってもよい。
【0052】
また、Aは、炭素数1~10のアルキル基で置換もしくは非置換の炭素数2~10の脂環族ヘテロ環であってもよい。
【0053】
あるいは、Aは、メチル基で置換もしくは非置換の炭素数2~6の脂環族ヘテロ環であってもよい。
【0054】
前記脂環族ヘテロ環および芳香族ヘテロ環は、それぞれ独立して、N、O、PまたはSの中から選択された1、2または3つのヘテロ原子を含むことができる。
【0055】
また、R1~R3は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルアミン基であってもよい。
【0056】
さらに、R1~R3は、水素または重水素であってもよい。
【0057】
前記ヘテロ環構造の塩基触媒の一実施例として、下記の化合物から選択されたいずれか1つであってもよい。
【0058】
【0059】
前記化合物1は、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)であり、化合物2は、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンであり、化合物3は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンであり、化合物4は、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エンであり、化合物5は、1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリミジンであり、化合物6は、1-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリミジンである。
【0060】
また、前記非対称線状カーボネートは、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルメチルカーボネート、ブチルエチルカーボネートまたはブチルプロピルカーボネートであってもよい。
【0061】
前記ヘテロ環構造の塩基化合物の含有量は、前記非対称線状カーボネート100重量部に対して、0.01重量部以上、0.05重量部以上、0.10重量部以上、0.50重量部以上で含まれ、5.00重量部以下、3.00重量部以下、または1.00重量部以下で含まれる。
【発明の効果】
【0062】
本発明は、高い転換率で高純度および高付加価値を有する非対称線状カーボネートを提供し、エステル交換反応を無溶媒工程で進行させて最終反応物に3種の線状カーボネートだけが含まれ、非対称線状カーボネートを分離精製しやすく、工程の管理が容易であり、大量生産が可能な非対称線状カーボネートの製造方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0063】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
100mLの圧力反応器に、ジメチルカーボネート(DMC)10g、ジエチルカーボネート(DEC)13.1g、触媒の1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デク-5-エン(TBD)2重量%を投入した。この時、ジメチルカーボネートとジエチルカーボネートのモル比は、1:1である。以後、圧力反応器の温度を110℃に昇温し、4時間反応させた。この時、反応は閉鎖系(Closed System)で常圧で進行した。
【0065】
(実施例2)
圧力反応器の温度が120℃であることを除けば、実施例1と同様の方法でエチルメチルカーボネートを製造した。
【0066】
(実施例3)
圧力反応器の温度が120℃であり、触媒の1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デク-5-エン(TBD)の投入量が4重量%であることを除けば、実施例1と同様の方法でエチルメチルカーボネートを製造した。
【0067】
(比較例1)
100mLの圧力反応器に、ジメチルカーボネート(DMC)10g、エタノール(EtOH)5.1g、触媒のソジウムエトキシド(NaOEt)1重量%を投入した。この時、ジメチルカーボネートとエタノールのモル比は、1:1である。以後、圧力反応器の温度を90~110℃に昇温し、4時間反応させた。
【0068】
<実験例>
1.ガスクロマトグラフ(GC)分析結果
前記実施例および比較例のエステル交換反応後、ガスクロマトグラフ(GC)で分析して、生成物および残留物を確認し、その結果を下記表1に示した。
【0069】
【0070】
前記表1を参照すれば、触媒としてTBDを使用する実施例1~3は、反応結果物としてDMC、EMCおよびDEC以外には他の溶媒(メタノール、エタノール)が含まれず、これからEMCの回収が容易であることを予測できるが、触媒としてTBDを使用しない比較例1は、反応結果物としてDMC、EMC、DEC、メタノールおよびエタノールがすべて含まれ、これからEMCの回収が難しいことを予測できる。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロ環構造の塩基触媒下で、異なる2種の対称線状カーボネートをエステル交換反応して非対称線状カーボネートを製造する段階;を含む、非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項2】
前記異なる2種の対称線状カーボネートは、ジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートであり、
前記非対称線状カーボネートは、エチルメチルカーボネートである、請求項1に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項3】
前記エステル交換反応は、無溶媒工程で行われる、請求項1
または2に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項4】
前記ヘテロ環構造の塩基触媒は、下記の化学式1で表される、請求項1
または2に記載の非対称線状カーボネートの製造方法:
【化5】
前記化学式1において、
Aは、置換もしくは非置換の炭素数1~50の脂環族環;置換もしくは非置換の炭素数1~50の脂環族ヘテロ環;または置換もしくは非置換の炭素数1~50の芳香族ヘテロ環であり、
R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルアミン基である。
【請求項5】
前記ヘテロ環構造の塩基触媒は、下記の化合物から選択されたいずれか1つである、請求項1
または2に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【化6】
【請求項6】
前記ヘテロ環構造の塩基触媒の
量は、前記異なる2種の対称線状カーボネート100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下である、請求項1
または2に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項7】
前記エステル交換反応は、90℃以上130℃以下の温度で行われる、請求項1
または2に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項8】
前記ジメチルカーボネートおよび
前記ジエチルカーボネートのモル比は、1:0.5~1:1.5である、請求項2に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項9】
前記非対称線状カーボネートを回収する段階をさらに含む、請求項1
または2に記載の非対称線状カーボネートの製造方法。
【請求項10】
ヘテロ環構造の塩基化合物を含む、非対称線状カーボネート。
【請求項11】
前記ヘテロ環構造の塩基化合物は、下記の化学式1で表される、請求項10に記載の非対称線状カーボネート:
【化7】
前記化学式1において、
Aは、置換もしくは非置換の炭素数1~50の脂環族環;置換もしくは非置換の炭素数1~50の脂環族ヘテロ環;または置換もしくは非置換の炭素数1~50の芳香族ヘテロ環であり、
R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルアミン基である。
【請求項12】
前記ヘテロ環構造の塩基化合物は、下記の化合物から選択されたいずれか1である、請求項10
または11に記載の非対称線状カーボネート。
【化8】
【請求項13】
前記ヘテロ環構造の塩基化合物の含有量は、前記非対称線状カーボネート100重量部に対して、0.01重量部以上5重量部以下である、請求項10
または11に記載の非対称線状カーボネート。
【請求項14】
前記非対称線状カーボネートは、エチルメチルカーボネートである、請求項10
または11に記載の非対称線状カーボネート。
【国際調査報告】