(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-30
(54)【発明の名称】セクレトーム含有組成物を分析するための方法およびアッセイ
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530021
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 IB2021000794
(87)【国際公開番号】W WO2022106890
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ルノー ニーサ ケー イー
(72)【発明者】
【氏名】ハムリック マイケル エル
(72)【発明者】
【氏名】カールソン コビー
(72)【発明者】
【氏名】リヴィングストン メーガン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QQ02
4B063QQ15
4B063QQ61
(57)【要約】
本開示は、前駆細胞などの細胞からのセクレトーム、細胞外小胞、及びその画分を生成および/または精製するための方法;及びそのようなセクレトーム、細胞外小胞、及びその画分の活性、機能及び効力を分析する方法を提供する。本開示はまた、そのような方法を用いて分析された、セクレトーム、細胞外小胞、及びその画分の治療的使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)標的細胞の培養物を前処理培地と接触させ、少なくとも1つのストレス誘導条件下で前記標的細胞を前記前処理培地中で培養すること;
(b)細胞培養物にセクレトームを投与し、セクレトームの存在下において前記標的細胞を培養すること;および
(c)ステップ(b)の培養中に、培養細胞の少なくとも1つの特性を1回以上測定すること;
を含む、セクレトームの活性を分析する方法。
【請求項2】
前記方法が、ステップ(b)の前に培養細胞から前処理培地を除去することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
細胞培養物にセクレトームを投与する前に、標的細胞を少なくとも1つのストレス誘導条件下で培養し、ステップ(b)における標的細胞の培養を少なくとも1つのストレス誘導条件の非存在下で行う、請求項2の方法。
【請求項4】
(a)標的細胞の培養物を前処理培地と接触させ、前記前処理培地中で前記標的細胞を培養すること;
(b)細胞培養物にセクレトームを投与し、任意選択でセクレトームの存在下で前記標的細胞を培養すること;
(c)少なくとも1つのストレス誘導条件下で標的細胞を培養すること;および
(d)ステップ(c)の培養中に、培養細胞の少なくとも1つの特性を1回以上測定すること;
を含む、セクレトームの活性を分析する方法。
【請求項5】
ステップ(c)の培養の前に、前記標的細胞をセクレトームの存在下で培養する、請求項4の方法。
【請求項6】
前記方法が、ステップ(c)の前に培養細胞からセクレトームを除去することをさらに含む、請求項5の方法。
【請求項7】
前記ストレス誘導条件が、細胞ストレス剤の存在下での培養であり、前記細胞ストレス剤が前記セクレトームと共投与され、前記標的細胞が前記セクレトームおよび前記細胞ストレス剤の存在下で培養される、請求項4の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのストレス誘導培養条件が、細胞ストレス剤の存在下での培養である、請求項1~6のいずれか一項の方法。
【請求項9】
前記細胞ストレス剤が化学療法剤および/またはアポトーシス誘導剤である、請求項7または8の方法。
【請求項10】
前記アポトーシス誘導剤がインドロカルバゾールである、請求項9の方法。
【請求項11】
前記アポトーシス誘導剤が、インドロ(2,3-a)ピロール(3,4-c)カルバゾールまたはその誘導体である、請求項9の方法。
【請求項12】
前記アポトーシス誘導剤がスタウロスポリンまたはその誘導体である、請求項9の方法。
【請求項13】
前記アポトーシス誘導剤がドキソルビシンまたはその誘導体である、請求項9の方法。
【請求項14】
測定される少なくとも1つの特性が、細胞生存率、肥大、細胞健全性、細胞接着、細胞生理、ATP含量、細胞数、および細胞形態からなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項の方法。
【請求項15】
前記方法が、ステップ(a)の培養中に培養細胞の少なくとも1つの特性を1回以上測定することをさらに含む、請求項14の方法。
【請求項16】
ステップ(b)の培養中に、少なくとも1つの特性を複数回測定する、請求項1~3の方法。
【請求項17】
ステップ(c)の培養中に、少なくとも1つの特性を複数回測定する、請求項4~7の方法。
【請求項18】
複数の測定が互いに5分~10時間間隔で行われる、請求項16または17の方法。
【請求項19】
前記複数の測定は、互いに10分~4時間間隔で行われる、請求項18の方法。
【請求項20】
複数の測定が互いに30分~2時間間隔で行われる、請求項19の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの特性が、細胞生存率、細胞接着、細胞数、細胞形態、細胞増殖、及び/又はATP含量から選択される、請求項1~20のいずれか一項の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの特性が培養細胞の生存率であり、生存率が蛍光DNA標識色素または蛍光核染色色素を用いて測定される、請求項21の方法。
【請求項23】
少なくとも1つの特性が、培養細胞の接着、細胞数、増殖、および/または細胞形態であり、培養細胞の接着、細胞数、増殖、および/または形態が、培養中の培養容器表面を横切る電気インピーダンスを測定することによって決定される、請求項21の方法。
【請求項24】
ステップ(a)における前記前処理培地中での前記標的細胞の培養が、30分~10時間である、請求項1~23のいずれか一項の方法。
【請求項25】
ステップ(a)における前記前処理培地中での前記標的細胞の培養が、1時間~5時間である、請求項24の方法。
【請求項26】
ステップ(a)における前記前処理培地中での前記標的細胞の培養が約4時間である、請求項25の方法。
【請求項27】
ステップ(b)における前記標的細胞の培養が少なくとも2時間である、請求項1~3のいずれか一項の方法。
【請求項28】
ステップ(c)における前記標的細胞の培養が少なくとも2時間である、請求項4~7のいずれか一項の方法。
【請求項29】
培養が少なくとも5時間である、請求項27または請求項28の方法。
【請求項30】
培養が少なくとも12時間である、請求項29の方法。
【請求項31】
培養が少なくとも24時間である、請求項30の方法。
【請求項32】
培養細胞の生存率が、DNA標識色素または核染色色素を画像化することにより測定される、請求項22の方法。
【請求項33】
少なくとも1つの特性が培養細胞の生存率であり、生存率がライブセルイメージングによって測定される、請求項1~20および24~31のいずれか一項の方法。
【請求項34】
前記標的細胞が特殊化された細胞である、請求項1~33のいずれか一項の方法。
【請求項35】
前記標的細胞が、心筋細胞、心血管前駆細胞、心臓前駆細胞、および/または血管細胞を含む、 請求項1~33のいずれか一項の方法。
【請求項36】
前記特殊化された細胞が人工多能性幹細胞(iPSC)から得られる、請求項34の方法。
【請求項37】
前記標的細胞が予め凍結されている、請求項1~33のいずれか一項の方法。
【請求項38】
前記セクレトームが、全能性前駆細胞、複能性(multipotent)前駆細胞、および末期分化細胞から選択される1つ以上の細胞の培養物から単離される、請求項1~37のいずれか一項の方法。
【請求項39】
前記1つ以上の前駆細胞が、心筋細胞前駆細胞、心臓前駆細胞、心血管前駆細胞、および間葉系幹細胞からなる群から選択される前駆細胞を含む、請求項38の方法。
【請求項40】
前記セクレトームが、細胞培養物から単離された小細胞外小胞濃縮画分(sEV)を含む、請求項1~39のいずれか一項の方法。
【請求項41】
前記sEVが以下の特徴の1つ以上を有する、請求項40記載の方法:(a)CD63
+、CD81
+および/またはCD9
+である;(b)直径50~200nmの細胞外小胞を含む;(c)CD49e、ROR1(Receptor Tyrosine Kinase Like Orphan Receptor 1)、SSEA-4(Stage-specific embryonic antigen 4)、MSCP(Mesenchymal stem cell-like protein)、CD146、CD41b、CD24、CD44、CD236、CD133/1、CD29およびCD142のうちの1つ以上が陽性である;および/または(d)CD19、CD4、CD209、HLA-ABC(ヒト白血球抗原-ABC)、CD62P、CD42aおよびCD69のうち1つ以上が陰性であり、直径50~150nmの細胞外小胞を含み、および/またはCD49e、ROR1、SSEA-4、MSCP、CD146、CD41b、CD24、CD44、CD236、CD133/1、CD29およびCD142のうち1つ以上が陽性である。
【請求項42】
前記sEVが、エクソソーム、微小粒子、細胞外小胞、および分泌タンパク質のうちの1つ以上を含む、請求項40の方法。
【請求項43】
前記方法が、ステップ(a)の前に標的細胞を1~21日間培養することをさらに含む、請求項1~42のいずれか一項の方法。
【請求項44】
標的細胞がステップ(a)の前に5~14日間培養されている、請求項43の方法。
【請求項45】
ステップ(a)の12~36時間前に、標的細胞に新鮮な培養培地を供給する、請求項43の方法。
【請求項46】
標的細胞を二次元細胞培養で培養する、請求項1~45のいずれか一項の方法。
【請求項47】
前記二次元細胞培養が、培養容器表面上で標的細胞を培養することを含む、請求項46の方法。
【請求項48】
前記培養容器表面が細胞接着を促進する物質でコーティングされている、請求項47の方法。
【請求項49】
前記細胞接着を促進する物質がフィブロネクチンである、請求項48の方法。
【請求項50】
前記方法が、陽性対照細胞を並行して培養することをさらに含み、前記陽性対照細胞が、セクレトームを投与されず、ストレス誘導条件に供されない、請求項1~49のいずれか一項の方法。
【請求項51】
前記方法が、陰性対照細胞を培養することをさらに含み、前記陰性対照細胞が、セクレトームを投与されない、請求項1~50のいずれか一項の方法。
【請求項52】
前記陰性対照細胞が、セクレトームを投与されないことを除いて、標的細胞と同じステップに供された陰性対照細胞を含む、請求項51の方法。
【請求項53】
前記陰性対照細胞が、少なくとも1つのストレス誘導条件下で前処理培地中で培養された陰性対照細胞を含み、前記方法が、少なくとも1つのストレス誘導条件下で前処理培地中で培養中または培養後に、陰性対照細胞の少なくとも1つの特性を測定することを含む、請求項51または52の方法。
【請求項54】
前記陰性対照細胞が、模擬セクレトーム組成物が添加された陰性対照細胞を含み、前記模擬セクレトーム組成物が、セクレトームを産生する工程から細胞を省くことによって産生される、請求項51の方法。
【請求項55】
前記標的細胞に添加されるセクレトームの量が、セクレトームを産生した分泌細胞の量;前記セクレトームのタンパク質含量;前記セクレトームのRNA含量;前記セクレトームのエクソソーム量;及び前記セクレトーム中の粒子数のうちの1つ以上に基づいて決定される、請求項1~54のいずれか一項の方法。
【請求項56】
前記標的細胞及び前記陽性対照細胞が複製において培養される、請求項50の方法。
【請求項57】
複製の培養物中の陽性対照細胞数を平均して平均最大細胞数とし、各複製の培養物中の標的細胞数を平均最大細胞数に対して正規化する、請求項56の方法。
【請求項58】
少なくとも1つの特性が培養細胞の生存率であり、標的細胞の生存率が陰性対照細胞の生存率よりも高い場合に、前記セクレトームが効力を有し、及び/又は治療効果を示すと判定される、請求項51~54のいずれか一項の方法。
【請求項59】
前記sEVが、以下のうちの少なくとも一つである:
直径が約50~200nmの間または50~200nmの間、好ましくは直径が約50~150nmの間または50~150nmの間の細胞外小胞を濃縮したsEV;全細胞を実質的に含まないまたは含まないsEV;および/または1つ以上の培養培地成分を実質的に含まないsEV;
請求項40の方法。
【請求項60】
(a)標的細胞の培養物を前処理培地と接触させ、低分子または化学療法剤の存在下で前記前処理培地中で前記標的細胞を培養すること;
(b)細胞培養物にセクレトームを投与し、セクレトームの存在下において前記標的細胞を培養すること:および
(c)ステップ(b)の培養中に、培養細胞の少なくとも1つの特性を1回以上測定すること;
を含む、低分子治療薬の活性を分析する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、馴化培地、あるいはセクレトーム、細胞外小胞、および/または小細胞外小胞集積画分(sEV)含有組成物の活性、機能性、特性、および/または効力を分析するための方法およびアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞は、インビトロ又はエキソビボ培養下のものを含め、細胞外間隙中に多種多様な分子及び生体因子(まとめてセクレトームとして知られる)を分泌する。Vlassov et al.(Biochim Biophys Acta,2012;940-948)を参照のこと。セクレトームの一部として、細胞からエクソソームなどの膜結合型細胞外小胞内へと様々な生体活性分子が分泌される。細胞外小胞は、シグナル伝達を通じて、又はそのカーゴ(例えば、タンパク質、脂質、及び核酸を含む)を送達することにより、他の細胞の生物学を改変する能力を有する。細胞外小胞のカーゴは膜に包まれているため、とりわけ、膜上の特異的マーカーを介した特異的ターゲティング(例えば、細胞を標的化すること);及び血流を通る又は血液脳関門(BBB)を越えるなど、生体液中の輸送に際した安定性の増加が可能となる。
【0003】
エクソソームは、例えば、異なる細胞型間での情報のやりとりをする分子メッセンジャーとして働くことにより、多岐にわたる重要な生理学的機能を果たす。例えば、エクソソームは、アポトーシス、転移、血管新生、腫瘍進行、血栓症、T細胞を免疫活性化に向かわせることによる免疫、免疫抑制、成長、分裂、生存、分化、ストレス応答、アポトーシスなどに影響を与え得るシグナル伝達経路にその供給源に応じて関与するRNA及びマイクロRNAを含むタンパク質、脂質及び可溶性因子を送達する。Vlassov et al.(Biochim Biophys Acta,2012;940-948)を参照のこと。細胞外小胞は、協力して特定の生物学的効果を及ぼすように働き得る分子の組み合わせを含有し得る。エクソソームは、親細胞の特性を反映した広範囲にわたる細胞質成分及び膜成分を取り込む。従って、一部の例では、起源となる細胞に適用される用語法を、分泌されたエクソソームの単純な参照として用いることができる。
【0004】
前駆細胞は増殖能を有し、且つ成熟細胞へと分化することができるため、前駆細胞は、例えば心筋梗塞及びうっ血性心不全の処置における再生医学などの治療適用に魅力的となっている。幹細胞由来の心血管前駆細胞によって分泌される細胞外小胞が、それを分泌する細胞と同様の治療効果を生み出すことが慢性心不全マウスモデルで報告されており、Kervadec et al.(J.Heart Lung Transplant,2016;35:795-807)を参照されたく、移植された前駆細胞のかなりの作用機序が、移植後の生体因子の放出にある(例えば、それが内因性の再生又は修復経路を刺激する)ことが示唆される。これは、有効な無細胞療法(簡便さ、安定性、及び操作者の取扱い易さの向上など、利益を伴う)の可能性を提起する。El Harane et al.(Eur.Heart J.,2018;39:1835-1847)を参照のこと。しかしながら、現状においては、馴化培地、あるいはセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物の活性、機能、または効力を決定するための、より正確で信頼性の高い方法が必要とされている。
【0005】
馴化培地、あるいはセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物については、その機能性または効力を測定するために、血清欠乏を伴う公知の細胞生存アッセイを用いることができる。 特に、よく知られた心筋細胞生存アッセイは、血清欠乏させたラットH9c2心筋芽細胞を使用し、これを、血清欠乏細胞の生存率に対する、馴化培地、またはセクレトーム、細胞外小胞および/またはsEV含有組成物の効果を測定するために使用することができる。 例えば、El Haraneら(Eur.Heart J., 2018, 39(20): 1835-1847)を参照されたい。
【0006】
しかし、このようなアッセイに普遍的に使用されるH9c2心筋芽細胞は、継代を繰り返すと細胞パラメータにばらつきが生じることが報告されている。例えば、Witekら(Cytotechnology, 2016, 68(6):2407-2415)は、細胞パラメーター(細胞形態、遺伝子発現プロファイル、酸化ストレス応答、細胞ストレス因子に対する感受性など)が細胞培養の年数に応じて変動すること(これは、例えば、細胞生存率を促進または低下させる効果について薬剤を試験する場合、信頼できない結果につながる可能性がある)を報告している。 加えて、(例えば、異なる細胞種及び/又は異なる細胞培養条件から得られた)セクレトームの治療可能性をスクリーニングするための選択肢はほとんど存在しない。
【0007】
従って、馴化培地、あるいはセクレトーム、細胞外小胞、sEV含有組成物の活性、機能性、および/または効力を決定するための、改良されたより信頼性の高いアッセイに対する必要性が存在している。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、馴化培地、セクレトーム、細胞外小胞、およびそれらの画分の活性、機能および/または効力を確実に決定するための方法およびアッセイを提供することによって、当該技術分野における上記の限界に対処する。本開示はさらに、馴化培地、セクレトーム、細胞外小胞、およびそれらの画分を比較し、ハイスループット分析を可能にし、in vitroで一貫した結果を得ることができる、信頼性の高い分析方法およびアッセイを提供する。
【0009】
本開示の非限定的な実施形態には、以下のようなものがある:
【0010】
[1] (a)標的細胞の培養物を前処理培地と接触させ、少なくとも1つのストレス誘導条件下で前記標的細胞を前記前処理培地中で培養すること;
(b)細胞培養物にセクレトームを投与し、セクレトームの存在下において前記標的細胞を培養すること;および
(c)ステップ(b)の培養中に、培養細胞の少なくとも1つの特性を1回以上測定すること;
を含む、セクレトームの活性を分析する方法。
【0011】
[2] 前記方法が、ステップ(b)の前に培養細胞から前処理培地を除去することをさらに含む、[1]の方法。
【0012】
[3] 細胞培養物にセクレトームを投与する前に、標的細胞を少なくとも1つのストレス誘導条件下で培養し、ステップ(b)における標的細胞の培養を少なくとも1つのストレス誘導条件の非存在下で行う、[2]の方法。
【0013】
[4] (a)標的細胞の培養物を前処理培地と接触させ、前記前処理培地中で前記標的細胞を培養すること;
(b)細胞培養物にセクレトームを投与し、任意選択でセクレトームの存在下で前記標的細胞を培養すること;
(c)少なくとも1つのストレス誘導条件下で標的細胞を培養すること;および
(d)ステップ(c)の培養中に、培養細胞の少なくとも1つの特性を1回以上測定すること;
を含む、セクレトームの活性を分析する方法。
【0014】
[5] ステップ(c)の培養の前に、前記標的細胞をセクレトームの存在下で培養する、[4]の方法。
【0015】
[6] 前記方法が、ステップ(c)の前に培養細胞からセクレトームを除去することをさらに含む、[5]の方法。
【0016】
[7] 前記ストレス誘導条件が、細胞ストレス剤の存在下での培養であり、前記細胞ストレス剤が前記セクレトームと共投与され、前記標的細胞が前記セクレトームおよび前記細胞ストレス剤の存在下で培養される、[4]の方法。
【0017】
[8] 少なくとも1つのストレス誘導培養条件が、細胞ストレス剤の存在下での培養である、[1]~[6]のいずれか一の方法。
【0018】
[9] 前記細胞ストレス剤が化学療法剤および/またはアポトーシス誘導剤である、[7]または[8]の方法。
【0019】
[10] 前記アポトーシス誘導剤がインドロカルバゾールである、[9]の方法。
【0020】
[11] 前記アポトーシス誘導剤が、インドロ(2,3-a)ピロール(3,4-c)カルバゾールまたはその誘導体である、[9]の方法。
【0021】
[12] 前記アポトーシス誘導剤がスタウロスポリンまたはその誘導体である、[9]の方法。
【0022】
[13] 前記アポトーシス誘導剤がドキソルビシンまたはその誘導体である、[9]の方法。
【0023】
[14] 測定される少なくとも1つの特性が、細胞生存率、肥大、細胞健全性、細胞接着、細胞生理、ATP含量、細胞数、および細胞形態からなる群から選択される、[1]~[13]のいずれか一の方法。
【0024】
[15] 前記方法が、ステップ(a)の培養中に培養細胞の少なくとも1つの特性を1回以上測定することをさらに含む、[14]の方法。
【0025】
[16] ステップ(b)の培養中に、少なくとも1つの特性を複数回測定する、[1]~[3]の方法。
【0026】
[17] ステップ(c)の培養中に、少なくとも1つの特性を複数回測定する、[4]~[7]の方法。
【0027】
[18] 複数の測定が互いに5分~10時間間隔で行われる、[16]または[17]の方法。
【0028】
[19] 前記複数の測定は、互いに10分~4時間間隔で行われる、[18]の方法。
【0029】
[20] 複数の測定が互いに30分~2時間間隔で行われる、[19]の方法。
【0030】
[21] 少なくとも1つの特性が、細胞生存率、細胞接着、細胞数、細胞形態、細胞増殖、及び/又はATP含量から選択される、[1~[20]のいずれか一の方法。
【0031】
[22] 少なくとも1つの特性が培養細胞の生存率であり、生存率が蛍光DNA標識色素または蛍光核染色色素を用いて測定される、[21]の方法。
【0032】
[23] 少なくとも1つの特性が、培養細胞の接着、細胞数、増殖、および/または細胞形態であり、培養細胞の接着、細胞数、増殖、および/または形態が、培養中の培養容器表面を横切る電気インピーダンスを測定することによって決定される、[21]の方法。
【0033】
[24] ステップ(a)における前記前処理培地中での前記標的細胞の培養が、30分~10時間である、[1]~[23]のいずれか一の方法。
【0034】
[25] ステップ(a)における前記前処理培地中での前記標的細胞の培養が、1時間~5時間である、[24]の方法。
【0035】
[26] ステップ(a)における前記前処理培地中での前記標的細胞の培養が約4時間である、[25]の方法。
【0036】
[27] ステップ(b)における前記標的細胞の培養が少なくとも2時間である、[1]~[3]のいずれか一の方法。
【0037】
[28] ステップ(c)における前記標的細胞の培養が少なくとも2時間である、[4]~[7]のいずれか一の方法。
【0038】
[29] 培養が少なくとも5時間である、[27]または[28]の方法。
【0039】
[30] 培養が少なくとも12時間である、[29]の方法。
【0040】
[31] 培養が少なくとも24時間である、[30]の方法。
【0041】
[32] 培養細胞の生存率が、DNA標識色素または核染色色素を画像化することにより測定される、[22]の方法。
【0042】
[33] 少なくとも1つの特性が培養細胞の生存率であり、生存率がライブセルイメージングによって測定される、[1]~[20]および[24]~[31]のいずれか一の方法。
【0043】
[34] 前記標的細胞が特殊化された細胞である、[1]~[33]のいずれか一の方法。
【0044】
[35] 前記標的細胞が、心筋細胞、心血管前駆細胞、心臓前駆細胞、および/または血管細胞を含む、[1]~[33]のいずれか一の方法。
【0045】
[36] 前記特殊化された細胞が人工多能性幹細胞(iPSC)から得られる、[34]の方法。
【0046】
[37] 前記標的細胞が予め凍結されている、[1]~[33]のいずれか一の方法。
【0047】
[38] 前記セクレトームが、全能性前駆細胞、複能性(multipotent)前駆細胞、および末期分化細胞から選択される1つ以上の細胞の培養物から単離される、[1]~[37]のいずれか一の方法。
【0048】
[39] 前記1つ以上の前駆細胞が、心筋細胞前駆細胞、心臓前駆細胞、心血管前駆細胞、および間葉系幹細胞からなる群から選択される前駆細胞を含む、[38]の方法。
【0049】
[40] 前記セクレトームが、細胞培養物から単離された小細胞外小胞濃縮画分(sEV)を含む、[1]~[39]のいずれか一の方法。
【0050】
[41] 前記sEVが以下の特徴の1つ以上を有する、[40]の方法:(a)CD63+、CD81+および/またはCD9+である;(b)直径50~200nmの細胞外小胞を含む;(c)CD49e、ROR1(Receptor Tyrosine Kinase Like Orphan Receptor 1)、SSEA-4(Stage-specific embryonic antigen 4)、MSCP(Mesenchymal stem cell-like protein)、CD146、CD41b、CD24、CD44、CD236、CD133/1、CD29およびCD142のうちの1つ以上が陽性である;および/または(d)CD19、CD4、CD209、HLA-ABC(ヒト白血球抗原-ABC)、CD62P、CD42aおよびCD69のうち1つ以上が陰性である。
【0051】
[42] 前記sEVが、エクソソーム、微小粒子、細胞外小胞、および分泌タンパク質のうちの1つ以上を含む、[40]の方法。
【0052】
[43] 前記方法が、ステップ(a)の前に標的細胞を1~21日間培養することをさらに含む、[1]~[42]のいずれか一の方法。
【0053】
[44] 標的細胞がステップ(a)の前に5~14日間培養されている、[43]の方法。
【0054】
[45] ステップ(a)の12~36時間前に、標的細胞に新鮮な培養培地を供給する、[43]の方法。
【0055】
[46] 標的細胞を二次元細胞培養で培養する、[1]~[45]のいずれか一の方法。
【0056】
[47] 前記二次元細胞培養が、培養容器表面上で標的細胞を培養することを含む、[46]の方法。
【0057】
[48] 前記培養容器表面が細胞接着を促進する物質でコーティングされている、[47]の方法。
【0058】
[49] 前記細胞接着を促進する物質がフィブロネクチンである、[48]の方法。
【0059】
[50] 前記方法が、陽性対照細胞を並行して培養することをさらに含み、前記陽性対照細胞が、セクレトームを投与されず、ストレス誘導条件に供されない、[1]~[49]のいずれか一の方法。
【0060】
[51] 前記方法が、陰性対照細胞を培養することをさらに含み、前記陰性対照細胞が、セクレトームを投与されない、[1]~[50]のいずれか一の方法。
【0061】
[52] 前記陰性対照細胞が、セクレトームを投与されないことを除いて、標的細胞と同じステップに供された陰性対照細胞を含む、[51]の方法。
【0062】
[53] 前記陰性対照細胞が、少なくとも1つのストレス誘導条件下で前処理培地中で培養された陰性対照細胞を含み、前記方法が、少なくとも1つのストレス誘導条件下で前処理培地中で培養中または培養後に、陰性対照細胞の少なくとも1つの特性を測定することを含む、[51]または[52]の方法。
【0063】
[54] 前記陰性対照細胞が、模擬セクレトーム組成物が添加された陰性対照細胞を含み、前記模擬セクレトーム組成物が、セクレトームを産生する工程から細胞を省くことによって産生される、[51]の方法。
【0064】
[55] 前記標的細胞に添加されるセクレトームの量が、セクレトームを産生した分泌細胞の量;前記セクレトームのタンパク質含量;前記セクレトームのRNA含量;前記セクレトームのエクソソーム量;及び前記セクレトーム中の粒子数のうちの1つ以上に基づいて決定される、[1]~[54]のいずれか一の方法。
【0065】
[56] 前記標的細胞及び前記陽性対照細胞が複製において培養される、[50]の方法。
【0066】
[57] 複製の培養物中の陽性対照細胞数を平均して平均最大細胞数とし、各複製の培養物中の標的細胞数を平均最大細胞数に対して正規化する、[56]の方法。
【0067】
[58] 少なくとも1つの特性が培養細胞の生存率であり、標的細胞の生存率が陰性対照細胞の生存率よりも高い場合に、前記セクレトームが効力を有し、及び/又は治療効果を示すと判定される、[51]~[54]のいずれか一の方法。
【0068】
[59] 前記sEVが、以下のうちの少なくとも一つである:
直径が約50~200nmの間または50~200nmの間、好ましくは直径が約50~150nmの間または50~150nmの間の細胞外小胞を濃縮したsEV;全細胞を実質的に含まないまたは含まないsEV;および/または1つ以上の培養培地成分を実質的に含まないsEV;
[40]の方法。
【0069】
[60] (a)標的細胞の培養物を前処理培地と接触させ、低分子または化学療法剤の存在下で前記前処理培地中で前記標的細胞を培養すること;
(b)細胞培養物にセクレトームを投与し、セクレトームの存在下において前記標的細胞を培養すること:および
(c)ステップ(b)の培養中に、培養細胞の少なくとも1つの特性を1回以上測定すること;
を含む、低分子または化学療法剤の活性を分析する方法。
【0070】
参照による援用
本明細書に引用される全ての特許、刊行物、及び特許出願は、各個別の特許、刊行物、又は特許出願があらゆる目的から全体として参照により援用されることが具体的且つ個別的に指示されたものとして、本明細書において参照により援用される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
特許又は出願ファイルには,少なくとも1つのカラー図面が含まれている。この特許又は特許出願公開公報のカラー図面の写しは、請求及び必要な手数料の支払に基 づき,国内官庁から提供される。
【0072】
【
図1】
図1は、スタウロスポリン心筋細胞生存率アッセイにおいて、スタウロスポリンと共にインキュベートした細胞およびスタウロスポリンなしでインキュベートした細胞の代表的な画像を示す。健康な細胞の核は丸く、中程度の赤色強度に見えるが(パネル1に見られる)、死滅した核や死にかけた核は萎縮し、強い赤色に見える(パネル3に見られる)。 Incucyte画像解析ソフトウェアは、各画像で生存核(パネル2と4では青色の「マスキング」)を識別し、数をカウントする。
【0073】
【
図2】
図2は、スタウロスポリン心筋細胞生存率アッセイにおける細胞生存率を測定した時間経過を示す。 スタウロスポリンの前処理後に、ヒト心血管前駆細胞(CPC)から得た小細胞外小胞濃縮画分(sEV)セクレトーム;模擬sEV調製物(バージン培地コントロール);またはsEVを含まない完全培地のいずれかを投与後、各時間ごとに細胞生存率を測定した。完全培地対照(陽性対照)はスタウロスポリンの前処理を行わなかった。
【0074】
【
図3】
図3は、スタウロスポリン心筋細胞生存能アッセイの時間コースの24時間時点の結果を示すヒストグラムを示す。 このようなヒストグラムの値は、同じウェルについて、24時間時点の生存細胞数を0時間時点の生存細胞数に対して正規化することによって先ず計算される。 次に、正規化したベースラインの結果(陰性対照ウェルで決定)を各結果から差し引く。最後に、各条件の結果を陽性対照ウェルの平均値に対するパーセンテージで表す。各条件の平均と標準偏差を示す。
【0075】
【
図4】
図4は、CPCから産生したsEVを用いた実施例2に記載のスタウロスポリンアッセイについて、細胞生存率データ(生体適合性色素を用いて得られ、13時間の時点でIncucyteを用いて測定)、およびATP定量データ(CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を用いて得られ、CLARIOStar(登録商標)(BMG Labtech)およびTecan for Life Science(登録商標)プレートリーダーを用いて測定した。24時間のタイムポイントにおいて。即ち、Incucyte時間コースの終了後)を示すヒストグラムを示す。
【0076】
【
図5】
図5は、MSCから産生したsEVを用いた実施例2に記載のスタウロスポリンアッセイについて、細胞生存率データ(生体適合性色素を用いて得られ、12時間の時点でIncucyteを用いて測定)、およびATP量データ(CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を用いて得られ、CLARIOStar(登録商標)(BMG Labtech)およびTecan for Life Science(登録商標)プレートリーダー用いて測定した。23時間のタイムポイントにおいて。即ち、Incucyte時間コースの終了後)を示すヒストグラムを示す。
【0077】
【
図6】
図6は、MSCから産生されたsEVを用いた実施例2に記載のスタウロスポリンアッセイについて、ATP量データ(CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を用いて得られ、Tecan for Life Science(登録商標)プレートリーダー用いて測定した。23時間のタイムポイントにおいて)を示すヒストグラムを示す。sEV処理は、血清入り培地(「iCell心筋細胞維持培地M1003」)、または無血清培地(「iCell心筋細胞血清フリー培地M1038」)のいずれかで行った。
【0078】
【
図7】
図7は、スタウロスポリン心筋細胞生存率アッセイとHUVECスクラッチ創傷治癒アッセイの結果の比較を示し、血管新生に対するsEV調製物の効果を判定した。これら2つのアッセイで並行して試験したサンプルでは、有効性に同様の傾向が見られたことから、心血管系前駆細胞-sEVでは、in vitroで心臓と血管の両方の標的細胞に効果があることが示された。
【0079】
【
図8】
図8は、スクラッチ創傷治癒アッセイの結果を示しており、3つの異なるドナー(62、64、82)のMSCから単離されたsEVは、粒子数に基づいて投与された場合(左のグラフ)、創傷治癒に対して大きく異なる効果を示すようである。しかし、分泌細胞数に基づいて投与した場合(右のグラフ)、異なるMSCドナー由来のsEVは、このアッセイにおいてはるかに類似した効果を示すようである。
【0080】
【
図9】
図9は、スタウロスポリン心筋細胞接着/数/増殖アッセイにおける、電気インピーダンスを測定した時間経過を示す。前処理(スタウロスポリンの有無にかかわらず)の後、ヒト心血管前駆細胞から得たsEV(「sEV」、条件3~5);模擬sEV調製物(バージン培地対照(「MV」、条件1および7));またはsEVを含まない培地/培養対照(条件2、6および8)のいずれかを投与する前および後に、細胞接着/数/増殖を(電気インピーダンスを測定することによって)継続的に分析した。
【0081】
【
図10】
図10は、
図9に示した時間経過実験の結果を、処置(「Tx」)時点に対して正規化したものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本明細書で使用される用語法は、詳細な実施形態を説明することを目的としているに過ぎず、限定する意図はないことが理解されるべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上特に明確に指示されない限り複数の指示対象を含む。従って、例えば、「細胞」という表現には、1つ又は複数の細胞が含まれる。
【0083】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が関係する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様の、又はそれと均等な他の方法及び材料が本発明において有用であり得るが、本明細書には、好ましい材料及び方法を記載する。
【0084】
本明細書で使用されるとき、「対象」、「個体」、又は「患者」は、本明細書では同義的に使用され、限定なしに、ヒト並びに他の霊長類であって、アカゲザル、チンパンジー、並びに他のサル及び類人猿種など、非ヒト霊長類を含めたもの;ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、及びウマなど、農業動物;イヌ及びネコなど、家庭内飼育哺乳類;ウサギ、マウス、ラット、及びモルモットを含めた実験動物;ニワトリ、シチメンチョウ、並びに他のキジ類のトリ、アヒル、及びガチョウなど、家禽、野鳥、及び狩猟鳥を含めた鳥類などを含め、脊索動物門(Chordata)の任意のメンバーを指す。この用語は、特定の年齢又は性別を意味しない。従って、この用語には、成人、若年、及び新生児個体並びに男性及び女性が含まれる。一部の実施形態において、細胞(例えば、多能性幹細胞を含めた幹細胞、前駆細胞、又は組織特異的細胞)は、対象に由来する。一部の実施形態において、対象は、非ヒト対象である。
【0085】
本明細書で使用されるとき、「分化」は、特殊化していない細胞(多能性幹細胞、又は他の幹細胞など)、又は例えば複能性若しくは少分化能細胞が、より成熟の進んだ、又は完全に成熟した細胞に特有の特殊化した構造的及び/又は機能的特徴を獲得する過程を指す。「分化転換」は、ある分化細胞型が別の分化細胞型へと転換する過程である。
【0086】
本明細書で使用されるとき、「胚様体」は、多能性幹細胞の三次元凝集体を指す。この細胞は、分化を起こして3つの胚葉、内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞になることができる。複合的な細胞接着体の確立及び胚様体微小環境内でのパラ分泌シグナル伝達を含め、この三次元構造により、分化及び形態形成が可能となる。
【0087】
本明細書で使用されるとき、「幹細胞」は、最終分化していない状態を保ちながら自己複製能を有する、即ち、数多くの細胞分裂周期を経る能力を有する細胞を指す。幹細胞は全能性、多能性、複能性、少分化能、又は単能性であり得る。幹細胞は、例えば、胚性幹細胞、胎生幹細胞、羊膜幹細胞、成体幹細胞、又は人工多能性幹細胞であってもよい。
【0088】
本明細書で使用されるとき、「多能性幹細胞」(PSC)は、それ自体を無限に複製する能力、及び成体生物の任意の他の細胞型へと分化する能力を有する細胞を指す。概して、多能性幹細胞とは、免疫不全(SCID)マウスに移植したとき奇形腫の誘発能があり;3つ全ての胚葉の細胞型への分化能があり(例えば、外胚葉性、中胚葉性、及び内胚葉性の細胞型へと分化することができる);及びPSCに特有の1つ以上のマーカーを発現する幹細胞である。胚性幹細胞(ESC)及びiPSCなど、PSCが発現するかかるマーカーの例としては、Oct 4、アルカリホスファターゼ、SSEA-3表面抗原、SSEA-4表面抗原、nanog、TRA-1-60、TRA-1-81、SOX2、及びREX1が挙げられる。
【0089】
本明細書で使用されるとき、「人工多能性幹細胞」(iPSC)は、非多能性細胞、典型的には体細胞から人工的に誘導される多能性幹細胞の一種を指す。一部の実施形態において、体細胞はヒト体細胞である。体細胞の例としては、限定はされないが、皮膚線維芽細胞、骨髄由来の間葉細胞、心筋細胞、ケラチノサイト、肝細胞、胃細胞、神経幹細胞、肺細胞、腎細胞、脾臓細胞、及び膵細胞が挙げられる。体細胞の更なる例としては、限定はされないが、B細胞、樹状細胞、顆粒球、自然リンパ系細胞、巨核球、単球/マクロファージ、骨髄系由来サプレッサー細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、胸腺細胞、及び造血幹細胞を含めた免疫系の細胞が挙げられる。
【0090】
iPSCは、体細胞において1つの因子(本明細書ではリプログラミング因子と称される)又はその組み合わせを発現させるか、又はその発現を誘導することによる、体細胞のリプログラミングによって生成されてもよい。iPSCは、胎生、生後、新生児、幼若、又は成体体細胞を使用して生成することができる。一部の例では、体細胞を多能性幹細胞にリプログラミングするために使用することのできる因子として、例えば、OCT4(OCT3/4)、SOX2、c-MYC、及びKLF4、NANOG、及びLIN28が挙げられる。一部の例では、体細胞は、少なくとも2つのリプログラミング因子、少なくとも3つのリプログラミング化因子、又は少なくとも4つのリプログラミング因子を発現させることにより体細胞を多能性幹細胞にリプログラミングすることで、リプログラミングされてもよい。細胞は、例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びセンダイウイルスベクターを含めたベクターを使用してリプログラミング因子を導入することにより、リプログラミングされてもよい。或いは、リプログラミング因子を導入するための非ウイルス的な技法として、例えば、mRNAトランスフェクション、miRNA感染/トランスフェクション、ピギーバック、ミニサークルベクター、及びエピソームプラスミドが挙げられる。iPSCはまた、例えば、CRISPR-Cas9ベースの技法を用いてリプログラミング因子を導入するか、又は内因性プログラミング遺伝子を活性化させることにより生成されてもよい。
【0091】
本明細書で使用されるとき、「胚性幹細胞」は、胚組織、好ましくは胚盤胞の内部細胞塊又は桑実胚に由来する、任意選択で細胞株として連続継代された胚細胞である。この用語には、胚の1つ以上の割球から、好ましくは胚の残りの部分を破壊することなく単離された細胞が含まれる。この用語にはまた、体細胞核移植によって作製された細胞も含まれる。ESCは、例えば、精細胞と卵細胞の融合、核移植、又は単為生殖によって作製された、接合体、割球、又は胚盤胞段階の哺乳類胚から作製し、又はそれに由来することができる。ヒトESCとしては、限定なしに、MAO1、MAO9、ACT-4、No.3、H1、H7、H9、H14及びACT30胚性幹細胞が挙げられる。例示的多能性幹細胞としては、胚盤胞期胚の内部細胞塊(ICM)に由来する胚性幹細胞、並びに卵割期又は桑実期の胚の1つ以上の割球に由来する胚性幹細胞が挙げられる。これらの胚性幹細胞は、受精によるか、又は体細胞核移植(SCNT)、単為生殖、及び雄核発生を含めた無性的手段によって作製された胚性材料から生成することができる。PSCは全ての胚体外組織(例えば、インビボでの胎盤又はインビトロでのトロホブラスト)に寄与する能力を欠いているため、PSC単独では、子宮内移植されたときに胎児又は成体動物に発達することはできない。
【0092】
本明細書で使用されるとき、用語「前駆細胞」は、1種以上の特殊化した細胞への更なる分化能を有するが、無限に分裂及び複製することはできない幹細胞の子孫を指す。つまり、幹細胞(無制限の自己複製能を備えている)とは異なり、前駆細胞は、限られた自己複製能を備えているに過ぎない。前駆細胞は複能性、少分化能、又は単能性であってもよく、典型的には、それが分化することのできる特殊化した細胞の種類に基づき分類される。例えば、「心筋細胞前駆細胞」は、心筋細胞に分化する能力を有する幹細胞に由来する前駆細胞である。同様に、「心前駆細胞」は、例えば、心筋細胞、平滑筋細胞、及び内皮細胞を含め、心組織を構成する複数の特殊化した細胞に分化し得る。加えて、「心血管前駆細胞」は、例えば、心系統及び血管系統の細胞へと分化する能力を有する。間葉系幹細胞(MSC)は、別の種類の前駆細胞である。
【0093】
本明細書で使用されるとき、「拡大する」又は「増殖する」とは、細胞培養物中の細胞の数が細胞分裂に起因して増加する過程を指し得る。
【0094】
「複能性(multipotent)」とは、細胞が、その子孫を通じて、成体動物に見られる幾つかの異なる細胞型を生じさせる能力を有することを含意する。
【0095】
「多能性(pluripotent)」とは、細胞が、その子孫を通じて、生殖細胞を含め、成体動物に含まれるあらゆる細胞型を生じさせる能力を有することを含意する。胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び胚性生殖細胞は、この定義下にある多能性細胞である。
【0096】
用語「自己細胞」は、本明細書で使用されるとき、レシピエントと遺伝学的に同一のドナー細胞を指す。
【0097】
本明細書で使用されるとき、用語「同種異系細胞」は、同じ種の遺伝的に同一でない別の個体に由来する細胞を指す。
【0098】
用語「全能性(totipotent)」は、本明細書で使用されるとき、生きて生まれた動物を生じさせる細胞を指し得る。用語「全能性」はまた、特定の動物のあらゆる細胞を生じさせる細胞も指し得る。全能性細胞は、それが1つ以上の核移植工程から胚を発生させるための手順において利用されるとき、動物のあらゆる細胞を生じさせることができる。
【0099】
本明細書で使用されるとき、用語「細胞外小胞」は、細胞に由来する生物学的ナノ粒子をまとめて指し、その例としては、エクソソーム、エクトソーム、エクソベシクル、マイクロパーティクル、マイクロベシクル、ナノベシクル、ブレブ形成小胞、出芽小胞、エクソソーム様小胞、マトリックス小胞、膜小胞、シェディング小胞、膜粒子、シェディングマイクロベシクル、オンコソーム、エクソマー、及びアポトーシス小体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
細胞外小胞は、例えばサイズに基づき分類することができる。例えば、本明細書で使用されるとき、用語「小型細胞外小胞」は、約50~200nmの直径を有する細胞外小胞を指す。対照的に、約200nmより大きく400nmより小さい直径を有する細胞外小胞は「中間細胞外小胞」と称されてもよく、約400nmより大きい直径を有する細胞外小胞は「大型細胞外小胞」と称されてもよい。本明細書で使用されるとき、用語「小型細胞外小胞画分」(「sEV」)は、約50~200nmの直径を有する小型細胞外小胞が濃縮されている、及び/又は集積しているセクレトーム又は馴化培地の一部、抽出物、又は画分を指す。かかる濃縮及び/又は集積は、本明細書に開示される精製、単離、濃縮、及び/又は集積技法のうちの1つ以上を用いて達成されてもよい。
【0101】
用語「エクソソーム」は、本明細書で使用されるとき、多胞体(MVB)(中間エンドサイトーシス区画)が細胞膜と融合すると細胞から放出される細胞外小胞を指す。
【0102】
エクソソームと共通の起源を有する「エクソソーム様小胞」は、典型的には、それをエクソソームと区別するサイズ及び沈降特性を有すると記載され、特に、脂質ラフトマイクロドメインを欠いていると記載される。「エクトソーム」は、本明細書で使用されるとき、典型的には好中球由来又は単球由来の微小胞である。
【0103】
「マイクロパーティクル」は、本明細書で使用されるとき、典型的には直径約100~1000nmであり、細胞膜を起源とする。「細胞外膜構造」にはまた、例えば壊死による、線状の又は折り畳まれた膜断片、並びに、分泌されたリソソーム及びナノチューブを含め、他の細胞供給源からの膜構造も含まれる。
【0104】
本明細書で使用されるとき、「アポトーシスブレブ又は小体」は、典型的には直径約1~5μmであり、アポトーシスを起こしている細胞、即ち、罹患している、望ましくない及び/又は異常な細胞のブレブとして放出される。
【0105】
細胞外小胞のクラス内で、重要な成分は「エクソソーム」それ自体であり、これは、直径約40~50nmから約200nmの間の、エンドサイトーシス起源の膜小胞、即ち、リン脂質二重層に取り囲まれている小胞であってよく、多胞体(MVB)の開口分泌融合、即ち「エキソサイトーシス」によって生じるものである。場合によっては、エクソソームは、60nm~180nmであるなど、約40~50nmから最大約200nmの間の直径であり得る。
【0106】
本明細書で使用されるとき、用語「セクレトーム」及び「セクレトーム組成物」は、同義的に、細胞によって細胞外間隙中に(培養培地中などに)分泌される1つ以上の分子及び/又は生体因子を指す。セクレトーム又はセクレトーム組成物としては、限定なしに、細胞外小胞(例えば、エクソソーム、マイクロパーティクル等)、タンパク質、核酸、サイトカイン、及び/又は細胞によって細胞外間隙中に(培養培地中などに)分泌される他の分子を挙げることができる。セクレトーム又はセクレトーム組成物は、精製されないままであってもよく、又は更に処理されてもよい(例えば、セクレトーム又はセクレトーム組成物の成分が馴化培地中などの培養培地中に存在してもよく;又はその代わりに、セクレトーム又はセクレトーム組成物の成分が培養培地又はその抽出物、一部、若しくは画分から精製、単離、及び/又は集積されてもよい)。セクレトーム又はセクレトーム組成物は、細胞から分泌されない1つ以上の物質(例えば、培養培地、添加剤、栄養素等)を更に含み得る。或いは、セクレトーム又はセクレトーム組成物は、細胞から分泌されない1つ以上の物質(例えば、培養培地、添加剤、栄養素等)を含まない(又はそれを微量にしか含まない)。
【0107】
本明細書で使用されるとき、用語「馴化培地」は、1つ以上の目的の細胞が培養されていた培養培地(又はその抽出物、一部、又は画分)を指す。好ましくは、馴化培地は、使用前及び/又は更なる処理の前に培養細胞と分離される。細胞を培養培地で培養すると、1つ以上の分子及び/又は生体因子(これとしては、限定なしに、細胞外小胞(例えば、エクソソーム、マイクロパーティクル等)、タンパク質、核酸、サイトカイン、及び/又は細胞によって細胞外間隙中に分泌される他の分子を挙げることができる)が分泌され、及び/又は蓄積することになり得る;そうした1つ以上の分子及び/又は生体因子を含有する培地が、馴化培地である。馴化培地の調製方法の例は、例えば、米国特許第6,372,494号明細書(これは参照により全体として本明細書に援用される)に記載されている。
【0108】
本明細書で使用されるとき、用語「細胞培養物」は、細胞の自然環境外にて1つ又は複数の制御された条件下で成長させる細胞を指す。例えば、細胞は、その自然環境の完全に外側で増殖させることができ(インビトロ)、又はその自然環境から取り出して培養することができる(エキソビボ)。細胞培養時、細胞は、例えば具体的な培養培地、培養条件、及び細胞の種類に応じて、非複製状態で生存してもよく、又は数の上で複製及び成長してもよい。インビトロ環境とは、例えば好適な液体培地又は寒天など、インビトロでの細胞の維持に好適な当該技術分野において公知の任意の培地であり得る。
【0109】
用語「細胞株」は、本明細書で使用されるとき、終わらせることなく少なくとも1回継代することができる培養細胞を指し得る。
【0110】
用語「浮遊」は、本明細書で使用されるとき、細胞が固体支持体に付着していない細胞培養条件を指し得る。浮遊液中で増殖する細胞は、増殖する間に、当業者に周知の装置を使用して撹拌することができる。
【0111】
用語「単層」は、本明細書で使用されるとき、好適な培養条件で増殖する間に固体支持体に付着している細胞を指し得る。好適な成長条件下で単層で増殖する細胞のごく一部は、固体支持体ではなく、単層中の細胞に付着していることもある。
【0112】
用語「(平板に)播かれた(プレートされた:plated)」又は「(平板に)播くこと(プレーティング:plating)」は、細胞に関して本明細書で使用されるとき、インビトロで細胞培養物を樹立することを指し得る。例えば、細胞を細胞培養培地中に希釈し、次に細胞培養プレート、ディッシュ、又はフラスコに加えることができる。細胞培養プレートは、当業者に一般に公知である。細胞は、種々の濃度及び/又は細胞密度で播かれ得る。
【0113】
用語「細胞を播くこと」はまた、用語「細胞継代」にも広がり得る。細胞は、当業者に周知の細胞培養技法を用いて継代することができる。用語「細胞継代」は、(1)固体支持体又は基質からの細胞の放出、及びそれらの細胞の解離ステップ、及び(2)更なる細胞増殖に好適な培地への細胞の希釈ステップが関わる技法を指し得る。細胞継代とはまた、培養細胞を含有する液体培地の一部を取り出し、元の培養ベッセルに液体培地を加えて細胞を希釈して更なる細胞増殖を行わせることを指してもよい。加えて、細胞はまた、更なる細胞増殖に好適な培地を補足した新しい培養ベッセルに加えてもよい。
【0114】
本明細書で使用されるとき、用語「培養培地」、「成長培地」又は「培地」は、同義的に使用され、生物の成長及び生存を支援することを意図した組成物を指す。培養培地は多くの場合に液体形態であるが、例えば、固体、半固体、ゲル、浮遊液など、他の物理的形態が用いられてもよい。
【0115】
本明細書で使用されるとき、用語「無血清」は、培養培地又は成長培地の文脈では、血清が存在しない培養又は成長培地を指す。血清とは、典型的には、血栓形成によって凝固因子(例えば、フィブリノゲン及びプロトロンビン)が取り除かれた後の、凝固した血液の液体成分を指す。ウシ胎仔血清などの血清は、その中にある様々なタンパク質及び成長因子が細胞の生存、成長、及び分裂に特に有用であるため、当該技術分野では細胞培養培地の成分としてルーチンで用いられている。
【0116】
本明細書で使用されるとき、用語「基本培地」は、緩衝液、1つ以上の炭素源、アミノ酸、及び塩を含有し得る補足されていない合成培地を指す。適用に応じて、基本培地には、例えば、特定の細胞型の成長の促進、又は分化状態の維持若しくは変更に有用な、限定はされないが、追加的な緩衝剤、アミノ酸、抗生物質、タンパク質、及び成長因子を含めた成長因子及びサプリメントが補足されてもよい(例えば、線維芽細胞成長因子-塩基性(bFGF)、別名、線維芽細胞成長因子2(FGF-2))。
【0117】
本明細書で使用されるとき、用語「野生型」、「天然に存在する」、及び「非修飾」は、本明細書では、自然界に存在する典型的な(又は最も一般的な)形態、外観、表現型、又は株;例えば、細胞、生物、ポリヌクレオチド、タンパク質、巨大分子複合体、遺伝子、RNA、DNA、又はゲノムの、それが自然界の供給源に現れているままの、及びそこから単離することのできる典型的な形態を意味して使用される。野生型形態、外観、表現型、又は株は、意図的な修飾前の元の親として働く。従って、突然変異体、変異体、操作された、組換えの、及び修飾された形態は、野生型形態ではない。
【0118】
本明細書で使用されるとき、用語「単離されている」は、その元の環境から取り出されている、従って、その自然状態から「人の手によって」改変されている材料を指す。
【0119】
本明細書で使用されるとき、用語「集積されている」は、組成物中の1つ以上の成分を1つ以上の他の成分と比べて選択的に濃縮し、又はその量を増加させることを意味する。例えば、集積には、望ましくない材料の量を低減し、又は減少させること(例えば、除去すること又は消失させること)が含まれてもよく;及び/又は組成物から望ましい材料を特別に選択すること又は単離することが含まれてもよい。
【0120】
用語「エンジニアリングされた」、「遺伝子操作された」、「遺伝子修飾された」、「組換えの」、「修飾された」、「天然に存在しない」、及び「非天然の」は、生物又は細胞のゲノムの意図的なヒト操作を指し示している。これらの用語は、本明細書に定義するとおりのゲノム編集を含むゲノム修飾方法、並びに遺伝子発現又は不活性化を改変する技法、酵素エンジニアリング、定向進化、知識ベースの設計、ランダム突然変異誘発法、遺伝子シャッフリング、コドン最適化などを包含する。遺伝子工学方法は、当該技術分野において公知である。
【0121】
本明細書で使用されるとき、用語「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」、及び「オリゴヌクレオチド」は全て、ポリマー形態のヌクレオチドを指す。本明細書で使用されるとき、用語「ポリヌクレオチド」は、線状形態のとき1つの5’末端及び1つの3’末端を有し、1つ以上の核酸配列を含むことができるポリマー形態のヌクレオチドを指す。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド(DNA)、リボヌクレオチド(RNA)、その類似体、又はこれらの組み合わせであってもよく、及びいかなる長さであってもよい。ポリヌクレオチドは、いかなる機能を果たしてもよく、様々な二次及び三次構造を有してもよい。この用語は、天然ヌクレオチドの公知の類似体並びに塩基、糖、及び/又はリン酸部分が修飾されているヌクレオチドを包含する。特定のヌクレオチドの類似体は、同じ塩基対合特異性を有する(例えば、Aの類似体はTと塩基対合する)。ポリヌクレオチドは、1つの修飾ヌクレオチド又は複数の修飾ヌクレオチドを含み得る。修飾ヌクレオチドの例としては、フッ素化ヌクレオチド、メチル化ヌクレオチド、及びヌクレオチド類似体が挙げられる。ヌクレオチド構造は、ポリマーが集合する前又はその後に修飾されてもよい。重合後、ポリヌクレオチドは、例えば、標識成分又は標的結合成分とのコンジュゲーションにより、更に修飾されてもよい。ヌクレオチド配列は、非ヌクレオチド成分を取り込み得る。これらの用語はまた、合成の、天然に存在する、及び/又は天然に存在しない、且つ参照ポリヌクレオチド(例えば、DNA又はRNA)と類似した結合特性を有する修飾骨格残基又は系統を含む核酸も包含する。かかる類似体の例としては、限定はされないが、ホスホロチオエート類、ホスホルアミデート類、メチルホスホネート類、キラルメチルホスホネート類、2-O-メチルリボヌクレオチド類、ペプチド-核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA(商標))(Exiqon,Inc.、Woburn、MA)ヌクレオシド、グリコール核酸、架橋型核酸、及びモルホリノ構造が挙げられる。ペプチド核酸(PNA)は、ポリヌクレオチドリン酸-糖骨格が可動性の擬似ペプチドポリマーに置き換えられている合成の核酸ホモログである。核酸塩基はポリマーに連結される。PNAは、RNA及びDNAの相補配列と高い親和性及び特異性でハイブリダイズする能力を有する。ポリヌクレオチド配列は、本明細書では、特に指示されない限り、従来の5’から3’の向きで提示される。
【0122】
本明細書で使用されるとき、「配列同一性」は、概して、様々な重み付けパラメータを有するアルゴリズムを用いて第1のポリヌクレオチド又はポリペプチドを第2のポリヌクレオチド又はポリペプチドと比較するヌクレオチド塩基又はアミノ酸のパーセント同一性を指す。2つのポリヌクレオチド間又は2つのポリペプチド間の配列同一性は、限定はされないが、GENBANK(www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/)及びEMBL-EBI(www.ebi.ac.uk.)を含めたワールドワイドウェブ上のサイトで利用可能な様々な方法及びコンピュータプログラム(例えば、Exonerate、BLAST、CS-BLAST、FASTA、HMMER、L-ALIGNなど)による配列アラインメントを用いて決定することができる。2つのポリヌクレオチド間又は2つのポリペプチド配列間の配列同一性は、概して、様々な方法又はコンピュータプログラムの標準的なデフォルトパラメータを使用して計算される。2つのポリヌクレオチド間又は2つのポリペプチド間の高度な配列同一性は、多くの場合に、参照ポリヌクレオチド又はポリペプチド又は問い合わせ配列の長さにわたって約90%の同一性~100%の同一性、例えば、参照ポリヌクレオチド又はポリペプチド又は問い合わせ配列の長さにわたって約90%以上の同一性、約91%以上の同一性、約92%以上の同一性、約93%以上の同一性、約94%以上の同一性、約95%以上の同一性、約96%以上の同一性、約97%以上の同一性、約98%以上の同一性、又は約99%以上の同一性である。配列同一性はまた、2つの配列のうち一部分しかアラインメントできないような2つの配列の重複する領域についても計算することができる。
【0123】
2つのポリヌクレオチド間又は2つのポリペプチド間の中程度の配列同一性は、多くの場合に、参照ポリヌクレオチド又はポリペプチド又は問い合わせ配列の長さにわたって約80%の同一性~約90%の同一性、例えば、参照ポリヌクレオチド又はポリペプチド又は問い合わせ配列の長さにわたって約80%以上の同一性、約81%以上の同一性、約82%以上の同一性、約83%以上の同一性、約84%以上の同一性、約85%以上の同一性、約86%以上の同一性、約87%以上の同一性、約88%以上の同一性、又は約89%以上の同一性であるが、90%未満である。
【0124】
2つのポリヌクレオチド間又は2つのポリペプチド間の低度の配列同一性は、多くの場合に、参照ポリヌクレオチド又はポリペプチド又は問い合わせ配列の長さにわたって約50%の同一性~75%の同一性、例えば、参照ポリヌクレオチド又はポリペプチド又は問い合わせ配列の長さにわたって約50%以上の同一性、約60%以上の同一性、約70%以上の同一性であるが75%未満の同一性である。
【0125】
本明細書で使用されるとき、「結合している」は、巨大分子間(例えば、タンパク質とポリヌクレオチドとの間、ポリヌクレオチドとポリヌクレオチドとの間、又はタンパク質とタンパク質との間など)の非共有結合性の相互作用を指す。かかる非共有結合性の相互作用は、「会合している」又は「相互作用している」とも称される(例えば、第1の巨大分子が第2の巨大分子と相互作用する場合、第1の巨大分子は非共有結合性の様式で第2の巨大分子に結合する)。結合相互作用の一部分は配列特異的であってもよい(用語「配列特異的結合」、「配列特異的に結合する」、「部位特異的結合」、及び「部位特異的に結合する」は、本明細書では同義的に使用される)。結合相互作用は解離定数(Kd)によって特徴付けることができる。「結合親和性」は、結合相互作用の強度を指す。結合親和性が増加するほど、低いKdと相関する。
【0126】
「遺伝子」は、本明細書で使用されるとき、エクソン及び関連する調節配列を含むポリヌクレオチド配列を指す。遺伝子は、イントロン及び/又は非翻訳領域(UTR)を更に含み得る。
【0127】
本明細書で使用されるとき、「発現」は、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)又は他のRNA転写物(例えば、構造RNA又は足場RNAなど、非コードRNA)を生じさせるDNA鋳型からのポリヌクレオチドの転写を指す。この用語は更に、転写されたmRNAがペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質へと翻訳される過程を指す。転写物及びコードされるポリペプチドは、まとめて「遺伝子産物」と称されることもある。発現は、ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、真核細胞におけるmRNAのスプライシングを含み得る。
【0128】
「コード配列」又は選択のポリペプチドを「コードする」配列は、インビトロ又はインビボで適切な調節配列の制御下に置いたとき転写され(DNAの場合)、及び翻訳されて(mRNAの場合)ポリペプチドとなる核酸分子である。コード配列の境界は、5’末端の開始コドン及び3’末端の翻訳終止コドンによって決まる。コード配列の3’側には転写終結配列が位置し得る。
【0129】
本明細書で使用されるとき、「異なる」又は「変化した」レベルの、例えば特徴又は特性は、測定可能な程度に異なる、且つ好ましくは統計的に有意な(例えば、アッセイの標準誤差に原因を帰することのできない)差である。一部の実施形態において、差、例えば、対照又は参照試料と比較したときの差は、例えば、10%より大きい差、20%より大きい差、30%より大きい差、40%より大きい差、50%より大きい差、60%より大きい差、70%より大きい差、80%より大きい差、90%より大きい差、例えば、2倍より大きい差;5倍より大きい差;10倍より大きい差;20倍より大きい差;50倍より大きい差;75倍より大きい差;100倍より大きい差;250倍より大きい差;500倍より大きい差;750倍より大きい差;又は1,000倍より大きい差であり得る。
【0130】
本明細書で使用されるとき、用語「~の間」は、所与の範囲の端点の値を含む(例えば、約1~約50ヌクレオチド長の間は、1ヌクレオチド及び50ヌクレオチドを含む)。
【0131】
本明細書で使用されるとき、用語「アミノ酸」は、アミノ酸類似体、修飾アミノ酸、ペプチドミメティクス、グリシン、及びD又はL光学異性体を含め、天然及び合成の(天然でない)アミノ酸を指す。
【0132】
本明細書で使用されるとき、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は、同義的であり、アミノ酸のポリマーを指す。ポリペプチドは任意の長さであってよい。これは分枝状又は線状であってよく、これは非アミノ酸によって分断されていてもよく、及びこれは修飾アミノ酸を含み得る。これらの用語はまた、例えば、アセチル化、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、リン酸化、ペグ化、ビオチン化、架橋結合、及び/又はコンジュゲーション(例えば、標識成分又はリガンドとの)によって修飾されているアミノ酸ポリマーも指す。ポリペプチド配列は、本明細書では、特に指示されない限り、従来のN末端からC末端の向きに提示される。ポリペプチド及びポリヌクレオチドは、分子生物学分野のルーチンの技法を用いて作ることができる。
【0133】
「部分」は、本明細書で使用されるとき、分子の一部分を指す。部分は官能基であってもよく、又は複数の官能基を持つ(例えば、共通の構造的態様を共有する)分子の一部分を記載してもよい。用語「部分」及び「官能基」は、典型的には同義的に使用される;しかしながら、「官能基」は、より具体的には、分子の中で何らかの共通の化学的挙動を含む一部分を指すことができる。「部分」は、多くの場合に、構造的記述として使用される。
【0134】
本明細書に提供されるとおりの治療組成物など、組成物又は薬剤の「有効量」又は「治療有効量」という用語は、所望の応答をもたらすのに十分な量の組成物又は薬剤を指す。かかる応答は、問題となる詳細な疾患に依存することになる。
【0135】
「形質転換」は、本明細書で使用されるとき、挿入に用いられる方法に関係なく、宿主細胞への外因性ポリヌクレオチドの挿入を指す。例えば、形質転換は、直接的な取込み、トランスフェクション、感染などによることができる。外因性ポリヌクレオチドは、非組込みベクター、例えば、エピソームとして維持されてもよく、又はその代わりに、宿主ゲノムに組み込まれてもよい。
【0136】
前駆細胞の入手
【0137】
本開示は、部分的には、馴化培地;またはセクレトーム、細胞外小胞、および/または小細胞外小胞濃縮画分(sEV)含有組成物の活性、機能、および/または効力を分析する方法およびアッセイに関する。一部の実施形態において、馴化培地、またはセクレトーム、細胞外小胞、および/または小細胞外小胞濃縮画分(sEV)含有組成物は、培養前駆細胞などの培養中の1以上の細胞から得ることができる。 しかし、例えば、末期分化細胞、多能性幹細胞などを含む他の種類の細胞を使用することもできる。
【0138】
馴化培地、またはセクレトーム、細胞外小胞、および/または小細胞外小胞濃縮画分(sEV)含有組成物を産生するのに適した前駆細胞は、例えば、対象または組織から単離してもよく、あるいは胚性幹(ES)細胞または人工多能性幹細胞(iPSC)など多能性幹細胞から生成してもよい。一部の実施形態において、活性、機能、及び/又は効力は、iPSC細胞から分化した前駆細胞から産生された馴化培地、又はセクレトーム、細胞外小胞、及び/または小細胞外小胞濃縮画分(sEV)含有組成物について評価することができる。
【0139】
iPSC細胞の生成
【0140】
iPSC細胞は、例えば、ヒト体細胞を含め、体細胞から得てもよい。体細胞は、例えば、ヒト並びに他の霊長類であって、アカゲザル、チンパンジー、並びに他のサル及び類人猿種などの非ヒト霊長類を含めたもの;ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、及びウマなど、農業動物;イヌ及びネコなど、家庭飼育哺乳類;ウサギ、マウス、ラット、及びモルモットを含めた実験動物;ニワトリ、シチメンチョウ、及び他のキジ類のトリ、アヒル、及びガチョウなど、家禽、野鳥、及び狩猟鳥を含めた鳥類などを含め、ヒト又は非ヒト動物に由来し得る。
【0141】
一部の実施形態において、体細胞は、角化扁平上皮細胞、粘膜上皮細胞、外分泌腺上皮細胞、内分泌細胞、肝細胞、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、筋細胞、血液及び免疫系の細胞、神経細胞及びグリア細胞を含めた神経系の細胞、色素細胞、及び造血幹細胞を含めた前駆細胞から選択される。体細胞は、完全に分化した(特殊化した)ものであってもよく、又は完全な分化には満たないものであってもよい。例えば、体性幹細胞を含め、PSCでない未分化の前駆細胞、及び最終分化した成熟細胞を使用することができる。体細胞は、成体細胞及び胎児細胞を含め、任意の年齢の動物からのものであってもよい。
【0142】
体細胞は、哺乳類起源であってもよい。例えば、その前駆細胞からのセクレトーム(又は細胞外小胞)がインビボ投与に使用される場合、同種異系幹細胞又は自己幹細胞を使用することができる。一部の実施形態において、iPSCは、対象にとってMHC適合/HLA適合でない。一部の実施形態において、iPSCは対象にとってMHC適合/HLA適合で一部の実施形態において、例えば、(対象での治療的使用向けのセクレトーム、又は細胞外小胞を得るための)PSC由来の前駆細胞の作製にiPSCが使用されることになる場合、体細胞は、処置しようとする対象から、又は対象と同じ若しくは実質的に同じHLA型の別の対象から得てもよい。体細胞は、核のリプログラミング前に培養することができ、又は、例えば単離後に、培養することなくリプログラミングすることができる。
【0143】
体細胞にリプログラミング因子を導入するためには、例えば、SV40、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、HSV及びEBVを含めたヘルペスウイルス、シンドビスウイルス、アルファウイルス、HHV-6及びHHV-7などのヒトヘルペスウイルスベクター(HHV)、及びレトロウイルスなど、ウイルスからのベクターを含め、例えばウイルスベクターを使用し得る。レンチウイルスとしては、限定はされないが、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV-2)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ヒツジビスナウイルス(VISNA)及びヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)が挙げられる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を感染させる能力を有し、核酸配列のインビボ及びインビトロの両方の遺伝子移入及び発現に使用することができる。ウイルスベクターは、エンベロープタンパク質などのウイルスタンパク質を抗体などの結合剤に連結するか、又は特定のリガンドに(例えば、特定の細胞型上又はその中にある受容体又はタンパク質へと標的化するため)連結することにより、特異的な細胞型に標的化することができる。
【0144】
一部の実施形態において、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよい。このように移入した遺伝子材料が、次には宿主細胞の中で転写され、場合によってはタンパク質へと翻訳される。他の実施形態において、宿主細胞のゲノムに組み込まれないウイルスベクターが使用される。
【0145】
ウイルス遺伝子送達システムは、RNAベース又はDNAベースのウイルスベクターであり得る。エピソーム遺伝子送達システムは、例えば、プラスミド、エプスタイン・バーウイルス(EBV)ベースのエピソームベクター、酵母ベースベクター、アデノウイルスベースのベクター、シミアンウイルス40(SV40)ベースのエピソームベクター、ウシパピローマウイルス(BPV)ベースのベクター、又はレンチウイルスベクターであり得る。
【0146】
体細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)を産生するように当業者に公知の方法を用いてリプログラミングすることができる。当業者は、人工多能性幹細胞を容易に作製することができ、例えば、米国特許出願公開第2009/0246875号明細書、米国特許出願公開第2010/0210014号明細書;米国特許出願公開第2012/0276636号明細書;米国特許第8,058,065号明細書;同第8,129,187号明細書;及び同第8,268,620号明細書(これらは全て、参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0147】
概して、人工多能性幹細胞を作り出すために使用し得るリプログラミング因子としては、単独、組み合わせ、又はトランス活性化ドメインとの融合体としてのいずれでも、限定はされないが、以下の遺伝子:Oct4(Oct3/4、Pou5f1)、Sox(例えば、Sox1、Sox2、Sox3、Sox18、又はSox15)、Klf(例えば、Klf4、Klf1、Klf3、Klf2又はKlf5)、Myc(例えば、c-myc、N-myc又はL-myc)、nanog、又はLIN28のうちの1つ以上が挙げられる。これらの遺伝子及びタンパク質の配列の例として、以下の受託番号が提供される:マウスMyoD:M84918、NM_010866;マウスOct4(POU5F1):NM_013633;マウスSox2:NM_011443;マウスKlf4:NM_010637;マウスc-Myc:NM_001177352、NM_001177353、NM_001177354 マウスNanog:NM_028016;マウスLin28:NM_145833:ヒトMyoD:NM_002478;ヒトOct4(POU5F1):NM_002701、NM_203289、NM_001173531;ヒトSox2:NM_003106;ヒトKlf4:NM_004235;ヒトc-Myc:NM_002467;ヒトNanog:NM_024865;及び/又はヒトLin28:NM_024674。また、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を有するものを含め、それと類似した配列も企図される。一部の実施形態において、Klf4、c-Myc、Oct3/4、Sox2、Nanog、及びLin28のうちの少なくとも3つ、又は少なくとも4つが利用される。他の実施形態において、Oct3/4、Sox2、c-Myc及びKlf4が利用される。
【0148】
iPSCの作製のための例示的なリプログラミング因子としては、(1)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc(Sox2は、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17又はSox18で置き換えることができ;Klf4は、Klf1、Klf2又はKlf5で置き換え可能である);(2)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、TERT、SV40ラージT抗原(SV40LT);(3)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、TERT、ヒトパピローマウイルス(HPV)16 E6;(4)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、TERT、HPV16 E7(5)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、TERT、HPV16 E6、HPV16 E7;(6)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、TERT、Bmi1;(7)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、Lin28;(8)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、Lin28、SV40LT;(9)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、Lin28、TERT、SV40LT;(10)Oct3/4、Klf4、Sox2、L-Myc、SV40LT;(11)Oct3/4、Esrrb、Sox2、L-Myc(EsrrbはEsrrgで置き換え可能である);(12)Oct3/4、Klf4、Sox2;(13)Oct3/4、Klf4、Sox2、TERT、SV40LT;(14)Oct3/4、Klf4、Sox2、TERT、HPV16 E6;(15)Oct3/4、Klf4、Sox2、TERT、HPV16 E7;(16)Oct3/4、Klf4、Sox2、TERT、HPV16 E6、HPV16 E7;(17)Oct3/4、Klf4、Sox2、TERT、Bmi1;(18)Oct3/4、Klf4、Sox2、Lin28(19)Oct3/4、Klf4、Sox2、Lin28、SV40LT;(20)Oct3/4、Klf4、Sox2、Lin28、TERT、SV40LT;(21)Oct3/4、Klf4、Sox2、SV40LT;又は(22)Oct3/4、Esrrb、Sox2(EsrrbはEsrrgで置き換え可能である)が挙げられる。
【0149】
iPSCは典型的には、ヒト胚性幹細胞(hESC)の特徴的形態を呈し、多能性因子、NANOGを発現する。胚性幹細胞特異的表面抗原(SSEA-3、SSEA-4、TRA1-60、TRA1-81)もまた、完全にリプログラミングされたヒト細胞の同定に使用することができる。加えて、機能レベルでは、ESC及びiPSCなどのPSCはまた、3つ全ての胚性胚葉から系統に分化する能力、及びインビボで(例えば、SCIDマウスにおいて)奇形腫を形成する能力も実証する。
【0150】
PSCを分化させることによる前駆細胞の生成
【0151】
本開示は、ESC及びiPSCを含め、PSCを前駆細胞に分化させることを更に企図する。次にはかかる前駆細胞を使用して、本開示のセクレトーム(及び細胞外小胞)を作製することができる。
【0152】
本開示の前駆細胞には、例えば、造血前駆細胞、骨髄系前駆細胞、神経前駆細胞;膵前駆細胞、心前駆細胞、心筋細胞前駆細胞、心血管前駆細胞、腎前駆細胞、骨格筋芽細胞、衛星細胞、脳室下帯で形成される中間前駆細胞、放射状グリア細胞、骨髄間質細胞、骨膜細胞、内皮前駆細胞、芽細胞、境界キャップ細胞(boundary caop cell)、及び間葉系幹細胞が含まれる。多能性幹細胞を前駆細胞に分化させる方法、及び前駆細胞を培養し、維持する方法は、“Methods for the Production of Committed Cardiac Progenitor Cells”と題される米国仮特許出願第63/243,606号明細書(これは参照により全体として本明細書に援用される)に記載されるものなど、当該技術分野において公知である。
【0153】
次いで、得られた前駆細胞を培養し、得られた培養培地を回収して(場合によってはさらに処理して)、馴化培地、またはセクレトーム、細胞外小胞、および/または小細胞外小胞濃縮画分(sEV)含有組成物を提供することができる。本開示は、操作された細胞外小胞も企図する。例えば、馴化培地、またはセクレトーム、細胞外小胞、および/または小細胞外小胞濃縮画分(sEV)含有組成物は、操作された細胞から回収することができる。さらに、あるいは代替的に、細胞外小胞そのものを、その回収前、回収中、回収後に、操作してもよい。
【0154】
例えば、回収された培養培地は、濃縮、精製、冷蔵、凍結、凍結保存、凍結乾燥、滅菌等することができる。一部の実施形態において、回収された馴化培地は、あるサイズより大きい微粒子を除去するために予め清澄化され得る。例えば、回収され、馴化された培地は、1以上の遠心分離技術および/または濾過技術によって予め清澄化することができる。
【0155】
一部の実施形態では、回収された馴化培地は、回収された馴化培地の特定の抽出物または画分を得るためにさらに処理される。例えば、回収した馴化培地をさらに処理して、そこから小細胞外小胞濃縮画分(sEV)を分離してもよい。sEV画分は、例えば、遠心分離、超遠心分離、濾過、限外濾過、重力、超音波処理、密度勾配超遠心分離、タンジェンシャルフロー濾過、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティー捕捉、ポリマー系沈殿、または有機溶媒沈殿などの1以上の技術によって、回収された馴化培地から(または以前に処理された抽出物またはその画分から)分離することができる。
【0156】
上述の処理技法のいずれも、例えば、新鮮な、又は予め凍結及び/又は冷蔵してあった回収された馴化培地(又は予め処理されたその抽出物又は画分)に対して実施することができる。
【0157】
一部の実施形態において、本明細書における方法およびアッセイによって分析されるべきsEV画分は、CD63+、CD81+、及び/又はCD9+である。sEV画分は、例えば、エクソソーム、マイクロパーティクル、及び細胞外小胞のうちの1つ以上など、1種類以上の細胞外小胞を含有し得る。sEV画分はまた、分泌タンパク質(エンベロープ有り及び/又はエンベロープ無し)も含有し得る。本開示の馴化培地又はsEV画分中にある細胞外小胞は、例えば、テトラスパニン(例えば、CD9、CD63及びCD81)、セラミド、MHCクラスI、MHCクラスII、インテグリン、接着分子、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、コレステロール、細胞骨格タンパク質(例えば、アクチン、ゲルゾリン、ミオシン、チューブリン)、酵素(例えば、カタラーゼ、GAPDH、一酸化窒素シンターゼ、LTシンターゼ)、核酸(例えば、RNA、miRNA)、熱ショックタンパク質(例えば、HSP70及びHSP90)、エクソソームバイオジェネシスタンパク質(ALIX、Tsg101)、LT、プロスタグランジン類、及びS100タンパク質から選択される1つ以上の成分を含有し得る。
【0158】
一部の実施形態において、画分中に所望の種類の細胞外小胞が存在するかは、例えば、ナノ粒子トラッキング解析により(画分中の粒子のサイズを決定する);及び/又は所望の種類の細胞外小胞に関連する1つ以上のマーカーの存在を確認することにより決定されてもよい。例えば、回収された馴化培地の画分が、所望の種類の細胞外小胞の存在に関して、例えば、CD9、CD63及び/又はCD81など、画分中の1つ以上のマーカーの存在を検出することにより分析することができる。
【0159】
一部の実施形態において、sEV製剤又は組成物は、CD9、CD63及びCD81(標準EVマーカー)に関して陽性であり、且つ心関連マーカーCD49e、ROR1、SSEA-4、MSCP、CD146、CD41b、CD24、CD44、CD236、CD133/1、CD29及びCD142に関して陽性である。一部の実施形態において、sEV製剤又は組成物は、CD3、CD4、CD8、HLA-DRDPDQ、CD56、CD105、CD2、CD1c、CD25、CD40、CD11c、CD86、CD31、CD20、CD19、CD209、HLA-ABC、CD62P、CD42a及びCD69からなる群から選択される1つ以上のマーカーを、sEV製剤又は組成物中のCD9、CD63及び/又はCD81の量と比較したとき少ない量で含有する。一部の実施形態において、sEV製剤又は組成物は、CD19、CD209、HLA-ABC、CD62P、CD42a及びCD69からなる群から選択される1つ以上のマーカーを検出不能な量しか含有せず(例えば、MACSPlexアッセイによる、イムノアッセイによる等)、又はそれに関して陰性である。
【0160】
一部の実施形態において、sEV製剤又は組成物は、以下のうちの少なくとも1つである:約50~200nm又は50~200nmの直径を有する細胞外小胞が集積されているsEV製剤又は組成物;約50~150nm又は50~150nmの直径を有する細胞外小胞が集積されているsEV製剤又は組成物;全細胞を実質的に含まない又は含まないsEV製剤又は組成物;及び1つ以上の培養培地成分(例えば、フェノールレッド)を実質的に含まないsEV製剤又は組成物。
【0161】
セクレトーム及び細胞外小胞の活性、機能、及び/又は効力を決定するためのアッセイ
【0162】
本開示はまた、馴化培地の;又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の活性、機能、及び/又は効力の分析方法も包含する。馴化培地の;又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の活性、機能、及び/又は効力は、例えば、馴化培地又は組成物の作製に使用される前駆細胞の種類、及び馴化培地又は組成物の所望の使用に応じて、様々な技法により評価することができる。
【0163】
例えば、馴化培地の;又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の活性、機能、及び/又は効力は、馴化培地、セクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物をインビトロ、エキソビボ、又はインビボで標的細胞に投与することによって評価し得る。次に、例えば、細胞生存能、肥大、細胞の健康、細胞接着、細胞生理、ATP含量、細胞数、及び細胞形態など、標的細胞の1つ以上の特性を分析して、馴化培地の;又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の活性、機能、及び/又は効力を決定することができる。
【0164】
本開示の方法およびアッセイにおいて、馴化培地の;又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の活性、機能、特徴、及び/又は効力は、少なくとも1つのストレス誘発条件下で培養した標的細胞に馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物を投与すること、及び細胞の少なくとも1つの特性を分析することを含む方法によって評価することができる。分析され得る標的細胞の1つ以上の特性は、例えば、細胞遊走、細胞生存率、細胞生存能、肥大、細胞の健康、細胞接着、細胞生理、ATP含量、細胞数、及び細胞形態から選択されてもよい。一部の実施形態では、標的細胞の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10の特性が測定される。
【0165】
その第1の方法では、標的細胞が少なくとも1つのストレス誘発条件下で前処理培地において培養され、続いて細胞培養物に馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物が投与される。次に馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の存在下で標的細胞が培養され、培養中、培養細胞の少なくとも1つの特性が1回以上測定される。一部の実施形態において、少なくとも1つの特性は、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の存在下で培養中に複数回(例えば、互いに5分~10時間空ける;互いに10分~4時間空ける;又は互いに30分~2時間空けるなどして)測定される。一部の実施形態において、少なくとも1つの特性は、馴化培地またはセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物の存在下での培養中に、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも20回、少なくとも30回、少なくとも50回、少なくとも100回、または少なくとも500回測定される。
【0166】
この第1の方法の一部の実施形態において、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の存在下での培養は、少なくとも1つのストレス誘発条件の存在下で行われる。この第1の方法の他の実施形態において、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の存在下での培養は、少なくとも1つのストレス誘発条件の非存在下で行われる。
【0167】
この第1の方法の一部の実施形態において、前処理培地は、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の存在下で培養する前に細胞から取り除かれる。従って、前処理培地によって(例えば、前処理培地中に存在するストレス誘発剤によって)少なくとも1つのストレス誘発条件が付与される第1の方法の実施形態において、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の存在下での培養は、少なくとも1つのストレス誘発条件の非存在下で行われる。
【0168】
この第1の方法の他の実施形態において、前処理培地は、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の存在下で培養する前に細胞から取り除かれない。従って、前処理培地によって(例えば、前処理培地中に存在するストレス誘発剤によって)少なくとも1つのストレス誘発条件が付与される第1の方法の実施形態において、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の存在下での培養は、少なくとも1つのストレス誘発条件の存在下で行われる。
【0169】
第2の方法では、標的細胞が前処理培地で培養され、続いて馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物が投与される(及び任意選択でその後、標的細胞が馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の存在下で培養される)。次に標的細胞が少なくとも1つのストレス誘発条件下で培養され、少なくとも1つのストレス誘発条件下で培養中に、培養細胞の少なくとも1つの特性が1回以上測定される(これはまた、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の存在下でも行われる)。一部の実施形態において、少なくとも1つの特性は、少なくとも1つのストレス誘発条件下で(及び馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の存在下で)培養中に複数回、例えば、互いに5分~10時間空ける;互いに10分~4時間空ける;又は互いに30分~2時間空けるなどして測定される。一部の実施形態において、少なくとも1つの特性は、少なくとも1つのストレス誘発条件下での培養中に、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも20回、少なくとも30回、少なくとも50回、少なくとも100回、または少なくとも500回測定される。
【0170】
この第2の方法の一部の実施形態において、標的細胞は、少なくとも1つのストレス誘発条件下で培養される前に、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の存在下で培養される。この第2の方法の他の実施形態において、標的細胞は、少なくとも1つのストレス誘発条件下で培養される前に、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の存在下で培養されない。この第2の方法の一部の実施形態において、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物は、標的細胞が少なくとも1つのストレス誘発条件の存在下で培養される前に標的細胞から取り除かれる。
【0171】
上記の第1及び第2の方法の一部の実施形態において、ストレス誘発条件は、細胞ストレス剤の存在下で培養することである。第2の方法の一部の実施形態において、細胞ストレス剤は、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物と共に標的細胞に共投与される。
【0172】
上記の第1及び第2の方法の一部の実施形態において、細胞ストレス剤は、1つ以上の化学療法剤、および/または1つ以上のアポトーシス誘導剤である。
【0173】
化学療法剤は、例えば、代謝拮抗剤、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍抗生物質、キナーゼ阻害剤(プロテインキナーゼ阻害剤を含む)、アントラサイクリン、白金、植物アルカロイド、ニトロ尿素、細胞骨格破壊剤、エポチロン、 ヒストン脱アセチラーゼ阻害剤、ヌクレオチド類似体および前駆体類似体、ペプチド抗生物質、およびレチノイドから選択され得る。
【0174】
1つ以上のアポトーシス誘導剤は、例えば、ドキソルビシン、スタウロスポリン、エトポシド、カンプトテシン、パクリタキセル、ビンブラスチン、ガンボギン酸、ダウノルビシン、チルホスチン類、タプシガルギン、オカダ酸、ミフェプリストン、コルヒチン、イオノマイシン、24(S)-ヒドロキシコレステロール、サイトカラシンD、ブレフェルジンA、ラプチナール、カルボプラチン、C2セラミド、アクチノマイシンD、ロシグリタゾン、ケンペロール、塩化ベルベリン、ビオイミフィ(bioymifi)、ベツリン酸、タモキシフェン、エンベリン、フィトスフィンゴシン、マイトマイシンC、ビリナパント、アニソマイシン、ゲニステイン、シクロヘキシミドなど、およびそれらの誘導体、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0175】
一部の実施形態において、アポトーシス誘導剤は、インドロカルバゾールである。一部の実施形態において、アポトーシス誘導剤は、インドロ(2,3-a)ピロール(3,4-c)カルバゾールである。一部の実施形態において、アポトーシス誘導剤は、スタウロスポリン、又はその誘導体である。他の実施形態において、アポトーシス誘導剤は、ドキソルビシン、又はその誘導体である。
【0176】
第1及び第2の方法の一部の実施形態において、測定される少なくとも1つの特性は、培養細胞の生存能である。生存能は、例えば、DNA標識色素又は核染色色素を使用して測定されてもよい。その一部の実施形態において、DNA標識色素又は核染色色素は、近赤外蛍光色素など、蛍光色素である。
【0177】
第1及び第2の方法の一部の実施形態において、測定される少なくとも1つの特性は、細胞接着、細胞数、細胞増殖、および/または細胞形態であり、細胞接着、細胞数、細胞増殖、および/または 細胞の形態は、培養中の培養容器表面を横切る電気インピーダンスを測定することによって決定される。
【0178】
第1及び第2の方法の実施形態において、標的細胞は、前処理培地で様々な長さの時間にわたって培養することができる。例えば、標的細胞は、前処理培地で30分~10時間、1時間~5時間、又は、1時間、2時間、3時間、4時間、若しくは5時間より長い時間、それより短い時間、若しくはおよそその時間にわたって培養することができる。
【0179】
第1及び第2の方法の実施形態において、標的細胞は馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物と共に、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、又は少なくとも48時間にわたって培養される。
【0180】
第1及び第2の方法の一部の実施形態において、標的細胞は、前処理培地で培養する前にインビトロで培養される。例えば、標的細胞は、前処理培地で培養する前に、1~21日、3~17日、5~14日、又は20日未満、18日未満、16日未満、14日未満、12日未満、10日未満、8日未満、6日未満、4日未満、又は2日未満にわたってインビトロで培養されてもよい。標的細胞が前処理培地で培養する前にインビトロで培養される特定の実施形態において、標的細胞には、前処理培地で培養する前に新鮮な培養培地が供給される。例えば、標的細胞には、前処理培地で培養する前に新鮮な培養培地が6~72時間、8~60時間、10~48時間、12~36時間供給されてもよい。
【0181】
第1及び第2の方法の実施形態において、標的細胞の培養は、二次元又は三次元細胞培養であってもよい。例えば、一部の実施形態において、培養に使用される培養ベッセルは、例えば、フラスコ、組織培養フラスコ、ハイパーフラスコ、ディッシュ、ペトリ皿、組織培養皿、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、マルチプレート、マルチウェルプレート、マイクロスライド、チャンバスライド、チューブ、トレー、CellSTACK(登録商標)チャンバ、培養バッグ、ローラーボトル、バイオリアクター、撹拌培養ベッセル、スピナーフラスコ、マイクロキャリア、又は垂直ホイールバイオリアクターであってもよい。
【0182】
培養が、培養ベッセルの表面上など、二次元細胞培養を含む実施形態において、培養表面(そこに細胞を接着させることが意図される)は、細胞接着を促進する1つ以上の物質でコートされてもよい。固体支持体への付着を亢進させるのに有用なかかる物質としては、例えば、I型、II型、及びIV型コラーゲン、コンカナバリンA、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、フィブロネクチン様ポリマー、ゼラチン、ラミニン、ポリ-D及びポリ-L-リジン、マトリゲル、トロンボスポンジン、及び/又はビトロネクチンが挙げられる。
【0183】
第1及び第2の方法の実施形態において、少なくとも1つの特性はまた、1つ以上の対照試料と比べて分析されてもよい。
【0184】
例えば、第1及び第2の方法は、(例えば、並行して)陽性対照細胞を培養することを更に含んでもよく、ここで陽性対照細胞は、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物が投与されず、及び少なくとも1つのストレス誘発条件下で培養されない。従って、ストレス誘発条件がアポトーシス誘導剤の存在である実施形態において、陽性対照細胞にアポトーシス誘導剤は投与されない。
【0185】
第1及び第2の方法は、(例えば、並行して)陰性対照細胞を培養することを含んでもよく、ここで陰性対照細胞には、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物は投与されない。一部の実施形態において、陰性対照細胞は、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物が投与されない点を除いては標的細胞と同じステップに供される陰性対照細胞を含む。
【0186】
特定の実施形態において、陰性対照細胞は、少なくとも1つのストレス誘発条件下で前処理培地において培養される陰性対照細胞を含む。次に、標的細胞で測定される少なくとも1つの特性が陰性対照細胞でもまた、それが少なくとも1つのストレス誘発条件下で前処理培地において培養されている間又はその後のいずれかに測定され得る。
【0187】
一部の実施形態において、陰性対照細胞は、モックの馴化培地又はモックのセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物が加えられる陰性対照細胞を含む。その具体的な実施形態において、モックの馴化培地又はモックのセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物は、本開示のプロセスなど、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物を作製するプロセスから細胞を省くにことにより作製される。
【0188】
かかる1つ又は複数の陰性対照を使用することにより、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の活性、機能及び/又は効力を判定することが可能となる。
【0189】
例えば、測定される少なくとも1つの特性が培養細胞の生存能である場合に、標的細胞の生存能が、少なくとも1つのストレス誘発条件に供された陰性対照細胞の生存能よりも高いとき、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物は活性、機能、効力を有する(及び/又は治療効果を呈する)と決定し得る。
【0190】
或いは、例えば、測定される少なくとも1つの特性が細胞接着、細胞成長、及び/又は細胞数であり、ここで細胞接着、細胞成長、及び/又は細胞数が、培養物における培養ベッセル表面の電気インピーダンスを測定することによって決定される場合に、培養物における培養ベッセル表面の電気インピーダンスが、少なくとも1つのストレス誘発条件に供された陰性対照細胞の培養物における培養ベッセル表面の電気インピーダンスよりも高いとき、馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物は活性、機能、効力を有する(及び/又は治療効果を呈する)と決定し得る。
【0191】
任意の1つ以上の試料、及び/又は任意の1つ以上の陽性及び/又は陰性対照は、例えば、デュプリケート、トリプリケート等、レプリケートで実施されてもよい。細胞生存能が測定され、ここでレプリケート培養物が実施されるその一部の実施形態では、レプリケート培養物中の陽性対照細胞の数を平均することにより、平均最大細胞数を求めてもよい(及び各レプリケート検査培養物中の標的細胞数をこの平均最大細胞数で正規化することにより、細胞生存能を計算してもよい)。
【0192】
一部の実施形態では、馴化培地、またはセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物の活性、機能、および/または効力をさらに決定、検証、および/または確認するために、当技術分野で公知のアッセイを、本開示の方法およびアッセイと組み合わせて使用することができる。
【0193】
例えば、心筋細胞前駆細胞から得られた、馴化培地;又はセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物について、その活性、機能、及び/又は効力は、El Haraneら(Eur.Heart J., 2018, 39(20): 1835-1847)に記載されているような公知の心筋細胞生存率アッセイを用いてさらに測定してもよい。
【0194】
具体的には、血清を除去した心筋芽細胞(例えば、H9c2細胞)を、馴化培地;またはセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物と接触させ、その後に、細胞の生存率を測定することができる。このアッセイの一部の実施形態では、馴化培地またはセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物を投与する前に、細胞は血清を除去される。このアッセイの他の実施形態では、細胞は、馴化培地またはセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物を投与した後に、血清を除去される。 このアッセイの一部の実施形態では、細胞は、馴化培地、またはセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物を投与する前および投与した後に血清を除去される。
【0195】
本開示の方法およびアッセイとともに使用され得る当該分野で公知の別のアッセイは、HUVECスクラッチ創傷治癒アッセイである。HUVECスクラッチ創傷治癒アッセイでは、HUVEC細胞を培養表面上で培養し、次いで培養細胞層を引っ掻く;次いで、馴化培地またはセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物の血管新生活性を、無血清条件下で創傷の閉鎖を生じさせる、馴化培地またはセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物の能力によって決定することができる。
【0196】
異なる馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の間で活性、機能、特徴、及び/又は効力を更に正確に比較するためには、標的細胞に加える(または加えるべき)馴化培地又はセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の量を決定することが有益であり得る。これは、例えば、セクレトームを産生した分泌細胞の量;前記セクレトームのタンパク質含量;前記セクレトームのRNA含量;前記セクレトームのエクソソーム量;及び前記セクレトームにおける粒子数のうちの1つ以上に基づき決定することができる。
【0197】
治療用組成物および応用
【0198】
馴化培地、またはセクレトーム、細胞外小胞、および/または小細胞外小胞濃縮画分(sEV)含有組成物は、本開示の方法およびアッセイによって分析し、培地または組成物が所望の活性、機能、および/または効力を含むかどうかを同定することができる。培地または組成物が、本開示の方法および/またはアッセイを用いて所望の活性、機能、および/または効力を示す場合、そのような培地または組成物は、治療的使用のために処方または適合することができる。
【0199】
例えば、試験された培地または組成物は、より大きなバッチの馴化培地からの、またはより大きなバッチのセクレトーム、細胞外小胞、および/または小細胞外小胞濃縮画分(sEV)含有組成物からのサンプルであってもよい。このような場合、バッチからの残った培地または組成物の全部または一部は、治療用に製剤化または適合させることができる。
【0200】
あるいは、試験した培地または組成物は、他のバッチの馴化培地、または他のバッチのセクレトーム、細胞外小胞、および/または小細胞外小胞濃縮画分(sEV)含有組成物を代表するものであってもよい(例えば、同様の条件下、または同じ条件下で並行して生産されたため)。このような場合、試験した培地または組成物の分析結果は、他のバッチの馴化培地、または他のバッチのセクレトーム、細胞外小胞、および/または小細胞外小胞濃縮画分(sEV)含有組成物が、治療用に製剤化または適合させるのに適していることを示す指標となりうる。
【0201】
本開示の方法およびアッセイはまた、馴化培地を産生するための、またはセクレトーム、細胞外小胞、および/または小細胞外小胞濃縮画分(sEV)含有組成物を産生するための特定の工程が、所望の活性、機能性、または効力を有する培地または組成物を産生するかどうかを決定するために使用してもよい。
【0202】
従って、本開示の方法およびアッセイの分析結果に基づいて、セクレトーム、細胞外小胞、およびsEV含有組成物を、治療薬として使用するため(例えば、それを必要とする対象にその有効量を投与するため)に、同定し、選択し、および/または製剤化してもよい。
【0203】
同定、選択、および/または処方されたセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物は、限定されないが、心組織、脳または他の神経組織、骨格筋組織、肺組織、動脈組織、毛細血管組織、腎組織、肝組織、胃腸管組織、上皮組織、結合組織、尿路組織等を含む様々な組織を治療するために使用され得る。処置されることになる組織は、例えば、傷害、加齢に伴う変性、急性又は慢性疾患、癌、又は感染症に起因して損傷を受けているか、又は完全に若しくは部分的に非機能性であり得る。かかる組織は、例えば、セクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物の静脈内投与によって処置されてもよい。あるいは、同定、選択、および/または処方されたセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物を使用して、組織損傷が予測または予想される前に患者を前治療することができる。 例えば、同定、選択、および/または処方されたセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物は、例えば心臓損傷の予防を助けるために、化学療法の前に投与され得る。
【0204】
同定、選択、および/または処方されたセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物を使用して、例えば、心筋梗塞、脳卒中、心不全、及び重症肢虚血などの疾患が処置されてもよい。一部の実施形態において、同定、選択、および/または処方されたセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物を使用して、以下の特徴のうちの1つ以上を有する心不全が処置されてもよい:急性である、慢性である、虚血性である、非虚血性である、心室拡張を伴う、心室拡張を伴わない。一部の実施形態において、本開示の組成物を使用して、虚血性心疾患、心筋症、心筋炎、肥大型心筋症、拡張期肥大型心筋症、拡張型心筋症、及び化学療法後誘発性心不全からなる群から選択される心不全が処置されてもよい。一部の実施形態において、本開示の組成物を使用して、うっ血性心不全、心疾患、虚血性心疾患、心臓弁膜症、結合組織病、ウイルス又は細菌感染症、心筋症、ミオパチー、心筋炎、肥大型心筋症、拡張期肥大型心筋症、ジストロフィノパチー、肝疾患、腎疾患、鎌状赤血球症、糖尿病、及び神経学的疾患などの疾患が処置されてもよい。好適な前駆細胞の1つ又は複数の種類は、処置される疾患、又は標的化する組織に応じて選択されてもよいことが認識されるであろう。
【0205】
例えば、一部の実施形態では、同定、選択、および/または処方されたセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物は、急性心筋梗塞または心不全などの心疾患を有する対象を治療するために使用され得る。 同定、選択、および/または処方されたセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物は、例えば、心筋細胞前駆細胞、心臓前駆細胞、間葉系幹細胞、および/または心血管前駆細胞から生成され得る。
【0206】
同定、選択、および/または処方されたセクレトーム、細胞外小胞、および/またはsEV含有組成物はまた、組織の機能又は性能を改善するためにも使用することができる。例えば、心筋細胞前駆細胞、心前駆細胞、及び/又は心血管前駆細胞から作製されたセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物を、それを必要としている対象に送達することにより、血管新生の改善、又は心仕事量の改善を達成し得る。
【0207】
投与は、標的組織と同じである組織又は器官部位における投与を含む。投与は、標的組織と異なる組織又は器官部位における投与を、追加的にまたは代替として含んでいてもよい。かかる投与には、例えば、静脈内投与が含まれ得る。
【0208】
同定、選択、および/または処方されたセクレトーム、細胞外小胞、及び/又はsEV含有組成物は、薬学的に許容可能な希釈剤、担体、又は賦形剤を含有し得るか、又はそれと共に投与され得る。かかる組成物はまた、一部の実施形態では、薬学的に許容可能な濃度の塩、緩衝剤、保存剤、又は他の治療用薬剤のうちの1つ以上も含有し得る。薬学的に許容可能な担体として働くことのできる材料の一部の例としては、ラクトース、グルコース及びスクロースなど、糖類;プロピレングリコールなど、グリコール類;グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなど、ポリオール類;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなど、エステル類;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなど、緩衝剤;パイロジェンフリー水;等張生理食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;及び医薬製剤中に用いるのに適合性のある他の非毒性物質が挙げられる。例えば、一部の実施形態において、セクレトーム、細胞外小胞、及び/又はsEV組成物は、注射用生体材料など、生体材料と共に製剤化されてもよい。例示的注射用生体材料については、例えば、国際公開第2018/046870号パンフレット(全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0209】
同定、選択、および/または処方されたセクレトーム、細胞外小胞、及び/又はsEV含有組成物は、目的に応じて、治療有効量など、有効量で投与されてもよい。有効量は、投与に選択される材料、投与が単回用量か、それとも複数回用量か、並びに年齢、健康状態、体の大きさ、体重、及び疾患のステージを含めた個別の患者パラメータを含め、種々の要因に依存することになる。これらの要因は、当業者に周知である。
【0210】
任意の適切な投与経路を用いてもよく、例えば、投与は、非経口、静脈内、動脈内、皮下、腫瘍内、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼内、脳室内、肝内、嚢内、髄腔内、大槽内、腹腔内、鼻腔内、心筋内、冠動脈内、エアロゾル、坐薬、心外膜パッチ、経口投与、又は灌流によるものであってもよい。例えば、非経口投与用の治療組成物は、液状溶液又は懸濁液の形態であってもよく;経口投与用に、製剤は、錠剤又はカプセルの形態;及び鼻腔内製剤には、粉末、点鼻液、又はエアロゾルの形態であってもよい。例えば、一部の実施形態において、急性心筋梗塞又は心不全などの心疾患を有する対象は、心筋細胞前駆細胞、心前駆細胞、及び/又は心血管前駆細胞から作製されたセクレトーム含有、細胞外小胞含有、及び/又はsEV含有組成物で処置することができ、ここで組成物は静脈内投与される。
【0211】
同定、選択、および/または処方されたセクレトーム、細胞外小胞、及び/又はsEV含有組成物の単回用量が投与されてもよい。他の実施形態において、1日、1週間、又は1ヵ月に1用量以上にわたって複数回用量が対象に投与される。セクレトーム、細胞外小胞、及び/又はsEV含有組成物の単回又は反復投与が、2、3、4、5回又はそれ以上の投与を含め、行われてもよい。組成物は持続投与されてもよい。反復投与又は持続投与は、処置下の病態の性質及び/又は重症度に応じて、数時間(例えば、1~2、1~3、1~6、1~12、1~18、又は1~24時間)、数日(例えば、1~2、1~3、1~4、1~5、1~6日、又は1~7日)又は数週間(例えば、1~2週間、1~3週間、又は1~4週間)の期間にわたって行われ得る。投与が繰り返されるが、持続的ではない場合、投与間の時間は、数時間(例えば、4時間、6時間、又は12時間)、数日(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、又は6日)、又は数週間(例えば、1週間、2週間、3週間、又は4週間)であり得る。投与間の時間は同じであってもよく、又はそれらは異なってもよい。例として、症状が悪化する場合、又は改善しない場合、組成物は、より高頻度に投与されてもよい。逆に、症状が安定しているか、又は軽くなる場合、組成物は、頻度を減らして投与されてもよい。
【0212】
一部の実施形態において、セクレトーム、細胞外小胞、及び/又はsEV含有組成物は、3用量で、約2週間空けて、静脈内投与により投与される。一部の実施形態において、組成物は、担体、希釈剤、又は好適な材料(例えば、生理食塩水)で希釈され、それと製剤化され、及び/又はそれと共に投与されてもよい。
【実施例】
【0213】
以下の実施例に、本発明の非限定的な実施形態を例示する。使用される数値(例えば、量、濃度、変化率など)に関しては正確を期すよう努力しているものの、幾らかの実験誤差及び偏差は考慮されなければならない。これらの実施例は例示として提供されるに過ぎず、本発明者が本発明の様々な実施形態と見なすものの範囲を限定する意図はないことが理解されなければならない。各実施例に示される以下のステップの全てが必要というわけではなく、また各実施例におけるステップの順序も、提示されているとおりである必要はない。
【0214】
実施例1
H9c2生存率アッセイの再現性
H9c2生存率アッセイの再現性を試験するために、アッセイを、基本的にEl Harane et al(Eur. Heart J., 2018; 39:1835-1847)に記載されているように実施した。このアッセイでは、H9c2心筋細胞は、培養培地が血清に富んでいる場合(例えば、H9c2 Complete Mediaで培養)には増殖性を示すが、血清が欠乏している場合(例えば、H9c2 Poor Mediaで培養)には増殖を停止し、生存性を失う。従って、H9c2 Poor MediaにEVを補充することにより、sEVを含む細胞外小胞(EV)調製物がH9c2心筋細胞の生存率を促進できるかどうかを調べることができる。
【0215】
簡単に説明すると、H9c2細胞を解凍し、96ウェルプレートのウェルに1ウェルあたり4250個の生細胞を播種した。完全増殖培地で24時間インキュベーションした後、細胞に再び栄養を与えた。 さらに24時間インキュベーションした後、培養培地を除去し、血清含有培地(H9c2 Comlete Media;陽性対照用)または無血清培地(H9c2 poor Media;試験サンプルおよび陰性対照用)のいずれかを適切なウェルに添加した(細胞生存率の定量を可能にするため、核染色色素とともに)。その後、sEV調製物(または模擬sEV調製物)を適切なウェルに添加し、H9c2生存率に対するsEVの効果を調べた。その後、H9c2細胞を培養し、培養中のいくつかの時点で、Incucyte(Essen BioSciences社製)を用いて画像を撮影した。
【0216】
このアッセイ法を用いて、血清欠乏を受けたH9c2細胞のバンクが異なると、同じsEV調製物や培養条件を用いても、細胞生存率が異なる結果が得られることが明らかになった。いくつかのsEV調製物は、ある(高い継代の)H9c2細胞バンクでは細胞生存率にプラスの効果を示したが、異なる(低い継代の)H9c2細胞バンクではそうではなかった。この現象は、生細胞の手作業による細胞カウンティング(細胞は採取後、血球計数器を用いて手作業で計数した)により、およびViCell XR細胞生存率分析装置(Beckman Coulter)を用いることによって確認された。H9c2細胞の異なるバンクを分析した結果、異なるバンクのH9c2細胞は継代数によって異なる形態を示した。この結果から、このH9c2細胞生存率アッセイ法では、H9c2のロット間、継代間のばらつきが大きすぎて、このアッセイ法がセクレトームやsEVの効力を評価する標準的な方法にはなりえないことが示唆された。さらに、これらのラット細胞は、ヒトの治療開発を目的としたヒトsEV産物の開発や試験への適用性は限定的かもしれない。
【0217】
実施例2
スタウロスポリン心筋細胞生存率アッセイ
実施例1のH9c2細胞生存率アッセイの結果に鑑み、別の細胞生存率アッセイを開発した。
【0218】
具体的には、ヒトiCell心筋細胞2 (Fujifilm Cellular Dynamics, Inc.、ref: CMC-100-012-001)を、iCell心筋細胞プレーティング培地(Fujifilm Cellular Dynamics, Inc.、ref: M1001)中、フィブロネクチンでコート(5μg/mL)した96ウェルプレートに50,000細胞/ウェルでプレーティングし、37℃(大気圧酸素、5% CO2)で4時間培養した。この4時間のインキュベーション後、培地を100μL(ウェルあたり)のiCell心筋細胞維持培地(iCMM、Fujifilm Cellular Dynamics, Inc.: M1003)に交換し、2~3日毎に全培地を交換しながら細胞を12日間まで培養した。
【0219】
少なくとも4日後、細胞をNucSpot Live 650色素(Biotium社、ref: 40082、最終濃度0.125%)を添加したiCMM(これは生細胞(ポジティブ)コントロールとして機能する)、またはNucSpot Live 650色素(最終濃度0.125%)と最終ウェル内濃度2μMのスタウロスポリン(Abcam社、ref: ab146588)を添加したiCMM(これもアポトーシス細胞(ネガティブ)コントロールとして機能する)に暴露した。色素、PBS、DMSO(0.325%)の濃度、および最終ウェル容積(120μL)は、すべてのウェルで同等であった。その後、細胞を37℃(大気圧酸素、5% CO2)で4時間培養した。
【0220】
この4時間のインキュベーション後、プレートをIncucyte(Essen BioSciences社製)を用いて画像化し、インキュベーション前の培地を除去し、100μLのiCMMでウェルを洗浄した。スタウロスポリンを添加した細胞と添加しなかった細胞の代表的な画像を
図1に示す。次に細胞に、NucSpot Live 650色素(最終濃度0.125%)、DMSO(最終濃度0.325%)、および15μLのDPBS(120μLの最終容量中)を含むiCMMの混合液120μL(ウェルあたり)、またはNucSpot Live 650色素(最終濃度0.125%)、DMSO(最終濃度0.325%)、およびDPBSで15μLに調整した増加する濃度のsEVまたは模擬sEV調製物を含むiCMMの混合液120μL(ウェルあたり)を供給した。培養は37℃(大気圧酸素、5% CO
2)で維持した。ウエルを24時間、1時間ごとにIncucyteで撮像し、核数を測定した。時間経過の結果は、時間0(T0)に正規化した、% Positive NucSpot Live 650を比較することで得た。
図2はこの時間経過を示し、sEV調整物は心筋細胞の生存率を改善したが、模擬sEV調整物は改善しなかったことを示し、sEV調整物の機能が示された。
【0221】
ウェルあたりの細胞数の絶対値はアッセイごとに異なる可能性があるため、比較可能な値を得るために以下のようにデータを処理した。まず、各条件について、特定の時点における細胞の平均数を、時点0における細胞の平均数と比較することにより、正規化を行った。次に、各条件から正規化した陰性対照値を差し引き、得られた値を陽性対照と陰性対照の差と比較した。
図3は、スタウロスポリン心筋細胞生存率アッセイの時間経過の24時間時点の結果を示すヒストグラムを示す。
【0222】
sEVの投与量については、タンパク質濃度、RNA濃度、およびsEV粒子数は、培地、培養条件、細胞タイプ、sEV単離/集積技術、およびドナーによってかなり異なる可能性があると判断された。従って、正確な投与と、異なるsEVサンプル間の正確な比較とを確実にするため、投与量は、セクレトームを生成した分泌細胞の数に基づいて計算した。これは、活性成分が未知であり、非活性成分、共分離成分がかなり異なる可能性があるこのような例では、信頼できる尺度であることがわかった(実施例4参照)。
【0223】
さらに、細胞生存能の確認的尺度として、最初に上記の時間経過(Incucyteと生体適合性色素)実験を行った96ウェルプレート中の細胞培養物を、その後(すなわち、Incucyteと生体適合性色素を用いた時間経過の終了時に)、ATP含量について分析した。
【0224】
具体的には、各ウェルの細胞を溶解し、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay (Promega)を用いて、製造者の指示に従ってATP含量を定量した。得られたシグナルは、CLARIOStar(登録商標)(BMG Labtech)とTecan for Life Science(登録商標)プレートリーダーを用いて分析した。結果を
図4に示す。
図4は、13時間の時点でIncucyteを使用して得られた細胞生存率データと、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay (Promega) とCLARIOStar(登録商標) (BMG Labtech)およびTecan for Life Science(登録商標)プレートリーダーを使用して得られた ATP定量データを示している(24時間の時点、すなわちIncucyte時間コースの終了後)。
図4が示すように、3つのデータセットの結果は互いに驚くほど類似しており、スタウロスポリンアッセイを様々な検出方法と読み出し装置で使用できることが確認された。
【0225】
図5は、更なる実験セットの結果を示している。ここでは、(Incucyteを用い、12時間のタイムポイントからのデータを示す)細胞生存率データは、基本的に上述のように取得し、ATP定量データは、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を用いて、CLARIOStar(登録商標)(BMG Labtech)およびTecan for Life Science(登録商標)プレートリーダーを用いて取得した(示したデータは23時間のタイムポイントからのものである。即ち、Incucyteのタイムコースが終了した後のデータである)。
図5は、陽性対照(スタウロスポリン無添加("No-stress"))、sEV無添加の陰性対照("Staurosporine")、および間葉系幹細胞から産生されたsEV(1xの用量で使用("MSC-sEV, 1x" ))についての実験結果を示している。見てわかるように、結果は
図4に示した結果と一致している。さらなる一連の実験では、ヒトiCell心筋細胞(2)を、基本的に上記した通り、プレーティングし、培養し、スタウロスポリンで前処理した(血清を含むiCMM培地中)。しかし、スタウロスポリンの前処理後、細胞をiCMMまたはiCell Cardiomyocyte Serum-Free Medium(iCSFM、Fujifilm Cellular Dynamics、Ref: M1038)のいずれかで洗浄した。その後、細胞をPBS(ビヒクル)、sEV、またはMVで、細胞を洗浄したのと同じ種類の培地(すなわち、iCMMまたはiCSFMのいずれか)中において処理し、37℃(大気圧酸素、5%CO
2)でインキュベートした。23時間の時点で(すなわち、スタウロスポリン前処理開始から23時間後)、各ウェルの細胞を溶解し、CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay(Promega社)を用いて、そのATP含量を製造元の指示に従って定量した。得られたシグナルは、Tecan for Life Science(登録商標)プレートリーダーを用いて分析した。結果は
図6に示し、少なくともEV処理段階は、同等の結果を得ながら、血清の非存在下で実施できる可能性があることが示された。
【0226】
実施例3
スタウロスポリン心筋細胞生存率アッセイとHUVECスクラッチアッセイの比較
実施例2に記載したスタウロスポリン心筋細胞生存率アッセイの妥当性を確認するために、同じsEVおよび模擬sEV調製物を用いてHUVECスクラッチ創傷治癒アッセイ(エッセン・バイオサイエンシズ社開発、Incucyte用)を行った。簡単に述べると、HUVEC細胞を、Endothelial Cell Growth Medium Supplement Pack (PromoCell, Ref: C-39210)を添加したHUVEC Complete Media: Endothelial Cell Basal Media (PromoCell, Ref: C-22210)を用いて増殖させた。増殖後、細胞はCS10(Cryostore、ref: 210102)中において1アリコートあたり1-2×10
6 細胞で凍結保存した(96ウェルプレートの半分から全部に十分な量)。アッセイの2日前に、HUVECのアリコートを解凍し、10,000細胞/ウェルでImageLock 96ウェルプレート(EssenBio, Ref: 4379)にプレーティングし、HUVEC Complete培地で2日間増殖させた。その後、培養は、維持およびアッセイ過程を通して37℃(大気圧酸素、5%CO
2)に維持した。Wound Maker(EssenBio, Ref:4493)を用いて、製造業者の指示に従いウェルに傷をつけ、細胞を内皮細胞基底培地で洗浄し、一晩培養した(陽性対照としてHUVEC完全培地単独、陰性対照として内皮細胞基底培地単独、またはsEVまたは模擬sEV調製物を添加した内皮細胞基底培地のいずれか)。スクラッチ創傷治癒モジュール搭載のIncucyteを用い、プレートを3時間ごとに計18時間撮像した。創傷閉鎖は、メーカーのソフトウエアを用いて測定し、ベースライン(陰性対照)を差し引いた値を、陽性対照に正規化した。
図7は、スタウロスポリン心筋細胞生存率アッセイとHUVECスクラッチ創傷治癒アッセイの結果を比較したものであり、スタウロスポリン心筋細胞生存率アッセイは、HUVECスクラッチアッセイに匹敵する一貫した結果を提供することが示されているが、ここでは心疾患により関連する可能性のある細胞タイプ、すなわち心筋細胞についてである。
【0227】
実施例4
細胞数と比較した粒子数によるsEVの投与
実施例2で議論したように、異なる sEV サンプル間の正確な比較を確実にする投与戦略が必要であった。当初、sEV 投与量は sEV サンプルあたりの粒子数に基づいて計算され、"1x "投与量は NanoSight で同定された 10 億個の粒子の目標値に相当した。模擬 sEV 投与戦略は、投与量を sEV サンプルの "1x "投与量と一致させることであった。複数のsEVサンプルが存在する場合、モックsEVは「1x」sEVサンプルの体積が最も大きいものに合わせた。
【0228】
HUVECスクラッチ創傷治癒アッセイにおいて、異なるMSCドナーロットの10億個の粒子を互いに比較したところ、sEVサンプルの機能にばらつきが認められた。これらのMSCドナーは、同様の条件下で培養、採取され、sEVサンプルが調製された。これらのロット間の機能の違いを調べるために、別の投与戦略を検討した。この新しい戦略では、sEVセクレトームを生成した分泌細胞の数に基づいて投与量を計算した。HUVECスクラッチ創傷治癒アッセイで評価したところ、各MSCロットのsEVサンプルを、1.85x10
5細胞のセクレトームに等しい「1x」量で投与した結果、粒子数で投与した場合と比較して、より類似した機能の結果が得られた(
図8参照)。
【0229】
実施例5
模擬sEVをsEV調整物に合わせる際に考慮したこと
実施例4で述べたように、sEVサンプルの投与はもともと粒子数に基づいており、模擬sEV 投与は、sEVサンプルの「1x」投与量(volume to volume)マッチング戦略に依存していた。しかし、sEVセクレトームを生成した分泌細胞の数に基づいて投与量を決定する新しいsEVサンプル投与戦略を採用した場合には、新しい模擬sEV投与戦略も必要になった。この戦略では、以下のように模擬sEVの容量をsEVサンプルに合わせる。
【0230】
一致した sEV サンプルについては、最終sEV調整物容量と、単離/集積法に投入した馴化培地量の比を算出する("μL sEV/mL MC")。同様に、模擬 sEV サンプルについても、最終調整物の容量を、分離/集積法に使用したバージン培地の容量で割る("μL MV/mL MV")。sEVサンプルをスタウロスポリンアッセイやその他のin vitroまたはin vivoアッセイにおいて使用する場合、投与量の「MC培地相当量」を計算する(「MC培地相当量」=アッセイにおけるsEV投与量/「μL sEV/mL MC」)。次に、アッセイにおけるコントロールとして必要なMVの量を、MC培地相当量と一致するように計算し、これにより、培地自体からの汚染成分から生じる可能性がある影響をコントロールすることができる(コントロールとして使用するMVの量="uL MV/mL MV" * "MC培地相当量")。
【0231】
実施例6
スタウロスポリン心筋細胞付着/増殖/数アッセイ(電気インピーダンス)
実施例2に記載のスタウロスポリン心筋細胞生存アッセイ実験において、細胞生存率を決定した(Incucyteと生体適合性色素を用いた生細胞イメージング;およびATP含量の測定による)。実施例2に記載されたスタウロスポリンアッセイを、sEV調整物の機能を判定するために、代替検出法または読み出しとともに使用できることを示すために、実施例2に記載したスタウロスポリンアッセイを、sEV調整物の機能の指標として細胞増殖/接着/数を用いて実施した。
【0232】
具体的には、まずヒト iCell 心筋細胞2(Fujifilm Cellular Dynamics, Inc.、ref: CMC-100-012-001)を iCell 心筋細胞維持培地(iCMM, Fujifilm Cellular Dynamics, Inc、参照:M1003)中、37℃(大気圧酸素、5% CO2)で、電極(CytoView Z-Plate, Axion Biosystems(登録商標))を備えた培養プレートのフィブロネクチンでコートしたウエルに播種し、接着させて単層を形成させた(「0 h」)。
【0233】
播種した細胞は接着し、コンフルエントな単層を形成した(0時間のゼロから増加した後、インピーダンス値のプラトーによって決定)126時間後に、細胞を洗浄し、iCMM(これは生存細胞(ポジティブ)コントロールとして機能する)、または最終ウェル内濃度2μMのスタウロスポリン(Abcam、参照番号:ab146588)を含むiCMM(これはアポトーシス細胞(ネガティブ)コントロールとしても機能する)のプレインキュベーション培地に曝露した。その後、細胞を37℃(大気圧酸素、5% CO2)で4時間培養した。インピーダンスは、Axion BioSystems(登録商標)(Maestro Z)装置を用いて、インキュベーション中継続的に測定した。
【0234】
この4時間のインキュベーション後、インキュベーション前の培地を除去し(その後のインキュベーション中にスタウロスポリンが存在した対照サンプルを除く、
図9の条件8を参照)、ウェルをiCMMで洗浄した。 次に、細胞の異なるウェルにiCMMを供給するか(
図9の条件2および8を参照)、あるいは様々な濃度のsEV(
図9の条件3~5を参照);模擬sEV調製物(バージン培地対照、
図9の条件1および7を参照);またはPBS(
図9の条件6を参照)を添加したiCMMを供給した。その後、培養物を37℃(大気圧酸素、5% CO
2)で72時間維持し、再びインピーダンスを継続的に測定した。
図9はこの時間経過を示したもので、陰性(スタウロスポリン処理)対照(
図9の条件6および8参照)と比較して、sEV調製物(
図9の条件3~5参照)は、スタウロスポリン処理後に心筋細胞の接着を改善したが、模擬sEV調製物(
図9の条件7参照)は改善しなかったことを示している。陽性対照は、
図9の条件1および2で示されている。これらの結果は、実施例2に記載した心筋細胞生存率アッセイ実験の結果と同様に、sEV調製物の機能を示すものであった。
図10は、処置(「Tx」)時点に対して正規化した実験結果を示す。
【国際調査報告】