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特表2023-550237コーティングされたカソード活物質の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】コーティングされたカソード活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20231124BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231124BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231124BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023519245
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2021075437
(87)【国際公開番号】W WO2022078701
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】20202235.6
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ハン,チョンチー
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AB06
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
4G048AE07
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA08
5H050GA02
5H050GA22
5H050HA02
5H050HA14
(57)【要約】
以下の工程:
(a)一般式Li1+xTM1-x(式中、TMは、Ni、及び任意にCo及びMnの少なくとも1つ、及び任意にAl、Mg及びBaから選択される少なくとも1種の元素、Ni、Co及びMn以外の遷移金属元素であり、xは0~0.2の範囲であり、TMの遷移金属の少なくとも50モル%はNiである)による粒子状電極活物質を提供する工程と、
(b)ヘテロポリ酸、又はAl若しくはSbの化合物を含有することができる水性媒体で、前記粒子状電極活物質を処理する工程と、
(c)工程(b)からの水を少なくとも部分的に除去する工程と、
(d)任意に、少なくとも1種のヘテロポリ酸又はAl若しくはSbの化合物を粒子状化合物として又は水溶液又はスラリーとして添加する工程と、
(e)任意に、工程(d)からの混合物を熱処理する工程と、
(f)ぞれぞれ、該当する場合に工程(e)から、又は工程(d)又は(c)から得られた固体物質に、Al若しくはSb若しくはBの化合物、又は少なくとも1種のヘテロポリ酸、又はそのそれぞれのアンモニウム塩又はリチウム塩、又はAl、Ga、In又はBaの塩から選択される少なくとも1種の化合物を添加し、それによって前記粒子状電極活物質の表面にから選択される少なくとも1種の元素を堆積させる工程であって、工程(f)で堆積させた元素が、それぞれ工程(b)又は(d)で堆積させた元素とは異なる、工程と、
(g)工程(f)から得られた残留物を熱処理する工程と
を含む、コーティングされたカソード活物質を製造する方法であって、
工程(d)が行われるか、又は工程(b)における水性媒体がヘテロポリ酸又はAl若しくはSbの化合物を含有し、あるいは工程(d)が行われ、かつ工程(b)における水性媒体がヘテロポリ酸又はAl若しくはSbの化合物を含有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)一般式Li1+xTM1-x(式中、TMは、Ni、及び任意にCo及びMnの少なくとも1つ、及び任意にAl、Mg及びBaから選択される少なくとも1種の元素、Ni、Co及びMn以外の遷移金属元素であり、xは0~0.2の範囲であり、TMの遷移金属の少なくとも50モル%はNiである)による粒子状電極活物質を提供する工程と、
(b)ヘテロポリ酸、又はAl若しくはSbの化合物を含有することができる水性媒体で、前記粒子状電極活物質を処理する工程と、
(c)工程(b)からの水を少なくとも部分的に除去する工程と、
(d)任意に、少なくとも1種のヘテロポリ酸又はそのそれぞれのアンモニウム塩又はリチウム塩、又はAl若しくはSbの化合物を粒子状化合物として又は水溶液又はスラリーとして添加する工程と、
(e)任意に、工程(d)からの混合物を熱処理する工程と、
(f)ぞれぞれ、該当する場合に工程(e)から、又は工程(d)又は(c)から得られた固体物質に、Al若しくはSb若しくはBの化合物、又は少なくとも1種のヘテロポリ酸、又はそのそれぞれのアンモニウム塩又はリチウム塩、又はAl、Ga、In又はBaの塩から選択される少なくとも1種の化合物を添加し、それによって前記粒子状電極活物質の表面にから選択される少なくとも1種の元素を堆積させる工程であって、工程(f)で堆積させた元素が、それぞれ工程(b)又は(d)で堆積させた元素とは異なる、工程と、
(g)工程(f)から得られた残留物を熱処理する工程と
を含む、コーティングされたカソード活物質を製造する方法であって、
工程(d)が行われるか、又は工程(b)における水性媒体がヘテロポリ酸又はAl若しくはSbの化合物を含有し、あるいは工程(d)が行われ、かつ工程(b)における水性媒体がヘテロポリ酸又はAl若しくはSbの化合物を含有する、方法。
【請求項2】
TMが、一般式(I)

(NiCoMn1-d (I)

(式中、aは0.6~0.99の範囲であり、
bは0又は0.01~0.2の範囲であり、
cは0~0.2の範囲であり、
dは0~0.1の範囲であり、
Mは、Al、Mg、Ti、Mo、W及びZrの少なくとも1種であり、
a+b+c=1である)
による金属の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(d)で添加されるAl及びSbの化合物が、Al、Al(SO、及びSbから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ヘテロポリ酸が、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、タングステンケイ酸、モリブドケイ酸、及びそれらのそれぞれのアンモニウム塩及びリチウム塩から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(g)が、300~700℃の範囲の最高温度での焼成工程を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(g)が、40~250℃の範囲の最高温度での乾燥工程を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(d)において、Al若しくはSbの化合物(単数又は複数)又はヘテロポリ酸の水溶液又はスラリーが添加される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下の工程:
(a)一般式Li1+xTM1-x(式中、TMは、Ni、及び任意にCo及びMnの少なくとも1つ、及び任意にAl、Mg及びBaから選択される少なくとも1種の元素、Ni、Co及びMn以外の遷移金属元素であり、xは0~0.2の範囲であり、TMの遷移金属の少なくとも50モル%はNiである)による粒子状電極活物質を提供する工程と、
(b)ヘテロポリ酸、又はAl若しくはSbの化合物を含有することができる水性媒体で、前記粒子状電極活物質を処理する工程と、
(c)工程(b)からの水を少なくとも部分的に除去する工程と、
(d)任意に、少なくとも1種のヘテロポリ酸、又はAl若しくはSbの化合物を粒子状化合物として又は水溶液又はスラリーとして添加する工程と、
(e)任意に、工程(d)からの混合物を熱処理する工程と、
(f)ぞれぞれ、該当する場合に工程(e)から、又は工程(d)又は(c)から得られた固体物質に、Al若しくはSb若しくはBの化合物、又は少なくとも1種のヘテロポリ酸、又はそのそれぞれのアンモニウム塩又はリチウム塩、又はAl、Ga、In又はBaの塩から選択される少なくとも1種の化合物を添加し、それによって前記粒子状電極活物質の表面にから選択される少なくとも1種の元素を堆積させる工程であって、工程(f)で堆積させた元素が、それぞれ工程(b)又は(d)で堆積させた元素とは異なる、工程と、
(g)工程(f)から得られた残留物を熱処理する工程と
を含む、コーティングされたカソード活物質の製造方法に関し、ここで、工程(d)が行われるか、又は工程(b)における水性媒体がヘテロポリ酸又はAl若しくはSbの化合物を含有し、あるいは工程(d)が行われ、かつ工程(b)における水性媒体がヘテロポリ酸又はAl若しくはSbの化合物を含有する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、エネルギーを貯蔵するための最新の装置である。携帯電話及びラップトップコンピュータなどの小型の装置からカーバッテリー及び他のE-モビリティ(e-mobility)用バッテリーまで、多くの応用分野が考えられてきた。電解質、電極材料及びセパレータなどの様々な電池の構成要素は、電池の性能に関して重要な役割を有する。カソード材料は特に注目されている。いくつかの材料、例えばリチウム鉄ホスフェート、リチウムコバルトオキシド、及びリチウムニッケルコバルトマンガンオキシドが提案されてきた。広範な研究調査が行われてきているが、これまでに見出された解決策は未だに改善の余地がある。
【0003】
現在、いわゆるNiリッチ(Niの量が多い)電極活物質、例えば、TM総含有量に対して75モル%以上のNiを含有する電極活物質への特定の関心が観察される。
【0004】
リチウムイオン電池、特にNiリッチ電極活物質の1つの問題は、電極活物質の表面での望ましくない反応に起因する。このような反応は、電解質又は溶媒又はその両方の分解であり得る。したがって、充電及び放電中のリチウム交換を妨げることなく、表面を保護することが試みられた。例は、例えばアルミニウムオキシド又はカルシウムオキシドで電極活物質をコーティングする試みである(例えば、US 8,993,051参照)。
【0005】
他の理論では、表面の遊離LiOH又はLiCOに望ましくない反応が割り当てられる。電極活物質を水で洗浄することにより、そのような遊離のLiOH又はLiCOを除去する試みがなされてきた(例えば、JP 4,789,066 B、JP 5,139,024 B、及びUS2015/0372300参照)。しかしながら、場合によっては、得られた電極活物質の特性が改善されないことが観察された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US 8,993,051
【特許文献2】JP 4,789,066 B
【特許文献3】JP 5,139,024 B
【特許文献4】US2015/0372300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、優れた電気化学特性を有するNiリッチ電極活物質の製造方法を提供することであった。また、本発明の目的は、優れた電気化学特性、特にサイクリング時の低い抵抗成長を有するNiリッチ電極活物質を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、以下に「本発明の方法」とも称される、冒頭で定義された方法が見出された。本発明の方法は、以下の工程:
(a)一般式Li1+xTM1-x(式中、TMは、Ni、及び任意にCo及びMnの少なくとも1つ、及び任意にAl、Mg及びBaから選択される少なくとも1種の元素、Ni、Co及びMn以外の遷移金属元素であり、xは0~0.2の範囲であり、TMの遷移金属の少なくとも50モル%はNiである)による粒子状電極活物質を提供する工程と、
(b)ヘテロポリ酸、又はAl若しくはSbの化合物を含有することができる水性媒体で、前記粒子状電極活物質を処理する工程と、
(c)工程(b)からの水を少なくとも部分的に除去する工程と、
(d)任意に、少なくとも1種のヘテロポリ酸又はAl若しくはSbの化合物を粒子状化合物として又は水溶液又はスラリーとして添加する工程と、
(e)任意に、工程(d)からの混合物を熱処理する工程と、
(f)ぞれぞれ、該当する場合に工程(e)から、又は工程(d)又は(c)から得られた固体物質に、Al又はB又はSbの化合物、又は少なくとも1種のヘテロポリ酸、又はそのそれぞれのアンモニウム塩又はリチウム塩、又はAl、Ga、In又はBaの塩から選択される少なくとも1種の化合物を添加し、それによって前記粒子状電極活物質の表面にから選択される少なくとも1種の元素を堆積させる工程であって、工程(f)で堆積させた元素が、それぞれ工程(b)又は(d)で堆積させた元素とは異なる、工程と、
(g)工程(f)から得られた残留物を熱処理する工程と
を含み、ここで、工程(d)が行われるか、又は工程(b)における水性媒体がヘテロポリ酸又はAl若しくはSbの化合物を含有し、あるいは工程(d)が行われ、かつ工程(b)における水性媒体がヘテロポリ酸又はAl若しくはSbの化合物を含有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の方法は、本発明の文脈においてそれぞれ工程(a)、工程(b)、工程(c)、工程(f)及び工程(g)とも呼ばれる5つの工程(a)、(b)、(c)、(f)及び(g)を含む。工程(a)~(g)は続いて行われる。工程(d)及び(e)は任意である。
【0010】
工程(a)において、本発明の方法は、一般式Li1+xTM1-x(式中、TMは、Ni、及び任意にCo及びMnから選択される少なくとも1種の遷移金属、及び任意にAl、Mg及びBaから選択される少なくとも1種の元素を含み、TMの少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも75モル%はNiであり、xは0~0.2の範囲である)による電極活物質から出発する。前記物質は、以下で出発材料とも呼ばれる。
【0011】
本発明の一実施態様において、出発材料は、3~20μm、好ましくは4~16μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。平均粒径は、例えば光散乱又はレーザー回折又は電気音響分光法(electroacoustic spectroscopy)によって決定することができる。粒子は通常、一次粒子からの凝集体から構成され、上記の粒径は二次粒子の粒径を指す。
【0012】
本発明の一実施態様において、出発材料は、0.1~2.0m/gの範囲の比表面積(BET)(以下で「BET表面積」とも呼ばれる)を有する。BET表面積は、DIN ISO 9277:2010に従って、200℃で30分、及びこれを超えてサンプルをガス放出した後の窒素吸着によって決定することができる。
【0013】
本発明の一実施態様において、工程(a)で提供される粒子状物質は、20~2000ppmの、カールフィッシャー滴定によって決定された水分含有量を有し、50~1200ppmが好ましい。
【0014】
本発明の一実施態様において、変数TMは、一般式(I)

(NiCoMn1-d (I)

(式中、a+b+c=1であり、
aは、0.6~0.99、好ましくは0.75~0.95、より好ましくは0.85~0.95の範囲であり、
bは、0又は0.01~0.2、好ましくは0.025~0.2、より好ましくは0.025~0.1の範囲であり、
cは、0~0.2、好ましくは0.025~0.2、より好ましくは0.05~0.1の範囲であり、
dは、0~0.1、好ましくは0~0.04の範囲であり、
は、Al、Mg、Ti、Nb、Mo、W及びZrの少なくとも1種、好ましくはAl、Ti、Zr及びWの少なくとも1種である)
に対応する。
【0015】
本発明の一実施態様において、変数cは0であり、MはAlであり、dは0.01~0.05の範囲である。
【0016】
本発明の別の実施態様において、変数TMは、一般式(Ia)

(Nia*Cob*Ale*1-d* d* (Ia)

(式中、a+b+c=1であり、
は、0.75~0.95、好ましくは0.88~0.95の範囲であり、
は、0.025~0.2、好ましくは0.025~0.1の範囲であり、
は、0.01~0.2、好ましくは0.015~0.04の範囲であり、
は、0~0.1、好ましくは0~0.02の範囲であり、
は、W、Mo、Nb、Mg、Ti又はZrの少なくとも1種である)
に対応する。
【0017】
式(Ia)における変数xは、0~0.2、好ましくは0.01~0.1の範囲である。
【0018】
本発明の一実施態様において、TMは一般式(I)に対応し、xは、0~0.2、好ましくは0~0.1、さらにより好ましくは0.01~0.05の範囲である。
【0019】
本発明の一実施態様において、TMは、Ni0.6Co0.2Mn0.2、Ni0.7Co0.2Mn0.1、Ni0.8Co0.1Mn0.1、Ni0.83Co0.12Mn0.05、Ni0.89Co0.055Al0.055、Ni0.9Co0.045Al0.045及びNi0.85Co0.1Mn0.05から選択される。
【0020】
工程(a)で提供される電極活物質は通常、導電性炭素を含まない、すなわち、出発材料の導電性炭素の含有量は、前記出発材料に対して1質量%未満、好ましくは0.001~1.0質量%である。
【0021】
一部の元素は遍在するものである。本発明の文脈において、不純物としての微量のナトリウム、カルシウム又は亜鉛などの遍在金属は、本発明の明細書において考慮されない。この文脈における微量とは、出発材料の全金属含有量に対して0.02モル%以下の量を意味する。
【0022】
工程(b)において、工程(a)で提供される前記電極活物質は、水性媒体、好ましくは水で処理される。前記水性媒体は、2~14の範囲、好ましくは少なくとも3.5、より好ましくは5~7の範囲のpH値を有してもよい。pH値は、工程(b)の開始時に測定される。工程(b)の過程中で、pH値が少なくとも10、例えば11~13まで上昇することが観察される。工程(b)の開始時にpH値が10~11の範囲にある実施態様では、pH値が11超~13まで上昇する。工程(b)の開始時にpH値が3~10未満の範囲にある実施態様では、pH値は工程(b)の過程中で11~13まで上昇する。
【0023】
工程(b)で使用される前記水性媒体の水硬度が、特にカルシウムが少なくとも部分的に除去されることが好ましい。脱塩水を使用することが好ましい。
【0024】
本発明の一実施態様において、前記水性媒体は、溶解した又はスラリー化した、少なくとも1種のヘテロポリ酸、又はそのそれぞれのアンモニウム塩又はリチウム塩、又はAl若しくはSbの化合物から選択される化合物を含有してもよい。
【0025】
本発明の一実施態様において、工程(b)で存在するヘテロポリ酸は、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、タングステンケイ酸、モリブドケイ酸、及び前記の少なくとも2種の組み合わせ、及びそれらのそれぞれのアンモニウム塩及びリチウム塩、例えば、モノ-、ジ-又はトリアンモニウム塩及びモノ-、ジ-及びトリリチウム塩から選択される。タングステンのヘテロポリ酸、特にリンタングステン酸及びタングステンケイ酸、及びそれらのそれぞれのアンモニウム塩及びリチウム塩、例えば、モノ-、ジ-又はトリアンモニウム塩が好ましい。
【0026】
ヘテロポリ酸の例は、M [PW1240]、M[PW1240]、M [SiW1240]、M [SiW1240]、M [(W34)、M (P2171)、M (PW1240)、M (SiW1240)、M (P1862)、M (PW1139)及びM 10(SiW34)であり、ここで、Mが、H、NH 、Li及び前記の少なくとも2種の組み合わせから選択される。MがAl、Ga、In、Baから選択され、化学量論係数がそれに応じて調整される実施態様も可能である。
【0027】
本発明の一実施態様において、ヘテロポリ酸又はAl若しくはSbの化合物の量は、TMに対して、0.05~1.5モル%、好ましくは0.15~0.9モル%の範囲である。
【0028】
工程(b)で使用されるAl又はSbの化合物の例は、水溶性又は水不溶性化合物から選択される。Alの水溶性化合物の例は、Al(SO、KAl(SO又はAl(NOである。この文脈における「水溶性」は、25℃で1リットルの水当たり少なくとも10gのそれぞれのAl又はSbの化合物の溶解度を意味する。
【0029】
他の実施態様において、Alの前記無機化合物は水不溶性である。この文脈における「水不溶性」は、25℃で1リットルの水当たり0.1g未満の化合物の溶解度を意味する。例としては、Al、Al(OH)、AlOOH、Al・aqが挙げられ、AlOOH及びAlが好ましい。
【0030】
Sbの水不溶性化合物の例はSb(+III)の化合物及びSb(+V)の化合物である。Sb(+III)の化合物の例は、Sb(OH)、Sb・aq、Sb(SO、SbOOH、LiSbO及びSbである。Sb(+V)の化合物の例は、Sb、LiSb、LiSbO、LiSbO、LiSbO、LiSbO、Sb(Sb(III)Sb(V)O)、及びSb(+V)のオキシ水酸化物、例えばSbO(OH)、Sb(OH)、Sb(OH)、SbOH、SbOH(これらに限定されない)である。Sb(OH)、Sb・aq及びSbが好ましい。水溶性化合物の例は、Sb(SO、SbONO及びSb(NOである。
【0031】
Al又はSbの前記水不溶性化合物は、水中に分散又はスラリー化されてもよい。
【0032】
本発明の文脈において、AlOOHは必ずしも等モル量の酸化物と水酸化物を含むとは限らず、Al(O)(OH)と呼ばれることもある。同じことが、必要な変更を加えてSbOOHに適用される。
【0033】
工程(b)で使用されるAl又はSbのそれぞれの化合物、特にAl及びAl(O)(OH)は、純粋なもの(≧99.9モル%のAl、Siを含む全金属に対して)であってもよく、又は例えば0.1~5モル%の量の、酸化物、例えばLa、Ce、チタニア又はジルコニアでドープされていてもよい。
【0034】
工程(b)においてAl又はSbのより好ましい化合物はAl(SO及びSbである。
【0035】
本発明の一実施態様において、Al又はSbの前記水不溶性化合物は、10nm~10μm、好ましくは10nm~3μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。平均粒径(D50)はSEMなどの画像処理により決定されてもよい。
【0036】
他の実施態様において、前記水性媒体は、溶解した又はスラリー化した、ヘテロポリ酸、又はそのそれぞれのリチウム塩又はアンモニウム塩、又はAl若しくはSbの化合物を一切含有しない。
【0037】
本発明の一実施態様において、工程(b)は5~85℃の範囲の温度で行われ、10~60℃が好ましい。
【0038】
本発明の一実施態様において、工程(b)は常圧で行われる。しかし、高圧で、例えば常圧より10ミリバール~10バール高い圧力で、又は吸引しながら、例えば常圧より50~250ミリバール低い圧力で、好ましくは常圧より100~200ミリバール低い圧力で、工程(b)を行うことが好ましい。
【0039】
例えば、工程(b)は、例えば、フィルター装置の上方に位置するため、容易に排出することができる容器内で行うことができる。そのような容器は出発材料で充填され、続いて水性媒体が導入されてもよい。他の実施態様において、そのような容器は水性媒体で充填され、続いて出発材料が導入される。他の実施態様において、出発材料と水性媒体は同時に導入される。
【0040】
本発明の一実施態様では、工程(b)において、水と電極活物質の量は、1:5~1:5、好ましくは2:1~1:2の範囲の質量比を有する。
【0041】
工程(b)は、混合操作、例えば、振とうによって、又は特に攪拌又は剪断によってサポートされてもよい。以下を参照されたい。
【0042】
本発明の一実施態様において、工程(b)は、1分~90分、好ましくは1分~60分未満の範囲の持続時間を有する。工程(b)において、水処理及び水の除去が重複して又は同時に行われる実施態様では、5分以上の持続時間が可能である。
【0043】
本発明の一実施態様において、工程(b)による処理及び工程(c)による水の除去は連続的に行われる。
【0044】
工程(b)による水性媒体での処理後又は処理中に、水は、例えばバンドフィルター又はフィルタープレスでの任意のタイプの濾過によって除去されてもよい。
【0045】
本発明の一実施態様において、工程(b)の開始後遅くとも3分で、工程(c)が開始される。工程(c)は、例えば固液分離によって、例えばデカンテーションによって、又は好ましくは濾過によって、処理された粒子状物質から水を部分的に除去することを含む。前記「部分的に除去すること」は、部分的に分離することとも呼ばれる。
【0046】
工程(c)の一実施態様において、工程(b)で得られたスラリーは、遠心分離機、例えばデカンター遠心分離機又はフィルター遠心分離機、又はフィルター装置、例えば吸引フィルター又はフィルタープレス、又は工程(b)が行われる容器の直下に好ましく配置されているベルトフィルターに直接排出される。その後、濾過が開始される。
【0047】
本発明の特に好ましい実施態様において、工程(b)及び(c)は、攪拌機付きフィルター装置、例えば攪拌機付き圧力フィルター又は攪拌機付き吸引フィルター(例えば、ドイツ語:「Ruehrfilternutsche」)で行われる。工程(b)に従って出発材料と水性媒体を組み合わせた後、最大で5分後、好ましくは最大で3分後、又はその直後でも、濾過を開始することによって水性媒体の除去を開始させる。実験室規模では、工程(b)及び(c)はビュヒナー漏斗で行われてもよく、工程(b)及び(c)は手動攪拌によってサポートされてもよい。
【0048】
好ましい実施態様において、工程(b)は、フィルター装置、例えばフィルター内のスラリー又はフィルターケーキの撹拌を可能にする撹拌フィルター装置で行われる。
【0049】
本発明の一実施態様において、工程(c)による水の除去は、1分~1時間の範囲の持続時間を有する。
【0050】
本発明の一実施態様において、工程(b)、及び該当する場合に工程(c)における撹拌は、1分当たり1~50回転(「rpm」)の範囲の速度で行われ、5~20rpmが好ましい。別の実施態様において、それは200~400rpmである。
【0051】
本発明の一実施態様において、濾材は、セラミック、焼結ガラス、焼結金属、有機ポリマーフィルム、不織布、及び織物から選択することができる。
【0052】
本発明の一実施態様において、工程(b)及び(c)は、低減されたCO含有量、例えば、0.01~500質量ppmの範囲の二酸化炭素含有量を有する雰囲気下で行われ、0.1~50質量ppmが好ましい。CO含有量は、例えば赤外光を使用する光学的方法によって決定することができる。例えば赤外光に基づく光学的方法での検出限界未満の二酸化炭素含有量を有する雰囲気下で、工程(b)及び(c)を行うことがさらにより好ましい。
【0053】
工程(c)から、固体残留物が、好ましくは湿潤フィルターケーキの形態で得られる。この固体残留物、特にフィルターケーキの水分含有量は、3~20質量%、好ましくは4~9質量%の範囲であってもよい。
【0054】
任意の工程(d)では、Al又はSbの前記少なくとも1種の化合物を、好ましくは溶媒の非存在下で、又は10体積%以下の溶媒を用いて、工程(a)において、工程(c)から得られる固体残留物に添加する。この文脈において、溶媒という用語は、工程(d)の温度における液体を指し、有機溶媒、水、及びそれらの混合物を包含する。パーセントは、工程(c)から得られた固体残留物の体積に対するものである。
【0055】
本発明の一実施態様において、工程(d)は、Al又はSbの酸化物又は(オキシ)ヒドロキシドの濃縮水性スラリー又はペースト、又はヘテロポリ酸の溶液を、工程(c)から得られる固体残留物に添加することによって行われる。
【0056】
本発明の一実施態様において、工程(d)は、ミキサー、例えばパドルミキサー、プラウシェアミキサー、自由落下ミキサー、ローラーミル、又は高せん断ミキサーで行われる。自由落下ミキサーは、重力を利用して混合を達成するものである。プラウシェアミキサーが好ましい。
【0057】
本発明の一実施態様において、工程(d)において、ミキサーは、1分当たり5~500回転(「rpm」)の範囲の速度で動作し、5~60rpmが好ましい。自由落下ミキサーが適用される実施態様において、5~25rpmがより好ましく、5~10rpmがさらにより好ましい。プラウシェアミキサーが適用される実施態様において、50~400rpmが好ましく、100~250rpmがさらにより好ましい。高せん断ミキサーの場合、100~950rpmの撹拌器及び100~3750rpmのチョッパーが好ましい。
【0058】
本発明の一実施態様において、工程(d)の持続時間は1分~2時間の範囲であり、10分~1時間が好ましい。
【0059】
本発明の一実施態様において、工程(d)は10~80℃の範囲の温度で行われる。室温がさらにより好ましい。
【0060】
本発明の一実施態様において、工程(d)は、空気雰囲気中、又は窒素などの不活性ガス下で行われる。周囲空気が好ましい。
【0061】
工程(d)から、混合物が得られる。水が使用される実施態様において、混合物は、湿潤粉末又は乾燥粉末の外観を有する。
【0062】
Sbの粒子状化合物の例は、Sb(OH)、Sb・aq、Sb(SO、SbOOH、LiSbO及びSbである。Sb(+V)の化合物の例は、Sb、LiSb、LiSbO、LiSbO、LiSbO、LiSbO、Sb(Sb(III)Sb(V)O)、及びSb(+V)のオキシ水酸化物、例えばSbO(OH)、Sb(OH)、Sb(OH)、SbOH、SbOH(これらに限定されない)である。
【0063】
Alの粒子状化合物の例は、例えば、Al、Al(OH)、AlOOH、Al・aqであり、AlOOH及びAlが好ましい。
【0064】
工程(d)において、Al及びSbのより好ましい化合物はAl(SO及びSbである。
【0065】
本発明の一実施態様において、工程(c)からの固体残留物と、ヘテロポリ酸又はAl若しくはSbの化合物との質量比は、1000:1~10:1、好ましくは100:1~20:1の範囲である。
【0066】
本発明の一実施態様において、工程(d)におけるAl又はSbの化合物は、粒子状であり、10nm~10μm、好ましくは10nm~1μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。平均粒径(D50)はSEMなどの画像処理により決定されてもよい。
【0067】
本発明の一実施態様において、工程(d)の持続時間は1分~2時間の範囲であり、10分~1時間が好ましい。
【0068】
本発明の一実施態様において、工程(d)は10~80℃の範囲の温度で行われる。室温がさらにより好ましい。
【0069】
本発明の一実施態様において、工程(d)は、空気雰囲気中、又は窒素などの不活性ガス下で行われる。周囲空気が好ましい。
【0070】
工程(d)から、混合物が得られる。水が使用される実施態様において、混合物は、湿潤粉末の外観を有する。工程(d)を行うことにより、Sb、Al、又はヘテロポリ酸からのそれぞれの元素を少なくとも1種の元素は、工程(c)から得られた固体残留物に堆積される。
【0071】
任意の工程(e)では、蒸発によって工程(d)から得られた混合物から水又は溶媒を少なくとも部分的に除去する。工程(e)の好ましい実施態様において、水は、40~250℃の範囲の温度で少なくとも部分的に蒸発される。好ましくは、水の蒸発は0.1~10ミリバール(「真空中」)で行われる。
【0072】
工程(f)では、ぞれぞれ、該当する場合に工程(e)から、又は工程(d)又は(c)から得られた固体物質に、Al若しくはSbの化合物、又は少なくとも1種のヘテロポリ酸、又はそのそれぞれのアンモニウム塩又はリチウム塩から選択される少なくとも1種の化合物を添加し、それによって前記粒子状電極活物質の表面にAl、Sb、B、Mo、W、Si及びPから選択される少なくとも1種の元素を堆積させ、ここで、工程(f)で堆積させた元素が、工程(b)又は(d)で堆積させた元素とは異なる。そのような化合物は、スラリー又は溶液として、又は乾燥粉末として添加されてもよく、乾燥粉末が好ましい。
【0073】
したがって、工程(f)は、工程(e)が行われる場合、工程(e)から得られた固体物質に対して行われる。工程(e)が行われない実施態様において、工程(f)は、該当する場合に工程(d)から得られる混合物に対して行われる。工程(d)も工程(e)も行われない実施態様において、工程(f)は、工程(c)から得られた固体物質に対して行われる。
【0074】
工程(f)で添加されるアルミニウムの化合物の例は、工程(c)との関連で開示されたものと同じものから選択され、Alの水不溶性化合物が好ましい。本発明の一実施態様において、前記水不溶性アルミニウム化合物は、水中に分散され、X線回折によって決定されて、200nm~5μm、好ましくは2~5μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。
【0075】
ホウ素の化合物の例は、B、ホウ酸(B(OH))、及びホウ酸リチウム、例えばLiBOである。ホウ酸が好ましい。
【0076】
アンチモンの化合物の例は、Sb(+III)の化合物及びSb(+V)の化合物である。Sb(+III)の化合物の例は、Sb(OH)、Sb・aq、Sb(SO、SbOOH、LiSbO及びSbである。Sb(+V)の化合物の例は、Sb、LiSb、LiSbO、LiSbO、LiSbO、LiSbO、Sb(Sb(III)Sb(V)O)、及びSb(+V)のオキシ水酸化物、例えばSbO(OH)、Sb(OH)、Sb(OH)、SbOH、SbOH(これらに限定されない)である。Sb(OH)、Sb・aq及びSbが好ましい。
【0077】
本発明の一実施態様において、工程(f)で添加されるヘテロポリ酸は、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、タングステンケイ酸、モリブドケイ酸、及び前記の少なくとも2種の組み合わせ、及びそれらのそれぞれのアンモニウム塩及びリチウム塩、例えば、モノ-、ジ-又はトリアンモニウム塩及びモノ-、ジ-及びトリリチウム塩から選択される。タングステンのヘテロポリ酸、特にリンタングステン酸及びタングステンケイ酸、及びそれらのそれぞれのアンモニウム塩及びリチウム塩、例えば、モノ-、ジ-又はトリアンモニウム塩が好ましい。
【0078】
ヘテロポリ酸の具体例は、M [PW1240]、M[PW1240]、M [SiW1240]、M [SiW1240]、M [(W34)、M (P2171)、M (PW1240)、M (SiW1240)、M (P1862)、M (PW1139)及びM 10(SiW34)であり、ここで、Mが、H、NH 、Li及び前記の少なくとも2種の組み合わせから選択される。MがAl、Ga、In、Baから選択され、化学量論係数がそれに応じて調整される実施態様も可能である。
【0079】
本発明の一実施態様において、ヘテロポリ酸又はAl若しくはSbの化合物の量は、TMに対して、0.05~1.5モル%、好ましくは0.15~0.9モル%の範囲である。
【0080】
工程(f)を行う場合、工程(f)を行うことにより、Al、Sb、B、Mo、W、Si及びPから選択される少なくとも1種の元素が前記粒子状電極活物質の表面に堆積されるように、Sb又はAl又はBの化合物又はヘテロポリ酸が選択され、ここで、工程(f)で堆積された元素は、工程(b)及び(d)で堆積された元素とは異なる。
【0081】
本発明の一実施態様において、Al又はB又はSb又はヘテロポリ酸の少なくとも1種化合物は、粒子状固体、例えば乾燥粉末として添加される。特に工程(e)が行われた実施態様において、工程(f)は、Al又はB又はSb又はヘテロポリ酸の化合物を乾燥粉末として添加することにより行われる。「乾燥粉末」とは、カールフィッシャー滴定により決定される残留水分含有量が0.1質量%以下であるものを指す。
【0082】
工程(f)は、混合操作、例えば、振とうによって、又は特に攪拌又は剪断によってサポートされてもよい。以下を参照されたい。
【0083】
本発明の一実施態様において、工程(f)は、1分~60分、好ましくは1分~30分未満の範囲の持続時間を有する。工程(f)において、水処理及び水の除去が重複して又は同時に行われる実施態様では、5分以上の持続時間が可能である。
【0084】
本発明の一実施態様において、工程(f)は10~80℃の範囲の温度で行われる。室温がさらにより好ましい。
【0085】
本発明の一実施態様において、工程(f)は、空気雰囲気中、又は窒素などの不活性ガス下で行われる。周囲空気が好ましい。
【0086】
本発明の一実施態様において、工程(c)~(f)は、同じタイプの容器、例えば攪拌機付きフィルター装置、例えば攪拌機付き圧力フィルター又は攪拌機付き吸引フィルターで行われる。
【0087】
本発明の方法は、後続の工程(g)を含む:
(g)工程(f)から得られた物質を熱処理する工程。
【0088】
Al又はB又はSb又はヘテロポリ酸の前記化合物(単数又は複数)が水性スラリー又は水溶液として添加される実施態様において、前記工程(g)が特に好ましい。
【0089】
工程(g)は、任意のタイプのオーブン、例えばローラーハースキルン、プッシャーキルン、ロータリーキルン、振り子キルン、又は実験室規模の試験の場合にマッフルオーブンで行うことができる。
【0090】
工程(g)による熱処理の温度は、150~900℃、好ましくは250~700℃、さらにより好ましくは300~650℃の範囲である。前記温度は、工程(g)の最高温度を指す。
【0091】
本発明の一実施態様において、150~900℃、好ましくは250~700℃の所望の温度に達する前に、温度を上昇させる。例えば、まず工程(f)の混合物を350~550℃に加熱し、次に10分~4時間の時間で一定に保持し、次に500~900℃、好ましくは500~850℃に上昇させる。
【0092】
本発明の一実施態様において、工程(g)における加熱速度は0.1~10℃/分の範囲である。
【0093】
本発明の一実施態様において、工程(g)は、ローラーハースキルン、プッシャーキルン又はロータリーキルン、又は前記の少なくとも2つの組み合わせで行われる。ロータリーキルンは、そこで製造される材料の均質化が非常に良好であるという利点を有する。ローラーハースキルン及びプッシャーキルンでは、異なる工程に関する異なる反応条件を非常に容易に設定することができる。実験室規模の実験では、箱型炉、管状炉、及び分割管状炉も使用可能である。
【0094】
本発明の一実施態様において、工程(g)は、酸素含有雰囲気、例えば窒素-空気混合物、希ガス-酸素混合物、空気、酸素又は酸素富化空気又は純酸素中で行われる。好ましい実施態様において、工程(g)における雰囲気は、空気、酸素及び酸素富化空気から選択される。酸素富化空気は、例えば、体積比50:50の空気と酸素の混合物であってよい。他の選択肢としては、体積比1:2の空気と酸素の混合物、体積比1:3の空気と酸素の混合物、体積比2:1の空気と酸素の混合物、及び体積比3:1の空気と酸素の混合物が挙げられる。純酸素がさらにより好ましい。
【0095】
本発明の一実施態様において、工程(g)は30分~5時間の範囲の持続時間を有する。60分~4時間が好ましい。この文脈では冷却時間は無視される。
【0096】
本発明の方法を行うことにより、優れた電気化学特性を有する電極活物質が得られる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、ヘテロポリ酸又はB又はSb又はAl(場合によっては)の分解生成物が、電極活物質の表面に堆積したリチウム化合物の捕捉につながると仮定する。
【0097】
一実施態様において、本発明の方法により得られるカソード活物質は多くの利点を有する。このようなカソード活物質から作られたカソードは、サイクリング時の低減した抵抗成長を示す。
【0098】
実施例によって、本発明をさらに説明する。
【実施例
【0099】
総説:N-メチル-2-ピロリドン:NMP。
【0100】
(SiW1240)・nHO(n=30)を水に溶解した。得られた溶液は、以下で「SiW12・aq」と呼ばれる。
【0101】
超乾燥空気:除湿した空気、露点-30℃未満、CO含有量50ppm未満。
【0102】
「真空」:0.1~10ミリバール。
【0103】
I.カソード活物質の合成
I.1 前駆体TM-OH.1の合成
脱イオン水、及び1kgの水当たり49gの硫酸アンモニウムを撹拌タンク反応器に入れた。溶液を55℃に温度調節し、水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより、pH値を12に調整した。
【0104】
硫酸遷移金属水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液を1.8の流量比で同時に供給し、総流量を8時間の滞留時間とすることにより、共沈反応を開始させた。遷移金属溶液は、Ni、Co及びMnを8.3:1.2:0.5のモル比及び1.65mol/kgの合計の遷移金属濃度で含有した。水酸化ナトリウム水溶液は、6の質量比での25質量%の水酸化ナトリウム溶液及び25質量%のアンモニア溶液であった。水酸化ナトリウム水溶液を別に供給することにより、pH値を12に維持した。すべての供給の始動から始めて、母液を継続的に取り出した。33時間後、すべての供給流を停止した。得られた懸濁液を濾過し、蒸留水で洗浄し、空気中120℃で乾燥させ、ふるいにかけることにより、混合遷移金属(TM)水酸化物前駆体TM-OH.1を得た。
【0105】
I.2 TM-OH.1のカソード活物質への変換
I.2.1 塩基カソード活物質B-CAM.1の製造、工程(a.1)
B-CAM.1(塩基):混合遷移金属水酸化物前駆体TM-OH.1を、1.03のLi/TMモル比でLiOH一水和物と混合した。混合物を765℃に加熱し、酸素の混合物の強制流中に10時間保持した。室温まで冷却した後、得られた粉末を解凝集し、32μmのメッシュでふるいにかけて、塩基カソード活物質B-CAM 1を得た。
【0106】
Malvern InstrumentsからのMastersize 3000機でレーザー回折の技術を使用して決定されたD50は11.0μmであった。250℃で決定した残留水分は300ppmであった。
【0107】
I.2.2 カソード活物質の製造、工程(b.1)~(g.1)
I.2.2.1 C-CAM.1の製造
工程(b.1):ビーカーに67mlの脱イオン水を入れた。100gの量のB-CAM.1を添加した。得られたスラリーを室温で5分間撹拌し、前記撹拌の間、スラリー温度を25℃に維持した。
【0108】
工程(c.1):その後、フィルタープレスでの濾過によって、水を除去した。湿潤フィルターケーキが残った。
【0109】
工程(d)又は(f)は行わなかった。
【0110】
工程(e.1):真空中で、得られたフィルターケーキを70℃で2時間、次に185℃で10時間乾燥させた。粉末が得られた。
【0111】
工程(g.1):その後、工程(e.1)から得られた粉末を45μmのふるいでふるい分けすることにより、比較用カソード活物質C-CAM.1を得た。
【0112】
I.2.2.2 比較用カソード活物質の製造、工程(b.2)~(g.2)
工程(b.2):ビーカーに67mlの脱イオン水を入れた。100gの量のB-CAM.1を添加した。得られたスラリーを室温で5分間撹拌し、前記撹拌の間、スラリー温度を25℃に維持した。
【0113】
工程(c.2):その後、フィルタープレスでの濾過によって、水を除去した。湿潤フィルターケーキが残った。
【0114】
工程(d)は行わなかった。
【0115】
工程(e.2):真空中で、得られたフィルターケーキを70℃で2時間、次に185℃で10時間乾燥させた。
【0116】
工程(f.2):その後、0.57g(0.9モル)のホウ酸を添加し、25.000rpmでの高速ミキサーで混合を行った。混合物を得た。
【0117】
工程(g.2):得られた混合物をマッフル炉で、酸素の強制流下300℃で、2時間熱処理した。その後、得られた粉末を45μmのふるいでふるい分けすることにより、比較用カソード活物質C-CAM.2を得た。
【0118】
I.2.2.3:CAM.3の合成
工程(b.3):連続撹拌下で、100gの量のB-CAM.1を脱イオン水(水の導電率が5μS/m未満)でスラリー化した。0.3モル%(B-CAM.1におけるTMに対して)のAl(SOの水溶液を添加した。使用した脱イオン水の総量は67mlであった。得られたスラリーを室温で5分間撹拌した。
【0119】
工程(c.3):その後、フィルタープレスでの濾過によって、水を除去した。湿潤フィルターケーキが残った。
【0120】
工程(d)は行わなかった。
【0121】
工程(e.3):真空中で、得られたフィルターケーキを70℃で2時間、次に185℃で10時間乾燥させた。
【0122】
工程(f.3):その後、0.57g(0.9モル)のホウ酸を添加し、25.000rpmでの高速ミキサーで混合を行った。混合物を得た。
【0123】
工程(g.3):得られた混合物をマッフル炉で、酸素の強制流下300℃で、2時間熱処理した。その後、得られた粉末を45μmのふるいでふるい分けすることにより、本発明のカソード活物質CAM.3を得た。
【0124】
I.2.2.4:CAM.4の合成
工程(b.4):連続撹拌下で、100gの量のB-CAM.1を脱イオン水(水の導電率が5μS/m未満)でスラリー化した。0.3モル%(B-CAM.1におけるTMに対して)のAl(SOの水溶液を添加した。使用した脱イオン水の総量は67mlであった。得られたスラリーを室温で5分間撹拌した。
【0125】
工程(c.4):その後、フィルタープレスでの濾過によって、水を除去した。湿潤フィルターケーキが残った。
【0126】
工程(d.4):SiW12・aq.を(c.4)からの湿潤フィルターケーキに添加した。W/TMのモル比は0.0015であった。得られた混合物をプラスチックバッグに移し、室温で5分間スクランブルした。
【0127】
工程(e.4):超乾燥空気中で、得られたフィルターケーキを70℃で2時間、次に185℃で10時間乾燥させた。
【0128】
工程(f.4):その後、0.57g(0.9モル)のホウ酸を添加し、(f.3)に従って混合を行った。混合物を得た。
【0129】
工程(g.4):得られた混合物をマッフル炉で、酸素の強制流下300℃で、2時間熱処理した。その後、得られた粉末を45μmのふるいでふるい分けすることにより、本発明のカソード活物質CAM.4を得た。
【0130】
I.2.2.5:CAM.5の合成
工程(b.5):連続撹拌下で、100gの量のB-CAM.1を脱イオン水(水の導電率が5μS/m未満)でスラリー化した。このスラリーに0.45モル%(B-CAM.1におけるTMに対して)のSbの懸濁液を添加した。使用した脱イオン水の総量は67mlであった。得られたスラリーを室温で5分間撹拌した。
【0131】
工程(c.5):その後、フィルタープレスでの濾過によって、水を除去した。湿潤フィルターケーキが残った。
【0132】
工程(d)は行わなかった。
【0133】
工程(e.5):真空中で、得られたフィルターケーキを70℃で2時間、次に185℃で10時間乾燥させた。
【0134】
工程(f.5):その後、0.57g(0.9モル)のホウ酸(B-CAM.1におけるTMに対して)を添加し、(f.3)に従って混合を行った。混合物を得た。
【0135】
工程(g.5):得られた混合物をマッフル炉で、酸素の強制流下300℃で、2時間熱処理した。その後、得られた粉末を45μmのふるいでふるい分けすることにより、本発明のカソード活物質CAM.5を得た。
【0136】
I.2.2.6:CAM.6の合成
工程(b.6):連続撹拌下で、100gの量のB-CAM.1を脱イオン水(水の導電率が5μS/m未満)でスラリー化した。このスラリーに0.45モル%(B-CAM.1におけるTMに対して)のSbの懸濁液を添加した。使用した脱イオン水の総量は67mlであった。得られたスラリーを室温で5分間撹拌した。
【0137】
工程(c.6):その後、フィルタープレスでの濾過によって、水を除去した。湿潤フィルターケーキが残った。
【0138】
工程(d.6):SiW12・aq.を(c.6)からの湿潤フィルターケーキに添加した。W/TMのモル比は0.0015であった。得られた混合物をプラスチックバッグに移し、室温で5分間スクランブルした。
【0139】
工程(e.6):真空中で、得られたフィルターケーキを70℃で2時間、次に185℃で10時間乾燥させた。
【0140】
工程(f.6):その後、0.57g(0.9モル)のホウ酸(B-CAM.1におけるTMに対して)を添加し、(f.3)に従って混合を行った。混合物を得た。
【0141】
工程(g.6):得られた混合物をマッフル炉で、酸素の強制流下300℃で、2時間熱処理した。その後、得られた粉末を45μmのふるいでふるい分けすることにより、本発明のカソード活物質CAM.6を得た。
【0142】
I.2.2.7:CAM.7の合成
工程(b.7):ビーカーに67mlの脱イオン水を入れた。100gの量のB-CAM.1を添加した。得られたスラリーを室温で5分間撹拌し、前記撹拌の間、スラリー温度を25℃に維持した。
【0143】
工程(c.7):その後、フィルタープレスでの濾過によって、水を除去した。湿潤フィルターケーキが残った。
【0144】
工程(d.7):SiW12・aq.を(c.7)からの湿潤フィルターケーキに添加した。W/TMのモル比は0.0015であった。得られた混合物をプラスチックバッグに移し、室温で5分間スクランブルした。
【0145】
工程(e.7):真空中で、得られたフィルターケーキを70℃で2時間、次に185℃で10時間乾燥させた。
【0146】
工程(f.7):その後、0.57g(0.9モル)のホウ酸(B-CAM.1におけるTMに対して)を添加し、(f.3)に従って混合を行った。混合物を得た。
【0147】
工程(g.7):得られた混合物をマッフル炉で、酸素の強制流下300℃で、2時間熱処理した。その後、得られた粉末を45μmのふるいでふるい分けすることにより、本発明のカソード活物質CAM.7を得た。
【0148】
I.2.2.8:CAM.8の合成
工程(b.8):連続撹拌下で、100gの量のB-CAM.1を脱イオン水(水の導電率が5μS/m未満)でスラリー化した。0.3モル%(B-CAM.1におけるTMに対して)のAl(SOの水溶液を添加した。使用した脱イオン水の総量は67mlであった。得られたスラリーを室温で5分間撹拌した。
【0149】
工程(c.8):その後、フィルタープレスでの濾過によって、水を除去した。湿潤フィルターケーキが残った。
【0150】
工程(d)は行わなかった。
【0151】
工程(e.8):真空中で、得られたフィルターケーキを70℃で2時間、次に185℃で10時間乾燥させた。
【0152】
工程(f.8):その後、0.43g(0.675モル)のホウ酸を添加し、25.000rpmでの高速ミキサーで混合を行った。混合物を得た。
【0153】
工程(g.8):得られた混合物をマッフル炉で、酸素の強制流下300℃で、2時間熱処理した。その後、得られた粉末を45μmのふるいでふるい分けすることにより、本発明のカソード活物質CAM.8を得た。
【0154】
プロトコルを表1にまとめた。
【0155】
結果を表1にまとめた。
【0156】
【表1】
【0157】
SiW12の場合、モル%はWに対するものである。
【0158】
II.カソード活物質のテスト
II.1 電極の製造、一般手順
正極:PVDFバインダー(Solef(登録商標)5130)をNMP(Merck)中に溶解して、8.0質量%の溶液を製造した。電極の調製では、バインダー溶液(4質量%)及びカーボンブラック(Li250、3.5質量%)をNMP中に懸濁させた。遊星遠心ミキサー(ARE-250、Thinky Corp.;日本)を使用して混合した後、本発明のCAM.3~CAM.8又は塩基カソード活物質B-CAM.1又は比較用カソード活物質のいずれか(92.5質量%)を添加し、懸濁液を再度混合して、塊のないスラリーを得た。スラリーの固形分を65%に調整した。KTF-Sロールツーロールコーター(Mathis AG)を使用して、スラリーをAlホイル上にコーティングした。使用前に、すべての電極をカレンダ加工した。カソード材料の厚さは45μmであり、15mg/cmに対応した。バッテリーを組み立てる前に、すべての電極を120℃で7時間乾燥させた。
【0159】
II.2 電解質の製造
EL塩基1の総質量に基づいて、12.7質量%のLiPF、26.2質量%のエチレンカーボネート(EC)、及び61.1質量%のエチルメチルカーボネート(EMC)を含有する塩基電解質組成物(EL塩基1)を調製した。この電解質組製剤に、2質量%のビニレンカーボネート(VC)を添加した(EL塩基2)。
【0160】
II.3 テストセルの製造
III.1.1で記載されているように調製したカソードと、動作電極及び対極としてのリチウム金属とを含むコイン型ハーフセル(直径20mm、厚さ3.2mm)をそれぞれ組み立て、Arを充填したグローブボックス中に密封した。さらに、カソード、アノード、及びセパレータをカソード//セパレータ//Liホイルの順に重ね合わせて、ハーフコインセルを製造した。その後、0.15mLの上記(II.2)に記載されているEL塩基1をこのコインセル中に導入した。
【0161】
III.コイン型ハーフセル性能の評価
製造したコイン型電池を使用して、セル性能を評価した。電池の性能については、セルの初期容量及び反応抵抗を測定した。初期性能及びサイクルを以下のように測定した:II.3.1によるコインハーフセルを、室温で4.3V~2.8Vの間の電圧範囲でテストした。初期サイクルでは、CC-CVモードで初期リチウム化を行った。すなわち、0.01Cに達するまで0.1Cの定電流(CC)を印加した。10分間の休止時間の後、2.8Vまで0.1Cの定電流で還元リチウム化を行った。結果を表2にまとめた。サイクルでは、電流密度が0.1Cであり、充放電を25回繰り返した。
【0162】
セルの反応抵抗成長を以下の方法によって計算した:
0.1Cで25サイクル後、コインセルを4.3Vまで充電し、電気化学インピーダンス分光(EIS)法により抵抗を測定した。26サイクル目の抵抗値と2サイクル目の抵抗値との比を抵抗成長として定義した。結果を表2にまとめた。[%]の相対抵抗成長は、100%とするC-CAM.1に基づくセルの抵抗成長に基づくものである。
【0163】
【表2】
【手続補正書】
【提出日】2022-05-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)一般式Li1+xTM1-x(式中、TMは、Ni、及び任意にCo及びMnの少なくとも1つ、及び任意にAl、Mg及びBaから選択される少なくとも1種の元素、Ni、Co及びMn以外の遷移金属元素であり、xは0~0.2の範囲であり、TMの遷移金属の少なくとも50モル%はNiである)による粒子状電極活物質を提供する工程と、
(b)ヘテロポリ酸、又はAl若しくはSbの化合物を含有することができる水性媒体で、前記粒子状電極活物質を処理する工程と、
(c)工程(b)からの水を少なくとも部分的に除去する工程と、
(d)任意に、少なくとも1種のヘテロポリ酸又はそのそれぞれのアンモニウム塩又はリチウム塩、又はAl若しくはSbの化合物を粒子状化合物として又は水溶液又はスラリーとして添加する工程と、
(e)任意に、工程(d)からの混合物を熱処理する工程と、
(f)ぞれぞれ、該当する場合に工程(e)から、又は工程(d)又は(c)から得られた固体物質に、 、ホウ酸及びホウ酸リチウムから選択される少なくとも1種の化合物を添加し、それによって前記粒子状電極活物質の表面にを堆積させる工程と
(g)工程(f)から得られた残留物を熱処理する工程と
を含む、コーティングされたカソード活物質を製造する方法であって、
工程(d)が行われるか、又は工程(b)における水性媒体がヘテロポリ酸又はAl若しくはSbの化合物を含有し、あるいは工程(d)が行われ、かつ工程(b)における水性媒体がヘテロポリ酸又はAl若しくはSbの化合物を含有する、方法。
【請求項2】
TMが、一般式(I)

(NiaCobMnc)1-dMd (I)

(式中、aは0.6~0.99の範囲であり、
bは0又は0.01~0.2の範囲であり、
cは0~0.2の範囲であり、
dは0~0.1の範囲であり、
Mは、Al、Mg、Ti、Mo、W及びZrの少なくとも1種であり、
a+b+c=1である)
による金属の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(d)で添加されるAl及びSbの化合物が、Al、Al(SO、及びSbから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ヘテロポリ酸が、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、タングステンケイ酸、モリブドケイ酸、及びそれらのそれぞれのアンモニウム塩及びリチウム塩から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(g)が、300~700℃の範囲の最高温度での焼成工程を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(g)が、40~250℃の範囲の最高温度での乾燥工程を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(d)において、Al若しくはSbの化合物(単数又は複数)又はヘテロポリ酸の水溶液又はスラリーが添加される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】