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特表2023-550259飽和脂肪族C6~C12カルボン酸の貯蔵のためのコンテナ及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】飽和脂肪族C6~C12カルボン酸の貯蔵のためのコンテナ及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/50 20060101AFI20231124BHJP
   C07C 53/126 20060101ALI20231124BHJP
   B65D 88/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
C07C51/50
C07C53/126
B65D88/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023524586
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2021078106
(87)【国際公開番号】W WO2022084094
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】20203292.6
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テレス,ジョアキム エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】ハマン,ジェシカ ナディーン
(72)【発明者】
【氏名】リアン,シェルー
(72)【発明者】
【氏名】リッティンガー,シュテファン
【テーマコード(参考)】
3E170
4H006
【Fターム(参考)】
3E170AA02
3E170AA21
3E170AB09
3E170DA01
4H006AA02
4H006AA04
4H006AA05
4H006BE30
4H006BS10
(57)【要約】
飽和脂肪族C6-12カルボン酸を含有する液体の分解に安定な貯蔵及び運搬のためのコンテナ及び方法であって、液体が、酸素を含有しない又は少なくとも大幅に酸素を激減させた不活性ガス相雰囲気で液体の上を覆われている、コンテナ及び方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容積が0.05~10000m3のコンテナであって、
a)飽和脂肪族C6-12カルボン酸又はその混合物を含有する液体、ここで、該液体は、99~100wt.-%の飽和脂肪族C6-12カルボン酸含有量を有し、コンテナの内容積の1~99%を占める、及び
b)液体の上のガス相
を含有し、ここで
c)コンテナは、金属製コンテナであり、且つ
d)液体の上のガス相は、0~100vol.-ppmの分子状酸素含有量を有する、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、水素、二酸化炭素、一酸化炭素又はそれらの混合物を含有する不活性ガス相である、
コンテナ。
【請求項2】
ステンレス鋼コンテナである、請求項1に記載のコンテナ。
【請求項3】
内容積が0.05~120m3の可動性のコンテナである、請求項1又は2に記載のコンテナ。
【請求項4】
飽和脂肪族C6-12カルボン酸が、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、デカン酸、2-プロピルヘプタン酸若しくはドデカン酸、又はそれらの混合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載のコンテナ。
【請求項5】
飽和脂肪族C6-12カルボン酸が2-エチルヘキサン酸である、請求項4に記載のコンテナ。
【請求項6】
液体が0~100wt.-ppmの活性酸素含有量を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のコンテナ。
【請求項7】
液体がコンテナの内容積の90~99%を占める、請求項1から6のいずれか一項に記載のコンテナ。
【請求項8】
不活性ガス相が10vol.-ppm以下の分子状酸素含有量を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のコンテナ。
【請求項9】
不活性ガス相が、液体から蒸発した飽和脂肪族C6-12カルボン酸の蒸気を差し引いて、且つ残ったガス相を100vol.-%に設定することに基づいて計算される、99.9vol.-%以上の窒素を含有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のコンテナ。
【請求項10】
飽和脂肪族C6-12カルボン酸又はその混合物を含有する液体の貯蔵及び運搬の方法であって、液体が99~100wt.-%の飽和脂肪族C6-12カルボン酸含有量を有する一方で、液体を内容積が0.05~10000m3であるコンテナに充填することにより、液体がコンテナの内容積の1~99%を占める量にし、ここで、液体は1時間を超えてそこに保持され、さらに、
a)コンテナは金属製コンテナであること、及び
b)コンテナ内のガス相は、0~100vol.-ppmの分子状酸素含有量を有する、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、水素、二酸化炭素、一酸化炭素又はそれらの混合物を含有する不活性ガスで不活性化されることを特徴とする、方法。
【請求項11】
コンテナが、内容積が0.05~120m3である可動性のコンテナである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
液体が1週間以上そこに保持される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
液体が0~100wt.-ppmの活性酸素含有量を有する、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
不活性ガス相が99.9vol.-%以上の窒素を含有する、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
飽和脂肪族C6-12カルボン酸が2-エチルヘキサン酸である、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飽和脂肪族C6-12カルボン酸又はその混合物を含有する液体の貯蔵及び運搬のための内容積が0.05~10000m3のコンテナであって、液体が99~100wt.-%(重量%)の飽和脂肪族C6-12カルボン酸含有量を有する一方、液体がコンテナの内容積の1~99%を占め、ガス相が液体の上に存在する、コンテナに関する。
【0002】
更に、本発明はまた、そのようなコンテナ内のそのような液体の貯蔵及び運搬の方法であって、液体が、コンテナに充填されてコンテナの内容積の1~99%を占め、ガス相により覆われており、1時間を超えてそこに保持される、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
飽和脂肪族カルボン酸は、広範な用途を有する、世界的に重要な中間体である。これらはそれ自体で使用することができるが、典型的には、金属塩、エステル、アミド、無水物、酸塩化物及び他の誘導体へとさらに加工される。概して、これらは、広範な化合物、例えば金属塩及び金属石けん、香料、芳香剤、医薬成分及び農薬成分、化粧用成分、可塑剤、塗料、コーティング添加剤、冷却剤、滑沢剤又はポリマー加工のための触媒の製造のための重要な中間体である。C6~12飽和脂肪族カルボン酸の非常に重要な代表物は、2-エチルヘキサン酸である。これは、アルキド樹脂及び塗料のための増粘剤及び乾燥剤として、ポリウレタン発泡体製造における触媒として、PVCの安定剤及び/若しくは可塑剤として、又は滑沢剤のための腐食防止剤及び摩耗防止剤としてのそれらの使用のために、例えばその金属塩又はエステルとして、その誘導体の形態で主に使用される。C6~12飽和脂肪族カルボン酸、例えばn-ヘプタン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、n-ノナン酸、又は3,5,5-トリメチルヘキサン酸のエステルはまた、滑沢剤として使用されることも多い。
【0004】
飽和脂肪族C6~12カルボン酸の製造のための広く使用されている重要な方法は、触媒又は何らかの添加剤の有無を問わない、液相中での分子状酸素(酸素分子)を用いた対応するアルデヒドの酸化である。この一般的な合成経路は、例えば、J. Kubitschkeら、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry中の「Carboxylic acids, aliphatic」、2014年、Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, DOI: 10.1002/14356007.a05_235.pub2、第4.2.1章「Aldehyde oxidation」及び第7章「Commercially important aliphatic carboxylic acids」に記載されている。次いで、得られたC6-12カルボン酸は、通常、蒸留により精製されて好ましくは純粋な形態のC6-12カルボン酸が得られる。しかしながら、C6-12カルボン酸が更にそれらの誘導体へと処理されるか又は他に用いられる前に、C6-12カルボン酸は、通常、異なる大きさの固定されたコンテナ内又は可動性のコンテナ内に貯蔵され、必要に応じて、それらの更なる使用のために他の場所へとその中で運搬される。ほとんどの脂肪族カルボン酸は可燃性及び腐食性であることから、J.Kubitschkeらは、上述した論文の第6章"Storage and transportation"においてそれらを耐食性コンテナ内で貯蔵及び運搬することを教示している。このことは、いずれの更なる具体的な方策もなく、且つ上述した可燃性に特定の注意を向けることなく、ステンレス鋼コンテナ内又は耐酸性プラスチックコンテナ内で容易に取り扱えることを暗示する。
【0005】
J.Kubitschkeらは脂肪族カルボン酸の可燃性について述べているが、欧州連合により提供される化学薬品の公的に入手可能な電子データベースである欧州化学機関(ECHA)データベースにおいて入手可能なデータに基づいた、様々な飽和脂肪族C6-12カルボン酸についての概説は、大気圧で100℃以上の典型的な引火点を明らかにしており、例えば、
C6については、ヘキサン酸について104℃、
C7については、ヘプタン酸について117℃、
C8については、オクタン酸について132℃、2-エチルヘキサン酸について118℃、
C9については、ノナン酸について137℃、3,5,5-トリメチルヘキサン酸について117℃、
C10については、デカン酸について147℃、及び
C12については、2-ブチルオクタン酸について154℃
である。
【0006】
100℃以上の引火点は比較的高いが、爆発防止方策、例えば脂肪族カルボン酸を不活性ガス雰囲気下に保持すること、から本来解放されない。N.Allenは、Hazards XXI、シンポジウムシリーズNo.155、IChemE 2009、第271頁~第276頁の彼の論文"Hazards of high flash point liquids in relation to the ATEX 137 directive"において、引火点40℃未満の液体は通常、爆発防止方策を必要とするが、引火点40℃以上の液体もまた、液体がそれらの引火点より上に意図的若しくは非意図的に加熱されて、蒸気及びエアロゾルが形成されることがあり、化学的な反応若しくは分解が起こることがあり、又は液体が低引火点成分に汚染又は混合されることがある場合には、そのような方策を必要とすることがあることを示している。飽和脂肪族C6-12カルボン酸の引火点は、貯蔵又は運搬の間に合理的に想定することのできるいずれの温度よりも十分に上であり、また上述した他の例外のいずれもまた適用されないことから、N.Allenは、飽和脂肪族C6-12カルボン酸の貯蔵及び運搬が爆発防止方策、例えば不活性ガス雰囲気の供給を必要としないことを確認している。
【0007】
要約すると、
J.Kubitschkeら及びN.Allenの論文、
飽和脂肪族C6-12カルボン酸に酸素感受性のC=C二重結合が存在しないこと、
飽和脂肪族C6-12カルボン酸が爆発性でも高度に可燃性でもないという事実、
飽和脂肪族C6-12カルボン酸が通常、過剰の分子状酸素を用いたとしても、それぞれのアルデヒドの分子状酸素による酸化により調製されるという知見、並びに
カルボン酸は酸化にかなり耐性があるという文献における広範な認識
が、飽和脂肪族C6-12カルボン酸を大気下で容易に取り扱い、貯蔵し、且つ運搬することができることを当業者に明確に示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
EP出願番号20191855.4は、色安定性の飽和脂肪族C6-12カルボン酸の調製を取り扱っているが、それらを貯蔵又は運搬する方法については記載していない。
【0009】
しかしながら、本発明によれば、飽和脂肪族C6-12カルボン酸は、それらがEP20191855.4に記載の特定の色安定性促進方法特性のもとで調製された場合であっても、技術水準に記載された又は示された条件下で貯蔵又は運搬された場合に依然として時間とともに分解する傾向にあることが認められた。
【0010】
したがって、本発明の目的は、飽和脂肪族C6-12カルボン酸が長い間、例えば数か月間、貯蔵又は運搬された場合であっても、貯蔵若しくは運搬された飽和脂肪族C6-12カルボン酸に由来する製品の変色を防止するか若しくは少なくともかなり低減し、及び/又は飽和脂肪族C6-12カルボン酸が熱ストレス下でそれらの色安定性を損なわないか若しくはわずかに損なうのみである方法にて、飽和脂肪族C6-12カルボン酸の貯蔵及び運搬を改善することである。改善された貯蔵及び運搬は、好ましくは容易に入手可能な標準のコンテナ内において行うことが容易であるべきであり、飽和脂肪族C6-12カルボン酸は、有害化合物で汚染されるべきではない。この目的は、必要条件を満たす方法及びコンテナを見出すことを包含する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、発明者等は、内容積が0.05~10000m3のコンテナであって、
a)飽和脂肪族C6-12カルボン酸又はその混合物を含有する液体、ここで、該液体は、99~100wt.-%の飽和脂肪族C6-12カルボン酸含有量を有し、コンテナの内容積の1~99%を占める、及び
b)液体の上のガス相
を含有し、ここで、
c)コンテナは金属製コンテナであり、且つ
d)液体の上のガス相は、0~100vol.-ppm(体積ppm)の分子状酸素含有量を有する、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、水素、二酸化炭素、一酸化炭素又はそれらの混合物を含有する不活性ガス相である、
コンテナを見出した。
【0012】
EP20191855.4では、少量の分子状酸素でさえ存在するとすぐに、飽和脂肪族C6-12カルボン酸が蒸留条件下で少量の高い酸化可能性を有する成分を形成することが見出された。これらの高い酸化可能性の成分の性質についてのより詳細な研究により、それらが主に一般式(1)
【0013】
【化1】
(式中、飽和脂肪族C6-12カルボン酸の性質に応じて、R1はCOOH基を有するC1-11基を表し、R2はC1-10基又はHを表し、R3はC1-5基又はHを表し、一方、R1、R2及びR3の炭素原子の合計は5~11である)
のアルキルヒドロペルオキシドであることが明らかになった。ヒドロペルオキシ基は、COOH基を除いて、炭素原子が第1級、第2級又は第3級の炭素原子であるかにかかわらず、飽和脂肪族C6-12カルボン酸のいずれの炭素原子にも位置することができる。しかしながら、第3級炭素原子、及びCOOH基に対してアルファ位の炭素原子が特に、過酸化する傾向にある。
【0014】
高い酸化潜在力を有する成分は、反応性酸素の量の定量的尺度であるいわゆる「活性酸素」として通常特徴付けられる。「活性酸素」という用語は現在の技術水準において既に公知で使用されており、例えばA. Uhlら、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry中の「Peroxy Compounds, Organic」、2017年、Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, DOI: 10.1002/14356007.a19_199.pub2、第10章「Analytical Determination」において記載されている。試料の活性酸素の量は概して、一定量の容易に酸化可能な化合物、例えばヨウ化物(1-)又は鉄(II)の塩を一定量の試料に添加することにより決定される。存在する反応性酸素は酸化可能な化合物を酸化し、酸化された酸化可能な化合物の量は、その後、滴定により決定される。
【0015】
活性酸素含有量の情報価値に関してより正確であるために、その測定方法をより詳細に説明する。本発明によると、活性酸素の決定は、好ましくはヨウ化物(1-)の酸化により行われる。この分析方法はヨード滴定と呼ばれ、当業者に周知である。しかし、これを以下で概略的に説明する。
【0016】
ヨード滴定では、一定量の酢酸中のヨウ化カリウム水溶液を一定量の試料に室温で添加し、ヨウ化物(1-)を元素状ヨウ素へと酸化するために撹拌する。添加するヨウ化カリウムの量は、予測される活性酸素の量に関連し、予備測定により推定することができる。ヨード滴定測定については、添加するヨウ化物(1-)の量は、元素状ヨウ素へと酸化される量よりもわずかに多いものでなければならない。元素状ヨウ素は、次に、前の酸化により形成された元素状ヨウ素の量を決定するために、チオ硫酸ナトリウムを用いて滴定される。指示薬としてデンプンが典型的に使用され、これは元素状ヨウ素が存在するかぎり紫色であり、すべての元素状ヨウ素がヨウ化物に還元されたときに無色となる。或いは、白金電極を使用することもできる。添加するヨウ化カリウムの量及び酸化により形成される元素状ヨウ素の量に基づき、酸化されたヨウ化物(1-)の量を算出することができる。形式的な式
【0017】
【化2】
及びアルキルヒドロペルオキシドについてのより詳細な式
【0018】
【化3】
によると、2モルのヨウ化物(1-)は、酢酸の存在下で1モルの活性酸素原子と反応する。活性酸素は式(2)中で”O”と表され、式(3)中のペルオキソ基の一部である。これは水に還元される。式(3)中、「Ac」はアセチル基を表し、基R、R1、R2及びR3は式(1)に記載された通りの意味を有する。試料の活性酸素含有量は、試料の重量に対する活性酸素原子の重量分率であり、wt.-%又はwt.-ppmで示される。
【0019】
活性酸素の含有量は、活性酸素がヒドロペルオキシドとして飽和脂肪族C6~12カルボン酸において単独で結合していると仮定して、等しい過酸化物化合物の含有量へと容易に変換することができる。変換は、測定された活性酸素含有量に、ヒドロペルオキシ酸のモル質量と酸素原子のモル質量との比を乗算することにより行うことができる。例えば、2-エチルヘキサン酸の場合、倍率は176.2/16.0=11.0125である。
【0020】
完全性のために、カルボン酸含有試料中の活性酸素の量は、基本的には物理的方法、例えば13C-NMRにより決定することもできることがまた言及される。
【0021】
しかし、本発明においては、活性酸素は、水性酢酸媒体中、室温及び大気圧でヨウ化物(1-)を元素状ヨウ素へと酸化することが可能な、試料中に存在する酸素の質量として理解される。
【0022】
EP20191855.4では、アルキルヒドロペルオキシドのような活性酸素化合物が、貯蔵の間に時間とともに、熱ストレスに晒されるときに及び/又はそれに由来する製品において、飽和脂肪族カルボン酸の暗化(darkening)を引き起こしうることが更に見出された。飽和脂肪族C6-12カルボン酸の対応するアルデヒドの酸化による調製に関して、EP20191855.4は、そのような分解傾向への対応策として、粗液体を蒸留して精製飽和脂肪族C6-12カルボン酸を単離する前に、酸化工程により得られた粗液体から分子状酸素を取り除いて10wt.-ppm以下の含有量とすることを教示している。したがって、そのような精製飽和脂肪族C6-12カルボン酸は、非常に低い含有量の分子状酸素、及び非常に低い含有量の活性酸素を有し、熱ストレスに晒されるとき(即ち、分子状酸素の非存在下で加熱されるとき)、及び/又はそれらが通常適用される製品において、非常に低い暗化傾向のみを示す。
【0023】
分子状酸素及び活性酸素は、2つの異なる種類の化合物である。活性酸素が高い酸化可能性を有する成分の種類である一方で、既に上述したように、分子状酸素は、単に溶解したO2である。分子状酸素は、分子状酸素感受性の装置、例えば水の分析で用いられることの多い光学センサーを用いて容易に測定することができる。具体的な例としては、光学蛍光センサーが挙げられる。光学蛍光センサーは技術水準であり、当業者はそれらを較正する方法及び使用する方法を知っている。そのようなセンサーは、酸素に非常に特異的であり、酸素に非常に感受性である。それらは、0.01wt.-ppmまで下がる非常に低い濃度を測定することさえできる。そのような光学蛍光センサーはある程度、耐熱性及び耐圧性であることから、それらはまたインライン測定にも用いることができる。
【0024】
分子状酸素及び活性酸素は、2つの異なる種類の化合物であるだけでなく、別々に測定することもできる。分子状酸素感受性の装置は分子状酸素のみを測定して活性酸素を測定せず、逆もまた同様に、活性酸素は分子状酸素を包含しない。分子状酸素はヨード滴定条件下で非常にゆっくりでしか反応せず、更に、分子状酸素からのいずれの干渉も最低限に抑えるためにヨード滴定を不活性ガス下で行うことは優れた実践であるので、活性酸素のみがヨード滴定で測定される。その有利な結果として、活性酸素及び分子状酸素は、別々に決定及び評価することができる。
【0025】
飽和脂肪族C6-12カルボン酸は、特に大気圧及び周囲(大気)温度においては容易に取り扱うことのできる安定で非感受性の化合物として知られており、したがって大気(空気)下で貯蔵及び運搬されるが、驚くべきことに、それにもかかわらず、そのような処理がいくらかの分解を引き起こし、熱ストレス下で色安定性を損なうこと、又はそれに由来する製品の変色を引き起こすことが見出された。このことはまた、EP20191855.4に記載された方法により得られうるような、非常に低い含有量の分子状酸素及び活性酸素のみを有する非常に純粋な飽和脂肪族C6-12カルボン酸の貯蔵及び運搬にも適用される。
【0026】
次いで、本発明によれば、驚くべきことに、飽和脂肪族C6-12カルボン酸を含有する液体への分子状酸素の侵入を排除する厳密な方策は、そのような方法で取り扱われる飽和脂肪族C6-12カルボン酸が熱ストレスに際してはるかにより色安定性であり、またそれに由来する製品の変色をはるかに引き起こさないように、そのような分解を回避するか又は少なくともかなり低減することが認められた。本発明の1つの効果的な方策は、少なくとも非常に低い含有量の分子状酸素を有する、飽和脂肪族C6-12カルボン酸を含有する液体の上(above)への不活性ガス雰囲気の適用である。本発明の別の効果的な方策は、用いるコンテナの壁を通る分子状酸素の拡散の防止である。このことは、金属製コンテナを用いることで達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
したがって、本発明のコンテナは、内容積が0.05~10000m3の金属製コンテナである。内容積の上述した範囲は、技術的に有用な量に関する。本発明の意味でのコンテナは、ガス相で上を覆われた飽和脂肪族C6-12カルボン酸を含有する液体を貯蔵又は運搬することのできる、あらゆる器(容器)、タンク又はあらゆる他の貯留槽であることができる。
【0028】
金属製とは、コンテナの壁が金属のみからなるか又は複合材料の一部であってもよい金属製の覆い(metallic mantle)を少なくとも含むことを意味する。複合材料は、例えば、被覆金属、例えば塗装した、ワニス塗装を施した、ゴム加工を施した、若しくはエナメル加工を施した金属を有するコンテナ、非金属製インライナー、例えば合成材料を有する金属コンテナ、又は金属製インライナーを有するプラスチックコンテナであることができる。連結ホールは、例えば充填及び放出のためのホール、並びに圧力平衡及びガス相の供給のためのサービスホールのようなものであり、壁としては数えないが、当然また本質的に酸素拡散耐性の材料からなるべきである。壁の全体的な機械的安定性及び意図した使用に応じて、コンテナは、安定なフレーム又はケージにより機械的に支持することができる。更に、コンテナはまた、その立ち上げ、積み重ね又は固定のための手段を有してもよい。
【0029】
金属が飽和脂肪族C6-12カルボン酸と接しない複合材料の場合、腐食性液体と接する材料が腐食性液体に対して化学的に安定であり、非耐食性金属を腐食性液体とのあらゆる接触から耐久的に保護するという条件で、非耐食性金属もまた用いることができる。これらの条件下では、1mm以下、又は0.1mm以下までもの厚みのアルミニウムの薄層でさえ、壁を通る分子状酸素の侵入を防止するのに十分である。金属バリアが、コンテナの必要とされる機械的安定性を提供するのに十分に弾性でない場合、それは例えばアルミニウムの薄層の場合、金属バリアは、機械的に支持される必要がある。そのような機械的な支持は、複合材料の一部としての機械的に安定な壁により、及び/又はフレーム若しくはケージにより、提供することができる。金属バリアが、十分な機械的弾性を可能にする厚みの非耐食性金属、例えば低合金鋼からなる場合、金属バリアは、耐久性の耐食性コーティング、例えばワニス、ゴム若しくはエナメルでコーティングされることにより、又は例えばポリエチレン袋等のような耐食性インライナーを用いることにより、保護することができる。
【0030】
材料は、飽和脂肪族C6-12カルボン酸を含有する液体に接する場合は、腐食性の液体に対して化学的に耐性である必要がある。そのような耐食性の金属は、例えば、ジルコニウム若しくはタンタル、貴金属の合金、例えばチタン/パラジウム、又は合金鋼、例えばステンレス鋼である。ステンレス鋼が好ましい。PREN値が17以上のステンレス鋼が特に好ましい。PRENは「耐孔食指数(pitting resistance equivalent number)」を表し、その化学組成に基づく局所的な孔食に対するステンレス鋼の耐性の予測測定である。一般則として、PREN値が高くなるにつれて、局所的な孔食に対するステンレス鋼の耐性が高くなる。そのような高いPREN値はまた、いくつかのフェライト鋼、例えば1.4113、1.4526又は1.4521によっても得られ、その数字は欧州標準鋼種(European standard steel grades)について言及しているが、オーステナイト鋼及び二相鋼がより好ましく、特にオーステナイト鋼が好ましい。そのような特に好ましいオーステナイト鋼の例は、1.4306、1.4401、1.4436、1.4404、1.4435、1.4432、1.4541及び1.4571である。
【0031】
コンテナの内容積は0.05~10000m3になる。これは、手動で移され、フォークリフトで配置され、又はトラック、鉄道車両、船若しくは飛行機で運搬されうる可動性のコンテナ、及びタンク貯蔵所に固定されたコンテナを含む。固定されたコンテナは、また単に貯蔵タンクと呼ばれることも多いが、典型的にはより大きな大きさであり、通常、20~10000m3の内容積を含む。それらは通常、円筒状又は球状の形状であり、それにより円筒状タンクは、典型的には直立又は水平のいずれかで配置され、ドーム型又は平坦な屋根を有していてよい。可動性のコンテナは、陸上、水上又は空中でのその運搬を可能にする物理的寸法を特徴とする。1000m3以上の内容積のコンテナを有することのできる特定の船タンクは別として、可動性のコンテナは、典型的には、0.05~120m3の内容積を有する。技術的に注目すべき可動性のコンテナの例としては、ドラム、たる、IBCタンクコンテナ、タンクローリー、ISOタンクコンテナ、BASF分類タンクコンテナ及び鉄道タンク車が挙げられる。ドラム及びたるは、通常、0.05~0.25m3の内容積を特徴とする。IBCタンクコンテナ(中間バルクコンテナ)は典型的な内容積が0.5~3m3であり、好ましくは約1m3の液体の取扱い、運搬、及び貯蔵のために設計された再利用可能な多目的の産業等級のコンテナである。それらはフォークリフトで容易に動かすことができる。タンクローリーは、通常、5~45m3の内容積を特徴とし、好ましくは10~35m3である。ISOタンクコンテナはISO標準に基づくものであり、フレームに取り付けられている。それらは、液体の取扱い、運搬、及び貯蔵のために設計されており、典型的な内容積が約15~30m3であり、1つの標準化運搬媒体から別のものへと容易に持ち上げられ、互いの最上部に積み重ねられるという利点を有する。かなり新しい分類の運搬コンテナが、BASF分類タンクコンテナである。それらは、完全に自動化された取扱い及び無人搬送車でのそれらの運搬のために開発されたが、トラック、鉄道車両又は船によるそれらの運搬もまた可能にする。それらの典型的な内容積は53~73.5m3の範囲内である。鉄道タンク車の内容積は、通常、約10~120m3の範囲内である。
【0032】
内容積との用語は、コンテナ内部の自由に利用可能な容積に属する。(例えば機械的又は流体力学的理由で)可能性のある内部品及び(例えば注入口、放出口又は再循環ラインのための)連結パイプは、内容積の一部ではない。
【0033】
本発明のコンテナは、飽和脂肪族C6-12カルボン酸又はその混合物を含有する液体、及び液体の上のガス相を含有し、C6-12は6~12個の炭素原子を表す。
【0034】
飽和脂肪族C6-12カルボン酸は、直線状(直鎖状)であっても分岐状であってもよく、置換されていても非置換であってもよい。置換飽和脂肪族C6-12カルボン酸は、炭素及び水素に加えて1つ以上のヘテロ原子を含有し、その例としてハロゲンが挙げられる。非置換飽和脂肪族C6-12カルボン酸が好ましい。それらの炭素原子数ごとに分けられた好ましい例は、
C6について、ヘキサン酸、2-メチルペンタン酸、3-メチルペンタン酸、4-メチルペンタン酸、2,3-ジメチルブタン酸及び3,3-ジメチルブタン酸、
C7について、ヘプタン酸及び2-メチルヘキサン酸、
C8について、オクタン酸、2-メチルヘプタン酸、2-エチルヘキサン酸、2-エチル-4-メチルペンタン酸及び2-プロピルペンタン酸、
C9について、ノナン酸、7-メチルオクタン酸及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸、
C10について、デカン酸、2-プロピルヘプタン酸及び2-プロピル-4-メチルヘキサン酸、
C11について、ウンデカン酸及び2-メチルデカン酸、並びに
C12について、ドデカン酸及び2-ブチルオクタン酸
である。
【0035】
上述したリストの中では、ヘキサン酸、2-メチルペンタン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、デカン酸、2-プロピルヘプタン酸及びドデカン酸がより好ましい。飽和脂肪族C8-12カルボン酸、その中でもオクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、デカン酸、2-プロピルヘプタン酸及びドデカン酸が特に好ましい。2-エチルヘキサン酸が非常に特に好ましい。
【0036】
飽和脂肪族C6-12カルボン酸を含有する液体はまた、異なる飽和脂肪族C6-12カルボン酸の混合物であることもできる。技術的に関連する混合物の例としては、主として3,5,5-トリメチルヘキサン酸と、他方の異性体の飽和ノナン酸との混合物が挙げられ、これは技術的にはイソノナン酸として製造及び取引きされる。
【0037】
飽和脂肪族C6-12カルボン酸を含有する液体は、液体に基づいて99~100wt.-%という高含有量の飽和脂肪族C6-12カルボン酸を特徴とする。異なる飽和脂肪族C6-12カルボン酸の混合物の場合、上述の範囲は、混合物について言う。好ましくは、飽和脂肪族C6-12カルボン酸の全含有量は99.3wt.-%以上、より好ましくは99.5wt.-%以上、特に好ましくは99.8wt.-%以上、非常に特に好ましくは99.9wt.-%以上である。
【0038】
飽和脂肪族C6-12カルボン酸は、可能性のあるズレ(gap)を満たして100wt.-%とする少量の不純物及び副生成物を含有してもよい。典型的な不純物及び副生成物は、水、より少ない炭素原子の異性体を含む飽和脂肪族C6-12カルボン酸の他の異性体、飽和脂肪族C6-12カルボン酸の対応するアルコール若しくはより短鎖のアルコールとのエステル、アルキル置換ラクトン、又はα,β-不飽和脂肪族C6-12カルボン酸及びそれらの誘導体である。不純物及び副生成物の量及び性質は、通常、飽和脂肪族C6-12カルボン酸の性質、特にそれらが直線状であるか分岐状であるか、それらの製造方法及びそれらの精製手順に依存する。コンテナの貯蔵及び運搬の間に低い分解傾向を保つ努力を支持するために、液体は好ましくは0~100wt.-ppmの活性酸素含有量を有し、より好ましくは50wt.-ppm以下、特に好ましくは10wt.-ppm以下である。液体は、典型的には、1wt.-ppm以上の活性酸素含有量を有する。それに加えて、液体はまたそこに溶解した低い分子状酸素含有量を有することが有利であり、したがって、0~10wt.-ppmの範囲が好ましい。より好ましくは、液体は5wt.-ppm以下、特に好ましくは2wt.-ppm以下の分子状酸素を含有する。
【0039】
飽和脂肪族C6-12カルボン酸の多く、特に分岐状のものの多くは一般的に融点が低いため、それらの多くは周囲温度で既に液体として存在する。しかしながら、いくつかの直線状のものは、いくつかの飽和脂肪族C6-12カルボン酸の融点の以下のリストに見ることができるように、0℃を超えさえする融点を有する。
-70℃ 3,5,5-トリメチルヘキサン酸
-59℃ 2-エチルヘキサン酸
-10℃ ヘプタン酸
-4℃ ヘキサン酸
12~15℃ ノナン酸
17℃ オクタン酸
31℃ デカン酸
44℃ ドデカン酸
【0040】
場所及び季節に応じて20±30℃の範囲となる可能性のある、貯蔵及び運搬の間の予想される温度条件に応じて、コンテナは、必要に応じてトレース加熱により分離又は加熱し、飽和脂肪族C6-12カルボン酸を液体に保つことができる。
【0041】
本発明のコンテナは、充填の程度がコンテナの内容積に基づいてたった1~99%まで変化できるように、非常に広範な範囲の充填レベルを許容する。特に、非常に低い分子状酸素含有量を有する不活性ガス雰囲気の存在、及び壁を通る分子状酸素の拡散を防止する金属製コンテナの使用に関する上述した厳密な方策は、充填の程度におけるこの高度な適応性を可能にする。このような優れた適応性は、飽和脂肪族C6-12カルボン酸がより長い期間をかけて徐々に引き出されるコンテナ、又は飽和脂肪族C6-12カルボン酸が不規則に引き出され、補充される貯蔵タンクにとって、特に有利である。それにもかかわらず、単なる貯蔵又は運搬の場合、通常、より高い充填レベルを適用することが有利である。好ましい実施形態では、液体は、コンテナの内容積の90~99%を占め、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上である。
【0042】
壁を通る分子状酸素の拡散を防止する金属製コンテナの使用に加えて、本発明の他の効果的な方策は、液体の上への不活性ガス相の適用である。不活性という用語は、それぞれの飽和脂肪族C6-12カルボン酸に対して化学的に不活性であることを意味する。不活性ガス相は、窒素(N2)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、水素(H2)、二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)又はそれらの混合物を含有し、0~100vol.-ppmの分子状酸素含有量を特徴とする。好ましくは、不活性ガス相は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、二酸化炭素又はそれらの混合物を含有する。上述した不活性成分に加えて、不活性ガス相はまた、液体の少量の飽和脂肪族C6-12カルボン酸(複数可)であってそれらの蒸気圧に従って蒸発したものを含有する。ガス相におけるそれらの濃度は、飽和脂肪族C6-12カルボン酸の性質及び存在する温度にかなり依存する。しかしながら、最も高い蒸気圧及び50℃の温度の飽和脂肪族C6-12カルボン酸についてさえ、ガス相におけるその濃度は0.4vol.-%のはるかに下である。
【0043】
一般則として、ガス相の分子状酸素の含有量が低くなるにつれて、液体における飽和脂肪族C6-12カルボン酸の分解の防止が良好となる。したがって、不活性ガス相における分子状酸素含有量は、好ましくは50vol.-ppm以下、より好ましくは20vol.-ppm以下、特に好ましくは10vol.-ppm以下、非常に特に好ましくは5vol.-ppm以下、特に2vol.-ppm以下である。少量の分子状酸素に加えて、不活性ガス相はまた、少量のそれぞれのガスの典型的な不純物、例えば水蒸気、低級炭化水素、又は窒素の場合は希ガス、及び二酸化炭素の場合はまた微量の一酸化炭素を含有してもよい。言及される不活性ガスの適用される純度に応じて、不活性ガス相は、液体から蒸発した飽和脂肪族C6-12カルボン酸の蒸気を差し引いて、且つ残ったガス相を100vol.-%に設定することに基づいて計算される、好ましくは99.5vol.-%以上、より好ましくは99.8vol.-%以上、特に好ましくは99.9vol.-%以上、非常に特に好ましくは99.99vol.-%以上のこれらのガスを含有する。複数の「酸(acids)」はまた、液体がただ1つの飽和脂肪族C6-12カルボン酸を含有する場合の単数の「酸(acid)」を包含する。この差し引くことにより、飽和脂肪族C6-12カルボン酸の性質及びコンテナの温度から独立した、不活性ガスの純度についてのパーセンテージ値の提供を可能にする。
【0044】
技術標準不活性ガスとしての窒素の優れた入手可能性により、窒素が好ましい。特に好ましい実施形態では、不活性ガス相は、液体から蒸発した飽和脂肪族C6-12カルボン酸の蒸気を差し引いて、且つ残ったガス相を100vol.-%に設定することに基づいて計算される、99.9vol.-%以上の窒素を含有する。
【0045】
飽和脂肪族C6-12カルボン酸を含有する液体の上の不活性ガス相の本発明の提供についての可能性のある別法は、ガス相が存在しないことである。液体は次いで、金属含有壁により完全に取り囲まれるであろうことから、少なくとも1つの壁が、熱膨張及び熱収縮を補償して充填及び放出を可能にするために、適応性(flexible)又は可動性である必要がある。そのような能力は、充填している液体上に上部の覆いが浮かぶ、いわゆる浮き屋根タンクにより提供される。上部の覆いを天候から守るために、浮き屋根タンクは、上端に固定された頂部を更に有することができる。そのようなタンクは、内部浮き屋根タンクと呼ばれ、場合によっては浮き屋根と固定された頂部の間の内部空間に不活性ガス雰囲気を含有することができる。
【0046】
本発明のコンテナでは、典型的には飽和脂肪族C6-12カルボン酸を貯蔵及び運搬することが意図されることから、典型的には、場所及び季節に応じて、20±30℃、又は-30~+50℃までもの温度で取り扱われる。既に上述したように、コンテナは、必要に応じて、即ち、それぞれの液体が予想される周囲温度より下の融点を有する場合、熱的に分離又は加熱されてよい。液体の温度は、好ましくは-20℃以上、より好ましくは-10℃以上、特に好ましくは0℃以上に保持され、好ましくは40℃以下、より好ましくは35℃以下に保持される。
【0047】
圧力に関して、不活性ガス相は0.09~0.6MPa absの範囲内に保持することができ、これは非常に小さい過小圧力(underpressure)から低い過剰圧力(excess pressure)にまで関するものである。蓋又は封がしっかり閉まっていない場合には非常に小さい過小圧力であっても周囲の空気のいくらかの侵入を引き起こすことがあることから、周囲の大気圧と実質的に同等又はわずかに上の圧力、即ち0.1MPa abs以上、好ましくは0.102MPa abs以上を少なくともかけることが好ましい。一方、過剰圧力が高くなるにつれて、充填がより複雑となり、望まない事例のリスクがより高くなる。したがって、0.2MPa abs以下、より好ましくは0.15MPa abs以下、特に好ましくは0.12MPa abs以下、非常に特に好ましくは0.11MPa abs以下の全圧となる低い過剰圧力をかけるだけにすることが好ましい。
【0048】
本発明の更なる態様は、飽和脂肪族C6-12カルボン酸又はその混合物を含有する液体の貯蔵及び運搬の方法であって、
液体が99~100wt.-%の飽和脂肪族C6-12カルボン酸含有量を有する一方、液体を内容積が0.05~10000m3のコンテナに充填することにより、液体がコンテナの内容積の1~99%を占める量になり、ここで、液体は、1時間を超えてそこに保持され、さらに
a)コンテナは金属製コンテナであること、及び
b)コンテナ内のガス相は、0~100vol.-ppmの分子状酸素含有量を有する、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、水素、二酸化炭素、一酸化炭素又はそれらの混合物を含有する不活性ガスで不活性化されている、
方法が驚くべきことに見出されたことである。
【0049】
コンテナの記載に関連して上記で既に使用及び説明された、用語、表現、リスト及び値の説明及び好ましいものはまた、方法の用語、表現、リスト及び値にも相応に適用される。相違する場合は、方法に関して明確に開示された説明及び好ましいものを方法に対して優先すべきである。
【0050】
本発明の方法では、飽和脂肪族C6-12カルボン酸又はその混合物を含有する液体が、金属製コンテナ中にコンテナの内容積の1~99%を占める量で充填される。コンテナの記載に関連して既に上述したように、コンテナは、内容積が0.05~10000m3であり、壁が金属のみからなるか又は複合材料の一部であってもよい金属製の覆いを少なくとも含む、可動性のコンテナ又は固定されたコンテナであることができる。液体をまず不活性化されていないコンテナ、例えば分子状酸素含有量が100vol.-ppmを超えるガス相を含有するコンテナ中に充填することは可能であろうが、コンテナのガス相が、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、水素、二酸化炭素、一酸化炭素又はそれらの混合物を含有し、分子状酸素含有量が0~100vol.-ppm、好ましくは50vol.-ppm以下、より好ましくは20vol.-ppm以下、特に好ましくは10vol.-ppm以下、非常に特に好ましくは5vol.-ppm以下、特に2vol.-ppm以下である不活性ガスで既に不活性化されていると有利である。このことはまた、液体に直接接する充填に必要な設備、例えばパイプ、バルブ又は付属品にも適用される。コンテナが充填手順の間に、意図した値を超える分子状酸素含有量のガス相を含有する場合、ガス相は、不活性ガスで少なくともその後に交換されるか又は少なくとも変更されて、意図した不活性ガス品質へと調整される。
【0051】
コンテナの記載に関連して既に述べたように、液体の上のガス貯留槽がより小さくなるため、より高い充填レベルが有利である。好ましい方法では、液体はコンテナの内容積の90~99%を占め、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上を占める。
【0052】
液体で充填されるコンテナは、いくらかの液体を既に含有していてもよく、これは例えばタンク貯蔵所の貯蔵タンクによくあることであり、又は空若しくはほとんど空であってもよく、これは例えば充填位置と放出位置の間を行き来する運搬コンテナにありふれたことでありうる。
【0053】
充填後に連結部に蓋をかぶせる必要がある場合、これは可動性のコンテナのその運搬前の場合であるが、液体の上の不活性ガス相が意図した品質を保持することが保証される必要がある。
【0054】
次いで、充填されたコンテナは、貯蔵のため保持するか又は運搬することができる。貯蔵とは、同じ場所でのコンテナの保持を意味し、一方で運搬とは、コンテナの別の場所への移動を意味する。完全を期すために、可動性のコンテナもまた貯蔵に用いることができ、これは可動性のコンテナが例えばその運搬の前若しくは後に、又は通常、固定された場所に保持される場合であることが言及される。運搬は、陸上、水上又は空中で行うことができる。
【0055】
本発明の方法は、好ましくは、内容積が0.05~120m3の可動性のコンテナを用いることにより行われる。そのような可動性のコンテナは、飽和脂肪族C6-12カルボン酸を貯蔵及び運搬するための高い適応性を可能にする。その大きさの技術的に注目すべき可動性のコンテナは、例えば、ドラム、たる、IBCタンクコンテナ、トラックタンク、ISOタンクコンテナ、BASF分類タンクコンテナ又は鉄道タンク車である。
【0056】
コンテナ内の不活性ガス相は、通常、場所及び季節に応じて、0.09~0.6MPa absの範囲内、好ましくは0.102MPa abs以上、好ましくは0.2MPa abs以下の圧力に保持され、典型的には20±30℃、又は-30~+50℃での温度で取り扱われ、一方でコンテナの記載に関連して既に述べた好ましいものが適宜適用される。コンテナは、必要に応じて熱的に分離又は加熱されてよい。
【0057】
ひとたび飽和脂肪族C6-12カルボン酸を含有する液体が充填されると、液体は1時間を超えて、好ましくは1日以上、より好ましくは1週間以上、特に好ましくは4週間以上、不活性条件下に保持される。時間の上限の制限はない。液体が本発明の条件下で1年以上貯蔵される場合であっても、その分解は、液体が酸素透過性のコンテナ内で、及び/又はかなりの含有量の分子状酸素を有するガス相下で貯蔵された場合よりも明らかに低いであろう。
【0058】
それにもかかわらず、酸素不透過性の金属製コンテナの使用及び液体の上の不活性ガス相の供給に加えて、飽和脂肪族C6-12カルボン酸の分解を防止するために、液体が低含有量のそこに溶解した分子状酸素を既に有することが更に有利であり、ここでは、0~10wt.-ppmの範囲の分子状酸素が好ましく、5wt.-ppm以下がより好ましく、2wt.-ppm以下が特に好ましい。
【0059】
更に、コンテナの貯蔵及び運搬の間に低い分解傾向を保つ努力を支持するために、液体は好ましくは0~100wt.-ppmの活性酸素含有量を有し、より好ましくは50wt.-ppm以下、特に好ましくは10wt.-ppm以下であり、好ましくは1wt.-ppm以上である。
【0060】
コンテナの充填に類似して、飽和脂肪族C6-12カルボン酸を含有する液体の放出もまた、当該液体と酸素含有量が100vol.-ppmを超える酸素含有ガス相との直接接触を避けることにより有利に行われる。したがって、当該液体に直接接する放出に必要な設備、例えばパイプ、バルブ又は付属品は、好ましくは不活性化されているべきである。
【0061】
更に、コンテナの記載に関連して既に述べたように、技術標準不活性ガスとしてのその優れた入手可能性のため、窒素が不活性ガスとして好ましい。特に好ましい方法では、不活性ガス相は99.9vol.-%以上の窒素を含有する。
【0062】
飽和脂肪族C6-12カルボン酸としては、ヘキサン酸、2-メチルペンタン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、デカン酸、2-プロピルヘプタン酸及びドデカン酸がより好ましい。飽和脂肪族C8-12カルボン酸、その中でもオクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、デカン酸、2-プロピルヘプタン酸及びドデカン酸が特に好ましい。2-エチルヘキサン酸が非常に特に好ましい。
【0063】
本発明の更なる態様は、内容積が0.05~10000m3の金属製コンテナ内に分子状酸素含有量が0~100vol.-ppmの不活性化ガス相を供給するための不活性化ガスとしての窒素の使用であって、飽和脂肪族C6-12カルボン酸含有量が99~100wt.-%である飽和脂肪族C6-12カルボン酸又はその混合物を含有する液体が、コンテナの内容積の1~99%を占め、1時間を超えて貯蔵又は運搬される、使用である。
【0064】
一般的な実施形態において、2-エチルヘキサン酸は、5vol.-ppm以下の分子状酸素含有量を有する窒素で予め不活性化された1m3の金属製IBCタンクコンテナ内に、内容積の98%を占める量で充填される。コンテナは0.1~0.11MPa absの窒素ガス圧力でしっかり閉められ、次いで、貯蔵及び/又は運搬される。
【0065】
別の一般的な実施形態において、3,5,5-トリメチルヘキサン酸と他の飽和脂肪族分岐状C9カルボン酸の混合物は、10vol.-ppm以下の分子状酸素含有量を有する窒素で予め不活性化された26m3のISOタンクコンテナ内に、内容積の95%を占める量で充填される。コンテナは0.1~0.15MPa absの窒素ガス圧力でしっかり閉められ、次いで、トラック、鉄道車両及び/又はコンテナ船で運搬される。
【0066】
更なる一般的な実施形態は、2-エチルヘキサン酸のタンク貯蔵所における貯蔵に関する。2-エチルヘキサン酸は製造工場で連続的に製造及び精製され、タンク貯蔵所の固定された2000m3のタンクに、完全に充填されたパイプラインを通って連続的にポンプで送り込まれる。タンクは、99.9vol.-%以上の窒素含有量及び5wt.-ppm以下の分子状酸素含有量の不活性化ガス相を含有する。貯蔵された2-エチルヘキサン酸の使用及び要求に応じて、それは連続的に又は不規則に放出される。したがって、充填レベルは、2-エチルヘキサン酸の供給量及び放出量に応じて変化し、1~99%の範囲内になりうる。
【0067】
本発明のコンテナ及び方法は、飽和脂肪族C6-12カルボン酸が長い間、例えば数か月間、貯蔵又は運搬された場合であっても、貯蔵若しくは運搬された飽和脂肪族C6-12カルボン酸に由来する製品の変色を防止するか若しくは少なくともかなり低減し、及び/又は飽和脂肪族C6-12カルボン酸が熱ストレス下でそれらの色安定性を損なわないか若しくはわずかに損なうのみである方法での、飽和脂肪族C6-12カルボン酸の貯蔵及び運搬を可能にする。改善された貯蔵及び運搬は、飽和脂肪族C6-12カルボン酸を有害化合物で汚染することなく、入手可能な標準のコンテナ内で容易に行うことができる。
【実施例
【0068】
ヨード滴定による活性酸素の測定
2-エチルヘキサン酸中の活性酸素の含有量をヨード滴定により測定した。以下に測定をどのように実施したかについての一般的な説明を示す。
【0069】
およそ5gの試料を最も近い0.1mgまで秤量し、反応バイアル中に入れ、アルゴンでフラッシュし、40mlの1:1酢酸/クロロホルム混合物を添加して試料を溶解する。反応バイアルに冷却器を備え付け、それを、既に80℃に予熱された撹拌加熱ブロック中に入れる。弱いアルゴン流を冷却器に通過させ、空気の侵入を防ぐ。温度が平衡に達した後、5.0mLの飽和ヨウ化カリウム溶液(100mLの脱イオン水中に溶解したおよそ60.0gのヨウ化カリウム)を、冷却器を通して添加し、混合物を還流下で10分間沸騰させる。次のステップでは、40.0mLの脱イオン水を添加し、試料溶液を、終点測定器として白金電極を使用しながら0.01Mチオスルフェート溶液で滴定する。
【0070】
分子状酸素の測定
2-エチルヘキサン酸中の分子状酸素の含有量を、カルボン酸中の分子状酸素を測定するのに適した高精度でO2感受性の高い光学蛍光センサーにより測定した。例では、WTWのFDO(登録商標) 925との名称の光学センサーを用いた。測定データを、Hersch電池としても知られるガルバニ電池式酸素分析計を用いたさらなる測定により照合した。
【0071】
APHA色数の測定
試料のAPHA色数を、蒸留水に対して予め較正した比色計により測定した。例では、HachのLico(登録商標) 620との名称の比色計を10mLキュベットとともに用いた。
【0072】
エステル化試験の説明
4リットルの撹拌タンク反応器を、窒素下(分子状酸素含有量100ppm以下)で520g(5mol)のネオペンチルグリコール及び1469g(10.2mol)の2-エチルヘキサン酸、並びに触媒としての0.75gの粉末状酸化スズで充填した。次いで、混合物を周囲圧力下で180~190℃に加熱して、ネオペンチルグリコールと2-エチルヘキサン酸の間のジエステルを形成し、形成した水を留去する。もはや水が形成されないときに反応を終える。次いで、混合物を約60℃まで冷却し、規定量の活性炭を添加し、撹拌下で30分間保持する。次いで、懸濁液をろ過し、APHA色数を決定した。
【0073】
例1(比較)
1時間当たり約3.75トンの2-エチルヘキサン酸の製造能力を有する技術工場において、30~60℃の温度及び0.25MPa absの圧力で、反応混合物中0.4wt.-%のカリウムイオン存在下、2-エチルヘキサナールを純粋な酸素で連続的に酸化することにより、2-エチルヘキサン酸を製造した。技術工場は順次連結した3つの反応器を含んでおり、酸素供給の添加をこれらの3つの反応器に分けた。2-エチルヘキサナール及びカリウム塩を第1の反応器に添加した。得られた粗2-エチルヘキサン酸を、溶解した分子状酸素の含有量が2wt.-ppmのみになるまで窒素流(分子状酸素含有量100ppm以下)でストリッピングし、その後、蒸留カラムで蒸留し、精製2-エチルヘキサン酸を側流として引き出した。精製2-エチルヘキサン酸は、ガスクロマトグラフィーで分析したところ99.85wt.-%の2-エチルヘキサン酸含有量を有し、2wt.-ppmの活性酸素、1wt.-ppm未満の溶解分子状酸素を含有しており、APHA色数0を示した。
【0074】
次いで、精製液体2-エチルヘキサン酸を、不活性化されていない、大気を含有する1m3のポリエチレンIBCコンテナ内に、内容積の約95%を占める量で充填した。次いで、IBCコンテナをしっかり閉め、0.12MPa absの圧力及び0~40℃の範囲の温度で約3週間貯蔵及び運搬した。
【0075】
貯蔵及び運搬の後、2-エチルヘキサン酸の試料を不活性窒素雰囲気下に取り出し、エステル化試験に記載されたようにエステル化して、10未満のAPHA色数を得るために必要な活性炭の量を決定した。活性炭の必要量は、適用された抽出物(ネオペンチルグリコール+2-エチルヘキサン酸)の1kg当たり8.4gであった。
【0076】
例2(本発明に従う)
例1に記載のものと同じ技術工場において同じ条件下で、2-エチルヘキサン酸を製造した。ガスクロマトグラフィーで分析したところ99.85wt.-%の2-エチルヘキサン酸含有量を有し、2wt.-ppmの活性酸素、1wt.-ppm未満の溶解分子状酸素を含有しており、APHA色数0を示した。
【0077】
次いで、精製液体2-エチルヘキサン酸を、1m3の窒素で不活性化された(分子状酸素含有量100vol.-ppm以下)ステンレス鋼IBCコンテナ内に、内容積の約95%を占める量で充填した。次いで、IBCコンテナをしっかり閉め、0.12MPa absの圧力及び0~40℃の範囲の温度で約3週間貯蔵及び運搬した。
【0078】
貯蔵及び運搬の後、2-エチルヘキサン酸の試料を不活性窒素雰囲気下に取り出し、エステル化試験に記載されたようにエステル化して、10未満のAPHA色数を得るために必要な活性炭の量を決定した。活性炭の必要量は、適用された抽出物(ネオペンチルグリコール+2-エチルヘキサン酸)の1kg当たりわずか1.4gであった。
【0079】
例1及び例2は、精製2-エチルヘキサン酸の製造及び性質、貯蔵及び運搬の期間、かけた圧力及び温度、並びにエステル化試験の実施が同一であり、貯蔵及び運搬に用いたコンテナの材料、並びに2-エチルヘキサン酸の上のガス雰囲気の性質が異なるのみである。例1では2-エチルヘキサン酸を大気(0.12MPa abs)雰囲気下で典型的なポリエチレンコンテナ内で貯蔵及び運搬し、一方、例2では2-エチルヘキサン酸を窒素不活性ガス(0.12MPa abs)雰囲気下で酸素不透過性のステンレス鋼コンテナ内で貯蔵及び運搬した。これら2つの相違により、結果として、エステル化試験において形成されたジエステルを10未満のAPHA色数まで脱色するのに必要な活性炭の量が、例1における適用された抽出物の1kg当たり8.4gと例2における1.4gの間の6分の1という非常に大きな減少となる。
【0080】
例2で適用されるような本発明の方策は、貯蔵及び運搬の間の2-エチルヘキサン酸の酸素に誘導される分解を防止するか又は少なくともかなり低減し、したがって、それに由来する製品の変色を防止するか又は少なくともかなり低減する。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容積が0.05~10000m3のコンテナであって、
a)非置換の飽和脂肪族C6-12カルボン酸又はその混合物を含有する液体、ここで、該液体は、99~100wt.-%の飽和脂肪族C6-12カルボン酸含有量を有し、コンテナの内容積の1~99%を占める、及び
b)液体の上のガス相
を含有し、ここで
c)コンテナは、金属製コンテナであり、且つ
d)液体の上のガス相は、0~100vol.-ppmの分子状酸素含有量を有する、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、水素、二酸化炭素、一酸化炭素又はそれらの混合物を含有する不活性ガス相である、
コンテナ。
【請求項2】
ステンレス鋼コンテナである、請求項1に記載のコンテナ。
【請求項3】
内容積が0.05~120m3の可動性のコンテナである、請求項1又は2に記載のコンテナ。
【請求項4】
非置換の飽和脂肪族C6-12カルボン酸が、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、デカン酸、2-プロピルヘプタン酸若しくはドデカン酸、又はそれらの混合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載のコンテナ。
【請求項5】
非置換の飽和脂肪族C6-12カルボン酸が2-エチルヘキサン酸である、請求項4に記載のコンテナ。
【請求項6】
液体が0~100wt.-ppmの活性酸素含有量を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のコンテナ。
【請求項7】
液体がコンテナの内容積の90~99%を占める、請求項1から6のいずれか一項に記載のコンテナ。
【請求項8】
不活性ガス相が10vol.-ppm以下の分子状酸素含有量を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のコンテナ。
【請求項9】
不活性ガス相が、液体から蒸発した飽和脂肪族C6-12カルボン酸の蒸気を差し引いて、且つ残ったガス相を100vol.-%に設定することに基づいて計算される、99.9vol.-%以上の窒素を含有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のコンテナ。
【請求項10】
非置換の飽和脂肪族C6-12カルボン酸又はその混合物を含有する液体の貯蔵及び運搬の方法であって、液体が99~100wt.-%の非置換の飽和脂肪族C6-12カルボン酸含有量を有する一方で、液体を内容積が0.05~10000m3であるコンテナに充填することにより、液体がコンテナの内容積の1~99%を占める量にし、ここで、液体は1時間を超えてそこに保持され、さらに、
a)コンテナは金属製コンテナであること、及び
b)コンテナ内のガス相は、0~100vol.-ppmの分子状酸素含有量を有する、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、水素、二酸化炭素、一酸化炭素又はそれらの混合物を含有する不活性ガスで不活性化されることを特徴とする、方法。
【請求項11】
コンテナが、内容積が0.05~120m3である可動性のコンテナである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
液体が1週間以上そこに保持される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
液体が0~100wt.-ppmの活性酸素含有量を有する、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
不活性ガス相が99.9vol.-%以上の窒素を含有する、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
非置換の飽和脂肪族C6-12カルボン酸が2-エチルヘキサン酸である、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】