(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ケイ素及び酸素を含有する誘電体膜の誘電体への選択的堆積
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20231124BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20231124BHJP
C23C 16/04 20060101ALI20231124BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/318 C
C23C16/04
C23C16/455
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528699
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 US2021059412
(87)【国際公開番号】W WO2022104226
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(74)【代理人】
【識別番号】100210697
【氏名又は名称】日浅 里美
(72)【発明者】
【氏名】ラビンドラ カンジョリア
(72)【発明者】
【氏名】クオ リウ
(72)【発明者】
【氏名】マーク ポティエン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ ウッドラフ
(72)【発明者】
【氏名】ブーシャン ゾープ
(72)【発明者】
【氏名】シンチエン レイ
【テーマコード(参考)】
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA06
4K030AA11
4K030AA14
4K030BA35
4K030BA40
4K030BA42
4K030BA44
4K030BB14
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4K030JA10
4K030LA02
4K030LA15
5F058BA20
5F058BB01
5F058BB02
5F058BB05
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5F058BH03
5F058BH16
5F058BH17
5F058BH20
5F058BJ04
(57)【要約】
【課題】酸化ケイ素又は炭素ドープ酸化ケイ素から選択されるケイ素及び酸素を含有する誘電体膜を、誘電体表面に対して豊富に、金属表面に対してより少なく選択的に堆積させる方法の提供。
【解決手段】少なくとも3つのイソシアナト配位子を有するケイ素前駆体を用いて、酸化ケイ素又は炭素ドープ酸化ケイ素から選択されるケイ素及び酸素を含有する誘電体膜を、誘電体表面に対して豊富に、金属表面に対してより少なく選択的に堆積させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素及び酸素を含有する膜を、基材上の表面特徴に選択的に堆積させる、熱原子層堆積方法であって、
a)誘電体表面及び金属表面の両方を有する少なくとも1つの基材を反応器中に提供すること、
b)前記反応器を雰囲気温度~約350℃の範囲の少なくとも1つの温度に加熱し、任意選択的に、前記反応器を100トール以下の圧力で維持すること、
c)前記反応器に有機チオール化合物からなる群から選択される少なくとも1種の自己組織化単層(SAM)揮発性前駆体を導入して、前記誘電体表面に対するよりも前記金属表面に対して豊富に固定すること、
d)不活性ガスを用いて、前記反応器をパージすること、
e)前記反応器に、テトライソシアナトシラン(TICS)、トリイソシアナトシラン、及びトリイソシアナトメチルシランからなる群から選択されるケイ素化合物と、任意選択的に触媒と、を導入して、前記金属表面に対するよりも前記誘電体表面に対して豊富にケイ素化合物を固定すること;
f)不活性ガスを用いて、前記反応器をパージすること、
g)酸素源と、任意選択的に触媒と、を前記反応器に提供して、前記誘電体表面にケイ素及び酸素を含有する誘電体膜を形成すること、ここで、前記触媒はルイス塩基を含み;及び
h)不活性ガスを用いて、前記反応器をパージすること
を含む、方法。
【請求項2】
前記誘電体表面が、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭素ドープ酸窒化物、窒化ケイ素、及び金属酸化物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属表面が、コバルト、アルミニウム、銅、タンタル、ルテニウム、マンガン、モリブデン、タングステン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有機チオール化合物が、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、1-ドデカンチオール、1-ドデカンチオール、1-ノナンチオール、1-デカンチオール、1-オクタンチオール、1-ヘプタンチオール、1-ヘキサンチオール、1-ペンタンチオール、パーフルオロデカンチオール、ジ-tert-ブチルジスルフィド、ジ-ヘプタンジスルフィド、2-プロペン-1-チオール、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-チオール、4-メチル-6-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-チオール、パラ-キシレン-α-チオール、4-トリフルオロメチルベンジルメルカプタン、4-(トリフルオロメトキシ)ベンジルメルカプタン、4-フルオロベンジルメルカプタン、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、2-(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、4-トリフルオロメチル-2,3,5,6-テトラフルオロチオフェノール、3,5-ジフルオロベンジルメルカプタン、4-トリフルオロメチル-2,3,5,6-テトラフルオロチオフェノール、及びチオフェノールからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸素源が水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒が、ステップg)において前記反応器に提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n‐プロピルアミン、トリ-イソ-プロピルアミン、トリ-n‐ブチルアミン、フェニルジメチルアミン、トリ-イソ-ブチルアミン、ピリジン、及びピペラジンからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記酸素源及び前記触媒が、ステップg)において前記反応器に提供される前に混合される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ケイ素及び酸素を含有する膜が、酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、炭素ドープ酸化ケイ素膜、及び炭素ドープ酸窒化ケイ素膜からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記金属酸化物が、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、ケイ素ドープ酸化ジルコニウム、及びケイ素ドープ酸化ハフニウムからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本件は、2020年11月16日に出願された米国仮出願第63/114,165号への優先権を請求する。
【0002】
発明の技術分野
本開示に記載されるのは、電子デバイスの製造のための組成物及び方法である。より具体的には、本開示に記載されるのは、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、又は炭素ドープ酸窒化ケイ素などのケイ素及び酸素を含有する膜を、選択的に、金属又は金属水素化物ではなく誘電体に堆積させるための化合物、並びにこれを含む組成物及び方法であり、重要なことには、金属又は金属水素化物の層の酸化が回避され/最小限にされる。
【発明の概要】
【0003】
発明の背景
半導体産業での一定の用途に関して、酸化ケイ素又は炭素ドープ酸化ケイ素などのケイ素及び酸素を含有する膜を堆積させるための、非ハロゲン化前駆体及び穏やかな酸化剤を用いる組成物及び方法を提供することが当分野で必要とされている。
【0004】
米国特許第7,084,076号及び第6,992,019号は、原子層堆積(ALD)を用いる二酸化ケイ素膜の堆積方法を記載しており、そこでは、ハロゲン置換又はNCO置換されたシロキサンが、Si源として用いられている。
【0005】
米国公開番号第2013/022496号は、ALDによって半導体基材にSi-C結合を有する誘電体膜を形成する方法を教示し、この方法は、(i)基材の表面に前駆体を吸着させること;(ii)吸着された前駆体及び反応性ガスを表面で反応させること;及び(iii)ステップ(i)及び(ii)を繰り返して、基材上に少なくともSi-C結合を有する誘電体膜を形成させることを含む。
【0006】
米国公開番号第2014/302688号は、パターン化基材に誘電体層を形成する方法を記載しており、この方法は、化学気相堆積チャンバ内のプラズマフリー基材処理領域において、ケイ素及び炭素を含有する前駆体と、ラジカル酸素前駆体とを組み合わせることを含むことができる。ケイ素及び炭素を含有する前駆体及びラジカル酸素前駆体は反応して、パターン化基材に流動性のケイ素-炭素-酸素層を堆積させる。
【0007】
米国公開番号第2014/302690号は、基材に低-k誘電体材料を形成する方法を記載している。方法は、励起していない前駆体を遠隔プラズマ領域へ流すことによってラジカル前駆体を製造するステップと、ラジカル前駆体を気相ケイ素前駆体と反応させて、基材に流動性膜を堆積させるステップと、を含むことができる。気相ケイ素前駆体は、少なくとも1種のケイ素及び酸素を含有する化合物と、少なくとも1種のケイ素及び炭素のリンカーとを含んでよい。流動性膜を硬化させて、低-k誘電体材料を形成することができる。
【0008】
米国公開番号第2014/051264号は、基材に初期流動性誘電体膜を堆積させる方法を記載している。この方法は、ケイ素含有前駆体を、基材を含有する堆積チャンバに導入することを含む。この方法は、堆積チャンバの外側に配置された遠隔プラズマシステムにより、ラジカル窒素又は酸素前駆体などの少なくとも1種の励起した前駆体を生成することをさらに含む。さらに、励起した前駆体は堆積チャンバに導入され、それは、反応ゾーンにおいてケイ素含有前駆体と反応し、基材に初期流動性膜が堆積する。流動性膜を、例えばスチーム環境において処理することにより、酸化ケイ素膜を形成することができる。
【0009】
WO11043139A1は、ケイ素含有膜の形成のための、トリイソシアネートシラン(HSi(NCO)3)を含有する原材料を記載している。
【0010】
WO14134476A1は、SiCN及びSiCONを含む膜の堆積方法を記載している。一定の方法は、第一及び第二の前駆体に基材表面を暴露することを含み、第一の前駆体は、式(XyH3-ySi)zCH4-z、(XyH3-ySi)(CH2)(SiXpH2-p)(CH2)(SiXyH3-y)、又は(XyH3-ySi)(CH2)n(SiXyH3-y)(式中、Xはハロゲンであり、yは、1~3の値を有し、zは、1~3の値を有し、pは、0~2の値を有し、nは、2~5の値を有する。)を有し、第二の前駆体は、還元性アミンを含む。一定の方法は、酸素源への基材表面の曝露によりSiCONを含む膜を提供することをさらに含む。
【0011】
「Quasi-monolayer deposition of silicon dioxide」というタイトルの参考文献(Gasser, W, Z.ら、Thin Solid Films, 1994, 250, 213)は、SiO2膜を開示し、この膜は、新しいケイ素源ガス(すなわち、テトラ-イソ-シアネート-シラン(Si(NCO)4)からの層により堆積した層であった。
【0012】
「Atomic-layer chemical-vapor-deposition of silicon dioxide films with an extremely low hydrogen content」というタイトルの参考文献(Yamaguchi, K.ら、Applied Surface Science, 1998, 130, 202)は、Si(NCO)4及びN(C2H5)3を用いた、非常に低いH含有量を有するSiO2の原子層堆積を開示する。
【0013】
「Catalyzed Atomic Layer Deposition of Silicon Oxide at Ultra-low Temperature Using Alkylamine」というタイトルの参考文献(Mayangsari, T.ら)は、Si2Cl6、H2O、及び様々なアルキルアミンを用いた、酸化ケイ素の触媒原子層堆積(ALD)を報告した。
【0014】
当分野では、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、及び炭素ドープ酸窒化ケイ素などのケイ素誘電体を、プラズマを含有するオゾン又は酸素などの強い酸化剤なしの熱プロセスを用いて、半導体製造プロセスにおいて、金属表面に対して誘電体表面の上に選択的に堆積させる方法を提供する必要がある。
【0015】
発明の概要
本発明は、1つの実施態様によれば、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、炭素ドープ酸窒化ケイ素の膜を、基材上の表面特徴に選択的に堆積させる、熱原子層堆積方法を含み、この方法は、以下を含む:
a)誘電体表面及び金属表面の両方を有する少なくとも1つの基材を反応器中に提供すること、
b)反応器を雰囲気温度~約350℃の範囲の少なくとも1つの温度に加熱し、任意選択的に、反応器を100トール以下の圧力で維持すること、
c)反応器に有機チオール化合物からなる群から選択される少なくとも1種の自己組織化単層(SAM)揮発性前駆体を導入して、誘電体表面に対するよりも金属表面に対して豊富に固定すること、
d)不活性ガスを用いて、反応器から未反応の前駆体をパージすること、
e)反応器に、テトライソシアナトシラン(TICS)、トリイソシアナトシラン、及びトリイソシアナトメチルシランからなる群から選択されるケイ素化合物と、任意選択的に触媒と、を導入して、金属表面に対するよりも誘電体表面に対して豊富にケイ素化合物を堆積させること;
f)不活性ガスを用いて、反応器から未反応のケイ素化合物をパージすること、
g)酸素源と、任意選択的に触媒と、を反応器に提供して、誘電体表面にケイ素及び酸素を含有する膜を形成すること、ここで、触媒はルイス塩基を含み;及び
h)反応器をパージガスでパージすること。
【0016】
好ましくは、ルイス塩基は、ピリジン、ピペラジン、アンモニア、又は第一級アミンH2NR1、第二級アミンHNR1R2、第三級アミンR1NR2R3(式中、R1~3の各々は、C1~C10アルキルから独立して選択される。)等の他の有機アミンなどである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1は、テトライソシアナトシラン、水、及び触媒としてトリメチルアミンを用いるサイクルの数に対する、ケイ素及び酸素を含有する誘電体膜の厚さを示し、これは、直線的な成長挙動を示している。
【
図2】
図2は、SAMあり及びなしで、テトライソシアナトシラン、水、及び触媒としてのトリメチルアミンを用いる、銅上のケイ素及び酸素を含有する誘電体膜の厚さを示し、自然酸化膜上のSiO
2厚さが約120未満である場合、SAMがCu上のSiO
2成長をブロックする明確な選択性と、約120Å以上では、選択性が失われることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本開示に記載されるのは、熱原子層堆積(ALD)、又はALD様プロセス(限定されないが、サイクリック化学気相堆積プロセス(CCVD)など)において、テトライソシアナトシラン(TICS)、トリイソシアナトシラン、及びトリイソシアナトメチルシランからなる群から選択されるケイ素前駆体を用いて、金属表面にではなく、金属表面に対してシリコン又は金属誘電体表面に選択的に堆積させることに関する組成物及びプロセスである。
本発明に係るケイ素化合物(1種又は複数種)とケイ素前駆体化合物を含む組成物とは、好ましくは、ハライドを実質的に含まない。本開示で用いられる「実質的に含まない」という用語は、ハロゲン化物イオン(又はハライド)、例えば、塩化物(すなわち、HClなどの塩化物含有種、又は少なくとも1つのSi-Cl結合を有するケイ素化合物)、及びフッ化物、臭化物及びヨウ化物などのハロゲン化物イオンに関する場合、イオンクロマトグラフィー(IC)又は誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)による測定で5ppm(質量)未満、好ましくはIC又はICP-MSによる測定で3ppm未満、より好ましくはIC又はICP-MSによる測定で1ppm未満、最も好ましくはIC又はICP-MSによる測定で0ppmを意味する。ケイ素化合物(1種又は複数種)は、好ましくは、Li+(Li)、Na+(Na)、K+(K)、Mg2+(Mg)、Ca2+(Ca)、Al3+(Al)、Fe2+(Fe)、Fe3+(Fe)、Ni2+(Fe)、Cr3+(Cr)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、又は亜鉛(Zn)などの金属又は金属イオンを実質的に含まない。本開示で用いられる「実質的に含まない」という用語は、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Cr、Ti、V、Mn、Co、Ni、Cu、又はZnに関する場合、ICP-MSによる測定で5ppm(質量)以下、好ましくは3ppm未満、より好ましくは1ppm以下、最も好ましくは0.1ppm以下を意味する。加えて、式Iを有するケイ素化合物は、ケイ素及び酸素を含有する膜を堆積させる前駆体として用いられる場合、GCによる測定で、好ましくは98質量%以上、より好ましくは99質量%以上の純度を有する。
本発明の1つの実施態様は、イソシアナト配位子を有する少なくとも1つのケイ素化合物を用いて、1原子%未満の炭素又は/及び窒素含有量を有する酸化ケイ素膜を堆積させる方法を含む。本発明の別の実施態様は、組成物を用いて堆積させたケイ素及び酸素を含有する誘電体膜、及び本開示に記載の方法に関し、それは、非常に低いエッチング速度、好ましくは約0.20Å/s以下、又は希HF中での約0.15Å/s以下のエッチング速度を示し、一方で(以下に制限されないが、密度、誘電率、屈折率、及び元素組成などの)他の調節可能な特性の変動を示す。好ましい実施態様によれば、1つのケイ素前駆体はテトライソシアナトシラン(TiCS)であり、これは、触媒及び水などの酸素源の存在下で堆積する。この又は他の実施態様において、触媒は、ピリジン、ピペラジン、アンモニア、又は第一級アミンH2NR1、第二級アミンHNR1R2、第三級アミンR1NR2R3(式中、R1~3は、前述のとおりである。)等の他の有機アミンなどのルイス塩基から選択される。有機アミンの例としては、以下に制限されるものではないが、トリメチルアミン、ジメチルアミン、モノメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエチルアミン、トリ-n‐プロピルアミン、ジ-n‐プロピルアミン、モノ-n‐プロピルアミン、トリ-イソ-プロピルアミン、ジ-イソ-プロピルアミン、モノ-イソ-プロピルアミン、トリ-n‐ブチルアミン、ジ-n‐ブチルアミン、モノ-n‐ブチルアミン、トリ-イソ-ブチルアミン、ジ-イソ-ブチルアミン、モノ-イソ-ブチルアミン、及びフェニルジメチルアミンが挙げられ、好ましくは、第三級アミンが挙げられる。いくつかの実施態様において、触媒は、異なるガスラインを用いて反応器に輸送され、一方で他の実施態様では、触媒は、0.001~99.99質量%の範囲の触媒濃度で酸素源とあらかじめ混合され、次いで、直接液体注入(DLI)又はバブリング又はベーパードロー(vapor draw)、好ましくはDLIを介して反応器に輸送される。触媒中の水などの酸素源の量は、0.001質量%~99.99質量%である。
【0019】
例示的な実施態様に係る記載された方法は、次のものを含む:
a)誘電体表面及び金属表面の両方を有する少なくとも1つの基材を反応器中に提供すること、
b)反応器を雰囲気温度~約350℃の範囲の少なくとも1つの温度に加熱し、任意選択的に、反応器を100トール以下の圧力で維持すること、
c)反応器に有機チオール化合物からなる群から選択される少なくとも1種の自己組織化単層(SAM)揮発性前駆体を導入して、誘電体表面に対してではなく金属表面に対して優先的に固定すること、
d)不活性ガスを用いて、反応器から未反応の前駆体をパージすること、
e)反応器に、テトライソシアナトシラン(TICS)、トリイソシアナトシラン、及びトリイソシアナトメチルシランからなる群から選択されるケイ素化合物と、任意選択的に触媒と、を導入して、誘電体表面に対して豊富に、一方で金属表面に対してはより少なく固定すること;
f)不活性ガスを用いて、反応器から未反応のケイ素化合物をパージすること、
g)水蒸気を含む酸素源と、任意選択的に触媒と、を反応器に提供して、誘電体表面にケイ素及び酸素を含有する誘電体膜を形成すること、ここで、触媒はルイス塩基を含み;及び
h)反応器をパージガスでパージすること。
ここで、ステップe(又はc?)~hは、ケイ素及び酸素を含有する誘電体膜の所望の厚さを得るために繰り返される。ケイ素及び酸素を含有する誘電体膜の厚さは、1Å~1000Å、又は1Å~500Å、又は1Å~300Å、又は1Å~200Å、又は1Å~100Å、又は1Å~50Åの範囲である。堆積膜を酸化剤を用いて処理して、ケイ素及び酸素を含有する誘電体膜を形成させてもよい。本発明のいくつかの実施態様において、ステップe~hを繰り返して所望厚さを得、その後、水素、水素プラズマ、エタノール、又は他の一般的な還元剤(クエン酸等)からなる群から選択される還元剤の導入によって金属表面を洗浄して、後の半導体製造プロセスのためのきれいな金属表面を提供する追加のステップi)が続き、その後、新しい自己組織化単層(SAM)を固定するステップcが続き、次いで、ステップe~hを繰り返して、もうひとつの所望の厚さのケイ素及び酸素を含有する誘電体膜を得る。いくつかの実施態様において、ステップcは別個の反応器において実施されてよく、さらに別の実施態様において、ステップcはSAMを固定するための液相処理を介して、別個の反応器において実施されてよい。
【0020】
特定の実施態様において、本発明に係る記載された方法は、酸化ケイ素及び炭素ドープ酸化ケイ素を堆積させるための熱原子層堆積方法であり、この方法は以下を含む:
a)誘電体表面及び金属表面の両方を有する少なくとも1つの基材を反応器中に提供すること、
b)反応器を雰囲気温度~約350℃の範囲の少なくとも1つの温度に加熱し、任意選択的に、反応器を100トール以下の圧力で維持すること、
c)反応器に有機チオール化合物からなる群から選択される少なくとも1種の自己組織化単層(SAM)揮発性前駆体を導入して、誘電体表面にではなく金属表面に対して優先的に固定すること、
d)不活性ガスを用いて、反応器から未反応の前駆体をパージすること、
e)反応器に、テトライソシアナトシラン(TICS)、トリイソシアナトシラン、及びトリイソシアナトメチルシランからなる群から選択されるケイ素化合物と、任意選択的に触媒と、を導入して、誘電体表面に対して豊富に、一方で金属表面に対してはより少なく固定すること;
f)不活性ガスを用いて、反応器から未反応のケイ素化合物をパージすること、
g)水蒸気を含む酸素源と、任意選択的に触媒と、を反応器に提供して、誘電体表面にケイ素及び酸素を含有する誘電体膜を形成すること、ここで、触媒はルイス塩基を含み;及び
h)反応器をパージガスでパージすること。
ここで、ステップc(又はe?)~hは、所望の厚さを得るために繰り返される。ケイ素及び酸素を含有する誘電体膜の厚さは、1Å~1000Å、又は1Å~500Å、又は1Å~300Å、又は1Å~200Å、又は1Å~100Å、又は1Å~50Åの範囲である。堆積膜を酸化剤を用いて処理して、ケイ素及び酸素を含有する膜を形成させてもよい。本発明のいくつかの実施態様において、ステップe~hを繰り返して所望厚さを得、その後、水素、水素プラズマ、エタノール、又は他の一般的な還元剤からなる群から選択される還元剤の導入によって金属表面を洗浄して、後の半導体製造プロセスのためのきれいな金属表面を提供する追加のステップi)が続き、その後、新しい自己組織化単層(SAM)を固定するステップcが続き、次いで、ステップe~hを繰り返して、もうひとつの所望の厚さのケイ素及び酸素を含有する誘電体膜を得る。いくつかの実施態様において、ステップcは別個の反応器において実施されてよく、さらに別の実施態様において、ステップcはSAMを固定するための液相処理を介して、別個の反応器において実施されてよい。
【0021】
金属表面はコバルト、アルミニウム、銅、タンタル、ルテニウム、モリブデン、タングステン、又はこれらの組み合わせから選択することができ、一方で、誘電体層は、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭素ドープ酸窒化物、窒化ケイ素、及び金属酸化物(酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、ケイ素ドープ酸化ジルコニウム、ケイ素ドープ酸化ハフニウムなど)、又は他の高k材料から選択することができる。
【0022】
揮発性有機チオール化合物は、SAM層が最大で250℃程度まで、最大で150℃程度まで、又は最大で125℃程度まで安定であることを保証するように選択され、この温度はケイ素及び酸素を含有する誘電体膜の成長に適しており、揮発性有機チオール化合物は、RSH、R-S-S-R、及びHS-R1-SH(式中、R及びR1は、C1~C20線形アルキル基、分岐状C3~C20アルキル基、、C3~C20環式アルキル基、C3~C20複素環基、C3~C20アルケニル基、C3~C20アルキニル基、C1~C20線形フルオロアルキル基、及びC4~C20アリール基から独立して選択される。)から選択される少なくとも1つのSH基を有する。有機チオールの例としては、以下に制限されるものではないが、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、1-ドデカンチオール、1-ドデカンチオール、1-ノナンチオール、1-デカンチオール、1-オクタンチオール、1-ヘプタンチオール、1-ヘキサンチオール、1-ペンタンチオール、パーフルオロデカンチオール、ジ-tert-ブチルジスルフィド、ジ-ヘプタンジスルフィド、2-プロペン-1-チオール、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-チオール、4-メチル-6-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-チオール、パラ-キシレン-α-チオール、4-トリフルオロメチルベンジルメルカプタン、4-(トリフルオロメトキシ)ベンジルメルカプタン、4-フルオロベンジルメルカプタン、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、2-(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、4-トリフルオロメチル-2,3,5,6-テトラフルオロチオフェノール、3,5-ジフルオロベンジルメルカプタン、4-トリフルオロメチル-2,3,5,6-テトラフルオロチオフェノール、及びチオフェノールが挙げられる。いくつかの実施態様において、揮発性有機チオールは、気相を介してチャンバへ導入され、表面にSAMを固定する。他の実施態様において、揮発性有機チオールは、溶媒あり又はなしの溶液相を介してチャンバへ導入され、表面にSAMを固定する。
本開示に記載された方法のさらなる実施態様において、本発明から堆積した、膜又は堆積したままのケイ素及び酸素を含有する誘電体膜は、処理ステップ(堆積後)に供することができる。処理ステップは、堆積ステップの少なくとも一部中、堆積ステップの後、及びこれらの組み合わせで行うことができる。例示的な処理ステップとしては、制限されるものではないが、100~800℃の温度での酸化剤/酸素源による処理;高温熱アニールによる処理;プラズマ処理;紫外(UV)光処理;レーザー;電子ビーム処理、及び膜の1つ又はそれより多くの特性に影響を与えるこれらの組み合わせが挙げられる。酸化剤/酸素源は、過酸化水素、オゾン、水蒸気、水蒸気プラズマ、酸素プラズマ、一酸化二窒素プラズマ、二酸化炭素プラズマ、又はこれらの組み合わせから選択することができる。プラズマは、好ましくは遠隔プラズマである。
【0023】
別の実施態様において、1種又はそれより多くのケイ素前駆体化合物を含む、ケイ素及び酸素を含有する膜を堆積させるためのベッセル又はコンテナが、本開示に記載される。1つの特定の実施態様において、ベッセルは、少なくとも1つの加圧可能な(好ましくは、開示が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許US7334595;US6077356;US5069244;及びUS5465766において開示されるような設計を有するステンレス鋼の)ベッセルを含む。コンテナは、CVD又はALDプロセスのための反応器への1種又はそれより多くの前駆体の輸送を可能にする適切なバルブ及び付属品が取り付けられた、ガラス(ホウケイ酸塩又は石英ガラス)又はタイプ316、316L、304若しくは304Lステンレス鋼合金(UNS名称S31600、S31603、S30400 S30403)を含むことができる。この又は他の実施態様において、ケイ素前駆体は、ステンレス鋼で構成された加圧可能なベッセルにおいて提供され、前駆体の純度は、98質量%以上、又は99.5%以上であり、これは、ほとんどの半導体用途に適している。ベッセル又はコンテナのヘッドスペースは、ヘリウム、アルゴン、窒素、及びこれらの組み合わせから選択される不活性ガスで充填される。
【0024】
ケイ素誘電体堆積プロセスが、金属上にほとんど又は全く堆積させずに、誘電体表面で所望厚さを達成した後、表面は、堆積したままの誘電体膜の品質を改善するため、及び/又はきれいな金属表面を提供するために処理することができる。これらの後処理としては、以下に制限されるものではないが、熱処理;ヘリウム、アルゴンなどのプラズマ処理;放射線(紫外光など)への曝露;及び反応性還元ガス及び蒸気への曝露が挙げられる。
【0025】
基材は、当業者に既知の任意の基材であってよい。1つ又はそれより多くの実施態様において、基材は、1種又はそれより多くの半導体材料、例えば、シリコン(Si)、酸化ケイ素(SiO2)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン(InP)、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)、インジウムアルミニウムヒ素(InAlAs)、二硫化モリブデン(MoS2)、モリブデンジセレニド(MoSe2)、二硫化タングステン(WS2)、タングステンジセレニド(WSe2)、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、タングステン(W)、白金(Pt)又はイリジウム(Ir)を含む。いくつかの実施態様において、基材は、スペーサー、金属ゲート、コンタクトなどを含むことができる。したがって、1つ又はそれより多くの実施態様において、基材は、以下に限定されないが、銅(Cu)、コバルト(Co)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)、金(Au)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、リン(P)、ゲルマニウム(Ge)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、炭窒化ケイ素(SiCN)、シリコンオキシカーバイド(SiOC)、窒化ケイ素(SiN)、炭化タングステン(WC)、タングステン酸化物(WOx)、ケイ素酸炭窒化物(SiONC)、又は当業者に既知の任意の半導体基材材料などの半導体材料を含むことができる。
【0026】
本開示で用いられる「基材」は、あらゆる基材、又は基材上に形成された材料表面であって、その上で膜処理が製造プロセス中に実施される材料表面を指す。例えば、処理を実施することができる基材表面としては、用途に応じて、シリコン、酸化ケイ素、歪みシリコン、絶縁体上のシリコン(SOI)、炭素ドープ酸化ケイ素、アモルファスシリコン、ドープシリコン、ゲルマニウム、ガリウムひ素、ガラス、サファイア、及びあらゆる他の材料、たとえば金属、金属窒化物、金属アロイ、及び他の伝導性材料などの材料が挙げられる。基材としては、制限されるものではないが、半導体ウェハが挙げられる。基材は、基材表面を研磨、エッチング、還元、酸化、ヒドロキシル化、アニール及び/又はベーキングするための前処理プロセスにさらされてよい。基材自体の表面に直接膜処理をすることに加えて、本開示では、開示される膜処理ステップのうちのいずれも、より詳細に以下に開示されるように、基材に形成されたアンダー層上で実施されてもよく、「基材表面」という用語は、文脈が示すように、そのようなアンダー層を含むことが意図される。したがって、例えば、膜/層又は部分的な膜/層が基材表面上に堆積した場合、新しく堆積した膜/層の露出表面が基材表面になる。
【実施例】
【0027】
本発明は、以下の例を参照してより詳細に示されるが、これに制限されないと考えられることが理解されるはずである。
【0028】
例1 テトライソシアナトシラン、水、及びトリメチルアミンを用いた酸化ケイ素の熱ALD。以下の熱ALDプロセス条件が、150℃の基材温度で実施された:
図1に示されるように、酸化ケイ素の直線的な成長挙動が得られた。これは、プロセスが典型的なALDであることを示す。
・45~65℃に調節されたTICS源温度、パルス時間は、各々2秒で固定
・H
2O及びトリメチルアミンのパルス時間、各々0.015秒(1.5%H
2Oと見積もられる)
・TICS 60秒トラップ-15秒パージ-(H
2O+トリメチルアミン)60秒共トラップ-15秒パージ
・H
2O及びトリメチルアミン共トラップ中のピーク圧、最大600Torr
【0029】
例2 SAMを用いた酸化ケイ素の領域選択的堆積。
【0030】
以下の熱ALDプロセス条件が実施された:
・SAM前駆体:1-ドデカンチオール
・未処理対クエン酸洗浄した自然酸化膜及びCu基材
・自然酸化膜上の目標SiO
2厚さ:別段の記載がない限り10nm
・Cu上のSiO
2厚さを測定することが困難であるため、選択性は、Cu/SAM上のXPS Si原子%で表される。
・目的は、Cu/SAM1基材上のXPS Siを最小限にすることである。
・選択性に影響する可能性がある主な要因
SAMグラフト条件:125℃トラップなし対150℃トラップ、各々10分間グラフト
SiO
2堆積温度:60~150℃
SiO
2トラップ時間は、成長速度、SAM層中への前駆体及び共反応物拡散に影響し、
SiO
2パージ時間は、TICS及び/又はH
2O/トリメチルアミン共反応物の物理的な脱離に影響する
種々のパージ時間での30秒対15秒トラップ時間
20sccmのN
2流、ベース圧約0.35Torr
図2に示されるように、明らかな選択性があり、自然酸化膜上のSiO
2厚さが120Å未満である場合、SAMはCu上でのSiO
2成長をブロックする。
【国際調査報告】