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特表2023-550379持続可能性スコアを判定するためのコンピュータ実施方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】持続可能性スコアを判定するためのコンピュータ実施方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/30 20230101AFI20231124BHJP
   G01N 23/223 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G06Q10/30
G01N23/223
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529939
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(85)【翻訳文提出日】2023-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2021082265
(87)【国際公開番号】W WO2022106599
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】20209008.0
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リード,マリーナ グレース ディケンス
(72)【発明者】
【氏名】ターコルー,ガジ
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,ウィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】ソルフランク,マルティナ
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,ロバート アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ライヒ,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】レイノ カジェハ,デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ホー,リー ノイ リリアン
(72)【発明者】
【氏名】クーン,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】サティヤナラヤナ,シャム サンダー
(72)【発明者】
【氏名】パンケ,カイ
(72)【発明者】
【氏名】エルツェ,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ビール,クリスティアン
【テーマコード(参考)】
2G001
5L049
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA04
2G001CA01
2G001KA01
2G001KA20
2G001LA05
5L049AA20
(57)【要約】
持続可能性スコアを判定するためのコンピュータ実施方法が、それぞれが特定のプラスチック化合物を識別する複数のマーカに関するエントリを含むコンピュータベースのデータベースを提供するステップ(S100)と、プラスチック化合物の試料からのスキャンデータを受信するステップ(S200)と、受信されたスキャンデータ及びデータベースの複数のマーカに基づいてプラスチック化合物の試料におけるマーカを識別するステップ(S300)と、プラスチック化合物の試料の識別されたマーカに基づいて持続可能性スコアを判定するステップ(S400)とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが特定のプラスチック化合物を識別する複数のマーカに関するエントリを含むコンピュータベースのデータベースを提供するステップ(S100)と、
プラスチック化合物の試料からのスキャンデータを受信するステップ(S200)と、
受信された前記スキャンデータ及び前記データベースの前記複数のマーカに基づいて前記プラスチック化合物の前記試料におけるマーカを識別するステップ(S300)と、
前記プラスチック化合物の前記試料の識別された前記マーカに基づいて持続可能性スコアを判定するステップ(S400)と
を含む、持続可能性スコアを判定するためのコンピュータ実施方法。
【請求項2】
試料の複数のスキャンデータ、試料の複数の識別されたマーカ、及び/又は試料の複数の持続可能性スコアを格納するブロックチェーンを受信するステップと、
前記試料の受信された前記スキャンデータ、前記試料の識別された前記マーカ、及び/又は前記試料の前記判定された持続可能性スコアを前記ブロックチェーンにアップロードするステップと
を含む、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記持続可能性スコアを判定する前記ステップが、
前記ブロックチェーンにおいて、前記試料の識別された前記マーカに関連付けられた少なくとも1つのデータエントリを識別することと、
前記少なくとも1つのデータエントリ及び識別された前記マーカに基づいて前記持続可能性スコアを判定することと
を含む、請求項1又は2に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記マーカを識別する前記ステップが、
前記プラスチック化合物の前記試料における前記マーカのタイプ及び/又は量を判定すること
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記マーカを識別する前記ステップが、
前記プラスチック化合物の前記試料における前記マーカの重量部を判定すること
を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記持続可能性スコアに基づいて、前記プラスチック化合物の前記試料の寿命にわたる排出量フットプリント、特にCOフットプリントを判定するステップ
を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記持続可能性スコアに基づいて、前記プラスチック化合物の前記試料の寿命にわたる流体使用量、特に水使用量を判定するステップ
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
判定された前記持続可能性スコアをユーザインターフェースに表示するコマンドを含む信号を生成するステップ
を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項9】
前記マーカが、UVマーカ、XRDマーカ、XRFマーカ、QRコード(登録商標)、及び/又はステガノグラフィ的機構からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項10】
前記プラスチック化合物の前記試料が、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状LDPE(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリスチレン(PS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、又はポリカーボネート(PC)からなる群から選択される1つ又は複数の要素を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項11】
前記プラスチック化合物の更なる処理を制御するのに適する判定された持続可能性スコアを提供するステップを更に含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項12】
前記プラスチック化合物の受信された持続可能性スコアを検証するために判定された持続可能性スコアを提供するステップであって、好ましくは、前記プラスチック化合物の再生材料の含有量及び/又は前記再生材料のリサイクルループの回数が検証される、提供するステップを更に含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項13】
実行されると、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法のステップのうちのいずれか1ステップを実行するようにプロセッサに命令する、コンピュータプログラム要素。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラム要素を格納するコンピュータ可読媒体。
【請求項15】
波長スキャナ(11)と、
プログラマブルコントローラ(15)と
を備える、プラスチック化合物処理装置(10)であって、
前記波長スキャナ(11)が、プラスチック化合物(16)の試料をスキャンするように構成され、
前記プログラマブルコントローラ(15)が、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法によって持続可能性スコアを判定するように構成される、プラスチック化合物処理装置(10)。
【請求項16】
ユーザインターフェース(24)であって、前記ユーザインターフェース(24)が前記判定された持続可能性スコアを表示するように構成される、ユーザインターフェース(24)
を備える、請求項15に記載のプラスチック化合物処理装置(10)。
【請求項17】
それぞれが特定のプラスチック化合物を識別する複数のマーカに関するエントリを含むコンピュータベースのデータベース(31)と、
プラスチック化合物の試料からのスキャンデータを受信するように構成された少なくとも1つの受信ユニット(32)と、
受信された前記スキャンデータ及び前記データベース(31)の前記複数のマーカに基づいて前記プラスチック化合物の前記試料におけるマーカを識別するように構成された少なくとも1つの処理ユニット(33)と、
前記プラスチック化合物の前記試料の識別された前記マーカに基づいて持続可能性スコアを判定するように構成された少なくとも1つの処理ユニット(33)と
を備える、持続可能性スコアを判定するためのシステム(30)。
【請求項18】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法における、それぞれが特定のプラスチック化合物を識別する複数のマーカに関するエントリ及び/又はプラスチック化合物の試料からのスキャンデータを含むコンピュータベースのデータベースの使用。
【請求項19】
プラスチック化合物の持続可能性スコアを検証するためのコンピュータ実施方法であって、前記方法が、
請求項1~12のいずれか1項により判定された持続可能性スコアを受信するステップと、
前記プラスチック化合物にリンクされた第三者による持続可能性スコアを受信するステップと、
前記判定された持続可能性スコアと前記第三者による持続可能性スコアとを比較して、前記プラスチック化合物を検証する、並びに/又は前記プラスチック化合物が予め定義された品質及び/若しくは予め定義された持続可能性の基準を満たすか否かを検証するステップと
を含む、コンピュータ実施方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、持続可能性スコアを判定するためのコンピュータ実施方法、そのような方法のためのコンピュータプログラム要素、そのようなコンピュータプログラム要素を格納するためのコンピュータ可読媒体、プラスチック化合物処理装置、そのような持続可能性スコアを判定するためのシステム、及びそのような方法におけるコンピュータベースのデータベースの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、軽量、耐久性、低コスト、広い温度範囲での適用可能性、温度及び光に対する良好な耐性、並びに加工容易性に関して大きな有益性を呈する。これらの有益性に起因して、プラスチックの世界的需要は年々増加し、そのため、プラスチックの世界的生産量は年間億万トンのオーダーになっている。プラスチックの大部分が、包装材、自動車、電気製品に使用されている。使用後や又は寿命後、生じたプラスチック廃棄物のうち、わずかな量しか再利用されない。プラスチックのリサイクルは、プラスチック廃棄物を減らし、天然資源を節約するための選択肢を提供する。プラスチック廃棄物のリサイクルは、多種多様なポリマーのタイプ、グレード、ブレンド、及び/又は添加物に起因して、プラスチック廃棄物の分離及び選別を必要とする。そのため、選別は、プラスチック廃棄物のリサイクルにおける大きな課題である。リサイクルは、プラスチック廃棄物のリサイクルの経済的側面と、バリューチェーンにおけるプラスチックの持続可能性とに大きな影響を及ぼす。
【0003】
この観点から、プラスチックをリサイクルするための方法を提供することに更なるニーズが存在することが判明した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、プラスチック製品の持続可能性を高める方法、特にプラスチックをリサイクルするための方法を提供することである。
【0005】
これら及び他の目的は、以下の説明を読めば明らかになり、独立請求項の主題により解決される。従属請求項は、本開示の好ましい実施形態を指す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様によれば、持続可能性スコアを判定するためのコンピュータ実施方法であって、それぞれが特定のプラスチック化合物を識別する複数のマーカに関するエントリを含むコンピュータベースのデータベースを提供するステップと、プラスチック化合物の試料からのスキャンデータを受信するステップと、受信されたスキャンデータ及びデータベースの複数のマーカに基づいてプラスチック化合物の試料におけるマーカを識別するステップと、プラスチック化合物の試料の識別されたマーカに基づいて持続可能性スコアを判定するステップとを含む、コンピュータ実施方法が提供される。
【0007】
換言すれば、本開示は、プラスチック化合物をマーカで一義的にタグ付けすることによりプラスチック化合物のIDを生成することを提案する。ポリマーのタイプ、グレード、ブレンド、リユース回数、持続可能性スコアなどのプラスチック化合物の特性が、IDに割り当てられる。プラスチック化合物のID及び特性の情報データはデータベースに格納される。スキャンすることにより、プラスチック化合物、マーカ、ひいてはプラスチック化合物のIDが、判定され、データベースと照合される。照合の結果から、プラスチックのタイプ又は再生材料の含有量又は持続可能性スコアなど、プラスチック化合物の特性が明らかになる。したがって、ユーザ、例えばプラスチック部品の受託製造業者がプラスチック化合物の持続可能性スコアを判定したり、又は例えば、製品のOEMが製品で使用される受託製造業者のプラスチック部品の持続可能性スコアを判定したり、又は最終顧客がOEMから供給された製品の持続可能性スコアを判定したりすることが可能である。このことはまた、持続可能性スコアに加えて、ポリマータイプ、グレード、又は添加物などの他のデータが明らかになり得るため、リサイクル会社がプラスチック廃棄物を選別するのに有利であり得る。更に、このことはまた、プラスチック化合物製造業者が、情報、すなわち、プラスチック廃棄物の持続可能性スコア、ポリマータイプ、グレード、又は添加物の情報を得るのに有利であり得、情報は、更に、新しい再生プラスチック化合物を製造するために使用され得る。提案される方法は、プラスチック化合物の最初の製造に加えて、プラスチック化合物のライフサイクルのすべての段階、すなわち、少なくとも半完成品の製品、製品、廃棄物、選別された廃棄物、再生原料において、プラスチック化合物の真の持続可能性スコア及び/又は材料組成を明らかにするのに有利であり得る。提案される方法は、プラスチック化合物の真の有効なトレーサビリティを提供するのに有利であり得る。提案される方法は、プラスチック部品の効率的なリサイクル経済を確立するのに有利であり得る。提案される方法は、持続可能性スコアを含む製品の履歴情報の基礎としての役割を果たすのに更に有利であり得、更なる情報(例えば、特定のプラスチック化合物を用いて製造された製品)が履歴情報に付加されてデータベースに格納される。提案される方法は、更に、プラスチック廃棄物を削減し、再生プラスチック廃棄物の量を増やすのに有利であり得る。
【0008】
持続可能性スコアという用語は、この場合では広く理解されるべきであり、プラスチック化合物の持続可能性に関する情報を提示するように構成された数字を含み、持続可能性は、好ましくは、プラスチック化合物の再生材料の含有量及び/又はプラスチック化合物の再生材料のリサイクルループの回数に関する。持続可能性スコアは、メトリック、例えば、言葉によるコーディング「悪い」、「良い」、「非常に良い」、又は色によるコーディング「赤色」、「橙色」、「緑色」、又は数字によるコーディング「1」、「2」、「3」を含み得る。持続可能性スコアは、上述の例に限定されるものではない。持続可能性スコアは、OEM、小売業者、又は最終顧客のためにマスターバッチ業者及びコンバータによって提出されたデータに基づき得る。コンピュータベースのデータベースという用語は、この場合では広く理解されるべきであり、データを格納及び管理するように構成された任意のデータベース又はデータシステムを含む。データベースは、集中データベースであっても、又は分散して構成されたデータベースであってもよく、異なるユーザに対する異なるアクセス認可(例えば、読み取り、読み取り/書き込みなど)を含み得る。データベースは、クラウドサーバに格納され、クラウドサーバで実行され得る。データベースは、ブロックチェーンネットワークとして実現されてもよい。ブロックチェーンは、偽データに対する防御を高め、ひいては顧客の信頼を高めることができる。ブロックチェーンは、分析能力を高めることができる(例えば、再生プラスチック化合物のループ回数を判定する)。エントリという用語は、この場合では広く理解されるべきであり、データベースに格納され得る任意のデータを含み、好ましくは、エントリという用語は、この場合ではプラスチック化合物のIDに関し、例えばバイナリコードに関する。マーカという用語は、この場合では広く理解されるべきであり、プラスチック化合物IDに関連する情報を開示するように構成された要素を含む。マーカという用語は、化学トレーサ、すなわち、プラスチック樹脂に埋め込まれ、分子が存在するか又は否かに関してバイナリコードとして機能する分子を含み得る。このような化学トレーサは、様々な分光特性を呈するため、検出可能である(例えば、UV光下で蛍光を発する)。それぞれが固有のスペクトルを有する異なる化学トレーサを添加することにより、データベースのエントリとしての役割を果たすコードを作成することが可能である。これらの化学トレーサは、変形又は他の物理的応力に反応しにくいことから、ライフサイクル中のプラスチック化合物の検出能を向上させるため、有利であり得る。マーカという用語は、更に、QRデータ、電子透かしを含み得る。スキャンデータという用語は、この場合では広く理解されるべきであり、スキャン及び/又は検出プロセスから受信された任意のデータを含む。好ましくは、スキャンデータは、分光分析及び光スキャナ(例えば、スマートフォンのカメラ)からのデータを含む。プラスチック化合物という用語は、この場合では広く理解されるべきであり、プラスチック材料のライフサイクル又はバリューチェーンの任意の可能な段階における任意のプラスチック材料を含む。好ましくは、プラスチック化合物という用語は、プラスチック原料(例えば、PE、PP、PET原料)、半加工プラスチック材料(例えば、半完成のドアハンドル)、完成プラスチック材料(例えば、PETボトル、包装材)を含む。
【0009】
一実施形態では、コンピュータ実施方法は、試料の複数のスキャンデータ、試料の複数の識別されたマーカ、及び/又は試料の複数の持続可能性スコアを格納するブロックチェーンを受信するステップと、試料の受信されたスキャンデータ、試料の識別されたマーカ、及び/又は試料の判定された持続可能性スコアをブロックチェーンにアップロードするステップとを含む。ブロックチェーンという用語は、当技術分野で周知であり、この場合では、暗号を用いてリンクされたデータ/レコードの増大するリストを含む。データ/レコードは、この場合では、試料の複数のスキャンデータ、試料の複数の識別されたマーカ、及び/又は試料の複数の持続可能性スコアを含む。データ/レコードは、これらの例に限定されるものではない。また、データ/レコードは、タイムスタンプ及び取引データ、並びに試料の製品(例えば、原料、半完成品の製品、最終製品)の関連データを含み得る。試料の複数のスキャンデータ、試料の複数の識別されたマーカ、及び/又は複数の持続可能性スコアをアップロードすることにより、オープンレジャーが新しいレコード/エントリに起因して拡張される。オープンレジャーは、分散型台帳であってもよく、すべてのユーザが複製を持つことができ、新しいエントリを生成することができ、新しいエントリがすべてのユーザによって検証されなければならないことがある。つまり、このことは、特定のプラスチック原料のライフサイクル及び/又は処理の様々な段階の透明性を高めるのに有利であり得る。これにより、更に、特定の原料化合物に関連する新しいデータポイントを生成し、分析能力を向上させることができる。これにより、更に、特定のプラスチック原料に関連する偽のエントリ/データからユーザを保護することができる(例えば、ブロックチェーンにおいて検出されたロジックエラーに起因して、複数の識別されたマーカが、偽のデータにつながり、偽の持続可能性スコアを明らかにする)。換言すれば、特定のプラスチック原料のスキャンデータは、取引(例えば、任意のスキャン)でブロックチェーンに記録され、これにより、原料及び原料に関連する更なる製品(例えば、半完成品の製品、製品、廃棄物)の履歴情報が明らかになる。ブロックチェーンを使用することにより、認証データが、原料化合物のライフサイクル沿いの上流のユーザによって格納されたデータエントリに基づいて提供され得る。認証データ及び持続可能性スコアにアクセスするために、アプリが顧客/ユーザによって使用されてもよい。
【0010】
一実施形態では、持続可能性スコアを判定するステップは、ブロックチェーンにおいて、試料の識別されたマーカに関連付けられた少なくとも1つのデータエントリを識別するステップと、少なくとも1つのデータエントリ及び識別されたマーカに基づいて持続可能性スコアを判定するステップとを含む。換言すれば、試料の識別されたマーカは、識別されたマーカを含む既存のエントリと照合される。これにより、特定のプラスチック原料の履歴が明らかになり得る。これにより、特定のプラスチック原料の再利用/ループの回数が明らかになり得る。例えば、特定のプラスチック原料がプラスチックボトル用に生産され、その特定のプラスチック原料が別の製品(例えば歯ブラシ)で見かった場合、特定のプラスチック原料が再利用されたことが導き出され得る。このような中間結果が、持続可能性スコアを判定するために使用される。このことは、持続可能性スコアの判定を微調整するのに有利であり得る。
【0011】
一実施形態では、マーカを識別するステップは、プラスチック化合物の試料におけるマーカのタイプ及び/又は量を判定することを含む。マーカのタイプは、周期系の元素を含み得る。マーカのタイプを判定することにより、特定のプラスチック原料のIDが判定される。マーカの量を判定することにより、再生プラスチック原料の割合が判定され得る。このことは、持続可能性スコアを判定するのに有利であり得る。マーカを判定することは、UV検出技法、近赤外線検出技法、中赤外線検出技法、蛍光X線検出技法、ニューロン活性化技法、又は磁気検出技法を含み得る。
【0012】
一実施形態では、マーカを識別するステップは、プラスチック化合物の試料におけるマーカの重量部を判定することを含む。マーカ、及び試料におけるマーカの体積含有量を判定することにより、重量含有量が計算により導出され得る。これは、プラスチック化合物の試料の材料組成がより具体的に記載されていることに起因して、製品の持続可能性スコアを微調整するのに有利であり得る。
【0013】
一実施形態では、本方法は、持続可能性スコアに基づいて、プラスチック化合物の試料の寿命にわたる排出量フットプリント、特にCO2フットプリントを判定するステップを含む。換言すれば、持続可能性スコアは、更に、CO2フットプリントを計算するために、付加データ(例えば、再生材料の含有量、リサイクルループ、非再生プラスチック化合物のオリジナルCO2フットプリント)とともに処理される。CO2フットプリントは、データベース及び/又はブロックチェーンから提供され得る。CO2フットプリントは、プラスチック化合物のサプライチェーンの任意の工程を含み得る。また、持続可能性スコアは、CO2フットプリント及び/又はリサイクルのループを考慮し得る。つまり、このことは、製品で使用されているプラスチック化合物の微調整された情報をユーザに提供するのに有利であり得る。
【0014】
一実施形態では、本方法は、持続可能性スコアに基づいて、プラスチック化合物の試料の寿命にわたる流体使用量、特に水使用量を判定するステップを含む。水使用量は、試料プラスチック化合物の寿命の1つ又は複数の工程(プラスチック化合物の製造、更なる処理、廃棄物の選別、リサイクル、更なる化合物の製造)の間に使用された任意の水を含み得る。流体使用量は、現在のデータ及び/又は予測による将来のデータを含み得る。水使用量は、データベース及び/又はブロックチェーンから提供され得る。流体使用量は、他の製品と比較した、製品の使用による更なる環境数値及び結果を明らかにするのに有利であり得る。
【0015】
一実施形態では、本方法は、判定された持続可能性スコアをユーザインターフェースに表示するコマンドを含む信号を生成するステップを含む。製品(例えば、スーツケースに配置されたQRコード(登録商標))をスキャンし得るユーザが、プラスチック化合物を含む製品の持続可能性スコアを提供される。プラスチック化合物の試料を分光法によりスキャンし、更にそのデータを本方法で処理し得るユーザが、プラスチック化合物の試料の持続可能性スコアを提供される。スコアは、スマートフォン、デスクトップPCの画面に表示され得る。つまり、このことは、本方法の適用性及び操作性を高め得る。
【0016】
一実施形態では、方法であって、マーカが、UVマーカ、XRDマーカ、XRFマーカ、QRコード(登録商標)、及び/又はステガノグラフィ的機構からなる群から選択される、方法が提供される。
【0017】
一実施形態では、方法であって、更なる情報が本方法を実行するユーザによって特定のプラスチック化合物に追加され、更なる情報が、好ましくは、バリューチェーン及び/又は製品タイプにおける段階を含む、方法が提供される。このことは、再生分含有量を認定するのに有利であり得る。
【0018】
一実施形態では、方法であって、ブロックチェーンのユーザがすべての新しいエントリを検証する、方法が提供される。このことは、偽のエントリに対する保護を強化するのに有利であり得る。
【0019】
一実施形態では、方法であって、プラスチック化合物の試料が、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状LDPE(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリスチレン(PS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、又はポリカーボネート(PC)からなる群から選択される1つ又は複数の要素を含む、方法が提供される。
【0020】
一実施形態では、方法であって、プラスチック化合物の更なる処理を制御するのに適する判定された持続可能性スコアを提供するステップを更に含む、方法が提供される。
【0021】
一実施形態では、方法であって、プラスチック化合物の持続可能性スコアを検証するのに適する判定された持続可能性スコアを提供するステップであって、好ましくは、プラスチック化合物の再生材料の含有量及び/又は再生材料のリサイクルループの回数が検証される、提供するステップを更に含む、方法が提供される。
【0022】
本開示の更なる態様は、実行されると、上述の方法のステップのいずれか1つを実行するようにプロセッサに命令するコンピュータプログラム要素に関する。したがって、コンピュータプログラム要素は、同様に一実施形態の一部であり得るコンピューティングユニットに格納され得る。このコンピューティングユニットは、上述の方法のステップを行うように、又はその実行を誘導するように構成され得る。更に、コンピューティングユニットは、上述のシステムの構成要素を動作させるように構成され得る。コンピューティングユニットは、自動的に動作するように、且つ/又はユーザの命令を実行するように構成され得る。コンピュータプログラムは、データプロセッサの作業メモリにロードされ得る。これにより、データプロセッサは、上述の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように備えられ得る。本開示のこの例示的な実施形態は、最初から本開示を使用するコンピュータプログラム及び更新により既存のプログラムを、本開示を使用するプログラムにするコンピュータプログラムの両方を包含する。更に、コンピュータプログラム要素は、上述の方法の例示的な実施形態の手順を遂行するために必要なすべてのステップを提供可能であり得る。本開示の更なる例示的な実施形態によれば、CD-ROM、USBスティックなどのコンピュータ可読媒体が提示され、コンピュータ可読媒体は、上述のセクションに記載されたコンピュータプログラム要素を格納する。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又は他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体に格納され得る、且つ/又はそのような適切な媒体で分配され得るが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介するなど、他の形態で分配されてもよい。しかしながら、コンピュータプログラムはまた、ワールドワイドウェブのようなネットワークを経由して提示することもでき、そのようなネットワークからデータプロセッサの作業メモリにダウンロードすることができる。本開示の更なる例示的な実施形態によれば、コンピュータプログラム要素をダウンロードに利用できるようにする媒体が提供され、コンピュータプログラム要素は、本開示の上述の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように構成される。
【0023】
本開示の更なる態様は、上述のコンピュータプログラム要素を格納するコンピュータ可読媒体に関する。
【0024】
本開示の更なる態様は、波長スキャナと、プログラマブルコントローラとを備えるプラスチック化合物処理装置であって、波長スキャナが、プラスチック化合物の試料をスキャンするように構成され、プログラマブルコントローラが、上述の方法によって持続可能性スコアを判定するように構成される、プラスチック化合物処理装置に関する。波長スキャナという用語は、この場合では広く理解されるべきであり、原子又は分子の波長を判定するように構成されたスキャナを含む。波長スキャナという用語は、UV検出技法、近赤外線検出技法、中赤外線検出技法、蛍光X線検出技法、又はニューロン活性化技法に基づくスキャナを含む。プログラマブルコントローラという用語は、この場合では広く理解されるべきであり、上述の方法を実行するようにプログラム及び制御されるように構成されたコントローラを含む。プログラマブルコントローラという用語は、好ましくは、スマートフォン、タブレット、デスクトップPC、又はクラウドのCPUを含む。これに関連して、プラスチック化合物処理装置は、好ましくは、ユーザインターフェースであって、ユーザインターフェースが判定された持続可能性スコアを表示する(例えば、スマートフォンの表示)ように構成される、ユーザインターフェースを備える。
【0025】
本開示の更なる態様は、それぞれが特定のプラスチック化合物を識別する複数のマーカに関するエントリを含むコンピュータベースのデータベースと、プラスチック化合物の試料からのスキャンデータを受信するように構成された少なくとも1つの受信ユニットと、受信されたスキャンデータ及びデータベースの複数のマーカに基づいてプラスチック化合物の試料におけるマーカを識別するように構成された少なくとも1つの処理ユニットと、プラスチック化合物の試料の識別されたマーカに基づいて持続可能性スコアを判定するように構成された少なくとも1つの処理ユニットとを備える、持続可能性スコアを判定するためのシステムに関する。受信ユニット及び/又は処理ユニットは、分散ハードウェアコンポーネント(例えば、別個のCPU)であっても、1つのハードウェアコンポーネント(例えば、集中CPU)上の仮想コンポーネントであってもよい。受信ユニットは、特定の通信規格(例えば、Ethernet、USB、HTML、NFC、Bluetooth、PCIなど)のインターフェースを含み得る。
【0026】
本開示の更なる態様は、上述の方法における、それぞれが特定のプラスチック化合物を識別する複数のマーカに関するエントリ及び/又はプラスチック化合物の試料からのスキャンデータを含むコンピュータベースのデータベースの使用に関する。
【0027】
本開示の更なる態様は、プラスチック化合物の持続可能性スコアを検証するためのコンピュータ実施方法であって、本方法が、
上述の方法にしたがって判定された持続可能性スコアを受信することと、
プラスチック化合物にリンクされた第三者による持続可能性スコアを受信することと、
判定された持続可能性スコアと第三者による持続可能性スコアとを比較して、プラスチック化合物を検証する、並びに/又はプラスチック化合物が予め定義された品質及び/若しくは予め定義された持続可能性の基準を満たすか否かを検証することと
を含む、コンピュータ実施方法に関する。
【0028】
一実施形態では、マーカを識別するステップは、プラスチック化合物の上記試料における識別されたマーカに基づいてプラスチック化合物の以前のライフサイクルからのパラメータを判定すること、及び/又はプラスチック化合物の再生プラスチックの含有量を判定することを含む。ライフサイクルとは、プラスチック化合物が製造されてから、それが廃棄及びリサイクルされるまでの期間をいう。識別されたマーカは、特定の製品に関連付けられ得るため、プラスチック化合物の以前のライフサイクルからのパラメータを明らかにし得る。試料における判定されたマーカの割合によって、プラスチック化合物の再生プラスチックの含有量が明らかになり得る。材料リサイクル業者は、プラスチック化合物を生産するたびに、プラスチック化合物におけるマーカの割合を適合させ得る。つまり、このことは、プラスチック化合物の持続可能性スコアを微調整するのに有利であり得る。例えば、材料リサイクル業者がプラスチック化合物を生産するたびに、付加的なマーカがプラスチック化合物に付加されてもよい。マーカは、プラスチック化合物がリサイクルされた回数を示し得る。
【0029】
本開示は、再生プラスチックのカーボンフットプリント(PCF)を計算/推定し、製品のカーボンフットプリントの削減に役立つ測定値を提供する可能性を提供する。また、付加的な持続可能性の恩恵(地球温暖化係数、累積エネルギー需要など)が再生材料に帰属し得る。業界では、バイオベース度(例えば、パーム/ココナッツ/キャノーラ油由来の植物性ステアリルアルコール対合成品)の量を増やすことを益々取り入れ、期待している。このようなバイオベース度は、積極的に計算され報告され得る。また、このようなバイオベース度は、PCF全体の低下にもつながる。同様の推定が、デジタルトレーサでマーキングされ得るバイオマスバランス方式材料にもなされ得る。材料の物理的なスキャンから得られるデジタル信号は、保証された再生材料の内包物を捕捉して、(より低い)PCFを実証及び追跡することができる。このような情報は、対応するデータベース及び/又はデジタルツールを提供することにより、提供又は共有され得る。例えば、物理的なマーカからのデジタル入力は、ISO9001などの品質認証と同様、様々な持続可能性の恩恵を重み付けして集約して、標準的な評価を生み出すことができる。そして、このデータは、将来のPCF又は「完全循環型」の計算に繰り越すことができる。
【0030】
以下、添付の図面を参照しながら本開示を例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本開示による方法のステップの概略図である。
図2】本開示によるプラスチック化合物処理装置の概略部分図である。
図3】本開示による方法の例示的なユースケースの概略図である。
図4】本開示によるシステムの概略図である。
図5】循環型経済における方法の例示的な適用ケースを示す。
図6】プラスチック化合物の更なるプロセスを検証及び制御するためのステップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本開示による方法のステップの概略図を示している。持続可能性スコアを判定するためのコンピュータ実施方法は、それぞれが特定のプラスチック化合物を識別する複数のマーカに関するエントリを含むコンピュータベースのデータベースを提供するステップS100を含む。識別されたマーカは、データが関連付けられる特定のプラスチック化合物のIDを明らかにする。本例では、IDは、5つの異なるマーカで実現される5桁の2進法の数字(0又は1)を含む。マーカが検出された場合は対応する桁が1になり、そうでない場合は0になる。したがって、マーカで2個の異なるIDをコーディングすることができる。これについては、図2で更に説明する。データは、本例では、特定のプラスチック化合物、生産データ、対象製品、及び持続可能性スコアから構成されるバッチサイズを含む。持続可能性は、1から10までの10段階のメトリックを含み、1は非常に低い持続可能性スコアに関連付けられ、10は非常に高い持続可能性スコアに関連付けられる。データベースは、本例では、クラウドに格納されているコンピュータベースのデータベースである。特定のプラスチック化合物のエントリは、認定されたプラスチック材料生産者によって作られたものである。ステップS200において、プラスチック化合物の試料からのスキャンデータが受信される。好ましくは、スキャンデータは分光分析からのデータを含む。特定のプラスチック化合物をコーディングするために使用されるマーカは化学トレーサである。化学トレーサは、様々な分光特性を呈するため分光法により検出可能である。ステップS300において、プラスチック化合物の試料におけるマーカが、受信されたスキャンデータ及びデータベースの複数のマーカに基づいて識別される。スキャンデータは、例えば、1つ又は複数のマーカが分光測定データに存在するか否かを明らかにする。これらの結果は、データベースのエントリと照合される。肯定一致の場合では、特定のプラスチック化合物のIDに関連付けられたデータが明らかになる。ステップS400において、持続可能性スコアが、プラスチック化合物の試料の識別されたマーカに基づいて判定される。持続可能性スコアは、本例では、特定のプラスチック化合物のIDに関連付けられたデータの一部である。ただし、持続可能性スコアの判定は、この例に限定されるものではない。更に、試料の受信されたスキャンデータ、試料の識別されたマーカ、及び/又は試料の判定された持続可能性スコアがブロックチェーンにアップロードされることが好ましい。これらの情報をブロックチェーンにアップロードすることにより、台帳が拡張されるため、特定のプラスチック化合物の履歴情報の透明性が高くなる。これに関連して、持続可能性スコアは、ブロックチェーンに対して存在するすべてのエントリの分析によって判定されてもよく、その結果として、持続可能性スコアは微調整され得る。
【0033】
図2は、本開示によるプラスチック化合物処理装置10の概略部分図である。プラスチック化合物処理装置10は、照明光源としてのX線発生器12と、測定ノイズ低減用の銅製フィルタ13と、蛍光X線検出ユニット14とを有する波長スキャナ11、本例では蛍光X線スキャナを備える。プラスチック化合物システムは、プログラマブルコントローラ15を更に備える。特定のプラスチック化合物16は、2つのマーカA及びBを含む。X線発生器12は、X線を発生させるように、且つX線を特定のプラスチック化合物16に導くように構成され、X線がマーカA、Bを励起する。マーカは、例えばFe及びNiである。各マーカは、蛍光X線分析において、元素の原子番号に応じた固有の放射線を放出する。蛍光X線スキャナ14は、プラスチック化合物16の試料をスキャンするように構成され、スキャンとは、マーカの放出された放射線を検出することを意味する。蛍光X線スキャナは、特定のプラスチック化合物16のシグネチャ、ひいてはIDを識別するプログラマブルコントローラ15と結合される。プログラマブルコントローラ15は、上述の方法によって持続可能性スコアを判定するように更に構成される。
【0034】
図3は、本開示による方法のユースケースの概略図である。図1及び図2の説明とは異なり、マーカは化学トレーサではなく、代わりにQRコード(登録商標)23である。製品21、この例ではスーツケースの持続可能性スコアに興味を持っているユーザ20が、自らのスマートフォン22でスーツケース21に取り付けられたQRコード(登録商標)23をスキャンする。ユーザのスマートフォン22では、コンピュータプログラム要素が実行され、スマートフォン22のプロセッサに持続可能性スコアを判定するための方法を実行するように命令する。判定された持続可能性スコアは、更に、スマートフォン22のユーザインターフェース24に表示される。
【0035】
図4は、本開示によるシステムの概略図を示している。持続可能性スコアを判定するためのシステム30は、それぞれが特定のプラスチック化合物を識別する複数のマーカに関するエントリを含むコンピュータベースのデータベース31を備える。システム30は、プラスチック化合物の試料からのスキャンデータを受信するように構成された1つの受信ユニット32を更に備える。システム30は、受信されたスキャンデータ及びデータベースの複数のマーカに基づいてプラスチック化合物の試料におけるマーカを識別するように構成された1つの処理ユニット33を更に備える。処理ユニット33は、プラスチック化合物の試料の識別されたマーカに基づいて持続可能性スコアを判定するように更に構成される。処理ユニットは、試料の受信されたスキャンデータ、試料の識別されたマーカ、及び/又は試料の判定された持続可能性スコアをブロックチェーン34にアップロードするように更に構成される。これらの情報をブロックチェーン34にアップロードすることにより、台帳が拡張されるため、特定のプラスチック化合物の履歴情報の透明性が高くなる。これに関連して、持続可能性スコアは、更に、ブロックチェーン34に対して存在するすべてのエントリの分析によって判定されてもよく、その結果として、持続可能性スコアは微調整され得る。
【0036】
図5は、循環型経済40における方法の例示的な適用ケースを示している。プラスチック化合物生産者42は、最初に、マーカAを含む特定のプラスチック化合物を生産し得る。特定のプラスチック化合物の対応するデータが、デジタルプラットフォーム41に送信され得、デジタルプラットフォーム、ひいてはデジタルプラットフォームのサーバが、この対応するデータを格納し得る。プラスチック化合物生産者42は、特定のプラスチック化合物をプラスチックボトルの製造業者43に販売し得る。特定のプラスチック化合物に関連するプラスチックボトルの生産データ(例えば、タイムスタンプ、量など)が、デジタルプラットフォーム41に送信され得る。生産されたプラスチックボトルは、QRコード(登録商標)を備え得、そして、製造業者43から例えば他国にある倉庫44に出荷され、そこから小売業者45に出荷され得る。プラスチックボトル46の関連輸送データが、デジタルプラットフォーム41にそれぞれ送信され得る。そして、顧客が、小売業者45からプラスチックボトル46を購入し得る。顧客は、図3の説明にしたがって、プラスチックボトル46の持続可能性スコアを確認し得る。顧客は、プラスチックボトル46を使用後に廃棄し得る。プラスチックボトル46と別のマーカBを有する更なるプラスチックボトル48とを含む廃棄物は、その後、廃棄物処理会社47によって回収され得る。廃棄物処理会社47は、プラスチック処理装置10と同様の働きをする選別機49を有し得る。選別機49は、マーカAを有する特定のプラスチック化合物によってプラスチックボトル46を識別し得る。プラスチックボトル46に関連する収集データは、廃棄物処理会社47からデジタルプラットフォーム41に送信され得る。廃棄物処理会社47は、新しい特定のプラスチック材料を生産するリサイクル会社50にプラスチックボトル46を販売し得る。リサイクル会社50は、プラスチック材料に更なるマーカCを添加し得、その後、プラスチック材料をプラスチック化合物生産者42に販売し得る。リサイクル会社50は、プラスチックボトル46に関連するデータをデジタルプラットフォーム41に問い合わせ、また更に、デジタルプラットフォーム41に新しいデータを送信し得る。
【0037】
更に、プラスチック化合物の持続可能性スコアを検証することが可能である。これは、例えば、上記のように判定された持続可能性スコアと、第三者(例えば、プラスチック化合物生産者、製造業者、小売業者、又は廃棄物処理会社など)によって提供される持続可能性スコアとを比較することによって行われ得る。一方では、両方の持続可能性スコアが本質的に同じであるか否かを判定することができ、他方では、更なる処理のための化合物のリリースをこれに応じてなすことができる。これにより、判定された持続可能性スコアを検証し、そこからプラスチック化合物の更なるプロセスのための制御信号又はプロセス信号を導出することが可能となる。
【0038】
図6は、好ましくは少なくとも1つのマーカを有するプラスチック化合物の再生材料の含有量及び/又は再生材料のリサイクルループの回数に関して、持続可能性スコアを検証するためのフローチャートの一例を示している。
【0039】
第1のステップ234では、プラスチック化合物にリンクされた(第三者の)持続可能性スコアが提供され、持続可能性スコアはプラスチック化合物生産者、製造業者、小売業者、又は廃棄物処理会社によって提供され得る。
【0040】
第2のステップ236では、上で説明した方法のいずれかにしたがって、プラスチック化合物の試料におけるマーカに関連付けられたスキャンデータに基づいて、持続可能性スコアが判定される。
【0041】
第3のステップ238では、プラスチック化合物を検証するために、両方の持続可能性スコア(判定されたもの及び提供されたもの)が比較され得る。例えば、比較結果が許容範囲/所定の範囲内にある場合、持続可能性スコアは有効であると考えられる。比較結果が許容可能な範囲/所定の範囲内にない場合、持続可能性スコアは、有効ではないと考えられる。
【0042】
持続可能性スコアが有効であると考えられる場合、ステップ240において、プラスチック化合物の更なる処理のための制御信号がトリガされ得る。
【0043】
持続可能性スコアが無効である場合、ステップ242において、プロセスのオペレータへの警告信号がトリガされ得る。このような警告信号は、持続可能性スコアの無効性を示すことができる。更に、停止信号がトリガされて、プラスチック化合物の更なる処理を停止/中断し得る。
【0044】
好ましい実施形態と併せて本開示を例として説明してきた。しかしながら、図面、本開示、及び特許請求の範囲を検討することにより、他の変形形態が、当業者によって、また特許請求の範囲に記載の発明を実施することによって理解され、実施され得る。とりわけ、特に記載されたステップは任意の順序で実行され得る、すなわち、本開示はこれらのステップの特定の順序に限定されるものではない。更に、異なるステップが特定の場所又は1つの場所で実行されることも必須ではない、すなわち、各ステップは、異なる装置/データ処理ユニットを使用して異なる場所で実行され得る。特許請求の範囲及び本明細書においては、「備える(comprising)」という語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数のものを排除するものではない。単一の要素又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載されたいくつかのエンティティ又は項目の機能を果たすことがある。ある手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという事実だけでは、これらの手段の組み合わせを有利な実装形態において使用することができないことを示すものではない。
【符号の説明】
【0045】
10 プラスチック化合物処理装置
11 波長スキャナ
12 X線発生器
13 銅製フィルタ
14 蛍光X線スキャナ
15 プログラマブルコントローラ
16 プラスチック化合物
20 ユーザ
21 製品
22 スマートフォン
23 QRコード(登録商標)
24 ユーザインターフェースのディスプレイ
30 システム
31 データベース
32 受信ユニット
33 処理ユニット
34 ブロックチェーン
40 循環型経済
41 デジタルプラットフォーム
42 プラスチック化合物生産者
43 製造業者
44 倉庫
45 小売業者
46、48 プラスチックボトル
47 廃棄物処理会社
49 選別機
50 リサイクル会社
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】