(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(54)【発明の名称】改質されたカーボン吸着剤
(51)【国際特許分類】
B01J 20/20 20060101AFI20231124BHJP
B01D 53/02 20060101ALI20231124BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20231124BHJP
C01B 32/354 20170101ALI20231124BHJP
【FI】
B01J20/20 A
B01D53/02
B01J20/28 Z
C01B32/354
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530037
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 US2021058689
(87)【国際公開番号】W WO2022108791
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スリバスタバ, リーナ
(72)【発明者】
【氏名】シェ, バオクアン
(72)【発明者】
【氏名】ベランガー, フランク ヴィー.
(72)【発明者】
【氏名】ギプソン, ロッキー ディー.
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4D012BA03
4D012CA10
4D012CA20
4D012CG01
4D012CG02
4D012CG05
4G066AA06B
4G066AA32D
4G066AA34D
4G066AA47D
4G066AA50D
4G066AA53D
4G066AC39A
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4G066BA25
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4G066BA38
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4G146AA06
4G146AB01
4G146AC04B
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4G146AC28B
4G146AD32
4G146BA01
4G146BD13
4G146CA08
(57)【要約】
希薄無機酸で処理してその表面化学および表面形態を改質させた特定の活性炭素質材料を提供する。本開示の改質された活性炭素質材料は、ガス流から特定の汚染物質を除去するのに有用である。一実施形態において、汚染物質は、アルキルシラノールおよびアルキルシロキサン等のケイ素部分および酸素部分を含有する化合物である。改質された活性炭素質材料は、フィルターおよびフィルターシステム内に組み込むことができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭素質材料を含む吸着剤であって、前記材料が、
(i)一次マイクロ細孔および二次マイクロ細孔を含むマイクロ細孔、
(ii)メソ細孔、および
(iii)マクロ細孔、
を含み、
前記材料が、t-プロット法を使用して測定されるマイクロ細孔のメソ細孔に対する約13以上~約17以下の表面積比を有する、吸着剤。
【請求項2】
DFT法を使用して測定される細孔容積比である(一次マイクロ細孔):(二次マイクロ細孔+メソ細孔)が約0.4以上かつ約1.4以下である、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項3】
活性炭素質材料を含む吸着剤であって、前記材料が、
(i)一次マイクロ細孔および二次マイクロ細孔を含むマイクロ細孔、
(ii)メソ細孔、および
(iii)マクロ細孔、
を含み、
前記材料が、DFT法を使用して測定される約0.4以上かつ約1.4以下の細孔容積比である(一次マイクロ細孔):(二次マイクロ細孔+メソ細孔)を有する、吸着剤。
【請求項4】
材料が、BET法を使用して測定される約500以上~約1400m
2/g以下の表面積を有する、請求項1または3に記載の吸着剤。
【請求項5】
t-プロット法を使用して測定されるマイクロ細孔のメソ細孔に対する表面積比が約13以上~約15以下である、請求項1または3に記載の吸着剤。
【請求項6】
DFT法を使用した細孔容積比である(一次マイクロ細孔):(二次マイクロ細孔+メソ細孔)が約0.5以上~約1.35以下である、請求項1または3に記載の吸着剤。
【請求項7】
活性炭素質材料を含む吸着剤であって、前記材料が約0.05~1.0Mの濃度で約1~約5のpKaを有する酸の溶液で処理され、水で洗浄された、吸着剤。
【請求項8】
請求項1、3または7のいずれか一項に記載の吸着剤を含むフィルター。
【請求項9】
ガス流から汚染物質を除去する方法であって、
約1~約5のpKaを有する少なくとも1つの酸の希溶液で処理された活性炭素質材料を含む吸着剤にガス流を接触させること、続いて水で洗浄すること、および乾燥すること
を含み、
汚染物質が、
(i)C
1~C
20のアルキルシラノール、
(ii)1つもしくは複数のハロゲン原子により置換されたC
1~C
20のシラノール、または
(iii)式(R)
3Si-O-Si(R)
3
[式中、RはC
1~C
20のアルキル、または1つもしくは複数のハロゲン原子により置換されたC
1~C
20のアルキルから選択される]の化合物
から選択される、方法。
【請求項10】
ガス流が、空気、窒素、酸素、または不活性ガスから選択されるガスを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
汚染物質がトリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリプロピルシラノール、トリイオスプロピルシラノール、およびトリブチルシラノールから選択される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
汚染物質が、(CH
3)
3Si-O-Si(CH
3)
3;(CH
3CH
2)
3Si-O-Si(CH
2CH
3)
3;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、またはそれらの任意の組合せから選択される化合物である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
酸が無機酸または有機酸である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項14】
吸着剤が、約0.05~0.5Mの濃度の硫酸の溶液で処理され、水で洗浄された活性炭素質材料である、請求項9または10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に、トリメチルシラノール等のケイ素および酸素を含有する化合物を有利に吸収するように改質された特定の炭素質材料に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の半導体製造プラントは、複数のセクションを有し、その多くが高度に特化され、かつ高価な装置の使用を要する。そのようなセクションの一つは、フォトリソグラフィー操作の使用を要する。フォトリソグラフィー操作は、パフォーマンス重視の光学システム(すなわち、レンズ)を含むスキャナー等の装置を利用する。トリアルキルシラノールおよび/またはアルキルシロキサンを含むそれらの汚染物質等の大気中またはシステム内の化学的な汚染物質が存在する場合、DUV光と酸素との組合せは、SiO2を生成する。このように生成されたSiO2は、不可逆的にレンズ上に堆積する傾向があり、これによりレンズの曇りおよびパターンの不均一性の発生をきたす。レンズは、最終的には使用に適さなくなるため、そのような汚染はこれらのレンズの必然的な交換に繋がる。従って、そのようなフォトリソグラフィー操作においてトリアルキルシラノールおよび/またはアルキルシロキサン等の大気中およびシステム内の化学的な汚染物質を除去するためのニーズが存在する。
【0003】
シロキサンは、多くの工業製品に使用されており、低分子量シロキサンの場合、室温で蒸気の形態で存在し得る。そのようなシロキサンは、トリアルキルシラノールと同様に、酸素と反応して二酸化ケイ素を生ずる可能性があり、機器や計器類上に有害な堆積物を形成し得る。
【発明の概要】
【0004】
要約すると、本開示は、希薄無機酸で処理してその表面化学および表面形態を改質させた活性炭材料に関する。本発明の改質された活性炭は、ガス流から特定の汚染物質を除去するのに有用である。一実施形態において、汚染物質は、アルキルシラノールおよびアルキルシロキサン等のケイ素部分および酸素部分を含有する化合物である。別の態様において、改質された活性炭は、フィルターおよびフィルターシステム内に組み込まれていてもよい。一実施形態において、本明細書で説明されている材料は、VaporSorbおよびSilverSetの名称の下で上市されているもの等、Entegris,Inc.,により販売されているOEMスキャナーと統合されたフィルターシステム等のスキャナープレフィルターシステムと共に利用することができる。
【0005】
本開示は、添付の図面と関連づけて各種例示的な実施形態の下記記載を考慮しながらより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の吸着剤を使用したトリメチルシラノールの除去における除去効率に対する推計容量(ppb-時間で)のグラフである。
【
図2】本開示の改質された活性炭と共に利用され得るタイプのフィルターの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈において明確な指示がない限り、複数の対象物を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、用語「または」は、文脈において明確な指示がない限り、全体的に、「および/または」を含むその意味で用いられる。
【0008】
用語「約」は、全体的に、記載された値と同等(例えば、同一の機能または結果を有する)と考えられる数の範囲を指す。多くの例において、用語「約」は、最も近い有効数字に四捨五入された数を含み得る。
【0009】
端点を使用して表現される数値範囲は、その範囲内(例えば、1から5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4および5を含む)に属する全ての数値を含む。
【0010】
本開示の一態様は、ガス流から汚染物質を除去する方法であって、約1から約5(例えば、無機酸または有機酸)のpKaを有する少なくとも1つの酸の希薄溶液で処理された活性炭素質材料を含む吸着剤に前記ガス流を接触させること、続いて水で洗浄すること、および乾燥すること
を含み、
汚染物質が、(i)C1~C20のアルキルシラノール、(ii)1つもしくは複数のハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素等)により置換されたC1~C20のシラノール、または(iii)式
(R)3Si-O-Si(R)3
[式中、RはC1~C20のアルキル、または1つもしくは複数のハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素等)により置換されたC1~C20のアルキルから選択される]
の化合物から選択される、方法を含む。
【0011】
この態様において、本開示は、基本的な特徴としてケイ素原子および酸素原子を有する様々な汚染物質を除去する容易な方法を提供する。いくつかの実施形態において、汚染物質は、大気中の空気およびシステム内プロセスフォトリソグラフィー操作において存在し得るトリメチルシラノール等のC1~C20のアルキルシラノール、および工業用グリースおよび潤滑油中に認められることのある15から20の炭素アルキル、ならびに、フルオロアルキル鎖を含有する高級炭素シロキサン等であり、従って、重要な光学システムがSiO2等の反応副生成物に曝露される手段を与える。いくつかの実施形態において、シロキサンは、(CH3)3Si-O-Si(CH3)3;(CH3CH2)3Si-O-Si(CH2CH3)3;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、またはそれらの任意の組合せから選択される。
【0012】
本開示の吸着剤は、活性炭に変換されることが可能であり得るあらゆる炭素質材料に由来し得る。そのような炭素質材料の例としては、これらに限定されないが、木材、トウモロコシの芯、コブ、コーヒー豆、モミ殻、果実の核、泥炭、褐炭、ココナッツ殻、石油および/またはピッチ炭、コークス、カーボンブラック、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。炭素質材料の形態は、厳密ではなく、顆粒、粒子、繊維、シート等から選択され得るが、顆粒が空気フィルター等の特定のガスフィルター設計において有利に使用され得る。いくつかの実施形態において、炭素質材料は顆粒状または押し出された形状である。いくつかの実施形態において、炭素質材料はココナッツ殻に由来する。本明細書において使用される場合、用語「活性炭素質材料」は、主に元素状炭素を含む高い表面積を有する固体のマイクロ細孔材料を指し、リグニン由来の炭素質材料の場合においては、活性炭が形成される元となる炭素質材料中に元来見られる少量の他の微量元素をさらに含有する。加えて、活性炭は、ポリスチレンまたはポリ(二塩化ビニル)等の、全体として合成の(すなわち、石油化学的な)源に由来するものであってもよいが、いずれの場合においても、最終的な活性炭表面は、改質後、本明細書で教示されるように、本開示の方法において効果をもたらすために必要な多孔度を有することを条件とする。この文脈において、活性炭は、その多孔度を増大させるために加工された微結晶性、非黒鉛形態のカーボンである。活性炭の表面積は、その細孔容積に依存する。単位体積あたりの表面積は、個々の細孔径が増大するにつれて減少するため、表面積は、非常に小さな寸法の細孔の数を増大させること、および/または大きな寸法の細孔の数を限定することにより最大化される。細孔径は、マイクロ細孔(細孔幅<2nm)、メソ細孔(細孔幅2~50nm)、およびマクロ細孔(細孔幅>50nm)のように、国際純正・応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)により定義される。さらにそのような活性炭において、マイクロ細孔およびメソ細孔は活性炭の吸着容量に貢献する一方で、マクロ細孔は実際には密度を低減し、カーボン体積基準で活性炭の吸着効果に対して不利である可能性がある。また、本明細書において使用される場合、用語「一次マイクロ細孔」は、0以上であるが0.8nm未満である細孔幅を指し、用語「二次マイクロ細孔」は、0.8nm以上であるが2nm未満である細孔幅を指す。
【0013】
炭素質材料の活性化は、公知の方法により実施され得る。例えば、炭素質材料は、例えば塩化亜鉛、リン酸、硫酸、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、二クロム酸カリウム、または過マンガン酸カリウム等の被酸化性化学物質により(化学物質活性化);または水蒸気、プロパンガス、CO2とH2Oとの混合物である燃焼ガスから生じる排気ガス、または二酸化炭素ガス等により(ガス活性化)活性化され得る。例えば、その全体において参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,589,904号を参照されたい。
【0014】
一般に、市販の活性炭は通常、約400~2500m2/gの範囲の表面積を有する;この特徴は、様々な汚染物質の吸着により液体とガスとの精製におけるその使用を可能とする。本開示の吸着剤は、約1~約5の範囲のpKaを有する希薄酸で処理された活性炭であり、水で洗浄され、乾燥される。いくつかの実施形態において、酸は、約1~約5、約1~約4、約1~約3、約2~約5、約2~約4、およびそれらの間の全ての範囲および部分範囲の範囲内のpKaを有する。いくつかの例において、酸は、無機酸または有機酸である。約1~約5のpKaを有する無機酸の例としては、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、または硝酸が挙げられるが、これらに限定されない。約1~約5のpKaを有する有機酸の例としては、これらに限定されないが、クエン酸、クロロ酢酸、ギ酸、乳酸、およびアスコルビン酸が挙げられる。この希薄酸処理は、その相対親水性と共に、活性炭の表面化学、ならびにその細孔径、細孔形、および細孔径分布のいずれにも影響を与えることが見出された。そのように改質された活性炭は、本明細書において説明されているもの等の汚染物質、特にトリメチルシラノールを除去するのに特に有効であることが見出された。本開示の改質された活性炭は、BET法により測定される、約500以上~約1400m2/g以下、約900以上~約1200m2/g以下、およびそれらの間の任意のかつ全ての範囲および部分範囲、例えば約1050以上~約1150m2/g以下の表面積を有し得る。加えて、本開示の改質されたカーボンは、t-プロット法により測定されるマイクロ細孔のメソ細孔に対する表面積比が、約13以上~約17以下、および約13以上~約15以下、または約14のように、それらの間のいかなるかつ全ての範囲および部分範囲を有し得る。加えて、本開示の改質されたカーボンは、約0.4以上かつ約1.4以下、および約0.5以上かつ約1.35以下、または約0.9以上かつ約1.3以下のように、それらの間の任意のかつ全ての範囲および部分範囲の、(一次マイクロ細孔):(二次マイクロ細孔+メソ細孔)のDFT法により測定される細孔容積比を有し得る。留意すべきは、本明細書で言及されるそれらの間の数値範囲の全ての可能なサブセットは、本開示中で企図される。
【0015】
従って、本開示の別の態様は、活性炭素質材料を含む吸着剤であって、前記材料がマイクロ細孔、メソ細孔、およびマクロ細孔を含み、下記特性:
a.BET法により測定される約500以上から約1400m2/g以下の表面積を有し;
b.t-プロット法により測定されるマイクロ細孔のメソ細孔に対する表面積比が、約13以上~約17以下;
c.DFT法により測定される細孔容積比である(一次マイクロ細孔):(二次マイクロ細孔+メソ細孔)が約0.4以上かつ約1.4以下
の1つまたは複数を有する吸着剤である。
【0016】
この態様の一実施形態において、吸着剤は特性aを有する。別の実施形態において、吸着剤は特性bを有する。別の実施形態において、吸着剤は特性cを有する。別の実施形態において、吸着剤は特性aおよび特性bを有する。別の実施形態において、吸着剤は特性aおよび特性cを有する。別の実施形態において、吸着剤は特性bおよび特性cを有する。別の実施形態において、吸着剤は特性a、特性b、および特性cを有する。
【0017】
上述のとおり、ある特定の実施形態において、吸着剤は顆粒状または押し出された形状である。有利には、そのような物理的な形状は、ガス流のろ過のためのフィルターモジュールへの適用、特にそのようなフローのろ過を目的とした固定床における吸着剤の使用に適応させる場合に都合の良い大きさを提供する。
【0018】
いくつかの実施形態において、希薄酸は、水中で、約0.05~約1.0M、約0.05~約0.9M、約0.05~約0.8M、約0.05~約0.7M、約0.05~約0.6M、約0.05~約0.5M、約0.05~約0.4M、約0.05~約0.3M、約0.05~約0.2M、約0.05~約0.1M、約0.1~約1.0M、約0.1~約0.9M、約0.1~約0.8M、約0.1~約0.7M、約0.1~約0.6M、約0.1~約0.5M、約0.1~約0.4M、約0.1~約0.3M、約0.1~約0.2M、約0.2~約1.0M、約0.2~約0.9M、約0.2~約0.8M、約0.2~約0.7M、約0.2~約0.6M、約0.2~約0.5M、約0.2~約0.4M、約0.2~約0.3M、およびそれらの間の全ての範囲および部分範囲の濃度で利用される。いくつかの実施形態において、酸は無機酸であり、いくつかの実施形態において、無機酸は硫酸である。
【0019】
本開示のさらなる態様は、顆粒状または押し出された活性炭素質材料を含む吸着剤であって、前記材料は、無機酸または有機酸等の約1~約5のpKaを有する少なくとも1つの酸で処理され、約0.05~1.0Mの濃度の酸の溶液で処理され、水で洗浄された吸着剤である。
【0020】
以下の実験の詳細を参照すると、処理されたカーボンは、一定濃度の標的汚染物質の連続フローに曝露され、その除去効率(RE=100*(1-吸着剤床を通過させた後の濃度/試行濃度として算出される)が測定された。容量は、吸着剤が除去できる対象汚染物質の量であり、特定のRE(除去効率)に到達するのに要した時間、および吸着剤が曝露された濃度により算出される。
【0021】
この態様の吸着剤は、トリメチルシラノールの改善された除去特性を提供し、約63,000のppb-時間において70%REで容量を示した。
【0022】
さらなる態様は、本明細書の任意の態様の吸着剤を含むフィルターを含む。
【0023】
図1におけるデータを参照すると、実施例1においてより詳細に説明されるデータは、カーボンのTMS除去能力に対するGAC(顆粒化された活性炭)Aの処理の影響を示す。GAC Aは、約21,000ppb-時間の容量を示すが、表面改質後(GAC B)は3倍容量増加の63,000ppb-時間を示す。GAC Cは、その初期の除去効率がこの試験の終点と判断される70%未満であるため、
図1では示されていない。
【0024】
図2は、本開示の改質された活性炭素質材料を格納する手段としての本開示の様式に従ったフィルターカートリッジシステム100の図である。使い捨てフィルターカートリッジ101は、再利用可能な金属枠内に嵌合し得る(図示せず)。その全体において参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2019/0291027A1号も参照されたい。
【実施例】
【0025】
実施例1
20gのココナッツ殻由来の顆粒状の活性炭(GAC)の試料、(最小活性60%-CCl4)をビーカー内に入れ、50mLの0.1MH2SO4で処理し、室温で15分間静置した。続いて、混合物を4時間撹拌した後に約30分間静置して落ち着かせ、その時点でpHは2.101であると特定された。得られた炭素質材料を取り出し、脱イオン水ですすいだ(2回)。次いで、炭素質材料を210℃でエアフローなしのオーブン内に入れ、24時間乾燥させた。
【0026】
炭素質材料の特徴づけ
以下の表は、本開示の顆粒化された活性炭の様々な物理的な性質を記載する。
【0027】
下記表2において、表面積(SA)は、BET(ブルナウアー、エメットおよびテラー)法を使用するための装置セットと共にAnton-Paarから入手可能なAutosorb iQ装置を使用して決定される。従って、このデータは、試料の質量あたりの面積の単位(m2/g)で表される。
【0028】
下記表2において、細孔容積(PV)、ならびに細孔容積および表面積のための細孔径分布(PSD)は、DFT(密度汎関数理論)法を使用するための装置セットと共にAnton-Paarから入手可能なAutosorb iQ装置を使用して決定される。DFTは、分子モデリングに基づいており、吸着質の吸着剤表面との直接的な相互作用、マイクロ細孔充填プロセス(凝縮プロセスではない)、吸着されたフィルム厚さの発達、ならびに毛管凝縮(吸着)および毛管蒸発(脱離)を考慮に入れている。下記表においてPVは細孔容積であり、SAは表面積である。
【0029】
表3の情報-細孔容積、マイクロ細孔表面積、外部の表面積、および表面積比は、t-プロット法を使用して算出されたAnton-Paarから入手可能なAutosorb iQ装置を使用して得られ、決定される。
【0030】
上記表2から理解できるように、処理されていない試料GAC Aと比べて、処理された試料GAC BおよびGAC CのPV比が低下した。上記表3から理解できるように、処理されていない試料GAC Aと比べて、処理された試料GAC BおよびGAC Cの表面積比が低下した。
【0031】
態様
第1の態様において、本開示は、活性炭素質材料を含む吸着剤であって、前記材料が約0.05~1.0Mの濃度で約1~約5のpKaを有する酸の溶液で処理され、水で洗浄された吸着剤を提供する。
【0032】
第2の態様において、本開示は、酸が塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸および硝酸から選択される無機酸である、第1の態様の吸着剤を提供する。
【0033】
第3の態様において、本開示は、無機酸が約0.05M~約0.5Mの濃度の硫酸である、第1のまたは第2の態様の吸着剤吸着剤を提供する。
【0034】
第4の態様において、本開示は、酸が有機酸である、第1の態様の吸着剤を提供する。
【0035】
第5の態様において、本開示は、活性炭素質材料を含む吸着剤であって、前記材料が、
(i)一次マイクロ細孔および二次マイクロ細孔を含むマイクロ細孔、(ii)メソ細孔、および(iii)マクロ細孔、を含み、下記特性:t-プロット法を使用して測定されるマイクロ細孔のメソ細孔に対する約13~約17以下の表面積比
を有する吸着剤を提供する。
【0036】
第6の態様において、本開示は、活性炭素質材料を含む吸着剤であって、前記材料が、
(i)一次マイクロ細孔および二次マイクロ細孔を含むマイクロ細孔、(ii)メソ細孔、および(iii)マクロ細孔、
を含み、下記特性:
a.DFT法を使用して測定される約0.4以上かつ約1.4以下の細孔容積比である(一次マイクロ細孔):(二次マイクロ細孔+メソ細孔)
を有する吸着剤を提供する。
【0037】
第7の態様において、本開示は、マイクロ細孔が、BET法を使用して測定される約500以上~約1400m2/g以下の表面積を有する、第5または第6の態様の吸着剤を提供する。
【0038】
第8の態様において、本開示は、マイクロ細孔が、BET法を使用して測定される約900以上~約1200m2/g以下の表面積を有する、第5から第7の態様の吸着剤を提供する。
【0039】
第9の態様において、本開示は、マイクロ細孔が、BET法を使用して測定される約1050以上~約1150m2/g以下の表面積を有する、第5から第8の態様のいずれかの吸着剤を提供する。
【0040】
第10の態様において、本開示は、t-プロット法を使用して測定されるマイクロ細孔のメソ細孔に対する表面積比が、約13以上~約15以下である、第5から第9のいずれかの態様の吸着剤を提供する。
【0041】
第11の態様において、t-プロット法を使用して測定されるマイクロ細孔のメソ細孔に対する表面積比が約14である、第5から第10の態様のいずれかの吸着剤を提供する。
【0042】
第12の態様において、本開示は、DFT法を使用して測定される細孔容積比である(一次マイクロ細孔):(二次マイクロ細孔+メソ細孔)が約0.5以上~約1.35以下である、第5から第11の態様のいずれかの吸着剤を提供する。
【0043】
第13の態様において、本開示は、DFT法を使用して測定される細孔容積比である(一次マイクロ細孔):(二次マイクロ細孔+メソ細孔)が約0.9以上かつ約1.3以下である、第5から第12の態様のいずれかの吸着剤を提供する。
【0044】
第14の態様において、本開示は、炭素質材料がココナッツ殻に由来する、第1から第13の態様のいずれかの吸着剤を提供する。
【0045】
第15の態様において、本開示は、第1から第14の態様のいずれか1つの吸着剤を含むフィルターを提供する。
【0046】
第16の態様において、本開示は、ガス流から汚染物質を除去する方法であって、
約1~約5のpKaを有する少なくとも1つの酸の希薄溶液で処理された活性炭素質材料を含む吸着剤にガス流を接触させること、続いて水で洗浄すること、および乾燥することを含み、
汚染物質が、(i)C1~C20のアルキルシラノール、(ii)1つまたは複数のハロゲン原子により置換されたC1~C20のシラノール、および(iii)式
(R)3Si-O-Si(R)3
[式中、RはC1~C20のアルキル、および1つまたは複数のハロゲン原子により置換されたC1~C20のアルキルから選択される]
の化合物から選択される方法を提供する。
【0047】
第17の態様において、本開示は、ガス流が、空気、窒素、酸素、または不活性ガスから選択されるガスで構成される、第15の態様の方法を提供する。
【0048】
第18の態様において、本開示は、汚染物質がトリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリプロピルシラノール、トリイオスプロピルシラノール(triiospropyl silanol)、およびトリブチルシラノールから選択される、第15または第17の態様の方法を提供する。
【0049】
第19の態様において、本開示は、汚染物質がトリメチルシラノールである、第16、第17、第18の態様の方法を提供する。
【0050】
第20の態様において、本開示は、汚染物質が、
(CH3)3Si-O-Si(CH3)3;(CH3CH2)3Si-O-Si(CH2CH3)3;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、またはそれらの任意の組合せから選択される化合物である、第16または第17の態様の方法を提供する。
【0051】
第21の態様において、本開示は、ガス流が空気であり、汚染物質がトリメチルシラノールである、第16から第19の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0052】
第22の態様において、本開示は、吸着剤が約0.05~1.0Mの濃度の硫酸の溶液で処理され、水で洗浄された活性炭素質材料である、第16から第21の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0053】
第23の態様において、本開示は、吸着剤が水中で約0.05~約0.15Mの濃度の硫酸の溶液で処理された活性炭素質材料である、第16から第21の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0054】
第24の態様において、本開示は、活性炭素質材料が顆粒状または押し出された活性炭である、第16から第23の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0055】
第25の態様において、本開示は活性炭素質材料がリグニン源に由来する、第16から第24の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0056】
第26の態様において、本開示は、活性炭素質材料がココナッツ殻に由来する、第16から第24のいずれかの方法を提供する。
【0057】
第27の態様において、本開示は、酸が無機酸または有機酸である、第16から第26の態様のいずれかの方法を提供する。
【0058】
このように本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書に添付した請求項の範囲内でさらに他の実施形態を実施および使用され得ることを容易に理解するであろう。本書類により網羅される開示の数多くの利点が、前述の説明に記載されている。しかしながら、本開示は、多くの点で、例示に過ぎないことが理解され得る。本開示の範囲は、当然ではあるが、添付の特許請求の範囲が表されている言語で定義される。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭素質材料を含む吸着剤であって、活性炭素質材料が、
(i)一次マイクロ細孔及び二次マイクロ細孔を含むマイクロ細孔、
(ii)メソ細孔、並びに
(iii)マクロ細孔、
を含み、
活性炭素質材料が、t-プロット法を使用して測定されるマイクロ細孔のメソ細孔に対する約13以上~約17以下の表面積比を有する、吸着剤。
【請求項2】
DFT法を使用して測定される細孔容積比である(一次マイクロ細孔):(二次マイクロ細孔+メソ細孔)が約0.4以上かつ約1.4以下である、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項3】
活性炭素質材料が、BET法を使用して測定される約500以上~約1400m
2/g以下の表面積を有する、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項4】
t-プロット法を使用して測定されるマイクロ細孔のメソ細孔に対する表面積比が約13以上~約15以下である、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項5】
DFT法を使用した細孔容積比である(一次マイクロ細孔):(二次マイクロ細孔+メソ細孔)が約0.5以上~約1.35以下である、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項6】
活性炭素質材料を含む吸着剤であって、活性炭素質材料が、
(i)一次マイクロ細孔及び二次マイクロ細孔を含むマイクロ細孔、
(ii)メソ細孔、並びに
(iii)マクロ細孔、
を含み、
活性炭素質材料が、DFT法を使用して測定される約0.4以上かつ約1.4以下の細孔容積比である(一次マイクロ細孔):(二次マイクロ細孔+メソ細孔)を有する、吸着剤。
【請求項7】
活性炭素質材料が、BET法を使用して測定される約500以上~約1400m
2/g以下の表面積を有する、請求項6に記載の吸着剤。
【請求項8】
t-プロット法を使用して測定されるマイクロ細孔のメソ細孔に対する表面積比が約13以上~約15以下である、請求項6に記載の吸着剤。
【請求項9】
DFT法を使用した細孔容積比である(一次マイクロ細孔):(二次マイクロ細孔+メソ細孔)が約0.5以上~約1.35以下である、請求項6に記載の吸着剤。
【請求項10】
活性炭素質材料を含む吸着剤であって、活性炭素質材料が約0.05~1.0Mの濃度で約1~約5のpKaを有する酸の溶液で処理され、水で洗浄された、吸着剤。
【請求項11】
請求項1に記載の吸着剤を含むフィルター。
【請求項12】
請求項6に記載の吸着剤を含むフィルター。
【請求項13】
請求項10に記載の吸着剤を含むフィルター。
【請求項14】
ガス流から汚染物質を除去する方法であって、
約1~約5のpKaを有する少なくとも1つの酸の希溶液で処理された活性炭素質材料を含む吸着剤にガス流を接触させること、続いて水で洗浄すること、及び乾燥すること
を含み、
汚染物質が、
(i)C
1~C
20のアルキルシラノール、
(ii)1つ若しくは複数のハロゲン原子により置換されたC
1~C
20のシラノール、又は
(iii)式(R)
3Si-O-Si(R)
3
[式中、RはC
1~C
20のアルキル、又は1つ若しくは複数のハロゲン原子により置換されたC
1~C
20のアルキルから選択される]の化合物
から選択される、方法。
【請求項15】
汚染物質がトリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリプロピルシラノール、トリイソプロピルシラノール、及びトリブチルシラノールから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
汚染物質が、(CH
3)
3Si-O-Si(CH
3)
3;(CH
3CH
2)
3Si-O-Si(CH
2CH
3)
3;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、又はそれらの任意の組合せから選択される化合物である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
酸が無機酸又は有機酸である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
吸着剤が、約0.05~0.5Mの濃度の硫酸の溶液で処理され、水で洗浄された活性炭素質材料である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
ガス流が、空気、窒素、酸素、又は不活性ガスから選択されるガスを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
汚染物質がトリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリプロピルシラノール、トリイソプロピルシラノール、及びトリブチルシラノールから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
汚染物質が、(CH
3)
3Si-O-Si(CH
3)
3;(CH
3CH
2)
3Si-O-Si(CH
2CH
3)
3;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、又はそれらの任意の組合せから選択される化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
酸が無機酸又は有機酸である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
吸着剤が、約0.05~0.5Mの濃度の硫酸の溶液で処理され、水で洗浄された活性炭素質材料である、請求項19に記載の方法。
【国際調査報告】