(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-05
(54)【発明の名称】全有機体炭素のインライン測定による水浄化システム及びその操作方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20230101AFI20231128BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20231128BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20231128BHJP
【FI】
C02F1/32
C02F1/42 A
C02F1/28 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532119
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2021082570
(87)【国際公開番号】W WO2022112195
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペルセヴォールト,グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ディディエ
【テーマコード(参考)】
4D025
4D037
4D624
【Fターム(参考)】
4D025AA01
4D025BA08
4D025BA13
4D025BB01
4D025CA05
4D025DA03
4D025DA04
4D037AA01
4D037AB02
4D037BA18
4D037BB02
4D037CA01
4D037CA15
4D624AA01
4D624BA02
4D624CA01
4D624DA04
4D624DB10
4D624DB19
(57)【要約】
本願は、全有機体炭素(TOC)含有量のインライン測定を備えた水浄化システムおよび方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水浄化システム(100)であって、以下、
(a)順に紫外線照射処理ステップ(105)およびポリッシャー(107)を含み、好ましくは本質的にそれらからなる、浄化ステージ(104);および
(b)前記紫外線照射処理ステップ(105)の下流かつポリッシャー(107)の上流に位置する、全有機体炭素含有量を測定するためのデバイス(106)、
(c)測定ループ、
を含み、
前記測定ループは、前記浄化ステージ(104)および全有機体炭素を測定するためのデバイス(106)を含む、
前記水浄化システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水浄化システム(100)であって順に以下
(a’)給水口(101)と;
(b’)水浄化フローであって、順に以下
(b1’)ポンプ(102)と;
(b2’)水を第1の水純度グレードに浄化する第1浄化ステージ(103)と;
(b3’)前記第1の水純度グレードよりも高い第2の水純度グレードに水を浄化する、前記紫外線照射処理ステップ(105)および前記ポリッシャー(107)を順に含み、好ましくは、それらからなる第2浄化ステージ(104)と;および
(b4’)分配セクション(108)と;
を含む前記水浄化フローと;および
(c’)前記分配セクション(108)の下流の位置から前記給水口(101)の下流かつポンプ(102)の上流の位置へ前記水浄化フローを液体的に接続するリサイクルライン(R)と;
を含み、
ここで、水浄化フローおよび/またはリサイクルライン(R)は、第1浄化ステージ(103)をバイパスすることを可能にするように適合されており、それによって測定ループを確立する、
前記水浄化システム(100)。
【請求項3】
水浄化システム(100)が、ポンプの下流かつ第1浄化ステージの上流に位置する分岐点から、第1浄化ステージの下流かつ第2浄化ステージの上流の位置へ水浄化フローを液体的に接続する接続ラインC1を含み、該接続ラインを通って水の流れは第1浄化ステージをバイパスすることができる、請求項2に記載の水浄化システム(100)。
【請求項4】
水浄化システム(100)が、分岐点で二方弁または三方弁を含み;もしくは
水浄化システム(100)が、分岐点の下流かつ第1浄化ステージの上流に水浄化フロー内に位置する第1弁、および接続ラインC1に位置する第2弁を含む、
請求項3に記載の水浄化システム(100)。
【請求項5】
水浄化システム(100)が、リサイクルライン(R)を水浄化フローに第1浄化ステージの下流かつ第2浄化ステージの上流の位置にて液体的に接続する接続ラインC2を含み、およびここで接続ラインC2は循環ポンプを好ましくは含む、請求項1または2に記載の水浄化システム(100)。
【請求項6】
第1浄化ステージが、カチオンイオン交換体、アニオンイオン交換体、および活性炭からなる群から選択される1以上の浄化媒体を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の水浄化システム。
【請求項7】
紫外線照射処理デバイスが、好ましくは少なくとも150nmの範囲の波長を有する放射線を放出する紫外線照射源を含み、かかる紫外線照射源が好ましくは低圧水銀灯、冷陰極水銀灯、およびエキシマランプからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の水浄化システム。
【請求項8】
ポリッシャーが、活性炭、カチオンイオン交換体、およびアニオンイオン交換体からなる群より選択されるいずれか1以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の水浄化システム。
【請求項9】
水浄化システム(100)の操作プロセスであって、該水浄化システム(100)が、以下
(a)順に紫外線照射処理ステップ(105)およびポリッシャー(107)を含み、好ましくは本質的にそれらからなる、浄化ステージ(104);および
(b)前記紫外線照射処理ステップ(105)の下流かつポリッシャー(107)の上流に位置する全有機体炭素含有量を判定するためのデバイス(106)、
(c)測定ループ、
を含み、
前記測定ループは、前記浄化ステージ(104)および全有機体炭素を判定するためのデバイス(106)を含み、
ここでプロセスは、以下のステップ
(1)水を浄化ステージ(104)の中を通すこと、それにより浄化水を獲得すること;および
(2)浄化水を測定ループの中を通すことおよびデバイス(106)を使用することで浄化水に含まれる全有機体炭素含有量を判定すること
を含む、
前記操作プロセス。
【請求項10】
請求項9に記載の水浄化システム(100)を操作するためのプロセスであって、該水浄化システム(100)が、
(a’)給水口(101)と;
(b’)水浄化フローであって、順に以下
(b1’)ポンプ(102)と;
(b2’)水を第1の水純度グレードに浄化する第1浄化ステージ(103)と;
(b3’)前記第1の水質グレードよりも高い第2の水質グレードに水を浄化する、紫外線照射処理ステップ(105)およびポリッシャー(107)を順に含み、好ましくはそれらからなる、第2浄化ステージ(104)と;および
(b4’)分配セクション(109)と;
を含む前記水浄化フローと;および
(c’)前記分配セクション(109)の下流の位置から前記給水口(101)の下流かつポンプ(102)の上流の位置へ前記水浄化フローを液体的に接続するリサイクルライン(R)と;
を含み、
前記プロセスが、以下のステップ
(1’)給水口(101)を介して水を提供すること;
(2’)水浄化フローに水を通過させ、浄化水を得ること;
(3’)ステップ(2’)で得られた浄化水を分配すること;および
(4’)第1浄化ステージ(103)をバイパスして浄化水を測定ループに通すことによって全有機体化合物のレベルを判定し、全有機体炭素を測定するデバイス(106)によって全有機体炭素の含有量を判定すること、を含む、
前記プロセス。
【請求項11】
請求項10に記載の水浄化システム(100)を操作するためのプロセスであって、該水浄化システム(100)が、水浄化フローをポンプ(102)の下流かつ第1浄化ステージ(103)の上流に位置する分岐点から第1浄化ステージ(103)の下流かつ第2浄化ステージ(104)の上流の位置へ液体的に接続する接続ラインC1を含み、該接続ラインC1を通って水の流れは第1浄化ステージ(103)をバイパスすることができ、
ステップ(4’)において第1浄化ステージ(103)は、分岐点の下流かつ第1浄化ステージ(103)の上流で水浄化フローを遮断し、水が接続ラインC1を介して第2浄化ステージ(104)へと通過することを可能にすることによってバイパスされる、
前記プロセス。
【請求項12】
請求項11に記載の水浄化システム(100)を操作するプロセスであって、該水浄化システム(100)が分岐点にて
(i)二方弁または三方弁(111)、
または
(ii)水浄化フローにおいて分岐点の下流かつ第1浄化ステージ(103)の上流に位置する第1弁(111a)、および接続ラインC1に位置する第2弁(111b)、
を含む、前記プロセス。
【請求項13】
請求項10に記載の水浄化システム(100)を操作するプロセスであって、該水浄化システム(100)が、リサイクルライン(R)を第1浄化ステージ(103)の下流かつ第2浄化ステージ(104)の上流の位置で水浄化フローへと液体的に接続する接続ラインC2を含み、および
接続ラインC2が循環ポンプ(112)を好ましくは含み、
ステップ(4’)において、第1浄化ステージ(103)が、接続ラインC2中に水を強制的に通すことによりバイパスされる、
前記プロセス。
【請求項14】
請求項9~13のいずれか一項に記載の水浄化システム(100)を操作するプロセスであって、存在する場合には請求項6に定義される第1浄化ステージ(103)、請求項7に定義される第2浄化ステージ(104)、および請求項8に定義されるポリッシャー(107)、からなる群より選択される1以上を含む、前記プロセス。
【請求項15】
請求項9~13のいずれか一項に記載の水浄化システム(100)を操作するプロセスであって、ステップ(4’)に続いて浄化水を前記水浄化フローおよび前記リサイクルライン(R)に順次通すことにより浄化水をリサイクルするステップを含む、前記プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全有機体炭素(TOC)含有量のインライン測定を備える水浄化システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
製薬、ライフサイエンス、半導体分野などの用途では、例えば、望ましくない副反応を引き起こし、および/または分析または製造プロセスの再現性に悪影響を及ぼす可能性のある汚染物質が含まれている可能性があるため天然水または蛇口から来る水(「水道水」)が十分に純粋ではない場合がある。したがって、対象となる用途に応じて、水中に含まれる汚染物質を部分的にまたは可能な限り除去することにより、水の純度を向上させなければならない。しばしば「超高純度」として、またはASTM D1193-06に従って「タイプI」水として表示される最高純度の水は、例えば、少なくとも18.0MΩ・cmの比抵抗率および最大5ppbの全有機体炭素(TOC)によって特徴付けられる。
【0003】
超純水またはタイプI水を製造することを可能にする水浄化システムは、そのようなものとして知られている。水道水から水を浄化するように設計された一体型水浄化システムは、例えば、ろ過、逆浸透、電気脱イオン、紫外線照射処理、イオン交換ステップなどの様々な水浄化ステップを含む。一般に、このような浄化システムは、水道水が第1の純度グレード(例えば、ASTM D1193-06で定義されているタイプ2またはそれ以下)に浄化される第1浄化ステージ、および、第1浄化ステージからの予備浄化水が、より高い純度(例えば、ASTM D1193-06により定義されるタイプ1)にさらに浄化され、次いで、システムから分配され、使用することができる、第2浄化ステージを含む。
【0004】
超高純度レベルまで水を浄化することは、汚染物質の許容レベルが非常に低いため、課題である。したがって、水浄化システムおよび分配セクション内の汚染物質の蓄積を回避するために、例えば、システムから水が分配されない場合、浄化水は、例えば、第1および第2浄化ステージを通じた連続的な再循環によって、システム全体に継続的に再循環される必要がある。
分配された水が所望の純度に対応することを確実にするために、ユーザは、浄化水の多数の特性を継続的にまたは少なくとも定期的に監視することができる浄化システムに関心を有している。これらの特性のいくつかは比較的簡単に測定できるものの、全有機体炭素(TOC)含有量を確実に判定することはかなり難しいことが証明されている。
【0005】
US5,677,190Aは、紫外線照射への曝露中の液体サンプルの電気的特性を測定するための測定セルおよび回路を開示している。CO2への酸化による水中のTOCの測定のための一つの実施態様では、紫外線照射は低圧水銀ランプによって生成される。測定セル内の水サンプルは、導電率が増加しなくなるまで照射され、それは水中に元々存在していたすべての有機成分が酸化されたことを意味する。次いで照射前後の導電率の差を全有機体炭素含有量に計算する。この方法は非常に正確ではあるが、かなり時間がかかり、TOC含有量の判定に特化した追加の機器もまた必要とする。
【0006】
US5,272,091Aは、水浄化システムから排出される水の有機体炭素含有量を予測するための方法を開示しており、ここで、水は過去の水源、例えば、水浄化システムに含まれる紫外線光源から導かれる。次いで、浄化モード比抵抗率と組み合わせた基準モード比抵抗率変化を用いて、浄化水に対する値が得られ、これを水浄化システムから排出される水の炭素含有量と関連付けて、水浄化システムから排出される水の炭素含有量を予測することができる。
【0007】
EP0498888A1は、超純水中の全有機体の量を測定する方法で、イオン交換処理の適用により比抵抗値が既知の一定値に設定された超純水に紫外線を照射し、上記一定の比抵抗値から異なる地点で継続的に測定された超純水の比抵抗値を差し引いて減少分を算出し、CO2の発生量と減少の相関関係に基づいて全有機体炭素含有量を求める方法を開示している。
【0008】
US5,272,091AおよびEP0498888A1に開示されている方法は、水浄化システムにすでに存在する機器を使用してTOC含有量を判定する経済的かつ簡単な方途を提案するが、TOC含有量は紫外線照射源の直後(すなわち下流)であるが第2の浄化ステップの前(すなわち、その上流)に判定されるので、このようにして得られる値は、水浄化システムから分配される水の実際のTOC含有量に必ずしも対応しない可能性があるため、まだ改善の余地がある。さらに、第1浄化ステージが完全にパフォーマンスを発揮しなくなったが、そのようなパフォーマンスの欠如が第2浄化ステージによって補完される場合には、これらの方法は、TOCの所望レベルよりも高い誤った警報につながる可能性がある。
【0009】
したがって、産業界には水浄化システムから超純水を分配する時点での全有機体炭素(TOC)含有量を判定することを可能にする改良された浄化システムおよび方法で、好ましくは、水浄化システムにおける追加の、おそらく技術的に複雑でおよび/または高価である構成要素の設置を必要としない、そのような浄化システムおよび方法へのニーズがある。好ましくは、このような浄化システムおよび方法は、維持の要求の増加にもつながるべきではない。
【発明の概要】
【0010】
概要
本発明者らは、驚くべきことに、上記の目的が、本願の水浄化システムおよび方法によって個々にまたは任意の組み合わせで達成され得ることを見出した。
【0011】
したがって、本出願は、
水浄化システム(100)であって、以下、
(a)順に紫外線照射処理ステップ(105)およびポリッシャー(107)を含み、好ましくは本質的にそれらからなる浄化ステージ(104);および
(b)前記紫外線照射処理ステップ(105)の下流かつポリッシャー(107)の上流に位置する全有機体炭素含有量を測定するためのデバイス(106)、
(c)測定ループ
を含み、
前記測定ループは前記浄化ステージ(104)および全有機体炭素を測定するためのデバイス(106)を含む、
前記水浄化システムを提供する。
【0012】
したがって、本出願はまた、水浄化システム(100)の操作プロセスであって、
水浄化システム(100)が以下、
(a)順に紫外線照射処理ステップ(105)およびポリッシャー(107)を含み、好ましくは本質的にそれらからなる浄化ステージ(104);および
(b)前記紫外線照射処理ステップ(105)の下流、かつポリッシャー(107)の上流に位置する全有機体炭素含有量を判定するためのデバイス(106)、
(c)測定ループ、
を含み、
前記測定ループは、前記水浄化ステージ(104)および全有機体炭素を測定するためのデバイス(106)を含み、
ここでプロセスは、以下のステップ
(1)水を浄化ステージ(104)の中を通すこと、それにより浄化水を獲得すること;および
(2)浄化水を測定ループの中を通すことおよびデバイス(106)を使用することで浄化水に含まれる全有機体炭素の含有量を判定すること、
を含む、
前記操作プロセスも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1は、接続ラインC1と二方弁または三方弁(111)とを備える本水浄化システムの例示的な概略図を示す。
【
図2】
図2は、接続ラインC1と2つの弁(111a)と(111b)とを併せて備える本水浄化システムの例示的な概略図を示す。
【0014】
【
図3】
図3は、接続ラインC2を備える本水浄化システムの例示的な概略図を示す。
【
図4】
図4は、好ましい水分配セクション(109)と、全有機体炭素含有量を判定するためのデバイス(108)、弁(110)、およびリサイクルライン(R)の一部の概略例示を示す。
【
図5a】
図5aは、分配モードにおける接続ラインC1と二方弁または三方弁(111)とを備える本水浄化システムを通る水の流れの例示的な概略図を示す。
【
図5b】
図5bは、測定モードにおける接続ラインC1と二方弁または三方弁(111)とを備える本水浄化システムを通る水の流れの例示的な概略図を示す。
【
図5c】
図5cは、リサイクル(re-cycling)モードにおける接続ラインC1と二方弁または三方弁(111)とを備える本水浄化システムを通る水の流れの例示的な概略図を示す。
【0015】
【
図6a】
図6aは、分配モードの接続ラインC2を備える本水浄化システムを通る水の流れの例示的な概略図を示す。
【
図6b】
図6bは、測定モードの接続ラインC2を備える本水浄化システムを通る水の流れの例示的な概略図を示す。
【
図6c】
図6cは、リサイクルモードの接続ラインC2を備える本水浄化システムを通る水の流れの例示的な概略図を示す。
【
図7】
図7は、実施例1の第1浄化ステージから来る水(連続線を参照)および分配水(破線を参照)の全有機体炭素含有量(TOC)を示す。
【
図8】
図8は、実施例2の比抵抗率曲線およびTOC曲線を示す。
【0016】
【
図9】
図9は、実施例4についての比抵抗率曲線およびTOC曲線を示す。
【0017】
図5a、5b、5c、6a、6b、および6cにおいて点線および記号は、それぞれの図で表される特定のモードで使用されていないそれぞれの描かれた水浄化システムの構成要素を示す。
本願全体を通して、図を含め同一の構成要素等は、対応する参照符号で示される。
図中、矢印は、本願の水浄化システムを通る水の流れの一般的な方向を示すために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
本明細書で使用される場合、用語「上流」は、水浄化システム内の水の流れと反対の方向を意味する、すなわち給水口に向かう方向を意味するために使用される。別の言い方をすれば、上流に行くことは、分配セクションから給水口への方向を意味する。
本明細書で使用される場合、用語「下流」は、浄化システム内の水の一般的な流れを伴う方向を意味する、すなわち水出口に向かう方向を意味するために使用される。別の言い方をすれば、下流に行くことは、給水口から水分配セクションへの方向を意味する。
本明細書において、水浄化ステージとの文脈において、用語「本質的に~からなる」、「本質的に~からなる(三人称単数主語、consists of)」、および「本質的に~からなっている」は、それぞれのステージが水浄化のためのさらなる手段(水中に含まれる汚染物質を除去するための手段など)を備えないことを表示するために使用されるが、それにもかかわらず、例えば、温度センサ、フローセンサ、圧力センサ、導電率測定デバイス、フロー制御、弁からなる非限定的な群から選択される1つ以上の補助デバイスを備えてもよい。
【0019】
本明細書で使用される場合、「水浄化フロー」、「測定ループ」、および「リサイクルフロー」という用語は、本件の水浄化システムを通過する水のための継続的に液体的に接続された流路を表示するために使用される。
本明細書で使用される場合、用語「UV」および「紫外線」は、一般に、および別段限定されない場合、少なくとも100nmおよび最大400nmの波長を有する電磁放射を表示するために使用される。
【0020】
一般的に言えば、本出願は、超高純度、すなわちタイプIの水を製造するための水浄化システムに関する。特に、本願は、(a)浄化ステージ、(b)全有機体炭素(TOC)含有量を測定するデバイス、および(c)測定ループを含む水浄化システムに関する。
(a)の下に表示される浄化ステージは、明確さの理由から本出願全体を通して一般に「第2浄化ステージ」と称されるが、順に紫外線照射処理ステップとポリッシャーとを含み、好ましくは本質的にそれらからなる。
全有機体炭素含有量を測定するデバイスは、第2浄化ステージ内の紫外線照射処理ステップの下流かつポリッシャーの上流の地点に位置する。このような全有機体炭素含有量を測定するためのデバイスは、好ましくは導電率を測定するためのデバイスであり、これは要するに、この出願全体を通して「導電率セル」とされることもある。このような導電率セルは、一般に温度センサと関連している。
【0021】
測定ループは、紫外線照射処理ステップおよびポリッシャー(すなわち第2浄化ステージ)と、紫外線照射処理ステップとポリッシャーとの間に位置する全有機体炭素含有量を測定するためのデバイスとを含み、好ましくは本質的にそれらからなる。
好ましい水浄化システムは、順番に給水口、水浄化フロー、およびリサイクルライン(R)を含み、好ましくは本質的にそれらからなる。
給水口は、例えば電磁弁を備え、外部の源からの水を水浄化システムに導入する役割を果たす。このような外部の源からの水は、一般に、タイプIの水よりも純度が低く、例えば、公共用水システム(「水道水」)または例えば脱イオン水またはタイプII水を配給するシステムから来てもよい。本出願の目的のために、給水口は、本水浄化システムにおける最上流点を表すと考えられることに留意されたい。
【0022】
水浄化フローは、順番にポンプ、第1(または先行)浄化ステージ、第2浄化ステージ、および分配セクションを含み、好ましくは本質的にそれらからなり、これらはすべて本明細書で定義される通りである。
第1浄化ステージは、水を第1の水純度グレードまで、好ましくは上記の給水口を介して現在の水浄化システムに導入された水(「給水」)の水純度グレードよりも高い、第1の水純度グレードまで浄化する。
第1浄化ステージに含まれる浄化媒体(purification media)は、特に限定されるものではない。例えば本水浄化システムに供給される給水の純度に応じて、選択されてよい。好ましくは、第1浄化ステージは、カチオンイオン交換体、アニオンイオン交換体、および活性炭からなる群から選択される1つ以上の浄化媒体を含む。したがって、第1浄化ステージは、好ましくは、イオン性汚染物質および/または有機汚染物質のレベルを低下させる。
第1浄化ステージから出る水は、第1浄化ステージが完全に機能している場合であれば、25℃で最大18.2MΩ・cmの比抵抗率と、非常に低い有機汚染物質のレベルを有するはずである。
【0023】
好ましくは、第2の浄化は、第1の水純度グレードよりも高い第2の水純度グレードに水を浄化する。
好ましくは、第2浄化ステージは、順番に紫外線照射処理ステップおよびポリッシャーを含み、好ましくは本質的にそれらからなる。
第1および第2浄化ステージ、ならびに特に第2浄化ステージのために、ポリッシャーは、好ましくは使い捨てデバイス、例えば上記で定義したそれぞれの浄化媒体を含む使い捨てカートリッジ、である。
【0024】
好ましくは、前記紫外線照射処理デバイスは、好ましくは少なくとも150nmの波長を有する放射線を放出する紫外線照射源を含み、かかる紫外線照射源は好ましくは低圧水銀灯、冷陰極水銀灯、エキシマランプからなる群から選択される。
そのような紫外線照射処理デバイスにおいては、紫外線照射は有機汚染物質を少なくとも部分的に酸化し、イオン、特に炭酸イオン(CO3
2-)または炭酸水素イオン(HCO3)の生成につながる。そのようなイオンの存在および特に濃度は、次いで、関連する温度補償を有する導電率セルを用いてそれぞれの温度センサによって検出される水の温度で判定されうる。水中の有機汚染物質の酸化によって生成される追加のイオンによる導電率の増加をもって、水中の有機汚染物質の濃度/レベルは、専用のアルゴリズムを使用して計算可能である。このアルゴリズムは特に限定されない。全有機体炭素含有量の判定に関するさらなる詳細は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2018/153822A1号に見出されるが、しかしながら、そのような判定および計算は当該技術分野において周知であり、一般に詳細に説明する必要はないことに留意されたい。
【0025】
紫外線照射を使用する以外に、水中に含まれる有機汚染物質は、熱酸化、化学酸化(例えば、過酸化水素などの過酸化物を添加することによる)、紫外線過硫酸酸化、およびこれらの任意の組み合わせからなる非限定的なリストから選択される任意の方法によって酸化され得ることに留意されたい。なお、本説明は、本水浄化システムおよび方法を説明する際に紫外線照射を用いているが、そのような説明は他の方法にも同様に適用されることに留意されたい。それにもかかわらず、本水浄化システムおよび方法に対しては、紫外線照射による酸化が好ましい。
好ましくは、ポリッシャーは、活性炭、カチオンイオン交換体、およびアニオンイオン交換体からなる群から選択されるいずれか1以上の浄化媒体を含む。
好ましくは、ポリッシャーの下流かつ分配セクションの上流において、浄化水は、関連する温度センサを有する導電率セルを再び通過して、その導電率と、その結果としてその総イオン濃度と、したがってその純度と意図された目的への適合性とを判定する。したがって、この導電率セルは、存在する場合には、ユーザが現在の水浄化システムの良好な全体的な機能を評価することも可能にする。
【0026】
分配セクションは、本水浄化システムによって製造された超純水を1以上の水出口から引き出すことを可能にする。1以上の水出口は、水浄化システムの残りの部分から直接に位置してもよいし、たとえばさらに数メートル程離れて位置してもよい。1以上の出口が存在する場合、それらは順番にまたは並列に配置されてもよいが、並列に配置されることが好ましい。好ましくは、各水出口は、浄化水の分配速度(dispensing rate)および体積を制御することを可能にする分配弁を含む。分配弁は、通常閉流路を備えるタイプの電磁弁であってよい。さらに、各出口は、例えば、本水浄化システムがリサイクルモードにあるときなどの、前記水出口から浄化水が分配されない場合であっても、分配セクションを通って水を循環させることを可能にする「バイパス」を好ましくは含む。このような「バイパス」は、例えば本水浄化システムがリサイクルモードにある場合、リサイクルライン(R)の一部とみなされてもよく、または、組み合わされた水浄化フローとリサイクルフロー/リサイクルライン(R)の一部とみなされてもよい。例示的な水出口は、例えば、EP1814007A1に開示されている。
【0027】
好ましくは、ユースポイント(the point of use)、すなわち分配セクション中に含まれる浄化水出口の上流において、分配セクションは、0.22μmメンブレンまたは他の任意の適切な浄化手段を好ましくは含むフィルターエレメント(filter element)を含む。このようなフィルターエレメントは、好ましくは、細菌、発熱物質、内分泌かく乱物質、および/または揮発性有機体化合物などだが、いくつかの非限定的な例に過ぎない、微量汚染物質を取り除くように適合される。
リサイクルライン(R)は、分配セクションの下流の位置から給水口の下流かつポンプの上流の位置に水浄化フローを液体的に接続する。
水浄化フローおよび/またはリサイクルライン(R)は、第1浄化ステージをバイパスできるように適合されており、それによって測定ループが確立される。
【0028】
このようなバイパスは、ポンプの下流かつ第1浄化ステージの上流に位置する分岐点から、第1浄化ステージの下流かつ第2浄化ステージの上流へ、とりわけ紫外線照射処理ステージの上流の位置へと水浄化フローを液体的に接続する接続ラインC1を含む本水浄化システムによって達成されてよい。
よって、本水浄化システムは、分岐点で水浄化フロー中に位置する二方弁又は三方弁を好ましくは含む。この弁は、水浄化フローに沿って、または接続ラインC1に沿って水の流れを制御することを可能にし、それによって第1浄化ステージをバイパスすることを可能にする。
【0029】
代替的に、本水浄化システムは、分岐点の下流かつ第1浄化ステージの上流の水浄化フロー内に位置する第1弁と、接続ラインC1に位置する第2弁との、2つの弁を併せて好ましくは含む。よって、第1弁を閉じそして第2弁を開くことにより、水の流れは、ポンプから接続ラインC1を通って第2浄化ステージの紫外線照射処理ステップへと直接達する。逆に、第1弁を開きそして第2弁を閉じることにより、水の流れは、第1浄化ステージへ、そしてそこを通過し、次いで第2浄化ステージへと達する。前記第1弁は、例えば、二方弁であってよい。前記第2弁は、例えば、二方弁または逆止弁であってもよい。
【0030】
任意選択で、組み合わせて使用される2つの弁に加えて、逆止弁をポンプの下流かつ分岐点の上流の位置で水浄化フローに配置してもよい。逆止弁は水のバックフローを遮断、すなわち、水がポンプおよび給水口の方向へと流れることを回避する。
代替的に、かかるバイパスは第1浄化ステージの下流かつ第2浄化ステージの上流へ、とりわけ紫外線照射処理ステージの上流の位置で水浄化フローへとリサイクルライン(R)を液体的に接続する接続ラインC2を含む本水浄化システムによって達成可能である。好ましくは接続ラインC2は循環ポンプを含む。
【0031】
本出願はまた、水浄化システムを操作するためのプロセスにも関し、この水浄化システムは、(a)浄化ステージで、明確化のために本出願全体を通じて一般に「第2浄化ステージ」と呼ばれるもの、(b)全有機体炭素含有量を判定するためのデバイスであって、紫外線照射処理ステップの下流かつポリッシャーの上流に位置する本明細書に記載されるデバイス、(c)本明細書で定義される測定ループ、を含み、ここでプロセスは、(1)水を浄化ステージに通過させ、それにより浄化水を得ること、および(2)浄化水を測定ループに通し、デバイスを用いて浄化水に含まれる全有機体炭素の含有量を判定するステップを含む。
【0032】
好ましくは、本願は、水浄化システムを操作するプロセスに関し、前記水浄化システムは、(a’)給水口;(b’)本明細書で定義される水浄化フロー;および(c’)本明細書で定義されるリサイクルフロー(R)を含み、、以下のステップ
(1’)給水口を介して水を提供すること;
(2’)水浄化フローに水を通過させ、浄化水を得ること;
(3’)ステップ(2’)で得られた浄化水を分配すること;および
(4’)第1浄化ステージをバイパスして浄化水を測定ループに通すことによって全有機体化合物のレベルを判定し、全有機体炭素含有量を判定するためのデバイスによって全有機体炭素含有量を判定すること、
のステップを含む。
【0033】
前記のステップ(2’)で得られた浄化水を分配するステップ(3’)に続いて、本水浄化システムは分配モードからステップ(4’)の分配後または測定モードまで、たとえば、分配弁を閉じ、リサイクルライン(R)の弁を開くことにより、(例えば作業者による手動で)変更され、または好ましくは自動的に切り替えられる。
好ましくは、本プロセスのステップ(4’)において、第1浄化ステージは分岐点の下流かつ第1浄化ステージの上流で水浄化フローを遮断し、水が接続ラインC1を介して第2浄化ステージへと直接通過させることを可能にすることによりバイパスされ、水浄化システムは分岐点に二方弁又は三方弁を好ましくは含み、または、第1弁が分岐点の下流かつ第1浄化ステージの上流の水浄化フローにおいて位置し、第2弁は接続ラインC1に位置する。
【0034】
あるいは、本プロセスのステップ(4’)において、第1浄化ステージは好ましくは、本明細書で定義されるような接続ラインC2で、接続ラインC2中に水を強制的に通すことによりバイパスされる。
好ましくは、本プロセスは、ステップ(4’)に続いて、水浄化フローとリサイクルライン(R)を順次通過させることによって浄化水をリサイクルすることをさらに含む。本明細書において用語「リサイクル」は、水浄化フローとリサイクルライン(R)を繰り返し通過させることを表示するように使用される。このようなリサイクルにより、特に浄化水が分配されていない場合に、浄化水の潜在的な汚染物質のレベルを可能な限り低く抑えることが可能となる。
【0035】
本システムおよび方法は、ユースポイントにおける浄化水の、すなわち分配された水の、全有機体炭素含有量を判定することを可能にするが、同時に本水浄化システムおよび水浄化フローの一部に既に含まれている機器/デバイス/構成要素を利用することができる。これは、結果として、従来技術の水浄化システムと比較して本水浄化システムの単純化された設計も可能にし、ここで、全炭素含有量は、紫外線照射処理デバイスの下流にあるが、ポリッシャーの上流の水浄化フローにおいて判定される。
【0036】
以下に、現在の水浄化システムとその水浄化システムを運用するための各プロセスについて例示的な概略図を参照してさらに詳細に説明する。本水浄化システムのそれぞれの構成要素について上で与えられた定義および説明は、図中に示された対応するエレメントにも適用されることに留意されたい。
【0037】
本出願の好ましい水浄化システム(100)の概略例示を
図1に示す。システム(100)は、好ましくは本質的に、順番に、給水口(101)、ポンプ(102)、第1浄化ステージ(103)、第2浄化ステージ(105)、導電率測定のための任意のデバイス(108)(「導電率セル」)、および分配セクション(109)からなる。また、システム(100)は、リサイクルライン(R)を含む。
【0038】
浄化されるために、水は、給水口(101)を介して水浄化システム(100)に供給される。次いで、それは、水浄化フロー中へと通過し、水浄化フローは、ポンプ(102)、第1浄化ステージ(103)、浄化された超純水を獲得する第2浄化ステージ(104)、および、そこから浄化水を分配してもよい分配セクション(109)を含む。任意選択で、第2浄化ステージ(104)の下流かつ分配セクション(109)の上流に、水浄化フローが導電率セル(108)を含んでもよい。
【0039】
第2浄化ステージ(104)は、順番に紫外線処理ステージ(105)、およびポリッシャー(107)を含み、好ましくは本質的にそれらからなる。紫外線処理ステージ((105)とポリッシャー(107)の間、すなわち紫外線処理ステージ((105)の下流かつポリッシャー(107)の上流において、本水浄化システム(100)は、全有機体炭素含有量を判定するためのデバイス(106)を含む。
【0040】
デバイス(106)は、導電率測定セル(106a)と温度センサ(106b)とを含む。
導電率セル(108)が存在する場合は、ポリッシャーの下流かつ分配セクションの上流に位置する導電率測定セル(108a)および温度センサ(108b)を含み、
分配セクション(109)は、水分配弁(109b)を備え、分配される浄化水の流れを開閉可能にする。好ましくは、分配セクション(109)は、任意選択で、上記で定義したようなろ過するエレメント(109a)を開示する。
水浄化システム(100)はまた、リサイクルライン(R)を含み、これを通して、分配セクション(109)から給水口(101)とポンプ(102)の間の位置、すなわち給水口(101)の下流かつポンプ(102)の上流まで水を上流へ循環させることができる。リサイクルライン(R)および水浄化フローを介して浄化水をリサイクルすることは、浄化水が分配されない場合に、水浄化システム(100)内の既に浄化された水の高純度を維持する役割を果たす。
【0041】
分配弁(109b)と弁(110)の組み合わせで、浄化水の流れを制御することが可能となる。リサイクルライン(R)内の弁(110)を閉じたまま、分配セクション(109)に含まれる分配弁(109b)を開くことは、分配セクション(109)から浄化水を分配することを可能にする。一方で、分配弁(109b)を閉じて弁(110)を開けることで、水がリサイクルライン(R)中へと通過することが可能となる。次いで、水はリサイクルライン(R)を通過し、給水口(101)とポンプ(102)との間の場所、すなわち給水口(101)の下流かつポンプ(102)の上流に戻る。次いでそこから水は水浄化フローを通過できる。
【0042】
さらにまた、
図1に示すように本水浄化システム(100)は、二方弁又は三方弁(111)および、第1浄化ステージ(103)の下流かつ第2浄化ステージ(104)の上流の位置で水浄化フローに二方弁又は三方弁(111)とを液体的に接続する接続ラインC1を含む。二方弁または三方弁(111)は、水浄化フローに沿って、すなわち第1浄化ステージ(103)へと、または接続ラインC1中を通じて、それによって第1浄化ステージ(103)をバイパスして、水の流れを導くことを可能にする。
【0043】
図2は、本明細書で定義される別の好ましい水浄化システム(100)の概略的な例示を示しているが、
図1の水浄化システム(100)の二方弁または三方弁(111)が、水浄化フローに沿ってすなわち第1浄化ステージ(103)へとまたはその中を通って、もしくは接続線C1に沿ってのいずれかにより第1浄化ステージ(103)をバイパスし、水の流れを導くために連動して働く2つの弁(111a、111b)のシステムに置き換えられている点で、
図1の一つと異なる。これにより、弁(111a)を開くことおよび弁(111b)を閉じることは、水の流れを第1浄化ステージ(103)へと導く。一方、弁(111a)を閉じることおよび弁(111b)を開くことは、接続ラインC1に沿った水の流れを直接第2浄化ステージ(104)に導くことで、第1浄化ステージ(103)をバイパスする。弁(111a)は、例えば、二方弁であってもよい。弁(111b)は、例えば、二方弁または逆止弁(check valve)であってよい。
【0044】
図3は、本明細書で定義される別の水浄化システム(100)の概略例示を示しており、これは、
図1の水浄化システム(100)と比較して、接続ラインC2を含み、接続ラインC2は、二方弁または三方弁(111)および接続ラインC1の代わりに循環ポンプ(112)を含む。
任意選択で、
図3に描かれる水浄化システム(100)は、接続ラインC2とリサイクルライン(R)の分岐点と、リサイクルライン(R)が給水口(101)の下流かつポンプ(102)の上流の水浄化フローに帰還する点との間に弁を含んでよい。
好ましくは、接続ラインC2は、弁(110)と、給水口(101)およびポンプ(102)の間の位置との間の点でリサイクルライン(R)に接続されるか、または代替的に、
図3に描かれる水浄化システム(100)が、接続ラインC2とリサイクルライン(R)の分岐点と、リサイクルライン(R)が給水口(101)の下流かつポンプ(102)の上流で水浄化フローに帰還する地点との間の弁を備える場合、接続ラインC2は、弁(110)とそのような任意選択の弁との間の点でリサイクルライン(R)に接続される。
循環ポンプ(112)を始動させることと、ポンプ(102)を停止させることとは、測定モードで行われるように、リサイクルライン(R)から接続ラインC2中へと水流を逸れさせ、次に、第1浄化ステージ(103)の下流かつ第2浄化ステージ(104)の上流の場所で水浄化フローへと供給させ、それによって第1浄化ステージをバイパスするであろう。
【0045】
図4は、好ましい水分配セクション(109)を、任意選択の導電率セル(108)、弁(110)、およびリサイクルラインの一部(R)と共に概略例示に示すものである。このような好ましい分配システム(109)は、分配フローおよびリサイクルフローを好ましくは含む。分配フローは、順番に分配される水の体積の測定が可能なように適合された流量計(109c)、ライン(109f)、分配弁(109b)、および上記で論じたように分配される水から汚染物質を除去することを可能にするようなろ過エレメント(filtration element)(109a)、を好ましくは含み、より好ましくはそれらからなる。リサイクルフローは、接続ライン(109e)および/またはライン(109f)を介して分配フローに好ましくは接続される。リサイクルフローは、順に弁(110)の上流のリサイクルライン(R)に接続された逆止弁(109d)および出口(109h)を好ましくは含み、より好ましくはそれらからなる。さらに、分配セクション(109)の分配フローは、流量計(109c)の下流かつライン(109f)の上流側の位置から、ライン(109f)の下流かつ逆止弁(109d)の上流の位置にて分配セクション(109)のリサイクルフローへと接続される。
【0046】
本水浄化システムが分配モードにあるとき、浄化水は、ポリッシャー(107)を出て任意選択の導電率セル(108)を通過することに続いて、分配セクション入口(109g)を通って分配セクション(109)に入り、流量計(109c)およびライン(109f)を通過し、分配弁(109b)およびろ過エレメント(109a)を介して分配される。
本水浄化システムが測定およびリサイクルモードにあるとき、浄化水は、ポリッシャー(107)を出て任意選択の導電率セル(108)を通過することに続いて、分配セクション入口(109g)を通って分配セクション(109)に入り、接続ライン(109e)および/またはライン(109f)、逆止弁(109d)、および出口(109h)を介してリサイクルライン(R)へとリサイクルされる。したがって、リサイクルフローは、分配セクション(109)の以下の部分を順番に含んでもよく:分配セクション入口(109g)、そして、接続ライン(109e)および/またはライン(109f)、逆止弁(109d)、および出口(109h)を介してリサイクルされる。
【0047】
図5a、5bおよび5cは、
図1の水浄化システム(100)における水流の概略例示を、それぞれ分配、測定、およびリサイクルモードにおいて示す。なお、
図5a、5bおよび
図5cでは分配セクション(109)、特に、本明細書中に記述したリサイクルフローの一部を形成する分配セクション(109)の部分は詳細に示されていないことに留意されたい。
図5aは、分配モードにおける
図1の水浄化システム(100)の水流の概略例示を示す。給水は、給水口(101)を介して水浄化システム(100)に供給され、そこから水が順次、第1浄化ステージ(103)、紫外線照射処理ステージ(105)、全有機体炭素含有量を判定するためのデバイス(106)、ポリッシャー(107)、任意選択の導電率セル(108)を通じ、次いで分配セクション(109)中へと通過し、そこから浄化水が分配される。
【0048】
分配が終了すると、
図1の水浄化システム(100)は、
図5bに示されている測定モードに、弁(110)を開けることおよび分配弁(109b)を閉じることにより、(手動または自動で)切り替わり、水は、ポンプ(102)、二方弁または三方弁(111)、接続ラインC1(これにより第1浄化ステージ(103)をバイパスする)、紫外線照射処理ステージ(105)、全有機体含有量を判定するためのデバイス(106)、ポリッシャー(107)、任意選択のさらなる導電率セル(108)、を通って流れ、および次いで、リサイクルライン(R)を介して、すなわち弁(110)が開いて弁(109b)が閉じられている状態で、ポンプ(102)の上流かつ給水口(101)の下流の位置までリサイクルされる。
【0049】
測定モードでは、浄化水の全有機体炭素含有量を判定するデバイス(106)により全有機体炭素含有量が判定される。
全有機体炭素含有量の判定に続いて、
図1の水浄化システム(100)は、好ましくは(手動または自動で)、
図5cに示されるリサイクルモードへと切り替えられ、ここで、水浄化システム(100)において、水は
図5aに示す分配モードの場合と本質的に同じ流れに従うが、しかし、分配セクション(109)を介して分配される代わりに、このときの浄化水は、リサイクルライン(R)を介して水浄化フローの開始点、すなわち給水口(101)の下流かつポンプ(102)の上流にリサイクルされる。
図2の水浄化システムの場合、分配、測定、およびリサイクルモードの水流は、
図1の浄化システム(100)のそれと本質的に類似しており、唯一の違いは、測定モードのためには水流が、二方弁または三方弁(111)を使用することによってではなく、弁(111a)を閉じることおよび弁(111b)を開くことによって第1浄化ステージをバイパスするように制御されることであることに留意されたい。
【0050】
同様に、
図6a、6bおよび6cは、それぞれ、分配、測定、およびリサイクルモードにおける
図3の水浄化システム(100)中の水流の概略例示図を示す。なお、
図6a、6bおよび
図6cでは、分配セクション(109)、特に上述したリサイクルフローの一部を形成する分配セクション(109)の部分は、詳細には示されていないことに留意されたい。
図6aは、分配モードにおける
図3の水浄化システム(100)の水流の概略例示を示す。給水は、給水口(101)を介して水浄化システム(100)に供給され、そこから水が順次浄化ステージ(103)、紫外線照射処理ステージ(105)、全有機体炭素含有量を判定するためのデバイス(106)、ポリッシャー(107)、任意の導電率セル(108)、次いで分配セクション(109)に入り、そこから浄化水が分配される。
【0051】
一旦分配が終了すると、
図3の水浄化システム(100)は、弁(110)を開くことおよび分配弁(109b)を閉じることによって
図6bに示すように測定モードに(手動または自動で)切り替わり、ここで水は分配セクション(109)を通って、(開いた)弁(110)およびリサイクルライン(R)を通って、循環ポンプ(112)を含む接続ラインC2を(これにより、第1浄化ステージ(103)をバイパスして)、紫外線照射処理ステージ(105)を、全有機体炭素含有量を判定するためのデバイス(106)を通って、そして任意選択の導電率セル(108)を通って分配セクション(109)へと流れる。
測定モードでは、デバイス(106)を用いて全有機体炭素含有量を測定し、浄化水の全有機体炭素含有量を判定する。
【0052】
全有機体炭素含有量の判定に続いて、
図3の水浄化システム(100)は、
図6cに表示されるリサイクルモードへと(手動または自動で)好ましくは切り替えられ、ここで、水浄化システム(100)において、水は
図6aに示される分配モードと本質的に同じ流れに従うが、しかし、分配セクション(109)を介して分配される代わりに、このときの浄化水は、リサイクルライン(R)を介して水浄化フローの始点、すなわち給水口(101)の下流かつポンプ(102)の上流にリサイクルされる。
【0053】
例
以下の実施例は、現在の水浄化システムの仕組みと利点、およびその操作プロセスを非限定的な方途で説明することを意図している。
【0054】
例1.
いずれもMerch KGaA(ドイツ・ダルムシュタット)から入手可能な、第1浄化ステージにQ-Gard(登録商標)T1浄化カートリッジ、第2浄化ステージにQuantum(登録商標)TEX研磨カートリッジを備えた、
図1または
図2に概略的に示す水浄化システムを、週末にアイドル状態においた後、逆浸透浄化ステージの給水を使用して再開した。
図7に示されるように、再開直後に、第1浄化ステージから出てくる浄化水中に、全有機体炭素レベルの急上昇(「TOCステップA」と記された連続線を参照)が、デバイス(106)によって登録されたが、分配水についてのそれぞれの対照測定は、依然として仕様内に十分に全有機体炭素含有量を有することを示した(「TOCユースポイント」と記された破線を参照)。
これらの結果は、第1浄化ステージの後に判定された全有機体炭素含有量のみに依存すると、誤警報、すなわち、実際には応答しているにもかかわらず、分配水が純度要件に応答しないとの指示につながる可能性があることを示す。
【0055】
例2.
例1の水浄化システムに、新たに浄化カートリッジを設置して、第1と第2浄化ステージが共に使い果たされるまで、分配モードと測定モードで交互に運転した。デバイス(106)における水浄化フローの全有機体含有量を判定するためのデバイス(106)によって測定された抵抗率についてのそれぞれの曲線を、すなわち第1浄化ステージを通過した後、「A-R」と表示し、ユースポイントにおける浄化水について、すなわち分配セクションにおいて、「B-R」と表示し、
図8に示す。浄化フローの全有機体炭素含有量については「A-T」と表示し、ユースポイントでの浄化水については「B-T」と表示する。
図8のグラフは、デバイス(106)での水浄化フローの全有機体炭素含有量が、一般に、ユースポイントにおける実際のものよりも高い値を示し、さらに、水浄化システム全体、すなわち曲線B-RおよびB-Tによって示されるように、第1および第2浄化ステージが共に、A-RとA-Tの曲線に示されるように、第1浄化ステージの性能が低下し始めた後も、必要な純度の浄化水を配給することができたことを明確に示す。第1浄化ステージが完全に使い果たされたしばらくの間、第2浄化ステージ単独で目的の純度の浄化水を製造することができたことさえ見てとれる。
本水浄化システムは、第1浄化ステージの性能を別途判定することができるので、ユーザは、第1浄化ステージの交換を準備するのに適切な時期に警告され、やがて第2浄化ステージの交換を準備するためにまた警告される。これは、ユーザが、所望の純度の浄化水を製造できないリスクを冒すことなく、浄化ステージで使用される浄化カートリッジの耐用年数をさらに延ばすことを効果的に可能にする。
【0056】
例3.
例1の水浄化システムについて、全有機体炭素含有量を、デバイス(106)を分配モードで用いて「中間TOC含有量」を獲得し、測定モードで用いて「ユースポイントでのTOC」を獲得して、判定した。比較値は、2つの基準校正TOCモニターを使用して得られ、これらの最初のものは第1浄化ステージのすぐ下流で水を引き出し、したがって「中間TOC含有量」を反映し、これらの2番目のものはポリッシャーの下流で水を引き出し、したがって「ユースポイントでのTOC」を反映する。各種条件でのこの比較結果は下記表1に示され、ここで「ユースポイントでのTOC」および「比較ユースポイントでのTOC」の値は、以下
-例3.1および3.2、浄化カートリッジを交換し、20リットルの水で洗浄した直後、
-例3.3、3.4、および3.5、本水浄化システムを測定モードで3分間運転した後の通常操作時、および
-例3.6および3.7、本水浄化システムを測定モードで10分間運転した後の通常操作時
について得られた。
【表1】
上記データは、本水浄化システムが浄化フロー中の、特にユースポイントでの全有機体炭素含有量の信頼できる値を獲得することを明確に示している。
【0057】
例4.
例2が、ただし、第1浄化ステージにはIPAK Meta(登録商標)研磨モジュール、第2浄化ステージにIPAK Quanta(登録商標)研磨カートリッジ、どちらもMerck KGaA(ドイツ、ダルムシュタット)から入手可能なそれを使用して繰り返された。
それぞれの結果を
図9に示し、「A-R」はデバイス(106)により測定された抵抗率を指示し、「A-T」は関連する全有機体炭素含有量を表示し、「B-R」はユースポイントで測定された抵抗率を表示し、「B-T」は関連する全有機体炭素含有量を表示する。
図9の曲線は、例2の知見を裏付ける。
全体として、本発明者らは、非常に驚くべきことに、一般に、本水浄化システムおよびそれを操作するプロセスは、前述の水浄化システムおよび方法よりもはるかに優れてユースポイントにおける全有機体炭素含有量、すなわち分配された水を反映する、全有機体炭素含有量の値を与えることを見出した。
【0058】
さらに、本水浄化システムおよびそのような利益を運用するためのプロセスは、本明細書で定義されるような水浄化システムの特定の制限から、すなわち、第1および第2浄化ステージが一般に「対称的」であること、すなわち本質的に同じサイズのものであり、一般に同等であり、すなわち本質的に同じ、処理量を有することから利益を受ける。したがって、本水浄化システムおよびその操作プロセスは、第1浄化ステージの使い果たし、すなわち第1浄化ステージが汚染物質を所望の程度まで排除(purge)しなくなったときと、第2浄化ステージの使い果たし、すなわち第2浄化ステージが汚染物質を所望の程度まで排除しなくなったときとを具体的に区別することを可能にする。第1浄化ステージが使い果たされた場合、第2浄化ステージは依然として水を所望の純度に浄化することができ、それによって所望の純度の浄化水を分配することを可能にする。したがって、本水浄化システムおよびその操作のためのプロセスはまた、浄化ステージがいつ交換される必要があるかをより良くそしてより正確に判定することを可能にする。これにより、運用コストが削減されるだけでなく、浄化カートリッジなどの不必要に交換された浄化ステージハードウェアからの廃棄物が削減される。
したがって、本水浄化システムおよびそのような動作のためのプロセスは、従来技術の少なくとも2つの欠点を克服することを可能にする。
【0059】
また、本水浄化システムは、第1浄化ステージと第2浄化ステージの個々の有効性を評価および判定する際に、驚くべき汎用性と能力をも示している。
例えば、第1浄化ステージの有効性は、まず本水浄化システムを分配モード(例えば
図5aおよび6a参照)で稼働させた後、次いで測定モードに切り替える(例えば
図5bおよび6b参照)ことにより判定することができる。導電率、およびそれによって全有機体炭素含有量を最初に分配モードで、次いで測定モードで判定すると、第1浄化ステージがまだ正しく機能し、使い果たされていないかどうかがユーザに示されるであろう。つまり、分配モードと測定モードの値が顕著に異ならない場合、第1浄化ステージは正常に機能している。一方、分配モードと測定モードの値が顕著に異なる場合、特に分配モードの値が測定モードの値よりも顕著に高い場合、第1浄化ステージは正常に機能しておらず、その結果、交換が必要になる。
【0060】
さらに、ポンプの下流かつ第1浄化ステージの上流に位置する分岐点から第1浄化ステージの下流かつ第2浄化ステージの上流の位置まで、水浄化フローを液体的に接続する接続ライン(例えば、
図1および
図2のC1ラインで表される)を含む本水浄化は、給水口を通って水浄化フロー中へと到達する給水の純度を判定することを可能にする。これは、最初に給水口からポンプおよびラインC1を介して第2浄化ステージに直接水を通過させることによって行われてよく、そこで第1の導電率およびその結果として第1の全有機体含有量が判定される。その後、水浄化システムが次いで測定モードに切り替えられ、第2の導電率、その結果、第2の全有機体含有量が判定される。1番目と2番目の値を比較すると、給水口を通って到達する給水の水質がわかるであろう。
【0061】
以上をまとめると、本水浄化システムは、分配浄化水の全有機体炭素含有量を良好な精度と信頼性で判定することを可能にすると同時に、水浄化ストリーム(stream)に既に存在する機能を利用して二重使用することにより、簡素化され、維持が容易になり、全体的な水浄化システムを製造することができる。
【国際調査報告】