(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(54)【発明の名称】パルミチン酸パリペリドン製剤の再懸濁を確実にする方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20231129BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20231129BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P25/18
A61K9/107
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532442
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2021082891
(87)【国際公開番号】W WO2022112367
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397060175
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】ドール,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ワラート,イグナス
(72)【発明者】
【氏名】ニュエン,ジミー
(72)【発明者】
【氏名】ミーウッセン,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ゴパル,スリハリ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA94
4C076BB11
4C076CC01
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA23
4C086MA66
4C086NA12
4C086ZA18
(57)【要約】
シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の再懸濁性を改善するための方法、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力を減少させるための方法、又はパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の不完全な注射の可能性を減少させるための方法であって、シリンジの出荷中に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる所望の向きにシリンジを維持することを含む、方法が提供される。また、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液をそれぞれ含有するシリンジの集合体であって、シリンジの各々が、目的地に出荷されており、シリンジが、シリンジの出荷中に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる所望の向きに各々維持されていた、シリンジの集合体も提供される。本開示はまた、シリンジ内に統合失調症を罹患している患者への投与のためのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液を含む薬学的製品であって、シリンジが、出荷前保管を受け、出荷されており、シリンジが、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きで出荷中に維持されている、薬学的製品を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
統合失調症を治療する方法であって、統合失調症を罹患している患者に、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液をシリンジから投与することを含み、前記シリンジが、出荷前保管を受け、出荷されており、前記シリンジが、出荷前保管中の前記シリンジの向きとは異なる向きで前記出荷中に維持されている、方法。
【請求項2】
前記出荷前保管の向きが先端下向きであった、かつ、前記出荷の向きが先端上向き、又は実質的に水平である、請求項1に記載の治療方法。
【請求項3】
前記出荷前保管の向きが先端下向きであった、かつ、前記出荷の向きが実質的に水平である、請求項1又は請求項2に記載の治療方法。
【請求項4】
前記懸濁液が、約273、410、546、又は819mgのパルミチン酸パリペリドンを含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の治療方法。
【請求項5】
前記懸濁液が、約1092又は1560mgのパルミチン酸パリペリドンを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の治療方法。
【請求項6】
シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の再懸濁性を改善するための方法であって、前記シリンジの出荷中に、出荷前保管中の前記シリンジの向きとは異なる所望の向きに前記シリンジを維持することを含む、方法。
【請求項7】
前記シリンジを所望の出荷の向きに維持することは、前記シリンジを出荷車両に前記所望の向きに積載すること、前記シリンジを監視して、出荷中の前記所望の向きの維持を確認すること、又はその両方を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シリンジを、外側表面を含む容器内に収容することを更に含み、前記外側表面は前記シリンジの前記所望の向きに対応する向きに出荷中の前記容器を維持するための説明を有する、請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記シリンジを、外側表面を含む容器内に収容することを更に含み、前記外側表面は前記所望の向きを維持することに対応する前記容器の向きを示すマーキングを有する、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記シリンジを出荷した後に、前記シリンジを、実質的に水平の向きで保管場所に維持することを更に含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記シリンジが、飛行機、トラック、ボート、又は鉄道によって出荷される、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記出荷後に、前記シリンジが、投与後に再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンを表す約1.5mm以下の残留物を含有する、請求項6~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記出荷後に、前記シリンジが、投与後に再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンを表す約1mm以下の残留物を含有する、請求項6~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記シリンジが、1mL、2.25mL、2.8mL、又は3mLの容量を有し、長さ1又は1.5インチである22ゲージ針を含む、請求項6~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記シリンジが、5mLの容量を有し、長さ1.5インチである20ゲージ針を含む、請求項6~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記懸濁液が、約273、410、546、又は819mgのパルミチン酸パリペリドンを含有する、請求項6~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記懸濁液が、約1092又は1560mgのパルミチン酸パリペリドンを含有する、請求項6~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記懸濁液を前記シリンジから患者に投与することを更に含む、請求項6~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記所望の出荷の向きが、実質的に水平、先端上向き、又は先端下向きである、請求項6~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記所望の出荷の向きが、出荷前保管中の前記シリンジの向きから約45°~約135°変化する、請求項6~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記出荷前保管の向きが、先端下向きであり、前記出荷の向きが、先端上向きであるか、又は実質的に水平である、請求項6~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記出荷前保管の向きが、先端下向きであり、前記出荷の向きが、実質的に水平である、請求項6~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力を減少させるための方法であって、前記シリンジの出荷中に、出荷前保管中の前記シリンジの向きとは異なる所望の向きに前記シリンジを維持することを含む、方法。
【請求項24】
前記シリンジからの注射に必要な前記力が、前記シリンジの出荷中に出荷前保管中の前記シリンジの向きと実質的に同じである向きに維持されていたシリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力よりも約20%~約50%小さい、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記シリンジからの注射に必要な前記力が、前記シリンジの出荷中に前記所望の向きに維持されていなかったシリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力よりも約10~25ニュートン小さい、請求項23又は請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記シリンジからの注射に必要な前記力が、約10~25ニュートンである、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記シリンジからの前記パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射を完了させるのに必要な力を評価することを更に含む、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の不完全な注射の可能性を減少させる方法であって、前記シリンジの出荷中に、出荷前保管中の前記シリンジの向きとは異なる所望の向きに前記シリンジを維持することを含む、方法。
【請求項29】
前記シリンジからの前記パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射が完了しているかどうかを評価することを更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液をそれぞれ含有するシリンジの集合体であって、前記シリンジの各々が、出荷前に保管され、目的地に出荷されており、前記シリンジが、前記シリンジの出荷中に、出荷前保管中の前記シリンジの向きとは異なる所望の向きに各々維持されていた、シリンジの集合体。
【請求項31】
少なくとも100個の個々のシリンジを含む、請求項30に記載の集合体。
【請求項32】
シリンジ内に統合失調症を罹患している患者への投与のためのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液を含む薬学的製品であって、前記シリンジが、出荷前保管を受け、出荷されており、前記シリンジが、出荷前保管中の前記シリンジの向きとは異なる向きで前記出荷中に維持されている、薬学的製品。
【請求項33】
前記シリンジが、外側表面を含む容器内に収容され、前記外側表面は前記シリンジの前記所望の向きに対応する向きに出荷中の容器を維持するための説明を含んでいた、請求項32に記載の薬学的製品。
【請求項34】
前記シリンジが、外側表面を含む容器内に収容され、前記外側表面は前記シリンジの前記所望の向きを維持することに対応する前記容器の向きを示したマーキングを含んでいた、請求項32又は請求項33に記載の薬学的製品。
【請求項35】
前記出荷後に、前記シリンジが、前記懸濁液の注射後に再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンを表す約1.5mm以下の残留物を含有する、請求項32~34のいずれか一項に記載の薬学的製品。
【請求項36】
前記出荷後に、前記シリンジが、前記懸濁液の注射後に再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンを表す約1mm以下の残留物を含有する、請求項32~34のいずれか一項に記載の薬学的製品。
【請求項37】
前記懸濁液が、約273、410、546、又は819mgのパルミチン酸パリペリドンを含有する、請求項32~36のいずれか一項に記載の薬学的製品。
【請求項38】
前記懸濁液が、約1092又は1560mgのパルミチン酸パリペリドンを含有する、請求項32~36のいずれか一項に記載の薬学的製品。
【請求項39】
前記出荷の向きが、出荷前保管中の前記シリンジの向きから約45°~約135°変化した、請求項32~38のいずれか一項に記載の薬学的製品。
【請求項40】
前記出荷前保管の向きが先端下向きであった、かつ、前記出荷の向きが先端上向き、又は実質的に水平である、請求項32~38のいずれか一項に記載の薬学的製品。
【請求項41】
前記出荷前保管の向きが先端下向きであった、かつ、前記出荷の向きが実質的に水平である、請求項32~38のいずれか一項に記載の薬学的製品。
【請求項42】
前記シリンジの前記出荷前保管の向きが、先端下向きであった、請求項32~38のいずれか一項に記載の薬学的製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年8月27日に出願された米国仮出願第63/237,883号及び2020年11月30日に出願された米国仮出願第63/119,305号に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、薬学的懸濁液の投与の質に影響を及ぼす方法に関する。
【背景技術】
【0003】
抗精神病薬の薬物療法は、統合失調症、統合失調症性感情障害、及び統合失調症様障害の治療において主力である。抗精神病薬は、1950年代半ばに初めて導入された。これらの典型的な薬剤又は第一世代薬剤は、通常、統合失調症の陽性症状を制御する上で有効であるが、陰性症状又は疾患に関連する認識機能障害を緩和する上でさほど有効ではない。リスペリドン及びオランザピンによって代表される、非定型抗精神病薬又は第二世代薬剤は、1990年代に開発され、一般的に、統合失調症に関連する陽性症状及び陰性症状の両方に対する有効性を特徴とする。
【0004】
パルミチン酸パリペリドンは、第2世代薬剤の非定型抗精神病薬の特徴的ドーパミン型2(D2)及びセロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン型2A)拮抗作用を呈するモノアミン作動性拮抗薬である、パリペリドン(9-ヒドロキシ-リスペリドン)のパルミチン酸エステルである。パリペリドン(9-OHリスペリドン)は、リスペリドンの主要活性代謝物である。持続放出(extended release、ER)浸透圧制御放出経口送達(osmotic controlled release oral delivery、OROS)パリペリドンは、錠剤として、統合失調症の治療及び効果維持のために米国において販売されている。
【0005】
パルミチン酸パリペリドンは、通常、抗精神病薬で治療される、統合失調症及び他の関連疾患の治療用の長時間作用型で筋肉内(i.m.)注射可能な水性ナノ懸濁液として開発されている。非常に低い水溶性のため、パルミチン酸パリペリドン等のパリペリドンエステルは、パリペリドンに加水分解され、筋肉内注射後にゆっくりと溶解してから体循環において使用可能になる。
【0006】
月1回のパルミチン酸パリペリドン注射は、パリペリドンの持続した血漿濃度をもたらすように開発されており、これは、投与コンプライアンスを大いに高め得る。水性ナノ懸濁液として製剤化されたパルミチン酸パリペリドンは、米国特許第6,077,843号及び同第6,555,544号に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。加えて、患者を治療するためのパルミチン酸パリペリドンの投薬レジメンは、米国特許第9,439,906号及び同第10,143,693号に開示されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
パリペリドンは、現在、以下の3つの製剤における治療的使用に利用可能である。経口持続放出製剤(INVEGA(登録商標)持続放出[Extended Release、ER]錠剤、INVEGA(登録商標)長時間放出型[prolonged-release、PR]錠剤とも呼ばれる)、及び2つの長時間作用型注射可能(long-acting injectable、LAI)製剤(パルミチン酸パリペリドン1ヶ月注射型[INVEGA SUSTENNA(登録商標)又はXEPLION(登録商標)]及びパルミチン酸パリペリドン3ヶ月注射型[INVEGA TRINZA(登録商標)又はTREVICTA(登録商標)])。6ヶ月に1回の投与を意図した別のパルミチン酸パリペリドン製品(パルミチン酸パリペリドン6ヶ月注射型)は、アドヒアランス及び利便性を更に改善することを目的として、米国[INVEGA HAFYERA(商標)]及び欧州[BYANNLI(商標)]で承認されている。
【0008】
パルミチン酸パリペリドン懸濁液製剤は、典型的には、高濃縮製品である。結果として、重要な考慮事項は、投与前に製品の完全な懸濁/再懸濁を確実にすることである。不完全な投与の機会を最小限にするために、医療専門家が投与を行い、投与の準備及び投与中に特定のガイドラインに従うことが必要である。例えば、INVEGA TRINZA(登録商標)ラベルは、均質な懸濁液を確実にするために、製剤を含有するシリンジを投与前に少なくとも15秒間激しく振盪すべきであることを明記している(使用説明書(instructions for use、IFU)に対応する)。また、注射をゆっくりと、例えば20~30秒の期間にわたって行う必要がある。シリンジが先端上向きの位置にある間に振盪を行うことも推奨される。INVEGA HAFYERA(商標)のためのラベルは、製剤を含有するシリンジを少なくとも15秒間非常に速く振盪し(シリンジ先端キャップを上に向けつつ)、続いて短時間休止し、次いで再び15秒間振盪すべきであることを明記している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
不十分な再懸濁、及び結果としてパルミチン酸パリペリドン懸濁液の不完全な投与を引き起こし得るヒューマンエラーに起因して、再懸濁プロトコルから逸脱するいくつかの例が存在し得る可能性がある。パルミチン酸パリペリドンの必要な再懸濁を確実に行うための更なる戦略の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の再懸濁性を改善するための方法であって、シリンジの出荷中に、シリンジを実質的に水平の向きに維持することを含む、方法が本明細書で提供される。また、シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の再懸濁性を改善するための方法であって、出荷中に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きに、例えば、出荷前保管中の向きが実質的に水平ではなかった場合にシリンジの出荷中は実質的に水平の向きに、シリンジを維持することを含む、方法が本明細書で提供される。
【0011】
また、シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力を減少させるための方法であって、シリンジの出荷中に、シリンジを実質的に水平の向きに維持することを含む、方法が開示される。また、シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力を減少させるための方法であって、出荷中に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きに、例えば、出荷前保管中の向きが実質的に水平ではなかった場合にシリンジの出荷中は実質的に水平の向きに、シリンジを維持することを含む、方法が開示される。
【0012】
本開示はまた、シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の不完全な注射の可能性を減少させる方法であって、シリンジの出荷中に、シリンジを実質的に水平の向きに維持することを含む、方法に関する。本開示はまた、シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の不完全な注射の可能性を減少させる方法であって、出荷中に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きに、例えば、出荷前保管中の向きが実質的に水平ではなかった場合にシリンジの出荷中は実質的に水平の向きに、シリンジを維持することを含む、方法に関する。
【0013】
また、シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の再懸濁性を改善するための方法であって、シリンジの保管中に、シリンジを実質的に水平の向きに維持することを含む、方法が提供される。また、シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の再懸濁性を改善するための方法であって、出荷中に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きに、例えば、出荷前保管中の向きが実質的に水平ではなかった場合にシリンジの保管中に実質的に水平の向きに、シリンジを維持することを含む、方法が提供される。
【0014】
また、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液をそれぞれ含有するシリンジの集合体であって、シリンジの各々が、目的地に出荷されており、シリンジが、シリンジの出荷中に、実質的に水平の向きに各々維持されていた、シリンジの集合体が開示される。また、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液をそれぞれ含有するシリンジの集合体であって、シリンジの各々が、目的地に出荷されており、出荷中に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きに、例えば、出荷前保管中の向きが実質的に水平ではなかった場合にシリンジの出荷中は実質的に水平の向きに、シリンジが各々維持されていた、シリンジの集合体が開示される。
【0015】
本開示はまた、シリンジ内に統合失調症を罹患している患者への投与のためのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液を含む薬学的製品であって、シリンジが、出荷前保管を受け、出荷されており、シリンジが、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きで出荷中に維持されている、薬学的製品を提供する。
【0016】
また、統合失調症を治療する方法であって、統合失調症を罹患している患者に、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液をシリンジから投与することを含み、シリンジが、出荷前保管を受け、出荷されており、シリンジが、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きで出荷中に維持されていた、方法が開示される。また、統合失調症を治療する方法において使用するためのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液であって、これらの方法が、統合失調症を罹患している患者に、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液をシリンジから投与することを含み、シリンジが、出荷前保管を受け、出荷されており、シリンジが、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きで出荷中に維持されていた、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液が開示される。また、統合失調症を治療するための医薬の製造におけるパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の使用であって、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液が、シリンジからの投与のために調製され、シリンジが、出荷前保管を受け、出荷されており、シリンジが、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きで出荷中に維持されていた、使用が開示される。
【0017】
本開示の複数の実施形態では、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液は、PP3M及びPP6Mからなる群から選択される。一実施形態では、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液は、PP3Mである。一実施形態では、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液は、PP6Mである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】5つの異なる空間的向きのうちの1つでそれぞれ保管されたPP6Mのプロセスパフォーマンス適格性(PPQ)バッチについての射出力プロファイルを示す図である。
【
図1B】5つの異なる空間的向きのうちの1つでそれぞれ保管されたPP6Mのプロセスパフォーマンス適格性(PPQ)バッチについての射出力プロファイルを示す図である。
【
図1C】5つの異なる空間的向きのうちの1つでそれぞれ保管されたPP6Mのプロセスパフォーマンス適格性(PPQ)バッチについての射出力プロファイルを示す図である。
【
図1D】5つの異なる空間的向きのうちの1つでそれぞれ保管されたPP6Mのプロセスパフォーマンス適格性(PPQ)バッチについての射出力プロファイルを示す図である。
【
図1E】5つの異なる空間的向きのうちの1つでそれぞれ保管されたPP6Mのプロセスパフォーマンス適格性(PPQ)バッチについての射出力プロファイルを示す図である。
【
図1F】5つの異なる空間的向きのうちの1つでそれぞれ保管されたPP6Mのプロセスパフォーマンス適格性(PPQ)バッチについての射出力プロファイルを示す図である。
【
図2A】水平向き又は先端下向きの向きにある間に振動実験に供されたシリンジについての射出力曲線を示す図である。
【
図2B】水平向き又は先端下向きの向きにある間に振動実験に供されたシリンジについての射出力曲線を示す図である。
【
図2C】水平向き又は先端下向きの向きにある間に振動実験に供されたシリンジについての射出力曲線を示す図である。
【
図2D】水平向き又は先端下向きの向きにある間に振動実験に供されたシリンジについての射出力曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書に開示される本発明の発明主題は、本開示の一部を形成する、添付の図面に関連してなされる以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができる。本発明は、本明細書に記載する、かつ/又は示す特定の製剤、方法、条件又はパラメータに限定されるものではなく、本明細書で使用される専門用語は実施例を用いて具体的な実施形態を記載する目的のためだけのものであり、特許請求した発明を制限することを意図するものではないことが理解すべきである。
【0020】
本明細書に引用又は記載されているそれぞれの特許、特許出願、及び刊行物の全開示は、本明細書に参考として組み込まれる。
【0021】
上記で使用されるとき、また本開示全体を通して、以下の用語及び略語は、特に指示のない限り、以下の意味を有するものと理解されたい。
【0022】
本開示では、特に明示しない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数形の言及を包含し、特定の数値への言及は、少なくともその特定の値を包含する。したがって、例えば、「製剤(a formulation)」に対する参照は、1つ又は2つ以上のこのような製剤及び当業者に既知であるその等価物等に対する参照である。更に、特定の要素が、X、Y、又はZで「あってもよい」ことを示す場合、そのような使用は、あらゆる場合においてその要素に関する他の選択肢を除外することを意図するものではない。
【0023】
値が、先行詞「約」を用いて近似値として表現される場合、その特定の値は、別の実施形態を形成することが理解される。概して、「約」という用語の使用は、開示する発明主題によって得ようとしている所望の特性に依存して変動し得る近似値を示し、その機能に基づいて、それが使用される特定の文脈において解釈されるべきである。いくつかの実施形態では、「約X」(Xは数値である)は、記載の値の±10%を包括的に指す。例えば、「約8」という語句は、包括的に7.2~8.8の値を指すことができる。この値は、「正確に8」を含んでもよい。存在する場合、全ての範囲は、包括的であり、組み合わせ可能である。例えば、「1~5」の範囲を列挙するとき、列挙した範囲は任意選択で「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2及び4~5」、「1~3及び5」等の範囲を含むと解釈すべきである。加えて、代替物のリストが明確に提供される場合、そのようなリストはまた、代替物のいずれかが除外されてもよい実施形態を含み得る。例えば、「1~5」の範囲が記載されている場合、そのような記載は、1、2、3、4、又は5のいずれかが除外される状況を支持することができる。したがって、「1~5」という記述は、「1及び3~5であるが、2ではない」又は単に「2は含まれない」を支持し得る。
【0024】
1つ又は2つ以上の化合物又はその製剤(例えば、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液)を使用する治療方法(例えば、統合失調症を治療する方法)への本明細書における言及は、
-例えば統合失調症を治療する方法において使用するための1つ又は2つ以上の化合物又はその製剤(例えば、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液)、及び/又は
-例えば統合失調症を治療するための医薬の製造におけるその製剤(例えば、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液)の1つ又は2つ以上の化合物の使用への言及としても解釈されるべきであることを理解すべきである。
【0025】
上述のように、パルミチン酸パリペリドン注射可能懸濁液の完全な投与を確実にするために、再懸濁プロトコルが存在する。処方されたパルミチン酸パリペリドン製剤は、投与のための製剤を調製するための正確な手順、及び注射自体が行われるべき様式に関する明確なラベル説明書を含むが、特定の手順に従う医療従事者が、パルミチン酸パリペリドンの十分な再懸濁を確実にし、それによって、必要とする患者に処方された投薬量を送達することを確実にする方法でそれを行わない可能性がある。
【0026】
本願発明者らは、驚くべきことに、パルミチン酸パリペリドン懸濁液を含有するシリンジの向きを、出荷プロセス中に、出荷前保管期間中のシリンジの向きとは変化させることが、投与のための調製物中の薬物製品の再懸濁性に影響を及ぼすことを発見した。特に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きに、例えば、出荷中に実質的に水平の向きにシリンジを維持することは、例えば、シリンジが出荷前にも先端下向きの向きで保管された場合に出荷中も従来の先端下向きの向きであったのとは対照的に、パルミチン酸パリペリドンの再懸濁性を改善させ、それによって、処方された投薬量の完全な投与が起こる可能性を改善することがわかった。したがって、本発見は、ヒューマンエラー、又はパルミチン酸パリペリドンの十分な再懸濁を確実にすることが意図される処方された再懸濁プロトコル(例えば、振盪の種類及び持続時間を管理する)からの逸脱の他の原因を軽減する効果を有する。薬物の再懸濁における改善の結果として、投与に必要な力の量の減少等の特定の利益が得られ、一般的な問題として、不完全な投与の機会が減少する。これにより、再懸濁のために必要とされる振盪の力を減少させることによって再懸濁を改善することもできる。不完全な投与の機会が減少するという事実は、ひいては、患者が意図された用量よりも低い用量のパルミチン酸パリペリドンを摂取するリスクも減少することを意味する。このことは、処方された再懸濁プロトコルから逸脱した場合に、例えば、出荷中に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きに、例えば、出荷中に実質的に水平の向きに維持されているシリンジからパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液を投与される、統合失調症を罹患している患者は、例えば、出荷中に従来の先端下向きの向きに維持されているシリンジからパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液を投与されている患者よりも、意図された用量よりも低い用量を摂取する可能性が低くなることを意味する。したがって、例えば、出荷中に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きに、例えば、出荷中は実質的に水平の向きに、維持されているシリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の投与は、統合失調症療法の分野に重要な貢献を表す。
【0027】
したがって、シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の再懸濁性を改善するための方法であって、シリンジの出荷中に、シリンジを実質的に水平の向きに維持することを含む、方法が本明細書で提供される。本開示はまた、シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の不完全な注射の可能性を減少させる方法であって、シリンジの出荷中に、シリンジを実質的に水平の向きに維持することを含む、方法を包含する。また、シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の再懸濁性を改善するための方法であって、出荷中に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きに、例えば、出荷前保管中の向きが実質的に水平ではなかった場合にシリンジの出荷中は実質的に水平の向きに、シリンジを維持することを含む、方法が本明細書で提供される。本開示はまた、シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の不完全な注射の可能性を減少させる方法であって、出荷中に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きに、例えば、出荷前保管中の向きが実質的に水平ではなかった場合にシリンジの出荷中は実質的に水平の向きに、シリンジを維持することを含む、方法を包含する。
【0028】
本開示の複数の実施形態では、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液は、PP3M及びPP6Mからなる群から選択される。一実施形態では、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液は、PP3Mである。一実施形態では、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液は、PP6Mである。
【0029】
パリペリドンエステルは、(+)-及び(-)-パリペリドンのラセミ混合物を含有する、ベンズイソキサゾール誘導体の化学分類に属する抗精神病剤であり、それらは、米国特許第5,254,556号に記載されている(参照により本明細書に組み込まれる)。パルミチン酸パリペリドンの化学名は、(±)-3-[2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンズイソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジニル]エチル]-6,7,8,9-テトラヒドロ-2-メチル-4-オキソ-4H-ピリド[1,2-c]ピリミジン-9-イルヘキサデカノアートである。構造式は、以下である:
【0030】
【0031】
パリペリドンエステルは、それらの両方が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,254,556号及び同第6,077,843号に記載されるように、薬学的賦形剤で注射可能な剤形に製剤化され得る。注射可能な製剤は、水性担体内で製剤化され得る。
【0032】
パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液は、例えば、3ヶ月に1回、6ヶ月に1回、又は他の何らかの間隔で対象に投与することを意図した市販の製剤であってもよい。
【0033】
3ヶ月に1回の投与のためのものである市販の製剤としては、INVEGA TRINZA(登録商標)又はTREVICTA(登録商標)が挙げられる。参照により組み込まれる米国特許第10,143,693号も参照されたい。本開示では、「PP3M」は、約3ヶ月の投薬間隔に適した量のパルミチン酸パリペリドンを有する、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液又の他の種類の製剤を指す。例えば、「PP3M」は、約3ヶ月の投薬間隔を有するパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液を指すことができる。
【0034】
6ヶ月に1回の投与のためのものである市販の製剤としては、米国ではINVEGA HAFYERA(商標)が挙げられる。6ヶ月に1回投与するための製剤は、BYANNLI(登録商標)という商品名で欧州において販売承認を受けている。本開示では、「PP6M」は、約6ヶ月の投薬間隔に適した量のパルミチン酸パリペリドンを有する、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液又の他の種類の製剤を指す。例えば、「PP6M」は、約6ヶ月の投薬間隔を有するパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液を指すことができる。PP6Mは、典型的には、約1000mg~約1600mgの範囲の用量のパルミチン酸パリペリドンで提供され、6ヶ月の投薬間隔にわたって、パリペリドンの持続的治療濃度を提供する。好ましくは、PP6Mは、約1092mg又は約1560mgのパルミチン酸パリペリドンの用量強度で提供される。薬物製品は、活性部分であるパリペリドンに加水分解され、それぞれ約700mg当量又は1000mg当量のパリペリドンの用量強度が得られる。
【0035】
PP6Mは、好ましくは、700mg当量(3.5mL)又は1000mg当量(5.0mL)のパリペリドン(それぞれ1092mg又は1560mgのパルミチン酸パリペリドンとして)のいずれかを予め充填された、プランジャストッパ、プランジャロッド、及び先端キャップ(ブロモブチルゴム)、バックストップ、及び針、好ましくは薄壁20ゲージ(G)の1.5インチ安全針を有する充填済シリンジ(環状オレフィンコポリマー)で提供される。
【0036】
PP3Mは、典型的には、約270mg~約825mgの範囲の用量のパルミチン酸パリペリドンで提供され、3ヶ月の投薬間隔にわたって、パリペリドンの持続的治療濃度を提供する。好ましくは、PP3Mは、約273、410、546、又は819mgのパルミチン酸パリペリドンの用量強度で提供される。薬物製品は、活性部分であるパリペリドンに加水分解され、それぞれ約175、263、350、又は525mg当量のパリペリドンの用量強度が得られる。
【0037】
PP3Mは、好ましくは、約175mg当量~約525mg当量を予め充填された、プランジャストッパ、プランジャロッド、及び先端キャップ(ブロモブチルゴム)、バックストップ、及び針、好ましくは薄壁20ゲージ(G)の1.5インチ安全針、又は薄壁22ゲージ(G)の1インチ安全針を有する充填済シリンジ(環状オレフィンコポリマー)で提供される。
【0038】
特定の実施形態では、PP3M及びPP6Mは、同じ製剤を有することができ、それぞれのシリンジ内に収容される懸濁液製剤の総体積に関して異なっている。本方法に従って使用されるパルミチン酸パリペリドン懸濁液は、絶対量で、約250~約1600mgのパルミチン酸パリペリドンを含有し得る。懸濁液中のパルミチン酸パリペリドンの量は、例えば、273、410、546、又は819mgであり得る。特定の実施形態では、懸濁液中のパルミチン酸パリペリドンの量は1092又は1560mgであり得る。
【0039】
特定の実施形態では、3ヶ月(PP3M)製剤は、約20μm未満~約1μmの平均粒径を有する。他の実施形態では、粒子は、約5μm~約15μm、約3μm~約10μm、又は約5μm~約9μmの平均粒径(d50)を有する。d90は、約50μm、約10μm~約30μm、又は約10μm~約20μmであり得る。d10は、約1μm~約10μm、又は約1μm~約5μmであり得る。
【0040】
特定の実施形態では、6ヶ月(PP6M)製剤は、約30μm未満~約1μm、又は約20μm~約1μmの平均粒径を有する。他の実施形態では、粒子は、約3μm~約25μm、約5μm~約15μm、約3μm~約10μm、又は約5μm~約9μmの平均粒径(d50)を有する。d90は、約60μm、又は約50μm、約10μm~約30μm、又は約10μm~約20μmであり得る。d10は、約1μm~約15μm、約1μm~約10μm、又は約1μm~約5μmであり得る。
【0041】
本明細書で使用されるとき、沈降場流動分画法、光子相関分光法、又はディスク遠心分離等の当該技術分野で公知の従来技術によって測定される場合、d10:この値よりも小さい直径を有する粒子の割合が10%である。d50:この値よりも小さい直径を有する粒子の割合が50%である。d90:この値よりも小さい直径を有する粒子の割合が90%である。
【0042】
好適な水性ナノ粒子製剤は、米国特許第6,555,544号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、製剤は、マイクロ粒子、界面活性剤、懸濁化剤、並びに任意選択で防腐剤、緩衝剤、及び等張剤からなる群から選択される1つ又は2つ以上の追加の成分を含む。
【0043】
パルミチン酸パリペリドン製剤に有用な表面変性剤は、活性薬剤の表面に物理的に付着するが、化学的には結合しないものを含むと考えられる。好適な表面変性剤は、既知の有機及び無機の薬学的賦形剤から選択され得る。そのような賦形剤は、種々のポリマー、低分子量オリゴマー、天然物、及び界面活性剤を含む。好適な表面変性剤は、非イオン性及びアニオン性界面活性剤を含む。賦形剤の代表的な例としては、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセリルモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ろう、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、セトマクロゴール1000等のマクロゴールエーテル)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、市販のTWEEN(商標))、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンステアレート、コロイド状二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非晶質セルロース、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポロキサマー、チロキサポール、及びポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)が挙げられる。これらの賦形剤の大半は、American Pharmaceutical Association及びThe Pharmaceutical Society of Great Britainから共同出版された、the Handbook of Pharmaceutical Excipients,the Pharmaceutical Press,1986に詳細に記載されている。表面変性剤は、市販されている、かつ/又は当該技術分野において既知の技術によって調製され得る。2つ又は3つ以上の表面変性剤が、組み合わせて使用され得る。
【0044】
特に好ましい表面変性剤としては、ポリビニルピロリドン;チロキサポール;ポロキサマー、例えば、BASFから入手可能なエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロックコポリマーであるPLURONIC(商標)F68、F108及びF127;ポロキサミン、例えば、BASFから入手可能なエチレンジアミンへのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの連続付加から誘導される四官能性ブロックコポリマーであるTETRONIC(商標)908(T908);デキストラン;レシチン;Cytec Industriesから入手可能なスルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルであるAerosol OT(商標)(AOT);DuPontから入手可能なラウリル硫酸ナトリウムであるDUPONOL(商標)P;Rohm and Haasから入手可能なアルキルアリールポリエーテルスルホネートであるTRITON(商標)X-200;ICI Speciality Chemicalsから入手可能なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであるTWEEN(商標)20、40、60、及び80;脂肪酸のソルビタンエステルであるSPAN(商標)20、40、60及び80;Hercules,Inc.から入手可能な脂肪酸のソルビタンエステルであるARLACEL(商標)20、40、60、及び80;Union Carbideから入手可能なポリエチレングリコールであるCARBOWAX(商標)3550及び934;Croda Inc.から入手可能なステアリン酸スクロースとジステアリン酸スクロースの混合物であるCRODESTA(商標)F110;Croda Inc.から入手可能であるCRODESTA(商標)SL-40;ヘキシルデシルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC);ウシ血清アルブミン、及び以下の式:C18H17CH2(CON(CH3)CH2(CHOH)4CH2OH)2を有するSA90HCOが挙げられる。特に有用であると判明した表面変性剤には、チロキサポール及びポロキサマー、好ましくは、Pluronic(商標)F108及びPluronic(商標)F68が含まれる。
【0045】
Pluronic(商標)F108は、ポロキサマー338に相当し、式HO[CH2CH2O]x[CH(CH3)CH2O]y[CH2CH2O]zH(x、y、及びzの平均値が、それぞれ、128、54、及び128である)にほぼ一致するポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンブロックコポリマーである。ポロキサマー338の他の市販名は、Hodagから入手可能なHodag NONIONIC(商標)1108-F、及びICI Americasから入手可能なSYNPERONIC(商標)PE/F108である。
【0046】
パルミチン酸パリペリドン及び表面変性剤の最適相対量は、種々のパラメータに依存する。表面変性剤の最適量は、例えば、選択される特定の表面変性剤、表面変性剤がミセルを形成する場合には表面変性剤の臨界ミセル濃度、抗精神病剤の表面積等に依存し得る。特定の表面変性剤は、好ましくは、パルミチン酸パリペリドンの表面積1平方メートル当たり約0.1~約1mgの量で存在する。パルミチン酸パリペリドン(9-パルミチン酸ヒドロキシリスペリドン)の場合において、表面変性剤として、PLURONIC(商標)F108を使用することが好適であり、約6:1の両方の成分の相対量(w/w)が好適である。
【0047】
パルミチン酸パリペリドン懸濁液の粒子は、液体分散媒体内で、パルミチン酸パリペリドンを分散させるステップと、粉砕媒体の存在下で、抗精神病剤の粒径を有効な平均粒径に減少させるように、機械的手段を適用するステップと、を含む方法によって調製され得る。粒子は、表面変性剤の存在下で、寸法を減少することができる。あるいは、粒子は、摩耗後、表面変性剤と接触することができる。
【0048】
パルミチン酸パリペリドン懸濁液の粒子を調製するための一般的な手順は、(a)パルミチン酸パリペリドンを得ることと、(b)パルミチン酸パリペリドンを液体媒体に添加して、プレミックスを形成することと、(c)粉砕媒体の存在下、プレミックスを機械的手段に供して、有効な平均粒径に減少させることと、を含み得る。
【0049】
パルミチン酸パリペリドンは、当該技術分野において既知の技術を用いて調製され得る。ふるい分析によって決定されるように、パルミチン酸パリペリドンの粒径が約100μm未満であることが好ましい。パルミチン酸パリペリドンの粒径が約100μmを超える場合、パルミチン酸パリペリドンの粒子を100μm未満の寸法に減少させることが好ましい。
【0050】
次に、パルミチン酸パリペリドンは、プレミックスを形成するために本質的に不溶性である液体媒体に添加され得る。液体媒体中のパルミチン酸パリペリドンの濃度(重量パーセントによる重量)は大きく異なることがあり、選択される抗精神病剤、選択される表面変性剤、及び他の要因に依存する。組成物中のパルミチン酸パリペリドンの好適な濃度は、約0.1~約60%まで幅があり、好ましくは、約0.5~約30%であり、より好ましくは、約7%(w/v)である。PP3Mの場合、1mL当たり約200mg当量のパリペリドン、又は1mL当たり約312mg当量のパルミチン酸パリペリドンの濃度を使用することが好ましい。PP6Mの場合、1mL当たり約200mg当量のパリペリドン、又は1mL当たり約312mg当量のパルミチン酸パリペリドンの濃度を使用することが好ましい。
【0051】
別の例示的な手順は、有効な平均粒径を減少させるために機械的手段に供する前のプレミックスへの表面変性剤の添加を含む。表面変性剤の濃度(重量パーセントによる重量)は、約0.1%~約90%、好ましくは、約0.5%~約80%まで幅があり得、より好ましくは、約7%(w/v)である。
【0052】
プレミックスは、分散内の有効な平均粒径を所望の粒径に減少させるために、それを機械的手段に供することにより、直接使用され得る。ボールミルが摩耗に使用されるとき、プレミックスを直接使用することが好適である。あるいは、抗精神病剤、及び任意選択で、表面変性剤は、均質分散が達成されるまで、例えば、ローラーミル又はコーレス型混合器等の好適な攪拌を用いて液体媒体内で分散され得る。
【0053】
抗精神病薬の有効な平均粒径を減少させるために適用される機械的手段は、便宜上、分散ミルの形態を取り得る。好適な分散ミルには、ボールミル、磨砕ミル、振動ミル、遊星ミル、サンドミル及びビーズミル等の媒体ミルが含まれる。媒体ミルは、粒径の所望の減少を提供するために必要とされるミリング時間が比較的短いため、好適である。媒体ミリングについて、いくつかの実施形態では、プレミックスの見かけ粘度は、好ましくは、約0.1Pa・s~約1Pa・sである。いくつかの実施形態では、ボールミリングについて、プレミックスの見かけ粘度は、好ましくは、約1mPa・s~約100mPa・sである。
【0054】
粒径減少ステップのための粉砕媒体は、好ましくは約3mm未満、より好ましくは約1mm未満の平均径を有する球状又は粒状の形態の硬質媒体から選択することができる。そのような媒体は、望ましくは、より短い処理時間で本発明の粒子を提供することができ、粉砕装置に与える摩耗をより少なくすることができる。粉砕媒体のための材料の選択は、重要ではないと考えられる。しかしながら、マグネシア、ケイ酸ジルコニウム、及びガラス粉砕媒体で安定化された約95%ZrOは、薬学的組成物の調製に許容可能な粒子を提供する。更に、ポリマービーズ、ステンレス鋼、チタニア、アルミナ、及びイットリウムで安定化された約95%ZrO等の他の媒体が有用である。好ましい粉砕媒体は、約2.5g/cm3を超える密度を有し、マグネシア及びポリマービーズで安定化された約95%ZrOを含む。
【0055】
摩耗時間は大きく異なることがあり、特定の機械的手段及び選択される処理条件に主に依存する。ローリングミルについて、粒径の小さい粒子では最大2日間又はそれ以上の処理時間が必要とされ得る。
【0056】
粒子は、抗精神病剤を著しく分解しない温度で寸法を減少しなければならない。約30℃~約40℃未満の処理温度が、通常、好適である。必要に応じて、処理装置は、従来の冷却装置で冷却され得る。方法は、周辺温度の条件下、及び粉砕処理に安全かつ効果的な処理圧力で都合よく実行される。
【0057】
表面変性剤は、プレミックス中に存在しない場合、典型的には、摩耗後に、例えば上でプレミックスに関して記載される量を分散物に添加される。その後、分散物は、例えば、激しく振盪することにより混合され得る。任意選択で、分散物は、例えば、超音波電力供給を用いて、分散工程に供され得る。
【0058】
水性組成物は、懸濁化剤及び緩衝剤、並びに任意選択で防腐剤及び等張剤のうちの1つ又は2つ以上を更に含み得る。特定の成分は、これらの薬剤のうちの2つ又は3つ以上として同時に機能し得、例えば、防腐剤及び緩衝剤のように作用するか、あるいは緩衝剤及び等張剤のように作用し得る。
【0059】
本発明に記載の水性懸濁液中での使用のための好適な懸濁化剤(物理的安定化剤とも称される)は、セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギネート、キトサン、デキストラン、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン-及びポリオキシ-プロピレンエーテルである。好ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウムは、約0.5~約2%、最も好ましくは、約1%(w/v)の濃度で使用される。
【0060】
本発明による水性懸濁液中で使用するために記載された界面活性剤から選択される好適な湿潤剤は、ソルビタンエステルのポリオキシエチレン誘導体、例えば、ポリソルビン酸20及びポリソルビン酸80、レシチン、ポリオキシエチレン-、及びポリオキシプロピレンエーテル、デオキシコール酸ナトリウムである。好ましくは、ポリソルビン酸20は、約0.5~約3%、より好ましくは、約0.5~約2%、最も好ましくは、約1.1%(w/v)の濃度で使用される。
【0061】
適切な緩衝剤は、弱酸の塩であり、分散液を約pH6.0から塩基性にするのに十分な量で使用すべきである。好ましくは、pHは、約6.0~約9.0の範囲内、又は約6.0~約8.0の範囲内、又は約6.5~約7.5である。例えば、pHは、約6.0~約6.5の範囲内、又は約6.5~約7.0、又は約7.0~約7.5、又は約7.5~約8.0、又は約8.0~約8.5、又は約8.5~約9.0である。リン酸水素二ナトリウム(無水)(典型的には、約0.9%(w/v))及びリン酸二水素ナトリウム一水和物(典型的には、約0.6%(w/v))の混合物の使用が特に好適である。この緩衝剤は、分散体を等張性にし、加えて、その中に懸濁されるエステルの凝集傾向を低下させる。
【0062】
防腐剤は、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、クロロブトール、没食子酸塩、ヒドロキシベンゾエート、EDTA、フェノール、クロロクレゾール、メタクレゾール、塩化ベンゼトニウム、ミリスチル-ガンマ-ピコリニウムクロリド、硝酸フェニルアセタート、及びチメロサールからなる群から選択することができる、抗菌剤及び抗酸化剤であり得る。特に、それは、最大約2%(w/v)、好ましくは、最大約1.5%(w/v)の濃度で使用され得るベンジルアルコールである。
【0063】
等張剤は、例えば、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、乳糖、硫酸ナトリウムである。懸濁液は、好都合に、約0%~約10%(w/v)の等張剤を含む。マンニトールは、約0%~約7%の濃度で使用され得るが、より好ましくは、恐らくイオンが懸濁されたエステルの凝集を阻止するのを助けるため、約1%~約3%(w/v)、特に約1.5%~約2%(w/v)の1つ又は2つ以上の電解質が、懸濁液を等張性にするために使用される。特に、緩衝剤の電解質は、等張剤としての役割を果たす。
【0064】
注射可能な製剤の特に望ましい特徴は、それが投与され得る容易性に関連する。特に、そのような注射は、できる限り短い時間内で、できる限り細い針を使用して実行可能でなければならない。これは、本発明の水性懸濁液を用いて、シリンジに(例えば、バイアルから)容易に取り込まれ、細い針を通して注射され得る特定の粘度を維持することによって達成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、粘度は、室温で約75mPa・s未満、又は約60mPa・s未満である。PP3Mの場合、22Gの1と1/2インチ針、又は22Gの1インチ針が典型的に使用される。PP6Mの場合、20Gの1と1/2インチ針が典型的に使用される。
【0065】
理想的には、本方法に記載の使用のための水性懸濁液は、注射体積を最小限に保つように耐えることができる程度の多くのプロドラッグと、可能な限り少量の他の成分を含む。
【0066】
特にPP3M又はPP6Mの場合、組成物は、(a)約200~約500mg/mLのプロドラッグ、(b)約2~約25mg/mLの湿潤剤、(c)約2.5~約50mg/mLの1つ又は2つ以上の緩衝剤、(d)約25~約150mg/mLの懸濁化剤、(e)任意選択で、最大約2%(w/v)の防腐剤、及び(f)100%になるまでの残量の水を含んでいてもよく、又はそれらから本質的になってもよい。典型的には、PP3M又はPP6M組成物は、約6.0~約8.0のpH、好ましくは約6.5~約7.5のpHを有する。
【0067】
他の実施形態では、PP3M又はPP6Mの場合、組成物は、(a)約250~約400mg/mLのプロドラッグ、(b)約5~約20mg/mLの湿潤剤、(c)約5~約25mg/mLの1つ又は2つ以上の緩衝剤、(d)約50~約100mg/mLの懸濁化剤、(e)任意選択で、最大約2%(w/v)の防腐剤、及び(f)100%になるまでの残量の水を含んでいてもよく、又はそれらから本質的になってもよい。
【0068】
他の実施形態では、PP3M又はPP6Mの場合、組成物は、(a)約280~約350mg/mLのプロドラッグ、(b)約8~約12mg/mLの湿潤剤、(c)約5~約15mg/mLの1つ又は2つ以上の緩衝剤、(d)約65~約85mg/mLの懸濁化剤、(e)任意選択で、最大約2%(w/v)の防腐剤、及び(f)100%になるまでの残量の水を含んでいてもよく、又はそれらから本質的になってもよい。
【0069】
PP3M又はPP6M中の活性成分は、パルミチン酸パリペリドン(約312mg/mL)を含む。特定の好ましい実施形態では、PP3M又はPP6M中の活性成分は、ポリソルベート20(約10mg/mL)、ポリエチレングリコール4000(約75mg/mL)、クエン酸一水和物(約7.5mg/mL)、リン酸二水素ナトリウム一水和物(約6mg/mL)、水酸化ナトリウム(約5.4mg/mL)、及び注射用水であろう。例示されたPP3Mは、実施例1に開示されている。例示されたPP6Mは、実施例2に開示されている。
【0070】
本方法は、シリンジの出荷中に、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液を含有するシリンジを実質的に水平の向きに維持することを含む。本方法はまた、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液を含有するシリンジを、出荷中に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きに、例えば、出荷前保管中の向きが実質的に水平ではなかった場合にシリンジの保管中は実質的に水平の向きに、維持することを含む。
【0071】
その出荷前保管中のシリンジの特定の向きにかかわらず、本方法によれば、そのような出荷前保管の後に出荷中のシリンジの向きを変化させることは、保管中の向きから約45~約135°の角度偏差を表す出荷の向きにシリンジを維持することを意味し得る。例えば、出荷中のシリンジの向きは、出荷前保管中のシリンジの向きから約45、50、55、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、又は135°変化し得る。
【0072】
例えば、出荷中のシリンジの向きは、実質的に水平であってもよい。このことは、出荷前保管中のシリンジの向きが先端上向き又は先端下向きであった場合に特に適している(シリンジの「先端」は、注射の目的のために針が取り付けられるシリンジの部分を指す)。実質的に水平の向きとは、シリンジが、重力に対して垂直な地面、又はシリンジが出荷される車両の床等の適用可能な基準点に対して90°よりも0°に近い角度である向きを指し得る。例えば、実質的に水平の向きは、関連する基準点に対して0、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、3、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44°である向きを指し得る。
【0073】
他の実施形態では、出荷中のシリンジの向きは、実質的に先端上向きであってもよい。これは、出荷前保管中のシリンジの向きが先端下向きであったか、又は実質的に水平であった場合の適切な出荷の向きを表す。先端上向きの向きは、シリンジが、先端が、重力に対して垂直な地面、又はシリンジが出荷される車両の床等の適用可能な基準点に対して0°よりも90°に近い角度である向きを指し得る。例えば、先端上向きの向きは、関連する基準点に対して90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80、79、78、77、76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、又は46°である向きを指し得る。
【0074】
他の実施形態では、出荷中のシリンジの向きは、実質的に先端下向きであってもよい。これは、出荷前保管中のシリンジの向きが先端上向きであったか、又は実質的に水平であった場合の適切な出荷の向きを表す。先端下向きの向きは、シリンジが、本明細書に記載の先端上向きの向きのうちの1つに対して180°反転される向きを指し得る。
【0075】
出荷中の特定の向きにかかわらず、向きを「維持する」とは、好ましくは、許容可能な角度が出荷プロセス中の大部分の時間に適用されることを意味する。理想的には、出荷中に実質的に水平の向きが望まれる場合、シリンジは、出荷中、重力に対して常に垂直な角度に維持されるが、実際問題として、シリンジが出荷される車両の向きの変化に起因して、出荷中の向きの変動が必然的に生じる。例えば、シリンジの向きは、出荷のためにシリンジが積載されるトラックが平坦な地形上で静止しているときは重力に対して垂直であるだろうが、この向きは、出荷プロセス中にトラックが丘を登ったり下りたりするときに変化する。したがって、有用な基準点は、重力ではなく、出荷車両の床であってもよく、好ましくは、シリンジは、出荷中の車両の床に実質的に平行である向きに維持される。
【0076】
シリンジの出荷中に特定の向きに維持することは、シリンジを出荷車両に所望の向きに積載すること、出荷中にシリンジを監視して、所望の向きの維持を確認すること、又はその両方を含み得る。シリンジを出荷車両に所望の向きに積載することは、パッケージが出荷車両上に配置されるときの向きが、出荷プロセス中に意図的に変更されないことを意図しながら、シリンジを収容するパッケージを出荷車両時に配置する方法を指す。出荷中にシリンジを監視して、所望の向きの維持を確認することは、人による、所望の向きの遵守を確認するようにプログラミングされた自動システムによる、直接的又は間接的な観察、又はこれらの組み合わせを含み得る。人による直接的な観察は、シリンジを収容する包装の人による目視検査を含み得る。間接的な観察は、シリンジ、シリンジを含有するパッケージ、若しくはその両方に取り付けられるセンサ、又は別の方法でその監視を可能にするものの使用を含み得る。センサは、例えば、シリンジ及び/又はパッケージの向きに関する情報を取得し、人間の観察者に送信することができ、人間の観察者は、送信された情報が、シリンジが出荷プロセス中に必要な向きに維持されていることを示すかどうかを判断する。センサはまた、容器又はパッケージの向きが、適切な向きから逸脱した場合に、例えば、容器/パッケージが出荷中に移動した場合に、アラーム又はいくつかの他の通知を伝達することも可能である。一実施形態では、特定の向き、又は所望の向きは、実質的に水平である。
【0077】
シリンジの向きに関する情報を検出することができる人間用モニタ又はセンサは、シリンジの向きの直接的な決定を提供することができるか、又はシリンジを収容するパッケージの向きを決定することによって、間接的にそれを行うことができる。例えば、パッケージの外側のマーキングは、パッケージ内に収納されるシリンジの対応する向きを示す視覚的手がかりをセンサ又は人間用モニタに提供することができる。したがって、シリンジは、外側表面を含む容器(パッケージ)内に収納されてもよく、外側表面は、出荷中に、所望であるシリンジの向き(例えば、実質的に水平の向き)に対応する向きに容器の維持を可能にする説明又はマーキングを有する。いくつかの実施形態では、説明は、シリンジの出荷元、出荷を行っている人員、及びシリンジの目的地に応じて、適切な言語で提供され得る。いくつかの実施形態では、容器の外側表面上のマーキングは、適切なように、容器のどの側面が上部、底部、又は側部に向けられるべきかを示す矢印であってもよい。説明又はマーキングを遵守する場合、容器内に収容されるシリンジは、本方法に従って正しい向きにされる。
【0078】
シリンジの出荷は、飛行船(飛行機、ヘリコプター等)、トラック、ボート、鉄道等の任意の必要な輸送手段によって、又は薬物製造施設から投与を行う医療施設への出荷の時点から行われ得るこれらの手段の任意の組み合わせによって、行われ得る。出荷の総持続時間は、シリンジを最初の保管場所から第2の場所、例えば、医療施設に搬送するのに必要な任意の期間であり得る。例えば、出荷の持続時間は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15時間であり得る。出荷プロセスは、シリンジが搬送されている間の期間を含んでいてもよく、例えば、更なる搬送間隔の前の一時的な保管場所での、シリンジが搬送されていない間の1つ又は2つ以上の間隔を伴う。本開示の目的のために、出荷の持続時間は、製造後の最初の保管施設からシリンジを運び出すところから、投与が行われる施設への到着までに経過する時間の総量を指すことができるが、必ずしもそうである必要はない。
【0079】
本方法は、シリンジの出荷の後、かつ薬物懸濁液の投与の前に、シリンジを、保管場所で、意図的に選択された向きに、例えば、実質的に水平の向きに維持することを更に含み得る。この観点で、保管施設の床は、水平であり、それによって重力に対して垂直である可能性が高いため、実質的に水平の向きとは、好ましくは、保管施設の床に実質的に平行である角度を指すことができる。このことは、シリンジの長軸と保管施設の床との間の角度が好ましくは約20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1°未満であることを意味し得る。
【0080】
上述のように、本方法は、パルミチン酸パリペリドンシリンジ内容物の再懸濁を容易にし、改善する。パルミチン酸パリペリドン粒子を再懸濁することの1つの意図される結果は、シリンジの先端内の再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンを表す残留物の減少又は除去である。再懸濁が不完全である程度まで、再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンは、投与後にシリンジの先端内に残る可能性があり、それによって、送達されていない薬物を表し、不完全な投与の指標である。投与後にシリンジ先端内に残る再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンを表す残留物の量を最小限に抑えることは、本明細書に開示される方法の更なる有益な結果を表す。例えば、本方法によれば、シリンジ先端は、投与後に再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンを表す約3、2.5、2、1.5、1、又は0.5mm以下の残留物を含有し得る。いくつかの実施形態では、シリンジ先端は、投与後に再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンを表す約3、2.8、2.6、2.5、2.4、2.2、2.1、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、又は0mmの残留物を含有する。
【0081】
シリンジは、任意の種類のものであってもよく、パルミチン酸パリペリドン注射可能懸濁液の保管及び投与に適した任意の針を備えていてもよい。例えば、シリンジは、1、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、2.8、3、3.25、3.5、3.75、4、4.25、4.5、4.75、5、5.25、5.5、5.75、6、6.25、6.5、6.75、又は7mLの容量を有し得る。いくつかの実施形態では、シリンジは、1、2.25、2.8、又は3mLの容量を有し、長さ1又は1.5インチである22ゲージ針を含む。いくつかの実施形態では、シリンジは、5mLの容量を有し、長さ1.5インチである20ゲージ針を含む。本明細書に開示される発明のいずれかに関して、パルミチン酸パリペリドンのシリンジにより注射可能な懸濁液の体積は、例えば、1、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、2.8、3、3.25、3.5、3.75、4、4.25、4.5、4.75、5、5.25、5.5、5.75、6、6.25、6.5、6.75、又は7mLであり得る。
【0082】
本方法は、シリンジ(すなわち、出荷中に所望の向きに維持されていた)からの懸濁液を患者に投与するステップを更に含み得る。いくつかの実施形態では、所望の向きは、実質的に水平である。懸濁液の投与は、例えば、上述の市販のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液製品のラベルに記載されているプロトコルに従って行われるべきである。本方法は、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の投与前及び投与中に推奨されるステップを正確に厳守する医療従事者による失敗の特定の事例を軽減するが、本方法によるシリンジからの懸濁液の投与が、ラベリングプロトコルを遵守することが依然として望ましい。
【0083】
同時に、本方法は、シリンジの出荷中に実質的に水平の向きに維持されているシリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力の減少を可能にする。したがって、本開示は、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力を減少させるための方法を包含する。例えば、シリンジからの注射に必要な力は、シリンジの出荷中に実質的に水平の向きに維持されなかったシリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力よりも約5%~60%小さくてもよい。シリンジからの注射に必要な力は、例えば、シリンジの出荷中に実質的に水平の向きに維持されなかったシリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力よりも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60%小さくてもよい。いくつかの実施形態では、シリンジからの注射に必要な力は、シリンジの出荷中に実質的に水平の向きに維持されなかったシリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力よりも約10~55、15~50、20~50、25~45、又は30~40%小さくてもよい。加えて、同時に、本方法は、出荷中に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きに、例えば、出荷前保管中の向きが実質的に水平ではなかった場合にシリンジの出荷中は実質的に水平の向きに維持されているシリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力の減少を可能にする。したがって、本開示は、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力を減少させるための方法を包含する。例えば、シリンジからの注射に必要な力は、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる出荷中の向きに維持されなかったシリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力よりも約5~60%小さくてもよい。シリンジからの注射に必要な力は、例えば、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる出荷中の向きに維持されなかったシリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力よりも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60%小さくてもよい。いくつかの実施形態では、シリンジからの注射に必要な力は、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる出荷中の向きに維持されなかったシリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力よりも約10~55、15~50、20~50、25~45、又は30~40%小さくてもよい。
【0084】
絶対的な観点で、シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力は、シリンジの出荷中に実質的に水平の向きに維持されなかったシリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力よりも約10~25ニュートン小さくてもよい。シリンジからの注射に必要な力は、例えば、シリンジの出荷中に実質的に水平の向きに維持されなかったシリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力よりも約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25ニュートン小さくてもよい。シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に実際に必要な力の量は、例えば、約10~25ニュートンであり得る。したがって、シリンジからの注射に必要な力は、例えば、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25ニュートンであり得る。加えて、絶対的な観点で、シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力は、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる出荷中の向きに維持されなかったシリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力よりも約5~25ニュートン小さくてもよい。シリンジからの注射に必要な力は、例えば、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる出荷中の向きに維持されなかったシリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力よりも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25ニュートン小さくてもよい。シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に実際に必要な力の量は、例えば、約10~25ニュートンであり得る。したがって、シリンジからの注射に必要な力は、例えば、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25ニュートンであり得る。
【0085】
本方法は、シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射を完了させるのに必要な力の量を評価することを更に含み得る。評価は、任意の利用可能な測定技術を使用して実行され得る。
【0086】
本方法はまた、又はあるいは、シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射が完了しているかどうかを評価することを含み得る。評価は、例えば、長さ約4、3.75、3.5、3.25、3、2.75、2.5、2.25、2、1.75、1.5、1.25、1、0.75、0.5、又は0.25mm等の特定の値を超えるシリンジの先端内の再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンの量を測定することを含み得る。
【0087】
また、シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の再懸濁性を改善するための方法であって、シリンジの保管中に、シリンジを実質的に水平の向きに維持することを含む、方法が本明細書で開示される。シリンジの保管は、シリンジの出荷の前又は後に行ってもよい。特定の実施形態では、シリンジの保管は、シリンジの出荷後、例えば、パルミチン酸パリペリドンの投与を行う医療施設に対応する場所で行われる。これらの方法は、出荷中にシリンジを実質的に水平の向きに維持することを含む再懸濁性を改善する上述の方法とは独立して、又はそれと組み合わせて実施され得る。換言すれば、シリンジは、実質的に水平の向きで保管されてもよく、実質的に水平の向きで出荷されてもよく、又は実質的に水平の向きで出荷と保管のいずれも行われてもよい。実質的に水平の向きでのシリンジの保管は、シリンジを収容する包装又は容器上のマーキング又は他の説明によって容易にされてもよく、このようなマーキングは、出荷中に実質的に水平の向きの維持を確実にすることを意図したマーキング又は説明と同じであってもよく、又は異なっていてもよい。出荷中に実質的に水平の向きに維持することを含む方法の場合と同様に、本方法は、保管中に実質的に水平の向きの維持を確実にするために監視することを更に含み得る。監視するためのアプローチは、出荷中の実質的に水平の向きの維持と関連して上述したものと同じであってもよい。また、シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の再懸濁性を改善するための方法であって、出荷中に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きに、例えば、出荷前保管中の向きが実質的に水平ではなかった場合にシリンジの保管中に実質的に水平の向きに、シリンジを維持することを含む、方法が本明細書に開示される。シリンジの保管は、シリンジの出荷の前又は後に行ってもよい。特定の実施形態では、シリンジの保管は、シリンジの出荷後、例えば、パルミチン酸パリペリドンの投与を行う医療施設に対応する場所で行われる。これらの方法は、出荷中に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きにシリンジを維持することを含む再懸濁性を改善する上述の方法とは独立して、又はそれと組み合わせて実施され得る。換言すれば、シリンジは、実質的に水平の向きで出荷され、その後に、実質的に水平の向きに保管されてもよく、実質的に水平の向きで出荷されてもよく、又は実質的に水平の向きで出荷と保管のいずれも行われてもよい。特定の向きでのシリンジの保管は、シリンジを収容する包装又は容器上のマーキング又は他の説明によって容易にされてもよく、このようなマーキングは、出荷中に所望の向きの維持を確実にすることを意図したマーキング又は説明と同じであってもよく、又は異なっていてもよい。出荷中に特定の向きに維持することを含む方法の場合と同様に、本方法は、保管中に所望の向きの維持を確実にするために監視することを更に含み得る。監視するためのアプローチは、出荷中の所望の向きの維持と関連して上述したものと同じであってもよい。
【0088】
本開示はまた、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液をそれぞれ含有するシリンジの集合体であって、シリンジの各々が、目的地に出荷されており、シリンジが、シリンジの出荷中に、実質的に水平の向きに各々維持されていた、シリンジの集合体を提供する。したがって、シリンジの集合体の各メンバーは、改善された再懸濁性、投与後のシリンジ先端内のより少ない残留物、投与に必要なより少ない力等を含む、実質的に水平な向きで出荷することに関連する上述の利益を得る。シリンジの集合体は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、120、140、160、180、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000個、又は2000個より多い個々のシリンジを含み得る。シリンジの集合体の各メンバーは、本明細書に開示される方法に従って本明細書に別様に記載されるシリンジ型及びパルミチン酸パリペリドン懸濁液を含み得る。加えて、本開示はまた、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液をそれぞれ含有するシリンジの集合体であって、シリンジの各々が、目的地に出荷されており、出荷中に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きに、例えば、出荷前保管中の向きが実質的に水平ではなかった場合にシリンジの出荷中は実質的に水平の向きに、シリンジが各々維持されていた、シリンジの集合体を提供する。したがって、シリンジの集合体の各メンバーは、改善された再懸濁性、投与後のシリンジ先端内のより少ない残留物、投与に必要なより少ない力等を含む、出荷中に、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きで出荷することに関連する上述の利益を得る。シリンジの集合体は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、120、140、160、180、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000個、又は2000個より多い個々のシリンジを含み得る。シリンジの集合体の各メンバーは、本明細書に開示される方法に従って本明細書に別様に記載されるシリンジ型及びパルミチン酸パリペリドン懸濁液を含み得る。
【0089】
また、シリンジ内に統合失調症を罹患している患者への投与のためのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液を含む薬学的製品であって、シリンジが、出荷前保管を受け、出荷されており、シリンジが、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きで出荷中に維持されている、薬学的製品が本明細書で提供される。パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液、シリンジ、出荷前保管条件、出荷前保管中のシリンジの向き、出荷条件、及び出荷中のシリンジの向きのそれぞれの特徴は、シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の再懸濁性を改善するための本発明の方法、及び本発明のシリンジの集合体と組み合わせて、上述の実施形態のうちのいずれに従ってもよい。
【0090】
例えば、シリンジは、外側表面を含む容器内に収容されていてもよく、外側表面はシリンジの所望の向きに対応する向きに出荷中の容器を維持するための説明を含んでいた。いくつかの実施形態では、シリンジは外側表面を含む容器内に収容され、外側表面はシリンジの所望の向きを維持することに対応する容器の向きを示したマーキングを含んでいた。
【0091】
出荷後に、シリンジは、懸濁液の注射後に再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンを表す約1.5mm以下又は約1mm以下の残留物を含有し得る。例えば、シリンジは、懸濁液の注射後に再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンを表す約1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1mmの残留物を含有し得る。
【0092】
シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液は、約273、410、546、又は819mgのパルミチン酸パリペリドンを含有し得る。他の実施形態では、懸濁液は、約1092又は1560mgのパルミチン酸パリペリドンを含有する。
【0093】
出荷の向きは、出荷前保管中のシリンジの向きから約45°~約135°変化し得る。例えば、出荷中のシリンジの向きは、出荷前保管中のシリンジの向きから約45、50、55、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、又は135°変化し得る。
【0094】
本明細書に開示される薬学的製品のいくつかの実施形態では、出荷前保管の向きは、先端下向きであった。本明細書に開示される薬学的製品のいくつかの実施形態では、出荷の向きは、実質的に水平であった。本明細書に開示される薬学的製品の特定の実施形態では、出荷前保管の向きは先端下向きであった、かつ、出荷の向きは先端上向き、又は実質的に水平であった。他の実施形態では、出荷前保管の向きは先端下向きであった、かつ、出荷の向きは実質的に水平であった。他の実施形態では、出荷前保管は先端下向きであった、かつ、出荷の向きは、先端上向きであった。
【0095】
本開示はまた、統合失調症を治療する方法であって、統合失調症を罹患している患者に、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液をシリンジから投与することを含み、シリンジが、出荷前保管を受け、出荷されており、シリンジが、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きで出荷中に維持されていた、方法を提供する。本開示はまた、統合失調症を治療する方法において使用するためのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液であって、これらの方法が、統合失調症を罹患している患者に、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液をシリンジから投与することを含み、シリンジが、出荷前保管を受け、出荷されており、シリンジが、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きで出荷中に維持されていた、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液を提供する。懸濁液の投与は、例えば、上述の市販のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液製品のラベルに記載されているプロトコルに従って行われるべきである。本方法は、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の投与前及び投与中に推奨されるステップを正確に厳守する医療従事者による失敗の特定の事例を軽減するが、本方法によるシリンジからの懸濁液の投与が、ラベリングプロトコルを遵守することが依然として望ましい。
【0096】
現在開示されている統合失調症を治療する方法に関して、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液、シリンジ、出荷前保管条件、出荷前保管中のシリンジの向き、出荷条件、及び出荷中のシリンジの向きのそれぞれの特徴は、シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の再懸濁性を改善するための本発明の方法、及び本発明のシリンジの集合体と組み合わせて、上述の実施形態のうちのいずれに従ってもよい。
【0097】
例えば、シリンジは、外側表面を含む容器内に収容されていてもよく、外側表面はシリンジの所望の向きに対応する向きに出荷中の容器を維持するための説明を含んでいた。いくつかの実施形態では、シリンジは外側表面を含む容器内に収容され、外側表面はシリンジの所望の向きを維持することに対応する容器の向きを示したマーキングを含んでいた。
【0098】
出荷後に、シリンジは、懸濁液の注射後に再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンを表す約1.5mm以下又は約1mm以下の残留物を含有し得る。例えば、シリンジは、懸濁液の注射後に再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンを表す約1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1mmの残留物を含有し得る。
【0099】
シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液は、約273、410、546、又は819mgのパルミチン酸パリペリドンを含有し得る。他の実施形態では、懸濁液は、約1092又は1560mgのパルミチン酸パリペリドンを含有する。
【0100】
出荷の向きは、出荷前保管中のシリンジの向きから約45°~約135°変化し得る。例えば、出荷中のシリンジの向きは、出荷前保管中のシリンジの向きから約45、50、55、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、又は135°変化し得る。
【0101】
統合失調症を治療する本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、出荷前保管の向きは、先端下向きであった。統合失調症を治療する本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、出荷の向きは、実質的に水平であった。本明細書に開示される方法の特定の実施形態では、出荷前保管の向きは先端下向きであった、かつ、出荷の向きは、先端上向き、又は実質的に水平であった。他の実施形態では、出荷前保管の向きは先端下向きであった、かつ、出荷の向きは実質的に水平であった。他の実施形態では、出荷前保管は先端下向きであった、かつ、出荷の向きは先端上向きであった。
【0102】
本開示はまた、統合失調症を治療するための医薬の製造におけるパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の使用であって、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液が、シリンジからの投与のために調製され、シリンジが、出荷前保管を受け、出荷されており、シリンジが、出荷前保管中のシリンジの向きとは異なる向きで出荷中に維持されていた、使用を提供する。懸濁液の投与は、例えば、上述の市販のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液製品のラベルに記載されているプロトコルに従って行われるべきである。本使用は、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の投与前及び投与中に推奨されるステップを正確に厳守する医療従事者による失敗の特定の事例を軽減するが、本使用によるシリンジからの懸濁液の投与が、ラベリングプロトコルを遵守することが依然として望ましい。
【0103】
現在開示されている使用に関して、パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液、シリンジ、出荷前保管条件、出荷前保管中のシリンジの向き、出荷条件、及び出荷中のシリンジの向きのそれぞれの特徴は、シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の再懸濁性を改善するための本発明の方法、及び本発明のシリンジの集合体と組み合わせて、上述の実施形態のうちのいずれに従ってもよい。
【0104】
例えば、シリンジは、外側表面を含む容器内に収容されていてもよく、外側表面はシリンジの所望の向きに対応する向きに出荷中の容器を維持するための説明を含んでいた。いくつかの実施形態では、シリンジは外側表面を含む容器内に収容され、外側表面はシリンジの所望の向きを維持することに対応する容器の向きを示したマーキングを含んでいた。
【0105】
出荷後に、シリンジは、懸濁液の注射後に再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンを表す約1.5mm以下又は約1mm以下の残留物を含有し得る。例えば、シリンジは、懸濁液の注射後に再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンを表す約1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1mmの残留物を含有し得る。
【0106】
シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液は、約273、410、546、又は819mgのパルミチン酸パリペリドンを含有し得る。他の実施形態では、懸濁液は、約1092又は1560mgのパルミチン酸パリペリドンを含有する。
【0107】
出荷の向きは、出荷前保管中のシリンジの向きから約45°~約135°変化し得る。例えば、出荷中のシリンジの向きは、出荷前保管中のシリンジの向きから約45、50、55、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、又は135°変化し得る。
【0108】
本明細書に開示される使用のいくつかの実施形態では、出荷前保管の向きは、先端下向きであった。本明細書に開示される使用のいくつかの実施形態では、出荷の向きは、実質的に水平であった。本明細書に開示される使用の特定の実施形態では、出荷前保管の向きは先端下向きであった、かつ、出荷の向きは先端上向きで、又は実質的に水平であった。他の実施形態では、出荷前保管の向きは、先端下向きであった、かつ、出荷の向きは実質的に水平であった。他の実施形態では、出荷前保管は先端下向きであった、かつ、出荷の向きは先端上向きであった。
【0109】
本発明は、以下の番号付けされた項を参照しつつ、更に定義される。
1. シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の再懸濁性を改善するための方法であって、シリンジの出荷中に、シリンジを実質的に水平の向きに維持することを含む、方法。
2. シリンジを実質的に水平の向きに維持することは、シリンジを出荷車両に実質的に水平の向きに積載すること、出荷中にシリンジを監視して、実質的に水平の向きの維持を確認すること、又はその両方を含む、項1に記載の方法。
3. シリンジを、外側表面を含む容器内に収容することを更に含み、外側表面は実質的に水平であるシリンジの向きに対応する向きに出荷中の容器を維持するための説明を有する、項1又は項2に記載の方法。
4. シリンジを、外側表面を含む容器内に収容することを更に含み、外側表面は実質的に水平であるシリンジの向きを維持することに対応する容器の向きを示すマーキングを有する、項1~3のいずれか1つに記載の方法。
5. シリンジを出荷した後に、シリンジを、実質的に水平の向きで保管場所に維持することを更に含む、項1~4のいずれか1つに記載の方法。
6. シリンジが、飛行機、トラック、ボート、又は鉄道によって出荷される、項1~5のいずれか1つに記載の方法。
7. 出荷後に、シリンジが、投与後に再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンを表す約1.5mm以下の残留物を含有する、項1~6のいずれか1つに記載の方法。
8. 出荷後に、シリンジが、再懸濁されていないパルミチン酸パリペリドンを表す約1mm以下の残留物を含有する、項1~7のいずれか1つに記載の方法。
9. シリンジが、1mL、2.25mL、2.8mL、又は3mLの容量を有し、長さ1又は1.5インチである22ゲージ針を含む、項1~8のいずれか1つに記載の方法。
10. シリンジが、5mLの容量を有し、長さ1.5インチである20ゲージ針を含む、項1~13のいずれか1つに記載の方法。
11. 懸濁液が、約273、410、546、又は819mgのパルミチン酸パリペリドンを含有する、項1~15のいずれか1つに記載の方法。
12. 懸濁液が、約1092又は1560mgのパルミチン酸パリペリドンを含有する、項1~15のいずれか1つに記載の方法。
13. 懸濁液をシリンジから患者に投与することを更に含む、項1~17のいずれか1つに記載の方法。
14. シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力を減少させるための方法であって、シリンジの出荷中に、シリンジを実質的に水平の向きに維持することを含む、方法。
15. シリンジからの注射に必要な力が、シリンジの出荷中に実質的に水平の向きに維持されていなかったシリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力よりも約20%~約50%小さい、項23に記載の方法。
16. シリンジからの注射に必要な力が、シリンジの出荷中に実質的に水平の向きに維持されていなかったシリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射に必要な力よりも約10~25ニュートン小さい、項23又は項24に記載の方法。
17. シリンジからの注射に必要な力が、約10~25ニュートンである、項23~25のいずれか1つに記載の方法。
18. シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射を完了させるのに必要な力を評価することを更に含む、項23~26のいずれか1つに記載の方法。
19. シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の不完全な注射の可能性を減少させるための方法であって、シリンジの出荷中に、シリンジを実質的に水平の向きに維持することを含む、方法。
20. シリンジからのパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の注射が完了しているかどうかを評価することを更に含む、項28に記載の方法。
21. シリンジ内のパルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液の再懸濁性を改善するための方法であって、シリンジの保管中に、シリンジを実質的に水平の向きに維持することを含む、方法。
22. 上述の保管が、シリンジの出荷後に行われる、項21に記載の方法。
23. パルミチン酸パリペリドン持続放出注射可能懸濁液をそれぞれ含有するシリンジの集合体であって、シリンジの各々が、目的地に出荷されており、シリンジが、シリンジの出荷中に、実質的に水平の向きに各々維持されていた、シリンジの集合体。
24. 少なくとも100個の個々のシリンジを含む、項30に記載の集合体。
【実施例】
【0110】
本発明を、以下の実施例で更に定義する。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しつつ、単なる説明としてのみ与えられ、添付の特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。上の考察及びこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認することができ、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更及び修正を行って、本発明を様々な用途及び条件に適合させることができる。特に明記しない限り、実施例におけるPP6Mへの言及は、実施例2における製剤を指す。
【0111】
実施例1-3ヶ月持続放出製剤(PP3M)
以下の表1は、筋肉内(IM)注射に適した200mg/mL当量のパリペリドンの例示的な3ヶ月持続放出製剤(PP3M)を含む。
【0112】
【0113】
PP3Mは、充填済シリンジで提供することができ、投薬強度は、175mg当量~525mg当量の範囲であり、シリンジに、異なる体積の200mg/mL当量のバルク懸濁液を充填することによって得ることができる。表2は、シリンジサイズ、及び公称充填体積を含む、異なる投薬強度を示す。
【0114】
【0115】
表3は、PP3Mをパッケージするために使用されるシリンジ構成要素を記載する。
【0116】
【0117】
実施例2-6ヶ月持続放出製剤(PP6M)
以下の表4は、筋肉内(IM)注射に適した200mg/mL当量のパルミチン酸パリペリドンの例示的な6ヶ月持続放出製剤(PP6M)を含む。
【0118】
【0119】
PP6Mは、充填済シリンジで提供することができ、投薬強度は、700mg当量~1000mg当量の範囲であり、シリンジに、異なる体積の200mg/mL当量のバルク懸濁液を充填することによって得ることができる。表5は、シリンジサイズ、及び公称充填体積を含む、異なる投薬強度を示す。
【0120】
【0121】
表6は、6ヶ月持続放出製剤をパッケージするために使用されるシリンジ構成要素を記載する。
【0122】
【0123】
実施例3-出荷前の保管条件
安定性試験は、出荷前の5つの異なる向き(水平、先端下向き+45°、先端上向き-45°、先端下向き+45°、及び先端下向き-45°)で、PP6Mのプロセスパフォーマンス適格性(PPQ)バッチを用いて実施した。以下の試験結果は、製造後に保管されたが、試験前に出荷されなかったシリンジに関して得られた。5秒間の振盪によるセンサ試験を、2つの異なる温度(25℃及び30℃)で行った。この実験からの結果を表7に提供する。
【0124】
【表7】
注:PPQIII水平試料は、ブリスター包装されており(ブリスターパッケージに収容されており)、PPQII及びPPQI水平試料は、ブリスター包装されていない。9M=9ヶ月の保管期間。NT=未試験。
【0125】
プランジャロッドの親指パッド上のセンサを使用して、手動注射により注射可能性試験を行い、時間(秒)経過に伴う力(ニュートン)を記録した。5秒間激しく振盪した後のPPQ I及びPPQ II中の試料についての射出力プロファイルを
図1A~
図1Fに示す。
【0126】
結果は、出荷前に任意の位置で保管された製品を、通常の量の力で再懸濁することができること、すなわち、シリンジ内容物を排出させるのに必要な力が、出荷が行われる前の保管位置に関係しないことを示唆していた。異なる保管位置は、同等の結果を与え、このことは、シリンジが出荷前に保管される位置が、少なくとも5秒間振盪された場合には重要ではないことを示している。完全な注射を、許容可能な射出力で行うことができた。
【0127】
この実験の後、安定性試験中及び出荷前の製品の保管位置は、再懸濁性の重要な決定因子ではないことが明らかになった。以下の実施例4に記載されるように、出荷の向きは、出荷前保管の向きよりもはるかに重要であることがわかった。
【0128】
実施例4-模擬出荷中の向き
製造施設で先端下向きの向きでの保管期間の後、PP6M製剤を含有するシリンジを、模擬航空出荷についてのASTM D4169-16によって定義されるレベルI及びレベルIIの振動に対応する振動を用いた模擬出荷実験に供した。これらは、航空出荷中の最高レベルの振動であり、トラックによる出荷について定義された振動レベルを超える。差を検出するための試験の感度を増加させるために、模擬出荷後のPP6M製剤の再懸濁性及び注射可能性を、振盪を行わずに、又は5秒間だけ振盪して(使用説明書(instructions for use、IFU)によって定義されるより短い、INVEGA TRINZA(登録商標)(PP3M製品)についてラベルで提供される説明と一致する、PP6MについてのIFUは、2×15秒間の振盪であり、PP3MについてのIFUは、1×15秒間の振盪である))試験した。シリンジ内に残った残留物、及びシリンジをその点まで空にするのに必要な最大の力のまとめを以下の表8に提供する。
【0129】
【0130】
図2A~
図2Dは、水平向き又は先端下向きにある間に振動実験に供されたシリンジについての射出力曲線を示す。プランジャロッドの親指パッド上のセンサを使用して、手動注射により注射可能性試験を行い、時間(秒)経過に伴う力(ニュートン)を記録した。振動条件は、ASTM D4169に従い、2時間のレベルIIの模擬航空出荷及び3時間のレベルIの模擬航空出荷を含んでいた。
図2Aは、先端下向きの向きにあったものであり、かつ注射前に振盪を行わなかったシリンジに対応する。
図2Bは、先端下向きの向きにあったものであり、かつ注射前に5秒間の振盪を行ったシリンジに対応する。
図2Cは、水平の向きにあったものであり、かつ注射前に振盪を行わなかったシリンジに対応する。
図2Dは、水平の向きにあったものであり、かつ注射前に5秒間の振盪を行ったシリンジに対応する。
【0131】
この実験からの結果は、先端下向きの向きでの保管の後の先端下向きの位置でのシリンジの出荷によって、シリンジ内容物を絞り出すのに非常に高い力を必要とする場合があること、このようなシリンジの内容物が、5秒間の振盪の後に完全に再懸濁されないことを確認する。実際問題として、医療提供者は、特に患者に注射するときに、30N又は35Nまで押すことはない。
【0132】
しかしながら、シリンジが、先端下向きの向きで保管された後に水平の様式で出荷された場合、射出力は、10~20ニュートンの範囲であったので、このことは、その製品が、良好な懸濁を行うために必要な振盪がより少ないことを示している。比較すると、はるかに濃縮度の低い製剤(それによって、衝突に対する脆弱性がかなり低く、それにより再懸濁の要求が更に低い調製物)を表す、1ヶ月のパルミチン酸パリペリドン注射可能懸濁液を放出させるのに必要な力は、7~12ニュートンの範囲である。
【0133】
実施例5-出荷前保管中の向きに対して出荷中のシリンジの向きを変化させると、射出力及び注射後残留物が減少する
出荷中のPP6Mシリンジの水平の向きが、先端下向きの向きと比較して、改善された再懸濁性及び注射可能性の特性をもたらすという最初の証明の後、異なる種類及び持続時間の出荷の影響の可能性をより深く評価し、模擬出荷から最大3ヶ月後までのPP6Mシリンジの挙動を監視するために、更なる研究を開始した。
【0134】
この研究のために、5mLシリンジのPP6Mを安定性チャンバから選択した。同じ5mLシリンジ中の製品負荷がより高いため、再懸濁性についての最悪の場合として、3.5mL充填物ではなく、5mL充填物を選択した。
【0135】
模擬出荷条件にさらされる前に、安定性チャンバ中に異なる向きで保管されているが、まだ出荷条件に供されていない、異なるバッチからの試料を、5秒間の不十分な振盪後に、シリンジを容器に手動で注射することによって、再懸濁性/注射可能性について試験した。注射可能力を、親指パッドに取り付けたセンサで記録し、シリンジ中の残留製品の高さを測定した。全ての試料は、シリンジ内に製品残留物が存在しないか、又は許容可能な製品残留物を有する完全な注射が行われ、異なる出荷前保管の向きの設定が、それ自体は懸濁液の特性に影響を及ぼさず、製品は、9ヶ月間の保管後に容易に再懸濁可能であり、注射可能であったと結論付けた。
【0136】
この最初の試験に続いて、シリンジをBeerse(ベルギー)からDiepenbeek(ベルギー)の試験施設まで車で輸送し、軽度の曝露(1時間のトラック、軽度)から重度の曝露(4時間の飛行機、高)までの範囲の異なる出荷模擬に供した。模擬出荷試験は、ASTM D4169-16に従って行った。これらの出荷模擬の間、シリンジは、水平又は先端下向きのいずれかに配置された。通常の製造中に、シリンジは、典型的には充填から1ヶ月以上の間、タブ内に先端下向きに保管される。包装の注文が発行されると、シリンジは、ブリスターキットに包装され、発売後に出荷される。出荷模擬から1日以内に、異なる向きで異なる模擬出荷条件にさらされた試料を、5秒間高速で振盪し、製品を容器に手動で注射することによって再懸濁させ、射出力を、シリンジの親指パッドに取り付けたセンサで測定した。試験の感度を増加させるために、製品を再懸濁するためにより短い時間(IFUに従って2×15秒ではなく5秒)を分析のために使用した。
【0137】
シリンジの残りを、プロトコルに従って水平又は先端下向きに保管し、シリンジの再懸濁性/注射可能性を、1ヶ月、2ヶ月、又は3ヶ月の保管後に更に評価した。
【0138】
また、以下に記載されるように、分析は、出荷の向きに対する出荷前のシリンジの向きが、製品の再懸濁における重要な因子であることを示した。
【0139】
単一の出荷、及びトラック/飛行機の出荷の組み合わせの両方において、最初の保管及び出荷の間シリンジを同じ向きに維持することは、シリンジの再懸濁をより困難なものにし、わずか5秒間の高速振盪の後に、より多くの残留製品を生じた。
【0140】
出荷後の保管位置及び保管時間は、製品の再懸濁性に対して限定された影響のみを有する因子を表した。
【0141】
表9~11(以下)に提供されるデータは、シリンジが、出荷前の水平の保管の後に水平に出荷される場合、先端下向きで保管されたシリンジと比較して、5秒間の迅速な再懸濁性及び注射の後に、より多い残留製品が存在することを示す。
【0142】
同様に、出荷前に先端上向きで保管され、出荷中に先端下向きに向けられたシリンジは、5秒間の迅速な再懸濁性及び注射の後に、残留製品を全く含まないか、又は非常に限定された残留製品を含んでいた。
【0143】
単一の出荷、及び組み合わせ出荷の両方において、最初の保管及び出荷の間シリンジを同じ向きに維持することで、シリンジの再懸濁をより困難なものにし、5秒間の迅速な再懸濁性及び手動の注射の後に、より多くの残留製品を生じた。
【0144】
表9~11は、試料のセットについての結果を提供し、出荷前保管及び出荷の間同じ向きに保持されていたシリンジと比較して、初期保管の間の向きが出荷中とは異なっていたシリンジ間で直接の比較を可能にする。
【0145】
実験1及び2は、単一の種類の模擬出荷を伴う試験からの2つのデータセットを表し、一方で、実験3は、組み合わせた出荷試験(すなわち、模擬航空出荷の後、模擬トラック出荷)からのデータを提供する。
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
これらのデータは、出荷前保管中の向きとは異なる向きで出荷されたシリンジが、出荷前保管の向きとは異なっていない出荷中の向きに維持されたシリンジよりも容易に再懸濁されたことを示した。
【国際調査報告】