(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】リソグラフィ装置コンポーネントおよび方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
G03F7/20 503
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530272
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2021081219
(87)【国際公開番号】W WO2022122285
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】ブラウ、ミヒル、アレクサンデル
(72)【発明者】
【氏名】デル キンデレン、ロニー
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197BA04
2H197BA11
2H197CD13
2H197EB22
2H197EB27
2H197FA01
2H197GA20
(57)【要約】
【解決手段】リソグラフィ装置のためのレチクルステージが提供される。レチクルステージは、クリーニングされるべき領域を有する少なくとも一つの光学エレメントと、放射ビームターゲットと、放射ビームを放射ビームターゲットに向けるように構成される制御システムと、を備える。放射ビームおよびガスの相互作用が、光学エレメント洗浄プラズマを生成する。放射ビームターゲットは、光学エレメントをクリーニングするための光学エレメント洗浄プラズマを、少なくとも一つの光学エレメントに提供するために配置される。少なくとも一つの光学エレメントは、放射ビームターゲットと異なるエレメントであり、好ましくは、熱感応性エレメントが基準である。少なくとも一つの曲がったエッジを備えるリソグラフィ装置のための基準、レチクルステージまたは基準を備えるリソグラフィ装置、およびレチクルステージの光学エレメントをクリーニングする方法も記述される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーニングされるべき領域を有する少なくとも一つの光学エレメントと、
放射ビームターゲットと、
放射ビームを前記放射ビームターゲットに向けるように構成される制御システムと、
を備え、
前記放射ビームおよびガスの相互作用が、光学エレメント洗浄プラズマを生成し、
前記放射ビームターゲットは、前記光学エレメントをクリーニングするための前記光学エレメント洗浄プラズマを、前記少なくとも一つの光学エレメントに提供するために配置され、
前記少なくとも一つの光学エレメントは、前記放射ビームターゲットと異なるエレメントである、
リソグラフィ装置のためのレチクルステージ。
【請求項2】
前記放射ビームターゲットは、照明されるべき基板の領域を制限するための照明シャッタ、レチクルクランプ、ビームダンプ、または前記放射ビームからエネルギーを吸収してプラズマを生成するように構成される吸収エレメントである、請求項1に記載のリソグラフィ装置のためのレチクルステージ。
【請求項3】
前記制御システムは、クリーニングされるべき領域を有する前記光学エレメントに対して、前記放射ビームターゲットを動かすように構成される、および/または、前記制御システムは、クリーニングされるべき領域を有する前記光学エレメントを、前記光学エレメント洗浄プラズマと相互作用できる位置に動かすように構成される、請求項2に記載のリソグラフィ装置のためのレチクルステージ。
【請求項4】
前記ガスを供給するように構成されるガス供給源を更に備え、オプションで、前記ガス供給源がガス圧力を1Paから20Paの範囲に維持するように構成される、請求項1から3のいずれかに記載のリソグラフィ装置のためのレチクルステージ。
【請求項5】
前記放射ビームターゲットが、前記少なくとも一つの光学エレメントに接続される、または、前記少なくとも一つの光学エレメントから25mm以内に配置される、請求項1から4のいずれかに記載のリソグラフィ装置のためのレチクルステージ。
【請求項6】
前記放射ビームターゲットは、コンディショニングシステムを更に備える、請求項2から5のいずれかに記載のリソグラフィ装置のためのレチクルステージ。
【請求項7】
前記放射ビームターゲットはビームダンプであり、オプションで、前記ビームダンプはCrを備える、請求項2から6のいずれかに記載のリソグラフィ装置のためのレチクルステージ。
【請求項8】
前記クリーニングされるべき領域を有する少なくとも一つの光学エレメントは、マーク領域を有する基準マークを備え、オプションで、前記マーク領域の形状が矩形であり、一方の辺が、更に半球領域または半楕円領域を備える、または、少なくとも一つの曲がったエッジを備える、請求項1から7のいずれかに記載のリソグラフィ装置のためのレチクルステージ。
【請求項9】
前記少なくとも一つの照明シャッタは、二つのブレードを備え、
前記制御システムは、前記二つのブレードで前記少なくとも一つの光学エレメントに窓を設けるように構成される、
請求項2から8のいずれかに記載のリソグラフィ装置のためのレチクルステージ。
【請求項10】
前記ブレードは互いに平行に配置され、
前記少なくとも一つの光学エレメントは前記ブレードの間に配置される、
請求項9に記載のリソグラフィ装置のためのレチクルステージ。
【請求項11】
コンディショニング回路およびスペーサを備え、
前記スペーサは、前記少なくとも一つの光学エレメントに接続され、
前記コンディショニング回路は、前記少なくとも一つの光学エレメントおよび前記スペーサを調整するように構成される、
請求項1から10のいずれかに記載のリソグラフィ装置のためのレチクルステージ。
【請求項12】
前記ガスは水素である、請求項1から11のいずれかに記載のリソグラフィ装置のためのレチクルステージ。
【請求項13】
前記放射ビームはEUVビームである、請求項1から12のいずれかに記載のリソグラフィ装置のためのレチクルステージ。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載のリソグラフィ装置のためのレチクルステージを提供することと、
光学エレメント洗浄プラズマを生成するために、放射ビームを前記放射ビームターゲットに向けることと、
を備えるレチクルステージの少なくとも一つの光学エレメントをクリーニングするための方法。
【請求項15】
請求項1から13のいずれかに記載のリソグラフィ装置のためのレチクルステージに、請求項14に記載の方法のステップを実行させる命令を備えるコンピュータプログラム製品。
【請求項16】
請求項15に記載のコンピュータプログラムを格納したコンピュータ読取可能媒体。
【請求項17】
少なくとも一つの曲がったエッジを備える、リソグラフィ装置のための基準。
【請求項18】
二つの対向する線型エッジを備える、および/または、一つの実質的に線型エッジに対向する一つの曲がったエッジを備える、請求項17に記載の基準。
【請求項19】
請求項1から13のいずれかに記載のリソグラフィ装置のためのレチクルステージまたは請求項17または18に記載の基準を備えるリソグラフィ装置。
【請求項20】
請求項1から13のいずれかに記載のリソグラフィ装置のためのレチクルステージ、請求項17または18に記載の基準、または請求項14に記載の方法のリソグラフィ方法または装置における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]
本出願は、2020年12月8日に出願された欧州出願20212524.1号および2020年12月16日に出願された欧州出願20214417.6号の優先権を主張し、それらの全体が参照により本書に援用される。
【0002】
[技術分野]
本発明は、リソグラフィ装置のためのレチクルステージ、リソグラフィ装置のための基準、このようなレチクルステージおよび/または基準を備えるリソグラフィ装置、リソグラフィ装置のレチクルステージの少なくとも一つの光学エレメントをクリーニングする方法、およびレチクルステージ、基準、またはこのような方法のリソグラフィ装置または方法における使用、およびここで記述される方法のステップを実行するように構成されるコンピュータプログラムおよびコンピュータ読取可能媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、基板上に望ましいパターンを適用する装置である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用される。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えば、マスク)からのパターンを基板上に形成された放射感応性材料(レジスト)の層の上に投影する。
【0004】
基板上にパターンを投影するためにリソグラフィ装置によって使用される放射の波長は、当該基板上に形成されうるフィーチャの最小サイズを決定する。4-20nmの範囲内の波長を有する電磁放射であるEUV放射を使用するリソグラフィ装置が、従来のリソグラフィ装置(例えば、193nmの波長を有する電磁放射を使用するものでもよい)より小さいフィーチャを基板上に形成するために使用されてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
稼働中、炭素等の汚染物質が、リソグラフィ装置内で表面上に堆積される恐れがある。これらの表面のいくつかは、装置の光学エレメント上に配置されて、稼働中に放射ビームと相互作用するエレメントになる。このような光学エレメントの性能は、炭素等の汚染物質の表面上への堆積のために低下する。このため、リソグラフィ装置内で汚染された表面(特に、放射ビームと相互作用する表面)をクリーニングするのが望ましい。
【0006】
本発明は、リソグラフィ装置の熱感応性エレメントである一または複数の光学エレメントをクリーニングするための改良されたまたは代替的なシステムを提供するために考案された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様によれば、リソグラフィ装置のためのレチクルステージが提供される。このレチクルステージは、クリーニングされるべき領域を有する少なくとも一つの光学エレメントと、放射ビームターゲットと、放射ビームを放射ビームターゲットに向けるように構成される制御システムと、を備える。放射ビームおよびガスの相互作用が、光学エレメント洗浄プラズマを生成する。放射ビームターゲットは、光学エレメントをクリーニングするための光学エレメント洗浄プラズマを、少なくとも一つの光学エレメントに提供するために配置される。少なくとも一つの光学エレメントは、放射ビームターゲットと異なるエレメントである。レチクルステージは、オブジェクトを受け取るように構成される。一実施形態では、レチクルがオブジェクトである。
【0008】
従来、EUV誘起プラズマによるリソグラフィ装置における基準炭素クリーニングは、光学エレメントである基準上の非常に高い温度に繋がり、これは直ちに基準へのダメージに繋がって基準の反射性の悪化をもたらす。これによって、長い時間がかかり装置のダウンタイムの長期化をもたらす、明らかに望ましくない基準の交換が必要になる。基準は、光学エレメントと解釈されてもよい。光学エレメントは、放射ビームを反射するために、および/または、稼働中に放射ビームと相互作用するために、および/または、反射された放射ビームから情報を取得するために使用されてもよい。基準はリソグラフィ装置のレチクルステージにおいて使用され、これらが直接EUV放射でクリーニングされる場合、基準は悪化しやすく適切に機能することが不可能になる恐れがある。このため、レチクルステージ全体の交換が必要になり、装置の長いダウンタイムをもたらす。本発明は、この問題の解決を目指す。基準その他の熱感応性エレメントもリソグラフィ装置の別の所で使用され、これらが損傷した場合は同様に交換または修理が必要になってしまう。
【0009】
光学エレメント自体と異なるエレメントである放射ビームターゲット上にEUV放射ビーム等の放射ビームを向けることによって、リソグラフィ装置の光学エレメント等の熱感応性エレメントを間接的にクリーニングできることが見出された。放射ビームはガス(典型的には、水素)と相互作用し、リソグラフィ装置内でプラズマを生成する。プラズマは、クリーニングされるべき光学エレメントに到達し、そこから汚染物質を除去できる位置で生成される。従来、リソグラフィ装置の光学エレメントがこのようにクリーニングされうることは認識されていなかった。典型的には汚染物質は炭素を含むが、他の場合にはスズ等の他の物質でもよく、プラズマは熱感応性エレメントから汚染物質を除去できる。本発明の利点は、放射ビームが熱感応性光学エレメント自体に当たることなく、クリーニングされる熱感応性光学エレメントと異なる放射ビームターゲットに当たることによってプラズマを生成できるため、熱感応性光学エレメント上の高い熱負荷を低減できることである。EUV放射ビーム等からの直接放射エネルギーが熱感応性光学エレメントによって吸収されないため、熱感応性光学エレメントに対する熱影響に大きな改善が見られる。本発明の更なる利点は、放射ビームが熱感応性光学エレメントを直接的に照明しないため、炭素汚染物質および水素プラズマの間の相互作用によって生成される炭化水素が直ちに炭素に再分解されないことである。直接照明が実行されるシステムでは、このメカニズムによって、クリーニング処理が部分的に逆行する可能性がある。本発明は、汚染物質の影響を受ける任意の熱感応性光学エレメントのクリーニングを可能にする。熱感応性エレメントは、好ましくは基準マークである。熱感応性エレメントは、物理的にレチクルステージに接続されてもよい、に取り付けられてもよい、および/または、に含まれてもよい。このように、本発明は、有利なことに、レチクルステージの寿命を長くできる。従来、非光学エレメントはクリーニングプラズマの生成によってクリーニングされていたかもしれないが、このようなエレメントは光学エレメントほどに敏感でなく、ここで記述されるように生成されるプラズマが光学エレメントをダメージなしでクリーニングできるという知見はなかった。
【0010】
放射ビームターゲットは、照明されるべき熱感応性エレメントの領域を制限するための照明シャッタ、レチクルクランプ、ビームダンプ、または放射ビームからエネルギーを吸収してプラズマを生成するように構成される吸収エレメントでもよい。照明シャッタは、レチクルマスキングシャッタ、またはReMaブレードまたはユニット、または単純にReMaと表されてもよい。このように、照明シャッタは、照明されるべき基板の領域および/または照明されるべき光学エレメントの領域を制限するためのものでもよい。ビームターゲットの重要な特徴は、EUV放射ビーム等の放射ビームへの直接露光に耐えて、周辺ガスからプラズマを生成できることである。ビームターゲットはクリーニングされる熱感応性エレメントではないため、放射ビームへの直接露光に耐えられる物質(熱感応性エレメントは必ずしもそうではない)から放射ビームターゲットを製造できる。
【0011】
制御システムは、クリーニングされるべき領域を有する光学エレメントに対して、放射ビームターゲットを動かすように構成されてもよい。代えてまたは加えて、制御システムは、クリーニングされるべき領域を有する光学エレメントを、光学エレメント洗浄プラズマと相互作用できる位置に動かすように構成されてもよい。最適なクリーニング性能を提供するために、クリーニングされるべき領域の近くでプラズマが生成されるのが望ましい。プラズマは経時的に再結合するため、光学エレメントがプラズマの生成場所から遠すぎる場合はクリーニングが発生しない。そこで、複数のモードが考えられる。少なくとも一つの光学エレメントおよび放射ビームターゲットが静止しており、少なくとも一つの光学エレメントをクリーニングするためのプラズマを生成するために、放射ビームが放射ビームターゲット上に向けられる静止モードがある。他のモードは、放射ビームで放射ビームターゲット上をスキャンし、オプションで、光学エレメントの吸収領域と異なるクリーニングされるべき領域を有する光学エレメントの一部を部分的に露光するためのものでもよい。例えば、熱感応性光学エレメントは、位置またはアライメント等の少なくとも一つのパラメータを測定するために、リソグラフィ装置において使用される基準マークでもよい。スキャンモードは、クリーニングされる熱感応性エレメントのより均一なクリーニングを提供してもよい。
【0012】
装置は、ガスを供給するように構成されるガス供給源を備えてもよい。ガスは、水素でもよい。ガス供給源は、ガス圧力を約1Paから約20Paの範囲に維持するように構成されてもよい。プラズマを生成するために、リソグラフィ装置内にガスが存在しなければならない。典型的には、リソグラフィ装置の内部は、低圧水素環境である。ガス供給源は、このようなガスを供給するように構成される。光学エレメントがクリーニングされるレートを高めるために、ガス(好ましくは、水素)の圧力がシステム全体でまたは局所的に高められてもよい。
【0013】
放射ビームターゲットは、少なくとも一つの光学エレメントに接続されてもよい。放射ビームターゲットは、少なくとも一つの光学エレメントから約25mm以内に配置されてもよい。放射ビーム、放射ビームターゲットおよび周辺ガスの相互作用によって生成されるプラズマであるため、クリーニングされるべき光学エレメントの領域の近くでプラズマを生成するために、放射ビームターゲットを少なくとも一つの光学エレメントの近くに配置するのが望ましい。
【0014】
放射ビームターゲットは、コンディショニングシステムを備えてもよい。放射ビームターゲットは放射ビームによって直接的に照明されて加熱されるため、この熱負荷に対処するためにコンディショニングシステムが提供されてもよい。
【0015】
放射ビームターゲットは、オプションでクロムを備えるビームダンプでもよい。ビームダンプは、ここで記述される任意の放射ビームターゲットと同様に、コンディショニングシステムを含んでもよい。ビームダンプは、レチクルステージ上に配置されてもよい。
【0016】
放射ビームターゲットは、光学エレメントの傍に配置されてもよい。このように、プラズマ生成領域およびクリーニングされるべき領域の間の距離が最小化され、より少ないプラズマ損失およびより高いクリーニングレートに繋がる。
【0017】
少なくとも一つの光学エレメントは、マーク領域を有する基準マークを備えてもよい。マーク領域の形状は矩形でもよく、少なくとも一方の辺が、更に半球領域または半楕円領域を備える。代えてまたは加えて、マーク領域は、少なくとも一つの曲がったエッジを備える。既存の基準は矩形状を有し、放射ビームの大部分が基準の吸収部を照明する。これは、基準上の非常に高い温度(例えば、300℃超)に繋がり、急速な反射性の悪化をもたらす。この結果、基準の修理または交換が必要になり、リソグラフィ装置にとって無視できないダウンタイムをもたらす。曲がった基準がより多くの入放射を反射でき、基準の熱吸収が低減されることが見出された。特に、曲がった基準は350℃から約145℃まで温度を下げ、基準が静止して放射ビームに露光されてもよい時間を10秒未満から約100秒まで長くできる。放射を吸収する領域を更に最小化するために、基準の反射領域は拡大されてもよいし基準のエッジまで延びてもよい。これは、既存のレチクルステージの生産中のスキャン動作を変えることなく、基準の低減された熱負荷および低減された温度ゲインを提供できる。
【0018】
少なくとも一つの照明シャッタは、二つのブレードを備え、制御システムは、二つのブレードで少なくとも一つの光学エレメントに窓を設けるように構成される。二つのブレードは、ReMaブレードとしても知られているレチクルマスキングブレードと表されてもよい。
【0019】
ブレードは、互いに平行に配置されてもよい。少なくとも一つの光学エレメントは、ブレードの間に配置されてもよい。少なくとも一つの光学エレメントは、ブレードの面と異なる面に配置されてもよい。実施形態では、光学エレメントおよび放射ビームターゲットが、同じ面内または平行な面内にある。
【0020】
レチクルステージは、コンディショニング回路およびスペーサを備えてもよい。スペーサは、少なくとも一つの光学エレメントに接続されてもよい。コンディショニング回路は、少なくとも一つの光学エレメントおよびスペーサを調整するように構成されてもよい。コンディショニング回路は、熱コンディショニング回路と表されてもよい。
【0021】
ガスは、水素でもよい。水素は、典型的にはリソグラフィ装置内で使用され、水素プラズマは、装置内の炭素堆積物を除去できる。
【0022】
放射ビームは、EUVビームでもよい。
【0023】
レチクルステージは、リソグラフィ装置のシステムまたはサブシステムでもよい。リソグラフィ装置では、レチクルステージが入放射ビームにパターンを提供するためにリソグラフィ装置において使用されるレチクルを支持する。
【0024】
少なくとも一つの光学エレメントは、基準マークでもよい。基準または基準マーカは、装置のエレメントの正確なアライメントを決定するためのアライメント測定を支援するために提供されてもよい。基準は、測定目的で放射ビームの一部にパターン形成してもよい。例えば、基準は、照明されると複数の回折次数を形成してもよい反射回折格子を備えてもよい。いずれの場合でも、有用な情報を提供するために、基準は放射と相互作用する。例えば炭素によって基準が汚染された場合、望ましくないことに放射を効果的に反射できなくなる。
【0025】
本発明の第2態様によれば、リソグラフィ装置のための基準が提供される。この基準は、少なくとも一つの曲がったエッジを備える。前述されたように、曲がったエッジは反射性を高めることで、驚くことに、放射ビームへの露光時の基準の上昇温度を小さくできるということが見出された。既存の基準は矩形状であり、少なくとも一つの曲がったエッジを備えない。
【0026】
基準は、二つの対向する線型エッジを備えてもよい。基準が少なくとも一つの曲がったエッジを含むことが有利であると見出されたが、有利な効果を示すためにエッジの全てが曲がっている必要はない。このため、基準は、二つの対向する線型エッジを備えてもよい。対向する線型エッジは、平行でもよいし広がってもよい。基準は、一つの実質的に線型エッジに対向する一つの曲がったエッジを備えてもよい。このように、実施形態では、基準が、三つの線型エッジおよび一つの曲がったエッジを備える。第2態様に係る基準は、本発明の第1態様に係る光学エレメントでもよい。
【0027】
本発明の第3態様によれば、本発明の第1または第2態様に係るレチクルステージまたは基準を備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0028】
本発明の第4態様によれば、リソグラフィ装置のレチクルステージの少なくとも一つの光学エレメントをクリーニングするための方法が提供される。この方法は、本発明の任意の態様のレチクルステージを提供することと、光学エレメント洗浄プラズマを生成するために、放射ビームを放射ビームターゲットに向けることと、を備える。
【0029】
本発明の第5態様によれば、本発明の任意の態様に係るレチクルステージ、基準、または方法のリソグラフィ装置または方法における使用が提供される。
【0030】
本発明の第6態様によれば、コンピュータプログラム製品が提供される。このコンピュータプログラム製品は、本発明の任意の態様の装置に、本発明の第4態様の方法に係るステップを実行させる命令を備える。本発明の第6態様に係るコンピュータプログラムを格納したコンピュータ読取可能媒体も提供される。
【0031】
一の態様または実施形態に関して記述される特徴は、他の態様または実施形態に関して記述される任意の特徴と組み合わされてもよく、全てのこのような組合せが明らかに考慮されてここで開示されると理解される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
以下では、対応する参照符号が対応する部分を示す、以下の付随する模式的な図面を参照して、発明の実施形態が例示のみによって記述される。
【0033】
図1は、発明の一実施形態に係るレチクルステージを含んでもよいリソグラフィ装置を示す。
【0034】
図2は、本発明に係るレチクルステージの一実施形態の模式図である。
【0035】
図3は、本発明に係るレチクルステージの一実施形態の模式図である。
【0036】
図4は、ビームダンプを備える本発明に係るレチクルステージの一実施形態の模式図である。
【0037】
図5は、熱感応性エレメントおよび放射ビームターゲットが相対的に動くクリーニング処理を示す。
【0038】
図6aは、従来技術の基準の形状を示し、
図6bおよび6cは、少なくとも一つの曲がったエッジを有する、本発明の一態様に係る基準の形状を示す。
【0039】
本発明の特徴および利点は、同様の参照文字が対応するエレメントを特定する図面と併せて考慮される、以下で示される詳細な記述からより明らかになる。図面では、一般的に同様の参照数字が、同一の、機能的に同様のおよび/または構造的に同様のエレメントを示す。以下の詳細な記述は、クリーニングされるべき領域を有する光学エレメントに関して発明を記述するが、他の熱感応性エレメントのクリーニングにも適用可能であると理解される。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、リソグラフィ装置を示す。リソグラフィシステムは、放射源SOおよびリソグラフィ装置LAを備える。放射源SOは、極端紫外(EUV)放射ビームBを生成するように構成される。リソグラフィ装置LAは、照明システムILと、パターニングデバイスMA(例えば、マスク)を支持するように構成される支持構造MTと、投影システムPSと、基板Wを支持するように構成される基板テーブルWTを備える。照明システムILは、パターニングデバイスMA上に入射する前の放射ビームBを調整するように構成される。投影システムは、放射ビームB(マスクMAによってパターン形成されている)を、基板W上に投影するように構成される。基板Wは、先に形成されたパターンを含んでもよい。この場合、リソグラフィ装置は、パターン形成された放射ビームBを、基板W上に先に形成されたパターンにアラインする。
【0041】
放射源SO、照明システムILおよび投影システムPSは、いずれも外部環境から隔離されうるように構成および配置されてもよい。大気圧より低い圧力のガス(例えば、水素)が、放射源SOにおいて提供されてもよい。照明システムILおよび/または投影システムPSにおいて、真空が提供されてもよい。大気圧より低い圧力の少量のガス(例えば、水素)が、照明システムILおよび/または投影システムPSにおいて提供されてもよい。
【0042】
図1に示される放射源SOは、レーザ生成プラズマ(LPP)源と表されてもよいタイプである。例えばCO
2レーザでもよいレーザは、燃料放出器から提供されるスズ(Sn)等の燃料内に、レーザビームを介したエネルギーを投入するように設けられる。以下の記述ではスズが参照されるが、任意の適切な燃料が使用されてもよい。燃料は、例えば、液状でもよいし、金属または合金でもよい。燃料放出器は、プラズマ形成領域に向かう軌道に沿って、例えば小滴状のスズを向けるように構成されるノズルを備えてもよい。レーザビームは、プラズマ形成領域におけるスズ上に入射する。スズ内へのレーザエネルギーの投入が、プラズマ形成領域においてプラズマを生成する。EUV放射を含む放射は、プラズマのイオンの脱励起および再結合の間にプラズマから放出される。
【0043】
EUV放射は、近法線入放射コレクタ(より一般的に、法線入放射コレクタとも表される)によって集められる。コレクタは、EUV放射(例えば、13.5nm等の所望の波長を有するEUV放射)を反射するように設けられる多層構造を有してもよい。コレクタは、二つの楕円焦点を有する楕円構成を有してもよい。第1焦点はプラズマ形成領域にあってもよく、第2焦点は後述するような中間焦点にあってもよい。
【0044】
レーザは、放射源SOと分かれていてもよい。この場合、レーザビームは、例えば、適切な方向付けミラーおよび/またはビームエクスパンダおよび/または他の光学要素を備えるビームデリバリシステム(不図示)によって、レーザから放射源SOに渡されてもよい。レーザおよび放射源SOは、一緒に放射システムと解釈されてもよい。
【0045】
コレクタによって反射された放射は、放射ビームBを形成する。放射ビームBは、プラズマ形成領域の像を形成するために一点に集められ、照明システムILに対する仮想放射源として機能する。放射ビームBが集められる点は、中間焦点と表されてもよい。中間焦点が放射源の包囲構造における開口内また開口の近くに配置されるように、放射源SOは設けられる。
【0046】
放射ビームBは、放射源SOから放射ビームを調整するように構成される照明システムIL内に進む。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10およびファセット瞳ミラーデバイス11を含んでもよい。ファセットフィールドミラーデバイス10およびファセット瞳ミラーデバイス11は一緒に、所望の断面形状および所望の角度分布を有する放射ビームBを提供する。照明システムILからの放射ビームBは、支持構造MTによって保持されるパターニングデバイスMA上に入射する。パターニングデバイスMAは、放射ビームBを反射してパターン形成する。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10およびファセット瞳ミラーデバイス11に加えてまたは代えて他のミラーまたはデバイスを含んでもよい。
【0047】
パターニングデバイスMAからの反射に続いて、パターン形成された放射ビームBは投影システムPSに入る。投影システムは、基板ステージと表されてもよい基板テーブルWTによって保持される基板W上に放射ビームBを投影するように構成される複数のミラー13、14を備える。投影システムPSは、放射ビームに縮小係数を適用し、パターニングデバイスMA上の対応するフィーチャより小さいフィーチャを有する像を形成してもよい。例えば、4の縮小係数が適用されてもよい。
図1では投影システムPSが二つのミラー13、14を有するが、投影システムは任意の数のミラー(例えば、6個のミラー)を含んでもよい。
【0048】
図1に示される放射源SOは、不図示のコンポーネントを含んでもよい。例えば、スペクトルフィルタが放射源において提供されてもよい。スペクトルフィルタは、EUV放射に対して実質的に透過型でもよいが、赤外放射等の放射の他の波長を実質的にブロックしてもよい。
【0049】
図2は、本発明の一実施形態の模式図である。この例示的な実施形態では、レチクルステージが、パターニングデバイスMAのための支持構造MTを備える。このように、レチクルステージは、リソグラフィ装置のシステムまたはサブシステムでもよいと理解される。レチクルステージは、数字15によって示される。レチクルステージ15は、一または複数の光学エレメント16を備える。図示の例は、二つの光学エレメント16を含むが、いくつかの実施形態では、一つのみまたは二つより多い複数の光学エレメント16があってもよい。図示の例では、光学エレメント16が基準である。基準は、リソグラフィ装置を較正し、放射ビームに対するポジショニングに関する情報も提供するために使用される。光学エレメント16は、炭素でもよい汚染物質17で汚染される。図示の例における放射ビームターゲット18は、照明されるべき基板の領域を制限するための照明シャッタである。他の実施形態では、放射ビームターゲットが、光学エレメント16の近くに提供されてもよいし、ビームダンプまたはレチクルクランプでもよい。使用中、放射ビーム19は、放射ビームターゲット18に向けられる。放射ビーム19、放射ビームターゲット18および周辺ガス(好ましくは、水素)の相互作用は、プラズマ20を生成する。プラズマ20は、汚染物質17と反応でき、光学エレメント16をクリーニングする。光学エレメント16は放射ビームターゲット18でないため、光学エレメント16は放射ビーム19に直接的に露光されないように保護され、過熱によるダメージを受けにくい。
【0050】
図3は、ガス供給源21を示す点を除いて
図2と同様である。ガス供給源21は、レチクルの周りの領域にガス(典型的には、水素)を供給する。これは、一般的にレチクルミニ環境と表されるものを生成する。記述されるように、本発明は、レチクルステージ上の基準等のレチクルステージの熱感応性エレメントをクリーニングするために、プラズマの生成を利用する。ガス供給源21は、レチクルの表面の汚染物質を低減する機能を実現するガスカーテンを生成するように構成される。
【0051】
図4は、ビームダンプ22が光学エレメント16の傍に配置される一実施形態を示す。このように、放射ビームがビームダンプ22を照明する際、光学エレメント16の傍でプラズマが生成され、汚染物質17をクリーニングできる。ビームダンプ22は、光学エレメント16と分かれていてもよいし、光学エレメント16と接触していてもよいし、光学エレメント16に接続されていてもよい。ビームダンプ22および/または光学エレメント16を調整するように構成されるコンディショニングシステム23があってもよい。放射ビームターゲットがビームダンプ22と異なるエレメントである実施形態において、コンディショニングシステムが提供されてもよいと理解される。発明は、選択されるコンディショニングシステムの具体的な性質によって、特に限定されない。実施形態では、コンディショニングシステム23が水冷回路を含んでもよい。
【0052】
図5は、熱感応性光学エレメントから汚染物質17をクリーニングするために、熱感応性光学エレメントおよび放射ビームターゲットが相対移動する、本発明の一実施形態を示す。第1ステージでは、放射ビームターゲット18および放射ビーム19が、光学エレメントである熱感応性エレメント16上に存在する汚染物質17の第1領域においてプラズマ20を生成するために配置される。クリーニング処理が進行するにつれて、放射ビームターゲット18および放射ビーム19が、光学エレメント16上に存在する汚染物質17の第2領域においてプラズマ20を生成するために配置されて第2領域をクリーニングするように、光学エレメント16および放射ビームターゲット18は相対的に動く。クリーニング処理は更に進行してもよく、放射ビームターゲット18および放射ビーム19が、光学エレメント16上に存在する汚染物質17の第3領域においてプラズマを生成するために配置されて第3領域をクリーニングするように、光学エレメント16および放射ビームターゲット18は相対的に動く。これは、光学エレメント16が十分にクリーニングされるまで継続してもよいと理解される。必要に応じて、処理は一または複数回に亘って繰り返されてもよい。光学エレメントおよび放射ビームターゲットの間の相対移動は、必要に応じて連続的またはステップ状でもよい。他の実施形態では、光学エレメントおよび放射ビームターゲットが互いに静止位置に留まってもよく、異なる位置でプラズマを生成して光学エレメントをクリーニングするために、放射ビームが放射ビームターゲット上を動いてもよい。光学エレメントおよび放射ビームターゲットは、放射ビームの後続のスキャンのための必要位置に配置されるために、最初に相対的に動いてもよいと理解される。
【0053】
図6aは、四つの線型エッジを有する矩形状である従来技術の基準を示す。対照的に、
図6bおよび6cにおいて例示される本発明に係る基準は、少なくとも一つの曲がったエッジを備える。特に、
図6bの基準は、二つの対向する曲がったエッジを備え、
図6cの基準は、単一の曲がったエッジを備える。基準は、反射部および吸収部を有する。このため、
図6aに示されるような従来形状の基準については、入放射ビームの大部分が吸収部に当たる。これは、基準上の非常に高い温度(例えば、300℃超)に繋がり、急速な反射性の悪化をもたらす。この結果、基準の修理または交換が必要になる。
図6bおよび6cに示されるように、少なくとも一つの曲がったエッジを有する基準を提供することによって、基準の温度が大幅に(例えば、300℃超から150℃未満まで)下がる。加えて、基準が静止して放射ビームに露光されてもよい最大時間が、10秒未満から1分超(例えば、最大で100秒)まで長くなる。
【0054】
基準の温度が管理されうる他の方法は、入放射ビームからのエネルギー吸収が減るように、基準の反射領域の量を増やす(吸収部の量を減らす)ことである。
【0055】
要約すると、本発明は、リソグラフィ装置の光学エレメントのクリーニングを提供しながら、このようなエレメントを放射ビームに直接的に露光しない。これは、エレメントのダメージを防ぎ、リソグラフィ装置のダウンタイムを低減する。放射ビームターゲットは、放射ビームへの直接露光に耐えて、放射ビームによる直接照明によって影響されないように構成されてもよい。ガス(典型的には、水素)はプラズマに変えられてもよく、光学エレメントから汚染物質(典型的には、炭素)をクリーニングできる。本発明の更なる利点は、炭化水素の分解によって熱感応性エレメント上に再堆積される炭素の問題が、低減されるまたは解消されることである。
【0056】
発明の具体的な実施形態が前述されたが、発明は記述されたものと異なる態様で実施されてもよいと理解される。
【0057】
以上の記述は例示を目的としており、本発明を限定するものではない。従って、以下で示される請求項の範囲から逸脱することなく、記述された発明に変更が加えられてもよいことは当業者にとって自明である。
【国際調査報告】