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特表2023-551192乳がんにおける内分泌療法のモニタリングに使用するためのER制御遺伝子のパネル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】乳がんにおける内分泌療法のモニタリングに使用するためのER制御遺伝子のパネル
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6886 20180101AFI20231130BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20231130BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20231130BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20231130BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z
C12Q1/6851 Z
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530545
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 US2021060349
(87)【国際公開番号】W WO2022109395
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/117,229
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/173,107
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21315066.7
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】モンシフ・ブアブラ
(72)【発明者】
【氏名】フイ・ツァオ
(72)【発明者】
【氏名】ジューン・サン・リー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァシリキ・ペレカヌ
(72)【発明者】
【氏名】メイスン・ショマリ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS32
4B063QS34
4B063QX01
(57)【要約】
本開示は、ER制御遺伝子のパネル、およびアムセネストラントによる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングするためにパネルを使用するための方法に関し、ここで本方法は、パネルを用いたアムセネストラントによる治療の前の第1の時点における個体からのサンプルから、第1のER活性スコアを決定する工程、その後、パネルを用いて、アムセネストラントの投与の後の第2の時点における個体からのサンプルから、第2のER活性スコアを決定する工程、ならびに、第1のER活性スコアを第2のER活性スコアと比較する工程を含み、ここで第1のER活性スコアに対する第2のER活性スコアの減少は、アムセネストラントの標的エンゲージメントの予測因子となる。
【選択図】図6D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個の遺伝子を有するER制御遺伝子のパネルであって、Nは少なくとも7であり、約87と等しいか87未満(87以下)であり、N個の遺伝子は、以下のアップレギュレートされた遺伝子:PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOの任意の2~21個を含み;ならびにN個の遺伝子は、以下のダウンレギュレートされた遺伝子:H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHの任意の5~66個を含む、パネル。
【請求項2】
Nが87であり、87個の遺伝子が以下の21個のアップレギュレートされた遺伝子:PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOを含み;ならびに87個の遺伝子が、以下の66個のダウンレギュレートされた遺伝子:H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHを含む、請求項1に記載のパネル。
【請求項3】
アムセネストラントによる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングするための方法であって、前記方法は:(a)アムセネストラントによる治療の前の第1の時点での個体からのサンプルから第1のER活性スコアを決定する工程;(b)工程(a)に続いて、アムセネストラントの投与に続く第2の時点で、個体からのサンプルから第2のER活性スコアを決定する工程;ならびに(c)第1のER活性スコアを第2のER活性スコアと比較する工程であって、第1のER活性スコアに対する第2のER活性スコアの減少は、アムセネストラントの標的エンゲージメントの予測因子である工程を含み、
ここで、第1のER活性スコアおよび第2のER活性スコアを決定することは、N個の遺伝子を有するER制御遺伝子のパネルを分析することを含み、Nは少なくとも7であって、87以下であり、ならびに、N個の遺伝子は、以下のアップレギュレートされた遺伝子:PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOの任意の2~21個を含み;ならびに、N個の遺伝子は、以下のダウンレギュレートされた遺伝子:H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHの任意の5~66個を含む、方法。
【請求項4】
ER制御遺伝子のパネルが87個の遺伝子を有し、87個の遺伝子が以下の21個のアップレギュレートされた遺伝子:PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOを含み;ならびに、87個の遺伝子は、以下の66個のダウンレギュレートされた遺伝子:H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1のER活性スコアに対する第2のER活性スコアの減少は、アムセネストラントのオン・ターゲット活性の予測因子である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
アムセネストラントのオン・ターゲット活性は、ER分解およびER阻害を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
個体からのサンプルをプローブと接触させることを含む、請求項3~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
個体からのサンプル中のN個の遺伝子の各々のRNA発現レベルを検出することを含む、請求項3~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
RNA配列決定を含む、請求項3~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
個体がER+乳がんを有する、請求項3~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
個体がHER2-乳がんを有する、請求項3~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
個体が進行性または転移性乳がんを有する、請求項3~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
サンプルが腫瘍生検である、請求項3~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
サンプルが血液サンプルである、請求項3~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
サンプルが血清サンプルである、請求項3~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
腫瘍生検が、ホルマリン固定腫瘍生検、パラフィン包埋腫瘍生検、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍生検、新鮮凍結(FF)腫瘍生検、凍結腫瘍生検、または新鮮な腫瘍生検である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
アップレギュレートされた遺伝子およびダウンレギュレートされた遺伝子の発現を検出するためのプローブのセットを含むキットであって;
ここで、アップレギュレートされた遺伝子は、PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOの任意の2~21個を含み;ならびに
ダウンレギュレートされた遺伝子は、H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHの任意の5~66個を含む、キット。
【請求項18】
アップレギュレートされた遺伝子およびダウンレギュレートされた遺伝子の発現を検出するためのプローブのセットが、アップレギュレートされた遺伝子PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOを検出するためのプローブを含み;ならびにダウンレギュレートされた遺伝子H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHを検出するためのプローブを含む、請求項17に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月23日に出願された米国仮出願第63/117,229号、2021年4月9日に出願された米国仮出願第63/173,107号、および2021年4月16日に出願された欧州出願第21315066.7号に対する優先権の利益を主張し、これらのそれぞれの内容は、全ての目的のために参照によって全体を本明細書に組み入れる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、内分泌療法アムセネストラント(amcenestrant)のオン・ターゲット活性を含むER標的エンゲージメントをモニタリングするために有用なER制御遺伝子のパネル、ならびに関連キットを記載する。Shomaliら、SAR439859、a Novel Selective Estrogen Receptor Degrader (SERD)、Demonstrates Effective and Broad Antitumor Activity in Wild-Type and Mutant ER-Positive Breast Cancer Models、Mol. Cancer Ther. (2021)は、あらゆる目的のためにその全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【0003】
乳がんは、女性で最も頻繁に診断されるがんである。エストロゲン受容体陽性(ER+)がんは、全ての乳がんの約75%を占めている。
【0004】
ERシグナル伝達に依存しているため、ER+乳がんの主要治療アプローチは、エストロゲン機能をブロックすることであった。エストロゲン受容体アルファ(ERα;タモキシフェン(tamoxifen)など)の機能に直接拮抗する抗ホルモン療法、またはそのリガンドであるエストロゲンの産生をブロックする療法(アロマターゼ阻害剤など)は、ER陽性(ER+)乳がんの頼みの綱の療法である。これらの治療は、初期段階の疾患からの再発リスクを著しく低下させ、進行した疾患の患者の転帰を改善するが、長期間の治療後に再発することがよくある。最近、1つまたは複数の以前のホルモン療法を受けた後に再発した患者のおよそ25~40%において、ERαのリガンド結合ドメインに再発性変異が同定された。これらの変異は、ERαのエストロゲンに依存しない構成的活性、腫瘍増殖の誘導、抗ERα療法に対する効力の低下、およびアロマターゼ阻害剤に対する完全な耐性を付与する。
【0005】
ERαを標的とする一部のリガンドは、リガンド結合に際して転写補償または熱力学的安定性の増加のような生物学的フィードバック機構により、ERαタンパク質の定常状態のレベルを増加させることができる。例えば、タモキシフェンは、ERαタンパク質の安定化を誘導し、アゴニストシグナル伝達を引き起こす可能性のあるコンフォメーションをとる。また、Y537SまたはD538Gのアミノ酸に影響を与える変異のようなERαの一部の変異が、ERαの安定化に関与している可能性が示唆されている。さらに、ERαの安定性が増加すると、継続的な治療範囲が達成されない場合にERαシグナル伝達の漏洩を引き起こす可能性もある。以上より、ERα拮抗作用に加えて、ERαタンパク質の分解が、ERαの生物学的性質およびERαを標的とした療法の効能に影響を与える可能性がある合理性が存在する。
【0006】
ER活性を調節するために、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)および選択的エストロゲン受容体分解剤(SERD)が開発された。
【0007】
フルベストラント(Fulvestrant)は、SERMによるER転写活性の部分的な調節を克服するために開発された。フルベストラントのような選択的エストロゲン受容体分解剤(SERD)は、ERαに結合して、ERα機能に拮抗するだけでなく、プロテアソームを介した分解を引き起こし、ERαシグナル伝達をより効果的に阻害する構造変化を誘導する。(非特許文献1)。フルベストラントは、抗エストロゲン療法後に疾患が進行した閉経後女性におけるER+転移性乳がんの治療を適応とする承認済みのSERDである。フルベストラントは、他のホルモン療法が無効であった後に、前臨床的および臨床的に有用であることが実証されている。しかし、中性で親油性の側鎖を持つステロイドであるフルベストラントは、従来とは異なる長時間作用型の筋肉内デポ製剤が必要であり、受容体に最大限エンゲージメントするために用量および曝露量が制限される。フルベストラントの臨床的利益は、その薬学的特性および筋肉内投与の負担によって制限される。
【0008】
フルベストラントよって引き起こされる前述の薬理学的欠点に対処するために、GDC-0810(NCT 01823835)、AZD9496(NCT02248090)、AZD9833(NCT03616586)、GDC-0927(NCT02316509)およびGDC-9545(NCT03916744、NCT03332797)を含む、いくつかのSERDが臨床試験を開始した。フルベストラントとは化学的に異なるこれらの新規のSERDは、ERαの分解を促進する鍵となる側鎖の化学構造に基づいて、2つの主要なグループに分類できる。GDC-0927はフルオロアルキルアミン側鎖により特徴付けられるが、GDC-0810、AZD9496、およびLSZ102はそれぞれ桂皮酸側鎖を持っている。異なる側鎖および/またはERα分解を誘導するそれらの能力が、それらの生物学および抗腫瘍活性の違いにつながるかどうかはよくわかっていない。さらに、これらのSERDは、ERαアゴニスト活性を誘導するか、完全なERα分解を促進する相対的な能力において、矛盾するデータを提示している。
【0009】
SERDの最適な臨床活性を達成するための分子特性をより良く定義するためには、薬物の分子構造、ERα分解のレベル、およびその後の抗腫瘍活性への影響の間の関係を理解することが重要である。本明細書では、桂皮酸側鎖を有するSERDとは異なり、フルオロプロピルピロリジニル側鎖を有する新規の非ステロイド性で、経口バイオアベイラブルなSERDであるアムセネストラント(研究室コードSAR439859)について記載するが、SAR439859は強いERαアンタゴニスト作用を示して、その分解を強力に誘導し、その結果、イン・ビトロおよびイン・ビボの両方のER+乳がんモデルで効能が改善した。
【0010】
現在、臨床でのSERD活性は、IHCを使用した分解によって、およびER標的遺伝子プロゲステロン受容体(PGR)の阻害において、測定されている。アゴニストとして作用するエストロゲンは、エストロゲン受容体の分解も促進するため、ERの分解のみでは、ER経路でのSERDの活性を決定するには不十分である。PGRは十分に確立されたERの標的遺伝子であるが、ERは多くの遺伝子の転写を制御する転写因子であり、PGRは、ER経路上のこれらの分子の活性を完全には捕捉しない可能性がある。
【0011】
したがって、オン・ターゲット活性を含む標的エンゲージメントを予測することにより、アムセネストラントを含むSERDによる治療を受けているがん患者の応答をモニタリングするツールに対する必要性が存在する。ERは多くの遺伝子のセットの発現を調節する転写因子であるため、治療前に、これらの遺伝子のサブセット(すなわち遺伝子シグネチャー)の発現レベルを、およびアムセネストラントでの治療後に、この遺伝子シグネチャーの調節をモニタリングすれば、オン・ターゲット活性を含む標的エンゲージメントが示されると考えられる。
【0012】
遺伝子シグネチャーは、細胞または組織における特定の遺伝子グループの発現レベルの情報を提供する。乳がんにおいては、遺伝子シグネチャーが古典的な予後因子(年齢、陽性リンパ節、腫瘍サイズなど)を補完して、予測値および予後値を与えることができる。例えば、乳がんにおいては、70遺伝子シグネチャー(MammaPrint)および21遺伝子シグネチャー(OncoType)が、補助療法が最も有効である患者を同定するために使用されており、ヨーロッパおよび米国において広く使用されている。乳がんにおける内分泌療法の有効性を予測するために、SETインデックス、転移性乳がんのSETER/PR(非特許文献2;非特許文献3)、またはGenentech/Hoffman-La Rocheによって公開されたER活性スコア(特許文献1)のような追加の遺伝子シグネチャーが開発されている。
【0013】
略語
DMSO ジメチルスルホキシド
ER エストロゲン受容体
ERα エストロゲン受容体アルファ
IHC 免疫組織化学
IL インターロイキン
LBD リガンド結合ドメイン
NA 該当無し
QD 1日1回
Q2W 2週間ごと
RT-qPCR 逆転写-定量的ポリメラーゼ連鎖反応
SERD 選択的ER分解剤
WT 野生型
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2020/037203号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Heidariら、Pharmacodynamic Imaging Guides Dosing of a Selective Estrogen Receptor Degrader. Clin. Cancer Res. (2015)
【非特許文献2】W. Symmansら、Journal of Clinical Oncologyにおいて、第28巻、第27号、2010年9月20日、4111~4119ページ
【非特許文献3】B. Sinnら、Breast Cancerにおいて、(2019)5:16
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1-1】A、外因性エストロゲンの非存在下におけるHCC1428 LTED乳がん細胞株で差次的に発現した1022遺伝子の、2つの用量(30nMおよび300nM)でのヒートマップを示す図である。データはlogで正規化され、続いて標準化および階層的クラスタリングが行われた;B、ERスコアと6つのSERDの比較/SERDによるER転写活性の調節の評価を示す図である。ERシグネチャーを使用し、GSVAからのER活性スコアとして表されるER転写活性(ウィルコクソン検定を使用して、** P<0.01および*** P<0.001で描写されたグループの平均を比較する)。C、D ERα標的遺伝子CXCL12およびBcas1の発現に対する異なる選択的ER分解分子の効果の逆転写-定量的ポリメラーゼ連鎖反応分析を示す図である。*対応のないt検定で比較した有意性(P<0.01)を示す。
図1-2】図1-1の続き。
図1-3】図1-2の続き。
図2】タモキシフェン(30mg/kg)、フルベストラント(200mg/kg)、GDC0810(100mg/kg)、およびSAR439859(100mg/kg)の最終投与から8時間後に収集された腫瘍におけるPGR遺伝子発現の分析を示す図である。図2については、*P<0.05;は、対応のないt検定を使用して、研究終了時のビヒクル治療群と比較した有意性を示す。
図3】HCI013 PDX腫瘍モデルにおけるSERD間の遺伝子発現プロファイルの類似性の相関を示す図である。少なくとも1つの化合物対DMSOの比較において、差次的に発現されると同定された1022遺伝子のパネルを、それぞれの用量および時点でDMSO対照に対して正規化された化合物治療データの階層的クラスタリングに使用した。化合物間の発現プロファイルの類似性は、差次的に発現する遺伝子のピアソン相関によって評価された。
図4】内分泌療法抵抗性腫瘍モデルにおけるERαリガンドの標的遺伝子調節の評価を示す図である。HCI013 PDX腫瘍モデルにおける、タモキシフェン(30mg/kg、QD)、GDC0810(100mg/kg、QD)、フルベストラント(200mg/kg、Q2W)およびSAR439859(100mg/kg、QD)の最終投与の8時間後の(A) CXCL12の遺伝子発現分析および(B) ER活性スコア。データは、CXCL12遺伝子発現の3つの複製の平均および標準偏差を表す。87個の遺伝子のERシグネチャーは、エストラジオールによって調節され、その後SERMによってブロックされ、SERD化合物を使用してER活性スコアを算出し、遺伝子セットのバリエーション分析(GSVA)を使用して評価した。データは、記載されている治療の各々の平均および平均からの偏差を表している。
図5】ER活性シグネチャーを示す図である。ヒートマップは、ER活性シグネチャーにおける87個の遺伝子のDMSO正規化遺伝子発現を示している。66個の遺伝子がE2によって誘導され、SERD/SERMによってダウンレギュレートされ、21個の遺伝子がE2によって抑制され、SERD/SERMによってアップレギュレートされる。
図6-1】スクリーニングからサイクル2、28日目(すなわち、治療前および治療後)までの変化によって示される、アムセネストラント療法中のオン・ターゲットエストロゲン受容体分解/経路阻害を示す図であって、Aにおいては、IHCによるER核Hスコア(IHC ER発現);Bにおいては、IHCによるPgR核Hスコア;およびCにおいては、IHCによるKi67タンパク質発現を示す陽性細胞の割合;Dにおいては、GSVAによる前後のER活性化スコア(対のある腫瘍生検からのRNA-seqデータに基づくER活性スコア)を示す。*各々の図6A~Dの各々の行は、ベースライン/スクリーニング時およびベースライン後の利用可能なデータを持つ1人の患者を示している。図6Aには8人の患者が示される。図6Bには8人の患者が示される;図6Bのいくつかの線は重なっている。図6Cには8人の患者が示される。図6Dには5人の患者が示される。C1D1、サイクル1、1日目;C2D28、サイクル2、28日目;CB、臨床的利益(完全奏効 + 部分奏効 + 24週間以上の安定した疾患);ER、エストロゲン受容体;ESR1、エストロゲン受容体1;GSVA、遺伝子セットのバリエーション分析;IHC、免疫組織化学;PgR、プロゲステロン受容体。
図6-2】図6-1の続き。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本明細書において、エストラジオール、およびSERDを含むERアンタゴニストに感受性のある遺伝子を同定するために、細胞株の転写プロファイリングからそれぞれ同定された、より高い発現レベルおよびより低い発現レベルを有する87個の遺伝子のセットが提供される。ER制御遺伝子のこのセットは、がんを有する個体のアムセネストラントによる治療に対する応答をモニタリングすることに有用であろう。本開示は、例えば、以下の実施形態のいずれか1つまたは組み合わせを含む:
【課題を解決するための手段】
【0018】
実施形態1。N個の遺伝子を有するER制御遺伝子のパネルであって、Nは少なくとも7であり、約87と等しいか87未満(87以下)であり、N個の遺伝子は、以下のアップレギュレートされた遺伝子:PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOの任意の2~21個を含み;ならびにN個の遺伝子は、以下のダウンレギュレートされた遺伝子:H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHの任意の5~66個を含む。
【0019】
実施形態2。Nは87であり、87個の遺伝子は以下の21個のアップレギュレートされた遺伝子:PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOを含み;ならびに87個の遺伝子は、以下の66個のダウンレギュレートされた遺伝子:H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHを含む、実施形態1のパネル。
【0020】
実施形態3。アムセネストラントによる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングするための方法であって、前記方法は:(a)アムセネストラントによる治療の前の第1の時点での個体からのサンプルから第1のER活性スコアを決定する工程;(b)工程(a)に続いて、アムセネストラントの投与に続く第2の時点で、個体からのサンプルから第2のER活性スコアを決定する工程;ならびに(c)第1のER活性スコアを第2のER活性スコアと比較する工程であって、第1のER活性スコアに対する第2のER活性スコアの減少は、アムセネストラントの標的エンゲージメントの予測因子である工程を含み、
ここで、第1のER活性スコアおよび第2のER活性スコアを決定することは、N個の遺伝子を有するER制御遺伝子のパネルを分析することを含み、Nは少なくとも7であって、87以下であり、ならびに、N個の遺伝子は、以下のアップレギュレートされた遺伝子:PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOの任意の2~21個を含み;ならびに、N個の遺伝子は、以下のダウンレギュレートされた遺伝子:H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHの任意の5~66個を含む。
【0021】
実施形態4。ER制御遺伝子のパネルが87個の遺伝子を有し、87個の遺伝子が以下の21個のアップレギュレートされた遺伝子:PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOを含み;ならびに、87個の遺伝子は、以下の66個のダウンレギュレートされた遺伝子:H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHを含む、実施形態3に記載の方法。
【0022】
実施形態5。第1のER活性スコアに対する第2のER活性スコアの減少が、アムセネストラントのオン・ターゲット活性の予測因子である、実施形態3または4に記載の方法。
【0023】
実施形態6。アムセネストラントのオン・ターゲット活性がER分解およびER阻害を含む、実施形態5に記載の方法。
【0024】
実施形態7。個体からのサンプルをプローブと接触させることを含む、実施形態3~6のいずれか1つに記載の方法。
【0025】
実施形態8。個体からのサンプル中のN個の遺伝子の各々のRNA発現レベルを検出することを含む、実施形態3~7のいずれか1つに記載の方法。
【0026】
実施形態9。RNA配列決定を含む、実施形態3~8のいずれか1つに記載の方法。
【0027】
実施形態10。個体がER+乳がんを有する、実施形態3~9のいずれか1つに記載の方法。
【0028】
実施形態11。個体がHER2-乳がんを有する、実施形態3~10のいずれか1つに記載の方法。
【0029】
実施形態12。個体が進行性または転移性乳がんを有する、実施形態3~11のいずれか1つに記載の方法。
【0030】
実施形態13。サンプルが腫瘍生検である、実施形態3~12のいずれか1つに記載の方法。
【0031】
実施形態14。サンプルが血液サンプルである、実施形態3~12のいずれか1つに記載の方法。
【0032】
実施形態15。サンプルが血清サンプルである、実施形態3~12のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
実施形態16。腫瘍生検が、ホルマリン固定腫瘍生検、パラフィン包埋腫瘍生検、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍生検、新鮮凍結(FF)腫瘍生検、凍結腫瘍生検、または新鮮な腫瘍生検である、実施形態13に記載の方法。
【0034】
実施形態17。アップレギュレートされた遺伝子およびダウンレギュレートされた遺伝子の発現を検出するためのプローブのセットを含むキットであって;
ここで、アップレギュレートされた遺伝子は、PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOの任意の2~21個を含み;ならびに
ダウンレギュレートされた遺伝子は、H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHの任意の5~66個を含む。
【0035】
実施形態18。アップレギュレートされた遺伝子およびダウンレギュレートされた遺伝子の発現を検出するためのプローブのセットが、アップレギュレートされた遺伝子PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOを検出するためのプローブを含み;ならびにダウンレギュレートされた遺伝子H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHを検出するためのプローブを含む、実施形態17に記載のキット。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
「ER」または「エストロゲン受容体」という用語は、エストラジオール(E2)に結合するタンパク質であるエストロゲン受容体α(遺伝子名ESR1)のことを指す。ERは多数の遺伝子の転写を活性化し、乳がんにおける遺伝子転写全体の主要な決定因子である。エストロゲンに結合すると、ERは細胞増殖を促進する可能性がある。エストロゲン受容体陽性(ER+)乳がんは、典型的には、乳がん細胞の増殖がエストロゲンに依存していることを示す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「パネル」または「セット」は、グループを指す。例えば、本明細書で使用される「ER制御遺伝子のパネル(またはセット)」は、ERによって制御される遺伝子のグループを意味する。
【0038】
「アップレギュレートされた遺伝子」という用語は、アムセネストラントのような単剤の投与後に、DMSOのような対照を用いた治療と比較して、または治療を受けた個体における治療前のより初期の時点と比較して、発現の増加を示す遺伝子を指す。
【0039】
「ダウンレギュレートされた遺伝子」という用語は、アムセネストラントのような単剤の投与後に、DMSOのような対照を用いた治療と比較して、または治療を受けた個体における治療前のより初期の時点と比較して、発現の低下を示す遺伝子を指す。
【0040】
本明細書で使用する場合、「ER活性スコア」という用語は、生物学的サンプルから得られた遺伝子発現データセットに対して、GSVAなどの算出方法を使用して得られるスコアのことを指す(GSVA法を使用してスコアを計算することの記述について、その全体を参照によって本明細書に組み入れるHanzelmannら、GSVA: gene set variation analysis for microarray and RNA-seq data、BMC Bioinformaticsにおける、2013年;14:7ページ)。E2誘導スコアおよびE2抑制スコアは個別に算出される。E2誘導スコアは、生物学的サンプルから得られた遺伝子発現データセットからのアップレギュレートされた遺伝子のセットに対するGSVAなどの算出方法を使用することによって計算される。E2抑制スコアは、生物学的サンプルから得られた遺伝子発現データセットからのダウンレギュレートされた遺伝子のセットに対するGSVAなどの算出方法を使用することによって計算される。ER活性スコアは以下のように計算される:ER活性スコア = ER誘導スコア - E2抑制スコア。
【0041】
「アムセネストラントのオン・ターゲット活性」とは、ERの分解および/または阻害のことを指し、例えば、免疫組織化学によるERタンパク質発現の減少、ERシグナル伝達経路(プロゲステロン受容体、Ki67)によって制御されるタンパク質の発現の減少によってGSVAによる免疫組織化学、および/またはER活性スコアによって示すことができる。
【0042】
「進行乳がん」という用語は、腫瘍が局所領域にない(すなわち、腫瘍の原発部位の外にある)がん、または手術で切除できない場合を指す。
【0043】
「転移性乳がん」という用語は、肝臓、肺、骨、脳、および/または他の部位など、身体の他の部位に転移したがんを指す。
【0044】
ER制御遺伝子
いくつかの実施形態において、ER制御遺伝子のパネルが包含され、ここでER制御遺伝子のパネルはN個の遺伝子を有し、Nは少なくとも7であり、約87以下であり、N個の遺伝子は、以下のアップレギュレートされた遺伝子:PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOの任意の2~21個を含み、;ならびにN個の遺伝子は、以下のダウンレギュレートされた遺伝子:H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHの任意の5~66個を含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、ER制御遺伝子のパネルが包含され、ここでER制御遺伝子のパネルはN個の遺伝子を有し、ここでNは約87以下であり、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも32個、少なくとも33個、少なくとも34個、少なくとも35個、少なくとも36個、少なくとも37個、少なくとも38個、少なくとも39個、少なくとも40個、少なくとも41個、少なくとも42個、少なくとも43個、少なくとも44個、少なくとも45個、少なくとも46個、少なくとも47個、少なくとも48個、少なくとも49個、少なくとも50個、少なくとも51個、少なくとも52個、少なくとも53個、少なくとも54個、少なくとも55個、少なくとも56個、少なくとも57個、少なくとも58個、少なくとも59個、少なくとも60個、少なくとも61個、少なくとも62個、少なくとも63個、少なくとも64個、少なくとも65個、少なくとも66個、少なくとも67個、少なくとも68個、少なくとも69個、少なくとも70個、少なくとも71個、少なくとも72個、少なくとも73個、少なくとも74個、少なくとも75個、少なくとも76個、少なくとも77個、少なくとも78個、少なくとも79個、少なくとも80個、少なくとも81個、少なくとも82個、少なくとも83個、少なくとも84個、少なくとも85個、少なくとも86個、または87個の遺伝子を含み、ならびにN個の遺伝子は、以下のアップレギュレートされた遺伝子:PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOの任意の2~21個、3~21個、4~21個、5~21個、6~21個、7~21個、8~21個、9~21個、10~21個、11~21個、12~21個、13~21個、14~21個、15~21個、16~21個、17~21個、18~21個、19~21個、20~21個、または21個を含み;ならびにN個の遺伝子は、以下のダウンレギュレートされた遺伝子:H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHの任意の5~66個、6~66個、7~66個、8~66個、9~66個、10~66個、11~66個、12~66個、13~66個、14~66個、15~66個、16~66個、17~66個、18~66個、19~66個、20~66個、21~66個、22~66個、23~66個、24~66個、25~66個、26~66個、27~66個、28~66個、29~66個、30~66個、31~66個、32~66個、33~66個、34~66個、35~66個、36~66個、37~66個、38~66個、39~66個、40~66個、41~66個、42~66個、43~66個、44~66個、45~66個、46~66個、47~66個、48~66個、49~66個、50~66個、51~66個、52~66個、53~66個、54~66個、55~66個、56~66個、57~66個、58~66個、59~66個、60~66個、61~66個、62~66個、63~66個、64~66個、65~66個、または66個を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、ER制御遺伝子のパネルは、PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、SYNPO、H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHを含む約87個の遺伝子を有する。約87個の遺伝子のうち、21個:PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOがアップレギュレートされた遺伝子であり;ならびに66個:H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHがダウンレギュレートされた遺伝子である。
【0047】
方法
いくつかの実施形態において、アムセネストラントによる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングするための方法が本明細書に提供され、本方法は:(a)アムセネストラントによる治療の前の第1の時点での個体からのサンプルから第1のER活性スコアを決定する工程;(b)工程(a)に続いて、アムセネストラントの投与に続く第2の時点で、個体からのサンプルから第2のER活性スコアを決定する工程;ならびに(c)第1のER活性スコアを第2のER活性スコアと比較する工程であって、第1のER活性スコアに対する第2のER活性スコアの減少は、アムセネストラントの標的エンゲージメントの予測因子である工程を含み、ここで、第1のER活性スコアおよび第2のER活性スコアを決定することは、N個の遺伝子を有するER制御遺伝子のパネルを分析することを含み、Nは少なくとも7であって、約87以下であり、ならびに、N個の遺伝子は、以下のアップレギュレートされた遺伝子:PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOの任意の2~21個を含み;ならびに、N個の遺伝子は、以下のダウンレギュレートされた遺伝子:H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHの任意の5~66個を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、アムセネストラントによる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングするための方法が本明細書に提供され、本方法は:(a)アムセネストラントによる治療の前の第1の時点での個体からのサンプルから第1のER活性スコアを決定する工程;(b)工程(a)に続いて、アムセネストラントの投与に続く第2の時点で、個体からのサンプルから第2のER活性スコアを決定する工程;ならびに(c)第1のER活性スコアを第2のER活性スコアと比較する工程であって、第1のER活性スコアに対する第2のER活性スコアの減少は、アムセネストラントの標的エンゲージメントの予測因子である工程を含み、ここで、第1のER活性スコアおよび第2のER活性スコアを決定することは、N個の遺伝子を有するER制御遺伝子のパネルを分析することを含み、ここでNは約87以下であり、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも32個、少なくとも33個、少なくとも34個、少なくとも35個、少なくとも36個、少なくとも37個、少なくとも38個、少なくとも39個、少なくとも40個、少なくとも41個、少なくとも42個、少なくとも43個、少なくとも44個、少なくとも45個、少なくとも46個、少なくとも47個、少なくとも48個、少なくとも49個、少なくとも50個、少なくとも51個、少なくとも52個、少なくとも53個、少なくとも54個、少なくとも55個、少なくとも56個、少なくとも57個、少なくとも58個、少なくとも59個、少なくとも60個、少なくとも61個、少なくとも62個、少なくとも63個、少なくとも64個、少なくとも65個、少なくとも66個、少なくとも67個、少なくとも68個、少なくとも69個、少なくとも70個、少なくとも71個、少なくとも72個、少なくとも73個、少なくとも74個、少なくとも75個、少なくとも76個、少なくとも77個、少なくとも78個、少なくとも79個、少なくとも80個、少なくとも81個、少なくとも82個、少なくとも83個、少なくとも84個、少なくとも85個、少なくとも86個、または87個の遺伝子を含み、ならびにN個の遺伝子は、以下のアップレギュレートされた遺伝子:PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOの任意の2~21個、3~21個、4~21個、5~21個、6~21個、7~21個、8~21個、9~21個、10~21個、11~21個、12~21個、13~21個、14~21個、15~21個、16~21個、17~21個、18~21個、19~21個、20~21個、または21個を含み;ならびにN個の遺伝子は、以下のダウンレギュレートされた遺伝子:H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHの任意の5~66個、6~66個、7~66個、8~66個、9~66個、10~66個、11~66個、12~66個、13~66個、14~66個、15~66個、16~66個、17~66個、18~66個、19~66個、20~66個、21~66個、22~66個、23~66個、24~66個、25~66個、26~66個、27~66個、28~66個、29~66個、30~66個、31~66個、32~66個、33~66個、34~66個、35~66個、36~66個、37~66個、38~66個、39~66個、40~66個、41~66個、42~66個、43~66個、44~66個、45~66個、46~66個、47~66個、48~66個、49~66個、50~66個、51~66個、52~66個、53~66個、54~66個、55~66個、56~66個、57~66個、58~66個、59~66個、60~66個、61~66個、62~66個、63~66個、64~66個、65~66個、または66個を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、アムセネストラントによる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングするための方法が本明細書に提供され、本方法は:(a)アムセネストラントによる治療の前の第1の時点での個体からのサンプルから第1のER活性スコアを決定する工程;(b)工程(a)に続いて、アムセネストラントの投与に続く第2の時点で、個体からのサンプルから第2のER活性スコアを決定する工程;ならびに(c)第1のER活性スコアを第2のER活性スコアと比較する工程であって、第1のER活性スコアに対する第2のER活性スコアの減少は、アムセネストラントの標的エンゲージメントの予測因子である工程を含み、ここで、第1のER活性スコアおよび第2のER活性スコアを決定することは、約87個の遺伝子を有するER制御遺伝子のパネルを分析することを含み、ならびに21個の遺伝子が、アップレギュレートされた遺伝子:PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOを含み;ならびに66個の遺伝子が、ダウンレギュレートされた遺伝子:H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHを含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、第1のER活性スコアに対する第2のER活性スコアの減少は、アムセネストラントのオン・ターゲット活性の予測因子である。いくつかの実施形態において、アムセネストラントのオン・ターゲット活性は、ER分解およびER阻害を含む。
【0051】
アッセイ/RNA配列決定
いくつかの実施形態において、遺伝子の発現レベルは、RNA発現レベル、mRNA発現レベル、またはDNA発現レベルのような核酸発現レベルであってもよい。核酸発現レベルを決定する任意の適切な方法を使用することができる。いくつかの実施形態において、核酸発現レベルは、RNA-seqを使用して決定される。例えば、核酸発現レベルは、RNA ACCESSプロトコルまたはTRUSEQ RIBO-ZERO00プロトコル(ILLUMINA))、RT-qPCR、qPCR、マルチプレックスqPCRまたはRT-qPCR、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、またはそれらの組み合わせを使用して決定してもよい。
【0052】
細胞内のmRNAを評価する方法は周知であり、例えば、RNA配列決定(RNA-seq)、全ゲノム配列決定(WGS)、遺伝子発現連続解析(SAGE)、所定の遺伝子セットに特異的な相補的プライマーを用いたRT-PCRのような様々な核酸増幅アッセイが含まれる。いくつかの実施形態において、qRT-PCRが使用される。さらに、そのような方法は、例えば、アクチンファミリーメンバーのような「ハウスキーピング」遺伝子の比較対照mRNA配列のレベルを同時に調べることによって、生物学的サンプル中の標的mRNAのレベルを決定することを可能にする1つまたは複数の工程を含むことができる。いくつかの実施形態において、増幅された標的cDNAの配列を決定することができる。任意選択的な方法としては、マイクロアレイ技術によって組織または細胞サンプル中の標的mRNAのようなmRNAを検査または検出するプロトコルが含まれる。核酸マイクロアレイを使用して、試験および対照の組織サンプルからの試験および対照のmRNAサンプルを逆転写および標識して、cDNAプローブを生成する。その後、固体支持体上に固定化された核酸のアレイに、プローブをハイブリダイズさせる。アレイは、アレイの各メンバーの配列および位置がわかるように構成されている。例えば、その発現がオン・ターゲット活性を含む、アムセネストラントを含む治療の標的エンゲージメントと相関する遺伝子の選択は、固体支持体上に整列させることができる。例えば、表3の87個の遺伝子のいずれかを固体支持体上に整列させることができる。標識されたプローブと特定のアレイメンバーとのハイブリダイゼーションは、プローブが由来するサンプルがその遺伝子を発現することを示している。
【0053】
生物学的サンプル
1つまたは複数の腫瘍細胞を含む任意の生物学的サンプルを、本明細書に開示される方法において使用することができる。いくつかの実施形態において、サンプルは、腫瘍生検、血液サンプル、血清サンプル、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、サンプルは腫瘍生検である。いくつかの実施形態において、対象から得られたサンプルは、ホルマリン固定腫瘍生検である。いくつかの実施形態において、対象から得られたサンプルは、ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍(FFPE)生検またはパラフィン包埋腫瘍生検である。いくつかの実施形態において、対象から得られたサンプルは、新鮮凍結(FF)腫瘍生検である。いくつかの実施形態において、サンプルは新鮮な腫瘍生検である。いくつかの実施形態において、サンプルはアーカイブ腫瘍生検である。いくつかの実施形態において、サンプルは凍結腫瘍生検である。
【0054】
任意の方法およびアッセイのいくつかの例において、サンプルは、本明細書に記載のアムセネストラントの投与の前に、個体から得られる。いくつかの実施形態において、サンプルは、本明細書に記載のアムセネストラントの投与の数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月、または数年前に得られる。換言すると、サンプルはベースラインサンプルであってもよい。いくつかの実施形態において、サンプルは、本明細書に記載のアムセネストラントの投与の後に、個体から得られる。いくつかの場合において、個体からのサンプルは、内分泌療法の投与後30時間以内に得られる。いくつかの実施形態において、サンプルは、本明細書に記載のアムセネストラントの投与の数分、数時間、または数日後に得られる。いくつかの実施形態において、例えば、本明細書に記載のアムセネストラントの投与の前および投与の後の異なる時点で、同じ個体から複数のサンプルが得られる。
【0055】
SERD化合物
いくつかの実施形態において、SERD化合物はSAR439859(アムセネストラント)である。SAR439859の合成は、特許出願の国際公開第2017140669号(実施例51)に記載されている。SAR439859(アムセネストラント)は6-(2,4-ジクロロフェニル)-5-[4-[(3S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル]オキシフェニル]-8,9-ジヒドロ-7H-ベンゾ[7]アンヌレン-2-カルボン酸である。SAR439859(アムセネストラント)の化学式は以下のとおりである:
【化1】
【0056】
追加の抗がん療法
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、アムセネストラントおよび追加の抗がん療法を投与することをさらに含む。追加の抗がん療法は、対象における腫瘍の治療のための当該技術分野で既知の任意の療法および/または任意の標準治療療法を含むことができる。いくつかの実施形態において、追加の抗がん療法は、手術、放射線療法、化学療法、免疫療法、ホルモン療法、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、追加の抗がん療法は、化学療法を含む。いくつかの実施形態において、追加の抗がん療法は、免疫療法を含む。いくつかの実施形態において、追加の抗がん療法は、ホルモン療法を含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、抗がん療法はパルボシクリブ(palbociclib)である。いくつかの実施形態において、抗がん療法はアルペリシブ(alpelisib)である。
【0058】
がん
いくつかの実施形態において、本開示は、アムセネストラントによる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングする方法を対象とする。
【0059】
いくつかの実施形態において、がんは、乳がんであり、好ましくはER+/HER2-進行性または転移性乳がんである。
【0060】
キットおよび製造品
いくつかの実施形態において、アムセネストラントによる治療に対するがんを有する個体の応答をモニタリングするのに有用な材料を含むキットまたは製造品が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、キットまたは製造品は、アップレギュレートされた遺伝子およびダウンレギュレートされた遺伝子の発現を検出するためのプローブの第1のセットを含み;ここでアップレギュレートされた遺伝子は、PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOの任意の2~21個、3~21個、4~21個、5~21個、6~21個、7~21個、8~21個、9~21個、10~21個、11~21個、12~21個、13~21個、14~21個、15~21個、16~21個、17~21個、18~21個、19~21個、20~21個、または21個を含み;ならびにダウンレギュレートされた遺伝子は、H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHの任意の5~66個、6~66個、7~66個、8~66個、9~66個、10~66個、11~66個、12~66個、13~66個、14~66個、15~66個、16~66個、17~66個、18~66個、19~66個、20~66個、21~66個、22~66個、23~66個、24~66個、25~66個、26~66個、27~66個、28~66個、29~66個、30~66個、31~66個、32~66個、33~66個、34~66個、35~66個、36~66個、37~66個、38~66個、39~66個、40~66個、41~66個、42~66個、43~66個、44~66個、45~66個、46~66個、47~66個、48~66個、49~66個、50~66個、51~66個、52~66個、53~66個、54~66個、55~66個、56~66個、57~66個、58~66個、59~66個、60~66個、61~66個、62~66個、63~66個、64~66個、65~66個、または66個を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、キットまたは製造品は、アップレギュレートされた遺伝子およびダウンレギュレートされた遺伝子の発現を検出するためのプローブの第1のセットを含み;ここでアップレギュレートされた遺伝子は、PTPRT、CAMK1D、BCAS1、ABCG1、KRT81、TLE2、SALL4、ITGB6、BBC3、IL1R1、CORO2A、GRM4、ATP6V0A4、MATN2、PPFIBP2、BMF、LOC283070、PSCA、BAK1、PLIN2、およびSYNPOを含み;ならびにダウンレギュレートされた遺伝子は、H19、MYBL1、MGP、SLC5A8、PKIB、PGR、TMPRSS3、IGSF1、COL21A1、FSIP1、KLHL4、EGR3、NPY1R、HIST1H3C、GRIK3、SCNN1B、FRK、PRSS23、SERPINA5、SFXN2、CAP2、HIST1H2BM、CDC45、WDR62、DSCC1、GJA1、FAM196A、NTRK2、RAD54L、SDK2、SLC4A10、HIST1H4D、HIST1H4C、RGS22、SYBU、CA8、DIAPH3、FHL2、HIST1H1B、KCNH1、RAD51AP1、FANCD2、SLC39A8、SKP2、HIST1H3B、TMEM164、AURKB、DEPTOR、XRCC2、C1QTNF6、ERCC6L、ORC1、HIST2H2AC、RRM2、EME1、HIST1H2BF、CLSPN、EXO1、SDC2、HIST1H3I、HIST2H2AB、HIST1H4B、ASCL1、ATAD5、HIST1H1D、およびHIST1H2BHを含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、キットまたは製造品は、RNA配列決定分析のためのサンプルを調製するための1つまたは複数の試薬を含んでもよい。いくつかの実施形態において、サンプルは、腫瘍生検、血液サンプル、血清サンプル、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、サンプルは、腫瘍生検である。いくつかの実施形態において、対象から得られるサンプルは、ホルマリン固定腫瘍生検である。いくつかの実施形態において、対象から得られるサンプルは、ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍(FFPE)生検またはパラフィン包埋腫瘍生検である。いくつかの実施形態において、対象から得られるサンプルは、新鮮凍結(FF)腫瘍生検である。いくつかの実施形態において、サンプルは、新鮮な腫瘍生検である。いくつかの実施形態において、サンプルは、アーカイブ腫瘍生検である。いくつかの実施形態において、サンプルは、凍結腫瘍生検である。
【0063】
いくつかの実施形態において、キットまたは製造品は、サンプルからのER活性スコアを決定するための1つまたは複数の試薬をさらに含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、キットまたは製造品は、本明細書に記載の、アムセネストラントによる治療に対する乳がんを有する個体の応答をモニタリングおよび/または評価するためにキットを使用するための取扱説明書を含むことができる。
【0065】
いくつかの実施形態において、キットまたは製造品は、容器、容器上のラベル、および容器内に含まれる組成物を含んでもよく、ここで、組成物は、ストリンジェントな条件下で本明細書に列挙される遺伝子(例えば、表3の任意の遺伝子)の相補体にハイブリダイズする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含み、容器上のラベルは、サンプル中の本明細書の表3に列挙された遺伝子のセットの活性を評価するために、組成物が使用できることを示し、キットには、特定のサンプルタイプにおける遺伝子のRNAまたはDNAの存在を評価するためにポリヌクレオチド(複数可)を使用するための、取扱説明書が含まれる。
【0066】
いくつかの実施形態において、キットまたは製造品は、オリゴヌクレオチドベースであり、例えば、(1)オリゴヌクレオチド、例えば、タンパク質をコードする核酸配列にハイブリダイズする検出可能に標識されたオリゴヌクレオチド、または(2)核酸分子の増幅に有用なプライマーのペアを含むことができる。いくつかの実施形態において、キットまたは製造品は、緩衝剤、保存剤、またはタンパク質安定化剤もまた、含むことができる。いくつかの実施形態において、キットまたは製造品は、検出可能な標識を検出するために必要な構成要素、例えば、酵素または基質をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、キットまたは製造品は、アッセイして試験サンプルと比較することができる対照サンプルまたは一連の対照サンプルもまた、含むことができる。いくつかの実施形態において、キットまたは製造品の各構成要素は、個々の容器内に封入することができ、キットまたは製造品を使用して実行されたアッセイの結果を解釈するための取扱説明書とともに、種々の容器の全てを単一のパッケージ内に封入することができる。
【実施例1】
【0067】
材料および方法
使用した材料および方法の主な詳細を以下に示す。
【0068】
細胞培養および試薬
MCF7、CAMA-1、ZR-75~1、MDAMB134VI、MDAMB361、BT474、BT473、MDAMB415、EFM19、HCC1428、HCC1500、HEK293T、MDAMB231、およびSUM44PE細胞は、ATCCまたはAsterandから購入し、Idexxでの短いタンデムリピート(STR)DNAプロファイリングを使用して認証を受けた。HCC1428 LTED細胞株は、Carlos Arteagaから入手した(TW Millerら、Clinical Cancer Research、2011年;17:2024~2034ページ)。全ての細胞株は、マイコプラズマ汚染についてロンザ・マイコアラート(Lonza Mycoalert)およびストラタジーン・マイコセンサー(Stratagene Mycosensor)を使用して、定期的にスクリーニングされた。特に明記しない限り、組織培養サプリメントおよび培地は、Hyclone、Corning、またはInvitrogenから購入した。ATCCによる推奨に従って細胞を維持した。HCC1428-LTEDは、10%のデキストラン-チャコール処理(CSS)FBS(Hyclone)を含む、フェノールレッドを含まない改良修飾イーグル培地(IMEM、Corning)で維持した。SUM44PEは、2%のCSSを含むIMEMで以前の記載に従って維持された。HCI-013は、転移性ER+/プロゲステロン受容体陽性/ヒト上皮成長因子受容体2陰性の浸潤性小葉癌を有する53歳の女性の胸水から確立された(Alana Welmsから寄贈)。フルベストラント、4OH-タモキシフェン、ラロキシフェン(raloxifene)、バゼドキシフェン(bazedoxifene)、および17β-エストラジオールは、Sigma Aldrichから購入した。
【0069】
化合物
SAR439859は、特許出願の国際公開第2017140669号(実施例51)に記載されているように合成された。GDC0810およびAZD9496は、国際公開第2012037410号(実施例111)および国際公開第2014191726号(実施例1)にそれぞれ記載されているように合成された。AZD-SARおよびGDC-SARの両方は、国際公開第2018091153号に記載されているように作成された(それぞれ実施例255および256)。
【0070】
RNAの単離および定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)
RNAは、RNeasyキット(Qiagen)を製造業者による取扱説明書に従って使用して抽出し、NanoDrop 8000(ThermoScientific)によって定量化し、cDNAアーカイブキット(Applied Biosystems)を用いて逆転写した。Taqman遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems)を使用して、PGR(Hs00172183_m1)、Bcas1(Hs00952822_m1)、CXCL12 (Hs03676656_mH)、BLNK1(Hs00929914_m1)、IL20(Hs00218888_m1)、およびハウス-キーピング遺伝子PGK(Hs00391480_m1)およびGAPDH(Hs99999905_m1)を定量した。相対量は、製造業者による取扱説明書(Applied Biosystems)に従って、ΔΔ閾値サイクル(ΔΔCt)を使用して決定された。
【0071】
RNA配列決定/ER制御遺伝子のパネルの開発
ER制御遺伝子のパネルを開発するために、以下のように実験を行った。最初に、個別にDMSO、エストラジオール(E2)、2つのSERMおよび5つのSERD化合物を用いて、3つの濃度でMCF-7細胞を治療した。単剤(DMSO、エストラジオール、SERM、またはSERD)によるMCF-7細胞の治療についての治療スキームを示す、以下の表1を参照されたい。濃度の単位はnMである。
【0072】
【表1】
【0073】
2番目に、エストラジオールとSERDおよびSERD化合物の1つとの組み合わせで、MCF-7細胞を治療した。エストラジオールに加えて2つのSERMおよび5つのSERDのうちの1つを用いたMCF-7細胞の治療のための治療スキームを示す、以下の表2を参照されたい。濃度の単位はnMである。
【0074】
【表2】
【0075】
RNAは、RNeasyキット(Qiagen)を製造業者のプロトコルに従って使用して抽出した。RNAサンプルの濃度はNanoDrop 8000(ThermoScientific)を使用して決定し、RNAの完全性は4200 TapeStation(Agilent Technologies)によって決定した。
【0076】
NuGenオベーション(登録商標)ユニバーサルRNA-Seqシステム法(Illumina(登録商標)プラットフォーム)からのキットを製造業者のプロトコルに準拠して使用して、96のSERD RNAサンプルのRNA-seqライブラリを調製した。50bpのラピッドシングルリードフローセルを使用して、ラピッドモードのIllumina HiSeq 2500でライブラリを配列決定した。RNA-seqデータは以下のように処理した:RNA配列決定のFASTQファイルは、参照に対するスプライシングされた転写物整列(Spliced Transcripts Alignment to a Reference;STAR)アライナー(Dobinら、Bioinformatics、2013年1月、29巻、1号、15~21ページ)およびCufflinksを使用して参照ゲノムGRCh 38にマッピングされ、100万あたりの転写産物(TPM)で発現の遺伝子レベル推定値を生成した。TPMは、発現単位としての算出測定値として算出され、その後、分位点正規化され、log変換された。この細胞株分析から生成されたRNA-seqデータは、E2によってDMSOと比較して顕著にアップレギュレートおよびダウンレギュレートされた遺伝子を同定した。ER制御遺伝子は、2つの比較を使用して同定された。最初に、表1における1つまたは複数のSERMまたはSERD化合物によって調節され、エストラジオールによって反対方向に調節される遺伝子を同定した([log2 FC]>2およびFDR<0.05対DMSO対照)。SERD化合物治療群とジメチルスルホキシド(DMSO;対照)治療群との間で差次的に発現する遺伝子を同定するために、それぞれの用量および時点での2因子(治療および用量)分散分析(ANOVA)モデルを使用した。治療因子は、7つのレベルで固定された:6つのSERD化合物およびDMSO対照。用量因子もまた、2つのレベルで固定された:低および高。全てのサンプルは24時間で治療された。各々のSERD化合物治療とDMSO対照との間で、各々の用量および時間レベルで事後コントラスト分析を行った。絶対倍数変化≧1.5および偽発見率調整p値≦0.05のカットオフレベルを使用して、差次的に発現する遺伝子(DEG)を選択し、1022DEGのパネルを得た。この分析は、アレイ・スタジオ(Array Studio)(Qiagen)を使用して実行された。少なくとも1つの化合物対DMSOの比較で差次的に発現されるとして同定された1022遺伝子のパネルを、それぞれの用量および時点でDMSO対照に対して正規化された化合物治療データの階層的クラスタリングに使用した。完全連鎖クラスタリングは、ピアソン相関係数に基づいて実行された。化合物間の発現プロファイルの類似性は、差次的に発現される遺伝子のピアソン相関によって評価された。
【0077】
2番目に、エストラジオールの存在下で1つまたは複数のSERMまたはSERD分子によって調節される遺伝子が同定された([log2 FC]>2およびFDR<0.05対エストラジオールのみ)(表2を参照されたい)。両方の比較で87個の遺伝子が調節された。87個の遺伝子の中には、E2によって誘導され、SERD/SERMによってダウンレギュレートされる66個の遺伝子、およびE2によって抑制され、SERD/SERMによってアップレギュレートされる21個の遺伝子がある。このシグネチャーは、SERMおよびSERDによるER調節の測定に使用することができる。一般に、87個の遺伝子は、SERM化合物よりもSERD化合物によってより強く調節された;図5を参照されたい。
【0078】
結果
アムセネストラントおよび他のSERDによるER調節を評価するために、HCC1428-LTED(長期エストロゲン欠乏)乳がん細胞株を300nM(高)または30nM(低)のSERD化合物で24時間治療した。ER固有の活性を明らかにするために、その後、我々は、ホルモンが欠乏している細胞株であるHCC1428-LTED細胞における化合物治療の後の遺伝子発現を評価した。全体的なmRNA発現の変化は、治療後24時間を評価した。1022の転写産物の選択されたパネルでの階層的クラスタリングにより、異なるシグネチャーを持つ2つのグループが同定された:1つのグループはGDC-0810およびAZD9496を含み、もう1つのグループはフルベストラント、SAR439859、GDC-SARおよびAZD-SARを含んでいた(図1A)。我々のER活性スコア分析は、2つのSERD、フルベストラントおよびSAR439859が、2つのハイブリッド分子、GDC-SARおよびAZD-SARが行うように、ER活性スコアを強力に低下させることを示した。対照的に、GDC-0810およびAZD9496は、ER活性スコアを部分的にしか低下させなかった。SAR439859によって誘導される発現プロファイルは、フルベストラントと密接に相関していることが、統計的相関関係により明らかになった。一方で、GDC-0810およびAZD9496の転写プロファイルは、フルベストラントの転写プロファイルと弱い相関があるのみであった。興味深いことに、ハイブリッド分子GDC-SARおよびAZD-SARのプロファイルもまた、フルベストラントおよびSAR439859のプロファイルと密接に相関している(図1A図3)。
【0079】
一般的に、87個の遺伝子は、SERM化合物よりもSERD化合物によってより強力に調節された。87個の遺伝子の中には、E2によって誘導されて、SERD/SERMによってダウンレギュレートされる66個の遺伝子、およびE2によって抑制されて、SERD/SERMによってアップレギュレートされる21個の遺伝子がある。
【0080】
化合物の相対的なER制御活性を評価するために、複数の細胞株の転写プロファイリングによってER調節遺伝子パネル(87遺伝子、表3)を開発し、エストラジオールで調節され、その後SERMおよびSERDでブロックされる遺伝子を同定した。ER制御遺伝子のこのパネルは、SERMおよびSERDによるER調節を測定するために使用することができる。その後、ERシグネチャー(BMC Bioinformatics. 2013;14:7)の遺伝子セットバリエーション分析(GSVA)を使用して、ER活性スコアを評価した。
【0081】
フルベストラントおよびSAR439859は、ER活性の深い阻害を実証した一方で、GDC-0810およびAZD9496は、ERα活性を部分的に阻害するのみであり、上記の観察をさらに支持した。興味深いことに、両方のハイブリッド分子、GDC-SARとAZD-SARもまた、ERα転写活性を強力に阻害した(図1B)。RT-qPCRによって、2つの十分に検証されたER標的遺伝子、CXCL12およびBCAS1の発現を測定することによって、調査結果が確認された。遺伝子発現解析により、十分に検証されたERα標的遺伝子に対するこれらの分子の差次的な応答のさらなる確認が提供された(Elife. 2016;5、Endocr Relat Cancer. 2015;22(5):713~24ページ)。SAR439859、GDC-SAR、およびAZD-SARはCXCL12の発現を阻害し、Bcas1の発現を誘導した一方で、GDC-0810およびAZD9496はこれらの遺伝子の発現に有意な変化を何も誘発できなかった(図1C、D)。驚くべきことに、SAR439859およびフルベストラントは、E2の非存在下で、ERα固有の活性の大きな調節を誘導しているが、これはこれらの化合物の強力な逆アゴニスト活性を示唆している。
【0082】
以下に提供されるリストは、SERD、より特には、アムセネストラントによる治療によってダウンレギュレートまたはアップレギュレートされる遺伝子である。
【0083】
【表3-1】
【表3-2】
【0084】
PGRおよびCXCL12のような個別のERα抑制遺伝子のRT-qPCR分析により、フルベストラントまたはGDC-0810と比較して、SAR439859によるより強力な阻害が、HCI013腫瘍において確認された(それぞれ、図2および図4A)。ERα転写活性は、以前に記載されたように、HCI013モデルにおいて、イン・ビトロ細胞株分析由来のER遺伝子シグネチャーに対応する遺伝子のパネルを使用して、分析された。SAR439859およびGDC-0810の両方の治療で、ERαシグナル伝達の抑制活性が示され、GDC-0810と比較してより顕著なERα抑制が、SAR439859により達成された(図4B)。
【実施例2】
【0085】
本試験は、用量漸増コホート(パートA)および用量拡大コホート(パートB)では単剤療法、および研究のその他のアームでは併用療法として投与された、アムセネストラントの安全性、抗腫瘍活性、薬物動態、薬力学的特性を評価した、ER+/HER2-進行性/転移性乳がんを有する閉経後の女性を対象とした非盲検の第1/2相試験である。ベースラインの28日前からベースラインまでを含むスクリーニング期間があった。治療期間には、SAR439859を投与する28日間の療法サイクルが含まれていた。治療終了後、フォローアップ期間があった。パートAの用量漸増では、SAR439859の20~600mgのPO(経口)QD(1日1回)が投与された。パートBの用量拡大では、SAR439859の400mgのPO QDが投与された。
【0086】
対のある腫瘍生検は、収集に同意したパートBからの患者のスクリーニング時およびサイクル2の終了時(サイクル2、28日目)に収集された。各生検について、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織(ブロックまたはスライド)を、免疫組織化学(IHC)分析用にそれぞれ5μm、RNA抽出およびその後のRNA-seq分析用にそれぞれ10μm収集した。IHC ER、プロゲステロン受容体(PgR)、およびKi67タンパク質発現スライドは、2人の専門病理学者(VPおよびA-LB)によって評価された。IHC染色は、Ventana Discovery XT IHCプラットフォームで、抗ERクローンSP1(CONFIRM抗エストロゲン受容体、Roche、ref. 790-4325)、抗PgRクローン1E2(CONFIRM抗プロゲステロン受容体、Roche、ref. 790-4296)、および抗Ki67クローン30-9(CONFIRM抗Ki-67、Roche、Ref. 790-4286)を使用して実行した。染色されたスライドは、標準的な光学顕微鏡により、手動スコアリングシステムを使用して評価された。染色は、腫瘍細胞のみで評価された。ERおよびPgRの発現については、Hスコアを算出した。Ki67タンパク質発現については、陽性腫瘍細胞のパーセンテージを算出した。全RNAは、FFPE組織(10μmのスライド)から抽出された。KAPA RNA HyperPrepおよび全エクソームSeqCapキット(Roche)を利用したターゲット濃縮RNA-seqアプローチを適用した後、NextSeq 500(Illumina)を用いて配列決定リードを生成した。RNA-seq FASTQファイルをSTARアライナーおよびCufflinksを用いて処理して、100万のマッピングされたリード(FPKM)あたりの転写物のキロベースあたりの遺伝子レベルのフラグメントを生成した。これらのFPKM値は、100万あたりの転写産物(TPM)における発現の遺伝子レベル推定値に変換された。その後、TPMデータは、分位点正規化され、log2変換された。以前に記載のように遺伝子セットバリエーション分析(GSVA)によって測定されたER活性化スコアの減少が、RNA-seq分析によって決定された。
【0087】
血漿サンプルは、ESR1変異を評価するために、サイクル1、1日目およびサイクル2、28日目の最後に収集された。
【0088】
循環遊離DNA(cfDNA)における野生型および変異型ESR1の状態が決定された。cfDNAは、治療期間のベースラインおよび56日目で測定された。cfDNAは、Sysmex Inostics(Baltimore、MD、USA)のOncoBEAM(商標)プラットフォームを使用したマルチプレックスセントラルドロップレットデジタルポリメラーゼ連鎖反応(dd-PCR)BEAMing 12遺伝子アッセイによって、ESR1のリガンド結合ドメインにおけるホットスポットの病原性ESR1変異(単一ヌクレオチドバリアント)について評価された。cfDNAは、Roche AVENIO拡張パネル、77遺伝子NGSパネル(Ambry Genetics)を使用して、ベースライン時および治療終了時に別の方法でも測定された。ベースラインでは、生殖細胞変異が評価された。唾液変異は、cfDNAの生殖細胞変異の可能性についての参照のために呼び出す。
【0089】
アムセネストラントは、対のある腫瘍生検で証明されるように、ER分解/シグナル伝達阻害を誘導した(ベースライン時およびアムセネストラント投与の2つの28日間サイクル後に収集した)。1人の患者では、最初の投与サイクルの15日目に、治療中の生検が収集された。
【0090】
アムセネストラントは、IHC ER発現の全体的な減少(ER分解)(図6A;ベースラインからの相対変化の中央値は、スクリーニング時およびサイクル2、28日目の入手可能なデータで、非ゼロ値の患者間において-58%[範囲-93%から-44%]であった;n=6)、PgR発現の減少(図6B;スクリーニングからの相対変化の中央値は、-88%[範囲-100%から-38%]であった;n=3)、Ki67タンパク質発現の減少(図6C;Ki67陽性細胞のパーセンテージにおけるスクリーニングからの変化量の中央値は、-8%[範囲-30%から+30%]であった;n=7)、およびGSVAによるER活性化スコアの減少(図6D;スクリーニングからの変化量の中央値は、-0.4[範囲-1.1から+0.4]であった;n=5)によって示されるように、堅牢なオン・ターゲット活性を示した。ERまたはPgR核のHスコアは、非ゼロのスクリーニング値である全ての患者で、サイクル2、28日目で減少した。スクリーニング時にERまたはPgR核のHスコアがゼロに等しかった患者のうち、1人の患者は、サイクル2、28日目にPgR核のHスコアが増加していた。ER活性化スコアは、臨床的利益を示した患者間においてのみ減少または安定を維持し(スクリーニングからの変化量の中央値は、-0.6[範囲-1.1から0]であった;n=4)、臨床的利益がなかった患者においてはER活性化スコアが増加した(スクリーニングからの変化量:+0.4)。上記の「(n=)」の数値は、記述統計(変化量の中央値または相対変化の中央値)が算出された患者の数を示す。ベースライン/スクリーニング時およびベースライン後(図6A~Dのそれぞれの各線は、1人の患者を表す)で利用可能なデータを持つ患者の数は、上記の「(n=)」の数とは異なる可能性があるが、これは、少なくとも、ベースライン/スクリーニングがゼロに等しい場合は相対変化の中央値が算出されなかったことが理由である。
【0091】
臨床的利益評価のための応答は、RECIST v1.1に従って評価された。
【0092】
ER活性スコア(5つの対のある生検で評価された)は、臨床的利益を示した患者では減少するか、安定を維持したままであったが、臨床的利益を示さなかった患者では増加した。部分奏効のない臨床的利益を示した患者では、ER活性スコアが低下した。臨床的利益および部分奏効の両方を達成した1人の患者では、活性化スコアに変化はなかった(したがって、ベースラインスコアが非常に低く、ER活性が低いことを示している)。
【0093】
ER活性スコアは、ERタンパク質IHCよりも臨床的利益(CB)と密接に相関していた。腫瘍生検(免疫組織化学的およびトランスクリプトーム分析)におけるアムセネストラントのオン・ターゲット活性を評価するために使用される全ての方法の中で、ER活性スコアは、臨床的利益を達成するか否かを患者間で最も明確に区別した。IHC ERタンパク質のレベルは、ER経路状態と必ずしも相関していなかった。
【0094】
前臨床および臨床研究へのER活性スコアの適用は、SERDの標的エンゲージメント薬力学(PD)バイオマーカーのようなバイオマーカーとしての潜在的な価値を示している。
【0095】
本研究の強みには、ER+/HER2-進行乳がんにおける強力な標的エンゲージメントとER分解/経路阻害を実証する、安全性、抗腫瘍活性、薬物動態/薬力学を組み合わせた評価が含まれる。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
【国際調査報告】