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特表2023-551288膜の使用のための、スルホンポリマーのN-tert.-ブチル-2-ピロリドン中溶液
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】膜の使用のための、スルホンポリマーのN-tert.-ブチル-2-ピロリドン中溶液
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/68 20060101AFI20231130BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20231130BHJP
   C08L 81/00 20060101ALI20231130BHJP
   C08L 39/06 20060101ALI20231130BHJP
   C08L 101/14 20060101ALI20231130BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20231130BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20231130BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20231130BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20231130BHJP
   C08K 5/3412 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B01D71/68
C02F1/44 G
C02F1/44 K
C08L81/00
C08L39/06
C08L101/14
C08L71/02
C08K5/05
C08K5/053
C08L81/06
C08K5/3412
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023532483
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(85)【翻訳文提出日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2021082449
(87)【国際公開番号】W WO2022112150
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】20210689.4
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21174349.7
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グロンヴァルト,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】キーラト,ラドスラウ
(72)【発明者】
【氏名】フーバー,タチアナ
【テーマコード(参考)】
4D006
4J002
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA13
4D006GA14
4D006HA61
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA25
4D006MC40X
4D006MC45X
4D006MC62X
4D006MC63
4D006MC88
4D006NA04
4D006NA10
4D006NA12
4D006NA40
4D006NA54
4D006PA01
4D006PB03
4D006PB05
4D006PB08
4D006PC11
4J002BJ00X
4J002CH01Y
4J002CN03W
4J002EC017
4J002EC047
4J002EC057
4J002EU026
4J002FD026
4J002FD027
4J002FD206
4J002FD207
4J002GD05
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのスルホンポリマーとN-tert.-ブチル-2-ピロリドンとを含む溶液、膜の製造方法、及び水処理のためのこの膜の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
のポリエーテルスルホン、式II
【化2】
のポリスルホン、及び式III
【化3】
のポリフェニルスルホンの群から選択されるスルホンポリマーを含む溶液であって、これらのスルホンポリマーの平均分子量Mwが、40000~95000g/molの範囲であり、唯一の溶媒としてN-tert.-ブチル-2-ピロリドンが使用される、溶液。
【請求項2】
前記スルホンポリマーが、スルホンポリマー100g当たり少なくとも0.02molのSO2-単位を含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
前記スルホンポリマーが、前記スルホンポリマーの総重量に基づいて、少なくとも30重量%の芳香族炭素原子を含む芳香族スルホンポリマーである、請求項1又は2に記載の溶液。
【請求項4】
少なくとも1つのスルホンポリマーと、少なくとも1つの水溶性ポリマーと、唯一の溶媒として使用されるN-tert.-ブチル-2-ピロリドンと、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項5】
少なくとも1つのスルホンポリマーと、添加剤と、唯一の溶媒として使用されるN-tert.-ブチル-2-ピロリドンと、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項6】
前記溶液が添加剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項7】
前記添加剤が、C2~C4アルカノール、C2~C4アルカンジオール、C3~C4アルカントリオール、200g/mol未満のモル質量を有するポリエチレンオキシド、又はそれらの混合物から選択される、請求項5又は6に記載の溶液。
【請求項8】
前記溶液が、前記溶液に基づいて1~40重量%のスルホンポリマーを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項9】
前記溶液が、前記溶液に基づいて0.1~15重量%の前記水溶性ポリマーを含む、請求項4又は6~8のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項10】
前記溶液が、前記溶液の総重量に基づいて、0.1~15重量%の添加剤を含む、請求項5又は6~8のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項11】
請求項4~10のいずれか一項に記載の溶液が使用される、膜の製造方法。
【請求項12】
下記工程:
a)請求項4~10のいずれか一項に記載の溶液を準備する工程と、
b)前記溶液を少なくとも1つの凝固剤と接触させる工程と、
c)任意選択的に、前記得られた膜を酸化及び洗浄する工程と、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの凝固剤が、水又は水蒸気を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか一項に記載の方法により得られる膜。
【請求項15】
水処理用途、工業廃水又は都市廃水の処理、海水又は汽水の脱塩、透析、原形質溶解、食品加工のための、請求項14により得られる膜の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのスルホンポリマーとN-tert.-ブチル-2-ピロリドンとを含む溶液、膜の製造方法、及び水処理のためのこの膜の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、及びポリフェニレンスルホンなどのスルホンポリマーは、それらの機械的特性並びにそれらの化学的及び熱的安定性のために、様々な技術的用途で使用される高性能ポリマーである。しかしながら、スルホンポリマーは多くの一般的な溶媒への溶解度は限られている。特に、スルホンポリマーの低分子量画分は、J.G Wijmans and C.A.Smolders in Eur.Polym.J.19,No.12,pp1143-1146(1983)により記載されているように、スルホンポリマーの溶液の濁りを引き起こす。
【0003】
米国特許第5885456号明細書は、スルホンポリマー用の好適な溶媒として、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルアクリルアミド(DMAD)、又はジメチルスルホキシド(DMSO)を開示している。米国特許第5885456号明細書に列挙されているこれらの溶媒のほとんどは、過去の好ましい溶媒と同じ特性を有することが期待される非生殖毒性溶媒に将来的に置き換えられる生殖毒性溶媒である。
【0004】
主要な技術的用途の1つは、米国特許第4207182号明細書及び同第5885456号明細書に記載されているように、例えば限外濾過膜(UF膜)などの膜の製造のための原材料としてのスルホンポリマーの使用である。スルホンポリマーの膜を製造する方法は、スルホンポリマーを溶媒中に溶解させる工程と、このような溶媒からスルホンポリマーを凝固させる工程と、更に後処理工程と、を含む。溶媒の選択は方法に不可欠であり、得られる膜の特性(膜の機械的安定性、透水性、及び孔のサイズが挙げられるが、これらに限定されない)に影響を与える。
【0005】
S.Savarier et.alは、Desalination 2002,144,15-20で、不溶性の結晶性環状ポリスルホン二量体は、フィルタの目詰まりの原因となるか、又は膜表面の欠陥を引き起こす可能性がある膜製造の問題を解決することを記載している。
【0006】
S.Munari et.alは、Desalination 1988,70,265-275で、NMP、DMAc、N,N-ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylforamide)(DMF)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)などの一般的な溶媒の場合、これらの溶媒中のポリスルホン溶液は、ポリスルホンの低分子量に起因する低粘度のため、キャストすることが困難であることを概説している。この問題を克服するために、ポリビニルピロリドンなどの水溶性ポリマーをポリスルホンポリマーと一緒に溶解して溶液の粘度を高めることが一般的な方法になっている。
【0007】
欧州特許出願公開第A2804940号明細書は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、及びポリビニルピロリドンなどの異なる種類のポリマーのポリマー製造のための非生殖毒性溶媒として、N-n-ブチル-2-ピロリドン、並びにN-tert.-ブチル-2-ピロリドンの使用を記載している。スルホンポリマーと、溶媒としてのN-tert.-ブチル-2-ピロリドン(TBP)と、を含むポリマー溶液であって、最新技術で引用されている他の溶媒を含むスルホンポリマー溶液よりも高い溶液粘度を示すポリマー溶液、並びにより良好な機械的安定性を有する膜を製造するために、スルホンポリマー及び水溶性ポリマー又は添加剤を含む溶液中の溶媒としてのN-tert.-ブチル-2-ピロリドン(TBP)の使用は、欧州特許出願公開第A2804940号明細書には開示されていない。
【0008】
溶媒の分野では、特定の用途で現在使用されている溶媒に取って代わる可能性のある代替溶媒に対する継続的な需要がある。スルホンポリマーの場合、代替溶媒は、濁りのない高含有量のスルホンポリマーを可能にする溶液を調製できなければならない。それから作られた膜に関しては、少なくとも同じ標準の膜品質、場合によっては更に優れた膜品質が達成されることが重要である。特に、このような膜の透水性は、膜の断面に欠陥又はマクロボイド(macrovoid)が見られないように、可能な限り高くなければならない。更に、スルホンポリマー(sufone polymer)、水溶性ポリマー、及び/又は添加剤、並びに溶媒を含む好適なポリマー溶液は、膜の孔の成形に影響を与える。したがって、スルホンポリマー溶液を安定させることができ、溶解していない二量体の目詰まりが少ない溶媒は、膜の断面の孔のモルホロジーを改善し、機械的に安定しているため膜の寿命が長くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、スルホンポリマー及び膜の製造方法のための代替溶媒を提供することであった。代替溶媒は、上記の要件を満たす必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、上記で定義される溶液及び膜の製造方法が見出された。
【0011】
スルホンポリマーについて
溶液はスルホンポリマーを含む。用語「スルホンポリマー」は、異なるスルホンポリマーの混合物を含むものとする。
【0012】
スルホンポリマーは、ポリマー、好ましくはポリマーの主鎖に-SO2-単位を含む。
【0013】
好ましくは、スルホンポリマーは、100グラム(g)のポリマー当たり、少なくとも0.02molの-SO2-単位、特に、少なくとも0.05molの-SO2-単位を含む。100gのポリマー当たり、少なくとも0.1molの-SO2-単位を含むスルホンポリマーがより好ましい。100gのポリマー当たり、少なくとも0.15molの-SO2-単位、特に、少なくとも0.2molの-SO2-単位を含むスルホンポリマーが最も好ましい。
【0014】
通常、スルホンポリマーは、100グラム(g)のポリマー当たり、最大で2molの-SO2-単位、特に、最大で1.5molの-SO2-単位を含む。100グラムのポリマー当たり、最大で1molの-SO2-単位を含むスルホンポリマーがより好ましい。100グラムのポリマー当たり、最大で0.5molの-SO2-単位を含むスルホンポリマーが最も好ましい。好ましくは、スルホンポリマーは芳香族基を含み、芳香族スルホンポリマーと略称される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1(A)】本発明による実施例4の膜の走査型電子顕微鏡写真を示す。
図1(B)】比較例4の膜の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましい実施形態では、スルホンポリマーは、スルホンポリマーの総重量に基づいて、少なくとも20重量%、特に、少なくとも30重量%の芳香族炭素原子を含む芳香族スルホンポリマーである。芳香族炭素原子は、芳香族環系の一部である炭素原子である。
【0017】
スルホンポリマーの総重量に基づいて、少なくとも40重量%、特に、少なくとも45重量%の芳香族炭素原子を含む芳香族スルホンポリマーがより好ましい。
【0018】
スルホンポリマーの総重量に基づいて、少なくとも50重量%、特に、少なくとも55重量%の芳香族炭素原子を含む芳香族スルホンポリマーが最も好ましい。
【0019】
好ましくは、スルホンポリマーは、1,4-フェニレン、1,3-フェニレン、1,2-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、1,4-ナフチレン、及び3-クロロ-1,4-フェニレンから選択される芳香族基を含み得る。
【0020】
芳香族基は、例えば、-SO2-、-SO-、-S-、-O-、-CH2-、-C(CH3)2から選択される単位によって連結され得る。
【0021】
好ましい実施形態では、スルホンポリマーは、スルホンポリマーの総重量に基づいて、上記芳香族基及び連結基から選択される基を、少なくとも80重量%、特に、少なくとも約90重量%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98重量%含む。
【0022】
最も好ましいスルホンポリマーの例は以下のとおりである:
式I
【化1】
[式中、n≧2]のポリエーテルスルホンは、例えば、BASFからUltrason(登録商標)Eの商標名で入手可能であり、
式II
【化2】
[式中、n≧2]のポリスルホンは、例えば、BASFからUltrason(登録商標)Sの商標名で入手可能であり、
式III
【化3】
[式中、n≧2]のポリフェニルスルホンは、例えば、BASFからUltrason(登録商標)Pの商標名で入手可能である。
【0023】
本発明の溶液並びに本発明の膜を製造する方法に使用可能な好ましいスルホンポリマーの粘度数(V.N.)は、50~120ml/g、好ましくは60~100ml/gの範囲であり得る。V.N.は、ISO307に従って、0.01g/molのフェノール/1,2オルトジクロロベンゼンの1:1溶液で測定される。
【0024】
好ましいスルホンポリマーの平均分子量Mwは、40000~95000g/mol、より好ましくは50000~70000g/molの範囲である。好ましいスルホンポリマーは、48000~92000g/molの範囲の重量平均分子量Mwを有するUltrason(登録商標)E、52000~70000g/molの範囲の重量平均分子量Mwを有するUltrason(登録商標)S、及び40000~60000g/molの範囲の重量平均分子量Mwを有するUltrason(登録商標)Pである。Mwは、標準としてポリスチレンを用いたテトラヒドロフラン中のゲル透過クロマトグラフィーに従って測定される。Ultrason(登録商標)E、Ultrason(登録商標)S、及びUltrason(登録商標)Pが、BASF SEから市販されている。
【0025】
水溶性ポリマーについて
水溶性ポリマーは、溶液の粘度を調整するのに役立つ。水溶液ポリマーの主な目的は、孔の形成をサポートすることである。膜を製造する方法中の凝固工程では、水溶性ポリマーが凝固した膜に分布し、孔のプレースホルダーとなる。
【0026】
水溶性ポリマーは、8000g/mol以上のモル質量を有するポリビニルピロリドン及びポリアルキレンオキシドの群から選択される任意の既知の水溶性ポリマーであり得る。好ましい水溶性ポリマーは、8000g/mol以上のモル質量を有するポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、及びこれらの混合物の群から選択される。より好ましい水溶性ポリマーは、8000g/mol以上のモル質量、及びFikentscher in Cellulosechemie 13,1932(58)により記載されているFikentscherの方法に従って測定される25以上のK値によって特徴付けられる溶液粘度を有するポリビニルピロリドン及びポリアルキレンオキシドである。非常に好ましい水溶性ポリマーは、8000g/mol以上のモル質量、及びFikentscher in Cellulosechemie 13,1932(58)により記載されているFikentscherの方法に従って測定される25以上のK値によって特徴付けられる溶液粘度を有するポリビニルピロリドンである。
【0027】
溶液について
溶液は、更に、添加剤を含み得る。これらの添加剤は、C2~C4アルカノール、C2~C4アルカンジオール、C3~C4アルカントリオール、100~1000g/molの範囲のモル質量を有するポリエチレングリコール、100~1000の範囲のモル質量を有するポリアルキレンオキシド、及びそれらの混合物の群から選択される。好ましい添加剤は、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、エチレングリコール、1,1-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2-プロパンジオール、1,2,3-プロパントリオール、1,1,1-プロパントリオール、1,1,2-プロパントリオール、1,2,2-プロパントリオール、1,1,3-プロパントリオール、1,1,1-ブタントリオール、1,1,2-ブタントリオール、1,1,3-ブタントリオール、1,1,4-ブタントリオール、1,2,2,-ブタントリオール、2,2,3-ブタントリオール、2-メチル-1,1,1-トリオールプロパン、2-メチル-1,1,2-トリオールプロパン、2-メチル-1,2,3-トリオールプロパン、2-メチル-1,1,3-トリオール-プロパン、100~1000g/molの範囲のポリアルキレンオキシドのモル質量を有するポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、及びそれらの混合物である。
【0028】
好ましい実施形態では、溶液の総重量に基づいて、最大20重量%、特に最大15重量%は、添加剤である。
【0029】
より好ましい実施形態では、添加剤の量は、溶液の総重量に基づいて、0.1~12重量%、特に5~12重量%の範囲である。
【0030】
溶液は、N-tert.-ブチル-2-ピロリドン以外の更なる溶媒(以下、共溶媒と呼ぶ)を含んでもよい。
【0031】
N-tert.-ブチル-2-ピロリドンと任意の比率で混和する共溶媒が好ましい。好適な共溶媒は、例えば、高沸点エーテル、エステル、ケトン、非対称ハロゲン化炭化水素、アニソール、γ-バレロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-n-ブチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチル-2-ヒドロキシプロパンアミド、及びN,N-ジエチル-2-ヒドロキシプロパンアミドから選択される。
【0032】
好ましい実施形態では、溶液の全ての溶媒の総重量の、少なくとも10重量%、特に少なくとも90重量%は、N-tert.-ブチル-2-ピロリドンである。
【0033】
最も好ましい実施形態では、共溶媒は溶液中で使用されず、N-tert.-ブチル-2-ピロリドンが、使用される唯一の溶媒である。
【0034】
好ましくは、溶液は、全ての溶媒の総量の100重量%当たり、5~50重量部、特に、10~40重量%、より好ましくは20~35重量%のスルホンポリマーを含む。
【0035】
最も好ましい実施形態では、溶液は、N-tert-ブチル-2-ピロリドンの総量の100重量%当たり、5~50重量%、特に、10~40重量%、より好ましくは20~35重量%のスルホンポリマーを含む。
【0036】
好ましくは、本発明の溶液は、溶液の総重量に従って、1~40重量%、特に、10~30重量%、より好ましくは15~25重量%のスルホンポリマーを含む。最も好ましい実施形態では、本発明の溶液は、溶液の総重量に従って、0.1~15重量%、特に、1~10重量%、より好ましくは5~10重量%の水溶性ポリマーを含む。
【0037】
溶液は、スルホンポリマー、水溶性ポリマー、及び/又は添加剤をN-tert-ブチル-2-ピロリドンに添加し、当該技術分野で公知の任意の方法に従ってスルホンポリマーを溶解することによって調製することができる。溶解プロセスは、溶液の温度を上昇させることによって、及び/又は撹拌などの機械的操作によってサポートされ得る。代替的実施形態では、スルホンポリマーは、N-tert-ブチル-2-ピロリドン又はN-tert-ブチル-2-ピロリドンを含む溶媒混合物中で既に合成されていてもよい。
【0038】
膜の製造方法について
本出願に関連して、膜は2つの流体を分離できるか、又は分子及び/若しくはイオン成分若しくは粒子を液体から分離することができる半透過性構造であると理解されるべきである。膜は、いくつかの粒子、物質又は化学物質を通すが他のものは保持したままにすることができる選択的バリアとして作用する。膜は、平らなシート、らせん巻き、ピロー、管状、シングルボア中空繊維又はマルチボア中空繊維などの様々な形状を有し得る。
【0039】
例えば、膜は、逆浸透(RO)膜、正浸透(FO)膜、ナノ濾過(NF)膜、限外濾過(UF)膜又は精密濾過(MF)膜であり得る。これらの膜のタイプは一般的に当該技術分野で公知であり、且つ詳細に文献に記載されている。良好な概要は、参照により本明細書に組み込まれる先の欧州特許出願公開第A3349887号明細書にも見られる。好ましい膜は、限外濾過(UF)膜である。
【0040】
膜は、以下の工程:
a)スルホンポリマー、N-tert-ブチル-2-ピロリドンを含み、水溶性ポリマー及び/又は添加剤を更に含む溶液を準備する工程と、
b)溶液を凝固剤と接触させる工程と、
c)任意選択的に、得られた膜を酸化及び洗浄する工程と、
を含む方法に従って製造することができる。
【0041】
工程a)の溶液は、上記の溶液に対応する。水溶性ポリマーは、溶液の粘度を調整するのに役立つ。水溶液ポリマーの主な目的は、孔の形成をサポートすることである。以下の凝固工程b)では、水溶性ポリマーが凝固した膜に分布し、孔のプレースホルダーとなる。
【0042】
水溶性ポリマーは、任意の既知の水溶性ポリマーであり得る。好ましい水溶性ポリマーは、8000g/mol以上のモル質量を有するポリビニルピロリドン及びポリアルキレンオキシドの群から選択される。より好ましい水溶性ポリマーは、8000g/mol以上のモル質量を有するポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、及びこれらの混合物の群から選択される。はるかに好ましい水溶性ポリマーは、8000g/mol以上のモル質量、及びFikentscher in Cellulosechemie 13,1932(58)により記載されているFikentscherの方法に従って測定される25以上のK値によって特徴付けられる溶液粘度を有するポリビニルピロリドン及びポリアルキレンオキシドである。非常に好ましい水溶性ポリマーは、8000g/mol以上のモル質量、及びFikentscher in Cellulosechemie 13,1932(58)により記載されているFikentscherの方法に従って測定される25以上のK値によって特徴付けられる溶液粘度を有するポリビニルピロリドンである。
【0043】
好ましい実施形態では、工程a)の溶液は、スルホンポリマー、水溶性ポリマー、及び/又は添加剤の総重量に基づいて、50~90重量%のスルホンポリマーと、10~50重量%の水溶性ポリマー、及び/又は添加剤と、を含む。
【0044】
好ましくは、溶液は、スルホンポリマー、水溶性ポリマー、及び/又は添加剤の総重量に基づいて、50~70重量%のスルホンポリマーと、30~50重量%の水溶性ポリマー、及び/又は添加剤と、を含む。
【0045】
溶液は、次の工程に進む前に、任意選択的に、脱気してもよい。
【0046】
工程b)では、溶液を凝固剤と接触させる。この工程では、スルホンポリマーの凝固が起こり、膜構造が形成される。
【0047】
スルホンポリマーは凝固剤中での溶解度が低くなければならない。好適な凝固剤は、例えば、液体水、水蒸気、及びそれらとアルコール及び/又は共溶媒若しくは溶媒(N-tert-ブチル-2-ピロリドン)との混合物である。好適なアルコールは、本発明の溶液において添加剤として使用され得る場合、例えば、C2~C4アルカノール、C2~C4アルカンジオール、C3~C4アルカントリオールの群から選択されるモノ、ジ、又はトリアルカノール、100~1000g/molのモル質量を有するポリエチレンオキシドである。好適な共溶媒は、高沸点エーテル、エステル、ケトン、非対称ハロゲン化炭化水素、アニソール、γ-バレロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-n-ブチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチル-2-ヒドロキシプロパンアミド、及びN,N-ジエチル-2-ヒドロキシプロパンアミドから選択される。好ましい凝固剤は、液体水と溶媒であるN-tert.-ブチル-2-ピロリドンとを含む混合物、又は液体水とアルコール、例えば100~1000g/molのモル質量を有するポリエチレンオキシドとを含む混合物、並びに/又は液体水と共溶媒、特に(γ-バレロラクトン)とを含む混合物である。上記凝固剤は、凝固剤の総重量に基づいて、10~90重量%の水と90~10重量%のアルコール及び/又は共溶媒若しくは溶媒とを含み得、好ましくは30~70重量%の水と70~30重量%のアルコール及び/又は共溶媒若しくは溶媒とを含み得る。原則として、凝固剤の全ての成分の合計量は100%を超えない。
【0048】
液体水と溶媒であるN-tert.-ブチル-2-ピロリドンとを含む凝固剤、又は液体水/アルコール混合物、特に、水と本発明の溶液中の添加剤として任意選択的に使用されたモル質量100~1000g/molのポリエチレンオキシドとの混合物、若しくはγ-バレロラクトン/水混合物を含む凝固剤がより好ましく、ここで、凝固剤は、凝固剤の総重量に基づいて、30~70重量%の水と、70~30重量%のN-tert.-ブチル-2-ピロリドン又はアルコール及び/又は(γ-バレロラクトン)と、を含む。
凝固剤として液体水が最も好ましい。
【0049】
方法工程a)及びb)の更なる詳細は、膜の所望の幾何学的構造及び実験室規模又は商業規模を含む生産規模に依存する。
【0050】
平らなシート膜の場合、詳細な方法工程a)及びb)は次のとおりである:
a1)水溶性ポリマー及び/又は添加剤を、スルホンポリマーとN-tert.-ブチル-2-ピロリドンとを含む溶液に添加する工程
a2)粘性溶液が得られるまで溶液を加熱する工程;典型的には、溶液は、20~100℃、好ましくは40~80℃、より好ましくは50~60℃の温度で維持される。
a3)均一な混合物が形成されるまで溶液を更に撹拌する工程;典型的には、均一化は1~10時間以内、好ましくは1~2時間以内に完了する
b1)a3)で得られた溶液を支持体上にキャストし、その後キャストされたフィルムを好ましくは水である凝固浴槽に移す工程。
【0051】
シングルボア中空繊維又はマルチボア中空繊維の製造の場合、工程b1)は、a3)で得られた溶液を、必要な数の中空針を有する押出ノズルを通して押し出すことによって実施され得る。凝固液は、押し出し中に中空針を通して押し出されたポリマーに注入されるので、押し出し方向に延びる平行な連続チャネルが押し出されたポリマー内に形成される。好ましくは押し出された膜の外面の孔径は、外面に活性層なしで形状が固定されるように、押し出しノズルを離れた後に外面を穏やかな凝固剤と接触させることによって制御され、その後膜を強力な凝固剤と接触させる。
【0052】
更なる方法工程c)は、任意選択である。一実施形態では、上記で調製された膜のいずれかが、工程c)で酸化され、洗浄される。酸化の場合、任意の酸化剤が使用され得る。500~5000ppm、より好ましくは1000~4000ppm、最も好ましくは1500~3000ppmの範囲の濃度の水溶性酸化剤、例えば、次亜塩素酸ナトリウム又はハロゲン、特に塩素などが好ましい。
【0053】
水溶性ポリマーを除去し、孔を形成するために、酸化並びに洗浄が行われる。酸化の後に洗浄が続く場合もあれば、その逆の場合もある。同様に、酸化及び洗浄を一工程で同時に行ってもよい。好ましくは、膜は次亜塩素酸溶液又はクロルガス(chlorgas)で酸化され、続いて水で洗浄され、更なる工程で重亜硫酸ナトリウム溶液、好ましくは30~60ppmの重亜硫酸ナトリウム水溶液で洗浄される。
【0054】
スルホンポリマー及びN-tert.-ブチルピロリドンを含む本発明の溶液は、濁りがないか、又は少なくとも5NTU未満のほとんどないことを示す。溶液は膜の製造に好適である。得られた膜は機械的安定性が高く、分離特性に優れている。特に、膜は、10~100kDaの範囲の良好な分子量カットオフ(MWCO)を有し、当該技術分野で言及されているように、溶液粘度を考慮して水透過率(PWP)のより良い値と組み合わされている。
【0055】
本発明の方法によって得られる膜は、任意の分離目的、例えば、水処理用途、工業廃水又は都市廃水の処理、海水又は汽水の脱塩、透析、原形質溶解、食品加工に使用され得る。
【実施例
【0056】
実施例で使用される略称及び化合物:
PWP 純水透過率
MWCO 分子量カットオフ
NTU 比濁計濁度単位
TBP N-tert.-ブチル-2-ピロリドン
NMP N-メチル-2-ピロリドン
NBP N-n-ブチル-2-ピロリドン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
2P 2-ピロリドン
12PD 1,2-プロパンジオール
Ultrason(登録商標)E3010
66の粘度数(ISO307、1157、1628;0.01g/molのフェノール/1,2オルトジクロロベンゼン 1:1溶液中);225℃のガラス転移温度(DSC、10℃/分;ISO11357-1/-2に従う);分子量Mw(THF中GPC、PS標準):58000g/mol、Mw/Mn=3.3を有するポリエーテルスルホン
Ultrason(登録商標)P3020P 71の粘度数(ISO307、1157、1628;0.01g/molのフェノール/1,2オルトジクロロベンゼン 1:1溶液中);220℃のガラス転移温度(DSC、10℃/分;ISO11357-1/-2に従う);分子量Mw(THF中GPC、PS標準):48000g/mol、Mw/Mn=2.7を有するポリフェニレンスルホン
Ultrason(登録商標)S6010
81の粘度数(ISO307;0.01g/molのフェノール/1,2オルトジクロロベンゼン 1:1溶液中);187℃のガラス転移温度(DSC、10℃/分;ISO11357-1/-2に従う);分子量Mw(THF中GPC、PS標準):60000g/mol、Mw/Mn=3.7を有するポリスルホン
Luvitec(登録商標)K30
28000g/mol超のMW及びFikentscherの方法(Fikentscher,Cellulosechemie 13,1932(58))に従って測定された30のK値で特徴付けられる溶液粘度を有するポリビニルピロリドン
Luvitec(登録商標)K90 900000g/mol超のMW及びFikentscherの方法(Fikentscher,Cellulosechemie 13,1932(58))に従って測定された90のK値で特徴付けられる溶液粘度を有するポリビニルピロリドン
Pluriol(登録商標)400E
DIN53240に従ってOH数から計算された400g/molの平均分子量を有するポリエチレンオキシド。
Pluriol(登録商標)9000E
Fikentscherの方法(Fikentscher,Cellulosechemie 13,1932(58))に従って測定された33のK値で特徴付けられる溶液粘度及び分子量Mw(0.01molのリン酸緩衝液pH7.4を含む水中のGPC、ポリ(エチレンオキシド)標準106-1522000g/molを有するTSKゲルGMPWXLカラム、Tosoh Bioscience):10800g/molを有するポリエチレンオキシド。
Breox(登録商標)75W55000
Fikentscherの方法(Fikentscher,Cellulosechemie 13,1932(58))に従って測定された42のK値で特徴付けられる溶液粘度及び分子量Mw(0.01molのリン酸緩衝液pH7.4を含む水中のGPC、ポリ(エチレンオキシド)標準106-1522000g/molを有するTSKゲルGMPWXLカラム、Tosoh Bioscience):14300g/molを有するポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドコポリマー
【0057】
ポリマー溶液の濁度は、濁度計2100AN(Hach Lange GmbH,Duesseldorf,Germany)で860nmのフィルタを使用して測定し、比濁計濁度単位(NTU)で表した。低いNTU値が好ましい。
【0058】
ポリマー溶液の粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計DV-I Prime(Brookfield Engineering Laboratories,Inc.Middleboro,USA)を用いてRV6スピンドル、60℃にて、20~100rpmで測定した。
【0059】
超純水(Millipore UF-システムで濾過した塩不含水)を使用して、74mmの直径を有する圧力セルを使用し、23℃にて、1barの水圧力で、膜の純水透過率(PWP)を試験した。純水透過率(PWP)を以下のように計算した(等式1):
【数1】
PWP:純水透過率[kg/bar h m
m:透過した水の質量[kg]
A:膜面積[m
P:圧力[bar]
t:透過実験の時間[h]。
高いPWPは高い流量を可能にするので、望ましい。
【0060】
その後の試験では、分子量が増加するポリエチレンオキシド標準の溶液は、0.15barの圧力で膜によって濾過される供給物として使用された。供給物及び透過物のGPC測定により、使用した各ポリエチレンオキシド標準の透過物の分子量を決定した。膜の重量平均分子量(MW)カットオフ(MWCO)は、膜によって少なくとも90%まで留保される最初のポリエチレンオキシド標準の分子量である。例えば、18400のMWCOは、18400g/mol以上の分子量のPEGが少なくとも90%まで留保されていることを意味する。10~100kDaの範囲のMWCOを有することが望ましい。
【0061】
DIN Iso 527-3に従って引張試験を実施し、Eモジュラス(MPaのEmod)及び破断点ひずみ(%のひずみ)で膜を特性評価した。
【0062】
ポリマー溶媒としてTBPを使用した膜の調製
一般的手順
マグネチックスターラーを装着した三口フラスコに、表1~6で示されるとおり、65~80mLの溶媒S1、16.3~25gのUltrason(登録商標)ポリマーを、任意選択の水溶性ポリマーである6~8gのLuvitec(登録商標)ポリビニルピロリドン又はポリアルキレンオキシド(Pluriol(登録商標)9000 E、Breox(登録商標)75W55)と共に、及び任意選択の添加剤(1,2-プロパンジオール、Pluriol(登録商標)400E)と共に添加した。通常、溶液と呼ばれる均質で透明な粘稠溶液が得られるまで、混合物を穏やかに撹拌しながら60℃で加熱した。溶液を室温で一晩脱気した。
【0063】
その後、膜溶液を60℃で2時間再加熱し、5mm/sの速度で動作するErichsenコーティングマシーン(Coatmaster 510,Erichsen GmbH&Co KG,Hemer,Germany)を使用して、60℃でキャスティングナイフ(300ミクロン)を用いてガラスプレート上にキャストした。膜フィルムを30秒間静止させた後、25℃の水性凝固浴槽に10分間浸漬した。膜がガラス板から剥がれた後、膜を水浴に12時間注意深く移した。
【0064】
任意選択的に、その後、膜を2000ppmのNaOClを含む60℃、pH9.5の浴槽に2時間移した。次いで、膜を60℃の水で洗浄し、重亜硫酸ナトリウムの0.5重量%溶液で1回洗浄して、活性塩素を除去した(後処理A)。又は任意選択的に膜を60℃の水で3回洗浄した(後処理B)。
【0065】
本発明に従ってTBPで製造されたポリマー溶液は、より高い溶液粘度を示し、それから製造された膜は、当該技術分野で公知の膜よりも改善された機械的安定性(より高いEモジュラス)を示した。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
膜を製造するための溶媒としてTBPを使用することで、粘度量が低い、例えば、溶媒としてNMPが使用される表2の比較例2~6に示されるのと同等のPWP/MWCO値を有する4.8Pasの場合でさえも、より安定した膜が形成される。溶媒としてNMPを使用することによるEmod及び破断点ひずみの大きさは、粘度量とは独立して全て低くなる。粘度が上昇しても、PWP及びMWCOの値は修正できない。最も近い技術水準としてのNBP(比較例7~11)と比較して、TBPポリマー溶液は、より高い粘度を示し、引張試験(Emod及び破断点ひずみ)によると、より安定した膜を提供する。また、NBPでは、PWP及びMWCOの値を修正することはできない。
【0069】
【表3】
【0070】
不溶性の結晶性環状ポリスルホン二量体は、フィルタの目詰まりの原因となるか、又は膜表面の欠陥を引き起こす可能性がある膜製造の問題を溶液にもたらす(S.Savarier et.al,Desalination 2002,144,15-20)。TBP中のS6010のポリマー溶液は、時間の経過とともに、DMF中の溶液と比較して、よりきれいで透明である。環状二量体の含有量は、溶液の濁度によって示されるように、DMFと比較してTBPによってより良好に溶解する。時間の経過とともに、DMFでは溶液の濁度は増加するが、TBPでは安定したままである。
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
図1(A)は、本発明による実施例4の膜の走査型電子顕微鏡写真を示しており、上から下に向かって孔径が増加するスポンジ型下部構造によって支持された上に十分に確立されたナノ多孔性濾過層を示している。ダイの断面に欠陥やマクロボイドは見られない。図1(B)は、比較例4の膜の走査型電子顕微鏡写真を示し、引張試験の結果から分かるように、上部の濾過層を部分的に貫通し、機械的安定性の低下を引き起こす可能性がある多数のマクロボイドを示している。
【0075】
本発明に従ってTBPを用いて製造されたポリマー溶液及びそれから製造された膜は、欧州特許出願公開第A3756753号明細書に記載されているように溶媒としてNBP/2P(10/90~90/10重量/重量)及びTBP/2P(10/90~90/10重量/重量)混合物から製造された膜よりも改善された機械的安定性(より高いEモジュラス)を示した。また、TBP溶液から製造された膜は、TBP/2P(10/90~90/10重量/重量)混合物から製造された290~740kg/h mbarの膜と比較して、870kg/h mbarの高い透過率を示した。TBPで製造された膜は、64.4kDaのMWCO値を考慮すると同様の分離特性を示した(TBP/2P 10/90~90/10重量/重量 混合物:17.8~34.2kDa)。一般に、10~100kDaのMWCO値が限外濾過範囲を占める。
【0076】
【表7】
図1(A)】
図1(B)】
【国際調査報告】