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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(54)【発明の名称】電磁波を吸収する吸収体材料
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20231130BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231130BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20231130BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20231130BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H05K9/00 M
C08L101/00
C08L67/02
C08K3/01
C09D17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532719
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2021083228
(87)【国際公開番号】W WO2022112524
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】20210594.6
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】グッベルス,エリック
(72)【発明者】
【氏名】アイベック,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヘンニヒ,インゴルフ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J037
5E321
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AA021
4J002AC001
4J002BC061
4J002BD151
4J002BG061
4J002BG091
4J002CB001
4J002CC181
4J002CD001
4J002CE001
4J002CF051
4J002CF061
4J002CF071
4J002CG001
4J002CG011
4J002CH071
4J002CH091
4J002CL001
4J002CM021
4J002CM041
4J002CN011
4J002CN031
4J002CP031
4J002DA017
4J002DA037
4J002DA076
4J002DA086
4J002DA096
4J002DA106
4J002DA116
4J002DC006
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD116
4J002FD117
4J002FD170
4J002GQ02
4J037AA02
4J037AA04
4J037AA06
4J037CC06
4J037CC12
4J037CC16
4J037CC24
4J037CC27
4J037DD05
4J037DD09
4J037FF11
5E321AA21
5E321BB32
5E321BB34
5E321BB53
5E321GG11
(57)【要約】
本発明は、第1の導電性材料のアスペクト比(長さ:直径)が5以上である中実粒子と、第2の導電性材料のアスペクト比(長さ:直径)が5未満の粒子と、電気的に非導電性ポリマーとを含む、好ましくは1Ωcm超の体積抵抗率を有する電磁ミリ波吸収体材料であって、上記吸収体材料は、60GHz~200GHzの周波数領域の電磁波を吸収することが可能であることが好ましく、及び上記電磁ミリ波吸収体材料は、上記吸収体材料の全量を基準として、30質量%~93質量%の上記非導電性ポリマー、6.5質量%~10質量%の上記第1の導電性材料、
0.5質量%~0.9質量%の第2の導電性材料、及び0質量%~59.1質量%の1種以上の添加剤、を含む電磁ミリ波吸収体材料に関する。本発明はまた、その使用方法及び吸収方法並びに上記吸収体材料を含むセンサー装置にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電性材料のアスペクト比(長さ:直径)が5以上である中実粒子と、第2の導電性材料のアスペクト比(長さ:直径)が5未満の粒子と、電気的に非導電性ポリマーとを含む、好ましくは1Ωcm超の体積抵抗率を有する電磁ミリ波吸収体材料であって、 前記吸収体材料は、60GHz~200GHzの周波数領域の電磁波を吸収することが可能であることが好ましく、及び前記電磁ミリ波吸収体材料は、前記吸収体材料の全量を基準として、
30質量%~93質量%の前記電気的に非導電性ポリマー、
6.5質量%~10質量%の前記第1の導電性材料、
0.5質量%~0.9質量%の第2の導電性材料、及び
0質量%~59.1質量%の1種以上の添加剤、
を含むことを特徴とする、電磁ミリ波吸収体材料。
【請求項2】
前記第1の導電性材料の5以上のアスペクト比(長さ:直径)を有する中実粒子が、針状若しくは円筒状又は旋回チップ状形状を有する中実繊維状粒子である請求項1に記載の吸収体材料。
【請求項3】
前記第2の導電性材料のアスペクト比(長さ:直径)が5未満の粒子が、球状又は層状形状を有する非繊維質粒子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸収体材料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の吸収体材料であって、前記電気的に非導電性ポリマーが、サーモプラスト、熱可塑性エラストマー、熱硬化性又はガラス異性体であり、好ましくは熱可塑性材料であり、より好ましくは重縮合物であり、更に好ましくはポリエステルであり、更により好ましくはポリ(ブチレンテレフタレート)である吸収体材料。
【請求項5】
前記第1及び第2の導電性材料の粒子が前記吸収体材料内に均一に分布していることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の吸収体材料。
【請求項6】
前記吸収体材料が、射出成形、熱成形、圧縮成形又は3D印刷に処理される、請求項1~5の何れか1項に記載の吸収体材料。
【請求項7】
前記電磁ミリ波吸収体材料は、前記吸収体材料の全量を基準として、
40質量%~92.49質量%の前記電気的に非導電性ポリマー、
7.0質量%~9.0質量%の前記第1の第1の導電性材料、
0.51質量%~0.80質量%の第2の導電性材料、及び
0質量%~50.2質量%の1種以上の添加剤、
を含む、請求項1~6の何れか1項に記載の吸収体材料。
【請求項8】
前記電磁ミリ波吸収体材料は、前記吸収体材料の総量を基準として、
50質量%~91.99質量%の前記電気的に非導電性ポリマー、
7.5質量%~8.5質量%の第1の第1の導電性材料、
0.51質量%~0.70質量%の第2の導電性材料、及び
0質量%~40.8質量%の1種以上の添加剤
を含む、請求項1~7の何れか1項に記載の吸収体材料。
【請求項9】
前記第1及び第2の導電性材料が炭素又は金属であり、好ましくは前記第1の導電性材料が金属であり、前記第2の導電性材料が炭素である、請求項1~8の何れか1項に記載の吸収体材料。
【請求項10】
前記金属が亜鉛、ニッケル、銅、スズ、コバルト、マンガン、鉄、マグネシウム、鉛、クロム、ビスマス、銀、金、アルミニウム、チタン、パラジウム、白金、タンタル、又はこれらの合金、好ましくは鉄又は鉄合金である、請求項9に記載の吸収体材料。
【請求項11】
以下の必要条件の少なくとも1つが満たされている、請求項1~10の何れか1項に記載の吸収体材料:
- 前記第1の導電性材料は鉄又は鋼であり、及び前記第2の導電性材料が炭素であり;
- 第2の導電性材料の粒子はカーボンブラックであり;
- 鉄又は鉄合金材料はステンレス鋼であり;
- 第1の導電性材料の粒子は、0.01~100mmの長さを有し、好ましくは10μm~10mm、更により好ましくは10μm~1000μm、更により好ましくは50μm~750μm、更により好ましくは100μm~500μmの長さを有し、
- 第1の導電性材料の粒子は、0.1μm~100μm、好ましくは1μm~100μm、更により好ましくは2μm~70μm、更により好ましくは3μm~50μm、更により好ましくは5μm~40μmの直径を有する。
【請求項12】
前記1種以上の添加剤は、少なくとも1種の電気的に非導電性充填剤、好ましくは少なくとも1種の繊維状又は粒子状充填剤、より好ましくは少なくとも1種の繊維状充填剤、特にガラス繊維及び/又は他の添加剤、例えば酸化防止剤、潤滑剤、核剤、衝撃改質ポリマー又は他の加工助剤、好ましくは少なくとも潤滑剤から成る群から選ばれる、請求項1~11の何れか1項に記載の吸収体材料。
【請求項13】
レーダー吸収体部品又はレーダー吸収ハウジングの形態のレーダー吸収体を含む電子機器であって、前記レーダー吸収体が、
- 請求項1~12のいずれか1項に記載の少なくとも1つの吸収体材料であって、前記少なくとも1つの吸収体材料が前記レーダー吸収体内の前記電子機器内に含まれている吸収体材料;
- 60GHz~200GHzの周波数領域の電磁ミリ波を透過可能な少なくとも1つの透過領域;及び
- 透過領域を介して60GHz~200GHzの周波数領域の電磁ミリ波を検出し、任意に放射することが可能なセンサー、
を含む、電子機器。
【請求項14】
60GHz~200GHzの周波数領域における電磁ミリ波の吸収のために請求項1~12の何れか1項に記載の吸収体材料を使用する方法。
【請求項15】
60GHz~200GHzの周波数領域の電磁ミリ波を吸収する方法であって、60GHz~200GHzの周波数領域の電磁ミリ波を、請求項1~12のいずれか1項に記載の吸収体材料に照射する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の導電性材料のアスペクト比(長さ:直径)が5以上である中実粒子と、第2の導電性材料のアスペクト比(長さ:直径)が5未満の粒子と、電気的に非導電性ポリマーとを含む、好ましくは1Ωcm超の体積抵抗率を有する電磁ミリ波吸収体材料であって、上記吸収体材料は、60GHz~200GHzの周波数領域の電磁波を吸収することが可能であることが好ましく、及び上記電磁ミリ波吸収体材料は、上記吸収体材料の全量を基準として、30質量%~93質量%の上記非導電性ポリマー、6.5質量%~10質量%の上記第1の導電性材料、0.5質量%~0.9質量%の第2の導電性材料、及び0質量%~59.1質量%の1種以上の添加剤、を含む、電磁ミリ波吸収体材料に関する。本発明はまた、その使用方法、及び上記吸収体材料を含むセンサー装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
現在のエンジニアリングプラスチックは、60~90GHzの周波数範囲の電磁放射の吸収の適用には使用することが不可能である。現在の材料は、このタイプの放射線に対して透明(透過性)であるか、かなりの量を反射する。吸収材料の目的は、不要な電磁放射の吸収によって、センサーへの電磁干渉を下げることである。現在の解決策(溶液:solution)は、適切なサイズのサンプルを切り取る必要がある半製品として利用できる。これは、はるかに多くの廃棄物を生み出し、サンプルの形状が2次元の半製品に限定されるため、望ましくない方法でる。射出成形可能な溶液がはるかに望ましい。
【0003】
特許文献1(特開2017/118073 A2)には、20GHz以上の高周波領域の電磁波を吸収可能な電磁波吸収材料が記載されている。電磁波吸収材料は、絶縁材料と導電性材料とを含有し、及び体積抵抗率が10-2Qcm以上9×10Qcm未満である。この電磁波吸収材料は、カーボンナノチューブを含む膜として提供される。しかしナノチューブは毒性の理由から取り扱いが困難である。更に、カーボンナノチューブは高価である。カーボンナノチューブは、特許文献2(国際公開第2012/153063 A1)にも記載されている。電磁波吸着材料中の繊維状炭素ナノ構造は、特許文献3(EP 3397 039 A1)に記載されている。
【0004】
また特許文献4(US4 606848 A)には、自動運転に適さない低GHz周波数域の塗料の形態のフィルム状組成物が記載されており、入射マイクロ波放射を吸収・散乱するレーダ減衰塗料組成物であって、導電性繊維から作られた複数の双極子セグメントを内部に均一に分散させたバインダー組成を有することが記載されている。
【0005】
また特許文献5(国際公開第2010/109174 A1)は、1~15ミクロンの範囲の厚さ及び(バインダー中)1~20体積%の範囲の全炭素充填剤含有量(乾燥)を有する、平均最長寸法が20~1000ミクロンの範囲の細長い炭素元素を含む炭素充填剤を含む電磁放射線吸収組成物に由来する乾燥コーティングとしてのフィルム状組成物を記載している。
【0006】
また特許文献6(国際公開第2017/110096 A1)には、それぞれが炭素ナノ構造体及び絶縁性材料を含む複数の電磁波吸収層を有する電磁波吸収体が記載されている。
【0007】
非特許文献1(F. Quin et al., Journal of Applied Physics 111 , 061301 (2012))は、炭素質粒子で満たされたポリマー複合材料におけるマイクロ波吸収の概要を示している。
【0008】
特許文献6(US 2011/168440 A1)は、繊維シート基材を導電性ポリマーで被覆することによって得られ、及び特定の範囲内に表面抵抗率を有する導電性繊維シートを含有する電磁波吸収剤を記載している。導電性繊維シートは、不織布等の繊維シート基材にドーパントを含む酸化剤水溶液を含浸させた後、得られた繊維シート基材を導電性ポリマー用ガス状モノマーに接触させ、その上でモノマーを酸化重合させることにより形成される。
【0009】
特許文献7(特開2004/296758 A1)には、反射層上に吸収層を積層した板状のミリ波吸収体が記載されている。吸収層は、厚さが1.0mm~5.0mmであり、樹脂又はゴムの100質量部に対してカーボンブラックを1~30質量部含有している。
【0010】
特許文献8(特開2004/119450号公報A1)には、炭素短繊維と非導電性短繊維と樹脂を含む複合材料から作られた電波吸収層、及びこの電波吸収層の裏面に設けられた電波反射層とを2~20GHzの周波数範囲で記載している。
【0011】
特許文献9(特開平11-87117号公報)には、絶縁基材中に厚さ3μm以下の軟磁性平板粉末を分散させた、高周波電磁波吸収体が記載されている。
【0012】
非特許文献2(A. Dorigatoら、Advanced Polymer Technology 2017、1-11)は、ポリ(ブチレンテレフタレート)ナノ複合材料の電気抵抗率に対するカーボンブラックとカーボンナノチューブの相乗効果を記載している。
【0013】
非特許文献3(S.Motojimaら, Letters to the Editor, Carbon 41 (2003)2653-2689)は、 Wバンドにおけるカーボンマイクロコイル/PMMA複合ビーズの電磁波吸収特性を記載している(S.Motojimaら, 日本材料学会論文集 (2004), 29(2), 461- 464も参照)。
【0014】
更なる吸収材料は、特許文献10(国際公開第2010/109174 A1)、特許文献11(CN 104 262 929 A)、特許文献12(国際公開第2018/199008 A1)、特許文献13(CN 107 622 980 A)、ならびに非特許文献4(Q.J. Kruegerら、ポリマー技術の進歩22(2003)、96-111)に記載されている。
【0015】
特許文献14(国際特許出願WO2020/244994 A1)及び特許文献15(国際公開第2020/244995 A1)は、60GHz以上の周波数領域の電磁波を吸収する吸収体材料に有用な繊維状導電性粒子と非繊維状導電性粒子の混合を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2017/118073 A2
【特許文献2】国際公開第2012/153063 A1
【特許文献3】EP 3397 039 A1
【特許文献4】US4 606848 A
【特許文献5】国際公開第2010/109174 A1
【特許文献6】US 2011/168440 A1
【特許文献7】特開2004/296758 A1
【特許文献8】特開2004/119450号公報A1
【特許文献9】特開平11-87117号公報
【特許文献10】国際公開第2010/109174 A1
【特許文献11】CN 104 262 929 A
【特許文献12】国際公開第2018/199008 A1
【特許文献13】CN 107 622 980 A
【特許文献14】国際特許出願WO2020/244994 A1
【特許文献15】国際公開第2020/244995 A1
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】F. Quin et al., Journal of Applied Physics 111 , 061301 (2012)
【非特許文献2】A. Dorigatoら、Advanced Polymer Technology 2017、1-11
【非特許文献3】S.Motojimaら, Letters to the Editor, Carbon 41 (2003)2653-2689
【非特許文献4】Q.J. Kruegerら、ポリマー技術の進歩22(2003)、96-111
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら繊維状導電性粒子の使用は、それらの異方性形状のために異方性をもたらす。これらの繊維状粒子の整列は、部品加工中に流れ方向に発生する。この整列は、電界に対して平行又は垂直であり得る。この配向により、繊維状導電性粒子の有効表面が変化し、誘電特性が2方向に変化する。これにより、メルトフロー方向に対する電界の方向に依存して、粒子の異なる吸収効果がもたらされる。溶融物の流れ方向の関数としての材料の異方性は望ましくない。
【0019】
従って良好な吸収及び反射特性を示し、及び良好な機械的固有結合(例えば引張強度)を有するが、また上記の異方性効果を最小化する、構成要素として使用できる吸収体材料を提供する必要がある。
【0020】
従って、本発明の目的は、このような材料及びセンサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述の目的は、第1の導電性材料のアスペクト比(長さ:直径)が5以上である中実粒子と、第2の導電性材料のアスペクト比(長さ:直径)が5未満の粒子と、電気的に非導電性ポリマーとを含む、好ましくは1Ωcm超の体積抵抗率を有する電磁ミリ波吸収体材料であって、上記吸収体材料は、60GHz~200GHzの周波数領域の電磁波を吸収することが可能であることが好ましく、及び上記電磁ミリ波吸収体材料は、上記吸収体材料の全量を基準として、
30質量%~93質量%の上記電気的に非導電性ポリマー、
6.5質量%~10質量%の上記第1の導電性材料、
0.5質量%~0.9質量%の第2の導電性材料、及び
0質量%~59.1質量%の1種以上の添加剤、
を含む、電磁ミリ波吸収体材料によって達成される。
【0022】
上記目的は、レーダー吸収体部品又はレーダー吸収ハウジングの形態のレーダー吸収体を含む電子機器であって、上記レーダー吸収体が、
- 本発明の少なくとも1つの吸収体材料であって、上記少なくとも1つの吸収体材料が上記レーダー吸収体内の上記電子機器内に含まれている;
- 60GHz~200GHzの周波数領域の電磁ミリ波を透過可能な少なくとも1つの透過領域;及び
- 透過領域を介して60GHz~200GHzの周波数領域の電磁ミリ波を検出し、任意に放射することが可能なンサー、
を含む、電子機器によっても達成される。
【0023】
上記目的は、60GHz~200GHzの周波数領域における電磁ミリ波の吸収のために本発明の吸収体材料を使用する方法によっても達成される。
【0024】
上記目的は、60GHz~200GHzの周波数領域の電磁ミリ波を吸収する方法であって、60GHz~200GHzの周波数領域の電磁ミリ波を本発明の吸収体材料に照射する工程を含む方法によっても達成される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
予想外にも、この問題に対する解決策は、導電性充填剤の添加であり、これは好ましくは射出成形可能なマトリックスに添加され、ここで繊維状添加剤が特定の粒子と組合される。これは、同じ量の1種類の繊維を添加した場合には不可能であった吸収の増加をもたらす。この溶液は、60GHz~200GHzの周波数領域のさまざまなポリマーマトリックス中のさまざまな添加剤を使用した、高い反射の無い、及び高い吸収を伴う、低い透過性をもたらす。誘電体パラメータは強い周波数依存性を示すため、他の周波数範囲に拡張することは容易ではない。周波数範囲に依存して、異なる誘電緩和メカニズムが発生する。有利なことには、非導電性充填剤は、吸収及び反射特性に影響を与えることなく、繊維状又は粒子状であっても驚くべきことに引張強度を改善するために使用することが可能である。更に、第1及び第2の導電性粒子及び非導電性ポリマーの量の狭い範囲内では、PCT/EP2020/0646697から知られている組成物と比較して異方性効果を低減できることがわかった。
【0026】
本発明の吸収体材料は、60GHz~200GHzの周波数領域の電磁波を吸収できることが好ましく、この周波数領域は、70GHz~150GHzの範囲がより好ましく、71GHz~90GHzの範囲が更に好ましく、76GHz~81GHzの範囲が更に好ましい。このように、本発明の吸収体材料は、電磁ミリ波吸収体を示す。
【0027】
本発明の吸収体材料は、非導電性ポリマー、第1及び第2の導電性材料、及び任意に1種以上の添加剤を含む。従って本発明の吸収体材料は、追加の成分を含むことが可能であり、及び非導電性ポリマー、第1及び前記第2の導電性材料及び任意に1種以上の添加剤の質量%の合計は、100質量%である。
【0028】
しかしながら吸収体材料は、非導電性ポリマー、第1及び第2の導電性材料からなることが可能である。この場合、これら3つの成分の質量%は合計して100質量%になる。吸収体材料は、上記非導電性ポリマー、上記第1及び前記第2の導電性材料、及び上記1種又は2種以上の添加剤からなることも可能であり、このことが好ましい。この場合、非導電性ポリマー、第1及び第2の導電性材料及び1種以上の添加剤の合計が100質量%になる。
【0029】
本発明の吸収体材料は、第1の導電性材料の中実粒子を含む。「中実(solid)」という用語は、粒子がカーボンナノチューブのようなパイプ状のチャネルを有さないことを意味する。疑義を避けるために、「中実」という用語は、多孔質材料を排除すると解釈されるべきではない。中実という用語は、特にカーボンナノチューブを排除するものとして定義される。
【0030】
第1の導電性材料の中実粒子は、少なくとも5のアスペクト比(長さ:直径)を有する。粒子が直線形状である場合、長さは縦方向の距離と関連する。しかしながら、粒子は湾曲又はらせん状形状を示すこともできる。このような幾何学には、カウンター長さが使用される。好ましくは中実粒子は、少なくとも7、より好ましくは少なくとも10のアスペクト比(長さ:直径)を有する。好ましくは少なくとも第1の導電性材料は、針状又は円筒形状又は回転チップ様形状を有する中実繊維粒子である。中実粒子は、規則的又は不規則な形状を有するべきである。アスペクト比が5未満の針状又は円筒形状又は旋回チップ状形状を有する中実繊維粒子が吸収体材料中に存在し得る。
【0031】
本発明の吸収体材料は、第2の導電性材料の粒子も含む。第1及び第2の導電性材料は、同一又は異なるものであり得る。しかしながら、第2の導電性材料の粒子と第1の導電性物質の粒子は異なる形状を示すため、区別することができる。
【0032】
第2の導電性材料の粒子は、アスペクト比(長さ:直径)が5未満、好ましくは3未満である。好ましくは、粒子は球状又は層状形状を有する非繊維状粒子である。
【0033】
本発明の吸収体材料は、電気的に非導電性のポリマーをも含有する。このポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、又は3つ、4つ又は5つのホモ及び/又はコポリマーのような2つ以上のものの混合物であり得る。好ましくは、電気的に非導電性のポリマーは、サーモプラスト、熱可塑性エラストマー、熱硬化性又はビトリマー(vitrimer)、好ましくは熱可塑性材料であり、及びより好ましくは重縮合物であり、更に好ましくはポリエステルであり、及び最も好ましくはポリ(ブチレンテレフタレート)である。
【0034】
電気的に非導電性のポリマーの例としては、エポキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレン、脂肪族ポリケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、シアネートエステル、テレフタレート、ポリ(ブチレンテレフタレート)又はポリ(エチレンテレフタレート)又はポリ(トリメチレンテレフタレート)のようなテレフタレート、ポリ(エチレンナフタレート)、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル、ポリアニリン、フェノール樹脂、ポリピロール、ポリメチルメタクリレート、リン変性エポキシ樹脂、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリテトラフルオロエチレン、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリプロピレン若しくはポリエトイレン等のポリオレフィン又はこれらのコポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、アクリロニトリルスチレンアクリレート、スチレンアクリロニトリル、又は上記ポリマーの2種以上の混合物が挙げられる。
【0035】
好ましくは、第1及び第2の導電性材料の粒子は、吸収体材料中に均一に分布している。これは、ポリマーが溶融形態又は溶媒の有無にかかわらず、すなわち均一な分散液として、又は乾燥形態である場合に、成分を単に混合することによって達成することが可能である。
【0036】
吸収体材料は、センサー装置の要素のような構造要素を表すために成形することが可能である。従って好ましい実施形態では、本発明の吸収体材料は、射出成形、熱成形、圧縮成形又は3D印刷の対象となるが、これは好ましくは射出成形である。成形の方法は当技術分野で周知であり、当技術分野での実践者は、本発明の吸収体材料を成形要素として得るために方法パラメータを容易に採用することが可能である。
【0037】
好ましくは、上記電磁ミリ波吸収体材料は、上記吸収体材料の全量を基準として、
40質量%~92.49質量%の上記電気的に非導電性ポリマー、
7.0質量%~9.0質量%の上記第1の第1の導電性材料、
0.51質量%~0.80質量%の第2の導電性材料、及び
0質量%~50.2質量%の1種以上の添加剤、
を含む。
【0038】
より好ましくは、上記電磁ミリ波吸収体材料は、上記吸収体材料の総量を基準として、
50質量%~91.99質量%の上記電気的に非導電性ポリマー、
7.5質量%~8.5質量%の第1の第1の導電性材料、
0.51質量%~0.70質量%の第2の導電性材料、及び
0質量%~40.8質量%の1種以上の添加剤
を含む。
【0039】
更により好ましくは、上記電磁ミリ波吸収体材料は、上記吸収体材料の総量を基準として、
60質量%~91.99質量%の前記電気的に非導電性ポリマー、
7.5質量%~8.5質量%の第1の第1の導電性材料、
0.51質量%~0.70質量%の第2の導電性材料、及び
0質量%~30.8質量%の1種以上の添加剤
を含む。
【0040】
更により好ましくは、上記電磁ミリ波吸収体材料は、上記吸収体材料の総量を基準として、
70質量%~91.95質量%の上記電気的に非導電性ポリマー、
7.5質量%~8.5質量%の第1の第1の導電性材料、
0.55質量%~0.65質量%の第2の導電性材料、及び
0質量%~20.85質量%の1種以上の添加剤
を含む。
【0041】
更により好ましくは、上記電磁ミリ波吸収体材料は、上記吸収体材料の総量を基準として、
90.4質量%~91.4質量%の上記電気的に非導電性ポリマー、
8.0質量%の第1の第1の導電性材料、
0.6の第2の導電性材料、及び
0質量%~1質量%の1種以上の添加剤
を含む。
【0042】
好ましくは、第1及び第2の導電性材料は、炭素又は金属である。従って本発明の第1の局面において、第1及び第2の導電性材料は炭素である。本発明の第2の局面において、第1及び第2の導電性材料は金属である。本発明の第3の局面において、第1の導電性材料は金属であり、及び第2の導電性材料は炭素である。本発明の第4の局面として、第1の導電性物質が炭素であり、第2の導電性材料が金属である。第3の局面が最も好ましい。
【0043】
好ましくは金属は、亜鉛、ニッケル、銅、スズ、コバルト、マンガン、鉄、マグネシウム、鉛、クロム、ビスマス、銀、金、アルミニウム、チタン、パラジウム、白金、タンタル、又はこれらの合金であり、好ましくは鉄又は合金、特に鉄合金である。更により好ましくは、鉄又は鉄合金材料はステンレス鋼である。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、上記第1及び上記第2の導電性材料は異なり、より好ましくは上記第1の導電性材料は鉄又は鋼であり、及び上記第2の導電性材料は炭素である。
【0045】
好ましくは、第2の導電性材料の粒子はカーボンブラックである。
【0046】
好ましくは、第1の導電性材料の粒子は、0.01~100mmの長さを有し、好ましくは10μm~1mm、更により好ましくは10μm~1000μm、更により好ましくは50μm~750μm、更により好ましくは100μm~500μmの長さを有する。
【0047】
好ましくは、第1の導電性材料の粒子は、直径が0.1μm~100μm、好ましくは1μm~100μm、更により好ましくは2μm~70μm、更により好ましくは3μm~50μm、更により好ましくは5μm~40μmである。
【0048】
本発明の吸収体材料は、任意に1種以上の添加剤を含有する。好ましくは1種以上の添加剤は、少なくとも1種の電気的に非導電性充填剤、好ましくは少なくとも1種の繊維状又は粒子状充填剤、より好ましくは少なくとも1種の繊維状充填剤、特にガラス繊維及び/又は他の添加剤、例えば酸化防止剤、滑剤、核形成剤、衝撃改質ポリマー又は他の加工助剤、好ましくは少なくとも潤滑剤からなる群から選択される。1種以上の添加剤が含まれる場合、それらの量は一般に少なくとも0.01質量%である。
【0049】
本発明の更なる実施形態において、吸収体材料は更に、少なくとも1種の電気的に非導電性充填剤、好ましくは少なくとも1種の繊維状又は粒子状充填剤、より好ましくは少なくとも1種の繊維状充填剤、特にガラス繊維を含有することができる。
【0050】
本発明の一実施形態において本発明の吸収体材料は、更に、更なる充填剤成分を1種又は2種以上、2種、3種又は4種等、更なる充填剤と共に含有する。充填剤は、第1及び第2の導電性材料及び非導電性ポリマーとは異なる。本発明のより特定な実施形態において、充填剤成分は、少なくとも1種の電気的に非導電性充填剤、好ましくは繊維状又は粒子状の充填剤を含む。
【0051】
例示的な充填剤は、ガラス繊維、ガラスビーズ、非晶質シリカ、アスベスト、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、チョーク、粉末石英、雲母、硫酸バリウム及び長石である。好ましくは充填剤成分は、ガラス繊維を含有するか、又はガラス繊維からなる。典型的には追加の充填成分は、本発明の吸収体材料中に、それぞれ吸収体材料の総量に基づいて、最大59.1質量%、特に最大50.2質量%及び典型的には少なくとも0.01質量%、好ましくは少なくとも0.1質量%の量で存在することが可能である。
【0052】
記載しても良い好ましい繊維状非導電性充填剤としては、アラミド繊維や玄武岩繊維、木質繊維、石英繊維、酸化アルミニウム繊維が挙げられ、Eガラスの形態のガラス繊維が特に好ましい。これらはロービングとして、又は市販されているチョップドグラスの形態で使用しても良い。
【0053】
繊維状充填剤は、特に熱可塑性との適合性を改善するために、シラン及び更なる化合物で表面前処理されていて良い。
【0054】
好適なシラン化合物は、式(X-(CH-Si-(0-C2m+14-kを有し、ここで、
Xは-NH、-OH又はオキシラニルであり、
nは2~10の整数、好ましくは3又は4であり、
mは1~5の整数、好ましくは1又は2であり、及び
kは1~3の整数、好ましくは1である。
【0055】
好ましいシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン及びアミノブチルトリエトキシシランであり、また置換基Xとしてグリシジル基を含有する対応するシランでもある。
【0056】
表面コーティングに一般的に使用され得るシラン化合物の量は、繊維状充填剤の全量に対して0.05~5質量%であり、好ましくは0.1~1質量%、特に0.2~0.8質量%である。
【0057】
針状ミネラル充填剤も適している。
【0058】
本発明の目的のために、針状ミネラル充填剤は、強く発達した針状特性を有する無機充填剤である。一例は針状ウォラストナイト(珪灰石)である。鉱物は好ましくは8:1~35:1、好ましくは8:1~11:1のアスペクト比を有する。上記無機充填剤は所望により、上述したシラン化合物で前処理されていてもよいが、その前処理は必須ではない。
【0059】
言及しても良い他の充填剤は、カオリン、焼成カオリン、タルク及びチョークである。
【0060】
本発明の吸収体材料は、充填剤成分の更なる充填剤として通常の成形加工助剤、例えば安定剤、酸化遅延剤、紫外線による分解や熱による分解に対抗作用する薬剤、滑剤や離型剤、染料や顔料などの着色剤、核剤、可塑剤などを含むことが可能である。
【0061】
酸化遅延剤及び熱安定剤の、記載して良い例は、立体障害フェノール及び/又は亜リン酸塩、ヒドロキノン、芳香族第二級アミン、例えばジフェニルアミン、これらの基の様々な置換体、及びこれらの混合物で、その濃度は本発明の吸収体材料の質量に基づいて、最大1.5質量%の濃度である。
【0062】
記載しても良く、及び吸収体材料に基づいて2質量%以下の量で一般的に使用される例示的なUV安定剤は、種々の置換レゾルシノール、サリチル酸塩、ベンゾトリアゾール、障害アミン光安定剤及びベンゾフェノンである。
【0063】
添加しても良い着色剤は、二酸化チタン、群青、酸化鉄、及びカーボンブラック等の無機顔料、及びフタロシアニン、キナクリドン及びペリレンなどの有機顔料、及びニグロシン及びアントラキノン等の染料でもある。
【0064】
使用しても良い核剤は、弱酸のナトリウム塩であり、及び好ましくはタルクである。
【0065】
1.5質量%までの量で使用しても良い潤滑剤及び離型剤は、当該技術分野において公知である。好ましくは、長鎖脂肪酸(例えばステアリン酸又はベヘン酸)、これらの塩(例えばステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛)、これらと脂肪酸アルコール又は多官能性アルコールとのエステル(例えばグリセリン、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン)、二官能性アミン(例えばエチレンジアミン)からのアミド、又はモンタンワックス(28~32個の炭素原子の鎖長を有する直鎖飽和カルボン酸の混合物)、又はカルシウムモンタン酸塩、又はモンタン酸ナトリウム、又は酸化された低分子量ポリエチレンワックスである。
【0066】
好ましくは、潤滑剤は、電磁ミリ波吸収体材料中に、吸収体材料の全量に対して0.01質量%~1質量%の量で存在し、好ましくは、0.1質量%~1質量%、より好ましくは0.3~0.8質量%の量で存在する。
【0067】
使用しても良い加水分解安定剤は、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ポリカルボジイミド(例えば、ルビオ(登録商標)ハイドロスタブ2) 等のカルボジイミド、又はアジピン酸ビス(3,4-エポキシシルコヘキシルメチル)エステル、トリグリシジルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のエポキシド、エポキシド化植物油又はビスフェノールA及びエピクロロヒドリンのプレポリマー(特にポリエステルが電気的に非導電性ポリマーである場合に必要)である。
【0068】
記載しても良い可塑剤の例は、ジオクチルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、炭化水素油及びN-(n-ブチル)ベンゼン-スルホンアミドである。
【0069】
本発明の吸収体材料中に含んでも良い適切な添加剤は、US 2003/195296 A1に記載されている。
【0070】
添加剤は、立体障害フェノール類であってもよい。好適な立体障害フェノールは原則として、フェノール構造を有し、且つフェノール環上に少なくとも1つの嵩高い基(bulky group)を有する化合物である。
【0071】
その使用が好ましい化合物の例は、式
【化1】
(但し:
及びRが、アルキル、置換アルキル、又は置換トリアゾール基であり、ここでR及びRが同一であっても、又は異なっていても良く、及びRがアルキル、置換アルキル、アルコキシ、又は置換アミノである)
のものである。
【0072】
記載したタイプの抗酸化剤は、例えばDE-A 27 02 661(米国特許第4,360,617号)に記載されている。
【0073】
好ましい立体障害フェノールの他の群は、置換ベンゼンカルボンル酸、特に置換ベンゼンプロピオン酸から誘導される。
【0074】
このクラスの特に好ましい化合物は、式
【化2】
(但し、R、R、R及びRが相互に独立して、置換を有し得るC-C-アルキル(これらの少なくとも1つは嵩高い基である)であり、及びRは、1~10個の炭素原子を有し、及びその主鎖にC-0結合を有しても良い、2価の脂肪族基である。)
を有する。好ましい化合物は、
【化3】
及び
【化4】
である。
【0075】
言及すべき立体障害フェノールの例は、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジステアリル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、2,6,7-トリオキサ-1-ホスファビシクロ[2.2.2]オクト-4-イルメチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル-3,5-ジ-テアリルチオトリアジルアミン、2-(2’-ヒドロキシ-3’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシメチルフェノール、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’-メチレンビス[2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルジメチルチルアミン及びN,N‘-ヘキサメチレンビス-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミドである。
【0076】
特に有効であることが証明され、及び従って好ましく使用される化合物は、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)、1,6-ヘキサンジオールビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。
【0077】
添加剤としての酸化防止剤(酸化防止剤は、個々に又は混合物として使用することが可能である)の存在量は、存在する場合、通常、吸収体材料の総質量に基づいて最大2質量%、好ましくは0.005~2質量%、特に0.1~1質量%である。
【0078】
特に有利であることが証明されている立体障害フェノールはある場合には、特に長期間にわたる拡散光中での保存上の色安定性を優位にするものとして、フェノール性ヒドロキシルのオルト位に1個超の立体障害性基を有さない。
【0079】
添加剤として使用可能なポリアミドは、それ自体公知である。例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Vol. 11, John Wiley & Sons, Inc., 1988, pp. 315489に記載されているような、部分的に結晶性又は非晶性の樹脂を使用しても良い。ここでのポリアミドの融点は225℃未満が好ましく、215℃未満が特に好ましい。
【0080】
これらの例は、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカンジアミド、ポリ-11-アミノウンデカンアミド及びビス(p-アミノシクロヘキシル)メチルドデカンジアミド、及びラクタムの開環によって得られる生成物であり、例えばポリラウロラクタムである。他の適切なポリアミドは、酸成分としてのテレフタル酸又はイソフタル酸、及びジアミン成分としてのトリメチルヘキサメチレンジアミン又はビス(p-アミノシクロヘキシル)プロパン、及び上記のポリマー又はその成分の2つ以上を共重合することによって調製されるポリアミドベース樹脂に基づくものである。
【0081】
記載しても良い特に好適なポリアミドは、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、p,p’-ジアミノジシクロヘキシルメタン及びアジピン酸に基づくコポリアミドである。これらの一例は、BASF SEがUltramid(登録商標)1Cという名前で販売している製品である。
【0082】
他の適切なポリアミドは、Elvamide(登録商標)という名前でDu Pontによって販売されている。
【0083】
これらのポリアミドの調製は、上記のテキストにも記載されている。末端酸基に対する末端アミノ基の比率は、出発化合物のモル比を変えることによって制御可能である。
【0084】
本発明の成形用組成物におけるポリアミドの割合は、2質量%までであり、好ましくは0.005~1.99質量%、好ましくは0.01~0.08質量%である。
【0085】
使用されるポリアミドの分散性は場合によっては、2,2-ジ(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)及びエピクロロヒドリンから製造された重縮合生成物の併用によって改善され得る。
【0086】
エピクロロヒドリンとビスフェノールAから作られたこのタイプの縮合生成物は、商業的に入手可能である。それらの調製のための方法も当業者に公知である。重縮合物の分子量は、広い範囲内で変化し得る。原則として、市販のグレードのいずれもが適している。
【0087】
添加剤として存在しても良い他の安定剤は、吸収体材料の総質量に基づいて、最大2.0質量%、好ましくは0.005~0.5質量%、特に0.01~0.3質量%の量で、1種以上のアルカリ土類金属シリケート及び/又はアルカリ土類金属グリセロリン酸塩である。ケイ酸塩及びグリセロリン酸塩を形成するのに好ましいことが証明されているアルカリ土類金属は、カルシウム及び特に、マグネシウムである。有用な化合物は、グリセロリン酸カルシウム、好ましくはグリセロリン酸マグネシウム及び/又はケイ酸カルシウム、好ましくはケイ酸マグネシウムである。ここで特に好ましいアルカリ土類シリケートは、式Me ・x S1O・ n HOにより記載したもので、ここでMeは、アルカリ土類金属、好ましくはカルシウム又は特にマグネシウムであり、xは1.4~10の数であり、好ましくは1.4~6であり、nは0以上、好ましくは0~8である。
【0088】
化合物は、細かく粉砕された形態で有利に使用される。特に好適な製品は、平均粒径が100μm未満、好ましくは50μm未満である。
【0089】
ケイ酸カルシウム及びケイ酸マグネシウム、及び/又はグリセロリン酸カルシウム及びグリセロリン酸マグネシウムの使用が好ましい。これらの例は、以下の特性値によってより正確に定義されても良い:
ケイ酸カルシウム及びケイ酸マグネシウム、それぞれ:CaO及びMgOの含有量、それぞれ:4~32質量%、好ましくは8~30質量%及び特に12~25質量%、CaOに対するS1O及びMgOに対するS1Oの比率、それぞれ(mol/mol):1.4~10、好ましくは1.4~6、特に1.5~4、かさ密度:10~80g/100ml、好ましくは10~40g/100ml、及び平均粒子サイズ:100μm未満、好ましくは50μm未満。
【0090】
グリセロリン酸カルシウム及びグリセロリン酸マグネシウム、それぞれ:CaO及びMgOの含有量は、それぞれ:70質量%以上、好ましくは80質量%以上、灰分上の残留物:45~65質量%、融点:300℃超、及び平均粒径:100μm未満、好ましくは50μm未満である。
【0091】
本発明の吸収体材料中に存在しても良い添加剤として好ましい滑剤(潤滑剤)は、5質量%以下、好ましくは0.09~2、及び特に0.1~0.7質量%であり、及び10~40個の炭素原子、好ましくは16~22個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の不飽和脂肪族カルボン酸の、2~40個、好ましくは2~6個の炭素原子を有するポリオールとの又は飽和脂肪族アルコール又はアミンとの又はアルコール及びエチレンオキシドから誘導されるエーテルとの少なくとも1種のエステル又はアミドである。
【0092】
カルボン酸は一塩基又は二塩基であり得る。記載しても良い例は、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカン二酸、ベヘン酸、及び特に好ましくは、ステアリン酸、カプリン酸及びモンタン酸(30~40個の炭素原子を有する脂肪酸の混合物)である。
【0093】
上記脂肪族アルコールは、一価~四価であっても良い。アルコールの例は、n-ブタノール、n-オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール及びペンタエリスリトールであり、及び好ましくはグリセロール及びペンタエリスリトールである。
【0094】
上記脂肪族アミンは、一塩基性~三塩基性であっても良い。これらの例は、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及びジ(6-アミノヘキシル)アミンであり、特に好ましくはエチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンである。それに対応して、好ましいエステル及びアミドは、グリセロールジステアレート、グリセロールトリステアレート、エチレンジアンモニウムジステアレート、グリセロールモノパルミテート、グリセロールトリラウレート、グリセロールモノベヘン酸及びペンタエリスリトールテトラステアレートである。
【0095】
また異なるエステル又はアミド又はエステルとアミドを組み合わせた混合物を、任意の所望の混合比で使用することも可能である。
【0096】
他の好適な化合物は、一塩基性又は多塩基性カルボン酸、好ましくは脂肪酸でエステル化されているか、又はエーテル化されている、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールである。適切な製品は、Henkel KGaAのLoxiol(登録商標)EP728等の市販品として入手可能である。
【0097】
アルコール及びエチレンオキシドから誘導される好ましいエーテルは、式RO(CHCHO)Hを有し、ここでRは6~40個の炭素原子を有するアルキルであり、nは1以上の整数である。
【0098】
Rは特に好ましくは、nが約50の飽和C16~C18脂肪アルコールであり、Lutensol(登録商標)AT50としてBASFから商業的に入手可能である。
【0099】
本発明の吸収体材料は、メラミン-ホルムアルデヒド縮合物の0~5%、好ましくは0.001~5質量%、特に好ましくは0.01~3質量%及び特に0.05~1質量%を含んでも良い。これは好ましくは、微粉状の架橋された水不溶性沈殿縮合物である。ホルマルデハイドのメラミンに対するモル比は、好ましくは1.2:1~10:1、特に1.2:1~2:1である。このタイプの凝縮物の構造及びこれらの調製方法は、DE-A 2540 207に見出される。
【0100】
本発明の吸収体材料は、0.0001~1質量%、好ましくは0.001~0.8質量%、及び特に0.01~0.3質量%の核剤(nucleating agent)を添加剤として含んでも良い。
【0101】
可能な核剤は、任意の公知の化合物、例えばメラミンシアヌレート、ホウ素化合物、例えば窒化ホウ素、シリカ、顔料、例えばヘリオゲンブルー(銅フタロシアニン顔料;BASF SEの登録商標)、又は分岐ポリオキシメチレンであり、これらはこれらの少量で核形成作用を有する。
【0102】
特にタルクは核剤として使用され、及びこれはMg[(OH) / Si10]又はMgO.4SiO.HOの水和ケイ酸マグネシウムである。これは3層フィロケイ酸塩と称され、及び三斜晶系、単斜晶系、又は菱形の結晶構造とラメラの外観を有している。存在しても良い他の微量元素は、Mn、Ti、Cr、Ni、Na、及びKであり、一部のOH基はフッ化物に置き換えられていても良い。
【0103】
特に好ましいのは、粒径の100%が<20μmであるタルクの使用である。粒度分布は通常、沈降分析によって決定され、及び好ましくは以下のものである:
<20μm100質量%
<10μm99質量%
<5μm85質量%
<3μm60質量%
<2μm43質量%
【0104】
このタイプの製品は、Micro-Talc I.T. extra(Norwegian Talc Miner als)として市販されている。
【0105】
記載しても良い充填剤の例は、チタン酸カリウムウィスカー、炭素繊維及び好ましくはガラス繊維である。ガラス繊維は、例えば、低アルカリEガラスから作製され、及び直径5~200μm、好ましくは8~50μmのガラス織物、マット、不織布及び/又はガラスフィラメントロービング又はチョップドガラスフィラメントの形態で使用することが可能ある。それらが組み込まれた後、繊維状充填剤は、好ましくは0.05~1μm、特に0.1~0.5μmの平均長さを有する。
【0106】
他の適切な充填剤の例は、炭酸カルシウム及びガラスビーズであり、好ましくは粉砕形態で、又はこれらの充填剤の混合物である。
【0107】
記載しても良い他の添加剤は、衝撃改質ポリマー(以下、エラストマーポリマー又はエラストマーとも称される)である。
【0108】
このようなエラストマーの好ましいタイプは、エチレン-プロピレン(EPM)及びエチレン-プロピレン-ジエン(EPDM)ゴムとして知られているものである。
【0109】
EPMゴムは一般に実質的に残留二重結合を持たないが、EPDMゴムは炭素原子100個あたり1~20個の二重結合を有し得る。
【0110】
EPDMゴム用のジエンモノマーの記載して良い例は、共役ジエン、例えばイソプレン及びブタジエン、5~25個の炭素を有する非共役ジエン、例えば1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエン及び1,4-オクタジエン、環状ジエン、例えばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン及びジシクロペンタジエン、及びまたアルケニルノルボルネン、例えば、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ブチリデン-2-ノルボルネン、2-メタリル-5-ノルボルネン及び2-イソプロペニル-5-ノルボルネン、及トリシクロジエン、例えば3-メチル-トリシクロ「5.2.1.0.2.6」-3,8-デカジエン、又はこれらの混合物である。好ましいのは、1,5-ヘキサジエン-5-エチリデンノルボルネン及びジシクロペンタジエンである。EPDMゴムのジエン濃度は、ゴムの全質量に対して好ましくは0.5~50質量%、特に1~8質量%である。
【0111】
EPOMゴムは、他のモノマー、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸エステル、又は(メタ)アクリルアミドでグラフトされていることが好ましくても良い。
【0112】
エチレンと(メタ)アクリル酸のエステルとのコポリマーは、好ましいゴムの他の群である。ゴムには、エポキシ基を有するモノマーが含まれていても良い。エポキシ基を含有するこれらのモノマーは好ましくは、モノマー混合物に、エポキシ基を有し、及び式I又はII
【化5】
(但し、
~R10は、水素又は1~6個の炭素原子を有するアルキルであり、及びmは0~20の整数であり、gは0~10の整数であり、及びpは0~5の整数である)を有するモノマーを加えることによってゴムに導入される。
【0113】
~Rは、好ましくは水素であり、ここでmは0又は1であり、及びgは1である。対応する化合物は、アリルグリシジルエーテル及びビニルグリシジルエーテルである。
【0114】
式IIの好ましい化合物は、エポキシ基を有するアクリル酸及び/又はメタクリル酸エステル、例えばアクリル酸グリシジル及びグリシジルメタクリレートである。
【0115】
コポリマーは有利には、50~98質量%のエチレン、0~20質量%のエポキシ基を有するモノマーから構成され、ここで残りは(メタ)アクリル酸エステルである。
【0116】
特に好ましくは、50~98質量%、特に55~95質量%のエチレン、特に0.3~20質量%のグリシジルアクリレイト、及び/又は0~40質量%、特に0.1~20質量%のグリシジルメタクリレートから製造されるコポリマー、及び1~50質量%、特に10~40質量%のn-ブチルアクリレート及び/又は2-エチルヘキシルアクリレートから製造されるコポリマーである。
【0117】
他の好ましい(メタ)アクリレートは、メチル、エチル、プロピル、イソブチル及びtert-ブチルエステルである。
【0118】
これら以外に、使用しても良いコモノマーは、ビニルエステル及びビニルエーテルである。
【0119】
上記のエチレン系コポリマーは、それ自体公知の方法により、好ましくは高圧及び高温でのランダム共重合によって調製されても良い。適切な方法(プロセス)は周知である。
【0120】
好ましいエラストマーはまた、その調製が例えば、モノグラフ「Emulsion Polymerization」においてBlackleyによって記載されているエマルジョンポリマーを含む。使用しても良い乳化剤及び触媒は、それ自体公知である。
【0121】
原則的には均質構造のエラストマー又はシェル構造を有するエラストマーを用いることが可能である。シェル型構造は、とりわけ個々のモノマーの添加順序によって決定される。ポリマーの形態(morphology)もこの添加の順序の影響を受ける。
【0122】
ここで記載しても良いモノマーは、エラストマーのゴムフラクションの調製のための単なる例として、アクリレート、例えばn-ブチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレート、及び対応するメタクリレート、及びブタジエン及びイソプレンならびにこれらの混合物でもある。これらのモノマーは他のモノマー、例えばスチレン、アクリロニトリル、ビニルエーテル、及び他のアクリレート又はメタクリレート、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート又はプロピルアクリレートと共重合しても良い。
【0123】
エラストマーの軟質相又はゴム相(ガラス転移温度が0℃未満)は、コア、外部エンベロープ、又は中間シェル(構造が2つ超のシェルを有するエラストマーの場合)であっても良い。エラストマーが複数のシェルを有する場合、複数のシェルがゴム相で構成されることも可能である。
【0124】
ゴム相以外にエラストマーの構造中に1つ以上の硬質成分(ガラス転移温度が20℃を超える)が含まれている場合、これらは一般に、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルファ.-メチルスチレン、p-メチルスチレン、又はアクリレート若しくはメタクリレート、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート若しくはエチルメタクリレートを主成分モノマーとして重合することによって調製される。これら以外にも、比較的少ない割合の他のコモノマーを使用することも可能である。
【0125】
表面に反応性基を有するエマルジョンポリマーを使用することが、場合によっては有利であることが証明されている。このタイプの基の例は、エポキシ基、アミノ基及びアミド基、ならびに式
【化6】
(但し、
15が、水素又はC-~C-アルキルであり、R16が水素、C-~C-アルキル又はアリール、特にフェニルであり、R17が、水素、C-~C10-アルキル、C-~C12-アリール又は-OR18である)
のモノマーの付随する使用によって導入されても良い官能基である。
【0126】
18は、C-~C-アルキル又はC-~C12-アリールであり、所望によりO-又はN-含有基よって置換されていて良く、Xは化学結合、C-~C10-アルキレン又はC-~C12-アリールであるか、又は、
【化7】
である。
【0127】
EP-A 208187に記載のグラフトモノマーも、表面に反応性基を導入するのに適している。
【0128】
記載しても良い他の例はアクリルアミド、メタクリルアミド及び置換アクリレート又はメタクリレート、例えば(N-tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート、(N,N-ジメチルアミノ)エチルアクリレート、(N,N-ジメチルアミノ)メチルアクリレート及び(N,N-ジエチルアミノ)エチルアクリレートである。
【0129】
またゴム相の粒子は架橋されていてもよい。架橋モノマーの例は、1,3-ブタジエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ブタンジオールジアクリレート及びジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレートであり、またEPA50265に記載の化合物でもある。
【0130】
また、グラフト連結モノマー(graft-linking monomer)として知られるモノマー、すなわち重合時に異なる速度で反応する2つ以上の重合性二重結合を有するモノマーを用いることも可能である。少なくとも1つの反応性基が他のモノマーとほぼ同じ速度で重合する一方で、他の反応性基(又は複数の反応性基)が、例えば、著しくゆっくりと重合する化合物の使用が好ましい。異なる重合率は、ゴム中に一定の割合の不飽和二重結合を生じさせる。次いで別の相がこのタイプのゴムにグラフトされる場合、ゴム中に存在する二重結合の少なくとも一部は、グラフトモノマーと反応して化学結合を形成する、すなわちグラフトされた相は、グラフト基部に少なくともある程度の化学結合を有する。
【0131】
この種のグラフト連結モノマーの例は、アリル基を含有するモノマー、特にエチレン性不飽和カルボン酸のアリルエステル、例えばアクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル及びイタコン酸ジアリル、ならびにこれらのジカルボン酸の対応するモノアリル化合物である。これら以外にも、他の適したグラフト連結モノマーが多種多様に存在する。更なる詳細については、ここで例えば米国特許第4,148,846号を参照することが可能である。
【0132】
これらの架橋性モノマーの割合は、添加剤の総量に対して、一般に5質量%以下、好ましくは3質量%以下である。
【0133】
いくつかの好ましいエマルションポリマーを以下に列挙する。最初に、コアを有し、少なくとも1つの外殻及び以下の構造を有するグラフトポリマーについて記載する:
【0134】
コア用のモノマー
1,3-ブタジエン、イソプレン、n-ブチルアクリレート、エチルヘキシル-アクリレート、又はこれらの混合物であり、適切な場合には架橋モノマーが付随する。
【0135】
外皮(envelope)用のモノマー
スチレン、クリロニトリル、(メト)アクリレートであり、適切な場合には、ここに記載したように、反応性基を有する。
【0136】
その構造が複数のシェルを有するグラフトポリマーの代わりに、1,3-ブタジエン、イソプレン及びn-ブチルアクリレートから作られた、又はこれらのコポリマーから作られた、均一な、すなわち単一シェル、エラストマーを使用することも可能である。これらの生成物もまた、架橋性モノマー又は反応性基を有するモノマーの併用によって調製されても良い。
【0137】
添加剤として記載されるエラストマーはまた、他の従来のプロセス、例えば懸濁重合によって調製されても良い。
【0138】
記載しても良い他の好適なエラストマーは、例えばEP-A 115846、EP-A 115847、及びEP-A 117664に記載されているような熱可塑性ポリウレタンである。
【0139】
当然、上記に列挙したゴムタイプの混合物を使用することも可能である。
【0140】
本発明の吸収体材料は、他の慣用の添加剤や加工助剤を含んでも良い。ここでは単なる例として、ホルムアルデヒド捕捉用添加剤(ホルムアルデヒド捕捉剤)、可塑剤、カップリング剤、及び顔料を挙げても良い。この種の添加剤の割合は、一般に0.001~5質量%の範囲内である。
【0141】
本発明の吸収体材料は、良好な(高い)吸収及び良好な(低い)反射を示す。従って、好ましくは吸収体材料は少なくとも70%の吸収及び30%未満の反射を示す。更に、本発明の吸収体材料は、2.16kgのウエイト(質量)で250℃/分で測定したメルトボリューム速度を、120cm/10分~5cm/10分で得ることが可能である。
【0142】
本発明の電波吸収体は、上述した周波数領域又は範囲の電磁波を吸収するために使用することが可能である。
【0143】
従って本発明の他の局面は、レーダー吸収体部品又はレーダー吸収ハウジングの形態のレーダー吸収体を含む電子機器であって、前記レーダー吸収体が、
- 本発明の少なくとも1つの吸収体材料であって、上記少なくとも1つの吸収体材料が上記レーダー吸収体内の上記電子機器内に含まれている吸収体材料;
- 60GHz~200 GHzの周波数領域の電磁ミリ波を透過可能な少なくとも1つの透過領域;及び
- 透過領域を介して60GHz~200GHzの周波数領域の電磁ミリ波を検出し、任意に放射することが可能なセンサー、
を含む電子機器である。
【0144】
本発明の吸収体材料及び電子機器は、特に自動運転に適しており、及び従って自動車、バス又は重量物運搬車等の車両、又は電気通信、5G、電波暗室の一部位を形成する。
【0145】
以下に実施例を挙げて本発明を、これらに限定することなく更に詳細に説明する。
【実施例
【0146】
材料
ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT、Ultradur(登録商標)B4500 NAT)はBASF SEから入手した。Black pearls880(アスペクト比<5)はCabot corporationから入手した。アスペクト比>5の粒子を含む広い長さ分布を有するステンレス鋼繊維(ステンレス鋼1.4113)は、Deutsche Metallfaserwerkから入手した。
【0147】
電磁波との相互作用の測定
60~90GHzの範囲の吸収体の特性評価のための実験セットアップは次のとおりである。
【0148】
ベクトルネットワークアナライザキーサイトN5222A(10MHz-26.5 GHz)、2つのキーサイトT/R mmヘッドモジュールN5256AW12、60-90 GHz、及びサンプルホルダーとしてswissto12波形導波路WR12+、55-90 GHz。波形導波路(cw)の校正は、スルーアンドショート測定を行うことによって行われる。スルー測定ではcwのフランジが接続され、短時間測定ではフランジ間に金属板が挿入される。cwの場分布は、IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques 58, 11 (2010), 2772で説明されている。キャリブレーション後、サンプル(最小直径2cm)をcwとS11(反射)のフランジの間に挿入し、S21(透過)パラメータを60~90GHz(振幅と位相)の範囲で測定する。測定されたS11及びS22パラメータから、試料の吸収Aは、以下のように計算した:A(%)=100-S11(%)-S21(%)。測定されたパラメータから、サンプル材料の誘電パラメータε‘(誘電率)及びε“ (誘電損率)を、swis-sto12材料測定ソフトウェアを使用して各周波数ポイントで計算した。0°及び90°での吸収値を決定するために、試料をこのセットアップで2回測定した。一度、試料の射出成形からの流れ方向(すなわち繊維状導電性粒子の配向)を電界に平行(0°)に配置し、及び一度、サンプルを90°回転させて、流れ方向が電界に垂直(90°)である繊維状導電性部分の配向を得た。Δ吸収は、2つの方向における吸収の差である。
【0149】
比較例C1~C5及び本発明例E1の調製
本発明及び比較例の調製の一般的な手順
ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT、Ultradur(登録商標)B4500 NAT)をBASF SEから入手し、水分含有量が0.04質量%未満になるまで乾燥させた。PBT、潤滑剤、カーボンブラックバッチを、バレル温度270℃及び出力1kg/hの押出機(ZE25)に供給した。鋼繊維を、繊維の過度のせん断を防ぐために、押出機のゾーン4の溶融物に直接添加した。材料を造粒し、含水率が0.04質量%未満になるまで乾燥させた。電磁界解析用の試料(60×60×1mm)が、溶融温度用に260℃、成形温度用に60℃で射出成形された。すべての例がこのアプローチを使用して作成された。
【0150】
本発明(E1)及び比較例(C1~C5)の組成を表1に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
*)カーボンブラックバッチからのPBTを含む合計PBT含有量
**)カーボンブラックバッチからのカーボンブラックブラック-パール880含有量
【0153】
これらの結果から、本発明の試料E1は良好な吸収及び、(繊維状の導電性粒子を高い量で含んでいるにもかかわらず)予期していなかった低い異方性を有していた。
【国際調査報告】