(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(54)【発明の名称】がん処置のためのキナーゼインヒビター組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/517 20060101AFI20231201BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231201BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231201BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20231201BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231201BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
A61K31/517
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/44
A61K39/395 N
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529009
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2021081612
(87)【国際公開番号】W WO2022101459
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】マシェル,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ハック,ベイヤード
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルケル,エリック
(72)【発明者】
【氏名】カレタ,レミギウス
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA14
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC46
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミドおよび/またはその生理学的に許容し得る塩ならびに溶媒和物と、MEKキナーゼのインヒビターと、任意の第3のインヒビターとしてのEGFRのインヒビターとを伴う組み合わせ、およびがんの処置のためのかかる組み合わせの使用、および4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミドおよび/またはその生理学的に許容し得る塩ならびに溶媒和物とEGFRのインヒビターとの組み合わせに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミド、またはその生理学的に許容し得る塩、およびMEKのインヒビター、またはその生理学的に許容し得る塩を含む化合物混合物。
【請求項2】
MEKインヒビターが、ピマセルチブである、請求項1に記載の化合物混合物。
【請求項3】
EGFRインヒビターを、さらに含む、請求項1または2に記載の化合物混合物。
【請求項4】
請求項1~2のいずれか一項に記載の化合物混合物、および任意に、賦形剤および/またはアジュバントを含む、医薬組成物。
【請求項5】
(a)有効量の4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミドまたはその生理学的に許容し得る塩、および
(b)有効量のMEKインヒビター、またはその生理学的に許容し得る塩
の別個のパックを含む、セット(キット)。
【請求項6】
(c)有効量のEGFRインヒビターまたはその生理学的に許容し得る塩
の別個のパックをさらに含む、請求項5に記載のセット(キット)。
【請求項7】
EGFRインヒビターが、セツキシマブである、請求項6に記載のセット(キット)。
【請求項8】
4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミド、またはその生理学的に許容し得る塩、およびMEKインヒビター、またはその生理学的に許容し得る塩を対象へ投与することを含む、がんの予防または処置のための方法。
【請求項9】
MEKインヒビターが、ピマセルチブである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
EGFRインヒビター、またはその生理学的に許容し得る塩を対象へ投与することをさらに含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
EGFRインヒビターが、セツキシマブである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミド、MEKインヒビター、および任意に、EGFRインヒビターが、同時に投与される、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミド、MEKインヒビター、および任意に、EGFRインヒビターが、連続して投与される、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミド、またはその生理学的に許容し得る塩、およびEGFRのインヒビターを含む、化合物混合物。
【請求項15】
EGFRインヒビターが、セツキシマブである、請求項14に記載の化合物混合物。
【請求項16】
(a)有効量の4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミドまたはその生理学的に許容し得る塩、および
(b)有効量のEGFRインヒビター
の別個のパックを含む、セット(キット)。
【請求項17】
EGFRインヒビターが、セツキシマブである、請求項16に記載のセット(キット)。
【請求項18】
4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミド、またはその生理学的に許容し得る塩、およびEGFRインヒビターを対象へ投与することを含む、がんの予防または処置のための方法。
【請求項19】
EGFRインヒビターが、セツキシマブである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミドおよびEGFRインヒビターが、同時に投与される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミドおよびEGFRインヒビターが、連続して投与される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項22】
がんが、大腸がん、乳がん、胆管癌、多形性膠芽腫、頭頚部の扁平上皮細胞癌、および非小細胞肺がんである、請求項8~13および18~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミド(下文にM2698と称される)および/またはその生理学的に許容し得る塩ならびに溶媒和物と、MEKキナーゼのインヒビターと、任意の第3のインヒビターとしてEGFR(上皮成長因子受容体)としてもまた知られる受容体チロシンタンパク質キナーゼERBB-1のインヒビターとを伴う組み合わせ、およびがんの処置のためのかかる組み合わせの使用に関する。本発明はまた、M2698とMEKキナーゼのインヒビターを伴わずに、EGFRインヒビターを伴う組み合わせにも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
M2698、その調製のためのプロセスおよびがんの処置のためのその使用は、WO2012/069146において開示される(化合物Aと称される)。この化合物は、様々な細胞をベースとしたアッセイにおいて実証されるとおり、p70S6KおよびAktの選択的な、高度に強力な二重インヒビターである。M2698は、広いパネルのがん細胞株に対して強力な抗腫瘍活性を呈することが示された。乳がん細胞、多形性膠芽腫(GBM)細胞、子宮内膜がん細胞および卵巣癌細胞は、特にM2698に対して感受性があることが見出されている。M2698は、in vivoで血液脳関門を渡る。
【0003】
タンパク質キナーゼは、細胞内での多種多様なシグナル伝達プロセスの制御を担当している構造的に関係がある酵素の大きなファミリーを構成する(Hardie, G. and Hanks, S. (1995) The Protein Kinase Facts Book. I and II, Academic Press, San Diego, CA)。キナーゼは、それらがリン酸化する基質によって分類されてもよい(例として、タンパク質チロシン、タンパク質セリン/トレオニン、脂質、等)。配列モチーフは、これらのキナーゼファミリーの各々に一般に対応して同定されている(例として、Hanks, S.K., Hunter, T., FASEB J., 9:576-596 (1995); Knighton, et al., Science, 253:407-414 (1991); Hiles, et al., Cell, 70:419-429 (1992); Kunz, et al., Cell, 73:585-596 (1993); Garcia-Bustos, et al., EMBO J., 13:2352-2361 (1994))。タンパク質キナーゼは、それらの調節機構によって特徴付けられてもよい。これらの機構は、例えば、自己リン酸化、他のキナーゼによるトランスリン酸化、タンパク質-タンパク質相互作用、タンパク質-脂質相互作用、およびタンパク質-ポリヌクレオチド相互作用を包含する。個々のタンパク質キナーゼは、1より多い機構によって調節されてもよい。キナーゼは、これらに限定されないが、標的タンパク質にホスファート基を添加することによって、増殖、分化、アポトーシス、運動性、転写、翻訳および他のシグナル伝達プロセスを包含する多くの種々の細胞プロセスを調節する。これらのリン酸化事象は、標的タンパク質の生物学的機能を調整または調節し得る分子オン/オフスイッチとして作用する。タンパク質のリン酸化は、様々な細胞外シグナル(ホルモン、神経伝達物質、成長および分化因子、等)、細胞周期事象、環境または栄養上のストレス、等に応じて生じる。適切なタンパク質キナーゼは、シグナル伝達経路において機能を果たし、例えば、代謝酵素、調節性タンパク質、受容体、細胞骨格タンパク質、イオンチャネルまたはポンプ、または転写因子を(直接的または間接的のいずれかで)活性化または不活性化する。タンパク質リン酸化の欠陥のある制御に起因した制御されていないシグナル伝達は、例えば、炎症、がん、アレルギー/喘息、免疫系の疾患および疾病、中枢神経系、および血管新生の疾患および疾病を包含する数多の疾患に関係している。
【0004】
P70S6K阻害
タンパク質キナーゼ70S6K、70kDaリボソームタンパク質キナーゼp70S6K(SK6、p70/p85 S6キナーゼ、p70/p85リボソームS6キナーゼおよびpp70S6Kとしてもまた知られている)は、タンパク質キナーゼのAGCサブファミリーの一員である。p70S6Kは、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)/AKT経路の構成要素であるセリン-トレオニンキナーゼである。p70S6Kは、PI3Kの下流であり、および活性化は、無数のマイトジェン、ホルモンおよび成長因子に応じた数多の部位でのリン酸化を通して生じる。ラパマイシンが、p70S6K活性を阻害するように作用することから、p70S6K活性もまた、mTORを含有する複合体(TORC1)の制御下にある。p70S6Kは、PI3Kの下流の標的であるAktおよびPKC によって調節される。Aktは、TSC2を直接リン酸化して、不活性にし、それによってmTORを活性化する。加えて、ウォルトマンニンによって阻害されるが、ラパマイシンによっては阻害されないp70S6Kの突然変異アレルを用いた研究は、mTOR活性の調節とは無関係にp70S6Kに対して効果を呈し得ることを示唆する。酵素p70S6Kは、S6リボソームタンパク質のリン酸化によってタンパク質合成を調整する。S6リン酸化は、その増大した発現が細胞成長および増殖のために不可欠である、リボソームタンパク質および翻訳伸長因子を包含する、翻訳装置の構成要素をコードするmRNAの増大した翻訳と相関する。これらのmRNAは、それらの5’転写開始でオリゴピリミジントラクト(5’TOPと呼ばれる)を含有しており、そのことは翻訳レベルでのそれらの調節のために不可欠であることが示されている。
【0005】
翻訳への関与に加えて、p70S6Kの活性化は、細胞周期の制御、ニューロンの細胞分化、細胞運動性の調節および腫瘍転移、免疫応答および組織の修復において重要である細胞応答にもまた関係している。p70S6Kに対する抗体は、ラット線維芽細胞のS期へのエントリーを駆動する分裂促進的な応答を消失させ、このことはp70S6Kの機能が細胞周期においてG1期からS期までの進行のために不可欠であることを指し示す。さらにまた、ラパマイシンによる細胞周期のG1期からS期での細胞周期の増殖の阻害は、p70S6Kの高リン酸化された活性型の産生の阻害の結果として識別されている。
【0006】
腫瘍細胞の増殖および保護アポトーシスからの細胞の保護におけるp70S6Kの役割は、腫瘍組織における成長因子受容体のシグナル伝達、過剰発現および活性化のその参加に基づき支持される。例えば、ノーザンおよびウエスタン分析は、PS6K遺伝子の増幅が夫々対応するmRNAおよびタンパク質の増大を伴うことを明らかにした(Cancer Res. (1999) 59: 1408-11-Localization of PS6K to Chromosomal Region 17q23 and Determination of Its Amplification in Breast Cancer)。
p70S6K活性化の臨床での阻害は、上流キナーゼmTORのインヒビターであるCCI-779(ラパマイシンエステル)で処置された腎癌患者において観察された。疾患進行とp70S6K活性の阻害との間の有意な線形の関連が報告された。
【0007】
エネルギーストレスに応じて、腫瘍サプレッサーLKB1は、TSC1/2複合体をリン酸化するAMPKを活性化し、およびmTOR/p70S6K経路を不活性化することを可能にする。LKB1における突然変異は、ポイツ-イェガース症候群(PJS)を引き起こし、PSJを有する患者は、一般的な集団よりも15倍より多くがんを発症しそうである。加えて、肺腺癌の1/3は、LKB1突然変異の不活性化を抱える。
p70S6K阻害に好適であるとして記載される化合物は、WO03/064397、WO04/092154、WO05/054237、WO05/056014、WO05/033086、WO05/117909、WO05/039506、WO06/120573、WO06/136821、WO06/071819、WO06/131835、WO08/140947、WO10/093419、WO12/013282およびWO12/069146に開示される。
【0008】
p70S6KだけでなくキナーゼAtk(PI3K経路においてp70S6Kの上流)のアイソフォーム1および3をも阻害するM2698が、より効率的なPI3K経路の活動停止を提供することが示され(Choo AY, Yoon SO, Kim SG, Roux PP, Blenis J. Proc. Natl Acad Sci U S A. 2008 Nov 11;105(45):17414-9.)、およびいずれかのAktフィードバックループの活性化の捕捉を可能にする(Tamburini et al. Blood 2008;111:379-82)。
PI3K/Akt/mTOR経路(PAM)の阻害は、これに続くAktフィードバックループの上方調節によって妨げられる(O'Reilly KE et al. Cancer Res. 2006; 66(3):1500-1508)。p70S6KおよびAkt1/3の選択的二重インヒビターである、M2698は、Aktフィードバックループのシグナル伝達の下流をブロックする;したがって、M2698は、mTORインヒビターなどのPAM経路の単一ノードインヒビターと比較して臨床的有効性を改善するかもしれない。M2698は、腫瘍成長を低減し、およびヒトGBMの同所性移植モデルにおける生存を長くする(Machl A et al. Am J Cancer Res. 2016; 6(4):806-818)。
【0009】
本発明は、M2698について医薬の実用性をさらに進めることを見出す方法という目標を有した。これに関連して、二重の組み合わせとして、M2698のMEKキナーゼのインヒビターとの組み合わせおよび、三重の組み合わせとして、加えてEGFRのインヒビターとの組み合わせ、ならびに二重の組み合わせとして、M2698のEGFRのインヒビターとの組み合わせが、in vivoで研究された。
【0010】
MEK阻害
マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路は、細胞増殖、生存、分化、および運動性を包含する多様な細胞の活性の調節において重大な役割を担う(Karin L.C.M. Nature. 2001;410:37-40)。MAPK経路の調節異常は、すべての悪性腫瘍の1/3より多くで生じる。古典的なMAPK経路は、Ras(すべての動物細胞系列および器官において発現する関連タンパク質のファミリー)、Raf(レトロウイルスのがん遺伝子に関連する3つのセリン/トレオニン特異的タンパク質キナーゼのファミリー)、MEK(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ)、およびERK(細胞外シグナル調節キナーゼ)からなり、細胞表面受容体で生成される増殖性シグナルを細胞質シグナル伝達を通して核内に順次取り次ぐ。MEKインヒビターは、Ras/Raf/MEK/ERKシグナル伝達経路を標的にして、細胞増殖を阻害し、およびアポトーシスを誘導する。ゆえに、がん処置、とくにRAS/RAF機能障害によって誘発されるそれらのがんのための臨床使用において見込みがある(Leonard J.T. et al., J. Hematol. Oncol. 2016;9:31. doi: 10.1186/s13045-016-0258-1)。
【0011】
無数の新生物におけるこの経路の広範囲の活性化のせいで、MEKインヒビターは、単剤治療または他の標的にされたものおよび細胞毒性薬との併用治療のタイプとして様々な臨床的状況における開発および研究の過程にある。最近になって、免疫チェックポイントインヒビターの使用との組み合わせがいくつかのがんについて効果的な処置として現れ、このクラスの剤の有効性を拡張する(Thompson N. et al., Curr. Opin. Pharmacol. 2005;5:350-356)。
臨床開発下および/または規制当局により承認されたMEKインヒビターの例は、トラメチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、レファメチニブおよびピマセルチブを包含する。ピマセルチブは、N-(2,3-ジヒドロキシ-プロピル)-3-(2-フルオロ-4-ヨード-フェニルアミノ)-イソニコチンアミドであり、とりわけWO2006045514(例115)に記載されている。
驚くべきことに、本特許出願の発明者らによって、M2698がMEKインヒビターと組み合わせたときに相乗的に作用することが見出された。
【0012】
EGFR阻害
上皮成長因子受容体は、ErbBファミリーの受容体のメンバーであって、密接に関わっている4つの受容体チロシンキナーゼのサブファミリー:EGFR(ErbB-1)、HER2/neu(ErbB-2)、Her3(ErbB-3)およびHer4(ErbB-4)である。多くのがんのタイプにおいて、EGFR発現または活性に影響を及ぼす突然変異が、がんをもたらし得る(Zhang H et al., The Journal of Clinical Investigation. 117 (8): 2051-8)。上皮成長因子およびその受容体は、バンダービルト大学のStanley Cohenによって発見された。Cohenは、Rita Levi-Montalciniと彼らの成長因子の発見について1986年のノーベル生理学・医学賞を共有した。ヒトにおけるEGFRおよび他の受容体チロシンキナーゼの欠損したシグナル伝達は、アルツハイマー病などの疾患に関連する一方で、過剰発現は多種多様の腫瘍の発生と関連する。受容体の細胞外ドメイン上のEGFR結合部位をブロッキングするかまたは細胞内のチロシンキナーゼ活性を阻害するかのいずれかによる、EGFRシグナル伝達の断絶は、EGFRを発現する腫瘍の成長を妨げ得、および患者の状態を改善する。
【0013】
臨床開発下および/または規制当局によって承認されたEGFRインヒビターの例は、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ブリガチニブ、イコチニブ、オシメルチニブおよびセツキシマブ(キメラ(マウス/ヒト)モノクローナル抗体、転移性大腸がんおよび頭頸部がんの処置のために使用される)を包含する。
驚くべきことに、本特許出願の発明者らによって、M2698が、MEKインヒビターと組み合わせたときに、および任意にEGFRインヒビターを加えて、またはEGFRインヒビター単独と組み合わせたときに相乗的に作用することが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図
【
図1】
図1:GSC株におけるIn vitro分析。(A)タンパク質発現のウェスタンブロット分析;(B)M2698のIC50;(C)ピマセルチブのIC50;および(D)M2698、ピマセルチブ、またはM2698+ピマセルチブの組み合わせでの処置後のアポトーシス性のGSC11、GSC7-2、およびGSC17細胞。単剤は、それらのIC50で試験され;組み合わせについては各化合物のIC50の半分を使用した。
【0015】
【
図2-1】
図2:ビヒクル、M2698、ピマセルチブまたはM2698+ピマセルチブの組み合わせでの処置後の同所性のGSC異種移植モデルにおける(A)腫瘍体積および(B)生存の中央値。
【
図2-2】
図2:ビヒクル、M2698、ピマセルチブまたはM2698+ピマセルチブの組み合わせでの処置後の同所性のGSC異種移植モデルにおける(A)腫瘍体積および(B)生存の中央値。
【
図2-3】
図2:ビヒクル、M2698、ピマセルチブまたはM2698+ピマセルチブの組み合わせでの処置後の同所性のGSC異種移植モデルにおける(A)腫瘍体積および(B)生存の中央値。
【
図2-4】
図2:ビヒクル、M2698、ピマセルチブまたはM2698+ピマセルチブの組み合わせでの処置後の同所性のGSC異種移植モデルにおける(A)腫瘍体積および(B)生存の中央値。
【0016】
【
図3】
図3:ビヒクル対照、M2698、ピマセルチブ、またはM2698+ピマセルチブの組み合わせでの処置に続く、GSC17およびGSC7-2異種移植モデルにおける(A)pS6発現、(B)pERK発現、および(C)Ki-67発現。
【0017】
【
図5】
図5:Her2+/HR-乳がんPDXモデル。
【
図6】
図6:12の胆管癌のPDXモデルにおけるM2698およびピマセルチブの組み合わせ。
【0018】
【
図7-1】
図7:75のCRCのPDXモデルにおけるM2698、ピマセルチブ、およびセツキシマブ(単剤グループ)。
【
図7-2】
図7:75のCRCのPDXモデルにおけるM2698、ピマセルチブ、およびセツキシマブ(単剤グループ)。
【
図7-3】
図7:75のCRCのPDXモデルにおけるM2698、ピマセルチブ、およびセツキシマブ(単剤グループ)。
【0019】
【
図8-1】
図8:75のCRCのPDXモデルにおけるM2698、ピマセルチブ、およびセツキシマブ(二重の組み合わせ)。
【
図8-2】
図8:75のCRCのPDXモデルにおけるM2698、ピマセルチブ、およびセツキシマブ(二重の組み合わせ)。
【
図8-3】
図8:75のCRCのPDXモデルにおけるM2698、ピマセルチブ、およびセツキシマブ(二重の組み合わせ)。
【0020】
【
図9-1】
図9:75のCRCのPDXモデルにおけるM2698、ピマセルチブ、およびセツキシマブ(三重の組み合わせ)。
【
図9-2】
図9:75のCRCのPDXモデルにおけるM2698、ピマセルチブ、およびセツキシマブ(三重の組み合わせ)。
【
図10】
図10:38のSCCHNのPDXモデルにおけるM2698およびセツキシマブ(二重の組み合わせ)。
【0021】
本発明の詳細な記載
本発明は、M2698および/またはその生理学的に許容し得る塩ならびに溶媒和物、MEKインヒビターおよび、任意に、EGFRインヒビターを対象へ投与することを含む、がんの予防および/または処置のための方法に関する。
M2698および/またはその生理学的に許容し得る塩ならびに溶媒和物、および他の活性成分(単数または複数)は、同時にまたは連続して投与され得る。同時に投与されるとき、M2698および/またはその生理学的に許容し得る塩ならびに溶媒和物、およびMEKインヒビターは、1つの医薬組成物中の化合物混合物として、または別々の医薬組成物として投与されてもよい。
好ましい態様において、本発明に従う方法は、M2698および/またはその生理学的に許容し得る塩ならびに溶媒和物の使用を含み、MEKインヒビター、および任意に、EGFRインヒビターが、連続して投与される。
【0022】
本発明は、とりわけ、大腸がん、乳がん(とりわけ、Her2+/HR-タイプ)、胆管癌、GBM、SCCHN、およびNSCLCから(とりわけ、NSCLCの脳転移から)なるグループから選択される腫瘍の予防および/または処置の方法に関する。
その上、本発明は、活性医薬成分(API)M2698、およびその生理学的に許容し得る塩ならびに溶媒和物の化合物混合物、およびMEKインヒビターおよび生理学的に許容し得る塩ならびに溶媒和物を含む医薬組成物に関する。
【0023】
好適な酸付加塩は、すべての生理学的にまたは薬理学的に許容し得る酸の無機または有機塩、例えば、ハロゲン化物、とりわけ塩酸塩または臭化水素酸塩、乳酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、安息香酸塩またはp-トルエンスルホン酸塩である。
M2698およびMEKインヒビターの溶媒和物は、それらの相互の引力のために形成される不活性な溶媒分子のM2698上への付加物を意味すると受け取られる。溶媒和物は、例えば、一水和物または二水和物などの水和物、またはアルコラート、すなわち、例えば、メタノールまたはエタノールなどのアルコールとの付加化合物である。
M2698の好ましい塩形態は、その遊離塩基である。また好ましいものは、その塩酸塩、二塩酸塩、メシル酸塩、コハク酸塩またはマロン酸塩である。
【0024】
「有効量」という表現は、例えば、研究者または医者によって探し求められ、または所望される生物学的または医学的な応答を組織、系、動物またはヒトにおいて引き起こす医薬または医薬活性成分の量を意味する。
加えて、「治療的に有効な量」という表現は、この量を受けていない相当する対象と比較して、以下の帰結を有する量を意味する:疾患、症候群、疾病、愁訴、障害の改善された処置、治癒、予防または除去もしくは副作用の予防またもしくは疾患、疾病または障害の進行における低減。用語「治療的に有効な量」はまた、正常な生理学的機能を増大させるために有効である量を網羅する。
【0025】
本発明に従う医薬組成物は、例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100または1:1000の比率における2つのAPIの混合物を含む。
医薬組成物は、さらにまた少なくとも1の固体、液体および/または半液体の賦形剤もしくはアジュバントを含む。したがって、本発明はまた、本発明に従う該API混合物および該賦形剤および/またはアジュバントを含む医薬組成物に関する。
【0026】
さらにまた、本発明は、がんの処置のための医薬の調製のための該医薬組成物の使用に関する。
本発明はまた、
(a)有効量のM2698を含む医薬組成物、
(b)有効量のMEKインヒビターを含む医薬組成物、および任意に、
(c)有効量のEGFRインヒビターを含む医薬生物、
の別々のパックからなるセット(キット)に関する。
本発明はまた、
(a)有効量のM2698を含む医薬組成物、および
(b)有効量のEGFRインヒビターを含む医薬組成物、
の別々のパックからなるセット(キット)に関する。
【0027】
セットは、箱、個々の瓶、バッグまたはアンプルなどの好適な容器を含む。セットは、例えば、有効量のM2698および/または薬学的に用いることが出来るそれらの塩を含む医薬組成物、有効量のMEKインヒビターおよび/または薬学的に用いることが出来るそれらの塩を含む医薬組成物、ならびに任意に、有効量のEGFRインヒビターを含む医薬組成物をそれぞれ溶解形態または凍結乾燥形態で含有する、別々のアンプルを含んでもよい。
M2698と組み合わせられるべき殊更好ましい脳浸透性のMEKインヒビターは、ピマセルチブである。M2698と組み合わせられるべき殊更好ましいEGFRインヒビターは、MEKインヒビターの有無にかかわらず、セツキシマブである。殊更好ましい三重の組み合わせは、M2698+ピマセルチブ+セツキシマブである。
【0028】
本発明に従う化合物および化合物混合物は、いずれか所望される好適な方法を介した、例えば、経口(口腔内または舌下を包含する)、直腸、経鼻、局所(口腔内、舌下または経皮を包含する)、膣内または非経口(皮下、筋肉内、静脈内または皮内を包含する)の方法による投与のために適合され得る。かかる医薬は、薬学分野において既知のあらゆるプロセスを使用して、例えば、活性成分を賦形剤(単数または複数)またはアジュバント(単数または複数)と組み合わせることによって、調製され得る。
経口投与のために適合された化合物および化合物混合物は、例えば、カプセルまたは錠剤;粉末または顆粒;溶液または水性または非水性の液体における懸濁液;食用泡または泡食品;または水中油液体エマルションまたは油中水液体エマルションなどの、別々のユニットとして投与され得る。
【0029】
よって、例えば、錠剤またはカプセルの形態での経口投与のケースにおいて、化合物または化合物混合物は、例えば、エタノール、グリセロール、水などの経口、非毒性かつ薬学的に許容し得る不活性な賦形剤と組み合わせられ得る。粉末は、化合物を好適な微細なサイズに細かく砕き、およびそれを同様のやり方で細かく砕かれた医薬の賦形剤、例えば、デンプンまたはマンニトールなどの食用炭水化物などと混合することによって調製される。フレーバー、保存料、分散剤および色素も同じく存在していてもよい。
カプセルは、上に記載のとおり粉末混合物を調製し、およびそれを成形されたゼラチンシェルに充填することによって産生される。例えば、固体形態での高分散性ケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたはポリエチレングリコールなどの滑剤または潤滑剤は、充填操作の前に粉末混合物に添加さえ得る。例えば、寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムなどの崩壊剤または可溶化剤もまた、カプセルが摂取されたあとの化合物または化合物混合物のアベイラビリティを改善するために、同じく添加されてもよい。
【0030】
加えて、所望されるかまたは必要である場合に、好適な結合剤、潤滑剤および崩壊剤ならびに色素もまた、同じく混合物に組み込まれ得る。好適な結合剤は、デンプン、ゼラチン、例えば、グルコースまたはベータ-ラクトースなどの天然糖、トウモロコシから作られた甘味料、例えば、アカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウムなどの天然および合成ゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、蝋等を包含する。これらの剤形に使用される潤滑剤は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等を包含する。崩壊剤は、それらに制限されることなく、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンゴム等を包含する。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、混合物を造粒または乾式プレスし、潤滑剤および崩壊剤を添加して、ならびに錠剤を与えるために混合物全体を圧縮することによって、製剤化される。粉末混合物は、好適なやり方で細かく砕かれた化合物を、上に記載のとおりの希釈剤または基剤と、および任意に、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチンまたはポリビニルピロリドンなどの結合剤、例えば、パラフィンなどの溶解抑制剤、例えば、四級塩などの吸収促進剤、および/または、例えば、ベントナイト、カオリンまたは二リン酸カルシウムなどの吸収剤と混合することによって調製される。粉末混合物は、例えば、シロップ、デンプン糊、アカディア粘液(acadia mucilage)またはセルロースもしくはポリマー材料の溶液などの結合剤でそれを湿らせ、および篩を通してそれを圧縮することによって造粒され得る。造粒の代替手段として、粉末混合物は、打錠機にかけられて、不均一な形状の塊を与えて、それを粉砕して顆粒を形成し得る。顆粒は、錠剤鋳型にくっつくことを妨げるために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油の添加によって潤滑され得る。潤滑された混合物は、次いで圧縮されて錠剤を与える。本発明に従う化合物および化合物混合物はまた、流動性の良い不活性な賦形剤を組み合わせられ得、および次いで造粒または乾式プレスステップを実行することなしに、直接圧縮されて錠剤を得られ得る。シェラックシール層、糖またはポリマー材料の層および蝋の光沢層からなる透明または不透明な保護層が存在してもよい。色素は、異なる投薬量ユニット間で区別することができるように、これらのコーティングに添加され得る。
【0031】
例えば、溶液、シロップおよびエリキシル剤などの経口の液体は、所与の分量が、事前に特定された量の化合物を含むように、投薬量ユニットの形態で調製され得る。シロップは、好適なフレーバーと共に水性溶液中に化合物および化合物混合物を溶解することによって調製され得る一方で、エリキシル剤は、非毒性のアルコール性のビヒクルを使用して調製される。懸濁液は、非毒性のビヒクル中への化合物の分散によって処方され得る。例えば、エトキシル化イソステアリールアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテルなどの可溶化剤および乳化剤、保存料、例えば、ペパーミント油などのフレーバー添加剤、または天然の甘味料またはサッカリンまたは他の人工甘味料等もまた、同じく添加され得る。
経口投与のための投薬量ユニット製剤は、所望される場合は、マイクロカプセル中にカプセル化され得る。製剤はまた、例えば、ポリマー、蝋等中への微粒子材料のコーティングまたは埋め込みなどによって、放出が延長されるかまたは遅らせられるような方法で調製され得る。
【0032】
本発明に従う化合物および化合物混合物およびその塩ならびに溶媒和物はまた、例えば、小型単層ベシクル、大型単層ベシクルおよび多層ベシクルなどのリポソーム送達系の形態で投与され得る。リポソームは、例えば、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から形成され得る。
【0033】
本発明に従う化合物および化合物混合物はまた、化合物分子が結び付けられる個々の担体としてモノクローナル抗体を使用して送達され得る。化合物および化合物混合物はまた、標的にされた医薬担体として可溶性ポリマーに結び付けられ得る。かかるポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリル-アミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルタミドフェノールまたはポリエチレンオキシドポリリシン、パルミトイルラジカルで置換されたものを網羅していてもよい。化合物は、さらにまた、医薬の制御放出を達成するのに好適である生分解性ポリマーの類、例えば、ポリ乳酸、ポリ-イプシロン-カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロキシピラン、ポリシアノアクリラートおよびハイドロゲルの架橋されたかまたは両親媒性のブロックコポリマーに結び付けられてもよい。
【0034】
経皮的な投与に適合される化合物および化合物混合物は、レシピエントの表皮と長期にわたり、密接に接触するための独立した硬膏剤として投与され得る。よって、例えば、活性成分は、Pharmaceutical Research, 3(6):318, 1986の一般項に記載されるとおり、イオン導入法によって硬膏剤から送達され得る。
局所投与に適合される化合物および化合物混合物は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾルまたは油として処方され得る。
【0035】
目または他の外部組織、例えば、口および皮膚の処置のために、製剤は、好ましくは、局所の軟膏またはクリームとして適用される。軟膏を与える製剤のケースにおいて、化合物または化合物混合物は、パラフィン系または水混和性のクリーム基剤のいずれかを用いて採用され得る。代替的に、化合物または化合物混合物は、水中油クリーム基剤または油中水基剤を用いてクリームを与えるよう処方され得る。
目への局所的用に適合される化合物および化合物混合物は、活性成分が、好適な担体、とりわけ水性溶媒に溶解されているかまたは懸濁されている、点眼薬を包含する。
【0036】
口中の局所的用に適合される化合物および化合物混合物は、ロゼンジ、トローチおよびマウスウォッシュを網羅する。
直腸投与に適合する化合物および化合物混合物は、坐薬または浣腸の形態で投与され得る。
【0037】
担体物質が固体である経鼻投与に適合される化合物および化合物混合物は、例えば、20~500ミクロンの範囲にある粒子サイズを有する粗粉末を含み、これはかぎたばこが摂取されるやり方、すなわち鼻に近接して保持された粉末を含有する容器から鼻道を介した迅速な吸入によって投与される。担体物質として液体を伴う鼻腔用スプレーまたは点鼻液としての投与のための好適な製剤は、水または油中の活性成分溶液を網羅する。
吸入による投与に適合された化合物および化合物混合物は、微細な微粒子粉末またはもやを網羅し、これは様々なタイプのエアロゾルを伴う加圧されたディスペンサ、ネブライザーまたは注入器によって生成され得る。
膣内投与に適合された化合物および化合物混合物は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡またはスプレー製剤として投与され得る。
【0038】
非経口投与に適合された化合物および化合物混合物は、これを用いて製剤が処置されるべきレシピエントの血液と等張にされる、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および溶質を含む水性および非水性の滅菌注射溶液;および懸濁媒体および増粘剤を含んでもよい、水性および非水性の滅菌懸濁液を包含する。製剤は、単一用量または多用量容器、例えば密封アンプルおよびバイアルで投与され得、および使用が必要となる直前に滅菌担体液体、例えば、注射用水の添加のみが意図されるようにフリーズドライされた(凍結乾燥された)状態で保管される。レシピに従って調製される注射溶液および懸濁液は、滅菌された粉末、顆粒および錠剤から調製され得る。
上で具体的に言及された構成物質に加えて、本発明に従う医薬はまた、具体的なタイプの医薬製剤に関して当該技術分野において通例である他の剤を含んでもよいことは言うまでもない;よって、例えば、経口投与に好適である化合物または化合物混合物は、フレーバーを含んでもよい。
【0039】
本発明の化合物または化合物混合物の治療的に有効な量は、例えば、齢およびレシピエントの重量、処置を必要とする正確な状態、およびその重症度、製剤の性質および投与の方法を包含する数多の因子に依り、および最後には処置をする医師または獣医師によって決定される。しかしながら、本発明に従う疾患の処置のための有効量のAPIは、一般に1日あたりレシピエント(哺乳動物)の体重の0.1から100mg/kgまでの範囲にあり、および殊更典型的には1日あたり体重の1から10mg/kgまでの範囲にある。よって、70kgの重量である成体哺乳動物についての1日あたりの実際の量は、大抵70と700mgとの間であり、ここでこの量は、毎日の合計用量が、同じであるように、1日あたり個々の用量としてまたはより大抵は1日あたり一連の部分用量(例えば、2回、3回、4回、5回または6回など)において投与され得る。塩もしくは溶媒和物の、またはその生理学的機能的誘導体の誘導体の有効量は、本発明に従う化合物および化合物混合物それ自体の画分の有効量として決定され得る。
【0040】
本発明に従う医薬調製物は、ヒトにおける医薬および獣医学の薬として採用され得る。好適な賦形剤は、腸内(例えば、経口)、非経口または局所の投与に好適であり、および新規化合物と反応しない、有機または無機物質、例えば、水、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトースまたはデンプンなどの炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはワセリンである。腸内投与に好適であるものは、とりわけ、錠剤、コーティング錠、カプセル、シロップ、果汁、点滴薬または坐薬であり、非経口投与に好適なものは、溶液、好ましくは、油をベースとしたものまたは水性溶液、さらにまたは懸濁液、エマルションまたは移植片であり、および局所適用に好適なものは、軟膏、クリームまたは粉末である。化合物および化合物混合物は、また凍結乾燥されていてもよく、および結果として生じる凍結乾燥物は、例えば、注射調製物の調製のために使用される。
【0041】
指し示される調製物は、滅菌されてもよく、および/または潤滑剤、保存料、安定剤および/または湿潤剤、乳化剤、浸透圧を変更するための塩、緩衝剤物質、色素、フレーバーおよび/または芳香物質などのアジュバントを含んでもよい。それらはまた、所望される場合には、1以上のさらなる活性成分、例えば、1以上のビタミンも含み得る。
【0042】
本発明はまた、がん、とくに頭頚部の扁平上皮細胞癌(SCCHN)の予防および/または処置のための方法であって、M2698および/またはその生理学的に許容し得る塩ならびに溶媒和物、およびEGFRインヒビター、とくにセツキシマブ、ならびに本明細書の上に記載のとおりの対応する化合物混合物、医薬組成物、製剤および投与の方法を対象へ投与することを含むものに関する。
【0043】
ある態様において、本発明は以下に関する:
1.4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミド、またはその生理学的に許容し得る塩、およびMEKのインヒビター、またはその生理学的に許容し得る塩を含む、化合物混合物。
2.MEKインヒビターが、ピマセルチブである、この態様の列挙において上に記載のとおりの化合物混合物。
3.EGFRインヒビターを、さらに含む、この態様の列挙において上に記載のとおりの化合物混合物。
4.この態様の列挙において上に記載のとおりの化合物混合物、および任意に、賦形剤および/またはアジュバントを含む、医薬組成物。
【0044】
5.(a)有効量の4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミドまたはその生理学的に許容し得る塩、および
(b)有効量のMEKインヒビター、またはその生理学的に許容し得る塩
の別個のパックを含む、セット(キット)。
6.(c)有効量のEGFRインヒビターまたはその生理学的に許容し得る塩
の別個のパックをさらに含む、この態様の列挙において上に記載のとおりのセット(キット)。
7.EGFRインヒビターが、セツキシマブである、この態様の列挙において上に記載のとおりのセット(キット)。
【0045】
8.4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミド、またはその生理学的に許容し得る塩、およびMEKインヒビター、またはその生理学的に許容し得る塩を対象へ投与することを含む、がんの予防または処置のための方法。
9.MEKインヒビターが、ピマセルチブである、この態様の列挙において上に記載されるとおりの方法。
10.EGFRインヒビター、またはその生理学的に許容し得る塩を対象へ投与することをさらに含む、この態様の列挙において上に記載のとおりの方法。
【0046】
11.EGFRインヒビターが、セツキシマブである、この態様の列挙において上に記載のとおりの方法。
12.4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミド、MEKインヒビター、および任意に、EGFRインヒビターが、同時に投与される、この態様の列挙において上に記載のとおりの方法。
13.4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミド、MEKインヒビター、および任意に、EGFRインヒビターが、連続して投与される、この態様の列挙において上に記載のとおりの方法。
【0047】
14.4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミド、またはその生理学的に許容し得る塩、およびEGFRのインヒビター、好ましくはセツキシマブを含む、化合物混合物。
15.(a)有効量の4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミドまたはその生理学的に許容し得る塩、および
(b)有効量のEGFRインヒビター、好ましくはセツキシマブ
の別個のパックを含むセット(キット)。
【0048】
16.4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミド、またはその生理学的に許容し得る塩、およびEGFRインヒビター、好ましくはセツキシマブ、ここで2つの剤が、同時にまたは連続してのいずれかで投与されるを対象へ投与することを含む、がんの予防または処置のための方法。
17.好ましい態様において、がんは、大腸がん、乳がん、胆管癌、多形性膠芽腫、頭頚部の扁平上皮細胞癌、および非小細胞肺がんである。
【0049】
例
例1:膠芽腫(GBM)の異種移植モデル(PDX)由来の患者におけるM2698およびピマセルチブの組み合わせ
GSC株:In VitroでのM2698およびピマセルチブへの感受性
いくつかのGBMモデルにおけるM2698の効果が有意であるに関わらず、応答は相対的に穏やかであった。PAMおよびMAPK経路の両方が、GBMに関与するため、19GSC(膠芽腫幹細胞)細胞/モデルにおいてin vivoおよびin vitroでM2698を脳浸透性のMEKインヒビターであるピマセルチブと組み合わせた。
In vitroでのIC50データを、in vivo研究についてGSC株を選択するために使用した;IC50値<2μMを高感度であるとみなし、および>2μMを抵抗性があるとみなした。すべてのGSC株は、Aktを発現した。GSC272およびGSC267と比較して、GSC17、GSC7-2、GSC231、GSC11、GSC20、GSC6-27、およびGSC8-11株における相対的に高いpAkt発現(
図1A)。相対的により高いpAkt発現を有する細胞株は、GSC20を除いてM2698に対して感受性があり、構成的なAktの活性化がM2698に細胞を増感させたことを示唆する(
図1B)。少しの細胞株(GSC17、GSC11、およびGSC231)しかピマセルチブに対して感受性はなく(IC50<2μM)、GSC20、GSC272、GSC6-27、およびGSC7-2には抵抗性があった(
図1C)。
【0050】
M2698、ピマセルチブ、およびその組み合わせによるアポトーシスの誘導をin vitroでM2698に対して感受性のあった5つのGSC株のうち3つで測定した。それらのうち、GSC11がピマセルチブに対して最も感受性があり、GSC17が中程度に高感度であり、およびGSC7-2がピマセルチブに対して感受性がなかった。GSC11、GSC17、およびGSC7-2株に単剤治療として投与されたM2698およびピマセルチブの両方がアポトーシスを誘導したが、各化合物についてIC50(夫々、56%、11%、13%)対2×IC50(夫々、62%、12%、17%)でのアポトーシスのパーセンテージにおいて見掛け上差異はなかった。M2698+ピマセルチブは、単剤単独を用いた場合と比較して、アポトーシスの誘導において、相加作用(GSC11およびGSC7-2株)、または見掛けの相乗作用(GSC17株)のいずれかを有した(
図1D)。
【0051】
同所性のGSC異種移植モデルにおけるM2698およびピマセルチブのin vivoでの有効性およびPD効果
単独および組み合わせにおける、M2698およびピマセルチブのin vivo効果を、マウス内への同所性の移植後に、GSCモデルにおいて査定した。処置期間および移植後の安楽死の時を、5~10週とした。エンドポイントを、PDマーカーであるpS6およびpERK、増殖マーカーであるKi67の発現、腫瘍体積および生存によって測定されるとおりのアポトーシスとした。
7つのGSCモデルのうち1つ(GSC20)以外のすべてが、腫瘍体積により測定されるとおりM2698単剤治療に対して感受性があった;M2698は、腫瘍成長を有意に阻害したか(GSC17、GSC6-27、GSC7-2、GSC272、GSC231;すべてP<0.05;
図2A)、またはそうする傾向があった(GSC11、P=0.10)。6つのM2698感受性モデルのうち、5つがピマセルチブ単剤治療に応答し、有意な腫瘍成長阻害(GSC6-27、GSC7-2、GSC272;P<0.05)を有するか、または有意な応答に向けた傾向を有するか(GSC231 P=0.10)のいずれかであった。GSC17の腫瘍成長は、ピマセルチブ単独では影響を受けなかった(ビヒクルと比較してP=0.34)。M2698+ピマセルチブは、ビヒクルと比較して、すべてのGSCモデルにおいて、腫瘍成長に関して単剤治療の処置に応答しなかった(P>0.05)、GSC20においてさえ、腫瘍成長を有意に阻害した(すべてP<0.05;
図2A)。
【0052】
GSCモデルの生存の中央値は、腫瘍体積データを完全に反映するものではなかった。(
図1B)。M2698(GSC272およびGSC231)および組み合わせ(GSC17およびGSC7-2)は、夫々ビヒクルと比較して、2つのモデルにおいてのみ生存を長くし(P<0.05)、およびピマセルチブは、モデルのいずれにおいても対照に対して生存に有意な効果を有さなかった(P>0.05)。GSC6-27において、ビヒクルで処置されたマウスは、未知の理由のために、処置グループからのマウスよりも有意に長い生存の中央値を有した(P<0.05)。対照的に、両方の単独治療は、いくつかのモデルにおいて腫瘍成長を有意に阻害し、および組み合わせは、すべてのモデルにおいて腫瘍成長を阻害した。
【0053】
腫瘍体積に対する有意な効果は、化合物が脳に侵入し、および同所性に成長する腫瘍に影響を与えたことを指し示す。BBB浸透の追加の証拠は、腫瘍細胞における標的シグナル伝達経路のPDマーカーに対する効果を包含した。M2698は、GSC20を除くすべてのGSCモデルの同所性の腫瘍におけるpS6を有意に低減した(P<0.05;
図3A)。同様に、ピマセルチブ処置のpERKタンパク質に対する有意な効果は、GSC20腫瘍においては見られなかった(P=0.18)一方で、ピマセルチブは、ピマセルチブ処置に続いて腫瘍体積の低減を経験しなかったGSC17を包含する他のGSC腫瘍においてpERKを有意に低減した(P<0.05;
図3B)。M2698+ピマセルチブの組み合わせは、GSC20を除くすべてのモデルにおいてpS6およびpERKを低減した(すべてP<0.05)。GSC20モデルのビヒクルで処置されたマウスにおける腫瘍成長、pS6およびpERKにおける相対的に高いバリエーションは、これらのエンドポイントに対する生物学的に関係のある処置効果の統計学的有意性を隠した可能性がある。逆に言うと、有意な応答の欠如は、in vitroでの両方の化合物へのGSC20の非感受性によって予測された(
図1Bおよび
図1C)。
【0054】
pERKに対するピマセルチブの効果および同所性の脳モデルにおけるpS6に対するM2698に対するM2698の効果に加えて、それぞれのM2698はまた、反対のPDマーカーに影響を与えることができた。ピマセルチブは、GSC272およびGSC231モデルにおいてpS6を有意に低減した。M2698は、GSC20を除くすべてのGSCモデルにおいてpERKを低減した(P<0.05;
図3B)。
GSC腫瘍のうちの3つを、PDマーカーに関して1より多い時点で分析した。時間にわたる応答についての統計分析は実施されなかったが、異なるエンドポイントにおける傾向を評価した。pS6陽性細胞のパーセンテージは、GSC7-2およびGSC272腫瘍において経時的に増大したが、GSC231腫瘍では増大しなかった一方で、pERKは、GSC7-2腫瘍においてのみ経時的に増大した(
図3)。GSC272およびGSC231モデルにおけるピマセルチブによるpS6の交差経路の低減は、7.5~10週まで少なくなり、およびpERK発現に対する単独または組み合わせでの化合物の活性は、GSC231モデルにおいて7.5~10週まで低減した。これらの傾向が、耐性の発症に関連するか否かは、追加の研究を要するが、それらは、モデルの不均一性を反映する。
【0055】
M2698+ピマセルチブの組み合わせが生存を有意に延ばした2つのモデルである、GSC17およびGSC7-2からの腫瘍の切片において、Ki67を免疫組織化学により測定した(
図3C)。GSC17モデルにおいて、3つすべての処置は、GSC7-2モデルにおいてM2698単剤治療およびそのピマセルチブとの組み合わせを行ったように、ビヒクルと比較して、有意に増殖を低減した(すべてP<0.05)。
M2698、ピマセルチブ、および組み合わせ処置のいずれも、7.5週でのGSC7-2異種移植対対照においてアポトーシスに有意な影響を与えなかった。しかしながら10週後には、in vitroのデータと同様に、M2698+ピマセルチブの組み合わせは、対照(8.50±1.80;P=0.002)、M2698単独(52.17±25.20;P=0.01)、およびピマセルチブ単独(65.00±60.80;P=0.02)と比較して、アポトーシスの細胞数/フィールドを有意に増大させた(172.33±60.80)。
【0056】
例2:非小細胞肺がん(NSCLC)脳転移の患者由来異種移植モデル(PDX)におけるM2698およびピマセルチブの組み合わせ
図4に見られるように、M2698のピマセルチブとの組み合わせは、予想外にも、26%の腫瘍制御率(TCR)を示す一方で、単剤は、5%(M2698)および16%(ピマセルチブ)を示す。
【0057】
例3:Her2+/HR-乳がんの患者由来異種移植モデル(PDX)におけるM2698およびピマセルチブの組み合わせ
図5に見られるように、M2698のピマセルチブとの組み合わせは、予想外にも、実験の期間にわたり腫瘍体積をほとんどゼロにまで低減する一方で、単剤は、ただ単に腫瘍体積の停滞を達成したに過ぎない。
【0058】
例4:胆管癌の患者由来異種移植モデル(PDX)におけるM2698およびピマセルチブの組み合わせ
この実験の目標は、M2698単独およびピマセルチブと組み合わせての抗腫瘍活性を、免疫欠損マウスにおける中国人患者に由来するヒト胆管癌を表す13の患者由来異種移植モデルにおいて評価することであった。モデルのHer2ステータスを、免疫組織化学(IHC)を介して得、および
図6に表示する。
【0059】
研究設計
【表1】
ビヒクル:Milli-Q水中0.5%メトセル/0.25%Tween20。3匹の非処置マウスからの腫瘍を、腫瘍体積が300~500mm3の間に至ったときのサテライト試料として収集した。
【0060】
図6から導き出され得るとおり、驚くべきことに、12の腫瘍試料のうち10において(83%)、M2698およびピマセルチブで腫瘍停滞が達成されたが一方で、単剤は、17%(2/12、M2698)および8%(1/12、ピマセルチブ)を示す。この実験において、いずれの処置においても、腫瘍成長応答も、退縮さえも観察されなかった。
【0061】
例5:75の大腸がんの患者由来異種移植モデル(PDX)におけるM2698、ピマセルチブおよびセツキシマブの組み合わせ
研究設計
【表2】
75のモデルのうち、25が野生型であり、25がKRas突然変異体であり、および25がBRaf突然変異体であった。
【0062】
結果
図7が示すとおり、単剤についての腫瘍制御率(TCR)は、M2698について15%(11/74)、ピマセルチブについて32%(24/74)およびセツキシマブについて21%(15/73)であった。
図8が示すとおり、二重の組み合わせについては、ピマセルチブ+セツキシマブについて59%(44/74)、およびM2698+セツキシマブについて35%(26/74)、および予想外にも、M2698+ピマセルチブについて63%(45/72)のTCRであった。
図9が示す通り、三重の組み合わせについては、驚くべきことに、TCRは、二重の組み合わせのTCRよりもさらに有意に高い、78%(58/74)である。
【0063】
例6:38のSCCHNの患者由来異種移植モデル(PDX)におけるM2698およびセツキシマブの組み合わせ
46のSCCHN PDXモデルについて、1+1スキーム(処置グループあたり1匹のマウス)で実行した。モデルが成長し損なったため、8のモデルを取り消した。取り消されたものを調整して、38のモデルを仕上げた。M2698を標準治療(SoC)剤であるシスプラチンおよびセツキシマブと共に、すべての単剤治療および「1+1」スクリーンでの組み合わせ、すなわちモデルあたり処置あたり1匹のマウスにおいて投与した。移植後、各モデルについて平均腫瘍体積が約200mm3に至ったときに処置を開始した。すべての動物についてモデルを安楽死させるときである、対照の腫瘍が約1200mm3に至るまで、各モデルについて腫瘍体積を測定した。
【0064】
【0065】
結果
【表4】
上の表および
図10が示すとおり、組み合わせについて、TCRは、この処置することが困難であるがんのタイプにおける単剤のTCRの予想外の改善である、58%(22/38)である。
【国際調査報告】