(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ポリイミド系樹脂フィルムおよびこれを用いたディスプレイ装置用基板、および光学装置
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20231206BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20231206BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C08G73/10
C08L79/08 B
C08K5/521
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507389
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 KR2022007039
(87)【国際公開番号】W WO2023080369
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0152513
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン、ミ エウン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、イェ ジ
(72)【発明者】
【氏名】パク、チャン ヒョ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ハンガ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ミン ウーク
【テーマコード(参考)】
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
4J002CM041
4J002EW046
4J002FD206
4J002GP00
4J002GQ00
4J043PA02
4J043PA05
4J043QB15
4J043QB26
4J043RA35
4J043SA06
4J043SB01
4J043SB03
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA121
4J043UA131
4J043UA132
4J043UB121
4J043UB122
4J043VA021
4J043VA022
4J043VA051
4J043VA062
4J043XA16
4J043YA06
4J043ZA52
4J043ZA55
4J043ZB21
(57)【要約】
本発明は、下記数式1で得られる屈折率差(△n)が0.0068以下であり、10μm厚さでの黄色指数が5.5以下であるポリイミド系樹脂フィルムおよびこれを用いたディスプレイ装置用基板、および光学装置に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記数式1で得られる屈折率差(△n)が0.0068以下であり、
10μm厚さでの黄色指数が5.5以下である、ポリイミド系樹脂フィルム:
[数式1]
屈折率差(△n)=n1-n2
前記数式1中、n1は10μm厚さでのポリイミド系樹脂フィルムの面方向屈折率値であり、n2は10μm厚さでのポリイミド系樹脂フィルムの厚さ方向屈折率値である。
【請求項2】
前記ポリイミド系樹脂フィルムは、10μm厚さでの色座標b*が1~4である、請求項1に記載のポリイミド系樹脂フィルム。
【請求項3】
前記ポリイミド系樹脂フィルムは、10μm厚さでの厚さ方向の位相差R
th値が10nm~52nmである、請求項1に記載のポリイミド系樹脂フィルム。
【請求項4】
前記ポリイミド系樹脂フィルムは、532nm波長での平均屈折率が1.6995~1.7060である、請求項1に記載のポリイミド系樹脂フィルム。
【請求項5】
前記ポリイミド系樹脂フィルムは、532nm波長での面方向屈折率が1.70~1.71である、請求項1に記載のポリイミド系樹脂フィルム。
【請求項6】
前記ポリイミド系樹脂フィルムは、532nm波長での厚さ方向屈折率が1.69~1.71である、請求項1に記載のポリイミド系樹脂フィルム。
【請求項7】
前記ポリイミド系樹脂フィルムは、ヘイズ値が1.0%未満である、請求項1に記載のポリイミド系樹脂フィルム。
【請求項8】
前記ポリイミド系樹脂フィルムは、下記化学式1で表されるポリイミド繰り返し単位を含むポリイミド系樹脂を含む、請求項1に記載のポリイミド系樹脂フィルム:
[化学式1]
【化10】
上記化学式1中、
X
1は、エーテル基を含有した芳香族4価官能基であり、
Y
1は、炭素数6~10の芳香族2価官能基である。
【請求項9】
前記X
1は、下記化学式2で表される4価の官能基を含む、請求項8に記載のポリイミド系樹脂フィルム:
[化学式2]
【化11】
【請求項10】
前記Y
1は、下記化学式3で表される官能基を含む、請求項8に記載のポリイミド系樹脂フィルム:
[化学式3]
【化12】
【請求項11】
前記化学式3で表される官能基は、下記化学式3-1で表される官能基を含む、請求項10に記載のポリイミド系樹脂フィルム:
[化学式3-1]
【化13】
【請求項12】
前記ポリイミド系樹脂は、エーテル基を含む芳香族テトラカルボン酸二無水物および炭素数6~10の芳香族ジアミンの結合物を含む、請求項8に記載のポリイミド系樹脂フィルム。
【請求項13】
前記ポリイミド系樹脂は、前記化学式1で表されるポリイミド繰り返し単位以外に、下記化学式4で表されるポリイミド繰り返し単位をさらに含む、請求項8に記載のポリイミド系樹脂フィルム:
[化学式4]
【化14】
上記化学式4中、
X
2は、エーテル基を含む芳香族4価官能基であり、
Y
2は、エーテル基を含む炭素数12~17の芳香族2価官能基である。
【請求項14】
前記Y
2は、下記化学式5で表される官能基を含む、請求項13に記載のポリイミド系樹脂フィルム:
[化学式5]
【化15】
【請求項15】
前記ポリイミド系樹脂は、全体繰り返し単位100モル%に対して、前記化学式1で表されるポリイミド繰り返し単位を20モル%~100モル%で含む、請求項8に記載のポリイミド系樹脂フィルム。
【請求項16】
前記ポリイミド系樹脂フィルムは、ホスフェート系添加剤を含む、請求項1に記載のポリイミド系樹脂フィルム。
【請求項17】
前記ホスフェート系添加剤は、トリアリールホスフェートを含む、請求項16に記載のポリイミド樹脂フィルム。
【請求項18】
請求項1のポリイミド系樹脂フィルムを含む、ディスプレイ装置用基板。
【請求項19】
請求項1のポリイミド系樹脂フィルムを含む、光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2021年11月8日付韓国特許出願第10-2021-0152513号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、優れた光学特性および低い位相差を実現することができるポリイミド系樹脂フィルムおよびこれを用いたディスプレイ装置用基板、および光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
表示装置市場は、大面積が容易であり薄型および軽量化が可能な平板ディスプレイ(Flat Panel Display;FPD)中心に急速に変化している。このような平板ディスプレイには液晶表示装置(Liquid Crystal Display;LCD)、有機発光表示装置(Organic Light Emitting Display;OLED)または電気泳動表示装置(electrophoretic display;EPD)などがある。
【0004】
特に、最近ではこのような平板ディスプレイの応用と用途をさらに拡張するために、前記平板ディスプレイに可撓性基板を適用したいわゆるフレキシブルディスプレイ素子などに関する関心が集中している。このようなフレキシブルディスプレイ素子は主にスマートフォンなどモバイル機器を中心にして適用が検討されており、次第にその応用分野が拡張されている。
【0005】
一般に、フレキシブルディスプレイ素子および照明素子を製作することにおいて硬化したポリイミドの上にbuffer layer、active layer、gate insulatorなど多層の無機膜を成膜してTFT素子を製造している。
【0006】
しかし、従来使用されるポリイミド樹脂は面方向の屈折率が大きく厚さ方向の屈折率と大きな差が存在する。これにより、ポリイミドは異方性性質を有することによって、光の歪曲現象が発生して視感性を大きく低下させる限界がある。
【0007】
また、ポリイミド樹脂は高い芳香族環密度によって茶色または黄色に着色されていて可視光線領域での透過度が低く黄色系列の色を示して光透過率を低くし大きい複屈折を有するようにして光学部材として使用するには限界があった。
【0008】
よって、面方向、厚さ方向の屈折率差を減らして視感性を向上させながら優れた光学特性を満たすことができる新たなポリイミド開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、優れた光学特性および低い位相差を実現することができるポリイミド系樹脂フィルムに関するものである。
【0010】
また、本発明は、前記ポリイミド系樹脂フィルムを用いたディスプレイ装置用基板、および光学装置を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本明細書では、下記数式1で得られる屈折率差(△n)が0.0068以下であり、10μm厚さでの黄色指数が5.5以下である、ポリイミド系樹脂フィルムが提供される。
【0012】
[数式1]
屈折率差(△n)=n1-n2
【0013】
前記数式1中、n1は10μm厚さでのポリイミド系樹脂フィルムの面方向屈折率値であり、n2は10μm厚さでのポリイミド系樹脂フィルムの厚さ方向屈折率値である。
【0014】
本明細書ではまた、前記ポリイミド系樹脂フィルムを含む、ディスプレイ装置用基板が提供される。
【0015】
本明細書ではまた、前記ポリイミド系樹脂フィルムを含む、光学装置が提供される。
【0016】
以下、発明の具体的な実施形態によるポリイミド系樹脂フィルムおよびこれを用いたディスプレイ装置用基板、および光学装置についてより詳細に説明する。
【0017】
本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は、単に特定実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0018】
本明細書で使用される単数形態は、文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0019】
本明細書で使用される'含む'の意味は特定特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるのではない。
【0020】
そして、本明細書で'第1'および'第2'のように序数を含む用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数によって限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素にも命名することができ、同様に第2構成要素は第1構成要素に命名することができる。
【0021】
本明細書で(共)重合体は重合体または共重合体を全て含む意味であり、前記重合体は単一繰り返し単位からなる単独重合体を意味し、共重合体は2種以上の繰り返し単位を含む複合重合体を意味する。
【0022】
本明細書で、置換基の例示は以下で説明するが、これに限定されるのではない。
【0023】
本明細書で、"置換"という用語は化合物内の水素原子の代わりに他の官能基が結合することを意味し、置換される位置は水素原子が置換される位置、即ち、置換基が置換可能な位置であれば限定されず、2以上置換される場合、2以上の置換基は互いに同一であるか異なってもよい。
【0024】
本明細書で"置換もしくは非置換の"という用語は、重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミド基;1級アミノ基;カルボキシ基;スルホン酸基;スルホンアミド基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルコキシシリルアルキル基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうちの1つ以上を含むヘテロ環基からなる群より選択された1つ以上の置換基で置換もしくは非置換のものであるか、または前記例示された置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換もしくは非置換のものを意味する。例えば、"2以上の置換基が連結された置換基"はビフェニル基であってもよい。即ち、ビフェニル基はアリール基であってもよく、2つのフェニル基が連結された置換基に解釈することもできる。
【0025】
本明細書で、
【化1】
又は
【化2】
は他の置換基に連結される結合を意味し、直接結合はLで表示される部分に別途の原子が存在しない場合を意味する。
【0026】
本明細書において、芳香族(aromatic)は、ヒュッケル規則(Huckels Rule)を満足する特性として、前記ヒュッケル規則により以下の三つの条件を全て満足する場合を芳香族と定義することができる。
【0027】
1)空いているp-オービタル、不飽和結合、不対電子対などによって完全にコンジュゲーションを成している4n+2個の電子が存在しなければならない。
【0028】
2)4n+2個の電子は平面形態異性体を構成しなければならず、環構造を成さなければならない。
【0029】
3)環の全ての原子がコンジュゲーションに参加できなければならない。
【0030】
本明細書において、多価官能基(multivalent functional group)は任意の化合物に結合された複数の水素原子が除去された形態の残基であって、例えば、2価官能基、3価官能基、4価官能基が挙げられる。一例として、シクロブタンに由来した4価の官能基は、シクロブタンに結合された任意の水素原子4つが除去された形態の残基を意味する。
【0031】
本明細書において、アリール基はアレーン(arene)に由来した1価の官能基であって、特に限定されないが、炭素数6~20であるのが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。前記アリール基が単環式アリール基としてはフェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基などであってもよいが、これに限定されるのではない。前記多環式アリール基としてはナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであってもよいが、これに限定されるのではない。前記アリール基は置換もしくは非置換のものであってもよく、置換される場合、置換基の例示は前述のとおりである。
【0032】
本明細書で、直接結合または単一結合は、該当位置にいかなる原子または原子団も存在しなくて、結合線で連結されることを意味する。具体的に、化学式中のL1、L2で表示される部分に別途の原子が存在しない場合を意味する。
【0033】
本明細書で、重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた分析装置と示差屈折率検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを使用することができ、通常適用される温度条件、溶媒、flow rateを適用することができる。前記測定条件の具体的な例を挙げれば、Polymer Laboratories PLgel MIX-B 300mm長さカラムを用いてWaters PL-GPC220機器を用いて、評価温度は160℃であり、1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒として使用し、流速は1mL/minの速度で、サンプルは10mg/10mLの濃度に調製した後、200μLの量で供給し、ポリスチレン標準を用いて形成された検定曲線を用いてMwの値を求めることができる。ポリスチレン標準品の分子量は2,000/10,000/30,000/70,000/200,000/700,000/2,000,000/4,000,000/10,000,000の9種を使用した。
【0034】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0035】
1.ポリイミド系樹脂フィルム
発明の一実施形態によれば、下記数式1で得られる屈折率差(△n)が0.0068以下であり、10μm厚さでの黄色指数が5.5以下であるポリイミド系樹脂フィルムを提供することができる。
【0036】
[数式1]
屈折率差(△n)=n1-n2
【0037】
上記数式1中、n1は10μm厚さでのポリイミド系樹脂フィルムの面方向屈折率値であり、n2は10μm厚さでのポリイミド系樹脂フィルムの厚さ方向屈折率値である。
【0038】
本発明者らは前記一実施形態のポリイミド系樹脂フィルムのように前記数式1で得られる屈折率差(△n)が0.0068以下であり、10μm厚さでの黄色指数が5.5以下を満足するようになれば、低い黄色指数を通じて顕著に改善された透明度を通じて光透過率を高めて低い複屈折を有するようにして光学部材として使用するに適し、同時に低い屈折率差(△n)特性を通じて光学的等方性が高まって低い位相差を実現することによって、ポリイミド系樹脂フィルムが適用されたディスプレイ対角視野角を確保して光の歪曲現象による視感性低下を防止することができるのを実験を通じて確認して発明を完成した。
【0039】
具体的に、本発明によるポリイミド系樹脂フィルムは屈折率を上昇させることができ、フレキシブルディスプレイ素子における基板層として使用されて、素子を構成する各層との屈折率の差を減少させることができ、これから、内部で消滅する光の量を減らして、光の放出(bottom emission)効率を効果的に増大させることができる。
【0040】
具体的に、前記一実施形態のポリイミド系樹脂フィルムは、下記数式1で得られる屈折率差(△n)が0.0068以下、または0.0065以下、または0.0050以下、または0.0010以上、または0.0010~0.0068、または0.0010~0.0065、または0.0010~0.0050、または0.0034~0.0045、または0.0044~0.0067であってもよい。このように、屈折率差(△n)が小さくなることによって低い低位相差を有して優れた視感性を実現することができる。
【0041】
[数式1]
屈折率差(△n)=n1-n2
【0042】
上記数式1中、n1は10μm厚さでのポリイミド系樹脂フィルムの面方向屈折率値であり、n2は10μm厚さでのポリイミド系樹脂フィルムの厚さ方向屈折率値である。
【0043】
より具体的に、前記数式1で、n1に該当する532nm波長での面方向屈折率が1.70~1.71、または1.7019~1.7066、または1.7039~1.7066、または1.7019~1.7042であってもよい。また、前記数式1で、n2に該当する532nm波長での厚さ方向屈折率が1.69~1.71、または1.6957~1.7029、または1.7~1.7029、または1.6957~1.6993であってもよい。即ち、前記数式1で、n1およびn2はそれぞれ前述の範囲を満足しながら同時に前記数式1の屈折率差(△n)範囲を満足することができる。
【0044】
このような小さい屈折率差(△n)は、後述のようにポリイミド系樹脂フィルム製造に使用される単量体として非対称性構造を有するジアミンであるm-PDA(m-Phenylenediamine)および曲がった形の折れた構造を有する無水物である4,4'-オキシジフタル酸無水物(4,4'-Oxydiphthalic Anhydride、ODPA)を使用して面方向と厚さ方向の屈折率差を減らすことによって達成されると判断される。
【0045】
前記面方向屈折率と厚さ方向屈折率の測定方法および装備の例は具体的に限定されず、従来屈折率測定に使用された多様な方法を制限なく適用することができる。一例を挙げれば、プリズムカプラーを用いて波長532nmで面方向屈折率と厚さ方向屈折率を測定することができる。
【0046】
前記屈折率は、厚さ10±1μmの前記ポリイミド系樹脂フィルム試料から測定することができる。前記ポリイミド系樹脂フィルムの厚さが特定数値だけ増加するか減少する場合、ポリイミド系樹脂フィルムから測定される物性も一定数値だけ変化することがある。
【0047】
前記数式1で得られる屈折率差(△n)が0.0068超過、または0.0065超過、または0.0050超過などで過度に増加すれば、位相差が増加することによって透明なディスプレイ実現時、光が透過時に歪曲現象が発生し視感性が不良な技術的限界がある。
【0048】
一方、前記ポリイミド系樹脂フィルムは10μm厚さでの黄色指数が5.5以下、または4.3以下、または1.0以上、または1.0~5.5、または1.0~4.3、または1.91~5.23、または3.03~4.16であってもよい。前記ポリイミド系樹脂フィルムの10μm厚さでの黄色指数が5.5超過、または4.3超過などで過度に増加すれば、ポリイミド系樹脂フィルムの黄色変色度が増加して無色透明なフィルム製造が難しくなる限界がある。
【0049】
このような低い黄色指数(YI)は、後述のようにポリイミド系樹脂フィルム製造に使用される単量体として非対称性構造を有するジアミンであるm-PDA(m-Phenylenediamine)および電子求引官能基であるエーテル基を有し曲がった形の折れた構造を有する無水物である4,4'-オキシジフタル酸無水物(4,4'-Oxydiphthalic Anhydride、ODPA)を使用することによって達成されると判断される。
【0050】
より具体的に、平面直線型主鎖構造を有するポリイミドの場合、ポリイミド同士が並んでpackingされて積もる反面、曲がった形の折れた主鎖構造を有するポリイミドは分子同士がよくpackingされないためCTC抑制によって透明性が確保され、エーテル基による電子求引効果によってCTC抑制効果が強化できる。
【0051】
前記一実施形態の黄色指数の測定方法および装備の例は具体的に限定されず、従来YI測定に使用された多様な方法を制限なく適用することができる。一例を挙げれば、color meter(GRETAGMACBETH社のColor-Eye 7000A)を用いて測定することができる。
【0052】
前記黄色指数は、厚さ10±1μmの前記ポリイミド系樹脂フィルム試料から測定することができる。前記ポリイミド系樹脂フィルムの厚さが特定数値だけ増加するか減少する場合、ポリイミド系樹脂フィルムから測定される物性も一定数値だけ変化することがある。
【0053】
一方、前記一実施形態のポリイミド系樹脂フィルムは、10μm厚さでの色座標b*が1~4、または1~3.3、または1~3.2、または1~3.1、または1.19~3.60、または1.62~2.95であってもよい。このように、色座標b*が低まることによって、前記一実施形態のポリイミド系樹脂フィルムは低い黄変特性を有して優れた光学特性を実現することができる。
【0054】
本発明において、"色座標"とは、CIE(国際照明委員会、Commossion International de l'Eclairage)で規定した色値であるCIE Lab色空間での座標を意味し、CIE色空間での任意の位置はL*、a*、b*の三つの座標値で表現することができる。
【0055】
ここで、L*値は明るさを示すものであってL*=0であれば黒色(black)を示し、L*=100であれば白色(white)を示す。また、a*値は当該色座標を有する色が純粋な赤色(pure red)と純粋な緑色(pure green)のうちのどちらに偏ったかを示し、b*値は当該色座標を有する色が純粋な黄色(pure yellow)と純粋な青色(pure blue)のうちのどちらに偏ったかを示す。
【0056】
具体的に、前記a*値は-aから+aの範囲を有する。a*の最大値(a* max)は純粋な赤色(pure red)を示し、a*の最小値(a* min)は純粋な緑色(pure green)を示す。また、前記b*値は-bから+bの範囲を有する。b*の最大値(b* max)は純粋な黄色(pure yellow)を示し、b*の最小値(b* min)は純粋な青色(pure blue)を示す。例えば、b*値が負数であれば純粋な青色に偏った色であり、正数であれば純粋な黄色に偏った色を意味する。b*=50とb*=80を比較した時、b*=80がb*=50より純粋な黄色に近く位置するのを意味する。
【0057】
前記色座標の測定方法および装備の例は具体的に限定されず、従来色座標測定に使用された多様な方法を制限なく適用することができる。一例を挙げれば、ポリイミド系樹脂フィルムに対してcolor meter(GRETAGMACBETH社のColor-Eye 7000A)を用いて色座標(b*)を測定することができる。
【0058】
前記色座標(b*)は、厚さ10±1μmの前記ポリイミド系樹脂フィルム試料から測定することができる。前記ポリイミド系樹脂フィルムの厚さが特定数値だけ増加するか減少する場合、ポリイミド系樹脂フィルムから測定される物性も一定数値だけ変化することがある。
【0059】
前記ポリイミド系樹脂フィルムの10μm厚さでの色座標b*が4超過、または3.3超過、または3.2超過、または3.1超過などで過度に増加すれば、ポリイミド系樹脂フィルムの色座標がずれて色歪曲現象が発生するためディスプレイとしての適用が難しい限界がある。
【0060】
一方、前記ポリイミド系樹脂フィルムは、ヘイズ値が1.0%未満、または0.1%以上1.0%未満であってもよい。前記ヘイズは、厚さ10±1μmの前記ポリイミド系樹脂フィルム試料から測定することができる。前記ポリイミド系樹脂フィルムの厚さが特定数値だけ増加するか減少する場合、ポリイミド系樹脂フィルムから測定される物性も一定数値だけ変化することがある。
【0061】
また、前記一実施形態のポリイミド系樹脂フィルムは10μm厚さでの厚さ方向の位相差値が10nm~52nm、または10nm~50nm、または10nm~45nm、または10nm~40nm、または10nm~35nm、または20nm~35nm、または27nm~52nmであってもよい。このように、低い厚さ方向の位相差(Rth)特性を通じて光学的等方性が高まって、前記ポリイミド系樹脂フィルムが適用されたディスプレイ対角視野角を確保して優れた視感性を実現することができる。
【0062】
このような低位相差は後述のようにポリイミド系樹脂フィルム製造に使用される単量体として非対称性構造を有するジアミンであるm-PDA(m-Phenylenediamine)および曲がった形の折れた構造を有する無水物である4,4'-オキシジフタル酸無水物(4,4'-Oxydiphthalic Anhydride、ODPA)を使用して面方向と厚さ方向の屈折率差を減らすことによって達成されると判断される。
【0063】
より具体的に、平面直線型主鎖構造を有するポリイミドの場合、ポリイミド同士が並んでpackingされて積もるため厚さ方向屈折率が低い反面、曲がった形の折れた主鎖構造を有するポリイミドは分子同士がよくpackingされないため厚さ方向への屈折率が増加できる。
【0064】
前記厚さ方向の位相差は532nm波長に対して測定したものであってもよく、測定方法および装備の例は具体的に限定されず、従来厚さ方向の位相差測定に使用された多様な方法を制限なく適用することができる。
【0065】
前記厚さ方向の位相差は、厚さ10±1μmの前記ポリイミド系樹脂フィルム試料から測定することができる。前記ポリイミド系樹脂フィルムの厚さが特定数値だけ増加するか減少する場合、ポリイミド系樹脂フィルムから測定される物性も一定数値だけ変化することがある。
【0066】
具体的に、厚さ方向位相差Rthは、下記数式2を通じて計算することができる。
【0067】
[数式2]
Rth(nm)=|[(nx+ny)/2]-nz|×d
【0068】
上記数式2中、nxは波長532nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムの面内屈折率のうちの最も大きい屈折率であり;nyは波長532nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムの面内屈折率のうちのnxと垂直な屈折率であり;nzは波長532nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムの厚さ方向の屈折率であり;dはポリイミド系樹脂フィルムの厚さである。
【0069】
即ち、前記厚さ方向位相差Rthは厚さ方向屈折率値(nz)と平面屈折率値の平均値[(nx+ny)/2]の差の絶対値をフィルム厚さにかけて得られた値であって、厚さ方向屈折率値(nz)と平面屈折率値の平均値[(nx+ny)/2]の差が小さいほど低い値を示すことができる。
【0070】
前記ポリイミド系樹脂フィルムは、10μm厚さでの厚さ方向の位相差値が10nm~52nm、または10nm~50nm、または10nm~45nm、または10nm~40nm、または10nm~35nmを満足することにより、前記ポリイミド系樹脂フィルムが適用されたディスプレイ上で厚さ方向屈折率値(nz)と平面屈折率値の平均値[(nx+ny)/2]の差が少なくなることによって優れた視感性を実現することができる。
【0071】
前記ポリイミド系樹脂フィルムが10μm厚さでの厚さ方向の位相差値が52nm超過、または50nm超過、または45nm超過、または40nm超過、または35nm超過などで過度に増加するようになれば、透明なディスプレイ実現時、上部にポリイミドが存在する構造で光が透過時に歪曲現象が発生して、技術的に最大45nmまで補償する補償フィルムでも透過する光の屈折を補正することができない技術的限界がある。
【0072】
前記ポリイミド系樹脂フィルムは、532nm波長での平均屈折率が1.6995~1.7060、または1.6998~1.7058、または1.7028~1.7058、または1.6998~1.7026であってもよい。前記平均屈折率を測定する方法の例としては、プリズムカプラーを用いて波長532nmで面方向(TE)および厚さ方向(TM)屈折率を測定し、下記数式3を通じて平均屈折率を計算した。
【0073】
[数式3]
平均屈折率=(nx+ny+nz)/3
【0074】
上記数式3中、nxは波長532nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムの面内屈折率のうちの最も大きい屈折率であり;nyは波長532nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムの面内屈折率のうちのnxと垂直な屈折率であり;nzは波長532nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムの厚さ方向の屈折率である。
【0075】
前記平均屈折率は、厚さ10±1μmの前記ポリイミド系樹脂フィルム試料から測定することができる。前記ポリイミド系樹脂フィルムの厚さが特定数値だけ増加するか減少する場合、ポリイミド系樹脂フィルムから測定される物性も一定数値だけ変化することがある。
【0076】
一方、前記ポリイミド系樹脂フィルムは、ポリイミド系樹脂を含むことができる。前記ポリイミド系樹脂は、ポリイミド、そしてその前駆体重合体であるポリアミック酸、ポリアミック酸エステルを全て含むものを意味する。即ち、前記ポリイミド系高分子は、ポリアミック酸繰り返し単位、ポリアミック酸エステル繰り返し単位、およびポリイミド繰り返し単位からなる群より選択された1種以上を含むことができる。即ち、前記ポリイミド系高分子は、ポリアミック酸繰り返し単位1種、ポリアミック酸エステル繰り返し単位1種、ポリイミド繰り返し単位1種、またはこれらの2種以上の繰り返し単位が混合された共重合体を含むことができる。
【0077】
前記ポリアミック酸繰り返し単位、ポリアミック酸エステル繰り返し単位、およびポリイミド繰り返し単位からなる群より選択された1種以上の繰り返し単位は、前記ポリイミド系高分子の主鎖を形成することができる。
【0078】
前記ポリイミド系樹脂フィルムは、ポリイミド系樹脂の硬化物を含むことができる。前記ポリイミド系樹脂の硬化物は、前記ポリイミド系樹脂の硬化工程を経て得られる生成物を意味する。
【0079】
特に、前記ポリイミド系樹脂は、下記化学式1で表されるポリイミド繰り返し単位を含むことができる。
【0080】
【0081】
上記化学式1中、X1はエーテル基を含有した芳香族4価官能基であり、Y1は炭素数6~10の芳香族2価官能基である。
【0082】
前記化学式1中、X1はエーテル基を含有した芳香族4価官能基であり、前記X1はポリイミド系樹脂合成に使用されるテトラカルボン酸二無水物化合物から誘導された官能基である。
【0083】
前記エーテル基を含有した芳香族4価官能基を前記X1に含むようになれば、エーテル官能基と2つのベンゼン環が曲がった形態に折れた構造がポリイミド鎖構造に導入されることによって分子同士がよくpackingされないため厚さ方向への屈折率が増加しながら、面方向と厚さ方向の屈折率差を減らすことによって低位相差を実現することができ、エーテル基による電子求引効果によってイミド鎖内に存在するPi-電子のCTC(charge transfer complex)形成を抑制することを通じて透明性を確保して優れた光学特性を実現することができる。
【0084】
反面、エーテル基を含有しないBPDA(3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、またはPMDA(ピロメリット酸二無水物)に由来した官能基を前記X1に含むようになれば、前述のエーテル基による透明性および曲がった形態に折れた構造実現が難しくて面方向と厚さ方向の屈折率差が増加し、黄色指数も増加する問題が発生することがある。
【0085】
より具体的に、前記X14価の官能基は下記化学式2で表される4価の官能基を含むことができる。
【0086】
【0087】
前記化学式2で表される官能基の具体的な例としては、4,4'-オキシジフタル酸無水物(4,4'-Oxydiphthalic Anhydride、ODPA)に由来した下記化学式2-1で表される官能基が挙げられる。
【0088】
【0089】
一方、前記化学式1中、Y1は炭素数6~10の芳香族2価官能基であり、前記Y1はポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、またはポリイミド合成時使用されるジアミン化合物に由来した官能基であってもよい。
【0090】
前記炭素数6~10の芳香族2価官能基は、フェニレン基を含むことができる。より具体的に、前記Y1の炭素数6~10の芳香族2価官能基は、下記化学式3で表される官能基を含むことができる。
【0091】
【0092】
前記化学式3で表される官能基の具体的な例としては、m-フェニレンジアミン(1,3-phenylenediamine、m-PDA)に由来した下記化学式3-1で表される官能基が挙げられる。
【0093】
【0094】
前記化学式3-1で表される官能基を前記Y1に含むようになれば、曲がった形態に非対称性構造がポリイミド鎖構造に導入されることによって厚さ方向に配列を維持することができて、面方向と厚さ方向の屈折率差を減らすことによって低位相差を実現することができる。
【0095】
反面、曲がった形態の非対称構造を有していないp-フェニレンジアミン(1,4-phenylenediamine、p-PDA)に由来した官能基を前記Y1に含むようになれば、前述の曲がった非対称性構造の実現が難しくて平面一直線方向にポリイミドが重合されながら高分子が面方向にのみ成長するため、高分子同士がよくpackingされながら厚さ方向の屈折率が減少して、面方向と厚さ方向の屈折率差が増加する問題が発生することがある。
【0096】
また、4,4'-オキシジアニリン(4,4'-Oxydianiline、ODA)に由来した官能基を前記Y1に含むようになれば、対称性を有する構造であるため高分子同士がよくpackingされながら厚さ方向の屈折率が減少して、面方向と厚さ方向の屈折率差が増加する問題が発生することがある。
【0097】
前記ポリイミド系樹脂は、エーテル基を含有した芳香族テトラカルボン酸二無水物および炭素数6~10の芳香族ジアミンの結合物を含むことができる。
【0098】
前記エーテル基を含む芳香族テトラカルボン酸二無水物は前述のエーテル基を含有した芳香族4価官能基の両末端に無水物基(-OC-O-CO-)が導入された化合物であって、エーテル基を含有した芳香族4価官能基に関する説明は前述のとおりである。
【0099】
前記エーテル基を含有した芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体的な例としては、4,4'-オキシジフタル酸無水物(4,4'-OxydiphthalicAnhydride、ODPA)が挙げられる。
【0100】
前記炭素数6~10の芳香族ジアミンは前述の炭素数6~10の芳香族2価官能基の両末端にアミノ基(-NH2)が導入された化合物であって、炭素数6~10の芳香族2価官能基に関する説明は前述のとおりである。
【0101】
前記炭素数6~10の芳香族ジアミンの具体的な例としては、m-フェニレンジアミン(1,3-phenylenediamine、m-PDA)が挙げられる。
【0102】
より具体的に、前記ポリイミド系樹脂は、前記エーテル基を含有した芳香族テトラカルボン酸二無水物の末端無水物基(-OC-O-CO-)と、炭素数6~10の芳香族ジアミンの末端アミノ基(-NH2)の反応でアミノ基の窒素原子と無水物基の炭素原子間結合が形成される。
【0103】
一方、前記ポリイミド系樹脂は、前記化学式1で表されるポリイミド繰り返し単位以外に、下記化学式4で表されるポリイミド繰り返し単位をさらに含むことができる。即ち、前記ポリイミド系樹脂は、前記化学式1で表されるポリイミド繰り返し単位および、下記化学式4で表されるポリイミド繰り返し単位を含むことができる。
【0104】
【0105】
上記化学式4中、X2はエーテル基を含有した芳香族4価官能基であり、Y2はエーテル基を含有した炭素数12~17の芳香族2価官能基である。
【0106】
前記X2は、前記化学式1のX1と同一である。
【0107】
前記エーテル基を含有した炭素数12~17の芳香族2価官能基は、4,4'-オキシジアニリン(4,4'-Oxydianiline、ODA)に由来した下記化学式5で表される官能基が挙げられる。
【0108】
【0109】
前記化学式5で表される官能基を前記Y2に含むようになれば、エーテル基による電子求引効果によってイミド鎖内に存在するPi-電子のCTC(charge transfer complex)形成を抑制することを通じて透明性を確保して光学特性をより改善することができる。また、前記化学式5で表される官能基も曲がった形の折れた構造であるため、厚さ方向の屈折率を小さく維持しながら、面方向と厚さ方向の屈折率差が増加することを抑制して低位相差を維持することができる。
【0110】
即ち、前記ポリイミド系高分子は、ジアミン由来繰り返し単位が前記化学式3で表される官能基である化学式1で表される繰り返し単位を含有する第1繰り返し単位;およびジアミン由来繰り返し単位が前記化学式5で表される官能基である化学式4で表される繰り返し単位を含有した第2繰り返し単位;を含むことができる。前記第1繰り返し単位および第2繰り返し単位は、前記ポリイミド系高分子内でランダムに配列してランダム共重合体を成すか、第1繰り返し単位間のブロック、第2繰り返し単位間のブロックを形成しながらブロック共重合体を成すことができる。
【0111】
前記化学式1で表される繰り返し単位および前記化学式4で表される繰り返し単位を含むポリイミド系高分子はテトラカルボン酸二無水物化合物と共に互いに異なる2種以上のジアミン化合物を反応させて製造することができ、前記2種のジアミン化合物を同時に添加してランダム共重合体を合成するか、順次に添加してブロック共重合体を合成することができる。
【0112】
前記ポリイミド系樹脂は、全体繰り返し単位100モル%に対して、前記化学式1で表されるポリイミド繰り返し単位を20モル%~100モル%、または30モル%~100モル%、または50モル%~100モル%、または70モル%~100モル%で含むことができる。また、前記ポリイミド系樹脂は、前記化学式4で表されるポリイミド繰り返し単位を、0モル%~80モル%、または0モル%~70モル%、または0モル%~50モル%、または0モル%~30モル%で含むことができる。前述の数値範囲内で、前記ポリイミド系樹脂から合成されたポリイミド系樹脂フィルムは前記数式1で得られる屈折率差(△n)が0.0068以下であり、10μm厚さでの黄色指数が5.5以下である特性を同時に満足することができる。
【0113】
これにより、低い黄変度を通じて無色透明の優れた光学特性を実現することができ、同時に低い厚さ方向の位相差(Rth)特性を通じて光学的等方性が高まって、前記ポリイミド系樹脂フィルムが適用されたディスプレイ対角視野角を確保することによって、光の歪曲現象による視感性低下を防止することができる。
【0114】
反面、前記ポリイミド系樹脂において化学式1で表されるポリイミド繰り返し単位を過度に少量含有する場合、厚さ方向位相差Rth値が25nm超過で増加するにつれて位相差増加による光の歪曲現象によって視感性が低下し、色座標b*が2超過で増加して黄色変色度が増加する問題がある。
【0115】
前記化学式1で表されるポリイミド繰り返し単位および化学式4で表されるポリイミド繰り返し単位は、ポリイミド系樹脂に含有されている全体繰り返し単位に対して70モル%以上、または80モル%以上、または90モル%以上、または70モル%以上100モル%以下、80モル%以上100モル%以下、70モル%以上90モル%以下、70モル%以上99モル%以下、80モル%以上99モル%以下、90モル%以上99モル%以下に含有されてもよい。
【0116】
即ち、前記ポリイミド系樹脂は前記化学式1で表されるポリイミド繰り返し単位および化学式4で表されるポリイミド繰り返し単位のみからなるか、大部分が前記化学式1で表されるポリイミド繰り返し単位および化学式4で表されるポリイミド繰り返し単位からなってもよい。
【0117】
前記ポリイミド系樹脂の重量平均分子量(GPC測定)が大きく限定されるのではないが、例えば、1000g/mol以上200000g/mol以下、または10000g/mol以上200000g/mol以下であってもよい。
【0118】
本発明によるポリイミド系樹脂は剛直な構造による耐熱性、機械的強度などの特性をそのまま維持しながら、優れた無色透明な特性を示すことができて、素子用基板、ディスプレイ用カバー基板、光学フィルム(optical film)、IC(integrated circuit)パッケージ、粘着フィルム(adhesive film)、多層FRC(flexible printed circuit)、テープ、タッチパネル、光ディスク用保護フィルムなどのような多様な分野に使用することができ、特にディスプレイ用カバー基板に適するのであり得る。
【0119】
より具体的に、前記ポリイミド系樹脂フィルムを合成する方法の例が大きく限定されるのではなく、例えば、前記ポリイミド系樹脂を含有した樹脂組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階(段階1);前記塗膜を乾燥する段階(段階2);前記乾燥された塗膜を熱処理して硬化する段階(段階3)を含む、フィルムの製造方法を使用することができる。
【0120】
前記段階1は、前述のポリイミド系樹脂を含有した樹脂組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階である。前記ポリイミド系樹脂を含有した樹脂組成物を基板に塗布する方法は特に制限されず、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェットなどの方法を使用することができる。
【0121】
そして、前記ポリイミド系樹脂を含有した樹脂組成物は、有機溶媒に溶解または分散させたものであってもよい。このような形態を有する場合、例えば、ポリイミド系樹脂を有機溶媒中で合成した場合には、溶液は得られる反応溶液それ自体であってもよく、またこの反応溶液を他の溶媒で希釈したものであってもよい。また、ポリイミド系樹脂が粉末として得られた場合には、これを有機溶媒に溶解させて溶液としたものであってもよい。
【0122】
前記有機溶媒の具体的な例としては、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチルウレア、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグリム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらは単独で使用することもでき、混合して使用することもできる。
【0123】
前記ポリイミド系樹脂を含有した樹脂組成物は、フィルム形成工程時の塗布性などの工程性を考慮して適切な粘度を有するようにする量で固形分を含むことができる。例えば、全体樹脂の含量が5重量%以上25重量%以下になるように組成物の含量を調節することができ、または5重量%以上20重量%以下、または5重量%以上15重量%以下に調節することができる。
【0124】
また、前記ポリイミド系樹脂を含有した樹脂組成物は、有機溶媒以外に他の成分を追加的に含むことができる。非制限的な例として、前記ポリイミド系樹脂を含有した樹脂組成物が塗布された時、膜厚の均一性や表面平滑性を向上させるか、あるいは基板との密着性を向上させるか、あるいは誘電率や導電性を変化させるか、あるいは緻密性を増加させることができる添加剤が追加的に含まれてもよい。このような添加剤としては、界面活性剤、シラン系化合物、誘電体または架橋性化合物などが例示できる。
【0125】
前記段階2は、前記ポリイミド系樹脂を含有した樹脂組成物を基板に塗布して形成された塗膜を乾燥する段階である。
【0126】
前記塗膜の乾燥段階はホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって実施することができ、50℃以上150℃以下、または50℃以上100℃以下の温度で行うことができる。
【0127】
前記段階3は、前記乾燥された塗膜を熱処理して硬化する段階である。この時、前記熱処理は、ホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって実施することができ、200℃以上、または200℃以上300℃以下の温度で行うことができる。
【0128】
前記ポリイミド系樹脂フィルムの厚さが大きく限定されるのではないが、例えば、0.01μm以上1000μm以下の範囲内で自由に調節可能である。前記ポリイミド系樹脂フィルムの厚さが特定数値だけ増加するか減少する場合、ポリイミド系樹脂フィルムから測定される物性も一定数値だけ変化することがある。
【0129】
一方、前記ポリイミド系樹脂フィルムは、ホスフェート系添加剤を含むことができる。前記ホスフェート系添加剤はホスフェート官能基を含有する化合物を含み、バルキーな構造を通じてポリイミド主鎖間空間を広めて、高い透過度、低い黄色指数および低い位相差を実現することができる。
【0130】
前記ホスフェート系添加剤は、前記ポリイミド系樹脂フィルム全体重量に対して、1重量%~50重量%、または1重量%~40重量%、または1重量%~30重量%、または5重量%~50重量%、または5重量%~40重量%、または5重量%~30重量%、または6重量%~30重量%、または7重量%~30重量%、または12重量%~30重量%、または5重量%~25重量%、または6重量%~25重量%、または7重量%~25重量%、または11重量%~25重量%、または5重量%~18重量%、または6重量%~18重量%、または7重量%~18重量%、または12重量%~18重量%で含まれてもよい。
【0131】
より具体的に、前記ポリイミド系樹脂フィルムを製造するポリイミド系樹脂を含有した樹脂組成物に前記ホスフェート系添加剤が投入されて、ポリイミド系樹脂フィルムにまで残留することになる。前記ポリイミド系樹脂を含有した樹脂組成物内では固形分全体重量に対して1重量%~50重量%、または1重量%~40重量%、または1重量%~30重量%、または5重量%~50重量%、または5重量%~40重量%、または5重量%~30重量%、または6重量%~30重量%、または7重量%~30重量%、または12重量%~30重量%、または5重量%~25重量%、または6重量%~25重量%、または7重量%~25重量%、または11重量%~25重量%、または5重量%~18重量%、または6重量%~18重量%、または7重量%~18重量%、または12重量%~18重量%で前記ホスフェート系添加剤が含まれてもよい。
【0132】
前記ホスフェート系添加剤の含量が前記ポリイミド系樹脂フィルム全体重量に対して過度に減少するようになれば、ホスフェート系添加剤による低位相差および高い透明度の実現が難しいことがある。反面、前記ホスフェート系添加剤の含量が前記ポリイミド系樹脂フィルム全体重量に対して過度に増加するようになれば、ヘイズが増加しながら黄色指数も増加して光学物性が不良になり、耐熱特性が不良になる問題がある。
【0133】
前記ホスフェート系添加剤は、トリアリールホスフェートを含むことができる。前記トリアリールホスフェートはホスフェート官能基に3つのアリール基が結合した構造であって、前記トリアリールホスフェートの具体例が大きく限定されるのではないが、一例を挙げれば、トリフェニルホスフェートを使用することができる。
【0134】
2.ディスプレイ装置用基板
一方、発明のまた他の実施形態によれば、前記他の実施形態のポリイミド系樹脂フィルムを含むディスプレイ装置用基板を提供することができる。前記ポリイミド系樹脂フィルムに関する内容は、前記一実施形態で前述した内容を全て含むことができる。
【0135】
前記基板を含むディスプレイ装置は、液晶表示装置(liquid crystal display device、LCD)、有機発光ダイオード(organic light emitting diode、OLED)、フレキシブルディスプレイ(Flexible Display)、または巻取り可能ディスプレイ装置(rollable display or foldable display)などが挙げられるが、これに限定されるのではない。
【0136】
前記ディスプレイ装置は適用分野および具体的な形態などによって多様な構造を有することができ、例えば、カバープラスチックウィンドウ、タッチパネル、偏光板、バリアフィルム、発光素子(OLED素子など)、透明基板などを含む構造であってもよい。
【0137】
前述の他の実施形態のポリイミド系樹脂フィルムはこのような多様なディスプレイ装置において基板、外部保護フィルムまたはカバーウィンドウなどの多様な用途として使用することができ、より具体的には、基板として適用することができる。
【0138】
例えば、前記ディスプレイ装置用基板は、素子保護層、透明電極層、シリコン酸化物層、ポリイミド系樹脂フィルム、シリコン酸化物層およびハードコーティング層が順次に積層された構造を備えることができる。
【0139】
前記透明ポリイミド基板は耐溶剤性または水分透過性および光学的特性をより向上させることができる側面から透明ポリイミド系樹脂フィルムと硬化層の間に形成された、シリコン酸化物層を含むことができ、前記シリコン酸化物層はポリシラザンを硬化させて生成されるものであってもよい。
【0140】
具体的に、前記シリコン酸化物層は、前記透明ポリイミド系樹脂フィルムの少なくとも一面上にコーティング層を形成する段階以前にポリシラザンを含む溶液をコーティングおよび乾燥した後、前記コーティングされたポリシラザンを硬化させて形成されるものであってもよい。
【0141】
本発明によるディスプレイ装置用基板は、前述の素子保護層を含むことによって優れた曲げ特性および耐衝撃性を有しながら、耐溶剤性、光学特性、水分透過度および耐スクラッチ性を有する透明ポリイミドカバー基板を提供することができる。
【0142】
3.光学装置
一方、発明のまた他の実施形態によれば、前記他の実施形態のポリイミド系樹脂フィルムを含む光学装置を提供することができる。前記ポリイミド系樹脂フィルムに関する内容は、前記一実施形態で前述した内容を全て含むことができる。
【0143】
前記光学装置は光によって実現される性質を用いた各種装置を全て含むことができ、例えば、ディスプレイ装置が挙げられる。前記ディスプレイ装置の具体的な例としては、液晶表示装置(liquid crystal display device、LCD)、有機発光ダイオード(organic light emitting diode、OLED)、フレキシブルディスプレイ(Flexible Display)、または巻取り可能ディスプレイ装置(rollable display or foldable display)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0144】
前記光学装置は適用分野および具体的な形態などによって多様な構造を有することができ、例えば、カバープラスチックウィンドウ、タッチパネル、偏光板、バリアフィルム、発光素子(OLED素子など)、透明基板などを含む構造であってもよい。
【0145】
前述の他の実施形態のポリイミド系樹脂フィルムはこのような多様な光学装置において基板、外部保護フィルムまたはカバーウィンドウなどの多様な用途として使用することができ、より具体的には基板に適用することができる。
【発明の効果】
【0146】
本発明によれば、低い黄色指数を通じて顕著に改善された透明度を通じて光透過率を高めて低い複屈折を有するようにして光学部材として使用するに適し、同時に低い屈折率差(△n)特性を通じて光学的等方性が高まって低い位相差を実現することによって、ポリイミド系樹脂フィルムが適用されたディスプレイ対角視野角を確保して光の歪曲現象による視感性低下を防止することができるポリイミド系樹脂フィルムおよびこれを用いたディスプレイ装置用基板、および光学装置に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0147】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【実施例】
【0148】
<実施例および比較例:ポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムの製造>
実施例1
(1)ポリイミド前駆体組成物の製造
窒素気流が流れる攪拌機内に有機溶媒DMAcを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態でm-フェニレンジアミン(1,3-phenylenediamine、m-PDA)を同じ温度で添加して溶解させた。前記m-フェニレンジアミン(1,3-phenylenediamine、m-PDA)が添加された溶液に酸二無水物として4,4'-オキシジフタル酸無水物(4,4'-Oxydiphthalic Anhydride、ODPA)を同じ温度で添加して24時間攪拌した。この時、m-PDA、OPDAのモル比率は下記表1に記載のとおりである。
【0149】
その後、トリフェニルホスフェート(Triphenylphosphate、TPhP)を全体固形分含量に対して15重量%で添加し攪拌してポリイミド前駆体組成物を製造した。
【0150】
(2)ポリイミドフィルムの製造
前記ポリイミド前駆体組成物をガラス基板上にスピンコーティングした。ポリイミド前駆体組成物が塗布されたガラス基板を80℃で5分~30分、260℃で60分を維持して硬化工程を行った。硬化工程完了後に、ガラス基板を水に浸してガラス基板の上に形成されたフィルムを剥ぎ取ってオーブンで100℃で乾燥して、厚さが10μm(±1μm誤差含む)であるポリイミドフィルムを製造した。
【0151】
実施例2-5、比較例1
m-PDA、OPDAのモル比率、およびTPhP含量を下記表1に記載の通り変更したことを除いては前記実施例1と同様な方法でポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムを製造した。
【0152】
実施例6
(1)ポリイミド前駆体組成物の製造
窒素気流が流れる攪拌機内に有機溶媒DMAcを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態でm-フェニレンジアミン(1,3-phenylenediamine、m-PDA)および4,4'-オキシジアニリン(4,4'-Oxydianiline、ODA)を同じ温度で添加して溶解させた。前記m-フェニレンジアミン(1,3-phenylenediamine、m-PDA)および4,4'-オキシジアニリン(4,4'-Oxydianiline、ODA)が添加された溶液に酸二無水物として4,4'-オキシジフタル酸無水物(4,4'-Oxydiphthalic Anhydride、ODPA)を同じ温度で添加して24時間攪拌した。この時、m-PDA、ODA、OPDAのモル比率は、下記表2に記載のとおりである。
【0153】
その後、トリフェニルホスフェート(Triphenylphosphate、TPhP)を全体固形分含量に対して10重量%で添加し攪拌してポリイミド前駆体組成物を製造した。
【0154】
(2)ポリイミドフィルムの製造
前記ポリイミド前駆体組成物をガラス基板上にスピンコーティングした。ポリイミド前駆体組成物が塗布されたガラス基板を80℃で5分~30分、260℃で60分を維持して硬化工程を行った。硬化工程完了後に、ガラス基板を水に浸してガラス基板の上に形成されたフィルムを剥ぎ取ってオーブンで100℃で乾燥して、厚さが10μm(±1μm誤差含む)であるポリイミドフィルムを製造した。
【0155】
実施例7-10、比較例2
m-PDA、ODA、OPDAのモル比率、およびTPhP含量を下記表2に記載のとおり変更したことを除いては前記実施例6と同様な方法でポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムを製造した。
【0156】
比較例3-7
m-PDA、p-PDA(1,4-phenylenediamine)、ODA、OPDA、BPDA(3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、PMDA(ピロメリット酸二無水物)のモル比率、およびTPhP含量を下記表3に記載の通り変更したことを除いては前記実施例6と同様な方法でポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムを製造した。
【0157】
<実験例:実施例および比較例で得られたポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムの物性測定>
前記実施例および比較例で得られたポリイミド前駆体組成物およびポリイミドフィルムから物性を下記方法で測定し、その結果を表1~表3に示した。
【0158】
1.黄色指数(YI)、色座標(b*)
実施例および比較例で製造されたポリイミドフィルムに対してcolor meter(GRETAGMACBETH社のColor-Eye 7000A)を用いて黄色指数および色座標(b*)を測定し、下記表1に示した。
【0159】
2.厚さ方向位相差(Rth)
測定装置としてAXOMETRICS社製の商品名「アクソスキャン(AxoScan)」を使用して、実施例および比較例で製造したポリイミドフィルムの532nmの光に対する屈折率の値をインプットした後、温度:25℃、湿度:40%の条件下波長532nmの光を使用して、厚さ方向、面方向のリターデーションを測定した後、求められた厚さ方向のリターデーション測定値(測定装置の自動測定による測定値)を使用して、フィルムの厚さ10μm当りリターデーション値に換算することによって求め、下記表1に示した。
【0160】
具体的に、厚さ方向位相差Rthは、下記の数式2を通じて計算された。
【0161】
[数式2]
Rth(nm)=|[(nx+ny)/2]-nz|×d
(上記数式2中、nxは波長532nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムの面内屈折率のうちの最も大きい屈折率であり;nyは波長532nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムの面内屈折率のうちのnxと垂直な屈折率であり;nzは波長532nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムの厚さ方向の屈折率であり;dはポリイミドフィルムの厚さである。)
【0162】
3.屈折率
実施例および比較例で製造されたポリイミドフィルムに対してプリズムカプラーを用いて波長532nmで面方向(TE)および厚さ方向(TM)屈折率を測定し、下記の数式3を通じて平均屈折率を計算した。
【0163】
[数式3]
平均屈折率=(nx+ny+nz)/3
(上記数式3中、nxは波長532nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムの面内屈折率のうちの最も大きい屈折率であり;nyは波長532nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムの面内屈折率のうちのnxと垂直な屈折率であり;nzは波長532nmの光で測定されるポリイミド樹脂フィルムの厚さ方向の屈折率である。)
【0164】
4.Haze
Hazemeter(NDH-5000)を用いてポリイミドフィルムのヘイズ値を測定し、以下の基準下に評価した。
【0165】
[表1]
実施例1-5および比較例1の実験例測定結果
【表1】
【0166】
上記表1に示されているように、実施例1~5で得られたポリイミドフィルム(厚さ10μm基準)は厚さ方向位相差Rth値が20nm~35nmであり、色座標b*が1.19~3.60であり、YIが1.91~5.23であり、532nmでの屈折率差(nTE-nTM)が0.0034~0.0045であり、532nmでの平均屈折率が1.7028~1.7058であるのを確認した。反面、比較例1で得られたポリイミドフィルム(厚さ10μm基準)の場合、厚さ方向位相差Rth値が60nmであって実施例1~5に対比して増加しディスプレイに適した視感性を発現しにくく、色座標b*が6.04、YIが9.58であって実施例1~5に対比して高く色歪曲現象が発生する限界があった。また、532nmでの屈折率差(nTE-nTM)が0.0076であり、532nmでの平均屈折率が1.708であって実施例1~5に対比して高位相差を示すのを確認した。
【0167】
[表2]
実施例6-10および比較例2の実験例測定結果
【表2】
【0168】
上記表2に示されているように、実施例6~10で得られたポリイミドフィルム(厚さ10μm基準)は厚さ方向位相差Rth値が27nm~52nmであり、色座標b*が1.62~2.95であり、YIが3.03~4.16であり、532nmでの屈折率差(nTE-nTM)が0.0044~0.0067であり、532nmでの平均屈折率が1.6998~1.7026であるのを確認した。反面、比較例2で得られたポリイミドフィルム(厚さ10μm基準)の場合、厚さ方向位相差Rth値が73nmであって実施例6~10に対比して増加しディスプレイに適した視感性を発現しにくく、色座標b*が4.98、YIが8.24であって実施例6~10に対比して高く色歪曲現象が発生する限界があった。また、532nmでの屈折率差(nTE-nTM)が0.0100であり、532nmでの平均屈折率が1.7056であって実施例6~10に対比して増加し高位相差を示すのを確認した。
【0169】
【0170】
上記表3に示されているように、比較例3~5で得られたポリイミドフィルム(厚さ10μm基準)は厚さ方向位相差Rth値が53nm~98nmであり、色座標b*が3.32~3.83であり、YIが4.37~6.46であり、532nmでの屈折率差(nTE-nTM)が0.0069~0.0121であり、532nmでの平均屈折率が1.6993~1.7024であるのを確認した。また、比較例6~7で得られたポリイミドフィルム(厚さ10μm基準)は厚さ方向位相差Rth値が646nm~1024nmであり、色座標b*が11.44~61.15であり、YIが17.41~81であり、532nmでの屈折率差(nTE-nTM)が0.0643~0.0923であり、532nmでの平均屈折率が1.7115~1.7657であるのを確認した。即ち、比較例3~7の場合、厚さ方向位相差Rth値が実施例1~10に対比して増加しディスプレイに適した視感性を発現しにくく、532nmでの屈折率差(nTE-nTM)が実施例1~10に対比して増加し高位相差を示すのを確認した。
【国際調査報告】