IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユミコアの特許一覧

特表2023-551835リチウムイオン充電式電池用正極活物質
<>
  • 特表-リチウムイオン充電式電池用正極活物質 図1
  • 特表-リチウムイオン充電式電池用正極活物質 図2
  • 特表-リチウムイオン充電式電池用正極活物質 図3
  • 特表-リチウムイオン充電式電池用正極活物質 図4
  • 特表-リチウムイオン充電式電池用正極活物質 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】リチウムイオン充電式電池用正極活物質
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20231206BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231206BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532403
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2021083104
(87)【国際公開番号】W WO2022112472
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】20210213.3
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501094270
【氏名又は名称】ユミコア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 真一
(72)【発明者】
【氏名】テヒョン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・マルティン・パウルゼン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050DA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA15
(57)【要約】
本発明は、リチウムイオン充電式電池用正極活物質であって、正極活物質が、(i)レーザー粒子径分布分析によって決定されるメジアン径D50が3μm~15μmである単結晶粒子を含む第1リチウム遷移金属酸化物、及び(ii)レーザー粒子径分布分析によって決定されるメジアン径D50が0.5μm~3μmである単結晶粒子を含む第2リチウム遷移金属酸化物、を含み、当該正極活物質の総重量に対する当該第2リチウム遷移金属酸化物の重量分率φが、5重量%~40重量%である、正極活物質を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン充電式電池用正極活物質であって、
前記正極活物質が、Li、金属M’、及び酸素を含み、前記金属M’が、Niと、Coと、Mn又はAlのいずれかと、任意で、B、Ba、Sr、Mg、Nb、Ti、W、F、及びZrから選択される1つ以上の元素と、を含み、
前記正極活物質が、リチウム遷移金属酸化物粉末の混合物であり、
前記混合物が、両方ともが単結晶粉末である第1リチウム遷移金属酸化物粉末及び第2リチウム遷移金属酸化物粉末を含み、
前記第1リチウム遷移金属酸化物粉末が、前記正極活物質の第1重量分率φを構成し、レーザー回折粒子径分布分析によって決定される3μm~15μmの第1メジアン径D50を有し、
前記第2リチウム遷移金属酸化物粉末が、前記正極活物質の第2重量分率φを構成し、レーザー回折粒子径分布分析によって決定される0.5μm~3μmの第2メジアン径D50を有し、
前記第2重量分率φが、5重量%~40重量%である、正極活物質。
【請求項2】
前記第1メジアン径D50が4μm~15μmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記第1メジアン径D50が0.5μm~2μmである、請求項1又は2に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記第1メジアン径D50と前記第2メジアン径D50との比が2~20である、請求項1~3のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記第1メジアン径D50と前記第2メジアン径D50との比が4~10、好ましくは6~8である、請求項1~4のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記第1メジアン径D50が5μm~10μmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記第2メジアン径D50が0.5μm~1.5μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記第2重量分率φが15重量%~30重量%、好ましくは20重量%~25重量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記正極活物質が、207MPaの一軸圧力を30秒間加えた後に、少なくとも3.50g/cmの圧縮密度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記第1リチウム遷移金属酸化物粉末が、Li、金属M’、及び酸素を含み、M’が、一般式Ni1-xa-ya-zaMnxaCoyaA’zaを有し、0.00≦xa≦0.30、0.01≦ya≦0.20、及び0.00≦za≦0.01であり、A’が、Mn、B、Ba、Sr、Mg、Al、Nb、Ti、W、F、及びZrから選択される1つ以上の元素を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項11】
前記第2リチウム遷移金属酸化物粉末が、Li、金属M’、及び酸素を含み、前記M’が、一般式Ni1-xb-yb-zbMnxbCoybA’’zbを有し、0.00≦xb≦0.35、0.01≦yb≦0.35、及び0≦zb≦0.01であり、A’’が、B、Ba、Sr、Mg、Al、Nb、Ti、W、F、及びZrから選択される1つ以上の元素を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項12】
前記第1重量分率φと前記第2重量分率φとの合計が少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である、請求項1~11のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項13】
正極活物質の製造方法であって、レーザー回折粒子径分布分析によって決定される第1メジアン径D50が3μm~15μmである体積基準粒子径分布を有する第1リチウム遷移金属酸化物粉末を、レーザー回折粒子径分布分析によって決定される第2メジアン径D50が0.5μm~3μmである体積基準粒子径分布を有する第2リチウム遷移金属酸化物粉末と混合する工程を含み、前記第1リチウム遷移金属酸化物粉末及び前記第2リチウム遷移金属酸化物粉末が両方とも単結晶粉末であり、前記正極活物質の総重量に対する前記第2リチウム遷移金属酸化物粉末の重量分率φが5重量%~40重量%である、方法。
【請求項14】
前記重量分率φが15重量%~30重量%、好ましくは20重量%~25重量%である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記正極活物質が請求項1~10のいずれか一項に記載の正極活物質である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、電池セル。
【請求項17】
ポータブルコンピュータ、タブレット、携帯電話、電気ビークル、及びエネルギー貯蔵システムのうちのいずれか1つの電池における、請求項1~12のいずれか一項に記載の正極活物質の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン充電式電池用正極活物質粉末に関する。
【0002】
特に、本発明は、Li-Ni-Mn-Co酸化物又はLi-Ni-Co-Al酸化物であり、主に、又は完全に単結晶粒子から形成される、そのような正極材料に関する。
【0003】
そのような単結晶正極活物質粉末は、例えば、単結晶正極活物質粉末の調製方法である国際公開第2019/185349(A1)号から既に知られている。その理想的な形態では、粉末は高密度の「モノリシック」粒子からなり、各粒子は二次粒子ではなく単結晶体である。そのような単結晶粒子は、より高い機械的強度を有し、電池においてより良好なサイクル安定性が得られる。
【0004】
しかしながら、粒子間に比較的多くの空隙が存在するために、そのような正極活物質の電池正極における充填密度は比較的低く、したがってそのような正極が占める体積は比較的大きい。
【0005】
本発明の目的は、既知の単結晶Li-Ni-Mn-Co又はLi-Ni-Co-Al酸化物よりも、圧縮後により高い密度を有し、したがって電池電極においてより高い密度を有する点で有利な正極活物質を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
この目的は、リチウムイオン充電式電池用正極活物質であって、当該正極活物質が、Li、金属M’、及び酸素を含み、当該金属M’が、Niと、Coと、Mn又はAlのいずれかと、任意で、B、Ba、Sr、Mg、Nb、Ti、W、F、及びZrから選択される1つ以上の元素と、を含み、また、当該正極活物質が、リチウム遷移金属酸化物粉末の混合物であり、
当該混合物が、両方ともが単結晶粉末である第1リチウム遷移金属酸化物粉末及び第2リチウム遷移金属酸化物粉末を含み、
当該第1リチウム遷移金属酸化物粉末が、当該正極活物質の第1重量分率φを構成し、レーザー回折粒子径分布分析によって決定される3μm~15μmの第1メジアン径D50を有し、
当該第2リチウム遷移金属酸化物粉末が、当該正極活物質の第2重量分率φを構成し、レーザー回折粒子径分布分析によって決定される0.5μm~3μmの第2メジアン径D50を有し、
当該第2重量分率φが、5重量%~40重量%である、正極活物質を提供することによって実現される。
【0007】
実施例によって示され、表1に示す結果によって裏付けられるように、本発明による正極活物質を使用して、より高い圧縮密度が実現されることが観察される。EX(実施例)1.4では、第1リチウム遷移金属酸化物及び第2遷移金属酸化物を含み、第1単結晶リチウム遷移金属酸化物が第2単結晶リチウム遷移金属酸化物よりも高いメジアン径を有する、正極活物質を教示する。
【0008】
更なるガイダンスによって、本発明の教示をよりよく理解するための図面が含まれる。当該図面は、本発明の説明を助けることを意図するものであり、本開示の発明を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1単結晶リチウム遷移金属酸化物及び第2単結晶リチウム遷移金属酸化物を含むEX1.4の正極活物質粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図2】正極活物質の総重量に対する第2単結晶リチウム遷移金属酸化物の重量分率φ(X軸、重量%で表される)の関数としてEX1.1~1.5及びCEX(比較例)1.5の圧縮密度(Y軸、g/cmで表される)のグラフ表示を示す。
図3】第1単結晶リチウム遷移金属酸化物のD50と第2単結晶リチウム遷移金属酸化物のD50との比(D50/D50)(X軸)の関数としてEX1~4(φ=25重量%)及びCEX2の圧縮密度(Y軸、g/cmで表される)のグラフ表示を示す。
図4】それぞれ、試料EX1.4、EX3.1の粒子径分布を示す。
図5】それぞれ、試料EX1.4、EX3.1の粒子径分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特に定義されていない限り、技術用語及び科学用語を含む、本発明の開示に使用される全ての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。更なるガイダンスによって、本発明の教示をよりよく理解するために、用語の定義が含まれる。本明細書で使用される場合、以下の用語は以下の意味を有する:
本明細書で使用される場合、パラメータ、量、時間長などの測定可能な値を指す「約」は、指定された値から±20%以下、好ましくは±10%以下、より好ましくは±5%以下、更により好ましくは±1%以下、なおより好ましくは±0.1%以下の変動を、開示された発明でそのような変動が実行に適切である限り、包含することを意味する。但し、「約」という修飾語が指す値自体も具体的に開示されていることを理解されたい。
【0011】
端点による数値範囲の列挙には、列挙された端点だけでなく、その範囲に包含される全ての数値及び分数が含まれる。全てのパーセンテージは、他に定義されていない限り、又はその使用及び使用されている文脈から当業者にとって異なる意味が明らかでない限り、「重量%」と略記される重量パーセント、又は「体積%」と略記される体積パーセントとして理解される。
【0012】
正極活物質
第1の態様において、本発明は、リチウムイオン充電式電池用正極活物質であって、
当該正極活物質が、Li、金属M’、及び酸素を含み、当該金属M’が、Niと、Coと、Mn又はAlのいずれかと、任意で、B、Ba、Sr、Mg、Nb、Ti、W、F、及びZrから選択される1つ以上の元素と、を含み、
当該正極活物質が、リチウム遷移金属酸化物粉末の混合物であり
当該混合物が、両方ともが単結晶粉末である第1リチウム遷移金属酸化物粉末及び第2リチウム遷移金属酸化物粉末を含み、
当該第1リチウム遷移金属酸化物粉末が、当該正極活物質の第1重量分率φを構成し、レーザー回折粒子径分布分析によって決定される3μm~15μmの第1メジアン径D50を有し、
当該第2リチウム遷移金属酸化物粉末が、当該正極活物質の第2重量分率φを構成し、レーザー回折粒子径分布分析によって決定される0.5μm~3μmの第2メジアン径D50を有し、
当該第2重量分率φが、5重量%~40重量%である、正極活物質を提供する。
【0013】
単結晶粉末の概念は正極活物質の技術分野においてよく知られている。それは、主に単結晶粒子を有する粉末に関する。そのような粉末は、大部分が多結晶である粒子でできている多結晶粉末と較べて別個のクラスの粉末である。当業者は、顕微鏡画像に基づいて、そのような2つのクラスの粉末を容易に区別することができる。
【0014】
単結晶粒子はまた、当該技術分野において、モノリシック粒子、一体粒子又は/及びモノ結晶粒子としても知られている。
【0015】
当業者はSEMを用いてそのような粉末を容易に認識することができることから、単結晶粉末の技術的な定義は不要であるが、本発明の文脈において、単結晶粉末はその中の粒子数の80%以上が単結晶粒子である粉末として定義されると考えてもよい。これは、少なくとも45μm×少なくとも60μm(すなわち、少なくとも2700μm)、好ましくは少なくとも100μm×100μm(すなわち、少なくとも10,000μm)の視野を有するSEM画像で決定することができる。
【0016】
単結晶粒子とは、個々の結晶であるか、又は5個未満、好ましくは最大3個のそれ自体が個々の結晶である一次粒子から形成された粒子である。これは、走査型電子顕微鏡(SEM)のような適切な顕微鏡技術で粒界を観察することによって見ることができる。
【0017】
粒子が単結晶粒子であるかどうかの決定において、レーザー回折によって決定される粉末のメジアン径D50の20%よりも小さい、SEMによって観察される最大直線寸法を有する粒は無視される。これによって、本質的には単結晶であるが、いくつかの非常に小さい他の粒、例えば多結晶のコーティングがそれらの上に堆積し得る粒子が単結晶粒子ではないと不注意に見なされることを回避する。
【0018】
本発明者らは、本発明のリチウムイオン充電式電池用正極活物質によって、より高い圧縮密度が得られることを見出した。このことは実施例によって例示され、結果を表1に示す。EX1.4では、正極活物質であって、8.7μmのメジアン径D50を有する単結晶粒子を含む第1リチウム遷移金属酸化物粉末と、1.1μmのメジアン径D50を有する単結晶粒子を含む第2リチウム遷移金属酸化物粉末と、を含み、当該正極活物質の総重量に対する当該第2リチウム遷移金属酸化物粉末の重量比が25重量%である、正極活物質を詳述する。
【0019】
好ましくは、本発明は、第2重量分率φが15重量%~30重量%、好ましくは20重量%~25重量%であり、より好ましくは15、20、25、30重量%又はそれらの間の任意の値に等しい、本発明の第1の態様による正極活物質を提供する。第1重量分率φと第2重量分率φとの合計は、少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%、より好ましくは100%である。
【0020】
好ましくは、本発明は、第1メジアン径D50と第2メジアン径D50との比が4~30である、本発明の第1の態様による正極活物質を提供する。好ましくは、当該比は5~15であり、より好ましくは、当該比は、5、7、9、11、13、15、又はこれらの間の任意の値に等しい。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明の第1の態様による当該正極活物質は、207MPaの一軸圧力を30秒間加えた後に決定される、少なくとも3.25g/cmの圧縮密度を有する。好ましくは、当該正極活物質は、少なくとも3.50g/cm、少なくとも3.55g/cm、少なくとも3.60g/cm、又は更には少なくとも3.65g/cm、又は特に少なくとも3.70g/cmの圧縮密度を有する。好ましくは、当該正極活物質は、最大で3.90g/cm、最大で3.85g/cm、最大で3.80g/cm、最大で3.75g/cmの圧縮密度を有する。
【0022】
好ましくは、本発明は、当該第1メジアン径D50が4~15μm、好ましくは5μm~10μmであり、より好ましくは5、6、7、8、9、10μm、又はそれらの間の任意の値である、本発明の第1の態様による正極活物質を提供する。
【0023】
好ましくは、本発明は、第1リチウム遷移金属酸化物粉末が、単結晶粉末であり、Li、金属M’、及び酸素を含み、金属M’が、一般式:Ni1-xa-ya-zaMnxaCoyaA’zaを有し、0.00≦xa≦0.30、0.05 01≦ya≦0.20、及び0.00≦za≦0.01であり、A’が、B、Ba、Sr、Mg、Al、Nb、Ti、W、F、及びZrから選択される1つ以上の元素を含む、本発明の第1の態様による正極活物質を提供する。より好ましくは、0.05≦xa≦0.30、0.04≦ya≦0.20、0.00≦za≦0.01である。
【0024】
組成、すなわち、添え字xa、ya、zaは、ICP-OES(Inductively coupled plasma-optical emission spectrometry)などの公知の分析方法により決定することができる。
【0025】
好ましくは、本発明は、当該第2メジアン径D50が0.5μm~2μm、好ましくは0.5μm~1.5μmである、本発明の第1の態様による正極活物質を提供する。
【0026】
好ましくは、本発明は、当該第2リチウム遷移金属酸化物粉末が、Li、金属M’、及び酸素を含み、M’が、一般式Ni1-xb-yb-zbMnxbCoybA’’zbを有し、0.00≦xb≦0.35、0.01≦yb≦0.35、及び0≦zb≦0.01であり、A’’が、B、Ba、Sr、Mg、Al、Nb、Ti、W、F、及びZrから選択される1つ以上の元素を含む、本発明の第1の態様による正極活物質を提供する。より好ましくは、0.05≦xb≦0.30、04≦yb≦0.20、0.00≦zb≦0.01である。
【0027】
第2の態様において、本発明は、正極活物質、好ましくは本発明の第1の態様による正極活物質の製造方法であって、レーザー回折粒子径分布分析によって決定される第1メジアン径D50が3μm~15μmである体積基準粒子径分布を有する第1リチウム遷移金属酸化物粉末を、レーザー回折粒子径分布分析によって決定される第2メジアン径D50が0.5μm~3μmである体積基準粒子径分布を有する第2リチウム遷移金属酸化物粉末と混合する工程を含み、第1リチウム遷移金属酸化物粉末及び第2リチウム遷移金属酸化物粉末が両方とも単結晶粉末であり、当該正極活物質の総重量に対する当該第2リチウム遷移金属酸化物粉末の重量分率φが5重量%~40重量%である、方法を提供する。
【0028】
好ましくは、当該正極活物質の総重量に対する当該第2リチウム遷移金属酸化物粉末の当該重量分率φは、15重量%~30重量%、好ましくは20重量%~25重量%である。好ましくは、当該メジアン径D50と当該第2メジアン径D50との比(D50/D50)は2~20、好ましくは4~10、より好ましくは6~8である。
【0029】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様による正極活物質を含む、電池セルを提供する。
【0030】
第4の態様において、本発明は、ポータブルコンピュータ、タブレット、携帯電話、電気ビークル、及びエネルギー貯蔵システムのうちのいずれか1つの電池における、本発明の第1の態様による正極活物質の使用を提供する。
【0031】
混合物の粒子径分布は、混合物の成分の粒子径分布から容易に計算することができる。したがって、本発明は、以下の条項によって代替的に定義することができる。
【0032】
条項1.リチウムイオン充電式電池用正極活物質であって、当該リチウムイオン充電式電池用正極活物質が、Li、金属M’、及び酸素を含み、当該金属M’が、Niと、Coと、Mn又はAlのいずれかと、任意で、B、Ba、Sr、Mg、Nb、Ti、W、F、及びZrから選択される1つ以上の元素と、を含み、当該粉末が単結晶粉末であり、当該粉末が、全体の粒子径分布が多峰性の粒子径分布であることを特徴とする体積基準の全体の粒子径分布を有し、全体の粒子径分布が、第1ピーク粒子径を有して全体の粒子径分布の第1体積分率を形成する第1部分粒子径分布を含み、全体の粒子径分布が、第2ピーク粒子径を有して全体の粒子径分布の第2体積分率を形成する第2部分粒子径分布を含み、当該第1ピーク粒子径が4μm~15μmであり、当該第2ピーク粒子径が0.5μm~2μmであり、当該第2分率が全体の粒子径分布の5体積%~40体積%である、正極活物質。
【0033】
条項2.当該第1ピーク粒子径と当該第2ピーク粒子径との比が2~20である、条項1に記載の正極活物質。
【0034】
条項3.当該第1ピーク粒子径と当該第2ピーク粒子径との比が4~10、好ましくは6~8である、条項1に記載の正極活物質。
【0035】
条項4.当該第1ピーク粒子径が5μm~10μmである、条項1~3のいずれか一項に記載の正極活物質。
【0036】
条項5.当該第2ピーク粒子径が0.5μm~1.5μmである、条項1~4のいずれか一項に記載の正極活物質。
【0037】
条項6.当該第2分率が全体の粒子径分布の15体積%~30体積%、好ましくは体積%~体積%である、条項1~5のいずれか一項に記載の正極活物質。
【0038】
条項7.当該正極活物質が少なくとも3.50g/cmの圧縮密度を有する、条項1~6のいずれか一項に記載の正極活物質。
【0039】
条項8.当該第1体積分率中の粒子が当該第2体積分率中の粒子の組成とは異なる組成を有する、条項1~7のいずれか一項に記載の正極活物質。
【0040】
条項9.当該第1体積分率中の粒子が、Li、金属M’、及び酸素を含む組成を有し、一般式Ni1-xa-ya-zaMnxaCoyaA’zaを有し、M’が、0.00≦xa≦0.30、0.01≦ya≦0.20、及び0.00≦za≦0.01であり、A’が、Mn、B、Ba、Sr、Mg、Al、Nb、Ti、W、F、及びZrから選択される1つ以上の元素を含む、条項1~8のいずれか一項に記載の正極活物質。
【0041】
条項10.当該第2体積分率中の粒子が、Li、金属M’、及び酸素を含む組成を有し、M’が、一般式Ni1-xb-yb-zbMnxbCoybA’’zbを有し、0.00≦xb≦0.35、0.01≦yb≦0.35、及び0≦zb≦0.01であり、A”が、B、Ba、Sr、Mg、Al、Nb、Ti、W、F、及びZrから選択される1つ以上の元素を含む、条項1~9のいずれか一項に記載の正極活物質。
【0042】
条項11.当該粉末が、レーザー回折粒子径分布分析によって決定される4μm~15μmのメジアン径D50を有する粒子径分布を有する第1リチウム遷移金属酸化物粉末を、レーザー回折粒子径分布分析によって決定される0.5μm~2μmのメジアン径D50を有する粒子径分布を有する第2リチウム遷移金属酸化物粉末と混合することによって得られた、条項1~10のいずれか一項に記載の正極活物質。
【0043】
条項12.当該粉末が、第1部分粒子径分布に対応する粒子径分布を有する第1リチウム遷移金属酸化物粉末を、第2部分粒子径分布に対応する粒子径分布を有する第2リチウム遷移金属酸化物粉末と混合することによって得られた、条項1~11のいずれか一項に記載の正極活物質。
【0044】
条項13.当該正極活物質が、当該第1体積分率及び当該第2体積分率からなる、条項1~12のいずれか一項に記載の正極活物質。
【0045】
条項14.当該第1体積分率が、当該第1体積分率と当該第2体積分率との合計の5体積%~40体積%である、条項1~13のいずれか一項に記載の正極活物質。
【0046】
条項15.条項1~14のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法であって、レーザー回折粒子径分布分析によって決定されるメジアン径D50が4μm~15μmである体積基準粒子径分布を有する第1リチウム遷移金属酸化物粉末を、レーザー回折粒子径分布分析によって決定されるメジアン径D50が0.5μm~2μmである体積基準粒子径分布を有する第2リチウム遷移金属酸化物粉末と混合する工程を含み、当該第1リチウム遷移金属酸化物粉末及び当該第2リチウム遷移金属酸化物粉末が両方とも単結晶粉末であり、当該正極活物質の総重量に対する当該第2リチウム遷移金属酸化物粉末の重量分率φが5重量%~40重量%である、方法。
【0047】
条項16.当該正極活物質の総重量に対する当該第2リチウム遷移金属酸化物粉末の当該重量分率φが、15重量%~30重量%、好ましくは20重量%~25重量%である、条項15に記載の方法。
【0048】
条項17.条項1~14のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、電池セル。
【0049】
条項18.ポータブルコンピュータ、タブレット、携帯電話、電気ビークル、及びエネルギー貯蔵システムのいずれか1つの電池における、条項1~14のいずれか一項に記載の正極活物質の使用。
【0050】
上述した条項のいずれかによるそのような正極活物質において、第1ピーク粒子径及び第2ピーク粒子径は、通常、例えばレーザー回折によって測定される、測定された粒子径分布から視覚的に容易に決定することができる。必要であれば、公知のピークデコンボリューションアルゴリズムを使用することができる。
【実施例
【0051】
以下の実施例は、本発明を更に明確にすることを意図したものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0052】
1. 分析方法の説明
1.1. 誘導結合プラズマ
正極活物質粉末の組成は、Agilent 720 ICP-OES(Agilent Technologies,https:/www.agilent.com/cs/library/brochures/5990-6497EN%20720-725_ICP-OES_LR.pdf)を用いて、誘導結合プラズマ(ICP)法によって測定する。1グラムの粉末サンプルを、三角フラスコ内の50mLの高純度塩酸(溶液の総重量に対して少なくとも37重量%のHCl)に溶解する。粉末を完全に溶解させるまで、フラスコを時計皿でカバーし、380℃で、ホットプレート上で加熱する。室温まで冷却した後、三角フラスコからの溶液を第1の250mLのメスフラスコに注ぐ。その後、第1のメスフラスコを250mLの標線まで脱イオン水で満たし、続いて、完全な均質化プロセス(1回目の希釈)を行う。第1のメスフラスコからピペットで適切な量の溶液を取り出して、2回目の希釈のために第2の250mLメスフラスコに移し、第2のメスフラスコを250mLの標線まで内部標準要素及び10%塩酸で満たした後、均質化させる。最後に、この溶液をICP測定に使用する。
【0053】
1.2. 圧縮密度
圧縮密度は次のように測定される。3グラムの粉末を直径「d」が1.30cmのペレットダイに充填する。207MPaの圧力の一軸荷重をペレットダイ中の粉末に30秒間加える。荷重を緩和した後、圧縮した粉末の厚さ「t」を測定する。次いで、ペレット密度を単位g/cmで(3/(π*(d/2)*t))として計算する。
【0054】
1.3. SEM(走査型電子顕微鏡)分析
正極活物質の形態は、走査型電子顕微鏡(SEM)技術によって分析する。この測定は、25℃の9.6×10-5Paの高真空環境下で、JEOL JSM7100Fを用いて行われる。
【0055】
1.4. 粒子径分布
正極活物質粉末の粒子径分布(PSD)は、それぞれの粉末サンプルを水性媒体中に分散させて、Hydro MV湿式分散付属品を備えたMalvern Mastersizer 3000(https://www.malvernpanalytical.com/en/products/product-range/mastersizer-range/mastersizer-3000#overview)を用いて、レーザー回折粒子径分布分析で測定する。粉末の分散を改善するために、十分な超音波照射及び撹拌を適用し、適切な界面活性剤を導入する。D50は、Hydro MV測定値によるMalvern Mastersizer 3000から取得された累積体積%分布の50%における粒子径として定義される。同様に、D10及びD90は、累積体積分布%のそれぞれ10%及び90%での粒子径として定義される。
【0056】
2. 実施例及び比較例
比較例1
CEX(比較例)1.1と標識される単結晶正極活物質を以下のステップに従って調製する。
【0057】
ステップ1)遷移金属水酸化物前駆体の調製:遷移金属の一般式Ni0.62Mn0.18Co0.20を有し、4μmのメジアン径(D50)を有するニッケル系遷移金属水酸化物粉末(TMH1)を、混合したニッケルマンガンコバルト硫酸塩、水酸化ナトリウム、及びアンモニアを入れた大規模連続撹拌槽反応器(CSTR)内での共沈法によって調製する。
【0058】
ステップ2)1回目の混合:ステップ1)で調製されたTMH1をLiOHと工業用ブレンダー中で混合して、リチウムと金属との比(Li/Ni+Mn+Co)が0.90である第1混合物を得る。
【0059】
ステップ3)1回目の焼成:ステップ2)からの第1混合物を、炉内でO含有雰囲気下、750℃で12時間焼成して、第1焼成粉末を得る。
【0060】
ステップ4)2回目の混合:ステップ3)からの第1焼成粉末を、LiOHと工業用ブレンダー中でブレンドして、リチウムと金属との比(Li/Ni+Mn+Co)が1.045である第2混合物を得る。
【0061】
ステップ5)2回目の焼成:ステップ4)からの第2混合物を、炉内でO含有雰囲気中、840℃で12時間焼成して、第2焼成粉末を得る。
【0062】
ステップ6)後処理:ステップ5)からの第2焼成粉末を湿式ボールミル粉砕プロセスによって粉砕して、凝集物の形成を回避する。最終生成物はCEX1.1と標識される単結晶酸化物粉末である。
【0063】
CEX1.1の粒子径分布を決定した。CEX1.1は、0.15μmのD10、1.12μmのD50及び2.01μmのD90を有していた。
【0064】
CEX1.2を、ステップ5)における2回目の焼成の条件が860℃で10時間であることを除いて、CEX1.1と同じ方法に従って調製する。
【0065】
CEX1.2の粒子径分布を決定した。CEX1.2は、1.08μmのD10、1.76μmのD50及び2.82μmのD90を有していた。
【0066】
CEX1.3を、ステップ5)における2回目の焼成の条件が880℃で10時間であることを除いて、CEX1.1と同じ方法に従って調製する。
【0067】
CEX1.3の粒子径分布を決定した。CEX1.3は、1.48μmのD10、2.46μmのD50及び3.90μmのD90を有していた。
【0068】
CEX1.4を、ステップ5)における2回目の焼成の温度が920℃で10時間であることを除いて、CEX1.1と同じ方法に従って調製する。
【0069】
CEX1.4の粒子径分布を決定した。CEX1.4は、2.48μmのD10、4.17μmのD50及び6.68μmのD90を有していた。
【0070】
CEX1.5と標識される単結晶正極活物質を以下のステップに従って調製する。
【0071】
ステップ1)遷移金属水酸化物前駆体の調製:遷移金属の一般式Ni0.62Mn0.18Co0.20を有し、10μmのメジアン径(D50)を有するニッケル系遷移金属水酸化物粉末(TMH2)を、混合したニッケルマンガンコバルト硫酸塩、水酸化ナトリウム、及びアンモニアを入れた大規模連続撹拌槽反応器(CSTR)内での共沈法によって調製する。
【0072】
ステップ2)1回目の混合:ステップ1)で調製されたTMH2をLiOHと工業用ブレンダー中で混合して、リチウムと金属との比(Li/Ni+Mn+Co)が0.85である第1混合物を得る。
【0073】
ステップ3)1回目の焼成:ステップ2)からの第1混合物を、炉内で空気雰囲気下、900℃で9時間焼成して、第1焼成粉末を得る。
【0074】
ステップ4)2回目の混合:ステップ3)からの第1焼成粉末を、LiOHと工業用ブレンダー中でブレンドして、リチウムと金属との比(Li/Ni+Mn+Co)が1.065である第2混合物を得る。
【0075】
ステップ5)2回目の焼成:ステップ4)からの第2混合物を、炉内で空気雰囲気中、960℃で12時間焼成して、第2焼成粉末を得る。
【0076】
ステップ6)後処理:ステップ5)からの第2焼成粉末を湿式ボールミル粉砕プロセスによって粉砕して、凝集物の形成を回避する。最終生成物はCEX1.5と標識される単結晶酸化物粉末である。
【0077】
CEX1.5の粒子径分布を決定した。CEX1.5は、4.89μmのD10、8.76μmのD50及び14.7μmのD90を有していた。
【0078】
実施例1
EX1.1を、第1遷移金属酸化物粉末CEX1.5を第2遷移金属酸化物粉末CEX1.1と、8重量%の第2粉末の分率で、工業用ブレンダーを用いて混合することによって調製する。第2粉末の分率は、以下の式によって計算される。
(第2粉末の重量/(第2粉末の重量+第1粉末の重量))100%。
【0079】
EX1.2、EX1.3、EX1.4、及びEX1.5を、第2粉末の分率がそれぞれ12、20、25、及び30重量%であることを除いて、EX1.1と同じ方法に従って調製する。
【0080】
実施例2
EX2を、CEX1.2を第2遷移金属酸化物粉末として使用することを除いて、EX1.4と同じ方法で調製する。
【0081】
実施例3
EX3.1を、CEX1.3を第2遷移金属酸化物粉末として使用し、第2粉末の分率が25重量%であることを除いて、EX1.1と同じ方法に従って調製する。
【0082】
EX3.2を、CEX1.3を第2遷移金属酸化物粉末として使用し、第2粉末の分率が30重量%であることを除いて、EX1.1と同じ方法に従って調製する。
【0083】
実施例4
EX4.1と標識される正極活物質は、以下のステップに従って調製されたEX4-AとEX4-Bとの混合物である。
【0084】
ステップ1)以下の手順に従って、単結晶正極活物質であるEX4-Aを調製する。
a.遷移金属水酸化物前駆体の調製:遷移金属の一般式Ni0.86Mn0.10Co0.04を有し、5μmのメジアン径(D50)を有するニッケル系遷移金属水酸化物粉末(TMH5)を、混合したニッケルマンガンコバルト硫酸塩、水酸化ナトリウム、及びアンモニアを入れた大規模連続撹拌槽反応器(CSTR)内での共沈法によって調製する。
b.1回目の混合:ステップ1.a)で調製されたTMH5をLiOHと工業用ブレンダー中で混合して、リチウムと金属との比(Li/Ni+Mn+Co)が0.90である第1混合物を得る。
c.1回目の焼成:ステップ1.b)からの第1混合物を、炉内でO含有雰囲気下、720℃で10時間焼成して、第1焼成粉末を得る。
d.2回目の混合:ステップ1.c)からの第1焼成粉末を、LiOHと工業用ブレンダー中でブレンドして、リチウムと金属との比(Li/Ni+Mn+Co)が1.06である第2混合物を得る。
e.2回目の焼成:ステップ1.d)からの第2混合物を、炉内でO含有雰囲気中、830℃で12時間焼成して、第2焼成粉末を得る。
f.後処理:ステップ1.e)からの第2焼成粉末を、湿式ボールミル粉砕プロセスによって10時間粉砕して、凝集体の形成を回避する。最終生成物は、EX4-Aと標識される単結晶酸化物粉末である。
【0085】
ステップ2)以下の手順に従って、単結晶正極活物質であるEX4-Bを調製する。
a.遷移金属水酸化物前駆体の調製:遷移金属の一般式Ni0.86Mn0.10Co0.04を有し、5μmのメジアン径(D50)を有するニッケル系遷移金属水酸化物粉末(TMH6)を、混合したニッケルマンガンコバルト硫酸塩、水酸化ナトリウム、及びアンモニアを入れた大規模連続撹拌槽反応器(CSTR)内での共沈法によって調製する。
b.1回目の混合:ステップ2.a)で調製されたTMH6をLiOHと工業用ブレンダー中で混合して、リチウムと金属との比(Li/Ni+Mn+Co)が0.90である第1混合物を得る。
c.1回目の焼成:ステップ2.b)からの第1混合物を、炉内でO含有雰囲気下、720℃で10時間焼成して、第1焼成粉末を得る。
d.2回目の混合:ステップ2.c)からの第1焼成粉末を、LiOHと工業用ブレンダー中でブレンドして、リチウムと金属との比(Li/Ni+Mn+Co)が1.01である第2混合物を得る。
e.2回目の焼成:ステップ2.d)からの第2混合物を、炉内でO含有雰囲気中、950℃で12時間焼成して、第2焼成粉末を得る。
f.後処理:ステップ2.e)からの第2焼成粉末を、湿式ボールミル粉砕プロセスによって6時間粉砕して、凝集体の形成を回避する。最終生成物は、EX4-Bと標識される単結晶酸化物粉末である。
【0086】
EX4-Aは1.3μmのD50を有し、EX4-Bは7.1μmのD50を有した。
【0087】
ステップ3)EX4.1の調製:EX4-AとEX4-Bとを、EX4-AとEX4-Bとの間の重量比、25重量%:75重量%で混合する。生成物をEX4.1として標識する。
【0088】
EX4.2を、EX4-AとEX4-Bとの重量比が70重量%:30重量%であることを除いて、EX4.1と同じ方法に従って調製する。
【0089】
EX5.1を、第1遷移金属酸化物粉末としてCEX1.4を使用することを除いて、EX1.4と同じ方法に従って調製する。
【0090】
EX5.2を、第1遷移金属酸化物粉末としてCEX1.4を使用することを除いて、EX1.5と同じ方法に従って調製する。
【0091】
全ての実施例において、最終生成物の構成成分の組成は同じである。したがって、それらの構成成分の密度は同じであり、その結果、最終生成物における構成成分の特定の重量比は、最終生成物におけるこれらの構成成分の数値的に同じ体積比に対応する。
【0092】
最終生成物の粒子径分布を測定する必要はないが、構成成分の粒子径分布及びそれらの相対割合から容易に計算することができる。
【0093】
図1に、第1単結晶粉末と第2単結晶粉末を含み、それらのメジアン径が異なるEX1.4のSEM画像を示す。
【0094】
表1に実施例及び比較例の組成並びにそれらの対応する圧縮密度をまとめる。
【0095】
【表1】
【0096】
CEX1.1~CEX1.5は、1.1μm~8.7μmの範囲のD50を有する単結晶リチウム遷移金属酸化物粉末である。単結晶リチウム遷移金属酸化物粉末の単独での使用は、圧縮密度が3.40g/cmを超えないことから、本発明の目的に合致し得ないと思われる。
【0097】
EX1.1、EX1.2、EX1.3、EX1.4、及びEX1.5は、CEX1.5と、異なる分率φのCEX1.1(第2粉末の分率)のCEX1.1との混合物である。それらは全て、CEX1.5よりも高い圧縮密度を有する。図2から明らかに分かるように、圧縮密度は第2粉末の分率が20重量%~25重量%である場合に更に最適化される。
【0098】
EX1.4、EX2、及びEX1.3はそれぞれ、CEX1.5(第1粉末として)とCEX1.1、CEX1.2、及びCEX1.3(第2粉末として)との混合物であり、第2粉末の分率φは25重量%である。全ての実施例は、CEX1.5よりも高い圧縮密度を有する。図3から明らかに分かるように、圧縮密度は、第1粉末のメジアン径(D50)と第2粉末メジアン径(D50)との比、すなわちD50/D50が4.0以上、より好ましくは6~8である場合に更に最適化される。
【0099】
EX4.1及びEX4.2は、遷移金属の総モル含有量に対して、他の上述の例よりも高いNiのモル含有量を有する。EX4.1及びEX4.2は本発明の目的に合致する。
【0100】
EX5.1及びEX5.2は、CEX1.4(第1粉末として)とCEX1.1(第2粉末として)との混合物である。両方とも、比較例と比較してより高い圧縮密度を示し、本発明の目的を突破している。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】