(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ソフトな回復のボディ・ダイオードを有するパワー・トランジスタ
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20231206BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20231206BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H01L29/78 652A
H01L29/78 652T
H01L29/78 658H
H01L29/78 652C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533643
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 US2021060286
(87)【国際公開番号】W WO2022119736
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】ウルフスピード インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】WOLFSPEED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン、キジョン
(72)【発明者】
【氏名】リュー、セイ - ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リヒテンヴァルナ―、ダニエル
(57)【要約】
半導体デバイスが、縦型トランジスタ10及びボディ・ダイオード30を含む。半導体デバイスに対する様々な改善により、特にスナッピネスの低減及びソフトネスの増加に対して、ボディ・ダイオードの性能の向上が可能となる。トランジスタは、基板12と、基板上にドリフト層14と、基板とは反対側のドリフト層に接合インプラントと、を含む。接合インプラントは、ボディ・ウェル16と、ボディ・ウェル内にソース・ウェル18と、を含む。ソース・コンタクト22によってソース・ウェル及びボディ・ウェルとの、ドレイン・コンタクト24によって基板との電気的な接触が行われる。ドリフト層の上に、ボディ・ウェル及びソース・ウェルの一部にわたってゲート絶縁体26があり、ゲート絶縁体上に、ゲート・コンタクト28がある。ソースとドレインとの間のボディ・ダイオードのソフトネスが、0.5よりも大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のドーピング型及び第1のドーピング濃度を有する基板と、
前記基板上に、前記第1のドーピング型及び第2のドーピング濃度を有するドリフト層と、
前記基板とは反対側の前記ドリフト層に、接合インプラントであって、
前記第1のドーピング型とは反対の第2のドーピング型を有するボディ・ウェルと、
前記ボディ・ウェル内にある、前記第1のドーピング型を有するソース・ウェルと、
を含む、接合インプラントと、
前記ソース・ウェル及び前記ボディ・ウェルと電気的に接触するソース・コンタクトと、
前記基板と電気的に接触するドレイン・コンタクトと、
前記ドリフト層の上に、前記ボディ・ウェル及び前記ソース・ウェルの一部にわたってゲート絶縁体と、
前記ゲート絶縁体上に、ゲート・コンタクトであって、前記ソース・コンタクトと前記ドレイン・コンタクトとの間のボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタが0.5よりも大きい、ゲート・コンタクトと、
を含む、トランジスタ。
【請求項2】
前記ボディ・ダイオードの前記ソフトネス・ファクタは、10以下である、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項3】
前記ボディ・ダイオードの二次的なソフトネス・ファクタが、0.5よりも大きい、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項4】
前記ボディ・ダイオードの前記二次的なソフトネス・ファクタは、10未満である、請求項3に記載のトランジスタ。
【請求項5】
前記トランジスタは、炭化ケイ素デバイスである、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項6】
前記ボディ・ダイオードは、ノン・パンチ・スルー・ダイオードである、請求項5に記載のトランジスタ。
【請求項7】
前記ボディ・ウェル領域の下に再結合領域をさらに含み、前記再結合領域は、周囲の前記ドリフト層よりも高い濃度の再結合中心を有する、請求項6に記載のトランジスタ。
【請求項8】
前記再結合領域における再結合中心の濃度は、前記ドリフト層における再結合中心の濃度よりも5~10倍の間で高い、請求項7に記載のトランジスタ。
【請求項9】
前記ボディ・ダイオードの順バイアス動作モード時、前記ボディ・ウェルと前記ドリフト層との境界面における少数キャリアの濃度は、前記ドリフト層と前記基板との境界面における少数キャリアの濃度よりも低い、請求項8に記載のトランジスタ。
【請求項10】
前記ボディ・ダイオードの順バイアス動作モード時、前記ボディ・ウェルと前記ドリフト層との境界面における少数キャリアの濃度は、前記ドリフト層と前記基板との境界面における少数キャリアの濃度よりも低い、請求項5に記載のトランジスタ。
【請求項11】
前記トランジスタの降伏電圧は、350V~20kVの間であり、
前記トランジスタのオン状態抵抗は、0.3mΩ・cm
2~100mΩ・cm
2の間である、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項12】
第1のドーピング型及び第1のドーピング濃度を有する基板と、
前記基板上に、前記第1のドーピング型及び第2のドーピング濃度を有するドリフト層と、
前記基板とは反対側の前記ドリフト層に、接合インプラントであって、
前記第1のドーピング型とは反対の第2のドーピング型を有するボディ・ウェルと、
前記ボディ・ウェル内にある、前記第1のドーピング型を有するソース・ウェルと、
を含む、接合インプラントと、
前記ソース・ウェル及び前記ボディ・ウェルと電気的に接触するソース・コンタクトと、
前記基板と電気的に接触するドレイン・コンタクトと、
前記ドリフト層の上に、前記ボディ・ウェル及び前記ソース・ウェルの一部にわたってゲート絶縁体と、
前記ゲート絶縁体上に、ゲート・コンタクトであって、
前記ソース・コンタクトと前記ドレイン・コンタクトとの間にボディ・ダイオード、
前記ボディ・ダイオードの順バイアス動作モード時、前記ボディ・ウェルと前記ドリフト層との境界面における少数キャリアの濃度が、前記ドリフト層と前記基板との境界面における少数キャリアの濃度よりも低い、ゲート・コンタクトと、
を含む、トランジスタ。
【請求項13】
前記ボディ・ダイオードは、ノン・パンチ・スルー・ダイオードである、請求項12に記載のトランジスタ。
【請求項14】
前記MOSFETは、炭化ケイ素デバイスである、請求項13に記載のトランジスタ。
【請求項15】
前記トランジスタの降伏電圧は、350V~20kVの間であり、
前記トランジスタのオン状態抵抗は、0.3mΩ・cm
2~100mΩ・cm
2の間である、請求項14に記載のトランジスタ。
【請求項16】
第1のドーピング型及び第1のドーピング濃度を有する基板を用意することと、
前記基板上に、前記第1のドーピング型及び第2のドーピング濃度を有するドリフト層を設けることと、
前記基板とは反対側の前記ドリフト層に、接合インプラントであって、
前記第1のドーピング型とは反対の第2のドーピング型を有するボディ・ウェルと、
前記ボディ・ウェル内にある、前記第1のドーピング型を有するソース・ウェルと、
を含む、接合インプラントを設けることと、
前記ソース・ウェル及び前記ボディ・ウェルと電気的に接触するソース・コンタクトを堆積することと、
前記基板と電気的に接触するドレイン・コンタクトを堆積することと、
前記ドリフト層の上に、前記ボディ・ウェル及び前記ソース・ウェルの一部にわたってゲート絶縁体を設けることと、
前記ゲート絶縁体上に、ゲート・コンタクトを堆積することであって、前記ソース・コンタクトと前記ドレイン・コンタクトとの間のボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタが0.5よりも大きいように前記ドリフト層及び前記ボディ・ウェルが設けられる、ゲート・コンタクトを堆積することと、
を含む、トランジスタを製造する方法。
【請求項17】
前記ボディ・ダイオードの前記ソフトネス・ファクタは、10未満である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記基板上に前記ドリフト層を設けることは、前記ボディ・ダイオードがノン・パンチ・スルー・ダイオードであるように前記ドリフト層を設けることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ボディ・ウェル領域の下に再結合領域を設けることをさらに含み、前記再結合領域は、周囲の前記ドリフト層よりも高い濃度の少数キャリア・トラップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記再結合領域を設けることは、前記再結合領域においてイオン注入を行うことを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記再結合領域を設けることは、アルゴンを用いたイオン注入を行うことを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ドリフト層における少数キャリアのキャリア寿命を増加させるために前記ドリフト層の高温酸化を行うことをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記ボディ・ウェルは、前記ボディ・ダイオードの順バイアス動作モード時に前記ボディ・ウェルと前記ドリフト層との境界面における少数キャリアの濃度が前記ドリフト層と前記基板との境界面における少数キャリアの濃度よりも低いように設けられる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記トランジスタの降伏電圧は、350V~20kVの間であり、
前記トランジスタのオン状態抵抗は、0.3mΩ・cm
2~100mΩ・cm
2の間である、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
ボディ・ダイオードを含むパワー・トランジスタであって、ボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタが、0.5よりも大きい、パワー・トランジスタ。
【請求項26】
前記ボディ・ダイオードの前記ソフトネス・ファクタは、10以下である、請求項25に記載のパワー・トランジスタ。
【請求項27】
前記パワー・トランジスタは、炭化ケイ素デバイスである、請求項26に記載のパワー・トランジスタ。
【請求項28】
第1のドーピング型及び第1のドーピング濃度を有する基板と、
前記基板上に、前記第1のドーピング型及び第2のドーピング濃度を有するドリフト層と、
前記基板とは反対側の前記ドリフト層に、接合インプラントであって、
前記第1のドーピング型とは反対の第2のドーピング型を有するボディ・ウェルと、
前記ボディ・ウェル内にある、前記第1のドーピング型を有するソース・ウェルと、
を含む、接合インプラントと、
前記ソース・ウェル及び前記ボディ・ウェルと電気的に接触するソース・コンタクトと、
前記基板と電気的に接触するドレイン・コンタクトと、
前記ドリフト層の上に、前記ボディ・ウェル及び前記ソース・ウェルの一部にわたってゲート絶縁体と、
前記ゲート絶縁体上に、ゲート・コンタクトであって、前記ソース・コンタクトと前記ドレイン・コンタクトとの間のボディ・ダイオードの二次的なソフトネス・ファクタが0.5よりも大きい、ゲート・コンタクトと、
を含む、トランジスタ。
【請求項29】
前記二次的なソフトネス・ファクタは、10未満である、請求項28に記載のトランジスタ。
【請求項30】
前記トランジスタは、炭化ケイ素デバイスである、請求項29に記載のトランジスタ。
【請求項31】
基板と、
前記基板上に、1μs~20μsの間のキャリア寿命を有するドリフト層と、
前記ドリフト層に、1つ又は複数の注入領域であって、
第1の方向に電流を導くように構成された縦型トランジスタ・デバイスを設けるように、及び
前記第1の方向とは反対の第2の方向に電流を導くように構成されたボディ・ダイオードを設けるように構成された、1つ又は複数の注入領域と、
を含む、半導体デバイス。
【請求項32】
前記ボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタは、0.5~10の間である、請求項31に記載の半導体デバイス。
【請求項33】
前記ドリフト層内の前記キャリア寿命は、5μsよりも長い、請求項31に記載の半導体デバイス。
【請求項34】
前記ドリフト層内の前記キャリア寿命は、10μsよりも長い、請求項33に記載の半導体デバイス。
【請求項35】
前記ドリフト層におけるZ
1/2トラップ密度が、5×10
13cm
-3未満である、請求項31に記載の半導体デバイス。
【請求項36】
前記ドリフト層における前記Z
1/2トラップ密度は、1×10
13cm
-3未満である、請求項35に記載の半導体デバイス。
【請求項37】
前記ドリフト層に再結合領域をさらに含み、前記再結合領域における少数キャリア再結合中心の密度が、1×10
13cm
-3~1×10
18cm
-3の間である、請求項31に記載の半導体デバイス。
【請求項38】
前記再結合領域における少数キャリア再結合中心の前記密度は、5×10
15cm
-3よりも大きい、請求項37に記載の半導体デバイス。
【請求項39】
前記再結合領域の厚さが、1nm~360μmの間である、請求項37に記載の半導体デバイス。
【請求項40】
前記ボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタが、0.5~10の間である、請求項39に記載の半導体デバイス。
【請求項41】
前記ボディ・ダイオードは、ノン・パンチ・スルー・ダイオードである、請求項39に記載の半導体デバイス。
【請求項42】
前記再結合領域の前記厚さは、1μmよりも厚い、請求項39に記載の半導体デバイス。
【請求項43】
前記再結合領域の前記厚さは、5μmよりも厚い、請求項42に記載の半導体デバイス。
【請求項44】
前記基板は、第1のドーピング型及び第1のドーピング濃度を有し、
前記ドリフト層は、前記第1のドーピング型及び第2のドーピング濃度を有し、
前記1つ又は複数の注入領域は、
前記第1のドーピング型とは反対の第2のドーピング型を有するボディ・ウェルと、
前記ボディ・ウェル内にある、前記第1のドーピング型を有するソース・ウェルと、
を含む、請求項39に記載の半導体デバイス。
【請求項45】
前記再結合領域は、前記ドリフト層において前記1つ又は複数の注入領域に接する、請求項44の半導体デバイス。
【請求項46】
前記再結合領域は、前記ドリフト層において前記1つ又は複数の注入領域を被包する、請求項45に記載の半導体デバイス。
【請求項47】
前記再結合領域の幅が、前記1つ又は複数の注入領域の最も広い部分の幅未満である、請求項45に記載の半導体デバイス。
【請求項48】
前記再結合領域の幅が、前記1つ又は複数の注入領域の最も広い部分の幅に等しい、請求項45に記載の半導体デバイス。
【請求項49】
前記再結合領域の幅が、前記1つ又は複数の注入領域の最も広い部分の幅よりも広い、請求項45に記載の半導体デバイス。
【請求項50】
前記ボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタが、0.5~10の間である、請求項41に記載の半導体デバイス。
【請求項51】
前記ボディ・ダイオードは、ノン・パンチ・スルー・ダイオードである、請求項41に記載の半導体デバイス。
【請求項52】
前記ボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタが、0.5~10の間である、請求項51に記載の半導体デバイス。
【請求項53】
前記縦型トランジスタ・デバイスは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)である、請求項31に記載の半導体デバイス。
【請求項54】
前記半導体デバイスは、炭化ケイ素を含む、請求項53に記載の半導体デバイス。
【請求項55】
前記ドリフト層は、
第1のドーピング型及び第1のドーピング・プロファイルを有する第1のドリフト層と、
前記第1のドーピング型及び前記第1のドーピング・プロファイルとは異なる第2のドーピング・プロファイルを有する第2のドリフト層と、
を含む、請求項31に記載の半導体デバイス。
【請求項56】
前記第2のドリフト層は、前記基板と前記第1のドリフト層との間にあり、前記第2のドリフト層のドーピング濃度は、前記第1のドリフト層のドーピング濃度よりも高く、前記基板のドーピング濃度よりも低い、請求項55に記載の半導体デバイス。
【請求項57】
前記第2のドリフト層と前記基板との間にバッファ層をさらに含み、前記バッファ層は、前記第1のドーピング型及び前記第2のドリフト層の前記ドーピング濃度よりも高く前記基板の前記ドーピング濃度よりも低いドーピング濃度を有する、請求項56に記載の半導体デバイス。
【請求項58】
前記第1のドリフト層上に拡散層をさらに含み、前記拡散層は、前記第1のドーピング型及び前記第1のドリフト層のドーピング濃度よりも高いドーピング濃度を有する、請求項57に記載の半導体デバイス。
【請求項59】
前記ドリフト層は、第1のドーピング型を有し、
前記半導体デバイスは、前記ドリフト層と前記基板との間にバッファ層をさらに含み、前記バッファ層は、前記第1のドーピング型及び前記ドリフト層のドーピング濃度よりも高く前記基板のドーピング濃度よりも低いドーピング濃度を有する、請求項31に記載の半導体デバイス。
【請求項60】
前記ドリフト層上に拡散層をさらに含み、前記拡散層は、前記第1のドーピング型及び前記ドリフト層の前記ドーピング濃度よりも高いドーピング濃度を有する、請求項59に記載の半導体デバイス。
【請求項61】
基板と、
前記基板上にドリフト層と、
前記ドリフト層に、1つ又は複数の注入領域であって、
第1の方向に電流を導くように構成された縦型トランジスタ・デバイスを設けるように、及び
前記第1の方向とは反対の第2の方向に電流を導くように構成されたボディ・ダイオードを設けるように構成された、1つ又は複数の注入領域と、
前記ドリフト層において前記1つ又は複数の注入領域に接する再結合領域であって、前記再結合領域における少数キャリア再結合中心の密度が、1×10
13cm
-3~1×10
18cm
-3の間である、再結合領域と、
を含む、半導体デバイス。
【請求項62】
前記ボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタが、0.5~10の間である、請求項61に記載の半導体デバイス。
【請求項63】
前記再結合領域における少数キャリア再結合中心の前記密度は、5×10
15cm
-3よりも大きい、請求項61に記載の半導体デバイス。
【請求項64】
前記ドリフト層内におけるキャリア寿命が、1μs~20μsの間である、請求項61に記載の半導体デバイス。
【請求項65】
前記ボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタが、0.5~10の間である、請求項64に記載の半導体デバイス。
【請求項66】
前記ドリフト層内における前記キャリア寿命は、5μsよりも長い、請求項64に記載の半導体デバイス。
【請求項67】
前記ドリフト層内における前記キャリア寿命は、10μsよりも長い、請求項66に記載の半導体デバイス。
【請求項68】
前記ボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタが、0.5~10の間である、請求項63に記載の半導体デバイス。
【請求項69】
前記ドリフト層におけるZ
1/2トラップ密度が、5×10
13cm
-3未満である、請求項64に記載の半導体デバイス。
【請求項70】
前記ドリフト層における前記Z
1/2トラップ密度は、1×10
13cm
-3未満である、請求項69に記載の半導体デバイス。
【請求項71】
前記ボディ・ダイオードは、ノン・パンチ・スルー・ダイオードである、請求項64に記載の半導体デバイス。
【請求項72】
前記ボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタが、0.5~10の間である、請求項71に記載の半導体デバイス。
【請求項73】
前記ボディ・ダイオードは、ノン・パンチ・スルー・ダイオードである、請求項61に記載の半導体デバイス。
【請求項74】
前記ボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタが、0.5~10の間である、請求項73に記載の半導体デバイス。
【請求項75】
前記基板は、第1のドーピング型及び第1のドーピング濃度を有し、
前記ドリフト層は、前記第1のドーピング型及び第2のドーピング濃度を有し、
前記1つ又は複数の注入領域は、
前記第1のドーピング型とは反対の第2のドーピング型を有するボディ・ウェルと、
前記ボディ・ウェル内にある、前記第1のドーピング型を有するソース・ウェルと、
を含む、請求項61に記載の半導体デバイス。
【請求項76】
前記再結合領域は、前記ドリフト層において前記1つ又は複数の注入領域に接する、請求項75に記載の半導体デバイス。
【請求項77】
前記再結合領域は、前記ドリフト層において前記1つ又は複数の注入領域を被包する、請求項76に記載の半導体デバイス。
【請求項78】
前記再結合領域の幅が、前記1つ又は複数の注入領域の最も広い部分の幅未満である、請求項76に記載の半導体デバイス。
【請求項79】
前記再結合領域の幅が、前記1つ又は複数の注入領域の最も広い部分の幅に等しい、請求項76に記載の半導体デバイス。
【請求項80】
前記再結合領域の幅が、前記1つ又は複数の注入領域の最も広い部分の幅よりも広い、請求項76に記載の半導体デバイス。
【請求項81】
前記縦型トランジスタ・デバイスは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)である、請求項61に記載の半導体デバイス。
【請求項82】
前記半導体デバイスは、炭化ケイ素を含む、請求項81に記載の半導体デバイス。
【請求項83】
前記ドリフト層は、
第1のドーピング型及び第1のドーピング・プロファイルを有する第1のドリフト層と、
前記第1のドーピング型及び前記第1のドーピング・プロファイルとは異なる第2のドーピング・プロファイルを有する第2のドリフト層と、
を含む、請求項61に記載の半導体デバイス。
【請求項84】
前記第2のドリフト層は、前記基板と前記第1のドリフト層との間にあり、前記第2のドリフト層のドーピング濃度は、前記第1のドリフト層のドーピング濃度よりも高く、前記基板のドーピング濃度よりも低い、請求項83に記載の半導体デバイス。
【請求項85】
前記第2のドリフト層と前記基板との間にバッファ層をさらに含み、前記バッファ層は、前記第1のドーピング型及び前記第2のドリフト層の前記ドーピング濃度よりも高く前記基板の前記ドーピング濃度よりも低いドーピング濃度を有する、請求項84に記載の半導体デバイス。
【請求項86】
前記第1のドリフト層上に拡散層をさらに含み、前記拡散層は、前記第1のドーピング型及び前記第1のドリフト層のドーピング濃度よりも高いドーピング濃度を有する、請求項85に記載の半導体デバイス。
【請求項87】
前記ドリフト層は、第1のドーピング型を有し、
前記半導体デバイスは、前記ドリフト層と前記基板との間にバッファ層をさらに含み、前記バッファ層は、前記第1のドーピング型及び前記ドリフト層のドーピング濃度よりも高く前記基板のドーピング濃度よりも低いドーピング濃度を有する、請求項61に記載の半導体デバイス。
【請求項88】
前記ドリフト層上に拡散層をさらに含み、前記拡散層は、前記第1のドーピング型及び前記ドリフト層の前記ドーピング濃度よりも高いドーピング濃度を有する、請求項87に記載の半導体デバイス。
【請求項89】
前記再結合領域の厚さが、1nm~200μmの間である、請求項76に記載の半導体デバイス。
【請求項90】
前記再結合領域の前記厚さは、1μm~10μmの間である、請求項89に記載の半導体デバイス。
【請求項91】
基板と、
前記基板上に、ドリフト層であって、
前記ドリフト層は、ワイド・バンドギャップ半導体材料を含み、
前記ドリフト層におけるZ
1/2トラップ密度が、5×10
13cm
-3未満である、
ドリフト層と、
前記ドリフト層に、1つ又は複数の注入領域であって、
第1の方向に電流を導くように構成された縦型トランジスタ・デバイスを設けるように、及び
前記第1の方向とは反対の第2の方向に電流を導くように構成されたボディ・ダイオードを設けるように構成された、1つ又は複数の注入領域と、
を含む、半導体デバイス。
【請求項92】
前記ドリフト層における前記Z
1/2トラップ密度は、1×10
13cm
-3未満である、請求項91に記載の半導体デバイス。
【請求項93】
前記ワイド・バンドギャップ半導体材料は、炭化ケイ素を含む、請求項91に記載の半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年12月2日に出願された米国特許出願第17/110,027号及び2021年3月22日に出願された米国特許出願第17/208,271号の優先権を主張するものであり、上記出願の開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、半導体デバイスに関し、詳細には、ソフトな回復特性を有するボディ・ダイオードを含むパワー・トランジスタ及びパワー・トランジスタを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
トランジスタは、現代の電子機器において多くの用途を有する。高電圧及び電流を取り扱うことが可能なトランジスタであるパワー・トランジスタが、電力を負荷に送達するスイッチング回路において使用される場合が多い。パワー・スイッチング回路において使用されるトランジスタは一般的に、電流を双方向に導くことが可能である必要がある。したがって、パワー・スイッチング回路においてトランジスタと併せてアンチ・パラレル・ダイオードが設けられる。金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)の場合、アンチ・パラレル・ダイオードのアノードがMOSFETのドレインに結合され、アンチ・パラレル・ダイオードのカソードがMOSFETのソースに結合される。これにより、MOSFETにおいて順方向導通動作モード時にドレインからソースへ、逆導通動作モードではソースからアンチ・パラレル・ダイオードを介してドレインへ、電流が流れることが可能となる。アンチ・パラレル・ダイオードにおいて導通と阻止との間で切り替わる場合、そのような遷移が行われることができる速度及び生じるスイッチング損失をアンチ・パラレル・ダイオードの性能特性が決定する。動作モード間の遷移時間及びスイッチング損失の両方を最小限にすることが一般的に望ましい。したがって、スイッチング速度を改善するとともにスイッチング損失を低減させるためにトランジスタと併せて使用するアンチ・パラレル・ダイオードの現在の必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施例では、トランジスタが、基板と、基板上にドリフト層と、基板とは反対側のドリフト層に接合インプラントと、を含む。接合インプラントは、ボディ・ウェルと、ボディ・ウェル内にソース・ウェルと、を含む。ソース・コンタクトが、ソース・ウェル及びボディ・ウェルと電気的に接触する。ドレイン・コンタクトが、基板と電気的に接触する。ドリフト層の上に、ボディ・ウェル及びソース・ウェルの一部にわたって絶縁体層がある。絶縁体層上にゲート・コンタクトがある。ソース・コンタクトとドレイン・コンタクトとの間のボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタが0.5よりも大きい。ボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタが0.5よりも大きいようにトランジスタを提供することによって、双方向導通の用途において使用される場合の、ボディ・ダイオードのスイッチング性能、したがって、トランジスタのスイッチング損失が著しく低減される。
【0005】
一実施例では、トランジスタが、基板と、基板上にドリフト層と、基板とは反対側のドリフト層に接合インプラントと、を含む。接合インプラントは、ボディ・ウェルと、ボディ・ウェル内にソース・ウェルと、を含む。ソース・コンタクトが、ソース・ウェル及びボディ・ウェルと電気的に接触する。ドレイン・コンタクトが、基板と電気的に接触する。ドリフト層の上に、ボディ・ウェル及びソース・ウェルの一部にわたって絶縁体層がある。絶縁体層上にゲート・コンタクトがある。ソース・コンタクトとドレイン・コンタクトとの間に、ボディ・ウェルと、ドリフト層と、基板とによってボディ・ダイオードが形成される。ボディ・ダイオードの順バイアス動作モード時、ボディ・ウェルとドリフト層との境界面における少数キャリアの濃度は、ドリフト層と基板との境界面における少数キャリアの濃度よりも低い。ボディ・ダイオードのドリフト層において前述の少数キャリア・プロファイルをもたらすようにトランジスタを設計することによって、ボディ・ダイオードのスナッピネス(snappiness)が著しく低減され、それにより、双方向導通の用途において使用される場合のトランジスタのスイッチング性能を改善する。
【0006】
一実施例では、半導体デバイスが、基板と、ドリフト層と、ドリフト層に1つ又は複数の注入領域と、を含む。ドリフト層は、1μs~20μsの間のキャリア寿命を有する。1つ又は複数の注入領域は、縦型トランジスタ・デバイス及びボディ・ダイオードを設けるように構成される。縦型トランジスタ・デバイスは、第1の方向に電流を導くように構成されるのに対し、ボディ・ダイオードは、第1の方向とは反対の第2の方向に電流を導くように構成される。1μs~20μsの間のキャリア寿命を有するドリフト層を設けることによって、ボディ・ダイオードのソフトネスを高めることができ、これにより、次いで、半導体デバイスに関連付けられるスイッチング損失を低減し得る。
【0007】
一実施例では、ボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタは、0.5~10の間である。上述したように、これは、半導体デバイスに関連付けられるスイッチング損失を低減し得る。半導体デバイスは、ドリフト層に再結合領域を含み得、この再結合領域は、1×1013cm-3~1×1018cm-3の間である、少数キャリア再結合中心の密度を有する、エリアである。ボディ・ダイオードは、ノン・パンチ・スルー・ダイオードであるように設けられ得る。
【0008】
一実施例では、半導体デバイスは、基板と、ドリフト層と、ドリフト層に1つ又は複数の注入領域と、ドリフト層に再結合領域と、を含む。1つ又は複数の注入領域は、縦型トランジスタ・デバイス及びボディ・ダイオードを設けるように構成される。縦型トランジスタ・デバイスは、第1の方向に電流を導くように構成されるのに対し、ボディ・ダイオードは、第1の方向とは反対の第2の方向に電流を導くように構成される。再結合領域は、ドリフト層において1つ又は複数の注入領域に接し、1×1013cm-3~1×1018cm-3の間である、少数キャリア再結合中心の密度を有する。再結合領域は、ボディ・ダイオードのソフトネスを高め得、これにより、次いで、半導体デバイスに関連付けられるスイッチング損失が低減する。
【0009】
一実施例では、ボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタは、0.5~10の間である。ドリフト層は、1μs~20μsの間のキャリア寿命を有し得る。ボディ・ダイオードは、ノン・パンチ・スルー・ダイオードであるように設けられ得る。
【0010】
特定の実施例では、上記の実施例のいずれの態様も、さらなる利点のために組み合わせられ得る。
【0011】
当業者は、本開示の範囲を理解し、添付の図面に関連して好ましい実施例の以下の詳細な説明を読んだ後はそのさらなる態様がよく分かるであろう。
【0012】
本明細書に組み込まれるとともにその一部を形成する添付の図面は、本開示のいくつかの態様を示し、説明とともに、本開示の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一実施例によるトランジスタの断面図である。
【
図2】本開示の一実施例によるトランジスタにおけるボディ・ダイオードの逆回復を示すグラフである。
【
図3A】本開示の一実施例によるパンチ・スルー・ダイオードについてのドリフト層内の電界を示す図である。
【
図3B】本開示の一実施例によるノン・パンチ・スルー・ダイオードについてのドリフト層内の電界を示す図である。
【
図4】本開示の一実施例によるトランジスタのボディ・ダイオードの断面図である。
【
図5A】本開示の様々な実施例のうちの1つによるトランジスタの断面図である。
【
図5B】本開示の様々な実施例のうちの1つによるトランジスタの断面図である。
【
図5C】本開示の様々な実施例のうちの1つによるトランジスタの断面図である。
【
図5D】本開示の様々な実施例のうちの1つによるトランジスタの断面図である。
【
図5E】本開示の様々な実施例のうちの1つによるトランジスタの断面図である。
【
図6】本開示の一実施例によるトランジスタにおける多数のインプラントについてのドーピング・プロファイルを示すグラフである。
【
図7】本開示の一実施例によるトランジスタを製造する方法を示すフロー図である。
【
図8】本開示の一実施例によるトランジスタのボディ・ダイオードの性能を示すグラフである。
【
図9】本開示の一実施例による半導体デバイスを示す図である。
【
図10】本開示の一実施例による半導体デバイスを示す図である。
【
図11】本開示の一実施例による半導体デバイスを示す図である。
【
図12】本開示の一実施例によるトランジスタを示す図である。
【
図13A】本開示の一実施例による半導体デバイスを示す図である。
【
図13B】
図13Aの実施例について、縦型半導体デバイスにおける電界を示すグラフである。
【
図13C】
図13Aの実施例について、阻止状態でドレイン-ソース電圧が増加する際のドリフト層の底部における電界とドレイン-ソース電流とを示すグラフである。
【
図14A】本開示の一実施例による半導体デバイスを示す図である。
【
図14B】
図14Aの実施例について、半導体デバイスにおける電界を示すグラフである。
【
図14C】
図14Aの実施例について、阻止状態でドレイン-ソース電圧が増加する際のドリフト層の底部における電界とドレイン-ソース電流とを示すグラフである。
【
図15A】本開示の一実施例による半導体デバイスを示す図である。
【
図15B】
図15Aの実施例について、半導体デバイスにおける電界を示すグラフである。
【
図15C】
図15Aの実施例について、阻止状態でドレイン-ソース電圧が増加する際のドリフト層の底部における電界とドレイン-ソース電流とを示すグラフである。
【
図16A】本開示の一実施例による半導体デバイスを示す図である。
【
図16B】
図16Aの実施例について、半導体デバイスにおける電界を示すグラフである。
【
図16C】
図16Aの実施例について、阻止状態でドレイン-ソース電圧が増加する際のドリフト層の底部における電界とドレイン-ソース電流とを示すグラフである。
【
図17A】本開示の一実施例による半導体デバイスを示す図である。
【
図17B】
図17Aの実施例について、縦型半導体デバイスの様々な層全体中の相対的な段階的ドーピング濃度レベルを示すグラフである。
【
図17C】
図17Aの実施例について、阻止状態でドレイン-ソース電圧が増加する際のドリフト層の底部における電界とドレイン-ソース電流とを示すグラフである。
【
図18A】本開示の一実施例によるパワー・デバイスを示す図である。
【
図18B】
図18Aにおける実施例について、縦型半導体デバイスの様々な層全体中の相対的な段階的ドーピング濃度レベルを示すグラフである。
【
図19】本開示の様々な実施例によるボディ・ダイオードの応答を示すグラフである。
【
図20】本開示の様々な実施例によるボディ・ダイオードの応答を示すグラフである。
【
図21】本開示の様々な実施例によるボディ・ダイオードの応答を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に記載する実施例は、当業者が実施例を実施し、実施例を実施する最良の形態を示すことを可能にするために必要な情報を表す。添付の図面の図に照らして以下の説明を読むと、当業者は本開示の概念を理解し、本明細書において特に対処されないこれらの概念の適用を認識するであろう。これらの概念及び適用は、本開示の範囲及び添付の特許請求の範囲内にあることを理解されたい。
【0015】
第1の、第2のなどの用語は、様々な要素を説明するために本明細書において使用し得るが、これらの要素は、これらの用語によって限定されないものとすることが理解されるであろう。これらの用語は、ある要素を別の要素と区別するためだけに使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素は、第2の要素と呼ぶことができ、同様に、第2の要素は、第1の要素と呼ぶことができる。本明細書において使用される場合、「及び/又は(and/or)」という用語は、関連した列挙事項のうちの1つ又は複数の任意の及びすべての組み合わせを含む。
【0016】
層、領域、又は基板などの要素は、別の要素「上に(on)」ある又は別の要素「の上に(onto)」延びると言われる場合、別の要素上に直接ある又は別の要素の上に直接延びることができるか、或いは介在要素が存在してもよいことが理解されるであろう。対照的に、要素が別の要素「上に直接(directly on)」ある又は別の要素「の上に直接(directly onto)」延びると言われる場合、介在要素は何も存在しない。同様に、層、領域、又は基板などの要素は、別の要素「の上に(over)」ある又は別の要素「の上に(over)」延びると言われる場合、別の要素の上に直接ある又は別の要素の上に直接延びることができるか、或いは介在要素が存在してもよいことが理解されるであろう。対照的に、要素が別の要素「の上に直接(directly over)」ある又は別の要素「の上に直接(directly over)」延びると言われる場合、介在要素は何も存在しない。要素が別の要素に「接続される(connected)」又は「結合される(coupled)」と言われる場合、要素は別の要素に直接接続される又は結合されることができるか、或いは介在要素が存在してもよいことが理解されるであろう。対照的に、要素が別の要素に「直接接続される(directly connected)」又は「直接結合される(directly coupled)」と言われる場合、介在要素は何も存在しない。
【0017】
「より下の(below)」又は「より上の(above)」又は「上の(upper)」又は「下の(lower)」又は「水平の(horizontal)」又は「垂直の(vertical)」などの相対的な用語は、図に示すように、1つの要素、層、又は領域と別の要素、層、又は領域との関係を説明するために本明細書において使用され得る。これらの用語及び上記に説明した用語は、図に示す向きに加えて、デバイスの種々の向きを包含することを意図していることが理解されるであろう。
【0018】
本明細書において使用される術語は、特定の実施例だけを説明するためのものであり、本開示を限定することを意図していない。本明細書において使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という単数形は、文脈がそうではないことを明示していない限り、複数形も含むことを意図している。「備える、含む(comprises)」、「備える、含む(comprising)」、「含む(includes)」、及び/又は「含む(including)」という用語は、本明細書において使用される場合、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を明記するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を除外しないことがさらに理解されるであろう。
【0019】
別段に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において使用される用語は、本明細書の文脈及び関連する技術におけるその意味と矛盾しない意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書において明確にそのように定義されない限り、理想化された又は過度に形式的な意味で解釈されないことがさらに理解されるであろう。
【0020】
図1は、本開示の一実施例によるトランジスタ10の断面図である。トランジスタ10は、基板12と、基板12上にドリフト層14と、を含む。ドリフト層14の、基板12とは反対側の表面に、ボディ・ウェル16が設けられている。ソース・ウェル18が、ボディ・ウェル16内にあるようにボディ・ウェル16に設けられている。コンタクト・ウェル19もまた、ボディ・ウェル16のソース・ウェル18に隣接するようにボディ・ウェル16に設けられている。接合型電界効果トランジスタ(JFET:junction field-effect transistor)領域20もまた、ドリフト層14の、基板12とは反対側の表面に、ボディ・ウェル16に隣接して設けられている。ソース・コンタクト22が、コンタクト・ウェル19を介してソース・ウェル18及びボディ・ウェル16と電気的に接触するように基板12とは反対側のドリフト層14の上に設けられている。ドレイン・コンタクト24が、基板12と電気的に接触するように基板12に設けられている。ゲート絶縁体26が、JFET領域20、ボディ・ウェル16の一部、及びソース・ウェル18の一部の上にあるように、ドリフト層14の、基板12とは反対側の表面に設けられている。ゲート絶縁体26上にゲート・コンタクト28がある。
【0021】
一実施例では、トランジスタ10は、基板12、ドリフト層14、ソース・ウェル18、及びJFET領域20がn型である、n型デバイスであるのに対し、ボディ・ウェル16及びコンタクト・ウェル19はp型である。基板12のドーピング濃度は、1×10
18cm
-3~1×10
21cm
-3の間であり得る。基板12の厚さは、10μm~360μmの間であり得る。ドリフト層14のドーピング濃度は、1×10
17cm
-3~5×10
13cm
-3の間であり得る。ドリフト層14のドーピング濃度は、その厚さ(
図1に示すような上から下)に沿って連続的であってもよく、又は、その厚さに沿って変わるドーピング・プロファイルに応じて様々であってもよい。ドリフト層14の厚さは、2μm~200μmの間であり得る。ドリフト層14のドーピング濃度は、ドリフト層14の厚さに応じて決まり得る。特に、ドーピング濃度は、ドリフト層14の厚さに反比例し得る。ボディ・ウェル16は、1×10
16cm
-3~3×10
19cm
-3の間のドーピング濃度を有し得る。ボディ・ウェル16は、0.2μm~4μmの間の厚さを有し得る。ソース・ウェル18は、1×10
18cm
-3~1×10
21cm
-3の間のドーピング濃度を有し得る。ソース・ウェル18は、0.1μ~2μmの間の厚さを有し得る。JFET領域20は、1×10
16cm
-3~2×10
17cm
-3の間のドーピング濃度を有し得る。JFET領域20は、0.2μm~4μmの間の厚さを有し得る。トランジスタ10はn型デバイスとして上述されているが、本開示の原理はp型デバイスに同様に当てはまる。一実施例では、トランジスタ10は、炭化ケイ素(SiC)デバイスである。しかしながら、本開示の原理は、任意の材料系、特にワイド・バンドギャップ材料系に同様に当てはまる。上記のドーピング濃度範囲又は厚さ範囲のいずれにも関して、本開示は、その範囲内の任意の離散点又はより広い範囲内の任意の部分範囲を用いることを意図している。例えば、本開示は、ドリフト層14のドーピング濃度が、1×10
17cm
-3~5×10
13cm
-3の間、1×10
17cm
-3若しくはその近く、5×10
13cm
-3若しくはその近く、1×10
16cm
-3~5×10
13cm
-3の間、1×10
17cm
-3~1×10
15cm
-3の間、又は任意の他の離散点若しくはより広い例示的な範囲内の部分範囲であることを意図している。同じことが、本明細書において示されたすべての範囲のドーピング濃度及び厚さ範囲に当てはまる。コンタクト・ウェル19は、0.1μm~2μmの間の厚さを有し得る。コンタクト・ウェル19のドーピング濃度は、1×10
16cm
-3~1×10
21cm
-3の間であり得る。
【0022】
一実施例では、トランジスタは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)である。そのような実施例では、ゲート絶縁体26は酸化物層であり得る。別の実施例では、トランジスタは、金属絶縁体半導体電界効果トランジスタ(MISFET:metal-insulator-semiconductor field-effect transistor)である。
【0023】
トランジスタ10は、高電圧を遮断するとともに高電流を導通させることが可能なパワー・デバイスであり得る。特に、トランジスタ10は、用途に応じて、350V~20kVの間の降伏電圧を有し得る。降伏電圧のこの範囲に従って、トランジスタ10のオン状態抵抗は、0.3mΩ・cm2~100mΩ・cm2の間であり得る。すなわち、350Vの降伏電圧に関して、トランジスタ10のオン状態抵抗は、0.3mΩ・cm2未満であり得、一方、20kVの降伏電圧に関して、トランジスタ10のオン状態抵抗は、100mΩ・cm2未満であり得る。他の実例として、15kVの降伏電圧に関して90mΩ・cm2未満のオン状態抵抗、10kVの降伏電圧に関して70mΩ・cm2未満のオン状態抵抗、及び3.3kVの降伏電圧に関して10mΩ・cm2未満のオン状態抵抗が挙げられる。オン状態抵抗は、その降伏電圧に応じてこれらの最小値から最大値の間で様々であり得る。
【0024】
上述したように、パワー・スイッチング用途に使用されるトランジスタは、電流を双方向に導通させるべきである。このことは、ソース・コンタクト22とドレイン・コンタクト24との間(アノードからソース、カソードからドレイン)で反平行に結合された外部ダイオードにより達成され得るが、同じ結果を、トランジスタ10の構造内に形成された内蔵ボディ・ダイオードを用いて達成することもできる。
図1に示すように、デバイスの右側において、ソース・コンタクト22とドレイン・コンタクト24との間にボディ・ダイオード30が形成される。ボディ・ダイオード30は、アノードとしてソース・コンタクト22と、ボディ・ウェル16と、コンタクト・ウェル19と、ドリフト層14と、基板12と、カソードとしてドレイン・コンタクト24とを含むPiNダイオードである。双方向電流導通を可能にするためにボディ・ダイオード30を用いることにより、外部ダイオードの必要性をなくすことによってスペースが節約される。しかしながら、ボディ・ダイオード30は、スイッチングに最適化されないことがある。特に、ボディ・ダイオード30は、以下で詳細に論じるように、スイッチング時間及びスイッチング損失を増加させかねない、高度のスナッピネスを被ることがある。
【0025】
ダイオードのスナッピネスは、その逆回復を特徴付ける。例示するために、
図2は、順方向導通から逆バイアス又は阻止に切り替わる場合のダイオードにわたる順方向電流及び電圧を示すグラフである。時間t0の前、ダイオードは順バイアスされ、したがって、電流をアノードからカソードに導通させている。ゆえに、ダイオードにわたる電圧は約ゼロである。順バイアス時、ドリフト領域が過剰少数キャリアを含有するように過剰少数キャリアがダイオードのドリフト領域に注入される。時間t0において、ダイオードは、そのアノード及びカソードにおいて供給される電圧を変えることによって順バイアスから逆バイアスに切り替えられる。したがって、ダイオードを通る電流は、過剰少数キャリアが減少するにつれて減少し始める。過剰少数キャリアによる電流の流れのため、ダイオードにわたる電圧は同じままである。時間t1において、ダイオードを通る電流は、正電流から負電流に切り替わる。ダイオードにわたる電圧は、同じままであり続ける。ドリフト領域内の蓄積された過剰少数キャリアが減少し始めるにつれて、領域の抵抗が増大し始める。したがって、時間t2において、ダイオードにわたる電圧が低下し始め、一方、電流は減少し続けている。この時点で空乏領域が形成し始める。時間t3において、ドリフト領域内に過剰少数キャリアがほとんど残されなくなると、ダイオードを通る逆電流がその最大値に達する。時間t4において、ダイオードにわたる負電圧がそのピーク値に達する。ダイオードを通る電流及びダイオードにわたる電圧は、それらがそれぞれゼロ及び逆電圧で安定する時間t5まで増加し続ける。
【0026】
逆回復プロセス時、ダイオードにわたる静電容量は、ダイオード内のそれぞれ拡散領域及び空乏領域による拡散容量及び空乏容量によって定められる。空乏領域が成長するにつれて、拡散容量の値及び空乏容量の値が変化する。拡散領域がもはや存在しないように空乏領域がダイオードを突き抜ける場合、拡散容量が急にゼロになることで、ダイオードの静電容量全体に大きな変化を生じさせ、これが、リンギング及び歪みを引き起こす可能性がある。
【0027】
ダイオードを通る電流がゼロ(t1)を通過するときからその負のピーク値(t3)に達するときまでの間の時間が、t
sとして示されている。ダイオードを通る電流がその負のピーク値(t3)に達するときからその電流が0.2・I
RRM(t4)に回復するときまでの間の時間が、t
fとして示されている。t
fとt
sとの比(t
f/t
s)は、本明細書において、ダイオードのソフトネス・ファクタS
1として定義される。ソフトネス・ファクタは、ダイオードのスナッピネスと逆相関関係にある。したがって、より高いソフトネス・ファクタが望ましい。二次的なソフトネス・ファクタS
2が、本明細書において
【数1】
として定義され、ここで、二次的なソフトネス・ファクタのより高い値が望ましい。ダイオードのソフトネスのスナッピネスを定量化するためのさらに別のやり方は、x軸(ゼロ電流)と負の逆回復電流曲線との間の面積を考慮することによるものである。一般的に、この面積を最小限にすることが望ましい。
【0028】
慣例的に、当業者は、降伏電圧及びオン状態抵抗などの、トランジスタ自体のいくつかの所望の特性に基づいて、トランジスタを設計する。換言すると、当業者は一般的にボディ・ダイオードの性能を念頭においてトランジスタを設計していない。本開示の本発明者らは、トランジスタの性能への影響が小さく又は最小限で、トランジスタのボディ・ダイオードの1つ又は複数の特徴を著しく改善することができることを見出した。特に、トランジスタの性能を維持しつつトランジスタにおけるボディ・ダイオードのスナッピネスを著しく低減させることができる。
【0029】
トランジスタ10内のボディ・ダイオード30のスナッピネスを改善するために、いくつかの調整が行われる。まず、トランジスタ10は、ボディ・ダイオード30がノン・パンチ・スルー・ダイオードであるように設計される。本明細書において論じるように、ノン・パンチ・スルー・ダイオードは、ダイオードの降伏電圧において、ダイオードのドリフト層に形成された空乏領域が基板又は隣接するn+層に貫入しないダイオードとして定義される。ボディ・ダイオード30の場合、このことは、その降伏電圧において、空乏領域がドリフト層14内にあるままであり、基板12に貫入しないことを意味する。ボディ・ダイオード30は、ドリフト層14のドーピング濃度及び/又は厚さを、これらパラメータがトランジスタ10の所望の降伏電圧及びオン状態抵抗について最適化される従来の設計に比して変えることによって、ノン・パンチ・スルーであるように設計され得る。特に、ドリフト層14の厚さ及びドーピング濃度は、ボディ・ダイオード30の空乏領域が逆バイアス時にドリフト層14内にあるままであることを確実にするために、従来の設計に比して増加され得る。したがって、トランジスタ10の所与の降伏電圧について、ドリフト層14は、その従来のカウンターパートに比して、より厚く、より高濃度にドープされる。
【0030】
ノン・パンチ・スルー・ダイオードを設けるために、以下の等式を用いてドリフト層14の厚さ及びドーピング濃度を決定し得る。等式(1)は、降伏電圧BV
diodeとドーピング濃度N
Dとの関係を示す。等式(2)は、空乏領域の最大幅W
d,maxとドーピング濃度N
Dとの関係を示す。
【数2】
したがって、所与の降伏電圧について、ドリフト層14のドーピング濃度は、空乏領域の最大幅W
d,maxがドリフト層14の厚さを超えないようにドリフト層14の厚さとともに選択することができる。
【0031】
図3A及び
図3Bは、それぞれパンチ・スルー・ダイオード及びノン・パンチ・スルー・ダイオードについての、ドリフト層14内の電界を示す。特に、
図3Aは、本明細書において説明されるようなパンチ・スルー・ダイオードのドリフト層14内の電界を示す線を示し、
図3Bは、ノン・パンチ・スルー・ダイオードのドリフト層14内の電界を示す線を示す。示すように、ノン・パンチ・スルー・ダイオードについて、電界は、ドリフト層14と基板12との境界面に達する前にゼロに低下する。パンチ・スルー・ダイオードについて、電界は、ドリフト層14と基板12との境界面において有意なレベルにあるままであり、したがって、ドリフト層14を「突き抜ける」。本明細書において論じるように、トランジスタ10は、ボディ・ダイオード30のスナッピネスを改善し得る、ノン・パンチ・スルー・ダイオードとしてボディ・ダイオード30を設けるように設計することができる。本明細書において論じるように、ノン・パンチ・スルー・ボディ・ダイオード30を達成するための1つのやり方は、ドリフト層14の厚さを増加させることであり、このことが、
図3Aにおけるドリフト層14よりも
図3Bにおけるドリフト層14が厚い理由である。しかしながら、他の設計考察も当てはまる。
【0032】
従来の設計規則をトランジスタ10に適用すれば、所与の降伏電圧についてオン状態抵抗を最小限にするためにドリフト層14の厚さ及びドーピング濃度を選択することに影響するであろう。このことは、これら特徴の最適化をもたらし得るが、その結果、ボディ・ダイオード30がパンチ・スルー・ダイオードになりかねない。本開示の本発明者らは、ボディ・ダイオード30が所与の降伏電圧においてトランジスタ10の望ましいがおそらくは僅かに高いオン状態抵抗を維持しつつもノン・パンチ・スルー・ダイオードであるように、ドリフト層14の厚さ及びドーピング濃度を選択することができることを見出した。ボディ・ダイオード30をノン・パンチ・スルー・ダイオードとして設けることにより、キャリアが、基板12との境界面ではこのエリアにおける電界の低下により迅速に一掃されないため、より長くドリフト層14にあるままとなることが可能となる。さらに、ボディ・ダイオード30をノン・パンチ・スルー・ダイオードとして設けることにより、拡散容量が急にゼロになることを防ぐことによって、低減させなければ逆回復時にボディ・ダイオード30の拡散容量の大きな変化に起因して生じるであろうリンギング及び歪みが低減する。
【0033】
ボディ・ダイオード30をノン・パンチ・スルー・ダイオードとして設けることに加えて又はそれとは無関係に、順バイアス時にボディ・ダイオード30内の少数キャリアの分布プロファイルも変更される。したがって、
図4は、トランジスタ10から分離させたボディ・ダイオード30の断面を示す。破線は、ボディ・ダイオード30が本明細書において論じる改善を有しない従来のやり方で設けられている場合の、順バイアス時の少数キャリアの分布を示す。実線は、本明細書において論じる改善が行われる場合のボディ・ダイオード30についての、順バイアス時の少数キャリアの分布を示す。示すように、本明細書において論じる改善を有しない場合、少数キャリアの濃度は、ボディ・ウェル16とドリフト層14との境界面において、ドリフト層14と基板12との境界面におけるよりも高い。このことは、ダイオードの逆回復時の性能低下を引き起こしかねない。特に、ボディ・ダイオード30が逆バイアスに入るにつれて、破線が示すように、ボディ・ウェル16とドリフト層14との境界面において高濃度の少数キャリアがある場合、これらの少数キャリアを一掃するのにより長くかかり、空乏領域を形成し始める。これにより、
図2に示すようなt
sが延長し、それによって、スナッピネスが増加(ソフトネス・ファクタt
f/t
sが減少)及び性能が劣化する。さらに、空乏領域が成長するにつれて、同様に破線が示すように、ドリフト層14と基板12との境界面において比較的低い濃度の少数キャリアがある場合、これらキャリアは、ドリフト層14から一掃され、したがって、空乏領域に基板12を突き抜けさせかねない。上述したように、これもまた、ボディ・ダイオード30内の拡散容量が急に消失することに起因して性能を劣化させる。さらに、
図2に示すように、ドリフト層14と基板12との境界面の近くの少数キャリアの濃度が増加することにより、t
fが延長し、それによって、スナッピネスが低減(ソフトネス・ファクタt
f/t
sが増加)する。したがって、実線が示すように、ボディ・ウェル16とドリフト層14との境界面において、より低い濃度の少数キャリアを有し、ドリフト層14と基板12との境界面において、より高い濃度の少数キャリアを有することが望ましい。概して、ボディ・ウェル16と基板12との間のドリフト層14に(平均して)正の勾配の少数キャリア濃度を有することが望ましい。
【0034】
上述した所望の少数キャリア・プロファイルを達成するためのいくつかのやり方がある。一実施例では、ドリフト層14と基板12との境界面及びその近くにおける少数キャリアの濃度を増加させるために、ドリフト層14のキャリア寿命が高められる。SiCでは、炭素空孔が、少数キャリアのための再結合中心を形成することによってキャリア寿命を縮めかねない。炭素空孔を低減させるために、以下で詳細に論じるように、ドリフト層14の高温酸化が行われ、それによって、ドリフト層14全体を通じてキャリア寿命を増加させる。様々な実施例では、ドリフト層14における少数キャリア寿命は、0.5μs~20μsの間であるように意図的に高められ得る。とりわけ、本開示は、上記で示した少数キャリア寿命の例示的な範囲内における、又は、より広い範囲内の任意の部分範囲内における任意の離散値を用いることを意図している。例えば、様々な実施例では、ドリフト層14の少数キャリア寿命は、1μs~20μsの間、10μ~20μ、1μ~5μの間、5μs~10μsの間、15μs~20μsの間、3μs~10μsの間、又は、より広い例示的な範囲内の任意の他の部分範囲又は離散点にあり得る。当業者は、Z1/2トラップ密度がSiCにおけるキャリア寿命と逆相関関係にあることを理解するであろう。したがって、ドリフト層14のキャリア寿命を増加させることは、Z1/2トラップ密度を減少させることを伴い得る。様々な実施例では、ドリフト層14のZ1/2トラップ密度は、5×1013cm-3未満、1×1013cm-3未満、5×1012cm-3未満、1×1012cm-3未満、及び1×1010cm-3ほどに低いものであるように減少され得る。
【0035】
ドリフト層14のキャリア寿命の向上に加え、ボディ・ウェル16とドリフト層14との境界面における少数キャリアの減少も望ましい。このことは、順バイアス時に、より少ない少数キャリアがボディ・ウェル16からドリフト層14へ注入されるようにボディ・ウェル16のドーピング濃度を減少させることによって達成することができる。様々な実施例では、ボディ・ウェル16とドリフト層14との境界面近くのボディ・ウェル16のドーピング濃度は、1×1016cm-3~3×1019cm-3の間であり、これは、従来のドーピング濃度よりも約5~15倍のどこでも低いものであり得る。より具体的には、ボディ・ウェル16とドリフト層14との境界面の0.2μm以内のボディ・ウェル16のドーピング濃度が、1×1016cm-3~3×1019cm-3の間であり得る。とりわけ、本開示は、ボディ・ウェル16のドーピング濃度が、ドーピング濃度の所与の例示的な範囲内の任意の離散値、又は例示的な範囲内の任意の部分範囲であってもよいことを意図している。
【0036】
ボディ・ウェル16のドーピング濃度を減少させることに加えて又はそれとは別に、
図5Aに示すように、ボディ・ウェル16とドリフト層14との境界面又はその近くにおけるドリフト領域14に再結合領域32が設けられ得る。再結合領域32は、周囲のドリフト層14よりも高い密度の少数キャリア再結合中心を有する領域である。これは、注入プロセスを介して意図的に再結合領域32に損傷を与えることによって、又は、再結合領域32をドープすることによって達成され得る。一実施例では、再結合領域は、再結合領域における少数キャリア再結合中心の密度を増加させるためにアルゴンを注入される。しかしながら、水素及びヘリウムなどの他のインプラントもいくつかの実施例において使用され得る。再結合領域32における少数キャリアの密度は、ドリフト層14におけるよりも5~10倍の間で高いものであり得る。様々な実施例では、再結合領域32における少数キャリア再結合中心の密度は、1×10
13cm
-3~1×10
18cm
-3の間であり得る。とりわけ、再結合領域32における少数キャリア再結合中心の密度は、この範囲内の任意の離散点、又はこの範囲内の任意の部分範囲であり得る。例えば、再結合領域32における少数キャリア再結合中心の密度は、1×10
14cm
-3~1×10
18cm
-3の間、1×10
15cm
-3~1×10
18cm
-3の間、1×10
16cm
-3~1×10
18cm
-3の間、1×10
17cm
-3~1×10
18cm
-3の間、1×10
14cm
-3~1×10
17cm
-3の間、1×10
14cm
-3~1×10
16cm
-3の間、1×10
14cm
-3~1×10
15cm
-3の間、1×10
15cm
-3~1×10
17cm
-3の間、及び1×10
17cm
-3~1×10
18cm
-3の間、又は、これらの範囲のいずれかにおける任意の離散点であってもよい。再結合領域32はボディ・ウェル16とドリフト層14との境界面又はその近くにおける、ボディ・ダイオード30の局在領域として示されているが、再結合領域32はトランジスタ10の全体にわたるブランケット領域であってもよく、又は、互いから分離されている複数の領域を含んでもよい。再結合領域32における少数キャリア再結合中心の密度は、ドリフト層14よりも6~7倍の間で大きい、ドリフト層14よりも7~8倍の間で大きい、ドリフト層14よりも8~9倍の間で大きい、ドリフト層14よりも5~9倍の間で大きい、ドリフト層よりも6~9倍の間で大きい、又は、より広い例示的な範囲内の任意の他の部分範囲又は離散点にあるものであってもよい。
【0037】
ボディ・ウェル16の厚さは、Tbwとして示されている。様々な実施例では、Tbwは、0.1μm~2.0μmの間であり得る。Tbwは、0.1μm~2.0μmのより大きい範囲内の任意の部分範囲であってもよい。例えば、Tbwは、0.25μm~.5μmの間、0.25μm~.75μmの間、0.25μm~1.0μmの間、0.25μm~1.25μmの間、0.25μm~1.5μmの間、0.25μm~1.75μmの間、0.5μm~.75μmの間、0.5μm~1.0μmの間、0.5μm~1.25μmの間、0.5μm~1.5μmの間、0.5μm~1.75μmの間、0.5μm~2.0μmの間、.75μm~1.0μmの間、0.75μm~1.25μmの間、0.75μm~1.5μmの間、0.75μm~1.75μmの間、0.75μm~2.0μmの間、1.0μm~1.25μmの間、1.0μm~1.5μmの間、1.0μm~1.75μmの間、1.0μm~2.0μmの間、1.25μm~1.5μmの間、1.25μm~1.75μmの間、1.25μm~2.0μmの間、1.5μm~1.75μmの間、1.5μm~2.0μmの間、及び1.75μm~2.0μmの間であってもよい。ボディ・ウェル16の幅は、Wbwとして示されている。様々な実施例では、ボディ・ウェル16の幅は、1μm~10μmの間であり得る。Wbwは、1μm~10μmのより大きい範囲内の任意の部分範囲であってもよい。例えば、Wbwは、1μm~2μmの間、1μm~3μm、1μm~4μm、1μm~5μm、1μm~6μm、1μm~7μm、1μm~8μm、1μm~9μm、1μm~10μm、2μm~3μm、2μm~4μm、2μm~5μm、2μm~6μm、2μm~7μm、2μm~8μm、2μm~9μm、2μm~10μm、3μm~4μm、3μm~5μm、3μm~6μm、3μm~7μm、3μm~8μm、3μm~9μm、3μm~10μm、4μm~5μm、4μm~6μm、4μm~7μm、4μm~8μm、4μm~9μm、4μm~10μm、5μm~6μm、5μm~7μm、5μm~8μm、5μm~9μm、5μm~10μm、6μm~7μm、6μm~8μm、7μm~9μm、7μm~10μm、8μm~9μm、8μm~10μm、9μm~10μmであってもよい。ボディ・ウェル16のドーピング濃度は、1×1016cm-3~3×1019cm-3の間、又は、このより大きい範囲の任意の部分範囲内にあり得る。様々な実施例では、ボディ・ウェル16のドーピング濃度は、5×1016cm-3~3×1019cm-3の間、1×1017cm-3~3×1019cm-3の間、5×1017cm-3~3×1019cm-3の間、1×1018cm-3~3×1019cm-3の間、5×1018cm-3~3×1019cm-3の間、1×1016cm-3~1×1019cm-3の間、1×1016cm-3~5×1018cm-3の間、1×1016cm-3~1×1018cm-3の間、1×1016cm-3~5×1017cm-3の間、1×1016cm-3~1×1017cm-3の間、1×1016cm-3~5×1016cm-3の間、5×1016cm-3~1×1019cm-3の間、1×1017cm-3~5×1018cm-3の間、及び5×1017~1×1018cm-3の間であってもよい。いくつかの実施例では、ボディ・ウェル16のドーピング・プロファイルは、その厚さTbwに沿って比較的一定のままである。他の実施例では、ボディ・ウェル16のドーピング濃度は、その厚さTbwに沿って様々である。例えば、ボディ・ウェルのドーピング・プロファイルは、直線状(上から下又は下から上に増加する)、三角状(増加し、次いで上から下に減少する)、段階的(上から下に曲線に沿って増加又は減少する)、又は任意の他のドーピング・プロファイルであり得る。一実施例では、ボディ・ウェル16のドーピング・プロファイルは、ボディ・ウェル16からの少数キャリアの注入がボディ・ウェル16とドリフト層14との間の接合点において減少されるようにドリフト層14の表面からの距離に比例して減少する。
【0038】
再結合領域32の厚さは、Trrとして示されている。様々な実施例では、Trrは、1nmから、ドリフト層14の、200μmほどの厚さであり得る最大厚さまでの間であり得る。Trrは、1nm~200μmのより大きい範囲内の任意の部分範囲の間であり得る。例えば、Trrは、1nm~100nmの間、1nm~1μmの間、1nm~5μmの間、1nm~10μmの間、10nm~1μmの間、10nm~5μmの間、10nm~10μmの間、100nm~1μmの間、100nm~5μmの間、100nm~10μmの間、1μm~5μmの間、1μm~10μmの間、5μm~10μmの間、5μm~50μmの間、10μm~50μmの間、10μm~100μmの間、又は、1nm~200μmのより大きい範囲内の任意の他の部分範囲であってもよい。再結合領域32の幅Wrrは、0.25μmから、トランジスタ10の活性エリアの最大15mmであり得る幅ほどの大きさまでの間であり得る。Wrrは、0.25μm~15mmのより大きい範囲内の任意の部分範囲であり得る。例えば、Wrrは、0.25μm~0.5μmの間、0.25μm~.75μmの間、0.25μm~1.0μmの間、0.25μm~1.25μmの間、0.25μm~1.5μmの間、0.25μm~1.75μmの間、0.25μm~2.0μmの間、0.25μm~2.5μmの間、0.25μm~2.5μmの間、0.5μm~1.0μmの間、0.5μm~2.0μmの間、1.0μm~2.0μmの間、1.0μm~5.0μmの間、2.0μm~5.0μmの間、2.0μm~10μmの間、5.0μm~10μmの間、又は、より大きい範囲の任意の他の部分範囲であってもよい。いくつかの実施例では、Wrrは、少なくともコンタクト領域19の幅ほどの幅であってもよい。上述したように、再結合領域32は、ボディ・ウェル16の下の、若しくは、ボディ・ウェル16のうち、例えば、ボディ・ダイオード30として示されるエリアにおける部分の下の、局所エリアに設けられてもよく、又は、JFET領域20のすべて又は一部の下、及び/又は、活性エリア全体などの、図示していない任意の他の領域の下にあるように、ドリフト層14のより大きい部分にわたって延びてもよい。いくつかの実施例では、再結合領域32における少数キャリア再結合中心の密度は、その厚さTrrに沿って比較的一定のままであり得る。他の実施例では、再結合領域32における少数キャリア再結合中心の密度は、その厚さTrrに沿って、直線状、三角状、段階的などのような、所望のプロファイルで様々である。
【0039】
再結合領域32は、
図5Bに示すように、ドリフト層14においてボディ・ウェル16の直接下に位置付けることができるか、又は、ボディ・ウェル16の厚さのすべて又は一部と重なることができる。さらに、再結合領域32は、
図5Cに示すようにボディ・ウェル16の幅の一部のみに沿って延在することができる。いくつかの実施例では、再結合領域32は、
図5Dに示すようにボディ・ウェル16の下隅又は全体を被包してもよい。最後に、再結合領域32は、
図5Eに示すようにボディ・ウェル16の下のドリフト層の任意の部分においてドリフト層14の厚さ全体に沿って設けられてもよい。要するに、再結合領域32は、所望の少数キャリア・プロファイルを形成するために、したがって、ボディ・ダイオード30のソフトネスを高めるために、ボディ・ウェル16の近くのエリアのすべて又は一部に設けられ得る。再結合領域32は、ボディ・ウェル16の下に少数キャリアのための再結合中心を設けることによってドリフト層14への少数キャリア注入を減らし得る。これにより、ドリフト層14のキャリア寿命が増加し、したがって、ボディ・ダイオード30のソフトネスがさらに高まり得る。
【0040】
図6は、本開示の様々な実施例によるボディ・ウェル16及び再結合領域32についての考えられ得る注入プロファイルを示すグラフである。グラフの左側に、ボディ・ウェル16についての4つの種々のドーピング・プロファイルが示されている。第1の実線は、ボディ・ウェル16についての従来のドーピング・プロファイルを表す。上述したように、これは、結果としてドリフト層14への望ましくなく高いレベルの少数キャリア注入をもたらしかねない。したがって、この第1の実線より下の、破線、点線、及び点鎖線として示された3つの線は、本開示の様々な実施例によるボディ・ウェル16についてのドーピング・プロファイルを示す。示すように、ドーピング・プロファイルの各ドーピング・プロファイルは、略同じレベルでピークを呈するが、ボディ・ウェル16とドリフト層14との境界面が位置する、ボディ・ウェル16の底部の近くのドーピング濃度を減少させる。グラフの中央に、再結合領域32についての様々なドーピング・プロファイルを示す3つの線が示されている。特に、実線は、1×10
13cm
-3でのアルゴンの注入量に起因する再結合領域32を示し、破線は、5×10
13cm
-3でのアルゴンの注入量に起因する再結合領域32を示し、点線は、2.5×10
14cm
-3のアルゴンの注入量に起因する再結合領域32を示す。示すように、再結合領域32は、ボディ・ウェル16と重なり、ボディ・ウェル16とドリフト層14との境界面においてピークに達し得る。とりわけ、
図6に示すボディ・ウェル16と再結合領域32についてのドーピング・プロファイルは、単に例示にすぎない。当業者は、本明細書においてそのすべてが意図される上述の目的を達成するようにボディ・ウェル16及び再結合領域32を設ける多様なやり方があることを容易に理解するであろう。
【0041】
上述したようにノン・パンチ・スルー・ダイオードとしてボディ・ダイオード30を設けること及び/又はドリフト層14に少数キャリアを再分布させることにより、ボディ・ダイオード30が0.5より大きいソフトネス・ファクタS1をもたらすことを可能にし得る。様々な実施例では、上述したボディ・ダイオード30に対する改善は、単独で又は組み合わせて、ボディ・ダイオード30が0.6よりも大きい、0.7よりも大きい、0.8よりも大きい、0.9よりも大きい、1.0よりも大きい、1.1よりも大きい、1.2よりも大きい、1.3よりも大きい、1.4よりも大きい、1.5よりも大きい、2.0よりも大きい、2.5よりも大きい、3.0よりも大きい、3.5よりも大きい、4.0よりも大きい、4.5よりも大きい、5.0よりも大きい、5.5よりも大きい、6.0よりも大きい、6.5よりも大きい、7.0よりも大きい、7.5よりも大きい、8.0よりも大きい、8.5よりも大きい、9.0よりも大きい、9.5よりも大きい、最大10までのソフトネス・ファクタS1をもたらすことを可能にし得る。より包括的には、本開示は、0.5~10の間の任意の離散点、又は、0.5~10以内の任意の部分範囲における、ボディ・ダイオード30のソフトネス・ファクタS1を意図している。
【0042】
同様に、ボディ・ダイオード30に対する改善は、0.5よりも大きい二次的なソフトネス・ファクタS2をもたらし得る。様々な実施例では、上述したボディ・ダイオード30に対する改善は、単独で又は組み合わせて、ボディ・ダイオード30が0.6よりも大きい、0.7よりも大きい、0.8よりも大きい、0.9よりも大きい、1.0よりも大きい、1.1よりも大きい、1.2よりも大きい、1.3よりも大きい、1.4よりも大きい、1.5よりも大きい、2.0よりも大きい、2.5よりも大きい、3.0よりも大きい、3.5よりも大きい、4.0よりも大きい、4.5よりも大きい、5.0よりも大きい、5.5よりも大きい、6.0よりも大きい、6.5よりも大きい、7.0よりも大きい、7.5よりも大きい、8.0よりも大きい、8.5よりも大きい、9.0よりも大きい、9.5よりも大きい、最大10までの二次的なソフトネス・ファクタS2をもたらすことを可能にし得る。より包括的には、本開示は、0.5~10の間の任意の離散点、又は、0.5~10以内の任意の部分範囲における、ボディ・ダイオード30の二次的なソフトネス・ファクタS2を意図している。
【0043】
図7は、本開示の一実施例によるトランジスタを製造する方法を示すフロー図である。まず、基板を用意する(ステップ100)。基板上にドリフト層を設ける(ステップ102)。上述したように、ドリフト層の厚さ及びドーピング濃度は、完成したトランジスタにおけるボディ・ダイオードをノン・パンチ・スルー・ダイオードにするために選択される。特に、ドリフト層の厚さ及び/又はドリフト層のドーピング濃度は、ボディ・ダイオードをノン・パンチ・スルー・ダイオードとして設けるために所与の降伏電圧について従来の設計に比して増加される。ドリフト層においてキャリア寿命向上プロセスを行う(ステップ104)。一実施例では、キャリア寿命向上プロセスは、ドリフト層の高温酸化である。特に、ドリフト層は、減少させなければドリフト層における少数キャリア寿命を縮めかねない炭素空孔を低減させるために30分~5時間の間の時間期間、1300℃~1500℃の間の温度で酸化され得る。とりわけ、本開示は、特定のキャリア寿命向上プロセスに限定されるのではなく、キャリア寿命を向上させる任意の現在既存の方法を意図する。
【0044】
ドリフト層に再結合領域を設ける(ステップ106)。一実施例では、再結合領域を設けることは、イオン注入によりドリフト層の領域に損傷を与えることを含む。別の実施例では、再結合領域を設けることは、ドリフト層の領域にアルゴンを注入することを含む。再結合領域は、ブランケット領域として設けられてもよく、又はドリフト層内の特定の領域に局在化されてもよい。概して、再結合領域は、ボディ・ウェルとドリフト層との境界面の近くに、増加した再結合中心を設けるために、ドリフト層において特定の深さに局在化されるように設けられる。ドリフト層の、基板とは反対側の表面に、ボディ・ウェル及びソース・ウェルを含む接合インプラントを設ける(ステップ108)。とりわけ、ボディ・ウェルには、ボディ・ウェルとドリフト層との境界面の近くに、従来の設計プロセスが決定するよりも少ないドーピング濃度が供給される。ソース・ウェルは、ドリフト層の表面におけるボディ・ウェル内に設けられる。コンタクト・ウェルもまた、ソース・ウェルに隣接してボディ・ウェル内に設けられる。ソース・ウェル及びボディ・ウェルは両方とも、イオン注入プロセスにより設けられ得る。JFET領域もまた、いくつかの実施例において設けられ得る。JFET領域は、ボディ・ウェルに隣接した、増加したキャリア濃度のエリアであり、同様にイオン注入プロセスによって設けられ得る。
【0045】
最後に、ソース・コンタクト、ドレイン・コンタクト、ゲート絶縁体、及びゲート・コンタクトを設ける(ステップ110)。ソース・コンタクトは、ドリフト層の、基板とは反対側の表面に設けられ、コンタクト・ウェルを介してソース・ウェル及びボディ・ウェルと電気的に接触する。ドレイン・コンタクトは、基板の、ドリフト層とは反対側の表面に設けられ、基板と電気的に接触する。ゲート酸化膜が、ドリフト層の、基板とは反対側の表面に、JFET領域、ボディ・ウェルの一部、及びソース・ウェルの一部にわたって設けられる。ゲート・コンタクトは、ゲート酸化膜に設けられる。
【0046】
図8は、トランジスタ内の従来のボディ・ダイオードの逆回復を、スナッピネスを低減させるために本明細書において論じる改良を含むボディ・ダイオードと比較するグラフである。詳細には、実線は、本明細書において論じる改良を含むボディ・ダイオードを通る電流及びそのボディ・ダイオードにわたる電圧(それぞれグラフに付記されている)を示し、その一方、破線は、従来のトランジスタにおけるボディ・ダイオードを通る電流及びそのボディ・ダイオードにわたる電圧を示す。示すように、改善されたボディ・ダイオードは、その最大逆回復電流に達する時間がかからず、最大逆回復電流は、従来のボディ・ダイオードについてよりも著しく少ない。改善されたボディ・ダイオードはまた、従来のボディ・ダイオードに比して、最大逆回復電流から0.2倍の最大逆回復時間までの間の延長時間を示し、電流の傾きは、電流がこれらの値間で増加するにつれ、従来のダイオードについてよりも浅い。改善されたボディ・ダイオードを通る電流はまた、従来のボディ・ダイオードよりも著しく少ないリンギングを示す。上記のすべては、改善されたボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタS
1(上述したようなt
s/t
f)が、改善されたボディ・ダイオードにおいて著しく改善されることを示す。さらに、二次的なソフトネス・ファクタS
2もまた、逆回復電流の傾きとの関係により改善され、x軸と逆回復電流曲線との間の総面積が低減される。要するに、改善されたボディ・ダイオードは、従来のボディ・ダイオードよりも著しくスナッピーでない。上述したように、低減したスナッピネスは、改善されたボディ・ダイオードが従来のボディ・ダイオードに比して、より速く、よりスイッチング損失が少なく、切り替わることができることを意味する。
【0047】
上述したように、ドリフト層14のドーピング濃度は、その厚さ(
図1に示すように上から下)に沿って連続的であってもよく、又は、その厚さに沿って変化するドーピング・プロファイルに応じて様々であってもよい。さらに、いくつかの実施例では、ドリフト層14は、異なるドーピング濃度及び/又はドーピング・プロファイルをそれぞれが有する複数の異なる層を含み得る。他の実施例では、トランジスタ10は、ドリフト層14内に特定のドーピング・プロファイルを有する層であるバッファ層を含み得る。バッファ層は、いくつかの実施例ではドリフト層14と基板12との間に位置付けられ得る。複数のドリフト層、及び/又はバッファ層を設けることは、特にその第2の降伏電圧を低下させることによって、トランジスタの耐久性を高め得、また、ボディ・ダイオード30をノン・パンチ・スルー・ダイオードであるように設計するために、又は、ボディ・ダイオード30内の少数キャリアの分布を変えて上述したようなスナッピネスを低減させるためにさらに用いられ得る。
【0048】
図9は、本開示の一実施例によるトランジスタ10の簡略版を示す。トランジスタ10は、基板12と、基板12の上にバッファ層34と、バッファ層34の上のドリフト層14とを含む。グラフは、基板12、バッファ層34、及びドリフト層14の相対的なドーピング濃度を示す。示すように、基板12は、バッファ層34よりも高濃度にドープされ、バッファ層34もまた、ドリフト層14よりも高濃度にドープされる。特に、基板12、バッファ層34、及びドリフト層14はすべて、比較的一定のやり方でドープされ、したがって、示すようにステップ・ドーピング・プロファイルを形成する。ドリフト層14よりも高いが基板12よりも低いドーピング濃度を有するバッファ層34を設けることにより、放射粒子との衝突によって加速され得る荷電粒子のバッファを形成することで、これらの加速された荷電粒子がトランジスタ10を通過するのではなく再結合することを可能にする。これのことは、トランジスタ10の耐久性を高め得、さらに、そのような適合されたドーピング・プロファイルは、ボディ・ダイオード30のスナッピネスを低減させ、したがって、その性能を高めるために、デバイスにおける少数キャリアの所望のプロファイルを構成するために用いられ得る。
【0049】
とりわけ、基板12、バッファ層34、及びドリフト層14の厚さ及びドーピング濃度は、単に例示にすぎない。詳細には、これらの厚さ及びドーピング濃度は、定格を1200Vにされたデバイスについて示されている。当業者は、阻止電圧が高いほど、ドリフト層14、及び、いくつかの実施例では、バッファ層34について、より厚い厚さ、及び/又はこれらの層について、減少したドーピング濃度を決定し得ることを容易に理解するであろう。しかしながら、これらの層の厚さとドーピング濃度との関係は、比較的変わらないままである。一実施例では、バッファ層34の厚さは、ドリフト層14の厚さの5%~35%の間であり得る。特定の実施例では、バッファ層34の厚さは、ドリフト層14の厚さの5%~10%の間、ドリフト層14の厚さの10%~15%の間、ドリフト層14の厚さの15%~20%の間、ドリフト層の厚さの20%~25%の間、ドリフト層14の厚さの25%~30%の間、ドリフト層14の厚さの30%~35%の間、ドリフト層14の厚さの15%~25%の間、ドリフト層14の厚さの25%~35%の間であってもよい。さらに、バッファ層34のドーピング濃度は、ドリフト層14のドーピング濃度よりも少なくとも20%だけ大きいままであるのに対し、基板12のドーピング濃度の20%~90%の間で様々であり得る。特定の実施例では、バッファ層34のドーピング濃度は、基板12のドーピング濃度の20%~30%の間、基板12のドーピング濃度の30%~40%の間、基板12のドーピング濃度の40%~50%の間、基板12のドーピング濃度の50%~60%の間、基板12のドーピング濃度の60%~70%の間、基板12のドーピング濃度の70%~80%の間、基板12のドーピング濃度の80%~90%の間であってもよい。
【0050】
一実施例では、基板12、バッファ層34、及びドリフト層14は、炭化ケイ素(SiC)である。したがって、バッファ層34は、ドリフト層14の前に基板12上に成長されるエピタキシャル層であり得る。次いでドリフト層14が、バッファ層34の上に成長され得る。バッファ層34は、所望のドーピング濃度をもたらすためにドーパントを用いる環境において成長され得るか、又は、成長され、その後、所望のドーピング濃度に(例えば、イオン注入を介して)注入され得る。他の実施例では、バッファ層34は、基板12の表面における注入領域であり得る。基板12は、バッファ層34についての所望のドーピング・レベルよりも高濃度にドープされるため、そのネット・ドーピング濃度を減少させるために逆のドーピング型でドープされ得る(例えば、基板12は、n型基板である場合、pドーパントでドープされ得る)。とりわけ、本開示の原理は、n型又はp型基板、バッファ層、及びドリフト層に同様に当てはまる。すなわち、本開示の原理は、n型及びp型デバイスに同様に当てはまり得る。
【0051】
図10は、本開示のさらなる実施例によるトランジスタ10の簡略版を示す。
図10に示すトランジスタ10は、デバイスのドーピング・プロファイル及び層の相対的な厚さを除き、
図9に示すものと略同様である。特に、バッファ層34は、デバイスのドーピング・プロファイル全体がドリフト層14とバッファ層34との間のステップ及びバッファ層34と基板12との間の別のステップを含むようにドリフト層14からの距離に比例して減少する直線段階的ドーピング濃度を呈する。この実施例では、バッファ層34は、そのドーピング・プロファイルにおける直線遷移を可能にするために、より厚いものであり得る。そのようなドーピング・プロファイルは、まずバッファ層34を成長させ、次いで、バッファ層にイオン注入を行うことによって、又は、ドーパントの濃度が成長プロセス全体を通じて制御される環境においてバッファ層34を成長させることによって形成され得る。とりわけ、このドーピング・プロファイルは、単に例示にすぎず、任意の直線段階的ドーピング濃度は、本開示の原理から逸脱することなく
図10に示すものと置き換えられ得る。
【0052】
図11は、本開示のさらなる実施例によるトランジスタ10の簡略版を示す。
図11に示すトランジスタ10は、デバイスのドーピング・プロファイル及び層の相対的な厚さを除き、
図9に示すものと略同様である。特に、バッファ層34は、ドリフト層14のドーピング濃度と基板12のドーピング濃度との間の実質的に滑らかな遷移をもたらす。この実施例では、バッファ層34は、そのドーピング・プロファイルにおける遷移を可能にするために、実質的により厚いものであり得る。そのようなドーピング・プロファイルは、まずバッファ層34を成長させ、次いで、バッファ層にイオン注入を行うことによって、又は、ドーパントの濃度が成長プロセス全体を通じて制御される環境においてバッファ層34を成長させることによって形成され得る。とりわけ、このドーピング・プロファイルは、単に例示にすぎず、任意の段階的ドーピング濃度、直線状又は他の様式が、本開示の原理から逸脱することなく
図11に示すものと置き換えられ得る。
【0053】
図12は、本開示のさらなる実施例によるトランジスタ10の簡略版を示す。
図12に示すトランジスタ10は、デバイスのドーピング・プロファイル及び層の相対的な厚さを除き、
図9に示すものと略同様である。特に、バッファ層34は、ドーピング・「スパイク」として提供され、基板12の上に直接ない。この実施例では、バッファ層34は、厚さが減らされ得る。そのようなドーピング・プロファイルは、ドリフト層14のごく一部の上での別個の成長を介して、又は、ドリフト層14のごく一部を成長させ、イオン注入を行ってバッファ層34を生成し、次いでドリフト層14の残りを成長させることによって、形成され得る。とりわけ、このドーピング・プロファイルは、単に例示にすぎず、任意の「スパイク」・ドーピング・プロファイルが、本開示の原理から逸脱することなく
図12に示すものと置き換えられ得る。
【0054】
図13Aに示すように、より低濃度にドープされたドリフト層14に達する前に電流拡散を助けるために、特定の事例では、比較的薄いがより高濃度にドープされた拡散層36がドリフト層14の上に設けられる。したがって、典型的なSiC又は他のワイド・バンドギャップ・トランジスタ10は、拡散層36として薄くより高濃度にドープされた上領域、より厚くより低濃度にドープされたドリフト層14、及び、スペースを節約するために
図13Aに薄く示されている比較的薄い基板12を有し得る。
図13Bは、縦型半導体内の電界対トランジスタ10の上部からの距離のグラフである。なだれにおいて、電界は、拡散層36の上面において最も高く、拡散層36及びドリフト層14中で、ただし種々の比率で強度が低下する。とりわけ、電界は、ドリフト層14と基板12との境界面(すなわち、基板12の上面)において有意なレベルのままである。したがって、
図13Bに示すように、電界は、ドリフト層14全体を効果的に突き抜ける(PT)。
図13Cは、なだれ降伏の前にこの種の突き抜けが十分に起こることができ、第2の降伏が、このような構造について、なだれよりも低い電圧においても起こることができることを示す。特に、
図13Cは、トランジスタ10のFET又はダイオード構成について、ドレイン-ソース電圧(Vds)が阻止モードで増加する際の、ドリフト層14の底部における電界とドレイン-ソース電流(lds)とを示すグラフである。第2の降伏及びなだれ降伏の電圧だけでなく、パンチ・スルー電圧V(PT)が観察される。
【0055】
基板への電界の突き抜けを回避又は軽減するために、
図14Aに示すように拡散層36とともにバッファ層34が用いられ得る。バッファ層34のドーピング濃度は、ドリフト層20のドーピング濃度と基板12のドーピング濃度との間であり得る。バッファ層34を含むことにより、電界が基板12の上面から遠ざかることになり、第2の降伏電圧が増加する。例示の実施例について、
図14Bに示すように、なだれ電圧における電界は、ドリフト層14を突き抜けるが、バッファ層34において停止され、したがって、基板12に突き抜けない。バッファ層34を含むことにより、第2の降伏電圧が増加し、これにより、高電界バイポーラ条件において耐久性が高まるとともに、電界が基板12から遠ざかる。電界を基板から遠ざけることにより、基板12からドリフト層14への基底面転位の移動の影響が最小となる。
図14Cは、トランジスタ10のダイオード構成のFETについて、ドレイン-ソース電圧(Vds)が阻止モードで増加する際の、ドリフト層14の底部における電界とドレイン-ソース電流(lds)とを示す。バッファ層34を有する場合、なだれ(Vaval)及びパンチ・スルー電圧V(PT)は変わらないが、第2の降伏の電圧は著しく増加される。さらに、上述した理由から、バッファ層34は、電界の突き抜けを防ぎ得るため、ボディ・ダイオード30のソフトネスを高め得る。
【0056】
特定の実施例について、拡散層36は概して、所望の電流及び電圧定格に応じて、ドーピング・レベルが1×10
16cm
-3~1×10
17cm
-3の範囲であり、厚さが1μm~4μmの間である。ドリフト層14のためのドーピングは、デバイスの電圧定格に応じて決まり、300V~300kVの定格にされたデバイスについて、1×10
13~1×10
17cm
-3のドーピング範囲、及び厚さが2μm~300μmで様々とすることができる。バッファ層34は概して、基板12よりもドーピングが低く、多くの場合、1×10
18cm
-3以上でドープされ、阻止において著しく空乏化しないほど十分に高い。したがって、バッファ層34は、必要に応じて機能するために、ドーピングに応じて、1×10
17cm
-3~5×10
18cm
-3までの範囲に及ぶとともに0.5μm~5μmの厚さであり得る。基板12の厚さは、50~500μmの範囲に及び得る。
図14Aの実施例に関連付けられる概念は、構造にほとんど抵抗を付加しないものであるが、場合によって、ボディ・ダイオード30の耐久性性能及びスナッピネスに役立つ。
【0057】
図14Aの実施例についての代替的なドーピング濃度範囲は、
拡散層36について1×10
16~5×10
16cm
-3;
ドリフト層14について1×10
13~1×10
17cm
-3;
バッファ層34について5×10
16~5×10
18cm
-3;及び
基板12について5×10
17~1×10
20cm
-3を含む。
【0058】
図15Aの実施例では、複数のドリフト層がトランジスタ10に設けられ、上部の第1のドリフト層14A及び下部の第2のドリフト層14Bとして参照される。バッファ層34は含まれない。第1のドリフト層14Aは、拡散層36と第2のドリフト層14Bとの間に存在している。第2のドリフト層14Bは、第1のドリフト層14Aと基板12との間に存在している。
【0059】
下部の第2のドリフト層14Bは、前の実施例によるドリフトを厚くするように上部の第1のドリフト層14Aよりも僅かに高いドーピング・レベルを有し得る。さらに、第1のドリフト層14Aは、ドリフト抵抗全体を低く保つために僅かに高いドーピング・レベルを有しつつ、
図14Aにおける実施例のドリフト層14よりも薄いものとすることができる。前の実施例に比して、これらの変更により、パンチ・スルー電圧(V(PT))及び第2の降伏電圧の両方が増加する。
【0060】
特定の実施例では、第2のドリフト層14Bは、第1のドリフト層14Aの厚さに近いか又はそれよりも薄い任意の厚さでありながら、第1のドリフト層14Aのドーピング・レベルの1~3倍であるドーピング・レベルを有し得る。この実施例は、基板12に貫入するほど高い電界を与えないことによって耐久性の増加をもたらす。選ばれた実施例では、トランジスタ10の第1のドリフト層14A及び第2のドリフト層14Bは、
図15Bに示すように、いかなる電界も第2のドリフト層14Bを突き抜けて基板12に至ることを防ぐように設計することができる。
図15Bは、なだれ電圧でのトランジスタ10における電界を示す。とりわけ、電界は、第2のドリフト層14Bにおいて基板12の直前で停止される。
【0061】
図15Cは、トランジスタ10のFET又はダイオード構成について、ドレイン-ソース電圧(Vds)が阻止モードで増加する際の、第2のドリフト層14Bの底部における電界とドレイン・ソース電流(lds)とを示す。下部の第2のドリフト層14Bを加えることにより、なだれ電圧(Vaval)は、一定であり続けることができ、その一方、パンチ・スルー電圧V(PT)及び第2の降伏電圧の両方はなだれ電圧(Vaval)を超えて増加される。
【0062】
第1のドリフト層14A及び第2のドリフト層14Bなどの複数のドリフト層の使用は、高電界、高電流、及び高速スイッチング条件下での全体的なデバイス耐久性に役立つことができる。スイッチングにおけるスナッピネスが低減され、電界が基板12に近づけられず、そのため、基底面転位が移動して第1のドリフト層14A又は第2のドリフト層14Bに至ることがない。同様の結果を達成するために2つよりも多くのドリフト層が使用されてもよい。
【0063】
図15Aの実施例についての例示的なドーピング濃度範囲は、
拡散層36について1×10
16~5×10
16cm
-3;
第1のドリフト層14Aについて1×10
13~4×10
16cm
-3;
第2のドリフト層14Bについて2×10
13~8×10
16cm
-3;及び
基板12について5×10
17~1×10
20cm
-3を含む。
範囲の代替的なセットは、
拡散層36について1×10
16~5×10
16cm
-3;
第1のドリフト層14Aについて1×10
15~2×10
16cm
-3;
第2のドリフト層14Bについて2×10
15~3×10
16cm
-3;及び
基板12について1×10
18~1×10
20cm
-3を含む。
例示的な厚さ範囲は、
拡散層36について1~4μm;
第1のドリフト層14Aについて2~50μm;
第2のドリフト層14Bについて1~30μm;及び
基板12について50~500μmを含む。
【0064】
図16Aに示された実施例は、第2のドリフト層14Bと基板12との間にバッファ層34を加えることによって、
図15Aの実施例を基に構築している。前の実施例の場合のように、なだれ電圧における電界は、
図16Bに示すように、第2のドリフト層14Bを突き抜けず、したがって、バッファ層34の直前で停止されている。この実施例のさらなる利点は、
図16Cにおいてより容易に明らかになる。
図16Cは、トランジスタ10がFET又はダイオードとして構成される場合の、ドレイン-ソース電圧(Vds)が阻止モードで増加する際の、ドリフト層14Bの底部における電界とlds電流とを示す。バッファ層34を加えることにより、なだれ電圧(Vaval)及びパンチ・スルー電圧(V(PT))は、比較的一定に保たれ、その一方、第2の降伏電圧はさらに増加されて、高電界、高電流放電条件においてさらなる電界低下をもたらす。
【0065】
図16Aの実施例についての例示的なドーピング濃度範囲は、
拡散層36について1×10
16~5×10
16cm
-3;
第1のドリフト層14Aについて1×10
13~5×10
16cm
-3;
第2のドリフト層14Bについて2×10
13~1×10
17cm
-3;
バッファ層34について5×10
16~5×10
18cm
-3;及び
基板12について1×10
18~1×10
20cm
-3を含む。
範囲の代替的なセットは、
拡散層36について1×10
16~5×10
16cm
-3;
第1のドリフト層14Aについて1×10
15~2×10
16cm
-3;
第2のドリフト層14Bについて2×10
15~3×10
16cm
-3;
バッファ層34について1×10
17~1×10
18cm
-3;及び
基板12について1×10
18~1×10
20cm
-3を含む。
例示的な厚さ範囲は、
拡散層36について1~5μm;
第1のドリフト層14Aについて2~50μm;
第2のドリフト層14Bについて1~30μm;
バッファ層34について1~20μm;及び
基板12について50~500μmを含む。
第1のドリフト層14A及び第2のドリフト層14Bは、同じ又は異なるドーピング濃度及び同じ又は異なるドーピング・プロファイルを有し得る。例えば、第1のドリフト層14A及び第2のドリフト層14Bの両方は、同じ又は異なる段階的又は一定ドーピング濃度を有し得る。さらに、第1のドリフト層14A及び第2のドリフト層14Bのいずれか一方は、段階的ドーピング・プロファイルを有し得るのに対し、他方のドリフト層は一定である。特定の実施例では、拡散層36は、第1のドリフト層及び第2のドリフト層の両方でない場合、それらのうちの少なくとも一方よりも高いドーピング濃度を有する。
【0066】
図17Aの実施例は、段階的ドーピングを有するドリフト層14をトランジスタ10に設けている。例示の実施例では、ドリフト層14が1つだけあり、バッファ層34はない。ドーピング濃度は、ドリフト層14においてドリフト層14の底部(すなわち、基板の境界面)から上部(すなわち、拡散層36の境界面)にかけて増加する。したがって、ドーピング濃度は、ドリフト層14の底部において僅かにより高く、ドリフト層14の上部の近くでより低い。
図17Bに示すように、ドーピング濃度は、拡散層36を通じた相対レベルであり、ドリフト層14の上部において第1のレベルに下がり、ドリフト層14中で拡散層36以下のレベルに連続的に増加し、基板12においてはるかにより高い比較的一定のレベルに急増する。
図17Bにおけるドーピング濃度は、ログ・スケールで示されている。
【0067】
適正なドーピング濃度、プロファイル、及び厚さの場合、
図17Cに示すように、パンチ・スルー電圧(V(PT))及び第2の降伏電圧の両方に増加がもたらされる。段階的ドリフト層14の場合、なだれ電圧(Vaval)は一定であり続けることができるのに対し、第2の降伏電圧及びパンチ・スルー電圧V(PT)は、なだれ電圧(Vaval)限界を超えて増加される。これにより、高電界、高電流放電条件においてさらなる電界低下がもたらされる。
【0068】
基板12に貫入するいかなる電界も又は貫入するほど高い電界を与えないことによって、高電界、高電流、及び高速スイッチング条件下で耐久性が高まる。スイッチングにおけるバイポーラ・デバイスのスナッピネスもまた低減される。他の実施例でのように、電界を基板12から遠ざけることにより、基底面転位が移動してドリフト層14に至ることが防がれる。
【0069】
図17A及び
図17Bの実施例についての例示的なドーピング濃度範囲は、
拡散層36について1×10
16~5×10
16cm
-3;
ドリフト層14について1×10
13~5×10
18cm
-3の間から1×10
15~5×10
17cm
-3の間;及び
基板12について1×10
18~1×10
20cm
-3を含む。
範囲の代替的なセットは、
拡散層36について1×10
16~5×10
16cm
-3;
ドリフト層14について5×10
15~5×10
17cm
-3の間から1×10
16~1×10
17cm
-3の間;及び
基板12について1×10
18~5×10
19cm
-3を含む。
例示的な厚さ範囲は、
拡散層36について1~5μm;
ドリフト層14について3~200μm;及び
基板12について50~500μmを含む。
【0070】
ここで
図18を参照すると、拡散層36と基板12との間にバッファ層34及び段階的ドリフト層14が設けられている。この実施例では、拡散層36及びバッファ層34は、均一にドープされ、ドリフト層14は、上述したように段階的である。他の実施例では、拡散層36及び/又はバッファ層34についてのドーピングは、段階的である。
図18Bのグラフは、例示的なドーピング・プロファイルをログ・スケールで提示する。
図18Bに示すように、ドーピング濃度は、拡散層36の上部における第1のレベルから拡散層36の底部における第2のレベルに連続的に減少し、ドリフト層14の上部における第2のレベルから、ドリフト層14の底部における、第1のレベルよりも低い第3のレベルに連続的に増加し、バッファ層34中で第2のレベルから第4のレベルに連続的に増加する。基板12中のドーピングは、第4のレベルで一定であることが示されている。例示の実施例では、例示の層中のドーピング・レベルは、所与の層内又は層の接合部におけるドーピング濃度に急な変化がないという点で連続的である。
【0071】
全段階的な実施例についての例示的なドーピング濃度範囲は、
拡散層36について5×10
16~1×10
14cm
-3の間から3×10
16~5×10
15cm
-3の間;
ドリフト層14について1×10
13~1×10
17cm
-3の間から5×10
15~5×10
16cm
-3の間;
バッファ層34について5×10
16~1×10
20cm
-3の間から1×10
17~1×10
20cm
-3の間;及び
基板12について1×10
18~1×10
20cm
-3を含む。
例示的な厚さ範囲は、
拡散層36について1~5μm;
ドリフト層14について3~200μm;
バッファ層34について1~20μm;及び
基板12について50~500μmを含む。
図9~
図12における実施例について、基板12、バッファ層34、及びドリフト層14についての特徴、厚さ、ドーピング濃度、厚さの関係及び/又はドーピング濃度の関係などは、
図13~
図18の実施例のいずれかに適用され得るが、その必要はなく、逆の場合も同じである。
【0072】
図9~
図18に関して上述したような複数のドリフト層、バッファ層34、及び拡散層36の使用は、トランジスタ10の耐久性を高めるだけでなく、ボディ・ダイオード30のスナッピネスも低減させ得る。まず、ドリフト層14、バッファ層34、及び拡散層36の様々な構成は、上述したように、突き抜けを防ぎ、したがって、ボディ・ダイオード30の性能を改善し得る。さらに、ドリフト層14、バッファ層34、及び拡散層36の様々な構成は、
図4に関して上述したようにスナッピネスを低減させるために、少数キャリアの所望の分布をもたらすように設計され得る。
【0073】
図19は、本開示の一実施例によるノン・パンチ・スルー・ダイオードとしてボディ・ダイオード30を設けることの効果を示すグラフである。特に、グラフは、パンチ・スルー・ダイオード及びノン・パンチ・スルー・ダイオードとして設けられた場合のボディ・ダイオード30についての電圧及び電流過渡応答のいくつかの部分を示す。破線は、パンチ・スルー・ダイオードとして設けられた場合の、25℃でのボディ・ダイオード30の応答を示す。点線は、パンチ・スルー・ダイオードとして設けられた場合の、175℃でのボディ・ダイオード30の応答を示す。実線は、ノン・パンチ・スルー・ダイオードとして設けられた場合の、25℃でのボディ・ダイオード30の応答を示す。上述したように、これは、例として、ドリフト層14の厚さ及びドーピング濃度を変更することによって達成され得る。点鎖線は、ノン・パンチ・スルー・ダイオードとして設けられた場合の、175℃でのボディ・ダイオード30の応答を示す。示すように、ボディ・ダイオード30の応答は、ノン・パンチ・スルー・ダイオードとして設けられた場合、25℃及び175℃の両方において、より緩やかである。
【0074】
図20は、ボディ・ダイオード30におけるドリフト層14のキャリア寿命の効果を示すグラフである。特に、グラフは、ドリフト層14において種々のキャリア寿命が与えられた場合のボディ・ダイオード30についての電圧及び電流過渡応答のいくつかの部分を示す。下記に論じる実線によって大部分が隠れている破線は、キャリア寿命向上のない、ボディ・ダイオード30の応答を示す。点線は、ドリフト層14におけるZ
1/2トラップ密度が1×10
15cm
-3以下であるようにキャリア寿命向上を有するボディ・ダイオード30の応答を示す。実線は、ドリフト層14におけるZ
1/2トラップ密度が5×10
13cm
-3以下であるようにキャリア寿命向上を有するボディ・ダイオード30の応答を示す。点鎖線は、ドリフト層14におけるZ
1/2トラップ密度が1×10
12cm
-3以下であるようにキャリア寿命向上を有するボディ・ダイオード30の応答を示す。キャリア寿命はZ
1/2トラップ密度に関係するが、その理由は、これらのトラップがキャリアのための再結合中心として働くからである。例えば、上述したように、熱酸化によりZ
1/2トラップ密度を低下させることによって、キャリア寿命を高めることができ、これにより、スナッピネスが低減し、したがって、ボディ・ダイオード30のソフトネスが高まり得る。とりわけ、
図20におけるグラフは、パンチ・スルー・ダイオードとしてのボディ・ダイオード30の応答を示す。
【0075】
図21は、ボディ・ダイオード30における再結合領域32の効果を示すグラフである。特に、グラフは、再結合領域32を設けた場合及び設けていない場合のボディ・ダイオード30についての電圧及び電流過渡応答のいくつかの部分を示す。破線は、再結合領域32を有しないボディ・ダイオード30の応答を示すのに対し、実線は、再結合領域32を有するボディ・ダイオード30の応答を示す。とりわけ、グラフは、ノン・パンチ・スルー・ダイオードとしてのボディ・ダイオード30の応答を示し、ドリフト層14は、向上したキャリア寿命を有する。示すように、再結合領域32を設けることは、ボディ・ダイオード30のソフトネスを高める。
【0076】
当業者は、本開示の好ましい実施例に対する改善及び変更を認識するであろう。すべてのそのような改善及び変更は、本明細書において開示される概念の範囲及び添付の特許請求の範囲内にあると考えられる。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のドーピング型及び第1のドーピング濃度を有する基板と、
前記基板上に、前記第1のドーピング型及び第2のドーピング濃度を有するドリフト層と、
前記基板とは反対側の前記ドリフト層に、接合インプラントであって、
前記第1のドーピング型とは反対の第2のドーピング型を有するボディ・ウェルと、
前記ボディ・ウェル内にある、前記第1のドーピング型を有するソース・ウェルと、
を含む、接合インプラントと、
前記ソース・ウェル及び前記ボディ・ウェルと電気的に接触するソース・コンタクトと、
前記基板と電気的に接触するドレイン・コンタクトと、
前記ドリフト層の上に、前記ボディ・ウェル及び前記ソース・ウェルの一部にわたってゲート絶縁体と、
前記ゲート絶縁体上に、ゲート・コンタクトであって、前記ソース・コンタクトと前記ドレイン・コンタクトとの間のボディ・ダイオードのソフトネス・ファクタが0.5よりも大きい、ゲート・コンタクトと、
を含む、トランジスタ。
【請求項2】
前記ボディ・ダイオードの前記ソフトネス・ファクタは、10以下である、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項3】
前記ボディ・ダイオードの二次的なソフトネス・ファクタが、0.5よりも大きい、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項4】
前記ボディ・ダイオードの前記二次的なソフトネス・ファクタは、10未満である、請求項3に記載のトランジスタ。
【請求項5】
前記トランジスタは、炭化ケイ素デバイスである、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項6】
前記ボディ・ダイオードは、ノン・パンチ・スルー・ダイオードである、請求項5に記載のトランジスタ。
【請求項7】
前記ボディ・ウェル領域の下に再結合領域をさらに含み、前記再結合領域は、周囲の前記ドリフト層よりも高い濃度の再結合中心を有する、請求項6に記載のトランジスタ。
【請求項8】
前記再結合領域における再結合中心の濃度は、前記ドリフト層における再結合中心の濃度よりも5~10倍の間で高い、請求項7に記載のトランジスタ。
【請求項9】
前記ボディ・ダイオードの順バイアス動作モード時、前記ボディ・ウェルと前記ドリフト層との境界面における少数キャリアの濃度は、前記ドリフト層と前記基板との境界面における少数キャリアの濃度よりも低い、請求項8に記載のトランジスタ。
【請求項10】
前記ボディ・ダイオードの順バイアス動作モード時、前記ボディ・ウェルと前記ドリフト層との境界面における少数キャリアの濃度は、前記ドリフト層と前記基板との境界面における少数キャリアの濃度よりも低い、請求項5に記載のトランジスタ。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
ダイオードを通る電流がゼロ(t1)を通過するときからその負のピーク値(t3)に達するときまでの間の時間が、t
sとして示されている。ダイオードを通る電流がその負のピーク値(t3)に達するときからその電流が0.2・I
RRM(t
5)に回復するときまでの間の時間が、t
fとして示されている。t
fとt
sとの比(t
f/t
s)は、本明細書において、ダイオードのソフトネス・ファクタS
1として定義される。ソフトネス・ファクタは、ダイオードのスナッピネスと逆相関関係にある。したがって、より高いソフトネス・ファクタが望ましい。二次的なソフトネス・ファクタS
2が、本明細書において
【数1】
として定義され、ここで、二次的なソフトネス・ファクタのより高い値が望ましい。ダイオードのソフトネスのスナッピネスを定量化するためのさらに別のやり方は、x軸(ゼロ電流)と負の逆回復電流曲線との間の面積を考慮することによるものである。一般的に、この面積を最小限にすることが望ましい。
【国際調査報告】