(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(54)【発明の名称】液晶媒体および電気光学的デバイス
(51)【国際特許分類】
C09K 19/20 20060101AFI20231206BHJP
C09K 19/34 20060101ALI20231206BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20231206BHJP
G02F 1/137 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C09K19/20
C09K19/34
G02F1/13 500
G02F1/137 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533729
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2021083540
(87)【国際公開番号】W WO2022117551
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ブレマー、 マチアス
(72)【発明者】
【氏名】真辺 篤孝
(72)【発明者】
【氏名】クラスカ、 マルティン
【テーマコード(参考)】
2H088
4H027
【Fターム(参考)】
2H088GA02
2H088HA08
2H088JA05
2H088JA09
2H088JA10
2H088JA17
2H088KA19
2H088KA20
2H088KA24
2H088KA26
4H027BA01
4H027BB09
4H027BD02
4H027BE04
4H027BE05
4H027CC04
4H027CE04
4H027CH04
4H027CW02
4H027DH04
(57)【要約】
【課題】液晶媒体および電気光学的デバイスを提供する。
【解決手段】新規な媒体は、好ましくは周囲温度において強誘電性ネマチック相を示す。それらは、式IA、IBのおよびICの化合物の群から選択される1種類以上の化合物(式中、可変基は明細書および特許請求の範囲に示される意味を有する。)を含む。強誘電性ネマチック材料を提供するための媒体の使用および電気光学的デバイスの動作方法が提示される。媒体は、省エネルギーディスプレイおよび電気的用途のために有用なことがある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲温度において強誘電性ネマチック相を示す、液晶媒体。
【請求項2】
式IA、IBおよびICの化合物の群から選択される1種類、2種類または3種類以上の化合物を含む、液晶媒体。
【化1】
(式中、
X
1A、X
1BおよびX
1Cは、それぞれ互いに独立に-F、-CF
3、-OCF
3、-Cl、-NCSまたは-CNを表し、
Z
1A、Z
1BおよびZ
1Cは、それぞれ互いに独立に-(C=O)-O-または-CF
2-O-を表し、
L
1A、L
1BおよびL
1Cは、それぞれ互いに独立にHまたはCH
3、好ましくはHを表し、
【化2】
を表し、
【化3】
を表し、
【化4】
を表し、
R
1A、R
1BおよびR
1Cは、それぞれ互いに独立に1~15個のC原子を有するアルキル基(ただし加えて、これらの基における1個以上のCH
2基は、それぞれの場合で互いに独立にO/S原子が互いに直接連結しないようにして-C≡C-、-CF
2-O-、-OCF
2-、-CH=CH-、
【化5】
-O-、-S-、-CO-O-または-O-CO)-で置き換えられてよく、ただし加えて1個以上のH原子はハロゲンで置き換えられてよい。)を表し、またはHを表す。)
【請求項3】
強誘電性ネマチック相を示す、請求項2に記載の媒体。
【請求項4】
請求項2において定義される通りの式IAの1種類、2種類または3種類以上の化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項5】
請求項2において定義される通りの式IBの1種類、2種類または3種類以上の化合物を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項6】
請求項2において定義される通りの式ICの1種類、2種類または3種類以上の化合物を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項7】
式IA、IBおよびICの2つまたは全て3つからそれぞれ選択される1種類、2種類または3種類以上の化合物を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項8】
少なくとも0℃~40℃の温度範囲にわたって強誘電性ネマチック相を示す、請求項1~7のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項9】
20℃および1kHzにおいて400以上の誘電異方性を示す、請求項1~8のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項10】
その誘電特性にヒステリシスを示す、請求項1~9のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項11】
強誘電性ネマチック液晶材料を提供するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の液晶媒体の使用。
【請求項12】
省エネルギーディスプレイまたは電気的用途のための、請求項1~11のいずれか1項に記載の液晶媒体の使用。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の液晶媒体を含む、電気光学的液晶ディスプレイ。
【請求項14】
請求項2~10のいずれか1項に記載の液晶媒体を調製する方法であって、請求項2において与えられる通りの式IA、IBおよびICの化合物の群から選択される1種類以上の化合物を、それぞれ互いにまたは1種類以上の他の化合物と混合する、方法。
【請求項15】
その誘電特性にヒステリシスを示す請求項1~10のいずれか1項に記載の液晶材料を使用する、電気光学的デバイス、好ましくは液晶ディスプレイの動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は実質的な温度範囲、好ましくは周囲温度において強誘電ネマチック液晶相を示す液晶媒体に関する。これらの媒体は好ましくは、下に定義される通りの式IA、IBおよびICの化合物の群から選択される1種類以上の化合物を含み、それらは強誘電性ネマチック液晶相を維持する。加えて本発明は本発明による液晶媒体を含む液晶ディスプレイおよび電気光学的素子ならびに電気光学的デバイスの動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶化合物の用途分野は種々のタイプのディスプレイデバイス、電気光学デバイス、電子部品、センサーなどへ著しく広がってきた。このため特にネマチック液晶の分野では、多数の様々な構造が提案されてきた。ネマチック液晶は、現在までにフラットパネルディスプレイデバイスにおける最も広範な使用が見出されてきた。それらは特に、パッシブTNもしくはSTNマトリックスディスプレイまたはTFTアクティブマトリックスを有するシステム(よく知られたTN、IPS、FFSおよびVAシステムを含む。)で採用されてきた。
【0003】
一般的なLCDテレビセット、LCDデスクトップモニターおよびモバイルLCDデバイスの全てを含む殆どの、これらのデバイスはネマチック液晶相を採用する。強誘電性スメクチック相またはブルー相などの幾つかの代替する液晶相が知られている。しかしながら強誘電性ネマチック相(Nf-LC相)は、そのような特性を持つ適切な液晶材料が見つからないまま、数十年にわたり理論的に仮定されてきた。最近、強誘電性ネマチック挙動の兆候を示す2つの化学構造が報告された。
【0004】
Hiroya Nishikawa、Kazuya Shiroshita、Hiroki Higuchi、Yasushi Okumura、Yasuhiro Haseba、Shin-ichi Yamamoto、Koki SagoおよびHirotsugu Kikuchi著、Adv.Mater.(2017年)、第29巻、第1702354頁(非特許文献1)には約45℃~68℃の間の温度で強誘電性ネマチック挙動を有する式Aの化合物が記載されている。
【0005】
【0006】
更にNerea Sebastian、Luka Cmok、Richard J.Mandle、Maria Rosario de la Fuente、Irena Drevensek Olenik、Martin CopicおよびAlenka Mertelj著、Physical Review Letters(2020年)、第124巻、第037801頁(非特許文献2)には約120℃~133℃の間の温度で同様の挙動を有する式Bの化合物が記載されている。
【0007】
【0008】
更にNf-LC相用に入手可能な唯一2種類の物質の比較が、Xi Chenら著、PNAS(2020年6月23日)、第117巻(第25号)、第14021~14031頁(非特許文献3)に提示されている。O.D.Lavrentovich著、Proc Nat Acad Sci USA(2020年)、第117巻(第26号)、第14629~14631頁(非特許文献4)には、新しいNf-LC相の高い意義が強調されている。しかし、Nf相の観測温度は周囲温度を大きく超える。
【0009】
これまで、周囲温度に近い強誘電性ネマチック液晶相(Nf-LC相)を有する液晶化合物は記載されなかった。室温とも呼ばれることがある周囲温度は、本明細書において20℃の温度を意味するものとする。
【0010】
技術的用途のためにNf-LC相を開発することは周囲温度への適用性から明らかな利点がある。ディスプレイ用途は通常、周囲温度よりも上および下それぞれ室温、例えば15℃~25℃、好ましくは0℃~50℃、好ましくは更に広い動作範囲を有するよう設計される。
【0011】
強誘電性ネマチックディスプレイはドイツ国特許出願公開第19629551号明細書(特許文献1)で提案されているが、要求される強誘電性ネマチック特性を充足できる特定の材料は全く開示されていない。
【0012】
フッ素化液晶物質の使用は当業者に知られている。2個の2,6-ジフッ素化1,4-フェニレン環を含む種々の化合物は、例えば国際公開第2015/101405号(特許文献2)および国際公開第2005/019381号(特許文献3)などおよび更に種々において液晶材料またはメソゲン材料として既に記載されている。そこで提案されている化合物は十分に特徴付けられているが、しかし強誘電性特性を有するとは一切報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第19629551号明細書
【特許文献2】国際公開第2015/101405号
【特許文献3】国際公開第2005/019381号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Hiroya Nishikawa、Kazuya Shiroshita、Hiroki Higuchi、Yasushi Okumura、Yasuhiro Haseba、Shin-ichi Yamamoto、Koki SagoおよびHirotsugu Kikuchi著、Adv.Mater.(2017年)、第29巻、第1702354頁
【非特許文献2】Nerea Sebastian、Luka Cmok、Richard J.Mandle、Maria Rosario de la Fuente、Irena Drevensek Olenik、Martin CopicおよびAlenka Mertelj著、Physical Review Letters(2020年)、第124巻、第037801頁
【非特許文献3】Xi Chenら著、PNAS(2020年6月23日)、第117巻(第25号)、第14021~14031頁
【非特許文献4】O.D.Lavrentovich著、Proc Nat Acad Sci USA(2020年)、第117巻(第26号)、第14629~14631頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、強誘電性ネマチック液晶相媒体(Nf-LC相媒体)として好適であって新規で安定な化合物および材料を見出すことである。特に化合物は同時にNf-LC相を有し、Nf-LC媒体中においてそのような相を維持しなければならない。それらは、また従来のネマチックLC媒体と同様に電気光学的スイッチ効果を達成するために適度から高い光学異方性も有しなければならない。
【0016】
高い誘電異方性(Δε)を有するこのタイプの化合物の非常に多様な用途分野を考慮すると、強誘電性ネマチック相の広範で適切な温度範囲を示しながら、好ましくは高い透明点および低い融点を有する更なる入手可能な化合物を有することが望ましかった。
【0017】
よって特に従来のネマチックTN、STN、IPS、FFSおよびTN-TFTディスプレイに類似するディスプレイ用に強誘電性ネマチック液晶媒体の成分(1種類または多種類)として新規で安定な化合物を見出すことが本発明の更なる目的であった。
【0018】
加えて用途分野で広く行われている条件下において本発明による化合物が熱的および光化学的に安定であることが目的であった。メソゲンとして、それらは特に低温において、少なくとも室温より下において、広いメソゲン相、液晶共成分を有する混合物中において好ましくはネマチック相を、およびメソゲン性、好ましくはネマチック基礎混合物と容易に混和可能であることを促進しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
驚くべきことに開示された化合物は、Nf-LCD媒体の成分として非常に適していることが見出された。それらは、特に高いかまたは更に極めて高い誘電率異方性を必要とするディスプレイ用で、特にIPSまたはFFSディスプレイ用で、しかしTNまたはSTNディスプレイ用でもある液晶媒体を得るために使用できる。本発明により使用される媒体は、十分に安定であり無色である。特に、それらは非常に高い誘電定数、特に非常に高い誘電異方性(Δε)によって区別される。高い誘電異方性のおかげで例えば、光スイッチ素子での使用時にはるかに低い閾電圧が必要とされる。化合物は比較可能な特性を有する化合物に対して適度に良好な溶解性を有し、類似の化合物とほぼ無制限に混和できる。加えて本発明により使用される化合物は、高い透明点を有する。また、これらの化合物は比較的低い融点も有するか、または過冷却溶融物としてそれらの融点未満に安定に保持もでき、それは更に低い温度において、例えば室温以下において所望のNf-LC相の形成を容易にする。
【0020】
本発明による化合物および混合物の提供は非常に一般的に、強誘電性ネマチック液晶混合物の調製に様々な応用的観点から適している液晶物質の範囲を著しく広くする。
【0021】
本発明により使用される化合物は、広い範囲の用途を有する。置換基の選択に応じて、これらの化合物は液晶媒体が主に構成される基礎材料として機能できる。しかしながら、また例えば、融点を更に下げるため、このタイプの誘電体の誘電性および/または光学異方性に影響を与えるため、および/またはその閾電圧および/または粘度を最適化するために他のクラスからの化合物からの液晶基礎材料を本化合物に転化することも可能である。
【0022】
Nf-LC相の使用により現在標準的なディスプレイに使用されている従来のネマチックLCシステムと比較して、極めて短い応答時間を有するLC媒体が可能になる。そのため本発明は動画を表示する手段を実質的に改善できる。また高い誘電率はキャパシタの誘電体としても興味深い。媒体は傑出した誘電特性を使用することで、省エネルギーディスプレイおよび他の電気用途に有用であり得る。先行技術に比べ低電圧が必要である。
【0023】
液晶化合物は、特にツイストセルの原理、ゲスト-ホスト効果、配向相DAPまたはECB(electrically controlled birefringence:電気的制御複屈折)の変形効果、IPS(in-plane switching:面内スイッチ)効果または動的散乱効果に基づくディスプレイのための液晶媒体の成分(1種類または多種類)として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】20~105℃の温度範囲にわたる混合物例5の誘電特性を表すグラフを示す。10Hzおよび約50mVの電圧で測定されたT/ε
rグラフは、異なる温度Tにおける冷却時(実線)および加熱時(破線)の比誘電率ε
rの値を示す。約20~60℃においてε
rの値は最大値(プラトー形状)を有し、より高い温度に向かって急激に低下する。ε
rの最大誘電率値は約4・10
3である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1つの主な態様における本発明はは、式IA、IBおよびICの化合物の群から選択される1種類、2種類または3種類以上の化合物を含む液晶媒体に関する。
【0026】
【0027】
式中
X
1A、X
1BおよびX
1Cは、それぞれ互いに独立にCN、F、CF
3、-OCF
3、SCN、NCS、SF
5またはO-CF=CF
2、好ましくは-CN、F、-CF
3、-OCF
3、-Clまたは-NCS、最も好ましくはFまたはCN表し、
Z
1A、Z
1BおよびZ
1Cは、それぞれ互いに独立に-(C=O)-O-または-CF
2-O-表し、
【化4】
を表し、
【化5】
を表し、
【化6】
を表し、
L
1A、L
1BおよびL
1Cは、それぞれ互いに独立にHまたはCH
3、好ましくはHを表し、
R
1A、R
1BおよびR
1Cは、それぞれ互いに独立に1~15個のC原子、好ましくは1~7個、より好ましくは1~6個、最も好ましくは1~5個のC原子を有するアルキル基(ただし加えて、これらの基における1個以上のCH
2基は、それぞれの場合で互いに独立にO/S原子が互いに直接連結しないようにして-C≡C-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH=CH-、
【化7】
-O-、-S-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられてよく、ただし加えて1個以上のH原子はハロゲンで置き換えられてよい。)を表し、またはHを表し、
好ましくはR
1A、R
1BおよびR
1Cは、それぞれハロゲン化されているか、または1~15個のC原子を有する無置換のアルキル基であり、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH
2基は、それぞれの場合で互いに独立に-C≡C-または-CH=CH-で置き換えられてよい。
【0028】
本発明は更に液晶媒体における、好ましくは強誘電性ネマチック媒体における式IA、IBおよびICの化合物の使用に関する。
【0029】
本発明は同様に、式I(IA、IB、IC)の少なくとも1種類の化合物および任意成分として任意の添加剤を含む液晶媒体に関する。
【0030】
本発明の1つの更なる態様は、強誘電性ネマチック液晶材料を提供するための液晶媒体の使用である。
【0031】
純粋な状態において式IA、IBおよびICの化合物は無色であり、それ自体または混合物において、電気光学的使用に有利に位置する温度範囲内で液晶メソ相を形成する。本発明による化合物は、広い強誘電性ネマチック相範囲が達成されることを可能にする。また、それらはNf相の範囲外のネマチック相の範囲も維持する。液晶混合物において本発明により使用される式IA、IBおよびICの化合物は、光学異方性を著しく増加させる。同時に、これらの化合物は十分に良好なUV安定性によって区別される。
【0032】
それぞれ式IA、IBおよびICならびに、それらのそれぞれのサブ式における基R1A、R1BおよびR1Cは好ましくは、1~8個の炭素原子を有するアルキル、1~8個の炭素原子を有するアルコキシまたは2~8個の炭素原子を有するアルケニルを表す。これらのアルキル鎖は好ましくは直鎖状であるか、またはそれらは好ましくはR1Cの場合、好ましくは2-または3-位における単一のメチルまたはエチル置換基で分枝されている。R1A、R1BおよびR1Cは特に好ましくは1~7個のC原子を有する直鎖状のアルキル基または2~8個のC原子を有する非分岐状のアルケニル基、特に1~5個のC原子を有する非分岐状のアルキルを表す。
【0033】
代替的に好ましい基R1A、R1BおよびR1Cは、シクロペンチル、2-フルオロエチル、シクロプロピルメチル、シクロペンチルメチル、シクロペンチルメトキシ、シクロブチルメチル、2-メチルシクロプロピル、2-メチルシクロブチル、2-メチルブチル、2-エチルペンチルおよび2-アルキルオキシエトキシから選択される。
【0034】
代替的に基R1A、R1BおよびR1Cは、Hまたは1~5個のC原子を有するアルキルを表す。
【0035】
式IA、IBおよびICのそれぞれの基X1A、X1BおよびX1Cは、好ましくはCN、FまたはCF3を表し、好ましくはCNまたはF、最も好ましくは特にX1CについてCNを表しす。
【0036】
分岐状または置換された末端基R1A、R1BおよびR1Cをそれぞれ含む式IA、IBおよびICの化合物は従来の液晶基礎材料中における、より良い溶解性のために重要なことがある。基R1A、R1BおよびR1Cは、それぞれ好ましくは直鎖状であって、非分岐鎖である。
【0037】
基R1A、R1BおよびR1Cは、それぞれ特に好ましくは下部分構造から選択される。
【0038】
【0039】
ただし末端基のために、以下の略称が使用される。
【0040】
【0041】
好ましい実施形態において本発明による媒体は、式IA-1~IA-3の、好ましくは式IA-1またはIA-2の、最も好ましくは式IA-2の群から好ましくは選択される1種類、2種類または3種類以上の式IAの化合物を好ましくは含む。
【0042】
【0043】
【0044】
式中、パラメータは上で与えられるそれぞれの意味を有し、好ましくは
Z1Aは、-CF2-O-を表し、
X1Aは、-CNまたはF、好ましくは-CNを表し、
および特に式IA-2において好ましくは代替して
X1Aは、Fを表す。
【0045】
混合物は好ましくは40重量%以上、より好ましくは45重量%以上、より好ましくは50重量%以上の式IAの化合物を含む。
【0046】
好ましい実施形態において本発明による媒体は、式IB-1およびIB-2の、好ましくは式IB-2の群から好ましくは選択される1種類、2種類または3種類以上の式IBの化合物を好ましくは含む。
【0047】
【0048】
【0049】
式中、パラメータは上で与えられるそれぞれの意味を有し、好ましくは
Z1Bは、-CF2-O-を表し、および
X1Bは、-CNを表し、
および特に式IB-2において好ましくは代替して
Z1Bは、-(C=O)-O-を表し、および
X1Aは、Fを表す。
【0050】
好ましい実施形態において本発明による媒体は、好ましくは式IC-1~IC-4の群から選択され、より好ましくは式IC-2およびIC-3の、最も好ましくは式IC-3の群から選択される1種類、2種類または3種類以上の式ICの化合物を好ましくは含む。
【0051】
【0052】
【0053】
式中、パラメータは上で与えられるそれぞれの意味を有し、好ましくは
Z1Cは、-(C=O)-O-を表し、および
X1Cは、-CNを表し、
および特に式IC-2において好ましくは代替して
Z1Cは、-CF2-O-を表し、および
X1Cは、Fを表す。
【0054】
媒体中において使用される式ICの特に好ましい化合物は、式IC-3.1~IC-3.20の化合物である。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
および更に、式IC-3.21~IC-3.26化合物である。
【0060】
【0061】
【0062】
媒体中において使用される式ICの特に好ましい化合物は、以下の式のものである。
【0063】
【0064】
本発明の好ましい実施形態において媒体は15重量%以上の式IA-3-Nの1種類以上の化合物、および任意に好ましくは5重量%以上の、より好ましくは15重量%以上の式IA-3-Fの1種類以上の化合物、および任意に好ましくは15重量%以上の、より好ましくは20重量%以上の式ICの1種類以上の化合物を含む。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
式中、
X
13Cは、-CNまたは-NCS、好ましくは-CNを表し、
X
1Cは、-CN、F、CF
3、-OCF
3、-NCS、SF
5またはO-CF=CF
2、好ましくは-CNまたはF、最も好ましくはCNを表し、
Z
1Aは、-(CO)-O-または-CF
2-O-を表し、
Z
1Cは、-(CO)-O-または-CF
2-O-であり、
L
1AおよびL
1Cは、それぞれの場合で互いに独立にHまたはCH
3、好ましくはHを表し、
【化26】
を表し、
【化27】
を表し、
R
1AおよびR
1Cは、それぞれ互いに独立に1~12個、好ましくは1~8個、より好ましくは1~6個、最も好ましくは1~5個のC原子を有するアルキル基(ただし加えて、これらの基における1個以上のCH
2基は、それぞれの場合で互いに独立にO/S原子が互いに直接連結しないようにして-C≡C-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH=CH-、
【化28】
-O-、-S-、-(CO)-O-または-O-(CO)-で置き換えられてよく、ただし加えて1個以上のH原子はハロゲンで置き換えられてよい。)を表し、またはHを表し、
好ましくはR
1A、R
1BおよびR
1Cは独立にハロゲン化されているか、または1~10個のC原子を有する無置換のアルキル基であり、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH
2基はO原子が直接連結しないようにして-O-または-CH=CH-で置き換えられてよい。
【0069】
本発明の好ましい実施形態において媒体は、化合物の群1、式IA、IBおよびICの化合物の群から選択される1種類以上の化合物、好ましくは2種類または3種類以上の化合物を100%まで含む。この実施形態において媒体は、これらの化合物から好ましくは主に成り、より好ましくはそれらは本質的に成り、最も好ましくはそれらは実質的に完全に成る。この実施形態において化合物のこの群1の化合物の濃度は、50%以上、好ましくは60%以上~100%以下の好ましくは範囲内である。
【0070】
本発明においては個々の場合で他に示さない限り、組成物の構成成分の特定に関連して以下の定義を適用する。
【0071】
・「含む」:組成物中の対象となる構成成分の濃度は、好ましくは5%以上、特に好ましくは10%以上、非常に特に好ましくは20%以上である。
【0072】
・「主に成る」:組成物中の対象となる構成成分の濃度は、好ましくは50%以上、特に好ましくは55%以上、非常に特に好ましくは60%以上である。
【0073】
・「本質的に成る」:組成物中の対象となる構成成分の濃度は、好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上、非常に特に好ましくは95%以上である。
【0074】
・「実質的に完全に成る」:組成物中の対象となる構成成分の濃度は、好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上、非常に特に好ましくは100.0%である。
【0075】
好ましくは本出願による媒体は以下の条件の1つ以上を充足する。それらは好ましくは:
【0076】
・1種類、2種類または3種類以上の式IAの化合物、
【0077】
・1種類、2種類または3種類以上のX1AがFである式IAの化合物、
【0078】
・1種類、2種類または3種類以上のX1AがCNである式IAの化合物を、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも25重量%、最も好ましくは少なくとも30重量%で、
【0079】
・1種類、2種類または3種類以上の式IBの化合物、
【0080】
・1種類、2種類または3種類以上の式ICの化合物、
【0081】
・1種類、2種類または3種類以上のX1CがCNである式ICの化合物を、好ましくは少なくとも35重量%以上、より好ましくは45重量%以上、55重量%以上または65重量%以上で、
【0082】
・1種類、2種類または3種類以上のX1AがCNである式IAの化合物を、1種類、2種類または3種類以上のX1AがFである式IAの化合物と合わせて、
【0083】
・1種類、2種類または3種類以上の式IA-1の化合物、好ましくは式AUUQU-n-N、最も好ましくは化合物AUUQU-2-N、AUUQU-3-N、AUUQU-4-NおよびAUUQU-5-Nの群から選択され、および/または
【0084】
・1種類、2種類または3種類以上の式IA-2の化合物、好ましくは式DUUQU-n-Nおよび/またはDUUQU-n-F、最も好ましくは化合物DUUQU-2-N、DUUQU-3-N、DUUQU-4-N、DUUQU-5-N、DUUQU-6-N、DUUQU-7-N、DUUQU-2-F、DUUQU-4-F、DUUQU-5-FおよびDUUQU-6-Fの群から選択され、および/または
【0085】
・1種類、2種類または3種類以上の式IA-3の化合物、好ましくは式GUUQU-n-N、より好ましくは式GUUQU-0-N、GUUQU-1-N、GUUQU-2-N、GUUQU-3-N、GUUQU-4-NまたはGUUQU-5-N、最も好ましくは化合物GUUQU-3-N、および/または
【0086】
・1種類、2種類または3種類以上の式IA-3の化合物、式GUUQU-n-F、最も化合物GUUQU-2-N、GUUQU-3-N、GUUQU-4-NまたはGUUQU-5-N、および/または
【0087】
・1種類、2種類または3種類以上の式IB-2の化合物、好ましくは式GUQGU-n-N、より好ましくは化合物GUQGU-3-N、および/または
【0088】
・1種類、2種類または3種類以上の式IC-2の化合物、好ましくは式MUZU-n-F、最も好ましくは化合物MUZU-4-Fおよび/またはMUZU-5-F、および/または
【0089】
・1種類、2種類または3種類以上の式IC-3の化合物、好ましくは式UUZU-n-Nおよび/またはUUQU-n-N、最も好ましくは化合物UUZU-4-N、UUZU-5-NおよびUUQU-4-N、ならびに更にUUZU-0-N、UUZU-1-N、UUZU-2-N、UUZU-3-N、UUQU-0-N、UUQU-1-N、UUQU-2-N、UUQU-3-NおよびUUQU-5-Nの群から選択される
を含む。
【0090】
本発明の好ましい実施形態において式IA、IBおよびICの前記化合物は、化合物の第1群、化合物の群1である。
【0091】
本発明の一実施形態において媒体は任意に好ましくは必須に、化合物の以下の群から選択される1種類以上の化合物を含む:
【0092】
任意に、好ましくは必須に代替または追加のいずれかで、式IA、IBおよびICの、即ち化合物の群1の他の更なる化合物、群2、式IIおよびIIIの化合物の群から選択される1種類以上の化合物、好ましくは2種類または3種類以上の化合物を0%超~50%以下の濃度で。
【0093】
【0094】
式中、
R
2は、1~15個のC原子、好ましくは1~7個、より好ましくは1~6個、最も好ましくは1~5個のC原子を有するアルキル基(ただし加えて、これらの基における1個以上のCH
2基は、それぞれの場合で互いに独立にO/S原子が互いに直接連結しないようにして-C≡C-、-CF
2-O-、-OCF
2-、-CH=CH-、
【化30】
-O-、-S-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられてよく、ただし加えて1個以上のH原子はハロゲンで置き換えられてよい。)を表し、またはHを表し、
好ましくは1~7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、2~7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニル、好ましくはアルキルまたはアルケニルを表し、
【化31】
を表し、
L
21およびL
22は、HまたはFを表し、好ましくはL
21がFを表し、
X
2は、ハロゲン、1~3個のC原子を有するハロゲン化されたアルキルもしくはアルコキシ、または2個もしくは3個のC原子を有するハロゲン化されたアルケニルもしくはアルケニルオキシ、好ましくは、F、Cl、-OCF
3、-O-CH
2CF
3、-O-CH=CH
2、-O-CH=CF
2または-CF
3、非常に好ましくはF、Cl、-O-CH=CF
2または-OCF
3を表し、
mは、0、1、2または3、好ましくは1または2、特に好ましくは2を表し、
R
3は、1~15個のC原子、好ましくは1~7個、より好ましくは1~6個、最も好ましくは1~5個のC原子を有するアルキル基(ただし加えて、これらの基における1個以上のCH
2基は、それぞれの場合で互いに独立にO/S原子が互いに直接連結しないようにして-C≡C-、-CF
2-O-、-OCF
2-、-CH=CH-、
【化32】
-O-、-S-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられてよく、ただし加えて1個以上のH原子はハロゲンで置き換えられてよい。)を表し、またはHを表し、
好ましくは1~7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、2~7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニル、好ましくはn-アルキル、シクロプロピル、シクロペンチルまたはアルケニルを表し、
【化33】
であり、
L
31およびL
32は、互いに独立に、HまたはFを表し、好ましくはL
31がFを表し、
X
3は、ハロゲン、1~3個のC原子を有するハロゲン化されたアルキルもしくはアルコキシまたは2個もしくは3個のC原子を有するハロゲン化されたアルケニルもしくはアルケニルオキシ、F、Cl、-OCF
3、-OCHF
2、-O-CH
2CF
3、-O-CH=CF
2、-O-CH=CH
2または-CF
3、非常に好ましくはF、Cl、-O-CH=CF
2、-OCHF
2または-OCF
3を表し、
Z
3は、-CH
2CH
2-、-CF
2CF
2-、-(CO)O-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH
2O-または単結合、好ましくは、-CH
2CH
2-、-(CO)O-、トランス-CH=CH-または単結合、非常に好ましくは、-(CO)O-、トランス-CH=CH-または単結合を表し、
nは、0、1、2または3、好ましくは、1、2または3、特に好ましくは1を表し、
ただし、それぞれの環、好ましくはフェニレン環は任意に、それぞれ1個または2個のアルキル基、好ましくはメチル基および/またはエチル基、好ましくは1個のメチル基で置換されてよく、および
ただし特に、環
【化34】
で置き換えられてよく、
および特に、環
【化35】
で置き換えられてよく、
およびただし、式IA、IBおよびICの化合物は、式IIの化合物から除外される。
【0095】
再び任意に、好ましくは必須に代替または追加のいずれかで、群3、式IVおよびVの化合物の群から選択される1種類以上の化合物、好ましくは2種類または3種類以上の化合物を、好ましくは0%超~20%、好ましくは10%以下の濃度で含む。
【0096】
【0097】
式中、
R
41およびR
42は互いに独立に、1~15個のC原子、好ましくは1~7個、より好ましくは1~6個、最も好ましくは1~5個のC原子を有するアルキル基(ただし加えて、これらの基における1個以上のCH
2基は、それぞれの場合で互いに独立にO/S原子が互いに直接連結しないようにして-C≡C-、-CF
2-O-、-OCF
2-、-CH=CH-、
【化37】
-O-、-S-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられてよく、ただし加えて1個以上のH原子はハロゲンで置き換えられてよい。)を表し、またはHを表し、
好ましくは式IIにおいてR
2について上で示される意味を有し、好ましくはR
41がアルキルを表し、R
42がアルキルまたはアルコキシを表すか、またはR
41がアルケニルを表し、R
42がアルキルを表し、
【化38】
を表し、
好ましくは
【化39】
を表し、
Z
41およびZ
42は、互いに独立に、そしてZ
41が2回出現する場合はこれらも互いに独立に、-CH
2CH
2-、-(CO)O-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH
2O-、-CF
2O-、-C≡C-または単結合を表し、好ましくは、それらの1つ以上は単結合を表し、
pは、0、1または2、好ましくは0または1を表し、および
R
51およびR
52は、互いに独立に、R
41およびR
42について与えられる意味の1つを有し、好ましくは、1~7個のC原子を有するアルキル、好ましくはn-アルキル、特に好ましくは1~5個のC原子を有するn-アルキル、1~7個のC原子を有するアルコキシ、好ましくはn-アルコキシ、特に好ましくは2~5個のC原子を有するn-アルコキシ、2~7個のC原子を有する、好ましくは2~4個のC原子を有するアルコキシアルキル、アルケニルまたはアルケニルオキシ、好ましくはアルケニルオキシを表し、
【化40】
好ましくは
【化41】
を表し、
好ましくは
【化42】
を表し、
および存在する場合、好ましくは
【化43】
を表し、
Z
51~Z
53は、それぞれ互いに独立に、-CH
2-CH
2-、-CH
2-O-、-CH=CH-、-C≡C-、-(CO)O-または単結合、好ましくは、-CH
2-CH
2-、-CH
2-O-または単結合、特に好ましくは単結合を表し、
iおよびjは、それぞれ互いに独立に、0または1を表し、
(i+j)は、好ましくは、0、1または2、より好ましくは0または1、最も好ましくは1を表し、
ただし、それぞれの環、好ましくはフェニレン環は任意に、それぞれ1個または2個のアルキル基、好ましくはメチル基および/またはエチル基、好ましくは1個のメチル基で置換されてよい。
【0098】
再び任意に好ましくは必須に、代替または追加のいずれかで、式IおよびVI~IXの化合物の群、群4から選択される1種類以上の化合物、好ましくは2種類または3種類以上の化合物を好ましくは0%超~20%の濃度で含む。
【0099】
【0100】
式中、
を表し、
【化45】
好ましくは
【化46】
を表し、
nは、0または1を表し、
R
11およびR
12は、それぞれ互いに独立に好ましくは1~7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルもしくはフッ素化アルコキシ(ただし1個のCH
2基は、1,2-シクロプロピル基で、1,3-シクロペンチル基で、または1,3-シクロペンテニレン基で置き換えられてよい。)、2~7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルもしくはフッ素化アルケニル、好ましくはアルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルケニルオキシ、最も好ましくはアルキル、アルコキシまたはアルケニルオキシを表し、
R
61は、1~7個のC原子を有する無置換のアルキル基、好ましくは直鎖状のアルキル基、より好ましくはn-アルキル基、最も好ましくはプロピルもしくはペンチル、2~7個のC原子を有する無置換のアルケニル基、好ましくは直鎖状のアルケニル基、特に好ましくは2~5個のC原子を有し、1~6個のC原子を有する無置換のアルコキシ基または2~6個のC原子を有する無置換のアルケニルオキシ基を表し、
R
62は、1~7個のC原子を有する無置換のアルキル基、1~6個のC原子を有する無置換のアルコキシ基または2~6個のC原子を有する無置換のアルケニルオキシ基を表し、
lは、0または1を表し、
R
71は、1~7個のC原子を有する無置換のアルキル基、好ましくは直鎖状のアルキル基、より好ましくはn-アルキル基、最も好ましくはプロピルもしくはペンチル、2~7個のC原子を有する無置換のアルケニル基、好ましくは直鎖状のアルケニル基を表し、特に好ましくは2~5個のC原子を有し、
R
72は、1~7個のC原子を有し、好ましくは2~5個のC原子を有する無置換のアルキル基、1~6個のC原子を有し、好ましくは、1個、2個、3個もしくは4個のC原子を有する無置換のアルコキシ基、または2~6個のC原子を有し、好ましくは、2個、3個もしくは4個のC原子を有する無置換のアルケニルオキシ基を表し、
【化47】
を表し、
R
81は、1~7個のC原子を有する無置換のアルキル基、好ましくは直鎖状のアルキル基、より好ましくはn-アルキル基、最も好ましくはプロピルもしくはペンチル、または2~7個のC原子を有するアルケニル基、好ましくは直鎖状のアルケニル基を表し、特に好ましくは2~5個のC原子を有し、
R
82は、1~7個のC原子を有し、好ましくは2~5個のC原子を有する無置換のアルキル基、1~6個のC原子を有し、好ましくは、1個、2個、3個もしくは4個のC原子を有する無置換のアルコキシ基、または2~6個のC原子を有し、好ましくは、2個、3個もしくは4個のC原子を有する無置換のアルケニルオキシ基を表し、
【化48】
Z
8は、-(C=O)-O-、-CH
2-O-、-CF
2-O-または-CH
2-CH
2-、好ましくは、-(C=O)-O-または-CH
2-O-を表し、
oは、0または1を表し、
R
91およびR
92は、互いに独立に、上でR
72について与えられる意味を有し、
R
91は、好ましくは、2~5個のC原子を有し、好ましくは3~5個のC原子を有するアルキル基を表し、
R
92は、好ましくは、2~5個のC原子を有するアルキルもしくはアルコキシ基、より好ましくは2~4個のC原子を有するアルコキシ基、または2~4個のC原子を有するアルケニルオキシ基を表し、
【化49】
pおよびqは、互いに独立に、0または1を表し、
(p+q)は、好ましくは、0または1を表すが、
【化50】
を表す場合、代替的に好ましくはp=q=1であり、
ただし、それぞれの環、好ましくはフェニレン環は任意に、それぞれ1個または2個のアルキル基、好ましくはメチル基および/またはエチル基、好ましくは1個のメチル基で置換されてよく、
および、ただし特に環
【化51】
で置き換えられ、
および、ただし式VIIIの化合物は式Xの化合物から除外され、式VIの化合物は式VII~Xの化合物から除外される。
【0101】
再び任意に好ましくは必須に、代替または追加のいずれかで、式Bの化合物の群、群5から選択される1種類以上の化合物、好ましくは2種類または3種類以上の化合物を好ましくは0%超~20%の濃度で含む。
【0102】
【0103】
式中
【化53】
【化54】
を表し、
nは1または2、好ましくは1を表し、
R
1は、1~7個のC原子を有するアルキル基(ただし、この基において1個以上のCH
2基、好ましくは1個のCH
2基は、それぞれ互いに独立に-C≡C-、-CF
2-O-、-OCF
2-、-O-、-(CO)-O-、-O-(C=O)-、シクロプロピレン、1,3-シクロブチレン、1,3-シクロペンチレン、1,3-シクロペンテニレンで、好ましくはシクロプロピレンまたは1,3-シクロペンチレンで置き換えられてよく、好ましくは1個のCH
2基は、1,2-シクロプロピレン基で、1,3-シクロペンチレン基でまたは1,3-シクロペンテニレン基で置き換えられてよい。)、2~7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニル、好ましくはアルキルまたはアルケニル(ただし1個の-CH
2-基はO原子が互いに直接連結しないようにして、シクロプロピレン、1,3-シクロブチレン、1,3-シクロペンチレン、1,3-シクロペンテニレンで、好ましくはシクロプロピレンまたは1,3-シクロペンテニレンで置き換えられてよく、該基において1個以上のH原子はハロゲンで置き換えられてよい。)を表し、および
X
1は、F、Cl、フッ素化アルキル、フッ素化アルケニル、フッ素化アルコキシまたはフッ素化アルケニルオキシ(後者の4つの基は、好ましくは1~4個のC原子を有する。)、より好ましくはF、Cl、CF
3またはOCF
3を表し、
ただしそれぞれの環、好ましくはフェニレン環は任意に、それぞれ1個または2個のアルキル基、好ましくはメチル基および/またはエチル基、好ましくは1個のメチル基で置換されてよい。
【0104】
群1および2、群1および3または群1および4、より好ましくは群1および2または群1および3の1種類以上の化合物を含む媒体が好ましい。
【0105】
また群1、2および3または群1、2および4、より好ましくは群1、2および3の1種類以上の化合物を含む媒体も特に好ましい。
【0106】
425以上、より好ましくは450以上の分子量を有する群1、2、3および4の化合物が好ましい。425未満、より好ましくは450未満の分子量を有する化合物の含有量が好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である本発明による液晶性媒体。本発明による液晶媒体は450以上、より好ましくは470以上の分子量を有する化合物から好ましくは本質的に成る。
【0107】
例示のために、以下の化合物およびそれらの分子量が提供される:
表:構造およびそれらの分子量
【0108】
【0109】
式ICの化合物は、文献(例えば、Houben-Weyl、Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Georg-Thieme-Verlag、Stuttgartなどの標準著作)に記載される通りで既知の前記反応に正確に適した反応条件下で、それ自体既知の方法で調製できる。また明細書ではより詳細に言及されない、それ自体既知の改変も使用できる。
【0110】
一般に式I、特に式ICの化合物は、以下の例示的な合成および実施例(スキーム1および2)に示される通り、有利に調製できる。
【0111】
【0112】
<スキーム1>式IC(Z1C=-C(O)O-)の化合物を調製するための一般的な合成スキームであり、R1CおよびX1Cは式ICに従って定義される。
【0113】
対応するジフルオロメチレンオキシ(-CF2-O-)化合物を調製するための代替反応経路を合成スキーム2において本明細書に提示する。
【0114】
【0115】
<スキーム2>Z1C=-CF2O-である式ICの化合物を調製するための一般的な合成スキームであり、R1CおよびX1Cは式ICに従って定義される。
【0116】
対応する出発物質は一般に文献から既知の合成法により当業者が容易に調製できるか、商業的に入手可能である。
【0117】
使用される反応方法および試薬は、原則として文献から既知である。更なる反応条件は、実施例によって例示される。
【0118】
上で述べられない更なる好ましいプロセスの改変は、実施例または特許請求の範囲によって明らかにされる。
【0119】
上工程で得られる反応混合物の工程および引き続く作業は基本的にバッチ反応として、または連続反応手順で実施できる。連続反応手順は、例えば、連続攪拌槽反応器、攪拌槽反応器カスケード、ループまたはクロスフロー反応器、フローチューブまたはマイクロリアクターでの再反応を包含する。反応混合物は、固相によるろ過、クロマトグラフィー、非混和相間の分離(例えば抽出)、固体支持体への吸着、蒸留、選択蒸留、昇華、結晶化、共結晶化、膜上でのナノろ過による溶媒および/または共沸混合物の除去によって任意に必要に応じて作業される。
【0120】
本開示において下式の2,5-二置換ジオキサン環は、
【化57】
好ましくは2,5-トランス配置のジオキサン環を表し、即ち、置換基Rは好ましくは好ましい椅子形コンフォメーションにおいて両方とも赤道位にある。下式の2,5-二置換テトラヒドロピランは、
【化58】
同様に好ましくは2,5-トランス配置のテトラヒドロピラン環を表し、即ち、置換基は好ましくは好ましい椅子形コンフォメーションにおいて両方とも赤道位にある。
【0121】
また本発明は、本発明による式I(式IA、式IBおよび式IC)の1種類以上の化合物を含む液晶媒体に関する。液晶媒体は、好ましくは少なくとも2種類の成分を含み、好ましくは、それ自体それぞれが強誘電性ネマチック相を有する。それらは好ましくは成分を互いに混合することで得られる。従って液晶媒体の調製のための本発明による方法は式I(式IA、IBおよびIC)の少なくとも1種類の化合物が、少なくとも1種類の更なるメソゲン性、好ましくは強誘電性ネマチック化合物と混合され、添加剤が任意に添加されることを特徴とする。
【0122】
式IAおよび/またはIBおよび/またはICの化合物を含む液晶媒体のために、強誘電性ネマチック相の温度範囲、透明点、誘電異方性および応答時間の達成できる組み合わせは、先行技術からのその種の以前の材料より遥かに優れる。以前は適切な温度にわたって全て強誘電性ネマチック相範囲を有さない限られた選択肢の単一の化合物材料のみが入手可能であった。
【0123】
本発明による混合物は一般に65℃以上の透明点を有する非常に広いネマチック相範囲ならびに広い強誘電性ネマチック相範囲を示す。
【0124】
本発明による液晶媒体は好ましくは20度幅以上の強誘電性ネマチック相の温度範囲を示し、それは好ましくは30度以上、より好ましくは40度以上の範囲にわたる。それぞれの相範囲はモノトロピックまたはエナンチオトロピックであり得て、好ましくはそれはエナンチオトロピックである。
【0125】
好ましくは本発明による液晶媒体は、
好ましくは20℃以下~30℃以上、
より好ましくは10℃以下~40℃以上、
より好ましくは0℃以下~50℃以上、
最も好ましくは-20℃以下~60℃以上
の強誘電性ネマチック相を示す。
【0126】
別の好ましい実施形態において本発明による液晶媒体は、
好ましくは20℃以下~30℃以上、
より好ましくは10℃以下~35℃以上、
より好ましくは0℃以下~40℃以上、
最も好ましくは-20℃以下~45℃以上
の強誘電性ネマチック相を示す。
【0127】
別の好ましい実施形態において本発明による液晶媒体は、
好ましくは20℃以下~50℃以上、
より好ましくは10℃以下~70℃以上、
より好ましくは0℃以下~90℃以上、
最も好ましくは-20℃以下~100℃以上
の強誘電性ネマチック相を示す。
【0128】
これは媒体は少なくとも所与の間隔においてNf相を示すことを意味する。
【0129】
本発明による液晶媒体は傑出した誘電特性を示す。
【0130】
それらは好ましくは1,400~10,000、より好ましくは1,600~3,000、より好ましくは1,800~2,600、最も好ましくは2,000~2,500の範囲内のε∥の値を有する。
【0131】
それらは好ましくは1,000~2,300、より好ましくは1,200~2,100、より好ましくは1,400~2,300、最も好ましくは1,500~2,500の範囲内のε⊥の値を有する。
【0132】
それらは好ましくは300以上、より好ましくは400~2,100、より好ましくは1,400~2,300、最も好ましくは1,500~2,500のΔεの値を有する。
【0133】
それらは好ましくは10Hzにおいて20,000以上、より好ましくは25,000~90、より好ましくは30,000~75,000、最も好ましくは38,000~60,000のεrの値を有する。
【0134】
これらの誘電特性は、媒体が強誘電性ネマチック相である温度で達成される。誘電特性はヒステリシス挙動を示すことがあり、その場合、ある温度で得られる値は材料の履歴、即ち材料が加熱されているか冷却されているかに依存することがある。
【0135】
この効果は他のなかでも例えば強誘電性スメクチックデバイスから知られる通り、電気光学的デバイスにおいて有益に使用され得る例えば双安定モードにおけるデバイスの動作を可能にする。
【0136】
本発明による液晶媒体は本発明による1種類以上の化合物の他に更なる構成成分として、好ましくは2~40種類、特に好ましくは4~20種類の化合物を含む。特に、これらの媒体は本発明による1種類以上の化合物の他に、1~25種類の成分を含んでよい。これらの更なる構成成分は好ましくは強誘電性ネマチックまたはネマトゲン性(モノトロピックまたはイソトロピック)の物質から選択される。
【0137】
本願物質と組み合させるための先行技術の強誘電性物質および高い誘電異方性を有する類似の化合物は、例えば以下の構造から選択される。
【0138】
【0139】
式中、pは1、2、3、4または5である。
【0140】
本発明による媒体は、好ましくは1%~100%、より好ましくは10%~100%、特に好ましくは50%~100%の式IAおよび/またはIBおよび/またはICの化合物を含む。
【0141】
本発明による液晶混合物は、それ自体が従来の方法で調製される。一般的には、より少ない量で使用される所望の量の構成成分が主成分を構成する構成成分中に、好ましくは高温で溶解される。また有機溶媒、例えばアセトン、クロロホルムまたはメタノール中の構成成分の溶液を混合し、十分に混合後に溶媒を再度、例えば蒸留により除去することも可能である。更に他の従来の方法、例えばプレミックス、例えばホモログ混合物を使用し、または所謂「マルチボトル」システムテムを使用して混合物を調製することが可能である。
【0142】
また誘電体は当業者に既知で、文献に記載される更なる添加剤を含んでよい。例えば0~15%、好ましくは0~10%の多色性色素、キラルドーパント、安定剤またはナノ粒子を添加できる。添加される個々の化合物は、0.01~6%、好ましくは0.1~3%の濃度で用いられる。ただし本明細書においては、液晶混合物の他の構成成分、即ち液晶およびメソゲン化合物の濃度データは、これらの添加剤の濃度を考慮せずに与えられる。
【0143】
本発明による液晶混合物は、利用可能なパラメータの幅を著しく広げることを可能にする。
【0144】
また本発明は、このタイプの媒体を含む電気光学的ディスプレイ(特に、フレームと共にセルを形成する2枚の平面平行な外板と、外板上の個々のピクセルをスイッチするための集積非線形要素と、およびセル内に配置された正の誘電異方性および高い比抵抗を有するネマチック液晶混合物とを有するTFTディスプレイ)とにも関する。本発明は更に電気光学的目的のためのこれらの媒体の使用に関する。
【0145】
「アルキル」という表現は、1~15個の炭素原子を有する分岐していないおよび分岐状のアルキル基、特に好ましくは分岐していない基メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルおよびn-ヘプチル、更に代替して1個のメチル、エチルまたはプロピルで置換されている基n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルおよびn-ヘプチルを包含する。2~5個の炭素原子を有する基が一般的に好ましい。
【0146】
「アルケニル」という表現は、12個までの炭素原子を有する分岐していないおよび分岐状のアルケニル基、特に分岐していない基を包含する。特に好ましいアルケニル基は、C2~C7-1E-アルケニル、C4~C7-3E-アルケニル、C5~C7-4-アルケニル、C6~C7-5-アルケニルおよびC7-6-アルケニル、特にC2~C7-1E-アルケニル、C4~C7-3E-アルケニルおよびC5~C7-4-アルケニルである。好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E-プロペニル、1E-ブテニル、1E-ペンテニル、1E-ヘキセニル、1E-ヘプテニル、3-ブテニル、3E-ペンテニル、3E-ヘキセニル、3E-ヘプテニル、4-ペンテニル、4Z-ヘキセニル、4E-ヘキセニル、4Z-ヘプテニル、5-ヘキセニル、6-ヘプテニルなどである。2~5個の炭素原子を有する基が一般に好ましい。
【0147】
「ハロゲン化アルキル基」という表現は好ましくは、モノもしくはポリフッ素化および/または塩素化基を包含する。過ハロゲン化基が挙げられる。フッ素化アルキル基、特にCF3、CH2CF3、CH2CHF2、CHF2、CH2F、CHFCF3およびCF2CHFCF3が特に好ましい。「ハロゲン化アルケニル基」という表現および関連する表現は、相当して説明される。
【0148】
本発明による混合物中の個々の式IAおよび/またはIBおよび/またはICの化合物の合計量は重要ではない。従って混合物は種々の特性を最適化する目的で、1種類以上の更なる成分を含んでよい。
【0149】
偏光板、電極基板および表面処理された電極からの本発明によるマトリクスディスプレイの構造は、このタイプのディスプレイのための通常の設計に相当する。本明細書において通常の設計という用語は広く記載され、マトリクスディスプレイの全ての派生品および改変品も包含し、特にポリSi-TFTに基づくマトリックスディスプレイ素子も包含する。
【0150】
しかしながら本発明によるディスプレイと、従来のツイストネマチックセルに基づくディスプレイとの間の本質的な違いは、液晶層の液晶パラメータの選択にある。
【0151】
以下の例は本発明を制限することを意図せず、本発明を説明する。当業者は一般的な説明には詳細に与えられていない詳細を実施例から得ることができるであろうし、それらを一般的な専門知識に従って一般化し、特定の問題に適用することができるであろう。
【0152】
上および下において、パーセンテージデータは重量%を表す。他に特記しない限り例えば融点T(C,N)、スメクチック(Sm)からネマチック(N)への相転移T(S,N)および透明点T(N,I)、それぞれT(Nf,I)などの本出願で示される全ての温度値は摂氏度(℃)で示され、全ての温度差は相当して差度(°または度)で示される。更にCは液晶状態、Nはネマチック相、Nfは強誘電性ネマチック相、Smはスメクチック相(より具体的にはSmA、SmBなど)、Tgはガラス転移温度およびIは等方性相である。これらの記号の間のデータは転移温度を表す。Δnは光学異方性(589nm、20℃)、Δεは誘電異方性(1kHz、20℃)を表す。
【0153】
物理的、物理化学的および電気光学的パラメータは、とりわけ文献「メルク液晶-Licristal(登録商標)-液晶の物理的特性-測定方法の解説」、1998年、メルク社、ダルムスタット市に記載される通りの一般的に既知の方法で決定される。
【0154】
材料の強誘電性ネマチック相の出現は示差走査熱量測定(DSC、differential scanning calorimetry)を使用し、それぞれ冷却または加熱を制御するためのホットステージを備える偏光顕微鏡下でテクスチャーを観察することで同定し、加えて誘電特性の温度依存性で確認する。
【0155】
個々の物質の誘電異方性Δεは、20℃および1kHzで決定される。このために検討され測定される物質の5~10重量%を誘電的に正の混合物ZLI-4792(メルク社)に溶解し、測定値を100%の濃度に外挿する。光学異方性Δnは20℃および波長589.3nmで決定される。
【0156】
材料、特に強誘電性ネマチック相における誘電率(ε)は、それぞれホメオトロピックおよびホモジニアス配向を有し、25μmのセル厚を有し、化合物を含む少なくとも1個の試験用セルの静電容量を測定することで直接決定される。温度はNovocontrol社Novocoolシステムセットにより、+/-1K/min;+/-2K/min;+/-5K/min;+/-10K/minの温度勾配が試料セルにかかるように制御される。静電容量はNovocontrol社α-N分析器で、10Hzまたは1kHzの周波数において、測定化合物の閾値より低くなるように50mV未満から0.1mVに標準電圧を下げて測定される。測定は、試料(1種類または多種類)の加熱時および冷却時の両方で行われる。簡単のために本明細書においては、
【0157】
【数1】
の通り定義される比誘電率(εr)を使用する。
【0158】
本出願においては特に他に明示的に示さない限り、用語の複数形は単数形および複数形の両方を表し、その逆も同様である。詳細な説明に従った本発明の実施形態および変形例の更なる組み合わせは添付の特許請求の範囲から、またはこれらの請求項の複数の組み合わせからも生じる。
【実施例】
【0159】
本発明は、以下の非制限的な実施例により詳細に記載される。
【0160】
化合物例
<化合物例1>:UUQU-4-Nの合成
【0161】
【0162】
工程1.1
【0163】
【0164】
20.3ml(203mmol)の1,3-プロパンジチオールを25.9mlのトルエンに溶解し、80℃に温めた。34.5g(135.1mmol)の3、0.2mlのトリフルオロメタンスルホン酸および40mlトルエンの溶液を調製し、80℃でジチオール溶液に滴下して添加した。添加が完了した後、混合物を80℃で45分間撹拌し、次いで20℃に冷却した。17.7ml(200mmol)のトリフルオロメタンスルホン酸を、温度を25℃より低く保ちながら80分間かけて滴下し添加した。トルエンを80℃および40mbarで留去し、25mlの追加のトルエンを添加し、全ての揮発分を再度留去した。結晶性残渣は、更に精製することなく次のステップで使用された。
【0165】
工程1.2
【0166】
【0167】
93.1g(0.6mol)の5を1.6Lのジクロロメタン中に懸濁し、6℃に冷却した。83.2ml(0.6mol)のトリエチルアミンを5℃で滴下し、続いて230g(0.5mol)の塩4を添加した。混合物を5℃で30分間撹拌し、次いで-75℃に冷却し、244.3ml(1.5mol)のトリエチルアミントリハイドロフルオリドを滴下して添加した。溶液を-75℃で1時間撹拌し、400mlのジクロロメタンに溶解された128ml(2.5mol)の臭素を添加した。混合物を-70℃で1.5時間攪拌し、0℃まで温めた。通常の作業後、132g(62%)の6を僅かにベージュ色の結晶として得た。
【0168】
工程1.3
【0169】
【0170】
13.8g(35mmol)の6を150mlの1,4-ジオキサンに溶解し、1.0g(1.4mmol)の酢酸パラジウム、10.4g(0.1mol)の酢酸カリウムおよび13.9g(53mmol)のビス(ピナコラート)ボロンを添加した。混合物を一晩還流下で加熱した。通常の作業後、12.4g(80%)の7が僅かに黄色の結晶として得られた。
【0171】
工程1.4
【0172】
【0173】
5.4g(23mmol)のリン酸カリウムを10mlの水に溶解した。80mlのトルエン、2.8g(11.4mmol)の1-ブロモ-2,6-ジフルオロ-4-ブチルベンゼン8、6.3g(14.2mmol)の7、42.2mg(0.2mmol)の酢酸パラジウムおよび126.7mg(0.3mmol)のS-Phos(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル)を添加し、混合物を還流下で一夜加熱した。通常の作業後、3.42g(62%)の9(UUQU-4-N)を無色透明な結晶として得た。
【0174】
1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ7.16(d、J=11.0Hz、2H)、7.07~6.99(m、2H)、6.91~6.81(m、2H)、2.69~2.61(m、2H)、1.69~1.57(m、2H)、1.39(h、J=7.4Hz、2H)、0.96(t、J=7.3Hz、3H)
【0175】
分子量:485.4
融点:44℃、透明点:21℃
ZLI-4792中10%溶液からの外挿データ:Δn(20℃)=0.120およびΔε(20℃)=54.6
【0176】
強誘電性ネマチック挙動の特性解析:
材料、化合物および混合物が温度制御されるホットステージを備える偏光顕微鏡下で観察される。それらのテクスチャーが観察され、ビデオに記録される。強誘電性ネマチック相(1つまたは複数)に特徴的な独特の液晶テクスチャーが確認される。
【0177】
また誘電特性も決定される。
【0178】
表:異なる温度におけるεの測定(冷却速度1°/分、金属表面上の無配向試料、εav.に導く。)
【0179】
【0180】
<化合物例2>:UUZU-4-Nの合成
【0181】
【0182】
工程2.1
【0183】
【0184】
工程2.2
57.2g(150mmol)の四ホウ酸二ナトリウム十水和物、2.8g(4mmol)の塩化パラジウム、0.2g(4mmol)の水酸化ヒドラジニウム、39.4g(0.2mol)の1-ブロモ-3,5-ジフルオロベンゼン、42.8g(0.2mol)の10および200mlの水を合わせた。混合物を6時間還流加熱した。通常の作業後、50g(88%)の11を得た。
【0185】
【0186】
工程2.3
50g(175mmol)の11を300mlのテトラヒドロフランに溶解させ、-75℃に冷却した。ヘキサン中118ml(193mmol)の15%n-ブチリサムを-70℃下で滴下添加し、混合物をその温度で1.5時間撹拌した。混合物を500gの固体二酸化炭素上に注ぎ、放置して室温まで温めた。通常の作業後、46.8g(82%)の12を無色結晶として得た。
【0187】
【0188】
工程2.4
16.3g(50mmol)の12、8.5g(55mmol)の1-シアノ-2,6-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンゼンおよび611mg(5mmol)の4-ジメチルアミノピリジンを200mlのジクロルメタンと合わせ、0℃に冷ました。0℃および5℃の間で、50mlのジクロロメタン中の11.3g(55mmol)のN,N-ジシクロヘキシルカルボジイミドの溶液を滴下して添加した。次いで混合物を室温に温め、一晩攪拌した。1.4gのシュウ酸を添加し、全てを更に1.5時間撹拌した。通常の作業後、20.5g(88%)の13(UUZU-4-N)を得た。
【0189】
1H NMR(500MHz、クロロホルム-d)δ7.23~7.17(m、2H)、7.15~7.08(m、2H)、6.91~6.83(m、2H)、2.69~2.62(m、2H)、1.69~1.59(m、2H)、1.39(h、J=7.4Hz、2H)、0.96(t、J=7.4Hz、3H)。
【0190】
相:C69Nf/N93I。
ZLI-4792中10%溶液からの外挿データ:Δn(20℃)=0.159およびΔε(20℃)=70.3。
【0191】
<化合物例3>:UUZU-5-Nの合成
【0192】
【0193】
化合物は例2に類似して調製される。
【0194】
融点:80℃
ZLI-4792中10%溶液からの外挿データ:Δn(20℃)=0.162およびΔε(20℃)=80.5
【0195】
例1および2に類似して、以下の化合物が調製される:
以下の表(1つまたは複数)において末端基のために、以下の略号が使用される。
【0196】
【0197】
一般的構造:
【0198】
【0199】
表:更なる化合物例
【0200】
【0201】
【0202】
また本発明の実施形態および本発明の改変の更なる組み合わせも特許請求の範囲によって開示される。
【0203】
更に検討することなく当業者であれば先の記載を使用して、本発明を最大限に活用できると確信する。従って先行する好ましい具体的な実施形態は単に例示的なものと考えられるべきであり、本開示の残りの部分をいかなる形でも限定しない。先行する例は一般的または具体的に記載される本発明の反応物および/または操作条件を先行する例で使用されるものに代えることで同様に成功裏に繰り返すことができる。
【0204】
先の記載から当業者はこの発明の本質的な特徴を容易に確認でき、その精神および範囲から逸脱することなく本発明を種々の使用および条件に適合させるために様々な改変および変更を行える。
【0205】
これは、組成物の化合物の群および個々の化合物であり得る構成成分を有する組成物としての媒体と、またそれらのそれぞれの構成成分および化合物を有する化合物の群との両者に適用する。媒体全体に対する個々の化合物の濃度に関する限り、用語「含む」は、対象となる化合物(1種類)または化合物(多種類)の濃度が、好ましくは1%以上、特に好ましくは2%以上、非常に特に好ましくは4%以上であることを意味する。
【0206】
本発明において、「≦」は未満または等しいこと、好ましくは未満を意味し、「≧」はより大きいか等しいこと、好ましくは大きいことを意味する。
【0207】
本発明において、
【化71】
は、トランス-1,4-シクロヘキシレンを表し、
【化72】
は、シス-およびトランス-1,4-シクロヘキシレンの両者の混合物を表し、
【化73】
は、1,4-フェニレンを表す。
【0208】
本発明において、表現「誘電的に正の化合物」はΔε>1.5を有する化合物を意味し、表現「誘電的に中性の化合物」は-1.5≦Δε≦1.5を有する化合物を意味し、表現「誘電的に負の化合物」はΔε<-1.5を有する化合物を意味する。化合物の誘電異方性は、本明細書においては、液晶ホストに10%の化合物を溶解し、それぞれの場合で、セル厚20μm、ホメオトロピック表面配向およびホモジニアス表面配向を有する少なくとも1個の試験用セル中で1kHzにおいて得られた混合物の容量を決定することにより決定する。測定電圧は典型的には0.5V~1.0Vであるが、検討されるそれぞれの液晶混合物(材料)の容量閾値よりも常に低くくする。
【0209】
誘電的に正および誘電的に中性の化合物に使用されるホスト混合物はZLI-4792で、誘電的に負の化合物に使用されるホスト混合物はZLI-2857であり、両者ともドイツ国メルク社製である。検討されるそれぞれの化合物の値は、検討される化合物を添加した後のホスト混合物の誘電定数の変化から得られ、用いられる化合物を100%に外挿する。検討される化合物を10%の量でホスト混合物中に溶解する。この目的にとって物質の溶解度が低すぎる場合は、所望の温度で検討が行えるまで段階的に濃度を半減する。
【0210】
本発明による液晶媒体はまた、必要に応じて例えば、安定剤などの更なる添加剤を通常の量で含んでよい。これらの用いられる添加剤の量は、混合物全体の量に基づいて好ましくは総量で、0%以上~10%以下、特に好ましくは0.1%以上~6%以下である。用いられる個々の化合物の濃度は、好ましくは0.1%以上~3%以下である。これらおよび同様の添加剤の濃度は、液晶媒体中の液晶化合物の濃度および濃度範囲を特定する際には一般に考慮しない。
【0211】
本発明の目的において、他に明らかに記さない限り全ての濃度は重量パーセントで示され、他に明らかに示さない限り対応する混合物全体または混合物構成成分全体に関する。この文意において、用語「混合物」は液晶媒体を記載する。
【0212】
他に明記しない限り、以下の記号が使用される:
T(N,I)それぞれT(Nf,I)(またはclp.)
透明点(℃)。
【0213】
1kHzおよび好ましくは20℃または特定されるそれぞれの温度における誘電特性:
ε⊥ ダイレクターに垂直な誘電率、
ε∥ ダイレクターに平行な誘電率、
Δε 誘電異方性および特に単一化合物の選別データ用、および
εav. 平均誘電率。
【0214】
および特にネマチックホスト混合物ZLI-4792におけるそれぞれの化合物のスクリーニングからのデータ用:
ne 20℃および589nmで測定される異常屈折率、
n0 20℃および589nmで測定される通常屈折率、および
Δn 20℃および589nmで測定される光学的異方性。
【0215】
以下の例は、本発明を制限することなく説明する。しかしながら、以下の例は当業者に、好ましく用いられる化合物、それらそれぞれの濃度およびそれらの互いの組合せと共に好ましい混合の考え方を示す。加えて、以下の例は、実現可能な特性および特性の組合せを例示する。
【0216】
<表A:環要素>
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
<表B:架橋単位>
【0221】
【0222】
<表C:末端基>
【0223】
【0224】
式中、nおよびmはそれぞれ整数(1、2、3、4、5、6、7など)を表し、3つの点「...」は、この表からの他の略号のためのスペースである。
【0225】
式IA、IBおよび/またはICの化合物に加えて本発明による混合物は好ましくは、下に述べる化合物の1種類以上の化合物を含む。
【0226】
以下の略号が使用される:
(n、m、kおよびlは、それぞれ互いに独立に、整数、好ましくは1~9であり、好ましくは1~7であり、またkおよびlは0も可能でよく、好ましくは0~4、より好ましくは0または2であり、最も好ましくは2であり、nは好ましくは1、2、3、4または5であり、組合せ「-nO-」において好ましくは1、2、3または4、より好ましくは2または4であり、mは好ましくは1、2、3、4または5であり、組合せ「-Om」において好ましくは1、2、3または4、より好ましくは2または4である。組合せ「-lVm」は好ましくは「2V1」である。)
【0227】
本発明および以下の例において液晶化合物の構造は頭文字で示され、化学式への変換は上の表A~Cに従って行う。全ての基CnH2n+1、CmH2m+1およびClH2l+1またはCnH2n、CmH2mおよびClH2lは、それぞれn、mおよびl個のC原子を有する直鎖状のアルキル基またはアルケニル基である。好ましくは、n、mおよびlは、それぞれ互いに独立に、1、2、3、4、5、6または7である。表Aは化合物の核構造の環要素のためのコードを示し、表Bには架橋基が列記されており、表Cには、分子の左側または右側の末端基のためのコードの意味が列記されている。頭文字は、任意に存在する連結基と共に環要素のコードと、それに続く第1のハイフンおよび左側の末端基のコード、ならびに第2のハイフンおよび右側の末端基のコードから成る。表Dには、それらの略号それぞれと共に化合物の例示的構造を示す。
【0228】
<表D>
式IAの好ましい化合物の例示
【0229】
【0230】
式IBの好ましい化合物の例示
【0231】
【0232】
式ICの好ましい化合物の例示
【0233】
【0234】
好ましく使用される更なる化合物
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】
【0241】
【0242】
式中、n、m、lは1、2、3、4、5、6、7などであり、またnは0でもよい。
【0243】
<混合物例>
以下に例示的混合物が開示される。
【0244】
<混合物例1>
以下の混合物(M-1)が調製および検討される。
【0245】
【0246】
この混合物M-1は冷却時に、40℃から5℃まで強誘電性ネマチック相を示す。この相はモノトロピック、即ち過冷却可能である。加熱すると相が約35℃で再び発生し、再び約45℃で異なる中間相に変化する。相は、顕微鏡検査およびDSCで確認される。この混合物は、これらの温度において非常に高い比誘電率を示す。
【0247】
より高い温度において誘電定数のヒステリシスが観察される。約60℃の温度において従来のネマチック相が発生する。
【0248】
<混合物例2>
以下の混合物(M-2)が調製および検討される。
【0249】
【0250】
この混合物M-2は強誘電性ネマチック相を示す。この強誘電性ネマチックは冷却時に30℃~25℃にわたる。
【0251】
<混合物例3>
以下の混合物(M-3)が調製および検討される。
【0252】
【0253】
この混合物M-3は強誘電性ネマチック相を示す。この強誘電性ネマチックは冷却時に46℃~25℃にわたる。
【0254】
<混合物例4>
以下の混合物(M-4)が調製および検討される。
【0255】
【0256】
この混合物M-4は強誘電性ネマチック相を示す。この強誘電性ネマチックは冷却時に77℃~31℃にわたる。
【0257】
<混合物例5>
以下の混合物(M-5)が調製および検討される。
【0258】
【0259】
この混合物M-5は62℃より下で強誘電性ネマチック相を示す。それは冷却時に20℃において準安定である。
【0260】
<混合物例6>
以下の混合物(M-6)が調製および検討される。
【0261】
【0262】
この混合物M-6は49℃より下で強誘電性ネマチック相を示す。
【0263】
<混合物例7>
以下の混合物(M-7)が調製および検討される。
【0264】
【0265】
この混合物M-7は強誘電性ネマチック相を示す。それは冷却時に20℃において準安定である。
【0266】
<混合物例8>
以下の混合物(M-8)が調製および検討される。
【0267】
【0268】
この混合物M-8は48℃より下で安定な強誘電性ネマチック相を示す。
【0269】
<混合物例9>
以下の混合物(M-9)が調製および検討される。
【0270】
【0271】
この混合物M-9は周囲温度において強誘電性ネマチック相を示す。
【0272】
<混合物例10>
以下の混合物(M-10)が調製および検討される。
【0273】
【0274】
この混合物M-10は59℃より下で強誘電性ネマチック相を示す。
【0275】
<混合物例11>
以下の混合物(M-11)が調製および検討される。
【0276】
【0277】
この混合物M-11は強誘電性ネマチック相を示す。これは少なくとも19℃~36℃にわたる。
【0278】
<混合物例12>
以下の混合物(M-11)が調製および検討される。
【0279】
【0280】
この混合物M-12は強誘電性ネマチック相を示す。これは少なくとも加熱時に60℃~73℃および冷却時に73℃~10℃にわたる。
【国際調査報告】