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特表2023-552080構造化多孔質体とフォームを含む複合物品、及び構造化多孔質体及びパーティクルフォームの製造方法
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  • 特表-構造化多孔質体とフォームを含む複合物品、及び構造化多孔質体及びパーティクルフォームの製造方法 図1
  • 特表-構造化多孔質体とフォームを含む複合物品、及び構造化多孔質体及びパーティクルフォームの製造方法 図2
  • 特表-構造化多孔質体とフォームを含む複合物品、及び構造化多孔質体及びパーティクルフォームの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】構造化多孔質体とフォームを含む複合物品、及び構造化多孔質体及びパーティクルフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/12 20060101AFI20231207BHJP
   C08J 9/232 20060101ALI20231207BHJP
   C08J 9/36 20060101ALI20231207BHJP
   C08J 9/24 20060101ALI20231207BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20231207BHJP
   B29C 44/44 20060101ALI20231207BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20231207BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231207BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20231207BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20231207BHJP
   A43B 13/04 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B29C44/12
C08J9/232 CER
C08J9/36 CEZ
C08J9/24
B29C44/00 G
B29C44/44
B29C64/153
B33Y10/00
B33Y80/00
B32B5/32
A43B13/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023528705
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2021081565
(87)【国際公開番号】W WO2022106319
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】20208235.0
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】フェルベレン,レーンダー
(72)【発明者】
【氏名】ファンティノ,エリカ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,リザ マリー
(72)【発明者】
【氏名】ハーゼ,エファ アンナ
【テーマコード(参考)】
4F050
4F074
4F100
4F213
4F214
【Fターム(参考)】
4F050BA43
4F050HA73
4F050JA09
4F074AA78
4F074CA38
4F074CA49
4F074CA52
4F074CC47Z
4F074CE02
4F074CE24
4F074CE25
4F074CE64
4F074CE98
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA14
4F074DA24
4F074DA33
4F074DA35
4F074DA36
4F074DA38
4F074DA53
4F100AK01C
4F100AK03A
4F100AK03C
4F100AK12A
4F100AK12C
4F100AK41A
4F100AK45A
4F100AK45C
4F100AK46A
4F100AK46C
4F100AK49C
4F100AK51A
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AK54A
4F100AK57A
4F100AK57C
4F100AL01A
4F100AL09A
4F100AL09B
4F100AL09C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100DJ00A
4F100DJ01B
4F100EC03
4F100HB31C
4F100JB13C
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100YY00B
4F213AA03
4F213AA13
4F213AA31
4F213AA45
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL23
4F213WL43
4F214AA31
4F214AA45
4F214AB02
4F214AC01
4F214AD05
4F214AD07
4F214AG20
4F214UA21
4F214UB01
4F214UB12
4F214UC03
4F214UF05
(57)【要約】
本発明は、構造化多孔質体(PB)とパーティクルフォーム(PF)とを含む複合物品を製造する方法に関し、用意した構造化多孔質体(PB)を型(M)内に挿入し、この型(M)に発泡フォームビーズ(EFB)を充填して、発泡フォームビーズ(EFB)を互いに接触させ、かつ、構造化多孔質体(PB)を発泡フォームビーズ(EFB)と少なくとも部分的に接触させる。次いで、発泡フォームビーズ(EFB)を熱溶着して、上記パーティクルフォーム(PF)を構築し、上記複合物品を得る。さらに、本発明は、この方法によって得た複合物品、及び構造化多孔質体(PB)とパーティクルフォーム(PF)とを含む複合物品に関する。本発明は、さらに、靴産業、スポーツ及びレジャー分野、車両製造、医療分野、機械工学及び物流分野における本発明の複合物品の使用に関する。さらにまた、本発明は、構造化多孔質体(PB)とフォーム(F)とを含み、構造化多孔質体(PB)とフォーム(F)とが同じポリマー(P)を含むものである複合物品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化多孔質体(PB)とパーティクルフォーム(PF)とを含む複合物品を製造する方法であって、該方法は以下の工程a)~d)
a)構造化多孔質体(PB)を用意する工程、
b)工程a)で用意した構造化多孔質体(PB)を型(M)に挿入する工程、
c)発泡フォームビーズ(EFB)が互いに接触し、構造化多孔質体(PB)が少なくとも部分的に発泡フォームビーズ(EFB)と接触するように、発泡フォームビーズ(EFB)を型(M)に充填する工程、及び
d)発泡フォームビーズ(EFB)を熱溶着する工程であって、パーティクルフォーム(PF)を構築し、複合物品を得る、工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記構造化多孔質体(PB)が、
i)耐衝撃性改質ビニル-芳香族コポリマー、熱可塑性スチレン系エラストマー(S-TPE)、ポリオレフィン(PO)、脂肪族-芳香族コポリエステル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリスルホン及びポリイミド(PI)からなる群、好ましくは、熱可塑性スチレン系エラストマー(S-TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)及びポリアミドからなる群、特に好ましくは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)からなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性又は熱硬化性ポリマー(TP)を含むものであり、及び/又は
ii)節点と空隙体積の三次元ネットワークを具備しており、節点は支柱によって互いに結合され、空隙体積は支柱の間に存在する、及び/又は、
iii)三次元(3D)印刷法によって製造したものであり、及び/又は
iv)格子又は三重周期極小表面(TPMS)であり、好ましくは格子であり、及び/又は
v)型(M)に、好ましくは型(M)の固定部分(FP)又は可動部分(MP)に正確に嵌合するか、又は、型(M)の、好ましくは型の固定部分(FP)又は可動部分(MP)の一部のみを充填するものである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発泡フォームビーズ(EFB)が、
i)熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリスチレン(EPS)、エチレンビニルアセテート(EVA)又はポリオレフィン、好ましくは熱可塑性エラストマー(TPE)、より好ましくは熱可塑性ポリウレタンを含み、及び/又は
ii)0.2~20mm、好ましくは0.5~15mm、特に1~12mmの平均直径を有し、及び/又は
iii)≦300℃、好ましくは≦250℃、特に≦220℃の融点TM(EFB)を有する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記3D印刷法が焼結法、好ましくは選択的レーザー焼結法(SLS)又はマルチジェットフュージョン法(MJF)である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記焼結法が以下の工程i)及びii)、
i)好ましくは、耐衝撃性改質ビニル-芳香族コポリマー、熱可塑性スチレン系エラストマー(S-TPE)、ポリオレフィン(PO)、脂肪族-芳香族コポリエステル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリスルホン及びポリイミド(PI)からなる群、より好ましくは、熱可塑性スチレン系エラストマー(S-TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)及びポリアミドからなる群、特に好ましくは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)からなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性又は熱硬化性ポリマー(TP)を含む、焼結粉末(SP)の層を用意する工程、及び
ii)工程i)で用意した焼結粉末(SP)の層を焼結させる工程
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記発泡フォームビーズ(EFB)を、蒸気、マイクロ波、バリオサーム又は高周波によって、好ましくは蒸気によって、熱溶着する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記型(M)が固定部分(FP)と可動部分(MP)とを備え、工程b)では、前記構造化多孔質体(PB)を型(M)の固定部分(FP)又は可動部分(MP)のいずれかに挿入する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程d)において、前記発泡フォームビーズ(EFB)の軟化温度Tを超える第1の温度Tで発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮することによって、熱溶着を行う、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程d)において、前記第1の温度Tが、90~200℃の範囲、好ましくは100~170℃の範囲、より好ましくは110~140℃の範囲である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程b)と工程c)の間で、型(M)の固定部分(FP)と可動部分(MP)の間に隙間(C)ができるように可動部分(MP)を移動させて型(M)を部分的に閉鎖する工程e2)を実施し、隙間(C)の厚さは好ましくは5~24mmの範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程d)による前記発泡フォームビーズ(EFB)の蒸煮が、以下の工程d1)~d4)、
d1)隙間(C)を通して前記発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、ここで、
蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側に供給し、固定部分(FP)の側で型(M)から排出させ、又は
蒸気を型(M)の固定部分(FP)の側に供給し、可動部分(MP)の側で型(M)から排出させ、又は
蒸気を可動部分(MP)の側と固定部分(FP)の側に続いて供給し、それぞれ、固定部分(FP)の側と可動部分(MP)の側で型(M)から続いて排出させる、工程、
d2)型(M)の可動部分(MP)をさらに移動させることにより、型(M)を完全に閉じる工程、
d3)前記発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の固定部分(FP)の側に供給する、工程、又は
前記発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側に供給する、工程、又は
前記発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側と固定部分(FP)の側とに続いて供給する、工程、及び
d4)発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を、型(M)の固定部分(FP)の側と可動部分(MP)の側とに同時に供給する、工程、
を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
i)工程d1)で、前記発泡フォームビーズ(EFB)を、固定部分(FP)の側及び/又は可動部分(MP)の側において、0.7~2.0バールの範囲、好ましくは1.2~1.8バールの範囲の蒸気圧で蒸煮し、及び/又は
ii)工程d1)で、前記発泡フォームビーズ(EFB)を、3~30秒の範囲の時間、好ましくは10~20秒の範囲の時間、蒸煮し、及び/又は
iii)工程d3)で、前記発泡フォームビーズ(EFB)を、固定部分(FP)の側で、1.1~3.5バールの範囲、好ましくは1.1~1.5バールの範囲の蒸気圧で蒸煮し、及び/又は
iv)工程d3)で、前記発泡フォームビーズ(EFB)を、可動部分(MP)の側で、1.1~3.5バールの範囲、好ましくは1.5~3.0バールの範囲の蒸気圧で蒸煮し、及び/又は
v)工程d3)で、前記発泡フォームビーズ(EFB)を、3~60秒の範囲の時間、好ましくは5~40秒の範囲の時間、蒸煮し、及び/又は
vi)工程d4)において、前記発泡フォームビーズ(EFB)を、1.3~3.5バールの範囲、好ましくは1.7~3.0バールの範囲の絶対蒸気圧で蒸煮し、及び/又は
vii)工程d4)において、前記発泡フォームビーズ(EFB)を、3~80秒の範囲の時間、好ましくは10~60秒の範囲の時間、蒸煮する、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記工程b)と工程c)との間で、型(M)の可動部分(MP)を移動することによって型(M)を完全に閉じる工程e1)を実施し、工程d)による前記発泡フォームビーズ(EFB)の蒸煮が以下の工程d3)及びd4)、
d3)前記発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の固定部分(FP)の側に供給する、工程、又は、
前記発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側に供給する、工程、又は、
前記発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側と固定部分(FP)の側とに続いて供給する、工程、及び
d4)前記発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を、型(M)の固定部分(FP)の側と可動部分(MP)の側とに同時に供給する、工程
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法により得た複合物品。
【請求項15】
構造化多孔質体(PB)とパーティクルフォーム(PF)とを含む複合物品。
【請求項16】
前記構造化多孔質体(PB)が三次元(3D)印刷法によって得たものであり、前記パーティクルフォーム(PF)が熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリスチレン(PS)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリオレフィン又はこれらの混合物を含む、請求項15に記載の複合物品。
【請求項17】
靴産業、スポーツ及びレジャー分野、車両製造、医療分野、機械工学及び物流分野における、請求項14~16のいずれか一項に記載の複合物品の使用方法。
【請求項18】
構造化多孔質体(PB)及びフォーム(F)を含む複合物品であって、前記構造化多孔質体(PB)及び前記フォーム(F)がそれぞれ同じポリマー(P)を含む、複合物品。
【請求項19】
前記構造化多孔質体(PB)及び前記フォーム(F)がそれぞれ同じポリマー(P)からなる、請求項1又は2に記載の複合物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
明細書
本発明は、構造化多孔質体(PB)とパーティクルフォーム(PF)とを含む複合物品を製造する方法に関する。この方法では、用意した構造化多孔質体(PB)を型(M)に挿入し、型(M)に発泡フォームビーズ(EFB)を充填して、発泡フォームビーズ(EFB)を互いに接触させ、かつ、構造化多孔質体(PB)を発泡フォームビーズ(EFB)と少なくとも部分的に接触させるようにする。次いで、発泡フォームビーズ(EFB)を熱溶着させて、パーティクルフォーム(PF)を構築し、複合物品を得るものである。さらに、本発明は、この方法によって得た複合物品、及び、構造化多孔質体(PB)とパーティクルフォーム(PF)とを含む複合物品に関する。本発明は、さらに、靴産業、スポーツ及びレジャー分野、車両製造、医療分野、機械工学及び物流分野における本発明複合物品の使用に関する。さらに、本発明は、構造化多孔質体(PB)とフォーム(F)とを含む複合物品であって、その構造化多孔質体(PB)とフォーム(F)とが同じポリマー(P)を含むものである、複合物品に関する。
【背景技術】
【0002】
純粋なフォームを使用することで、硬さ、柔軟性、反発性などのような、フォーム内に封入された球状の気泡の密度及びサイズ分布によって、また、フォーム材料そのものによって決まる、さまざまな特性を実現することが可能である。原理的には、単一のフォーム部品内で異なる密度を実現することも可能である。しかし、通常の方法では、さまざまな粒子又はビーズを型内に正確に配置することができないため、熱溶着によって製造したパーティクルフォームを使用する場合には、これは非常に困難なことである。
【0003】
例えば、三重周期極小表面(TPMS)又は格子(lattice)のような構造化多孔質体は、一般に、支柱(struts)で互いに接続された節点(node points)の三次元ネットワークと、支柱の間に存在する空隙体積(void volume)を含む。多孔質体は、周期的に構造化する場合、一般に、少なくとも二次元で繰り返される単位セルを含む。このような構造化多孔質体を非常にコスト効率よく、個別化し、資源を節約して製造するために、3D-印刷技術がしばしば使用される。フォームと同様に、構造化多孔質体の密度によってその特性を制御することができる。また、機械的特性は、単位セルの種類、大きさ、及び/又は3Dプリンターのビーム径によって制御することが可能である。フォームに比べ、球状のキャビティだけでなく、あらゆる種類の構造のキャビティが可能である。これにより、より幅広い機械的性質又は挙動を設計立案することができる。さらに、構造化多孔質体の一部内で機械的挙動を変化させることも可能であり、この部分の異なる領域が異なる機械的応答性を持つようにすることも可能である。したがって、構造化多孔質体の設計は、余分な製造コストをかけずに、特定のエンドユーザーごとに最適化することができる。
【0004】
しかし、構造化多孔質体の欠点は、ある圧力で座屈することである。この意味する処は、ある圧力で構造化多孔質体の支柱の一部が座屈し、圧縮に対する抵抗が急速に低下することである。また、構造化した多孔質体は、開放的な構造であるため、密閉されていないと汚れ及び水分を容易に取り込んでしまう。また、構造化した多孔質体は表面積が大きいため、湿気及び紫外線などの環境条件の影響をより迅速に受ける。また、特に粉末又はフィラメントベースの技術で製造する場合、残留粉末の洗浄及び表面の平滑化などの、高価な後処理を必要とすることが多い。また、もう一つの欠点は、3D印刷された(周期的)構造化多孔質体は非常に複雑であるため、印刷プロセスの小さな変動が最終的な部品の挙動に大きな影響を与えることがあり、部品間の高い一貫性を得ることが困難であることである。
【0005】
両材料の長所を最大限に活用し、短所を可能な限り解消するために、これらの2つの材料について、その組成及び製造プロセス並びに複合体材料として組み合わせることの観点から、個別に最適化することが近年注目されている。
【0006】
EP3292795A1には、付加製造プロセスで多孔質体を製造するために弾性ポリマーを使用することが記載されている。このポリマーは、例えば、熱硬化性ポリウレタンエラストマー(PUR)又は熱可塑性ウレタン系エラストマー(TPU)から選択されたものである。多孔質体は、≧10~≦100kPaの40%圧縮を目標とすることができる。
【0007】
また、CN109688877Aには、付加製造法で製造した多孔質体が記載されている。この多孔質体の材料は、多孔質体の第1の領域にある材料と、第2の領域にある材料とが異なる。その材料は、例えば、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)又はポリアクリレートから選択されたものである。また、多孔質体は、少なくとも1つの空間方向における圧縮硬度(40%圧縮)が≧10~≦100kPaである。
【0008】
US2019/0357695A1は、本体と固体フォームとを含む複合物品を記載しており、本体の材料はフォームの材料とは異なる。本体は、付加製造プロセスによって製造したものであり、例えば、熱硬化性ポリウレタン、エポキシド又はウレタンベースの熱可塑性エラストマー(TPU)の群から選択される高分子材料から、少なくとも部分的に形成されている。複合物品は、反応してポリマーフォームを生成する反応混合物に本体を接触させることにより製造するものであり、この反応混合物は少なくとも部分的に本体の内部に浸透している。反応混合物は、ポリイソシアネート、ポリオール、さらに化学的及び/又は物理的発泡剤を含有することができる。複合物品の特徴は、耐候性に優れていることである。
【0009】
論文「The formation and stabilization of lattice structures via foam addition」(J. B. Ostos et al., Acta Materialia, 2012)には、センチメートル単位の空隙を有する低密度ポリマー格子構造と、格子支柱の間の空間にサブミリメートル単位の細孔を有する確率論的(stochastic)フォームとを備えた複合体が紹介されている。格子はチオールエンを光硬化させたもので、これに高速ミキサーでポリウレタンプレポリマーを塗布し、複合体を得ている。
【0010】
US2016/0324260A1は、ミッドソールを有する履物の物品について記載している。このミッドソールは、複数のラス(laths)を有する格子構造を含む。格子構造は、溶融ナイロン又はPTFE粉末によりもたらされる。
【0011】
しかし、これまで特に複合体材料の製造は、構造化多孔質体内におけるフォームの形成がいくつかの問題を引き起こす可能性があるため、極めて問題が多いものであった。例えば、フォームの形成には発熱を伴うため、高温になり、構造化多孔質体を破壊したり又は劣化させたりする可能性がある。また、フォームの強力で迅速な膨張により、構造化多孔質体の接続部又は支柱の一部が破損する可能性がある。さらに、例えば、構造化多孔質体が核形成部位として機能し、予期しない又は制御不能なフォーム構造をもたらす場合、フォームの形成は、構造化多孔質体によっても影響を受ける可能性がある。最後に、最先端のほとんどの例では、構造化多孔質体とフォームに異なる材料化学物質を使用しているため、互換性の問題が生じる可能性があり、また、リサイクルが非常に難しくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】EP3292795A1
【特許文献2】CN109688877A
【特許文献3】US2019/0357695A1
【特許文献4】US2016/0324260A1
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】The formation and stabilization of lattice structures via foam addition」(J. B. Ostos et al., Acta Materialia, 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の根底にある目的は、構造化多孔質体及びフォームを含む複合物品を製造するための改良された方法を提供することであり、この方法は、複合物品に含まれる構造化多孔質体及びフォームの機械的特性を独立して調整することを可能にする。この方法により、構造化多孔質体及びフォームの反対の機械的特性をも独立して改善することが可能である。本発明のさらなる目的は、良好なリサイクル特性を有する複合材料を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、複合物品から採取した試験片の位置を示す。
図2図2は、ランニングシューズでの評価を示す。
図3図3は、短期試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の見地によれば、その目的は、構造化多孔質体(PB)とパーティクルフォーム(PF)とを含む複合物品を製造する方法によって達成することができる。この方法は、以下の工程a)~d)
a)構造化多孔質体(PB)を用意する工程、
b)工程a)で用意した構造化多孔質体(PB)を型(M)に挿入する工程、
c)発泡フォームビーズ(EFB)が互いに接触し、構造化多孔質体(PB)が少なくとも部分的に発泡フォームビーズ(EFB)と接触するように、発泡フォームビーズ(EFB)を型(M)に充填する工程、及び
d)発泡フォームビーズ(EFB)を熱溶着する工程であって、パーティクルフォーム(PF)を構築し、また、複合物品を得る、工程
を含む。
【0017】
本発明の第2の見地によれば、その目的は、構造化多孔質体(PB)とフォーム(F)とを含む複合物品であって、構造化多孔質体(PB)とフォーム(F)とがそれぞれ同じポリマー(P)を含むものである、複合物品によって達成することができる。
【0018】
驚くべきことに、本発明の方法によって、特に構造化多孔質体(PB)を型(M)に挿入することによって、複合物品の機械的特性を複合物品のどの場所でも規定することが可能であることが見出された。
【0019】
さらに、驚くべきことに、複合物品の剛性及び圧縮硬度は、反発性に大きな影響を与えることなく、低密度の純粋なパーティクルフォーム(PF)の剛性と比較して高めることができることが判明した。構造化多孔質体(PB)の使用により、剛性勾配を達成することも可能である。
【0020】
また、構造化多孔質体(PB)はパーティクルフォーム(PF)よりも柔らかであるが、構造化多孔質体(PB)を含まないパーティクルフォーム(PF)として、静的及び動的試験を行ったとき、複合物品がより硬く挙動することは意外なことであった。
【0021】
有利なことに、構造化多孔質体(PB)は、発泡フォームビーズ(EFB)の熱溶着及びその反発性に対していかなる悪影響をも示さない。
【0022】
さらに、多孔質構造体(PB)とフォーム(F)が、各々、同じポリマー(P)を含むものである場合には、適合性及びリサイクル性が向上する。
【0023】
以下に、複合物品の詳細及び複合物品を製造する本発明の方法の詳細についての説明及び定義を示す。
【0024】
複合物品
複合物品それ自体は、原則として当業者に知られている。複合物品は、通常、化学的性質が互いに異なり、及び/又は、その構造配置に起因する特別な物理的-機械的特性を有する、異なる固体成分(材料)で構成される。本発明との関連で「複合物品」は、好ましくは、構造化多孔質体(PB)及びパーティクルフォーム(PF)から構成され、パーティクルフォーム(PF)は、発泡フォームビーズ(EFB)を熱溶着することにより製造する。一般に、複合物品は、工程a)~d)を備えた方法によって製造される。
【0025】
工程a)
工程a)では、構造化多孔質体(PB)を用意する。
【0026】
構造化多孔質体(PB)は、好ましくは、耐衝撃性改質ビニル-芳香族コポリマー、熱可塑性スチレン系エラストマー(S-TPE)、ポリオレフィン(PO)、脂肪族-芳香族コポリエステル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリスルホン及びポリイミド(PI)からなる群、より好ましくは、熱可塑性スチレン系エラストマー(S-TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)及びポリアミドからなる群、特に好ましくは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)からなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性又は熱硬化性ポリマー(TP)を含む。
【0027】
構造化多孔質体(PB)は、節点の三次元ネットワークと空隙体積とを具備することが好ましく、節点は支柱によって互いに接合され、空隙体積は支柱の間に存在する。
【0028】
構造化多孔質体(PB)は、周期的に構造化することができる。構造化多孔質体(PB)が周期的に構造化されている場合、その構造化多孔質体は、多数の同一の単位セルを含み、また、少なくとも二次元にそれ自体を繰り返す単一の単位セルを設計することによって画定(規定)される。
【0029】
適切な構造化多孔質体(PB)の例として、格子又は三重周期極小表面(TPMS)がある。
【0030】
本発明との関連では、「格子」は、支柱によって互いに結合された節点の三次元ネットワーク、及び支柱の間に存在する空隙体積を含み、格子の1つの節点は、格子の別の節点と同じ及び/又は異なる量の支柱で接続することができ、格子の1つの支柱の長さは格子の別の支柱と同じ及び/又は異なることができる。したがって、結晶学の用語に類似して、本発明による格子は、二次元又は三次元に周期的に繰り返す単位セル及び/又は非晶質構造を含むことができる。
【0031】
本明細書において、「三重周期極小表面」という用語は、極小表面が、3次元的に繰り返し、230個の結晶学的空間群のうちの1つを対称群として有する単位セルで構成されていることを意味している。
【0032】
好適な実施形態では、構造化多孔質体(PB)は格子(lattice)である。
【0033】
構造化多孔質体(PB)は、三次元(3D)印刷法によって製造することが好ましい。
【0034】
そのような3D(三次元)印刷法は、当業者には既知である。原則として、選択的レーザー溶融法、電子ビーム溶解法、選択的レーザー焼結法(SLS)、マルチジェットフュージョン法(MJF)、ステレオリソグラフィ(SLA)、デジタルライトプロダクション(DLP)、又は溶融堆積モデリング(FDM)法のような既知の異なる3D印刷技術をすべて使用することができる。これは、粉末又はフィラメントなど、対応する出発材料についても同様であって、それぞれの3D印刷法で層ごとに塗布して、所望の三次元(3D)オブジェクトを製造する。
【0035】
本発明との関連では、3D印刷法としては、好ましくは焼結法であり、より好ましいのは選択的レーザー焼結法(SLS)又はマルチジェットフュージョン法(MJF)である。
【0036】
焼結法を介して構造化多孔質体(PB)を用意する工程は、下記の工程i)及びii)
i)好ましくは、耐衝撃性改質ビニル-芳香族コポリマー、熱可塑性スチレン系エラストマー(S-TPE)、ポリオレフィン(PO)、脂肪族-芳香族コポリエステル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリスルホン及びポリイミド(PI)からなる群、より好ましくは、熱可塑性スチレン系エラストマー(S-TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)及びポリアミドからなる群、特に好ましくは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)からなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性又は熱硬化性ポリマー(TP)を含む、焼結粉末(SP)の層を設ける工程、及び
ii)工程i)で設けた焼結粉末(SP)の層を焼結させる工程
を含むことが好ましい。
【0037】
工程ii)に続いて、焼結粉末(SP)の層は、通常、工程i)で設けた焼結粉末(SP)の層の層厚分だけ降下させ、焼結粉末(SP)の更なる層を塗布する。これを工程ii)に従って再び焼結させる。
【0038】
このようにして、一方では焼結粉末(SP)の上層が焼結粉末(SP)の下層と結合し、他方では焼結粉末(SP)の粒子が上層内で溶融することによって互いに結合する。
【0039】
したがって、本発明の方法では、工程i)及びii)を繰り返すことができる。
【0040】
粉体ベッドの下降、焼結粉末(SP)の塗布、焼結粉末(SP)の焼結、したがって溶融を繰り返すことで、構造化多孔質体(PB)を製造する。溶融していない焼結粉末(SP)自体が支持体として機能するため、追加の支持体は必要ない。
【0041】
特に好適な3D印刷法である選択的レーザー焼結法(SLS)又はマルチジェットフュージョン法(MJF)は、当業者によく知られており、例えば、US4,863,538(SLS)、US5,658,412(SLS)、US5,647,931(SLS)及びWO2015/108543(MJF)で詳細に説明されている。
【0042】
焼結粉末(SP)は、通常、粒子を有する。これらの粒子は、例えば、10~190μmの範囲、好ましくは15~150μmの範囲、より好ましくは20~110μmの範囲、特に好ましくは40~100μmの範囲のサイズ(D50値)を有する。
【0043】
本発明との関連では、「D50」は、粒子の総体積に基づいて50体積%の粒子がD50より小さいか又はこれと同等であり、粒子の総体積に基づいて50体積%の粒子がD50より大きい粒子径を意味すると理解される。
【0044】
焼結粉末(SP)は、通常、融解温度(TM(SP))が80~220℃の範囲にある。好ましくは、焼結粉末(SP)の融解温度(TM(SP))は100~190℃の範囲にあり、特に好ましくは120~170℃の範囲にある。
【0045】
融解温度(TM(SP))については、本発明の関連では、示差走査熱量測定法(DSC)により求める。加熱ラン(H)及び冷却ラン(K)を、それぞれ加熱速度及び冷却速度を20K/分として測定することが通例であり、こうしてDSC図が得られる。そして、融解温度(TM(SP))は、DSC図の加熱ラン(H)の融解ピークが最大を示す温度であると理解される。
【0046】
工程b)
工程b)では、工程a)で用意した構造化多孔質体(PB)を型(M)に挿入する。ここで、型(M)は好ましくは固定部分(FP)及び可動部分(MP)を備えており、構造化多孔質体(PB)は型(M)の固定部分(FP)又は可動部分(MP)のいずれかに挿入することが好ましい。
【0047】
構造化多孔質体(PB)が型(M)、好ましくは型(M)の固定部分(FP)又は可動部分(MP)に正確に嵌合する(fit)ことも可能であるが、構造化多孔質体(PB)が型(M)の、好ましくは型の固定部分(FP)又は可動部分(MP)の一部のみを充填するものであることも同様に可能である。
【0048】
本発明との関連において、用語「正確に嵌合する」とは、構造化多孔質体(PB)の長さが、型(M)の長さ、好ましくは型(M)の固定部分(FP)又は可動部分(MP)の長さに対し、少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%に対応すること、構造化多孔質体(PB)の幅が、型(M)の幅、好ましくは型(M)の固定部分(FP)又は可動部分(MP)の幅に対し、少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%に対応すること、及び、構造化多孔質体(PB)の厚さが、型(M)の厚さ、好ましくは型(M)の固定部分(FP)又は可動部分(MP)の厚さに対し、少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%に対応することを意味する。
【0049】
本発明との関連において、「型(M)の一部のみを充填する」という用語は、構造化多孔質体(PB)の長さが、型(M)の長さに、好ましくは型(M)の固定部分(FP)又は可動部分(MP)の長さに対し、95%未満に対応すること、構造化多孔質体(PB)の幅が、型(M)の幅に、好ましくは、型(M)の固定部分(FP)又は可動部分(MP)の幅に対し、95%未満に対応すること、及び、構造化多孔質体(PB)の厚さが、型(M)の厚さに、好ましくは型(M)の固定部分(FP)又は可動部分(MP)の厚さに対し、95%未満に対応することを意味する。
【0050】
工程c)
工程c)では、発泡フォームビーズ(EFB)が互いに接触し、かつ、構造化多孔質体(PB)が少なくとも部分的に発泡フォームビーズ(EFB)と接触するように、型(M)に発泡フォームビーズ(EFB)を充填する。
【0051】
本発明との関連では、「少なくとも部分的に接触する」という用語は、構造化多孔質体(PB)の表面の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%が、発泡フォームビーズ(EFB)と接触していることを意味する。
【0052】
発泡フォームビーズ(EFB)それ自体は、原則として当業者に知られている。好適な発泡フォームビーズは、例えば、WO94/20568A1、WO2007/082838A1、WO2017/030835A1、WO2013/153190 A1又はWO2010/010010A1に開示されている。
【0053】
発泡フォームビーズ(EFB)は、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリスチレン(EPS)、エチレンビニルアセテート(EVA)又はポリオレフィンを含むことが好ましい。また、上記したポリマーを含む発泡フォームビーズ(EFB)の混合物も、型(M)を充填するために使用することができる。発泡フォームビーズ(EFB)は、熱可塑性エラストマー(TPE)を含むことがより好ましい。
【0054】
発泡フォームビーズに含まれる熱可塑性エラストマー(TPE)の例としては、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリエーテルエステル、熱可塑性(コ)ポリエステル、熱可塑性加硫物、熱可塑性ポリオレフィン、及び熱可塑性スチレンブロックコポリマーが挙げられる。
【0055】
発泡フォームビーズ(EFB)は、熱可塑性ポリウレタンを含むことが最も好ましい。特に好適な発泡フォームビーズ(EFB)は、BASF SE社からInfinergy(登録商標)という商品名で入手可能な、熱可塑性ポリウレタンを含む発泡フォームビーズである。
【0056】
さらに、発泡フォームビーズ(EFB)は、好ましくは0.2~20mm、好ましくは0.5~15mm、特に1~12mmの平均直径を有する。非球状ビーズ、例えば細長いビーズ又は円筒形ビーズの場合、平均直径とは最長寸法の平均直径を意味する。
【0057】
本発明との関連で、発泡フォームビーズ(EFB)は、好ましくは、 融点TM(EFB)≦300℃、より好ましくは≦250℃、特には≦220℃である(DIN EN ISO11357-1:2016に準拠する示差走査熱量測定(DSC)によって決定)、ここで融点はDIN EN ISO11357-3:2018に準拠するDSC曲線から決定する。
【0058】
好適な実施形態では、発泡フォームビーズ(EFB)は独立気泡を有する。
【0059】
本発明との関連では、用語「独立気泡」は、発泡フォームビーズ(EFB)に封入された気泡の空洞と空洞が、それぞれの気泡の壁の開口部によって相互に連結されていないことを意味する。本発明との関連では、独立気泡材料は、常に、(気泡の総数に対して)連続気泡よりも多くの独立気泡を具備する。
【0060】
好ましくは、独立気泡を有する発泡フォームビーズ(EFB)は、独立気泡を有する発泡フォームビーズ(EFB)の気泡の総数を基準として、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の独立気泡からなる。
【0061】
好適な実施形態では、得た複合物品内にある発泡フォームビーズ(EFB)は、20~350kg/mの範囲、好ましくは60~210kg/mの範囲、より好ましくは100~170kg/mの範囲のかさ密度を有する。
【0062】
工程d)
工程d)では、発泡フォームビーズ(EFB)を熱溶着し、パーティクルフォーム(PF)を構築し、また、複合物品を得る。
【0063】
本発明でいうパーティクルフォーム(PF)とは、発泡フォームビーズ(EFB)同士が結合した発泡体である。
【0064】
熱溶着操作は、スチーム、マイクロ波、バリオサーム(variotherm)又は高周波によって、好ましくはスチームによって実施することができる。
【0065】
本明細書で使用する場合、「バリオサームによる」という表現は、熱溶着を強制的な動的温度曲線の下で実施することを意味する。
【0066】
好ましくは、工程d)の熱溶着は、発泡フォームビーズ(EFB)の軟化温度Tを超える第1の温度Tで発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮することによって実施する。
【0067】
工程d)における第1の温度Tは、好ましくは90~200℃の範囲、より好ましくは100~170℃の範囲、最も好ましくは110~140℃の範囲である。
【0068】
発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮するために、好適な実施形態では、工程b)と工程c)との間で、型(M)固定部分(FP)と可動部分(MP)との間に隙間(crack)(C)ができるように可動部分(MP)を移動することによって型(M)を部分的に閉鎖する工程e2)を実施する。ここで隙間(C)の厚さは5~24mmの範囲であることが好ましい。
【0069】
この場合、発泡体の密度を調整することができる可変容量(variable volume)があり、これは、発泡フォームビーズ(EFB)を、隙間(C)を通して蒸煮することが好ましいことを意味する。
【0070】
この実施形態では、工程d)による発泡フォームビーズ(EFB)の蒸煮は、下記の工程d1)~d4)、すなわち、
d1)隙間(C)を通して発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、ここで、
蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側に供給し、固定部分(FP)の側の型(M)から排出させる、工程、又は
蒸気を型(M)の固定部分(FP)の側に供給し、可動部分(MP)の側の型(M)から排出させる、工程、又は
蒸気を可動部分(MP)の側と固定部分(FP)の側に続いて供給し、それぞれ、固定部分(FP)の側と可動部分(MP)の側の型(M)から続いて排出させる、工程、
d2)型(M)の可動部分(MP)をさらに移動させることにより、型(M)を完全に閉じる工程、
d3)発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の固定部分(FP)の側に供給する、工程、又は
発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側に供給する、工程、又は
発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側と固定部分(FP)の側とに続いて供給する、工程、及び
d4)発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の固定部分(FP)の側と可動部分(MP)の側とに同時に供給する、工程
を含むことが好ましい。
【0071】
本発明との関連において、工程d1)に係る表現「蒸気を可動部分(MP)の側と固定部分(FP)の側に続いて供給し、それぞれ、固定部分(FP)の側と可動部分(MP)の側の型(M)から続いて排出させる工程」は、最初に、蒸気を型(M)の固定部分(FP)の側に供給し、型(M)の可動部分(MP)の側の型(M)から排出させ、その後、蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側に供給し、型(M)の固定部分(FP)の側の型(M)から排出させること、
又は
最初に、蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側に供給し、型(M)の固定部分(FP)の側の型(M)から排出させ、その後、蒸気を型(M)の固定部分(FP)側に供給し、型(M)の可動部分(MP)の側の型(M)から排出させること、のいずれかを意味する。
【0072】
本発明との関連において、工程d3)に係る表現「可動部分(MP)の側と固定部分(FP)の側とに続いて供給する」は、最初に、蒸気を型(M)の固定部分(FP)の側に供給し、その後、蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側に供給すること、
又は
最初に、蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側に供給し、その後、蒸気を型(M)の固定部分(FP)の側に供給すること、のいずれかを意味する。
【0073】
工程d1)による蒸煮は、隙間(crack)蒸煮(クラックスチーミング)とも呼ばれる。また、工程d3)による蒸煮は、クロス蒸煮とも呼ばれ、工程d4)による蒸煮は、オートクレーブ蒸煮とも呼ばれる。
【0074】
工程d1)では、発泡フォームビーズ(EFB)を、固定部分(FP)の側及び/又は可動部分(MP)の側で、好ましくは、0.7~2.0バールの範囲の蒸気圧で、より好ましくは1.2~1.8バールの範囲の蒸気圧で蒸煮する。好ましくは3~30秒の範囲の時間、より好ましくは10~20秒の範囲の時間、隙間(C)を通して蒸煮する。
【0075】
工程d3)では、発泡フォームビーズ(EFB)は、好ましくは、固定部分(FP)の側で、1.1~3.5バールの範囲、より好ましくは1.1~1.5バールの範囲の蒸気圧で蒸煮する。さらに、工程d3)において、発泡フォームビーズ(EFB)は、好ましくは、可動部分(MP)の側で、1.1~3.5バールの範囲、より好ましくは1.5~3.0バールの範囲の蒸気圧で蒸煮する。好ましくは、3~60秒の範囲の時間、より好ましくは、5~40秒の範囲の時間、蒸煮する。
【0076】
また、工程d4)では、発泡フォームビーズ(EFB)は、好ましくは1.3~3.5バールの範囲、より好ましくは1.7~3.0バールの範囲の絶対蒸気圧で蒸煮する。好ましくは3~80秒の範囲の時間、好ましくは10~60秒の範囲の時間の間、蒸煮する。
【0077】
発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮するために、さらに好適な実施形態では、工程b)と工程c)の間で、型(M)の可動部分(MP)を移動することによって型(M)を完全に閉じる工程e1)を実施し、工程d)による発泡フォームビーズ(EFB)の蒸煮は以下の工程d3)及びd4)、
d3)発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の固定部分(FP)の側に供給する、工程、又は
発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側に供給する、工程、又は
発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側と固定部分(FP)の側とに続いて供給する、工程、及び
d4)発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を、型(M)の固定部分(FP)の側と可動部分(MP)の側とに同時に供給する、工程、
を含む。
【0078】
この実施形態では、工程d3)及びd4)に関して上述した実施形態及び好ましい事項が類推して適用される。発泡フォームビーズ(EFB)の量は、この場合、充填圧力によって調節する。
【0079】
工程d)の後、型(M)は、好ましくは10~30℃、より好ましくは15~25℃の範囲の温度を有する水で、好ましくは1~5分の範囲の時間、冷却する。
【0080】
また、本発明は、上記の方法により得た複合物品を提供するものである。
【0081】
また、本発明は、構造化多孔質体(PB)及びパーティクルフォーム(PF)を含む複合物品を提供する。この複合物品については、上述の方法によって得られる複合物品(請求項14に係るもの)及びその製造のための方法(請求項1に係る)に関する上述の実施形態及び好適事項が類推して適用される。しかしながら、複合物品は、下記の工程a)~d)、すなわち、
a)構造化多孔質体(PB)を用意する工程、
b)工程a)で用意した構造化多孔質体(PB)を型(M)に挿入する工程、
c)発泡フォームビーズ(EFB)が互いに接触し、構造化多孔質体(PB)が少なくとも部分的に発泡フォームビーズ(EFB)と接触するように、発泡フォームビーズ(EFB)を型(M)に充填する工程、及び
d)発泡フォームビーズ(EFB)を接着し(gluing)、パーティクルフォーム(PF)を構築し、複合物品を得る工程、
を含む方法によって製造することもできる。
【0082】
しかし、パーティクルフォームを構築するためにハイブリッド技術を使用することも可能であり、この場合、ハイブリッド技術は熱溶着と接着を含む。
【0083】
好ましくは、複合物品に含まれる構造化多孔質体(PB)は三次元(3D)印刷法によって得られ、また、複合物品に含まれるパーティクルフォーム(PF)は熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリスチレン(PS)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリオレフィン又はこれらの混合物を含むものである。
【0084】
本発明の複合物品の密度は、200~500kg/mの範囲、好ましくは250~450kg/mの範囲、より好ましくは300~450kg/mの範囲にある。
【0085】
本発明の複合材料は、靴産業(例えばランニングシューズ、安全靴)、スポーツ・レジャー分野(例えば自転車のサドル)、車両製造(例えば調度品、シート)、医療分野(例えば義肢、プロテーゼ)、機械工学、物流分野で使用することができる。
【0086】
したがって、本発明のさらなる主題は、靴産業、スポーツ及びレジャー分野、車両製造、医療分野、機械工学及び物流分野での本発明の複合物品の使用である。
【0087】
構造化多孔質体(PB)とフォーム(F)とを含む複合物品
本発明のさらなる主題は、構造化多孔質体(PB)及びフォーム(F)を含む複合物品であって、構造化多孔質体(PB)及びフォーム(F)がそれぞれ同じポリマー(P)を含むものである、複合物品である。特に指示がない限り、「構造化多孔質体PB」又は「フォーム(F)」などの用語は、本発明の上記の主題について説明したように、本発明のこの主題に対しても同じ意味(好ましい事項も含めて)を有する。
【0088】
好適な実施形態において、構造化多孔質体(PB)及びフォーム(F)は、各々が、少なくとも50質量%のポリマー(P)、好ましくは少なくとも70質量%のポリマー(P)、より好ましくは少なくとも90質量%のポリマー(P)を含む。
【0089】
より好適な実施形態では、構造化多孔質体(PB)及びフォーム(F)は、それぞれ、本質的に同じポリマー(P)からなる。
【0090】
本ケースにおける「各々が本質的にからなる(each consist essentially of)」という用語は、構造化多孔質体(PB)及びフォーム(F)が、各々、98質量%を超える、好ましくは99質量%を超える、より好ましくは99.5質量%を超える、同じポリマー(P)を含むことを意味していると理解される。
【0091】
好適な実施形態においては、溶媒(S)は同一のポリマー(P)からなる。
【0092】
また、ポリマー(P)が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン及びポリスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性又は熱硬化性のポリマー(P)であることが好ましい。
【0093】
また、構造化多孔質体(PB)について、
i)構造化多孔質体は節点の三次元ネットワークと空隙体積を具備し、節点は支柱によって互いに結合され、空隙体積は支柱の間に存在する、及び/又は、
ii)構造化多孔質体は三次元(3D)印刷法によって製造される、及び/又は
iii)構造化多孔質体は格子又は三重周期極小表面(TPMS)である、
ことが好ましい。
【0094】
また、3D印刷法が焼結法、好ましくは選択的レーザー焼結法(SLS)又はマルチジェットフュージョン法(MJF)であることが好適である。
【0095】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例
【0096】
本発明の実施例E1及びE2
複合物品の製造
工程a)(構造化多孔質体(PB)の準備)
Rhino/Grasshopperで設計された2つの格子を生成した。そこで、200x200x20mmの空間をダイヤモンド型構造の図で埋め、異なる直径を適用した。例えば、ダイヤモンド格子(D 1mm)の場合、直径1mmをその図に適用した。この構造をエクスポートした後、これを、HP5200MJFプリンターと熱可塑性ポリウレタンパウダー(Ultrasint(登録商標)TPU01,BASFSE社製)を用いて3Dプリントした。プリントした後、格子を乾燥空気とサンドブラストで洗浄した。
【0097】
生成した格子を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
工程b)(構造化多孔質体(PB)の挿入)
複合物品の製造には、Kurtz Ersa GmbH社のBoost Energy Foamer K68型スチームチェスト成形機を使用した。この機械には、固定部分(FP)と可動部分(MP)から構成された二次試験板モールド型(M)(寸法:200x200x20mm)が装備されていた。3Dプリントした格子を、それぞれ型(M)の固定部分(FP)に挿入した。
【0100】
工程e2)(型(M)の部分的閉鎖)
それぞれの格子を型(M)の固定部分(FP)に挿入した後、型(M)の可動部分(MP)を移動させて、型(M)の固定部分(FP)と可動部分(MP)の間に隙間(crack)(C)ができるように型(M)を一部閉じた。
【0101】
工程c)(型(M)の充填)
次に、型(M)に、発泡フォームビーズ(EFB)(発泡熱可塑性ポリウレタンフォームビーズInfinergy200MP、BASF SE社製)を、発泡フォームビーズ(EFB)が互いに接触し、かつ、格子が発泡フォームビーズ(EFB)と少なくとも部分的に接触するように充填した。
【0102】
工程d1)(隙間蒸煮)
型(M)に発泡フォームビーズ(EFB)を充填した後、隙間(C)を通して発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮した。この場合、蒸気は型(M)の可動部分(MP)の側に供給し、固定部分(FP)の側の型(M)から排出する。
【0103】
工程d2)
その後、さらに型(M)の可動部分(MP)を移動させることにより、型(M)を完全に閉じた。
【0104】
工程d3)(クロス蒸煮)
型(M)を完全に閉じた後、発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮した。この場合、蒸気を型(M)の固定部分(FP)の側に供給する。
【0105】
工程d4)(オートクレーブ蒸煮)
クロス蒸煮の後、発泡フォームビーズ(EFB)を再び蒸煮した。この場合、蒸気は、型(M)の固定部分(FP)の側と可動部分(MP)の側とに同時に供給する。
【0106】
比較例C1、C2、及びC3
参考として、純粋なパーティクルフォーム(PF)物品を、工程e2)、c)、d1)、d2)、d3)及びd4)を具備する方法によって製造した。なお、これは、構造化多孔質体(PB)を型(M)に挿入しなかったことを意味する。
【0107】
表2には、さまざまな(複合)物品の組成、隙間厚さ(C)、隙間蒸気圧、隙間蒸煮時間、クロス蒸気圧、クロス蒸気時間、オートクレーブ蒸気圧、オートクレーブ蒸気時間を示す。
【0108】
【表2】
【0109】
冷却水の温度は17~23℃である。
【0110】
(複合)物品の特性評価
試験前に、標準化した気候条件(23±2℃、50±5%の湿度)下で、(複合)物品を少なくとも16時間保管した。また、試験についても、標準化した気候条件下で実施した。
【0111】
密度及び密度分布Δ:
(複合)物品からバンドソーで50×50mmの試験片を6枚切り出した。試験片は、図1に示す位置から採取した。(複合)物品は、型(M)の固定部分(FP)の中にまだあるような視点から示されている。
【0112】
各試料について、質量(精密目盛;精度:±0.001g)と寸法(長さ、厚さ及び幅、ノギス;精度:±0.01mm、接触圧100Pa、値は試料の中央で1回のみ測定)を求めることにより、密度を算出した。すべての試験片の密度分布Δは、標準偏差σと平均値
【数1】
(式1~3)を用いて計算した。
【0113】
【数2】
【0114】
式中、nは試験片の数(n=6)、xは個々の試験片について計算した密度である。
【0115】
圧縮硬度:
(複合)物品の圧縮挙動を測定するために、50x50mmx元の板厚(一般に20mmだが、板厚は収縮によりわずかに変化する可能性があり、表皮は除去していない)の寸法を持つ試験片を(複合)物品からバンドソーで採取した。試験片は、図1に示したのと同じ位置から採取した。
【0116】
各試料について、質量(精密スケール、精度±0.001g)、長さ及び幅(ノギス、精度±0.01mm、接触圧100Pa、値は試料片の中央で1回だけ測定)を測定した。
【0117】
その後、50kNの力変換器(DIN EN ISO7500-1:2018-06によるクラス1)、クロスヘッドトラベルエンコーダ(DIN EN ISO9513:2013によるクラス1)、穴のない2枚の平行圧力板(直径2000mm、最大許容力250kN、最大許容面圧300N/mm)で圧縮挙動を測定した。試験片の密度を決定するために、測定した質量、長さ及び幅を、Zwick社製の試験機のソフトウェアの試験仕様に入力した。試験片の厚さは、万能試験機でトラバースパス測定システム(精度±0.25mm)を使って測定した。
【0118】
測定自体は、試験速度50mm/分、予力1Nで行った。10、25、50、75%のスティント(stint)で力(単位kPa)を記録した。1サイクル目の値を評価用に使用した。75%での圧縮硬度を評価するためには、試料を76%まで圧縮する必要がある。
【0119】
試験結果を表3にまとめた。
【0120】
油圧衝撃試験(HIT):
動的条件下での圧縮挙動は、Brueckner et al., Polyurethane-foam midsoles in running shoes - Impact energy and damping, Procedia engineering、2(短期試験(100負荷サイクル)用)に準拠したHIT手順を用いて、全体の(複合)物品(寸法200x200mmx板の元の厚さ(一般的には20mm、ただし、その厚みは収縮により若干変化することがある、表皮は除去していない))について測定した。
【0121】
測定は、サーボ油圧式引張圧縮試験機を用いて実施した。試験装置はクラウン付きパンチ穿孔機からなり、この穿孔機は試験対象の(複合)物品の固定台座に対して90°の角度で配置されている。荷重スペクトルは、歩行中に発生する地面反動力の測定値から導き出される。得られた曲線の解析から、3.5±0.1m/秒の走行速度で地面を蹴るとき、ランナーの後足には体重の約2倍の負荷がかかっていることが分かる。これらの結果に従って、試験機には力-時間曲線がプロットされる。これは、平均的なランナーに発生する生体力学的負荷の最初の力のピーク(後足の接地)を反映している。ランニングシューズの機械的な試験は、試験担当者による試験と比較して、信頼性が高く、時間消費が大幅に少ないことに基づいている。この機械的試験の目的は、後足が地面に接触している間の垂直力成分を現実的に再現することに限定されている。
【0122】
短期試験は、100回の負荷サイクルで行う。その結果は、100サイクル目の力と変形曲線(周波数100Hzで記録)であり、図3に示されている。ランニングシューズでは、以下の4つのパラメータが評価の対象となり、図2に示す。すなわち、
-剛性I:ランニングシューズが静止しているときに感じる硬さを表すパラメータ。平均的なランナー75kgの質量の0.5倍を基準として、200~400Nの間でランニングシューズについて測定される値である。
-剛性II:一歩の着地段階で感じるランニングシューズの硬さを表すパラメータ。これは、1,000~1,500Nのランニングシューズに対して測定される。
-エネルギー損失:導入されたエネルギーのうち、素材に吸収され、熱として放散される(エネルギーの)割合。エネルギー損失は、負荷段階と非負荷段階の力-変形曲線(ヒステリシス曲線)での面積の差から算出する。
-最大変形量:最大のパンチ貫通深さ
この方法はランニングシューズに特化して開発されたものであるが、(複合)物品のような試験板に基づく新素材の初期特性評価にも使用することができる。靴の用途では、一般的に、ランニングシューズに特有のパラメータがすべて注目され重要である。しかし、当該材料を減衰(dampling)要素又は振動デカップリング(decoupling)要素として使用する他の用途でも、この試験はエネルギー損失を調査するのに特に興味深いものである。
【0123】
試験結果を表4にまとめて示す。
【0124】
【表3】
【0125】
表3から分かるように、直径に勾配がある格子を使用することで、剛性勾配を達成することができる。これにより、最も硬い試験片の50%圧縮時の圧縮硬度は、1枚の板で試験した最も柔らかい試験片の値より105%高くすることができるが、この場合、最も硬い試験片の密度は最も柔らかい試験片と比較して24%高いだけである。75%圧縮の場合、その効果はさらに大きくなり、最も高い圧縮硬度は最も低い圧縮硬度に比べて187%も増加している。
【0126】
【表4】
【0127】
この測定では、純粋なインサートは非常に柔軟な発泡体の挙動を示し、すなわち、この材料は低い力でも高い圧縮性を示し、さらに高い圧縮性では剛性が急激に上昇する。したがって、格子(Lat 1)は、E-TPU(C4及びC5)と比較して、すでに高い「剛性I」とはるかに高い「剛性II」を示す。しかし、E-TPUと格子との組合せは、純粋なE-TPUと同様の力たわみ曲線を示し、E-TPUと比較して「剛性I」はほとんど変化しない、つまり、靴を履くときに同じ感覚を持つことになる。しかし、同じ密度で、より高い「剛性II」を実現することができる。柔らかすぎる(剛性II)E-TPU靴底ソールは、歩行時に不安定と感じる人が多い。そこで、靴を重くすることなく、より高い安定性を有する靴を実現することができる。また、例えばグリッド単体では減衰値が非常に高いものの、グリッドの挿入によってもエネルギー損失及び減衰性はほとんど変化しない。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-08-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化多孔質体(PB)とパーティクルフォーム(PF)とを含む複合物品を製造する方法であって、該方法は以下の工程a)~d)
a)構造化多孔質体(PB)を用意する工程、
b)工程a)で用意した構造化多孔質体(PB)を型(M)に挿入する工程、
c)発泡フォームビーズ(EFB)が互いに接触し、構造化多孔質体(PB)が少なくとも部分的に発泡フォームビーズ(EFB)と接触するように、発泡フォームビーズ(EFB)を型(M)に充填する工程、及び
d)発泡フォームビーズ(EFB)を熱溶着する工程であって、パーティクルフォーム(PF)を構築し、複合物品を得る、工程、
を含み、該発泡フォームビーズ(EFB)が熱可塑性エラストマー(TPE)を含む、方法。
【請求項2】
前記構造化多孔質体(PB)が、
i)耐衝撃性改質ビニル-芳香族コポリマー、熱可塑性スチレン系エラストマー(S-TPE)、ポリオレフィン(PO)、脂肪族-芳香族コポリエステル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリスルホン及びポリイミド(PI)からなる群、好ましくは、熱可塑性スチレン系エラストマー(S-TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)及びポリアミドからなる群、特に好ましくは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)からなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性又は熱硬化性ポリマー(TP)を含むものであり、及び/又は
ii)節点と空隙体積の三次元ネットワークを具備しており、節点は支柱によって互いに結合され、空隙体積は支柱の間に存在する、及び/又は、iii)三次元(3D)印刷法によって製造したものであり、及び/又は
iv)格子又は三重周期極小表面(TPMS)であり、好ましくは格子であり、及び/又は
v)型(M)に、好ましくは型(M)の固定部分(FP)又は可動部分(MP)に正確に嵌合するか、又は、型(M)の、好ましくは型の固定部分(FP)又は可動部分(MP)の一部のみを充填するものである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発泡フォームビーズ(EFB)が、
)熱可塑性ポリウレタンを含み、及び/又は
ii)0.2~20mm、好ましくは0.5~15mm、特に1~12mmの平均直径を有し、及び/又は
iii)≦300℃、好ましくは≦250℃、特に≦220℃の融点TM(EFB)を有する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記3D印刷法が焼結法、好ましくは選択的レーザー焼結法(SLS)又はマルチジェットフュージョン法(MJF)である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記焼結法が以下の工程i)及びii)、
i)好ましくは、耐衝撃性改質ビニル-芳香族コポリマー、熱可塑性スチレン系エラストマー(S-TPE)、ポリオレフィン(PO)、脂肪族-芳香族コポリエステル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリスルホン及びポリイミド(PI)からなる群、より好ましくは、熱可塑性スチレン系エラストマー(S-TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)及びポリアミドからなる群、特に好ましくは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)からなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性又は熱硬化性ポリマー(TP)を含む、焼結粉末(SP)の層を用意する工程、及び
ii)工程i)で用意した焼結粉末(SP)の層を焼結させる工程
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記発泡フォームビーズ(EFB)を、蒸気、マイクロ波、バリオサーム又は高周波によって、好ましくは蒸気によって、熱溶着する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記型(M)が固定部分(FP)と可動部分(MP)とを備え、工程b)では、前記構造化多孔質体(PB)を型(M)の固定部分(FP)又は可動部分(MP)のいずれかに挿入する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程d)において、前記発泡フォームビーズ(EFB)の軟化温度Tを超える第1の温度Tで発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮することによって、熱溶着を行う、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程d)において、前記第1の温度Tが、90~200℃の範囲、好ましくは100~170℃の範囲、より好ましくは110~140℃の範囲である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程b)と工程c)の間で、型(M)の固定部分(FP)と可動部分(MP)の間に隙間(C)ができるように可動部分(MP)を移動させて型(M)を部分的に閉鎖する工程e2)を実施し、隙間(C)の厚さは好ましくは5~24mmの範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程d)による前記発泡フォームビーズ(EFB)の蒸煮が、以下の工程d1)~d4)、
d1)隙間(C)を通して前記発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、ここで、
蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側に供給し、固定部分(FP)の側で型(M)から排出させ、又は
蒸気を型(M)の固定部分(FP)の側に供給し、可動部分(MP)の側で型(M)から排出させ、又は
蒸気を可動部分(MP)の側と固定部分(FP)の側に続いて供給し、それぞれ、固定部分(FP)の側と可動部分(MP)の側で型(M)から続いて排出させる、工程、
d2)型(M)の可動部分(MP)をさらに移動させることにより、型(M)を完全に閉じる工程、
d3)前記発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の固定部分(FP)の側に供給する、工程、又は
前記発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側に供給する、工程、又は
前記発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側と固定部分(FP)の側とに続いて供給する、工程、及び
d4)発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を、型(M)の固定部分(FP)の側と可動部分(MP)の側とに同時に供給する、工程、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
i)工程d1)で、前記発泡フォームビーズ(EFB)を、固定部分(FP)の側及び/又は可動部分(MP)の側において、0.7~2.0バールの範囲、好ましくは1.2~1.8バールの範囲の蒸気圧で蒸煮し、及び/又は
ii)工程d1)で、前記発泡フォームビーズ(EFB)を、3~30秒の範囲の時間、好ましくは10~20秒の範囲の時間、蒸煮し、及び/又は
iii)工程d3)で、前記発泡フォームビーズ(EFB)を、固定部分(FP)の側で、1.1~3.5バールの範囲、好ましくは1.1~1.5バールの範囲の蒸気圧で蒸煮し、及び/又は
iv)工程d3)で、前記発泡フォームビーズ(EFB)を、可動部分(MP)の側で、1.1~3.5バールの範囲、好ましくは1.5~3.0バールの範囲の蒸気圧で蒸煮し、及び/又は
v)工程d3)で、前記発泡フォームビーズ(EFB)を、3~60秒の範囲の時間、好ましくは5~40秒の範囲の時間、蒸煮し、及び/又は
vi)工程d4)において、前記発泡フォームビーズ(EFB)を、1.3~3.5バールの範囲、好ましくは1.7~3.0バールの範囲の絶対蒸気圧で蒸煮し、及び/又は
vii)工程d4)において、前記発泡フォームビーズ(EFB)を、3~80秒の範囲の時間、好ましくは10~60秒の範囲の時間、蒸煮する、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記工程b)と工程c)との間で、型(M)の可動部分(MP)を移動することによって型(M)を完全に閉じる工程e1)を実施し、工程d)による前記発泡フォームビーズ(EFB)の蒸煮が以下の工程d3)及びd4)、
d3)前記発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の固定部分(FP)の側に供給する、工程、又は、
前記発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側に供給する、工程、又は、
前記発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を型(M)の可動部分(MP)の側と固定部分(FP)の側とに続いて供給する、工程、及び
d4)前記発泡フォームビーズ(EFB)を蒸煮する工程であって、蒸気を、型(M)の固定部分(FP)の側と可動部分(MP)の側とに同時に供給する、工程
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法により得た複合物品。
【請求項15】
構造化多孔質体(PB)とパーティクルフォーム(PF)とを含む複合物品であって、前記構造化多孔質体(PB)が三次元(3D)印刷法によって得たものであり、前記パーティクルフォーム(PF)が熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリスチレン(PS)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリオレフィン又はこれらの混合物を含複合物品
【請求項16】
靴産業、スポーツ及びレジャー分野、車両製造、医療分野、機械工学及び物流分野における、請求項14又は15に記載の複合物品の使用方法。
【請求項17】
構造化多孔質体(PB)及びパーティクルフォーム(F)を含む複合物品であって、前記構造化多孔質体(PB)及び前記パーティクルフォーム(F)がそれぞれ同じポリマー(P)を含み、前記パーティクルフォーム(PF)が熱可塑性エラストマー(TPE)を含む、複合物品。
【請求項18】
前記構造化多孔質体(PB)及び前記パーティクルフォーム(F)がそれぞれ同じポリマー(P)からなる、請求項17に記載の複合物品。
【国際調査報告】