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特表2023-552291耐クラック性フルオロアニールド膜でコーティングされた物品、および作製方法
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  • 特表-耐クラック性フルオロアニールド膜でコーティングされた物品、および作製方法 図1
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  • 特表-耐クラック性フルオロアニールド膜でコーティングされた物品、および作製方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】耐クラック性フルオロアニールド膜でコーティングされた物品、および作製方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/08 20060101AFI20231208BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20231208BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
C23C14/08
C23C14/34
H01L21/302 101H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530078
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 US2021059435
(87)【国際公開番号】W WO2022108888
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/115,375
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グンダ,ニレシュ
(72)【発明者】
【氏名】ラオ, チーチュン
(72)【発明者】
【氏名】アンジェローニ, サミュエル ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ネフ,ウルフラム
【テーマコード(参考)】
4K029
5F004
【Fターム(参考)】
4K029AA06
4K029AA07
4K029BA02
4K029BA42
4K029BA43
4K029CA06
4K029DC35
4K029GA01
5F004AA15
5F004BB12
5F004BB29
5F004CA03
5F004DA04
(57)【要約】
優れたプラズマエッチ耐性を有し、RIE構成要素の寿命を長くすることができるコーティングに関係する物品および方法が、提供される。物品は、真空適合性基板と、基板の少なくとも一部分の上にある保護膜とを有する。膜は、イットリウムを含んでいるフッ素化金属酸化物を含み、酸化イットリウムが、AC電源を使用して堆積される。膜は、膜の総厚さの30%の深さにおいて少なくとも10のフッ素原子%を有し、膜は、1000xの倍率において膜の全深さを観察するためにレーザー共焦点顕微鏡を使用したときに可視の、膜の表面の下方の表面下クラックを有さない。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の少なくとも一部分の上にある保護膜と
を備え、
前記膜が、イットリウムを含んでいるフッ素化金属酸化物を含み、
前記膜が、前記膜の総厚さの30%の深さにおいて少なくとも10のフッ素原子%を有し、および
前記膜が、1000xの倍率において前記膜の全深さを観察するためにレーザー共焦点顕微鏡を使用したときに可視の、前記膜の表面の下方の表面下クラックを有さない、
物品。
【請求項2】
フルオロアニーリングの後に、前記膜が、400xの倍率においてレーザー共焦点顕微鏡を用いて前記膜の前記表面を観察したときに可視の、前記膜の前記表面上の表面クラックを有さない、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記基板が、アルミナである、請求項1または2に記載の物品。
【請求項4】
前記基板が、シリコンである、請求項1または2に記載の物品。
【請求項5】
前記膜が、前記膜の前記総厚さの30%の深さにおいて少なくとも20のフッ素原子%を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記膜が、前記膜の前記総厚さの30%の深さにおいて少なくとも30のフッ素原子%を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記膜が、前記膜の前記総厚さの50%の深さにおいて少なくとも10のフッ素原子%を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記膜が、前記膜の前記総厚さの50%の深さにおいて少なくとも20のフッ素原子%を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記膜が、前記膜の前記総厚さの50%の深さにおいて少なくとも30のフッ素原子%を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
交流(AC)電源を使用して物理的気相堆積技法を使用して、イットリウムを含んでいる金属酸化物を基板の上に堆積させることであって、前記金属酸化物が、前記基板の上にある膜を形成する、金属酸化物を基板の上に堆積させることと、
前記膜をフルオロアニールすることと
を含み、
フルオロアニーリングの後に、前記膜が、前記膜の総厚さの30%の深さにおいて少なくとも10のフッ素原子%を有する、
方法。
【請求項11】
フルオロアニーリングの後に、前記膜が、400xの倍率においてレーザー共焦点顕微鏡を用いて前記膜の表面を観察したときに可視の、前記膜の前記表面上の表面クラックを有さない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
フルオロアニーリングの後に、前記膜が、1000xの倍率において前記膜の全深さを観察するためにレーザー共焦点顕微鏡を使用したときに可視の、前記膜の前記表面の下方の表面下クラックを有さない、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
フルオロアニーリングの後に、前記膜が、前記膜の前記総厚さの30%の深さにおいて少なくとも20のフッ素原子%を有する、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
フルオロアニーリングの後に、前記膜が、前記膜の前記総厚さの30%の深さにおいて少なくとも30のフッ素原子%を有する、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
フルオロアニーリングの後に、前記膜が、前記膜の前記総厚さの50%の深さにおいて少なくとも20のフッ素原子%を有する、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
フルオロアニーリングの後に、前記膜が、前記膜の前記総厚さの50%の深さにおいて少なくとも30のフッ素原子%を有する、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記フルオロアニーリングが、フッ素含有雰囲気中で約300℃から約650℃の温度において実施される、請求項10から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記基板が、アルミナである、請求項10から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記基板が、シリコンである、請求項10から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項10から19のいずれか一項に記載のプロセスに従って作製された物品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
反応性イオンエッチング(RIE)は、半導体製造プロセスにおいて使用されるエッチング技術である。RIEは、ウエハ上に堆積された材料を取り除くために、反応ガス(たとえば、フッ素、塩素、臭素、酸素、またはそれらの組合せを含んでいるガス)をイオン化することによって生成された化学反応プラズマを使用する。しかしながら、プラズマは、ウエハ上に堆積された材料だけでなく、RIEチャンバの内部に取り付けられた構成要素をも侵食する。そのうえ、RIEチャンバの中に反応ガスを供給するために使用される構成要素も、反応ガスによって腐食され得る。プラズマおよび/または反応ガスによって構成要素に対して引き起こされた損傷は、低い生産収率、プロセス不安定性、および汚染を生じることがある。
【0002】
半導体製造エッチチャンバは、下にある構成要素の劣化を低減するために、エッチプロセス一貫性を改善するために、およびエッチチャンバにおける粒子生成を低減するために、化学的に耐性がある材料でコーティングされた構成要素を使用する。化学的に耐性があるにもかかわらず、コーティングは、水または他の溶液と組み合わせられたエッチャントガスが、コーティングを劣化させる腐食性状態、たとえば、塩酸を作り出す、清浄化および定期保守中に劣化を受けることがある。腐食性状態は、コーティングされた構成要素の耐用寿命を縮めることがあり、また、構成要素がチャンバ中に再び取り付けられるとき、エッチチャンバ汚染につながり得る。エッチチャンバ構成要素のための改善されたコーティングに対する継続したニーズがある。
【発明の概要】
【0003】
優れたプラズマエッチ耐性を有し、RIE構成要素の寿命を長くすることができるコーティングに関係する物品および方法が、提供される。コーティングはまた、最小~皆無の、コーティングの表面上の可視表面クラック、またはコーティング内の可視表面下クラックを有する。
【0004】
本開示の第1の態様では、物品は、基板と、基板の少なくとも一部分の上にある保護膜とを備え、膜が、イットリウムを含んでいるフッ素化金属酸化物を含み、膜が、膜の総厚さの30%の深さにおいて少なくとも10のフッ素原子%を有し、および膜が、1000xの倍率において膜の全深さを観察するためにレーザー共焦点顕微鏡を使用したときに可視の、膜の表面の下方の表面下クラックを有さない。
【0005】
第1の態様による第2の態様では、フルオロアニーリングの後に、膜は、400xの倍率においてレーザー共焦点顕微鏡を用いて膜の表面を観察したときに可視の、膜の表面上の表面クラックを有さない。
【0006】
第1または第2の態様による第3の態様では、基板は、アルミナである。
【0007】
第1または第2の態様による第4の態様では、基板は、シリコンである。
【0008】
いずれかの先行する態様による第5の態様では、膜は、膜の総厚さの30%の深さにおいて少なくとも20のフッ素原子%を有する。
【0009】
いずれかの先行する態様による第6の態様では、膜は、膜の総厚さの30%の深さにおいて少なくとも30のフッ素原子%を有する。
【0010】
いずれかの先行する態様による第7の態様では、膜は、膜の総厚さの50%の深さにおいて少なくとも10のフッ素原子%を有する。
【0011】
いずれかの先行する態様による第8の態様では、膜は、膜の総厚さの50%の深さにおいて少なくとも20のフッ素原子%を有する。
【0012】
いずれかの先行する態様による第9の態様では、膜は、膜の総厚さの50%の深さにおいて少なくとも30のフッ素原子%を有する。
【0013】
本開示の第10の態様では、方法は、交流(AC)電源を使用して物理的気相堆積技法を使用して、イットリウムを含んでいる金属酸化物を基板の上に堆積させることであって、金属酸化物が、基板の上にある膜を形成する、金属酸化物を基板の上に堆積させることと、膜をフルオロアニールすることとを含み、フルオロアニーリングの後に、膜が、膜の総厚さの30%の深さにおいて少なくとも10のフッ素原子%を有する。
【0014】
第10の態様による第11の態様では、フルオロアニーリングの後に、膜は、400xの倍率においてレーザー共焦点顕微鏡を用いて膜の表面を観察したときに可視の、膜の表面上の表面クラックを有さない。
【0015】
第10または第11の態様による第12の態様では、フルオロアニーリングの後に、膜は、1000xの倍率において膜の全深さを観察するためにレーザー共焦点顕微鏡を使用したときに可視の、膜の表面の下方の表面下クラックを有さない。
【0016】
第10から第12の態様のいずれかによる第13の態様では、フルオロアニーリングの後に、膜は、膜の総厚さの30%の深さにおいて少なくとも20のフッ素原子%を有する。
【0017】
第10から第12の態様のいずれかによる第14の態様では、フルオロアニーリングの後に、膜は、膜の総厚さの30%の深さにおいて少なくとも30のフッ素原子%を有する。
【0018】
第10から第14の態様のいずれかによる第15の態様では、フルオロアニーリングの後に、膜は、膜の総厚さの50%の深さにおいて少なくとも20のフッ素原子%を有する。
【0019】
第10から第14の態様のいずれかによる第16の態様では、フルオロアニーリングの後に、膜は、膜の総厚さの50%の深さにおいて少なくとも30のフッ素原子%を有する。
【0020】
第10から第16の態様のいずれかによる第17の態様では、フルオロアニーリングは、フッ素含有雰囲気中で約300℃~約650℃の温度において実施される。
【0021】
第10から第17の態様のいずれかによる第18の態様では、基板は、アルミナである。
【0022】
第10から第17の態様のいずれかによる第19の態様では、基板は、シリコンである。
【0023】
第20の態様では、物品が、第10から第19の態様のいずれかのプロセスに従って作製される。
【0024】
上記のことは、類似の参照符号が、異なる図を通して同じ部分を指す添付の図面中で図示されているような、本開示の例示的な実施形態の以下のより詳細な説明から明らかになろう。図面は、必ずしも一定の縮尺であるとは限らず、代わりに、強調が、本開示の実施形態を図示するに際してなされる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】データのプロットを示す図であって、フッ素原子%がY軸上に示され、ミクロン単位での厚みの中への深さがX軸上に示されている、図である。
図2】走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影された、フルオロアニーリングの後の実施例1からのシリコンクーポンの断面図である。
図3】1000xの倍率においてキーエンスレーザー共焦点顕微鏡を用いて撮影された写真であって、実施例1において条件10を受けたフッ素化酸化イットリウム膜中の複数の表面クラックを示す、写真である。
図4】1000xの倍率においてキーエンスレーザー共焦点顕微鏡を用いて撮影された写真であって、実施例2において条件10を受けたフッ素化酸化イットリウム膜中に表面クラックがないことを示す、写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、本開示の例示的な実施形態を参照しながら詳細に示され、説明されるが、形態および詳細の様々な変更が、添付の特許請求の範囲によって包含される本開示の範囲から逸脱することなくその中で行われ得ることが、当業者によって理解されよう。
【0027】
様々な組成および方法が説明されるが、本開示は、説明される特定の分子、組成、設計、方法論またはプロトコルに、これらは変動し得るので、限定されないことを理解されたい。また、説明で使用される用語法は、特定の1つまたは複数のバージョンを説明するためのものにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図されず、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることを理解されたい。
【0028】
本明細書でおよび添付の特許請求の範囲において使用される、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「前記(the)」は、コンテキストが明らかに別段に規定しない限り、複数形の言及を含むことにも留意されなければならない。これにより、たとえば、「膜」への言及は、当業者に知られている1つまたは複数の膜およびそれらの等価物などへの言及である。別段に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で説明されるものと同様または等価な方法および材料が、本開示のバージョンの実践または試験において使用され得る。本明細書で述べられるすべての刊行物は、それらの全体が参照により組み込まれる。本明細書におけるいかなるものも、本開示が、先行する開示によってそのような開示に先行する権利を与えられないことを承認するものと解釈されるべきではない。「随意の(optional)」または「随意に(optionally)」は、続いて説明されるイベントまたは状況が生じることも生じないこともあること、およびイベントが生じるインスタンスとイベントが生じないインスタンスとを説明が含むことを意味する。本明細書におけるすべての数値は、明示的に指し示されるか否かにかかわらず、「約(about)」という用語によって修正され得る。「約」という用語は、概して、当業者が、具陳された値と等価(換言すれば、同じ機能または結果を有する)と見なすような数の範囲を指す。いくつかのバージョンでは、「約」という用語は、陳述された値の±10%を指し、他のバージョンでは、「約」という用語は、陳述された値の±2%を指す。組成および方法は、様々な構成要素またはステップを「備えること(comprising)」(「限定はしないが、含むこと(including)」を意味すると解釈される)に関して説明されるが、組成および方法はまた、様々な構成要素およびステップ「から本質的になる(consist essentially of)」またはそれらの構成要素およびステップ「からなる(consist of)」ことができ、そのような用語法は、本質的に閉じられた部材グループを定義すると解釈されるべきである。
【0029】
本開示の例示的な実施形態の説明が、以下に続く。
【0030】
イットリア(酸化イットリウム)を含むコーティングが、プラズマエッチング耐性を提供するために、RIE構成要素上で使用される。そのようなコーティングは、熱スプレー、エアゾール、物理気相堆積(PVD)、化学気相堆積(CVD)、および電子ビーム蒸発を含む、様々な方法によってRIE構成要素に塗布され得る。しかしながら、イットリアコーティングは、RIEチャンバおよび構成要素の保守中に塩化水素(HCl)によって腐食され得る。
【0031】
塩素プラズマRIEプロセスの後、残留塩素が、RIE構成要素上に残存する。構成要素が、保守中に脱イオン(DI)水によって清浄化されるとき、残留塩素およびDI水が、HClになり、HClは、イットリアコーティングを腐食し、イットリアコーティングが、次のRIEプロセス中に、下にある基板を保護するのを妨げることがある。加えて、RIEチャンバ中のイットリアコーティングは、プラズマエッチングプロセス中に微粒子化することがある。粒子は、シリコンウエハにかかり、製造された半導体デバイスの欠陥を引き起こし、ウエハ生産収率の損失を引き起こすことがある。
【0032】
本開示のバージョンは、膜の表面上の最小~皆無の表面クラックを有し、膜中の最小~皆無の表面下クラックを有する、イットリアおよびイットリウム酸化アルミニウムなど、金属酸化物イットリウム含有膜をフルオロアニールすることによって、RIE構成要素を保護するための改善された物品および方法を提供する。表面クラックおよび表面下クラックを有する以前の膜は、イットリア堆積プロセスが、パルス直流(DC)電源に依拠するとき、形成された。本明細書で開示される、イットリア堆積プロセス中の交流(AC)電源の使用は、予想外に、フルオロアニーリングプロセス中の表面クラックおよび表面下クラックの形成を最小限に抑えるかまたは防ぐことができる。本明細書で使用される、「表面クラック」は、400xの倍率においてレーザー共焦点顕微鏡を用いて膜の表面を観察したときに可視である、膜の表面上のクラックである。本明細書で使用される、「表面下クラック」は、1000xの倍率において膜の全深さを観察するためにレーザー共焦点顕微鏡を使用したときに可視である、膜の表面の下方のクラックである。
【0033】
フルオロアニーリングプロセスは、フッ素含有雰囲気中で300℃~650℃において膜をアニールすることによって、金属酸化物イットリウム含有膜の中にフッ素を導入することを含む。フルオロアニーリングプロセスの加熱ランプレートは、毎時50℃から毎時200℃の間であり得る。
【0034】
フルオロアニールドイットリア膜は、数個の利点を与え、高いフッ素プラズマエッチ耐性(たとえば、約0.1~約0.2ミクロン/時間)、高いウェット化学エッチ耐性(たとえば、5%のHClにおいて約5~約120分)、チャンバ構成要素に対する良好な接着(たとえば、約5N~約15Nの第2の臨界荷重(LC2)接着)、および共形コーティング能力を含む、数個の望ましい特性を有する。加えて、フルオロアニールドイットリア膜は、材料、機械的性質、および微細構造に関して調整可能である。イットリア、フルオロアニールドイットリア、またはイットリアとフルオロアニールドイットリアの両方の混合物を含む膜が、特定の適用例またはエッチング環境のニーズを満たすために、作り出され得る。たとえば、膜のフッ素含有量は、エネルギー分散分光法(EDS)プローブと組み合わせて走査電子顕微鏡(SEM)で測定されたときに約4原子パーセントから約60原子パーセントまでであるように操作され得、フッ素深さは、約0.5ミクロンから約20ミクロンまでであるように操作され得る。フッ素化イットリアのエッチ耐性は、膜中のフッ素含有量とともに増加する。AC電源を使用して堆積された、本明細書で開示されるフルオロアニールドイットリア膜は、(表面クラックおよび表面下クラックの両方に関する)優れたクラック耐性、およびDCまたはパルスDC電源を使用して堆積されたフルオロアニールドイットリア膜に対する、昇温における改善された結着性、という追加の利点をも与える。
【0035】
いくつかの実施形態では、イットリアは、交流(AC)電源を使用して基板上に堆積され、その後に、イットリアをイットリウムオキシフッ化物に、またはイットリアとイットリウムオキシフッ化物の混合物に変換するためのフルオロアニーリングプロセスが続く。イットリアおよび/またはイットリウムオキシフッ化物は、基板の上にあり、基板を保護する、膜を形成する。膜は、真空チャンバ中のエッチング環境と接触している最外層を提供する。
【0036】
イットリアおよびイットリウム酸化アルミニウムなど、イットリウムを含んでいている金属酸化物の膜が、最初に、基板上に堆積される。金属酸化物膜の堆積は、スパッタリングおよびイオンビーム支援堆積を含む、AC電源を使用する物理気相堆積(PVD)の様々な方法によって行われ得る。AC電源は、約30kHzから約100kHzまでの範囲内の周波数で動作させられ得る。堆積に続いて、膜は、フッ素を含んでいる環境において約300℃~約650℃においてフルオロアニールされる。フッ素化プロセスは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国公開番号第2016/0273095号において説明されているように実施され得る。フッ素化プロセスは、たとえば、アニーリングがその後に続くフッ素イオン注入、300℃以上におけるフッ素プラズマ処理、フルオロポリマー燃焼方法、昇温におけるフッ素ガス反応、およびフッ素ガスを用いたUV処理、または上記の任意の組合せを含む、数個の方法を使用して実施され得る。
【0037】
様々なフッ素源が、採用されるフルオロアニーリング方法に応じて使用され得る。フルオロポリマー燃焼方法の場合、フッ素ポリマー材料が、必要とされ、たとえば、PVF(ポリビニルフッ化物)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PFA、MFA(パーフルオロアルコキシポリマー)、FEP(フッ素化エチレン-プロピレン)、ETFE(ポリエチレンテトラフルオロエチレン)、ECTFE(ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン)、FFPM/FFKM(ペルフルオロ化エラストマー[パーフルオロエラストマー])、FPM/FKM(フルオロカーボン[クロロトリフルオロエチレンビニリデンフッ化物])、PFPE(パーフルオロポリエーテル)、PFSA(ペルフルオロスルホン酸)、およびパーフルオロポリオキセタンであり得る。
【0038】
アニーリングがその後に続くフッ素イオン注入、300℃以上でのフッ素プラズマ処理、昇温におけるフッ素ガス反応、およびフッ素ガスを用いたUV処理を含む、他のフルオロアニーリング方法の場合、フッ素化ガスおよび酸素ガスが、反応のために必要とされる。フッ素化ガスは、たとえば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF)、HF蒸気、NF3、およびフルオロポリマー燃焼からのガスであり得る。
【0039】
イットリアまたはイットリウム酸化アルミニウム膜は、好ましくは、構造が柱状であり、それにより、構造は、フッ素がフルオロアニーリングプロセス中に粒子境界を通って膜に浸透することを可能にする。アモルファスイットリア(換言すれば、非柱状の、またはあまり柱状でない)構造は、フッ素がフルオロアニーリングプロセス中に容易に浸透することを可能にしない。
【0040】
本開示のフルオロアニールド膜は、半導体製造システムにおける構成要素など、真空適合性基板に塗布され得る。エッチチャンバ構成要素は、シャワーヘッド、シールド、ノズル、およびウィンドウを含むことができる。エッチチャンバ構成要素は、基板のためのステージ、ウエハハンドリング固定治具、およびチャンバライナをも含むことができる。チャンバ構成要素は、セラミック材料から作製され得る。セラミック材料の例は、アルミナ、炭化ケイ素、および窒化アルミニウムを含む。本明細書は、エッチチャンバ構成要素に言及するが、本明細書で開示される実施形態は、エッチチャンバ構成要素および他のセラミック物品に限定されず、改善された腐食耐性から恩恵を受けるであろう基板も、本明細書で説明されるようにコーティングされ得る。例は、セラミックウエハキャリアおよびウエハホルダー、サセプタ、スピンドル、チャック、リング、バッフル、ならびにファスナーを含む。真空適合性基板はまた、シリコン、石英、スチール、金属、または金属合金であり得る。真空適合性基板はまた、たとえば、ドライエッチングにおけるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびポリイミドなど、たとえば、半導体産業において使用されるプラスチックであるか、またはそのようなプラスチックを含むことができる。
【0041】
フルオロアニーリング膜は、調整可能であり、フルオロアニーリングプロセスは、膜のフッ素化の深さおよび密度の変動を可能にする。いくつかの実施形態では、フルオロアニールド膜は、完全にフッ素化され(完全に飽和され)、フッ素は、膜の深さ全体にわたって配置される。他の実施形態では、フルオロアニールド膜は、部分的にフッ素化され、フッ素は、膜の外側部分に沿って配置されるが、膜の全深さ全体にわたっては配置されない。追加として、膜は、グレーデッド膜であり得、フッ素含有量は、膜の深さにわたって変動する。たとえば、膜の最上(最外)部分は、最も高いフッ素含有量を含み得、フッ素含有量は、基板に最も近く、基板とインターフェースする、膜の最下(最内)部分に向かって膜の深さにわたって徐々に減少する。膜の最外部分は、エッチング環境に面する部分である。いくつかの実施形態では、膜は、約60原子%以下、約55原子%以下、約50原子%以下、約45原子%以下、約40原子%以下、約35原子%以下、約30原子%以下、約25原子%以下、約20原子%以下、約15原子%以下の表面フッ素量を含むことができる。本明細書で開示されるフッ素値のすべての原子%は、エネルギー分散分光法(EDS)プローブと組み合わせて走査電子顕微鏡(SEM)を使用して測定される。いくつかの実施形態では、膜は、約1ミクロンから約20ミクロンまでの範囲内の厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、(基板から最も遠い表面から測定されたときの)膜厚の10%の深さにおけるフッ素の量は、少なくとも、約10原子%、約15原子%、約20原子%、約25原子%、約30原子%、または約35原子%である。いくつかの実施形態では、(基板から最も遠い表面から測定されたときの)膜厚の30%の深さにおけるフッ素の量は、少なくとも、約10原子%、約15原子%、約20原子%、約25原子%、約30原子%、または約35原子%である。いくつかの実施形態では、(基板から最も遠い表面から測定されたときの)膜厚の50%の深さにおけるフッ素の量は、少なくとも、約10原子%、約15原子%、約20原子%、約25原子%、約30原子%、または約35原子%である。
【0042】
膜のフッ素化の深さは、フルオロアニーリング時間および温度などのプロセスパラメータを変動させることによって、フルオロアニーリング中に制御され得る。図1中に示されている(および、以下の実施例1においてより詳細に説明される)ように、フッ素は、フルオロアニーリング時間および温度が高くなるにつれて、膜の中により深く拡散する。
【0043】
膜は、基板の上にある保護層を提供し、保護層は、真空チャンバの内部の環境と接触しているコーティングされた物品の最外層である。
【0044】
膜が完全にはフッ素化されないいくつかの実施形態では、膜の最上または最外部分は、イットリウムオキシフッ化物であり、膜の残りの深さは、イットリアである。膜が完全にはフッ素化されない他の実施形態では、膜の最上または最外部分は、イットリウムアルミニウムオキシフッ化物であり、膜の残りの深さは、イットリウム酸化アルミニウムである。
【0045】
いくつかの実施形態では、基板は、AC電源を使用して酸素含有雰囲気中で物理気相堆積を通してイットリウムでコーティングされた。いくつかの実施形態では、基板は、反応ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを通してイットリウムでコーティングされた。反応ガスは、酸素源であり、空気を含むことがある、ガスであり得る。これにより、膜は、イットリウムおよび酸素を含むセラミック材料であり得、反応性スパッタリングなどの物理気相堆積(PVD)技法を使用して作製され得る。堆積中の酸素含有雰囲気は、アルゴンなどの不活性ガスをも含むことができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、AC電源を使用して反応性スパッタリングによって堆積されたイットリア膜でコーティングされたセラミック基板であって、ここで、コーティングおよび基板が、フッ素雰囲気を含んでいるオーブン中で300℃~650℃においてアニールされた、セラミック基板が、本明細書で開示される。フルオロアニールドコーティングは、イットリウム、酸素、およびフッ素を含むセラミック材料である。基板およびフルオロアニールド膜は、コーティングからのフッ素の損失なしに、高真空(5E~6トール)下で摂氏150度において焼かれ得る。
【0047】
昇温においてイットリア膜をアニールするための時間の長さは、約0.5時間から約6.5時間まで、またはそれ以上であり得る。
【0048】
アルミナなど、セラミック基板上でのイットリアのフルオロアニーリングは、イットリア膜のウェット化学(5%HCl)エッチ耐性を著しく改善する。
【0049】
本明細書で開示されるフルオロアニールドイットリア膜は、下にあるセラミック基板に付着する膜であって、膜が、室温において5%の水性塩酸と5分またはそれ以上接触した後に、セラミック基板に付着する、膜と特徴づけられ得る。いくつかのバージョンでは、フルオロアニールドイットリア膜は、15分~30分の間、いくつかの場合には30分~45分の間、下にあるセラミック基板に付着し、さらに他の場合には、膜は、室温において5%の水性HClと接触されるかまたはその水性HCl中に浸漬されたとき、100~120分後に、下にある基板に付着する。本明細書で開示されるイットリア膜は、ハロゲンガス含有プラズマエッチャーにおいて使用される構成要素のための保護コーティングとして使用され得る。たとえば、ハロゲン含有ガスは、NF、F、Clなどを含むことができる。
【0050】
フルオロアニールドイットリア膜は、膜中のフッ素の存在が、チャンバがより迅速に安定または乾燥することを可能にするので、フッ素ベースのエッチングシステムにおいて特に有利である。これは、乾燥および使用中のプロセスドリフトを排除するのを助け、フッ素または塩素含有ガスを用いた乾燥のためのエッチャーダウンタイムを低減する。
【0051】
上記で論じられたように、本明細書で開示されるフルオロアニールドイットリア膜は、最小~皆無の表面クラックおよび/または表面下クラックを有する。膜の優れたクラック耐性は、AC電源を利用してイットリア膜を堆積させることに起因すると考えられる。DCまたはパルスDC電源ではなくAC電源を使用して堆積されたイットリア膜は、石英基板など、イットリアを用いた熱膨張係数に著しい差異を有する基板の場合を含んで、最小(たとえば、5つのクラックまたはそれ以下、4つのクラックまたはそれ以下、3つのクラックまたはそれ以下、あるいは2つのクラックまたはそれ以下)~皆無の表面クラックおよび/または表面下クラックを有する。最小(たとえば、5つのクラックまたはそれ以下、4つのクラックまたはそれ以下、3つのクラックまたはそれ以下、あるいは2つのクラックまたはそれ以下)~皆無の表面クラックおよび/または表面下クラックの形成は、フルオロアニーリングが高温および/または持続時間において行われ、それにより、膜の深さ全体にわたるより高いフッ素原子%につながるときを含む、イットリア膜をフッ素化した後にも存在する。たとえば、膜の総厚さの30%の深さにおいて少なくとも10のフッ素原子%を、膜の総厚さの30%の深さにおいて少なくとも20のフッ素原子%を、膜の総厚さの30%の深さにおいて少なくとも30のフッ素原子%を、膜の総厚さの50%の深さにおいて少なくとも10のフッ素原子%を、膜の総厚さの50%の深さにおいて少なくとも20のフッ素原子%を、膜の総厚さの50%の深さにおいて少なくとも30のフッ素原子%を有する膜について、最小~皆無の表面クラックが、400xの倍率においてレーザー共焦点顕微鏡を用いて膜の表面を観察したとき、膜の表面上で可視であり、および/または最小~皆無の表面下クラックが、1000xの倍率において膜の全深さを観察するためにレーザー共焦点顕微鏡を使用したとき、膜の表面の下方で可視である。イットリア膜がDCまたはパルスDC電源を使用して堆積された、同様のフッ素原子%深さプロファイルをもつ膜は、表面クラックおよび/または表面下クラックを生じるので、これらの結果は、予想外である。
【実施例
【0052】
実施例1
約5ミクロンの厚さを有する酸化イットリウム膜が、交流(AC)電源を使用してシリコンのクーポンサイズの基板(ほぼ0.75インチ×0.75インチ)の上に酸素含有雰囲気中でのイットリウム物理気相堆積(換言すれば、反応性スパッタリング)によって堆積された。次に、クーポンは、フルオロアニーリングを受け、フルオロアニーリング中に、クーポンは、以下の表1中に列挙されている以下の条件のうちの1つの下でフッ素含有雰囲気中でオーブン中で加熱された。条件9および10は、すべてのフッ素が、フルオロアニーリング処理が終わる前に使い果たされないことを保証するために、条件1~8の2倍の量のフッ素前駆体を有した。フッ素の原子%が、電子分散分光法(EDS)プローブと組み合わせて走査電子顕微鏡を使用して、表1中に列挙されている10個の条件の各々を受けたクーポンについて膜の5ミクロンの厚さ全体にわたって測定された。データのプロットが、図1中に示されており、フッ素原子%が、Y軸上に示されており、ミクロン単位での厚さの中への深さが、X軸上に示されている。500C/5hr 2Xおよび550C/5hr 2Xについて、図1の凡例中の「2X」は、それらの条件について2倍の量のフッ素前駆体があることを指す。各クーポンのコーティングの表面が、コーティングの表面上の可視表面クラックを検査するために、400Xの倍率においてレーザー共焦点顕微鏡の下で観察された。各クーポンのコーティングはまた、コーティングの表面の下方の表面下クラックを検査するために1000xの倍率において膜の全深さを観察するために、レーザー共焦点顕微鏡を用いて観察された。表1はまた、表面クラックおよび表面下クラックが、10個の条件の各々について可視であったかどうかを報告する。
【0053】
図1中に見られるように、コーティングの表面におけるフッ素原子%は、フルオロアニーリング温度および持続時間の増加とともに増加するという、条件1から条件10にかけての一般的な傾向がある。また、コーティングの厚さにわたるフッ素化は、条件6 7、8、および9について達成されることが、図1中で見られ得る。図2は、走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影された上記のフルオロアニーリング条件のうちの1つを受けたクーポンの断面図である。表1中に示されているように、表面クラックおよび表面下クラックは、摂氏550度における条件10まで生じなかった。図3は、1000xの倍率においてキーエンスレーザー共焦点顕微鏡を用いて撮影された写真であり、複数の表面クラックを示す。条件1~9についてコーティング中の可視表面および表面下クラックがないことは、酸化イットリウム堆積中の交流(AC)電源の使用によるものであると考えられる。
【0054】
実施例2
約5ミクロンの厚さを有する酸化イットリウム膜が、交流(AC)電源を使用してアルミナのクーポンサイズの基板(ほぼ0.75インチの直径のディスク)の上に酸素含有雰囲気中でのイットリウム物理気相堆積(換言すれば、反応性スパッタリング)によって堆積された。次に、クーポンは、フルオロアニーリングを受け、フルオロアニーリング中に、クーポンは、以下の表2中に列挙されている以下の条件のうちの1つの下でフッ素含有雰囲気中でオーブン中で加熱された。条件9および10は、すべてのフッ素が、フルオロアニーリング処理が終わる前に使い果たされないことを保証するために、条件1~8の2倍の量のフッ素前駆体を有した。条件1~10を受けた各クーポンについての、Y軸上に示されるフッ素原子%およびX軸上に示されるミクロン単位での厚さの中への深さのプロットは、図1中に示されているものと同様であると考えられる。各クーポンのコーティングの表面が、コーティングの表面上の可視表面クラックを検査するために、400Xの倍率においてレーザー共焦点顕微鏡の下で観察された。各クーポンのコーティングはまた、コーティングの表面の下方の表面下クラックを検査するために1000xの倍率において膜の全深さを観察するために、レーザー共焦点顕微鏡を用いて観察された。表2はまた、表面クラックおよび表面下クラックが、10個の条件の各々について可視であったかどうかを報告する。
【0055】
条件1~10についてコーティング中の可視表面および表面下クラックがないことは、酸化イットリウム堆積中の交流(AC)電源の使用によるものであると考えられる。図4は、1000xの倍率においてキーエンスレーザー共焦点顕微鏡を用いて撮影された写真であり、表面クラックがないことを示す。
【0056】
実施例3
約5ミクロンの厚さを有する酸化イットリウム膜が、交流(AC)電源を使用して石英およびサファイアのクーポンサイズの基板(直径がほぼ0.75インチ)の上に酸素含有雰囲気中でのイットリウム物理気相堆積(換言すれば、反応性スパッタリング)によって堆積された。次に、クーポンは、フルオロアニーリングを受け、フルオロアニーリング中に、クーポンは、実施例1および2において使用された条件1~10の下でフッ素含有雰囲気中でオーブン中で加熱された。コーティングされたときには、酸化イットリウム膜中に表面クラックまたは表面下クラックはなかったが、条件1~10の各々の下でフルオロアニーリングを実施した後に、クラックおよび表面下クラックが形成された。
【0057】
本明細書で引用されるすべての特許、公開された出願および参考文献の教示は、その全体が参照により組み込まれる。
【0058】
本開示は、1つまたは複数の実装形態に関して示され、説明されたが、本明細書および添付の図面を読み、理解することに基づいて、他の当業者は等価な改変および修正を想到するであろう。
【0059】
本開示は、すべてのそのような修正および改変を含み、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。追加として、本開示の特定の特徴または態様が、数個の実装形態のちの1つのみに関して開示されていることがあるが、そのような特徴または態様は、所望され、任意の所与のまたは特定の適用例について有利であり得るとき、他の実装形態の1つまたは複数の他の特徴または態様と組み合わせられ得る。そのうえ、「含む(includes)」、「有している(having)」、「有する(has)」、「もつ(with)」という用語、またはそれらの変形態が、発明を実施するための形態または特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される範囲で、そのような用語は、「備えている(comprising)」という用語と同様の様式で包含的であることを意図される。また、「例示的な(exemplary)」という用語は、最良のものではなく例を意味するものであるにすぎない。また、本明細書で描かれている特徴および/または要素は、簡単さおよび理解の容易さの目的で特定の寸法および/または互いに対する向きを用いて図示されていること、および実際の寸法および/または向きは、本明細書で図示されているものとは実質的に異なり得ることを諒解されたい。
【0060】
本開示は、本開示の例示的な実施形態を参照しながら詳細に示され、説明されたが、形態および詳細の様々な変更が、添付の特許請求の範囲によって包含される本開示の範囲から逸脱することなくその中で行われ得ることが、当業者によって理解されよう。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-07-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の少なくとも一部分の上にある保護膜と
を備え、
前記膜が、イットリウムを含んでいるフッ素化金属酸化物を含み、
前記膜が、前記膜の総厚さの30%の深さにおいて少なくとも10のフッ素原子%を有し、かつ
前記膜が、1000xの倍率において前記膜の全深さを観察するためにレーザー共焦点顕微鏡を使用したときに可視の、前記膜の表面の下方の表面下クラックを有さず、前記膜が、前記膜の前記総厚さの30%の前記深さにおけるのと比較して、より高いフッ素原子割合を外側表面において有する
物品。
【請求項2】
フルオロアニーリングの後に、前記膜が、400xの倍率においてレーザー共焦点顕微鏡を用いて前記膜の前記表面を観察したときに可視の、前記膜の前記表面上の表面クラックを有さない、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記膜が、前記膜の前記総厚さの30%の深さにおいて少なくとも30のフッ素原子%を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
交流(AC)電源を使用して物理的気相堆積技法を使用して、イットリウムを含んでいる金属酸化物を基板の上に堆積させることであって、前記金属酸化物が、前記基板の上にある膜を形成する、金属酸化物を基板の上に堆積させることと、
前記膜をフルオロアニールすることと
を含み、
フルオロアニーリングの後に、前記膜が、前記膜の総厚さの30%の深さにおいて少なくとも10のフッ素原子%を有する、
方法。
【請求項5】
フルオロアニーリングの後に、前記膜が、1000xの倍率において前記膜の全深さを観察するためにレーザー共焦点顕微鏡を使用したときに可視の、前記膜の表面の下方の表面下クラックを有さない、請求項に記載の方法。
【国際調査報告】