(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】工程制御システムの制御パラメータを生成するコンピュータ実装された方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20231208BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20231208BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531078
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2021082702
(87)【国際公開番号】W WO2022112258
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュラム,カーステン
(72)【発明者】
【氏名】パスクアル・マルティネス,ヌリア
(72)【発明者】
【氏名】パラシオス・コー,フリオ・エンリケ
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA34
3C100AA68
3C100BB13
3C100BB15
3C100CC02
3C100CC07
5L049CC04
(57)【要約】
本発明は、特定製品のバッチ生産に利用される工程制御システム(131,132)の制御パラメータを生成する方法に言及する。本方法はMES(120)で使用すべく構成されており、a)受信ユニットにより、バッチ生産工程における特定製品の生産要件を示す情報を含む生産レシピをERPシステム(110)から受信することと、b)生成ユニットにより、工程制御システム(131,132)に実装されるべく構成されたパラメータ集合を生産レシピに基づいて生成することと、c)実装ユニットにより、生成したパラメータ集合を特定製品の生産開始前に工程制御システムに実装することを含んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定製品のバッチ生産に利用される工程制御システムの制御パラメータを生成するコンピュータ実装された方法であって、前記方法(200)が、製造実行システム(MES)(120)で使用されるべく構成されていて、
-バッチ生産工程における特定製品の生産要件を示す情報を含む生産レシピを企業資源計画(ERP)システム(110)から受信すること(210)と、
-前記工程制御システム(131,132)に実装されるべく構成されたパラメータ集合を前記生産レシピに基づいて生成すること(220)と、
-前記特定製品の生産を開始する前に、前記生成されたパラメータ集合を前記工程制御システム(131,132)に実装すること(230)を含み、
前記方法が更に、前記特定製品に関する制御パラメータの複数のパラメータ設定を含む製品テンプレートを提供することを含み、前記パラメータ集合が前記製品テンプレートに基づいて生成される方法。
【請求項2】
前記製品テンプレートが、a)ユーザー入力により設定可能及び/又は変更可能なパラメータ設定を参照する少なくとも1個のユーザー要素、及び/又はb)ユーザー入力により設定可能でない及び/又は変更可能でないパラメータ設定を参照する少なくとも1個のシステム要素を含み、製品テンプレートの各々の前記パラメータ設定が前記ユーザーにより設定可能でない及び/又は変更可能でないことを示すために、前記製品テンプレートにおいて前記ユーザーに対してシステム要素がプレースホルダーの形式で提供される、請求項2に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項3】
前記製品テンプレートが、前記パラメータ設定の少なくとも一部がマスターテンプレートの一部として提供されるように前記マスターテンプレートへのリンクを含み、複数の特定製品に共通のマスターテンプレートパラメータ設定が提供される、先行する請求項のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項4】
前記方法が、前記製品テンプレートが提供する前記パラメータ設定を抽出することにより、及び前記マスターテンプレートへのリンクを辿って同様に前記マスターテンプレートが提供する前記パラメータ設定を抽出することにより、前記製品テンプレートに基づいて前記パラメータ集合を生成することを含み、前記パラメータ集合は従って前記製品テンプレートが提供するパラメータ及び前記マスターテンプレートが提供するパラメータを含んでいる、請求項3に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項5】
少なくとも1個の他の特定製品にも共通する特定製品のパラメータ設定を含む製品テンプレートの少なくとも一部をマスターテンプレートストレージに保存することによりマスターテンプレートが生成される、請求項3及び4のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項6】
前記方法が更に、以前に実行されたバッチ生産工程を示す情報を提供することを含み、前記パラメータ集合が以前に実行されたバッチ生産工程を示す提供された情報に更に基づいて生成される、先行する請求項のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項7】
以前のバッチ生産工程を示す前記情報が、前記以前のバッチ生産工程と現在のバッチ生産工程との差異を示す情報を含んでいるか又は以前のバッチ生産工程を示す前記情報に基づいて差異が判定され、以前のバッチ生産工程を示す前記情報が以前に採用された1個又は複数個のパラメータ集合を示しており、前記パラメータ集合が、前記以前に採用されたパラメータ集合のパラメータとは異なる制御パラメータだけを含むように前記差異に基づいて生成される、請求項6に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項8】
前記特定製品の生産が開始された後で、前記パラメータ集合を、前記特定製品を生産する間は使用中であるとして保存することにより、前記パラメータ集合をロックすることを更に含んでいる、先行する請求項のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項9】
前記製品テンプレートに基づいて前記パラメータ集合が生成された後で、前記製品テンプレートを保存することにより、前記製品テンプレートをロックすることを更に含んでいる、先行する請求項のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項10】
前記特定製品のバッチ生産中に前記工程制御システム(131,132)からフィードバック情報を提供することを更に含み、前記フィードバック情報に基づいて前記パラメータ集合が改訂される、先行する請求項のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項11】
前記特定製品のバッチ生産中に前記ERP(110)システムから生産変更情報を提供することを更に含み、前記生産変更情報が前記特定製品の生産における所望の変更を示し、前記生産変更情報に基づいて前記パラメータ集合が改訂される、先行する請求項のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項12】
前記パラメータ集合の前記生成が、前記特定製品の前記バッチ生産中に前記制御パラメータの設定の改訂が許される前記パラメータ集合内の少なくとも1個のパラメータを示すことを含んでいる、請求項10及び11のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項13】
特定製品のバッチ生産に利用される工程制御システム(131,132)の制御パラメータを生成すべく構成された製造実行システム(MES)であって、前記MESが、
-バッチ生産工程における特定製品の生産要件を示す情報を含む生産レシピをERP(110)システムから受信すべく適合された受信ユニット(121)と、
-前記生産レシピに基づいてパラメータ集合を生成すべく適合され、且つ前記工程制御システム(131,132)に実装されるべく前記パラメータ集合が構成されたパラメータ集合生成ユニット(122)と、
-前記特定製品の生産を開始する前に前記パラメータ集合を前記工程制御システム(131,132)に実装すべく適合された実装ユニット(123)を含み(120)、
前記MESが更に、特定製品に関する前記制御パラメータの複数のパラメータ設定を含む製品テンプレートを提供すべく構成されており、前記パラメータ集合が前記製品テンプレートに基づいて生成されている製造実行システム。
【請求項14】
特定製品のバッチ生産に利用される工程制御システム(131,132)の制御パラメータを生成するコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品が、請求項13に記載のMES(120)に、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法(200)を実行させるプログラムコード手段を含んでいるコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、特定製品のバッチ生産に利用される工程制御システムの制御パラメータを生成するコンピュータ実装された方法、コンピュータ実装された方法を利用する製造実行システム及びコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
近代的な工業生産工程では往々にして企業制御システムが利用され、工業工場の生産操業又は工程の効率的且つ構造化された制御及び管理を可能にする。一般に、これらの企業制御システムは、生産に必要な物理的基盤にも関連付けられ得る複数の制御レベルを含み、往々にして階層モデルの形式で記述される。この階層モデルにおいて各層、又はレベルは、各々の層で実行される実際の工程と共に、これら実際の工程を実行する機械類を指す。レベル0は実際の物理的生産工程と、実際の物理的生産工程を実行する技術基盤を指す。レベル1はレベル0の実際の物理的工程を検知して直接操作できる工程及び装置を指す。レベル2はレベル1における装置及び工程の基盤及び計算知能に応じて省略できる場合もあり、例えばレベル1の工程及び装置を利用することにより、これらの物理工程の管理、監視及び制御を可能にする第1の制御層を指す。レベル3では、時として複数の生産工場を跨る全体的な生産ワークフローが例えば所望の製品を生産すべく異なる工場の個々の制御システムを監視及び制御することにより、監視、文書化、及び制御される。レベル4では、例えば製品の生産に用いられる材料を指定及び管理することにより、異なる生産工程の制御及び管理できるようにする一般的な工程ロジスティクス及び管理システムが提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、これらの層又はレベルの各々には各々の層を定義する概念に基づく特定のコンピュータ実装された基盤が関連付けられている。しかし、セキュリティ目的のため、異なる計算基盤及び制御システムが非集中的に実装されていて、異なるレベルのシステム間の通信は往々にして極めて制約される。従って、特定製品の生産用に基本的なパラメータ及びデータを提供するレベル4の制御システムから始まり、最終的に具体的且つ特定の工程制御パラメータを層1の装置に実装しなければならない生産工程を開始するには、層実装システムの計算セキュリティ面での制約を回避すべく、往々にして非効率且つ不正確な工程及び迂回策さえ利用しなければならない。
【0004】
従って、一般に適用されている層生産システムの原理を利用しながら、特定製品の工程詳細事項をより精度良く且つ効率的に生産装置に実装可能にする方法の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明の目的は、工程制御システムの制御パラメータの生成処理の精度及び効率の向上を可能にするコンピュータ実装された方法、コンピュータ実装された方法を利用する製造実行システム及びコンピュータプログラム製品を提供することである。
【0006】
第1の態様において、特定製品のバッチ生産に利用される工程制御システムの制御パラメータを生成するコンピュータ実装された方法を提示しており、本方法は、製造実行システム(MES)で使用されるべく構成されていて、a)バッチ生産工程における特定製品の生産要件を示す情報を含む生産レシピを企業資源計画(ERP)システムから受信することと、b)工程制御システムに実装されるべく構成されたパラメータ集合を生産レシピに基づいて生成することと、c)特定製品の生産を開始する前に、生成されたパラメータ集合を工程制御システムに実装することを含み、本方法は更に特定製品に関する制御パラメータの複数のパラメータ設定を含む製品テンプレートを提供することを含み、パラメータ集合は製品テンプレートに基づいて生成される。
【0007】
ERPシステムから生産レシピを受信し、パラメータ集合を生成し、工程制御システムにパラメータ集合を実装する方法ステップはMESの一部として実行されるため、利用される企業制御システム内で極めて効率的な通信及び処理が提供される。更に、MES、すなわちレベル3の処理能力を本方法の実施に利用するため、セキュリティ面での理由に起因するデータ及び通信の制約を遵守しながら同時にパラメータ集合の生成及び実装がより効率的且つ正確になる、すなわち迂回策又は非効率な通信処理を利用する必要性が低下する。従って、本方法は、工程制御システムの制御パラメータの生成処理の精度及び効率を向上させることができる。更に、パラメータ集合の生成がMESの一部として実行され、一般的な工業工場の制御層の一部として実行されないため、工業工場で古く且つ陳腐化した計算ソフトウェア及び/又はハードウェア基盤を使用せざるを得ない場合でも、パラメータ集合を精度良く且つ効率的に生成することができる。従って、レガシーシステムとの互換性が向上する。
【0008】
更に、製品テンプレートを利用することには、同様の製品を製造する都度パラメータ集合のパラメータ設定を一から再生成する必要が無いという効果もある。その代わり、既に存在するパラメータ設定を製品テンプレートの形式で保存し、任意選択的には変更して、パラメータ集合の生成に用いることができる。従って、パラメータ集合の生成の計算負荷が軽減され、すなわち複雑なルール又は人と機械の対話処理を用いることにより、生産レシピ毎にパラメータ集合を一から新たに生成する必要が無い。
【0009】
好適には、コンピュータ実装された方法は、工業工場における工程制御システムの制御パラメータを生成すべく適合されていて、工業工場は、物理工程層すなわちレベル0、装置層すなわちレベル1、任意選択の制御層すなわちレベル2、動作層すなわちレベル3、及び管理層すなわちレベル4を含む企業制御システムを利用して制御されている。工程制御システムは一般に、工業工場における特定製品の生産工程を、特に当該特定製品の生産に利用される工業工場の技術基盤の1個以上の手段を監視及び制御することにより制御すべく構成されている。好適には、工程制御システムは、分散制御システム(DCS)又はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)システムを指す。特に、制御層が工業工場により利用される場合、工程制御システムがDCSシステムを指すことが好適である一方、制御層が省略されて工業工場に直接的装置層だけが存在する場合、工程制御システムはPLCシステムを指すことが好適である。従って、工程制御システムは、レベル1構造の一部であるとみなすこと、又はレベル2構造の一部であるとみなすこと、或いはこれらの組み合わせとみなすことができる。
【0010】
制御パラメータは一般に、工程制御システムにより利用されたならば特定製品の生産につながるパラメータを指す。特に、制御パラメータは、工業工場が当該特定製品を生産可能にする当該工業工場の技術基盤用の特定の生産パラメータ値を示す。例えば、制御パラメータは、加熱器の温度、当該製品の生産に要する1個以上の部品の流れを制御するバルブの開弁時間、切削工程の特定のパラメータ、ポンプ又はモーターの出力設定、圧縮機が提供する圧力等、を示すことができる。
【0011】
MESは動作層の一部として定義され、工業工場の装置層及び/又は制御層の工程制御システム、更にはERPシステムを含む管理層と通信可能に結合されている。一般に、制御層又は装置層及び管理層は互いに分離されている、すなわち通信は企業制御システムの直接隣接する層間だけで実行できる。
【0012】
第1のステップにおいて、本方法はERPシステムから生産レシピを受信することを含んでいる。従って、動作層の一部であるMESは当該ステップでERPシステムを利用する管理層からデータすなわち生産レシピを受信する。生産レシピは、バッチ生産工程における特定製品の生産要件を示す情報を含んでいる。一般に、バッチ生産は、製品がある時間枠内で特定のグループとして又は量で製造される生産工程又は方法を指す。バッチ生産は製品が連続的に生産される連続生産と区別する必要がある。従って、各バッチ生産毎に、すなわち特定製品の各バッチ毎に、工程制御システムは当該特定のバッチに対して個別に構成する必要がある。生産レシピにより提供される情報は、例えば、製造される製品の種類、製造される特定製品の量、特定製品の生産に必要な材料、これらの材料の入手可能性、バッチ生産の識別番号、所望の包装又は包装サイズ、品質、包装ラベル等、最終製品の個別要件を示す情報を含んでいる。
【0013】
第2のステップにおいて、コンピュータ実装された方法は、生産レシピに基づいてパラメータ集合を生成することを含んでいる。パラメータ集合は、工程制御システムの制御パラメータ及び制御パラメータの値を含み、工程制御システムに実装されるべく構成されている。パラメータ集合は、例えば各パラメータ集合が特定製品に関連付けられている状態で複数のパラメータ集合を含むパラメータ集合ストレージを利用することにより生成することができる。例えば、特定製品の識別子を特定製品を指すパラメータ集合と共にパラメータ集合ストレージに保存することができる。パラメータ集合の生成は従って生産レシピから特定製品の識別子を判定して当該識別子に関連付けられたパラメータ集合を読み出すことを指す場合がある。しかし、パラメータ集合の生成はまた、例えば生産レシピが提供する情報を利用して、特定のバッチ生産の個々について特定製品に関連付けられた既に保存されているパラメータ集合が提供する1個以上の制御パラメータを補正するより洗練された工程を指す場合もある。例えば、保存されている特定製品のパラメータ集合は、生産される製品の包装サイズ又は量に関する制御パラメータ値を含んでいてよく、パラメータ集合の生成が、生産される製品の包装サイズ及び/又は量に関する生産レシピからの情報を使用し、それに応じてパラメータ集合の制御パラメータのパラメータ値を補正又は設定することを含んでいる。更に、パラメータ集合の生成はまた、パラメータ集合ストレージに既に保存されている特定製品のパラメータ集合を、特定製品の生産に利用される工業工場の特定の技術基盤に適合させることを含んでいてもよい。例えば、パラメータ集合が、特定製品の生産に利用される材料の量及び流速を示す場合、パラメータ集合の生成は、製品工場の工程制御システムが量及び流速を直接設定できない場合、これらの量及び流速から特定のバルブのバルブ開弁時間を生産工場の制御パラメータとして作成することを含んでいてよい。
【0014】
特に、製品テンプレートを提供しており、当該製品テンプレートは、特定製品に関する制御パラメータの複数のパラメータ設定を含み、パラメータ集合は製品テンプレートに基づいて生成されている。製品テンプレートは、他の製品テンプレートと共に製品テンプレートストレージに保存することができ、製品テンプレートストレージからパラメータ集合を生成すべく提供することができる。好適には、各特定製品毎に少なくとも1個の製品テンプレートが、例えば製品テンプレートストレージに保存することにより提供され、パラメータ集合を生成すべく製品テンプレートを提供することは、生産レシピにより示す特定製品を指す製品テンプレートを複数の製品テンプレートから選択することを含んでいる。例えば、各製品テンプレートは、製品テンプレートが指す特定製品の識別子と共に保存することができ、パラメータ集合の生成は、生産レシピから特定製品の識別子を判定すること、及び判定された識別子に基づいて各々の製品テンプレートを選択することを含んでいてよい。製品テンプレートは、特定製品のパラメータ集合の制御パラメータの複数のパラメータ設定、すなわちパラメータ値を含んでいてよい。好適には、製品テンプレートは、特定製品の制御パラメータのすべてのパラメータ設定を含んでいる。しかし、代替的に、製品テンプレートは制御パラメータのパラメータ設定のいくつかだけを含んでいてよい。製品テンプレートがパラメータ設定を含んでいないパラメータ集合に含める必要がある制御パラメータは、例えばパラメータ集合を生成すべく生産レシピが提供する各々の情報に基づいて設定することができる。例えば、製品テンプレートは、製品のバッチ量及び包装に関するパラメータ設定以外の制御パラメータの全てのパラメータ設定を含んでいてよく、パラメータ集合を生成するステップは従って生産レシピの当該情報を識別すること、及び製品テンプレートにより既に提供されていない制御パラメータを実装されたルールを利用して設定することを含んでいてよい。このようなルールは、例えば、特定の生産工場の製品要件と技術基盤の機能関係を指す場合がある。例えば、機能関係は、包装サイズと包装を製品で充填すべく使用するバルブの開弁時間の関係を指す場合がある。しかし、このようなルールは、参照テーブルを参照するか又はより洗練された機械学習システムにより提供することができる。
【0015】
最後のステップにおいて、生成されたパラメータ集合は特定製品の生産を開始する前に工程制御システムに実装される。特に、実装は、動作層のMESにより生成された生成パラメータ集合を、制御又は工程層の工程制御システムに提供することを含んでいる。更に、生成されたパラメータ集合を工程制御システムに実装することは、パラメータ集合が提供する制御パラメータのパラメータ値が工程制御システム内に、又は工程制御システムにより、正しく設定されることを保証する監視及び制御を含んでいてよい。
【0016】
一実施形態において、製品テンプレートは、a)ユーザー入力により設定可能及び/又は変更可能なパラメータ設定を参照する少なくとも1個のユーザー要素、及び/又はb)ユーザー入力により設定可能でない及び/又は変更可能でないパラメータ設定を参照する少なくとも1個のシステム要素を含み、製品テンプレートの各々のパラメータ設定がユーザーにより設定可能でない及び/又は変更可能でないことを示すために、製品テンプレートにおいてユーザーに対してシステム要素がプレースホルダーの形式で提供される。ユーザー要素は、例えば、ユーザーが制御パラメータを生産工場の特定の状況に適合させることができるように利用できる。例えば、ユーザー要素は、一般に各々の制御パラメータに施されることが好適なパラメータ設定すなわちパラメータ値を指す場合があるが、特定の生産工場が補正されたパラメータ設定を必要とする可能性があれば、ユーザー要素によりユーザーは当該補正されたパラメータ設定を実装できるようになる。このような補正は、例えば技術基盤の一部の突然の故障に起因して工場の技術基盤の変更、特に短期的変更が必要になる場合がある。更に、特定の生産工場における特定製品生産に精通したユーザーの経験からも、パラメータ設定の補正が当該特定の生産工場に適していることが示される場合がある。ユーザーがパラメータ設定に干渉できるようにするユーザー要素とは対照的に、システム要素は、ユーザーによるパラメータ設定の補正及び/又は設定が一切不可能であるように提供される。従って、ユーザーがシステム要素に影響を及ぼすことはできない。システム要素は、温度設定、反応時間、反応材料等、特定製品の生産に不可欠な制御パラメータを指す場合があり、これらの制御パラメータの設定の変更は、品質低下、又は特定製品の生産の完全な失敗につながる恐れがある。好適には、少なくとも1個のシステム要素は、生産レシピに基づいて設定されるパラメータ設定を参照し、従って、製品テンプレートにおける特定の値、すなわちパラメータ設定を含んでいなくてもよい。本実施形態において、システム要素は、製品識別番号、バッチ識別番号、特定製品に使用される材料の識別番号等、特定製品の正しい生産及び識別に不可欠であって生産レシピの一部として管理層のERPシステムだけが提供できるパラメータを参照することができる。システム要素はプレースホルダーを提供することによりユーザーに示されるため、これらのパラメータ設定すなわちパラメータ値をユーザーが設定又は補正できない、及び/又はすべきでなく、その代わり製品テンプレート又は生産レシピのいずれかによってのみ提供されることをユーザーに直接認識させることができる。
【0017】
テンプレートはユーザー要素及びシステム要素を含んでいるため、変更が許可されたパラメータ設定だけが変更されることを保証でき、生産工程に不可欠なパラメータ設定があらゆる意図的又は非意図的な変更から保護される。従って、パラメータ集合の生成の精度を向上させることができ、製品の正しい生産を保証することができる。更に、ユーザーが設定できないシステムパラメータをプレースホルダーとしてユーザーに提供するため、ユーザーはこれらのパラメータがユーザーにより設定できないことを直接認識できるようになる。従って、ユーザーはこれらのパラメータを直接無視して、制御及び補正用のユーザーパラメータに集中することができる。これにより、ユーザーは、生成されたパラメータ集合の点検、変更及び/又は確認する人間とコンピュータの対話処理において自身の業務の支援を受ける。
【0018】
一実施形態において、製品テンプレートは、パラメータ設定の少なくとも一部がマスターテンプレートの一部として提供されるようにマスターテンプレートへのリンクを含み、マスターテンプレートには複数の特定製品に共通のパラメータ設定が提供される。特に、特定製品は、所望の包装又は生産量だけが異なっていて物理的製品自体には差異がない場合がある。このような場合、物理的製品自体の生産に利用される制御パラメータのパラメータ設定をマスターテンプレートに保存することができ、使用する包装及び生産する製品の量等、より具体的なパラメータ設定が製品テンプレートに保存される。更に、マスターテンプレートはまた、関連する工程、例えば1個以上の工程ステップだけ、例えばこれらの製品の生産に使用される1個以上の材料だけが異なるだろう関連製品の生産工程にも利用することができる。これらのケースにおいても、共通パラメータ設定をマスターテンプレートの一部として保存することができる一方、特定パラメータ設定はマスターテンプレートへのリンクを含む製品テンプレートに保存される。製品テンプレートのこの構造により、製品テンプレート及びマスターテンプレートを利用するコンピューティングシステムの複雑度及び記憶容量を軽減することができる。好適な実施形態において、本方法は、製品テンプレートが提供するパラメータ設定を抽出することにより、及びマスターテンプレートへのリンクを辿って同様にマスターテンプレートが提供するパラメータ設定を抽出することにより、製品テンプレートに基づいてパラメータ集合を生成することを含み、パラメータ集合は従って製品テンプレートが提供するパラメータ及びマスターテンプレートが提供するパラメータを含んでいる。
【0019】
マスターテンプレートは複数の生産工程で、すなわち複数の生産レシピに使用できるパラメータ設定の保存に利用されるため、必ずしも全ての生産レシピについて完全なパラメータ集合を保存する必要はない。従って、パラメータ集合を生成するための記憶領域が少なくて済む。
【0020】
一実施形態において、少なくとも1個の他の特定製品にも共通する特定製品のパラメータ設定を含む製品テンプレートの少なくとも一部をマスターテンプレートストレージに保存することによりマスターテンプレートが生成される。例えば、製品生産を管理するユーザーは、パラメータ集合の制御パラメータの1個以上の値が複数の製品の生産に使用可能であることを示すことができ、従って制御パラメータのこれらの値を含むマスターテンプレートの生成を開始することができる。更に、工程制御システム又はMESはまた、いくつかの制御パラメータの同じ値が異なる製品に利用されていると判断し、これらの制御パラメータのマスターテンプレートの生成を開始すべく適合させることができる。
【0021】
一実施形態において、本方法は更に、以前に実行されたバッチ生産工程を示す情報を提供することを更に含み、パラメータ集合は以前に実行されたバッチ生産工程を示す提供された情報に更に基づいて生成される。例えば、パラメータ集合はこの場合、例えば特定の技術基盤の制御パラメータの以前の設定と後続のパラメータ設定との関係を記述する所定のルール又は関係に基づいて生成することができる。例えば、第1の温度に設定されているため既に特定の温度にある加熱器が以前のバッチ生産で利用された場合、後続のバッチ生産における加熱器の加熱工程のパラメータ設定を省略するか又は最適な後続のバッチ生産を可能にすべく補正することができる。テンプレートが提供する制御パラメータのパラメータ設定は、後続の特定製品のパラメータ集合を生成する際に機能ルール又は関係に基づいて補正することができる。
【0022】
好適な一実施形態において、以前のバッチ生産工程を示す情報は、以前のバッチ生産工程と現在のバッチ生産工程との差異を示す情報を含んでいるか又は以前のバッチ生産工程を示す情報に基づいて差異が判定され、以前のバッチ生産工程を示す情報は以前に採用された1個又は複数個のパラメータ集合を示しており、パラメータ集合は、以前に採用されたパラメータ集合のパラメータとは異なる制御パラメータだけを含むように差異に基づいて生成される。特に、関連する製品、例えば量又は包装だけが異なる製品を続いて製造する場合、新たな特定製品のために制御パラメータの一部だけを変更すれば済むため、全ての制御パラメータを有する完全なパラメータ集合を再度生成して全ての制御パラメータを再度実装する必要が無い。従って、以前に採用したパラメータ集合のパラメータとは異なる制御パラメータだけを含むパラメータ集合を新たなパラメータ集合として生成して実装することにより、その後のバッチ生産工程での計算時間と複雑さを軽減することができる。
【0023】
パラメータ集合の生成は、上述のように、以前のバッチ生産工程の情報に更に基づいているため、変更する必要が無い、又は後続の生産をよりスムーズに開始すべく変更可能なパラメータ設定を特定して相応に扱うことができる。これにより、ある特定製品の生産から次の製品の生産への移行がより効率的になる。
【0024】
一実施形態において、本方法は、特定製品の生産が開始された後で、パラメータ集合を、当該特定製品を生産する間は使用中であるとして保存することにより、パラメータ集合をロックすることを更に含んでいる。更に、一実施形態において、本方法は、製品テンプレートに基づいてパラメータ集合が生成された後で、製品テンプレートを保存することにより、製品テンプレートをロックすることを更に含んでいる。特定製品の生産に利用されたパラメータ集合及び/又は製品テンプレートを、好適には特定製品の生産開始後に保存することによりロックすることで特定製品の生産工程を正確に追跡及び遡ることができる。例えば、生産工程の開始後に、生産された特定製品に問題が生じた場合、ロックされたパラメータ集合及び/又は製品テンプレートにより、製品がどのように生産されたのか、故障のエラーが特定製品に問題を引き起こした箇所を極めて正確に把握及び再現することができる。
【0025】
使用されたパラメータ集合及び製品テンプレートはロックされるため、完全な生産工程の文書化を保証することができる。これによりバッチ生産工程の安全性を向上させることができる。
【0026】
一実施形態において、本方法は更に、特定製品のバッチ生産中に工程制御システムからフィードバック情報を提供することを含み、フィードバック情報に基づいてパラメータ集合が改訂される。例えばセンサが提供するフィードバック情報が工程制御システムの一部であることにより、生産工程特にパラメータ集合をリアルタイムに適合させることができる。例えば、フィードバック情報は、粒子を切削するミルで所望の切削効率が得られないためミルを制御する各々の制御パラメータ及びパラメータ集合を補正することにより特定製品の切削時間を延長する必要があることを示す場合がある。パラメータ集合の改訂は、技術基盤からのフィードバック情報、現在設定されている制御パラメータ、及び当該制御パラメータの補正との間に実装されたルール又は機能関係に基づいて行うことができる。更に、改訂はまた、例えばフィードバック情報及びパラメータ集合の潜在的に影響を受けた制御パラメータを当該特定製品の生産を管理するユーザーに提供して、この場合にユーザーが制御パラメータ集合のこれらの制御パラメータを改訂できるようにすることによりユーザーと協働して実行することも可能である。
【0027】
フィードバック情報はパラメータ集合の改訂に使用されるため、上述のようにバッチ生産のパラメータ集合を生成する際に突発的な状況を考慮することができる。これにより一般的な制御及び管理工程を超える生産工程への直接的介入が可能となり、MESのレベルでパラメータ集合を改訂することが可能なため生産工程の効率化を向上させることができる。
【0028】
一実施形態において、本方法は更に、特定製品のバッチ生産中にERPシステムから生産変更情報を提供することを更に含み、生産変更情報は特定製品の生産における所望の変更を示し、生産変更情報に基づいてパラメータ集合が改訂される。特に、生産変更情報は特定製品の生産が既に開始された後で提供される短期的生産変更情報を指す。例えば、特定製品に対する需要が突如増加したならば、ERPシステムは当該特定製品の新たな量を生産変更情報としてMESに提供し、MESは従ってこの生産量の変更を参照しながらパラメータ集合の制御パラメータを改訂して新たな制御パラメータ集合、特に新たな制御パラメータを生産の実行中に工程制御システムに実装することができる。好適には、パラメータ集合の生成は、特定製品のバッチ生産中に制御パラメータの設定の改訂が許されるパラメータ集合内の少なくとも1個のパラメータを示すことを含んでいる。例えば、制御パラメータの設定の改訂は、特定の物理的製品の生産に不可欠でない制御パラメータ、及び/又は最終的な特定製品の品質を低下させない制御パラメータだけに対して許可される場合がある。特に、特定製品の量、包装、タイミング等を指示する制御パラメータは生産が既に開始された後で改訂を許可することができる。
【0029】
生産変更情報は生産工程の実行中に参照できるため、パラメータ集合を生成する全ての工程を再び実行することが必要な場合を含めて生産工程を最初に停止してから再び開始する必要無しに現在の生産のパラメータ集合を直接変更することができる。従って、このケースでも生産の変更をより効率的に実行することができ、不必要な生産工程ステップを省略することができる。
【0030】
更なる態様において、特定製品のバッチ生産に利用される工程制御システムの制御パラメータを生成すべく構成されたMESを提示しており、MESは、a)バッチ生産工程における特定製品の生産要件を示す情報を含む生産レシピをERPシステムから受信すべく適合された受信ユニットと、b)生産レシピに基づいてパラメータ集合を生成すべく適合され、パラメータ集合は、工程制御システムに実装されるべく構成されたパラメータ集合生成ユニットと、c)特定製品の生産を開始する前にパラメータ集合を工程制御システムに実装すべく適合された実装ユニットを含み、MESは更に、特定製品に関する制御パラメータの複数のパラメータ設定を含む製品テンプレートを提供すべく構成されており、パラメータ集合は製品テンプレートに基づいて生成されている。
【0031】
更なる態様において、特定製品のバッチ生産に利用される工程制御システムの制御パラメータを生成するコンピュータプログラム製品を提示しており、当該コンピュータプログラム製品は、上述のようなMESに上述のような方法を実行させるプログラムコード手段を含んでいる。
【0032】
更なる態様において、特定製品のバッチ生産に利用される工程制御システムの制御パラメータを生成するコンピュータ実装された方法を提示しており、当該方法は、MESにおいて使用されるべく構成され、a)ERPシステムから生産レシピを受信することであって、生産レシピは、バッチ生産工程における特定製品の生産要件を示す情報を含むことと、b)生産レシピに基づいてパラメータ集合を生成し、パラメータ集合は工程制御システムに実装すべく構成され、c)特定製品の生産開始以前に生成パラメータ集合を工程制御システムへ実装することを含んでいる。
【0033】
更なる態様において、特定製品のバッチ生産に利用される工程制御システムの制御パラメータを生成すべく構成されたMESを提示しており、当該MESは、a)バッチ生産工程における特定製品の生産要件を示す情報を含む生産レシピをERPシステムから受信すべく適合された受信ユニットと、b)生産レシピに基づいてパラメータ集合を生成すべく適合され、パラメータ集合は、工程制御システムに実装されるべく構成されたパラメータ集合生成ユニットと、c)特定製品の生産を開始する前にパラメータ集合を工程制御システムに実装すべく適合された実装ユニットを含んでいる。
【0034】
上述の方法、上述の製造実行システム、及び上述のコンピュータプログラム製品は、特に従属請求項に定義されるような、類似及び/又は同一の好適な複数の実施形態を有していることを理解されたい。本発明の好適な実施形態は、従属請求項又は上述の実施形態と各々の独立請求項との任意の組み合わせであってもよいことを理解されたい。本発明のこれら及び他の態様は以下に記述する複数の実施形態を参照することにより明らかにされ、解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】工程制御システムの制御パラメータを生成すべく構成されたMESを含む企業制御システムの一実施形態を模式的且つ例示的に示す。
【
図2】工程制御システムの制御パラメータを生成する方法の一実施形態を例示的に示すフロー図を示す。
【
図3】工程制御システムの制御パラメータを生成する方法のより詳細な実施形態を例示的且つ模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
実施形態の詳細な説明
図1に、少なくとも1個の生産工場130における製品生産の管理及び制御に使用する企業制御システム100の一実施形態を模式的且つ例示的に示す。
【0037】
一般に、生産工場130は産業目的で使用される任意の技術基盤を指していてよい。産業目的は、1個以上の産業製品の製造又は加工、すなわち工業工場により実行される製造工程又は加工であってよい。この例では、産業目的は、特定製品の生産を指す。特定製品は、例えば化学、生物学、医薬、食品、飲料、織物、金属、プラスチック、半導体等、任意の物理的製品であってよい。追加的又は代替的に、特定製品は、電気、暖房、空調、リサイクル等の廃棄物処理、分解又は溶解等の化学処理、更には焼却等も含むサービス製品であってもよい。従って、生産工場130は、化学工場、処理工場、製薬工場、油井及び/又は天然ガス井等の化石燃料処理施設、製油所、石油化学工場、分留工場等のうちの1個以上であってよい。生産工場130は更に、蒸留所、焼却炉、又は発電所のいずれであってもよい。生産工場130は更に、工程制御システム131、例えばPLC、DLC又は管理用の制御及びデータ取得(SCADA)システムを共有する組み合わせであれば、上に示すいずれかの例の組み合わせであってもよい。
【0038】
生産工程を実行すべく、生産工場130は、工程制御システム131により技術基盤132に実装された制御パラメータにより制御可能な技術基盤132を含んでいる。技術基盤132は、熱交換器、分留塔などの塔、炉、反応室、接触分解ユニット、貯蔵タンク、沈殿器、パイプライン、スタック、フィルタ、バルブ、アクチュエータ、変換器、回路ブレーカ、機械類、例えばタービン、発電機、粉砕機、圧縮機、ファン、ポンプ、モーター等の回転重機のいずれか1個以上のような設備置又は工程ユニットを含んでいてよい。更に、生産工場130は典型的に、技術基盤132の動作パラメータを測定可能にする複数のセンサを含み、当該動作パラメータは、工程制御システム131により生産工場130における生産工程を制御すべく利用することができる。センサにより測定される動作パラメータは、様々な工程パラメータ及び/又は設備或いは工程ユニットに関連するパラメータに関連していてよい。例えば、センサはパイプライン内の流量、タンク内のレベル、炉の温度、ガスの化学組成等の工程パラメータの測定に用いられてよく、いくつかのセンサはタービンの振動、ファンの速度、バルブの開度、パイプラインの腐食、変圧器の両端での電圧等の測定に使用できる。これらのセンサの差異は、検知するパラメータに基づくだけでなく、各々のセンサが用いる検知原理に基づく場合もある。検知するパラメータに基づくセンサの例として温度センサ、圧力センサ、光センサ等の放射センサ、流量センサ、振動センサ、変位センサ、ガス等の特定物質を検出する化学センサ等が含まれていてよい。採用する検知原理が異なるセンサの例として、例えば、圧電センサ、圧電抵抗センサ、熱電対、静電容量センサ及び抵抗センサ等のインピーダンスセンサ等が挙げられる。
【0039】
従って、本明細書の文脈において生産工場130は、専用の工程制御システム131、例えばDCSシステムを含む施設、二次施設又は基盤である。生産工場130は、複数の生産工場の一部であってよい。例えば、複数の生産工場は、少なくとも1個の共通の産業目的を有する少なくとも2個の生産工場の複合体を指す場合がある。具体的には、複数の生産工場は、物理的及び/又は化学的に結合された少なくとも2個、少なくとも5個、少なくとも10個又は更により多くの生産工場を含んでいてよい。複数の生産工場は、複数の生産工場を形成する生産工場が、バリューチェーン、抽出物及び/又は製品のうちの1個以上を共有できるように結合されていてよい。複数の生産工場は、複合体、複合体サイト、フェアブント、又はフェアブントサイトとも呼ばれる場合もある。更に、様々な中間製品を介して最終製品に至る複数の生産工場のバリューチェーン生産は、様々な生産工場等、様々な場所に分散されても、又はフェアブントサイト又はケミカルパークに統合されていてもよい。そのようなフェアブントサイト又はケミカルパークは1個以上の生産工場であっても、又は1個以上の生産工場を含んでいてもよく、少なくとも1個の生産工場で製造された製品は別の生産工場へのフィードバックとして機能することができる。生産工場130が複数の生産工場の一部であるような実施形態において、工場の各々の工程制御システムは、同一工程制御システムと通信可能に結合されていても、又は同一工程制御システムを参照することもできる。
【0040】
生産工場130は、装置層、制御層、操業層及び管理層を有する層状構造を含む企業制御システム100に統合されている。装置層は、例えばセンサ、設備、及び工程ユニットを含む技術基盤132を含んでいてよく、これらの少なくともいくつかは工場内の物理的工程を示すデータを生成することができる。このような生成データは次いで、例えば、自ら主導して、又は工程制御システム131からの要求に応答して、工程制御システム131へ送信することにより、工程制御システム131を含む制御層に提供されてよい。層間の分離が高い方が望ましい場合、少なくとも安全性確保が必須である特定の装置についてはデータの流れは技術基盤132から工程制御システム131への一方向であってよい。データは工程制御システム131に直接又は間接的に提供されてよい。工程制御システム131は、生成データの少なくとも一部に応答して工場130の物理的工程の少なくともいくつかを制御すべく適合される。従って、制御層は、1個以上の処理装置及び記憶装置を含む中核工程システムを含んでいてよい。制御層は、制御層に設けられた1個以上の処理装置及び記憶装置のうち1個で実行可能な工程制御システム131を含んでいる。工程制御システム131は、工程制御システムが属する各々の生産工場130全体にわたり分散された制御ループを有するPLCシステム又はDCSを形成する1個以上の分散処理装置及び記憶装置として構成又は実現することができる。更に、工程制御システム131は、リアルタイム制御、人間機械インターフェース(HMI)又は管理制御及びデータ収集(SCADA)ソフトウェアを含んでいても、又はその一部であってもよい。工場の装置層と制御層、すなわち技術基盤132と工程制御システム131は従って通信可能に結合されている。工程制御システム131は更に、操業層、特に操業層の一部をなすMES120に通信可能に結合されている。
【0041】
操業層は典型的に、1個以上の工場130の生産及び/又は操業等の機能の管理に用いられる。そのような機能の特定の非限定的な代表例は、製造する製品の生産オーダーの設定、生産バッチ管理、工場保守管理、生産計画等である。工程制御システム131を含む工場固有の制御層は、例えば、自らが主導して、又は操業層からの要求に応答して操業層へ送信することにより、操業層、特にMES120に管理データを提供することができる。更に、管理データは、操業層、特にMES120に直接又は間接的に提供されてよい。管理データは制御データの少なくとも一部を含んでいてもよい。操業層はMES120を利用することにより本発明において、各々の工場130の操業及び/又は生産を制御する工場固有の工程制御システム131に生産データ、特にパラメータ集合を提供する。生産工場130の上位制御層が省略されている場合、工程制御システム131は装置層の一部である。この場合、操業層、特にMES120は、工場130の所望の操業及び/又は生産を実現すべく制御データ、例えばパラメータ集合を装置層に直接提供することができる。制御データ、特にパラメータ集合を用いて、工場130の1個以上の産業基盤132、例えばアクチュエータ、加熱器、スイッチ、炉、反応器等の任意の1個以上を制御して、制御層に提供された生産データを介して操業層により指定された所望の操業及び/又は生産を実現することができる。
【0042】
本明細書で議論する処理層、すなわち装置層、制御層及び操業層は各々レベル1層、レベル2層及びレベル3層とも呼ばれることが多い。更に、製造操業のビジネス関連活動を管理すべくビジネスロジスティックシステムに関連する管理層を指すレベル4層が設けられている。管理層には、例えば生産レシピの一部として基本的な工場生産スケジュール、材料の使用、出荷及び在庫レベルを確立すべく適合可能なERPシステム110が設けられている。
【0043】
上述のシステム及び層は一般に、セキュリティネットワークの原理を用いて互いに接続されている。セキュアネットワークは、ファイアウォールにより分離された2個より多いセキュリティゾーンを含む分離されたネットワークであってよい。このようなファイアウォールは、ネットワーク又はホストベースの仮想又は物理ファイアウォールであってよい。ファイアウォールは、着信及び発信ネットワークトラフィックを制御すべくハードウェア又はソフトウェアにより実現されていてよい。ここで、ホワイトリストの意味での所定のルールは、アクセス管理又は他の構成設定を介して許可されたトラフィックを規定することができる。ファイアウォール構成に応じてセキュリティゾーンは異なるセキュリティ基準に準拠していてよい。セキュアネットワークは、工場130内又は複数の工場130間に物理的に位置していてよい。しかし、いくつかのケース、例えば工場関連のデータベース、処理システム、又は他の計算サービスの1個以上のいずれかが1個以上のクラウド方式サービスとして実装される場合に、セキュアネットワークは、工場130の物理的位置を超えて広がっていてもよい。
【0044】
一般に、装置層は第1のファイアウォールを介して第1のセキュリティゾーンに構成可能であり、制御層は第2のファイアウォールを介して第2のセキュリティゾーンに構成可能である。装置層を安全に保護すべく、第1のセキュリティレベルのゾーンは第2のセキュリティゾーンよりも高いセキュリティ標準に従う。セキュリティゾーン又はレベルは、Namur文書IEC62443に概説されているような一般的な業界標準に準拠していてよい。同様に、操業層は第3のファイアウォールを介して第3のセキュリティゾーンに構成することができる。第1及び第2のセキュリティレベルは第3のセキュリティレベルよりも高いセキュリティ標準に従っていてよい。従って、第3と第2のセキュリティゾーンはセキュリティ標準でも食い違っていてよい。これにより制御層のより低いセキュリティゾーンでより高いセキュリティ標準、及び制御層のより高いセキュリティゾーンでより低いセキュリティ標準を実現することができる。
【0045】
操業層、特にMES120と通信すべく、工場130は少なくとも1個のネットワークインターフェースを含んでいてよい。例えば、1個以上の工場130は、各々の工場関連データ、又は工場関連データの一部を、少なくとも1個のネットワークインターフェースを介して配信ユニットに提供することができる。ネットワークインターフェースは、任意のデータアクセスインターフェース、例えば、オープンプラットフォーム通信データアクセス(OPC DA)インターフェースであってよい。いくつかのケースにおいて、ネットワークインターフェースを用いて工場情報を情報管理システム又はデータリポジトリ或いは当該産業工場130に固有のアーカイブに登録することもできる。
【0046】
以下に、本発明におけるMES120の具体的な機能についてより詳細に記述する。
図1に示す実施形態において、MES120は、ERPシステム110から生産レシピを受信すべく適合された受信ユニット121を含んでいる。生産レシピは、生産工場130がバッチ生産工程で生産すべき特定製品の生産要件を示す情報を含んでいる。例えば、生産レシピは、特定製品の識別子、特定製品の製造に使用すべき基本材料の1個以上の識別子、特定製品の所望の生産量、包装の種類及びサイズ、一意なバッチ生産番号等を含んでいる。しかし、いくつかの実施形態において生産レシピは特定製品の識別子だけを含んでいても、又は特定製品の生産に関するより多くの詳細事項、例えば生産に用いる基本材料の量、特定の生産工程要件等を含んでいてもよい。受信ユニット121は生産レシピをパラメータ集合生成ユニット122に提供する。
【0047】
パラメータ集合生成ユニット122は生産レシピに基づいてパラメータ集合を生成すべく適合されている。パラメータ集合は、例えば生産工場130の工程制御システム131が特定製品の生産工程を制御可能にする制御パラメータを含んでいる。特に、パラメータ集合の制御パラメータは、生産工場130の技術基盤132の特定のパラメータ設定、すなわちパラメータ値、例えば加熱器の温度設定、ポンプ又はモーターの出力設定、バルブの開放時間、特定のフィルタが挿入されているか否か等を指す場合がある。例示的な実施形態において、パラメータ集合生成ユニット122は、生産レシピから特定製品の識別子を抽出し、当該識別子を利用して製品テンプレートストレージから特定製品の識別子に紐付けられた製品テンプレートを選択すべく適合されている。選択された製品テンプレートは従って好適なパラメータ設定、すなわち生産工場130が特定製品を生産することを可能にする制御パラメータのパラメータ値を含んでいてよい。任意選択的に、製品テンプレートは、パラメータ設定に加えてマスターテンプレートへのリンクも提供し、複数の特定製品に共通のパラメータ設定がマスターテンプレートに保存されている。製品テンプレートは、任意選択的にマスターテンプレートと共に、特定製品の生産に必要な全てのパラメータ設定を好適に提供する。しかし、製品テンプレートは、任意選択的にマスターテンプレートと共に、制御パラメータのパラメータ設定の一部だけを含んでいてもよい。一実施形態において、いくつかの制御パラメータは製造レシピだけに直接基づいて設定可能であってよい。例えば、一意なバッチ製品識別子、特定製品の生産量、又は包装サイズが生産レシピにより提供されて、パラメータ集合生成ユニット122により生産レシピから直接抽出することができる。生産レシピにより直接提供されるそのような制御パラメータは従って、例えば、所定のルール、参照テーブル、又は当該情報と制御パラメータの機能関係に基づいて、当該情報を参照するパラメータ集合内の制御パラメータの設定に直接利用することができる。このようなルール、機能関係又は参照テーブルは、例えば、バッチ生産に利用される生産工場130の特定の技術基盤132に基づく生産工場固有のものであってよい。
【0048】
パラメータ集合の生成にテンプレートを用いる場合、パラメータ集合生成ユニット122は、テンプレートから、及び任意選択的に、マスターテンプレートへのリンクを辿ることによりマスターテンプレートから、生産工場130における特定製品の生産を制御可能にする制御パラメータのパラメータ設定を抽出すべく適合させることができる。任意選択的に、上で説明したように生産レシピが提供する情報に基づいて更なる制御パラメータを設定することができる。設定された全ての制御パラメータは次いでパラメータ集合の形態で提供される。パラメータ集合生成ユニット122は次いで、生成されたパラメータ集合を、例えばタブレット又は他のコンピューティング装置のディスプレイを利用してユーザーに提供すべく適合させることができる。ユーザーは次いでパラメータ集合を点検及び検証するよう求められる場合がある。更に、好適な実施形態において、パラメータ集合の制御パラメータ設定のいくつかがユーザーにより設定可能及び/又は補正可能である一方、他の制御パラメータ設定は例えば特定製品の生産に不可欠であるためユーザーにより設定及び/又は補正できない場合があることがユーザーに示され、ユーザーは従ってこれらの補正不可能なパラメータ設定を更に点検する必要が無いため、例えばプレースホルダーの形態でユーザーに提供される。パラメータ集合の1個以上の制御パラメータ設定を点検及び任意選択的に補正した後で、ユーザーは、パラメータ集合のパラメータ設定が特定製品の生産にとって正しいことを確認して生産工場130の工程制御システム131に実装すべくパラメータ集合をリリースすることができる。
【0049】
実装ユニット123は次いで、特定製品の生産を開始する前に、リリースされたパラメータ集合を工程制御システム131に実装すべく適合されている。例えば、実装ユニット123は、上で例示的に説明したMES120と生産工場130の工程制御システム131との間の1個以上の通信機能を用いて工程制御システム131にパラメータ集合を送信することができる。更に、実装ユニット123は、例えば生産工場130の技術基盤132により実行されて工程制御システム131からMES120に送信される測定値から提供されるフィードバックを介して、工程制御システム131によりパラメータ集合が正しく実装されるように制御すべく適合させることができる。このフィードバックに基づいて、実装ユニット123は、1個以上の制御パラメータを改訂する必要があることをパラメータ集合生成ユニット122に通知すべく適合させることができる。例えば、工程制御システム131のフィードバックが、例えば技術基盤132のいくつかの部品の故障に起因して生産工場130の技術基盤132に短期的な変化が生じたことを示唆する場合、パラメータ集合生成ユニット122は、技術基盤132の技術詳細及び/又は生産工場130の工程制御システム131からのフィードバックが提供する情報に基づく所定のルールを用いて制御パラメータ設定を改訂して提供されたフィードバックに従い制御パラメータ設定を適合させるべく適合させることができる。パラメータ集合生成ユニット122は次いで改訂された新たなパラメータ集合をユーザーに提示すべく再び適合させることができ、次いで新たなパラメータ集合がリリースされた後で実装ユニット123により生産工場130の工程制御システム131に再び実装することができる。実装されたパラメータ集合に基づいて、生産工場130は次いで特定製品を生産することができる。
【0050】
図2に、工程制御システムの制御パラメータを生成する方法の一実施形態を示すフロー図を模式的且つ例示的に示す。方法200は、MES、例えば
図1を参照しながら上で議論したMES120により使用され、特に実行される。方法200は、ERPシステムから生産レシピを受信する第1のステップ210を含み、生産レシピは、例えば生産工場130が実行するバッチ生産工程における特定製品の生産要件を示す情報を含んでいる。このコンピュータ実装された方法ステップ210は、例えば受信ユニット121に関して記述した機能に従い受信ユニット121により実行することができる。更に、方法200は、生産レシピに基づいてパラメータ集合を生成するステップ220を含み、当該パラメータ集合は生産工場の工程制御システムに実装されるべく構成されている。パラメータ集合を生成する当該ステップ220は、上述の複数の例に従いパラメータ集合生成ユニット122により実行することができる。最後のステップ230において、方法200は、生産工場により特定製品の生産を開始する前に、生成されたパラメータ集合を工程制御システムに実装することを含んでいる。この実装ステップ230は、既に上で述べた実装ユニット123の機能に従い実装ユニット123により実行することができる。
【0051】
図3に、工程制御システムの制御パラメータを生成する方法の一実施形態のより詳細な例を示し、
図3ではエンタープライズ制御システム全体への本方法の統合を強調している。特に、方法300は、エンタープライズ制御システムの3個の層に模式的に分けられている。最上層310は、上で定義したようにレベル4層、すなわち管理層を指し、本例では例えばSAPシステムとして実現できるERPシステムを含んでいる。中間層320は、上で定義したようなレベル3層、すなわち操業層を指し、例えば
図2を参照しながら説明したような方法を実行するMESを含んでいる。最下層330は、上で定義したようなレベル1及び/又はレベル2層、すなわち制御層を指し、工程制御システム、例えばPLCシステムを含んでいる。
【0052】
この詳細な例において、方法300は、管理層310においてERPシステムが1個以上の特定製品の生産計画オーダーを作成し、次いで1個以上の特定製品の生産に必要な異なる工程を制御及び管理する工程オーダーに変換することから始まる。工程オーダーは次いで点検及び検証されて、ERP制御レシピ、すなわち生産する1個以上の特定製品のERP生産レシピの形式でリリースすることができる。工程オーダー、特にERP制御レシピは次いで操業層320のMESへ転送される。MESはERP制御レシピを受信し、当該受信は、例えば所定のセキュリティ要件に従いERP制御レシピのローディング及び点検を含んでいてよい。次のステップにおいて、MESは、例えばパラメータ集合の制御パラメータのパラメータ設定を含むテンプレートを製品テンプレートストレージから検索及び取得することにより、ERP制御レシピ内で識別される特定製品及び/又は製品バージョンのパラメータ集合を生成する。生成されたパラメータ集合は次いで、例えばパラメータ集合をPLCシステムへ転送することにより実装される。このように、制御層330のPLCシステムは特定製品の生産のパラメータ集合を受信して、実装されたパラメータ集合に基づいて特定製品の生産を実行する。
【0053】
特定製品の生産開始前、生産中、及び生産開始後、PLCは、例えば生産イベントを集約することにより、生産の実行を制御及び管理する。これらの生産イベントは、生産の開始又は終了、生産の状態、現時点での特定製品の生産数量、特定製品の生産中に生じた技術基盤の障害、又は生産中に生起し得る他のイベントを指す場合がある。このようなイベントは、PLCから操業層のMESへのフィードバックとして提供できる。MESは次いでこれらの生産イベントを受信し、特定のイベントに関するルールに基づいて、生産イベントの工程メッセージを作成して管理層310のERPシステムに送信することができる。更に、MESはまた、フィードバックに基づいて、すなわち受信した生産イベントに基づいて、例えばパラメータ集合の制御パラメータのパラメータ設定を不測の技術的イベントに調整することにより、パラメータ集合の1個以上のパラメータを補正し、補正及び調整されたパラメータ集合を、特定製品の更なる生産のため実装されるPLCへ返送すべく適合させることができる。しかし、ERPシステムはまた、MESから受信した工程メッセージに基づいて、パラメータ集合の改訂が必要であり得ることをMESに通知及び相応に指示すべく適合させることもできる。制御イベント従って工程メッセージが、所望の特定製品が各々の数量で生産され、従って生産の実行が終了したことを示す場合、工程は終了する。ERPシステムは従って、例えば顧客への通知、各生産データの保存等、工程オーダーを終了するのに必要な工程を開始することができる。
【0054】
一般に、バッチ生産は、例えば化学反応器及び押出機を含む産業基盤の設定に関して類似する製品の生産と定義することができる。しかし、バッチ生産はまた、常時全く同じ製品を生産する訳ではないという事実により連続生産と区別することができる。バッチ生産中に生産される製品の生産の観点からの差異は、殆ど重要でないもの、例えば製品容器が異なることから、極めて重要なもの、例えば黒色の製品と白色の製品の生産まで様々であり得る。製品の安定した品質を保証すべく生産パラメータ、すなわち制御パラメータが一般に一定に保たれる連続生産とは異なり、バッチ生産では産業基盤を各バッチ工程、すなわち特定製品の各々について個別に構成する必要がある。これは部品の物理的交換、例えば粒度が異なるグラインダーだけでなく、制御ソフトウェアにより制御される制御パラメータ、例えば加熱器の温度及びグラインダーのRPMも意味する。課題の一つは、メンテナンス期間をなるべく少なく/短くするように生産オーダーを保証することである。これは、例えばSAP等のERPシステムでは管理者レベルで行われる。
【0055】
別の課題は、生産する製品毎に正しいパラメータ集合で産業基盤を構成して全てのパラメータを実行ユニットに投入することである。産業基盤に応じて、例えば同じ最終製品であっても異なる消費材料は別の材料よりも長時間切削しなければならない等、特定製品毎に異なり得るか又は消費材料にも依存し得る多くの制御パラメータを設定及び実装しなければならない。意図した特定製品を正しく生産するには、ERPシステムに保存されている生産レシピの情報に依存しなければならない場合がある。ERPシステムは例えば使用すべき消費材を厳密に規定する。当該情報が入手されている場合にのみ、例えば望ましくない/禁止された消費材が工程に投入されるのを防ぐことができる。一般に、DCSのような工程制御システムは、生成される様々なレシピを管理できるが、原理的にERPシステムに統合できないため、実行工程にとり重要な情報にアクセスできない場合がある。
【0056】
連続生産と比較してバッチ生産の別の課題は、産業基盤を以前に使用したか又は使用しなかったこと、例えば部品がしばらくの間は冷えていることに起因して、新たなバッチを開始する都度望ましい結果が最初から得られるとは限らないことであり、これは求める結果に達するにはパラメータをその場で適合させる必要があることを意味する。これは、そのバッチの生産が始まる以前に行われる。一例として、加熱器の温度を通常よりも高く/低くする必要があろう。更に、類似の製品及び同一製品を、例えば容器の目標サイズが異なる複数バッチで生産する場合、形式的に第2/第3のバッチが開始されているという理由だけで自動化システムにより特定のパラメータを再び変更すべきではない。これは、同一の基本生産レシピが、最初の生産であるか又は既に実行中のバッチ生産の継続生産であるかに応じて産業基盤の異なるパラメータ集合を参照する場合があることを意味する。
【0057】
本発明は従って、ERPデータすなわち生産レシピを生産工程でどのように実行するかを規定することにより、ERPシステムと工程制御システム、例えばDCS又はPLCシステムとの間のミッシングリンクを提供する。本発明による上述の方法の重要な利点は、生産工程のセキュリティを指す。特に、生産ピラミッドの隣接するレベルだけが互いに通信を許可されることが望ましい。例えば、ERPシステムでの作業と生産工場の工程制御システムでの作業は、MES層の一部としてパラメータ集合を提供する上述の発明を利用する場合に、どちらも他方のコンピュータインターフェースに容易にアクセスできない二つの異なるジョブとして維持できる。これにより、製品の生産に製品のレシピを転送する際のエラーを回避しながら、生産工程のセキュリティを高めることができる。
【0058】
本発明は特に、本方法をERPシステム及び工程制御システムの両方と通信すべく適合されたMESの一部として実行することにより上述の問題を解決することを提案する。好適には、MESは、ERPシステムSAP R/3及びSAP S/4HANAだけでなく、業界標準プロトコルOPC DAを理解する任意のDCS/PLCシステムとも通信すべく適合されている。更に、ユーザーが最大限の自由度と使い易さで必要に応じて類似又は異なるパラメータ集合を作成できるようにする多層工程でパラメータ集合が生成されていることが好適である。更に好適には、パラメータ集合を生成する方法は、人-機械インターフェースを有する可視化コンピュータプログラムの一部であるか又はこれを含んでいる。
【0059】
本発明の好適な態様は、パラメータ集合を生成するテンプレートの利用を指す。一般に、製品テンプレートは、例えば工場の技術基盤に精通している工程管理者により、実際の生産に先立って設計されてからテンプレートストレージに保存することができる。上で既に述べたように、多くのバッチ製品は製造の仕方が極めて類似しており、これはまた類似製品を生産する場合にパラメータ設定のかなりの部分が同一であることを意味する。ここでの最良の例は同一製品であるが異なるサイズの容器に収められる製品である。これはERPの観点からは2個の異なる製品番号が得られ、製造の観点からは製造工程の最後の部分、例えば充填バルブがどの周期で開閉するか、だけが異なればよい。この場合、同一のパラメータ設定を全てカバーするマスターテンプレートへのリンクを含む製品テンプレートを利用することが有利であり、製品テンプレートは製品固有のパラメータ設定をカバーしている。しかし、マスターテンプレートの使用は任意選択であり、マスターテンプレートを含まない製品テンプレートもパラメータ設定の生成に利用することができる。
【0060】
更に、いくつかの実施形態において、例えば加熱器に対しては300℃を指す等、ユーザー、例えば工程管理者により明確に設定できるパラメータを指すユーザー要素が規定されている一方、更なるシステム要素は、例えばERPシステムから送られる生産レシピに基づいてのみ決定できるパラメータとして定義できることが好適である。これらのパラメータに対して製品テンプレートにプレースホルダーを用意することができる。
【0061】
これによりユーザー、例えば工程管理者は、生産するレシピの全てのバリエーション毎にパラメータ集合を作成する必要がない。更に、産業基盤用にいくつかのパラメータの設定が必要な場合があり、開始されるバッチが後続バッチである場合はいくつかを省略することができる。例えば、生産終了時点でラベルプリンタが製品容器に正しいラベルを印刷できるように特定製品毎に製品番号及びバッチ番号を設定することが必要な場合がある。しかし、次の製品でも加熱器の温度は同じであり得るため新たに設定する必要は無い。
【0062】
好適には、本方法は、ERPシステムから新たなレシピがリリースされたならば、MESが当該レシピを受信する前にMESに通知することも含んでいる。MESは従ってレシピを自動的に解析して、計画ミス、例えばレシピ内で製品の欠落等について内部の整合性を点検すべく適合させることができる。好適な実施形態において、MESは、レシピから製品番号及び製品バージョンを読み取って、パラメータ集合を生成するステップの一部として合致する製品テンプレートを発見すべく適合させることができる。MESは従って、テンプレートが提供する情報から、特にテンプレートが提供するパラメータ設定からパラメータ集合を自動的に作成、すなわち生成して、プレースホルダーが存在すれば、全てのプレースホルダーを生産レシピからの対応する値で代替することができる。当該パラメータ集合は次いで、例えば、工程制御システムに実装される前に保存することができ、当該ステップは実際に生産が開始された時点で実行されることが好適である。
【0063】
好適には、パラメータ集合をオペレータに提供することができる。ERPシステムから受信したレシピ及び/又は自動的に作成されたパラメータ集合をオペレータが検査できるようにMESの一部としてオペレータが視認できるようする。生産が開始されていない限り、オペレータは理由があればパラメータ集合のパラメータを新たな値で上書きすることができる。
【0064】
オペレータが当該レシピでの生産の開始を決定した場合、パラメータ集合が受理されてパラメータ値、すなわちパラメータ設定が、例えばパラメータ集合で定義されている終点までOPC DAプロトコルを用いて工程制御システム、従って技術基盤に実装される。好適には、この実装ステップはまた、パラメータの設定が成功してパラメータ値が正しく設定されたことの点検も含んでいる。
【0065】
好適には、現在1個のバッチの生産中に、オペレータはERPシステムから受信した別のレシピを選択してこれを連続的な後継レシピとして宣言することができる。この場合、本方法は、異なるパラメータ設定だけがパラメータ集合として工程制御システムに提供されるのに対し、他の全てのパラメータ値は同じに保たれるように後継レシピのパラメータ集合を生成することを含んでいてよい。従って、現在のバッチが終了したならば次のバッチの開始前に異なるパラメータ設定だけを実装すればよい。
【0066】
好適には、本方法は「一度使用すれば二度と変更できない」との原理に基づいている。これは文書化目的だけでなく使い易さにおいても有利である。このように、実際に使用されたパラメータ値が文書化され、これらの方がより良い製品を生み出せることが証明されたならば新たなテンプレート値として用いることができる。バッチが生産された条件も文書化される。
【0067】
上の原理は、例えば、本発明の以下の態様につながる。好適には、a)マスターテンプレート及び/又は製品テンプレートは、そこからパラメータ集合が作成されない限り変更でき、及び/又はb)パラメータ集合は生産が開始されない限り変更可能である。生産が開始されたならば、技術基盤に適用されたパラメータ集合により判定されたパラメータ値がロックすなわち保存される。しかし、この好適な原理は実際の生産中におけるパラメータ設定の変更を妨げない。いくつかのケースにおいて、オペレータがそのように選択し、且つその権限を有する場合、パラメータ設定は依然として技術基盤の一部で直接変更可能であってよく、その場合本方法はオペレータが行った変更を保存することも含むことが好適である。このように、使用されたパラメータ集合を将来的に参照して、例えばあるバッチが所望の品質をもたらさなかった理由の点検、又はパラメータが時間経過と共にどのように変化したかを比較、例えば設備の劣化の通知することができる。更に、更なる生産の文書化を図るべくパラメータ集合を表計算プログラム、例えばマイクロソフトのエクセルにエクスポートできることが好適である。更に、使い易さのためテンプレートを複製することもできるため、あるテンプレートが既に使用中の場合、以前のテンプレートをテンプレートとして用いてそこからより新しいバージョンを作成することができる。
【0068】
更に好適な実施形態において、本方法は、生産実行中にパラメータ設定を変更、すなわち改訂することも含んでいる。これはパラメータ設定ツールを用いて行えるだけでなく、技術基盤で直接行うこともできる。好適には、改訂が許可されているパラメータは、パラメータ集合内で例えば視覚的にマーキングすることにより示される。
【0069】
パラメータ値のそのような改訂が有利であり得るいくつかの理由がある。例えば、同じ顧客がオーダーを拡大したか又は別の顧客が同じ製品をオーダーしたために生産量の拡大が必要になり得る場合である。資産効果を高めるために、新たなオーダーを現在のオーダーに追加してそのままバッチ生産をより長く実行し、技術基盤の構成の変更を必要とする他のオーダーよりも前に新たなオーダーを生産することが合理的な場合がある。従って、この場合、生産量すなわち生産時間を設定するパラメータ値に改訂可能とマーク付けし、当該パラメータ値を新たなオーダーに適合できるようにすることが好適である。別の例において、製品の品質を保証すべく、例えば外部の品質システム、例えばSAP QMから、又は工程制御システムが実行する生産工程の内部診断から、生産の実行中に生産工程のパラメータ値を改訂する必要性を示し得るフィードバックが提供されてよい。更なる例として、機械の不具合は必ずしも生産停止につながるとは限らず、むしろワークフローの方向転換、従って現行生産のパラメータ設定の変更につながる場合がある。また、例えば品質問題に起因する特定の原材料の予期せぬ不足が、既に実行中ならば生産の変更、従って代替原材料に対応すべくパラメータ値の変更につながる場合がある。
【0070】
本方法が生産中のパラメータ値の変更を記録すること、例えば変更されたパラメータを文書化目的だけでなく必要に応じて例えば新たなテンプレート値としての将来の使用の両方で実際に使用された値としてプロトコル化できるように工程制御からMESに報告することを含んでいることが好適である。
【0071】
上述の複数の実施形態においてパラメータ集合は特に1個以上の保存された製品テンプレートに基づいて生成されたが、他の複数の実施形態ではそのような製品テンプレートを省略することができる。例えば、生産レシピは、パラメータ設定の1個以上を含んでいてよく、パラメータ集合はこれらのパラメータ設定を取り出してパラメータ集合の各々の制御パラメータに割り当てることにより生成することができる。更に、生産レシピが提供する情報と、特定製品の生成に必要な制御パラメータのパラメータ設定との間のルール及び機能関係を利用して特定製品を生成することができる。そのようなルール及び機能関係は、例えば本方法のユーザーの経験に基づいて、又は例えば既知の機械学習システム等のより洗練された計算決定システムに基づいて決定することができる。このような機械学習システムは例えば、複数の生産レシピ、及び当該生産レシピに関連付けられていて例えば経験豊富なユーザーにより提供される、又は過去に各々の生産レシピの生産に使用された複数のパラメータ集合も学習ケースとして提供することにより訓練することができる。
【0072】
上述の複数の実施形態において、生産工場は、制御層及び装置層を有する工程制御システムを含んでいるが、いくつかの実施形態において、例えば内部装置処理制御により技術基盤の一部として工程制御システムが直接実行されるように制御層を省略することができる。この場合、パラメータ集合は技術基盤の装置の各々の装置制御に直接実装される。
【0073】
開示した複数の実施形態に対する他の変形は、図面、本開示、及び添付の請求項を研究して請求項に記載の発明を実施する当業者により理解及び実現されることができる。請求項において、単語「含んでいる」は他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数性を排除しない。
【0074】
単一のユニット又は装置は請求項に記載された複数の項目の機能を実現する場合がある。特定の手段が互いに異なる従属請求項で言及されているという事実だけでこれらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【0075】
生産レシピの受信、パラメータ集合の生成、生成パラメータ集合の実装等、1個以上のユニット又は装置により実行される手順は、他の任意の個数のユニット又は装置により実行することができる。これらの手順は、コンピュータプログラムのプログラムコード手段及び/又は専用ハードウェアとして実装することができる。
【0076】
コンピュータプログラム製品は、光記憶媒体及び固体媒体等、適当な媒体に保存/配布され、他のハードウェアと共に、又はその一部として供給されてよいが、他の形態、例えばインターネット又は他の有線/無線通信システムを介して配信されてよい。
【0077】
請求項におけるいかなる参照符号も本発明の範囲を限定するものと解釈するべきでない。
【0078】
本発明は、特定製品のバッチ生産に利用される工程制御システムの制御パラメータを生成する方法に言及する。本方法はMESで使用すべく構成されており、a)受信ユニットにより、バッチ生産工程における特定製品の生産要件を示す情報を含む生産レシピをERPシステムから受信することと、b)生成ユニットにより、工程制御システムに実装されるべく構成されたパラメータ集合を生産レシピに基づいて生成することと、c)実装ユニットにより、生成したパラメータ集合を特定製品の生産開始前に工程制御システムに実装することを含んでいる。
【国際調査報告】