IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

特表2023-552353架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材、その製造方法、及びそれを含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜
<>
  • 特表-架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材、その製造方法、及びそれを含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜 図1
  • 特表-架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材、その製造方法、及びそれを含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜 図2
  • 特表-架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材、その製造方法、及びそれを含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜 図3
  • 特表-架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材、その製造方法、及びそれを含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材、その製造方法、及びそれを含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/417 20210101AFI20231208BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20231208BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20231208BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20231208BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20231208BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20231208BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20231208BHJP
   H01M 50/406 20210101ALI20231208BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20231208BHJP
【FI】
H01M50/417
H01M50/489
H01M50/451
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/446
H01M50/457
H01M50/406
H01M50/403 A
H01M50/403 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533756
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 KR2021019349
(87)【国際公開番号】W WO2022131878
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0177908
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ジェ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ-ソン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・シク・ムン
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB01
5H021BB04
5H021BB13
5H021BB15
5H021CC04
5H021EE04
5H021EE17
5H021EE22
5H021EE23
5H021EE31
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】
本発明は、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を有する架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材であって、前記ポリオレフィン多孔性基材が一面から他面に延びる高さ方向において、前記一面に接する第1領域、及び前記第1領域の外側から他面側に延びる第2領域を含み、前記第1領域に含まれたポリオレフィンの架橋度と前記第2領域に含まれたポリオレフィンの架橋度との差が10%以上である架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材、及びその製造方法に関し、前記分離膜が架橋構造を含んでも、低いシャットダウン温度及び高いメルトダウン温度を具現できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を有する架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材であって、
前記ポリオレフィン多孔性基材が一面から他面に延びる高さ方向において、
前記一面に接する第1領域、及び前記第1領域の外側から他面側に延びる第2領域を含み、
前記第1領域に含まれたポリオレフィンの架橋度と前記第2領域に含まれたポリオレフィンの架橋度との差が10%以上である、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材。
【請求項2】
前記第2領域の外側から他面側に延びる第3領域をさらに含み、
前記第2領域に含まれたポリオレフィンの架橋度と前記第3領域に含まれたポリオレフィンの架橋度との差が10%以上である、請求項1に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材。
【請求項3】
前記第1領域に含まれたポリオレフィンの架橋度と前記第2領域に含まれたポリオレフィンの架橋度との差が20%以上である、請求項1または2に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材。
【請求項4】
前記第1領域に含まれたポリオレフィンの架橋度が前記第2領域に含まれたポリオレフィンの架橋度よりも大きい、請求項1から3の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材。
【請求項5】
前記第1領域に含まれたポリオレフィンの架橋度が20%以上である、請求項1から4の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材。
【請求項6】
前記第1領域に含まれたポリオレフィンの架橋度が30%以上である、請求項1から5の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材。
【請求項7】
前記第2領域に含まれたポリオレフィンの架橋度が0.1%~10%である、請求項1から6の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材。
【請求項8】
前記第1領域が、前記ポリオレフィン多孔性基材の全体厚さに対して10%~80%の厚さを有する、請求項1から7の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材。
【請求項9】
前記第2領域に含まれたポリオレフィンの架橋度と前記第3領域に含まれたポリオレフィンの架橋度との差が20%以上である、請求項2から8の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材。
【請求項10】
前記第3領域に含まれたポリオレフィンの架橋度が前記第2領域に含まれたポリオレフィンの架橋度よりも大きい、請求項2から9の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材。
【請求項11】
前記第3領域に含まれたポリオレフィンの架橋度が20%以上である、請求項2から10の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材。
【請求項12】
前記第3領域に含まれたポリオレフィンの架橋度が30%以上である、請求項2から11の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材。
【請求項13】
前記第2領域が、前記ポリオレフィン多孔性基材の全体厚さに対して10%~60%である、請求項2から12の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材。
【請求項14】
前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材は、架橋前のポリオレフィン多孔性基材と比べて、突刺し強度の変化率が10%以下である、請求項1から13の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を含む、リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜。
【請求項16】
前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜が、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及びバインダー高分子を含む無機物複合空隙層をさらに含む、請求項15に記載のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜。
【請求項17】
前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜が、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及び第1バインダー高分子を含む無機物複合空隙層と、
前記無機物複合空隙層上に位置し、第2バインダー高分子を含む多孔性接着層と、をさらに含む、請求項15に記載のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜。
【請求項18】
前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜のメルトダウン温度が160℃以上である、請求項15から17の何れか一項に記載のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜。
【請求項19】
前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜のシャットダウン温度が146℃以下である、請求項15から18の何れか一項に記載のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜。
【請求項20】
請求項1から14の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を製造する方法であって、
(S1)ポリオレフィン及び希釈剤を含む第1ポリオレフィン組成物、及びポリオレフィン、希釈剤及び酸化防止剤を含む第2ポリオレフィン組成物を製造する段階と、
(S2)前記第1ポリオレフィン組成物の押出結果物の上面に第2ポリオレフィン組成物の押出結果物が積層されるように、前記第1ポリオレフィン組成物と第2ポリオレフィン組成物とを共押出する段階と、
(S3)前記(S2)段階の結果物をシート状に成形及び延伸してポリオレフィン多孔性基材を製造する段階と、
(S4)前記(S3)段階の結果物から前記希釈剤を抽出する段階と、
(S5)前記(S4)段階の結果物を熱固定する段階と、
(S6)光開始剤を含む光開始剤組成物を前記(S5)段階の結果物に適用する段階と、
(S7)前記(S6)段階の結果物に紫外線を照射する段階と、を含み、
前記酸化防止剤が、前記第2ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.8重量部以上で含まれる、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項21】
前記酸化防止剤が、ラジカル捕捉剤である第1酸化防止剤、及び過酸化物分解剤である第2酸化防止剤を含む、請求項20に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項22】
前記第1酸化防止剤が、前記第2ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.5重量部以上で含まれる、請求項21に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項23】
前記第2酸化防止剤が、前記第2ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.3重量部以上で含まれる、請求項21または22に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項24】
前記第1ポリオレフィン組成物が酸化防止剤をさらに含む、請求項20から23の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項25】
前記酸化防止剤が0.2重量部以下で含まれる、請求項24に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項26】
前記酸化防止剤が0.07重量部~0.2重量部で含まれる、請求項24または25に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項27】
前記第1ポリオレフィン組成物に含まれる酸化防止剤が、ラジカル捕捉剤である第3酸化防止剤、及び過酸化物分解剤である第4酸化防止剤を含む、請求項24から26の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項28】
前記第3酸化防止剤が、前記第1ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.05重量部~0.1重量部で含まれる、請求項27に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項29】
前記第4酸化防止剤が、前記第1ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.02重量部~0.1重量部で含まれる、請求項27または28に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項30】
前記(S2)段階が、前記第1ポリオレフィン組成物の押出結果物、前記第2ポリオレフィン組成物の押出結果物、及び前記第1ポリオレフィン組成物の押出結果物が積層されるように共押出する段階を含む、請求項20から29の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項31】
前記光開始剤が、タイプII光開始剤を含む、請求項20から30の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項32】
前記光開始剤が、チオキサントン、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、またはこれらのうち二種以上を含む、請求項20から31の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項33】
前記光開始剤の含量が、前記光開始剤組成物100重量%を基準にして0.01~0.5重量%である、請求項20から32の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項34】
前記第1酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、またはこれらの混合物を含む、請求項21から33の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項35】
前記第2酸化防止剤が、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、またはこれらの混合物を含む、請求項21から34の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項36】
前記第3酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、またはこれらの混合物を含む、請求項27から35の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項37】
前記第4酸化防止剤が、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、またはこれらの混合物を含む、請求項27から36の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項38】

前記フェノール系酸化防止剤が、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)、2,2’-チオジエチルビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、ペンタエリトリトール-テトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、4,4’-チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)、オクタデシル-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェノール)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、6,6’-ジ-t-ブチル-2,2’-チオジ-p-クレゾール、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート、またはこれらのうち二つ以上を含む、請求項34または36に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項39】
前記リン系酸化防止剤が、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(2,6-ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)-エチル-ホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、またはこれらのうち二つ以上を含む、請求項35または37に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項40】
前記硫黄系酸化防止剤が、3,3’-チオビス-1,1’-ジドデシルエステル、ジメチル3,3’-チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート、2,2-ビス{[3-(ドデシルチオ)-1-オキソプロポキシ]メチル}プロパン-1,3-ジイルビス[3-(ドデシルチオ)プロピオネート]、またはこれらのうち二つ以上を含む、請求項35または37に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項41】
前記紫外線の照射光量が、10~1000mJ/cm範囲である、請求項20から40の何れか一項に記載の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法。
【請求項42】
正極、負極、及び前記正極と負極との間に介在された分離膜を含み、
前記分離膜が、請求項15から19の何れか一項に記載のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜である、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年12月17日付け出願の韓国特許出願第10-2020-0177908号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材、及びその製造方法に関する。
【0003】
また、本発明は、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜、及びそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0004】
近年、エネルギー貯蔵技術に対する関心が益々高まっている。携帯電話、カムコーダー及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡がるとともに、このような電子機器の電源として使用される電池の高エネルギー密度化に対する要求が高まっている。リチウム二次電池は、このような要求に最も応えられる電池であって、現在これに対する研究が活発に行われている。
【0005】
このようなリチウム二次電池は、正極、負極、電解液、分離膜から構成され、そのうち分離膜には、正極と負極とを分離して電気的に絶縁させるための絶縁性、及び高い気孔度に基づいてリチウムイオンの透過性を高めるために高いイオン伝導度が求められる。
【0006】
このような分離膜として、ポリオレフィンから形成された多孔性基材を適用したポリオレフィン分離膜が広く用いられている。しかし、代表的なポリオレフィン分離膜であるポリエチレン(PE)分離膜の場合、融点(Tm)が低いため、電池の誤使用環境で電池の温度がポリエチレンの融点以上に上昇すると、メルトダウン(melt down)現象が発生して発火及び爆発を引き起こすおそれがある。メルトダウン現象とは、分離膜が完全に溶融して正極と負極との間の絶縁機能を喪失する現象を意味する。
【0007】
分離膜の安全性を確保するため、メルトダウン温度は高くなければならない。しかし、メルトダウン温度を高めると、シャットダウン(shut down)温度が高くなる。シャットダウン温度とは、電池の温度が上昇したとき、分離膜の気孔が閉鎖される温度を意味する。シャットダウン温度が高くなると、電池の温度が上昇するとき電流を遮断するため、分離膜の一部が溶融して気孔を閉鎖する温度が高くなる。それにより、電池の温度が上昇することを十分に防止し難いという問題がある。
【0008】
したがって、メルトダウン温度を高めると同時に、シャットダウン温度は下げることができる技術が依然として必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、メルトダウン温度は高くシャットダウン温度は低くすることで高温安全性を改善した架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材及びその製造方法を提供することである。
【0010】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、メルトダウン温度は高くシャットダウン温度は低くすることで高温安全性を改善したリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜及びそれを備えたリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、下記具現例の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材が提供される。
【0012】
第1具現例は、
高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を有する架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材であって、
前記ポリオレフィン多孔性基材が一面から他面に延びる高さ方向において、
前記一面に接する第1領域、及び前記第1領域の外側から他面側に延びる第2領域を含み、
前記第1領域に含まれたポリオレフィンの架橋度と前記第2領域に含まれたポリオレフィンの架橋度との差が10%以上であることを特徴とする架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材に関する。
【0013】
第2具現例によれば、第1具現例において、
前記第2領域の外側から他面側に延びる第3領域をさらに含み、
前記第2領域に含まれたポリオレフィンの架橋度と前記第3領域に含まれたポリオレフィンの架橋度との差が10%以上であり得る。
【0014】
第3具現例によれば、第1または第2具現例において、
前記第1領域に含まれたポリオレフィンの架橋度と前記第2領域に含まれたポリオレフィンの架橋度との差が20%以上であり得る。
【0015】
第4具現例によれば、第1~第3具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第1領域に含まれたポリオレフィンの架橋度が前記第2領域に含まれたポリオレフィンの架橋度よりも大きくなり得る。
【0016】
第5具現例によれば、第1~第4具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第1領域に含まれたポリオレフィンの架橋度が20%以上であり得る。
【0017】
第6具現例によれば、第1~第5具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第1領域に含まれたポリオレフィンの架橋度が30%以上であり得る。
【0018】
第7具現例によれば、第1~第6具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第2領域に含まれたポリオレフィンの架橋度が0.1%~10%であり得る。
【0019】
第8具現例によれば、第1~第7具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第1領域が、前記ポリオレフィン多孔性基材の全体厚さに対して10%~80%の厚さを有し得る。
【0020】
第9具現例によれば、第2~第8具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第2領域に含まれたポリオレフィンの架橋度と前記第3領域に含まれたポリオレフィンの架橋度との差が20%以上であり得る。
【0021】
第10具現例によれば、第2~第9具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第3領域に含まれたポリオレフィンの架橋度が前記第2領域に含まれたポリオレフィンの架橋度よりも大きくなり得る。
【0022】
第11具現例によれば、第2~第10具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第3領域に含まれたポリオレフィンの架橋度が20%以上であり得る。
【0023】
第12具現例によれば、第2~第11具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第3領域に含まれたポリオレフィンの架橋度が30%以上であり得る。
【0024】
第13具現例によれば、第2~第12具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第2領域が、前記ポリオレフィン多孔性基材の全体厚さに対して10%~60%の厚さを有し得る。
【0025】
第14具現例によれば、第1~第13具現例のうちいずれか一具現例において、
前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材は、架橋前のポリオレフィン多孔性基材と比べて、突刺し強度(puncture strength)の変化率が10%以下であり得る。
【0026】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、下記具現例のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜が提供される。
【0027】
第15具現例は、
第1~第14具現例のうちいずれか一具現例による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を含むことを特徴とするリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜に関する。
【0028】
第16具現例によれば、第15具現例において、
前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜が、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及びバインダー高分子を含む無機物複合空隙層をさらに含み得る。
【0029】
第17具現例によれば、第15具現例において、
前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜が、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及び第1バインダー高分子を含む無機物複合空隙層と、
前記無機物複合空隙層上に位置し、第2バインダー高分子を含む多孔性接着層と、をさらに含み得る。
【0030】
第18具現例によれば、第15~第17具現例のうちいずれか一具現例において、
前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜のメルトダウン温度が160℃以上であり得る。
【0031】
第19具現例によれば、第15~第18具現例のうちいずれか一具現例において、
前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜のシャットダウン温度が146℃以下であり得る。
【0032】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、下記具現例の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法が提供される。
【0033】
第20具現例は、
(S1)ポリオレフィン及び希釈剤を含む第1ポリオレフィン組成物、及びポリオレフィン、希釈剤及び酸化防止剤を含む第2ポリオレフィン組成物を製造する段階と、
(S2)前記第1ポリオレフィン組成物の押出結果物の上面に第2ポリオレフィン組成物の押出結果物が積層されるように、前記第1ポリオレフィン組成物と第2ポリオレフィン組成物とを共押出する段階と、
(S3)前記(S2)段階の結果物をシート状に成形及び延伸してポリオレフィン多孔性基材を製造する段階と、
(S4)前記(S3)段階の結果物から前記希釈剤を抽出する段階と、
(S5)前記(S4)段階の結果物を熱固定する段階と、
(S6)光開始剤を含む光開始剤組成物を前記(S5)段階の結果物に適用する段階と、
(S7)前記(S6)段階の結果物に紫外線を照射する段階と、を含み、
前記酸化防止剤が、前記第2ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.8重量部以上で含まれることを特徴とする、上述した一態様による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法に関する。
【0034】
第21具現例によれば、第20具現例において、
前記酸化防止剤が、ラジカル捕捉剤(radical scavenger)である第1酸化防止剤、及び過酸化物分解剤(peroxide decomposer)である第2酸化防止剤を含み得る。
【0035】
第22具現例によれば、第21具現例において、
前記第1酸化防止剤が、前記第2ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.5重量部以上含まれ得る。
【0036】
第23具現例によれば、第21または第22具現例において、
前記第2酸化防止剤が、前記第2ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.3重量部以上含まれ得る。
【0037】
第24具現例によれば、第20~第23具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第1ポリオレフィン組成物が酸化防止剤をさらに含み得る。
【0038】
第25具現例によれば、第24具現例において、
前記酸化防止剤が0.2重量部以下で含まれ得る。
【0039】
第26具現例によれば、第24または第25具現例において、
前記酸化防止剤が0.07重量部~0.2重量部で含まれ得る。
【0040】
第27具現例によれば、第24~第26具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第1ポリオレフィン組成物に含まれる酸化防止剤が、ラジカル捕捉剤である第3酸化防止剤、及び過酸化物分解剤である第4酸化防止剤を含み得る。
【0041】
第28具現例によれば、第27具現例において、
前記第3酸化防止剤が、前記第1ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.05重量部~0.1重量部で含まれ得る。
【0042】
第29具現例によれば、第27または第28具現例において、
前記第4酸化防止剤が、前記第1ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.02重量部~0.1重量部で含まれ得る。
【0043】
第30具現例によれば、第20~第29具現例のうちいずれか一具現例において、
前記(S2)段階が、前記第1ポリオレフィン組成物の押出結果物、前記第2ポリオレフィン組成物の押出結果物、及び前記第1ポリオレフィン組成物の押出結果物が積層されるように共押出する段階を含み得る。
【0044】
第31具現例によれば、第20~第30具現例のうちいずれか一具現例において、
前記光開始剤が、タイプII光開始剤を含み得る。
【0045】
第32具現例によれば、第20~第31具現例のうちいずれか一具現例において、
前記光開始剤が、チオキサントン(TX:Thioxanthone)、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン(BPO:Benzophenone)、ベンゾフェノン誘導体、またはこれらのうち二種以上を含み得る。
【0046】
第33具現例によれば、第20~第32具現例のうちいずれか一具現例において、
前記光開始剤の含量が、前記光開始剤組成物100重量%を基準にして0.01~0.5重量%であり得る。
【0047】
第34具現例によれば、第21~第33具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第1酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、またはこれらの混合物を含み得る。
【0048】
第35具現例によれば、第21~第34具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第2酸化防止剤が、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、またはこれらの混合物を含み得る。
【0049】
第36具現例によれば、第27~第35具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第3酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、またはこれらの混合物を含み得る。
【0050】
第37具現例によれば、第27~第36具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第4酸化防止剤が、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、またはこれらの混合物を含み得る。
【0051】
第38具現例によれば、第34~第37具現例のうちいずれか一具現例において、
前記フェノール系酸化防止剤が、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)、2,2’-チオジエチルビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、ペンタエリトリトール-テトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、4,4’-チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)、オクタデシル-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェノール)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、6,6’-ジ-t-ブチル-2,2’-チオジ-p-クレゾール、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0052】
第39具現例によれば、第35~第38具現例のうちいずれか一具現例において、
前記リン系酸化防止剤が、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(2,6-ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)-エチル-ホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0053】
第40具現例によれば、第35~第39具現例のうちいずれか一具現例において、
前記硫黄系酸化防止剤が、3,3’-チオビス-1,1’-ジドデシルエステル、ジメチル3,3’-チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート、2,2-ビス{[3-(ドデシルチオ)-1-オキソプロポキシ]メチル}プロパン-1,3-ジイルビス[3-(ドデシルチオ)プロピオネート]、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0054】
第41具現例によれば、第20~第40具現例のうちいずれか一具現例において、
前記紫外線の照射光量が、10~1000mJ/cm範囲であり得る。
【0055】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、下記具現例のリチウム二次電池が提供される。
【0056】
第42具現例は、
正極、負極、及び前記正極と負極との間に介在された分離膜を含み、
前記分離膜が、第15~第19具現例のうちいずれか一具現例によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜であることを特徴とするリチウム二次電池に関する。
【発明の効果】
【0057】
本発明の一態様による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材は、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を含むが、架橋度が相異なる領域を含むことで、高いメルトダウン温度を有すると同時に、架橋前と比べてシャットダウン温度の変化を防止することができる。
【0058】
また、本発明の一態様による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材は、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を含むが、架橋度が相異なる領域を含むことで、架橋後のポリオレフィン多孔性基材の機械的強度が減少する現象を防止することができる。
【0059】
本発明の一態様による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を含むリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、耐熱性に優れた架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を含むことで、優れた耐熱性及び機械的強度を有する。
【0060】
本発明の一態様による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法は、第2ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部に対比して酸化防止剤が0.8重量部以上含まれた第2ポリオレフィン組成物を使用することで、高いメルトダウン温度を有すると同時に、架橋前のレベルにシャットダウン温度を維持することができ、架橋後にも機械的強度が確保された架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を製造することができる。
【0061】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を概略的に示した図である。
図2】本発明の他の実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を概略的に示した図である。
図3】本発明の一実施形態において、第1ポリオレフィン組成物と第2ポリオレフィン組成物とが共押出される過程を示した図である。
図4】実施例4、実施例5、比較例2及び比較例4で製造した架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の温度に応じた通気度の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0064】
したがって、本明細書に記載された実施形態及び図示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0065】
本明細書の全体において、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」などの用語は一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用されるものであって、各構成要素がこれら用語によって制限されることはない。
【0066】
本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材は、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を有する架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材であって、前記ポリオレフィン多孔性基材が一面から他面に延びる高さ方向において、前記一面に接する第1領域、及び前記第1領域の外側から他面側に延びる第2領域を含み、前記第1領域に含まれたポリオレフィンの架橋度と前記第2領域に含まれたポリオレフィンの架橋度との差が10%以上であることを特徴とする。
【0067】
架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材が高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を有し、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の全体における架橋度が同一である場合、メルトダウン温度は増加するが、シャットダウン温度が架橋前に比べて変化する問題がある。
【0068】
本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材は、ポリオレフィン多孔性基材の全体が架橋される場合にも、架橋度が相異なる領域を備えることで、高いメルトダウン温度及び架橋前レベルのシャットダウン温度を具現できる。また、優れた機械的強度を具現することができる。
【0069】
図1は、本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を概略的に示した図である。
【0070】
図1を参照すると、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材1Aは、一面から他面に延びる高さ方向において、前記一面に接する第1領域10Aを備える。
【0071】
前記第1領域10Aは、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を有する。すなわち、第1領域10Aは、架橋ポリオレフィンを含む。
【0072】
本明細書において、「高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造」とは、実質的にポリオレフィンからなる高分子鎖、より望ましくはポリオレフィンのみからなる高分子鎖が光開始剤の添加によって反応性を持ち、高分子鎖同士が互いに直接的に架橋結合を成した状態を意味する。したがって、追加的な架橋剤の投入によって架橋剤同士の間で起きた架橋反応は、本発明で指称する「高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造」に該当しない。また、追加的な架橋剤と高分子鎖との間で起きた架橋反応は、前記高分子鎖が実質的にポリオレフィンからなったか又はポリオレフィンのみからなったものであっても、本発明で称する「高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造」に該当しない。
【0073】
第1領域10Aは、互いに直接架橋結合されたポリオレフィン鎖によって優れた耐熱性を有する。第1領域10Aは、優れた耐熱性を有することで、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の温度がポリオレフィンの融点以上に上昇しても、基材のメルトダウンを防止する。
【0074】
図1を参照すると、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材1Aは、一面から他面に延びる高さ方向において、前記第1領域10Aの外側から他面側に延びる第2領域20Aを備える。
【0075】
前記第2領域20Aは、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を有する。すなわち、第2領域20Aは、架橋ポリオレフィンを含む。第2領域20Aは、互いに直接架橋結合されたポリオレフィン鎖によって優れた耐熱性を有する。第2領域20Aは、優れた耐熱性を有することで、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の温度がポリオレフィンの融点以上に上昇しても、基材のメルトダウンを防止する。
【0076】
本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材は、第1領域10Aに含まれたポリオレフィンの架橋度と第2領域20Aに含まれたポリオレフィンの架橋度との差が10%以上である。
【0077】
本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材は、ポリオレフィン多孔性基材全体が架橋される場合にも、架橋度の差が10%以上である第1領域10Aと第2領域20Aとを備えることで、高いメルトダウン温度及び架橋前レベルのシャットダウン温度を具現できる。また、優れた機械的強度を具現することができる。
【0078】
第1領域10A及び第2領域20Aのうち架橋度がより大きい領域は、架橋度が高いものの、ポリオレフィンの主鎖切断(main chain scission)が発生してシャットダウン温度を架橋前のレベルに維持することができる。
【0079】
ただし、前記架橋度がより大きい領域は、急激な架橋反応によって架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材が収縮し得、ポリオレフィンの主鎖切断などが過剰に発生することで、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の機械的強度が低下するおそれがある。
【0080】
第1領域10A及び第2領域20Aのうち架橋度がより小さい領域は、ポリオレフィンの主鎖切断が抑制されるため、急激な架橋反応によって架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材が収縮するか又はポリオレフィンの主鎖切断などが過剰に発生して架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の機械的強度が劣化する現象を防止することができる。これにより、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の適切な機械的強度を具現することができる。
【0081】
前記第1領域10Aの架橋度と第2領域20Aの架橋度との差が10%未満であれば、第1領域10Aの架橋度と第2領域20Aの架橋度との差が大きくないため、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材が架橋前レベルのシャットダウン温度を有し難く、優れた機械的強度を確保し難い。
【0082】
本発明の一実施形態において、前記第1領域10Aに含まれたポリオレフィンの架橋度と前記第2領域20Aに含まれたポリオレフィンの架橋度との差は、20%以上、22%以上、29%以上、30%以上、33%以上、40%以上、または41%以上であり得る。前記第1領域10Aの架橋度と第2領域20Aの架橋度との差が上述した範囲を満足する場合、架橋前レベルのシャットダウン温度を有するとともに、優れた機械的強度を確保することが容易である。
【0083】
本発明の一実施形態において、前記第1領域は、前記ポリオレフィン多孔性基材の全体厚さに対して10%~80%、15%~70%、または20%~60%の厚さを有し得る。前記第1領域が上述した厚さ範囲を満足する場合、第1領域と第2領域とが占める比率が十分に確保され、架橋前レベルのポリオレフィン多孔性基材のシャットダウン温度を維持できるとともに、メルトダウン温度を容易に上昇させることができる。
【0084】
本発明の一実施形態において、前記第1領域10Aに含まれたポリオレフィンの架橋度は、前記第2領域20Aに含まれたポリオレフィンの架橋度よりも大きくなり得る。
【0085】
前記第1領域10Aに含まれたポリオレフィンの架橋度が前記第2領域20Aに含まれたポリオレフィンの架橋度よりも大きい場合、前記第1領域10Aに含まれたポリオレフィンの架橋度は20%以上、25%以上、28%以上、30%以上、32%以上、35%以上、39%以上、40%以上、45%以上、48%以上、または50%以上、及び60%以下、50%以下、48%以下、45%以下、40%以下、39%以下、35%以下、32%以下、30%以下、28%以下、または25%以下であり得る。
【0086】
前記第1領域10Aに含まれたポリオレフィンの架橋度が上述した範囲を満足する場合、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材が架橋前レベルのシャットダウン温度を容易に維持することができる。
【0087】
本発明において、前記第1領域の架橋度は、下記の数式によって計算され得る。
架橋度(%)=100×(B/A)
【0088】
数式において、Aは第1領域の重量であり、Bは第1領域を135℃の卜リクロロベンゼン70gに浸漬して135℃で20時間放置した後、100メッシュの鉄網で濾過し、鉄網上の不溶解分を採取、真空乾燥した後の乾燥質量である。
【0089】
架橋度は、上記のような方法で測定し得るが、これに限定されず、当業界で通常使用する架橋度測定方法であれば制限なく使用可能である。
【0090】
前記第1領域10Aに含まれたポリオレフィンの架橋度が前記第2領域20Aに含まれたポリオレフィンの架橋度よりも大きい場合、前記第2領域20Aに含まれたポリオレフィンの架橋度は、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、または8%以上、及び10%以下、8%以下、5%以下、4%以下、3%以下、または2%以下であり得る。前記第2領域20Aに含まれたポリオレフィンの架橋度が上述した範囲を満足する場合、優れた機械的強度を容易に確保できる。
【0091】
前記第2領域の架橋度は、下記の数式によって計算され得る。
架橋度(%)=100×(B/A)
【0092】
数式において、Aは第2領域の重量であり、Bは第2領域を135℃の卜リクロロベンゼン70gに浸漬して135℃で20時間放置した後、100メッシュの鉄網で濾過し、鉄網上の不溶解分を採取、真空乾燥した後の乾燥質量である。
【0093】
図2は、本発明の他の実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を概略的に示した図である。
【0094】
図2の第1領域10B及び第2領域20Bについては、上述した内容を参照できる。
【0095】
図2を参照すると、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材1Bは、前記第2領域20Bの外側から他面側に延びる第3領域30Bをさらに含み得、前記第2領域20Bに含まれたポリオレフィンの架橋度と前記第3領域30Bに含まれたポリオレフィンの架橋度との差が10%以上であり得る。
【0096】
前記第3領域30Bは、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を有する。すなわち、第3領域30Bは、架橋ポリオレフィンを含む。
【0097】
本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材が第3領域30Bをさらに含む場合、第1領域10Bの架橋度と第2領域20Bの架橋度との差による分離膜の反り(curling)現象をより容易に防止することができる。
【0098】
本発明の一実施形態において、前記第3領域30Bに含まれたポリオレフィンの架橋度と前記第2領域20Bに含まれたポリオレフィンの架橋度との差は、20%以上、22%以下、29%以上、30%以上、40%以上、または41%以上であり得る。前記第3領域30Bの架橋度と第2領域20Bの架橋度との差が上述した範囲を満足する場合、架橋前レベルのシャットダウン温度を容易に維持できるとともに、優れた機械的強度を容易に確保することができる。
【0099】
本発明の一実施形態において、前記第2領域20Bは、前記ポリオレフィン多孔性基材の全体厚さに対して10%~60%、15%~50%、または15%~45%の厚さを有し得る。前記第2領域が上述した厚さ範囲を満足する場合、第1領域と第2領域と第3領域とが占める比率が十分に確保され、架橋前レベルのポリオレフィン多孔性基材のシャットダウン温度を維持できるとともに、メルトダウン温度を容易に上昇させることができる。
【0100】
本発明の一実施形態において、前記第3領域30Bに含まれたポリオレフィンの架橋度は、前記第2領域20Bに含まれたポリオレフィンの架橋度よりも大きくなり得る。
【0101】
前記第3領域30Bに含まれたポリオレフィンの架橋度が前記第2領域20Bに含まれたポリオレフィンの架橋度よりも大きい場合、前記第3領域30Bに含まれたポリオレフィンの架橋度は、20%以上、25%以上、28%以上、30%以上、32%以上、35%以上、39%以上、40%以上、45%以上、48%以上、または50%以上、及び60%以下、50%以下、48%以下、45%以下、40%以下、39%以下、35%以下、32%以下、30%以下、28%以下、または25%以下であり得る。
【0102】
前記第3領域30Bに含まれたポリオレフィンの架橋度が上述した範囲を満足する場合、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材が架橋前レベルのシャットダウン温度を容易に維持することができる。
【0103】
本発明において、前記第3領域の架橋度は、下記の数式に計算され得る。
架橋度(%)=100×(B/A)
【0104】
数式において、Aは第3領域の重量であり、Bは第3領域を135℃の卜リクロロベンゼン70gに浸漬して135℃で20時間放置した後、100メッシュの鉄網で濾過し、鉄網上の不溶解分を採取、真空乾燥した後の乾燥質量である。
【0105】
架橋度は、上記のような方法で測定し得るが、これに限定されず、当業界で通常使用する架橋度測定方法であれば制限なく使用可能である。
【0106】
本発明の一実施形態において、前記第3領域30Bは、前記第1領域10Bと同じ物性を有し得る。
【0107】
本発明の一実施形態において、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材は、多孔性フィルムであり得る。
【0108】
本発明の一実施形態において、前記ポリオレフィンは、ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリブチレン;ポリペンテン;ポリヘキセン;ポリオクテン;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、4-メチルペンテン、ヘキセン及びオクテンのうち二種以上の共重合体;またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0109】
前記ポリエチレンの非制限的な例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などが挙げられる。前記ポリエチレンが結晶度が高くて樹脂の融点が高い高密度ポリエチレンである場合、目的とする水準の耐熱性を有するとともに、モジュラス(modulus)が大きくなる効果を奏する。
【0110】
本発明の一実施形態において、前記ポリオレフィンは、200,000~1、500,000、220,000~1,000,000、250,000~800,000、または250,000~600,000の重量平均分子量を有するものであり得る。前記ポリオレフィンが上述した範囲の重量平均分子量を有する場合、ポリオレフィン多孔性基材の均一性及び製膜工程性を確保できるとともに、優れた強度及び耐熱性を具現することができる。
【0111】
前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography、PL GPC220、アジレント・テクノロジー社製)を用いて下記の条件で測定し得る。
-カラム:PL Olexis(Polymer Laboratories社)
-溶媒:TCB(トリクロロベンゼン)
-流速:1.0ml/分
-試料濃度:1.0mg/ml
-注入量:200μl
-カラム温度:160℃
-検出器:アジレント製の高温RI検出器
-スタンダード:ポリスチレン(3次関数で補正)
【0112】
本発明の一実施形態において、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材は、1H-NMR測定時に、ポリオレフィン鎖に存在する二重結合の個数が、1000個の炭素原子当り0.01個~0.6個または0.02個~0.5個であり得る。前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材が上述した二重結合の個数を有する場合、高温及び/または高電圧で電池の性能が劣化する問題を容易に防止することができる。
【0113】
このようなポリオレフィン鎖に存在する二重結合構造は、ポリオレフィン鎖の末端にも存在し得、ポリオレフィン鎖の内部、すなわち末端を除いたポリオレフィン鎖の全体にわたっても存在し得る。特に、末端を除いたポリオレフィン鎖に存在する二重結合構造の個数がポリオレフィン鎖の架橋に影響を及ぼすことができる。
【0114】
本発明の一実施形態において、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の末端を除いたポリオレフィン鎖に存在する二重結合の個数が、1000個の炭素原子当り0.005個~0.59個であり得る。前記「末端を除いたポリオレフィン鎖に存在する二重結合」とは、ポリオレフィン鎖の末端を除いたポリオレフィン鎖の全体に存在する二重結合を称する。ここで、「末端」とは、ポリオレフィン鎖の両側の終端にそれぞれ連結されている炭素原子の位置を意味する。
【0115】
本発明の一実施形態において、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の厚さは3μm~16μm、または5μm~12μmであり得る。前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の厚さが上述した範囲である場合、電池の使用中に分離膜が損傷され易いという問題を防止できるとともに、エネルギー密度を容易に確保することができる。
【0116】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を有する架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を含み得る。
【0117】
本発明の一実施形態において、前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及びバインダー高分子を含む無機物複合空隙層をさらに含み得る。
【0118】
前記無機物複合空隙層は、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の一面または両面に形成され得る。前記無機物複合空隙層は、無機フィラー、及び前記無機フィラー同士が互いに結着した状態を維持できるようにこれらを互いに付着(すなわち、バインダー高分子が無機フィラー同士の間を連結及び固定)させるバインダー高分子を含み、前記バインダー高分子によって無機フィラーとポリオレフィン多孔性基材とが結着した状態を維持できる。前記無機物複合空隙層は、無機フィラーによってポリオレフィン多孔性基材が高温で甚だしい熱収縮挙動を見せることを防止し、分離膜の安全性を向上させることができる。例えば、120℃で30分間放置してから測定した機械方向(Machine direction:MD)及び横方向(Transverse direction:TD)における分離膜の熱収縮率が、それぞれ20%以下、2%~15%、または2%~10%であり得る。
【0119】
前記無機フィラーは、電気化学的に安定さえすれば特に制限されない。すなわち、前記無機物粒子は、適用される電気化学素子の作動電圧範囲(例えば、Li/Li基準で0~5V)で酸化及び/または還元反応が起きないものであれば、特に制限されない。特に、無機フィラーとして誘電率の高い無機物粒子を使用する場合、液体電解質内の電解質塩、例えばリチウム塩の解離度増加に寄与して電解液のイオン伝導度を向上させることができる。
【0120】
上述した理由から、本発明の一実施形態において、前記無機フィラーは、誘電率定数が5以上、または10以上の高誘電率無機フィラーを含み得る。誘電率定数が5以上の無機フィラーの非制限的な例としては、BaTiO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、ハフニア(HfO)、SrTiO、SnO、CeO、MgO、Mg(OH)、NiO、CaO、ZnO、ZrO、SiO、Y、Al、AlOOH、Al(OH)、SiC、TiO、またはこれらの混合体などが挙げられる。
【0121】
また、本発明の他の実施形態において、前記無機フィラーとしては、リチウムイオン伝達能力を有する無機フィラー、すなわちリチウム元素を含むもののリチウムを貯蔵せず、リチウムイオンを移動させる機能を有する無機フィラーを使用し得る。リチウムイオン伝達能力を有する無機フィラーの非制限的な例としては、リチウムホスフェート(LiPO)、リチウムチタンホスフェート(LiTi(PO、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LiAlTi(PO、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、14LiO-9Al-38TiO-39Pなどのような(LiAlTiP)系ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LiLaTiO、0<x<2、0<y<3)、Li3.25Ge0.250.75などのようなリチウムゲルマニウムチオホスフェート(LiGe、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、LiNなどのようなリチウムナイトライド(Li、0<x<4、0<y<2)、LiPO-LiS-SiSなどのようなSiS系ガラス(LiSi、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LiI-LiS-PなどのようなP系ガラス(Li、0<x<3、0<y<3、0<z<7)、またはこれらのうち二つ以上が挙げられる。
【0122】
本発明の一実施形態において、前記無機フィラーの大きさには制限がないが、均一な厚さのコーティング層形成及び適切な孔隙率のため、前記無機フィラーの平均粒径は、0.001~10μm、0.01~10μm、0.05~5μm、または0.1~2μmであり得る。前記無機フィラーの大きさがこのような範囲を満足する場合、均一な厚さ及び適切な気孔度を有する無機物複合空隙層の形成が容易であり、無機フィラーの分散性が良好であり、所望のエネルギー密度を達成することができる。
【0123】
このとき、前記無機フィラーの平均粒径とは、D50粒径を意味して、「D50粒径」は、粒径に応じた粒子個数累積分布の50%地点における粒径を意味する。前記粒径は、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定し得る。具体的には、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac S3500)に導入し、粒子がレーザービームを通過するとき、粒子の大きさに応じた回折パターンの差を測定して粒度分布を算出する。測定装置における粒径に応じた粒子個数累積分布の50%になる地点での粒子直径を算出することで、D50粒径を測定できる。
【0124】
前記バインダー高分子は、ガラス転移温度(glass transition temperature、T)が-200~200℃であり得る。前記バインダー高分子のガラス転移温度が上述した範囲を満足する場合、最終的に形成される無機物複合空隙層の柔軟性及び弾性などのような機械的物性が向上できる。前記バインダー高分子はイオン伝導能力を有するものであり得る。前記バインダー高分子がイオン伝導能力を有する場合、電池の性能を一層向上させることができる。前記バインダー高分子は、誘電率定数が1.0~100(測定周波数=1kHz)または10~100であり得る。前記バインダー高分子の誘電率定数が上述した範囲を満足する場合、電解液における塩の解離度を向上させることができる。
【0125】
本発明の一実施形態において、前記バインダー高分子は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン、アクリル系共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリアリレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0126】
前記アクリル系共重合体は、エチルアクリレート-アクリル酸-N,N-ジメチルアクリルアミド共重合体、エチルアクリレート-アクリル酸-2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート共重合体、エチルアクリレート-アクリル酸-N,N-ジエチルアクリルアミド共重合体、エチルアクリレート-アクリル酸-2-(ジエチルアミノ)エチルアクリレート共重合体、またはこれらのうち二つ以上を含み得るが、これらに制限されない。
【0127】
本発明の一実施形態において、前記無機フィラーとバインダー高分子との重量比は、最終的に製造される無機物複合空隙層の厚さ、気孔の大きさ及び気孔度を考慮して決定されるが、50:50~99.9:0.1、または60:40~99.5:0.5であり得る。前記無機フィラーとバインダー高分子との重量比が上述した範囲である場合、無機フィラー同士の間に形成される空き空間を十分に確保して無機物複合空隙層の気孔の大きさ及び気孔度を容易に確保できる。また、無機フィラー同士の接着力も容易に確保することができる。
【0128】
本発明の一実施形態において、前記無機物複合空隙層は、前記無機フィラーが充填されて互いに接触した状態で前記バインダー高分子によって互いに結着し、これにより無機フィラー同士の間にインタースティシャル・ボリューム(interstitial volume)が形成され、前記無機フィラー同士の間のインタースティシャル・ボリュームは空き空間になって気孔を形成する構造を有し得る。
【0129】
本発明の他の実施形態において、前記無機物複合空隙層は、前記無機フィラー、及び前記無機フィラーの表面の少なくとも一部を被覆するバインダー高分子を含む複数のノード(node)と、前記ノードの前記バインダー高分子から糸(thread)状に形成された一つ以上のフィラメントと、を含み、前記フィラメントは前記ノードから延びて他のノードを連結するノード連結部分を備え、前記ノード連結部分は、前記バインダー高分子から由来した複数のフィラメント同士が互いに交差して3次元網状構造体を成す構造を有し得る。
【0130】
本発明の一実施形態において、前記無機物複合空隙層の平均気孔大きさは、0.001~10μmまたは0.001~1μmであり得る。前記無機物複合空隙層の平均気孔大きさは、キャピラリーフローポロメトリー(Capillary flow porometry)方法によって測定し得る。キャピラリーフローポロメトリーは、厚さ方向で最も小さい気孔の直径を測定する方式である。したがって、キャピラリーフローポロメトリーによって無機物複合空隙層のみの平均気孔大きさを測定するためには、無機物複合空隙層を架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材から分離し、分離した無機物複合空隙層を支持可能な不織布で包んだ状態で測定しなければならず、このとき、前記不織布の気孔の大きさは無機物複合空隙層の気孔の大きさに比べて遥かに大きくなければならない。
【0131】
また、前記無機物複合空隙層の気孔度(porosity)は、5%~95%、10%~95%、20%~90%、または30~80%であり得る。前記気孔度は、前記多孔性コーティング層の厚さ、横長及び縦長から計算した体積から、前記多孔性コーティング層の各構成成分の重さと密度から換算した体積を引き算(subtraction)した値に該当する。
【0132】
前記無機物複合空隙層の気孔度は、走査電子顕微鏡(SEM)イメージ、水銀ポロシメーター(mercury porosimeter)、または細孔分布測定装置(porosimetry analyzer;Bell Japan、Belsorp-II mini)を使用して窒素ガス吸着フローによってBET6点法で測定し得る。
【0133】
本発明の一実施形態において、前記無機物複合空隙層の厚さは、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の一面で1.5μm~5.0μmであり得る。前記無機物複合空隙層の厚さが上述した範囲を満足する場合、電極との接着力が優れながらも電池のセル強度を容易に増加させることができる。
【0134】
本発明の他の実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材と、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及び第1バインダー高分子を含む無機物複合空隙層と、前記無機物複合空隙層上に位置し、第2バインダー高分子を含む多孔性接着層と、を含み得る。
【0135】
前記無機物複合空隙層は、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の一面または両面に形成され得る。前記無機物複合空隙層は、無機フィラー、及び前記無機フィラー同士が互いに結着した状態を維持できるようにこれらを互いに付着(すなわち、第1バインダー高分子が無機フィラー同士の間を連結及び固定)させる第1バインダー高分子を含み、前記第1バインダー高分子によって無機フィラーと架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材とが結着した状態を維持できる。前記無機物複合空隙層は、無機フィラーによって架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材が高温で甚だしい熱収縮挙動を見せることを防止し、分離膜の安全性を向上させることができる。例えば、150℃で30分間放置してから測定した機械方向及び横方向における分離膜の熱収縮率が、それぞれ20%以下、2%~15%、または2%~10%であり得る。
【0136】
本発明の一実施形態において、前記無機物複合空隙層は、前記無機フィラーが充填されて互いに接触した状態で前記第1バインダー高分子によって互いに結着し、これにより無機フィラー同士の間にインタースティシャル・ボリュームが形成され、前記無機フィラー同士の間のインタースティシャル・ボリュームは空き空間になって気孔を形成する構造を有し得る。
【0137】
前記多孔性接着層は、第2バインダー高分子を含むことで、前記無機物複合空隙層を備える分離膜と電極との接着力を確保できるようにする。また、前記多孔性接着層には気孔が形成されており、分離膜の抵抗が高くなることを防止することができる。
【0138】
本発明の一実施形態において、前記多孔性接着層は、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の表面及び/または内部に第2バインダー高分子が浸透しないため、分離膜の抵抗が高くなる現象を最小化することができる。
【0139】
本発明の一実施形態において、前記多孔性接着層は、前記第2バインダー高分子を含む一つ以上の接着部と前記接着部が形成されていない一つ以上の無地部(non-coating region)とを含むパターンを有するものであり得る。前記パターンは、ドット型、ストライプ型、斜線型、波型、三角形、四角形、または半円形であり得る。前記多孔性接着層がパターンを有する場合、分離膜の抵抗が改善され、多孔性接着層が形成されていない無地部を通じて電解液が含浸可能であるため、分離膜の電解液含浸性が改善できる。
【0140】
本発明の一実施形態において、前記多孔性接着層の厚さは、0.5μm~1.5μm、0.6μm~1.2μm、または0.6μm~1.0μmであり得る。前記多孔性接着層の厚さが上述した範囲である場合、電極との接着力に優れ、その結果、電池のセル強度が増加できる。また、電池のサイクル特性及び抵抗特性の面で有利である。
【0141】
本発明の一実施形態において、前記第1バインダー高分子は、耐熱性に優れたバインダー高分子であり得る。前記第1バインダー高分子が優れた耐熱性を有する場合、無機物複合空隙層の耐熱特性がさらに向上できる。例えば150℃で30分間放置してから測定した機械方向及び横方向における分離膜の熱収縮率が、それぞれ20%以下、2%~15%、2%~10%、2%~5%、0%~5%、または0%~2%であり得る。
【0142】
本発明の一実施形態において、前記第1バインダー高分子は、アクリル系重合体、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0143】
具体的には、前記アクリル系重合体は、アクリル系単量体のみを重合したアクリル系単独重合体を含み得、アクリル系単量体と他の単量体との共重合体も含み得る。例えば、前記アクリル系重合体は、エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0144】
本発明の一実施形態において、前記無機フィラーと第1バインダー高分子との重量比は、95:5~99.9:0.1、96:4~99.5:0.5、または97:3~99:1であり得る。前記無機フィラーと第1バインダー高分子との重量比が上述した範囲である場合、分離膜の単位面積当りに分布する無機フィラーの含量が多くなって、高温における分離膜の熱的安全性が改善できる。例えば、150℃で30分間放置してから測定した機械方向及び横方向における分離膜の熱収縮率がそれぞれ20%以下、2%~15%、2%~10%、2%~5%、0%~5%、または0%~2%であり得る。
【0145】
前記第2バインダー高分子は、接着層の形成に通常使用されるバインダー高分子であり得る。前記第2バインダー高分子は、ガラス転移温度(T)が-200~200℃であり得る。前記第2バインダー高分子のガラス転移温度が上述した範囲を満足する場合、最終的に形成される接着層の柔軟性及び弾性などのような機械的物性が向上できる。前記第2バインダー高分子はイオン伝導能力を有するものであり得る。イオン伝導能力を有するバインダー高分子を第2バインダー高分子として使用する場合、電池の性能を一層向上させることができる。前記第2バインダー高分子は、誘電率定数が1.0~100(測定周波数=1kHz)または10~100であり得る。前記第2バインダー高分子の誘電率定数が上述した範囲を満足する場合、電解液における塩の解離度を向上させることができる。
【0146】
本発明の一実施形態において、前記第2バインダー高分子は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートの共重合体、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリアリレート、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0147】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を備える架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を含むことで、高温安全性に優れる。例えば、前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜のメルトダウン温度が、従来の架橋前のリチウム二次電池用分離膜のメルトダウン温度に比べて増加できる。例えば、分離膜のメルトダウン温度は、160℃以上、170℃以上、180℃以上、190℃以上、197℃以上、198℃以上、200℃以上、または230℃以上であり得る。
【0148】
本明細書において、「架橋前のリチウム二次電池用分離膜」とは、架橋していない架橋構造不含ポリオレフィン多孔性基材からなる分離膜;架橋していない架橋構造不含ポリオレフィン多孔性基材、及び前記架橋構造不含ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及びバインダー高分子を含む無機物複合空隙層を含む分離膜;または架橋していない架橋構造不含ポリオレフィン多孔性基材、前記架橋構造不含ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及び第1バインダー高分子を含む無機物複合空隙層、及び前記無機物複合空隙層上に位置し、第2バインダー高分子を含む多孔性接着層を含む分離膜;を称する。
【0149】
前記メルトダウン温度は、熱機械分析方法(Thermomechanical Analysis、TMA)で測定し得る。例えば、機械方向と横方向におけるサンプルをそれぞれ採取した後、TMA装置(TAインスツルメント、Q400)に幅4.8mm×長さ8mmのサンプルを入れて0.01Nの張力を加えた状態で、昇温速度5℃/分で温度を30℃から220℃まで変化させながら、長さが急増してサンプルが切れる温度をメルトダウン温度とし得る。
【0150】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、従来の架橋前のリチウム二次電池用分離膜と比べて、シャットダウン温度の増加が大きくなく、その変化率も小さい。本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、架橋前と比べて分離膜のメルトダウン温度は増加する一方で、シャットダウン温度の増加は大きくないため、シャットダウン温度による過充電安全性を確保できるとともに、分離膜の高温安全性を大幅に増加することができる。
【0151】
本発明の一実施形態において、前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、シャットダウン温度が146℃以下、145℃以下、140℃以下、または133℃~140℃であり得る。前記リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜が上述したシャットダウン温度を有する場合、過充電による安全性を確保できるとともに、電池組み立て時の高温、加圧工程で架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の気孔が損傷されて抵抗が上昇する問題を容易に防止することができる。
【0152】
前記シャットダウン温度は、王研式通気度試験装置を用いて1分に5℃ずつ昇温させたとき、0.05Mpaの一定圧力で100mlの空気が分離膜を通過するのにかかる時間(秒)を測定し、分離膜の通気度が急激に増加する温度をシャットダウン温度とし得る。
【0153】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、ポリオレフィン多孔性基材内の高分子鎖が直接的に連結された架橋構造を有する架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を備えることで、架橋後にもポリオレフィン多孔性基材の気孔構造が実質的に架橋前のまま維持できる。
【0154】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、通気度、坪量、引張強度、引張伸度(tensile elongation)、突刺し強度、電気抵抗などが、架橋前のリチウム二次電池用分離膜の通気度、坪量、引張強度、引張伸度、突刺し強度、電気抵抗などと比べて格段に劣化することはなく、その変化率も小さい。
【0155】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、架橋前のリチウム二次電池用分離膜と比べて、通気度の変化率が10%以下、0%~10%、0%~5%、または0%~3%であり得る。
【0156】
通気度の変化率は、下記の式で計算し得る。
通気度の変化率(%)=[(架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の通気度)-(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の通気度)]/(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の通気度)×100
【0157】
本明細書の全体において、前記「架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜」は、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材からなる分離膜;架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材、及び前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも一面に位置し、無機フィラー及びバインダー高分子を含む無機物複合空隙層を含む分離膜;または架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材、前記架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも一面に位し、無機フィラー及び第1バインダー高分子を含む無機物複合空隙層、及び前記無機物複合空隙層の上面に位置し、第2バインダー高分子を含む多孔性接着層を含む分離膜;を称する。
【0158】
前記通気度(ガーレー)は、ASTM D726-94方法によって測定し得る。ここで使用されるガーレーは空気の流れに対する抵抗であって、ガーレーデンソメーターによって測定される。ここで説明された通気度の値は、100mlの空気が12.2 in HOの圧力下で、サンプル多孔支持体1inの断面を通過するのにかかる時間(秒)、すなわち通気時間として示す。
【0159】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、架橋前のリチウム二次電池用分離膜と比べて、坪量の変化率が5%以下、または0%~5%であり得る。
【0160】
坪量の変化率は、下記の式で計算し得る。
坪量の変化率(%)=[(架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の坪量)-(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の坪量)]/(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の坪量)×100
【0161】
前記坪量(g/m)は、縦横がそれぞれ1mであるサンプルを用意し、その重さを測定して示す。
【0162】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、架橋前のリチウム二次電池用分離膜と比べて、機械方向及び横方向における引張強度の変化率が20%以下、0%~20%、0%~10%、0%~9%、0%~8%、または0%~7.53%であり得る。
【0163】
引張強度の変化率は、下記の式で計算し得る。
機械方向における引張強度の変化率(%)=[(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の機械方向における引張強度)-(架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の機械方向における引張強度)]/(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の機械方向における引張強度)×100
横方向における引張強度の変化率(%)=[(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の横方向における引張強度)-(架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の横方向における引張強度)]/(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の横方向における引張強度)×100
【0164】
前記引張強度は、ASTM D882に準じて、前記試片をUniversal Testing Systems(Instron(登録商標) 3345)を用いて50mm/分の速度で機械方向及び横方向にそれぞれ引っ張ったとき、試片が破断する時点における強度を意味し得る。
【0165】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、架橋前のリチウム二次電池用分離膜と比べて、機械方向及び横方向における引張伸度の変化率が20%以下、または0%~20%であり得る。
【0166】
引張伸度の変化率は、下記の式で計算し得る。
機械方向における引張伸度の変化率(%)=[(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の機械方向における引張伸度)-(架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の機械方向における引張伸度)]/(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の機械方向における引張伸度)×100
横方向における引張伸度の変化率(%)=[(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の横方向における引張伸度)-(架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の横方向における引張伸度)]/(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の横方向における引張伸度)×100
【0167】
前記引張伸度は、ASTM D882に準じて、前記試片をUniversal Testing Systems(Instron(登録商標) 3345)を用いて50mm/分の速度で機械方向及び横方向にそれぞれ引っ張ったとき、試片が破断するまで伸びた最大長さを測定し、下記の式で計算し得る。
機械方向における引張伸度(%)=(破断直前試片の機械方向の長さ-伸び前試片の機械方向の長さ)/(伸び前試片の機械方向の長さ)×100
横方向における引張伸度(%)=(破断直前試片の横方向の長さ-伸び前試片の横方向の長さ)/(伸び前試片の横方向の長さ)×100
【0168】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、架橋前のリチウム二次電池用分離膜と比べて、突刺し強度の変化率が10%以下、0.5%~10%、1%~9%、または1.18%~8.71%であり得る。
【0169】
突刺し強度の変化率は、下記の式で計算し得る。
突刺し強度の変化率(%)=[(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の突刺し強度)-(架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の突刺し強度)]/(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の突刺し強度)×100
【0170】
前記突刺し強度は、ASTM D2582によって測定し得る。具体的には、1mmのラウンドチップが120mm/分の速度で作動するように設定した後、ASTM D2582によって前記突刺し強度を測定し得る。
【0171】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜は、架橋前のリチウム二次電池用分離膜と比べて、電気抵抗の変化率が15%以下、2%~10%、または2%~5%であり得る。
【0172】
電気抵抗の変化率は、下記の式で計算し得る。
電気抵抗の変化率(%)=[(架橋後のリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の電気抵抗)-(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の電気抵抗)]/(架橋前のリチウム二次電池用分離膜の電気抵抗)×100
【0173】
電気抵抗は、分離膜サンプルを含んで製作されたコインセルを常温で1日間放置した後、分離膜の抵抗をインピーダンス測定法で測定して求め得る。
【0174】
本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材は、後述する架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法によって製造され得るが、これによって限定されない。
【0175】
本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材は、ポリオレフィン多孔性基材の一面のみに紫外線を照射し、他面には紫外線を照射せずに製造し得る。
【0176】
本発明の他の実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法は、
(S1)ポリオレフィン及び希釈剤を含む第1ポリオレフィン組成物、及びポリオレフィン、希釈剤及び酸化防止剤を含む第2ポリオレフィン組成物を製造する段階と、
(S2)前記第1ポリオレフィン組成物の押出結果物の上面に第2ポリオレフィン組成物の押出結果物が積層されるように、前記第1ポリオレフィン組成物と第2ポリオレフィン組成物とを共押出する段階と、
(S3)前記(S2)段階の結果物をシート状に成形及び延伸してポリオレフィン多孔性基材を製造する段階と、
(S4)前記(S3)段階の結果物から前記希釈剤を抽出する段階と、
(S5)前記(S4)段階の結果物を熱固定する段階と、
(S6)光開始剤を含む光開始剤組成物を前記(S5)段階の結果物に適用する段階と、
(S7)前記(S6)段階の結果物に紫外線を照射する段階と、を含み、
前記酸化防止剤が、前記第2ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.8重量部以上で含まれることを特徴とする。
【0177】
以下、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用分離膜の製造方法を主要部分を中心に説明する。
【0178】
本発明では、ポリオレフィン多孔性基材の表面に光開始剤が導入され、紫外線の照射時にポリオレフィン多孔性基材が架橋される。ここで、前記「ポリオレフィン多孔性基材の表面」は、ポリオレフィン多孔性基材の最外層の表面だけでなく、ポリオレフィン多孔性基材の内部に存在する気孔の表面を含み得る。
【0179】
前記光開始剤は、ポリオレフィン多孔性基材内の高分子鎖を直接的に光架橋させる。前記光開始剤は、架橋剤、または共開始剤や相乗剤などの他の構成要素なく、光開始剤単独でポリオレフィン多孔性基材を架橋させることができる。光吸収のみで水素引き抜き反応(hydrogen abstraction)によって光開始剤内の水素原子が除去されながら光開始剤が反応性化合物になり、このような光開始剤がポリオレフィン多孔性基材内の高分子鎖にラジカルを形成して高分子鎖を反応性にして、高分子鎖が互いに直接連結されて光架橋される。
【0180】
本発明の一実施形態による架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の製造方法は、前記光開始剤を使用することで、ポリオレフィン多孔性基材内の高分子鎖にラジカルを生成可能であるため、高分子鎖同士の間が直接的に連結された架橋構造を形成することができる。
【0181】
まず、ポリオレフィン及び希釈剤を含む第1ポリオレフィン組成物、及びポリオレフィン、希釈剤及び酸化防止剤を含む第2ポリオレフィン組成物を製造する(S1)。
【0182】
前記第1ポリオレフィン組成物は、後述する共押出、延伸などの段階を経た後、上述した第1領域及び第2領域のうち架橋度がより大きい領域として製造される。前記ポリオレフィンについては、上述した内容を参照できる。
【0183】
本発明の一実施形態において、前記希釈剤は、パラフィン;ワックス;大豆油;ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレートなどのフタル酸エステル類;ジフェニルエーテル、ベンジルエーテルなどの芳香族エーテル類;パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの炭素数10~20の脂肪酸類;パルミチン酸アルコール、ステアリン酸アルコール、オレイン酸アルコールなどの炭素数10~20の脂肪酸アルコール類;パルミチン酸モノ-、ジ-、またはトリエステル、ステアリン酸モノ-、ジ-またはトリエステル、オレイン酸モノ-、ジ-またはトリエステル、リノール酸モノ-、ジ-またはトリエステルなどの、脂肪酸基の炭素数が4~26である飽和及び不飽和脂肪酸、若しくは、不飽和脂肪酸の二重結合がエポキシで置換された一つまたは二つ以上の脂肪酸が、ヒドロキシ基が1~8個であって炭素数が1~10個であるアルコールとエステル結合された脂肪酸エステル類;またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0184】
前記ポリオレフィンと希釈剤との重量比は、20:80~50:50、または40:60~30:70であり得る。ポリオレフィンと希釈剤との重量比が上述した範囲を満足する場合、最終的に製造されるポリオレフィン多孔性基材の適切な水準の気孔度及び平均気孔大きさを確保でき、気孔同士が互いに連結されて透過度が改善され、押出負荷の上昇を防止して加工が容易な程度の粘度を確保でき、また、ポリオレフィンが希釈剤に熱力学的に混練されずゲル形態で押出されて延伸時に破断及び厚さのバラツキなどの問題を引き起こすことを防止することができる。また、最終的に製造されるポリオレフィン多孔性基材の強度の低下を容易に防止することができる。
【0185】
前記第2ポリオレフィン組成物は、後述する共押出、延伸などの段階を経た後、上述した第1領域及び第2領域のうち架橋度の低い領域として製造される。前記ポリオレフィン及び希釈剤の種類、及び前記ポリオレフィンと希釈剤との重量比については、上述した内容を参照できる。
【0186】
光架橋によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の製造には、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の一面から他面に延びる高さ方向において選択的に光開始剤を含む光開始剤組成物を適用し難い。すなわち、光開始剤組成物がリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の全体に適用される。そのため、紫外線の照射を行えば、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の一面から他面に延びる高さ方向で同等の強度で紫外線による直接架橋が起き、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の一面から他面に延びる高さ方向で類似の架橋度を有するようになるため、架橋前レベルのシャットダウン温度を維持し難いという問題が生じる。
【0187】
酸化防止剤は、ポリオレフィン鎖に形成されたフリーラジカルを中和することで、分離膜の表面での紫外線による架橋反応を最小化することができる。このような酸化防止剤は、ポリオレフィン内に生成されたラジカルと反応してポリオレフィンを安定化させるラジカル捕捉剤と、ラジカルによって生成される過酸化物を安定した形態の分子に分解する過酸化物分解剤とに大きく分けられる。前記ラジカル捕捉剤は、水素を引き抜いてラジカルを安定化させて自らがラジカルになるが、共鳴効果または電子の再配列を通じて安定した形態で残留し得る。前記過酸化物分解剤は、ラジカル捕捉剤と併用するとき、より優れた効果を発揮することができる。
【0188】
本発明では、第2ポリオレフィン組成物に酸化防止剤を含むことで、後述する光開始剤組成物がリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の全体に適用されても、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の製造方法によって製造された分離膜が架橋前レベルのシャットダウン温度及び機械的強度を維持することができる。
【0189】
前記第2ポリオレフィン組成物に含まれる酸化防止剤は、前記第2ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.8重量部以上で含まれる。前記酸化防止剤が上述した範囲で第2ポリオレフィン組成物に含まれることで、上述した第1領域の架橋度と第2領域の架橋度との差が10%以上になり得る。
【0190】
本発明の一実施形態において、前記第2ポリオレフィン組成物に含まれる酸化防止剤は、ラジカル捕捉剤である第1酸化防止剤、及び過酸化物分解剤である第2酸化防止剤を含み得る。第2ポリオレフィン組成物に第1酸化防止剤及び第2酸化防止剤の二つの相異なる酸化防止剤を含む場合、前記酸化防止剤同士の相乗効果によって第2ポリオレフィン組成物の架橋反応を容易に防止することができる。
【0191】
本発明の一実施形態において、前記第1酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、またはこれらの混合物であり得る。
【0192】
前記フェノール系酸化防止剤は、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)、2,2’-チオジエチルビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、ペンタエリトリトールテトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、4,4’-チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)、オクタデシル-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェノール)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、6,6’-ジ-t-ブチル-2,2’-チオジ-p-クレゾール、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0193】
本発明の一実施形態において、前記第2酸化防止剤は、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、またはこれらの混合物であり得る。
【0194】
前記リン系酸化防止剤は、過酸化物を分解してアルコールを生成し、フォスフェートに変化する。前記リン系酸化防止剤は、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(2,6-ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)-エチル-ホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0195】
前記硫黄系酸化防止剤は、3,3’-チオビス-1,1’-ジドデシルエステル、ジメチル3,3’-チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート、2,2-ビス{[3-(ドデシルチオ)-1-オキソプロポキシ]メチル}プロパン-1,3-ジイルビス[3-(ドデシルチオ)プロピオネート]、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0196】
本発明の一実施形態において、前記第1酸化防止剤は、前記第2ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.5重量部以上及び1.5重量部以下で含まれ得る。
【0197】
本発明の一実施形態において、前記第2酸化防止剤は、前記第2ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.3重量部以上または0.5重量部以上、及び0.7重量部以下で含まれ得る。
【0198】
前記第1及び/または第2酸化防止剤が上述した範囲で第2ポリオレフィン組成物に含まれることで、上述した第1領域の架橋度と第2領域の架橋度との差が10%以上になり得る。
【0199】
一方、ポリオレフィンは、押出、延伸などの加工段階において、熱または機械的せん断応力などによってアルキルラジカルを生成し得る。生成されたラジカルは、酸素及び残留金属成分などによって急速に酸化し、ポリオレフィンの外観及び形態の変化だけでなく、化学構造及び物性の変化をもたらし得る。酸化防止剤は、上述した効果の他にも、このようなポリオレフィンの劣化問題を防止することができる。本発明の一実施形態において、このようなポリオレフィンの劣化(分解、変色)を防止するため、第1ポリオレフィン組成物に酸化防止剤をさらに添加し得る。
【0200】
本発明の一実施形態において、前記第1ポリオレフィン組成物に含まれる酸化防止剤の含量は、0.2重量部以下、または0.07重量部~0.2重量部であり得る。前記酸化防止剤の含量が上述した範囲を満足する場合、ポリオレフィンの架橋を妨害しながら、第1ポリオレフィン組成物の劣化を防止することができる。
【0201】
本発明の一実施形態において、前記第1ポリオレフィン組成物に含まれる酸化防止剤は、ラジカル捕捉剤である第3酸化防止剤、及び過酸化物分解剤である第4酸化防止剤をさらに含み得る。前記第1ポリオレフィン組成物に第3酸化防止剤及び第4酸化防止剤の二つの相異なる酸化防止剤を含む場合、相乗効果によって第1ポリオレフィン組成物の劣化を容易に防止することができる。
【0202】
本発明の一実施形態において、前記第3酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、またはこれらの混合物であり得る。前記フェノール系酸化防止剤については、上述した内容を参照できる。前記第4酸化防止剤は、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、またはこれらの混合物であり得る。前記リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤については、上述した内容を参照できる。
【0203】
本発明の一実施形態において、前記第3酸化防止剤は、上述した第1酸化防止剤と同じ種類であり得る。前記第4酸化防止剤は、上述した第2酸化防止剤と同じ種類であり得る。
【0204】
本発明の一実施形態において、前記第3酸化防止剤は、前記第1ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.05重量部~0.1重量部で含まれ得る。
【0205】
本発明の一実施形態において、前記第4酸化防止剤は、前記第1ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.02重量部~0.1重量部で含まれ得る。
【0206】
前記第3酸化防止剤及び/または第4酸化防止剤が上述した範囲で第1ポリオレフィン組成物に含まれることで、ポリオレフィンの架橋を妨害しないため上述した第1領域の架橋度と第2領域の架橋度との差を10%以上にし易く、第1ポリオレフィン組成物の劣化を容易に防止することができる。
【0207】
その後、前記第1ポリオレフィン組成物の押出結果物の上面に第2ポリオレフィン組成物の押出結果物が積層されるように、前記第1ポリオレフィン組成物と第2ポリオレフィン組成物とを共押出する(S2)。
【0208】
前記第1ポリオレフィン組成物と前記第2ポリオレフィン組成物とは、第1ポリオレフィン組成物/第2ポリオレフィン組成物形態の流れで制御されて共押出される。
【0209】
本発明の一実施形態において、前記(S2)段階は、前記第1ポリオレフィン組成物の押出結果物、前記第2ポリオレフィン組成物の押出結果物、及び前記第1ポリオレフィン組成物の押出結果物が積層されるように共押出する段階を含み得る。具体的には、前記第1ポリオレフィン組成物の押出結果物の上面に第2ポリオレフィン組成物の押出結果物が積層され、前記第2ポリオレフィン組成物の押出結果物の上面に前記第1ポリオレフィン組成物の押出結果物が積層されるように共押出し得る。すなわち、前記第1ポリオレフィン組成物及び前記第2ポリオレフィン組成物が第1ポリオレフィン組成物/第2ポリオレフィン組成物/第1ポリオレフィン組成物形態の流れで制御されて共押出され得る。
【0210】
本発明の他の実施形態において、前記(S2)段階は、前記第2ポリオレフィン組成物の押出結果物、前記第1ポリオレフィン組成物の押出結果物、及び前記第2ポリオレフィン組成物の押出結果物が積層されるように共押出する段階を含み得る。具体的には、前記第1ポリオレフィン組成物の押出結果物の一面に第2ポリオレフィン組成物の押出結果物が積層され、前記第1ポリオレフィン組成物の押出結果物の他面に前記第2ポリオレフィン組成物の押出結果物が積層されるように共押出し得る。すなわち、前記第1ポリオレフィン組成物及び前記第2ポリオレフィン組成物が第2ポリオレフィン組成物/第1ポリオレフィン組成物/第2ポリオレフィン組成物形態の流れで制御されて共押出され得る。
【0211】
図3は、本発明の一実施形態において、第1ポリオレフィン組成物と第2ポリオレフィン組成物とが共押出される過程を示した図である。
【0212】
図3を参照すると、第1ポリオレフィン組成物100と第2ポリオレフィン組成物200とが共押出される。これにより、第2ポリオレフィン組成物200の両側が前記第1ポリオレフィン組成物100によって被覆され得る。
【0213】
前記共押出の方法は、当業界で使用可能な方法であれば特に制限されない。
【0214】
その後、前記(S2)段階の結果物をシート状に成形及び延伸してポリオレフィン多孔性基材を製造する(S3)。
【0215】
前記シート状に成形及び延伸する段階(S3)は、前記(S2)段階の結果物を冷却して冷却押出物を形成する段階と、前記冷却押出物を縦方向及び横方向に二軸延伸して延伸シートを形成する段階と、を含み得る。すなわち、上述した第1ポリオレフィン組成物と第2ポリオレフィン組成物との共押出結果物を製造した後、水冷、空冷式を用いた一般的なキャスティングまたはカレンダリング方法を使用して冷却押出物を形成し得る。その後、冷却押出物を用いて延伸してシートを形成することで、リチウム二次電池用分離膜に要求される強度を付与することができる。
【0216】
前記延伸は、ロール方式またはテンター方式を用いて逐次または同時延伸で行われ得る。延伸比は、縦方向及び横方向にそれぞれ3倍以上、望ましくは5~10倍であり、総延伸比は20~80であり得る。延伸比が上述した範囲である場合、両方向の配向が十分であると同時に、縦方向と横方向との物性均衡を維持でき、気孔形成を十分に行うことができる。
【0217】
このとき、延伸温度は、使用されたポリオレフィンの融点、及び後述する光開始剤の濃度及び種類によって変わり得る。本発明の一実施形態において、前記延伸温度は、前記シート内のポリオレフィンの結晶部分の30~80重量%が溶融する温度範囲で選択され得る。前記延伸温度が上述した範囲である場合、ポリオレフィン多孔性基材の延伸が容易であるとともに、延伸時の破断を防止することができる。一方、温度に応じたポリオレフィンの結晶部分の溶融程度は、DSC(differential scanning calorimetry、示差走査熱量測定)から得られる。
【0218】
その後、前記(S3)段階の結果物から前記希釈剤を抽出する(S4)。具体的には、有機溶媒を使用して前記希釈剤を抽出し得る。このとき、使用可能な有機溶媒としては、ポリオレフィン押出に使用された希釈剤を抽出できるものであれば、特に制限なく使用可能である。例えば、前記有機溶媒としては、抽出効率が高くて乾燥が速いメチルエチルケトン、塩化メチレン、ヘキサンなどが使用され得る。
【0219】
前記抽出方法としては、浸漬(immersion)方法、溶剤スプレー(solvent spray)方法、超音波(ultrasonic)法などを単独でまたは複合的に使用し得る。抽出の後、ポリオレフィン多孔性基材に残留する希釈剤の含量は、1重量%以下であり得る。
【0220】
また、抽出時間は、製造されるポリオレフィン多孔性基材の厚さによって異なるが、厚さ10~30μmのポリオレフィン多孔性基材の場合は、2~4分が適切である。
【0221】
その後、前記(S4)段階の結果物を熱固定する(S5)。前記熱固定段階は、分離膜を固定して熱を加え、収縮しようとする分離膜を強制的に固定して残留応力を除去する段階である。
【0222】
本発明の一実施形態において、前記ポリオレフィンがポリエチレンである場合、前記熱固定温度は100℃~140℃、105℃~135℃、または110℃~130℃であり得る。ポリオレフィンがポリエチレンである場合、前記熱固定温度が上述した範囲を満足すると、ポリオレフィン分子の再配列が起きて多孔性膜の残留応力を除去でき、部分的溶融によってポリオレフィン多孔性基材の気孔が詰まる問題を減少させることができる。
【0223】
本発明の一実施形態において、前記熱固定の時間は、10秒~120秒、20秒~90秒、または30秒~60秒であり得る。上述した時間で熱固定する場合、ポリオレフィン分子の再配列が起きて多孔性膜の残留応力を除去でき、部分的溶融によってポリオレフィン多孔性基材の気孔が詰まる問題を減少させることができる。
【0224】
本発明の一実施形態において、前記製造されたポリオレフィン多孔性基材は、1H-NMR測定時に、ポリオレフィン鎖に存在する二重結合の個数が、1000個の炭素原子当り0.01個以上、及び0.5個以下または0.3個以下であり得る。前記ポリオレフィン多孔性基材が上述した範囲の二重結合の個数を有することで、ポリオレフィン鎖に存在する二重結合構造から光開始剤による水素引き抜き反応によって形成されるラジカルを調節可能であるため、ポリオレフィン多孔性基材を効果的に架橋できるとともに、ラジカルが過剰に生成されて副反応が発生することを最小化することができる。また、最終的に製造される架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の機械的強度が低下することを容易に防止することができる。
【0225】
本発明の一実施形態において、前記ポリオレフィン鎖に存在する二重結合の個数は、ポリオレフィン合成時の触媒の種類、純度、連結剤の添加などを調節して調節し得る。
【0226】
本発明の一実施形態において、前記ポリオレフィン多孔性基材の末端を除いたポリオレフィン鎖に存在する二重結合の個数は、1000個の炭素原子当り0.005個~0.49個であり得る。
【0227】
本発明の一実施形態において、前記ポリオレフィン多孔性基材は、BET比表面積が10m/g~27m/g、13m/g~25m/g、または15m/g~23m/gであり得る。前記ポリオレフィン多孔性基材のBET比表面積が上述した範囲を満足する場合、ポリオレフィン多孔性基材の表面積が増加して、少量の光開始剤を使用してもポリオレフィン多孔性基材の架橋効率が増加できる。
【0228】
前記ポリオレフィン多孔性基材のBET比表面積は、BET法によって測定し得る。具体的には、BEL Japan社のBelsorp-II miniを用いて液体窒素温度下(77K)での窒素ガス吸着量から算出し得る。
【0229】
次いで、光開始剤を含む光開始剤組成物を前記(S5)段階の結果物に適用する(S6)。
【0230】
本発明の一実施形態において、前記光開始剤は、タイプII光開始剤を含み得る。
【0231】
本発明の一実施形態において、前記光開始剤は、チオキサントン(TX)、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン(BPO)、ベンゾフェノン誘導体、またはこれらのうち二種以上の混合物であり得る。
【0232】
前記チオキサントン誘導体は、例えば、2-イソプロピルチオキサントン(2-Isopropyl thioxanthone:ITX)、2-クロロチオキサントン、2-ドデシルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-メトキシカルボニルチオキサントン、2-エトキシカルボニルチオキサントン、3-(2-メトキシエトキシカルボニル)-チオキサントン、4-ブトキシカルボニル-チオキサントン、3-ブトキシカルボニル-7-メチルチオキサントン、1-シアノ-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-エトキシチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-アミノチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-フェニルスルフリルチオキサントン、3,4-ジ[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-(1-メチル-1-モルホリノ-エチル)-チオキサントン、2-メチル-6-ジメトキシメチル-チオキサントン、2-メチル-6-(1,1-ジメトキシ-ベンジル)-チオキサントン、2-モルホリノメチルチオキサントン、2-メチル-6-モルホリノメチル-チオキサントン、N-アリルチオキサントン-3,4-ジカルボキシミド、N-オクチルチオキサントン-3,4-ジカルボキシミド、N-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-チオキサントン-3,4-ジカルボキシミド、1-ペノキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メトキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メチルチオキサントン、チオキサントン-2-ポリエチレングリコールエステル、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロライドなどを含み得るが、これらに制限されない。
【0233】
前記ベンゾフェノン誘導体は、例えば、4-フェニルベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシ-ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-(4-メチルチオフェニル)-ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシ-ベンゾフェノン、メチル-2-ベンゾイルベンゾエート、4-(2-ヒドロキシエチルチオ)-ベンゾフェノン、4-(4-トリルチオ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N,N-トリメチルベンゼンメタンアミニウムクロライド、2-ヒドロキシ-3-(4-ベンゾイルフェノキシ)-N,N,N-トリメチル-プロパンアミニウムクロライド一水和物、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4-(13-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキサトリデシル)-ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロフェニル)オキシ]エチル-ベンゼンメタンアミニウムクロライドなどを含み得るが、これらに制限されない。
【0234】
本発明の一実施形態において、前記光開始剤は、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、またはこれらの混合物を含み得る。前記光開始剤が2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、またはこれらの混合物を含む場合、ベンゾフェノンなどの光開始剤を使用する場合よりも少ない光量、例えば500mJ/cm水準でも架橋可能であるため、量的な面で有利である。
【0235】
また、前記光開始剤が2-イソプロピルチオキサントン(ITX)を含むと、2-イソプロピルチオキサントン(ITX)の融点が約70~80℃と低いため、光架橋温度を80~100℃に調節する場合、ポリオレフィン多孔性基材の表面の2-イソプロピルチオキサントンが溶融しながら前記ポリオレフィン多孔性基材内への光開始剤の移動性(mobility)が発生して架橋効率が増加でき、最終的に製造される分離膜の物性変化を容易に防止することができる。
【0236】
本発明の一実施形態において、前記光開始剤の含量は、前記光開始剤組成物100重量%を基準にして0.01~0.5重量%、0.03~0.3重量%、または0.05重量%~0.15重量%であり得る。前記光開始剤の含量が上述した範囲である場合、UV照射時の急激な架橋反応による分離膜の収縮またはポリオレフィンの主鎖切断を防止できるとともに、架橋反応を円滑に行うことができる。
【0237】
本発明の一実施形態では、前記光開始剤を含む光開始剤組成物を前記(S5)段階の結果物に適用する段階において、前記ポリオレフィン組成物を押出するための押出機に前記光開始剤を添加し得る。
【0238】
本発明の他の実施形態では、前記光開始剤を含む光開始剤組成物を前記(S5)段階の結果物に適用する段階において、前記光開始剤及び溶剤を含む光開始剤組成物を、前記ポリオレフィン多孔性基材の外側にコーティング及び乾燥してリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜を製造し得る。
【0239】
本明細書において、「外側にコーティング及び乾燥する段階」とは、ポリオレフィン多孔性基材の表面に光開始剤組成物をコーティング及び乾燥する場合だけでなく、ポリオレフィン多孔性基材上に他の層が形成された後、該他の層の表面に光開始剤組成物をコーティング及び乾燥する場合も含む。
【0240】
本発明の一実施形態において、前記光開始剤組成物を前記ポリオレフィン多孔性基材にコーティングする前に、ポリオレフィン多孔性基材をコロナ放電処理し得る。前記コロナ放電処理は、コロナ放電処理機に備えられた所定の放電電極と処理ロールとの間に、所定の駆動回路部によって発生する高周波、高電圧出力を印加して行われ得る。前記コロナ放電処理を通じてポリオレフィン多孔性基材の表面が改質され、光開始剤組成物に対するポリオレフィン多孔性基材の濡れ性がさらに改善できる。前記コロナ放電処理は常圧プラズマ方式によって行われ得る。
【0241】
本発明の一実施形態において、前記光開始剤組成物は、前記光開始剤及び前記溶剤からなる光開始剤溶液であり得る。
【0242】
本発明の一実施形態において、前記溶剤は、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、エチルメチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどのケトン類;メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素などの塩素系脂肪族炭化水素;アセト酸エチル、アセト酸ブチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのアシルニトリル類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類:メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド類;またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0243】
前記光開始剤溶液を前記ポリオレフィン多孔性基材にコーティングする方法の非制限的な例としては、ディップコーティング法、ダイコーティング法、ロールコーティング法、コンマコーティング法、マイクログラビアコーティング法、ドクターブレードコーティング法、リバースロールコーティング法、マイヤーバー(Mayer bar)コーティング法、ダイレクトロールコーティング法などが挙げられる。
【0244】
前記光開始剤溶液を前記ポリオレフィン多孔性基材にコーティングした後の乾燥段階は、当業界で公知の方法が使用可能であり、使用された溶剤の蒸気圧を考慮した温度範囲でオーブンまたは加熱式チャンバを使用してバッチ式または連続式で行い得る。前記乾燥は、前記光開始剤溶液内に存在する溶剤をほとんど除去することであり、生産性などを考慮して可能な限り速く行われることが望ましく、例えば1分間以下または30秒間以下の時間で行われ得る。
【0245】
本発明のさらに他の実施形態において、前記光開始剤組成物は、無機フィラー、バインダー高分子、前記光開始剤、及び前記溶剤を含む無機物複合空隙層形成用スラリーであり得る。
【0246】
前記光開始剤組成物が前記無機物複合空隙層形成用スラリーである場合、前記光開始剤組成物がポリオレフィン多孔性基材にコーティングされながら光開始剤がポリオレフィン多孔性基材の表面に導入されて、紫外線の照射時にポリオレフィン多孔性基材を架橋させるとともに、ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも一面に無機物複合空隙層を形成することができる。
【0247】
前記光開始剤組成物として無機物複合空隙層形成用スラリーを使用する場合、前記光開始剤をポリオレフィン多孔性基材に直接適用するための設備、例えば前記光開始剤組成物をポリオレフィン多孔性基材に直接コーティング及び乾燥するための設備などを追加的に必要とせず、無機物複合空隙層形成工程を用いてポリオレフィン多孔性基材を光架橋させることができる。
【0248】
また、前記無機物複合空隙層形成用スラリーは、ポリオレフィン多孔性基材内の高分子鎖を直接架橋させるために前記光開始剤の外に他のモノマーなどを必要としないため、光開始剤が無機フィラー及びバインダー高分子とともに無機物複合空隙層形成用スラリーに含まれても、光開始剤がポリオレフィン多孔性基材の表面に到達することをモノマーなどが妨害することがなく、光開始剤をポリオレフィン多孔性基材の表面に十分に導入することができる。
【0249】
一般に、ポリオレフィン多孔性基材自体及び無機フィラーが高い紫外線遮断効果を持つため、無機フィラーを含む無機物複合空隙層を形成してから紫外線を照射すると、ポリオレフィン多孔性基材に達する紫外線の照射光量が減少するおそれがあるが、本発明では、無機物複合空隙層が形成された後に紫外線を照射しても、ポリオレフィン多孔性基材内の高分子鎖同士が架橋して直接的に連結できる。
【0250】
本発明の一実施形態において、前記光開始剤組成物が前記無機物複合空隙層形成用スラリーであるとき、前記光開始剤として2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、またはこれらの混合物を含み得る。2-イソプロピルチオキサントンまたはチオキサントンは、透過率の高い長波長でも光架橋が可能である。これにより、無機フィラー及びバインダー高分子などを含む無機物複合空隙層形成用スラリーに光開始剤が含まれても、ポリオレフィン多孔性基材を容易に架橋できる。
【0251】
前記無機フィラー及びバインダー高分子については、上述した内容を参照できる。
【0252】
前記溶剤は、バインダー高分子の種類に応じてバインダー高分子を溶解させる溶媒の役割をしてもよく、バインダー高分子を溶解させずに分散させる分散媒の役割をしてもよい。また、前記溶剤は、前記光開始剤を溶解させ得る。前記溶剤は、使用しようとするバインダー高分子と溶解度指数が類似し、沸点が低いものを使用し得る。この場合、均一な混合、及び以降の溶剤除去が容易になる。このような溶剤の非制限的な例としては、上述した溶剤についての記載を参照できる。
【0253】
前記溶剤の種類については、上述した内容を参照できる。
【0254】
前記無機物複合空隙層形成用スラリーは、前記バインダー高分子を前記溶剤に溶解または分散させた後、前記無機フィラーを添加し、これを分散させて製造し得る。前記無機フィラーは、予め所定の平均粒径を有するように破砕された状態で添加されてもよく、それとも、前記バインダー高分子が溶解または分散したスラリーに前記無機フィラーを添加した後、前記無機フィラーをボールミル法などを用いて所定の平均粒径を有するように制御しながら破砕して分散させてもよい。このとき、破砕は1~20時間行われ得、破砕された無機フィラーの平均粒径は上述した通りである。破砕方法としては通常の方法が使用可能であって、ボールミル法が使用され得る。
【0255】
本発明の一実施形態において、前記無機物複合空隙層形成用スラリーは、分散剤及び/または増粘剤のような添加剤をさらに含み得る。本発明の一実施形態において、前記添加剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、シアノエチレンポリビニルアルコール、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0256】
本発明の一実施形態において、前記無機物複合空隙層形成用スラリーの固形分の含量は、5重量%~60重量%、または30重量%~50重量%であり得る。前記無機物複合空隙層形成用スラリーの固形分の含量が上述した範囲である場合、コーティング均一性を容易に確保でき、スラリーが流れてムラが発生するか又はスラリーの乾燥に多大なエネルギーが必要となることを容易に防止することができる。
【0257】
本発明の一実施形態において、前記光開始剤組成物が前記無機物複合空隙層形成用スラリーである場合、前記光開始剤組成物を前記ポリオレフィン多孔性基材にコーティングした後、相分離過程が行われ得る。前記相分離は、加湿相分離または浸漬相分離方式で行われ得る。
【0258】
以下、前記相分離のうち加湿相分離について説明する。
【0259】
まず、加湿相分離は、15℃~70℃の温度範囲または20℃~50℃の温度範囲、及び15%~80%の相対湿度範囲または30%~50%の相対湿度範囲の条件で行われ得る。前記無機物複合空隙層形成用スラリーが乾燥過程を経ながら、当業界で公知の相分離(vapor-induced phase separation)現象によって相転移特性を有するようになる。
【0260】
前記加湿相分離のため、前記バインダー高分子に対する非溶媒が気体状態で導入され得る。前記バインダー高分子に対する非溶媒は、バインダー高分子を溶解させることなく、前記溶剤と部分相溶性を有するものであれば、特に制限されず、例えば、25℃の条件でバインダー高分子の溶解度が5重量%未満であるものが使用され得る。例えば、前記バインダー高分子に対する非溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、またはこれらのうち二つ以上であり得る。
【0261】
前記相分離のうち浸漬相分離について説明すれば、以下のようである。
【0262】
前記無機物複合空隙層形成用スラリーを前記ポリオレフィン多孔性基材の外側にコーティングした後、前記バインダー高分子に対する非溶媒を含む凝固液に所定の時間だけ浸漬する。これにより、コーティングされた無機物複合空隙層スラリーで相分離現象が誘発されながらバインダー高分子を固化させる。この工程で多孔化した無機物複合空隙層が形成される。その後、水洗することで凝固液を除去し、乾燥する。前記乾燥は、当業界で公知の方法が使用可能であり、使用された溶剤の蒸気圧を考慮した温度範囲でオーブンまたは加熱式チャンバを使用してバッチ式または連続式で行い得る。前記乾燥は、前記スラリー内に存在する溶剤をほとんど除去することであり、生産性などを考慮して可能な限り速く行われることが望ましく、例えば1分間以下または30秒間以下の時間で行われ得る。
【0263】
前記凝固液としては、前記バインダー高分子に対する非溶媒のみを使用するか、または、前記バインダー高分子に対する非溶媒と上述したような溶剤との混合溶媒を使用し得る。前記バインダー高分子に対する非溶媒と溶剤との混合溶媒を使用する場合は、良好な多孔構造を形成し、生産性を向上させるという点から、凝固液100重量%に対して前記バインダー高分子に対する非溶媒の含量が50重量%以上であり得る。
【0264】
本発明の他の実施形態では、前記光開始剤を含む光開始剤組成物を前記(S5)段階の結果物に適用する段階において、無機フィラー、第1バインダー高分子及び分散媒を含む無機物複合空隙層形成用スラリーを前記ポリオレフィン多孔性基材の少なくとも一面にコーティング及び乾燥して無機物複合空隙層を形成し、及び第2バインダー高分子、前記光開始剤及び前記溶剤を含む多孔性接着層形成用コーティング液を前記無機物複合空隙層の上面にコーティング及び乾燥してリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜を製造し得る。
【0265】
前記無機フィラー及び前記第1バインダー高分子の種類については、上述した内容を参照できる。
【0266】
本発明の一実施形態において、前記第1バインダー高分子は、水系バインダー高分子であり得る。このとき、前記第1バインダー高分子は、水系溶媒に溶解されるか又は水系分散媒によって分散するものであり得る。前記第1バインダー高分子が水系分散媒によって分散するものである場合、前記第1バインダー高分子は粒子状であり得る。
【0267】
本発明の一実施形態において、前記第1バインダー高分子は、前記溶剤及び後述する前記第2バインダー高分子に対する非溶媒に溶解されないものであり得る。この場合、無機物複合空隙層を形成した後、多孔性接着層を形成するため後述するコーティング液を塗布しても、第1バインダー高分子が溶解されないため、溶剤または第2バインダー高分子に対する非溶媒に溶解された第1バインダー高分子が気孔を塞ぐ現象を容易に防止することができる。
【0268】
前記分散媒は、第1バインダー高分子の種類に応じて第1バインダー高分子を溶解させる溶媒の役割をしてもよく、第1バインダー高分子を溶解させずに分散させる分散媒の役割をしてもよい。前記分散媒は、使用しようとする第1バインダー高分子と溶解度指数が類似し、沸点が低いものを使用し得る。この場合、均一な混合、及び以降の分散媒除去が容易になる。
【0269】
本発明の一実施形態において、前記分散媒は水系分散媒であり得る。前記分散媒が水系分散媒である場合、環境にやさしく、無機物複合空隙層を形成してからの乾燥過程で過度な熱量を必要とせず、追加的な防爆設備が要らないため、無機物複合空隙層をより容易に形成することができる
【0270】
前記無機物複合空隙層形成用スラリーについては、上述した内容を参照できる。
【0271】
前記無機物複合空隙層形成用スラリーは、通常の分離膜製造時の乾燥方法によって乾燥され得る。例えば、前記コーティングされたスラリーの乾燥は、空気によって10秒間~30分間、30秒間~20分間、または3分間~10分間行われ得る。上記の時間範囲内で乾燥される場合、生産性を阻害しないながらも、残留溶剤を除去できるという効果を奏する。
【0272】
前記第2バインダー高分子については、上述した内容を参照できる。
【0273】
前記溶剤は、25℃で前記第2バインダー高分子を5重量%以上、15重量%以上、または25重量%以上溶解させるものであり得る。
【0274】
前記溶剤は、前記第1バインダー高分子に対する非溶媒であり得る。例えば、前記溶剤は、25℃で前記第1バインダー高分子を5重量%未満で溶解させるものであり得る。
【0275】
前記溶剤の種類については、上述した内容を参照できる。
【0276】
本発明の一実施形態において、前記第2バインダー高分子は、前記多孔性接着層形成用コーティング液100重量%を基準にして3重量%~30重量%、または5重量%~25重量%で含まれ得る。
【0277】
前記光開始剤が多孔性接着層形成用コーティング液に含まれることで、多孔性接着層形成用コーティング液を前記無機物複合空隙層の上面にコーティングするとき、光開始剤がポリオレフィン多孔性基材の表面に導入されると同時に多孔性接着層を形成することができる。
【0278】
多孔性接着層形成用コーティング液をコーティングする過程でポリオレフィン多孔性基材が前記溶剤に濡れるが、このとき、前記多孔性接着層形成用コーティング液に含まれた光開始剤がポリオレフィン多孔性基材の表面に導入され、紫外線の照射時にポリオレフィン多孔性基材の表面に存在する光開始剤によってポリオレフィン多孔性基材が光架橋され得る。
【0279】
これにより、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の製造方法は、ポリオレフィン多孔性基材を光架橋させるためにポリオレフィン多孔性基材に光開始剤を直接適用するための設備、例えば光開始剤を含む溶液をポリオレフィン多孔性基材に直接コーティング及び乾燥するための設備などを追加的に必要とせず、多孔性接着層形成工程を用いてポリオレフィン多孔性基材を光架橋できるという点で、工程を単純化することができる。
【0280】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の製造方法は、ポリオレフィン多孔性基材内の高分子鎖を直接架橋させるために光開始剤の外にラジカルを形成するためのモノマーなどの他の構成要素を必要としないため、光開始剤が多孔性接着層形成用コーティング液に添加されても、光開始剤がポリオレフィン多孔性基材の表面に到達することを他の構成要素が妨害することがなく、光開始剤をポリオレフィン多孔性基材の表面に十分に導入することができる。
【0281】
また、一般にポリオレフィン多孔性基材自体及び無機フィラーが高い紫外線遮断効果を持つため、無機物複合空隙層及び多孔性接着層を形成してから紫外線を照射すると、ポリオレフィン多孔性基材に達する紫外線の照射光量が減少するおそれがあるが、本発明では少量の紫外線の照射光量でも架橋可能であるため、無機物複合空隙層及び多孔性接着層が形成された後に紫外線を照射しても、ポリオレフィン多孔性基材内の高分子鎖同士が架橋して直接的に連結できる。
【0282】
本発明の一実施形態において、前記多孔性コーティング層形成用コーティング液は、前記光開始剤として2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、またはこれらの混合物を含み得る。2-イソプロピルチオキサントンまたはチオキサントンは、透過率の高い長波長でも光架橋が可能である。これにより、無機形成空隙層及び多孔性接着層が形成された後に紫外線を照射しても、ポリオレフィン多孔性基材を容易に架橋できる。
【0283】
本発明の一実施形態において、前記多孔性接着層形成用コーティング液を前記無機物複合空隙層の上面にパターンコーティングすることで、最終的に製造される多孔性接着層にパターンを形成し得る。
【0284】
本発明の一実施形態において、前記多孔性接着層形成用コーティング液が無機物複合空隙層の上面にコーティングされた後、相分離過程が行われ得る。前記相分離は、浸漬相分離方式で行われ得る。
【0285】
前記多孔性接着層形成用コーティング液を前記無機物複合空隙層の上面にコーティングした後、前記第2バインダー高分子に対する非溶媒を含む凝固液に所定の時間だけ浸漬する。これにより、コーティングされた多孔性接着層形成用コーティング液で相分離現象が誘発されながら第2バインダー高分子を固化させる。この工程で多孔性接着層が形成される。その後、水洗することで凝固液を除去し、乾燥する。前記乾燥は、当業界で公知の方法が使用可能であり、使用された溶剤の蒸気圧を考慮した温度範囲でオーブンまたは加熱式チャンバを使用してバッチ式または連続式で行い得る。前記乾燥は、前記多孔性接着層形成用コーティング液内に存在する溶剤をほとんど除去することであり、生産性などを考慮して可能な限り速く行われることが望ましく、例えば1分間以下または30秒間以下の時間で行われ得る。
【0286】
前記凝固液としては、前記第2バインダー高分子に対する非溶媒のみを使用するか、又は、前記第2バインダー高分子に対する非溶媒と上述したような溶剤との混合溶媒を使用し得る。前記第2バインダー高分子に対する非溶媒と溶剤との混合溶媒を使用する場合は、良好な多孔構造を形成し、生産性を向上させるという点から、凝固液100重量%に対して前記第2バインダー高分子に対する非溶媒の含量が50重量%以上であり得る。
【0287】
第2バインダー高分子が固化する過程で第2バインダー高分子が凝縮し、それによってポリオレフィン多孔性基材の表面及び/または内部に第2バインダー高分子が浸透することを防止でき、分離膜の抵抗が増加する現象を防止することができる。また、第2バインダー高分子を含む接着層が多孔化することで分離膜の抵抗が改善することができる。
【0288】
前記第2バインダー高分子に対する非溶媒は、25℃で第2バインダー高分子に対する溶解度が5重量%未満であり得る。
【0289】
前記第2バインダー高分子に対する非溶媒は、前記第1バインダー高分子に対しても非溶媒であり得る。例えば、前記第2バインダー高分子に対する非溶媒は、25℃で第1バインダー高分子に対する溶解度が5重量%未満であり得る。
【0290】
本発明の一実施形態において、前記第2バインダー高分子に対する非溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、またはこれらのうち二つ以上を含み得る。
【0291】
本発明の一実施形態において、前記浸漬は3秒間~1分間行われ得る。浸漬時間が上述した範囲を満足する場合、相分離が適切に起きて無機物複合空隙層と多孔性接着層との間の接着力が確保され、接着層の脱離を防止することができる。
【0292】
本発明の一実施形態において、多孔性接着層形成用コーティング液は、通常の分離膜製造時の乾燥方法によって乾燥され得る。例えば、空気によって10秒間~30分間、30秒間~20分間、または3分間~10分間乾燥され得る。上記の時間範囲内で乾燥される場合、生産性を阻害しないながらも、残留分散媒を除去できるという効果を奏する。
【0293】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の製造方法は、無機物複合空隙層と多孔性接着層とが別途の段階を経て形成されることで、多孔性接着層を多様な形態で形成することができる。例えば、多孔性接着層をパターン形態で容易に形成可能である。
【0294】
その後、前記(S6)段階の結果物に紫外線(UV)を照射する(S7)。紫外線が照射されることで、ポリオレフィン多孔性基材内の高分子鎖が架橋して架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材が得られる。
【0295】
UV照射は、UV硬化装置を用いて、光開始剤の含量比のような条件を考慮してUV照射時間及び照射光量を適切に調節して行い得る。例えば、前記UV照射時間及び照射光量は、ポリオレフィン多孔性基材内の高分子鎖が十分に架橋して目的とする耐熱性を確保でき、且つ、UVランプで発生する熱によって分離膜が損傷しない条件に設定され得る。また、前記UV硬化装置に使用されるUVランプは、使用する光開始剤に応じて、高圧水銀ランプ、メタルランプ、ガリウムランプなどから適切に選択して使用し得、UVランプの発光波長及び容量は、工程に合わせて適切に選択し得る。
【0296】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の製造方法は、一般的な光架橋に使用される光量に比べて著しく少量の紫外線の照射光量だけでも、ポリオレフィン多孔性基材内の高分子鎖を光架橋できるため、リチウム二次電池用架橋構造含有分離膜の量産工程への適用性を高めることができる。例えば、前記紫外線の照射光量は、10~1000mJ/cm、50~1000mJ/cm、または150~500mJ/cmであり得る。
【0297】
本発明の一実施形態において、「UV光量」は、Miltec社製の携帯用光量測定器H type UV bulb及びUV power puckを使用して測定され得る。Miltec社製のH type UV bulbを用いて光量を測定する場合、波長毎にUVA、UVB、UVCの3種類の波長値が得られるが、本発明のUVはUVAに該当する。
【0298】
本発明において、「UV光量」の測定方法は、UV power puckをサンプルと同じ条件で光源下にコンベヤー上で通過させ、このときUV power puckに示されるUV光量数値を「UV光量」と称する。
【0299】
従来、シラン架橋剤を用いてリチウム二次電池用分離膜を製造すると、必要な反応であるシラングラフト反応の外にポリオレフィン鎖切断が副反応として発生して機械的強度が低下し、シラン架橋剤同士の副反応によってゲルが形成されるという問題がある。
【0300】
一方、上述したように、本発明の一態様によるリチウム二次電池用分離膜の製造方法によって製造したリチウム二次電池用分離膜は、上記のような問題が発生しないため、シラン架橋剤を用いて製造したリチウム二次電池用分離膜よりも機械的強度がさらに改善できる。
【0301】
また、上述したように、本発明の一態様によるリチウム二次電池用分離膜の製造方法によれば、高いメルトダウン温度と低いシャットダウン温度を有するリチウム二次電池用分離膜を製造することができる。
【0302】
このような本発明のリチウム二次電池用分離膜は、正極と負極との間に介在されてリチウム二次電池として製造され得る。
【0303】
前記リチウム二次電池は、円筒形、角形、またはパウチ型などの多様な形状であり得る。
【0304】
前記リチウム二次電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、またはリチウムイオンポリマー二次電池などを含み得る。
【0305】
本発明のリチウム二次電池用分離膜とともに適用される電極としては、特に制限されず、当業界で周知の通常の方法によって電極活物質を電流集電体に結着した形態で製造され得る。
【0306】
前記電極活物質のうち正極活物質の非制限的な例としては、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物、または、一つまたはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-x(x=0~0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-x(M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGa、x=0.01~0.3)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn1-x(M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTa、x=0.01~0.1)またはLiMnMO(M=Fe、Co、Ni、CuまたはZn)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoOなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0307】
前記電極活物質のうち負極活物質の非制限的な例としては、従来リチウム二次電池の負極に使用される通常の負極活物質が使用可能であり、特にリチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コークス(petroleum coke)、活性化炭素、グラファイトまたはその他の炭素類などのようなリチウム吸着物質などが望ましい。
【0308】
正極電流集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがあり、負極電流集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケルまたは銅合金、またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがある。
【0309】
本発明の一実施形態において、負極及び正極で使用される導電材は、それぞれ独立して、通常、活物質層の全体重量を基準にして1重量%~30重量%で添加され得る。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用され得る。
【0310】
本発明の一実施形態において、負極及び正極で使用されるバインダーは、それぞれ独立して、活物質と導電材などとの結合、及び集電体に対する結合を補助する成分であって、通常、活物質層の全体重量を基準にして1重量%~30重量%で添加され得る。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。
【0311】
本発明の一実施形態において、前記リチウム二次電池は、電解液を含み、前記電解液は有機溶媒及びリチウム塩を含むものであり得る。また、前記電解液としては、有機固体電解質、または無機固体電解質などが使用され得る。
【0312】
前記有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用され得る。
【0313】
前記リチウム塩は、前記有機溶媒に溶解され易い物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4-フェニルホウ酸リチウム、イミドなどが使用され得る。
【0314】
また、充放電特性、難燃性などの改善を目的として、前記電解液に、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加され得る。場合によっては、不燃性を付与するため、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含んでもよく、高温保存特性を向上させるため、二酸化炭酸ガスをさらに含んでもよい。
【0315】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン(polyagitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用され得る。
【0316】
前記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN-LiI-LiOH、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiPO-LiS-SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用され得る。
【0317】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性に応じて電池製造工程における適切な段階で行われ得る。すなわち、電池組み立ての前、または、電池組み立ての最終段階などで行われ得る。
【0318】
本発明の一実施形態において、前記リチウム二次電池用分離膜を電池に適用する工程としては、通常の工程である巻取(winding)以外にも、分離膜と電極との積層(lamination、stack)及び折畳み(folding)工程が適用可能である。
【0319】
本発明の一実施形態において、前記リチウム二次電池用分離膜は、リチウム二次電池の正極と負極との間に介在され、複数のセルまたは電極を集合させて電極組立体を構成するとき、隣接するセルまたは電極の間に介在され得る。前記電極組立体は、単なるスタック型、ゼリーロール型、スタックフォールディング型、ラミネーションスタック型などの多様な構造を有し得る。
【0320】
以下、本発明の理解を助けるため、実施例及び評価例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0321】
実施例1
ポリオレフィンとして重量平均分子量が300,000である高密度ポリエチレン(大韓油化社製、VH035)30重量部と、希釈剤として流動パラフィンオイル(極東油化社製、LP350)70重量部とを混合して第1ポリオレフィン組成物を用意した。
【0322】
ポリオレフィンとして重量平均分子量が300,000である高密度ポリエチレン(大韓油化社製、VH035)30重量部と、希釈剤として流動パラフィンオイル(極東油化社製、LP350)70重量部と、第1酸化防止剤としてペンタエリトリトールテトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF、Irganox 1010)0.15重量部と、第2酸化防止剤としてトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF、Irgafos 168)0.09重量部とを混合して第2ポリオレフィン組成物を用意した。
【0323】
前記第1ポリオレフィン組成物と第2ポリオレフィン組成物とを共押出してマニホールド(manifold)で第1ポリオレフィン組成物/第2ポリオレフィン組成物形態の流れで制御し、ダイと冷却キャスティングロールを経てシート状に成形し、その後、MD延伸後TD延伸のテンター型逐次延伸機で二軸延伸してポリオレフィン多孔性基材を製造した。このとき、MD延伸比とTD延伸比はいずれも5.5倍にした。延伸温度はMDで108℃にし、TDで123℃にした。
【0324】
得られた複合シートから塩化メチレンで流動パラフィンオイルを抽出し、127℃で熱固定してポリオレフィン多孔性基材を製造した。
【0325】
アセトンに、光開始剤として2-イソプロピルチオキサントン(Sigma Aldrich社製)0.1重量%を添加して光開始剤組成物を用意した。
【0326】
多孔性基材の両面に塗布された全体コーティング量が13.5g/mになるように、前記光開始剤組成物を大きさ6cm×15cmのポリエチレン多孔性基材に23℃、相対湿度42%条件でディップコーティングで両面にコーティングし、25℃で1分間乾燥した。
【0327】
次いで、高圧水銀ランプ(Lichtzen社製の高圧水銀ランプ、LH-250/800-A)を用いて、UV照射強度をUV光源の80%にし、工程ライン速度を10m/分にして積算光量が500mJ/cmになるように照射し、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を製造した。
【0328】
実施例2
第3酸化防止剤としてペンタエリトリトールテトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF、Irganox 1010)0.03重量部、及び第4酸化防止剤としてトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF、Irgafos 168)0.03重量部をさらに添加して第1ポリオレフィン組成物を用意することを除き、実施例1と同様に架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を製造した。
【0329】
実施例3
第1ポリオレフィン組成物と第2ポリオレフィン組成物とを共押出してマニホールドで第1ポリオレフィン組成物/第2ポリオレフィン組成物/第1ポリオレフィン組成物形態の流れで制御し、ポリオレフィン多孔性基材を製造したことを除き、実施例1と同様に架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を製造した。
【0330】
実施例4
第1ポリオレフィン組成物と第2ポリオレフィン組成物とを共押出してマニホールドで第1ポリオレフィン組成物/第2ポリオレフィン組成物/第1ポリオレフィン組成物形態の流れで制御し、ポリオレフィン多孔性基材を製造したことを除き、実施例2と同様に架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を製造した。
【0331】
実施例5
第1酸化防止剤としてペンタエリトリトールテトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF、Irganox 1010)0.3重量部、第2酸化防止剤としてトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF、Irgafos 168)0.18重量部を添加して第2ポリオレフィン組成物を用意することを除き、実施例4と同様に架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を製造した。
【0332】
比較例1
厚さ9μmのポリエチレン多孔性フィルム(東レ社製、気孔度:45%)を如何なる処理も施さずにそのまま用いた。
【0333】
比較例2
第1酸化防止剤としてペンタエリトリトールテトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF、Irganox 1010)0.03重量部、第2酸化防止剤としてトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF、Irgafos 168)0.03重量部を添加して第2ポリオレフィン組成物を用意した。光開始剤組成物を適用せず、紫外線の照射を行わないことを除き、実施例4と同様にポリオレフィン多孔性基材を製造した。
【0334】
比較例3
第1及び第2ポリオレフィン組成物に酸化防止剤を全く含まないことを除き、実施例4と同様に架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を製造した。
【0335】
比較例4
第1酸化防止剤としてペンタエリトリトールテトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF、Irganox 1010)0.03重量部、第2酸化防止剤としてトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF、Irgafos 168)0.03重量部を添加して第2ポリオレフィン組成物を用意することを除き、実施例4と同様に架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を製造した。
【0336】
比較例5
第3酸化防止剤としてペンタエリトリトールテトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF、Irganox 1010)0.3重量部、第4酸化防止剤としてトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF、Irgafos 168)0.18重量部を添加して第1ポリオレフィン組成物を用意することを除き、実施例5と同様に架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を製造した。
【0337】
比較例6
ポリオレフィンとして重量平均分子量が300,000である高密度ポリエチレン(大韓油化社製、VHO35)30重量部、希釈剤として流動パラフィンオイル(極東油化社製、LP350)70重量部、開始剤として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(Sigma-Aldrich社製、Luperox 101)0.01重量部、炭素-炭素二重結合基含有アルコキシシランとしてビニルトリメトキシシラン0.3重量部、架橋触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(Sigma-Aldrich社製)0.01重量部を混合して第1ポリオレフィン組成物を用意した。
【0338】
ポリオレフィンとして重量平均分子量が300,000である高密度ポリエチレン(大韓油化社製、VH035)30重量部、希釈剤として流動パラフィンオイル(極東油化社製、LP350)70重量部、第1酸化防止剤としてペンタエリトリトールテトラキス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF、Irganox 1010)0.03重量部、第2酸化防止剤としてトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF、Irgafos 168)0.03重量部を混合して第2ポリオレフィン組成物を用意した。
【0339】
前記第1ポリオレフィン組成物をL/Dが56である二軸押出機に投入した後、混練し、同時に200℃の温度条件で反応押出してシラングラフト化ポリエチレン組成物を用意した。
【0340】
前記シラングラフト化ポリエチレン組成物と第2ポリオレフィン組成物とを共押出してマニホールドでシラングラフト化ポリエチレン組成物/第2ポリオレフィン組成物/シラングラフト化ポリエチレン組成物形態の流れで制御し、ダイと冷却キャスティングロールを経てシート状に成形し、その後、MD延伸後TD延伸のテンター型逐次延伸機で二軸延伸してポリオレフィン多孔性基材を製造した。このとき、MD延伸比とTD延伸比はいずれも5.5倍にした。延伸温度はMDで108℃にし、TDで123℃にした。
【0341】
前記ポリオレフィン多孔性基材から塩化メチルで希釈剤を抽出し、127℃で熱固定した。これを80℃及び湿度90%の恒温恒湿室に24時間放置して架橋を進行させ、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材を製造した。
【0342】
実施例1~5及び比較例1~6で製造した分離膜の各領域毎の酸化防止剤の含量を下記表1及び表2に示した。
【0343】
それぞれの表において、第1領域の酸化防止剤の含量は第3酸化防止剤の含量/第4酸化防止剤の含量で示し、第2領域の酸化防止剤の含量は第1酸化防止剤の含量/第2酸化防止剤の含量で示した。
【0344】
【表1】
【0345】
【表2】
【0346】
評価例1:架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の物性の測定
実施例1~実施例5及び比較例1~比較例6で製造したポリオレフィン多孔性基材に対し、厚さ、通気度、気孔度、突刺し強度、シャットダウン温度、メルトダウン温度、及び厚さに応じた架橋度を測定した結果を表3及び表4に示した。
【0347】
(1)通気度の評価
通気度(ガーレー)は、ASTM D726-94方法によって測定した。ここで使用されるガーレーは、空気の流れに対する抵抗であって、ガーレーデンソメーターによって測定される。
【0348】
ここで説明された通気度の値は、100mlの空気が12.2 in HOの圧力下で、ポリオレフィン多孔性基材1inの断面を通過するのにかかる時間(秒)、すなわち通気時間として示す。
【0349】
(2)気孔度の評価
気孔度(porosity)は、ポリオレフィン多孔性基材の横長/縦長/厚さを測定して体積を求め、重さを測定し、その体積においてポリオレフィン多孔性基材が100%を占めているときの重さに対する比率で計算して測定し得る。
ポリオレフィン多孔性基材の気孔度(%)=100×(1-ポリオレフィン多孔性基材サンプルの重さ/(ポリオレフィン多孔性基材サンプルの横長(50mm)×縦長(50mm)×厚さ×ポリオレフィン多孔性基材の密度)
【0350】
(3)突刺し強度の評価
大きさ50mm×50mmの試片を用意した。
【0351】
ASTM D2582に基づいて1mmのラウンドチップが120mm/分の速度で作動するように設定した後、突刺し強度を測定した。
【0352】
(4)シャットダウン温度の評価
ポリオレフィン多孔性基材を通気度測定装置に固定した後、1分で5℃ずつ昇温させながら通気度を測定した。通気度は、王研式通気度測定機(旭精工製、モデル:EG01-55-1MR)を用いて0.05Mpaの一定圧力で100mlの空気がポリオレフィン多孔性基材を通過するのにかかる時間(秒)を測定し、ポリオレフィン多孔性基材の通気度が急激に増加する温度をシャットダウン温度とした。
【0353】
(5)メルトダウン温度の評価
メルトダウン温度は、ポリオレフィン多孔性基材の機械方向(MD)でサンプルを採取した後、熱機械分析方法(TMA)で測定した。具体的には、TMA装置(TAインスツルメント、Q400)に幅4.5mm×長さ8mmのサンプルを入れて0.01Nの張力を加えた状態で、昇温速度5℃/分で温度を30℃から220℃まで変化させた。温度の上昇とともに、サンプルの長さ変化が伴い、長さが急増してサンプルが切れる温度を測定した。
【0354】
(6)厚さに応じた架橋度の測定
実施例1及び2で製造したポリオレフィン多孔性基材に対し、ポリオレフィン多孔性基材の一面から他面に延びる高さ方向に沿って一面から厚さ3μmの部分を剥離して架橋度を測定した。
【0355】
また、ポリオレフィン多孔性基材の他面から一面に延びる高さ方向に沿って他面から厚さ3μmの部分を剥離して架橋度を測定した。
【0356】
また、実施例3~5及び比較例1~6で製造したポリオレフィン多孔性基材に対し、一面から他面に延びる高さ方向に沿って一面から厚さ4μmの部分を剥離した後、剥離されていない部分の架橋度を測定した。また、ここで剥離された基材に対して再び、ポリオレフィン多孔性基材の一面から他面に延びる高さ方向に沿って一面から厚さ2μmの部分を剥離し、剥離された部分及び剥離されていない部分の架橋度を測定した。
【0357】
前記架橋度は、下記の数式で計算した。
架橋度(%)=100×(B/A)
【0358】
数式において、Aは一面から厚さ3μmの部分、他面から厚さ3μmの部分、一面から厚さ2μmの部分、一面から厚さ4μmの部分、または一面から厚さ4μmの部分を剥離してから残った部分の重量であり、Bは一面から厚さ3μmの部分、他面から厚さ3μmの部分、一面から厚さ2μmの部分、一面から厚さ4μmの部分、または一面から厚さ4μmの部分を剥離してから残った部分を、135℃の卜リクロロベンゼン70gに浸漬して135℃で20時間放置した後、100メッシュの鉄網で濾過し、鉄網上の不溶解分を採取、真空乾燥した後の乾燥質量である。
【0359】
【表3】
【0360】
【表4】
【0361】
表3及び表4から、実施例1~5で製造した架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材は、第2ポリオレフィン組成物が第2ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.8重量部以上の酸化防止剤を含み、UVによって架橋されることで、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材が10%以上の架橋度の差を有する第1領域及び第2領域を備え、架橋前のポリオレフィン多孔性基材である比較例1と比べてシャットダウン温度は同等の水準で維持され、メルトダウン温度は非常に高いことを確認できる。
【0362】
一方、比較例2で製造した架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の場合、第1ポリオレフィン組成物及び第2ポリオレフィン組成物に酸化防止剤が含まれたが、UVによる架橋がなかったため、架橋前のポリオレフィン多孔性基材である比較例1と比べてメルトダウン温度が上昇しなかったことを確認できる。
【0363】
比較例3及び4で製造した分離膜の場合、第2ポリオレフィン組成物が酸化防止剤を全く含まないか、それとも、前記第2ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.8重量部未満の酸化防止剤を含むことで、架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材が10%以上の架橋度の差を有する領域を備えず、架橋前のポリオレフィン多孔性基材である比較例1と比べてメルトダウン温度は高いものの、シャットダウン温度が架橋前と比べて増加し、機械的強度が低下することを確認できる。
【0364】
比較例5で製造した架橋ポリオレフィン多孔性基材の場合、第1ポリオレフィン組成物に含まれた酸化防止剤の含量が前記第1ポリオレフィン組成物に含まれたポリオレフィン100重量部対比0.2重量部よりも多いため、架橋が円滑に行われず、メルトダウン温度が大きく上昇していないことを確認できる。
【0365】
比較例6で製造した架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材の場合、シラン架橋方法で製造され、光開始剤を用いた光架橋方法で製造された実施例1~5の架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材と比べて、架橋前のポリオレフィン多孔性基材である比較例1と比べて突刺し強度の変化率が10%を超過して機械的強度が非常に劣化することを確認できる。
【0366】
評価例2:架橋構造含有ポリオレフィン多孔性基材のシャットダウン温度及びメルトダウン温度の分析
また、実施例4、実施例5、比較例2及び比較例4で製造した分離膜の温度変化に応じた通気度の変化を測定して図4に示した。
【0367】
通気度の変化は、温度を5℃ずつ昇温させながら10秒間隔で分離膜の通気度変化を測定した。
【0368】
図4から、実施例4、実施例5及び比較例2で製造した分離膜の通気度が145℃付近で急激に増加したことが確認できる。これは、実施例4、実施例5、及び比較例2で製造した分離膜のシャットダウン温度が約145℃に該当するため、この温度で分離膜の気孔が詰まって通気度が増加したためである。
【0369】
一方、比較例4で製造した分離膜は、約150℃付近で通気度が急激に増加したことが確認できる。これは、比較例4で製造した分離膜のシャットダウン温度が約150℃に該当し、この温度で分離膜の気孔が詰まって通気度が増加したためである。
【0370】
また、比較例2で製造した分離膜は、メルトダウン温度が150℃以内と低く、分離膜が150℃付近で破断することが確認できる。
【0371】
一方、実施例4及び実施例5で製造した分離膜は、メルトダウン温度が約200℃と非常に高く、分離膜が200℃付近で破断することが確認できる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】