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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】高強度シアノアクリレート系テープ
(51)【国際特許分類】
   C08F 283/00 20060101AFI20231211BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20231211BHJP
   C09J 4/04 20060101ALI20231211BHJP
   C09J 4/06 20060101ALI20231211BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20231211BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231211BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20231211BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20231211BHJP
【FI】
C08F283/00
C08F2/44 C
C09J4/04
C09J4/06
C09J175/06
C09J11/06
C09J11/04
C09J7/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534960
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2021084290
(87)【国際公開番号】W WO2022122600
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】2019414.8
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ、 ロリー
(72)【発明者】
【氏名】ドハーティ、 マイケル
(72)【発明者】
【氏名】スウィーニー、 ナイジェル
(72)【発明者】
【氏名】ゴフ、 キアラ
【テーマコード(参考)】
4J004
4J011
4J026
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA14
4J004AA17
4J004AB04
4J004BA02
4J004DB02
4J011AA05
4J011CA01
4J011CB02
4J011CC07
4J011PA95
4J026AB02
4J026BA27
4J026BB01
4J026DB06
4J026DB22
4J026GA07
4J040ED031
4J040EF111
4J040FA121
4J040HB15
4J040HB19
4J040HB30
4J040HD01
4J040HD39
4J040JA09
4J040JB04
4J040KA23
4J040KA29
4J040LA01
4J040LA05
4J040PA23
(57)【要約】
【解決手段】
本発明は、硬化性シアノアクリレート成分と少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン(TPU)成分を含む硬化性組成物に関する。本発明の組成物は、室温(25℃)では非流動性であり、例えばテープ状の接着剤組成物としての使用に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)硬化性シアノアクリレート成分と、
(ii)少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン(TPU)成分と、
を含む硬化性組成物であって、
前記少なくとも1つのTPU成分(ii)は40,000~80,000の質量平均モル質量Mを有し、
前記少なくとも1つのTPU成分(ii)は、少なくとも1つのジオール又はジカルボン酸をベースとするポリオールをベースとし、前記少なくとも1つのジオール又はジカルボン酸は、その主鎖に6個の炭素原子(C6)を有し、さらに、前記ジオール又はジカルボン酸はいずれも、その主鎖に10個超過の炭素原子(>C10)を有さず、
前記少なくとも1つのTPU成分(ii)は、硬化性組成物中に約50重量%超過の量で存在し、重量%は組成物の総重量に基づく、硬化性組成物。
【請求項2】
前記シアノアクリレート成分(i)が液体硬化性シアノアクリレート成分である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記シアノアクリレート成分(i)が、エチルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、β-メトキシシアノアクリレート及びそれらの組合せを含む群から選択される、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記シアノアクリレート成分(i)が、硬化性組成物中に約10重量%~約35重量%の量で存在し、重量%は組成物の総重量に基づく、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、及びアセトンを含む群から選択される溶媒をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
使用される溶媒が酢酸エチルである、請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのTPU成分(ii)が、硬化性組成物中に約65重量%~85重量%の量で存在し、重量%は組成物の総重量に基づく、請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのTPU成分(ii)が、約-60℃~約-5℃、例えば約-50℃~約-10℃のガラス転移温度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのTPU成分(ii)が、約-55℃~約-20℃、例えば約-50℃~約-30℃のガラス転移温度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのTPU成分(ii)がポリエステルセグメントを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つのTPU成分(ii)が、少なくとも1つのC6ジオール又はC6カルボン酸をベースとするポリエステルセグメントを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つのTPU成分(ii)が、C6ジカルボン酸と、1,6-ヘキサンジオール又は1,4-ブタンジオールのいずれか1つとから形成されるポリエステルポリオールをベースとする、請求項1~11のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つのTPU成分(ii)が、ヘキサン二酸と、1,4-ブタンジオール又は1,6-ヘキサンジオールのいずれか1つとの(コ)ポリエステルをベースとし、前記(コ)ポリエステルが、約50~80℃の融点を有し、約0.5%未満、例えば約0.1%未満(標準手順DIN53240-2に従って測定)のOH価を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
約10ppm~約200ppm、例えば約25ppm~約100ppmのシアノアクリレート成分の安定剤をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
前記安定剤が、三フッ化ホウ素(BF)又は二酸化硫黄(SO)から選択される、請求項14に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
前記安定剤が二酸化硫黄(SO)である、請求項14又は15に記載の硬化性組成物。
【請求項17】
2つのTPU成分を含み、前記2つのTPU成分のそれぞれが40,000~80,000の質量平均モル質量Mを有し、
前記2つのTPU成分のそれぞれは、少なくとも1つのジオール又はジカルボン酸をベースとするポリオールをベースとし、前記少なくとも1つのジオール又はジカルボン酸は、その主鎖に6個の炭素原子(C6)を有し、さらに、前記ジオール又はジカルボン酸のいずれも主鎖に10個超過の炭素原子(>C10)を有さず、
前記2つのTPU成分が、約50重量%超過の総量で硬化性組成物中に一緒に存在し、重量%は組成物の総重量に基づく、請求項1~16のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項18】
テープ状で提供される、請求項1~17のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の硬化性組成物及び1つ以上の剥離ライナーを含むテープ。
【請求項20】
硬化性組成物を調製する方法であって、
i)請求項1~18のいずれか一項に記載の少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン(TPU)成分を、請求項1~18のいずれか一項に記載の硬化性シアノアクリレート成分及び溶媒と組み合わせて、混合物を形成する工程、
ii)工程(i)の混合物を、任意でキャスティングによって、基材に塗布する工程、
iii)溶媒を蒸発させるか、又は溶媒を積極的に除去し、それによって固体形態の硬化性組成物を形成する工程、
を含む方法。
【請求項21】
前記基材が剥離ライナーである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記溶媒が酢酸エチルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
硬化形態である、請求項1~18のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項24】
請求項1~18のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化形態によって互いに接着された2つの基材を含むアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温(25℃)で非流動性であり、例えば、テープ状などの接着剤組成物としての使用に適した硬化性シアノアクリレート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
室温で固体のシアノアクリレートモノマーとしては、フェニルエチルシアノアクリレート、エチルヘキシルシアノアクリレート、及びヘキサデシルシアノアクリレート等が知られている。このような室温で固体のシアノアクリレートモノマーは、スティック状及びテープ状のシアノアクリレート製品を調製するために使用できる。しかしながら、これらのモノマーをベースとする組成物は、一定範囲の測定基準にわたって、従来の室温で液体形態のシアノアクリレートモノマーを含む組成物と比較して性能が劣る。さらに、固体シアノアクリレートモノマーは通常、高価で合成が難しい標準外の特殊な化学薬品である。
【0003】
ヘンケルが以前に開発したシアノアクリレートテープは、フェニルエチルシアノアクリレート等の、室温で固体のモノマーをベースにしていた。しかしながら、接着テープの製造に固体シアノアクリレートモノマーを使用すると、「瞬間粘着性」テープとしての使用が禁止され、瞬間接着剤としてシアノアクリレートを使用する主な利点が打ち消される。
【0004】
液体シアノアクリレートモノマーは、バルク全体への拡散が良好であり、固体シアノアクリレートモノマーよりも室温での硬化が速くなる。
【0005】
しかしながら、標準的な液体シアノアクリレートモノマーをベースにしたテープを実現するのは困難である。これは、シアノアクリレートモノマー自体の皮膜形成剤に対する固有の反応性によるものだけでなく、適切な皮膜形成を達成するためには十分な構造的完全性を備える材料が必要であるためでもある。
【0006】
特許文献の中で、以下の文献は、テープ状で使用するために配合された接着剤組成物を実証している。
【0007】
米国特許出願第2015/0107761号は、剥離基材及び/又はキャリア基材上に硬化性フィルムを含むテープを開示している。硬化性フィルムは、少なくとも1つの特定のシアノアクリレートモノマー及び少なくとも1つのフィルム形成(コ)ポリマーを含む。
【0008】
米国特許第5147938号は、感圧性アクリレート系コポリマーを含むポリマー接着剤組成物をベースとする接着剤転写テープを開示している。
【0009】
米国特許第20060029810号は、高温で硬化する液体エポキシ樹脂をベースとする感圧接着剤組成物を含む接着剤転写テープを開示している。
【0010】
国際公開第2003/020841号は、アクリルコポリマー及び少なくとも2つの粘着付与剤を含む感圧接着剤組成物を開示している。この組成物は、感圧接着テープを製造するために使用することができる。
【0011】
加圧下での加熱を必要とせずに瞬間接着性を達成する接着テープを開発することが有利であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願第2015/0107761号
【特許文献2】米国特許第5147938号
【特許文献3】米国特許第20060029810号
【特許文献4】国際公開第2003/020841号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
1つの態様では、本発明は、
(i)硬化性シアノアクリレート成分と、
(ii)少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン(TPU)成分と、
を含む硬化性組成物であって、
前記少なくとも1つのTPU成分(ii)は40,000~80,000の質量平均モル質量Mを有し、
前記少なくとも1つのTPU成分(ii)は、少なくとも1つのジオール又はジカルボン酸をベースとするポリオールをベースとし、前記少なくとも1つのジオール又はジカルボン酸は、その主鎖に6個の炭素原子(C6)を有し、さらに、前記ジオール又はジカルボン酸はいずれも、その主鎖に10個超過の炭素原子(>C10)を有さず、
前記少なくとも1つのTPU成分(ii)は、硬化性組成物中に約50重量%超過の量で存在し、重量%は組成物の総重量に基づく、硬化性組成物を含む。
【0014】
本発明の組成物は室温(25℃)では非流動性であり、例えばテープ状の接着剤組成物としての使用に適している。組成物は剥離ライナー上に塗布することができる。例えば、インターライナー層又は異なる剥離値を有するライナーを使用してよい。組成物は、適切な溶媒を使用することによって適用することができ、例えば、適切な溶媒からライナー上にキャストすることができる。
【0015】
硬化性シアノアクリレート成分(i)は、エチルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、β-メトキシシアノアクリレート及びそれらの組合せを含む群から選択されてよい。
【0016】
硬化性シアノアクリレート成分(i)は、硬化性組成物中に約10重量%~約35重量%の量で存在してよく、重量%は組成物の総重量に基づく。
【0017】
少なくとも1つのTPU成分(ii)は、硬化性組成物中に約65重量%~約85重量%の量で存在してよく、重量%は組成物の総重量に基づく。
【0018】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのTPU成分(ii)は、約-60℃~約-5℃、例えば約-50℃~約-10℃のガラス転移温度を有する。
【0019】
望ましくは、少なくとも1つのTPU成分(ii)は、約-55℃~約-20℃、例えば約-50℃~約-30℃のガラス転移温度を有する。
【0020】
TPU成分(ii)は、主鎖に6個の炭素原子(C6)を有する少なくとも1つのジオール又はジカルボン酸をベースとするポリオールをベースとする。
【0021】
TPU成分(ii)は、1つ以上の追加のジオール又はジカルボン酸をもベースとするポリオールをベースとしてよいが、ただし、前記ジオール又はジカルボン酸のいずれもその主鎖中に10個超過の炭素原子(>C10)を有さないことを条件とする。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのTPU成分(ii)はポリエステルセグメントを含む。
【0023】
望ましくは、TPU成分(ii)は、C6ジオール又はC6カルボン酸の少なくとも1つをベースとするポリエステルセグメントを含む。
【0024】
少なくとも1つのTPU成分(ii)は、C6ジカルボン酸と、1,6-ヘキサンジオール又は1,4-ブタンジオールのいずれか1つとから形成されるポリエステルポリオールをベースとしてよい。
【0025】
望ましくは、少なくとも1つのTPU成分(ii)は、ヘキサン二酸と、1,4-ブタンジオール又は1,6-ヘキサンジオールのいずれか1つとの(コ)ポリエステルをベースとしており、前記(コ)ポリエステルは、約50~80℃の融点を有し、約0.5%未満、例えば約0.1%未満(標準手順DIN53240-2に従って測定)のOH価を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、組成物中にはTPU成分が1つだけ存在する。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は2つ以上のTPU成分を含んでよい。
【0028】
望ましくは、本発明の組成物が2つ以上のTPU成分を含む場合、存在する各TPU成分は40,000~80,000の質量平均モル質量Mを有する。望ましくは、各TPU成分は、主鎖に6個の炭素原子(C6)を有する少なくとも1つのジオール又はジカルボン酸をベースとするポリオールをベースとする。
【0029】
本発明の組成物は、上記の少なくとも1つのTPUとは異なる1つ以上のさらなるTPU成分をさらに含んでもよいが、ただし、前記1つ以上のさらなるTPUは、主鎖に10個超過の炭素原子(>C10)を有するジオール又はジカルボン酸をベースとするポリオールをベースとしていない。このような追加のTPUは、総TPU含量が組成物の総重量に基づいて最大約95重量%となるような量で存在してよい。
【0030】
本発明の組成物は、少なくとも1つの溶媒をさらに含んでもよい。溶媒を使用すると、例えば配合又は分配の目的で有益な場合がある。
【0031】
しかしながら、重量%が使用される場合はどこでも、それらは溶媒を含まない組成物の総重量に基づいている。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明は、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、及びアセトンを含む群から選択される溶媒を含む。
【0033】
望ましくは、本発明は溶媒として酢酸エチルを含む。
【0034】
本発明は、シアノアクリレート成分の安定剤をさらに含んでもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、シアノアクリレート成分の安定剤は、約10ppm~約200ppm、例えば約25ppm~約100ppmの量で存在する。
【0036】
安定剤は、三フッ化ホウ素(BF)又は二酸化硫黄(SO)から選択されてよい。
【0037】
望ましくは、安定剤は二酸化硫黄(SO)である。
【0038】
本発明は、本発明による硬化性組成物と1つ以上の剥離ライナーとを含むテープにも関する。
【0039】
本発明のテープは転写テープであってよい。剥離ライナーは、例えばフィルムの形態の硬化性組成物を少なくとも1つの基材に転写するために使用されてよい。
【0040】
本発明のテープは、室温で接着特性を示す可能性があり、物品の硬化性組成物は、テープに穏やかな圧力を加えることによって少なくとも1つの表面に取り付ける可能性がある。組成物のシアノアクリレート成分は、瞬間接着剤として機能する。したがって、本発明の組成物は、いかなる適合性のある基材にも即座に接着するはずである。
【0041】
別の態様では、本発明はまた、硬化性組成物を調製する方法であって、
i)本発明で定義される少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン(TPU)成分を、本発明で定義される硬化性シアノアクリレート成分及び溶媒と組み合わせて、混合物を形成する工程、
ii)工程(i)の混合物を、任意でキャスティングによって、基材に塗布する工程、
iii)溶媒を蒸発させるか、又は溶媒を積極的に除去し、それによって固体形態の硬化性組成物を形成する工程、
を含む方法に関する。
【0042】
この方法のいくつかの実施形態では、基材は剥離ライナーである。
【0043】
この方法のいくつかの実施形態では、溶媒は酢酸エチルである。
【0044】
少なくとも1つのTPU成分(ii)は、硬化性組成物中に約50重量%超過の量で存在し、重量%は組成物の総重量に基づく。
【0045】
少なくとも1つのTPU成分(ii)は、硬化性シアノアクリレート成分と同等以上の量で存在する。
【0046】
本発明の方法において、TPU成分は、例えば、TPU成分がポリエステルセグメントを含む場合を包含して、本発明の組成物について上に記載した通りであってよいことが理解される。
【0047】
本発明はまた、本発明による組成物の硬化形態にも関する。
【0048】
本発明はさらに、本発明の組成物の硬化形態によって互いに接着された2つの基材を含むアセンブリに関する。
【0049】
特定のポリオールを「ベースとする」TPU成分とは、前記ポリオールが前記TPU成分の合成に使用されたもの、又は前記TPU成分中に構造単位を形成するものである。同様に、ジオール単位又はジカルボン酸単位を「ベースとする」ポリオールとは、前記ジオール単位又はジカルボン酸単位が前記ポリオールの合成に使用されたもの、あるいは前記ポリオール中に構造単位を形成するものである。
【0050】
本発明で使用するのに適したTPU成分は、少なくとも1つのジオール又はジカルボン酸をベースとするポリオールをベースとするものであり、前記ジオール又はジカルボン酸の少なくとも1つが主鎖に6個の炭素原子(C6)を有し、前記ジオール又はジカルボン酸はいずれも、その主鎖に10個超過の炭素原子(>C10)を有さない。IUPACの定義に従って、本明細書で使用される「主鎖」という用語は、長鎖又は短鎖又はその両方の他のすべての鎖がペンダントであるとみなされる直鎖を指す。例えば、5-メチル-1,12-ドデカン二酸では、炭素1から炭素12まで直進する炭素原子が主鎖を構成し、5位のメチル基の炭素原子は主鎖から外れているものとみなされる。したがって、5-メチル-1,12-ドデカン二酸は主鎖に12個の炭素原子を有する。同様に、主鎖Cジオールと主鎖C又は主鎖Cジカルボン酸から形成され、それぞれ少なくとも10個又は11個の炭素原子(エステル結合で架橋されている)を有する繰り返し要素を含むポリエステルポリオールは、前記ジオール又はジカルボン酸の少なくとも1つが主鎖中に10個超過の炭素原子(>C10)を有することを特徴とするポリオールをベースとする少なくとも1つのジオール又はジカルボン酸を含まない。
【0051】
本発明で固化剤として使用するのに適した熱可塑性ポリウレタン(TPU)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物とポリオールとの反応から形成され、約-60℃~-5℃、例えば約-50℃~約-10℃等の低いガラス転移温度(Tg)を有するTPUが得られるものが挙げられる。ガラス転移温度(Tg)は、当技術分野で周知の技術、例えば、示差走査熱量測定により容易に決定することができる。本発明の実施に適したポリオールの例は、パールボンド106であり、これは、10~30g/10分のメルトフローインデックス(170℃/2.16kg)(DIN53.735に従って測定)、1150Pa・sの溶融粘度(170℃/2.16kg)(DIN53.735に従って測定)、62~66℃の軟化範囲(MQSA70Aに従って測定)、85~110℃の融解範囲(MQSA70Aに従って測定)、高い結晶化率(MQSA12Bに従って測定)、及び非常に高い熱可塑性(MQSA68Aに従って測定)を有する線状芳香族ポリウレタンである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
驚くべきことに、熱可塑性ポリウレタン(TPU)と硬化性シアノアクリレート成分(例えば、エチルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、β-メトキシシアノアクリレート、又はそれらの組合せ等)を、組成物の総重量に基づいて比較的高い重量%(約50重量%超過)で組み合わせて使用すると、非常に完全性の高いフィルムを製造できることが判明した。
【0053】
本発明の硬化性組成物に使用されるTPUは、組成物の総重量に基づいて約50重量%超過の量で存在する。いかなる原理にも束縛されるものではないが、組成物中のこの比較的高い割合のTPUは、フィルムの高い完全性を達成するために不可欠であると考えられる。
【0054】
TPUは、様々な種類のシアノアクリレートモノマー中で優れた安定性を示した。
【0055】
TPUは、熱可塑性材料と熱硬化性材料との間の範囲の機械的特性を有する。これは、反対側のポリマー鎖上のウレタン基間の水素結合効果によって引き起こされる「仮想架橋」によって実現される。この鎖間の水素結合は、これらの独特な材料に様々な物理的特性を与え、優れた弾性と伸びの形で肉眼的に現れる。
【0056】
これらのゴム状又は弾性タイプの特性により、非常に完全性の高いフィルムの製造が可能になる。
【0057】
さらに、TPUフィルム形成剤は、優れた引張強度と伸び特性を有し、他の入手可能なフィルム形成剤よりも優れた利点をもたらす。
【0058】
液体シアノアクリレートモノマーを使用すると、固体シアノアクリレートモノマーよりもバルク全体への拡散が良くなり、室温での硬化が早くなると考えられている。
【0059】
TPU材料を液体シアノアクリレートモノマーと組み合わせると、得られるフィルムは内部構造の完全性が高いだけでなく、標準的な基材と接触するとすぐに硬化する。
【0060】
特定のポリオールを「ベースとする」TPU成分とは、前記ポリオールが前記TPU成分の合成に使用されたもの、又は前記TPU成分中に構造単位を形成するものである。同様に、ジオール単位又はジカルボン酸単位を「ベースとする」ポリオールとは、前記ジオール単位又はジカルボン酸単位が前記ポリオールの合成に使用されたもの、あるいは前記ポリオール中に構造単位を形成するものである。
【0061】
本発明での使用に適したTPU成分は、少なくとも1つのジオール又はジカルボン酸をベースとするポリオールをベースとするものであり、前記ジオール又はジカルボン酸の少なくとも1つが主鎖中に6個の炭素原子(C6)を有し、前記ジオール又はジカルボン酸はいずれもその主鎖中に10個超過の炭素原子(>C10)を有さないことを特徴とする。IUPACの定義に従って、本明細書で使用される「主鎖」という用語は、長鎖又は短鎖又はその両方の他のすべての鎖がペンダントであるとみなされる直鎖を指す。例えば、5-メチル-1,12-ドデカン二酸では、炭素1から炭素12まで直進する炭素原子が主鎖を構成し、5位のメチル基の炭素原子は主鎖から外れているものとみなされる。したがって、5-メチル-1,12-ドデカン二酸は主鎖に12個の炭素原子を有する。同様に、主鎖Cジオールと主鎖C又は主鎖Cジカルボン酸から形成され、それぞれ少なくとも10個又は11個の炭素原子(エステル結合で架橋されている)を有する繰り返し要素を含むポリエステルポリオールは、前記ジオール又はジカルボン酸の少なくとも1つが主鎖中に10個超過の炭素原子(>C10)を有することを特徴とする少なくとも1つのジオール又はジカルボン酸をベースとするポリオールを含まない。
【0062】
いかなる原理にも束縛されるものではないが、ジオール又はジカルボン酸の少なくとも1つが主鎖に6個の炭素原子を有し、ジオール又はジカルボン酸のいずれも主鎖に10個を超える炭素原子(>C10)を有さないことを特徴とする少なくとも1つのジオール又はジカルボン酸をベースとするポリオールをベースとするTPU成分の使用により、望ましくない結晶化が発生する可能性が低くなると考えられる。
【0063】
>C10ジオール又はジカルボン酸をベースとするTPUは、固体シアノアクリレート組成物の調製に使用され、その際、ポリオール鎖が長いほど結晶化とその後の固化が促進されると考えられている。
【0064】
しかしながら、この結晶化プロセスは、不透明度が発生し、最終アセンブリ中の成分の登録(registration)に影響を与え得るため、接着テープに使用する組成物の調製中に有害となり得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、「テープ」という用語は、硬化性組成物及び1つ以上の剥離ライナーを含む物品を指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「安定剤」又は「ルイス酸安定剤」という語句は、例えばシアノアクリレートの早期重合を阻害することによって、硬化性シアノアクリレート成分を安定化する物質を指す。このような物質の例としては、三フッ化ホウ素(BF)又は二酸化硫黄(SO)が挙げられる。当業者であれば、他の適切な安定剤、例えば別の適切なルイス酸を使用して硬化性シアノアクリレート成分を安定化できることが容易に理解されるであろう。安定剤溶液は、安定剤の担体としてエチルシアノアクリレート、β-メトキシシアノアクリレート、又はブチルシアノアクリレートを使用して調製することができ、前記安定剤溶液は、それぞれエチルシアノアクリレート、β-メトキシシアノアクリレート、又はブチルシアノアクリレートをベースとする硬化性組成物中の安定剤の量を調整するのに適していることが開示されている。
【0067】
本発明の組成物及び製品の配合は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)成分を溶媒と混合し、高温で撹拌することによって達成することができる。望ましくは、混合物は、高温、例えば約65℃で溶解ブレードを用いて約1330rpmで撹拌される。実際に使用される温度は、使用されるTPUの融点又はその溶解度によって異なる場合がある。混合は、TPU成分が溶媒に溶解するのに十分な時間行われるが、この時間はバッチサイズによって異なり得る。この段階で安定剤を添加してもよい。次いで、硬化性シアノアクリレート成分が組成物に添加される。いかなる原理にも束縛されるものではないが、シアノアクリレート成分を遅れて添加すると、最終製品の安定性に有益な効果をもたらすと考えられる。
【0068】
接着剤配合物は、任意でキャスティングによって、例えば剥離ライナー等の基材に塗布することができる。基材は、溶媒の除去を容易にするために、任意で例えば約60℃等の高温で、一定期間、例えば約5分間放置することができる。この期間を過ぎると、膜の厚さは湿った状態のコーティングの厚さよりも実質的に小さくなる可能性がある。溶媒が蒸発したら、塵粒子又は湿気がフィルムの表面に接触するのを防ぐために、急速にスプール処理が行われる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0069】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して、単なる例として説明される。
【0070】
図1図1は、本発明の実施例1によるシアノアクリレート組成物から調製された接着テープを使用したいくつかの基材に対する引張せん断試験の結果を示し、実施例1とデュロタック9640の性能の比較を提供する。
図2図2は、本発明の実施例2によるシアノアクリレート組成物から調製された接着テープを使用したいくつかの基材に対する引張せん断試験の結果を示し、実施例2とデュロタック9640の性能の比較を提供する。
図3図3は、本発明の実施例3によるシアノアクリレート組成物から調製された接着テープを使用したいくつかの基材に対する引張せん断試験の結果を示し、実施例3とデュロタック9640の性能の比較を提供する。
図4図4は、本発明によるシアノアクリレート組成物から調製された接着テープを使用して得られたT剥離試験の結果を示し、それらの性能とデュロタック9640の性能との比較を提供する。
図5図5は、本発明による組成物を使用して得られた側面衝撃試験の結果を示し、それらの性能とデュロタック9640の性能との比較を提供する。
【実施例
【0071】
本発明を実施するのに適した実施例の組成物1~3を以下に詳述するように調製した。
【0072】
酢酸エチル溶媒を適切な容器に入れ、TPU成分であるパールボンド106を加えた。混合物を撹拌し、約65℃の温度にした。TPU成分は、溶解ブレードを使用した1330rpmの高せん断混合下で約1~2時間で完全に溶解した。次いで、三フッ化ホウ素安定剤を添加し、続いて関連するシアノアクリレートモノマーを添加した。
【0073】
以下に提供される表1に、実施例1~3の組成を要約する。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例1~3の組成物を使用して、本発明を実施するのに適した接着テープを調製した。
【0076】
各接着剤配合物を、PPIフィルムから入手可能なシリコン処理ポリエステルフィルム(SRF122/75μm)上にコーティングした。150ミクロンの湿潤コーティング厚さを使用した。フィルムを60℃で5分間乾燥させて酢酸エチル溶媒の除去を促進した後、フィルムの厚さは約60μmになった。乾燥したら、接着テープを指で軽く押しながら試験対象の基材に転写させた。この転写の容易さ(瞬間接着性)は、液体モノマーの存在によって実現される。
【0077】
以下に提供される表2は、溶媒を除去した後の実施例1~3の組成物中の各成分の重量%を示す。重量%は、組成物の総重量に基づいている。
【0078】
【表2】
【0079】
実施例1~3の組成物から調製した接着テープをいくつかの比較試験に供し、対照組成物デュロタック9640と比較してその性能を評価した。デュロタック9640は、固体シアノアクリレートモノマーとポリエチレン/ポリ酢酸ビニルフィルム形成剤をベースにしたシアノアクリレートテープである。引張せん断(様々な基材にわたる)、T剥離(グリットブラスト軟鋼(GBMS))、及び側面衝撃試験を実施した。
【0080】
ブチルシアノアクリレートをベースとした実施例1の組成物による本発明の接着テープの引張せん断試験の結果を図1に示す。ASTM D1002(2000)に従って引張せん断試験を実施した。テープの引張強度を様々な基材にわたって測定し、デュロタック9640の引張強度と比較した。接着剤は室温(25℃)で組み立てられ、室温でさらに24時間後に試験を実行した。図1~3では、「SF」は基材の破損を報告するために使用され、接着が基材よりも強い場合に発生し、接着の前に基材が破壊される。各引張せん断試験を5回実行したため、例えば5回の実験のうちの1回で基材破損が観察された場合、20%の基材破損が報告される。
【0081】
実施例1の組成物を用いて調製した接着テープは、試験したすべての基材にわたってデュロタック9640よりも大幅に向上した性能を示した。実施例1の組成物について測定された最高の引張せん断値は、PC(ポリカーボネート)及びチーク基材上であった。
【0082】
β-メトキシシアノアクリレートをベースとした実施例2の組成物による本発明の接着テープを用いた引張せん断試験の結果を図2に示す。テープの引張強度を様々な基材にわたって測定し、デュロタック9640の引張強度と比較した。接着剤は室温(25℃)で組み立てられ、室温でさらに24時間後に試験を実行した。
【0083】
実施例2で調製した接着テープは、試験したほとんどすべての基材にわたってデュロタック9640よりも大幅に向上した性能を示し、アルミニウム上で試験した場合にのみデュロタック9640が性能を上回った。最高の引張せん断値はチーク基材で測定された。実施例3の組成物による本発明の接着テープを用いた引張せん断試験の結果を図3に示す。実施例3もβ-メトキシシアノアクリレートをベースとしているが、シアノアクリレート成分は実施例2よりも低い割合で存在する。テープの引張強度を様々な基材にわたって測定し、デュロタック9640の引張強度と比較した。接着剤は室温(25℃)で組み立てられ、室温でさらに24時間後に試験を実行した。
【0084】
実施例3の組成物を用いて調製した接着テープは、試験したすべての基材にわたってデュロタック9640よりも改善された性能を示した。ここでも最高の引張せん断値はチーク基材で測定された。
【0085】
実施例1~3の組成物を用いて調製したテープのT剥離性能を測定し、対照組成物であるデュロタック9640と比較した。T剥離試験をASTM D1876(2010)に従って実施した。試験は、幅25.4mm及び長さ150mmのT剥離試験片を使用してグリットブラスト軟鋼(GBMS)の基材上で行われ、室温(25℃)で24時間硬化するか、又は室温で24時間硬化後にさらに80℃で20分間硬化した。T剥離試験の結果を図4に示す。
【0086】
両方のセットの硬化条件において、試験したすべての実施例の組成物は、デュロタック9640よりも実質的に向上した性能を示した。すべての実施例の組成物で優れたT剥離性能が示された。室温で24時間硬化させた場合の実施例1及び2で最高のT剥離値が達成された。試験したすべての組成物について、T剥離性能は、室温で硬化後に80℃で20分硬化させた場合よりも、室温で硬化させた場合の方が高かった。しかしながら、試験した実施例の組成物について得られた最低のT剥離値でさえ、デュロタック9640について観察されたいずれの値よりも数倍高かった。
【0087】
実施例1~3の組成物を用いて調製したテープの側面衝撃性能を測定し、対照組成物であるデュロタック9640と比較した。側面衝撃試験は、STM812に従って実施された。試験は、軟鋼の基材上で、室温(25℃)で24時間硬化するか、又は室温で24時間硬化後にさらに80℃で20分間硬化して実施された。側面衝突試験の結果を図5に示す。
【0088】
試験したすべての実施例の組成物は、優れた側面衝撃性能を示し、対照組成物であるデュロタック9640を大幅に上回った。室温で24時間硬化後さらに80℃で20分間硬化した場合に得られた結果は、室温のみで硬化した場合で得られた結果と同等であった。
【0089】
本発明に関して本明細書で使用される場合、「含む(comprises/comprising)」という用語、及び「有する(having)/包含する(including)」という用語は、記載された特徴、整数値、工程又は成分の存在を特定するために使用されるが、1つ以上の他の機能、整数値、工程、成分、又はそれらの群の存在又は追加を妨げるものではない。
【0090】
明確にするために別個の実施形態に関連して説明される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態に関連して説明されている本発明の様々な特徴は、個別に、又は任意の適切なサブコンビネーションで提供することもできる。

図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】