(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】発明の名称:薄層クロマトグラフィー展開チャンバ用カバー
(51)【国際特許分類】
G01N 30/94 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G01N30/94
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528681
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2021081456
(87)【国際公開番号】W WO2022101375
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オベルレ,ミヒャエラ
(72)【発明者】
【氏名】シュンダ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ロベルト
(57)【要約】
薄層クロマトグラフィープレート(21)の表面上に配置された試料に液体溶媒を導入することによる薄層クロマトグラフィープレート(21)の展開のために使用され得る薄層クロマトグラフィー展開チャンバ(1)が、それによって溶媒および薄層クロマトグラフィープレート(21)が展開チャンバ(1)内に挿入され得て、開口部(3)を備えるハウジング(2)を含む。展開チャンバ(1)の開口部(3)は、展開チャンバ(1)内で行われる展開プロセスに関連するデータを入力または収集するためのデータ入力ユニット(10)を含むカバー(4)で閉じられ得る。カバー(4)は、展開プロセスに関連するデータを薄層クロマトグラフィーデータ記憶デバイス(24)へ無線データ送信することを可能にするデータ通信ユニット(16)をさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄層クロマトグラフィープレート(21)上に液体溶媒を導入することによって薄層クロマトグラフィープレート(21)を展開するための薄層クロマトグラフィー展開チャンバ(1)用カバー(4)であって、それによって溶媒および薄層クロマトグラフィープレート(21)が展開チャンバ(1)内に挿入され得て、ならびに、それによって展開チャンバ(1)の開口部(3)がカバー(4)で閉じられ得て、カバー(4)は、展開チャンバ(1)内で行われる展開プロセスに関連するデータを入力または収集するためのデータ入力ユニット(10)を含むことを特徴とする、
前記カバー。
【請求項2】
カバー(4)が、データ入力ユニット(10)で入力または収集されたデータを表示するための情報表示ユニット(14)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のカバー(4)。
【請求項3】
カバー(4)が、データ入力ユニット(10)で入力または収集されたデータを薄層クロマトグラフィーデータ記憶デバイス(24)へ無線データ送信することを可能にするデータ通信ユニット(16)を含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のカバー(4)。
【請求項4】
カバー(4)のデータ入力ユニット(10)が、展開プロセス所要時間を示すようにセットされ得るタイマーデバイスを含むことを特徴とする、請求項1~3の一項に記載のカバー(4)。
【請求項5】
カバー(4)が、展開チャンバ(1)内の溶媒槽の溶媒(29)へ接触しない保管位置と、溶媒槽の溶媒(29)中に薄層クロマトグラフィープレート(21)の一部が浸された展開位置との間で薄層クロマトグラフィープレート(21)を動かすのに好適なプレート収容デバイス(30)を含むことを特徴とする、請求項1~4の一項に記載のカバー(4)。
【請求項6】
カバー(4)のデータ入力ユニット(10)が、展開プロセスの間に展開チャンバ(1)内部の温度を検知するための温度センサデバイス(11)を含むことを特徴とする、請求項1~5の一項に記載のカバー(4)。
【請求項7】
カバー(4)のデータ入力ユニット(10)が、展開プロセスの間に展開チャンバ(1)内部の湿度を検知するための湿度センサデバイスを含むことを特徴とする、請求項1~6の一項に記載のカバー(4)。
【請求項8】
カバー(4)のデータ入力ユニット(10)が、展開プロセスの間に展開チャンバ(1)内部の圧力を検知するための圧力センサデバイスを含むことを特徴とする、請求項1~7の一項に記載のカバー(4)。
【請求項9】
カバー(4)のデータ入力ユニット(10)が、展開プロセスの間に展開チャンバ(1)内部の溶媒(29)内の気泡を検知するための気泡センサデバイスを含むことを特徴とする、請求項1~8の一項に記載のカバー(4)。
【請求項10】
カバー(4)のデータ入力ユニット(10)が、展開チャンバ(1)内の溶媒槽における溶媒(29)の充填レベルを検知するための充填レベルセンサデバイスを含むことを特徴とする、請求項1~9の一項に記載のカバー(4)。
【請求項11】
カバー(4)のデータ入力ユニット(10)が、展開ステップの前またはその間に溶媒(29)の均質性を検知するための溶媒均質性センサデバイス(34)を含むことを特徴とする、請求項1~10の一項に記載のカバー(4)。
【請求項12】
カバー(4)が、基準姿勢に対するカバー(4)の姿勢を測定するための姿勢測定デバイスを含むことを特徴とする、請求項1~11の一項に記載のカバー(4)。
【請求項13】
カバー(4)が、溶媒に対して不活性である封止で展開チャンバ(1)に面している内側から封止されている、データ入力ユニット(10)およびデータ通信ユニット(16)の、少なくとも1つの感応部のための区画(8)を含むことを特徴とする、請求項1~12の一項に記載のカバー(4)。
【請求項14】
封止が、ガラス板、およびガラス板と展開チャンバ(1)の開口部(3)の開口縁部との間の隙間を封止できるようにさせる、ガラス板を囲繞している環状の封止を含むことを特徴とする、請求項1~13の一項に記載のカバー(4)。
【請求項15】
データ通信ユニット(16)が、展開プロセスの間に展開される薄層クロマトグラフィープレート(21)に関連するデータを受信するためのデータ受信デバイスを含むことを特徴とする、請求項1~14の一項に記載のカバー(4)。
【請求項16】
薄層クロマトグラフィープレート(21)を展開ならびに分析するためのシステムであって、薄層クロマトグラフィープレート(21)を展開するための展開チャンバ(1)を備え、ならびに展開チャンバを用いて展開された薄層クロマトグラフィープレート(21)上のクロマトグラフィーの結果を収集し分析するための薄層クロマトグラフィー評価デバイス(23)を備え、展開チャンバ(1)が請求項1~9の一項に記載のカバー(4)を含むことを特徴とする、
前記システム。
【請求項17】
薄層クロマトグラフィー評価デバイス(23)が、評価プロセスに関連するデータを薄層クロマトグラフィーデータ記憶デバイス(24)へ無線データ送信することを可能にするデータ通信ユニットを含むことを特徴とする、請求項16に記載の薄層クロマトグラフィープレート(21)を展開ならびに分析するためのシステム。
【請求項18】
薄層クロマトグラフィープレート(21)を展開および分析するための方法であって、それによって薄層クロマトグラフィープレート(21)が、請求項1~15の一項に記載のカバー(4)を備えた薄層クロマトグラフィー展開チャンバ(1)内で展開され、データ送信ステップの間に、カバー(4)のデータ入力ユニット(10)によって入力または収集された薄層クロマトグラフィープレート(21)の展開に関連する少なくとも1つのデータが、展開ステップの間または後に、薄層クロマトグラフィープレート(21)のクロマトグラフィーの結果を収集および分析するための薄層クロマトグラフィー評価デバイス(23)へ送信されることを特徴とする、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄層クロマトグラフィープレート上に液体溶媒を導入することによって薄層クロマトグラフィープレートを展開できるようにさせる薄層クロマトグラフィー展開チャンバ用カバーに関し、それによって溶媒および薄層クロマトグラフィープレートが展開チャンバ内に挿入され得て、ならびに、それによって展開チャンバの開口部がカバーで閉じられ得る。
【背景技術】
【0002】
背景
薄層クロマトグラフィーは、試料内の不揮発性混合物を分離するために使用されるクロマトグラフィー技術であり、試料の個々の成分を識別し、場合によっては定量できるようにさせる。薄層クロマトグラフィーは、通常、例えば、シリカゲル、酸化アルミニウム、またはセルロースのような吸着材料の薄層でコーティングされた、ガラスやプラスチックの板、またはアルミホイルであり得る薄層クロマトグラフィープレート上で行われる。この吸着剤の層は固定相として知られている。
試料がプレート上に塗布された後、移動相として知られる溶媒または溶媒混合物が毛細管現象でプレート上に引き上げられる。試料がプレートの境界に近い領域上に塗布され、溶媒混合物が同じプレートの境界から引き上げられる場合、試料はプレートにわたり溶媒混合物とともに引き上げられる。試料の異なる成分、すなわち異なる分析物が異なる速度にてプレートを上がるので、分析物の分離が達成され、結果として、引き上げられプレートにわたり移動する溶媒混合物の経路に沿って異なるスポットとなる。
薄層クロマトグラフィープレートのかかる展開の後、試料中の異なる分析物のスポットが可視化される。これは、可視光、または紫外線を用いてプレートを照明することによってなされ得る。化学的プロセスを行って、スポットを可視化することもまた可能である。プレート上のスポットの位置およびサイズは、分析物の識別、ならびに試料中のそれぞれの分析物の量の定量測定に使用され得る。
結果を定量化するために、考察される分析物による移動距離を、移動相、すなわち溶媒混合物による総移動距離で割る。この比率が遅延係数(retardation factor)と呼ばれる。遅延係数は特有のものであるが、移動相と固定相の厳密な条件によって変化するであろう。そのため、通常は、プレートを展開し結果を分析する前に、既知の化合物の試料と、1つ以上の目的の試料がプレートへ組み合わされる。
【0003】
薄層クロマトグラフィーを使用して、反応の進行を監視し、所定の混合物中に存在する化合物を識別し、および物質の純度を決定することができる。このように、薄層クロマトグラフィーは、例えば、研究開発、ならびに工業生産プロセスの監視および品質管理のような、多くの異なる用途環境において試料を分析するための確立された手段である。しかしながら、薄層クロマトグラフィー測定の異なる結果を有意義に比較できるようにさせるためには、例としてプレートや使用される溶媒混合物、ならびにプレートの展開の間の所要時間および条件のような多くのパラメータが、同一であるか、または少なくとも既知のものであって、ならびに薄層クロマトグラフィー測定の結果を分析および比較することに対して考慮されるべきである。通常、これらのパラメータは、薄層プレートの展開を行う人物によって決定および書き留められなければならない。これは退屈な作業であり、間違いを起こしやすく、例として、異なる時間または異なる場所にて行われる測定結果の評価に支障をきたすこともある。
したがって、異なる時間または場所での異なる測定値の有意義な比較を容易にするやり方において、薄層クロマトグラフィープレートを展開することができるようにさせる薄層クロマトグラフィー展開チャンバが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、薄層クロマトグラフィー展開チャンバ用カバーに関し、カバーは、展開チャンバ内で行われる展開プロセスに関連するデータを入力または収集するためのデータ入力ユニットを含む。データ入力ユニットは、データ入力ユニットがカバーの操作を妨げないやり方で、カバーに組み込まれ得る。データ入力ユニットは、例として、押しボタン、キー、または回転ノブのような機械的入力機能を持つ入力デバイスを含み得る。好ましくは、データ入力ユニットは、薄層クロマトグラフィー展開チャンバを用いた展開ステップを行う前、その間、またはその後にデータを手動入力するための数個のメンブレンキーまたはタッチスクリーンを含む。したがって、薄層クロマトグラフィー展開チャンバを閉じるために使用され、かつ展開チャンバを用いた展開ステップの間に常に必ず使用され操作されるカバーは、プレートに関する、溶媒混合物に関する、およびこのプレート上の試料または多数の試料に関する情報のような、この展開の詳細に関連する情報を入力するためにも使用され得る。
【0005】
さらにまた、例として、測定結果の分析および評価の間にさらに着目されることもある、展開ステップの間の所要時間や温度または他の条件に関する測定を行いデータを収集するセンサを、データ入力ユニットへ、すなわちカバーの内部または表面の任意の位置にて追加することもまた可能である。センサによって行われるデータ取得は、展開ステップの前、その間、またはその後に自動的にトリガーされ得る。展開ステップを行う前、その間、またはその後に、ユーザコマンドによって手動でデータ取得がトリガーされることもまた可能である。
【0006】
カバーが、使用中のカバーの動作状態を示す状態表示ユニットを含むことは、薄層クロマトグラフィープレートの展開の間の動作不良またはデータ取得不足を防ぐために有利であると考察される。状態表示ユニットは、例として、動作状態がオフからオンへ、またはオンからオフへ切り替わることを示す音またはビープ音を再生する音響インジケータを含んでもよい。薄層クロマトグラフィープレートの展開を行う前に、カバーのスイッチがオンされるたびに行われる自動機能試験の結果を音響的に示すこともまた可能である。カバーのスイッチがオンされるときに点灯する、例として、状態LEDのような視覚的インジケータを備えた状態表示ユニットを含むこともまた可能である。異なる動作のモードまたは自動機能試験の結果は、異なる状態LEDによって、または異なる発光色を持つ単一の状態LEDによって示され得る。
【0007】
本発明の一側面によれば、カバーは、データ入力ユニットで入力または収集されたデータを表示するための情報表示ユニットを含む。情報表示ユニットは、単色またはカラーのディスプレイを含むこともある。情報表示ユニットはまた、バー型ディスプレイまたはポインタディスプレイ(pointer display)を含むこともある。情報表示は、展開ステップの前、その間、またはその後に手動で入力されたデータ、または展開ステップの前、その間、またはその後に適切なセンサを用いて収集されたデータの一部または全部を表示するように構成されることもある。
【0008】
本発明の有利な側面によれば、カバーは、展開プロセスに関連するデータを薄層クロマトグラフィーデータ記憶デバイスへ無線データ送信することを可能にするデータ通信ユニットを含む。データ入力ユニット内へ手動で入力されたすべてのデータ、またはデータ入力ユニットのセンサによって収集されたすべてのデータは、ユーザによる手動作用や援助を必要とせずに、薄層クロマトグラフィーデータ記憶デバイスへ、次に転送され得る。データ転送は、手動でトリガーされ得るか、または自動的に行われ得る。データ通信ユニットは、例えばWLANインタフェース、Bluetoothインタフェース、またはNFCインタフェースのような標準化された通信インタフェースを含んでもよい。データ入力ユニットからカバーの近くにある、あるいはカバーから遠く離れてあることもあるデータ記憶デバイスへのデータ転送をできるようにさせる、個々に構成されたデータ通信ユニットを利用することもまた可能である。カバーから、ルータとして機能し展開チャンバの近く、すなわち同室内に位置する付加データ送信デバイスへの第1のデータ送信用の第1のデータ送信プロトコルを使用することによってデータ送信を提供し、その後、付加データ送信デバイスから、どこにでも、および展開チャンバから遠く離れた場所に位置し得る記憶デバイスへの第2の、かつ異なるデータ送信プロトコルを使用してデータを送信することもまた可能である。
薄層クロマトグラフィーデータ記憶デバイスは、かかるデータのさらなる評価または編集を行うことなく、データを保存するだけの個別の記憶デバイスでもあり得る。かかる記憶デバイスは、例として、薄層クロマトグラフィー評価デバイスのような他のデバイスからアクセスされ、評価目的で記憶デバイスから保存されたデータを取り出し得る。記憶デバイスが、薄層クロマトグラフィー評価デバイスに内蔵されることもまた可能である。記憶デバイスは、カバーからのデータのデータ評価またはデータ整備が行われ得る、任意のデバイスに内蔵されてもよい。さらにまた、記憶デバイスは、薄層クロマトグラフィープレートの展開および分析の間の任意の所望のステップを行うために使用し得る任意のデバイスに内蔵されてもまたよい。記憶デバイスは、データが送信され、短期間保存される揮発性メモリのみを含んでもよい。ほとんどの用途にとっては、データの長期間保存を行うのに好適な、およびそれを行うように構成された記憶デバイスを利用するのが有利である。
【0009】
本発明の一態様によれば、カバーのデータ入力ユニットは、例として、無線接続を介する外部の別個機器を通して、展開プロセス所要時間を示すようにセットされ得るタイマーデバイスを含む。タイマーデバイスは、展開ステップの間にユーザに情報を提供し、プリセットされた展開プロセス所要時間の終了を示し得て、それによって、プリセットされたプロセス所要時間終了直後に展開プロセスを終了させることが容易になる。さらにまた、薄層クロマトグラフィーデータ記憶デバイス内で、この展開ステップのために送信および保存されるであろうデータ入力ユニット用データとしてプリセットされるプロセス所要時間を自動的に収集することも可能である。2つ以上の展開チャンバが同時に使用される場合、かかるタイマーデバイスをカバーに内蔵することによって、各展開チャンバの操作が容易になり、単一の展開チャンバへ明確に割り当てられていない外部のタイマーデバイスを使用することから生じることもある混乱を防ぐ。
【0010】
さらにまた、タイマーデバイスを、カバーと展開チャンバのハウジングとの接続、すなわち、カバーで展開チャンバのハウジングを閉じてから、夫々のプレートの展開ステップを行った後に1枚以上のプレートを取り除くために展開チャンバのハウジングを再び開くまでの所要時間を監視するセンサデバイスと組み合わせることも可能である。このように、プレートの展開ステップの所要時間は、データ入力ユニットによって自動的に決定され、監視され得る。カバーでハウジングを閉じた後に、展開チャンバ内で展開ステップを行うことができるようにさせる位置に、カバーへプレートを取り付け固定することができるようにさせるプレート収容デバイスをカバーに提供することもまた可能である。カバーでハウジングを閉じることによって、カバーへ固定されたプレートは、展開チャンバのハウジング内へ、所定の位置、好ましくは展開ステップを行うためにプレートが溶媒混合物中に浸される境界をともなう位置にて、挿入されることになる。こうして、展開チャンバの閉鎖時間を好適なセンサで監視することによって、展開プロセス所要時間は、データ入力ユニットによって自動的に決定され、監視され得る。
【0011】
カバーが、展開チャンバ内の溶媒槽へ接触しない保管位置と、溶媒槽中に薄層クロマトグラフィープレートの一部が浸される展開位置との間で、薄層クロマトグラフィープレートを動かすのに好適なプレート収容デバイスを含むこともまた可能である。プレート収容デバイスは、手動または自動で動作されてよく、昇降機構を使用することによって実現され得る。こうして、薄層クロマトグラフィープレートをプレート収容デバイス内へ挿入し、かつカバーを展開チャンバ上に装着し、それにより、展開チャンバ内に配置された溶媒槽へ接触することなく、薄層クロマトグラフィープレートが保管位置内に位置されることが可能となる。薄層クロマトグラフィープレートを溶媒と接触させる展開ステップの所要時間は、プレート収容デバイスを手動または自動で操作して、薄層クロマトグラフィープレートを保管位置から展開位置に移動させ、保管位置内へ戻すことによって正確に調整され得る。展開チャンバ上のカバーは変わらないままであるから、薄層クロマトグラフィープレートの展開の間に、展開チャンバまたは薄層クロマトグラフィープレートへ偶発的な振動または衝撃を与えるリスクはない。
【0012】
本発明の好ましい側面によれば、カバーのデータ入力ユニットは、展開プロセスの間に展開チャンバ内部の温度を検知するための温度センサデバイスを含む。本発明のまた別の好ましい側面によれば、カバーのデータ入力ユニットは、展開プロセスの間に展開チャンバ内部の湿度を検知するための湿度センサデバイスを含む。展開チャンバ内の温度および湿度が、薄層クロマトグラフィー展開ステップの実行およびかかる測定からの結果に影響を及ぼすことはよく知られている。温度センサデバイスならびに湿度センサデバイスを内蔵することによって、これらのパラメータに関する情報が展開ステップの間に自動的に取得され、監視され得る。かかるセンサデバイスをカバーに内蔵するためのコストは低いが、より明確かつより正確な測定結果において得られる利益は高い。
【0013】
本発明の別の態様によれば、カバーのデータ入力ユニットは、展開プロセスの間に展開チャンバ内部の圧力を検知するための圧力センサデバイスを含む。カバーは、展開チャンバのハウジングの気密閉鎖を提供する閉鎖機構を含み得る。かかる閉鎖機構は、ハウジングの開口部上へカバーを位置決めした後にハウジングと係合する係止手段または戻り止め手段へ動作的に接続される回転ノブを含むこともある。回転ノブを回転させることによって、係止手段または戻り止め手段がハウジングの対応する拘束手段と係合し、結果として、展開ステップの間にハウジングが気密閉鎖されることになる。薄層クロマトグラフィープレートの展開の間にカバーの任意の不要な浮き上がりを防止するために、カバーの重量が十分に大きい限り、ハウジングの開口部上にカバーを単に置くことによって展開チャンバの閉鎖を提供することもまた可能である。展開チャンバと接触するカバーのリング状の接触面は、弾性シールで被覆され得て、結果として、展開チャンバの開口部上面にカバーが置かれるとすぐに展開チャンバが気密閉鎖されることになる。展開チャンバ内の圧力を決定することによって、展開ステップの間にこのデータが監視され、薄層クロマトグラフィーデータ記憶デバイスへ転送され得る。
【0014】
本発明のまた別の態様によれば、カバーのデータ入力ユニットは、展開プロセスの間に展開チャンバ内部の溶媒内の気泡を検知するための気泡センサデバイスを含む。かかる気泡センサデバイスは、光学的手段によって、例として、溶媒槽をレーザー光ビームで照射し、気泡から散乱する光を決定し評価することによって、気泡の存在、場合によっては気泡の数または大きさもまた決定し得る。適切な超音波センサを利用することによって、または溶媒槽中の気泡を検出するのに好適な任意の他のセンサによって、気泡を検出することもまた可能である。溶媒混合物中で展開ステップの間に生成される気泡の数は、プレートにわたって分析物の分離に影響を及ぼすことが判明している。このように、この情報は、展開ステップの間に自動的に決定され、データ入力ユニットで編集されたデータに追加され、その後、薄層クロマトグラフィーデータ記憶デバイスへ送信され得る。
【0015】
本発明のまたさらなる態様によれば、カバーのデータ入力ユニットは、展開チャンバ中の溶媒槽における溶媒の充填レベルを検知するための充填レベルセンサデバイスを含む。かかる充填レベルセンサは、例として、溶媒槽用カップに充填された溶媒の表面から反射するレーザ光線ビームの光を検出することによって、充填レベルを検出する光学センサであり得る。また、充填レベルセンサは、1つのプリセットされた最適な充填レベルにて、または充填レベルの異なる高さにて、溶媒によって変化する電気伝導度を検出し得るセンサでもあり得る。溶媒槽の充填レベルを検出および監視することによって、展開ステップが正しく遂行されていることを監視および検証することが可能である。展開ステップの遂行前または遂行中に、充填レベルが低すぎたり高すぎたりした場合、警告が表示されたり、またはカバーを用いて示され得る。
【0016】
本発明のまた別の態様において、カバーのデータ入力ユニットは、展開ステップの前または最中に溶媒の均質性を検知するための溶媒均質性センサデバイスを含む。薄層クロマトグラフィープレートを展開するために使用される溶媒は、通常、2つ以上の成分の混合物である。薄層クロマトグラフィープレートを正しく展開し、正確な結果を得るには、溶媒中の成分を均一に混合することが要求される。展開ステップを行うために使用されるかかる溶媒が均質性に関連する要求を満たさない場合、警告が表示されたり、またはカバーを用いて示され得る。
【0017】
本発明のまた別の側面によれば、カバーは、基準姿勢に対するカバーの姿勢を測定するための姿勢測定デバイス含む。姿勢測定デバイスは、液体で満たされた管状のハウジング内に気泡を持つアルコール水準器であり得て、これによって気泡はカバーの外側から見える。かかるアルコール水準器の場合、基準姿勢は、溶媒槽内の溶媒の表面にもまた平行な水平面である。姿勢測定デバイスはまた、プリセットされた基準姿勢に対するカバーの姿勢を決定するジャイロスコープでもあり得て、これにより、展開プロセスの結果に有害であることもある展開チャンバの任意の傾きに関して正確な情報を取得できるようになる。
【0018】
データ入力ユニットを湿気、または場合によっては有害物質から保護するために、カバーは、溶媒に対して不活性である封止で展開チャンバに面した内側から封止されている、データ入力ユニットおよびデータ通信ユニットの少なくとも1つの感応部のための区画を任意に含む。感応部は、好ましくは、低い耐薬品性のみを持つ材料から製造される。特に電子部品は、かかる封止区画内に配置され、展開チャンバ内の湿気または液体から電子部品を保護し得る。センサデバイスは、かかる封止区画の外側に配置され得て、封止区画の内側に配置されたデータ入力ユニットのデータ処理ユニットまたはデータ保存ユニットへセンサ測定値を送信するために、ワイヤ接続または無線接続を介してデータ入力ユニットのより多くの感応部へ接続され得る。封止区画は、該封止を破壊することなく開封または除去できない封止で封止され得て、これによって高効率な封止ができるようになる。また、区画は、カバーの製品寿命の間に開閉可能な開口部を含むこともまた可能であって、これによって、例として、データ入力ユニットの電源用のバッテリを挿入および交換することができるようになる。開口部は、区画内へのいかなる湿気または液体の侵入を防ぐ追加の封止を備えた、回動可能または取り外し可能な蓋によって閉じられ得る。また、再充電バッテリを取り外しおよび交換する必要なしに、再充電バッテリのワイヤレス充電ができるようにさせる充電コイルを区画内へ追加することも可能である。
【0019】
本発明のまた別の態様において、封止は、ガラス板、およびガラス板と展開チャンバの開口部の開口縁部との間の隙間を封止できるようにさせる、ガラス板を囲繞している環状の封止を含む。かかるガラス板は、展開チャンバを使用する間にカバーと接触することもあるほとんどの有害物質から、経済的かつ効果的な区画の遮蔽を提供する。
【0020】
本発明の有利な側面によれば、データ通信ユニットは、展開プロセスの間に展開される薄層クロマトグラフィープレートに関連するデータを受信するためのデータ受信デバイスを含む。したがって、カバーは、展開チャンバに装着された1つ以上の薄層クロマトグラフィープレートを用いて展開ステップを行う前にデータを受信することもある。かかるデータは、展開ステップの間に処理および展開されるであろう薄層クロマトグラフィープレートに関する特定の情報を含み得て、それは、例として、薄層クロマトグラフィープレートの好ましい展開に(すなわち、薄層クロマトグラフィープレートを展開するために使用される移動相の移動方向に沿って広がっている異なる分析物のスポットを簡単かつ有意義に評価できるようにさせる分析物の分離に)要求される好ましい継続時間のような、展開ステップ用の1つ以上の条件を計算およびプリセットするのに使用され得る。さらにまた、かかるデータは、薄層クロマトグラフィープレート上へ試料を自動的に供給できるようにさせる試料塗布デバイスから受信されることもある。かかる試料塗布デバイスから、または薄層クロマトグラフィープレートおよび試料またはプレートへ塗布された試料に関連するかかるパラメータの手動入力ができるようにさせるデバイスから受信されるデータは、展開ステップの前、その間、またはその後に展開チャンバのカバーによって入力または収集される追加のデータと併合または組み合わされ得る。併合または組み合わされたデータは、その後、薄層クロマトグラフィーデータ記憶デバイスへ送信され得る。これが、薄層クロマトグラフィープレートの展開結果の評価前の間違いおよび不正確な入力を大幅に低減するであろう。
【0021】
本発明はさらに、薄層クロマトグラフィープレートを展開するための展開チャンバを備え、ならびに展開チャンバを用いて展開された薄層クロマトグラフィープレート上のクロマトグラフィーの結果を収集し分析するための薄層クロマトグラフィー評価デバイスを備える、薄層クロマトグラフィープレートを展開ならびに分析するためのシステムに関する。先行技術から知られている展開チャンバは、薄層クロマトグラフィープレート、ならびに展開ステップの間に薄層クロマトグラフィープレートを展開するために要求されるいくつかの溶媒混合物を受けるためのハウジングを含む。かかる既知の展開チャンバは、溶媒蒸気の展開チャンバの外へのいかなる不要な漏れをも防ぎ、展開チャンバ内の展開プロセスのいかなる不要な障害または汚染をも防ぐために、展開ステップの間に展開チャンバを閉じ、ならびに場合によっては封止するように設計されるカバーを含む。
かかる展開チャンバ内での展開後の薄層クロマトグラフィープレートの次の分析を行うのに有用と思われるデータの任意のデータ取得は、通常、個別に手動で、例として、展開プロセスの所要時間および条件に関して、あるいは薄層クロマトグラフィープレートを展開するために使用される溶媒に関して、メモを取ることによって行われる。しかしながら、かかる手動のデータ取得は退屈で、間違いを起こしやすい。多数の薄層クロマトグラフィープレートが同時に、または短時間に展開される場合、意図せずデータが混同されるというリスクが増大し、それが、ある測定のデータが別の測定へ誤って割り当てられる結果となることもある。
【0022】
本発明の非常に好ましい側面によれば、システムの展開チャンバは、上述の特徴を持つカバーを含む。かかるカバーが、展開チャンバを使用することによって行われる展開ステップの間に、薄層クロマトグラフィープレートおよび試料の展開に関連する追加情報を入力または収集できるようにさせる。これにより、利用可能なデータ、ならびにかかるカバーを備えた展開チャンバを使用して行われる薄層クロマトグラフィープレート展開の結果に基づいて、手動または自動で行われるであろう次のデータ評価のために要求されるデータの蓄積が簡素化される。さらにまた、不適切、あるいは誤ったデータ収集のリスクが低減され、それによって、データ蓄積、ならびに薄層クロマトグラフィー結果の評価および分析が容易になる。
本発明の好ましい選択肢によれば、薄層クロマトグラフィー評価デバイスは、評価プロセスに関連するデータを薄層クロマトグラフィーデータ記憶デバイスへ無線データ送信することを可能にするデータ通信ユニットを含む。したがって、本発明によるシステムは、展開チャンバを用いて行われる展開ステップに関連する自動または支援型データ取得のための手段、および展開チャンバを用いて入力または収集されたすべてのデータをデータ記憶デバイスへ自動的にデータ転送するための手段を提供する。これにより、展開ステップの実行と記録とに関わる作業負荷と、その次の結果の評価に必要なまたは役立つ、データ取得中または取得後のいかなる潜在的な間違いの原因との両方を大幅に低減し得る。
【0023】
本発明はまた、展開チャンバ内で薄層クロマトグラフィープレートを展開する方法に関する。通常、展開された薄層クロマトグラフィープレートのその次の評価に関わる全てのデータは、手動で記録され、その後、展開された薄層クロマトグラフィープレートの評価および分析を行うために使用される薄層クロマトグラフィー評価デバイス中へ手動で入力されなければならない。
そのため、展開チャンバを用いた展開ステップを行い、監視するときの作業負荷を低減し、起こりうる間違いを低減する必要がある。
本発明は、薄層クロマトグラフィー展開チャンバ内で薄層クロマトグラフィープレートを展開することに関し、それによって、展開ステップの間に展開チャンバのハウジングを閉じ、かつ封止するために上述のようなカバーが使用され、ならびに、それによって、展開ステップに関連する少なくとも1つのデータが、展開チャンバのカバー内のデータ入力ユニットへ入力されたり、またはデータ入力ユニットによって収集されたりする。本発明の非常に好ましい側面によれば、データ送信ステップの間に、カバーのデータ入力ユニットによって入力または収集された薄層クロマトグラフィープレートの展開に関連する少なくとも1つのデータが、展開ステップの間、またはその後に、薄層クロマトグラフィープレートのクロマトグラフィー結果を収集および分析するための薄層クロマトグラフィー評価デバイスへ送信される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は、以下の詳細な説明および添付図面を参照するとき、より完全に理解され、さらなる特徴が明らかになるであろう。図面は単に代表的なものであり、特許請求の範囲を制限することを意図するものではない。実際、当業者は、以下の明細書を読み、本図面を見れば、本発明の革新的な概念から逸脱することなく、さまざまな改造および変形がなされ得ることを認めることもある。図面内に描かれた同様の部品は、同じ参照数字によって参照される。
【0025】
【
図1】
図1は、ハウジング、およびハウジングの開口部を覆い、それに関連するデータを入力または収集するためのデータ入力ユニットと、無線データ送信を可能にするデータ通信ユニットとを含むカバーを備えた、薄層クロマトグラフィー展開チャンバの概略断面図を図示する。
【
図3】
図3は、カバーの別の態様の斜視図を図示する。
【
図4】
図4は、薄層クロマトグラフィープレートを展開および分析するための方法の概略図を図示する。
【
図5】
図5は、別の態様のカバーで覆われた薄層クロマトグラフィー展開チャンバの概略断面視を図示する。
【0026】
発明の詳細な説明
図1は、薄層クロマトグラフィープレートを展開するために設計され、好適な薄層クロマトグラフィー展開チャンバ1の一態様を図示する。展開チャンバ1は、ハウジング2の上面に開口部3を持つハウジング2を含む。ハウジング2は、数枚の薄層クロマトグラフィープレート、ならびに展開チャンバ1内で薄層クロマトグラフィープレートを展開するための移動相を形成する溶媒を受けるのに十分大きい。薄層クロマトグラフィープレートおよび溶媒は、開口部3を通りハウジング2の中へ挿入され得る。その後、展開チャンバ1内の薄層クロマトグラフィープレートの展開の間のいかなる干渉や汚染を防ぐために、開口部3は、カバー4によって閉じられ封止され得る。
カバー4は、溝5内に配置された弾性シール7を備える、ハウジング2の上縁6を受けるように設計された外周溝5を有する。溝5は、封止交換手順を簡素化するように、クランプ式封止を使用できるように設計されている。カバー4は、ハウジング2の上面に置かれ得て、それによって、開口部3を覆い、外周溝5内にクランプされた弾性シール7を用いてカバー4の重量によって開口部3を封止する。カバー4の封止は、展開チャンバ1を用いて行われる展開ステップの間にハウジング2内に生じる可能性のある圧力に耐える接触圧力および保持力を発生させ、結果として展開チャンバ1の強固かつ確実な閉鎖となる。
【0027】
カバー4は、区画8の閉鎖を提供する前板9の下方に、区画8を含む。データ入力ユニット10は、区画8の内側に配置される。データ入力ユニット10は、温度センサ11、圧力センサ12、データ処理ユニット13、ディスプレイ14、および数個の接触感応ボタン15を含む。ユーザは、接触感応ボタン15を使用することによって、展開チャンバ1を用いて行われる展開ステップに関連するいくつかのデータを入力し得る。データはディスプレイ14で表示され得る。さらにまた、展開ステップの前、その間、またはその後に、温度センサ11と圧力センサ12とで追加のデータが収集され得る。データ入力ユニット10は、データ通信ユニット16およびアンテナ17と接続されており、これらによって、データ入力ユニット10に入力またはそれで収集されたデータの一部またはすべてを、
図1には示されていない薄層クロマトグラフィーデータ記憶デバイスまたは薄層クロマトグラフィー評価デバイスへ無線データ送信することができるようになる。
データ入力ユニット10を区画8内に配置することによって、データ入力ユニット10は、機械的ストレスから、ならびに展開チャンバ1を用いて行われる展開ステップの間に使用される溶媒または配合成分による干渉または損傷から保護される。温度センサ11および圧力センサ12は、各々、区画8の底壁16内の小孔25の上方に配置される。各センサ11、12は、対応する孔25を通してハウジング2内の内部空間27と相互作用する。さらにまた、各センサ11、12は、夫々の孔25を覆い、溶媒蒸気に対して区画8の内部を保護する封止を提供する。薄層クロマトグラフィープレートを展開するためには、カバー4を操作し、カバー4で展開チャンバ1を閉じることが必須であるため、接触感応ボタン15を介して手動データ入力ができるようにすることによって、データ入力が容易になる。温度センサ11および圧力センサ12によって自動または手動でトリガーされるデータ収集によって、カバー4によって閉じられ封止された展開チャンバ1内で薄層クロマトグラフィープレートを展開した後の前記プレートの評価に関連し得るデータの収集がさらに容易になる。すべてのデータは、データ通信ユニット16によって、データ入力ユニット10からデータ記憶デバイスへ、または評価デバイスへ転送され得て、それによって、データ転送は、データ通信ユニット16によって自動で行われるか、または手動でトリガーされたあと行われるかのいずれかである。
【0028】
図2は、ガラス製の前板9内に配置されたディスプレイ14と接触感応ボタン15とを備えたカバー4の斜視図を図示する。
【0029】
図3は、カバー4の操作、ならびに展開チャンバ1のハウジング2の開口部3を閉じて封止するために使用され得る回転ノブ18を備えたカバー4の別の態様の斜視図を図示する。回転ノブ18によって、圧力パッドを動作させてハウジング2に対して押し付けられるようになり、その結果、カバー4によって発生される接触圧力および保持力が強化され、カバー4を用いたハウジング2の強固かつ確実な閉鎖を援助することとなる。さらにまた、カバー4は、ユーザによって手動で押されまたは離され得る数個のボタン19を含む。カバー4はまた、液体で満たされた管状のハウジング内に気泡39を持つ、カバー4の不所望な傾きを示す2つのアルコール水準器38をも含む。
【0030】
図4において、カバー4を使用する主な利点が図示されている。薄層クロマトグラフィープレートの準備、該薄層クロマトグラフィープレートの展開の準備、及び展開された薄層クロマトグラフィープレートの評価および分析の準備の間に使用される全ての部品、構成要素および装置が識別され、対応するデータは編集されて結果を分析するために考慮され得る。識別は、例として、試料を分析するために使用される薄層クロマトグラフィープレート21に取り付けられた個々の二次元バーコード20を利用することによって行われ得る。試料付きの薄層クロマトグラフィープレート21を展開するために使用される溶媒を入れた溶媒コンテナ22へ、さらなるバーコード20が取り付けられる。また別のバーコード20が、展開ステップの間に展開チャンバ1を閉じるために使用されるカバー4の前板9へ取り付けられる。展開チャンバ1を用いた展開ステップを行った後の薄層クロマトグラフィープレート21を照明し、ならびに評価するために使用される評価デバイス23へ、追加のバーコード20が取り付けられる。これらのバーコード20の各々は、バーコードリーダーで読まれ得る。各々の個別のバーコード20は、対応する構成要素または装置に関する追加情報と共に参照され得る。このように、薄層クロマトグラフィープレート21の展開および解析に関係する(例として、薄層クロマトグラフィープレート21自体、展開チャンバ1内での展開に使用される溶媒、展開された薄層クロマトグラフィープレート21の評価のために使用される評価デバイス23に関する)全ての情報は、バーコード20を介して参照および収集され得て、薄層クロマトグラフィーデータ記憶デバイス24へ転送され得る。このデータはその後、入手可能であり、いつでも結果の分析を行うためにアクセスされ得る。二次元バーコード20の代わりに、例として、QRコード(登録商標)またはデータマトリクスコードのような他の二次元コードを利用することもまた可能である。さらにまた、非接触識別をできるようにさせる、無線IDタグ、近距離無線通信、または磁気ストライプのような非光学的符号化方式を利用することもまた可能である。
【0031】
図5は、薄層クロマトグラフィープレート21を展開するために設計され好適であるカバー4の別の態様を備える展開チャンバ1の別の態様を図示する。
図5において示されていない、または参照されていない、あるいは以下に明示的に記載されていないすべての特徴は、
図1において示される態様のものと同一であり得る。展開チャンバ1は、溶媒29で充填されて展開チャンバ1の底部にて溶媒槽を提供し得るカップ28を備えたハウジング2を含む。展開チャンバ1の内部空間27に面した区画8の底壁26に、プレート収容デバイス30が取り付けられている。プレート収容デバイス30は、薄層クロマトグラフィープレート21を対応するスロット31内に収容し固定するためのスロット31を含む。プレート収容デバイス30は、薄層クロマトグラフィープレート21の下端33の隣の小領域32をカップ28内の溶媒29の中に向けて下げることができるようにさせる昇降機構を含む。展開ステップを行った後、薄層クロマトグラフィープレート21は、プレート収容デバイス30を用いて上方へ引き上げられ、それによって、溶媒槽から下端33を取り除き、薄層クロマトグラフィープレート21がさらに溶媒槽と触れることを止め得る。
【0032】
カバー4は、底壁26にある第1の孔25を通して下方の溶媒槽中へレーザビームを発射し、溶媒29の表面から反射した、または溶媒29の容積内の気泡によって散乱させられた戻りのレーザ光強度を検出する複合型光学センサデバイス34を含む。このように、複合型光学センサデバイス34は、展開ステップの間に溶媒29の量および使用量を監視するために、充填レベルセンサデバイスとして、ならびに溶媒均質性センサデバイスとして使用され得る。
カバー4はまた、発光ダイオードを用いた状態表示ユニット35をも含む。緑色の光の照明は、カバー4のオン状態に対応する。異なる光、例として赤色光の照明、または断続的に点滅する光発光は、展開ステップの遂行前または遂行中に検出された故障に対応するものである。
【0033】
区画8内には、再充電バッテリ36があり、これは、バッテリ36の電磁誘導充電用の受信コイルを含むワイヤレス再充電ユニット37で再充電され得る。
【国際調査報告】