(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】エンボス加工可能な無溶剤PUシート、積層体、及びそれを含む合成皮革
(51)【国際特許分類】
C08G 18/48 20060101AFI20231212BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20231212BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20231212BHJP
D06N 3/14 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C08G18/48 004
C08G18/00 C
B32B27/40
D06N3/14 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528710
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2021078353
(87)【国際公開番号】W WO2022100950
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/128628
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チョン カイ
(72)【発明者】
【氏名】チン,フォン
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ハン ユイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チュン イー
【テーマコード(参考)】
4F055
4F100
4J034
【Fターム(参考)】
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4J034RA14
(57)【要約】
本発明は、ポリオール成分(a)とイソシアネート成分(b)とを含む無溶剤ポリウレタン系から形成される、エンボス加工可能な無溶剤ポリウレタンシートに関し、
ポリオール成分(a)は、(a-1)1.5~2.5の範囲の官能価を有する少なくとも1つのポリオール;及び(a-2)任意に2.7~3.5の範囲の官能価を有する少なくとも1つのポリオール;を含み、ポリオール(a-2)の量は、ポリオール成分(a)の総質量に基づいて6質量%以下であり;ポリオール成分(a)は1.5~2.1の平均官能価を有する。本発明は、前記シート含む積層体及び合成皮革、並びにそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分(a)とイソシアネート成分(b)とを含む無溶剤ポリウレタン系から形成されるエンボス加工可能な無溶剤ポリウレタンシートであって、
前記ポリオール成分(a)は、
(a-1)1.5~2.5の範囲の官能価を有する少なくとも1つのポリオール;及び任意に
(a-2)2.7~3.5の範囲の官能価を有する少なくとも1つのポリオール;
を含み、
ポリオール(a-2)の量は、前記ポリオール成分(a)の総質量に基づいて6質量%以下であり;
前記ポリオール成分(a)は1.5~2.1の平均官能価を有する、
エンボス加工可能な無溶剤ポリウレタンシート。
【請求項2】
前記ポリオール(a-1)は、少なくとも2つのポリオールの混合物である、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記ポリオール(a-2)の量は、それぞれ前記ポリオール成分(a)の総質量に基づいて、0質量%~4質量%、好ましくは0質量%~3.5質量%、より好ましくは1質量%~3質量%の範囲である、請求項1に記載のシート。
【請求項4】
前記ポリオール(a-1)は、1.5~2.1の範囲の官能価を有する、請求項1に記載のシート。
【請求項5】
前記ポリオール(a-2)は、2.7~3.0の範囲の官能価を有する、請求項1に記載のシート。
【請求項6】
前記ポリオール成分(a)は、1.8~2.0、より好ましくは1.9~2.0の平均官能価を有する、請求項1又は2に記載のシート。
【請求項7】
前記ポリオール(a-1)の少なくとも1つのポリオールは、エポキシド又は3~6個の炭素原子を含む酸素含有複素環化合物から誘導されるポリエーテルポリオールから選択される、請求項1又は2に記載のシート。
【請求項8】
前記ポリオール(a-2)の少なくとも1つのポリオールは、エポキシドから誘導されるポリエーテルポリオールから選択される、請求項1に記載のシート。
【請求項9】
前記イソシアネート成分(b)は、(b-1)イソシアネート及び(b-2)1.5~2.5の範囲の官能価を有する少なくとも1つのポリオールを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のシート。
【請求項10】
前記ポリオール(b-2)は、500g/mol~5000g/mol、好ましくは800g/mol~3000g/molの範囲の質量平均分子量、及び20~300、好ましくは20~150の範囲のOH値を有する、請求項9に記載のシート。
【請求項11】
A)水性ポリウレタン分散液をベースとするトップコート層と、
B)前記トップコート層の下にあるベースコート層と、
を含み、前記ベースコート層は、請求項1~10のいずれか一項に記載のシートから作られる、エンボス加工可能な無溶剤PU積層体。
【請求項12】
前記トップコート層は、前記水性ポリウレタン分散液の量に基づいて、0.5~10%、好ましくは0.5~5%の含有量で架橋剤をさらに含有し、前記架橋剤は、親水性修飾を有する又は有しない芳香族-もしくは脂肪族-ポリカルボジイミド(PCDI)、又はイソシアネート三量体から選択される、請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
前記水性ポリウレタン分散液は、150~250℃、好ましくは180~230℃の範囲の、TGAによって測定されたオンセット分解温度を有する、請求項11に記載の積層体。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか一項に記載の積層体と基材層とを含み、前記基材層が前記積層体のベースコート層の下にある、合成皮革。
【請求項15】
アパレル、アクセサリー、ケース、電子装置、家具、自動車内張り、スポーツ用品又はレジャー製品の用途におけるアッパー又はカバー材としての請求項1~10のいずれか一項に記載のシート、請求項11~13のいずれか一項に記載の積層体、又は請求項14に記載の合成皮革の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール成分(a)とイソシアネート成分(b)とを含む無溶剤ポリウレタン系から形成されるエンボス加工可能な無溶剤ポリウレタンシート、及び積層体、及びそれを含む合成皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
無溶剤PU合成皮革は、合成皮革産業にとって環境に優しいソリューションの1つである。通常、トップコート層を形成するには水性分散液が必要であり、ベースコート層を形成するには無溶剤ポリウレタンシートが必要である。用途の要求に応じて、一部の合成皮革はエンボスパターンを要し、そのパターンが得られるかどうかは、主に無溶剤ポリウレタンシートの性質に依存する。しかし、一般的に合成皮革に使用される通常の熱硬化性/架橋性PUシステムは、180℃~220℃のような非常に高いエンボス温度下でも、エンボス加工はほとんど不可能である。
【0003】
WO2006/097508は、合成皮革用のポリウレタン層の調製方法を開示しており、そこでは、ポリウレタン層がイソシアネート成分(a)、ポリオール成分(b)、発泡剤(c)及び充填剤(d)を含む。この特許は、イソシアネート成分(a)及びポリオール成分(b)に適した複数の原料を開示している;しかし、ポリウレタン層のテクスチャの再現性を含んでいない。
【0004】
CN203938912Uは、PUトップ層、熱可塑性ポリウレタンフォーム中間層、熱硬化性ポリウレタンベース層を含むエンボス加工可能な無溶剤合成皮革を開示している。具体的には、この特許は、多層構造を使用することにより、良好な特性と良好な加工性能を有する製品を実現することを開示している。
【0005】
CN10403258は、PUトップ層、熱可塑性ポリウレタンフォーム中間層、熱硬化性ポリウレタンベース層を含むエンボス加工可能な無溶剤合成皮革の製造方法を開示している。具体的には、この特許は、多層構造を使用することにより、良好なテクスチャ及び手触りを有する製品を実現することを開示している。
【0006】
CN106519177Aは、エンボス加工可能な無溶剤PU合成皮革の製造方法を開示している。具体的には、この特許は、2液型ポリウレタンを用いて半製品を調製し、次いでエンボス加工処理を行って合成皮革を得ることを開示されている。しかし、この特許は、合成皮革のテクスチャの再現性をどのように改善するかという技術的課題を含んでいない。
【0007】
CN111016310Aは、高耐久性無溶剤エンボスグレインサッキングポリウレタン合成皮革を開示している。具体的には、2液型ポリウレタン発泡樹脂、特にポストキュア型エンボスグレインサッキングポリウレタン合成皮革を開示している。
【0008】
したがって、非常にシャープで鮮明なエンボスパターンを有しながら、そのシートをベースとする合成皮革に例えば55%超のより高いテクスチャの再現性を付与できる、新たな無溶剤型ポリウレタンシートを提供する必要が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2006/097508
【特許文献2】CN203938912U
【特許文献3】CN10403258
【特許文献4】CN106519177A
【特許文献5】CN111016310A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上述した先行技術の問題点を克服し、ポリオール成分(a)とイソシアネート成分(b)とを含む無溶剤ポリウレタン系から形成されるエンボス加工可能な無溶剤ポリウレタンシートを提供することである。このシートをベースとする最終的な合成皮革は、テクスチャの再現性のみならず、瞬間剥離強度、硬化性、及び/又は屈曲耐久性の点で改善された特性を実現する。さらに、最終的な合成皮革は、160℃~175℃の低い温度で調製されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、本発明者らは、ポリオール成分(a)とイソシアネート成分(b)とを含む無溶剤ポリウレタン系から得られるエンボス加工可能な無溶剤ポリウレタンシートを提供することによって、上記目的を達成し得ることを見出した、
ここで、ポリオール成分(a)は、(a-1)1.5~2.5の範囲の官能価を有する少なくとも1つのポリオール;及び任意に(a-2)2.7~3.5の範囲の官能価を有する少なくとも1つのポリオール;を含み、ポリオール(a-2)の量は、ポリオール成分(a)の総質量に基づいて6質量%以下であり;ポリオール成分(a)は1.5~2.1の平均官能価を有する。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、ポリオール(a-1)は、1.5~2.5の範囲の官能価を有する少なくとも2つのポリオールのポリオール混合物である。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、ポリオール(a-2)の量は、それぞれポリオール成分(a)の総質量に基づいて、0質量%~4質量%、好ましくは0質量%~3.5質量%、より好ましくは1質量%~3質量%の範囲である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、ポリオール(a-1)の少なくとも1つのポリオールは、1.5~2.1の範囲内の官能価を有する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、ポリオール(a-2)の少なくとも1つのポリオールは、2.7~3.5、好ましくは2.7~3.0の範囲の官能価を有する。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、ポリオール成分(a)は、1.5~2.0、好ましくは1.8~2.0、より好ましくは1.9~2.0、特に1.9~1.97の平均官能価を有する。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、ポリオール(a-1)の少なくとも1つのポリオールは、エポキシド又は3~6個の炭素原子を含む酸素含有複素環化合物から誘導されるポリエーテルポリオールから選択される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、ポリオール(a-2)の少なくとも1つのポリオールは、エポキシドから誘導されるポリエーテルポリオールから選択される。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、イソシアネート成分(b)は、(b-1)イソシアネート及び(b-2)1.5~2.5の範囲の官能価を有する1つ以上のポリオールを含む。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、ポリオール(b-2)は、500g/mol~5000g/mol、好ましくは800g/mol~3000g/molの範囲の質量平均分子量、及び20~300、好ましくは20~150の範囲のOH値を有する。
【0021】
本発明の他の目的は、エンボス加工可能な無溶剤PU積層体を提供することであり、該無溶剤PU積層体は、
A)水性ポリウレタン分散液をベースとするトップコート層と、
B)前記トップコート層の下にあるベースコート層と、
を含み、ここで、前記ベースコート層は、本発明によるシートから作られるものである。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、積層体のトップコート層は、水性ポリウレタン分散液の量に基づいて、0.5~10%、好ましくは0.5~5%の含有量で架橋剤をさらに含有し、架橋剤は、親水性修飾を有する又は有しない芳香族-もしくは脂肪族-ポリカルボジイミド(PCDI)、又はイソシアネート三量体から選択される。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、トップコート層の水性ポリウレタン分散液は、150~250℃、好ましくは180~230℃の範囲のTGAによって測定されたオンセット分解温度を有する。
【0024】
本発明の他の目的は、本発明による積層体と基材層とを含む合成皮革を提供することであって、前記基材層が前記積層体のベースコート層の下にある合成皮革を提供することである。
【0025】
本発明の他の目的は、アパレル、アクセサリー、ケース、電子装置、家具、自動車内張り、スポーツ用品又はレジャー製品などの用途におけるアッパー又はカバー材としてのシート、積層体又は合成皮革の使用を提供することである。
【0026】
驚くべきことに、本発明の合成皮革は、ベースコート層として、特定のポリオールを含み、特定のポリオールと特定の平均官能価を有するポリオール成分(a)から形成される革新的なエンボス加工可能な無溶剤ポリウレタンシートを使用することにより、テクスチャの再現性、剥離強度、硬化性、及び/又は屈曲耐久性の点で改善された特性を有することが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】トップコート層とベースコートからなる2層積層体の調製工程を示す図である。
【
図2】無溶剤PU合成皮革の調製工程を示す図である。
【
図3】無溶剤PU合成皮革の調製中のテクスチャの再現性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。本明細書で使用される場合、以下の用語は、特に明記されていない限り、それらに帰する意味を有する。
【0029】
本明細書で使用される場合、冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法的対象物又は構成要素の1つ又は複数(すなわち、少なくとも1つ)を指す。
【0030】
特に明記しない限り、全てのパーセンテージ(%)は「質量%」である。
【0031】
特に明記しない限り、「総固体質量」という用語は、系又は分散液の総質量から全ての溶媒(水を含む)の質量を差し引いたものを指す。
【0032】
特に明記しない限り、トップコート層については、添加剤及び/又は助剤の全ての質量パーセント(%)は、「添加剤及び/又は助剤の固体質量を水性ポリウレタン分散液の総固体質量で割った値」のパーセントを指す。
【0033】
特に明記しない限り、ベースコート層については、添加剤及び/又は助剤の全ての質量パーセント(%)は、「添加剤及び/又は助剤の固体質量を無溶剤ポリウレタン系の総固体質量で割った値」のパーセントを指す。
【0034】
特に明記しない限り、各成分又はポリマーの分子量は、質量平均分子量を意味する。
【0035】
特に明記しない限り、温度は室温を指し、圧力は周囲圧力を指す。
【0036】
本発明は、ポリオール成分(a)とイソシアネート成分(b)とを含む無溶剤ポリウレタン系から形成されるエンボス加工可能な無溶剤ポリウレタンシートを提供する、ここで、ポリオール成分(a)は、(a-1)1.5~2.5の範囲の官能価を有する少なくとも1つのポリオール;及び任意に(a-2)2.7~3.5の範囲の官能価を有する少なくとも1つのポリオールを含み:ポリオール(a-2)の量は、ポリオール成分(a)の総質量に基づいて6質量%以下であり;ポリオール成分(a)は1.5~2.1の平均官能価を有する。
【0037】
本発明において、エンボス加工可能な無溶剤ポリウレタンシートを製造するための無溶剤ポリウレタン系は、ポリオール成分(a)、イソシアネート成分(b)、鎖延長剤及び/又は架橋剤(c)、及び任意に、発泡剤(d)、触媒(e)、充填剤(f)及び添加剤及び/又は助剤(g)、例えば顔料、増粘剤、湿潤剤及び酸化防止剤からなる。
【0038】
ポリオール成分(a)
本発明では、ポリオール成分(a)は、(a-1)1.5~2.5の範囲の官能価を有する少なくとも1つのポリオールを含む。
【0039】
ポリオール(a-1)として使用されるポリオールは、1.5~2.5の範囲の官能価を有するポリオールから選択され、好ましくは、1.5~2.1の範囲の官能価を有するポリオールである。
【0040】
ポリオール(a-1)として用いられるポリオールは、好ましくは、500g/mol~10000g/mol、好ましくは800g/mol~6000g/mol、より好ましくは900g/mol~4000g/molの質量平均分子量を有し、20~400mgKOH/g、好ましくは20~300mgKOH/g、より好ましくは20~200mgKOH/gの範囲のOH値を有する。
【0041】
ポリオール(a-1)は、単一のポリオール又は少なくとも2つの単一のポリオールの混合物であってよい。好ましくは、ポリオール(a-1)は、少なくとも2つの単一ポリオールの混合物である。好ましくは、ポリエーテルポリオール混合物は、ポリオール(a-1)として使用される。
【0042】
適切なポリエーテルポリオールは、好ましくは、850g/mol~1500g/mol、好ましくは900g/mol~1200g/molの範囲の質量平均分子量を有し、1.9~2.1の範囲の官能価を有し、50~400mgKOH/g、好ましくは100~200mgKOH/gの範囲のOH価を有する。それらのポリエーテルポリオールは、テトラヒドロフランなどの3~6個の炭素原子を含む酸素含有複素環化合物の開環重合によって得られるポリエーテルポリオールであり得る。好ましくは、ポリオールは、テトラヒドロフランを繰り返し単位として重合することによって製造され、好ましくは、第一級ヒドロキシルでキャップされる。
【0043】
使用されるポリエーテルポリオールはまた、好ましくは、3000g/mol~4000g/mol、好ましくは3200g/mol~3600g/molの範囲の質量平均分子量を有し、1.5~2.0の範囲の官能価を有し、20~200mgKOH/g、好ましくは20~60mgKOH/gの範囲のOH価を有する。それらのポリエーテルポリオールは、プロピレングリコール、エチレングリコールもしくはブタンジオールなどのジオールのホモポリマー化によって得られるポリエーテルポリオールであり得、又は、ポリエーテルポリオールは、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドなどのエポキシドを繰り返し単位として重合することによって、及び、プロピレングリコールをスターターとして使用することによって生成され、好ましくは第一級ヒドロキシル基を有するエチレンオキシドによってキャップされる。
【0044】
本発明による好ましい実施形態では、ポリオール(a-1)は、テトラヒドロフラン由来の上記ポリエーテルポリオールとエポキシド由来の上記ポリエーテルポリオールの、1:1.5~3、好ましくは1:1.5~2.5の質量比の混合物を含む。
【0045】
本発明においてポリオール(a-1)として使用されるポリオールは、公知の方法で製造されたもの、又は市販のものであり得る。
【0046】
本発明において、ポリオール成分(a)は、(a-2)2.7~3.5の範囲の官能価を有する少なくとも1つのポリオールをさらに含み;ここで、ポリオール(a-2)の量は、ポリオール成分(a)の総質量に基づいて≦6質量%である。
【0047】
本発明による好ましい実施形態では、ポリオール(a-2)の量は、ポリオール成分(a)の総質量に基づいて、それぞれ0質量%~4質量%、好ましくは0質量%~3.5質量%、より好ましくは0.5質量%~3.0質量%、特に1.0質量%~3.0質量%の範囲である。
【0048】
ポリオール(a-2)は、2.7~3.5の範囲の官能価を有するポリオールから選択され、又はそのようなポリオールの混合物である。ポリオール(a-2)として使用されるポリオールは、好ましくは、2.7~3.0の範囲内の官能価を有する。
【0049】
ポリオール(a-2)として使用されるポリオールは、好ましくは3000g/mol~6000g/mol、好ましくは3500g/mol~5000g/mol、より好ましくは4000g/mol~4500g/molの範囲の質量平均分子量を有し、20~200mgKOH/g、好ましくは20~100mgKOH/g、より好ましくは25~60mgKOH/gの範囲のOH価を有する。
【0050】
ポリオール(a-2)は、単一のポリオール又は単一のポリオールの混合物、好ましくはポリエーテルポリオール、より好ましくはエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、及び/又はブタンオキシド(BO)などのエポキシドに基づくポリエーテルポリオールであり得る。これらのポリエーテルポリオールは、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドなどのエポキシドを繰り返し単位として重合することによって、及びグリセロールをスターターとして使用することによって生成されるポリエーテルポリオールであり得、好ましくは第一級ヒドロキシル基を有するエチレンオキシドによってキャップされる。本発明においてポリオール(a-2)として使用されるポリオールは、公知の方法で製造されたもの、又は市販のものであり得る。
【0051】
本発明において、(a-1)ポリオールと任意に(a-2)ポリオールからなるポリオール成分(a)は、1.5~2.1の平均官能価(FAv)を有する。好ましくは、ポリオール成分(a)は、1.8~2.0、より好ましくは1.9~2.0、特に好ましくは1.9~1.97、特に1.9~1.96又は1.9~1.95の平均官能価を有する。
【0052】
本発明において、FAvとは、ポリオール成分(a)に含まれる複数のポリオールのFn平均を意味し、以下の式:
FAv=MR1*F1+MR2*F2+MR3*F3+…,
によって表され、
式中、MR1はポリオール成分(a)中の第1ポリオールのモル比、F1はポリオール成分(a)中の第1ポリオールの官能価であり;MR2はポリオール成分(a)中の第2ポリオールのモル比、F2はポリオール成分(a)中の第2ポリオールの官能価であり、...。
【0053】
本発明において、各成分の分子量は、GB/T21863-2008に従って、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して決定された。
【0054】
本発明において、各ポリオール成分のOH値は、DIN53240に従って決定された。
【0055】
本発明において、官能価(Fn)とは、ポリオール1分子あたりの末端ヒドロキシル基の数を意味する。官能価は、以下の式:
Fn=Mn
*(OHv)/56100
によって決定され、
式中、Mnはポリオールの数平均分子量を表し、OHvはポリオール成分のOH価を表す。
【0056】
驚くべきことに、本発明では、ポリオール成分(a)の組成が、本発明の無溶剤ポリウレタンシートの特性に重要な影響を与えることが見出された。1.5~2.1、好ましくは1.9~2.0、より好ましくは1.9~1.97、特に1.9~1.96又は1.9~1.95の平均官能価(FAv)を有するポリオール成分(a)は、本発明の無溶剤ポリウレタンシートの優れた特性、特に55%超などのテクスチャの再現性を生じる。特に、上記特定のポリオール(a-1)及びポリオール(a-2)を用いることにより、本発明の無溶剤ポリウレタンシートは、優れた特性、例えば、テクスチャの再現性、剥離強度、硬化性、及び/又は屈曲耐久性を示す。本発明者らは、ポリオール(a-1)及びポリオール(a-2)の種類及び量が、本発明の無溶剤ポリウレタンシートの上記特性に大きく影響することを見出した。具体的には、ポリオール成分(a)の総質量に基づいて、2.7~3.5の範囲の官能価を有するポリオール(a-2)の量が6質量%以下であると、無溶剤ポリウレタンシートは、上記の優れた特性、すなわち、55%超の優れたテクスチャの再現性を、優れた剥離強度、硬化性、及び屈曲耐久性を確保しながら達成するのに有利である。ポリオール(a-2)の量が6質量%を超えると、テクスチャの再現性が低下する。好ましくは、ポリオール(a-2)の量は、ポリオール成分(a)の総質量に基づいて、それぞれ0質量%超~4質量%、好ましくは1質量%~3質量%の範囲である。
【0057】
イソシアネート成分(b)
本発明において、イソシアネート成分(b)は、少なくとも1つのイソシアネート、すなわち(b-1)イソシアネートを含む。本発明のベースコート層の製造に使用されるイソシアネートは、ポリウレタンを製造するために知られている全てのイソシアネートを含む。これらは、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族イソシアネート、例えば、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2-エチルブチレン1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、ブチレン1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-及び/又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン2,4-及び/又は2,6-ジイソシアネート及び/又はジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-及び2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ポリマーMDI、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4-及び/又は2,6-ジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2-ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネートを含む。ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネート、並びにポリマーMDI、特にジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートを使用することが特に好ましい。
【0058】
イソシアネート成分(b)の量は、イソシアネートインデックスが100~140、好ましくは100~120となるように選択される。
【0059】
イソシアネート成分(b)はまた、(b-2)少なくとも1つのポリオールを含んでいてもよい。
【0060】
ポリオール(b-2)は、1.5~2.5の範囲の官能価を有するポリオール、又はそのようなポリオールの混合物から選択される。ポリオール(b-2)として使用されるポリオールは、好ましくは、1.6~2.0の範囲内の官能価を有する。
【0061】
ポリオール(b-2)として使用されるポリオールは、好ましくは、500g/mol~5000g/mol、好ましくは800g/mol~3000g/mol、より好ましくは1000g/mol~2500g/molの範囲の質量平均分子量を有し、20~300mgKOH/g、好ましくは20~150mgKOH/g、より好ましくは30~100mgKOH/gの範囲のOH値を有する。
【0062】
ポリオール(b-2)は、単一のポリオール又は単一のポリオールの混合物であってよい。好ましくは、ポリオール混合物、特にポリエーテルポリオール混合物が、ポリオール(b-2)として使用される。
【0063】
使用されるポリエーテルポリオールは、好ましくは、1000g/mol~2500g/mol、好ましくは1800g/mol~2300g/molの範囲の質量平均分子量を有し、1.9~2.1の範囲の官能価を有し、20~200mgKOH/g、好ましくは30~100mgKOH/gの範囲のOH価を有する。それらのポリエーテルポリオールは、テトラヒドロフランなどの3~6個の炭素原子を含む酸素含有複素環化合物の開環重合によって得られるポリエーテルポリオールであり得る。好ましくは、ポリオールは、テトラヒドロフランを繰り返し単位として重合することによって製造され、好ましくは、第一級ヒドロキシルでキャップされる。
【0064】
使用されるポリエーテルポリオールはまた、好ましくは、1000g/mol~3000g/mol、好ましくは1500g/mol~2500g/molの範囲の質量平均分子量を有し、1.8~2.0の範囲の官能価を有し、20~200mgKOH/g、好ましくは30~100mgKOH/gの範囲のOH価を有する。これらのポリエーテルポリオールは、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドなどのエポキシドを繰り返し単位として重合することによって、及びプロピレングリコールをスターターとして使用することによって生成されるポリエーテルポリオールであり得、好ましくはプロピレングリコールによってキャップされる。
【0065】
本発明による好ましい実施形態では、ポリオール(b-2)は、テトラヒドロフラン由来の上記ポリエーテルポリオールとエポキシド由来の上記ポリエーテルポリオールの、1:0.5~2、好ましくは1:0.8~1.5の質量比の混合物を含む。
【0066】
本発明においてポリオール(b-2)として使用されるポリオールは、公知の方法で製造されたもの、又は市販のものであり得る。
【0067】
本発明による好ましい実施形態では、イソシアネート成分(b)は、特性を改善するための添加剤、例えばオキシジエチレンビス(クロロホルメート)(DECF)を含んでよい。添加剤の量は、イソシアネート成分(b)の総質量に基づいて、好ましくは0.005~0.5質量%、より好ましくは0.01~0.1質量%である。
【0068】
鎖延長剤及び/又は架橋剤(c)
使用できる鎖延長剤及び/又は架橋剤(c)は、好ましくは500g/molより小さく、特に好ましくは60~400g/molのモル質量を有する物質であり、鎖延長剤はイソシアネートに対して反応性のある2つの水素原子を有し、架橋剤はイソシアネートに対して反応性のある3つの水素原子を有している。これらは個別に、又は好ましくは混合物の形態で使用されることができる。分子量が500より小さい、特に60~400、特に60~350のジオール及び/又はトリオールを使用することが好ましい。使用できるものの例としては、2~14個、好ましくは2~10個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式、及び/又は芳香族ジオール、例えばエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-、1,3-及び1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエタノールアミン、又はトリオール、例えば1,2,4-もしくは1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサン、グリセロール及びトリメチロールプロパンである。エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、又は1,4-ブタンジオール、特に1,4-ブタンジオールを使用することが好ましい。
【0069】
鎖延長剤及び/又は架橋剤(c)の量は、ポリオール成分(a)の総質量に基づいて、好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは1.5~4.5質量%である。
【0070】
発泡剤(d)
この系はまた、発泡剤(d)を含んでよい。適切な発泡剤(d)は、それ自体が当業者に知られており、例えば、二酸化炭素、プロパン、イソブタン及びペンタンなどのアルカン、メタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチルプロパノール及びtert-ブタノールなどのアルコール、ジメチルエーテルなどのエーテル、アセトン又はメチルエチルケトンなどのケトン、ヒドロフルオロプロペンなどのハロゲン化炭化水素、水、窒素及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、水が唯一の発泡剤として使用される。
【0071】
発泡剤(d)の量は、ポリオール成分(a)の総質量に基づいて、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.1~1.0質量%である。
【0072】
触媒(e)
触媒(e)としては、イソシアネート-ポリオール反応を促進する全ての化合物を使用することが可能である。このような化合物は公知であり、例えば、「Kunststoffhandbuch,第7巻,Polyurethane」,Carl Hanser Verlag,第3版、1993年、第3.4.1章に記載されている。これらは、アミンベースの触媒及び有機金属化合物をベースとする触媒、又はそれらの混合物を含む。
【0073】
有機金属化合物に基づく触媒としては、例えば、有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えば酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)及びラウリン酸スズ(II)、並びに有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート及びジオクチルスズジアセテートなどの有機スズ化合物、また、Zn塩又はBi塩、例えばオクタン酸亜鉛、ネオデカン酸ビスマス(III)、2-エチルヘキサン酸ビスマス及びオクタン酸ビスマス、又はカルボン酸のアルカリ金属塩、例えば酢酸カリウム又はギ酸カリウムを使用することが可能である。
【0074】
アミンベースの触媒としては、例えば、N,N,N-トリエチルアミノエトキシエタノール、ビス(N,N-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリメチルヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、ジメチルエタノールアミン、N-メチルイミダゾール、N-エチルイミダゾール、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン、ジメチルアミノプロピルアミン、N-エチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロオクタン、好ましくはトリエチレンジアミン又はビス(N,N-ジメチルアミノエチル)エーテルを使用することが可能である。
【0075】
本発明で使用される触媒(e)は、例えば、BASF社のHaptex CC 6945/92 C-CC及びBASF社の添加剤CX 93600など市販のものを使用できる。
【0076】
典型的には、触媒(e)の量は、ポリオール成分(a)の総質量に基づいて、好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.1~1.5質量%である。
【0077】
充填剤(f)
本発明によれば、存在する場合、使用できる充填剤は無機充填剤であり、これは炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、又はタルクから選択され、好ましくは炭酸カルシウム又は水酸化アルミニウムである。無機充填剤の量は、無溶剤ポリウレタン系の総質量に基づいて、0~200質量%、好ましくは10~50質量%である。
【0078】
添加物及び/又は助剤(g)
使用できる添加剤及び/又は助剤(g)は、界面活性剤、防腐剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、シリコーンオイルレベリング剤、安定剤、増粘剤、湿潤剤及び補強剤を含む。無溶剤ポリウレタン系を調製する際には、得られるポリウレタンシートの物性、例えば、テクスチャの再現性、剥離強度、屈曲耐久性、及び硬化性などを向上させるように、上記添加剤及び/又は助剤の1つ、又はそれらの混合物を使用することが一般的である。
【0079】
典型的には、添加剤及び/又は助剤の量は、無溶剤ポリウレタン系の総質量に基づいて、好ましくは0~12質量%、より好ましくは0.1~10質量%である。
【0080】
本発明によれば、増粘剤、湿潤剤、及び酸化防止剤が好ましく使用される。使用できる材料は、存在する場合、無溶剤ポリウレタン系に一般的に使用される全ての増粘剤、湿潤剤、及び酸化防止剤を含む。それらのそれぞれの量は、無溶剤ポリウレタン系の総質量にそれぞれ基づいて、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.5~1質量%である。
【0081】
上記の助剤及び添加剤の使用及び作用のモードに関するさらなる情報、並びにさらなる例は、「Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane」[「Plastics handbook,第7巻,Polyurethanes」],Carl Hanser Verlag,第3版、1993年、第3.4章に例として示されている。
【0082】
発明はさらに、エンボス加工可能な無溶剤PU積層体を提供し、該無溶剤PU積層体は、
A)水性ポリウレタン分散液をベースとするトップコート層と、
B)前記トップコート層の下にあるベースコート層と、
を含み、ここで、前記ベースコート層は、本発明によるエンボス加工可能な無溶剤ポリウレタンシートから作られるものである。
【0083】
トップコート層
本発明において、トップコートスキン層に使用される水性ポリウレタン分散液は、150~250℃、好ましくは180~230℃の範囲のTGAによって測定されたオンセット分解温度を有する。トップコートスキン層に使用される適切な水性ポリウレタン分散液は、例えばPCT/CN2020/084834に開示されており、その内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0084】
本発明において、トップコートスキン層に使用される水性ポリウレタン分散液は、BASFからのHaptex CC 6945/90 C-CHなどの市販のものであってよく、又はイソシアネート成分(a’)及びポリオール成分(b’)から調製される。水性ポリウレタン分散液を調製するための方法は、当該技術分野で一般的に使用され、当業者によって知られている任意の方法であり得る。イソシアネート成分(a’)は、慣用の脂肪族、脂環式、及び芳香族ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートを含む。トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、及び、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(ポリマーMDI)との混合物を使用することが好ましく、特にジフェニルメタンジイソシアネート(モノマーMDI)との混合物を使用することが好ましい。イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、及び水素化ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(H12MDI)もまた好ましい。
【0085】
イソシアネート又は以下に記載のイソシアネートプレポリマーは、例えばウレチジオン、カルバメート、イソシアヌレート、カルボジイミド又はアロファネート基の組み込みにより修飾された状態であってもよい。様々なイソシアネートのブレンドを使用することがさらに可能である。
【0086】
ポリイソシアネートは、ポリイソシアネートプレポリマーの形態で使用されることもできる。これらのプレポリマーは、従来技術において知られている。これらは、上述のポリイソシアネートを、イソシアネート反応性水素原子を有する下記に記載の化合物と反応させて、プレポリマーを形成することにより、従来の方法で調製される。この反応は、例えば、約80℃の温度で実施されることができる。ポリオール/ポリイソシアネート比は、一般に、プレポリマーのNCO含量が6質量%~25質量%の範囲になるように選択される。
【0087】
ポリオール成分(b’)は、好ましくは、ポリエーテルオール及び/又はポリエステルオールを含む。これらは一般に知られており、例えば「Kunststoffhandbuch Polyurethane」Guenter Oertel,Carl-Hanser-Verlag,第2版、1983、第3.1.1章に記載されている。関連技術において同様に慣用されている代替呼称は、一方ではポリエーテルポリオール又はポリエーテルアルコールであり、他方ではポリエステルポリオール又はポリエステルアルコールである。
【0088】
本願において、好ましくは、ポリオール成分(b’)は、ポリオール混合物である。ポリオール成分(b’)は、(b’-1)500g/mol~10000g/molの範囲の質量平均分子量、及び2~4の範囲の官能価を有するポリオール、及び(b’-2)500g/mol~3000g/molの範囲の質量平均分子量、及び2~4の範囲の官能価を有するポリオールを含む。一例として、ポリオール(b’-1)は、XCP-2000Nなどのポリエステルであってよく、ポリオール(b’-2)は、Ymer N120など、ポリエチレングリコールに基づく親水性ポリエーテルであってよい。
【0089】
ポリオール成分(b’)は、(b’-3)400g/mol未満の分子量を有する鎖伸長剤と、(b’-4)カルボキシレート基又はスルホネート基を含有する親水性鎖伸長剤とを含む。
【0090】
使用され得る鎖延長剤(b’-3)は、好ましくは400g/mol未満、特に好ましくは60~400g/molのモル質量を有する物質であり、鎖延長剤はイソシアネートに対して反応性のある少なくとも2つの水素原子を有している。これらは個別に、又は好ましくは混合物の形態で使用されてよい。60~400、特に60~350の分子量を有するジオール及び/又はトリオールを使用することが好ましい。使用され得るものの例としては、2~10個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式、及び/又は芳香族ジオール、例えばエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-、1,3-及び1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエタノールアミン、又はトリオール、例えば1,2,4-もしくは1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサン、グリセロール及びトリメチロールプロパンがある。ジアミン及び/又はトリアミンを使用することも好ましい。使用され得るものの例としては、ジエチレントリアミン又はN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミンがある。水性ポリウレタン分散液の全固形質量に基づく鎖延長剤(b’-3)の量は、好ましくは0.1~10質量%、特に好ましくは0.2~8質量%である。
【0091】
使用され得る親水性鎖延長剤(b’-4)は、カルボキシレート基又はスルホネート基を有する親水性鎖伸長剤である。これらは、水性ポリウレタン分散液に親水性基を提供し、分散液が適切な親水性を有することを確実にする。好ましくは、ここで、AB-塩(2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホン酸ナトリウム)又はDMPA(ジメチロールプロピオン酸)を使用できる。親水性鎖延長剤(b’-4)の量は、水性ポリウレタン分散液の全固形質量に基づいて、好ましくは0.1~50質量%、特に好ましくは0.2~35質量%である。
【0092】
水性ポリウレタン分散液は、水性ポリウレタン分散液の全固形質量に基づいて、0.5%以下、好ましくは0.1%未満のカルボキシレート基を含み、ここで、カルボキシレート基は、カルボキシル基を有する親水性伸長剤、及び水性ポリウレタン分散液を調製するために使用される他のカルボキシル含有出発材料に由来する。さらに、水性ポリウレタン分散液中に存在するイソシアネート基に対するヒドロキシル基及び/又はアミノ基のモル比は、0.9~1.5、好ましくは1.10~1.25である。
【0093】
水性ポリウレタン分散液は、分散液に6~9の適切なpH範囲を提供するように、ゲル反応性を有するアミン中和剤を任意に含む。水性ポリウレタン分散液の全固形質量に基づくアミン中和剤の量は、好ましくは0.01~5質量%、特に好ましくは0.05~2質量%である。例として、アミン中和剤は、トリエチレンジアミン(TEDA)、1,2-ジメチルイミダゾール、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン及び第三級アミンからなる群から選択される。
【0094】
任意に、水性ポリウレタン分散液は、界面活性剤を含む。界面活性剤は、アルコールエトキシレート、アルキルポリグルコシド、ビスフェノールAエトキシレート、エトキシル化天然ファットオイル、脂肪酸エトキシレートなどの非イオン性界面活性剤、又は/及び脂肪アルコールエーテル硫酸塩、脂肪アルコール硫酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、オレイン酸スルホン酸塩、ジイソデシルスルスルホコハク酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩などのアニオン性界面活性剤、又は/及びアミンエトキシレート、アミノポロール、第四級アンモニウム界面活性剤などのカチオン性界面活性剤であり得る。
【0095】
本発明の好ましい実施形態では、水性ポリウレタン分散液をベースとするトップコートスキン層は、架橋剤も含む。ここで、適切な架橋剤は、親水性修飾を有するか又は有しない芳香族-又は脂肪族-ポリカルボジイミド(PCDI)、又はイソシアネートから選択され得る。架橋剤は、混合又は単一の態様で使用することができ、好ましくは混合態様である。一例として、架橋剤として、アスタシンハードナーCA及び/又はアスタシンハードナーCIを使用することができる。水性ポリウレタン分散液の全固形質量に基づく架橋剤の量は、好ましくは0.1~20質量%、特に好ましくは0.5~15質量%、特に好ましくは1~10質量%である。
【0096】
本発明の好ましい実施形態では、水性ポリウレタン分散液に基づくトップコートスキン層は、当業者によって一般的に知られている他の添加剤及び/又は助剤をも含む。使用され得る添加剤及び/又は助剤は、界面活性剤、増粘剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、補強剤、安定剤及び湿潤剤を含む。ポリウレタン分散液の調製においては、得られるポリウレタン分散液の特性を向上させるために、上記の添加剤及び/又は助剤の1つ、又はそれらの混合物を使用するのが一般的である。典型的には、他の添加剤及び/又は助剤の量は、水性ポリウレタン分散液の全固形質量に基づいて、好ましくは0~25質量%、より好ましくは0.5~15質量%である。ここで、顔料として、例えばPermutex PP-39-611など、ポリウレタン分散液の調製に適している全ての化合物を使用することが可能である。顔料の量は、存在する場合は、水性ポリウレタン分散液の全固形質量に基づいて、好ましくは1~12質量%、特に好ましくは5~10質量%である。増粘剤としては、例えばPermutex RM 4456など、ポリウレタン分散液の調製に一般的に使用される全ての化合物を使用することが可能である。増粘剤の量は、存在する場合、水性ポリウレタン分散液の全固形質量に基づいて、好ましくは0.1~8質量%、特に好ましくは0.5~5質量%である。湿潤剤としては、例えばBYK 348など、ポリウレタン分散液の調製に一般的に使用される全ての化合物を使用することが可能である。湿潤剤の量は、存在する場合、水性ポリウレタン分散液の全固形質量に基づいて、好ましくは0.1~5質量%、特に好ましくは0.3~3質量%である。酸化防止剤としては、ポリウレタン分散液の調製に適している全ての化合物を使用することが可能である。酸化防止剤の量は、存在する場合、水性ポリウレタン分散液の全固形質量に基づいて、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.5~1質量%である。
【0097】
ベースコート層
本発明において、ベースコート層は、本発明によるエンボス加工可能な無溶剤ポリウレタンシートで作られている。エンボス加工可能な無溶剤ポリウレタンシートは、上記で定義した無溶剤ポリウレタン系から形成される。
【0098】
本発明はさらに、上記で定義された積層体及び基材層を含む合成皮革を提供し、基材層は、積層体のベースコート層の下にある。トップコート層及びベースコート層は、上記で定義した通りである。基材層は、以下のように得られる:
【0099】
基材層
本出願では、合成皮革は、ベースコート層の下に基材層を有する。原則として、基材層は、ベースコート層と接着結合を形成することができる任意の層であり得る。基材層の厚さは、典型的には0.01mm~20mmの範囲、好ましくは0.1mm~15mmの範囲である。基材層は、例えば、不織布、織物、TPU、本革、木材、プラスチック又は床革から選択される。1つの好ましい実施形態では、基材層として不織布又は床革を利用する。
【0100】
本発明による積層体は、改善されたテクスチャの再現性のみならず、瞬間剥離強度、硬化性、及び/又は屈曲耐久性を有する。本発明の積層体は、ハンドバッグ、靴、ブーツ、手袋、帽子、又はジャケット、パンツ、ベルトなどのアウターウェアアイテムの上部材料として、アパレル及びアクセサリーで使用され得る。また、スーツケース、ブリーフケース、時計バンド、スマートフォンケース、イヤホンケース、カメラケースなどのケース及び電子機器のカバー材として使用されることができる。家具/室内装飾品分野では、本積層体は、ソファ、カーシート、車の内装、椅子、クッション、コーヒーテーブルの合成皮革カバーとして、また壁掛けなどの特定のタイプの装飾品に使用されることができる。そのほか、本発明の積層体は、ゲームボール、サドル、おもちゃなどのようなスポーツ用品又はレジャー製品にも使用されることができる。別の態様では、本発明の積層体は、本革の代替品としてあらゆる場所で使用されることができる。
【0101】
PUシート/積層体/革は、多くの方法で加工されることができ、例えば:
PUシート/積層体/革を、150~250℃のホットエンボスローラーで連続的にエンボス加工し、テクスチャ/パターンを再現する。
【0102】
PUシート/積層体/革を、例えば150~250℃の所望の温度に加熱した後、ヒーターなしのエンボスローラーによって革に連続的にエンボス加工を行う。
【0103】
PUシート/積層体/革を、例えば150~250℃の所望の温度に加熱し、小さなくぼみとテクスチャを有する真空エンボスローラーで革を連続的に吸引する。
【0104】
PUシート/積層体/革を、エンボスローラーのような連続的な方法ではなく、熱プレート(150~250℃)でエンボス加工する。
【0105】
PUシート/積層体/革を、デザインされたブランドロゴ又はキャラクターを有する熱スタンパー又はプレート(150~250℃)によって、短時間でプレスする。
【実施例】
【0106】
次に、実施例及び比較例を参照して本発明を説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0107】
以下の原材料を使用した:
ポリオール#1は、テトラヒドロフランを繰り返し単位として重合し、第一級ヒドロキシル基でキャップすることによって製造され、2の官能価、112.3mgKOH/gのヒドロキシル価(OHv)を有する。
【0108】
ポリオール#2は、エチレンオキシドを繰り返し単位として重合し、プロピレングリコールをスターターとして使用し、第一級ヒドロキシル基を有するエチレンオキシドでキャップすることによって製造され、1.76の官能価、29.5mgKOH/gのヒドロキシル価(OHv)を有する。
【0109】
ポリオール#3は、エチレンオキシドを繰り返し単位として重合し、グリセロールをスターターとして使用し、第一級ヒドロキシル基を有するエチレンオキシドでキャップすることによって製造され、2.72の官能価、35mgKOH/gのヒドロキシル価(OHv)を有する。
【0110】
ポリオール#4は、プロピレンオキシドを繰り返し単位として重合し、TDAをスターターとして使用し、プロピレンオキシドでキャップすることによって製造され、4の官能価、405mgKOH/gのヒドロキシル価(OHv)を有する。
【0111】
ポリオール#5は、プロピレンオキシドを繰り返し単位として重合し、プロピレングリコールをスターターとして使用し、プロピレングリコールでキャップすることによって製造され、2の官能価、55mgKOH/gのヒドロキシル価(OHv)を有する。
【0112】
ポリオール#6は、テトラヒドロフランを繰り返し単位として重合し、第一級ヒドロキシル基でキャップすることによって製造され、2の官能価、56.1mgKOH/gのヒドロキシル価(OHv)を有する。
【0113】
Haptex CC 6945/90 C-CHは、BASF社の固形分34.5%の水ベースのPUDである。
ADDITIVE DECFは、BASF社の重合禁止剤である。
Permutex PP-39-611は、Stahl社の固形分20.0%のPigment Blackである。
Permutex RM 4456は、Stahl社の固形分28.0%の増粘剤である。
BYK 348は、BYKの固形分100%の湿潤剤である。
Astacin Hardener CIは、BASF社の固形分70.0%の架橋剤である。
Astacin Hardener CAは、BASF社の60.0%の架橋剤である。
Lupranate MSは、BASF社のイソシアネートである。
添加剤CX 93600は、BASF社の触媒である。
Haptex CC 6945/92 C-CCは、BASF社の触媒である。
Favini B100は、Favini社の剥離紙である。
【0114】
トップコート層の調製:
以下の成分を用いて、トップコート層を調製した:
【0115】
【0116】
ベースコート層としての無溶剤ポリウレタンシートの調製:
以下の成分を用いて、無溶剤ポリウレタンシートを調製した:
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
積層体の調製
実施例1
トップコートスキン層及びベースコート層を含む積層体の調製
表2の配合物は、原料を順に混ぜ、その後Favini B100剥離紙上にナイフコーティングにより4時間以内に100μmの厚さで塗布し、続いて、オーブン#1で80℃で2分間、120℃で2分間の条件で乾燥することによって調製された。次に、表5の配合物は、原料を順に混ぜ、その後乾燥したトップコート配合物の上にナイフコーティングにより350μmの厚さで塗布し、オーブン#2で120~140℃、5~10分間加熱し、ベースコート層を形成した。その後、得られた積層体を剥離紙から分離し、最終的な積層体製品を得た。
【0121】
【0122】
実施例2
トップコート層、ベースコート層及び基材層を含むPU合成皮革の調製
表2の配合物は、原料を順に混ぜ、その後Favini B100剥離紙上にナイフコーティングにより4時間以内に100μmの厚さで塗布し、続いて、オーブン#1で80℃で2分間、120℃で2分間の条件で乾燥することによって調製された。次に、表5の配合物は、原料を順に混ぜ、その後乾燥したトップコート配合物の上にナイフコーティングにより350μmの厚さで塗布し、オーブン#2で120~140℃、5~10分間加熱した。次いで、乾燥したベースコート層の上に基材層を塗布し、オーブン#3で140℃、2~10分間加熱し、続いてプレスした。剥離紙を剥離した後、PU合成皮革を得た。
【0123】
【0124】
PU合成皮革の物性試験
剥離強度試験
剥離強度試験は、硬化後に剥離紙から剥がした直後のPU人工皮革に対して実施され、試験は試験片の準備と試験を含めて20分以内に終了させる必要がある。試験は、SATRA TM 411の規格に従う。
【0125】
硬化特性
2液型PU層の硬化性は、積層体(PU合成皮革)のトップコートを爪で押し、目視で評価することによって、以下の等級で評価した:
等級1:爪痕のリバウンド>10秒、又はトップコートが損傷している
等級2:爪痕のリバウンド(7秒~9秒);
等級3:爪痕のリバウンド(4秒~6秒);
等級4:爪痕のリバウンド(1秒~3秒);
等級5:明らかな爪痕がない
【0126】
屈曲耐久試験
屈曲耐久試験は、規格ISO 5402に従って、以下のように実施された:
PU合成皮革の試験片は、ISO 2418に従って、少なくとも3つの垂直試験片と少なくとも3つの水平試験片を切断することを含み、ISO 2419に従って試験片を調整し、調整した雰囲気中で試験が実施される。25倍に拡大した後、試験片を亀裂/接着性の低下/色調の変化の観点を目視で評価した。「合格」の表現は、亀裂/接着性の低下/色調の変化がないことを示す。「不合格」は、試験片に損傷があることを意味する。
【0127】
エンボス特性(テクスチャ再現性):
エンボス加工性試験は、以下のように実施された:
エンボス加工機は380型(Nanjing Yueyi Clothing Co.Ltd)で、オーダーメイドのエンボス加工プレートが取り付けられている。エンボス加工の方法は以下の通りである:
(1)温度を170℃に設定し、エンボス加工プレートが一定の温度を保つまで待つ;
(2)エンボス加工/プレス時間を40秒に設定する;
(3)革のサンプルをコンソールに置き、まず加圧ボタンを押し、次に両手で操作ボタンを押す。時間になるとエンボス加工プレートが自動的に上に移動し、サンプルを取り出すことができる。
【0128】
3Dプロファイルメーター測定システム(モデル:VR-3200)を用いて、1)エンボス加工プレートの高低差(ΔHa)を測定し、2)プレートでエンボス加工された積層体の高低差(ΔHb)を測定した(
図3を参照)。ΔHb/ΔHaの比は、積層体がエンボス加工プレートのパターンの何パーセントをコピーしているかを示すパーセンテージとして表される。ΔHb=ΔHaは、エンボス加工プレートのパターンを100%再現していることを意味する。
【0129】
【0130】
上記の結果から、比較例1~2と比較して、ベースコート層として本発明の無溶剤ポリウレタン系を使用することによって、本発明の実施例1~4で得られたPU合成皮革は、テクスチャの再現性に関する特性の大幅な改善のみならず、良好な剥離強度、硬化性、及び屈曲耐久性を達成することがわかる。また、2.1未満の平均官能価を有するポリオール(a-1)からなるポリオール成分(a)を用いた本発明の実施例4は、優れたテクスチャの再現性、良好な屈曲耐久性及び剥離強度、若干劣る硬化性を示すが、2.38の平均官能価を有するポリオール(a-1)からなるポリオール成分(a)を用いた比較例2では、劣等なテクスチャの再現性、屈曲耐久性及び剥離強度を示す。ポリオール(a-1)とポリオール(a-2)からなるポリオール成分(a)を6質量%以下の量で用いた本発明の実施例1~3は、良好な剥離強度、硬化性及び屈曲耐久性とともに、優れたテクスチャの再現性を示すが、ポリオール(a-1)とポリオール(a-2)からなるポリオール成分(a)の使用量を多く用いた比較例1ではテクスチャの再現性が劣っている。
【0131】
本明細書に記載された構造、材料、組成物、及び方法は、本発明の代表的な例であることを意図しており、本発明の範囲は、実施例の範囲によって限定されないことが理解されよう。当業者であれば、開示された構造、材料、組成物及び方法を変形して本発明を実施することができ、そのような変形は本発明の範囲内とみなされることを認識するであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内に含まれるような修正及び変形を包含することが意図される。
【国際調査報告】