(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】薬剤容器の機械的完全性を決定または試験するための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 3/30 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G01N3/30 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528976
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 EP2021081648
(87)【国際公開番号】W WO2022106343
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・クリストフ・アグトゥ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・マンジャガッリ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・マルティーニ
(72)【発明者】
【氏名】チンツィア・ロテッラ
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA05
2G061AA13
2G061AB04
2G061BA05
2G061CA07
2G061CB04
2G061EA01
(57)【要約】
本開示は、薬剤容器(10)のバッチの耐破壊圧力を決定または推定するデバイスおよび方法に関し、薬剤容器(10)は各々、液体物質(12)が充填され、ガラス製バレル(11)の内部に摺動可能に配置されたストッパ(14)によって封止されたガラス製バレル(11)を含み、方法は: - 薬剤容器(10)のバッチの薬剤容器(10)のサブセットのストッパ(14)に、所定の大きさの機械的衝撃を印加する工程と、 - 機械的衝撃の印加によって機械的に損傷した薬剤容器(10)のサブセットのバレル(11)の破損率を決定する工程と、 - 機械的衝撃の印加によって機械的に損傷したバレル(11)の破損率に基づいて、薬剤容器(10)のバッチの耐破壊圧力を導出する工程とを含む。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤容器(10)のバッチの耐破壊圧力を決定または推定する方法であって、薬剤容器(10)は各々、液体物質(12)が充填され、ガラス製バレル(11)の内部に摺動可能に配置されたストッパ(14)によって封止されたガラス製バレル(11)を含み、該方法は:
薬剤容器(10)のバッチの薬剤容器(10)のサブセットのストッパ(14)に、所定の大きさの機械的衝撃を印加する工程と、
機械的衝撃の印加によって機械的に損傷した薬剤容器(10)のサブセットのバレル(11)の破損率を決定する工程と、
機械的衝撃の印加によって機械的に損傷したバレル(11)の破損率に基づいて、薬剤容器(10)のバッチの耐破壊圧力を導出する工程と
を含む前記方法。
【請求項2】
薬剤容器(10)のバッチの耐破壊圧力の導出は、薬剤容器(10)の耐破壊圧力と、機械的衝撃の印加によって機械的に損傷したバレル(11)の破損率との間の相関関係を提供および/または使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
薬剤容器(10)の耐破壊圧力とバレル(11)の破損率との間の相関関係の提供は:
バレル(11)の第1のグループ(1)、またはその中に第1の大きさ(22)の第1の機械的欠陥(21)を人工的に発生させることと、
バレル(11)の第2のグループ(2)、またはその中に第2の大きさ(32)の第2の機械的欠陥(31)を人工的に発生させることと
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
薬剤容器(10)の耐破壊圧力とバレル(11)の破損率との間の相関関係の提供は:
バレル(11)の第1のグループ(1)のサブセットの耐破壊圧力の測定と、
バレル(11)の第2のグループ(2)のサブセットの耐破壊圧力の測定と
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
薬剤容器(10)の耐破壊圧力とバレル(11)の破損率との間の相関関係の提供は、耐破壊圧力と、バレル(11)の人工的に発生させた機械的欠陥(21、31)の大きさとの間の破壊相関関係の導出をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
薬剤容器(10)の耐破壊圧力とバレル(11)の破損率との間の相関関係の提供は:
所定の大きさの機械的衝撃を第1のグループ(1)のバレル(11)のさらなるサブセットのストッパ(14)に加え、機械的衝撃の印加によって機械的に損傷した第1のグループ(1)のバレル(11)のさらなるサブセットのバレル(11)の破損率を決定することと、
所定の大きさの機械的衝撃を第2のグループ(2)のバレル(11)のさらなるサブセットのストッパ(14)に加え、機械的衝撃の印加によって機械的に損傷した第2のグループ(2)のバレル(11)のさらなるサブセットのバレル(11)の破損率を決定することと
をさらに含む、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
薬剤容器(10)の耐破壊圧力とバレル(11)の破損率との間の相関関係の提供は、バレル(11)の破損率と、バレル(11)の人工的に発生させた機械的欠陥(21、31)の大きさとの間の破損相関関係の導出をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
バレル(11)の破損率と人工的に発生させた機械的欠陥(21、31)の大きさとの間の破損相関関係の導出は、機械的衝撃の印加によって機械的に損傷したバレル(11)の第1のサブグループおよび第2のサブグループの各々について決定された破損率に基づいて、数値回帰分析を適用することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
薬剤容器(10)の耐破壊圧力とバレル(11)の破損率との間の相関関係は、人工的に発生させた機械的欠陥(21、31)の大きさに基づいて、破壊相関関係と破損相関関係とを相互に相関させる、または組み合わせることによって導出される、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
バレル(11)の第1および第2のグループ(1、2)、またはその中における第1および第2の機械的欠陥(21、31)は各々、ガラス製バレル(11)における少なくとも1つの掻き傷(23、33)を含み、第1の機械的欠陥(21)の少なくとも1つの掻き傷(23)は:掻き傷の幾何形状、掻き傷の形状、掻き傷の長さ、掻き傷の幅、掻き傷の深さ、個々の掻き傷の数および多数の個々の掻き傷の空間分布のうちの少なくとも1つによって第2の機械的欠陥(31)の少なくとも1つの掻き傷(33)と区別される、請求項3~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
グループのバレル(11)について測定された破損率について、人工的に発生させた機械的欠陥(21、31)の大きさは、破損相関関係に基づいて決定または推定される、請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
薬剤容器について測定される薬剤容器の耐破壊圧力について、人工的に発生させた機械的欠陥(21、31)の大きさは、破壊相関関係に基づいて決定または推定される、請求項5~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
薬剤容器(10)のストッパ(14)に所定の大きさの衝撃を印加するための衝撃試験デバイス(50)であって、:
薬剤容器(10)を支持または受容するための取り付け部(52)と、
長手方向に沿って取り付け部(52)に対して変位可能であり、薬剤容器(10)が取り付け部(52)と係合したとき、薬剤容器(10)のストッパ(14)に所定の大きさの衝撃を与えるように構成されているプランジャロッド(54)と、
取り付け部(52)に連結され、プランジャロッド(54)がストッパ(14)に加えることができる衝撃または力の効果を測定するように動作可能な力および/または衝撃センサ(60)と
を含む前記衝撃試験デバイス。
【請求項14】
プランジャロッド(54)と動作可能に係合するトリガ機構(56)をさらに含み、該トリガ機構(56)は、機械的エネルギー貯蔵部(58)を含み、該機械的エネルギー貯蔵部(58)は、解放されると、プランジャロッド(54)を薬剤容器(10)のストッパ(14)に向かって移動させるように動作可能である、請求項13に記載の衝撃試験デバイス(50)。
【請求項15】
トリガ機構(56)は、プランジャロッド(54)がストッパ(14)に対して所定の距離にある初期位置またはコック位置にプランジャロッド(54)をロックするように動作可能である、請求項14に記載の衝撃試験デバイス(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬剤容器の分野に関し、特に、液体薬剤が充填されたまたは充填可能なガラス製バレルを含む薬剤容器に関する。いくつかの態様において、本開示は、ペン型注射器またはいわゆる自動注射器などの使い捨てまたは再利用可能な注射デバイスとの使用を意図した充填済みシリンジなどの薬剤容器に関する。いくつかの態様において、本開示は、薬剤容器のバッチから選択された薬剤容器の機械的完全性を決定または推定する方法に関する。いくつかの態様において、本開示は、薬剤容器のバッチの耐破壊圧力を決定または推定する方法に関する。さらに別の態様において、本開示は、薬剤容器の耐破壊圧力と、特に明確な機械的衝撃を受けたときのそれぞれのバレルの破損率とを相関させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手動使用のため、または医療デバイスにおいて使用するためのカートリッジ、アンプル、または充填済みシリンジなどの薬剤容器は、一般に当技術分野で知られている。このような薬剤容器は、典型的には、バレルの内部容積部に収納または収容される薬剤に関して実質的に不活性であるガラス質材料で作られたバレルを含む。
【0003】
ガラスなどのガラス質材料は、典型的には、機械的衝撃に対してかなりの感受性または脆弱性を示す。このようなガラス質材料は衝撃に敏感で、機械的な負荷または衝撃にさらされると、バレルの完全性を損なう亀裂、破砕、または他の機械的損傷を受けることがある。
【0004】
さらに、液体薬剤のための出口を備えた遠位端を有し、近位端をさらに含む細長いバレルを有する薬剤容器が存在する。ここで、近位端は、バレル内で摺動可能に変位するストッパまたはピストンによって封止される。一方で、ストッパまたはピストンは、典型的にはエラストマー材料で作られており、バレルの近位端を封止する。他方で、ストッパまたはピストンは、遠位出口を通してバレルの内部から薬剤の量、たとえば明確な用量を排出するために、遠位方向に可動である。
【0005】
ストッパまたはピストンを遠位方向に移動させるためには、たとえば、ストッパまたはピストンに連結されたまたは連結可能なプランジャまたはピストンロッドによって、一定の圧力を加えられなければならない。ピストンまたはストッパの遠位に位置する出口への動きは、必然的に薬剤容器のバレル内の圧力の上昇をもたらす。したがって、バレルは、このような圧力の上昇に耐えられるように設計および構成されていなければならない。
【0006】
いくつかの応用シナリオでは、薬剤容器自体を注射デバイス内で動かすことがある。これは特に、典型的には充填済みシリンジを備えた、またはカートリッジおよび注射針を備えた自動注射器に当てはまる。ここでは、薬剤容器および/または注射針は、シリンジがハウジングの遠位端から突出した露出位置にシリンジを移動させるために、注射デバイスのハウジングに対し相対的に動かす。追加的または代替的に、このような注射デバイスは、薬剤容器のピストンまたはストッパを遠位方向に付勢するために、駆動機構内にまたは駆動機構によって蓄えられた機械的エネルギーを解放することができる付勢式発射機構または駆動機構を備えることができる。
【0007】
蓄積された機械的エネルギーの解放は、プランジャまたはピストンロッドのかなり高速で急激な遠位に向けた前進動作に伴うことがあり、遠位方向の力の効果または衝撃を薬剤容器のバレルに、および/またはストッパもしくはピストンに急激に加える。
【0008】
患者の安全性のために、このような自動注射器の使用中に薬剤容器が無制御に破損または損傷することは避けなければならない。しかし、たとえば、自動注射器に実装される場合、薬剤容器は必然的に機械的衝撃を受け、薬剤容器またはそのバレルの完全性が損なわれ得る。
【0009】
ガラス製バレルの製造業者の観点からすれば、バレルまたは薬剤容器の後の用途への特定の需要と正確に合致する仕様を特徴とするバレルを製造するのはかなり困難である。
【0010】
典型的には、バレルの品質または機械的安定性は、その耐破壊圧力によって特徴付けられるか、または決定される。ここで、バレルは液体物質で充填されることになる。バレルの近位端は、バレルの近位内径に適切に嵌まるプラグによって封止され、遠位端の出口は、液体物質がバレル内に留まるように、閉塞または封止される。次に、バレルが遠位方向に関して固定または支持されている間に、内部のプラグを通して徐々に増加する液圧が加えられる。内部プラグを通して、または内部プラグによって加えられる圧力が徐々に増加する間、圧力または力の効果は、薬剤容器の耐破壊圧力に達するまで連続的に測定される。その結果、耐破壊圧力を超えると、バレルのガラス質本体は崩壊し、破損する。プラグを通して液圧を上昇させる代わりに、バレルの近位端を封止するプラグまたはピストンに遠位方向の圧力を加え、それによってバレル内の流体圧力を上昇させることも一般に考えられる。
【0011】
バレルまたは薬剤容器のバッチの品質は、原則的にこのような耐破壊圧力測定によって定量的に決定することができるものの、薬剤容器またはバレルが一定の機械的衝撃を受ける自動注射器での使用という意図した状況では、このような測定はあまり役に立たない。耐破壊圧力試験の過程におけるやや定常的な状態または準連続測定から、それぞれのバレルまたは薬剤容器が機械的衝撃を受けたときにどのように挙動または反応するかを正確に結論付けることはできない。
【0012】
大量製造される薬剤容器は、少なくともある程度は、典型的には微小割れまたはキズのようないくつかの表面欠陥を含んでいる。このような欠陥が、自動注射器に使用された場合の薬剤容器の破損率に及ぼす効果または影響を決定論的に判断することはまだ不可能である。さらに、耐破壊圧力に関して薬剤容器のバッチを特徴付けることは、そのような薬剤容器が機械的衝撃を受ける自動注射器においてどのような挙動を示すかを確実に推定することを可能にするものではない。これまで、耐破壊圧力に関して薬剤容器を単に特徴付けるだけでは、そのような薬剤容器を自動注射器で使用する際の破損率を推定または予測することはできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本開示の目的は、注射デバイス、特に自動注射器における薬剤容器の意図された使用と密接に相関する薬剤容器の耐破壊圧力を決定または推定する代替的なやり方または方法を提供することである。薬剤容器のバッチの耐破壊圧力と、自動注射器などの注射デバイスで使用される場合のそのような薬剤容器の破損確率または破損率との相互マッピングを可能にし、提供することがさらなる目的である。さらに、薬剤容器のバッチの耐破壊圧力および破損率のうちの少なくとも一方を決定または推定するためのデバイスを提供することがさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様において、本開示は、薬剤容器のバッチの耐破壊圧力を決定または推定する方法に関する。薬剤容器は各々、液体物質が充填され、ストッパによって封止されたガラス製バレルを含む。ストッパはガラス製バレルの中に摺動可能に配置されている。典型的には、バレルはガラス製である。バレルは、ガラス本体を含んでいてもよい。バレルが作られるガラス質材料は、ガラスを含む、またはガラスである。本方法は、薬剤容器のバッチのうち、薬剤容器のサブセットのストッパに、所定の大きさの機械的衝撃を印加する工程を含む。機械的衝撃を印加した後、機械的衝撃の印加によって機械的に損傷した薬剤容器のサブセットのバレルの破損率が決定される。その後、さらなる工程において、機械的衝撃の印加によって機械的に損傷したバレルの破損率に基づいて、薬剤容器のバッチの耐破壊圧力が導出または推定される。
【0015】
したがって、本方法は、薬剤容器のバッチの機械的衝撃試験を実施することによってのみ、薬剤容器のバッチの耐破壊圧力を決定する定量的かつ定性的なアプローチを提供する。典型的には、薬剤容器のバッチの薬剤容器のサブセットは、同じように扱われる。薬剤容器のバッチのサブセットの薬剤容器の各々は、所定の大きさの同じ機械的衝撃を受ける。事実上、薬剤容器のサブセットは、薬剤容器のバッチから取り出され、機械的衝撃を受ける。
【0016】
機械的衝撃の大きさに応じて、また薬剤容器のバッチの品質または機械的抵抗に応じて、機械的衝撃試験にかけられた薬剤容器のサブセットの特定の部分が損傷される。衝撃試験中に破損した薬剤容器またはバレルのそれぞれの破損率または破損比率は、薬剤容器のサブセットが取り出された薬剤容器のバッチの耐破壊圧力の直接的な指標である。
【0017】
このように、そのような薬剤容器とともに使用される医療デバイスまたは注射デバイスの製造業者は、薬剤容器の異なるバッチから取り出された薬剤容器のサブセットの一連の破壊試験および/または衝撃試験を実施でき、次いで、ガラス製バレルの製造業者によって製造され供給される薬剤容器の最小耐破壊圧力を規定することができる。
【0018】
事実上、必要最小限の耐破壊圧力を超えた耐破壊圧力を特徴とする薬剤容器のバッチは、医療デバイスまたは注射デバイスで使用するときに、医療デバイスまたは注射デバイスの製造業者によって規定された許容最大破損率未満の破損率を示すことを提供し保証することができる。
【0019】
さらなる例によれば、薬剤容器のバッチの耐破壊圧力の導出は、薬剤容器の耐破壊圧力と、衝撃試験構成における機械的衝撃の印加によって機械的に損傷したバレルの破損率との間の相関関係を提供および/または使用することを含む。薬剤容器の耐破壊圧力とバレルの破損率との間の相関関係は、実験および実験データのそれぞれの処理によって決定することができる。このようにして、機械的衝撃試験にかけられたときの薬剤容器の耐破壊圧力とバレルの破損率との間の少なくとも経験的な相関関係を提供することができる。
【0020】
経験的に得られた相関関係に基づいて、薬剤容器のバッチの耐破壊圧力は、薬剤容器のストッパに、またはストッパを介して、徐々に増加する圧力を加える典型的な耐破壊圧力試験を実施することなく、導出または推定することが可能である。さらに、逆に、薬剤容器のバッチの破損率または耐衝撃性は、バレルに徐々に増加する内圧を加える一連の破壊圧力試験を実施するだけで導出または推定することも可能である。薬剤容器のバッチの耐破壊圧力を決定するための一連の破壊圧力試験に基づいて、瞬間的な衝撃を受けたときのそれぞれの薬剤容器の破損率が導出される。
【0021】
典型的には、薬剤容器の耐破壊圧力とバレルの破損率との間の相関関係は、明確な条件下での一連の実験によって得られる。実験データは、それぞれの相関関係を提供するために適切に処理される。
【0022】
さらなる例によれば、薬剤容器の耐破壊圧力とそのような薬剤容器のバレルの破損率との間の相関関係を提供することは、バレルの第1のグループ、またはその中に第1の大きさの第1の機械的欠陥を人工的に発生させることと、バレルの第2のグループ、またはその中に第2の大きさの第2の機械的欠陥を人工的に発生させることとを含む。典型的には、第1の大きさと第2の大きさは異なる。異なるバレルのグループに少なくとも2つの異なる機械的欠陥を人工的に発生させることによって、薬剤容器のバッチの耐破壊圧力と薬剤容器のバッチのそれぞれのバレルの破損率とを相互に相関させることが可能である。
【0023】
いくつかのさらなる例では、第1のグループおよび第2のグループだけでなく、多数のグループ、たとえば3、4、5、6または最大10、20またはさらには50の異なるバレルのグループを決定することができ、各々が人工的に発生させた対応する機械的欠陥を受ける。したがって、バレルの各グループは、その人工的に発生させた機械的欠陥の程度または大きさによって、別のグループと区別される。バレルのグループは、人工的に発生させた機械的欠陥の大きさによって区別される。
【0024】
それぞれのバレルのグループで異なる機械的欠陥の程度または大きさを実現または人工的に発生させることにより、人工的に発生させた機械的欠陥のサイズまたは大きさと、明確な機械的衝撃を受けたときの破損率および耐破壊圧力試験にかけられたときのそれぞれの耐破壊圧力のうちの少なくとも一方との間に定量的相関関係を導出することができる。
【0025】
一般に、さらなる例によれば、薬剤容器のバッチの耐破壊圧力は、バレルの第1のグループおよび少なくとも第2のグループに人工的に発生させた少なくとも第1の機械的欠陥および第2の機械的欠陥による明確な機械的衝撃を受けたときのそのバレルの破損率に相関させることができる、または相関する。
【0026】
バレルのグループは、薬剤容器のバレルの共通のバッチから取り出された明確な数のバレルを含むことができる。典型的には、バレルのグループは、少なくとも10バレル、少なくとも20バレル、少なくとも50バレル、または少なくとも100バレル、またはそれ以上のバレルを含むことができる。バレルのグループ内のバレルの数が多ければ多いほど、それぞれの実験によって決定された耐破壊圧力および/または破損率の統計分析がより優れたものになり得る。さらに、それぞれの機械的欠陥の大きさによって区別されるバレルのグループの数を増やすことも、バレルの耐破壊圧力と破損率との相互相関関係の精度を向上させるのに役立ち得る。
【0027】
さらに、薬剤容器のバッチの機械的完全性を特徴付ける2つの異なる方法、すなわち、耐破壊圧力の測定または機械的衝撃を受けたときの破損率の測定は、人工的に発生させた機械的欠陥によって相互相関される。典型的には、薬剤容器の耐破壊圧力と同じバッチのバレルの破損率との間の相関関係を提供するために、バレルの異なるグループに属する多数のバレルの統計分析が実施される。このようにして、製造工程から生じるバレルの機械的完全性の自然なばらつきは効果的に補償される。
【0028】
さらなる例によれば、薬剤容器の耐破壊圧力とバレルの破損率との間の相関関係を提供することは、第1のグループのバレルのサブセットの耐破壊圧力の測定と、第2のグループのバレルのサブセットの耐破壊圧力の測定とをさらに含む。第1のグループのバレルが、第1の大きさが第2のグループのバレルの第2の機械的欠陥の第2の大きさよりも大きい機械的欠陥を含むと仮定すると、第1のグループのバレルのサブセットの耐破壊圧力は、第2のグループのバレルのサブセットの耐破壊圧力よりも小さくなる。
【0029】
同様に、第1のグループのバレルの第1の機械的欠陥は第2のグループのバレルの第2の機械的欠陥よりも大きいため、第1のグループおよび第2のグループのバレルのサブセットが実質的に同等または同一の機械的衝撃を受けるべきときには、第1のグループのバレルのサブセットの破損率は第2のグループのバレルのサブセットの破損率よりも大きくなる。
【0030】
それぞれの人工的に発生させた機械的欠陥が与えられる第1のグループのバレルのサブセット、第2のグループのバレルのサブセット、およびさらなるグループのバレルのサブセットの耐破壊圧力を測定することにより、機械的欠陥の大きさと耐破壊圧力との間の定量的相関関係を提供し導出することができる。事実上、異なるグループのバレルに異なる機械的欠陥を人工的に発生させることにより、耐破壊圧力と機械的欠陥の程度または大きさとの間の定量的相関関係を導出することを可能にする。
【0031】
可逆的に、バレルのサブセットの耐破壊圧力の測定は、人工的に発生させた、または仮想の機械的欠陥の大きさを推定および/または決定することを可能にし得る。したがって、バレルのサブセットの耐破壊圧力を測定することによって、特定のバレルがどのバレルのグループから取り出されたかを決定する、または少なくとも推定する。
【0032】
さらなる例によれば、薬剤容器の耐破壊圧力とバレルの破損率との間の相関関係の提供は、耐破壊圧力と、バレルの人工的に発生させた機械的欠陥の大きさとの間の第1の相関関係の導出をさらに含む。破壊相関関係は、第1のグループのバレルのサブセットと、第2のグループのバレルのサブセットと、場合により第3のグループ、第4のグループまたは第5のグループのバレルのさらなるサブセットとを用いた複数回の破壊圧力実験を行うことによって得られる。典型的には、バレルの各グループについて、特定の数、したがってバレルのサブセットは、耐破壊圧力試験にかけられる。ここで、バレルのグループのサブセットの各バレルまたは薬剤容器について、耐破壊圧力は個別に決定される。比較的多数のバレルにこのような耐破壊圧力試験を実施することにより、統計データ分析を実施して、耐破壊圧力と人工的に発生させた機械的欠陥の大きさとの間の第1の相関関係を導出することを可能にし、提供する。
【0033】
典型的には、さらなる例では、耐破壊圧力と人工的に発生させた機械的欠陥の大きさとの間の破壊相関関係の導出は、数値回帰分析を適用することを含む。数値回帰分析は、少なくとも第1のグループのバレルのサブセットおよび少なくとも第2のグループのバレルのサブセットについて実施された複数の耐破壊圧力試験について得られた統計データに適用される。
【0034】
さらなる例によれば、薬剤容器の破壊圧力耐性とバレルの破損率との間の相関関係の提供は、第1のグループのバレルのさらなるサブセットのストッパに所定の大きさの機械的衝撃を印加し、機械的衝撃の印加によって機械的に損傷した第1のグループのバレルのさらなるサブセットのバレルの破損率を決定することを含む。対応する衝撃試験は、第2のグループのバレルのさらなるサブセットにも適用される。したがって、本方法は、所定の大きさの機械的衝撃を第2のグループのバレルのさらなるサブセットのストッパに加え、機械的衝撃の印加によって機械的に損傷した第2のグループのバレルのさらなるサブセットのバレルの破損率を決定することを含む。
【0035】
ここで、第1のグループのバレルのサブセットおよび第2のグループのバレルのさらなるサブセットは、比較可能な結果を提供するために、同じ大きさまたはタイプの機械的衝撃を受ける。典型的には、第1のグループのバレルの第1の機械的欠陥の大きさが第2のグループのバレルの第2の機械的欠陥の大きさよりも大きいとき、第1のグループのバレルのさらなるサブセットの破損率は、第2のグループのバレルのさらなるサブセットの破損率よりも大きくなる。
【0036】
異なるグループのバレルに異なる大きさの機械的欠陥を人工的に発生させ、これらの人工的に損傷させたバレルのサブグループに対して明確な機械的衝撃試験を実施することにより、機械的欠陥の大きさとそれぞれのバレルを明確な衝撃試験にかけたときのそのようなバレルの破損率との間の相関関係を導出することができ、これは、薬剤容器が自動注射器などの注射デバイス内に組み立てられ、一緒に使用されるときにさらされる機械的衝撃を模倣することができる。
【0037】
さらなる例によれば、薬剤容器の耐破壊圧力とバレルの破損率との間の相関関係の提供は、バレルの破損率と、バレルの人工的に発生させた機械的欠陥の大きさとの間の破損相関関係の導出をさらに含む。またここでは、バレルの破損率と人工的に発生させた機械的欠陥の大きさとの間の破損相関関係の導出は、数値回帰分析の適用を含み得る。
【0038】
さらに、破損相関関係の導出は、少なくとも第1のグループのバレルのサブセットおよび少なくとも第2のグループのバレルのサブセットならびに/またはさらなるグループのバレルのサブセットの比較的多数の機械的衝撃試験の事象に基づくことができる。
【0039】
さらなる例によれば、人工的に発生させた機械的欠陥の大きさによって区別される第1のグループおよび第2のグループのバレルが提供される。事実上、第1のグループのバレルのサブセットまたはサブグループは、耐破壊圧力試験にかけられるが、同じグループのバレルの別のサブセットまたは別のサブグループは、機械的衝撃試験にかけられる。同じことが、人工的に損傷させた、または構造的に弱めたバレルのさらなるすべてのグループに当てはまる。このようにして、バレルの多数のグループについて、耐破壊圧力試験および衝撃試験に関して得られた実験データは、相互に比較可能となり、人工的に発生させた欠陥によって相互に相関させることができる。
【0040】
結論として、このようにして、薬剤容器のバッチの耐破壊圧力は、薬剤容器のバッチのバレルの衝撃試験の実施に基づいて推定または決定される。逆もまた同様に、薬剤容器またはそのバレルの衝撃試験を実施することによって典型的に得られる破損率は、従来の耐破壊圧力試験に基づいて決定または推定される。
【0041】
さらなる例によれば、バレルの破損率と人工的に発生させた機械的欠陥の大きさとの間の破損相関関係の導出は、機械的衝撃の印加によって機械的に損傷したバレルの第1のサブグループおよび第2のサブグループの各々について決定された破損率に基づいて、数値回帰分析を適用することを含む。
【0042】
したがって、さらなる例では、耐破壊圧力と人工的に発生させた機械的欠陥の大きさとの間の破壊相関関係の導出は、耐破壊圧力の対応する測定にかけられたときのバレルの第1のサブグループおよび第2のサブグループの各々について決定された耐破壊圧力に基づいて、数値回帰分析を適用することを含む。
【0043】
さらなる例では、人工的に発生させた機械的欠陥に関する破損相関関係および破壊相関関係のうちの少なくとも一方の導出は、数値回帰モデルの導出または決定を含む。これにより、実験データが利用可能ではない人工的に発生させた機械的欠陥の大きさに対して、耐破壊圧力および破損率のうちの少なくとも一方を決定することができる。したがって、数値回帰分析および/または数値回帰モデルの導出により、実験データが利用可能ではない耐破壊圧力、破損率および/または人工的に発生させた機械的欠陥のそのような値に対しても、破壊相関関係および破損相関関係のうちの少なくとも一方を補間および/または予測することができる。これにより、破壊相関関係および破損相関関係の適用範囲を拡大することができる。
【0044】
別の例によれば、薬剤容器の耐破壊圧力とバレルの破損率との間の相関関係は、人工的に発生させた機械的欠陥の大きさに基づいて、破壊相関関係と破損相関関係とを相互に相関させる、または組み合わせることによって導出される。バレルの多数のグループに対して破壊相関関係および破損相関関係が決定されると、それぞれの相関関係は、互いに対して直接マッピングまたは割り当てられる。このようにして、たとえば多数のバレルの衝撃試験によって測定された破損率は、耐破壊圧力に直接変換される。逆もまた同様に、多数の薬剤容器またはバレルについて測定された耐破壊圧力は、たとえば自動注射器における場合のように、そのようなバレルまたは薬剤容器が明確な機械的衝撃を受けるべき場合に予想される破損率に変換される。
【0045】
このようにして、薬剤容器の所与の耐破壊圧力に対して、注射デバイスに使用されたときの薬剤容器の破損率が予測される。逆に、自動注射器などの医療デバイスに使用される薬剤容器の実測破損率から、耐破壊圧力が予測または決定される。
【0046】
製薬業者または自動注射器などの医療デバイスの製造業者は、薬剤容器の多数のバッチを用いて一連の衝撃試験を実施することができる。典型的には、衝撃試験は、そのような注射デバイスにおいて典型的に生じる機械的負荷を模倣することができる。バレルの破損率と薬剤容器の耐破壊圧力との間の相互相関関係に基づいて、製薬業者またはデバイス製造業者は、そのようなデバイスで使用される薬剤容器の耐破壊圧力に対してより低い仕様制限を設定することができる。
【0047】
さらなる例によれば、バレルの第1のグループおよび第2のグループ、またはその中の第1の機械的欠陥および第2の機械的欠陥は各々、ガラス製バレルにおける少なくとも1つの掻き傷を含む。第1の機械的欠陥の少なくとも1つの掻き傷は、掻き傷の幾何形状、掻き傷の形態、掻き傷の形状、掻き傷の長さ、掻き傷の幅、掻き傷の深さ、個々の掻き傷の数および/または多数の個々の掻き傷の空間分布のうちの少なくとも1つによって第2の機械的欠陥の少なくとも1つの掻き傷と区別される。
【0048】
事実上、バレルの第1のグループおよび第2のグループに異なる大きさの人工的欠陥を発生させる複数の異なる方法が存在する。典型的には、掻き傷は、その長さによって、その数によって、そのサイズによって、またはその深さによって区別される。典型的には、バレルの各グループのバレルには、共通した同一の掻き傷または機械的欠陥が与えられる。当然ながら、実用的な観点からは、異なるバレルの機械的欠陥の間にほんのわずかだが、ほとんど無視できる差異が生じ得る。そのようなずれは、欠陥発生器具または欠陥発生手順の限界に起因し得る。
【0049】
さらなる例によれば、あるバレルのグループについて測定された所与の破損率について、人工的に発生させた機械的欠陥の大きさは、破損相関関係に基づいて決定または推定される。代替的または追加的に、あるバレルのグループの人工的に発生させた機械的欠陥の所与の大きさについて、そのバレルのグループの推定破損率は、破損相関関係に基づいて決定される。ここで、実験データに基づいて導出された破損相関関係を使用して、破損相関関係を人工的に発生させた機械的欠陥の大きさに相互に割り当て、その逆もまた同様である。
【0050】
さらなる例によれば、薬剤容器について測定される薬剤容器の耐破壊圧力について、人工的に発生させた機械的欠陥の大きさは、破壊相関関係に基づいて決定または推定される。破壊相関関係は、上述したように、実験データに基づいて導出されている。
【0051】
さらなる例によれば、代替的または追加的に、あるバレルのグループの人工的に発生させた機械的欠陥の所与の大きさについて、この特定のバレルのグループを含む薬剤容器の推定耐破壊圧力は、破壊相関関係に基づいて決定される。したがって、破壊相関関係は、バレルの人工的に発生させた機械的欠陥の大きさと、これらのバレルを含む薬剤容器の耐破壊圧力との間の直接的な割り当てを提供し;逆もまた同様である。
【0052】
別の態様によれば、本開示は、薬剤容器の耐破壊圧力と、そのような薬剤容器のガラス製バレルの破損率とを相関させる方法にさらに関する。ここでも、薬剤容器は、液体物質が充填され、ストッパ、ピストンまたはプラグによって封止されているガラス製バレルを含む。本方法は、バレルの第1のグループ、またはその中に第1の大きさの第1の機械的欠陥を人工的に発生させる工程と、バレルの第2のグループ、またはその中に第2の大きさの第2の機械的欠陥を人工的に発生させる工程とを含む。その後、第1のグループのバレルのサブセットの耐破壊圧力および第2のグループのバレルのサブセットの耐破壊圧力は、それぞれの耐破壊圧力試験で測定される。
【0053】
同時に、またはその後、所定の大きさの機械的衝撃が、第1のグループのバレルのさらなるサブセットのバレル内に配置されたストッパに加えられる。それぞれの機械的衝撃は、第2のグループのバレルのさらなるサブセットのストッパにも適用される。
【0054】
第1のグループおよび第2のグループのバレル、またはさらなるグループのバレルのさらなるサブセットのストッパに機械的衝撃を印加することは、典型的には、明確な衝撃試験の過程で、衝撃試験デバイスを利用することによって実施される。これにより、バレルの機械的欠陥の程度または大きさと、そのようなバレルのその結果生じる破損率との間の定量的で高度に再現可能な関係を導出することができる。したがって、機械的衝撃の印加によって損傷される第1のグループのバレルのさらなるサブセット、および第2のグループのバレルのさらなるサブセットのバレルの破損率が決定される。少なくとも第1のグループおよび第2のグループのバレルのさらなるサブセットのバレルの破損率の決定に基づいて、また少なくとも第1のグループおよび第2のグループのバレルのサブセットの実測耐破壊圧力に基づいて、第1のグループおよび第2のグループのバレルのサブセットの耐破壊圧力は、第1のグループおよび第2のグループのバレルのさらなるサブセットの破損率と相関できる、または相関する。
【0055】
このようにして、そのような薬剤容器の耐破壊圧力試験によって決定されるような耐破壊圧力は、注射デバイスまたは自動注射器などの医療デバイスにおける薬剤容器の使用を模倣し得る、明確な衝撃試験構成でバレルまたは薬剤容器を使用したときのバレルの破損率と直接相関し、マッピングされる。
【0056】
さらなる例では、第1のグループおよび第2のグループのバレルのサブセットの耐破壊圧力は、第1のグループおよび第2のグループのバレルの人工的に発生させた第1の機械的欠陥および第2の機械的欠陥の大きさにより、第1のグループおよび第2のグループのバレルのさらなるサブセットの破損率と相関する。
【0057】
バレルの区別できるグループに異なる機械的欠陥を人工的に発生させることにより、薬剤容器のそのようなバレルの機械的完全性または機械的安定性を特徴付ける2つの異なる方法を相互にマッピングまたは割り当てることができる。人工的に発生させた機械的欠陥によって、薬剤容器の耐破壊圧力は、そのようなバレルが明確な機械的衝撃を受けたときの破損率に直接マッピングされ、割り当てられる。逆も同様に、明確な機械的衝撃試験を実施することによって得られるバレルの破損率は、そのような薬剤容器の耐破壊圧力に直接マッピングされ、割り当てられる。
【0058】
さらなる態様によれば、本開示は、上記の薬剤容器のストッパに所定の大きさの衝撃を印加するための衝撃試験デバイスに関する。衝撃試験デバイスは、薬剤容器を支持または受容するための取り付け部を含む。薬剤容器は、典型的には、ガラス製バレルを含む。バレルは、管状の形状であってもよい。バレルは、遠位に位置する出口を含んでいてもよい。バレルは、近位端を含む。バレルの近位端は、典型的には、管状形状のバレルの伸長に沿って移動可能に配置されたピストンまたはストッパによって封止されている。衝撃試験デバイスは、長手方向に沿って取り付け部に対して変位可能であり、薬剤容器が取り付け部と係合したとき、たとえば薬剤容器が取り付け部によって支持されているとき、または薬剤容器が取り付け部に取り付けられているときに、薬剤容器のストッパに所定の大きさの衝撃を与えるように構成されているプランジャロッドをさらに含む。
【0059】
衝撃試験デバイスは、取り付け部に連結され、プランジャロッドがストッパに加えることができる衝撃または力の効果を測定し、かつ/またはプランジャロッドが薬剤容器のストッパに当たることによって生じる衝撃または力の効果を測定するように動作可能な力および/または衝撃センサをさらに含み、この衝撃または力の効果は、ガラス製バレルおよび液体内容物を介して案内または伝達される。力および/または衝撃センサは、衝撃試験を制御することを可能にする。ここでは、所与のサイズ内および所定の許容誤差内の衝撃または力の効果が薬剤容器のストッパに加えられる実験データのみが、たとえば統計分析のために使用され処理される。ここで、衝撃試験デバイスの力および/または衝撃センサは、薬剤容器が明確な、または所定の試験条件にさらされるという制御を提供する。
【0060】
さらなる例によれば、衝撃試験デバイスは、プランジャロッドと動作可能に係合するトリガ機構を含む。トリガ機構は、機械的エネルギー貯蔵部または機械的エネルギーのリザーバを含み、これは、解放されると、プランジャロッドを薬剤容器のストッパに向かって移動させるように動作可能である。トリガと組み合わせた機械的エネルギー貯蔵部により、機械的衝撃を何度も再現可能に発生させることができる。このようにして、連続した順序で機械的衝撃試験にかけられる多数の薬剤容器またはガラス製バレルが、実質的に同一の力の効果または機械的衝撃を受けることになる。
【0061】
さらなる例によれば、トリガ機構は、プランジャロッドがストッパに対して所定の距離にある初期位置またはコック位置にプランジャロッドをロックするように動作可能である。当然ながら、解放されると、プランジャロッドは加速される。初期位置またはコック位置でのストッパまでの距離に応じて、ストッパに当たるときのプランジャロッドの速度は異なり得る。このような速度の変化は、ストッパに課される機械的衝撃に直接影響する。いくつかの例では、衝撃試験デバイスは、薬剤容器が衝撃試験デバイスの取り付け部に係合されたときに、プランジャロッドの遠位端とストッパの近位端との間の距離を調整または微調整する。
【0062】
一般に、本開示の範囲は、特許請求の範囲の内容によって規定される。注射デバイスは、特定の実施形態または実施例に限定されるものではなく、異なる実施形態または実施例の要素の任意の組合せを包含する。その限りにおいて、本開示は、請求項の任意の組合せ、および異なる実施例または実施形態に関連して開示された構成の技術的に実現可能な任意の組合せを網羅している。
【0063】
本文脈において、「遠位」または「遠位端」という用語は、ヒトまたは動物の注射部位の方を向いている注射デバイスまたは薬剤容器の端部に関する。「近位」または「近位端」という用語は、ヒトまたは動物の注射部位から離れる方を向いている注射デバイスまたは薬剤容器の反対側の端部に関する。
【0064】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0065】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含み得る。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0066】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルであり得る。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジであり得るか、またはそれを含み得る。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0067】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0068】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかであり得る。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0069】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0070】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0071】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C(エフペグレナチド)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド(Pegapamodtide))、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(Bamadutide)(SAR425899)、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0072】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))、またはアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0073】
DPP4阻害剤の例は、リナグリプチン、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0074】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0075】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0076】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体であり得る。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0077】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含み得るが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0078】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与し得るか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼし得る。
【0079】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0080】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0081】
当業者であれば、本明細書に記載されるAPI、製剤、装置、方法、システム、および実施形態の種々の構成要素の修正(追加および/または除去)は、そのような修正およびそのあらゆる均等物を包含する本発明の全範囲および趣旨から逸脱することなくなされてもよいことを理解するであろう。
【0082】
本開示の範囲から逸脱することなく、本開示に対して様々な修正および変形を行うことができることが当業者にとってさらに明らかになるであろう。さらに、添付の特許請求の範囲において使用される任意の参照数字は、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるものではないことに留意されたい。
【0083】
耐破壊圧力を決定または推定する方法、および衝撃試験デバイスと組み合わせた実験データの処理に使用するための薬剤容器の多数の例が、以下の図面を参照することによってより詳細に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図2】充填済みシリンジとして実装された薬剤容器の別の例を示す図である。
【
図4a】耐破壊圧力測定を実施するための設定を示す図である。
【
図4b】耐破壊圧力測定を実施するための別の設定を示す図である。
【
図5】バレルに、またはその中に機械的欠陥を人工的に発生させる様子を示す図である。
【
図6】第1の機械的欠陥を含む第1のグループのバレルを示す図である。
【
図7】第2のバレルのグループのうち、第2の大きさの第2の機械的欠陥を含むバレルを示す図である。
【
図8】第3のバレルのグループのうち、人工的に発生させた第3の機械的欠陥を含むバレルを示す図である。
【
図9】バレルの多数のグループの、多数のバレルについての耐破壊圧力を表す実験データを示すダイアグラムである。
【
図10】
図9の実験データの別の表示を示す図である。
【
図11】機械的衝撃試験を実施した後の多数のバレルのグループの多数のバレルの破損率を示す実験データを示す別のダイアグラムである。
【
図12】薬剤容器の耐破壊圧力とバレルの破損率との間の相互相関関係を示す図である。
【
図13】衝撃試験を実施するための衝撃試験デバイスの一例の概略図である。
【
図14】初期構成の衝撃試験デバイスの一部を概略的に示す図である。
【
図15】プランジャロッドが解放された後の衝撃試験デバイスのさらなる構成を示す図である。
【
図16】耐破壊圧力とガラス製バレルの破損率とを相関させる方法を示すフローチャートである。
【
図17】薬剤容器またはバレルの一連の衝撃試験の実施に基づく、耐破壊圧力を決定または推定する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
図1において、薬剤容器10の例が示されている。薬剤容器10は、管状形状のガラス製バレル11を含む。バレル11は、遠位端付近に出口12を含む。薬剤容器10は、反対側の長手方向端部、したがって近位端に向かってバレル11の内部を封止するピストンまたはストッパ14をさらに含む。
【0086】
薬剤容器10の遠位端も、ビーズキャップ15により出口12に取り付けられた穿孔可能なシール16によって封止される。ビーズキャップ15は、穿孔可能なシール16を出口12に固定するための、金属、たとえばアルミニウム製の圧着キャップを構成していてもよい。出口12は、バレル11の半径方向に狭くなったヘッド部またはネック部に配置されている。ここで、管状バレル11は、半径方向に狭くなる肩部17を介して出口12に合流する。
図1に示す薬剤容器10は、手持ち式注射ペンのような注射デバイスで使用するためのカートリッジとして実現される。
【0087】
図2には、薬剤容器10の別の例が示されている。ここでも、薬剤容器10は、バレル11の内部に位置する液体薬剤13の一部、たとえば用量を投薬または排出することができる出口12を特徴とする管状形状のバレル11を含む。薬剤容器10はまた、バレル11の近位端を封止するピストンまたはストッパ14を含む。ストッパ14は、バレル11の側壁に対して変位可能である。それゆえ、ストッパ14はバレル11の内部に摺動可能に取り付けられる。ストッパ14は、バレル11の内面と封止するように係合することができる。
図2の薬剤容器10は、充填済みシリンジとして実現されている。ここで、液体薬剤13は、バレル11およびストッパ14によって閉じ込められた内部に配置または収容される。バレル11の近位端は、半径方向外側に延びるフランジ19を備えている。バレル11の遠位端、したがって
図2による薬剤容器の出口12は、注射針18を備えている。注射針18は中空であり、注射針の遠位端がそれぞれの組織部分を貫通または穿刺するときに、バレル11の内部から生体組織へと液体薬剤の投薬を提供し、可能にする。
【0088】
一般に、
図1または
図2のいずれかに示す薬剤容器10は、注射デバイス、手持ち式注射デバイス、特に自動注射器とともに使用することができる。
【0089】
図3では、このような薬剤容器10を自動注射器または注射ペンに使用する状況が概略的に示されている。ここでは、薬剤容器10は、長手方向に当接部20と係合する。図示されているように、薬剤容器10の半径方向に広がる肩部17は、当接部20と長手方向に当接している。典型的な実施態様では、当接部20は、注射デバイスのハウジングによって、または注射デバイスのハウジングに連結された何らかの支持部材によって提供される。支持部55によって、薬剤容器10は、長手方向遠位方向に支持される。代替的に、しかし図示されていないが、薬剤容器10の遠位端も、注射デバイスの内部に組み立てられたときに、当接部20と係合するか、または当接部20によって軸方向に支持される。
【0090】
自動注射器とともに使用する典型的な状況では、プランジャロッド54が遠位方向に加速され、ストッパ14の近位を向く表面に当たる。したがって、ストッパ14およびバレル11は、明確な機械的衝撃を受ける。
【0091】
図4aでは、異なる状況が図示されている。ここでは、プランジャロッド54はストッパ14と長手方向に当接している。すると、徐々に増加する遠位に向けられた圧力が、プランジャロッド54を介してストッパ14に加えられる。プランジャロッド54によって加えられる圧力が、薬剤容器10の耐破壊圧力に等しいか、またはそれを超えると、容器10のバレル11に亀裂が入り、および崩壊し、かつ/または粉々になり始める。少なくとも
図4aの例では、薬剤容器10の出口12におけるシール16を貫通するように図示された注射針18は、閉塞もしくは封止されているか、または存在しないことさえある。
図4aの例では、破壊圧力試験の目的でストッパ14への圧力を徐々に増加させるとき、バレル11の内部に含まれる液体物質は、薬剤容器10の内部容積部から出るのを妨げられる。注射針18が存在しないか、または注射針18が薬剤容器10の遠位端または出口12に埋め込まれる、もしくは固定されるべき場合には、遠位端または出口12は閉塞、また別様に封止することができる。
【0092】
図4bの例では、薬剤容器10のバレル11の耐破壊圧力の測定のためのさらなる試験状況が概略的に示されている。ここで、バレル11は、バレル11の遠位出口を効果的に閉塞するようにサイズ決めおよび成形されたシール16によって遠位方向に封止されている。バレル11の近位端は、ノズル9によって封止されている。ここで、たとえば、中空の貫通口8または貫通ボアを有するストッパまたはストッパ本体を含むノズル9は、バレル11の側壁と封止係合している。ノズル9とバレル11との間の封止係合は、ノズル9の外周を囲み、バレル11の内部と封止係合している、たとえばOリングとして実現される1つまたは複数の封止リング7を介して得られる。典型的には、ノズル9の貫通口8は、加圧液体媒体6の供給源と流体連通している。
【0093】
軸方向貫通口8を有するノズル9は、液体物質6をバレル11の内部に案内する役割を果たす。典型的には、ノズル9および/またはその貫通口8には、加圧液体物質6、たとえば水が衝突し、バレル11の内部の液圧を徐々に増加させる。バレル11の内部で液体物質6に加えられる圧力レベルは、バレル11の耐破壊圧力、すなわち、バレル11が過度の圧力によって損傷し、亀裂を生じ始める液体物質6の圧力レベルを決定するように監視される。
【0094】
図3および
図4a、
図4bの例は、薬剤容器10を注射デバイスのハウジングの内部で長手方向にどのように支持することができるかの異なる実施形態を示す。
図3の図示では、薬剤容器10の出口12のヘッド部分の遠位端、したがって遠位端面は、当接部20と直接当接しており、これは単に機械的支持部としての役割を果たし得る。
図4aおよび
図4bの例では、当接部20は、バレル11の肩部17と長手方向に当接している。
【0095】
図5では、薬剤容器10のバレル11の外面71に機械的欠陥21を人工的に発生させる様子が概略的に示されている。ここでは、バレル11の側壁の一部のみが示されている。専用の工具70が、バレル11の外面71に機械的損傷または欠陥21を発生させるために使用される。図示されている工具70は、バレル11の外面71に明確な力が付勢される尖った先端73を有するマンドレル72またはスパイクを含んでもよい。工具70は、取り付け部(図示せず)と、工具70によって外面71に加えられる圧入力または圧力を測定することができる力センサ74とを含んでもよい。このようにして、明確な大きさの機械的欠陥21が、多数の薬剤容器10のバレル11に再現可能に加えられる。
【0096】
図6、
図7、
図8の順に、それぞれの機械的欠陥21、31、41の大きさによって区別されるバレル11、11’、11”の異なるグループ1、2、3に各々が属する薬剤容器10、10’、10”の異なる例が示されている。
図6は、第1のグループ1のバレル11を示し、薬剤容器10のうちの1つおよびそのそれぞれのバレル11が、説明のためだけに、より詳細に図示されている。この薬剤容器10およびバレル11は、第1の大きさ22の第1の機械的欠陥21を含む。ここで、第1の機械的欠陥21は、たとえば
図5に示す工具70によって作り出される細長い掻き傷23を含む。
【0097】
図7に示す薬剤容器10’およびバレル11’は、第2のグループのバレル2と、
図6および
図8のバレル11および11”もそこから選択または取り出されているバレルの同じバッチとから取り出されている。薬剤容器10’およびそのバレル11’は、機械的欠陥31の大きさ32によって第1のグループ1のバレル11と区別される第2のグループ2のバレル11’を表す。ここで、それぞれの掻き傷33の大きさは、
図6のバレル11の掻き傷23と比較してより大きい。掻き傷33および掻き傷23は、少なくともその伸張によって区別される。
【0098】
図8に示されるようなさらに別の例では、それぞれの第3のグループのバレル11”を含む第3のグループ3の薬剤容器10”のうちの1つのサンプルが示される。このバレル11”は、第3の大きさ42を有する第3の機械的欠陥41を含む。図示されるように、それぞれの掻き傷43の伸張またはサイズは、バレル11’の掻き傷33よりも大きく、さらに、
図6のバレル11の掻き傷23よりも大きい、または長い。
【0099】
3つの薬剤容器10、10’、10”および対応するバレル11、11’、11”の図示は、各々が比較的多数のバレルまたは薬剤容器を含むバレル11、11’、11”の少なくとも3つの別個のグループ1、2、3の例示に過ぎない。各グループのバレルのうちのバレルは各々、実質的に同一の機械的欠陥21を含む。第2のグループのバレルまたは薬剤容器は、バレル11のグループの大きさ22と比較して異なる大きさ32である第2の機械的欠陥31を含む。ここでも、バレル11’の第2のグループの各バレル11’は、第2の大きさ32を有する機械的欠陥31を含み、同じグループに属するすべてのバレル11’は、それぞれの人工的に発生させた機械的欠陥の大きさに関しては実質的に同一である。
【0100】
同じことが、
図8に示す第3のグループの薬剤容器10”およびバレル11”にも当てはまる。
図6、
図7および
図8では、すべてが実質的に同一の機械的欠陥を備えた比較的多数の、たとえば10、20、50、100、またはそれよりも多い薬剤容器のうちの例示的な薬剤容器10、10’、10”が1つだけはっきりと示されている。
【0101】
図9~
図12では、薬剤容器10用のバレル11の5つの異なるグループの衝撃試験および耐破壊圧力試験から得られた実験データが示されている。5つの異なるグループのバレル11が準備され、各々には人工的に発生させた機械的欠陥が設けられている。ここでは、可変長の長手方向の掻き傷がバレルに導入され、それによって異なるグループを規定している。
【0102】
本明細書に示される例では、第1のグループのバレル11すべてに、2mmの掻き傷長を有する掻き傷が設けられている。第2のグループのバレル11には、3.5mmの掻き傷長を有する掻き傷が設けられている。第3のグループのバレル11には、6mmの掻き傷長を特徴とする掻き傷が設けられている。第4のグループのバレルには、7mmの掻き傷長の掻き傷が設けられ、第5のグループのバレル11には、10mmの掻き傷長を特徴とする掻き傷が設けられる。
【0103】
ほんの一例として、バレルの各グループには約100個の同じように準備されたバレルが含まれる。すると、各グループのバレルのサブセットは耐破壊圧力試験にかけられることになり、同じグループのバレルの別のサブセットが衝撃試験にかけられる。たとえば、各グループのバレルの50%が耐破壊圧力試験にかけられ、同じグループのバレルの残りの50%が機械的衝撃試験にかけられる。耐破壊圧力試験および衝撃試験は、5つのグループのバレル11すべてに適用される。
【0104】
図9では、各グループのバレルのうちの50%のバレルについて実施した耐圧試験の結果が対数表示で概略的に示されている。縦方向には、バレルに加えられた破壊圧力により破損したバレルの割合が示されている。ダイアグラム80は、5つのグラフ81、82、83、84、85を含む。ここで、グラフ81は、第1のグループのバレルに対応している。グラフ82は、第2のグループのバレルの耐破壊圧力を表している。グラフ83は、第3のグループのバレルの耐破壊圧力を表している。グラフ84は、第4のグループのバレルの耐破壊圧力を表し、グラフ85は、第5のグループのバレル11の耐破壊圧力を表す。
【0105】
それぞれの薬剤容器10のストッパ14に加えられる圧力の対数表示から分かるように、特定の圧力で破損したバレルの割合は、実質的に直線をなぞっている。第1のグループのバレル11についての
図9のグラフ81から分かるように、すべてのバレルが約40barの圧力に耐えることができた。第1のグループのバレル11の一部は、約45barの圧力で亀裂または崩壊し始める。約50barの圧力では、バレルの5%未満が損傷した。第1のグループのバレル11のほぼ100%が損傷したのは、約80barの圧力レベルにおいてのみである。
【0106】
図9のグラフ表示から容易に導き出せるように、人工的に発生させた機械的欠陥が大きければ大きいほど、耐破壊圧力試験中に加えられる圧力が増加したときに、薬剤容器10およびその対応するバレル11がすぐに破損することになる。たとえば、グラフ84によって表される第4のグループでは、約20barの圧力が加えられると、約95%のバレルが破損する。グラフ85で表されるバレルの第5のグループでは、約15barの圧力で95%のバレルが破損する。
【0107】
図10では、
図9に示す統計データの別のグラフ表示が示されている。そこでは、バレルの各グループについて、箱ひげ図が示される。ここでは、機械的欠陥の大きさに対する破壊圧力が、各ファミリーについて表されている。箱ひげ図における垂直に延びる上下の線は、破損したカートリッジの25%が位置する上限および下限を表す。垂直線の間の中央の箱は、耐破壊圧力試験が実施されたバレルまたは薬剤容器の50%を表す。
【0108】
バレルまたは薬剤容器のグループのさらなるサブセットは、同時に衝撃試験にかけられ、その詳細は、
図13~
図15に関連して説明される。衝撃試験は、薬剤容器およびバレルの全グループのすべてのバレルおよび薬剤容器について、明確な一定の衝撃試験パラメータを用いて実施される。バレルのそれぞれのグループのサブセットのバレルの数に応じて実施される衝撃試験は、破損率を提供する。それぞれの破損率は、
図10にBRと示されている。
【0109】
そこに示されているように、第1のグループのバレル11の破損率91は0%である。第2のグループのバレル11の破損率92は2%である。第3のグループのバレル11の破損率93は76%である。第4のグループのバレル11の破損率は93%であり、第5のグループのバレル11の破損率は100%である。このようにして、破損率は、バレル11を人工的に発生させた機械的欠陥の大きさによって区別するグループにグループ分けすることによって表されるように、機械的欠陥の大きさと相関している。
【0110】
図10では、多数のグループのバレル11の破損率91、92、93、94、95が機械的欠陥の大きさに対して示されている。ここでも、機械的欠陥の大きさは、対数スケールで示される。破損率は、それぞれ0.0と1.0との間の比によって示される。複数の破損率91、92、93、94、95が
図11のダイアグラムに示されている。さらに、バレル11の破損率とバレル11の人工的に発生させた機械的欠陥の大きさとの間の破損相関関係を提供するために、実験的に得られたデータに基づいて数値回帰が行われる。このようにして、破損率91、92、93、94、95に滑らかなグラフがフィッティングされ、実験値が記録されていないデータを補間または外挿することができる。
【0111】
破損率は、
図11に示す破損相関関係によって相関され、また耐破壊圧力と人工的に発生させた機械的欠陥の大きさとの間に破壊相関関係が与えられているため、破損率は、
図12に示す耐破壊圧力に直接マッピングまたは割り当てられる。この相互のマッピングまたは割り当ては、人工的に発生させた機械的欠陥の大きさに基づいて実施され、これにより、カートリッジの機械的完全性を分類する2つの異なる方法、すなわち耐破壊圧力および耐衝撃性を相互にマッピングし割り当てることができる。
【0112】
ここで、破壊相関関係と破損相関関係との間の相互割り当ては、薬剤容器のバッチの耐破壊圧力と、明確な衝撃試験状況にかけられたときの破損率との間の直接的な相互関係を示す。このようにして、自動注射器のような医療デバイスの製造業者は、自動注射器とともに実装または使用されたときに破損し得る薬剤容器の特定の割合の許容可能下限を設定または規定することができる。
図12に示すダイアグラムを通じて、破損率制限を耐破壊圧力制限に移行することができる。このようにして、最大限許容可能な最小破損率未満を示す薬剤容器のバッチは、最小耐破壊圧力を特徴とする薬剤容器のバッチに確実にマッピングされ、割り当てられる。同様に、最小耐破壊圧力は、最大限許容可能な最小破損率にマッピングされる。
【0113】
最大許容可能破損率に関する製薬業者またはデバイス製造業者の要件は、最低限必要とされる耐破壊圧力に確実かつ正確にマッピングまたは割り当てられる。
【0114】
たとえば、デバイス製造業者が、利用可能な実験データに基づいて、医療デバイスの薬剤容器の機械的負荷を模倣した特定の衝撃試験について、最大破損率が0.1%未満であるべきであると要求する場合、この要求は、約1mmの仮想の掻き傷長に変換または外挿される。このような仮想で外挿された機械的欠陥の大きさは、利用可能な実験データに基づくと、約19barとなる最低耐破壊圧力に相当する。統計分析とは反対に、上記の破壊相関関係および/または破損相関関係に基づいて、19bar超の平均耐破壊圧力を示す薬剤容器のバッチは、自動注射器に実装されたときに0.1%未満の、したがって、デバイス製造業者または製薬業者の制限に合致する破損率を示すと予測される。
【0115】
本明細書に例示した実験データは例示に過ぎず、本明細書に記載した許容可能な破損率は、デバイス製造の実際の状況を表していないことがあることに留意すべきである。許容可能な、または耐容破損率の実際の値は、はるかに厳しくてもよい。
【0116】
図13~
図15では、衝撃試験デバイス50の一例が示されている。衝撃試験デバイス50は、薬剤容器10を支持または受容する取り付け部52を含む。衝撃試験デバイス50は、長手方向に沿って取り付け部52に対して変位可能なプランジャロッド54をさらに含む。
図14および
図15の比較から直ちに明らかになるように、プランジャロッド54は、機械的エネルギー貯蔵部58の作用によって取り付け部52に対して変位可能であり、現在図示されている例では、機械的ばね59として実現されている。薬剤容器10は、取り付け部52の当接部20によって長手方向に支持されている。
【0117】
ここで、薬剤容器10は、その肩部17が当接部20にある状態で静止している。当接部20および/または取り付け部52は、センサ60に動作可能に連結されている。センサ60は、プランジャロッド54が薬剤容器10に及ぼす衝撃および/または力を測定することができる力および/または衝撃センサとして実装されている。衝撃試験デバイスは、トリガ機構56をさらに含む。トリガ機構は、案内ロッド57に移動可能に配置される。案内ロッド57は、中空であってもよく、プランジャロッドの長手方向の案内を提供してもよい。さらに、機械的ばねも、中空のプランジャロッド54内に配置される。
【0118】
トリガ機構56は、機械的エネルギー貯蔵部58を付勢するように動作可能であってよい。このために、トリガ機構56は、近位方向に、したがって、薬剤容器10から離れる方向に可動であってもよい。トリガ機構56が近位端位置に達するとすぐに、機械的エネルギー貯蔵部58を自動的に解放するように構成される。このようにして、機械的ばね59は、プランジャロッド54を薬剤容器10のストッパ14に向けて押す役割を果たす。案内ロッド57の遠位端は、
図13~
図15に示されるように、バレル11の近位端を薬剤容器の直立方向に少なくともわずかに固定することができるホルダ62を備える。
【0119】
プランジャロッド54およびトリガ機構56は、長手方向に関して調整可能な支持部55に取り付けられている。このようにして、プランジャロッド54の遠位端と薬剤容器10のストッパ14の近位端との間の隙間Gのサイズが調整される。このようにして、プランジャロッド54の遠位端とストッパ14の近位端との間の一定の隙間サイズGは、衝撃試験デバイス50を用いて試験される一連の薬剤容器に対して維持される。
【0120】
プランジャロッド54とストッパ14との間の隙間Gの一定のサイズは、衝撃試験デバイス50を用いて試験される薬剤容器10のそれぞれのサブセットに等しい大きさの機械的衝撃を印加するために非常に重要である。ここで、容器10が肩部17と係合する当接部20によって遠位方向に支持される場合、製造上の理由によって特に肩部17が比較的大きな幾何学的公差が生じやすいことに留意すべきである。したがって、隙間Gのサイズを調整することは、一連の衝撃試験において一定の条件を維持するために有益である。
【0121】
図16では、破壊相関関係および破損相関関係を導出する方法のフローチャートが示されている。第1の工程100では、バレルのバッチから多数のバレルのグループが規定される。バレルのバッチが異なるグループに分けられると、続く工程102では、バレルの各グループ11には人工的に発生させた機械的欠陥が設けられる。上述したように、各グループは、その機械的欠陥の大きさによって別のグループと区別される。バレルの各グループにおいて、バレルは、実質的に共通の、または実質的に同一の機械的欠陥を有する。
【0122】
その後、バレルの各グループの一部、すなわちサブセットは、工程108において破壊圧力測定にかけられる。同時に、バレルのグループのバレルの別のサブセットは、工程104において、たとえば上記の衝撃試験デバイス50によって実施される衝撃試験にかけられる。破壊圧力測定の結果および対応するデータは、工程110において処理される。薬剤容器の実測耐破壊圧力値に基づいて、破壊相関関係が導出される。衝撃試験に基づいて、薬剤容器の各グループの破損率が決定され、破損率に基づいて、工程106で破損相関関係が導出される。工程110に示される破壊相関関係に基づいて、また工程106に示される破損相関関係に基づいて、工程112では数値回帰および/または統計モデルが導出される。数値回帰または統計モデルに基づいて、薬剤容器のバッチの耐破壊圧力は、工程114において薬剤容器のサンプルバッチの衝撃試験の実施のみに基づいて導出される。
【0123】
本方法のこの最終工程114、したがって薬剤容器10のバッチの破壊圧力耐性を決定または推定するための方法の使用は、
図17のフローチャートにさらに説明される。そこでは、工程200において、薬剤容器のバッチは、典型的には、バレルのピストンに半径方向および/もしくは単調に増加する圧力を採用することによって、かつ/または薬剤容器のバレル11内の流体圧力を徐々に増加させることによって、破壊試験にかけられる。工程202において、破壊試験の最高圧力値が決定される。ここでは、バレル11が損傷または破損を受ける最大許容可能圧力が決定される。この最大許容可能圧力は、薬剤容器の耐破壊圧力を表す。上記の数値回帰または統計モデルを利用することにより、工程204において、衝撃試験下での予測破損率の観点からバッチの品質が導出される。衝撃試験における予測破損率は、薬剤容器のバッチの代表的なバレルのグループを用いて実際に測定された最大耐破壊圧力に基づいて導出される。次に、バッチは、所定のまたは所望の最大許容破損率に関して、許容可能または許容可能ではないと評価される。
【符号の説明】
【0124】
1 バレルのグループ
2 バレルのグループ
3 バレルのグループ
6 液体物質
7 封止リング
8 貫通口
9 ノズル
10 薬剤容器
11 バレル
12 出口
13 液体薬剤
14 ストッパ
15 ビーズキャップ
16 シール
17 肩部
18 注射針
19 フランジ部分
20 当接部
21 機械的欠陥
22 大きさ
23 掻き傷
31 機械的欠陥
32 大きさ
33 掻き傷
41 機械的欠陥
42 大きさ
43 掻き傷
50 衝撃試験デバイス
51 ハウジング
52 取り付け部
54 プランジャロッド
55 支持部
56 トリガ機構
57 案内ロッド
58 機械的エネルギー貯蔵部
59 機械的ばね
60 センサ
62 ホルダ
70 工具
71 表面
72 マンドレル
74 センサ
80 ダイアグラム
81 グラフ
82 グラフ
83 グラフ
84 グラフ
85 グラフ
91 破損率
92 破損率
93 破損率
94 破損率
95 破損率
【国際調査報告】