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  • 特表-選択的熱原子層堆積 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】選択的熱原子層堆積
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20231212BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/318 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533320
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 US2021061286
(87)【国際公開番号】W WO2022119860
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】63/120,086
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/182,581
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド エム.パールスタイン
(72)【発明者】
【氏名】シンチエン レイ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ゴードン リッジウェイ
(72)【発明者】
【氏名】アイピン ウー
(72)【発明者】
【氏名】イー-チア リー
(72)【発明者】
【氏名】スミット アガーワル
(72)【発明者】
【氏名】ロヒット ナラヤナン カバッサリー ラメシュ
(72)【発明者】
【氏名】ワンシン シュイ
(72)【発明者】
【氏名】ライアン ジェイムズ ガスボダ
【テーマコード(参考)】
5F058
【Fターム(参考)】
5F058BA06
5F058BA20
5F058BC02
5F058BC03
5F058BC04
5F058BC08
5F058BC11
5F058BC12
5F058BD04
5F058BD05
5F058BD06
5F058BD10
5F058BD15
5F058BD16
5F058BE10
5F058BF04
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF37
(57)【要約】
選択的熱原子層堆積(ALD)プロセスが開示される。プロセスは、誘電体材料と金属とを備える基材を反応器中に積載することを含んでよい。基材は、非プラズマベースの酸化体と反応して、それによって金属上に酸化された金属表面を形成することができる。基材は、加熱されてよく、誘電体材料よりも酸化された金属により吸着する不動態化剤に暴露されてよい。このような暴露は、酸化された金属表面上に不動態化層を形成することができ、基材は、不動態化層よりも誘電体材料により吸着されるケイ素前駆体に暴露されて、誘電体材料上に化学吸着されたケイ素含有層を形成することができる。基材は、非プラズマベースの酸化体に暴露されてよく、同時に、不動態化層を部分的に酸化し、化学吸着されたケイ素含有層を酸化して、誘電体材料上にケイ素含有誘電体膜を形成してよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的熱原子層堆積(ALD)プロセスであって、
(a)誘電体材料と金属とを備える基材を反応器中に積載する工程;
(b)前記基材を非プラズマベースの酸化体と反応させて、それによって前記金属上に酸化された金属表面を形成する工程;
(c)前記基材を150℃以下の温度に加熱する工程:
(d)前記基材を、前記誘電体材料よりも前記酸化された金属表面により優先的に吸着する不動態化剤に暴露して、それによって前記酸化された金属表面上に不動態化層を形成する工程:
(e)前記基材を、前記不動態化層よりも前記誘電体材料により優先的に吸着するケイ素前駆体に暴露して、それによって前記誘電体材料上に化学吸着されたケイ素含有層を形成する工程;及び
(f)前記基材を、前記非プラズマベースの酸化体に暴露して、同時に、(1)前記不動態化層を部分的に酸化して、それによって前記酸化された金属表面上に部分的に酸化された不動態化層を形成し、(2)前記化学吸着されたケイ素含有層を酸化して、それによって前記誘電体材料上にケイ素含有誘電体膜を形成する工程
を含む、選択的熱ALDプロセス。
【請求項2】
前記誘電体材料が、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭素ドープ酸窒化物、窒化ケイ素及び金属酸化物、例えば酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、ケイ素ドープ酸化ジルコニウム、ケイ素ドープ酸化ハフニウム又は任意の他の高k材料からなる群から選択される、請求項1に記載の選択的熱ALDプロセス。
【請求項3】
前記金属が、コバルト、アルミニウム、銅、タンタル、ルテニウム、モリブデン、タングステン、白金、イリジウム、ニッケル、チタン、銀、金又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の選択的熱ALDプロセス。
【請求項4】
前記非プラズマベースの酸化体が、過酸化水素、酸素及びオゾンからなる群から選択される、請求項1に記載の選択的熱ALDプロセス。
【請求項5】
前記基材を前記非プラズマベースの酸化体と反応させて、それによって前記金属上に前記酸化された金属表面を形成する工程(b)が、500℃以下の温度で行われる、請求項1に記載の選択的熱ALDプロセス。
【請求項6】
前記基材を前記非プラズマベースの酸化体と反応させて、それによって前記金属上に前記酸化された金属表面を形成する工程(b)が、150℃以下の温度で行われる、請求項5に記載の選択的熱ALDプロセス。
【請求項7】
前記不動態化剤が、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、ドデカンチオール、トリデカンチオール、テトラデカンチオール、ペンタデカンチオール、ヘキサデカンチオール、ヘプタデカンチオール、オクタデカンチオール、ノナデカンチオール、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-チオール、2-プロペン-1-チオール、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-チオール、チオフェノール、4-メチル-1-チオフェノール、3-メチル-1-チオフェノール、2-メチル-1-チオフェノール及びパラ-キシレン-α-チオールからなる群から選択される、請求項1に記載の選択的熱ALDプロセス。
【請求項8】
前記不動態化剤が、ジ-tert-ブチルジスルフィド及びジ-ヘプタンジスルフィドからなる群から選択される、請求項1に記載の選択的熱ALDプロセス。
【請求項9】
前記不動態化剤が、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデカンチオール、2,2,2-トリフルオロエタンチオール、4-メチル-6-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-チオール、4-トリフルオロメチルベンジルメルカプタン、4-(トリフルオロメトキシ)ベンジルメルカプタン、4-フルオロベンジルメルカプタン、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、2-(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、4-トリフルオロメチル-2,3,5,6-テトラフルオロチオフェノール、3,5-ジフルオロベンジルメルカプタン、4-トリフルオロメチル-2,3,5,6-テトラフルオロチオフェノール及びパラ-トリフルオロメチルベンゼンチオールからなる群から選択される、請求項1に記載の選択的熱ALDプロセス。
【請求項10】
前記不動態化層が、前記酸化された金属表面に化学吸着された前記不動態化剤の単層を含む、請求項1に記載の選択的熱ALDプロセス。
【請求項11】
選択的熱原子層堆積(ALD)プロセスであって、
(g)誘電体材料と自然金属酸化物表面を有する金属とを備える基材を反応器中に積載する工程;
(h)前記基材を150℃以下の温度に加熱する工程;
(i)前記基材を、前記誘電体材料よりも前記自然金属酸化物表面により優先的に吸着する不動態化剤に暴露して、それによって前記自然金属酸化物表面上に不動態化層を形成する工程;
(j)前記基材を、前記自然金属酸化物表面上の前記不動態化層よりも前記誘電体材料により優先的に吸着するケイ素前駆体に暴露して、それによって前記誘電体材料上に化学吸着されたケイ素含有層を形成する工程;及び
(k)前記基材を、非プラズマベースの酸化体に暴露する工程であって、同時に、(1)前記自然金属酸化物表面上の前記不動態化層を部分的に酸化して、それによって前記自然金属酸化物表面上に部分的に酸化された不動態化層を形成し、(2)前記誘電体材料上の前記化学吸着されたケイ素含有層を酸化して、それによって前記誘電体材料上にケイ素含有誘電体膜を形成する工程
を含む、選択的熱ALDプロセス。
【請求項12】
前記誘電体材料が、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭素ドープ酸窒化物、窒化ケイ素及び金属酸化物、例えば酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、ケイ素ドープ酸化ジルコニウム、ケイ素ドープ酸化ハフニウム又は任意の他の高k材料からなる群から選択される、請求項11に記載の選択的熱ALDプロセス。
【請求項13】
前記金属が、コバルト、アルミニウム、銅、タンタル、ルテニウム、モリブデン、タングステン、白金、イリジウム、ニッケル、チタン、銀、金又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の選択的熱ALDプロセス。
【請求項14】
前記非プラズマベースの酸化体が、過酸化水素、酸素及びオゾンからなる群から選択される、請求項11に記載の選択的熱ALDプロセス。
【請求項15】
前記不動態化剤が、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、ドデカンチオール、トリデカンチオール、テトラデカンチオール、ペンタデカンチオール、ヘキサデカンチオール、ヘプタデカンチオール、オクタデカンチオール、ノナデカンチオール、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-チオール、2-プロペン-1-チオール、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-チオール、チオフェノール、4-メチル-1-チオフェノール、3-メチル-1-チオフェノール、2-メチル-1-チオフェノール及びパラ-キシレン-α-チオールからなる群から選択される、請求項11に記載の選択的熱ALDプロセス。
【請求項16】
前記不動態化剤が、ジ-tert-ブチルジスルフィド及びジ-ヘプタンジスルフィドからなる群から選択される、請求項11に記載の選択的熱ALDプロセス。
【請求項17】
前記不動態化剤が、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデカンチオール、2,2,2-トリフルオロエタンチオール、4-メチル-6-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-チオール、4-トリフルオロメチルベンジルメルカプタン、4-(トリフルオロメトキシ)ベンジルメルカプタン、4-フルオロベンジルメルカプタン、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、2-(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、4-トリフルオロメチル-2,3,5,6-テトラフルオロチオフェノール、3,5-ジフルオロベンジルメルカプタン、4-トリフルオロメチル-2,3,5,6-テトラフルオロチオフェノール及びパラ-トリフルオロメチルベンゼンチオールからなる群から選択される、請求項11に記載の選択的熱ALDプロセス。
【請求項18】
前記不動態化層が、前記自然金属酸化物表面に化学吸着された前記不動態化剤の単層を含む、請求項11に記載の選択的熱ALDプロセス。
【請求項19】
前記不動態化層が、前記自然金属酸化物表面に化学吸着された前記不動態化剤の前記単層に物理吸着された前記不動態化剤の第二の層をさらに含む、請求項18に記載の選択的熱ALDプロセス。
【請求項20】
前記ケイ素前駆体が、ジ-イソ-プロピルアミノシラン、ジ-sec-ブチルアミノシラン、ビス(ジエチルアミノ)シラン、ビス(ジメチルアミノ)シラン、ビス(エチルメチルアミノ)シラン、ビス(tert-ブチルアミノ)シラン、ジ-イソ-プロピルアミノメチルシラン、ジ-sec-ブチルアミノメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、ジエチルアミノジメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ジ-イソ-プロピルアミノジメチルシラン、ピペリジノジメチルシラン、2,6-ジメチルピペリジノジメチルシラン、ジ-sec-ブチルアミノジメチルシラン、イソ-プロピル-sec-ブチルアミノジメチルシラン、tert-ブチルアミノジメチルシラン、イソ-プロピルアミノジメチルシラン、tert-ペンチルアミノジメチルアミノシラン、ジメチルアミノメチルシラン、ジ-イソ-プロピルアミノメチルシラン、イソ-プロピル-sec-ブチルアミノメチルシラン、2,6-ジメチルピペリジノメチルシラン、ジ-sec-ブチルアミノメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジ-イソ-プロピルアミノ)メチルシラン、ビス(イソ-プロピル-sec-ブチルアミノ)メチルシラン、ビス(2,6-ジメチルピペリジノ)メチルシラン、ビス(イソ-プロピルアミノ)メチルシラン、ビス(tert-ブチルアミノ)メチルシラン、ビス(sec-ブチルアミノ)メチルシラン、ビス(tert-ペンチルアミノ)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)メチルシラン、ビス(イソ-プロピルアミノ)ジメチルシラン、ビス(イソ-ブチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(sec-ブチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(tert-ブチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(tert-ペンチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメチルシラン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される有機アミノモノシランである、請求項11に記載の選択的熱ALDプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2020年12月1日に提出された米国特許出願第63/120086号と2021年4月30日に提出された米国特許出願63/182581号との優先権を主張する。
【0002】
一般に、本開示は、選択的原子層堆積(ALD)、及びより具体的には選択的熱ALDに関する。
【背景技術】
【0003】
米国特許第9816180号明細書は、基材の表面に、第二の異なる表面と比較して選択的に堆積するための方法を開示している。例示的な堆積方法は、材料、例えばニッケル、窒化ニッケル、コバルト、鉄及び/又は酸化チタンを含む材料を、第一の表面、例えばSiO2表面に、同じ基材の第二の異なる表面、例えばH終端表面と比較して選択的に堆積することを含む場合がある。方法は、堆積の前に、基材の表面を処理してH終端を提供することを含む場合がある。
【0004】
米国特許出願公開第2018/0342388号明細書は、有機層又はハイブリッド有機/無機層を選択的に堆積する方法を開示している。より具体的には、当該開示の実施態様は、分子層有機及びハイブリッド有機/無機膜の選択的堆積のために、ヒドロキシル終端表面を改質する方法を対象としている。当該開示のさらなる実施態様は、分子層堆積プロセスにおける使用のための環状化合物に関する。
【0005】
米国特許出願公開第2017/0037513号明細書は、基材の第一の金属若しくは金属性表面に、基材の第二の誘電体表面と比較して、材料を選択的に堆積するための方法、又は基材の第一の金属酸化物表面に、第二の酸化ケイ素表面と比較して、金属酸化物を選択的に堆積するための方法を開示している。選択的に堆積される材料は、例えば金属、金属酸化物、金属窒化物、金属ケイ素化物、金属炭化物及び/又は誘電体材料である場合がある。幾つかの実施態様において、第一の金属又は金属性表面及び第二の誘電体表面を備える基材は、代わる代わる又は順次に、第一の蒸気相金属ハロゲン化物反応体及び第二の反応体と接触させられる。幾つかの実施態様において、第一の金属酸化物表面及び第二の酸化ケイ素表面を備える基材は、代わる代わる又は順次に、第一の蒸気相金属フッ化物又は塩化物反応体及び水と接触させられる。
【0006】
米国特許第10460930号明細書は、誘電体表面に、銅等の金属含有表面と比較して選択的に酸化ケイ素を堆積するための方法及び装置を開示している。方法は、誘電体及び銅の表面を有する基材を、銅ブロック試剤、例えばアルキルチオールに暴露して、銅表面に選択的に吸着させることと、基材を酸化ケイ素を堆積するためのケイ素含有前駆体に暴露することと、基材を弱酸化体ガスに暴露してプラズマを発火して、吸着されたケイ素含有前駆体を変換して酸化ケイ素を形成することと、基材を還元剤に暴露して、弱酸化体ガスに対する任意の酸化された銅の暴露を減らすこととを含む。
【0007】
米国特許出願公開第2018/0211833号明細書は、ロボットを有する中央運搬ステーションと、約0.1wt%以上の水蒸気を有する環境と、運搬ステーションの側部に接続された予備洗浄チャンバーと、運搬ステーションの側部に接続されたバッチ処理チャンバーとを有する処理プラットフォームを開示している。処理プラットフォームは、基材を予備洗浄して、第一の表面から自然酸化物を除去して、アルキルシランを使用してブロック層を形成して、膜を選択的に堆積するように構成されている。処理プラットフォームを使用する方法及び複数のウェハを処理する方法もまた説明されている。
【0008】
世界知的所有権機関の出願公開第2019/023001号は、水酸化物終端表面に、水素終端表面と比較して選択的に膜を堆積する方法を開示している。水素終端表面は窒化剤に暴露されて、アミン終端表面を形成して、アミン終端表面はブロック分子に暴露されて、表面にブロック層を形成する。次いで、水酸化物終端表面に膜が選択的に堆積される。
【0009】
米国特許出願公開第2018/0233349号明細書は、酸化ケイ素表面に、窒化ケイ素表面と比較して、選択的に酸化ケイ素を堆積するための方法及び装置を開示している。方法は、アンモニア及び/又は窒素プラズマを使用して基材表面を予備処理すること、並びに熱原子層堆積反応においてアミノシランケイ素前駆体と酸化剤との交互パルスを使用して、暴露された窒化ケイ素表面に酸化ケイ素を堆積することなく、酸化ケイ素表面に酸化ケイ素を選択的に堆積することを含む。
【0010】
米国特許第10043656号明細書は、ケイ素又は金属表面に、酸化ケイ素又は窒化ケイ素材料と比較して、ケイ素含有誘電体又は金属含有誘電体材料を選択的に堆積するための方法及び装置を開示している。方法は、堆積が望まれない酸化ケイ素又は窒化ケイ素材料と反応性であるアシル塩化物に基材を暴露して、酸化ケイ素又は窒化ケイ素材料への堆積をブロックするケトン構造を形成することを含む。アシル塩化物の暴露は、所望のケイ素含有誘電体材料又は金属含有誘電体材料の堆積の前に行われる。
【0011】
米国特許出願公開第2018/0323055号明細書は、サイクル性堆積プロセスによって、第一の金属性表面及び第二の誘電体表面を備える基材に、窒化ケイ素膜を選択的に形成するための方法を開示している。方法は、基材をケイ素ハロゲン化物源を含む第一の反応体と接触させること、及び基材を窒素源を含む第二の反応体と接触させることを含む場合があり、ここで、第一の金属性表面についてのインキュベーション期間は第二の誘電体表面についてのインキュベーション期間より短い。選択的窒化ケイ素膜を含む半導体装置構造体もまた開示されている。
【0012】
米国特許出願公開第2020/0090924号明細書は、有機金属前駆体に基材を暴露して、次いで酸化体に暴露することによって、金属酸化物膜を、誘電体層よりも金属層に堆積する方法を開示している。
【0013】
Loepp,G.らの「Adsorption of Heptanethiol on Cu(110)」(1999) Langmuir 15(11):3767-3772では、Cu(110)へのヘプタンチオール[CH3(CH26SH]の吸着反応論が開示されていて、超高真空気相堆積によって調製された単層膜の配列が、昇温脱離分析、XPS、LEED及び走査型トンネル顕微鏡によって調査されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
熱原子層堆積半導体製造プロセスによって、プラズマを使用することなく、ケイ素誘電体材料、例えば酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素及び炭素ドープ酸窒化ケイ素を、金属表面と比較して、誘電体表面の頂部に選択的に堆積する方法を提供する要求が、当分野において存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示の第一の態様によれば、選択的熱原子層堆積(ALD)プロセスが開示されている。本明細書において開示される本発明の第一の態様において、基材上の金属の表面は酸化されていない場合があり、したがって金属が不動態化剤とより良く相互作用することを可能とするように酸化工程を要する場合がある。したがって、本方法は、(a)誘電体材料と金属とを備える基材を反応器中に積載することを含んでよい。基材は、(b)非プラズマベースの酸化体と反応して、それによって金属上に酸化された金属表面を形成することができる。基材は、(c)150℃以下の温度に加熱されてよく、次いで(d)誘電体材料よりも酸化された金属表面により優先的に吸着する不動態化剤に暴露されて、それによって酸化された金属表面に不動態化層を形成することができる。次に、基材は、(e)不動態化層よりも誘電体材料により優先的に吸着するケイ素前駆体に暴露されて、それによって誘電体材料上に化学吸着されたケイ素含有層を形成してよい。最後に、次いで、基材は、(f)非プラズマベースの酸化体に再度暴露されてよく、この暴露は、同時に、(1)不動態化層を部分的に酸化し、それによって酸化された金属表面上に部分的に酸化された不動態化層を形成してよく、(2)化学吸着されたケイ素含有層を酸化し、それによって誘電体材料上にケイ素含有誘電体膜を形成してよい。
【0016】
本発明の第二の態様によれば、さらなる選択的熱原子層堆積(ALD)プロセスが開示されている。第二の方法は、(g)誘電体材料と自然金属酸化物表面を有する金属とを備える基材を反応器中に積載することを含んでよい。基材は、(h)150℃以下の温度に加熱されてよく、次いで(i)誘電体材料よりも自然金属酸化物表面により優先的に吸着する不動態化剤に暴露されて、それによって自然金属酸化物表面に不動態化層を形成してよい。次に、基材は、(j)自然金属酸化物表面上の不動態化層よりも誘電体材料により優先的に吸着するケイ素前駆体に暴露されて、それによって誘電体材料上に化学吸着されたケイ素含有層を形成してよい。次いで、基材は、(k)非プラズマベースの酸化体に暴露されてよく、この暴露は、同時に、(1)自然金属酸化物表面上の不動態化層を部分的に酸化し、それによって自然金属酸化物表面上に部分的に酸化された不動態化層を形成してよく、(2)誘電体材料上の化学吸着されたケイ素含有層を酸化し、それによって誘電体材料上にケイ素含有誘電体膜を形成してよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】1サイクル目、5サイクル目及び10サイクル目のA-B-C型ALDプロセスの間の赤外吸収変化を示す。ここで、実施例2において記載されるように、A=1-ヘプタンチオール(HTT)、B=ジ-sec-ブチルアミノシラン(DSBAS)、C=O3、100℃である。これらの10サイクルの間、選択性は保たれている。
図2】1サイクル目、10サイクル目及び30サイクル目のA-B-C型ALDプロセスの間の赤外吸収変化を示す。ここで、実施例3において記載されるように、A=1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデカンチオール(PFDT)、B=DSBAS、C=O3、100℃である。これらの30サイクルの間、選択性は保たれている。
図3】実施例3において記載されるように、100℃における、A-B-C(抑制剤有り)及びB-C(抑制剤無し)型ALDプロセスについての、Si 2p領域の高解像度スペクトル及びX線光電子分光(XPS)調査を示す。ここで、A=PFDT、B=DSBAS、C=O3である。PFDT抑制剤は、30サイクルの間、銅表面におけるケイ素及び酸素含有誘電体の成長をブロックする。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここから、本開示の種々の態様が、本明細書において開示される図面及び表を参照して説明される。適用可能である場合には、他に記載が無い限り、同じ要素を参照する同じ符号が付されている。上記のとおり、熱プロセスを使用する半導体製造プロセスにおいて、プラズマを使用することなく、ケイ素含有誘電体材料、例えば酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素及び炭素ドープ酸窒化ケイ素を、誘電体表面の頂部に、金属表面と比較して、選択的に堆積する要求が、当分野において存在する。したがって、出願人らは、これを達成するための手段を調査した。
【0019】
したがって、本発明の第一の態様において本明細書で開示されるのは、ALD反応器中で、誘電体材料の頂部に、金属と比較して、選択的にケイ素誘電体材料を堆積する、新規であり、かつ自明でない選択的熱原子層堆積(ALD)プロセスである。本明細書において開示される発明のこの第一の態様において、基材上の金属の表面は酸化されていない場合があり、したがって金属が不動態化剤とより良く相互作用することを可能とするように酸化工程を要する場合がある。したがって、本方法は、(a)誘電体材料と金属とを備える基材を反応器中に積載することを含んでよい。基材は、(b)非プラズマベースの酸化体と反応して、それによって金属上に酸化された金属表面を形成することができる。基材は、(c)150℃以下の温度に加熱されてよく、(d)誘電体材料よりも酸化された金属表面により優先的に吸着する不動態化剤に暴露されて、それによって酸化された金属表面に不動態化層を形成してよい。次に、基材は、(e)不動態化層よりも誘電体材料により優先的に吸着するケイ素前駆体に暴露されて、それによって誘電体材料上に化学吸着されたケイ素含有層を形成してよい。最後に、次いで、基材は、(f)非プラズマベースの酸化体に再度暴露されてよく、この暴露は、同時に、(1)不動態化層を部分的に酸化し、それによって酸化された金属表面上に部分的に酸化された不動態化層を形成してよく、(2)化学吸着されたケイ素含有層を酸化し、それによって誘電体材料上にケイ素含有誘電体膜を形成してよい。
【0020】
基材は、単結晶シリコンウェハ、炭化ケイ素のウェハ、酸化アルミニウム(サファイア)のウェハ、ガラスのシート、金属ホイル、有機ポリマー膜であるか、又はポリマー、ガラス、シリコン若しくは金属の3次元の物品であってよい。本方法の好ましい実施態様において、誘電体材料は、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭素ドープ酸窒化物、窒化ケイ素及び金属酸化物、例えば酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、ケイ素ドープ酸化ジルコニウム、ケイ素ドープ酸化ハフニウム、又は任意の他の高k材料からなる群から選択することができる。好ましい実施態様における金属は、コバルト、アルミニウム、銅、タンタル、ルテニウム、モリブデン、タングステン、白金、イリジウム、ニッケル、チタン、銀、金又はそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0021】
さらに、本方法の好ましい実施態様において、非プラズマベースの酸化体は、(ガス状)過酸化水素、酸素及びオゾンからなる群から選択することができる。しかしながら、より具体的には、好ましい実施態様において、基材を非プラズマベースの酸化体と反応させて、それによって金属上に酸化された金属表面を形成する工程(b)は、500℃以下の温度で行われる。より好ましい実施態様において、基材を非プラズマベースの酸化体と反応させて、それによって金属上に酸化された金属表面を形成する工程(b)は、150℃以下の温度で行われる。さらなる実施態様において、基材を非プラズマベースの酸化体と反応させて、それによって金属上に酸化された金属表面を形成する工程(b)は、145℃;140℃;135℃;130℃;125℃;120℃;115℃;110℃;105℃;100℃;95℃;90℃;85℃;80℃;75℃;70℃;65℃;60℃;55℃;又は50℃以下の温度で行われる。
【0022】
上記のとおり、工程(c)において、基材は、150℃以下に独立に加熱されてよい。本方法のさらなる実施態様では、工程(c)において、基材は、145℃;140℃;135℃;130℃;125℃;120℃;115℃;110℃;105℃;100℃;95℃;90℃;85℃;80℃;75℃;70℃;65℃;60℃;55℃;又は50℃以下の温度に加熱されてよい。
【0023】
続いて、本方法の好ましい実施態様の1つの代替において、不動態化剤は、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、ドデカンチオール、トリデカンチオール、テトラデカンチオール、ペンタデカンチオール、ヘキサデカンチオール、ヘプタデカンチオール、オクタデカンチオール、ノナデカンチオール、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-チオール、2-プロペン-1-チオール、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-チオール、チオフェノール、4-メチル-1-チオフェノール、3-メチル-1-チオフェノール、2-メチル-1-チオフェノール及びパラ-キシレン-α-チオールからなる群から選択される。本方法の1つの別の代替において、不動態化剤は、ジ-tert-ブチルジスルフィド及びジ-ヘプタンジスルフィドからなる群から選択される。本方法の好ましい実施態様のさらなる代替において、不動態化剤は、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデカンチオール、2,2,2-トリフルオロエタンチオール、4-メチル-6-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-チオール、4-トリフルオロメチルベンジルメルカプタン、4-(トリフルオロメトキシ)ベンジルメルカプタン、4-フルオロベンジルメルカプタン、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、2-(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、4-トリフルオロメチル-2,3,5,6-テトラフルオロチオフェノール、3,5-ジフルオロベンジルメルカプタン、4-トリフルオロメチル-2,3,5,6-テトラフルオロチオフェノール及びパラ-トリフルオロメチルベンゼンチオールからなる群から選択することができる。
【0024】
好ましい実施態様において、不動態化層は、酸化された金属表面に吸着された不動態化剤の単層を含んでよい。より具体的には、不動態化剤の単層は、酸化された金属表面に化学吸着されていてよい。好ましい実施態様のさらなる態様において、不動態化層は、金属表面に化学吸着された不動態化剤の単層に物理吸着された不動態化剤の第二の層をさらに含んでよい。
【0025】
本発明のこの態様の好ましい実施態様において、ケイ素前駆体は、ジ-イソ-プロピルアミノシラン、ジ-sec-ブチルアミノシラン、ビス(ジエチルアミノ)シラン、ビス(ジメチルアミノ)シラン、ビス(エチルメチルアミノ)シラン、ビス(tert-ブチルアミノ)シラン、ジ-イソ-プロピルアミノメチルシラン、ジ-sec-ブチルアミノメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、ジエチルアミノジメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ジ-イソ-プロピルアミノジメチルシラン、ピペリジノジメチルシラン、2,6-ジメチルピペリジノジメチルシラン、ジ-sec-ブチルアミノジメチルシラン、イソ-プロピル-sec-ブチルアミノジメチルシラン、tert-ブチルアミノジメチルシラン、イソ-プロピルアミノジメチルシラン、tert-ペンチルアミノジメチルアミノシラン、ジメチルアミノメチルシラン、ジ-イソ-プロピルアミノメチルシラン、イソ-プロピル-sec-ブチルアミノメチルシラン、2,6-ジメチルピペリジノメチルシラン、ジ-sec-ブチルアミノメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジ-イソ-プロピルアミノ)メチルシラン、ビス(イソ-プロピル-sec-ブチルアミノ)メチルシラン、ビス(2,6-ジメチルピペリジノ)メチルシラン、ビス(イソ-プロピルアミノ)メチルシラン、ビス(tert-ブチルアミノ)メチルシラン、ビス(sec-ブチルアミノ)メチルシラン、ビス(tert-ペンチルアミノ)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)メチルシラン、ビス(イソ-プロピルアミノ)ジメチルシラン、ビス(イソ-ブチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(sec-ブチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(tert-ブチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(tert-ペンチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメチルシラン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される有機アミノモノシランであってよい。
【0026】
代わりに、本発明のこの態様の好ましい実施態様において、ケイ素前駆体は、ジ-イソ-プロピルアミノジシラン及びジ-sec-ブチルアミノジシランからなる群から選択される有機アミノジシランであってよい。さらに、方法のこの好ましい実施態様のさらなる代替において、ケイ素前駆体は、ジ-イソ-プロピルアミノトリシリルアミン、ジエチルアミノトリシリルアミン、イソ-プロピルアミノトリシリルアミン及びシクロヘキシルメチルアミノトリシリルアミンからなる群から選択される有機アミノトリシリルアミンであってよい。
【0027】
本明細書において開示される方法の好ましい実施態様のさらなる代替において、ケイ素前駆体は、2-ジメチルアミノ-2,4,4,6,6-ペンタメチルシクロトリシロキサン、2-ジエチルアミノ-2,4,4,6,6-ペンタメチルシクロトリシロキサン、2-エチルメチルアミノ-2,4,4,6,6-ペンタメチルシクロトリシロキサン、2-イソ-プロピルアミノ-2,4,4,6,6-ペンタメチルシクロトリシロキサン、2-ジメチルアミノ-2,4,4,6,6,8,8-ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、2-ジエチルアミノ-2,4,4,6,6,8,8-ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、2-エチルメチルアミノ-2,4,4,6,6,8,8-ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、2-イソ-プロピルアミノ-2,4,4,6,6,8,8-ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、2-ジメチルアミノ-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2-ジエチルアミノ-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2-エチルメチルアミノ-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2-イソ-プロピルアミノ-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2-ジメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2-ジエチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2-エチルメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2-イソ-プロピルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2-ピロリジノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2-シクロヘキシルメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンからなる群から選択される有機アミノシクロシロキサンであってよい。
【0028】
さらに、本方法の好ましい実施態様において、誘電体膜は、ある厚さを有していて、その必要とされる厚さは所定の値であってよい。例えば、性能要件を満たすために、膜の厚さは、5ナノメートル以上;10ナノメートル以上;15ナノメートル以上;20ナノメートル以上;25ナノメートル以上;30ナノメートル以上;35ナノメートル以上;40ナノメートル以上;45ナノメートル以上;又は50ナノメートル以上である必要がある場合がある。したがって、本方法の1つの実施態様は、誘電体材料上に形成される誘電体膜の厚さが所定の値に到達するまで、工程(d)~(f)を繰り返すことを含んでよい。プロセスのこの部分の代替において、基材は、不動態化層よりも誘電体材料により優先的に吸着するケイ素前駆体への暴露の間に、不動態化剤に暴露される必要がない場合がある。したがって、誘電体膜が、ある厚さを有する幾つかの例において、本方法の好ましい実施態様は、誘電体材料上に形成された誘電体膜の厚さが所定の値に到達するまで、工程(d)~(f)ではなく、工程(e)~(f)のみを繰り返すことを含む。
【0029】
したがって、工程(d)~(f)におけるそれぞれの暴露は、既知の厚さのケイ素含有誘電体膜をもたらすことができる。例えば、工程(d)~(f)のそれぞれのサイクルは、仮説上は、おおよそ10ナノメートルの厚さのケイ素含有誘電体膜をもたらすことができる。さらに、膜特性試験は、このような膜が、要求される膜特性を得るためにおおよそ40ナノメートルの厚さを必要とすることを決定する場合があり、おおよそ40ナノメートルの厚さの膜をもたらすために、工程(d)~(f)を4サイクル繰り返すことが必要になる場合がある。したがって、本方法の好ましい実施態様の1つの別の代替において、上記のとおり、工程(d)~(f)を所定のサイクル数だけ繰り返して、上記の厚さを得ることができる。1つの例において、所定のサイクル数は1であってよい。代わりに、所定のサイクル数は、例えば、2;3;4;5;6;7;8;9;10;11;12;13;14;15;16;17;18;19;20;21;22;23;24;25;又はそれ以上であってよい。プロセスのこの部分の代替において、基材は、不動態化層よりも誘電体材料により優先的に吸着するケイ素前駆体への暴露の間に、不動態化剤に暴露される必要がない場合がある。したがって、誘電体膜がある厚さを有する幾つかの例において、本方法の好ましい実施態様は、工程(d)~(f)ではなく、工程(e)~(f)を所定のサイクル数だけ繰り返すことのみを含む。
【0030】
本明細書において開示される本方法の好ましい実施態様のさらなる限定において、反応器は、工程の間にパージされてよい。例えば、1つの実施態様において、反応器は工程(d)と(e)との間にパージされてよい。1つの別の例において、反応器は工程(e)と(f)との間にパージされてよい。さらなる実施態様において、反応器は、工程(d)と(e)の間、並びに工程(e)と(f)の間にパージされてよい。上記の工程のうち任意のものの間の反応器のパージは、反応器に不活性ガスを流すこと及び反応器を真空源にさらすことからなる群から選択することができる。利用することができる不活性ガスの例は、以下に限定するものではないが、ヘリウム、アルゴン及び窒素を含む。
【0031】
本明細書において開示される発明の第一の態様にしたがって製造される誘電体材料の選択的熱堆積
実施例1-非プラズマベースの酸化体としてのO3、不動態化剤としてのヘプタンチオール(HTT)及びケイ素前駆体としてのジ-sec-ブチルアミノシラン(DSBAS)又は2-ジメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン
化学機械平坦化によって平坦化した、表面に電気メッキ銅を有するシリコンウェハ基材を真空チャンバー中に配置した。基材を100℃に加熱して、10分間、酸素中で7%のオゾンガスによって、5Torr(667Pa)の合計の圧力で処理して、表面を酸化し、有機汚染物質を除去し、次いでチャンバーを真空引きした。次いで、基材を150℃に加熱して、130秒間、0.38Torr(50Pa)の圧力でヘプタンチオール蒸気を導入し、次いで60秒間アルゴンパージして未反応のチオールを除去することによって不動態化剤の保護膜を堆積した。次いで、基材を、150℃で、57秒間、0.35Torr(47Pa)で、ジ-sec-ブチルアミノシラン蒸気によって処理して、次いで60秒間アルゴンパージした。次いで、基材を、温度を150℃に維持しつつ、30秒間、5Torr(667Pa)で、7%のオゾンに暴露し、次いで30秒間のアルゴンパージをした。プロセスを工程2)から10回以下で複数回繰り返した。反射吸収赤外分光法又はX線光電子分光法に基づいては、銅表面に酸化ケイ素が堆積した証拠は観察されなかった。銅表面の損傷又は粗面化は観察されなかった。
【0032】
上記のとおり、本明細書において開示される本発明の第一の態様において、基材上の金属の表面は酸化されておらず、したがって金属が不動態化剤とよりよく反応することを可能とするように酸化工程を要してもよい。他の例において、基材上の金属の表面は、この表面が不動態化剤とより良く反応するのに十分に酸化されていてよい。例えば、金属の表面は、自然酸化物であってよい。したがって、本開示の第二の態様において、ALD反応器において、誘電体材料の頂部に、金属と比較して、ケイ素誘電体材料を選択的に堆積する、新規であり、かつ自明でない、1つの別の選択的熱原子層堆積(ALD)プロセスが開示される。
【0033】
より具体的には、この第二の方法は、(g)誘電体材料と自然金属酸化物表面を有する金属とを備える基材を反応器中に積載することを含んでよい。基材は、(h)150℃以下の温度に加熱されてよく、次いで(i)誘電体材料よりも自然金属酸化物表面により優先的に吸着する不動態化剤に暴露されて、それによって自然金属酸化物表面に不動態化層を形成してよい。次に、基材は、(j)自然金属酸化物表面上の不動態化層よりも誘電体材料により優先的に吸着するケイ素前駆体に暴露されて、それによって誘電体材料上に化学吸着されたケイ素含有層を形成してよい、次いで、基材は、(k)非プラズマベースの酸化体に暴露されてよく、この暴露は、同時に、(1)自然金属酸化物表面上の不動態化層を部分的に酸化して、それによって自然金属酸化物表面上に部分的に酸化された不動態化層を形成してよく、(2)誘電体材料上の化学吸着されたケイ素含有層を酸化し、それによって誘電体材料上にケイ素含有誘電体膜を形成してよい。
【0034】
基材は、単結晶シリコンウェハ、炭化ケイ素のウェハ、酸化アルミニウム(サファイア)のウェハ、ガラスのシート、金属ホイル、有機ポリマー膜であるか、又はポリマー、ガラス、シリコン若しくは金属の3次元の物品であってよい。第二の方法の好ましい実施態様において、誘電体材料は、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭素ドープ酸窒化物、窒化ケイ素及び金属酸化物、例えば酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、ケイ素ドープ酸化ジルコニウム、ケイ素ドープ酸化ハフニウム又は任意の他の高k材料からなる群から選択することができる。この好ましい実施態様における金属は、コバルト、アルミニウム、銅、タンタル、ルテニウム、モリブデン、タングステン、白金、イリジウム、ニッケル、チタン、銀、金又はそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0035】
本開示の第二の態様において使用される非プラズマベースの酸化体は、(ガス状)過酸化水素、酸素及びオゾンからなる群から選択することができる。さらにより好ましい実施態様において、基材を非プラズマベースの酸化体と反応させて、それによって金属上に酸化された金属表面を形成する工程(b)は、150℃以下の温度で行われる。
【0036】
上記のとおり、工程(h)において、基材は、150℃以下に加熱されてよい。本明細書において開示される第二の方法のさらなる実施態様において、工程(h)における基材は、145℃;140℃;135℃;130℃;125℃;120℃;115℃;110℃;105℃;100℃;95℃;90℃;85℃;80℃;75℃;70℃;65℃;60℃;55℃;又は50℃以下の温度に加熱されてよい。
【0037】
続いて、本方法の好ましい実施態様の1つの代替において、不動態化剤は、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、ドデカンチオール、トリデカンチオール、テトラデカンチオール、ペンタデカンチオール、ヘキサデカンチオール、ヘプタデカンチオール、オクタデカンチオール、ノナデカンチオール、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-チオール、2-プロペン-1-チオール、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-チオール、チオフェノール、4-メチル-1-チオフェノール、3-メチル-1-チオフェノール、2-メチル-1-チオフェノール及びパラ-キシレン-α-チオールからなる群から選択される。本方法の1つの別の代替において、不動態化剤は、ジ-tert-ブチルジスルフィド及びジ-ヘプタンジスルフィドからなる群から選択される。本方法の好ましい実施態様のさらなる代替において、不動態化剤は、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデカンチオール、2,2,2-トリフルオロエタンチオール、4-メチル-6-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-チオール、4-トリフルオロメチルベンジルメルカプタン、4-(トリフルオロメトキシ)ベンジルメルカプタン、4-フルオロベンジルメルカプタン、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、2-(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、4-トリフルオロメチル-2,3,5,6-テトラフルオロチオフェノール、3,5-ジフルオロベンジルメルカプタン、4-トリフルオロメチル-2,3,5,6-テトラフルオロチオフェノール及びパラ-トリフルオロメチルベンゼンチオールからなる群から選択することができる。
【0038】
本明細書において開示される第二の方法の好ましい実施態様において、不動態化層は、自然金属酸化物金属表面に吸着された不動態化剤の単層を含んでよい。より具体的には、不動態化剤の単層は、自然金属酸化物表面に化学吸着されていてよい。好ましい実施態様のさらなる態様において、不動態化層は、自然金属酸化物表面に化学吸着された不動態化剤の単層に物理吸着された不動態化剤の第二の層をさらに含んでよい。
【0039】
本発明の第二の態様の好ましい実施態様において、ケイ素前駆体は、ジ-イソ-プロピルアミノシラン、ジ-sec-ブチルアミノシラン、ビス(ジエチルアミノ)シラン、ビス(ジメチルアミノ)シラン、ビス(エチルメチルアミノ)シラン、ビス(tert-ブチルアミノ)シラン、ジ-イソ-プロピルアミノメチルシラン、ジ-sec-ブチルアミノメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、ジエチルアミノジメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ジ-イソ-プロピルアミノジメチルシラン、ピペリジノジメチルシラン、2,6-ジメチルピペリジノジメチルシラン、ジ-sec-ブチルアミノジメチルシラン、イソ-プロピル-sec-ブチルアミノジメチルシラン、tert-ブチルアミノジメチルシラン、イソ-プロピルアミノジメチルシラン、tert-ペンチルアミノジメチルアミノシラン、ジメチルアミノメチルシラン、ジ-イソ-プロピルアミノメチルシラン、イソ-プロピル-sec-ブチルアミノメチルシラン、2,6-ジメチルピペリジノメチルシラン、ジ-sec-ブチルアミノメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジ-イソ-プロピルアミノ)メチルシラン、ビス(イソ-プロピル-sec-ブチルアミノ)メチルシラン、ビス(2,6-ジメチルピペリジノ)メチルシラン、ビス(イソ-プロピルアミノ)メチルシラン、ビス(tert-ブチルアミノ)メチルシラン、ビス(sec-ブチルアミノ)メチルシラン、ビス(tert-ペンチルアミノ)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)メチルシラン、ビス(イソ-プロピルアミノ)ジメチルシラン、ビス(イソ-ブチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(sec-ブチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(tert-ブチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(tert-ペンチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメチルシラン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される有機アミノモノシランであってよい。
【0040】
代わりに、本発明の第二の態様の好ましい実施態様において、ケイ素前駆体は、ジ-イソ-プロピルアミノジシラン及びジ-sec-ブチルアミノジシランからなる群から選択される有機アミノジシランであってよい。さらに、第二の方法のこの実施態様のさらなる代替において、ケイ素前駆体は、ジ-イソ-プロピルアミノトリシリルアミン、ジエチルアミノトリシリルアミン、イソ-プロピルアミノトリシリルアミン及びシクロヘキシルメチルアミノトリシリルアミンからなる群から選択される有機アミノトリシリルアミンであってよい。
【0041】
本明細書において開示される第二の方法のさらなる代替において、ケイ素前駆体は、2-ジメチルアミノ-2,4,4,6,6-ペンタメチルシクロトリシロキサン、2-ジエチルアミノ-2,4,4,6,6-ペンタメチルシクロトリシロキサン、2-エチルメチルアミノ-2,4,4,6,6-ペンタメチルシクロトリシロキサン、2-イソ-プロピルアミノ-2,4,4,6,6-ペンタメチルシクロトリシロキサン、2-ジメチルアミノ-2,4,4,6,6,8,8-ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、2-ジエチルアミノ-2,4,4,6,6,8,8-ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、2-エチルメチルアミノ-2,4,4,6,6,8,8-ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、2-イソ-プロピルアミノ-2,4,4,6,6,8,8-ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、2-ジメチルアミノ-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2-ジエチルアミノ-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2-エチルメチルアミノ-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2-イソ-プロピルアミノ-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2-ジメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2-ジエチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2-エチルメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2-イソ-プロピルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2-ピロリジノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2-シクロヘキシルメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンからなる群から選択される有機アミノシクロシロキサンであってよい。
【0042】
さらに、第二の方法の好ましい実施態様において、誘電体膜は、ある厚さを有していて、その必要とされる厚さは所定の値であってよい。例えば、性能要件を満たすために、膜の厚さは、5ナノメートル以上;10ナノメートル以上;15ナノメートル以上;20ナノメートル以上;25ナノメートル以上;30ナノメートル以上;35ナノメートル以上;40ナノメートル以上;45ナノメートル以上;又は50ナノメートル以上である必要がある場合がある。したがって、第二の方法の1つの実施態様は、誘電体材料上に形成される誘電体膜の厚さが所定の値に到達するまで、工程(i)~(k)を繰り返すことを含んでよい。本明細書において開示される第二の方法のこの部分のさらなるものにおいて、プロセスは、(l)基材を非プラズマベースの酸化体と反応させて、それによって金属上に酸化された金属表面を形成する工程;(m)基材を、誘電体材料よりも酸化された金属表面により優先的に吸着する不動態化剤に暴露して、それによって酸化された金属表面上に不動態化層を形成する工程;(n)基材を、不動態化層よりも誘電体材料により優先的に吸着するケイ素前駆体に暴露して、それによって誘電体材料上に化学吸着されたケイ素含有層を形成する工程;及び基材を、非プラズマベースの酸化体に暴露して、同時に、(1)酸化された金属表面上の不動態化層を部分的に酸化して、それによって酸化された金属表面上に部分的に酸化された不動態化層を形成し、(2)誘電体材料上の化学吸着されたケイ素含有層を酸化して、それによって誘電体材料上にケイ素含有誘電体膜を形成する工程、をさらに含んでよい。
【0043】
代わりに、工程(i)~(k)におけるそれぞれの暴露は、既知の厚さの誘電体膜をもたらすことができる。例えば、工程(i)~(k)におけるそれぞれのサイクルは、仮説上は、おおよそ10ナノメートル厚さのケイ素含有誘電体膜をもたらすことができる。さらに、膜特性試験は、このような膜が、要求される膜特性を得るためにおおよそ40ナノメートルの厚さを必要とすることを決定する場合があり、おおよそ40ナノメートルの厚さの膜をもたらすために、工程(i)~(k)を4サイクル繰り返すことが必要になる場合がある。したがって、この第二の方法の代替において、上記のように、工程(i)~(k)を所定のサイクル数だけ繰り返して、上記の厚さを得ることができる。1つの例において、所定のサイクル数は1であってよい。代わりに、所定のサイクル数は、例えば2;3;4;5;6;7;8;9;10;11;12;13;14;15;16;17;18;19;20;21;22;23;24;25;又はそれ以上であってよい。本明細書において開示される第二の方法のこの部分のさらなるものにおいて、プロセスは、(l)基材を非プラズマベースの酸化体と反応させて、それによって金属上に酸化された金属表面を形成する工程;(m)基材を、誘電体材料よりも酸化された金属表面により優先的に吸着する不動態化剤に暴露して、それによって酸化された金属表面上に不動態化層を形成する工程;(n)基材を、不動態化層よりも誘電体材料により優先的に吸着するケイ素前駆体に暴露して、それによって誘電体材料上に化学吸着されたケイ素含有層を形成する工程;及び基材を、非プラズマベースの酸化体に暴露して、同時に、(1)酸化された金属表面上の不動態化層を部分的に酸化して、それによって酸化された金属表面上に部分的に酸化された不動態化層を形成し、(2)ケイ素含有誘電体材料上の化学吸着されたケイ素含有層を酸化して、それによって誘電体材料上にケイ素含有誘電体膜を形成する工程、をさらに含んでよい。
【0044】
さらに、第二の方法の1つの別の代替において、誘電体膜は、ある厚さを有していて、その必要とされる厚さは所定の値であってよい。例えば、上記のとおり、性能要件を満たすために、膜の厚さは、5ナノメートル以上;10ナノメートル以上;15ナノメートル以上;20ナノメートル以上;25ナノメートル以上;30ナノメートル以上;35ナノメートル以上;40ナノメートル以上;45ナノメートル以上;又は50ナノメートル以上である必要がある場合がある。したがって、この第二の方法の1つの実施態様は、誘電体材料上に形成される誘電体膜の厚さが所定の値に到達するまで、工程(j)~(k)を繰り返すことを含んでよい。本明細書において開示される第二の方法のこの部分のさらなるものにおいて、プロセスは、(l)基材を非プラズマベースの酸化体と反応させて、それによって金属上に酸化された金属表面を形成する工程;(m)基材を、誘電体材料よりも酸化された金属表面により優先的に吸着する不動態化剤に暴露して、それによって酸化された金属表面上に不動態化層を形成する工程;(n)基材を、不動態化層よりも誘電体材料により優先的に吸着するケイ素前駆体に暴露して、それによって誘電体材料上に化学吸着されたケイ素含有層を形成する工程;及び基材を、非プラズマベースの酸化体に暴露して、同時に、(1)酸化された金属表面上の不動態化層を部分的に酸化して、それによって酸化された金属表面上に部分的に酸化された不動態化層を形成し、(2)ケイ素含有誘電体材料上の化学吸着されたケイ素含有層を酸化して、それによって誘電体材料上にケイ素含有誘電体膜を形成する工程、をさらに含んでよい。
【0045】
さらに、及び代わりに、工程(j)~(k)におけるそれぞれの暴露は、既知の厚さの誘電体膜をもたらすことができる。例えば、工程(j)~(k)におけるそれぞれのサイクルは、仮説上は、おおよそ10ナノメートル厚さのケイ素含有誘電体膜をもたらすことができる。さらに、膜特性試験は、このような膜が、要求される膜特性を得るためにおおよそ40ナノメートルの厚さを必要とすることを決定する場合があり、おおよそ40ナノメートルの厚さの膜をもたらすために、工程(i)~(k)を4サイクル繰り返すことが必要になる場合がある。したがって、この第二の方法の代替において、上記のように、工程(j)~(k)を所定のサイクル数だけ繰り返して、上記の厚さを得ることができる。1つの例において、所定のサイクル数は1であってよい。代わりに、所定のサイクル数は、例えば2;3;4;5;6;7;8;9;10;11;12;13;14;15;16;17;18;19;20;21;22;23;24;25;又はそれ以上であってよい。本明細書において開示される第二の方法のこの部分のさらなるものにおいて、プロセスは、(l)基材を非プラズマベースの酸化体と反応させて、それによって金属上に酸化された金属表面を形成する工程;(m)基材を、誘電体材料よりも酸化された金属表面により優先的に吸着する不動態化剤に暴露して、それによって酸化された金属表面上に不動態化層を形成する工程;(n)基材を、不動態化層よりも誘電体材料により優先的に吸着するケイ素前駆体に暴露して、それによって誘電体材料上に化学吸着されたケイ素含有層を形成する工程;及び基材を、非プラズマベースの酸化体に暴露して、同時に、(1)酸化された金属表面上の不動態化層を部分的に酸化して、それによって酸化された金属表面上に部分的に酸化された不動態化層を形成し、(2)誘電体材料上の化学吸着されたケイ素含有層を酸化して、それによって誘電体材料上にケイ素含有誘電体膜を形成する工程、をさらに含んでよい。
【0046】
本明細書において開示される第二の方法の好ましい実施態様のさらなる限定において、反応器は、工程の間にパージされてよい。例えば、1つの実施態様において、反応器は工程(i)と(j)との間にパージされてよい。1つの別の例において、反応器は、工程(j)と(k)との間にパージされてよい。さらなる実施態様において、反応器は、工程(i)と(j)の間、並びに工程(j)と(k)との間にパージされてよい。上記の工程のうち任意のものの間の反応器のパージは、反応器に不活性ガスを流すこと及び反応器を真空源にさらすことからなる群から選択することができる。利用することができる不活性ガスは、以下に限定するものではないが、ヘリウム、アルゴン及び窒素を含む。
【0047】
本明細書において開示される発明の第二の態様にしたがって製造される誘電体材料の選択的熱堆積
実施例2-ブロック分子としてのHTT、酸素源としてのO3及びSi前駆体としてのジ-sec-ブチルアミノシラン(DSBAS)又は2-ジメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンを使用するA-B-C型のALDプロセス
化学機械平坦化(CMP)によって平坦化した表面上に電気メッキ銅を有するか、又は自然酸化物表面を有するシリコンウェハ基材を、5×10-6Torrのベース圧力に真空引きした真空チャンバー中に配置した。基材を100℃に加熱して、130秒間、0.38Torr(50Pa)のHTT圧力で蒸気相を介して、CMP Cu基材にHTTの保護層を選択的に付着させて、次いで60秒間Arパージして未反応のチオールを除去した。HTT官能化Cu基材を、57秒間、0.035Torr(5Pa)でDSBAS蒸気に暴露するか、又は20秒間、0.050Torr(7Pa)における2-ジメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン蒸気に暴露して、次いで60秒間のArパージをして任意の未反応のSi前駆体を除去した。次いで、基材を、30秒間、O2中で(重量で)7%のO3に、2Torr(267Pa)の合計の圧力で暴露して、次いで30秒間のArパージ工程を行って、1サイクルのSiO2 ALDプロセスを完了させた。工程1~3を、A-B-C型のALD(A=HTT、B=DSBAS又は2-ジメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、C=O3)プロセスにおいて、10回以下繰り返した。反射吸収赤外分光法(RAIRS)及びXPSによる結果に基づいては、Cu表面にSiO2が堆積した証拠は観察されなかった。O3部分のサイクルの間、ヘプタンチオールの部分的な燃焼は、Cu表面上にCO3 2-の形成をもたらした。これらのCO3 2-種は、続くサイクルにおけるヘプタンチオールの再付着のための反応性サイトである。インサイチュRAIRS及び高解像度XPSを使用して、45サイクル目まで、銅上にO-SiH3種がないことを確認した。SiO2表面に対するABC型のプロセスが、選択的成長を示す5nmのSiO2を堆積したことも示す。HTはSiO2ALDプロセスを抑制するのに成功したが、Cu 2p領域の高解像度XPS調査は、酸化された状態の銅を示した。さらに、RAIRSを使用して、プロセス温度が150℃に変化したときには、HTのブロック能力が持続しなかったことを示した。AFMによる表面形態の特性評価は、Cu表面の損傷又は粗面化の証拠がないことを明らかにした。Siウェハ表面上の自然酸化物に対する同様のA-B-C型のALDプロセスは、SiO2を堆積した。
【0048】
実施例3-ブロック分子としてPFDT、酸素源としてO3及びSi前駆体としてジ-sec-ブチルアミノシラン(DSBAS)又は2-ジメチルアミノ2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンを使用するA-B-C型のALDプロセス
CMPによって平坦化した表面上に電気メッキ銅を有するか、又は自然酸化物表面を有するシリコンウェハ基材を、5×10-6Torrのベース圧力に真空引きした真空チャンバー中に配置した。基材を100℃に加熱して、PFDTの保護層を、130秒間、0.38Torr(50Pa)のHTT圧力で蒸気相を介してCMP Cu基材に選択的に付着させて、次いで60秒間Arパージして未反応のチオールを除去した。HTT官能化Cu基材を、57秒間、0.035Torr(5Pa)でDSBAS蒸気に暴露するか、又は20秒間、0.050Torr(7Pa)で2-ジメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン蒸気に暴露して、次いで60秒間のArパージをして任意の未反応のSi前駆体を除去した。次いで、基材を、30秒間、O2中の(重量で)7%のO3に、2Torr(267Pa)の合計の圧力で暴露して、次いで30秒間のArパージ工程を行って、1サイクルのSiO2 ALDプロセスを完了させた。工程1~3を、A-B-C型のALD(A=PFDT、B=DSBAS又は2-ジメチルアミノ-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、C=O3)プロセスにおいて、30回以下繰り返した。反射吸収赤外分光法(RAIRS)及びXPSによる結果に基づいては、Cu表面にSiO2が堆積した証拠は観察されなかった。図3に示すように、成長表面及び非成長表面についてのSi 2p領域の高解像度XPSスキャンを比較することによって、成長選択性を決定した。XPSの結果は、PFDTは、より少ないC-H結合を含有するため、HTTよりも良く表面を保護することを示している。O3に暴露したとき、HTTは、形成した燃焼生成物、例えばCO2、CO及びH2Oを部分的に分解し、燃焼生成物はCu表面と反応して炭酸塩を形成する。HTT及びPFDTで保護されたCu表面に対する45回のA-B-C型のALDサイクルの後に、Si 2p、Cu 2p及びC 1s領域について、高解像度XPSスキャンを記録した。Si 2p領域における高解像度XPSスキャンは、HTT及びPFDTの両方が、SiO2のALDをブロックするのに有効であることを示している。しかしながら、Cu 2p領域における高解像度スキャンは、抑制剤としてHTTの代わりにPFDTを使用したときに、CMP Cu表面がほとんど酸化しなかったため、PFDTがCu表面の酸化を阻害するのにより良いことを示している。このことはC 1s領域の高解像度スキャンによって確認され、このスキャンは、PFDT不動態化表面と比較して、HTT不動態化Cu表面により多くの炭酸塩形成があったことを示している。AFMによる表面形態の特性評価は、Cu表面に損傷又は粗面化の証拠がなかったことを明らかにした。Siウェハ表面上の金属酸化物に対する同様のA-B-C型のALDプロセスは、SiO2を堆積した。
【0049】
上記の説明は代表的なもののみを意図するものであり、したがって本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書において説明される実施態様に変更をすることができる。したがって、これらの変更は、本開示の範囲内にあり、かつ添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】