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特表2023-552852グアニル酸シクラーゼC(GCC)抗原結合剤の組成物及びその使用方法
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  • 特表-グアニル酸シクラーゼC(GCC)抗原結合剤の組成物及びその使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】グアニル酸シクラーゼC(GCC)抗原結合剤の組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231212BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231212BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20231212BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231212BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231212BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/62 Z
C07K14/725
C07K19/00
C12Q1/02
A61P35/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P37/04
G01N33/574 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535608
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 IB2021000852
(87)【国際公開番号】W WO2022123307
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/123,333
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518247933
【氏名又は名称】クレッシェンド、バイオロジックス、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CRESCENDO BIOLOGICS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】シャピロ、ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】フー、シンユエ
(72)【発明者】
【氏名】ン、メイ ローサ
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン、ロレイン
(72)【発明者】
【氏名】デ フアン フランコ、エレナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンス、スティーヴン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ13
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR72
4B063QR77
4B063QR80
4B063QS36
4B063QS38
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB33
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB41
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
グアニル酸シクラーゼC(GCC)と結合する抗原結合剤(例えば、単一ドメイン抗体)が開示される。核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、抗原結合断片、ならびにこれらの抗原結合剤及びその断片を含む医薬組成物も開示される。本発明はまた、本明細書で提供される抗体及び抗原結合分子を利用する治療方法も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤であって、
HYYWS(HCDR1)(配列番号:8)、RIYPSGSTSYNPSLKS(HCDR2)(配列番号:11)及びDRSTGWSEWNSDL(HCDR3)(配列番号:16)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)、
RYWMS(HCDR1)(配列番号:9)、KIRHDGGEKYYVDSVKG(HCDR2)(配列番号:12)及びDYTRDV(HCDR3)(配列番号:17)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)、
RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIKYDGSEKYYADSVKG(HCDR2)(配列番号:13)及びDYNKDY(HCDR3)(配列番号:18)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)、
RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIRHDGGEKYYPDSVKG(HCDR2)(配列番号:14)及びDYNKDL(HCDR3)(配列番号:19)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)または
RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIRHDGGEKYYADSVKG(HCDR2)(配列番号:15)及びDYNKDY(HCDR3)(配列番号:18)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V
を含む、前記GCC結合剤。
【請求項2】
配列番号:1もしくは配列番号:20と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域、
配列番号:21と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域、
配列番号:26と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域、
配列番号:27と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域、または
配列番号:28と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域
を含む、請求項1に記載のGCC結合剤。
【請求項3】
グアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤であって、
配列番号:1もしくは配列番号:20と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域、
配列番号:21と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域、
配列番号:26と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域、
配列番号:27と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域、または
配列番号:28と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域
を含む、前記GCC結合剤。
【請求項4】
前記V領域が、配列番号:1、20、21、26、27、または28のいずれか1つと少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のGCC結合剤。
【請求項5】
前記V領域が、配列番号:1、20、21、26、27、または28のいずれか1つと同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のGCC結合剤。
【請求項6】
前記GCC結合剤が、IgA抗体、IgG抗体、IgE抗体、IgM抗体、二重または多重特異性抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd’断片、Fd断片、単離CDRまたはそれらのセット、一本鎖可変断片(scFv)、ポリペプチド-Fc融合、単一ドメイン抗体(sdAb)、ラクダ抗体、マスク抗体、Small Modular ImmunoPharmaceuticals(「SMIPs(商標)」)、一本鎖、タンデムダイアボディ、VHH、Anticalin、ナノボディ、humabody、ミニボディ、BiTE、アンキリンリピートタンパク質、DARPIN、アビマー、DART、TCR様抗体、Adnectin、Affilin、トランスボディ、Affibody、TrimerX、マイクロタンパク質、Fynomer、センチリン、及びKALBITORからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載のGCC結合剤。
【請求項7】
前記GCC結合剤が単一ドメイン抗体(sdAb)である、請求項1~6のいずれか1項に記載のGCC結合剤。
【請求項8】
前記GCC結合剤が重鎖のみの抗体である、請求項1~7のいずれか1項に記載のGCC結合剤。
【請求項9】
前記結合剤が、約0.3ナノモル(nM)~約10nMのKでGCCと結合する、請求項1~8のいずれか1項に記載のGCC結合剤。
【請求項10】
前記結合剤が、約0.5nM~約8nMのEC50で標的細胞上のGCCと結合する、請求項1~9のいずれか1項に記載のGCC結合剤。
【請求項11】
がんの治療方法であって、請求項1~10のいずれか1項に記載のGCC結合剤を、治療を必要とする対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項12】
前記がんが、胃腸癌、結腸直腸癌、結腸直腸腺癌、結腸直腸平滑筋肉腫、結腸直腸リンパ腫、結腸直腸黒色腫、結腸直腸神経内分泌腫瘍、転移性結腸癌、胃癌、胃腺癌、胃リンパ腫、胃肉腫、食道癌、扁平上皮癌、食道の腺癌、または膵臓癌から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記がんが胃腸癌である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記胃腸癌が、結腸癌、結腸直腸癌、胃癌、または食道癌である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
GCC結合剤と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物であって、前記GCC結合剤が、
HYYWS(HCDR1)(配列番号:8)、RIYPSGSTSYNPSLKS(HCDR2)(配列番号:11)及びDRSTGWSEWNSDL(HCDR3)(配列番号:16)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)、
RYWMS(HCDR1)(配列番号:9)、KIRHDGGEKYYVDSVKG(HCDR2)(配列番号:12)及びDYTRDV(HCDR3)(配列番号:17)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)、
RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIKYDGSEKYYADSVKG(HCDR2)(配列番号:13)及びDYNKDY(HCDR3)(配列番号:18)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)、
RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIRHDGGEKYYPDSVKG(HCDR2)(配列番号:14)及びDYNKDL(HCDR3)(配列番号:19)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)または
RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIRHDGGEKYYADSVKG(HCDR2)(配列番号:15)及びDYNKDY(HCDR3)(配列番号:18)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V
を含む、前記医薬組成物。
【請求項16】
がんの治療方法であって、治療を必要とする対象にGCC結合剤を投与することを含み、前記GCC結合剤が、
HYYWS(HCDR1)(配列番号:8)、RIYPSGSTSYNPSLKS(HCDR2)(配列番号:11)及びDRSTGWSEWNSDL(HCDR3)(配列番号:16)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)、
RYWMS(HCDR1)(配列番号:9)、KIRHDGGEKYYVDSVKG(HCDR2)(配列番号:12)及びDYTRDV(HCDR3)(配列番号:17)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)、
RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIKYDGSEKYYADSVKG(HCDR2)(配列番号:13)及びDYNKDY(HCDR3)(配列番号:18)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)、
RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIRHDGGEKYYPDSVKG(HCDR2)(配列番号:14)及びDYNKDL(HCDR3)(配列番号:19)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)または
RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIRHDGGEKYYADSVKG(HCDR2)(配列番号:15)及びDYNKDY(HCDR3)(配列番号:18)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V
を含む、前記方法。
【請求項17】
配列番号:1、20、21、26、27、または28のいずれか1つと同一であるVHアミノ酸配列をコードする、核酸。
【請求項18】
請求項17に記載の単離核酸配列を含む、ベクター。
【請求項19】
請求項18に記載のベクターを含む、単離細胞。
【請求項20】
抗グアニル酸シクラーゼC(GCC)キメラ抗原受容体(CAR)であって、前記抗GCC CARが、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗GCC結合剤を含む、前記抗GCC CAR。
【請求項21】
免疫応答の誘導方法であって、
細胞を抗グアニル酸シクラーゼC(GCC)キメラ抗原受容体(CAR)と接触させることを含み、前記抗GCC CARが、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗GCC結合剤を含む、前記方法。
【請求項22】
細胞傷害の誘導方法であって、
細胞を抗グアニル酸シクラーゼC(GCC)キメラ抗原受容体(CAR)と接触させることを含み、前記抗GCC CARが、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗GCC結合剤を含む、前記方法。
【請求項23】
哺乳動物におけるがんの存在の検出方法であって、
(a)前記哺乳動物に由来する1つ以上の細胞を含む試料を、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗GCC結合剤と接触させることにより、複合体を形成すること、及び
(b)前記複合体を検出し、前記複合体の検出が、前記哺乳動物における前記がんの存在を示していること
を含む、前記方法。
【請求項24】
前記接触が、前記哺乳動物に関してインビトロまたはインビボである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記接触がインビトロである、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月9日出願の米国仮特許出願第63/123,333号の優先権を主張し、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。ASCIIテキストファイルは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれ、2021年11月18日に作成され、「MIL-011WO_SL」という名称であって、サイズが33,391バイトである。
【背景技術】
【0003】
グアニル酸シクラーゼC(GCC)は、腸液の維持、電解質恒常性及び細胞増殖において機能する膜貫通細胞表面受容体であり、例えば、Carrithers et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:3018-3020(2003)を参照のこと。GCCは、小腸、大腸及び直腸の内側を覆う粘膜細胞で発現される(Carrithers et al.,Dis Colon Rectum 39:171-181(1996))。GCC発現は、腸上皮細胞の腫瘍性形質転換時に維持され、全ての原発性及び転移性結腸直腸腫瘍における発現を伴う(Carrithers et al.,Dis Colon Rectum 39:171-181(1996)、Buc et al.Eur J Cancer 41:1618-1627(2005)、Carrithers et al.,Gastroenterology 107:1653-1661(1994))。GCCを標的とする新規の改善された方法が必要である。
【発明の概要】
【0004】
GCCシグナル伝達経路の破壊は、結腸直腸癌を含む多数の胃腸障害に関連している。本発明は、とりわけ、新規抗GCC抗原結合分子(例えば、単一ドメイン抗体(sdAb))を提供する。
【0005】
一態様では、本発明は、HYYWS(HCDR1)(配列番号:8)、RIYPSGSTSYNPSLKS(HCDR2)(配列番号:11)及びDRSTGWSEWNSDL(HCDR3)(配列番号:16)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)を含むグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0006】
一態様では、本発明は、HYYWS(HCDR1)(配列番号:8)、RIYPSGSTSYNPSLKS(HCDR2)(配列番号:11)及びDRSTGWSEWNSDL(HCDR3)(配列番号:16)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)からなるグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0007】
一態様では、本発明は、RYWMS(HCDR1)(配列番号:9)、KIRHDGGEKYYVDSVKG(HCDR2)(配列番号:12)及びDYTRDV(HCDR3)(配列番号:17)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)を含むグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0008】
一態様では、本発明は、RYWMS(HCDR1)(配列番号:9)、KIRHDGGEKYYVDSVKG(HCDR2)(配列番号:12)及びDYTRDV(HCDR3)(配列番号:17)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)からなるグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0009】
一態様では、本発明は、RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIKYDGSEKYYADSVKG(HCDR2)(配列番号:13)及びDYNKDY(HCDR3)(配列番号:18)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)を含むグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0010】
一態様では、本発明は、RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIKYDGSEKYYADSVKG(HCDR2)(配列番号:13)及びDYNKDY(HCDR3)(配列番号:18)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)からなるグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0011】
一態様では、本発明は、RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIRHDGGEKYYPDSVKG(HCDR2)(配列番号:14)及びDYNKDL(HCDR3)(配列番号:19)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)を含むグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0012】
一態様では、本発明は、RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIRHDGGEKYYPDSVKG(HCDR2)(配列番号:14)及びDYNKDL(HCDR3)(配列番号:19)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)からなるグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0013】
一態様では、本発明は、RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIRHDGGEKYYADSVKG(HCDR2)(配列番号:15)及びDYNKDY(HCDR3)(配列番号:18)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)を含むグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0014】
一態様では、本発明は、RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIRHDGGEKYYADSVKG(HCDR2)(配列番号:15)及びDYNKDY(HCDR3)(配列番号:18)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)からなるグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、配列番号:1または配列番号:20と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、配列番号:1または配列番号:20と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域からなる。
【0017】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、配列番号:21と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、配列番号:21と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域からなる。
【0019】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、配列番号:26と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、配列番号:26と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域からなる。
【0021】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、配列番号:27と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、配列番号:27と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域からなる。
【0023】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、配列番号:28と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、配列番号:28と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域からなる。
【0025】
一態様では、本発明は、配列番号:1または配列番号:20と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域を含むグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0026】
一態様では、本発明は、配列番号:1または配列番号:20と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域からなるグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0027】
一態様では、本発明は、配列番号:21と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域を含むグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0028】
一態様では、本発明は、配列番号:21と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域からなるグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0029】
一態様では、本発明は、配列番号:26と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域を含むグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0030】
一態様では、本発明は、配列番号:26と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域からなるグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0031】
一態様では、本発明は、配列番号:27と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域を含むグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0032】
一態様では、本発明は、配列番号:27と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域からなるグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0033】
一態様では、本発明は、配列番号:28と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域を含むグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0034】
一態様では、本発明は、配列番号:28と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)領域を含むか、またはそれからなるグアニル酸シクラーゼC(GCC)結合剤を提供する。
【0035】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、配列番号:1、20、21、26、27、または28のいずれか1つと少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むV領域を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、配列番号:1、20、21、26、27、または28のいずれか1つと少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むV領域からなる。
【0037】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、配列番号:1、20、21、26、27、または28のいずれか1つと同一であるアミノ酸配列を含むV領域を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、配列番号:1、20、21、26、27、または28のいずれか1つと同一であるアミノ酸配列を含むV領域からなる。
【0039】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、IgA抗体、IgG抗体、IgE抗体、IgM抗体、二重または多重特異性抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd’断片、Fd断片、単離CDRまたはそれらのセット、一本鎖可変断片(scFv)、ポリペプチド-Fc融合、単一ドメイン抗体(sdAb)、ラクダ抗体、マスク抗体、Small Modular ImmunoPharmaceuticals(「SMIPs(商標)」)、一本鎖、タンデムダイアボディ、VHH、Anticalin、ナノボディ、humabody、ミニボディ、BiTE、アンキリンリピートタンパク質、DARPIN、アビマー、DART、TCR様抗体、Adnectin、Affilin、トランスボディ、Affibody、TrimerX、マイクロタンパク質、Fynomer、センチリン、及びKALBITORからなる群から選択される。
【0040】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、単一ドメイン抗体(sdAb)である。いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、V単一ドメイン抗体である。
【0041】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、重鎖のみの抗体である。
【0042】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、約0.3ナノモル(nM)~約10nMのKDでGCCと結合する。
【0043】
いくつかの実施形態では、GCC結合剤は、約0.5nM~約8nMのEC50で標的細胞上のGCCと結合する。
【0044】
一態様では、本発明は、がんを治療する方法を提供し、本方法は本明細書に記載されるGCC結合剤を、治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、がんは、胃腸癌、結腸直腸癌、結腸直腸腺癌、結腸直腸平滑筋肉腫、結腸直腸リンパ腫、結腸直腸黒色腫、結腸直腸神経内分泌腫瘍、転移性結腸癌、胃癌、胃腺癌、胃リンパ腫、胃肉腫、食道癌、扁平上皮癌、食道の腺癌、または膵臓癌から選択される。
【0046】
いくつかの実施形態では、がんは胃腸癌である。
【0047】
いくつかの実施形態では、胃腸癌は、結腸癌、結腸直腸癌、胃癌、または食道癌である。
【0048】
一態様では、本発明は、GCC結合剤及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供し、GCC結合剤は、HYYWS(HCDR1)(配列番号:8)、RIYPSGSTSYNPSLKS(HCDR2)(配列番号:11)及びDRSTGWSEWNSDL(HCDR3)(配列番号:16)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)、RYWMS(HCDR1)(配列番号:9)、KIRHDGGEKYYVDSVKG(HCDR2)(配列番号:12)及びDYTRDV(HCDR3)(配列番号:17)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)、RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIKYDGSEKYYADSVKG(HCDR2)(配列番号:13)及びDYNKDY(HCDR3)(配列番号:18)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)、RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIRHDGGEKYYPDSVKG(HCDR2)(配列番号:14)及びDYNKDL(HCDR3)(配列番号:19)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)またはRYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIRHDGGEKYYADSVKG(HCDR2)(配列番号:15)及びDYNKDY(HCDR3)(配列番号:18)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)を含む。
【0049】
一態様では、本発明は、がんを治療する方法を提供し、本方法は治療を必要とする対象にGCC結合剤を投与することを含み、GCC結合剤は、HYYWS(HCDR1)(配列番号:8)、RIYPSGSTSYNPSLKS(HCDR2)(配列番号:11)及びDRSTGWSEWNSDL(HCDR3)(配列番号:16)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)、RYWMS(HCDR1)(配列番号:9)、KIRHDGGEKYYVDSVKG(HCDR2)(配列番号:12)及びDYTRDV(HCDR3)(配列番号:17)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)、RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIKYDGSEKYYADSVKG(HCDR2)(配列番号:13)及びDYNKDY(HCDR3)(配列番号:18)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)、RYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIRHDGGEKYYPDSVKG(HCDR2)(配列番号:14)及びDYNKDL(HCDR3)(配列番号:19)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)またはRYWMT(HCDR1)(配列番号:10)、KIRHDGGEKYYADSVKG(HCDR2)(配列番号:15)及びDYNKDY(HCDR3)(配列番号:18)の相補性決定領域(CDR)配列を有する重鎖可変領域(V)を含む。
【0050】
一態様では、本発明は、配列番号:1、20、21、26、27、または28のいずれか1つと同一であるVアミノ酸配列をコードする核酸を提供する。
【0051】
一態様では、本発明は、配列番号:1、20、21、26、27、または28のいずれか1つと同一であるVアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクターを提供する。
【0052】
一態様では、本発明は、配列番号:1、20、21、26、27、または28のいずれか1つと同一であるVアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクターを含む単離細胞を提供する。
【0053】
一態様では、本発明は、抗グアニル酸シクラーゼC(GCC)キメラ抗原受容体(CAR)を提供し、抗GCC CARは、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗GCC結合剤を含む。
【0054】
一態様では、本発明は、細胞を抗グアニル酸シクラーゼC(GCC)キメラ抗原受容体(CAR)と接触させることを含む、免疫応答を誘導する方法を提供し、抗GCC CARは、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗GCC結合剤を含む。
【0055】
一態様では、本発明は、細胞を抗グアニル酸シクラーゼC(GCC)キメラ抗原受容体(CAR)と接触させることを含む、細胞傷害を誘導する方法を提供し、抗GCC CARは、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗GCC結合剤を含む。
【0056】
一態様では、本発明は、哺乳動物においてがんの存在を検出する方法を提供し、本方法は、(a)哺乳動物に由来する1つ以上の細胞を含む試料を、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗GCC結合剤と接触させることにより、複合体を形成すること、及び(b)複合体を検出し、複合体の検出が、哺乳動物におけるがんの存在を示していることを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、接触は、哺乳動物に関してインビトロまたはインビボである。いくつかの実施形態では、接触はインビトロである。
【0058】
前述の概要及び以下の詳細な説明の両方とも、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される通りに本発明を限定するものではないと理解されるべきである。
【0059】
以下の図で構成される、本明細書に含まれる図面は、単に例示目的にすぎず、限定するためではない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】A及びBは、例示的なキメラ抗原受容体(CAR)構築物を示す。
図2】4つの腫瘍細胞株を使用して実施した例示的な抗GCC CAR-Tインビトロ細胞傷害を示す。Aは、HT29-GCC細胞(GCCを安定に発現するように操作されたヒト結腸直腸癌細胞株HT29)を示す。Bは、HT29-VEC(ベクター制御GCC陰性細胞株)を示す。GCCを内因的に発現する2つの腫瘍細胞株について、CがGSUを示し、DがLS1034を示す。バーは、3つの技術的複製物からの平均+SD値を表す。データは、3人超のドナーに由来する抗GCC CAR T細胞を用いて実施した3つを超える独立した実験の代表的なものである。切断型EGFR(tEGFR)の不存在下で、CAR T細胞傷害を決定した。
図3】4つの腫瘍細胞株を使用して実施した例示的な抗GCC CAR-T細胞インビトロ細胞傷害を示す。Aは、HT29-GCC細胞(GCCを安定に発現するように操作されたヒト結腸直腸癌細胞株HT29)を示す。Bは、HT29-VEC(ベクター制御GCC陰性細胞株)を示す。GCCを内因的に発現する2つの腫瘍細胞株について、CがGSUを示し、DがLS1034を示す。バーは、3つの技術的複製物からの平均+SD値を表す。データは、3人超のドナーに由来する抗GCC CAR T細胞を用いて実施した3つを超える独立した実験の代表的なものである。切断型EGFR(tEGFR)の存在下で、CAR T細胞傷害を決定した。
図4】Aは、GCC発現(HT29-GCC)腫瘍細胞とインビトロで共培養した抗GCC CAR-T細胞による例示的なIFN-gサイトカイン分泌を示す。Bは、GCC陰性(HT29-VEC)腫瘍細胞とインビトロで共培養した抗GCC CAR-T細胞による例示的なIFN-gサイトカイン分泌を示す。Cは、GSU腫瘍細胞とインビトロで共培養した抗GCC CAR-T細胞による例示的なIFN-gサイトカイン分泌を示す。Dは、LS1034腫瘍細胞とインビトロで共培養した抗GCC CAR-T細胞による例示的なIFN-gサイトカイン分泌を示す。Intellicyt QBeads Human PlexScreenキット(Sartorius、90702)を使用して、上清中に分泌されたIFNgを検出した。バーは、3つの技術的複製物からの平均+SD値を表す。データは、3人超のドナーに由来する抗GCC CAR T細胞を用いて実施した3つを超える独立した実験の代表的なものである。切断型EGFR(tEGFR)の不存在下で、サイトカイン分泌を決定した。
図5】Aは、GCC発現(HT29-GCC)腫瘍細胞とインビトロで共培養した抗GCC CAR-Tによる例示的なIFN-gサイトカイン分泌を示す。Bは、GCC陰性(HT29-VEC)腫瘍細胞とインビトロで共培養した抗GCC CAR-Tによる例示的なIFN-gサイトカイン分泌を示す。Cは、GSU腫瘍細胞とインビトロで共培養した抗GCC CAR-Tによる例示的なIFN-gサイトカイン分泌を示す。Dは、LS1034腫瘍細胞とインビトロで共培養した抗GCC CAR-Tによる例示的なIFN-gサイトカイン分泌を示す。Intellicyt QBeads Human PlexScreenキット(Sartorius、90702)を使用して、上清中に分泌されたIFNgを検出した。バーは、3つの技術的複製物からの平均+SD値を表す。データは、3人超のドナーに由来する抗GCC CAR T細胞を用いて実施した3つを超える独立した実験の代表的なものである。切断型EGFR(tEGFR)の存在下で、サイトカイン分泌を決定した。
図6】Aは、GCC発現(HT29-GCC)腫瘍細胞とインビトロで共培養した抗GCC CAR-Tによる例示的なIL-2サイトカイン分泌を示す。Bは、GCC陰性(HT29-VEC)腫瘍細胞とインビトロで共培養した抗GCC CAR-Tによる例示的なIL-2サイトカイン分泌を示す。Cは、GSU腫瘍細胞とインビトロで共培養した抗GCC CAR-Tによる例示的なIL-2サイトカイン分泌を示す。Dは、LS1034腫瘍細胞とインビトロで共培養した抗GCC CAR-Tによる例示的なIL-2サイトカイン分泌を示す。Intellicyt QBeads Human PlexScreenキット(Sartorius、90702)を使用して、上清中に分泌されたIFL-2を検出した。バーは、3つの技術的複製物からの平均+SD値を表す。データは、3人超のドナーに由来する抗GCC CAR T細胞を用いて実施した3つを超える独立した実験の代表的なものである。切断型EGFR(tEGFR)の不存在下で、サイトカイン分泌を決定した。
図7】Aは、GCC(HT29-GCC)腫瘍細胞とインビトロで共培養した抗GCC CAR-Tによる例示的なIL-2サイトカイン分泌を示す。Bは、GCC陰性(HT29-VEC)腫瘍細胞とインビトロで共培養した抗GCC CAR-Tによる例示的なIL-2サイトカイン分泌を示す。Cは、GSU腫瘍細胞とインビトロで共培養した抗GCC CAR-Tによる例示的なIL-2サイトカイン分泌を示す。Dは、LS1034腫瘍細胞とインビトロで共培養した抗GCC CAR-Tによる例示的なIL-2サイトカイン分泌を示す。Intellicyt QBeads Human PlexScreenキット(Sartorius、90702)を使用して、上清中に分泌されたIFL-2を検出した。バーは、3つの技術的複製物からの平均+SD値を表す。データは、3人超のドナーに由来する抗GCC CAR T細胞を用いて実施した3つを超える独立した実験の代表的なものである。切断型EGFR(tEGFR)の存在下で、サイトカイン分泌を決定した。
【0061】
定義
本発明がより容易に理解されるために、ある特定の用語が以下に最初に定義される。以下の用語及び他の用語に関する追加の定義は、本明細書によって記載される。
【0062】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容に別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「方法(a method)」への言及は、本明細書に記載される種類の1つ以上の方法、及び/またはステップを含み、及び/または本開示などを読む際に当業者には明らかになるであろう。
【0063】
投与:本明細書で使用される場合、対象に組成物を「投与する」とは、対象に組成物を付与する、適用する、または組成物と接触させることを意味する。投与は、例えば、局所、経口、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、髄腔内、及び皮内などの多数の経路のいずれかによって達成され得る。
【0064】
親和性:本明細書で使用される場合、「親和性」という用語は、結合部分(例えば、抗原結合剤(例えば、本明細書に記載される可変ドメイン))と標的(例えば、抗原(例えば、GCC))との間の結合相互作用の特性を指し、それは結合相互作用の強さを示す。いくつかの実施形態では、親和性の尺度は、解離定数(K)として表される。いくつかの実施形態では、結合部分は、標的に対して高い親和性を有する(例えば、約10-7M未満、約10-8M未満、または約10-9M未満のK)。いくつかの実施形態では、結合部分は、標的に対して低い親和性を有する(例えば、約10-7M超、約10-6M超、約10-5M超、または約10-4M超のK)。
【0065】
動物:本明細書で使用される場合、「動物」という用語は、動物界の任意のメンバーを指す。いくつかの実施形態では、「動物」は、発達の任意の段階にあるヒトを指す。いくつかの実施形態では、「動物」は、発達の任意の段階にある非ヒト動物を指す。ある特定の実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物(例えば、齧歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、及び/またはブタ)である。いくつかの実施形態では、動物としては、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫、及び/または蠕虫が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物、及び/またはクローンであってよい。
【0066】
自己:本明細書で使用される場合、「自己」という用語は、任意の材料が後に個体に再導入される場合の同じ個体に由来する任意の材料を指す。
【0067】
同種:「同種」は、異なる個体(複数可)に投与される、ある個体に由来する材料を指す。
【0068】
抗体または抗原結合剤:本明細書で使用される場合、「抗体」または「抗原結合剤」という用語は、特定の標的抗原に対して特異的結合を付与するのに十分な古典的免疫グロブリン配列要素を含むポリペプチドを指す。当業者は、本用語が本明細書では交換可能に使用されてよいと理解することになる。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、「抗体」または「抗原結合剤」という用語はまた、「抗体断片(複数可)」または「抗原結合部分」も指し、これは例えば、抗体の抗原結合領域または可変領域などのインタクトな抗体の一部を含む。「抗体断片」の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、トリアボディ、テトラボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、単一ドメイン抗体、ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体に含まれるCDR含有部分が挙げられる。当業者は、「抗体断片」という用語が、任意の特定の生成様式を示唆するものではなく、それに限定されないと理解することになる。抗体断片は、任意の適切な手法の使用によって作製されてよく、その手法としてはインタクトな抗体の切断、化学合成、組換え生産などが挙げられるが、これらに限定されない。当該技術分野において既知の通り、自然界で産生されるようなインタクトな抗体は、およそ150kDの四量体薬剤であり、これは2つの同一の重鎖ポリペプチド(各々約50kD)及び2つの同一の軽鎖ポリペプチド(各々約25kD)で構成され、互いに会合して「Y字型」構造と一般的に称されるものになる。各重鎖は、少なくとも4つのドメイン(各約110アミノ酸長)で構成され、これらは、アミノ末端可変(V)ドメイン(Y構造の先端に位置している)、それに続く3つの定常ドメイン:C1、C2、及びカルボキシ末端C3(Y字の幹の基部に位置している)である。「スイッチ」として知られる短い領域は、重鎖可変領域及び定常領域を連結させる。「ヒンジ」は、C2及びC3ドメインを抗体の残部に連結させる。このヒンジ領域中の2つのジスルフィド結合は、インタクトな抗体中で2つの重鎖ポリペプチドを互いに連結させる。各軽鎖は2つのドメインで構成され、これらは、アミノ末端可変(V)ドメイン、それに続く別の「スイッチ」によって互いに分離された、カルボキシ末端定常(C)ドメインである。インタクトな抗体四量体は、2つの重鎖-軽鎖二量体で構成され、その場合に重鎖及び軽鎖が1つのジスルフィド結合によって互いに連結され、2つの他のジスルフィド結合が、重鎖ヒンジ領域を互いに連結させるため、二量体が互いに連結されて四量体が形成される。天然に産生される抗体も、典型的にはC2ドメイン上でグリコシル化される。天然抗体中の各ドメインは、圧縮された逆平行ベータバレル中で互いに圧縮されている2つのベータシート(例えば、3本鎖、4本鎖、または5本鎖シート)から形成される「免疫グロブリンフォールド」を特徴とする構造を有する。各可変ドメインは、「相補性決定領域」(CDR1、CDR2、及びCDR3)として知られる3つの超可変ループならびに4つのやや不変の「フレームワーク」領域(FR1、FR2、FR3、及びFR4)を含有する。天然抗体が折り畳まれる場合、FR領域は、ドメインに構造的フレームワークを提供するベータシートを形成し、重鎖及び軽鎖の両方からのCDRループ領域が三次元空間でまとまるため、それらは、Y構造の先端に位置する単一の超可変抗原結合部位を形成する。抗体ポリペプチド鎖間のアミノ酸配列比較によって、2本の軽鎖(κ及びλ)クラス、いくつかの重鎖(例えば、μ、γ、α、ε、δ)クラス、ならびにある特定の重鎖サブクラス(α1、α2、γ1、γ2、γ3、及びγ4)が定義される。抗体クラス(IgA[IgA1、IgA2を含む]、IgD、IgE、IgG[IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む]、ならびにIgM)は、利用される重鎖配列のクラスに基づいて定義される。
【0069】
本発明の目的のために、ある特定の実施形態では、天然抗体中に見られるような、十分な免疫グロブリンドメイン配列を含むいずれのポリペプチドまたはポリペプチドの複合体も、そのようなポリペプチドが天然に産生される(例えば、抗原に反応する生物によって生成される)か、あるいは組換え操作、化学合成、または他の人工システムもしくは手法によって産生されるかどうかにかかわらず、「抗体」または「抗原結合剤」と称され得、及び/またはそれとして使用され得る。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナルであり、いくつかの実施形態では、抗体はポリクローナルである。いくつかの実施形態では、抗体は、マウス、ウサギ、霊長類、またはヒト抗体に特徴的な定常領域配列を有する。いくつかの実施形態では、抗体配列要素は、当該技術分野において既知であるような、ヒト化、霊長類化、キメラ化などが行われている。さらに、「抗体」または「抗原結合剤」という用語は、本明細書で使用される場合、適切な実施形態では、代替提示において抗体の構造的及び機能的特徴を獲得するために当該技術分野において既知の、または開発された構築物またはフォーマットのいずれかを指し得ることを(別段の記載がない限り、または文脈から明らかでない限り)包含すると理解されることになる。例えば、いくつかの実施形態では、本用語は、二重または他の多重特異性(例えば、zybodyなどの)抗体、Small Modular ImmunoPharmaceuticals(「SMIPs(商標)」)、一本鎖抗体、ラクダ抗体、及び/または抗体断片を指し得る。いくつかの実施形態では、抗体は、天然に産生される場合に有することになる共有結合修飾(例えば、グリカンの結合)を欠いている場合がある。いくつかの実施形態では、抗体は、共有結合修飾(例えば、グリカンの結合、ペイロード[例えば、検出可能部分、治療的部分、触媒部分など]、または他のペンダント基[例えば、ポリエチレングリコールなど])を含有する場合がある。
【0070】
およそまたは約:本明細書で使用される場合、「およそ」または「約」という用語は、1つ以上の目的の値に適用される場合に規定の参照値に類似した値を指す。ある特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、別段の記載がない限り、または文脈から明らかでない限り(そのような数が可能な値の100%を超えることになる場合を除く)、規定の参照値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満の値内にいずれの方向にも(上回るか、または下回る)含まれる値の範囲を指す。
【0071】
相補性決定領域(CDR):可変ドメインの「CDR」は、Kabat、Chothia、Kabat及びChothiaの両方の積み重ね、すなわちAbM、接触、及び/または立体構造の定義、あるいは当該技術分野において周知の任意のCDR決定方法に従って同定される可変領域内のアミノ酸残基である。抗体のCDRは、Kabat et alによって最初に定義された超可変領域として識別される場合がある。例えば、Kabat et al.,1992,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,NIH,Washington D.C.を参照のこと。CDRの位置は、Chothia及び他によって最初に記載された構造的ループ構造としても識別される場合がある。例えば、Chothia et al.,Nature 342:877-883,1989を参照のこと。CDR同定のための他のアプローチとしては、KabatとChothiaとの折衷案であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(現在のAccelrys(登録商標))を使用して導出される「AbM定義」、またはMacCallum et al.,J.Mol.Biol.,262:732-745,1996に記載されている、観察された抗原接触部位に基づくCDRの「接触定義」が挙げられる。本明細書でCDRの「立体構造定義」と称される別のアプローチでは、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピー的に寄与する残基として同定される場合がある。例えば、Makabe et al.,Journal of Biological Chemistry,283:1 156-1166,2008を参照のこと。さらに他のCDR境界定義は、上記のアプローチのうち1つに厳密には従わない場合もあるが、特定の残基もしくは残基の群またはCDR全体でさえ、抗原結合に大きな影響を与えないという予測または実験的知見に照らしてCDRが短縮または延長される場合があるが、それにもかかわらず、Kabat CDRの少なくとも一部と重複する。
【0072】
別段の記載がない限り、本明細書で使用される場合、CDRの定義は、Kabat CDRに従う。
【0073】
エフェクター機能:本明細書で使用される場合、「エフェクター機能」という用語は、本明細書に記載される抗原結合剤に起因するような生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、ならびにB細胞活性化が挙げられる。「減少または最小化した」抗体エフェクター機能は、野生型または非改変抗体から少なくとも50%(あるいは、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%)減少していることを意味する。抗体エフェクター機能の決定は、当業者によって容易に決定可能及び測定可能である。いくつかの実施形態では、補体結合、補体依存性細胞傷害及び抗体依存性細胞傷害の抗体エフェクター機能が影響を受ける。いくつかの実施形態では、エフェクター機能は、グリコシル化を排除した定常領域における変異、例えば、「エフェクターレス変異」によって排除される。一態様では、エフェクターレス変異は、CH2領域におけるN297AまたはDANA変異(D265A+N297A)である。Shields et al.,J.Biol.Chem.276(9):6591-6604(2001)。あるいは、減少または排除したエフェクター機能をもたらす追加の変異としては、K322A及びL234A/L235A(LALA)が挙げられる。あるいは、エフェクター機能は、産生技術、例えば、グリコシル化しない宿主細胞(例えば、E.coli.)またはエフェクター機能を促進する際に無効もしくは効果が弱いグリコシル化パターンの変更をもたらす宿主細胞における発現などによって減少または排除され得る(例えば、Shinkawa et al.,J.Biol.Chem.278(5):3466-3473(2003)。
【0074】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害またはADCCは、ある特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)上に結合した分泌Igによって、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原担持標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒を用いて標的細胞を死滅させることが可能となる細胞傷害性の形態を指す。抗体で細胞傷害性細胞を「武装」し、これはこの機序による標的細胞の死滅に必要である。ADCCを媒介するための主な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現する一方で、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFc発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-92(1991)の464ページの表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されるアッセイなどのインビトロADCCアッセイが行われてよい。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.,PNAS USA 95:652-656(1998)に開示されるモデルなどの動物モデルで評価されてよい。
【0075】
抗原:本明細書で使用される場合、「抗原」という用語は、免疫応答を誘発する作用因子、及び/またはT細胞受容体(例えば、MHC分子によって提示される場合)によって結合されるか、もしくは生物に曝露もしくは投与される場合に抗体(例えば、B細胞によって産生される)に結合する作用因子を指す。いくつかの実施形態では、抗原は、生物内で(例えば、抗原特異的抗体の産生を含む)体液性応答を誘発し、あるいはまたはさらに、いくつかの実施形態では、抗原は、生物内で(例えば、T細胞の受容体が抗原と特異的に相互作用するT細胞に関与する)細胞応答を誘発する。特定の抗原が、標的生物種の全てのメンバーではなく、標的生物(例えば、マウス、ウサギ、霊長類、ヒト)の1つまたはいくつかのメンバーにおいて免疫応答を誘発し得ると当業者には理解されることになる。いくつかの実施形態では、抗原は、標的生物種のメンバーの少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%で免疫応答を誘発する。いくつかの実施形態では、抗原は抗体及び/またはT細胞受容体に結合し、生物内で特定の生理学的応答を誘導する場合もあれば、誘導しない場合もある。いくつかの実施形態では、例えば、抗原は、そのような相互作用がインビボで生じるか否かにかかわらず、インビトロで抗体及び/またはT細胞受容体に結合し得る。いくつかの実施形態では、抗原は、異種免疫原によって誘導されるものを含む、特定の体液性または細胞性免疫の産物と反応する。開示された組成物及び方法のいくつかの実施形態では、GCCタンパク質は抗原である。
【0076】
と関連する:本明細書で本用語が使用される場合、2つの事象または実体は、一方の存在、レベル及び/または形態が、他方のそれらと相関する場合に互いに「関連」している。例えば、特定の実体(例えば、ポリペプチド)は、その存在、レベル及び/または形態が、(例えば、関連する集団にわたって)疾患、障害、または状態の発生率及び/または感受性と相関する場合に、特定の疾患、障害、または状態と関連するとみなされる。いくつかの実施形態では、2つ以上の実体は、それらが直接的または間接的に相互作用することで、それらが互いに物理的に近接し、近接したままである場合、互いに物理的に「関連」している。いくつかの実施形態では、互いに物理的に関連している2つ以上の実体は、互いに共有結合し、いくつかの実施形態では、互いに物理的に関連している2つ以上の実体は、互いに共有結合していないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁性、及びこれらの組合せによって非共有的に関連する。
【0077】
結合:「結合」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に2つ以上の実体間での、またはこれらの中での非共有会合を指すと理解されることになる。「直接」結合は、実体または部分間での物理的接触を含み、間接結合は、1つ以上の中間実体との物理的接触による物理的相互作用を含む。2つ以上の実体間での結合は、相互作用する実体または部分が、単独で、またはより複雑な系との関連において研究される場合(例えば、担体実体と共有結合もしくは別の方法で会合する場合、及び/または生物系もしくは細胞内における場合)を含む、様々な文脈のいずれかで評価され得る。本明細書で使用される場合、「K」は、結合部分/標的複合体を形成するための特定の結合部分と標的との結合速度を指す。本明細書で使用される場合、「K」は、特定の結合部分/標的複合体の解離速度を指す。本明細書で使用される場合、「K」は解離定数を指し、これはKとKとの比(すなわち、K/K)から得られ、モル濃度(M)として表される。K値は、当該技術分野で十分に確立された方法を使用して、例えば、表面プラズモン共鳴を使用するか、Biacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することによって決定され得る。
【0078】
担体:本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、組成物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。いくつかの例示的な実施形態では、担体としては滅菌液、例えば、水及び油など、例えば、石油、動物、植物または合成起源の油、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などを含むものが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、担体は、1つ以上の固体成分であるか、またはそれらを含む。
【0079】
特徴的部分:本明細書で使用される場合、「特徴的部分」という用語は最も広義に使用され、物質の存在(または不存在)が、物質の特定の特徴、属性、または活性の存在(または不存在)と相関する物質の一部を指す。いくつかの実施形態では、物質の特徴的部分は、特定の特徴、属性または活性を共有しない物質ではなく、特定の特徴、属性または活性を共有する物質及び関連物質に見られる部分である。
【0080】
コドン最適化:本明細書で使用される場合、「コドン最適化」核酸配列は、核酸配列の翻訳及び得られたタンパク質の発現が、特定の発現系に対する最適化について改善されるように変更されている核酸配列を指す。「コドン最適化」核酸配列は、「コドン最適化」核酸配列が基づく非最適化親配列と同じタンパク質をコードする。例えば、核酸配列は、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞、ヒト細胞、マウス細胞など)、細菌細胞(例えば、E.coli)、昆虫細胞、酵母細胞または植物細胞における発現のために「コドン最適化」される場合がある。
【0081】
同等:「同等」という用語は、本明細書で使用される場合、互いに同一ではない場合があるが、それらの間における比較を可能にするのに十分に類似し、観察される差または類似性に基づいて結論が合理的にもたらされる場合があるような、2つ以上の薬剤、実体、状況、状態のセットなどを指す。当業者は、文脈内において2つ以上のそのような薬剤、実体、状況、状態のセットなどが任意の所与の状況において同等とみなされるには、どの程度の同一性が求められるかを理解することになる。
【0082】
に対応する:本明細書で使用される場合、「に対応する」という用語は、目的のポリペプチドにおけるアミノ酸残基の位置/同一性を指定するために多くの場合に使用される。当業者は、簡潔にするために、ポリペプチド中の残基が参照関連ポリペプチドに基づく古典的な番号付けシステムを使用して多くの場合に指定されるため、例えば、190位の残基「に対応する」アミノ酸は、実際には特定のアミノ酸鎖の190番目のアミノ酸である必要はなく、むしろ参照ポリペプチドの190位に見られる残基に対応すると理解することになり、当業者は「対応する」アミノ酸の同定方法を容易に理解する。
【0083】
由来:本明細書で使用される場合、「指定配列に由来する」または「指定配列に特異的な」配列という語句は、例えば、指定配列の隣接領域に対応する、すなわち、それと同一の、またはそれに相補的な少なくともおよそ6つのヌクレオチドもしくは少なくとも2つのアミノ酸、少なくとも約9つのヌクレオチドもしくは少なくとも3つのアミノ酸、少なくとも約10~12のヌクレオチドもしくは4つのアミノ酸、または少なくとも約15~21のヌクレオチドもしくは5~7つのアミノ酸の連続配列を含む配列を指す。ある特定の実施形態では、配列は、指定されたヌクレオチドまたはアミノ酸配列の全てを含む。配列は、当該技術分野において既知の技術によって決定されるような、特定の配列に固有の配列領域に相補的(ポリヌクレオチド配列の場合)またはそれと同一であり得る。配列が由来し得る領域としては、特定のエピトープをコードする領域、CDRをコードする領域、フレームワーク配列をコードする領域、定常ドメイン領域をコードする領域、可変ドメイン領域をコードする領域に加えて、非翻訳及び/または非転写領域が挙げられるが、これらに限定されない。得られた配列は、必ずしも試験中の目的の配列に物理的に由来しているとは限らないが、ポリヌクレオチドが由来する領域(複数可)の塩基配列によって提供される情報に基づく、化学合成、複製、逆転写または転写を含むが、これらに限定されないいかなる方法によっても生成され得る。したがって、配列は、元のポリヌクレオチドのセンス方向またはアンチセンス方向のいずれかを表す場合がある。加えて、指定配列の領域に対応する領域の組合せが、使用目的と一致するように、当該技術分野における既知の方法で改変または組み合わされてよい。例えば、配列は、2つ以上の連続配列を含む場合があり、その各々が指定配列の一部を含み、指定配列と同一ではないが、指定配列に由来する配列を表すことを意図する領域が挿入されている。抗体分子に関して、「それに由来する」は、比較抗体に機能的または構造的に関連する抗体分子を含み、例えば、「それに由来する」は、類似した、または実質的に同じ配列または構造を有する、例えば、同じまたは類似したCDR、フレームワークまたは可変領域を有する抗体分子を含む。抗体の「それに由来する」はまた、残基、例えば、1つ以上、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれを超える残基を含み、これは連続していても、していなくともよいが、番号付けスキームまたは一般的な抗体構造に対する相同性または比較配列の、すなわち、CDRまたはフレームワーク領域内での三次元近接によって定義または同定される。「それに由来する」という用語は、それに物理的に由来することに限定されず、任意の方法、例えば、別の抗体を設計するために比較抗体からの配列情報を使用することによる生成を含む。
【0084】
決定する:本明細書に記載される多くの手法は、「決定する」ステップを含む。当業者は、本明細書を読むと、そのような「決定する」ことが、例えば、本明細書で明示的に言及される特定の技術を含む、当業者に利用可能な様々な技術のいずれかを利用し得ると理解することになる。いくつかの実施形態では、決定は、物理的試料の操作を伴う。いくつかの実施形態では、決定は、例えば、コンピュータまたは関連する分析を実施するために適合された他の処理ユニットを利用する、データまたは情報の考察及び/または操作を伴う。いくつかの実施形態では、決定は、供給源から関連する情報及び/または材料を得ることを伴う。いくつかの実施形態では、決定することは、試料または実体の1つ以上の特徴を同等の参照物と比較することを伴う。
【0085】
操作される:「操作される」という用語は、本明細書で使用される場合、人間によって設計もしくは改変されていて、及び/またはその存在及び産生が、ヒトの介入及び/または活性を必要とするポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは細胞について記載している。例えば、操作細胞は、特定の効果を誘発するように意図的に設計されていて、同種の天然に存在する細胞の効果とは異なる。いくつかの実施形態では、操作細胞は、本明細書に記載されるキメラ抗原受容体を発現する。例示的な操作方法は、発明を実施するための形態及び実施例節に記載されている。
【0086】
エピトープ:本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、免疫グロブリン(例えば、抗体または受容体)結合成分によって全体的または部分的に特異的に認識される任意の部分を含む。いくつかの実施形態では、エピトープは、抗原内の複数のアミノ酸で構成される。いくつかの実施形態では、そのようなアミノ酸残基は、抗原が関連する三次元立体構造を取る場合に表面に露出する。いくつかの実施形態では、アミノ酸残基は、抗原がそのような立体構造を取る場合に、空間内で互いに物理的に近接しているか、または互いに形が合う。いくつかの実施形態では、アミノ酸のうち少なくともいくつかは、抗原が別の立体構造を取る(例えば、線状化する)場合、互いに物理的に分離されている(例えば、非線状エピトープ)。
【0087】
賦形剤:本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、例えば、所望の稠度または安定化効果を提供するか、またはこれに寄与するために医薬組成物に含まれる場合がある非治療剤を指す。好適な医薬賦形剤としては、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
【0088】
発現:「発現」または「発現される」という用語は、本明細書で核酸に関連して使用される場合、以下の事象のうち1つ以上を指す:(1)DNA鋳型のRNA転写物の産生(例えば、転写による)、(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/または3’末端形成による)、(3)ポリペプチドへのRNAの翻訳、及び/または(4)ポリペプチドの翻訳後修飾。
【0089】
エクスビボ:本明細書で使用される場合、「エクスビボ」という用語は、外部環境、例えば、多細胞生物の外側で生じる事象を指す。いくつかの実施形態では、細胞または細胞集団は、多細胞生物(例えば、非ヒト霊長類またはヒトなどの哺乳動物)の体外で改変されて、そのような細胞または細胞集団を、それを必要とする対象に投与する前に、本明細書に記載される抗GCC分子を発現する。
【0090】
融合タンパク質:本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」という用語は、2つの異なる(例えば、異種)タンパク質の少なくとも一部をコードする核酸配列から操作された核酸配列によってコードされるタンパク質を指す。当業者が疑いなく認識している通り、融合タンパク質を作製するには、得られたリーディングフレームが内部停止コドンを含有しないように核酸配列を連結させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような融合タンパク質は、インフルエンザHAポリペプチドまたはその断片を含む。
【0091】
グアニル酸シクラーゼC(GCC):本明細書で使用される場合、「GCC」は、「STAR」、「GUC2C」、「GUCY2C」または「ST受容体」タンパク質としても知られ、哺乳動物GCC、好ましくはヒトGCCタンパク質を指す。ヒトGCCは、GenBankアクセッション番号:NM_004963に記載されるタンパク質及びその天然に存在するアレルタンパク質バリアントを指す。他のバリアントが、当該技術分野において既知である。例えば、アクセッション番号Ensp0000261170、Ensembl Database、European Bioinformatics Institute及びWellcome Trust Sanger Institute、米国特許出願第20060035852号、またはGENBANKアクセッション番号AAB 19934を参照のこと。典型的には、天然に存在するアレルバリアントは、配列番号:5のGCC配列と少なくとも95%、97%または99%同一であるアミノ酸配列を有する。転写物は、1073アミノ酸のタンパク質産物をコードし、GenBankアクセッション番号:NM-004963で記載されている。GCCタンパク質は、膜貫通細胞表面受容体タンパク質として特徴付けられ、腸液の維持、電解質恒常性及び細胞増殖において重要な役割を果たすと考えられている。
【0092】
宿主:「宿主」という用語は、本明細書では目的のポリペプチドが存在する系(例えば、細胞、生物など)を指すために使用される。いくつかの実施形態では、宿主は、目的の特定のポリペプチドを発現する系である。
【0093】
宿主細胞:本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という語句は、外来DNA(組換えまたは別の方法)が導入されている細胞を指す。例えば、宿主細胞は、標準的な組換え技術によって本明細書に記載されるポリペプチドを産生するために使用されてよい。当業者は、本開示を読むと、そのような用語が特定の対象細胞のみを指すだけでなく、そのような細胞の子孫も指すことを理解することになる。変異または環境的影響のいずれかに起因して後続世代においてある特定の改変が生じる場合があるため、そのような子孫は、実際には親細胞と同一ではない可能性があるが、本明細書で使用されるような「宿主細胞」という用語の範囲内に依然として含まれる。いくつかの実施形態では、宿主細胞としては、外来DNA(例えば、組換え核酸配列)を発現するのに適した任意の原核細胞及び真核細胞が挙げられる。例示的な細胞としては、原核生物及び真核生物の細胞(単細胞もしくは多細胞)、細菌細胞(例えば、E.coli、Bacillus種、Streptomyces種などの株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、S.cerevisiae、S.pombe、P.pastoris、P.methanolicaなど)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、Trichoplusia niなど)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、または細胞融合体、例えば、ハイブリドーマもしくはクアドローマなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、またはマウス細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は真核細胞であり、以下の細胞:CHO(例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、HEK293T、293EBNA、MSR293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC5、Colo205、HB8065、HL-60(例えば、BHK21)、Jurkat、Daudi、A431(表皮)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT060562、セルトリ細胞、BRL 3A細胞、HT1080細胞、骨髄腫細胞、腫瘍細胞、及び上述した細胞に由来する細胞株から選択される。いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上のウイルス遺伝子を含み、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(商標)細胞)である。
【0094】
免疫応答:本明細書で使用される場合、「免疫応答」という用語は、B細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージまたは多形核などの免疫系の細胞が、抗原またはワクチンなどの刺激に対して応答することを指す。免疫応答は、例えば、インターフェロンまたはサイトカインを分泌する上皮細胞を含む、宿主防御応答に関与する身体の任意の細胞を含み得る。免疫応答としては、自然免疫応答及び/または適応免疫応答が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、防御免疫応答は、対象を感染から保護する(感染を予防するか、または感染と関連する疾患の発症を予防する)免疫応答を指す。免疫応答を測定する方法は当該技術分野において周知であり、例えば、リンパ球(B細胞またはT細胞など)の増殖及び/または活性、サイトカインまたはケモカインの分泌、炎症、抗体産生などの測定を含む。
【0095】
インビトロ:本明細書で使用される場合、「インビトロ」という用語は、多細胞生物内ではなく、人工環境で、例えば、試験管内または反応容器内、細胞培養下などで生じる事象を指す。
【0096】
インビボ:本明細書で使用される場合、「インビボ」という用語は、ヒト及び非ヒト動物などの多細胞生物内で生じる事象を指す。細胞ベースの系との関連において、本用語は、生細胞内で(例えば、インビトロまたはエクスビボ系とは対照的に)生じる事象を指すために使用される場合がある。
【0097】
単離される:本明細書で使用される場合、「単離される」という用語は、(1)最初に生成される場合にそれが会合していた構成要素のうち少なくともいくつかと分離されている(天然において、及び/または実験設定のいずれでも)、及び/または(2)ヒトの介入によって設計、産生、調製、及び/または製造された物質及び/または実体を指す。単離された物質及び/または実体は、それらが最初に会合した他の構成要素の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超とは分離されている場合がある。いくつかの実施形態では、単離された薬剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%を超えて純粋である。本明細書で使用される場合、物質が実質的に他の構成要素を含まない場合、物質は「純粋」である。いくつかの実施形態では、当業者によって理解されるように、物質は、ある特定の他の構成要素、例えば、1つ以上の担体または賦形剤(例えば、緩衝液、溶媒、水など)などと組み合わされた後でも依然として「単離されている」か、または「純粋」とさえみなされる場合があり、そのような実施形態では、物質の単離パーセントまたは純度パーセントは、そのような担体または賦形剤を含めることなく算出される。一例を示すと、いくつかの実施形態では、天然に生じるポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの生体ポリマーは、a)その起源または誘導の供給源によって、天然におけるその天然状態でポリマーに付随する構成要素の一部または全てと関連しない場合、b)ポリマーが、天然においてそれを生成する種に由来する同じ種の他のポリペプチドまたは核酸を実質的に含まない場合、c)天然においてポリマーを生成する種のものではない細胞または他の発現系に由来する構成要素によって発現されるか、またはさもなければそれらと関連する場合に「単離されている」とみなされる。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、化学的に合成されるか、または天然においてポリペプチドを産生するものとは異なる細胞系で合成されるポリペプチドは、「単離された」ポリペプチドであるとみなされる。あるいは、またはさらに、いくつかの実施形態では、1つ以上の精製技術に供されているポリペプチドは、a)天然においてポリペプチドが会合する、及び/またはb)最初に産生された時にポリペプチドが会合した、他の構成要素からポリペプチドが分離されている限り、「単離された」ポリペプチドであるとみなされ得る。いくつかの実施形態では、細胞は、他の細胞から「単離」(例えば、精製または分離)され得る。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるCARを発現するように操作された遺伝子改変細胞は、非改変細胞から単離され得る。
【0098】
核酸:本明細書で使用される場合、「核酸」という語句は、その最も広義にはオリゴヌクレオチド鎖内に組み込まれる、または組み込まれ得る任意の化合物及び/または物質を指す。いくつかの実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合によってオリゴヌクレオチド鎖内に組み込まれる、または組み込まれ得る化合物及び/または物質である。文脈から明らかとなる通り、いくつかの実施形態では、「核酸」は、個別の核酸残基(例えば、ヌクレオチド及び/またはヌクレオシド)を指し、いくつかの実施形態では、「核酸」は、個別の核酸残基を含むオリゴヌクレオチド鎖を指す。いくつかの実施形態では、「核酸」はRNAであるか、またはRNAを含み、いくつかの実施形態では、「核酸」はDNAであるか、またはDNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の天然核酸残基であるか、それらを含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の核酸類似体であるか、それらを含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、核酸類似体は、それがホスホジエステル骨格を利用しないという点で核酸とは異なる。例えば、いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の「ペプチド核酸」であるか、それらを含むか、またはそれらからなり、「ペプチド核酸」は当該技術分野において既知であり、ホスホジエステル結合の代わりに骨格内にペプチド結合を有し、これらは本発明の範囲内であるとみなされる。あるいはまたはさらに、いくつかの実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合ではなく、1つ以上のホスホロチオエート及び/または5’-N-ホスホロアミダイト結合を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の天然ヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)であるか、それらを含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上のヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、2-チオシチジン、メチル化塩基、挿入塩基、及びこれらの組合せ)であるか、それらを含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、核酸は、天然核酸中の糖と比較した場合に1つ以上の修飾糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソース)を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、RNAまたはタンパク質などの機能的遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上のイントロンを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、天然源からの単離、相補的鋳型に基づく重合による酵素合成(インビボまたはインビトロ)、組換え細胞または系における再産生、及び化学合成のうちの1つ以上によって調製される。いくつかの実施形態では、核酸は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000またはそれを超える残基長である。いくつかの実施形態では、核酸は一本鎖であり、いくつかの実施形態では、核酸は二本鎖である。いくつかの実施形態では、核酸は、ポリペプチドをコードするか、またはポリペプチドをコードする配列の補体である、少なくとも1つの要素を含むヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は酵素活性を有する。
【0099】
薬学的に許容されるビヒクル:本開示において有用な薬学的に許容される担体(ビヒクル)は従来のものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences,by E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PA,15th Edition(1975)は、1つ以上の治療用組成物(例えば、本明細書に記載されるキメラ抗原受容体を含む組成物)の医薬送達に適した組成物及び製剤、ならびに追加の医薬品について記載している。概して、担体の性質は、用いられている特定の投与方法に依存することになる。例えば、非経口製剤は通常、薬学的及び生理学的に許容される流体、例えば、水、生理食塩水、平衡塩溶液、デキストロース水溶液、グリセロールなどをビヒクルとして含む注射用流体を含む。固体組成物(例えば、粉末、丸剤、錠剤、またはカプセル形態)の場合、従来の非毒性固体担体は、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、及びpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートなどを含有し得る。
【0100】
ポリペプチド:「ポリペプチド」は、一般的に言えば、ペプチド結合によって互いに結合される少なくとも2つの一連のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも3~5つのアミノ酸を含む場合があり、その各々は、少なくとも1つのペプチド結合によって他のアミノ酸に結合される。当業者は、ポリペプチドが「非天然」アミノ酸または他の実体を含む時もあり、それにもかかわらず、それらは任意でポリペプチド鎖内に組み込むことができると理解することになる。いくつかの実施形態では、「ポリペプチド」という用語は、ポリペプチドの特定の機能クラス、例えば、抗体、キメラ抗原受容体、または共刺激ドメインポリペプチドなどを指すために使用される。そのような各クラスでは、本明細書は、クラス内の既知の例示的なポリペプチドのアミノ酸配列に関するいくつかの例を提供し、及び/またはそれらは当該技術によって認識され、いくつかの実施形態では、1つ以上のそのような既知のポリペプチドは、クラスの参照ポリペプチドである。そのような実施形態では、「ポリペプチド」という用語は、関連する参照ポリペプチドとの十分な配列相同性または同一性を示すクラスの任意のメンバーを指し、当業者は、それがクラス内に含まれるべきであると理解することになる。多くの実施形態では、代表的なクラスのメンバーはまた、参照ポリペプチドと顕著な活性を共有する。例えば、いくつかの実施形態では、メンバーポリペプチドは、参照ポリペプチドとの配列相同性または同一性の全体的な程度を示し、それは少なくとも約30~40%であり、多くの場合に約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%超もしくはそれを超え、及び/または多くの場合に90%超もしくはさらに95%、96%、97%、98%、もしくは99%の非常に高い配列同一性を示す、少なくとも1つの領域(すなわち、多くの場合に特徴的な配列要素を含む、保存領域)を含む。そのような保存領域は通常、少なくとも3~4つ、多くの場合に最大で20以上のアミノ酸を包含し、いくつかの実施形態では、保存領域は、少なくとも一続きの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれを超える連続アミノ酸を包含する。
【0101】
本発明の抗体及び抗原結合剤は、追加の保存的または非必須アミノ酸置換を有する場合があると理解されるが、これらはポリペプチド機能に実質的な影響を及ぼさない。特定の置換が許容されるか否か、すなわち、結合活性などの所望の生物学的特性に悪影響を与えないかは、Bowie,J U et al.Science 247:1306-1310(1990)またはPadlan et al.FASEB J.9:133-139(1995)に記載されるように決定され得る。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられている置換である。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。
【0102】
予防:「予防」という用語は、本明細書で使用される場合、予防、疾患発現の回避、発症の遅延、及び/または特定の疾患、障害もしくは状態(例えば、インフルエンザウイルスによる、例えば、感染)の1つ以上の症状の頻度及び/または重症度の軽減を指す。いくつかの実施形態では、予防は、疾患、障害または状態の1つ以上の症状の発生、頻度、及び/または強度における統計的に有意な減少が、疾患、障害、または状態に罹患しやすい集団で観察される場合、特定の疾患、障害または状態を薬剤が「予防する」とみなされるように集団ベースで評価される。
【0103】
純度:本明細書で使用される場合、薬剤または実体が実質的に他の構成要素を含まない場合、それは「純粋」である。例えば、特定の薬剤または実体を約90%超含有する調製物は通常、純粋な調製物であるとみなされる。いくつかの実施形態では、薬剤または実体は、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%純粋である。
【0104】
組換え:本明細書で使用される場合、「組換え」という用語は、組換え手段によって設計、操作、調製、発現、作製または単離されるポリペプチド(例えば、本明細書に記載されるようなポリペプチド)、例えば、宿主細胞にトランスフェクトした組換え発現ベクターを使用して発現されるポリペプチド、組換えコンビナトリアルポリペプチドライブラリーから単離されたポリペプチド、または選択された配列要素を互いにスプライシングすることを含む任意の他の手段によって調製、発現、作製もしくは単離されるポリペプチドなどを指すことを意図する。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素のうち1つ以上が、天然に見られる。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素及び/またはそれらの組合せのうち1つ以上が、インシリコで設計される。いくつかの実施形態では、1つ以上のそのような選択された配列要素は、同じポリペプチド中には天然に存在しない複数(例えば、2つ以上)の既知の配列要素(例えば、2つの別々のHAポリペプチドに由来する2つのエピトープ)の組合せに由来する。
【0105】
参照:「参照」という用語は、目的の薬剤、個体、集団、試料、配列または値と比較する標準または対照薬剤、個体、集団、試料、配列または値について記載するために、本明細書で多くの場合に使用される。いくつかの実施形態では、参照薬剤、個体、集団、試料、配列または値は、目的の薬剤、個体、集団、試料、配列または値の試験または決定と実質的に同時に試験及び/または決定される。いくつかの実施形態では、参照薬剤、個体、集団、試料、配列または値は、有形媒体に任意に具現化された、過去の参照である。典型的には、当業者によって理解されるように、参照薬剤、個体、集団、試料、配列または値は、目的の薬剤、個体、集団、試料、配列または値を決定または特徴付けるために利用されるものと同等の条件下で決定または特徴付けられる。
【0106】
単一ドメイン抗体:本明細書で使用される場合、「単一ドメイン抗体(sdAb)」、「可変単一ドメイン」または「免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISV)」「単一重鎖可変ドメイン(VH)抗体」という用語は、標的抗原に結合し、軽鎖または他の抗体断片の不在下で抗原に対する結合特異性を保持する抗体の単一可変断片を指す。これらの用語は、本明細書では交換可能に使用される。sdAbは、3つの相補性決定領域(CDR)を有する単一抗原結合ポリペプチドである。sdAbは単独で、対応するCDR含有ポリペプチドと対形成することなく抗原に結合できる。VH単一ドメイン抗体は、ヒト重鎖可変ドメインまたはヒト重鎖可変ドメインに由来するドメインを有する単一ドメイン抗体を指す。いくつかの場合では、単一ドメイン抗体は、ラクダHCAbから操作され、ラクダHCAbのそれらの重鎖可変ドメインは「VHH」と称される。いくつかのVHHはまた、ナノボディとしても知られ得る。ラクダsdAbは、既知の最小の抗原結合抗体断片の1つである(例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-8(1993)、Greenberg et al.,Nature 374:168-73(1995)、Hassanzadeh-Ghassabeh et al.,Nanomedicine(Lond),8:1013-26(2013)を参照のこと)。基本的なVHまたはVHH単一ドメイン抗体は、N末端からC末端まで次の構造:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を有し、式中、FR1~FR4は、それぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3は、相補性決定領域1~3を指す。以下に説明される通り、本発明の様々な態様のいくつかの実施形態は、軽鎖の不存在下でGCC抗原と結合する単一重鎖可変ドメイン抗体/免疫グロブリン重鎖単一可変ドメインを含む結合剤に関する。
【0107】
対象:本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトを含む任意の哺乳動物を意味する。本発明のある特定の実施形態では、対象は、成人、青年または乳幼児である。いくつかの実施形態では、「個体」または「患者」という用語が使用され、それらは「対象」と交換可能であることを意図している。医薬組成物の投与及び/または子宮内での治療方法の実施もまた、本発明によって企図される。例えば、対象は、がん(例えば、胃腸起源の)、がん(細胞の少なくとも一部がGCCを発現する)の症状、またはがん(細胞の少なくとも一部がGCCを発現する)に対して素因を有する、患者(例えば、ヒト患者または獣医学的患者)であり得る。本発明の「非ヒト動物」という用語は、別段の注記がない限り、全ての非ヒト脊椎動物、例えば、非ヒト哺乳動物及び非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両性類、爬虫類などを含む。
【0108】
実質的に:本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、目的の特徴または特性の全体的またはほぼ全体的な程度または度合いを表す定性的状態を指す。生物学技術分野における当業者は、生物学的及び化学的現象が、あるとしてもめったに完了しない、及び/または完全には進行しない、あるいは確かな結果を達成しないか、またはそれを回避しないと理解することになる。したがって、「実質的に」という用語は、多くの生物学的及び化学的現象に固有の完全性の欠如可能性を得るために本明細書で使用される。
【0109】
治療剤:本明細書で使用される場合、「治療剤」という用語は、生物活性を有する薬剤(例えば、抗原結合剤)を指す。本用語は、化学化合物、化学化合物の混合物、生体高分子、または生体物質から作製された抽出物を示すために本明細書で使用される。いくつかの実施形態では、治療剤は、抗がん剤または化学療法剤であってよい。本明細書で使用される場合、「抗がん剤」または「化学療法剤」という用語は、ヒトにおいて新生物、特に悪性(がん性)病変、例えば、癌腫、肉腫、リンパ腫、または白血病などの発症または進行を阻害する機能特性を有する薬剤を指す。転移または血管新生の阻害はしばしば、抗がん剤または化学療法剤の特性である。化学療法剤は、細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤であってよい。「細胞増殖抑制剤」という用語は、細胞成長及び/または細胞の増殖を阻害または抑制する薬剤を指す。いくつかの実施形態では、治療剤は、遺伝子改変細胞または抗体である。いくつかの実施形態では、治療剤は、抗GCC CARである。いくつかの実施形態では、治療剤は、本明細書に記載されるGCC CARを発現する細胞(例えば、細胞の集団)である。
【0110】
形質転換:本明細書で使用される場合、外来DNAが宿主細胞内に導入される任意のプロセスを指す。形質転換は、当該技術分野において周知の様々な方法を使用して自然または人工条件下で行われ得る。形質転換は、原核または真核宿主細胞への外来核酸配列の挿入を目的とした任意の既知の方法に依拠し得る。いくつかの実施形態では、特定の形質転換手法は、形質転換される宿主細胞に基づいて選択され、これとしては、ウイルス感染、エレクトロポレーション、交配、トランスフェクション、リポフェクションが挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、「形質転換」細胞は、挿入されたDNAが自律複製プラスミドとして、または宿主染色体の一部としてのいずれかで複製可能という点で、安定に形質転換される。いくつかの実施形態では、形質転換細胞は、限定された期間で導入された核酸を一過性に発現する。
【0111】
治療する、または治療:本明細書で使用される場合、「治療する」または「治療」という用語は、抗GCC抗原結合剤(例えば、抗GCC抗体もしくはその断片など)を対象、例えば、患者に投与すること、または対象へと戻される、対象に由来する単離組織もしくは細胞に、例えば、適用することによって投与することとして定義される。抗GCC抗原結合剤は、単独でまたは第2薬剤と組み合わせて投与され得る。治療は、障害、障害の症状または障害に対する素因、例えば、がんを治癒する、治す、軽減する(alleviate)、緩和する、変化させる、修復する、改善する(ameliorate)、軽減する(palliate)、改善する(improve)、またはこれに影響を及ぼすことであり得る。理論に束縛されることを望むものではないが、治療は、インビトロもしくはインビボでの細胞の阻害、除去、もしくは死滅、またはさもなければ、細胞、例えば、異常細胞が障害、例えば、本明細書に記載されるような障害(例えば、がん)を媒介する能力の減少を引き起こすと考えられている。
【0112】
可変領域またはドメイン:本明細書で使用される場合、抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ「VH」及び「VL」と称され得る。これらのドメインは一般に、抗体の最も可変な部分であり(同じクラスの他の抗体と比較して)、抗原結合部位を含有する。重鎖のみの抗体は、単一重鎖可変領域を有する。
【0113】
ベクター:本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、核酸分子が連結されている別の核酸を輸送できる核酸分子を指す。ベクターの一種は「プラスミド」であり、これは追加のDNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲートされ得る。ある特定のベクターは、それらが導入されている宿主細胞内で自律複製できる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノム内に組み込まれ得、それによって宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある特定のベクターは、それらが機能的に連結されている遺伝子の発現を誘導できる。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。
【発明を実施するための形態】
【0114】
本発明は、グアニル酸シクラーゼC(GCC)と特異的に結合する新規抗原結合剤の発見及び治療方法におけるそれらの使用に基づく。本出願は、抗GCC単一ドメイン抗体(sdAb)を提供する。
【0115】
本発明は、特定の方法、及び記載される実験条件に限定されないため、そのような方法及び条件は変動する場合がある。本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるため、本明細書で使用される専門用語は、指示がない限り、特定の実施形態の記載のみを目的とし、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0116】
グアニル酸シクラーゼC
グアニル酸シクラーゼC(GCC)(STAR、ST受容体、GUC2C、及びGUCY2Cとしても知られる)は、腸液の維持、電解質恒常性及び細胞増殖において機能する膜貫通細胞表面受容体である(Carrithers et al.,Proc Natl Acad Sci USA 100:3018-3020(2003)、Mann et al.,Biochem Biophys Res Commun 239:463-466(1997)、Pitari et al.,Proc Natl Acad Sci USA 100:2695-2699(2003))、GenBankアクセッション番号NM-004963、その各々が参照によって本明細書に組み込まれる)。この機能は、グアニリンの結合によって媒介される(Wiegand et al.FEBS Lett.311:150-154(1992))。GCCはまた、E.coliに加えて、他の感染性生物によって産生されるペプチドである耐熱性エンテロトキシン(ST、例えば、NTFYCCELCCNPACAGCY(配列番号:29)のアミノ酸配列を有する)に対する受容体である(Rao,M.C.Ciba Found.Symp.112:74-93(1985)、Knoop F.C.and Owens,M.J.Pharmacol.Toxicol.Methods 28:67-72(1992))。STとGCCとの結合は、腸疾患、例えば、下痢を引き起こすシグナルカスケードを活性化させる。ヒトGCCのヌクレオチド配列(GenBankアクセッション番号NM-004963)。ヒトGCCのアミノ酸配列(GenPeptアクセッション番号NP-004954):
MKTLLLDLALWSLLFQPGWLSFSSQVSQNCHNGSYEISVLMMGNSAFAEPLKNLEDAVNEGLEIVRGRLQNAGLNVTVNATFMYSDGLIHNSGDCRSSTCEGLDLLRKISNAQRMGCVLIGPSCTYSTFQMYLDTELSYPMISAGSFGLSCDYKETLTRLMSPARKLMYFLVNFWKTNDLPFKTYSWSTSYVYKNGTETEDCFWYLNALEASVSYFSHELGFKVVLRQDKEFQDILMDHNRKSNVIIMCGGPEFLYKLKGDRAVAEDIVIILVDLFNDQYFEDNVTAPDYMKNVLVLTLSPGNSLLNSSFSRNLSPTKRDFALAYLNGILLFGHMLKIFLENGENITTPKFAHAFRNLTFEGYDGPVTLDDWGDVDSTMVLLYTSVDTKKYKVLLTYDTHVNKTYPVDMSPTFTWKNSKLPNDITGRGPQILMIAVFTLTGAVVLLLLVALLMLRKYRKDYELRQKKWSHIPPENIFPLETNETNHVSLKIDDDKRRDTIQRLRQCKYDKKRVILKDLKHNDGNFTEKQKIELNKLLQIDYYNLTKFYGTVKLDTMIFGVIEYCERGSLREVLNDTISYPDGTFMDWEFKISVLYDIAKGMSYLHSSKTEVHGRLKSTNCVVDSRMVVKITDFGCNSILPPKKDLWTAPEHLRQANISQKGDVYSYGIIAQEIILRKETFYTLSCRDRNEKIFRVENSNGMKPFRPDLFLETAEEKELEVYLLVKNCWEEDPEKRPDFKKIETTLAKIFGLFHDQKNESYMDTLIRRLQLYSRNLEHLVEERTQLYKAERDRADRLNFMLLPRLVVKSLKEKGFVEPELYEEVTIYFSDIVGFTTICKYSTPMEVVDMLNDIYKSFDHIVDHHDVYKVETIGDAYMVASGLPKRNGNRHAIDIAKMALEILSFMGTFELEHLPGLPIWIRIGVHSGPCAAGVVGIKMPRYCLFGDTVNTASRMESTGLPLRIHVSGSTIAILKRTECQFLYEVRGETYLKGRGNETTYWLTGMKDQKFNLPTPPTVENQQRLQAEFSDMIANSLQKRQAAGIRSQKPRRVASYKKGTLEYLQLNTTDKESTYF(配列番号:5)
【0117】
GCCタンパク質は一般に、認められたドメインをいくつか有し、その各々がGCC分子の機能に寄与する。GCC機能としては、タンパク質を細胞表面に誘導するためのシグナル伝達、細胞外リガンド結合、チロシンキナーゼ活性、及びグアニル酸シクラーゼ触媒活性が挙げられる。正常なヒト組織では、GCCは、粘膜細胞で、例えば、小腸、大腸及び直腸の内側を覆う頂端刷子縁膜で発現される(Carrithers et al.,Dis Colon Rectum 39:171-181(1996))。GCC発現は、腸上皮細胞の腫瘍性形質転換時に維持され、全ての原発性及び転移性結腸直腸腫瘍における発現を伴う(Carrithers et al.,Dis Colon Rectum 39:171-181(1996)、Buc et al.Eur J Cancer 41:1618-1627(2005)、Carrithers et al.,Gastroenterology 107:1653-1661(1994))。胃、食道及び食道胃接合部からの腫瘍性細胞もまた、GCCを発現する(例えば、米国特許第6,767,704号、Debruyne et al.Gastroenterology 130:1191-1206(2006)を参照のこと)。例えば、胃腸起源のがん(例えば、結腸癌、胃癌、または食道癌)の組織特異的発現及びがんとの関連は、本疾患の診断マーカーとしてGCCを使用するために利用され得る(Carrithers et al.,Dis Colon Rectum 39:171-181(1996)、Buc et al.Eur J Cancer 41:1618-1627(2005))。
【0118】
細胞表面タンパク質として、GCCは、抗体またはリガンドなどの受容体結合タンパク質の治療標的としても機能し得る。正常な腸組織では、GCCは、管腔環境と血管コンパートメントとの間に不浸透性バリアを形成する上皮細胞密着結合の頂端側で発現される(Almenoff et al.,Mol Microbiol 8:865-873)、Guarino et al.,Dig Dis Sci 32:1017-1026(1987))。そのため、GCC結合タンパク質治療薬の全身静脈内投与は、浸潤性または転移性結腸癌細胞、腸外または転移性結腸腫瘍、食道腫瘍または胃腫瘍、食道胃接合部の腺癌を含む、胃腸系の腫瘍性細胞に到達する一方で、腸GCC受容体に対して最小効果を有することになる。さらに、GCCは、リガンド結合時に受容体媒介エンドサイトーシスによって内在化する(Buc et al.Eur J Cancer 41:1618-1627(2005)、Urbanski et al.,Biochem Biophys Acta 1245:29-36(1995))。
【0119】
GCCの細胞外ドメインに対して生じたポリクローナル抗体(Nandi et al.Protein Expr.Purif.8:151-159(1996))は、ヒト及びラットGCCに対するSTペプチド結合を阻害し、ヒトGCCによるST媒介cGMP産生を阻害できた。
【0120】
GCCは、結腸癌を含む、がんに関与するタンパク質として特徴付けられている。Carrithers et al.,Dis Colon Rectum 39:171-181(1996)、Buc et al.Eur J Cancer 41:1618-1627(2005)、Carrithers et al.,Gastroenterology 107:1653-1661(1994)、Urbanski et al.,Biochem Biophys Acta 1245:29-36(1995)も参照のこと。
【0121】
本明細書に記載されるGCCを対象とする抗原結合分子治療薬は、GCC発現がん細胞を阻害するために使用され得る。本発明の抗GCC抗原結合分子は、ヒトGCCと結合し得る。いくつかの実施形態では、本発明の抗GCC抗原結合分子は、リガンド、例えば、グアニリンまたは耐熱性エンテロトキシンとGCCとの結合を阻害し得る。
【0122】
抗原結合分子
本発明は、抗GCC抗原結合分子に関する。いくつかの実施形態では、本発明の抗GCC分子は、それが結合するGCC発現細胞上のGCCへの結合時に細胞反応を引き起こす。いくつかの実施形態では、本発明の抗GCC抗原結合剤は、GCCへのリガンド結合をブロックし得る。
【0123】
天然に存在する哺乳動物抗体の構造単位は、四量体に代表される。各四量体は、2つのポリペプチド鎖対で構成され、各対は、1本の「軽」鎖(約25kDa)及び1本の「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識に関与する約100~110以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を定義する。ヒト軽鎖は、カッパ軽鎖及びラムダ軽鎖に分類され得る。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンに分類され得、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEと定義する。軽鎖及び重鎖内において、可変領域及び定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって結合され、重鎖は約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。概して、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照のこと。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。抗GCC抗体分子の好ましいアイソタイプは、IgG免疫グロブリンであり、これは異なるガンマ重鎖を有する4つのサブクラス、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4に分類され得る。大半の治療用抗体が、IgG1型のヒト、キメラ、またはヒト化抗体である。特定の実施形態では、抗GCC抗体分子は、IgG1アイソタイプを有する。
【0124】
各重鎖及び軽鎖対の可変領域は、抗原結合部位を形成する。したがって、インタクトなIgG抗体は、同じである2つの結合部位を有する。しかしながら、二機能性または二重特異性抗体は、2つの異なる重鎖/軽鎖対を有し、2つの異なる結合部位をもたらす人工的なハイブリッド構築物である。
【0125】
鎖は全て、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって結合された、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を示す。各対の2本鎖のCDRは、フレームワーク領域によって整列され、特異的エピトープとの結合が可能となる。N末端からC末端まで、軽鎖及び重鎖の両方とも、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987及び1991))、またはChothia&Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987)、Chothia et al.Nature 342:878-883(1989)の定義に従う。本明細書で使用される場合、CDRは、重鎖(HCDR1、HCDR2、HCDR3)及び軽鎖(LCDR1、LCDR2、LCDR3)の各々についてKabatに従って言及される。
【0126】
抗GCC抗体分子は、本明細書に記載される抗体の全て、またはCDRもしくは重鎖の抗原結合サブセットを含み得る。可変領域及びCDRを含む、本明細書に記載される抗GCC抗原結合剤のアミノ酸配列は、表1~3に見出され得る。
【0127】
したがって、一実施形態では、抗体分子は、以下の一方または両方を含む:
(a)ヒトハイブリドーマに由来する抗体などのヒト抗体またはマウス抗体の、1つ、2つ、3つ、または抗原結合数の軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2及び/またはLCDR3)(例えば、US20180355062A1に記載される抗GCC抗体の軽鎖、これはその全体が参照によって組み込まれる)。実施形態では、CDR(複数可)は、以下のようなLCDR1~3のうち1つ以上または全てのアミノ酸配列を含み得る:LCDR1、もしくは改変LCDR1(1~7つのアミノ酸が保存的に置換されている)、LCDR2、もしくは改変LCDR2(1つもしくは2つのアミノ酸が保存的に置換されている)、またはLCDR3、もしくは改変LCDR3(1つもしくは2つのアミノ酸が保存的に置換されている)、ならびに
(b)本明細書に記載されるような、1つ、2つ、3つ、または抗原結合数の重鎖CDR(HCDR1、HCDR2及び/またはHCDR3)。実施形態では、CDR(複数可)は、以下のようなHCDR1~3のうち1つ以上または全てのアミノ酸配列を含み得る:HCDR1、もしくは改変HCDR1(1つもしくは2つのアミノ酸が保存的に置換されている)、HCDR2、もしくは改変HCDR2(1~4つのアミノ酸が保存的に置換されている)、またはHCDR3、もしくは改変HCDR3(1つもしくは2つのアミノ酸が保存的に置換されている)。
【0128】
いくつかの実施形態では、本発明の抗GCC抗体分子は、GCCを発現する細胞、例えば、腫瘍細胞に抗体依存性細胞傷害(ADCC)を引き起こし得る。IgG1及びIgG3アイソタイプを有する抗体は、Fc受容体と結合するそれらの能力ゆえに、抗体依存性細胞傷害能においてエフェクター機能を誘発するのに有用である。IgG2及びIgG4アイソタイプを有する抗体は、Fc受容体と結合するそれらの能力が低いため、ADCC反応を最小限に抑えるのに有用である。関連する実施形態では、Fc領域における置換または抗体のグリコシル化組成の変化は、例えば、改変された真核細胞株における増殖によって、抗GCC抗体が結合する細胞をFc受容体が認識して結合し、及び/またはその細胞傷害を媒介する能力を増強するために行われ得る(例えば、米国特許第7,317,091号、同第5,624,821号及びWO00/42072を含む公報、Shields,et al.J.Biol.Chem.276:6591-6604(2001)、Lazar et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.103:4005-4010(2006)、Satoh et al.Expert Opin Biol.Ther.6:1161-1173(2006)を参照のこと)。ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片(例えば、ヒト起源の抗体、ヒト抗体)は、機能(例えば、エフェクター機能)を変化または調整するアミノ酸置換または置換えを含み得る。例えば、ヒト起源の定常領域(例えば、γ1定常領域、γ2定常領域)は、補体活性化及び/またはFc受容体結合を低下させるために設計され得る。(例えば、米国特許第5,648,260号(Winter et al.)、米国特許第5,624,821号(Winter et al.)及び米国特許第5,834,597号(Tso et al.)を参照し、その教示全体が参照によって本明細書に組み込まれる。)好ましくは、そのようなアミノ酸置換または置換えを含有するヒト起源の定常領域のアミノ酸配列は、未変化のヒト起源定常領域のアミノ酸配列と全長にわたって少なくとも約95%同一であり、より好ましくは、未変化のヒト起源定常領域のアミノ酸配列と全長にわたって少なくとも約99%同一である。追加の抗GCC抗原結合分子は、米国特許第8,785,600号(Nam et al.)にさらに記載され、その教示全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0129】
さらに別の実施形態では、エフェクター機能はまた、抗体のグリコシル化パターンを調節することによって変化され得る。変化とは、抗体に見られる1つ以上の炭水化物部分の欠失、及び/または抗体中に存在しない1つ以上のグリコシル化部位の付加を意味する。例えば、抗体のFc領域に結合しているフコースを欠く成熟炭水化物構造を有する、ADCC活性が増強した抗体が、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta)に記載されている。米国特許出願公開第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)も参照のこと。Glycofiは、特定のグリコフォームの抗体を産生できる酵母細胞株も開発した。
【0130】
さらにまたは代わりに、変化したグリコシル化型を有する抗体、例えば、フコシル残基の量が減少した低フコシル化抗体または二分化GlcNac構造が増加した抗体などが作製され得る。そのような変化したグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増加させることが実証されている。そのような炭水化物修飾は、例えば、変化したグリコシル化機構を有する宿主細胞で抗体を発現させることによって達成され得る。変化したグリコシル化機構を有する細胞は当該技術分野で記載されていて、本発明の組換え抗体を発現するように操作された宿主細胞として使用されることによって、変化したグリコシル化を有する抗体を産生し得る。例えば、Hang et al.によるEP1,176,195は、機能的に破壊されたFUT8遺伝子を有する細胞株について記載し、これはフコシルトランスフェラーゼをコードするため、そのような細胞株において発現される抗体が低フコシル化を示す。PrestaによるPCT公開WO03/035835は、Asn(297)結合炭水化物にフコースを結合させる能力が低下し、さらにその宿主細胞で発現される抗体の低フコシル化をもたらすバリアントCHO細胞株のLec13細胞について記載している(Shields,R.L.et al.,2002 J.Biol.Chem.277:26733-26740も参照のこと)。Umana et al.によるPCT公開WO99/54342は、操作細胞株で発現される抗体が、抗体のADCC活性の増加をもらす二分化GlcNac構造の増加を示すように、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)-NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作された細胞株について記載している(Umana et al.,1999 Nat.Biotech.17:176-180も参照のこと)。
【0131】
ヒト化抗体はまた、CDR移植アプローチを使用して作製され得る。そのようなヒト化抗体の生成技術は、当該技術分野において既知である。概して、ヒト化抗体は、GCCに結合する抗体の可変重鎖配列及び可変軽鎖配列をコードする核酸配列を得て、可変重鎖配列及び可変軽鎖配列中の相補性決定領域または「CDR」を同定し、CDR核酸配列をヒトフレームワーク核酸配列上に移植することによって産生される。(例えば、米国特許第4,816,567号及び同第5,225,539号を参照のこと)。CDR及びフレームワーク残基の位置が決定され得る(Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242、及びChothia,C.et al.J.Mol.Biol.196:901-917(1987)を参照のこと)。
【0132】
本明細書に記載される抗GCC抗体分子は、表5及び6に列挙されるCDRアミノ酸配列及びCDRをコードする核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、表5及び6の配列は、本明細書に記載される治療方法または診断方法に使用するために、GCCを認識する分子中に組み込まれ得る。選択されるヒトフレームワークは、インビボ投与に適したもの、すなわち、免疫原性を示さないものを意味する。例えば、そのような決定は、そのような抗体のインビボ使用及びアミノ酸類似性の研究を含む以前の経験によって行われ得る。好適なフレームワーク領域は、ドナー抗体、例えば、抗GCC抗体分子(例えば、3G1)の等価部分(例えば、フレームワーク領域)のアミノ酸配列内において、フレームワーク領域の長さにわたって少なくとも約65%のアミノ酸配列同一性、好ましくは少なくとも約70%、80%、90%または95%のアミノ酸配列同一性を有するヒト起源の抗体から選択され得る。アミノ酸配列同一性は、CLUSTAL Wなどの好適なアミノ酸配列アラインメントアルゴリズムを使用し、デフォルトパラメータを使用して決定され得る。(Thompson J.D.et al.,Nucleic Acids Res.22:4673-4680(1994)。)
【0133】
ヒト化されているクローン化抗体のCDR及びFRが同定されると、CDRをコードするアミノ酸配列が同定され、対応する核酸配列が、選択されたヒトFR上に移植される。これは、既知のプライマー及びリンカーを使用して行われ得、その選択は当該技術分野において既知である。特定のヒト抗体に関する全てのCDRが、非ヒトCDRの少なくとも一部で置き換えられ得るか、またはCDRの一部のみが非ヒトCDRで置き換えられ得る。ヒト化抗体と所定の抗原との結合に必要なCDRの数を置き換えることだけが必要である。CDRが、選択されたヒトFR上に移植された後、得られた「ヒト化」可変重鎖及び可変軽鎖配列が発現され、GCCに結合するヒト化Fvまたはヒト化抗体を産生する。好ましくは、CDR移植(例えば、ヒト化)抗体は、ドナー抗体の親和性と同様の、実質的に同じ、またはより良好な親和性でGCCタンパク質と結合する。通常、ヒト化可変重鎖及び軽鎖配列は、ヒト定常ドメイン配列との融合タンパク質として発現されるため、GCCに結合するインタクトな抗体が得られる。しかしながら、定常配列を含有しないヒト化Fv抗体が産生され得る。
【0134】
本明細書に記載されるような抗体またはその断片、例えば、ヒト化抗体もまた本発明の範囲内であり、その場合に特定のアミノ酸が、CDRまたはフレームワーク領域内で置換、欠失または付加されている。特に、ヒト化抗体は、抗原への結合を改善するなどのために、フレームワーク領域内にアミノ酸置換を有し得る。例えば、ヒト化免疫グロブリン鎖の選択された少数のアクセプターフレームワーク残基が、対応するドナーアミノ酸で置き換えられ得る。置換の位置としては、CDRに隣接するか、またはCDRと相互作用できるアミノ酸残基が挙げられる(例えば、米国特許第5,585,089号または同第5,859,205号を参照のこと)。アクセプターフレームワークは、成熟ヒト抗体フレームワーク配列またはコンセンサス配列であり得る。本明細書で使用される場合、「コンセンサス配列」という用語は、最も頻繁に見られる配列、または関連ファミリーメンバー間の領域内における配列の各位置で最も一般的な残基から考案された配列を指す。ヒト可変領域の異なるサブグループのコンセンサス配列を含む、多数のヒト抗体コンセンサス配列が利用可能である(Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,U.S.Government Printing Office(1991)を参照のこと)。Kabatデータベース及びそのアプリケーションは、例えば、米国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)、Bethesda,Md.のIgBLASTによってオンラインで自由に入手可能である(Johnson,G.and Wu,T.T.,Nucleic Acids Research 29:205-206(2001)も参照のこと)。
【0135】
ある特定の実施形態では、GCC抗体分子は、ヒト抗GCC IgG1抗体である。そのような抗体はGCC分子に対して所望の結合を有するため、そのような抗体のいずれか1つが容易にアイソタイプスイッチし、例えば、ヒトIgG4アイソタイプを生成し得るが、同じ可変領域(抗体の特異性及び親和性をある程度定義する)を依然として有している。したがって、上で述べられるような所望の「構造」属性を満たす抗体候補が生成される場合、それらは一般に、アイソタイプスイッチングによって所望される少なくともある特定の追加の「機能」属性を有し得る。
【0136】
いくつかの態様では、抗体断片を含む本発明のCAR組成物の一部は、標的抗原に対する高い親和性及び他の好ましい生物学的特性を保持しながらヒト化または最適化される。本発明の一態様によれば、ヒト化抗体及び抗体断片は、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用した親配列及び様々な概念上のヒト化産物の分析プロセスによって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは一般に入手可能であり、当業者には周知である。選択された候補免疫グロブリン配列の推定される三次元立体構造を例示及び表示するコンピュータプログラムが、利用可能である。これらの表示の調査によって、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性の高い役割の分析、例えば、候補免疫グロブリンが標的抗原と結合する能力に影響を与える残基の分析が可能となる。
【0137】
このように、FR残基は、所望の抗体または抗体断片の特徴、例えば、標的抗原に対する高い親和性などが達成されるように、レシピエント及び移入配列から選択されて組み合わされ得る。概して、CDR残基は、抗原結合への影響に直接的に、かつ最も実質的に関与する。
【0138】
ヒト化または最適化抗体または抗体断片は、元の抗体と同様の抗原特異性、例えば、本発明では、ヒトGCCと結合する能力を保持する場合がある。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体または抗体断片は、ヒトGCCへの結合の親和性及び/または特異性が改善している場合がある。
【0139】
いくつかの実施形態では、抗GCC抗原結合剤は、表1に提供されるものに従って1つ以上のCDR配列を含む。いくつかの実施形態では、抗GCC抗原結合剤は、表1に提供されるCDR1を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗GCC抗原結合剤は、表1に提供されるCDR2を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗GCC抗原結合剤は、表1に提供されるCDR3を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗GCC抗原結合剤は、表1に提供されるCDR1、CDR2、及びCDR3を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗GCC抗原結合剤は、表1に提供されるCDR1、CDR2、及びCDR3を有する重鎖可変領域からなる。いくつかの実施形態では、抗GCC抗原結合剤は、表1に提供される1つ以上のCDR配列を含み、CDRは1つ、2つ、または3つのアミノ酸置換を含む。一実施形態では、置換は、結合剤とその標的との結合に悪影響を及ぼさない。
【0140】
【表1】
【0141】
インタクトな抗体ではない抗GCC抗体もまた、本発明では有用である。いくつかの実施形態では、抗GCC抗原結合剤は、表1に提供されるCDR1、CDR2、及びCDR3を有する重鎖可変領域を含む単一ドメイン抗体である。そのような抗体は、上に記載される抗体のいずれかに由来する場合がある。この種類の有用な抗体分子としては、(i)Fab断片、すなわち、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片、(ii)F(ab’)断片、すなわち、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を含む二価断片、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,Nature 341:544-546(1989))、(vii)VHHドメインからなる単一ドメイン機能的重鎖抗体(ナノボディとして知られる)(例えば、Cortez-Retamozo,et al.,Cancer Res.64:2853-2857(2004)、及び当該文献で引用された参考文献を参照のこと)、ならびに(vii)抗原結合断片を提供するのに十分なフレームワークを伴う単離CDR、例えば、1つ以上の単離CDRが挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは組換え方法を使用して、VL及びVH領域が対形成して一価分子(一本鎖Fv(scFv)として知られる)を形成する単一タンパク質鎖としてそれらを作製できる合成リンカーによって結合され得、例えば、Bird et al.Science 242:423-426(1988)、及びHuston et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883(1988)を参照のこと。そのような一本鎖抗体もまた、抗体の「抗原結合断片」という用語内に包含されることを意図する。これらの抗体断片は、当業者に既知の従来技術を使用して得られ、断片は、インタクトな抗体と同じ手法で有用性についてスクリーニングされる。Fv、F(ab’)及びFabなどの抗体断片は、インタクトなタンパク質の切断によって、例えば、プロテアーゼまたは化学的切断によって調製され得る。
【0142】
単一ドメイン抗体
単一ドメイン抗体(sdAb)は、単一モノマー抗体可変ドメインを有することによって従来の4鎖抗体とは異なる。例えば、ラクダ科動物及びサメは、重鎖のみの抗体(HcAb)という名称のsdAbを産生し、これは軽鎖を天然に欠いている。重鎖のみのラクダ抗体の各アームにおける抗原結合断片は、単一重鎖可変ドメイン(VHH)を有し、これは軽鎖の支援なしに抗原に対して高い親和性を有し得る。ラクダVHHは、およそ15kDの分子量を有する最小の機能的抗原結合断片として知られる。いくつかの実施形態では、抗原結合剤は、単一ヒト重鎖可変ドメイン(VH)抗体である。そのような結合分子は、Humabody(登録商標)とも称され、本明細書では交換可能に使用されてよい。Humabody(登録商標)は、Crescendo Biologics Ltd.の登録商標である。
【0143】
本出願の一態様は、ヒトGCCなどのGCCに特異的に結合する単離された単一ドメイン抗体(本明細書では「抗GCC sdAb」と称される)を提供する。いくつかの実施形態では、抗GCC sdAbは、GCC活性を調節する。いくつかの実施形態では、抗GCC sdAbは、アンタゴニスト抗体である。本明細書に記載される抗GCC sdAbのいずれか1つに由来する抗原結合断片、及び本明細書に記載される抗GCC sdAbのいずれか1つを含む抗原結合タンパク質が、さらに提供される。いくつかの実施形態では、抗GCC sdAbは、表1に提供される1つ、2つ及び/または3つのCDR配列を含む。例示的な抗GCC sdAbは、表2及び3に列挙される。いくつかの実施形態では、抗GCC sdAbは、表2または表3に提供される可変重鎖ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗GCC sdAbは、表2または表3に提供される可変重鎖ドメインからなる。
【0144】
いくつかの実施形態では、CDR配列の一部または全て、すなわち、VHドメインまたは重鎖は、別の抗原結合剤、例えば、CDR移植、ヒト化、またはキメラ抗体分子に使用され得る。実施形態は、細胞表面GCCへの結合を可能にするのに十分なCDR、例えば、上述した重鎖可変領域の1つに由来する3つ全てのCDRを含む抗体分子を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、CDR、例えば、全てのHCDRは、ヒトまたはヒト由来のフレームワーク領域(複数可)内に埋め込まれている。ヒトフレームワーク領域の例としては、ヒト生殖細胞系フレームワーク配列、親和性成熟した(インビボもしくはインビトロのいずれか)ヒト生殖細胞系配列、または合成ヒト配列、例えば、コンセンサス配列が挙げられる。一実施形態では、重鎖フレームワークは、IgG1またはIgG2フレームワークである。
【0146】
いくつかの実施形態では、本発明の抗GCC抗原結合剤は、表2に提供される重鎖可変領域アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗GCC抗原結合剤は、単一ドメイン重鎖のみの抗体(例えば、免疫グロブリン軽鎖を含まない抗原結合剤)である。
【0147】
【表2】
【0148】
いくつかの実施形態では、本発明の抗GCC抗原結合剤は、表2に提供されるVH配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である重鎖可変領域アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗GCC抗原結合剤は、表2に示されるような重鎖可変領域アミノ酸配列を含み、その配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸置換を含む。一実施形態では、置換は、CDR領域の外側にある。いくつかの実施形態では、VH抗GCC抗原結合剤(例えば、単一ドメイン抗体)は、リーダー配列を含む。いくつかの実施形態では、VH抗GCC抗原結合剤は、MKHLWFFLLLVAAPRWVLS(配列番号:6)、MELGLSWVFLVAILEGVQC(配列番号:7)またはMEFGLSWVFLVAIIKGVQC(配列番号:2)を含むリーダー配列を含む。いくつかの実施形態では、VH抗GCC抗原結合剤は、MALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号:4)を含むリーダー配列を含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、本発明の抗GCC抗原結合剤は、表3に提供されるVH配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である重鎖可変領域アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗GCC抗原結合剤は、表3に示されるような重鎖可変領域アミノ酸配列を含み、その配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸置換を含む。一実施形態では、置換は、CDR領域の外側にある。いくつかの実施形態では、本発明の抗GCC抗原結合剤は、表3に提供されるVH配列と同一である重鎖可変領域アミノ酸配列を含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、VH抗GCC抗原結合剤(例えば、単一ドメイン抗体)は、表3において少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であるとするリーダー配列を含む。いくつかの実施形態では、VH抗GCC抗原結合剤(例えば、単一ドメイン抗体)は、表3に提供されるリーダー配列を含む。
【0151】
【表3-1】
【0152】
【表3-2】
【0153】
インビボ治療または診断用途のための抗体断片は、それらの血清半減期を改善する修飾から恩恵を得られ得る。抗体のインビボ血清半減期の増加を意図する好適な有機部分としては、親水性ポリマー基(例えば、直鎖もしくは分岐ポリマー(例えば、ポリアルカングリコール、例えば、ポリエチレングリコール、モノメトキシポリエチレングリコールなど)、炭水化物(例えば、デキストラン、セルロース、多糖類など)、親水性アミノ酸のポリマー(例えば、ポリリジン、ポリアスパラギン酸など)、ポリアルカンオキシド及びポリビニルピロリドン)、脂肪酸基(例えば、モノカルボン酸もしくはジカルボン酸)、脂肪酸エステル基、脂質基(例えば、ジアシルグリセロール基、スフィンゴ脂質基(例えば、セラミジル))またはリン脂質基(例えば、ホスファチジルエタノールアミン基)から選択される1つ、2つまたはそれを超える直鎖または分岐鎖部分が挙げられ得る。好ましくは、有機部分は、有機部分が、非複合化抗体部分と比較して、得られた免疫複合体の機能を損なわない(例えば、抗原結合親和性を低下させない)所定の部位に結合される。有機部分は、約500Da~約50,000Da、好ましくは約2000、5000、10,000または20,000Daの分子量を有し得る。ポリペプチド、例えば、抗体を有機部分で修飾するための例及び方法は、例えば、米国特許第4,179,337号及び同第5,612,460号、PCT公開第WO95/06058号及び同第WO00/26256号、ならびに米国特許出願公開第20030026805号に見出され得る。
【0154】
キメラ抗原受容体
キメラ抗原受容体(CAR)は、3つの必須ユニット:(1)細胞外抗原結合モチーフ、(2)連結/膜貫通モチーフ、及び(3)細胞内T細胞シグナル伝達モチーフを含むハイブリッド分子である(Long A H,Haso W M,Orentas R J.Lessons learned from a highly-active CD22-specific chimeric antigen receptor.Oncoimmunology.2013;2(4):e23621)。本明細書に開示されるGCC特異的CARの様々な実施形態では、一般的スキームが図1に示される。いくつかの実施形態では、抗GCC CARは、N末端からC末端まで、シグナルまたはリーダーペプチド、抗原結合ドメイン、膜貫通及び/またはヒンジドメイン、共刺激ドメイン、ならびに細胞内ドメインを含む。
【0155】
本発明は、抗GCC結合ドメイン(例えば、本明細書に記載されるようなGCC結合ドメイン)、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むCAR(例えば、CARポリペプチド)を提供し、抗GCC結合ドメインは、表1または8に列挙される任意の抗GCC重鎖結合ドメインアミノ酸配列の重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、及び重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)を含む。いくつかの実施形態では、抗GCC CARは、N末端からC末端まで、シグナルまたはリーダーペプチド、抗GCC VH、CD28膜貫通及びヒンジ、CD28共刺激ドメイン、ならびにCD3ゼータ細胞内ドメインを含む。
【0156】
抗原結合ドメインは、抗原に結合する任意のタンパク質、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ならびにその機能的断片、例えば、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)及びラクダ科動物に由来するナノボディの可変ドメイン(VHH)などの単一ドメイン抗体を含むが、これらに限定されない機能的断片、ならびに抗原結合ドメインとして機能する当該技術分野において既知の別の足場、例えば、組換えフィブロネクチンドメインなどを含むが、これらに限定されないタンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメイン
【0157】
CARの抗原結合モチーフは一般に、一本鎖断片可変(ScFv)、すなわち、免疫グロブリン(Ig)分子の最小結合ドメインまたは単一ドメイン抗体の後に形成される(例えば、WO2018/028647A1)。受容体リガンド(すなわち、IL-13が腫瘍発現IL-13受容体と結合するように設計されている)、インタクトな免疫受容体、ライブラリー由来のペプチド、及び自然免疫系エフェクター分子(NKG2Dなど)などの代替抗原結合モチーフも設計されている。
【0158】
CARの連結モチーフは、IgGの定常ドメインなどの比較的安定した構造ドメインであり得るか、または拡張した柔軟なリンカーとなるように設計され得る。いくつかの実施形態では、抗GCC結合ドメイン(例えば、表1または表8に提供される配列を含むポリペプチド)は、リンカー、例えば、本明細書に記載されるリンカーを介して膜貫通ドメインに結合される。いくつかの実施形態では、抗GCC CARは(Gly4-Ser)nリンカーを含み、式中、nは、1、2、3、4、5、または6である(配列番号:36)。
【0159】
IgG定常ドメインに由来するものなどの構造モチーフは、T細胞原形質膜表面から離れるようにScFv結合ドメインを拡張するために使用され得る。これは、結合ドメインが腫瘍細胞表面膜に特に近接している一部の腫瘍標的にとって重要な場合がある(ジシアロガングリオシドGD2に対するものなど、Orentas et al.、未発表の観察結果)。今日まで、CARに使用されるシグナル伝達モチーフが常にCD3-ζ鎖を含むのは、そのコアモチーフがT細胞活性化の重要なシグナルだからである。最初に報告された第2世代CARは、CD28シグナル伝達ドメイン及びCD28膜貫通配列を特徴としていた。このモチーフは、CD137(4-1BB)シグナル伝達モチーフを含有する第3世代CARでも同様に使用された(Zhao Y et al.J Immunol.2009;183(9):5563-74)。新規技術の出現によって、抗CD3及び抗CD28抗体に連結したビーズによるT細胞の活性化、ならびにCD28からの古典的な「シグナル2」の存在は、もはやCAR自体によってコードされる必要がなくなった。ビーズ活性化を使用した場合、インビトロアッセイでは第3世代ベクターが第2世代ベクターよりも優れていなかったことが判明し、それらは白血病のマウスモデルでは第2世代ベクターよりも明らかな利益はなかった(Haso W,Lee D W,Shah N N,Stetler-Stevenson M,Yuan C M,Pastan I H,Dimitrov D S,Morgan R A,FitzGerald D J,Barrett D M,Wayne A S,Mackall C L,Orentas R J.Anti-CD22-chimeric antigen receptors targeting B cell precursor acute lymphoblastic leukemia,Blood.2013;121(7):1165-74、Kochenderfer J N et al.Blood.2012;119(12):2709-20)。これは、第2世代CD28/CD3-ζ(Lee D W et al.American Society of Hematology Annual Meeting.New Orleans,La.;Dec.7-10,2013)及びCD137/CD3-ζシグナル伝達型(Porter D L et al.N Engl J Med.2011;365(8):725-33)におけるCD19特異的CARの臨床的成功によって裏付けられている。CD137に加えて、OX40などの他の腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバーも、CAR形質導入T細胞において重要な持続シグナルを提供できる(Yvon E et al.Clin Cancer Res.2009;15(18):5852-60)。同様に重要なのは、CAR T細胞集団が培養された培養条件である。
【0160】
膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインに関して、様々な実施形態では、CARは、CARの細胞外ドメイン(例えば、抗GCC抗原結合ドメイン)に結合される膜貫通ドメインを含むように設計され得る。膜貫通ドメインは、膜貫通領域に隣接する1つ以上の追加のアミノ酸、例えば、膜貫通が由来したタンパク質の細胞外領域と関連する1つ以上のアミノ酸(例えば、細胞外領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、最大15アミノ酸)及び/または膜貫通タンパク質が由来するタンパク質の細胞内領域と関連する1つ以上の追加のアミノ酸(例えば、細胞内領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、最大15アミノ酸)を含み得る。
【0161】
一態様では、CARの他のドメインのうち1つと関連する膜貫通ドメインが使用される。いくつかの場合では、膜貫通ドメインは、例えば、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるため、そのようなドメインと、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインとの結合を避けるためにアミノ酸置換によって選択または改変され得る。一態様では、膜貫通ドメインは、CAR発現細胞、例えば、CART細胞の表面上で別のCARとホモ二量体化できる。別の態様では、同じCAR発現細胞、例えば、CART内に存在する天然結合パートナーの結合ドメインとの相互作用を最小限に抑えるために、膜貫通ドメインのアミノ酸配列が改変または置換されてよい。
【0162】
本明細書に記載されるように、CARは膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインに関して、CARは、CARの細胞外GCC抗原結合ドメインに融合される1つ以上の膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインは、天然源に、または合成源のいずれかに由来する場合がある。供給源が天然の場合、ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来する場合がある。
【0163】
あるいは、膜貫通ドメインは合成であってよく、その場合には、それは主にロイシン及びバリンなどの疎水性残基を含むことになる。いくつかの実施形態では、フェニルアラニン、トリプトファン及びバリンのトリプレットが、合成膜貫通ドメインの各末端に見出される。任意に、好ましくは2~10アミノ酸長の短いオリゴまたはポリペプチドリンカーが、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間に結合を形成する場合がある。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン-セリンダブレットまたはトリプルアラニンリンカーである。
【0164】
いくつかの実施形態では、CARのドメインのうち1つと天然に会合する膜貫通ドメインが、上記の膜貫通ドメインに加えて使用される。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるため、そのようなドメインと、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインとの結合を避けるためにアミノ酸置換によって選択され得る。
【0165】
細胞内ドメイン
CARの細胞質ドメインまたはさもなければ細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが配置されている免疫細胞の正常なエフェクター機能のうち少なくとも1つの活性化に関与する。「エフェクター機能」という用語は、細胞の特化した機能を指す。例えば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性またはサイトカインの分泌を含むヘルパー活性である場合がある。したがって、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞に特化した機能を実施させるタンパク質の一部を指す。通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体が用いられ得るが、多くの場合に鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分が使用される限り、そのような切断部分は、それがエフェクター機能シグナルを伝達する限り、インタクトな鎖の代わりに使用されてよい。したがって、細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断部分を含むことを意味する。
【0166】
CARに使用するための細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、抗原受容体の結合後、シグナル伝達を開始するように協働して作用するT細胞受容体(TCR)及び共受容体の細胞質配列に加えて、同じ機能的能力を有する、それらの配列及び任意の合成配列の任意の誘導体またはバリアントが挙げられる。TCRのみによって生成されるシグナルは、T細胞の完全な活性化には不十分であり、二次または共刺激シグナルも必要である。したがって、T細胞活性化は、2つの異なるクラスの細胞質シグナル伝達配列:すなわち、TCRによって抗原依存性一次活性化を開始する配列(一次細胞質シグナル伝達配列)及び抗原非依存的手法で作用し、二次または共刺激シグナルを提供する配列(二次細胞質シグナル伝達配列)によって媒介されると言われ得る。
【0167】
一次細胞質シグナル伝達配列は、刺激方法、または阻害方法のいずれかでTCR複合体の一次活性化を制御する。刺激手法で作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフまたはITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含有する場合がある。いくつかの実施形態では、CAR内のITAM含有ドメインは、内因性TCR複合体とは無関係に一次TCRのシグナル伝達を再現する。一態様では、一次シグナルは、例えば、TCR/CD3複合体とペプチドを負荷したMHC分子との結合によって開始され、増殖、活性化、分化などを含むが、これらに限定されないT細胞応答の媒介をもたらす。刺激手法で作用する一次細胞質シグナル伝達配列(「一次シグナル伝達ドメイン」とも称される)は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフまたはITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含有する場合がある。
【0168】
一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。例示的な一次細胞内シグナル伝達ドメインとしては、一次刺激、または抗原依存性シミュレーションに関与する分子に由来するものが挙げられる。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激細胞内ドメインを含み得る。例示的な共刺激細胞内シグナル伝達ドメインとしては、共刺激シグナル、または抗原非依存性刺激に関与する分子に由来するものが挙げられる。例えば、CARTの場合、一次細胞内シグナル伝達ドメインはT細胞受容体の細胞質配列を含み得、共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは共受容体または共刺激分子からの細胞質配列を含み得る。
【0169】
一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、改変ITAMドメイン、例えば、天然ITAMドメインと比較した場合に活性が変化した(例えば、増加または減少した)変異型ITAMドメインを含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、改変ITAM含有一次細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、最適化及び/または切断型ITAM含有一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれを超えるITAMモチーフを含む。
【0170】
置換及びバリアント
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、抗体または抗体断片、例えば、sdAbの結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードする核酸配列に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。そのような修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内における残基からの欠失、及び/または残基への挿入、及び/または残基の置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換の任意の組合せが、最終構築物に到達するために行われ得るが、最終構築物が所望の特性、例えば、抗原結合を有することを条件とする。
【0171】
a)置換、挿入、及び欠失バリアント
いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換変異誘発の目的の部位としては、HVR及びFRが挙げられる。アミノ酸側鎖のクラスに関してさらに以下に記載される。アミノ酸置換が目的の抗体内に導入され、その生成物は所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の減少、またはADCCもしくはCDCの改善についてスクリーニングされ得る。
【0172】
アミノ酸は、共通の側鎖特性によってグループ分けされてよい:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性:Asp、Glu、
(4)塩基性:His、Lys、Arg、
(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro、
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0173】
非保存的置換は、これらのクラスのうち1つのメンバーを別のクラスに交換することを伴うことになる。
【0174】
いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、ヒト化されている。非ヒト抗体がヒト化される場合、抗体の特定の配列または領域が改変されて、ヒトで天然に産生される抗体またはその断片との類似性が高まる。一態様では、抗原結合ドメインは、ヒト化されている。ヒト化抗体(または抗原結合断片)は、当該技術分野における様々な既知の技術を使用して作製され得、例えば、CDR移植(例えば、欧州特許第EP239,400号、国際公開第WO91/09967号、ならびに米国特許第5,225,539号、同第5,530,101号、及び同第5,585,089号を参照のこと(その各々の全体が参照によって本明細書に組み込まれる))、ベニアリングまたは表面再構成(例えば、欧州特許第EP592,106号及び同第EP519,596号、Padlan,1991,Molecular Immunology,28(4/5):489-498、Studnicka et al.,1994,Protein Engineering,7(6):805-814、及びRoguska et al.,1994,PNAS,91:969-973を参照のこと(その各々の全体が参照によって本明細書に組み込まれる))、チェーンシャッフリング(例えば、米国特許第5,565,332号を参照のこと(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる))、ならびに例えば、米国特許出願公開第US2005/0042664号、米国特許出願公開第US2005/0048617号、米国特許第6,407,213号、米国特許第5,766,886号、国際公開第WO9317105号、Tan et al.,J.Immunol.,169:1119-25(2002)、Caldas et al.,Protein Eng.,13(5):353-60(2000)、Morea et al.,Methods,20(3):267-79(2000)、Baca et al.,J.Biol.Chem.,272(16):10678-84(1997)、Roguska et al.,Protein Eng.,9(10):895-904(1996)、Couto et al.,Cancer Res.,55(23 Supp):5973s-5977s(1995)、Couto et al.,Cancer Res.,55(8):1717-22(1995)、Sandhu J S,Gene,150(2):409-10(1994)、及びPedersen et al.,J.Mol.Biol.,235(3):959-73(1994)(その各々の全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に開示される技術を含むが、これらに限定されない。多くの場合に、フレームワーク領域のフレームワーク残基は、抗原結合を変化させる、例えば、改善するためにCDRドナー抗体からの対応する残基で置換されることになる。これらのフレームワーク置換、例えば、保存的置換は、当該技術分野において周知の方法、例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するためのCDRとフレームワーク残基との相互作用のモデル化及び特定の位置において稀なフレームワーク残基を同定するための配列比較によって同定される。(例えば、Queen et al.、米国特許第5,585,089号、及びRiechmann et al.,1988,Nature,332:323(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)を参照のこと。)
【0175】
ヒト化抗体または抗体断片は、ヒトではない供給源からのそれに残存する1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合に「移入」残基と称され、これは典型的には「移入」可変ドメインから得られる。本明細書で提供されるように、ヒト化抗体または抗体断片は、非ヒト免疫グロブリン分子及びフレームワーク領域からの1つ以上のCDRを含み、フレームワークに含まれるアミノ酸残基は、完全にまたは大部分がヒト生殖細胞系に由来する。抗体または抗体断片のヒト化を目的とした複数の技術が、当該技術分野において周知である。
【0176】
ある種類の置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。概して、さらなる研究のために選択される、得られたバリアント(複数可)は、親抗体と比較してある特定の生物学的特性に改変(例えば、改善)(例えば、親和性の増加、免疫原性の低下)を有することになり、及び/または親抗体のある特定の生物学的特性を実質的に保持していることになる。例示的な置換バリアントは親和性成熟抗体であり、例えば、ファージディスプレイに基づく親和性成熟技術、例えば、本明細書に記載されるものなどを使用して簡便に生成されてよい。簡潔に述べると、1つ以上のHVR残基を変異させて、バリアント抗体がファージ上に提示されたら、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。
【0177】
改変(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するためにHVRで行われてよい。そのような改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異するコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照のこと)、及び/またはSDR(a-CDR)において行われてよく、得られたバリアントVHまたはVLは結合親和性について試験される。二次ライブラリーからの構築及び再選択による親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.のMethods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態では、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、チェーンシャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指定変異誘発)のいずれかによって成熟のために選択される可変遺伝子中に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリーが作製される。次いで、ライブラリーがスクリーニングされ、所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを同定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6つの残基)がランダム化されるHVR特異的アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して特異的に同定されてよい。多くの場合、特にCDR-H3及びCDR-L3が標的とされる。
【0178】
いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が抗原と結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、1つ以上のHVR内で行われてよい。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)が、HVRで行われてよい。そのような改変は、HVR「ホットスポット」またはCDRの外側であってもよい。上に提供されるバリアントVH配列のいくつかの実施形態では、各HVRは、改変されていないか、または1つ、2つもしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有するかのいずれかである。
【0179】
変異誘発のために標的とされ得る、抗体の残基または領域の有用な同定方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085によって記載されるような、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれている。本方法では、標的残基の残基または群(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)を同定して、中性または負荷電アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)で置換し、抗体と抗原との相互作用に影響を及ぼすかどうかを決定する。さらなる置換が、最初の置換に対して機能感受性を示すアミノ酸位置に導入される場合がある。あるいは、またはさらに、抗体と抗原との間の接触点を同定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的とされる、または排除される場合がある。バリアントは、それらが所望の特性を含有するかどうかを決定するためにスクリーニングされる場合がある。
【0180】
アミノ酸配列挿入としては、1残基~100以上の残基を含有するポリペプチドの長さの範囲である、アミノ末端及び/またはカルボキシル末端融合に加えて、単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、抗体のN末端もしくはC末端と酵素との融合体(例えば、ADEPTのための)または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドとの融合体が挙げられる。
【0181】
b)グリコシル化バリアント
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように変化される。抗体に対するグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作製または除去されるようにアミノ酸配列を変化させることによって簡便に行われ得る。
【0182】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合される炭水化物は変化される場合がある。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、一般にFc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合によって結合される、分岐した二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照のこと。オリゴ糖としては、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸に加えて、二分岐オリゴ糖構造の「幹」においてGlcNAcに結合されるフコースが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、本出願の抗体におけるオリゴ糖の修飾は、ある特定の改善された特性を有する抗体バリアントを作製するために行われてよい。
【0183】
いくつかの実施形態では、抗体バリアントは、Fc領域に(直接的または間接的に)結合されるフコースを欠いている炭水化物構造を有して提供される。例えば、そのような抗体中のフコース量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であってよい。フコース量は、例えば、WO2008/077546に記載されるように、MALDI-TOF質量分析法によって測定される場合、Asn297に結合される全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造)の合計と比較して、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を算出することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体における軽微な配列多様性に起因して、297位から約±3アミノ酸だけ上流または下流に、すなわち、294~300位の間に位置する場合もある。そのようなフコシル化バリアントは、改善したADCC機能を有する場合がある。例えば、米国特許公開第US2003/0157108号(Presta,L.)、同第US2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照のこと。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体バリアントに関連する刊行物の例としては、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004)、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生できる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化を欠いているLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986)、米国特許出願第US2003/0157108A1号、Presta,L、及びWO2004/056312A1、Adams et al.)、ならびにノックアウト細胞株、例えば、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、すなわち、FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006)、及びWO2003/085107を参照のこと)などが挙げられる。
【0184】
抗体バリアントは、例えば、抗体のFc領域に結合される二分岐オリゴ糖が、GlcNAcによって二分される二分オリゴ糖をさらに有する。そのような抗体バリアントは、減少したフコシル化及び/または改善したADCC機能を有する場合がある。そのような抗体バリアントの例は、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairet et al.)、米国特許第6,602,684号(Umana et al.)、及びUS2005/0123546(Umana et al.)に記載されている。Fc領域に結合されるオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントも提供される。そのような抗体バリアントは、改善したCDC機能を有する場合がある。そのような抗体バリアントは、例えば、WO1997/30087(Patel et al.)、WO1998/58964(Raju,S.)、及びWO1999/22764(Raju,S.)に記載されている。
【0185】
CAR(その機能部分及び機能的バリアントを含む)は、当該技術分野において既知の方法によって得られ得る。CARは、ポリペプチドまたはタンパク質を作製する任意の好適な方法によって作製されてよい。ポリペプチド及びタンパク質を新たに合成する好適な方法は、参考文献、例えば、Chan et al.,Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2000、Peptide and Protein Drug Analysis,ed.Reid,R.,Marcel Dekker,Inc.,2000、Epitope Mapping,ed.Westwood et al.,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2001、及び米国特許第5,449,752号などに記載されている。また、ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組換え方法を使用し、本明細書に記載される核酸を使用して組換え産生され得る。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.2001、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley&Sons,NY,1994を参照のこと。さらに、CAR(その機能部分及び機能的バリアントを含む)の一部は、供給源、例えば、植物、細菌、昆虫、哺乳動物、例えば、ラット、ヒトなどから単離及び/または精製され得る。単離及び精製の方法は、当該技術分野において周知である。あるいは、本明細書に記載されるCAR(その機能部分及び機能的バリアントを含む)は、企業によって商業的に合成され得る。この点に関して、CARは、合成、組換え、単離、及び/または精製され得る。
【0186】
検出可能マーカー及びタグ
その抗体抗原結合断片は、本明細書に開示される抗原の1つ以上に特異的であり、さらにタグタンパク質と共に発現(例えば、共発現)され得る。いくつかの実施形態では、フーリン認識部位及び下流2A自己切断ペプチド配列は、タグ配列及び抗体配列の同時バイシストロニック発現のために設計される。いくつかの実施形態では、2A配列は、GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号:3)の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、フーリン及びP2A配列は、配列番号:3のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、P2Aタグは、配列番号:3のアミノ酸配列またはそれと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に開示される抗原の1つ以上に特異的であり、さらにEGFRと共に発現され得る。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に開示される抗原の1つ以上に特異的であり、切断型EGFR(tEGFR)と共に発現(例えば、共発現)される。いくつかの実施形態では、tEGFRは、配列番号:35と少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
tEGFR:MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIPRKVCNGIGIGEFKDSLSINATNIKHFKNCTSISGDLHILPVAFRGDSFTHTPPLDPQELDILKTVKEITGFLLIQAWPENRTDLHAFENLEIIRGRTKQHGQFSLAVVSLNITSLGLRSLKEISDGDVIISGNKNLCYANTINWKKLFGTSGQKTKIISNRGENSCKATGQVCHALCSPEGCWGPEPRDCVSCRNVSRGRECVDKCNLLEGEPREFVENSECIQCHPECLPQAMNITCTGRGPDNCIQCAHYIDGPHCVKTCPAGVMGENNTLVWKYADAGHVCHLCHPNCTYGCTGPGLEGCPTNGPKIPSIATGMVGALLLLLVVALGIGLFM(配列番号:35)
【0188】
抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に開示される抗原の1つ以上に特異的であり、さらに検出可能マーカー、例えば、ELISA、分光光度法、フローサイトメトリー、顕微鏡法または画像診断技術(コンピュータ断層撮影法(CT)、コンピュータ横断断層(CAT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、核磁気共鳴画像法NMRI)、磁気共鳴断層撮影法(MTR)、超音波、光ファイバー検査、及び腹腔鏡検査など)によって検出可能な検出可能マーカーと複合化され得る。検出可能マーカーの特定の非限定的な例としては、フルオロフォア、化学発光剤、酵素結合、放射性同位体及び重金属または化合物(例えば、MRIによる検出を目的とした超常磁性酸化鉄ナノ結晶)が挙げられる。例えば、有用な検出可能マーカーとしては、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5-ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリトリン、ランタニド蛍光体などを含む、蛍光化合物が挙げられる。生物発光マーカー、例えば、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)なども有用である。
【0189】
抗体またはその抗原結合部分はまた、検出に有用な酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼなどと複合化され得る。抗体、またはその抗原結合部分が検出可能な酵素と複合化される場合、それは、区別され得る反応生成物を生成するために酵素が使用する追加の試薬を添加することによって検出され得る。例えば、作用因子の西洋ワサビペルオキシダーゼが存在する場合、過酸化水素及びジアミノベンジジンの添加によって、視覚的に検出可能な着色反応生成物がもたらされる。抗体、またはその抗原結合部分は、ビオチンとも複合化されて、アビジンまたはストレプトアビジン結合の間接測定によって検出され得る。アビジン自体は、酵素または蛍光標識と複合化され得ることに留意すべきである。
【0190】
抗体、またはその抗原結合部分は、ガドリニウムなどの常磁性体と複合化され得る。超常磁性酸化鉄などの常磁性体も標識として有用である。抗体は、ランタニド(ユウロピウム及びジスプロシウムなど)、ならびにマンガンとも複合化され得る。抗体または抗原結合断片はまた、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグなど)でも標識され得る。
【0191】
抗体、またはその抗原結合部分はまた、放射性標識アミノ酸とも複合化され得る。放射性標識は、診断目的及び治療目的の両方に使用され得る。例えば、放射性標識は、本明細書に開示される抗原及び抗原発現細胞のうち1つ以上をX線、発光スペクトル、または他の診断技術によって検出するために使用され得る。さらに、放射性標識は、対象における腫瘍の治療、例えば、神経芽細胞腫の治療のために毒素として治療的に使用され得る。ポリペプチドの標識の例としては、以下の放射性同位体または放射性ヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない:H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I。
【0192】
そのような検出可能マーカーを検出する手段は、当業者には周知である。したがって、例えば、放射性標識は、写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを使用して検出され得、蛍光マーカーは、放出された照明を検出する光検出器を使用して検出され得る。酵素標識は通常、酵素に基質を提供し、基質に対する酵素の作用によって生成される反応生成物を検出することによって検出され、比色標識は、着色標識を可視化するだけで検出される。
【0193】
核酸、発現ベクター、及び宿主細胞
本発明の実施形態によってさらに提供されるのは、本明細書に記載される抗体、またはその抗原結合部分(その機能部分及び機能的バリアントを含む)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸である。本発明の核酸は、本明細書に記載されるリーダー配列、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び/または細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのいずれかをコードするヌクレオチド配列を含んでよい。一態様では、本発明は、抗体またはその断片をコードする核酸分子を含む組換え核酸構築物を包含し、核酸分子は、抗GCC結合ドメインをコードする核酸配列を含む。一態様では、本発明は、配列番号:1、20、21、26、27、もしくは28によるVHアミノ酸配列または配列番号:1、20、21、26、27、もしくは28と少なくとも75%、80%、90%もしくは95%の配列同一性を有する配列をコードする核酸を提供する。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号:30~34と少なくとも75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である配列を含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、コドン改変されてよい。特定の理論に束縛されるものではないが、ヌクレオチド配列のコドン最適化は、mRNA転写物の翻訳効率を増加させると考えられている。ヌクレオチド配列のコドン最適化は、天然コドンを、同じアミノ酸をコードする別のコドンに置換することを含む場合があるが、細胞内でより容易に利用可能なtRNAによって翻訳されることにより、翻訳効率が向上し得る。ヌクレオチド配列の最適化は、翻訳を妨害する二次mRNA構造も減少させることにより、翻訳効率が向上する場合がある。
【0195】
一態様では、本発明は、本明細書に記載される核酸分子、例えば、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片をコードする核酸分子を含むベクターに関する。一実施形態では、ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターからなる群から選択される。
【0196】
一実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクターである。一実施形態では、ベクターは、プロモーターをさらに含む。一実施形態では、プロモーターは、EF-1プロモーターである。
【0197】
発現ベクターとしては、プラスミド、レトロウイルス、コスミド、YAC、EBV由来エピソームなどが挙げられる。簡便なベクターは、機能的に完全なヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列をコードするベクターであり、任意のVH配列またはVL配列が容易に挿入及び発現され得るように適切な制限部位が操作されている。そのようなベクターでは、スプライシングは通常、挿入されたJ領域のスプライスドナー部位とヒトC領域前のスプライスアクセプター部位との間、及びヒトCHエクソン内で生じるスプライス領域でも行われる。好適な発現ベクターは、多数の構成要素、例えば、複製起点、選択可能マーカー遺伝子、1つ以上の発現制御エレメント、例えば、転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、もしくはターミネーター)など、及び/または1つ以上の翻訳シグナル、シグナル配列もしくはリーダー配列などを含有し得る。ポリアデニル化及び転写終結は、コード領域の下流の天然染色体部位で行われる。得られたキメラ抗体は、任意の強力なプロモーターに結合され得る。使用され得る好適なベクターの例としては、哺乳動物宿主に適していて、ウイルス複製系、例えば、シミアンウイルス40(SV40)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、アデノウイルス2、ウシパピローマウイルス(BPV)、パポーバウイルスBK変異体(BKV)、またはマウス及びヒトサイトメガロウイルス(CMV)、ならびにモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、天然Igプロモーターなどに基づくものが挙げられる。種々の好適なベクターが、当該技術分野において既知であり、それらとしては、単一コピーもしくは複数のコピーで維持されるか、または例えば、LTRを介して、もしくは複数の組込み部位で操作された人工染色体を介して宿主細胞染色体中に組み込まれるベクターが挙げられる(Lindenbaum et al.Nucleic Acids Res.32:e172(2004)、Kennard et al.Biotechnol.Bioeng.Online May 20,2009)。好適なベクターの追加の例は、後の節に列挙される。
【0198】
本発明は、細胞に直接トランスフェクトされ得るRNA構築物も含む。トランスフェクションに使用するためのmRNAの生成方法は、特別に設計されたプライマーを用いた鋳型インビトロ転写(IVT)、それに続くポリA付加を含み、3’及び5’非翻訳配列(「UTR」)、5’キャップ及び/または内部リボソーム進入部位(IRES)、発現される核酸、ならびにポリA尾部を含有する構築物を作製し、典型的には50~2000塩基長である。そのように作製されたRNAは、異なる種類の細胞を効率的にトランスフェクトし得る。一実施形態では、鋳型は、CARの配列を含む。一実施形態では、RNA CARベクターは、エレクトロポレーションによって細胞、例えば、T細胞またはNK細胞に形質導入される。
【0199】
したがって、本発明は、抗体、抗体の抗原結合断片(例えば、ヒト、ヒト化、キメラ抗体もしくは前述のいずれかの抗原結合断片)、抗体鎖(例えば、重鎖、軽鎖)またはGCCタンパク質と結合する抗体鎖の抗原結合部分をコードする核酸を含む発現ベクターを提供する。
【0200】
真核宿主細胞での発現は、そのような細胞が原核細胞よりも、適切に折り畳まれた免疫学的に活性な抗体を組み立てて分泌する可能性が高いため、有用である。しかしながら、不適切な折り畳みのために不活性である産生されたいずれの抗体も、既知の方法に従って再生可能な場合がある(Kim and Baldwin,“Specific Intermediates in the Folding Reactions of Small Proteins and the Mechanism of Protein Folding”,Ann.Rev.Biochem.51,pp.459-89(1982))。宿主細胞が、軽鎖二量体または重鎖二量体などのインタクトな抗体の一部を産生する可能性があり、これらは本発明による抗体相同体でもある。
【0201】
一実施形態では、核酸は、組換え発現ベクター中に組み込まれ得る。この点に関して、実施形態は、核酸のいずれかを含む組換え発現ベクターを提供する。本明細書の目的のために、「組換え発現ベクター」という用語は、構築物がmRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む場合に、宿主細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの発現を可能にする遺伝子改変オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド構築物を意味し、ベクターは、細胞内で発現されるmRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを有するのに十分な条件下で細胞と接触する。ベクターは、全体として天然に存在するものではない。
【0202】
しかしながら、ベクターの一部は、天然に存在し得る。組換え発現ベクターは、DNA及びRNAを含むが、これらに限定されない任意の種類のヌクレオチドを含み得、これらは一本鎖または二本鎖であり、天然源から部分的に合成または取得され得、天然、非天然または変化したヌクレオチドを含有し得る。組換え発現ベクターは、天然に存在するか、もしくは天然に存在しないヌクレオチド間結合、または両方の種類の結合を含み得る。好ましくは、天然に存在しないか、または変化したヌクレオチドまたはヌクレオチド間結合は、ベクターの転写または複製を妨げない。
【0203】
一実施形態では、組換え発現ベクターは、任意の好適な組換え発現ベクターであり得、任意の好適な宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするために使用され得る。好適なベクターとしては、増殖及び拡大のために、もしくは発現のために、またはその両方のために設計されるもの、例えば、プラスミド及びウイルスなどが挙げられる。ベクターは、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences、Glen Burnie,Md.)、pBluescriptシリーズ(Stratagene、LaJolla,Calif.)、pETシリーズ(Novagen、Madison,Wis.)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech、Uppsala,Sweden)、及びpEXシリーズ(Clontech、Palo Alto,Calif.)からなる群から選択され得る。
【0204】
λ、λZapII(Stratagene)、EMBL4、及びλNMI149などのバクテリオファージベクターも使用され得る。植物発現ベクターの例としては、pBIO1、pBI101.2、pBHO1.3、pBI121及びpBIN19(Clontech)が挙げられる。動物発現ベクターの例としては、pEUK-C1、pMAM、及びpMAMneo(Clontech)が挙げられる。組換え発現ベクターは、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターであり得る。レンチウイルスベクターは、レンチウイルスゲノムの少なくとも一部に由来するベクターであり、特にMilone et al.,Mol.Ther.17(8):1453-1464(2009)で提供されるような自己不活性化レンチウイルスベクターを含む。診療所で使用され得るレンチウイルスベクターの他の例としては、例えば、限定することなく、Oxford BioMedica plcのLENTIVECTOR(登録商標)遺伝子送達技術、LentigenのLENTIMAX(商標)ベクターシステムなどが挙げられる。非臨床型のレンチウイルスベクターも利用可能であり、当業者には既知である。
【0205】
多数のトランスフェクション技術が、一般に当該技術分野において既知である(例えば、Graham et al.,Virology,52:456-467(1973)、Sambrook et al.,上記、Davis et al.,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier(1986)、及びChu et al,Gene,13:97(1981)を参照のこと。
【0206】
トランスフェクション法としては、リン酸カルシウム共沈(例えば、Graham et al.,上記を参照のこと)、培養細胞への直接マイクロインジェクション(例えば、Capecchi,Cell,22:479-488(1980)を参照のこと)、エレクトロポレーション(例えば、Shigekawa et al.,BioTechniques,6:742-751(1988)を参照のこと)、リポソーム媒介遺伝子導入(例えば、Mannino et al.,BioTechniques,6:682-690(1988)を参照のこと)、脂質媒介形質導入(例えば、Feigner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7413-7417(1987)を参照のこと)、及び高速マイクロプロジェクタイルを使用した核酸送達(例えば、Klein et al,Nature,327:70-73(1987)を参照のこと)が挙げられる。
【0207】
一実施形態では、組換え発現ベクターは、例えば、Sambrook et al.,上記、及びAusubel et al.,上記に記載されている標準的な組換えDNA技術を使用して調製され得る。環状または線状である発現ベクターの構築物は、原核または真核宿主細胞で機能する複製系を含有するように調製され得る。複製系は、例えば、ColE1、2μプラスミド、λ、SV40、ウシパピローマウイルスなどに由来し得る。
【0208】
組換え発現ベクターは、転写及び翻訳開始コドン及び終止コドンなどの調節配列を含む場合があり、これらは、ベクターが適宜導入される宿主細胞型(例えば、細菌、真菌、植物、または動物)に特異的であり、ベクターがDNAまたはRNAベースであるかどうかを考慮に入れる。組換え発現ベクターは、クローニングを容易にするために制限部位を含む場合がある。
【0209】
組換え発現ベクターは、1つ以上のマーカー遺伝子を含み得、これらは形質転換またはトランスフェクトした宿主細胞の選択を可能にする。マーカー遺伝子としては、殺生物剤耐性、例えば、抗生物質、重金属などに対する耐性、栄養要求性宿主における原栄養性を提供するための相補性などが挙げられる。本発明の発現ベクターに適したマーカー遺伝子としては、例えば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、及びアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0210】
組換え発現ベクターは、抗体もしくはその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列に、または抗体もしくはその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列に相補的であるか、もしくはハイブリダイズするヌクレオチド配列に機能的に連結される天然または非天然プロモーターを含み得る。例えば、強い、弱い、誘導性、組織特異的及び発生特異的なプロモーターの選択は、当業者の技術範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列とプロモーターとの組合せも、当業者の技術範囲内である。プロモーターは、非ウイルスプロモーターまたはウイルスプロモーター、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、EF1アルファプロモーターまたはマウス幹細胞ウイルスの長端末反復に見られるプロモーターであり得る。
【0211】
組換え発現ベクターは、一過性発現、安定発現、またはその両方のいずれかのために設計され得る。また、組換え発現ベクターは、構成的発現または誘導発現のために作製され得る。
【0212】
さらに、組換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように作製され得る。本明細書で使用される場合、「自殺遺伝子」という用語は、自殺遺伝子を発現する細胞を死滅させる遺伝子を指す。自殺遺伝子は、遺伝子が発現する細胞に薬剤、例えば、薬物に対する感受性を付与し、細胞が薬剤と接触するか、または薬剤に曝露される場合に細胞を死滅させる遺伝子であり得る。自殺遺伝子は、当該技術分野において既知であり(例えば、Suicide Gene Therapy:Methods and Reviews,Springer,Caroline J.(Cancer Research UK Centre for Cancer Therapeutics at the Institute of Cancer Research,Sutton,Surrey,UK),Humana Press,2004を参照のこと)、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンダミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、及びニトロレダクターゼを含む。
【0213】
実施形態は、本明細書に記載される組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞をさらに提供する。本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本発明の組換え発現ベクターを含有し得る任意の細胞型を指す。宿主細胞は、真核細胞、例えば、植物、動物、真菌、もしくは藻類であり得るか、または原核細胞、例えば、細菌もしくは原生動物であり得る。宿主細胞は、培養細胞または初代細胞、すなわち、生物、例えば、ヒトから直接単離された細胞であり得る。宿主細胞は、接着細胞または懸濁細胞、すなわち、懸濁状態で増殖する細胞であり得る。好適な宿主細胞は当該技術分野において既知であり、これらとしては、例えば、DH5a E.coli細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞などが挙げられる。組換え発現ベクターを増幅または複製する目的で、宿主細胞は原核細胞、例えば、DH5a細胞であってよい。組換え抗体またはその抗原結合断片を産生する目的で、宿主細胞は哺乳動物細胞であってよい。宿主細胞はヒト細胞であってよい。宿主細胞は、任意の細胞型のものであり得、任意の組織型に由来し得、任意の発達段階のものであり得るが、宿主細胞は、末梢血リンパ球(PBL)または末梢血単核細胞(PBMC)であってよい。宿主細胞はT細胞であってよい。
【0214】
本出願の一態様は、本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合断片のうちいずれか1つ、または上に記載される単離核酸のうちいずれか1つ、または上に記載されるベクターのうちいずれか1つを含む、操作された免疫エフェクター細胞を提供する。
【0215】
本明細書に記載される少なくとも1つの宿主細胞を含む細胞集団もまた、一実施形態によって提供される。細胞集団は、少なくとも1つの他の細胞、例えば、宿主細胞(例えば、T細胞)に加えて、記載される組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を含む異種集団であり得、これは組換え発現ベクターのいずれか、またはT細胞以外の細胞、例えば、B細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋細胞、脳細胞などを含まない。あるいは、細胞集団は、実質的に均一集団であり得、その場合に集団は、組換え発現ベクターを含む(例えば、本質的にそれからなる)宿主細胞を主に含む。集団はまた、クローン細胞集団であり得、その場合に集団の全ての細胞が組換え発現ベクターを含むように、集団の全ての細胞が、組換え発現ベクターを含む単一宿主細胞のクローンである。本発明の一実施形態では、細胞集団は、本明細書に記載されるような組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0216】
所望の分子をコードする核酸配列は、当該技術分野において既知の組換え方法、例えば、遺伝子を発現する細胞からのライブラリーをスクリーニングすることによる、同じものを含むことが知られているベクターの遺伝子を誘導することによる、または標準的な技術を使用して同じものを含有する細胞及び組織から直接単離することによる方法などを使用して得られ得る。
【0217】
あるいは、目的の遺伝子は、クローニングではなく、合成的に作製され得る。本発明はまた、本発明のDNAが挿入されているベクターも提供する。レンチウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクターは、それらが導入遺伝子の安定した長期組込み及び娘細胞におけるその増殖を可能にするため、長期遺伝子導入を達成するのに好適なツールである。レンチウイルスベクターは、それらが肝細胞などの非増殖性細胞を形質導入し得るという点で、オンコレトロウイルス、例えば、マウス白血病ウイルスなどに由来するベクターよりもさらに利点を有する。それらはまた、低免疫原性という追加の利点も有する。
【0218】
本明細書に記載される抗GCC結合剤をコードする天然または合成核酸の発現は、抗GCC結合剤ポリペプチドまたはその一部をコードする核酸をプロモーターに機能的に連結し、構築物を発現ベクター中に組み込むことによって達成され得る。ベクターは、真核生物の複製及び組込みに好適であり得る。典型的なクローニングベクターは、転写及び翻訳ターミネーター、開始配列、ならびに所望の核酸配列の発現制御に有用なプロモーターを含有する。
【0219】
本発明の発現構築物は、標準的な遺伝子送達プロトコールを使用する、核酸免疫化及び遺伝子治療にも使用されてよい。遺伝子送達の方法は、当該技術分野において既知である。例えば、米国特許第5,399,346号、同第5,580,859号、同第5,589,466号を参照し、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、本発明は、遺伝子治療ベクターを提供する。
【0220】
核酸は、多数の種類のベクターにクローニングされ得る。例えば、核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、及びコスミドを含むが、これらに限定されないベクターにクローニングされ得る。特に注目するベクターとしては、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、及び配列決定ベクターが挙げられる。さらに、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供されてよい。
【0221】
ウイルスベクター技術は当該技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al.(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)に、ならびに他のウイルス学及び分子生物学マニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。概して、好適なベクターは、少なくとも1つの生物中において機能的な複製起点、プロモーター配列、簡便な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1つ以上の選択可能マーカーを含有する(例えば、WO01/96584、WO01/29058、及び米国特許第6,326,193号)。
【0222】
多数のウイルスベースのシステムが、哺乳動物細胞への遺伝子導入のために開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムに簡便なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、当該技術分野において既知の技術を使用してベクター中に挿入され、レトロウイルス粒子中にパッケージングされ得る。次いで、組換えウイルスが単離され、インビボまたはエクスビボのいずれかで対象の細胞に送達され得る。多数のレトロウイルスシステムが、当該技術分野において既知である。いくつかの実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。多数のアデノウイルスベクターが、当該技術分野において既知である。一実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。
【0223】
追加のプロモーターエレメント、例えば、エンハンサーは、転写開始の頻度を制御する。典型的には、それらは開始部位の30~110bp上流の領域に位置するが、最近では、多数のプロモーターが開始部位の下流にも同様に機能的エレメントを含有することが示されている。プロモーターエレメント間の間隔は、高い頻度で柔軟であるため、エレメントが互いに関連して反転または移動する場合でもプロモーター機能が維持される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、プロモーターエレメント間の間隔は、活性が低下し始める前に50bpずつ増加され得る。プロモーターに応じて、個々のエレメントが協同的または別々のいずれかで機能し、転写を活性化し得ると考えられる。
【0224】
好適なプロモーターの一例は、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それに機能的に連結される任意のポリヌクレオチド配列の高レベルな発現を誘導できる強力な構成的プロモーター配列である。
【0225】
好適なプロモーターの別の例は、伸長成長因子-1a(EF-1a)である。しかしながら、他の構成的プロモーター配列も使用されてよく、これらとしてはシミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタインバーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーターに加えて、ヒト遺伝子プロモーター、例えば、これらに限定されないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、及びクレアチンキナーゼプロモーターなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明は、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターもまた、本発明の一部として企図される。誘導性プロモーターの使用は、プロモーターが機能的に連結されるポリヌクレオチド配列の発現を、そのような発現が望ましい場合にオンにできるか、または発現が望ましくない場合に発現をオフにできる分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例としては、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、及びテトラサイクリンプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0226】
抗GCC結合剤(例えば、単一ドメイン抗体)ポリペプチドまたはその一部の発現を評価するために、細胞内に導入される発現ベクターはまた、選択可能マーカー遺伝子もしくはレポーター遺伝子、またはその両方のいずれかを含有し、ウイルスベクターによってトランスフェクトされるか、または感染することが求められる細胞集団からの発現細胞の同定及び選択を容易にし得る。他の態様では、選択可能マーカーは、別個のDNA片を保持し、共トランスフェクション手順に使用されてよい。
【0227】
選択可能マーカー及びレポーター遺伝子の両方とも、適切な調節配列と隣接して、宿主細胞中での発現を可能にする場合がある。有用な選択可能マーカーとしては、例えば、neoなどの抗生物質耐性遺伝子が挙げられる。レポーター遺伝子は、可能性のあるトランスフェクト細胞を特定し、調節配列の機能性を評価するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物または組織中に存在しないか、またはそれによって発現されず、ポリペプチドの発現が何らかの容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性によって現れるそのポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞中に導入された後の好適な時点でアッセイされる。好適なレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、または緑色蛍光タンパク質遺伝子が挙げられてよい(例えば、Ui-Tei et al.,2000 FEBS Letters 479:79-82)。好適な発現系が周知であり、既知の技術を使用して調製されてよいか、または商業的に入手されてよい。一般に、最高レベルのレポーター遺伝子の発現を示す最小の5’フランキング領域を有する構築物が、プロモーターとして同定される。そのようなプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結され、プロモーター駆動転写を調節する能力について薬剤を評価するために使用されてよい。
【0228】
細胞中に遺伝子を導入及び発現する方法は、当該技術分野において既知である。発現ベクターとの関連において、ベクターは、当該技術分野における任意の方法によって宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母、または昆虫細胞中に容易に導入され得る。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、または生物学的手段によって宿主細胞に移入され得る。ポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入する物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝撃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが挙げられる。ベクター及び/または外来核酸を含む細胞を作製する方法が、当該技術分野において周知である。例えば、Sambrook et al.(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)を参照のこと。ポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入する好ましい方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0229】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入する生物学的方法は、DNA及びRNAベクターの使用を含む。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、遺伝子を哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞中に挿入するための最も広く使用されている方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスなどに由来し得る。例えば、米国特許第5,350,674号及び同第5,585,362号を参照のこと。ポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入するための化学的手段としては、コロイド分散系、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースの系などが挙げられる。
【0230】
インビトロ及びインビボで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。非ウイルス送達システムが利用される場合、例示的な送達ビヒクルは、ナノ粒子、例えば、リポソームまたは他の好適なサブミクロンサイズの送達システムである。脂質製剤の使用は、宿主細胞中への核酸の導入(インビトロ、エクスビボまたはインビボ)のために企図される。別の態様では、核酸は脂質と会合されてよい。脂質と会合した核酸は、リポソームの水性内部中に封入される、リポソームの脂質二重層内に点在する、リポソーム及びオリゴヌクレオチドの両方と会合した連結分子を介してリポソームに結合する、リポソーム中に封入される、リポソームと複合化される、脂質を含有する溶液中に分散する、脂質と混合される、脂質と組み合わされる、脂質中の懸濁液として含有される、ミセルを含有するか、もしくはミセルと複合化される、またはさもなければ脂質と会合される場合がある。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液中における任意の特定の構造に限定されない。例えば、それらはミセルとして、または「崩壊した」構造を有する二重層構造で存在する場合がある。それらはまた、単に溶液中に点在するだけで、サイズまたは形状が均一ではない凝集体を形成する可能性がある。脂質は、天然に存在する脂質または合成脂質の場合がある脂肪物質である。例えば、脂質としては、細胞質で天然に存在する脂肪滴に加えて、長鎖脂肪族炭化水素及びそれらの誘導体、例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒドなどを含有する化合物のクラスが挙げられる。
【0231】
使用に適した脂質は、商業的供給源から得られ得る。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma,St.Louis,MOから得られ得、ジセチルホスフェート(「DCP」)は、K&K Laboratories(Plainview,NY)から得られ得、コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから得られ得、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及び他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham,AL)から得られ得る。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液は、約-20℃で保存され得る。クロロホルムは、メタノールよりも容易に蒸発するため、唯一の溶媒として使用される。「リポソーム」は、封入された脂質二重層または凝集体の生成によって形成される、様々な単層及び多層脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜及び内側に水性媒体を有する小胞構造を有すると特徴付けられ得る。多重層リポソームは、水性媒体によって分離されている複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質を過剰の水溶液中に懸濁させる場合に自然に形成される。脂質成分は、密閉構造を形成する前に自己再構成を経て、脂質二重層間に水及び溶解した溶質を封入する(Ghosh et al,1991 Glycobiology 5:505-10)。
【0232】
しかしながら、通常の小胞構造とは異なる構造を溶液中に有する組成物も包含される。例えば、脂質はミセル構造を取るか、または単に脂質分子の不均一な凝集体として存在する場合がある。lipofectamine核酸複合体も企図される。外来核酸を宿主細胞中に導入するため、またはさもなければ細胞を本発明の阻害剤に曝露するために使用される方法にかかわらず、宿主細胞において組換えDNA配列の存在を確認するために、様々なアッセイが実施されてよい。そのようなアッセイとしては、例えば、当業者には周知の「分子生物学的」アッセイ、例えば、サザン及びノーザンブロッティング、RT-PCR及びPCRなど、「生化学的」アッセイ、例えば、免疫学的手段(ELISA及びウェスタンブロット)によって、または本発明の範囲内である薬剤を同定するための本明細書に記載されるアッセイによって、特定のペプチドの有無を検出することなどが挙げられる。
【0233】
本発明はさらに、抗GCC結合剤(例えば、単一ドメイン抗体)をコードする核酸分子を含むベクターを提供する。一態様では、抗GCC結合剤(例えば、単一ドメイン抗体)ベクターは、細胞、例えば、T細胞に直接形質導入され得る。一態様では、ベクターは、クローニングまたは発現ベクター、例えば、1つ以上のプラスミド(例えば、発現プラスミド、クローニングベクター、ミニサークル、ミニベクター、二重微小染色体)、レトロウイルス及びレンチウイルスベクター構築物を含むが、これらに限定されないベクターである。一態様では、ベクターは、哺乳動物T細胞内で抗GCC結合剤構築物を発現できる。一態様では、哺乳動物T細胞は、ヒトT細胞である。
【0234】
いくつかの態様では、非ウイルス法は、本明細書に記載される抗GCC結合剤をコードする核酸を、細胞もしくは組織または対象に送達するために使用され得る。いくつかの実施形態では、非ウイルス法は、トランスポゾン(転移因子とも呼ばれる)の使用を含む。いくつかの実施形態では、トランスポゾンは、ゲノムのある位置にそれ自体を挿入し得るDNA片であり、例えば、自己複製してそのコピーをゲノム中に挿入できるDNA片、またはより長い核酸からスプライシングして、ゲノム内の別の箇所に挿入され得るDNA片である。
【0235】
追加の、及び例示的なトランスポゾン及び非ウイルス送達方法は、2016年4月8日出願の国際出願WO2016/164731の196~198ページに記載されていて、その全体が参照によって組み込まれる。
【0236】
治療方法
本発明は、本明細書に記載されるような抗GCC抗原結合分子を対象に投与することを含む、治療方法に関する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗GCC抗原結合分子(例えば、単一ドメイン抗体)は、哺乳動物の疾患を治療または予防する方法に使用され得る。この点に関して、一実施形態は、哺乳動物のがんを治療または予防する方法を提供し、本方法は、哺乳動物に抗原結合分子(例えば、単一ドメイン抗体)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体及び/またはその抗原結合部分、及び/または哺乳動物のがんを治療または予防するのに効果的な量の医薬組成物を投与することを含む。本発明はまた、疾患の治療に使用するための、本明細書に記載されるような抗GCC抗原結合分子(例えば、sdAb)に関する。本発明はまた、がんの治療に使用するための、本明細書に記載されるような抗GCC抗原結合分子(例えば、sdAb)に関する。本発明はまた、がんの治療を目的とした医薬の製造に使用するための、本明細書に記載されるような抗GCC抗原結合分子(例えば、sdAb)に関する。
【0237】
本明細書に記載される組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸血、埋込みまたは移植によるものを含む、任意の簡便な手法で行われてよい。本明細書に記載される組成物は、患者に、経動脈、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射によって、または腹腔内に投与されてよい。一実施形態では、例えば、抗原結合分子(例えば、単一ドメイン抗体)発現細胞を含む、本明細書に記載される組成物は、皮内または皮下注射によって患者に投与される。一実施形態では、例えば、抗原結合分子(例えば、単一ドメイン抗体)発現細胞を含む、本明細書に記載される組成物は、i.v.注射によって投与される。例えば、抗原結合分子(例えば、単一ドメイン抗体)発現細胞を含む、本明細書に記載される組成物は、腫瘍、リンパ節、または感染部位に直接注射されてよい。
【0238】
宿主細胞または細胞集団が投与される方法を目的として、細胞は、哺乳動物にとって同種または自己由来の細胞であり得る。好ましくは、細胞は哺乳動物にとって自己由来である。本明細書で使用される場合、同種とは、物質が導入される個体と同じ種の異なる動物に由来する任意の物質を意味する。1箇所以上の座位の遺伝子が同一ではない場合、2以上の個体は、互いに同種であると言われる。いくつかの態様では、同種の個体に由来する同種物質は、抗原的に相互作用するために遺伝的に十分に異なる場合がある。本明細書で使用される場合、「自己」という用語は、任意の物質が後に個体に再導入される場合の同じ個体に由来する任意の物質を意味する。
【0239】
本明細書で言及される哺乳動物は、任意の哺乳動物であり得る。本明細書で使用される場合、「哺乳動物」という用語は、マウス及びハムスターなどの齧歯目の哺乳動物、ならびにウサギなどのウサギ目の哺乳動物を含むが、これらに限定されない任意の哺乳動物を指す。哺乳動物は、ネコ科(ネコ)及びイヌ科(イヌ)を含む、食肉目からのものであってよい。哺乳動物は、ウシ科(ウシ)及びブタ(Swine)(ブタ(pig))を含む偶蹄目またはウマ科(ウマ)を含む奇蹄目からのものであってよい。哺乳動物は、霊長目、セボイド目(Ceboids)、もしくはシモイド目(Simoids)(サル)または真猿亜目(ヒト及び類人猿)のものであってよい。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0240】
本方法に関して、がんは、急性リンパ性癌、急性骨髄性白血病、肺胞横紋筋肉腫、膀胱癌(例えば、膀胱癌腫)、骨癌、脳癌(例えば、髄芽腫)、乳癌、肛門、肛門管、または肛門直腸の癌、眼の癌、肝内胆管の癌、関節の癌、頸部、胆嚢、または胸膜の癌、鼻、鼻腔、または中耳の癌、口腔の癌、外陰部の癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性癌、結腸癌、食道癌、子宮頸癌、線維肉腫、消化管カルチノイド腫瘍、頭頸部癌(例えば、頭頸部扁平上皮癌)、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、腎臓癌、喉頭癌、白血病、液性腫瘍、肝臓癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌及び肺腺癌)、リンパ腫、中皮腫、肥満細胞腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌、非ホジキンリンパ腫、B慢性リンパ性白血病、有毛細胞白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、バーキットリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、腹膜癌、網癌、及び腸間膜癌、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、皮膚癌、小腸癌、軟組織癌、固形腫瘍、滑膜肉腫、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、ならびに尿管癌のいずれかを含む、任意のがんであり得る。
【0241】
ある特定の実施形態では、がんは胃腸癌である。いくつかの実施形態では、がんは胃癌である。いくつかの実施形態では、がんは結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、がんは結腸癌である。いくつかの実施形態では、がんは、GCCの異常発現を有する。
【0242】
「治療する」、及び「予防する」という用語に加えて、それらに由来する単語は、本明細書で使用される場合、必ずしも100%または完全な治療または予防を示唆するとは限らない。むしろ、当業者が潜在的な利益または治療効果を有すると認識する、様々な程度の治療または予防が存在する。この点に関して、本方法は、哺乳動物におけるがんの任意の量または任意のレベルの治療または予防を提供し得る。
【0243】
さらに、本方法によって提供される治療または予防は、治療または予防される疾患、例えば、がんの1つ以上の状態または症状の治療または予防を含み得る。また、本明細書の目的のために、「予防」は、疾患、またはその症状もしくは状態の発症を遅延させることを包含し得る。
【0244】
別の実施形態は、哺乳動物においてがんの存在を検出する方法を提供し、本方法は、(a)哺乳動物に由来する1つ以上の細胞を含む試料を、抗原結合分子(例えば、単一ドメイン抗体)、その抗原結合部分、または医薬組成物と接触させることにより、複合体を形成すること、(b)及び複合体を検出し、複合体の検出が、哺乳動物におけるがんの存在を示していることを含む。いくつかの実施形態では、接触は、哺乳動物に関してインビトロまたはインビボで行われ得る。いくつかの実施形態では、接触はインビトロである。
【0245】
試料は、任意の好適な方法、例えば、生検または剖検によって得られ得る。生検は、個体からの組織及び/または細胞の除去である。そのような除去は、除去された組織及び/または細胞に対して実験を行うために、個体から組織及び/または細胞を収集することであり得る。この実験は、個体がある特定の状態または疾患状態を有する、及び/またはそれに罹患しているかどうかを判断するための実験を含む場合がある。状態または疾患は、例えば、がんであり得る。
【0246】
哺乳動物における増殖性障害、例えば、がんの存在を検出する方法の実施形態に関して、哺乳動物の細胞を含む試料は、全細胞、その溶解物、あるいは全細胞溶解物の画分、例えば、核もしくは細胞質画分、全タンパク質画分、または核酸画分を含む試料であり得る。試料が全細胞を含む場合、細胞は哺乳動物の任意の細胞、例えば、血液細胞または内皮細胞を含む、任意の臓器または組織の細胞であり得る。
【0247】
また、複合体の検出は、当該技術分野において既知の任意数の方法によって行われ得る。例えば、本明細書に記載される抗体、またはその抗原結合部分は、上に開示されるような検出可能な標識、例えば、放射性同位体、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、及び元素粒子(例えば、金粒子)で標識され得る。
【0248】
標的細胞を認識する能力及び抗原特異性について抗原結合分子(例えば、単一ドメイン抗体)を試験する方法は、当該技術分野において既知である。例えば、Clay et al.,J.Immunol,163:507-513(1999)は、サイトカイン(例えば、インターフェロン-γ、顆粒球/単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子a(TNF-α)またはインターロイキン2(IL-2))の放出を測定する方法について教示している。
【0249】
別の実施形態は、哺乳動物における増殖性障害、例えば、がんの治療または予防のための、本発明の抗原結合分子(例えば、単一ドメイン抗体もしくはその抗原結合部分)、及び/または医薬組成物の使用をもたらす。がんは、本明細書に記載されるがんのいずれであってよい。
【0250】
開示された治療剤のための、局所投与及び全身投与を含む、任意の投与方法が使用され得る。例えば、局所、経口、血管内、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、皮内、髄腔内及び皮下投与などが使用され得る。特定の投与方法及び投与レジメンは、症例の詳細(例えば、対象、疾患、関与する疾患状態、及び治療が予防的かどうか)を考慮して、担当臨床医によって選択されることになる。2つ以上の薬剤または組成物が投与される場合、1つ以上の投与経路が使用される場合があり、例えば、化学療法剤は経口投与され得、抗体または抗原結合断片または複合体または組成物は、静脈内投与され得る。投与方法としては、抗体、抗原結合断片、または組成物が、非毒性の薬学的に許容される担体、例えば、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、5%ヒト血清アルブミン、固定油、オレイン酸エチル、またはリポソームなどの中に提供される注射が挙げられる。いくつかの実施形態では、開示される化合物の局所投与は、例えば、抗体または抗原結合断片を、腫瘍が除去された組織の領域、または腫瘍が発生しやすいと疑われる領域に適用することによって使用され得る。いくつかの実施形態では、治療有効量の抗体または抗原結合断片を含む医薬調製物の持続的な腫瘍内(または腫瘍近傍)放出が、有益であり得る。他の例では、複合体は点眼薬として角膜に局所的に、または硝子体内から眼内に適用される。
【0251】
開示された治療剤は、正確な投与量の個別投与に適した単位剤形で製剤化され得る。加えて、開示された治療剤は、単回用量または複数回用量のスケジュールで投与され得る。複数回用量のスケジュールは、一次治療経過が2回以上の別個の用量、例えば、1~10回の用量を用いて、続いて組成物の作用を維持または補強するために必要に応じて、その後の時間間隔で他の用量が適用される場合があるスケジュールである。治療は、数日から数か月、またはさらに数年間にわたる化合物(複数可)の1日用量または複数日用量を含み得る。したがって、投与レジメンはまた、少なくとも部分的に、治療される対象の特定の必要性に基づいて決定され、投与施術者の判断に依存することになる。
【0252】
一実施形態では、本開示は、本開示の少なくとも1つの治療剤(例えば、本開示の治療剤)またはその薬学的に許容される塩を、単独で、または他の抗がん剤を伴ういずれかで、ヒトまたは動物対象への投与に適した薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物を提供する。
【0253】
一実施形態では、本開示は、がんなどの細胞増殖性疾患に罹患しているヒトまたは動物対象を治療する方法を提供する。本開示は、そのような治療を必要とするヒトまたは動物対象を治療する方法を提供し、本方法は、治療有効量の本開示の治療剤またはその薬学的に許容される塩を単独で、または他の抗がん剤と組み合わせたいずれかで対象に投与することを含む。
【0254】
特に、組成物は併用治療薬として共に製剤化されるか、または別々に投与されるかのいずれかである。併用療法では、本開示の化合物及び他の抗がん剤(複数可)は、同時に(simultaneously)、同時に(concurrently)または特定の時間制限なく順次のいずれかで投与され得、そのような投与は、患者の体内で治療上有効なレベルの2つの化合物を提供する。
【0255】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物及び他の抗がん剤(複数可)は一般に、注入または経口によって任意の順序で順次投与される。投薬レジメンは、疾患の段階、患者の体力、個々の薬物の安全性プロファイル、及び個々の薬物の耐性に加えて、組合せを投与する主治医及び医師(複数可)に周知の他の基準に応じて変動する場合がある。
【0256】
本開示の化合物は、特に放射線増感剤として、特に放射線療法に対して低い感受性を示す腫瘍の治療に使用されてよい。
【0257】
別の態様では、本発明は、例えば、疾患もしくは免疫応答の治療もしくは予防のための、及び/または診断、予後もしくは疾患のモニタリングのためにGCCを検出するための、本明細書に記載されるような抗体、例えば、単一ドメイン抗体を含むキットを提供する。そのようなキットは、GCCタンパク質の検出に役立つような他の構成要素、包装、説明書、または材料を含有する場合がある。キットは、本明細書に記載されるような標識した単一ドメイン抗体または結合剤及び標識を検出するための1つ以上の化合物を含む場合がある。
【0258】
別段の記載がない限り、本明細書で使用される全ての専門用語及び科学用語ならびに語句は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様の、または同等の任意の方法及び材料が、本発明の実施または試験に使用され得るが、好ましい方法及び材料が以下に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0259】
標準的な技術が、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養及び形質転換に使用されてよい(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様書に従って、または当該技術分野において一般に行われるように、または本明細書に記載されるように実施されてよい。前述の技術及び手順は一般に、当該技術分野において周知の従来方法に従って、また本明細書全体を通して引用かつ議論される様々な一般的かつより具体的な参考文献に記載されるように実施されてよい。例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照し、これはあらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0260】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、それら全体が参照によって組み込まれる。本発明は、以下の実施例を参照することによって、より完全に理解されることになる。
【実施例
【0261】
これらの実施例は、本発明の理解を助けるために記載されるが、本発明の範囲を制限することを決して意図するものではなく、またそのように解釈されるべきではない。実施例は、当業者には周知である従来の方法(分子クローニング技術など)の詳細な説明を含まない。
【0262】
実施例1.GCC V抗体の単離及び選択
ヒトGCCを特異的に標的とする単一ドメイン重鎖抗体(V)を生成した(例えば、表1~3に提供した抗GCC結合剤)。表5に示した通り、組換え単一ドメインの抗GCC V構築物を、インビトロでGCCに対する結合親和性について評価した。結合速度を、Octet結合アッセイを使用して決定した。これらは、リアルタイムバイオレイヤー干渉計ベースのバイオセンサーOctet(ForteBio)で測定した。全ての結合試験を、HBS-ET Octet動態緩衝液で実施した。バイオセンサーは、異なるステップ間では常にOctet動態緩衝液で洗浄した。各Vの7段階の2倍希釈系列を作製した。結合ステップの各々の接触時間は300秒で、解離ステップは400~600秒の間で変動させた。動的結合(ka)及び解離(kd)速度定数を、ForteBio Analysisソフトウェアを使用してデータを処理し、1:1結合モデルにフィッティングすることによって決定した。算出した親和性及び速度定数を表4に示す。
【0263】
単一ドメイン抗体とCT26細胞との結合を、フローサイトメトリーを使用して測定した。CT26細胞を段階希釈したVと共にインキュベートし、蛍光をフローサイトメトリーによって測定した。抗GCC V抗体は、表4に示す通り、細胞結合時のEC50(nM)を得るためのFACS用量反応アッセイによってCT26細胞への結合について確認した。
【0264】
【表4】
【0265】
安定性を決定するために、V構築物をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供した。簡潔に述べると、精製したVをPBS緩衝液中において様々な濃度で、4℃で一晩保存し、次いでSECカラムを使用して様々な時点で分析した。試料をリン酸ナトリウム緩衝液中に注入した。データを経時的に収集し、開始時(T=0)に存在するものと比較した場合の、保存後に残存するモノマーピークの面積を算出した。以下の表5に示したように、安定性の結果を得た。
【0266】
【表5】
【0267】
ヒト軽鎖へのVH結合を測定するためにELISAを実施した。VHの各々の結合値(OD450nmとして測定)は0.1未満であって、これは本アッセイのバックグラウンドシグナルである。
【0268】
実施例2.GCCキメラ抗原受容体の設計及び特徴付け
キメラ抗原受容体構築物を操作して、上に記載した単一ドメイン抗体(例えば、表2または表3に提供したVH)を含む細胞外結合ドメイン(例えば、抗GCC結合配列)を含める。CAR T構築物を、結合配列をインフレームでCD28ヒンジ/膜貫通ドメインならびに共刺激ドメイン及びCD3ゼータ-1xxシグナル伝達ドメインに連結することによって生成する。例示的なCAR構築物の概略図を、図1A及び1Bに示す。
【0269】
CAR構築物配列をコードする核酸を、レトロウイルスプラスミド骨格にクローニングした。レトロウイルスベクター含有上清を、phenix ampho細胞(ATCC CRL-3213)の一過性トランスフェクションによって生成し、レトロウイルスベクター含有上清を回収して-80℃で保存した。
【0270】
健康なドナーからのヒト初代T細胞は、製造業者のプロトコールに従ってCD3+細胞の免疫磁気ビーズ選択を使用して、leukopak(ドナーの書面による同意を得て商業的供給者から購入)から単離した末梢血単核細胞(PBMC)から精製した(EasySep(商標)Human T Cell Isolation Kit、Stem Cell Technologies #17951)。T細胞を、10%ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco 15140-122)及び2ng/mlのIL-2(Milteyni 130-097-743)を補充したX-vivo 15培地(Lonza #04-744Q)中において100万細胞/mlの密度で培養した。細胞をCD3/CD28 MACS(登録商標)T Cell TransAct試薬(Miltenyi Biotec MACS #130-111-160)で活性化し、2日目または3日目にCAR構築物をコードするレトロウイルスベクターで一晩形質導入した。翌日、CAR-T細胞培養物をG-Rex6(登録商標)ウェルプレート(WilsonWolf P/N 80240M)に移し、10%ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco 15140-122)及び2ng/mlのIL-2(Milteyni 130-097-743)を補充したX-vivo 15培地(Lonza #04-744Q)中において7~10日目に回収するまで増殖させた。培地交換及びIL-2の補充を2~3日ごとに実施した。
【0271】
CAR T細胞発現を、抗EGFR抗体(R&D systems:FAB9577R)またはCAR表面発現用の可溶性GCC細胞外ドメイン組換えタンパク質を使用したフローサイトメトリーによって評価した。
【0272】
実施例3.インビトロでのGCC CAR T細胞活性
本実施例は、インビトロでの抗GCC CAR T細胞活性について記載する。GCC発現及びGCC陰性標的がん細胞株に対するCAR-T細胞傷害を検査した。標的がん細胞株は、GSU、LS1034及びHT55(これらは内因的にGCCを発現する)に加えて、GCCを安定に発現するように操作したヒト結腸直腸癌細胞株であるHT29-GCC、ならびにGCC陰性であるそのベクター対照細胞株のHT29-vecを含んだ。各標的細胞株を384ウェルプレートに播種し、GCC CAR-Tまたは非標的CAR-T細胞(陰性対照)を、10:1、3:1、1:1及び0.3:1のエフェクター対標的(E:T)比で添加した。標的細胞のみを含んだウェル及びエフェクター細胞のみを含んだウェルを対照として含んだ。2日後、CellTiter-Glo(登録商標)One Solution Assay(Promega、G8462)を使用して細胞生存率を測定した。最初にエフェクター細胞のみのウェルのシグナルを差し引き、次いで標的細胞のみのウェルのシグナルで割った後、共培養ウェルの発光シグナルから標的細胞の生存率を算出した。死滅率は、100%のGCC CAR-T細胞から標的細胞の生存率を差し引くことによって算出した。
【0273】
抗GCC結合剤は、対照として使用した非標的CD19 CAR-T細胞(1928z-1xx)とは対照的に、GCC発現標的細胞株に対して細胞死滅を示した。図2A~2Dに示す通り、切断型EGFR(tEGFR)の不存在下で抗GCC CARを発現するCAR-T細胞は、GCC発現細胞のHT29-GCC細胞(GCCを安定に発現するように操作したヒト結腸直腸癌細胞株HT29)(図2A)、ならびに内因的にGCCを発現する細胞株GSU(図2C)及びLS1034(図2D)に対してインビトロ細胞傷害を示した。図3A~3Dに示す通り、切断型EGFR(tEGFR)の存在下で抗GCC CARを発現するCAR-T細胞も、GCC発現細胞HT29-GCC(図3A)、GSU(図3C)及びLS1034(図3D)に対してインビトロ細胞傷害を示した。バーは、3つの技術的複製物からの平均+SD値を表す。データは、3人超のドナーに由来する抗GCC CAR T細胞を用いて実施した3つを超える独立した実験の代表的なものである。GCC CAR-T細胞は、GCC陰性HT29-vec細胞に対して細胞死滅を示さず(図2B及び図3B)、これはGCC CAR-T細胞の殺傷活性が抗原依存性であったことを示していた。
【0274】
抗原依存性細胞死滅に加えて、GCC CAR-T細胞のインビトロ活性も、IFNγ及びIL2の抗原依存的分泌を評価することによって評価した。抗GCC V結合剤を有するGCC CAR-T細胞を、GCC発現及びGCC陰性の標的がん細胞株と共に、10:1、3:1、1:1及び0.3:1のE:T比で共培養した。2日間の共培養後に上清を回収した。Intellicyt QBeads Human PlexScreenキット(Sartorius、90702)を使用して、上清中に分泌されたIFNγ及びIL2を検出した。全てのVH結合剤を有するGCC CAR-T細胞が、GCC発現標的細胞と共培養した場合、tEGFRの存在下(5A~5D)及び不存在下(4A~4D)の両方でIFNγを分泌したが、GCC陰性標的細胞と共培養した場合には分泌せず(図4B及び5B)、これは抗原依存性サイトカイン放出を示していた。全てのV結合剤を有するGCC CAR-T細胞が、GCC発現標的細胞と共培養した場合、tEGFRの存在下(7A~7D)及び不存在下(6A~6D)の両方でIL2を分泌したが、GCC陰性標的細胞と共培養した場合には分泌せず(図6B及び7B)、これは抗原依存性サイトカイン放出を示していた。
【0275】
このように、本発明の少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様について記載してきたが、当業者には様々な変更、修正、及び改善が容易に明らかとなることが十分に理解される。そのような変更、修正、及び改善は、本開示の一部であることを意図し、本発明の趣旨及び範囲内であることを意図する。したがって、前述の記載及び図面は単なる一例にすぎず、本発明は以下の特許請求の範囲によって詳細に記載される。
【0276】
配列表
以下の表6は、本明細書に開示される名称及び配列を提供する。
【0277】
【表6-1】
【0278】
【表6-2】
【0279】
【表6-3】
【0280】
【表6-4】
【0281】
均等論
本請求要素を修正するために、特許請求の範囲内における「第1」、「第2」、「第3」などの通常用語の使用は、それ自体が、1つの請求要素の任意の優先度、優先権、もしくは順序を別の請求要素に対して暗示するものではないか、または方法のその行為が行われる時間的順序を暗示するものでもないが、ある特定の名称を有する1つの請求要素を、同じ名称を有する(通常用語の使用を別として)別の請求要素と区別し、当該請求要素を区別するための単なる標識として使用される。
【0282】
「a」及び「an」という冠詞は、本明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用される場合、特に明確な反対の指示がない限り、複数の指示対象を含むと理解されるべきである。群の1つ以上のメンバー間に「または」を含む請求項または説明は、特に反対の指示がない限り、またはさもなければ文脈から明らかでない限り、群のメンバーのうち1つ、2つ以上、または全てが、所与の生成物またはプロセス中に存在する、それに用いられる、またはさもなければそれに関連する場合に満たされると考えられる。本発明は、群のうちの正確に1つのメンバーが、所与の生成物またはプロセス中に存在する、それに用いられる、またはさもなければそれに関連する実施形態を含む。本発明はまた、群のメンバーのうち2つ以上、または全体が、所与の生成物またはプロセス中に存在する、それに用いられる、またはさもなければそれに関連する実施形態を含む。さらに、本発明は、別段の指示がない限り、または矛盾もしくは不一致が生じることになると当業者に明らかでない限り、列挙されている請求項のうち1つ以上からの1つ以上の制限、要素、条項、記述用語などが、同じ基本請求項(または関連するような、任意の他の請求項)に従属する別の請求項に導入される全ての変更、組合せ、及び順列を包含すると理解されるべきである。要素が一覧表として(例えば、マルクーシュ群または同様の形式で)提示される場合、要素の各サブグループも開示され、いずれの要素(複数可)も本群から除去され得ると理解されるべきである。一般に、本発明、または本発明の態様が特定の要素、特徴などを含むとみなされる場合、本発明のある特定の実施形態または本発明の態様が、そのような要素、特徴などからなるか、またはそれらから本質的になると理解されるべきである。簡潔にするために、それらの実施形態は、いずれの場合においても本明細書では多数の用語で具体的に記載されているわけではない。特定の除外が本明細書に列挙されているかどうかにかかわらず、本発明の任意の実施形態または態様が、特許請求の範囲から明示的に除外され得ることも理解されるべきである。本発明の背景を記載し、その実施に関する追加の詳細を提供するために本明細書で言及される刊行物、ウェブサイト及び他の参考資料は、参照によって本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2023552852000001.app
【国際調査報告】